JP4838920B2 - 米からの糖尿病予防・治療剤 - Google Patents

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、米を用いることにより、インスリン感受性を上昇させ、糖・脂質代謝活性を促進する、糖尿病予防・治療剤に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
飽食の時代といわれる現代、カロリーの摂取過剰が、肥満・糖尿病・高脂血症・動脈硬化症等様々な疾患を生み、罹病率は増加の一途をたどっている。また、発病するには至らなくとも、その予備軍といえる人がそれ以上存在すると言われている。
糖尿病には、インスリン依存型糖尿病(I型糖尿病)とインスリン非依存型糖尿病(II型糖尿病)の2タイプがあるが、全体の90%は後者のタイプである。
インスリン非依存型糖尿病は、過栄養によるインスリンの作用不足、例えば組織におけるインスリン感受性低下、インスリン抵抗性及び、それらの症状は、インスリン需要を増加させるため、インスリン分泌を担う膵臓に負担がかかりやがてインスリン分泌不足もきたすことによる、糖・脂質代謝の異常が原因といわれている。インスリン非依存型糖尿病は薬物による治療より、まずは食事療法、運動療法でコントロールすることが基本とされている。しかし、そのように自己管理がなされていても必ずしも代謝異常が是正されるとは限らず、薬に依存しがちである。
ところが、薬剤には、投与による副作用や使用量、使用期限に制限の問題がある。また、これらは単一化された物質の混合によるものがほとんどであるため、単一物質の副作用、さらには長期に亘る服用により起こる安全性の面からも問題になっている。即ち、糖・脂質代謝異常に起因する疾患に対して有効で安全な予防・治療剤は未だ開発されていないのが現状である。
【0003】
一方、米は主食以外に、清酒、焼酎、みりん、酢、麹などとして用途開発され、古くから生活に欠かせないものとなっている。このほかには、美容的用途として糠袋が知られている。これらは米を単なる主食であると見るか、またはせいぜい澱粉源としてしか見ていなかったということによるものであると思われる。また、糠袋にしても、皮膚によいとされ、慣例的にそのまま使用されてきたのみであり、有効成分という概念もなければ、その有効成分を利用するという考え方も全くなかったのである。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
薬物を使った糖尿病治療は、常に人体に対する副作用を伴う危険性がある。糖尿病薬である経口血糖降下剤の使用や、インスリン注射は、作用が強すぎると重度の低血糖症を起こすことが知られている。
また、糖尿病予防は、食事に気をつけることや運動を取り入れる以外、効果的な方法はなっかた。
このような背景から、副作用が全くなく、しかも予防・治療剤として、長期にわたって常用しても充分に安全な糖尿病予防・治療剤が要求されている。
本発明は、安全で安価であり、常用しても全く安全な米からの糖尿病予防・治療剤を提供することを目的としている。
【0005】
【課題を解決するための手段】
発明者らは、動植物合和すの観点から、主食である米を中心に種々の植物成分の研究を進めてきた。その過程で米は今までに予測できなかった数多くの可能性及び効果があることが判明してきた。そこで主食として用いられ、安全性が最も高いことが実証されている米をテーマとして取り上げ、米の総合利用研究を行ってきた。その中の1テーマとして、米からの糖尿病予防・治療剤について、鋭意研究を重ねてきたのである。
その結果、米には、インスリン感受性を高め、糖・脂質代謝活性を促進する成分が含まれることがわかり、本発明の完成に至った。
【0006】
本発明において、米または発芽させた米、または米白糠に含有されている糖尿病予防・治療効果を有する成分は未だ解明するには至っていないが米または発芽させた米、または米白糠を処理したものには、糖尿病に対する予防・治療効果を示すことが判明した。
原料の米は、ジャポニカ、インディカ米を問わず、うるち米および餅米等の玄米および白米、白糠を指し、品質、種類は問わない。また、発芽させた米が使用される。なお、有効成分は、熱及び光に対して安定であるため、上記の原料は、浸漬、蒸煮、ばい煎(砂あぶり、網あぶり、熱風ばい煎等全てを指す)、蒸煮ばい煎、凍結乾燥等の表面変性、UV照射等の光変性、パットライス等の加圧ばい煎、揚げる等の処理をしてもよい。
その米および発芽させた米は、そのまま用いても有効であるが、実用上の面から粉砕して用いるのが好ましい。米および発芽させた米を粉砕して粉体化するには、粉砕機または精米機を用い一般的な方法で行えばよい。
【0007】
米を発芽させる場合、胚芽のついた米を水に浸漬あるいは水を噴霧して発芽させる。発芽させる時の温度は5〜70℃である。ただし、発芽さえすれば、温度および時間は問わない。また、発芽中に水が腐敗する危険性がある場合は、腐敗しないように水を取り替えるか、何らかの防腐を行うのが好ましい。ここで、発芽とは、発芽する直前から発芽したものまで全てを指す。この発芽させた米をよく洗浄して用いる。この時、乾燥して用いてもよい。
【0008】
米を水抽出する場合、抽出温度は、高温が効率的であるが、低温でも十分に抽出を行うことができる。ただし、40℃以下の低温の場合は、pHを酸性あるいはアルカリ性にするか、防腐剤あるいはアルコールを加えて、米が腐敗しないように処理する。抽出時間は、有効成分さえ抽出できればよく、抽出温度により定めればよい。また、抽出は、加圧下、常圧下でも、減圧下で行ってもよい。さらに加水量の有効な範囲は、米に対して1〜100倍である。効果さえあれば、もっと薄い濃度で抽出しても良い。ただこの場合は、抽出後濃縮して有効成分を濃くする必要性が生じる可能性がある。
【0009】
水抽出の場合、最も問題になるのは糊化現象である。糊状になれば、抽出効率が悪くなるばかりでなく、実作業においては困難を極める。これを防ぐためには、アミラーゼを加えて反応させるか、塩酸などで酸性にして澱粉を切ってやればよく、この方法を用いることにより、十分に解決でき、実用上も全く問題はない。抽出物中の有効成分は、酸、アルカリに安定であるため、酸分解抽出、あるいはアルカリ分解抽出を行うのも有効である。この場合、必要により中和、脱塩を行う。
【0010】
有機溶媒で抽出する場合も、米はなるべく微粉砕または粉体化して抽出することが望ましい。有機溶媒はアルコール、アセトン、ブタノール、n−ヘキサン、メタノール、エーテル等の一般的な有機溶媒でよいが、人体に対して有害なものは抽出後、溶媒を完全に除去する必要がある。
【0011】
また、抽出を行うにあたり、澱粉分解酵素、蛋白分解酵素、脂肪分解酵素、繊維分解酵素を各々、または2種以上を組み合わせても良い。また、麹を使用してもよく、この場合使用する麹は、一般に使用される麹でよく、麹菌の種類および品種を問わない。なお、上記の酵素反応及び麹は、前記の前記の抽出前、あるいは抽出と同時に、または抽出の後に作用させてもよい。なお、必要により、酵母による通気発酵、アルコール沈殿、合成吸着剤等を用いて除糖してもよい。
【0012】
本発明においては、上記の各処理を行うと同時または処理後、アルコール発酵あるいは乳酸発酵、酢酸発酵等の有機酸発酵を行ってもよい。
このアルコール発酵を行う場合、上記のようにして得られた抽出物を糖化し、そのまま、または圧搾、ろ過して得た液をアルコール発酵させる。なお、酵素反応とアルコール発酵は同時に行ってもよい。すなわち、米の加水物に、酵素または麹、さらに酒母または酵母を添加して、糖化、アルコール発酵を行う。必要により補糖してアルコール発酵を行ってもよい。糖化およびアルコール発酵は10〜24日間行い、この際、腐敗が心配な場合は、酸を添加するか、発酵の阻害にならない適当な防腐を施す。
【0013】
アルコール発酵、通気発酵を行うと、ベトツキがなくなること、濃縮がしやすく有効成分の濃縮が容易になることなどの利点もある。
乳酸発酵を行う場合は、アルコール発酵の場合と同様で、この場合は、酒母または酵母の代わりに乳酸菌を添加して乳酸発酵を行う。乳酸発酵は一般的な常法によって行い、乳酸菌の種類および乳酸発酵の条件は問わない。
次に、酢酸発酵の場合は、上記のようにして得られた発酵物をそのまま、あるいは希釈してアルコール4〜5%にした後、酢酸菌を添加して酢酸発酵を行う。また、アルコールのないものは、アルコールを添加して酢酸発酵を行えばよい。酢酸発酵は一般的な常法によって行い、酢酸菌の種類および酢酸発酵の条件は問わない。
【0014】
以上のようにして得られた米の処理物は、残差を分離することなくそのまま、あるいは圧搾、ろ過して用いる。また、そのまま用いる時は、殺菌あるいは除菌して製品にする。また、フリーズドライあるいはスプレードライ等で乾燥して製品化してもよい。なお、本発明品を配合する場合は常法に従って剤型化する。
本発明品の糖尿病予防・治療剤としての効果を試験に基づいて以下に示す。
【0015】
本発明品の糖尿病予防・治療効果は、脂肪細胞へと分化する性質をもつ、マウス胎仔由来の培養細胞3T3−L1前駆脂肪細胞(3T3−Swiss albino細胞の亜株)を用いて、糖・脂質代謝活性の上昇効果として脂肪細胞への分化促進(グリセロール−3−リン酸デヒドロゲナーゼ活性の上昇、中性脂肪トリアシルグリセロール蓄積量の増加)、リポプロテインリパーゼ活性上昇、インスリン感受性上昇効果としてグリセロール取り込み量を測定した。
3T3−L1前駆脂肪細胞は、分化前の繊維芽脂肪細胞では脂肪細胞に特徴的な酵素の活性はほとんど検出されず、中性脂肪もみられず、またホルモン感受性も認められない。脂肪細胞へ分化することにより、糖・脂質代謝に関わる様々な酵素、グリセロール−3−リン酸デヒドロゲナーゼ、リポプロテインリパーゼ、ホルモン感受性リパーゼなどの活性が上昇し、中性脂肪の蓄積がみられ、インスリン、エピネフリン等のホルモンにも感受性をもつようになる。分化した脂肪細胞は、生体内の成熟脂肪細胞とほとんど同じホルモン感受性を持つことからインスリン作用等の研究に用いられることも多い。
先にも記述したように、インスリン非依存型糖尿病は、インスリン感受性の低下からくるインスリン作用不足、インスリン分泌不足による糖・脂質代謝活性の低下が原因である。これらの症状は脂肪細胞の分化が抑制されているために起こる訳ではないことは、肥満者に糖尿病発症が起こりやすい事実からみても明きらかである。脂肪細胞は中性脂肪を蓄積するが、蓄積できる量にも限界があり、それを越えても過剰に食物を摂取すると脂肪細胞数が増加する。よって、肥満者は一つ一つの脂肪細胞が肥大化しており、その数も多いことであろう。しかし、その様にして増加した脂肪細胞が正常に機能しているとは限らずむしろ、その反対であることが多い。
食事により摂取したカロリーを代謝するためにはインスリンが必要であるが、それはインスリンが、細胞へ多量の糖を取り込ませる作用を有するためである。肥大化した脂肪細胞はインスリン感受性が鈍くなりより多くのインスリンを必要とする。また摂取カロリーが多ければ、それだけ多量のインスリンを必要とする。このような状態が続くと、インスリン分泌臓器である膵臓は疲労し、インスリンを充分に分泌できなくなり糖尿病が発病する。よって単に脂肪細胞分化を促進するだけではなく、正常な代謝活性を有する脂肪細胞の分化を促進することが、重要である。
【0016】
(実験方法1)
培養方法:3T3−L1前駆脂肪細胞は10%牛胎仔血清(FBS)を含むDME培地(Dulbecos Modified Eagle Medium)を用い5%炭酸ガス、37℃で培養し、2〜3日ごとに培地交換を行い、コンフルエンスに達した後、分化誘導処理を行った。即ち、本発明品を培地に添加し、10μg/mlインスリン共存で培養を行った。なお添加量は、液体の場合培地1mlあたり33μl(3.3%)、固体の場合は、生理食塩水で1%溶液とし、培地1mlあたり33μl(300μg/ml)添加した。コンフルエンスに達してから、5回の培地交換を行った後培養を停止し、グリセロール−3−リン酸デヒドロゲナーゼ(GPDH)活性及び、細胞内に蓄積した中性脂肪(トリアシルグリセロール:TG)量、リポプロテインリパーゼ活性、グルコース取り込み量を下記の方法で測定した。培養は、6ウェルプレートを用い、一群3穴で行った。
なお、コントロールとしてコンフルエンスに達した後も通常の培地で培養したもの(BASAL)、10μg/mlインスリンを添加したもの(Insulin)、ポジティブコントロールとして、0.25μMデキサメタゾン、0.5mM3−イソブチル−1−メチルキサンチン、6μg/mlインスリンを添加した培地で、2日間培養した後、再び通常の培地で培養したもの(DMI)も測定を行った。
【0017】
(実験方法2)
GPDH活性測定方法:培養停止後、細胞を生理食塩水で2回洗浄し、25mMTrs−HCl 1mMEDTAbuffer(pH7.4)1mlを加え細胞を剥がし、氷冷中で超音波処理する。この細胞液を、500rpm、4℃で10分間遠心分離し、上清と沈殿物以外の部分を採取しGPDH活性、及びタンパク質測定用試料とする。
GPDH活性は、解糖の代謝中間物ジヒドロキシアセトンリン酸からGPDHの作用でNADHによる還元をうけグリセロール−3−リン酸が形成される反応でのNADHの減少量を波長340nmの吸光度から求め、Lowry法によって測定したタンパク質量で割り付けた値で示した。
【0018】
(実験方法3)
TG蓄積量測定方法:培養停止後、細胞を生理食塩水で2回洗浄し、25mMTrs−HCl 1mM EDTAbuffer(pH7.4)を加え細胞を剥がし、氷冷中で超音波処理する。この細胞液にリポプロテインリパーゼ、グリセロールキナーゼ、グリセロール−3−リン酸オキシターゼ、ペルオキシターゼ、ATP、4−アミノアンチピリンを加え37℃で 10分間反応させ、505nmの吸光度を測定する。
【0019】
リポプロテインリパーゼ(LPL活性)活性測定方法:培養停止後、細胞を生理食塩水で2回洗浄し、50mM NHCl−NHOH 20mg/ml BSA buffer(pH8.2)を加え細胞を剥がし、氷冷中で超音波処理する。1500rpm、4℃で10分間遠心し、その上清、沈殿物以外の部分を採取し、Hラベルトリオレイン乳化物、ラット血清、0.2MTrs−HCl3%BSA buffer(pH8.2)混合物を加え1時間インキュベーションした後メタノール:クロロホルム:ヘプタン(1.41:1.25:1:)混液を加え反応を停止し、pH11カリウムbufferを加え強くvortexした後室温で1500rpm、10分間遠心し、その上清に酢酸適量を加えた後、シンチレーター(ACS−II)を加え放射能を測定する。
【0020】
(実験方法4)
グルコース取り込み量測定方法:インスリン感受性はグルコース取り込み量によって示した。インスリンによる糖の取り込みは非常に速やかに起こるため、測定誤差を考え、直接グルコース量を測定することはせず、そのグルコースによって合成された中性脂肪を抽出して取り込み量とした。すなわち、培養停止後、細胞を生理食塩水で2回洗浄し、0.5%Hanks buffer1ml/wellを加える。1μMインスリン20μL(aインスリン共存)もしくは、生理食塩水20μL(bインスリン非共存)を加え、37℃で10分間プレインキュベーションした後、14Cラベルグルコースを50μL加え軽く揺する。再び37℃で30間インキュベーションした後、先程加えたbuffer等を捨て、アルカリ水を加え細胞を剥がす。剥がした細胞に抽出用試薬を加え、強めにvortexし、さらにHeptanを加え強めにvortexする。室温で、2000rpm、5分間遠心し上清をバイヤル瓶にとりトルエンシンチレーターを加え放射能を測定する。
【0021】
GPDH活性、TG蓄積量、LPL活性、グルコース取り込み量測定結果は、表1〜表3に示すとおりである。
【0022】
【表1】
Figure 0004838920
【0023】
【表2】
Figure 0004838920
【0024】
【表3】
Figure 0004838920
【0025】
本発明品は、脂肪細胞の分化の指標となる酵素、本実験ではグリセロール−3−リン酸デヒドロゲナーゼの活性を高めトリアシルグリセロール蓄積量を増加させた。
GPDHは、コントロールの無処理群(Basal)は、ほとんど活性が無く、インスリン添加により活性は上昇する。強力な分化促進剤として一般的なデキサメタゾン、3−イソブチル−1−メチルキサンチン、インスリンの混合物は、非常に活性を高めたが本発明品は、それに匹敵するあるいは、それ以上に酵素活性を高めた。また、トリアシルグリセロール蓄積量もGPDH活性と同様の傾向を示し、本発明品は、脂肪細胞の分化を促進した。
リポプロテインリパーゼは、脂肪細胞内ではなく血液中の中性脂肪を分解する酵素であるが、この様に脂肪細胞は他の組織の代謝に多大な影響を与える。本発明品はこの酵素の活性も高めることから、脂肪組織およびその他の組織の代謝も促進することがわかった。
また本発明品は、グルコース取り込み量を上昇させるが、取り込み量測定前のインスリン処理により取り込み量が非常に高まることからインスリン感受性の上昇がうかがえた。
【0026】
脂肪組織は、エネルギーを中性脂肪として貯えるエネルギー貯蔵臓器としてのイメージが強いため、非活発な臓器と考えられがちであるが、実際は中性脂肪の合成、分解を行い、又種々の生理活性物質を分泌する代謝的に活発な臓器である。
そして、この脂肪組織が正常に機能しないと、インスリン抵抗性を示し、組織における糖の取り込みが低下する糖尿病のように、全身における代謝が円滑に行われなくなる。
脂肪組織はインスリンの重要な標的細胞であり、全身でのインスリン作用が正常に働くためには、正常な脂肪細胞が必要である。
本実験で用いた3T3L1前駆脂肪細胞のように、未分化でGPDH、LPL等の酵素の活性がほとんど検出されず、またインスリン等のホルモンに対する感受性を持っていない糖、脂質代謝活性が低い前駆脂肪細胞は実際の生体内にも多数存在する。チアゾリジン誘導体の様な糖尿病治療薬が、脂肪細胞への分化促進作用を有することは周知のことであるが、本発明品も同様の作用を有する。
本発明品は代謝活性の低い前駆脂肪細胞を正常な脂肪細胞へ分化させ、インスリンに対する感受性を高めることにより、生体内において糖、脂質代謝を活発にすると考えられる。
【0027】
【実施例】
(実施例1)
玄米を粉砕機にかけ、玄米の粉砕物500gを得た。この粉砕物に澱粉分解酵素10gと水1500mlを添加した。その後、徐々に温度を上げていき、5分間煮沸抽出した後、冷却した。その後、圧搾、濾過し、本発明品1420mlと残渣560gを得た。
(実施例2)
白米を粉砕機にかけ、白米の粉砕物500gを得た。この粉砕物に蛋白分解酵素2g、脂肪分解酵素2g、繊維分解酵素2g、澱粉分解酵素2gと水1500mlを加え、50℃で5時間放置し、煮沸後冷却した。その後、圧搾、濾過し、本発明品1420mlと残渣560gを得た。
【0028】
(実施例3)
実施例1と同様にして、米の抽出物2000gを得た。この抽出物に麹、酵母を添加し、16日間アルコール発酵した。その後、圧搾、濾過し、本発明品1880mlと残渣80gを得た。
(実施例4)
実施例1で得られた本発明品2000mlに、糖化酵素2gを加え、15時間反応させた後、煮沸殺菌した後、37℃まで冷却し、前もって乳酸菌を培養したスターター200mlを添加後、よく撹伴密封し、37℃で2日間乳酸発酵を行った。その後、圧搾、濾過し、本発明品1380mlと残渣590gを得た。
【0029】
(実施例5)
実施例1で得られた本発明品1000mlに95%エタノール80mlを添加し、20日間酢酸発酵を行った。その後、濾過をし、本発明品990mlを得た。
(実施例6)
実施例1で得られた本発明品2000mlに、糖化酵素3gを加え、15時間反応させた後、酵母を添加し、24時間通気発酵し、除糖した。その後、濾過し、本発明品1890mlを得た。
【0030】
(実施例7)
インディカ米の白米を粉砕機にかけ、インディカ米の白米の粉砕物500gを得た。この粉砕物に水1500mlを添加、HClでpHを落とし、10日間放置した。その後、圧搾、濾過し、本発明品1200mlと残渣760gを得た。
(実施例8)
白糠500gに2N−NaOH1500mlを添加して5日間放置した。その後、圧搾、濾過し、清澄液1300mlと残渣700gを得た。この清澄液を10N−HClで中和して、本発明品1580mlを得た。
【0031】
(実施例9)
もち米の白米を粉砕機にかけ、もち米の白米の粉砕物500gを得た。この粉砕物に40%エタノール1500ml添加して、5日間放置した。その後、圧搾、濾過し、清澄液1300mlと残渣650gを得た。この清澄液に水2000mlを添加し、ロータリーエバポレーターで濃縮し、本発明品1500mlを得た。
(実施例10)
インディカ米500gに澱粉分解酵素10gと水1500mlを添加した。その後、徐々に温度を上げていき、5分間煮沸抽出した後、冷却した。その後、圧搾、濾過し、本発明品1500mlと残渣470gを得た。
【0032】
(実施例11)
白糠500gに蛋白分解酵素2g、脂肪分解酵素2g、繊維分解酵素2g、澱粉分解酵素2gと水1500mlを加え、50℃で5時間放置し、煮沸後冷却した。その後、圧搾、濾過し、本発明品1480mlと残渣500gを得た。
(実施例12)
実施例10と同様にして、米の抽出物2000gを得た。この抽出物に麹、酵母を添加し、16日間アルコール発酵した。その後、圧搾、濾過し、本発明品1860mlと残渣80gを得た。
【0033】
(実施例13)
実施例10で得られた本発明品2000mlに、糖化酵素2gを加え、15時間反応させた後、煮沸殺菌した後、37℃まで冷却し、前もって乳酸菌を培養したスターター200mlを添加後、よく撹伴密封し、37℃で3日間乳酸発酵を行った。その後、圧搾、濾過し、本発明品1370mlと残渣600gを得た。
(実施例14)
実施例10で得られた本発明品1000mlに95%エタノール80mlを添加し、20日間酢酸発酵を行った。その後、濾過をし、本発明品970mlを得た。
【0034】
(実施例15)
実施例10で得られた本発明品2000mlに、糖化酵素1gを加え、15時間反応させた後、酵母を添加し、24時間通気発酵し、除糖した。その後、濾過し、本発明品1900mlを得た。
(実施例16)
もち米500gに水1500mlを添加、NaOHでpHを上げ、10日間放置した。その後、圧搾、濾過し、得られた清澄液を中和して本発明品1250m1と残渣710gを得た。
【0035】
(実施例17)
ジャポニカ米500gに2N−HCl1500mlを添加して5日間放置した。その後、圧搾、濾過し、清澄液1350mlと残渣650gを得た。この清澄液を10N−NaOHで中和して、本発明品1560mlを得た。
以上の実施例で得た本発明品は、適宜の形態に調整して試用されるが、本発明品を配合する場合の実施例について、次に記載する。なお、配合例は以下の実施例に限定されるものではない。
【0036】
(実施例18)錠剤
実施例10で得られた本発明品100gをフリーズドライにより乾燥し、20gの乾燥品を得た。この乾燥品10gを下記のようにして錠剤を得た。
本発明品 10.0g
ポリエチレングリコール6000 10.0g
ラウリル硫酸ナトリウム 1.5g
コーンスターチ 3.0g
乳糖 25.0g
ステアリン酸マグネシウム 0.5g
上記成分を表量した後、ポリエチレングリコール6000を70〜80℃に加温し、これに本発明品、ラウリル硫酸ナトリウム、コーンスターチおよび乳糖を加え混合後、そのまま冷却する。固化した混合物を粉砕機にかけ造粒する。本顆粒をステアリン酸マグネシウムと混合後、圧縮打錠して重量250mgの錠剤とする。
【0037】
(実施例19)清涼飲料
実施例2で得られた本発明品 15.0 %(重量比)
甘草エキス 0.01 %
砂糖 4.0 %
精製水 78.49%
レモン果汁 2.5 %
以上の配合材料を常法により混合溶解し、清涼飲料水を得た。
【0038】
(実施例20)粉体
実施例10で得られた本発明品10 と6Kgのデキストリンを混合し、その混合物をスプレードライにより乾燥し、7Kgの粉体を得た。
【0039】
【発明の効果】
本発明によれば、食事療法や運動療法、薬物療法によらず、簡単で安全にインスリン感受性上昇、糖・脂質代謝活性促進療効果を発揮する糖尿病予防・治療剤が得られる。
米は主食であったため、食以外の新規な分野での製法、利用用途はほとんど開発されていなかった。さらに、米は今まで主食として、またその他の食品原料として食されてきたものであり、安全性も充分に実証されているものである。すなわち、本発明は非常に優れた糖尿病予防・治療剤を見いだしたばかりでなく、米の新たな利用用途を見いだしたこと、および米のイメージアップによる消費拡大を図り得ることは極めて有意義なことである。

Claims (3)

  1. 玄米、白米または米白糠の水抽出物の処理物であって、該処理が澱粉分解酵素を作用させる処理である処理物(ただし、乳酸発酵処理物及び酢酸発酵処理物を除く)を含有してなる糖尿病予防・治療剤。
  2. 玄米、白米、または米白糠に、その量の1〜100倍量の水を加え、澱粉分解酵素を作用させた後、40℃ないし沸騰する温度までその混合物を加熱することからなる糖尿病予防・治療剤の製法(ただし、乳酸発酵による処理工程及び酢酸発酵による処理工程を含まない)
  3. 玄米、白米、または米白糠に、その量の1〜100倍量の水を加え、澱粉分解酵素を作用させた後、40℃ないし沸騰する温度までその混合物を加熱し、ついでアルコール発酵、または酵母通気発酵を行うことからなる、請求項記載の糖尿病予防・治療剤の製法。
JP12005797A 1997-04-02 1997-04-02 米からの糖尿病予防・治療剤 Expired - Lifetime JP4838920B2 (ja)

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