JP4837543B2 - 染色された繊維の色調安定化方法 - Google Patents

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本発明は、色調の安定化を目的とした染色された繊維の色調安定化方法に関する。
一般に、酸化染料、アンモニア等を含有する染色キャリア物質と過酸化水素等の酸化剤から構成される繊維(例えば、毛髪)を染色する染毛剤組成物が知られている。かかる酸化染料を含有する染毛剤組成物により染色された繊維は直接染料を含有する半永久的染毛剤に比べて色調は比較的安定である。しかしながら、特に毛髪に適用された場合には、日常のシャンプー等による色落ちや空気酸化等により時間の経過と共に少しずつ変色するという問題が生じている。そこで、従来より特許文献1に記載されるような繊維の色調安定化を目的とした繊維処理剤組成物が知られている。かかる繊維処理剤組成物は酸化染毛剤による染毛処理後の繊維に適用され、有効成分として配合されるカチオン化ポリマーが色安定性をもたらす。
特開2002−154933号公報
ところが、上記従来の繊維処理剤組成物において、有効成分として配合されるカチオン化ポリマーのみでは色調安定性の向上効果は未だ不十分であるという問題が生じていた。その一方、色調安定性向上のために単にカチオン化ポリマーを大量に配合するとごわつき等の感触の低下を招いた。
本発明は、本発明者らの鋭意研究の結果、酸化染料がアミノ基を有する主要中間体を含んでなる場合において、繊維処理剤組成物に還元糖を配合することにより上記課題が解決されることを見出したことによりなされたものである。その目的とするところは、酸化染毛剤により染色された繊維に適用される繊維処理剤組成物を用いて、色調の安定性を向上させることができる染色された繊維の色調安定化方法を提供することにある。
上記の目的を達成するために、請求項1に記載の発明の染色された繊維の色調安定化方法は、アミノ基を有する主要中間体を含んでなる酸化染料により繊維を染色する工程、次に(A)還元糖を含有する繊維処理剤組成物を用いて前記繊維を処理する工程を含む
請求項2記載の発明は、請求項1記載の染色された繊維の色調安定化方法において、(A)還元糖は単糖類である。
請求項3記載の発明は、請求項2記載の染色された繊維の色調安定化方法において、前記単糖類はキシロースである。
請求項4記載の発明は、請求項1から請求項3のいずれか一項記載の染色された繊維の色調安定化方法において、前記繊維処理剤組成物は、さらに(B)カチオン化ポリマーを含有する。
請求項5記載の発明は、請求項4記載の染色された繊維の色調安定化方法において、前記繊維処理剤組成物中における前記(B)カチオン化ポリマーに対する前記キシロースの質量比は1〜50である。
本発明によれば、酸化染毛剤により染色された毛髪に適用される繊維処理剤組成物を用いて、色調の安定性を向上させることができる。
以下、本発明の繊維処理剤組成物を毛髪処理剤組成物に具体化した実施形態について詳細に説明する。
本実施形態の毛髪処理剤組成物は、(A)成分として還元糖が配合される。また、(B)成分としてカチオン化ポリマーが配合されることが好ましい。本実施形態の毛髪処理剤組成物は、アミノ基を有する主要中間体を含んでなる酸化染料により染色された毛髪に対して適用される。
(A)成分である還元糖は、酸化染料により染色された毛髪に対し、色調の安定性向上効果を付与するために配合される。還元糖とは遊離又はヘミアセタール結合したアルデヒド基又はケトン基をもつ糖であり、アミノ酸又はタンパク質等のアミノ基とメイラード反応性を有する糖である。(A)還元糖として、遊離の単糖類、還元性二糖類、還元性オリゴ糖が挙げられる。遊離の単糖類として、グリセルアルデヒド及びジヒドロキシアセトン等のトリオース類、エリスロース等のテトロース類、リボース、キシロース、アラビノース等のペントース類、グルコース、ガラクトース、マンノース、フルクトース等のヘキソース類、セドヘプツロース等のヘプトース類等が挙げられる。還元性二糖類として、マルトース、セロビオース、イソマルトース、ゲンチオビオース等のホモビオース、及びメリビオース、ラクトース、マルツロース、ラクツロース等のヘテロビオースが挙げられる。還元性オリゴ糖として、デンプンやグリコーゲンのα−アミラーゼ分解物であるマルトトリオース等が挙げられる。これらの(A)還元糖は、単独で配合してもよく、二種以上を組み合わせて配合してもよい。これらの(A)還元糖の中でも、色調の安定性効果が優れるとともに単位質量当たりの還元力が高い遊離の単糖類が好ましく、入手の容易性からキシロースがより好ましい。
(A)還元糖の毛髪処理剤組成物中における配合量は、構成糖残基又は単位質量当たりの還元力を測定することによって決定され、キシロース等のペントース類の場合では0.5〜30質量%、好ましくは1〜20質量%、より好ましくは2〜10質量%である。この含有量が0.5質量%未満であると、毛髪処理後の色調の安定性向上効果を十分に付与することができないおそれがある。一方、この含有量が30質量%を超えて配合されると、べたつき等の毛髪の感触が低下するおそれがある。
(B)成分であるカチオン化ポリマーは、酸化染料により染色された毛髪に対し、(A)還元糖との相乗効果による色安定性を向上させるとともに毛髪の感触を向上させるために配合されることが好ましい。このカチオン化ポリマーは、ポリマー鎖に結合したアミノ基又はアンモニウム基を含むか、あるいは少なくともジメチルジアリルアンモニウムハライドを構成単位として含む水溶性のポリマーを示す。
カチオン化ポリマーの具体例としては、カチオン性澱粉、カチオン化セルロース誘導体、カチオン化グアーガム誘導体、ジメチルジアリル4級アンモニウム塩誘導体、ジメチルジアリル4級アンモニウム塩・アクリルアミド共重合体、4級化ポリビニルピロリドン誘導体等が挙げられる。
カチオン化セルロース誘導体としては、塩化o−[2−ヒドロキシ−3−(トリメチルアンモニオ)プロピル]ヒドロキシエチルセルロースが挙げられ、その市販品としてはライオン(株)製のレオガード(商品名)G、同GP、ユニオンカーバイド社製のポリマーJR−125、同JR−400、同JR−30M、同LR−400、同LR−30M等が挙げられる。さらに、カチオン化セルロース誘導体としては、ヒドロキシエチルセルロースジメチルジアリルアンモニウムクロリドが挙げられ、その市販品としてはナショナルスターチアンドケミカル社製のセルコート(商品名)H−100、同L−200等が挙げられる。
カチオン化グアーガム誘導体としては、市販品としてはローヌ・プーラン社製のジャガー(商品名)C−13S、同C−14S、同C−17、同C−210、同C−162、HI−CARE1000が挙げられる。ジメチルジアリル4級アンモニウム塩重合体としては、ポリ塩化ジメチルメチレンピペリジニウム等が挙げられ、その市販品としてはオンデオ・ナルコ社製のマーコート(商品名)100等が挙げられる。ジメチルジアリル4級アンモニウム塩・アクリルアミド共重合体としては、塩化ジメチルジアリルアンモニウム・アクリルアミド共重合体等が挙げられ、ジメチルジアリル4級アンモニウム塩・アクリルアミド共重合体の市販品としては、オンデオ・ナルコ社製のマーコート(商品名)550等が挙げられる。4級化ポリビニルピロリドン誘導体としては、ビニルピロリドン・N,N−ジメチルアミノエチルメタクリル酸共重合体ジエチル硫酸塩等が挙げられ、その市販品としては、アイエスピー・ジャパン(株)製のガフコート(商品名)734、同755、同755N等が挙げられる。4級化ポリビニルピロリドン誘導体の中でも、毛髪への付着性が良好であるととともに、毛髪の感触を良好に維持するという観点から、分子量1万〜200万のものが好ましい。
その他のカチオン化ポリマーとしては、塩化メタクリル酸エステル重合体類が挙げられ、具体的には2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン重合体、2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン重合体、2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン・メタクリル酸ブチル共重合体、2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン・2−ヒドロキシ−3−メタクリロイルオキシプロピルトリメチルアンモニウムクロリド共重合体、塩化メタクリル酸コリン重合体等が挙げられる。塩化メタクリル酸エステル重合体類を含有する市販品としては、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製のサルケア(商品名)SC95、同SC96、日本油脂(株)製のリピジュア(商品名)HM、PMB、C等が挙げられる。これらのカチオン化ポリマーは単独で配合してもよく、二種以上を組み合わせて配合してもよい。
カチオン化ポリマーの配合量は0.01〜30質量%であり、好ましくは0.01〜10質量%、より好ましくは0.05〜5質量%である。この含有量が0.05質量%未満であると、(A)還元糖との色安定性の向上効果を得ることができないおそれがある。一方、この含有量が30質量%を超えて配合されると、ごわつき等の毛髪の感触が低下するおそれがある。また、上記(A)成分及び(B)成分との相乗効果による優れた色安定性の向上効果を得るためには、毛髪処理剤組成物中における(B)カチオン化ポリマーと(A)還元糖(キシロースの場合)との配合比が1:1〜50((B)カチオン化ポリマーに対する前記(A)還元糖(キシロースの場合)の質量比が1〜50)であることが好ましく、1:2〜20であることがより好ましい。かかる配合比は構成糖残基又は単位質量当たりの還元力を測定することによって決定される。
毛髪処理剤組成物には、その他の成分として、水、油性成分、多価アルコール、界面活性剤、pH調整剤、毛髪浸透剤等を配合することができる。
水は、溶媒又は分散媒として配合され、各成分の濃度が調整される。
油性成分は、毛髪にうるおい感を付与するという観点から、配合されることが好ましい。油性成分としては、油脂、ロウ類、高級アルコール、高級脂肪酸、アルキルグリセリルエーテル、エステル類、シリコーン類、炭化水素等が挙げられる。
油脂としては、オリーブ油、ローズヒップ油、ツバキ油、シア脂、マカデミアナッツ油、アーモンド油、茶実油、サザンカ油、サフラワー油、ヒマワリ油、大豆油、綿実油、ゴマ油、牛脂、カカオ脂、トウモロコシ油、落花生油、ナタネ油、コメヌカ油、コメ胚芽油、小麦胚芽油、ハトムギ油、ブドウ種子油、アボカド油、カロット油、マカダミアナッツ油、ヒマシ油、アマニ油、ヤシ油、ミンク油、卵黄油等が挙げられる。ロウ類としては、ミツロウ、キャンデリラロウ、カルナウバロウ、ホホバ油、ラノリン等が挙げられる。
高級アルコールとしては、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール(セタノール)、ステアリルアルコール、セトステアリルアルコール、アラキルアルコール、ベヘニルアルコール、2−ヘキシルデカノール、イソステアリルアルコール、2−オクチルドデカノール、デシルテトラデカノール、オレイルアルコール、リノレイルアルコール、リノレニルアルコール、ラノリンアルコール等が挙げられる。高級脂肪酸としては、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘニン酸、イソステアリン酸、ヒドロキシステアリン酸、12−ヒドロキシステアリン酸、オレイン酸、ウンデシレン酸、リノール酸、リシノール酸、ラノリン脂肪酸等が挙げられる。
アルキルグリセリルエーテルとしては、バチルアルコール(モノステアリルグリセリルエーテル)、キミルアルコール(モノセチルグリセリルエーテル)、セラキルアルコール(モノオレイルグリセリルエーテル)、イソステアリルグリセリルエーテル等が挙げられる。
エステル類としては、アジピン酸ジイソプロピル、アジピン酸ジイソブチル、アジピン酸ジオクチル、アジピン酸−2−ヘキシルデシル、アジピン酸ジイソステアリル、ミリスチン酸イソプロピル、オクタン酸セチル、イソオクタン酸セチル、イソノナン酸イソノニル、イソノナン酸イソデシル、イソノナン酸イソトリデシル、セバシン酸ジイソプロピル、ミリスチン酸オクチルドデシル、パルミチン酸イソプロピル、ステアリン酸ブチル、ステアリン酸ステアリル、ラウリン酸ヘキシル、ミリスチン酸ミリスチル、オレイン酸デシル、ジメチルオクタン酸ヘキシルデシル、ミリスチン酸トリイソデシル、ミリスチン酸イソステアリル、パルミチン酸2−エチルへキシル、リシノール酸オクチルドデシル、脂肪酸(C10−30)(コレステリル/ラノステリル)、乳酸ラウリル、乳酸セチル、乳酸ミリスチル、乳酸オクチルドデシル、酢酸ラノリン、ステアリン酸イソセチル、イソステアリン酸イソセチル、12−ヒドロキシステアリン酸コレステリル、ジ−2−エチルヘキサン酸エチレングリコール、ジペンタエリスリトール脂肪酸エステル、モノイソステアリン酸N−アルキルグリコール、カプリン酸セチル、トリカプリル酸グリセリル、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、リンゴ酸ジイソステアリル、ラノリン誘導体等が挙げられる。
シリコーン類としては、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、脂肪酸変性ポリシロキサン、アルコール変性シリコーン、脂肪族アルコール変性ポリシロキサン、ポリエーテル変性シリコーン、エポキシ変性シリコーン、フッ素変性シリコーン、環状シリコーン、アルキル変性シリコーン等が挙げられる。アミノ変性シリコーンは従来より染料により染色された毛髪に対し、退色防止効果と感触の向上効果に優れる(耐シャンプー性に優れる)ことが知られている。しかしながら、本願発明の必須成分である(A)還元糖(特に、キシロース)の色調の安定性向上効果を阻害するとともに液剤が変色するおそれがあるため併用されないことが好ましい。
炭化水素としては、α−オレフィンオリゴマー、軽質イソパラフィン、軽質流動イソパラフィン、流動イソパラフィン、流動パラフィン、スクワラン、ポリブテン、パラフィン、ポリエチレン末、マイクロクリスタリンワックス、ワセリン等が挙げられる。これらの油性成分は単独で配合してもよく、二種以上を組み合わせて配合してもよい。
多価アルコールとしては、グリコール類、グリセリン類等が挙げられる。グリコール類としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、イソプレングリコール、1,3−ブチレングリコール等が挙げられる。グリセリン類としては、グリセリン、ジグリセリン、ポリグリセリン等が挙げられる。
界面活性剤は、乳化剤又は可溶化剤として液剤の安定性を保持するために配合される。界面活性剤としては、非イオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤及び両性界面活性剤が挙げられる。
非イオン性界面活性剤の具体例としては、ポリオキシエチレン(以下、POEという)アルキルエーテル類、POEアルキルフェニルエーテル類、POE・ポリオキシプロピレンアルキルエーテル類、POEソルビタン脂肪酸エステル類、POEプロピレングリコール脂肪酸エステル、脂肪族アルカノールアミド類等が挙げられる。
カチオン性界面活性剤としては、塩化ラウリルトリメチルアンモニウム、塩化セチルトリメチルアンモニウム、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化ベヘニルトリメチルアンモニウム、塩化ジステアリルジメチルアンモニウム、臭化セチルトリメチルアンモニウム、臭化ステアリルトリメチルアンモニウム、メチル硫酸ベヘニルトリメチルアンモニウム、ステアリルトリメチルアンモニウムサッカリン、セチルトリメチルアンモニウムサッカリン等が挙げられる。
アニオン性界面活性剤としては、ラウリル硫酸ナトリウム等のアルキル硫酸塩、POEラウリルエーテル硫酸ナトリウム等のPOEアルキル硫酸塩、ラウリル硫酸トリエタノールアミン等のアルキル硫酸エステル塩、ステアロイルメチルタウリンナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸トリエタノールアミン、テトラデセンスルホン酸ナトリウム、POEラウリルエーテルリン酸及びその塩、N−ラウロイルグルタミン酸塩類、N−ラウロイルメチル−β−アラニン塩類等が挙げられる。
両性界面活性剤としては、2−ウンデシル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタインナトリウム、ココアミドプロピルベタイン、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン等が挙げられる。
pH調整剤としては、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、乳酸、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール等が挙げられる。
毛髪浸透剤は、(A)還元糖等の有効成分の毛髪への浸透性を向上させるために配合されることが好ましい。毛髪浸透剤としては、エタノール、イソプロパノール等の低級アルコール、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、イソプロピレングリコール、ヘキシレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のグリコール類、グリセリン、ジグリセリン等のグリセリン、ベンジルアルコール、ベンジルオキシエタノール等の芳香族アルコールが挙げられる。その他にエチルカルビトール、フェネチルアルコール、N−メチルピロリドン、N−エチルピロリドン、エチルカーボネート、プロピレンカーボネート等が挙げられる。
更に、その他の成分としてはカルボキシビニルポリマー等のアニオン性ポリマー、ジアリル4級アンモニウム塩/アクリル酸共重合体等の両性ポリマー等の水溶性ポリマー、メチルパラベン、フェノキシエタノール等の防腐剤、セラミド類、ビタミン類、PPT類、キレート剤、香料等を配合することができる。
毛髪処理剤組成物は、液状、ミスト状、ゲル状、フォーム状、クリーム状等の形状にすることが可能である。この毛髪処理剤組成物は、シャンプー、リンス、トリートメント、整髪剤等のヘアケア剤に適用してもよい。この毛髪処理剤組成物は、毛髪に適用した後に水や温水で洗い流して使用してもよく、毛髪に付着した同組成物を水や温水で洗い流さないで使用してもよい。
本願発明の毛髪処理剤組成物は、アミノ基を有する主要中間体を含んでなる酸化染毛剤組成物により染色された毛髪に対し適用される。次に、本実施形態で使用される染毛剤組成物について説明する。
本実施形態で使用される染毛剤組成物は、染毛剤第1剤(以下、染毛第1剤という)と染毛剤第2剤(以下、染毛第2剤という)とよりなる。染毛第1剤には、酸化染料、アルカリ剤等が含有される。染毛第2剤は酸化剤等が含有される。
<染毛第1剤>
酸化染料は、染毛第2剤に配合される酸化剤による酸化重合によって発色可能な化合物を示し、具体的には、主要中間体及びカプラーに分類される。主要中間体は、アミノ基を有する化合物が使用される。かかる主要中間体のアミノ基と(A)還元糖のアルデヒド基又はケト基が反応することにより(メイラード反応)、酸化染料化合物同士の結合は抑制される。染毛剤組成物と毛髪処理剤組成物による毛髪処理において、毛髪中に単量体の形で残存する酸化染料の重合及びかかる重合に由来する発色(変色)が防止される。
アミノ基を有する主要中間体の具体例としては、p−フェニレンジアミン、トルエン−2,5−ジアミン、N−フェニル−p−フェニレンジアミン、4,4' −ジアミノジフェニルアミン、p−アミノフェノール、o−アミノフェノール、p−メチルアミノフェノール、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−p−フェニレンジアミン、2−ヒドロキシエチル−p−フェニレンジアミン、o−クロル−p−フェニレンジアミン、4−アミノ−m−クレゾール、2−アミノ−4−ヒドロキシエチルアミノアニソール、2,4−ジアミノフェノール及びそれらの塩類から選ばれる少なくとも一種が好ましい。これらの主要中間体は単独で配合してもよいし、二種以上を組み合わせて配合してもよい。
カプラーとしては、5−アミノ−o−クレゾール、m−アミノフェノール、5−(2−ヒドロキシエチルアミノ)−2−メチルフェノール、m−フェニレンジアミン、2,4−ジアミノフェノキシエタノール、トルエン−3,4−ジアミン、2,6−ジアミノピリジン、ジフェニルアミン、N,N−ジエチル−m−アミノフェノール、フェニルメチルピラゾロン及びそれらの塩類から選ばれる少なくとも一種が好ましい。これらのカプラーは単独で配合してもよいし、二種以上を組み合わせて配合してもよい。
この酸化染料は、様々な色調に変化させることができることから、主要中間体から選ばれる少なくとも一種及びカプラーから選ばれる少なくとも一種から構成されることが好ましい。
染毛混合物中における酸化染料の含有量は、好ましくは0.02〜25質量%、より好ましくは0.2〜15質量%である。この含有量が0.02質量%未満であると、十分な染色性が得られないおそれがある。一方、25質量%を超えて配合しても、染色性は向上せず経済的ではない。
染毛混合物中における主要中間体の含有量は、好ましくは0.01〜15質量%、より好ましくは0.1〜10質量%である。この含有量が0.01質量%未満であると、十分な染色性が得られないおそれがある。一方、15質量%を超えて配合しても、染色性は向上せず経済的ではない。
染毛混合物中におけるカプラーの含有量は、好ましくは0.01〜10質量%、より好ましくは0.1〜5質量%である。この含有量が0.01質量%未満であると、十分な染色性が得られないおそれがある。一方、10質量%を超えて配合しても、染色性は向上せず経済的ではない。
その他、「医薬部外品原料規格」(1991年6月発行、薬事日報社)に収載された酸化染料及び酸化染料以外の染料として直接染料等を適宜、配合することもできる。
アルカリ剤は、染毛第2剤に配合される酸化剤の作用を促進するとともに、毛髪を膨潤させることにより毛髪に対する染料の浸透性を向上させ、染色性を向上させるために配合される。アルカリ剤の具体例としては、アンモニア、アルカノールアミン、アンモニウム塩、有機アミン類(2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオール、グアニジン等)、無機アルカリ(水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等)、塩基性アミノ酸(アルギニン、リジン等)及びそれらの塩等が挙げられる。
これらのアルカリ剤は単独で配合してもよいし、二種以上を組み合わせて配合してもよい。このアルカリ剤の配合量は、染毛第1剤のpHが8〜12の範囲となる量に設定することが好ましい。染毛第1剤のpHが8未満では、染毛第1剤を染毛第2剤と混合したときに過酸化水素の作用を十分に促進することができない場合がある。一方、pHが12を超えると、染毛混合物を毛髪に施したとき毛髪に損傷等の不具合が発生しやすい。
この染毛第1剤には、上記毛髪処理剤組成物に記載の油性成分、界面活性剤等のその他の成分を適宜配合することができる。この染毛第1剤の剤型は、水溶液、分散液、乳化液等の液状、ゲル状、フォーム状、クリーム状等特に限定されない。
<染毛第2剤>
この染毛第2剤には酸化剤が含有される。また、この染毛第2剤にはその他の成分として酸化染毛剤の染毛第2剤に通常用いられる成分が含有される。
酸化剤は、毛髪に含まれるメラニンを脱色すると共に、染毛第1剤に配合される酸化染料を酸化して発色させるために配合される。酸化剤は、臭素酸カリウム、臭素酸ナトリウム、過ホウ酸ナトリウムおよび過酸化水素等が挙げられる。その配合量は、染毛第2剤全量を100質量%として、好ましくは0.1〜15.0質量%である。
この染毛第2剤には、上記染毛第1剤に記載のその他の成分を適宜配合することができる。また、酸化剤として過酸化水素を配合した場合、過酸化水素の分解を抑制するために、安定化剤を配合することが好ましい。安定化剤の具体例としては、尿素、フェナセチン、スズ酸ナトリウム、エチレングリコールフェニルエーテル、8−オキシキノリン、リン酸等が挙げられる。
この染毛第2剤の剤型は、水溶液、分散液、乳化液等の液状、ゲル状、フォーム状、クリーム状等特に限定されない。
<染毛混合物>
染毛剤組成物を使用する際に、上記の染毛第1剤及び染毛第2剤を所定の割合で混合調製することによって染毛混合物を得ることができる。この染毛混合物の剤型は、液状、クリーム状、ゲル状、フォーム状等特に限定されない。かかる染毛混合物が毛髪に塗布されることにより、染毛処理が施される。
次に、上記のように構成された本実施形態の毛髪処理剤組成物の作用を説明する。
本実施形態の毛髪処理剤組成物はアミノ基を有する主要中間体を含んでなる酸化染料の酸化重合により生成した多核化合物の発色により染色された毛髪に適用される。まず、酸化染料の酸化重合により生成した多核化合物の発色により染色された毛髪に対し、上記毛髪処理剤組成物が刷毛、櫛等の塗布具を用い塗布される。毛髪処理後、染毛剤組成物由来の酸化染料のうち単量体として毛髪に残留する酸化染料は毛髪処理剤組成物中に配合される(A)還元糖によって空気酸化による酸化重合(変色)が抑制される。
以上の本実施形態によって発揮される効果について、以下に記載する。
(1)本実施形態では、アミノ基を有する主要中間体を含んでなる酸化染料により染色された毛髪に対し適用される毛髪処理剤組成物において、(A)還元糖を配合した。したがって、酸化染料により染色された毛髪の色調の安定性を向上させることができる。
(2)本実施形態において、(A)還元糖として単糖類を用いた場合、還元性二糖類や還元性オリゴ糖を使用する場合と比較して、構成糖残基当たりの還元力が高いため少量で本発明の効果を発揮することができる。例えば、還元性二糖類であるマルトースは構成糖である二分子のグルコースのうち一分子の還元基は結合に使用されているため、還元性を有する残基は一つのみである。そのため単糖類であるグルコースと比較して構成糖残基当たりの還元力は約半分となる。マルトースにおいて、単糖類であるグルコースと同等の還元力を得ようとする場合、グルコースの約2倍量(質量%)必要となる。
(3)本実施形態において、(A)還元糖としてキシロースを用いた場合、ヘキソース類やヘプトース類と比較して単位質量当たりの還元力が優れるため、少量で本発明の効果を発揮することができる。また、キシロースは他の単糖類と比較して安価であるとともに入手が容易である。
(4)本実施形態では、さらに(B)成分としてカチオン化ポリマーを配合した。したがって、(A)還元糖との相乗効果により色調安定性の更なる向上を図ることができるとともに同時に処理後の毛髪の感触を向上させることができる。
(5)また、それにより(A)還元糖の作用を阻害するおそれのある退色防止効果及び感触向上効果の優れるアミノ変性シリコーンを併用する必要がない。そのため、(A)還元糖とアミノ変性シリコーンとの併用による液剤の変色を防止することができる。
(6)本実施形態において配合される(A)還元糖と(B)カチオン化ポリマーは毛髪損傷修復効果を有する。したがって、本実施形態の毛髪処理剤組成物を適用した後に染毛処理を行なう場合、染毛処理において毛髪の先端と根元部分の均染性を向上させることができる。つまり、毛髪は先端ほど損傷を受けやすく、かかる損傷を受けた部位は染料が結合しやすいアニオン性に変化している。上記(A)成分と(B)成分によりかかる損傷部分は修復されるため、染毛処理における均染性が向上する。
(7)本実施形態においては、色調安定性向上のために単独でカチオン化ポリマーを大量に配合する必要がないため、カチオン化ポリマーの大量配合に伴うごわつき等の感触の低下を抑制することができる。
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
・上記実施形態では、繊維処理剤組成物を毛髪処理剤組成物として適用した。しかしながら、毛髪以外の人毛、羊毛、羽毛等の酸化染料によって染色され得るその他の繊維に適用してもよい。かかる場合にも色調の安定性の向上を図ることができる。
上記実施形態において、毛髪処理剤組成物に配合される各成分を分割し、複数剤型として構成してもよい。
・上記実施形態において、染毛剤組成物を染毛第1剤及び染毛第2剤として構成し、使用直前に混合する構成とした。しかしながら、さらに染毛第1剤及び染毛第2剤を構成する各成分を分離して3剤式以上に構成してもよい。例えば、酸化染料を配合する染毛第1剤、アルカリ剤を配合する染毛第2剤及び酸化剤を配合する染毛第3剤からなる染毛剤組成物が挙げられる。かかる構成において、酸化染料をアルカリ剤が配合される染毛第2剤とは別に構成したことにより、酸化染料の保存安定性を高めることができる。また、染毛剤組成物を構成する各成分を使用直前にすべて混合して作成する1剤式として構成してもよい。
次に、実施例及び比較例を挙げて前記実施形態を更に具体的に説明する。
表1に示す各成分を混合して、染毛第1剤及び染毛第2剤を調製することにより、染毛剤組成物としての酸化染毛剤を得た。続いて、それらの染毛第1剤と染毛第2剤を1:1の質量比で混合調製し、染毛混合物を得た。得られた染毛混合物を白髪の人毛毛束(以下、単に毛束という。)に刷毛を用いて塗布し、室温にて30分間放置した。次に、毛束に付着した染毛混合物を水で洗い流した後、シャンプーを2回、リンスを1回施した。
続いて、毛束を温風で乾燥した後、これらの染毛処理が施された毛束について、分光測色計(ミノルタ株式会社製、型番:CM−508d)でL***値(L1、a1及びb1)を測定した。なお、表1における各成分の配合を示す数値の単位は質量%である。
Figure 0004837543
次に、表2に示す各成分を混合することにより各実施例及び比較例の毛髪処理剤組成物を得た。得られた毛髪処理剤組成物を染毛処理後の人毛毛束に刷毛を用いて塗布し、室温にて30分間放置した。次に、ぞれぞれの毛束に付着した毛髪処理剤組成物を水で洗い流した後、温風で乾燥した。
<空気再酸化率>
上記のように毛髪処理剤組成物により処理された毛束について、40℃の恒温槽にて24時間放置した後、上記の分光測色計でL***値(L2、a2及びb2)を測定した。
未処理の毛束、染毛処理を施した毛束及び恒温処理後の毛束におけるL***値から、下記の(1)式によって未処理の毛束と染毛処理を施した毛束の色差(ΔE1)及び未処理の毛束と恒温処理後の毛束の色差(ΔE2)を算出した。
ΔEi={(Li−L02+(ai−a02+(bi−b021/2…(1)
i:染毛処理後の毛束又は恒温処理後の毛束のL*
i:染毛処理後の毛束又は恒温処理後の毛束のa*
i:染毛処理後の毛束又は恒温処理後の毛束のb*
0,a0,b0:未処理の毛束のL*値、a*値及びb*
次に、ΔE1及びΔE2から下記の(2)式によって空気再酸化率[%]を算出した。
空気再酸化率[%]=(ΔE2/ΔE1−1)×100…(2)
空気再酸化率が低い値であるほど、恒温処理において変色が少ないことを示す。各実施例及び各比較例における空気再酸化率の算出結果を表2に示す。
<感触>
各実施例及び比較例の毛髪処理剤組成物により処理された毛束について、5名のパネラーが手で触れることにより、感触が非常に良い場合を4点、良い場合を4点、やや悪い場合を2点、及び悪い場合を1点とする4段階で採点した。5名のパネラーの採点結果について平均点を算出し、その平均点が3.6点以上の場合を「優れる:◎」、2.6点以上3.5点以下の場合を「良好:○」、1.6点以上2.5点以下の場合を「やや悪い:△」、及び1.5点以下の場合を「悪い:×」とし、感触の評価結果とした。それらの評価結果を表2に示す。
<毛髪処理剤組成物の変色>
各実施例及び比較例の毛髪処理剤組成物について、40℃の恒温槽にて7日間保存した後、目視にて混合調整時の組成物と比較して経時的な変色の有無について評価した。それらの評価結果を表2に示す。
Figure 0004837543
表2に示される結果より、還元糖としてキシロース又はグルコースが配合される実施例1〜3は、空気再酸化率が低く維持されることが確認される。つまり、染毛処理後の毛髪について経時的な変色が抑制されることが確認される。また、カチオン化ポリマーとしてポリ塩化ジメチルメチレンピペリジウムを併用することにより、空気再酸化率をさらに低く抑えることができるとともに毛髪の感触を向上させることができることが確認される(実施例2)。一方、比較例1,2の還元糖が併用されない場合、比較例3の還元糖の代わりにトレハロースを使用した場合は、空気再酸化率を低く維持することができないことが確認される。また、参考例1に示されるようにキシロースとアミノ変性シリコーンを併用することにより空気再酸化率が悪化するとともに液剤が経時的に変色することが確認される。
次に、上記実施形態及び別例から把握できる技術的思想について、それらの効果とともに以下に追記する。
(a)前記キシロースを0.5〜30質量%含有する繊維処理剤組成物。(a)の構成によれば、べとつき等の感触悪化を防止しながら色調安定効果を得ることができる。

Claims (5)

  1. アミノ基を有する主要中間体を含んでなる酸化染料により繊維を染色する工程、
    次に(A)還元糖を含有する繊維処理剤組成物を用いて前記繊維を処理する工程を含む染色された繊維の色調安定化方法
  2. 前記(A)還元糖は単糖類である請求項1記載の染色された繊維の色調安定化方法
  3. 前記単糖類はキシロースである請求項2記載の染色された繊維の色調安定化方法
  4. 前記繊維処理剤組成物は、さらに(B)カチオン化ポリマーを含有する請求項1から請求項3のいずれか一項記載の染色された繊維の色調安定化方法
  5. 前記繊維処理剤組成物中における前記(B)カチオン化ポリマーに対する前記キシロースの質量比は1〜50である請求項4記載の染色された繊維の色調安定化方法
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