JP4837172B2 - 吹付工法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、道路、鉄道、及び導水路等のトンネル掘削工事において露出した地山面や地山が露出した法面において、崩落を防止するための吹付工法に関する。尚、本発明でいうセメントコンクリートとは、モルタル及びコンクリートを総称するものをいう。
【0002】
【従来の技術】
従来、トンネル掘削等露出した地山面の崩落を防止するために、エアー圧送又はポンプ圧送されたセメントコンクリートと、エアー圧送された急結剤とを、Y字管等で混合し、急結性セメントコンクリートとして吹付ける吹付工法が行われている。
【0003】
吹付工法に使用される急結剤は大きく分類すると、カルシウムアルミネート等を主成分とする粉体急結剤とアルカリアルミン酸塩や硫酸アルミニウム等を主成分とする液体急結剤の2種類が挙げられる。
【0004】
粉体急結剤と液体急結剤にはそれぞれ特徴があり、その特性は大きく異なる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
粉体急結剤の特性としては、セメントコンクリートと混合した時の凝結促進作用や強度発現性が大きく、湧水部への吹付に大きな効果を示すことが挙げられる。しかしながら、粉体急結剤の急結剤供給装置が大規模で、かつ、圧縮空気を調製し、圧送するコンプレッサー等の装置が別に必要であり、更に、粉体急結剤を空気圧送してセメントコンクリートと混合した時に粉体急結剤の一部が作業空間に粉塵として飛散する等の課題があった。
【0006】
又、液体急結剤の特性としては、急結剤供給装置が簡易であること、セメントコンクリートへの供給に定量性があること、セメントコンクリートとの混合が良好であること、急結性セメントコンクリートの地山への付着力が良好であり、跳ね返り率が少ないこと等が挙げられる。しかしながら、セメントコンクリートと混合した時の凝結促進作用が粉体急結剤と比較して弱く、軟弱な地山や湧水部への吹付に使用できない等の課題があった。
【0007】
本発明者は前記課題を解消すべく種々検討した結果、液体急結剤と粉体急結剤を併用することにより、簡単な設備で吹付でき、凝結性状と強度性状のいずれも向上できる吹付材料を見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
【課題を解決するための手段】
即ち、本発明は、急結剤を含有していないセメントコンクリート、液体急結剤、及び、硫酸アルミニウムを含有してなるアルカリフリー粉体急結剤を圧送、合流して急結性セメントコンクリートを調製し、吹付けることを特徴とする吹付工法であり、さらに、セメント100質量部に対して0.05〜5質量部の減水剤を、急結剤を含有していないセメントコンクリート側に含有してなることを特徴とする該吹付工法であり、液体急結剤の成分濃度が、20〜35%である該吹付工法であり、液体急結剤の使用量が、セメント100質量部に対して、5〜12質量部である該吹付工法であり、液体急結剤の使用量が、セメント100質量部に対して、7〜12質量部である該吹付工法であり、減水剤がポリエチレングリコールであることを特徴とする該吹付工法であり、急結剤を含有していないセメントコンクリート、液体急結剤、及びアルカリフリー粉体急結剤を一括混合して急結性セメントコンクリートとすることを特徴とする該吹付工法であり、急結性セメントコンクリートが細骨材と水を含有してなることを特徴とする該吹付工法であり、急結性セメントコンクリートが粗骨材と水を含有してなることを特徴とする該吹付工法である。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
【0010】
即ち、本発明は、粉末急結剤と液体急結剤を個別に空気圧送し、次いでセメントコンクリートと直ちに合流させて吹付けるものである。液体急結剤の作用により急結性セメントコンクリートの跳ね返り率が少なくなり、粉体急結剤の作用により凝結性状や強度の増大を可能にするものである。
【0011】
本発明に係るセメントとしては、市販されている普通、早強、中庸熱、及び超早強等の各種ポルトランドセメント、並びにこれらのポルトランドセメントにフライアッシュや高炉スラグ等を混合した各種混合セメントが挙げられる。セメントとしては、低跳ね返り率、粉塵量の低減、圧送性、強度発現性、及び施工容易性等、吹付施工に要求される性能に適したセメントを選択できる。これらの中では、安価で一般的な点で、普通ポルトランドセメント及び/又は早強ポルトランドセメントが好ましい。
【0012】
本発明に係る骨材は細骨材と粗骨材のいずれもが使用できる。細骨材としては、天然砂、珪砂、及び石灰砂等が挙げられる。細骨材の最大粒径は2.5mm以下が好ましい。2.5mmを越えると圧送性が低下し、吹付時の跳ね返りが多くなるおそれがある。粗骨材としては、川砂利、山砂利、及び石灰砂利等が挙げられる。粗骨材の最大粒径は5〜15mm以下が好ましい。15mmを越えると吹付時の跳ね返りが多くなるおそれがある。
【0013】
さらに本発明では、セメントコンクリートの流動性を改善するために、減水剤を使用してもよい。
【0014】
本発明に係る減水剤は、液体や粉体いずれも使用できる。
【0015】
減水剤としては、リグニンスルホン酸塩やその誘導体、及び高性能減水剤等が挙げられ、これらの一種又は二種以上が使用できる。これらの中では、凝結遅延効果、流動性、及び圧送性が大きい点で、高性能減水剤が好ましい。
【0016】
高性能減水剤としては、ポリエチレングリコール等のポリオール誘導体、ナフタレンスルホン酸等の芳香族スルホン酸及び/又は芳香族スルホン酸ホルマリン縮合物等の芳香族スルホン酸系高性能減水剤、ポリカルボン酸系高性能減水剤、メラミン系高性能減水剤、及びこれらの混合物等が挙げられる。これらの中では、凝結遅延効果、流動性、及び圧送性が大きい点で、ポリオール誘導体が好ましい。
【0017】
減水剤の使用量は、セメント100質量部に対して、0.05〜5質量部が好ましく、0.1〜3質量部がより好ましい。0.05質量部未満だと流動性改善の効果が小さくなり、粉塵やリバウンドが多くなり、凝結性状が悪くなり、5質量部を越えるとセメントコンクリートが分離するおそれがある。
【0018】
本発明に係る粉体急結剤は、長期強度発現性の点で、アルカリフリー粉体急結剤を使用する。アルカリフリー粉体急結剤はセメントコンクリートに混合できるものであれば特に制限はない。アルカリフリー粉体急結剤としては、カルシウムアルミネート類や硫酸アルミニウム等が挙げられる。アルカリフリー粉体急結剤の中では、凝結硬化が早い点で、カルシウムアルミネート類が好ましく、強度発現性が良好な点で、硫酸アルミニウムが好ましい。
【0019】
尚、本発明で使用するカルシウムアルミネート類とは、カルシアを含む原料と、アルミナを含む原料等とを混合して、キルンでの焼成や、電気炉での溶融等の熱処理をして得られる、CaOとAl2O3 とを主たる成分とし、水和活性を有する物質の総称であり、CaO及び/又はAl2O3の一部が、アルカリ金属酸化物、アルカリ土類金属酸化物、酸化ケイ素、酸化チタン、酸化鉄、アルカリ金属ハロゲン化物、アルカリ土類金属ハロゲン化物、アルカリ金属硫酸塩、及びアルカリ土類金属硫酸塩等と置換した物質、あるいはCaOとAl2O3とを主成分とするものに、これらが少量固溶した物質である。鉱物形態としては、結晶質、非晶質いずれであってもよい。
【0020】
カルシウムアルミネート類の中では、反応活性に優れる点で、C12A7(CはCaOの略、AはAl2O3の略)が好ましく、非晶質のC12A7がより好ましい。
【0021】
カルシウムアルミネート類の粒度は、ブレーン値で3000cm2 /g以上が好ましく、5000cm2 /g以上がより好ましい。3000cm2 /g未満だと初期強度発現性が低下するおそれがある。
【0022】
アルカリフリー粉体急結剤の使用量は、セメント100質量部に対して、1〜10質量部が好ましく、3〜8質量部がより好ましい。1質量部未満だと凝結性状や初期強度発現性が弱いおそれがあり、10質量部を越えると粉塵やリバウンドが増加するおそれがある。
【0023】
本発明に係る液体急結剤は、セメントコンクリートに混合できるものであれば特に制限はなく、液体急結剤としては、アルミン酸ナトリウム等のアルカリ金属アルミン酸塩やケイ酸ナトリウム等のアルカリ金属ケイ酸塩等の無機塩系といったアルカリ含有液体急結剤や、硫酸アルミニウム等のアルカリフリー液体急結剤が挙げられる。これらの中では、長期強度発現性の良好な点で、アルカリフリー急結剤が好ましく、硫酸アルミニウムがより好ましい。
【0024】
液体急結剤中の成分濃度は、20〜40%が好ましく、25〜35%がより好ましい。20%未満だと初期凝結や強度発現性を阻害するおそれがあり、40%を越えると液体急結剤の粘度が大きくなり、圧送性が低下し、又、液体急結剤中の成分が均一に分散しにくくなり、液体急結剤の取り扱いが難しくなるおそれがある。
【0025】
液体急結剤の使用量はセメント100質量部に対して、3〜12質量部が好ましく、5〜9質量部がより好ましい。3質量部未満だと付着不良やダレが発生し、初期強度発現が弱いおそれがあり、12質量部を越えると配管が閉塞し、経済的に好ましくないおそれがある。
【0026】
本発明に係る水セメント比(W/C)は30〜75%が好ましく、35〜70%がより好ましく、35〜65%が最も好ましい。30%未満だと吹付セメントコンクリートの粘性が大きく吹付作業性が低下し、75%を越えると強度発現性や凝結性状に悪影響を与えるおそれがある。尚、ここでいう水セメント比の水には液体急結剤中の水は考慮されない。
【0027】
本発明は急結剤を含有していないセメントコンクリート、アルカリフリー粉体急結剤、及び液体急結剤を混合して急結性セメントコンクリートとする。本発明に係る急結性セメントコンクリートの混合方法としては、まず急結剤を含有していないセメントコンクリートと液体急結剤を混合し、次いでアルカリフリー粉体急結剤を混合して急結性セメントコンクリートとしても良く、セメントコンクリート、アルカリフリー粉体急結剤、及び液体急結剤を一括混合して急結性セメントコンクリートとしても良い。
【0028】
本発明の吹付工法については、従来使用の吹付設備等が使用できる。吹付設備は吹付が十分に行われれば、特に限定するものではなく、例えば、セメントコンクリートの圧送にはアリバー社製「アリバ285」やピストン式のコンクリートポンプ等も使用できる。急結剤の圧送には急結剤圧送装置「ナトムクリート」等が使用できる。
【0029】
【実施例】
以下、実験例に基づき詳細に説明する。
【0030】
実験例1
W/C=45%、セメント/細骨材比(C/S)=1/2のモルタルを調製した。このモルタルに、セメント100質量部に対して、減水剤1.2質量部、液体急結剤7質量部、及び表1に示す量のアルカリフリー粉体急結剤を添加し、急結性モルタルを調製した。得られた急結性モルタルにつき、試験温度20℃の条件下で、プロクター貫入抵抗値と圧縮強度を測定した。結果を表1に示す。
【0031】
(使用材料)
セメント:市販品、普通ポルトランドセメント、比重3.16
細骨材:新潟県姫川産天然砂、細骨材の最大粒径2.5mm以下、比重2.62
液体急結剤:アルカリフリー液体急結剤、硫酸アルミニウム系液体急結剤、成分濃度27%
アルカリフリー粉体急結剤a:硫酸アルミニウム系粉体急結剤
アルカリフリー粉体急結剤b:非晶質、C12A7、ブレーン値6050cm2 /gのカルシウムアルミネート類
減水剤:高性能減水剤、ポリエチレングリコール、液状、固形分濃度40%、市販品
【0032】
(測定方法)
プロクター貫入抵抗値:土木学会基準「吹付けコンクリート用急結剤品質規格(JSCED−102)」に準じて測定した。
圧縮強度:JIS R 5201に準じて、20℃、所定の材齢で測定した。
【0033】
【表1】
【0034】
実験例2
セメント450kg/m3、粗骨材519kg/m3、細骨材1200kg/m3、減水剤5.4kg/m3、及び水203kg/m3とし、プレーンスランプ20cmのコンクリートを調製した。このコンクリートをピストン式のコンクリートポンプで圧送した。圧送途中で四方管を設けてその一方にコンクリートを圧送した。このコンクリートに、四方管のもう一方から液体急結剤をセメント100質量部に対して7質量部、四方管の更にもう一方から表2に示すアルカリフリー粉体急結剤をセメント100質量部に対して表2に示す質量部、それぞれ添加し、急結性コンクリートを調製した。得られた急結性コンクリートにつき、試験温度20℃の条件下で、跳ね返り損失と粉塵量を測定した。結果を表2に示す。
【0035】
(使用材料)
粗骨材:新潟県姫川産砂利、骨材の最大粒径15mm、比重2.62
【0036】
(測定方法)
跳ね返り損失:幅5.5m×高さ5.5mの馬蹄径のトンネルに急結性コンクリートを吹付け、(跳ね返り落下した急結性コンクリートの量)/(吹付に使用した急結性コンクリート全体の量)×100(%)で示した。
粉塵量:急結性コンクリートを4m3/hの圧送速度で10分間、鉄板でアーチ状に制作した高さ3.5m、幅2.5m、長さ20mの模擬トンネルに、吹付ノズル先端から吹付けた。その後、吹付ノズル先端から3m手前の定位置で粉塵量を測定し、得られた測定値の平均値で示した。
【0037】
【表2】
【0038】
実験例3
液体急結剤をセメント100質量部に対して表3に示す質量部、表3に示すアルカリフリー粉体急結剤をセメント100質量部に対して5質量部、それぞれ添加し、得られた急結性コンクリートにつき、付着特性、ダレ、及び配管の閉塞状況を測定したこと以外は、実験例2と同様に行った。結果を表3に示す。
【0039】
(測定方法)
付着特性:ノズルを固定して幅5.5m×高さ5.5mの馬蹄径のトンネルの側壁に急結性コンクリートを4m3/hの圧送速度で15秒間吹付け、吹付面たる側壁から付着した急結性コンクリートの頂点までの距離を測定し、付着特性とした。
ダレ:急結性コンクリートを4m3/hの圧送速度で5分間、幅5.5m×高さ5.5mの馬蹄径のトンネルに吹付けた後の状態を観察した。ダレが生じなかったものを○とし、ダレが少し生じたものを△とし、ダレが多く生じたものを×とした。
配管の閉塞状況:急結性コンクリートを4m3/hの圧送速度で4分間吹付けた後、四方管内部を観察し、固化物の付着が認められた場合を×、少し認められた場合を△、全く認められなかった場合を○とした。
【0040】
【表3】
【0041】
【発明の効果】
本発明の吹付材料を用いることにより、粉塵量や跳ね返り率が少なく、ダレが生じず、凝結性状が良好で、急結性セメントコンクリートの吹付面への付着も良くなり、湧水部への吹付も可能となる。更に初期や長期の強度も増加する為、本発明は急結性セメントコンクリートの剥落防止にも繋がる優れた施工方法になる。
Claims (9)
- 急結剤を含有していないセメントコンクリート、液体急結剤、及び、硫酸アルミニウムを含有してなるアルカリフリー粉体急結剤を圧送、合流して急結性セメントコンクリートを調製し、吹付けることを特徴とする吹付工法。
- さらに、セメント100質量部に対して0.05〜5質量部の減水剤を、急結剤を含有していないセメントコンクリート側に含有してなることを特徴とする請求項1記載の吹付工法。
- 液体急結剤の成分濃度が、20〜35%である請求項1又は2記載の吹付工法。
- 液体急結剤の使用量が、セメント100質量部に対して、5〜12質量部である請求項1〜3のうちの1項記載の吹付工法。
- 液体急結剤の使用量が、セメント100質量部に対して、7〜12質量部である請求項1〜4のうちの1項記載の吹付工法。
- 減水剤がポリエチレングリコールであることを特徴とする請求項1〜5のうちの1項記載の吹付工法。
- 急結剤を含有していないセメントコンクリート、液体急結剤、及びアルカリフリー粉体急結剤を一括混合して急結性セメントコンクリートとすることを特徴とする請求項1〜6のうちの1項記載の吹付工法。
- 急結性セメントコンクリートが細骨材と水を含有してなることを特徴とする請求項1〜7のうちの1項記載の吹付工法。
- 急結性セメントコンクリートが粗骨材と水を含有してなることを特徴とする請求項1〜8のうちの1項記載の吹付工法。
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