JP4828775B2 - 組成物硬化方法及びエネルギー重合性組成物 - Google Patents

組成物硬化方法及びエネルギー重合性組成物 Download PDF

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Description

【0001】
発明の分野
この発明は、カチオン硬化性材料を含むエネルギー重合性組成物、カチオン硬化性材料と、少なくとも1つの有機金属錯塩及び少なくとも1つの促進剤を含む二成分開始剤系と、を含むエネルギー重合性組成物のために有用である場合がある促進剤に関し、また、前記組成物の硬化方法に関する。この発明はまた、硬化組成物を含む物品の作製に関する。他の用途のほかに、前記組成物は、成形物品として、耐摩耗被覆などの被覆組成物として、構造接着剤などの接着剤として、研磨剤及び磁気媒体用の結合剤として、有用である。本発明はまた、有機金属錯塩と、本明細書中に開示したクラス1〜クラス4化合物から選択された少なくとも1つの化合物とを含む組成物に関する。
【0002】
背景技術
有機金属カチオン及び非求核性対アニオン(counteranion)を含む遷移金属塩は、カチオン付加重合のための光化学活性化開始剤として有用であることを示している。これらの光開始剤塩には、アニオンPF6 -及びSbF6 -の(シクロペンタジエニル)(アレーン)鉄+塩などがある。同様に、これらの塩の特定のクラスは、カチオン重合のための熱活性化硬化剤であることが知られている。
【0003】
多くの商用の適用のために、重合されるモノマーはしばしば、多官能性(すなわち、1分子中に1個より多い重合性基を含有する)の、例えば、ビスフェノールAのジグリシジルエーテル(DGEBA)などのエポキシド、である。エポキシドとポリアルコール(ポリオール)またはポリエポキシドとポリアルコールなどの多官能性モノマーの混合物は、段階成長機構によって酸触媒重縮合を経ることができる。多反応性モノマー、すなわち、反応性基の2つ以上のクラスを含むモノマーもまた、この説明に含められる。
【0004】
多くの適用において、光重合は不可能であり、非実用的であるか、または望ましくない。例えば、重合反応が閉鎖環境(すなわち、型内でまたは積層製品内で)で起こるか、または重合性組成物が不透明顔料を含有する多くの状況については、熱活性化開始剤が好ましい。周知の有機金属塩など、熱活性化開始剤を用いて、これらの場合、重合を開始することができる。
【0005】
特定の適用のニーズを満たすためにエネルギー重合性組成物の重合の速度及び温度を改良できることが、依然として必要とされている。
【0006】
発明の要旨
本発明は、カチオン硬化性材料を含むエネルギー重合性組成物の重合が起こる温度に影響を与えるために用いてもよい促進剤に関する。特に、本発明の促進剤を用いて、重合温度を低下させるか、または、有機金属塩開始剤がカチオン重合において用いられるときにカチオン重合性材料の所定の温度での重合速度または重合度の改良を可能にすることができる。
【0007】
要約すると、1つの態様において、この発明は、少なくとも1つの促進剤と、有機金属錯カチオンの少なくとも1つの塩とを用いてカチオン硬化性材料を含むエネルギー重合性組成物の硬化速度を増大させるか、硬化温度を低下させる工程を含む方法を提供するものであり、そこにおいて、前記カチオンが、遷移金属原子に結合した少なくとも1個の炭素原子を含有し、前記促進剤、またはその活性部分が、クラス1〜4から選択された少なくとも1つの化合物を含み、
クラス1が式IIIによって表された化合物を含み、
クラス2が式IVによって表された化合物を含み、
クラス3が式Vによって表された化合物を含み、
クラス4が式VIによって表された化合物を含む。
【0008】
別の態様において、この発明は、エネルギー重合性組成物であって、
a)少なくとも1つのカチオン硬化性材料と、
b)(1)遷移金属原子に結合した少なくとも1個の炭素原子を含有する、有機金属錯カチオンの少なくとも1つの塩と、
(2)クラス1、2、3及び4から選択され、クラス1が式IIIによって表された化合物を含み、クラス2が式IVによって表された化合物を含み、クラス3が式Vによって表された化合物を含み、クラス4が式VIによって表された化合物をその中に含む、少なくとも1つの促進剤またはその活性部分と、を含む二成分開始剤系と、を含むエネルギー重合性組成物、を提供する。
【0009】
他の態様において、本発明は、以下の任意の成分:
(a)アルコール含有材料及び付加的な補助剤の少なくとも1つと、
(b)貯蔵寿命を改善するための安定化配位子と、
(c)アミン、アミド、ニトリル、硫黄、またはリン官能性基などの求核性基、もしくはカルボン酸及びスルホン酸などの金属錯化基、を本質的に含まない少なくとも1つの薄膜形成熱可塑性オリゴマーまたはポリマー樹脂と、
(d)接着性を改良するためのカップリング剤と、
の1つ以上を有するエネルギー重合性組成物を提供する。
【0010】
別の態様において、本発明は、
(a)本発明のエネルギー重合性組成物を提供する工程と、
(b)前記組成物に熱、放射線、及び光、の少なくとも1つの形態でいずれかの組合せ及び順序で十分なエネルギーを加えて前記組成物を硬化する工程と、を含む、組成物の硬化の制御または改良方法を提供する。
【0011】
別の態様において、この発明は、本発明の組成物の層を少なくとも一方のその表面の上に有する基材を含む物品を提供する。前記物品は、
(a)基材を提供する工程と、
(b)前記基材を本発明の硬化性組成物で、及び任意に、補助剤で被覆する工程と、
(c)前記組成物に熱、放射線、及び光、の少なくとも1つの形態でいずれかの組合せ及び順序で十分なエネルギーを供給して前記組成物を重合する工程と、を含む方法によって提供され得る。
【0012】
別の態様において、この発明は、
(1)遷移金属原子に結合した少なくとも1個の炭素原子を含有する、有機金属錯カチオンの少なくとも1つの塩と、
(2)クラス1が式IIIによって表された化合物を含み、クラス2が式IVによって表された化合物を含み、クラス3が式Vによって表された化合物を含み、クラス4が式VIによって表された化合物を含む、クラス1、2、3及び4から選択された、少なくとも1つの化合物またはその活性部分と、を含む組成物を提供する。
【0013】
この出願で用いた用語:「エネルギーによる硬化(energy−induced curing)」は、熱または光(例えば、紫外線及び可視光)、放射線(例えば、電子ビーム)、または加熱手段と組み合わせた光によって、一般には、熱と光を同時に、またはいずれかの順序で、例えば、熱の後に光、光の後に熱、次いで光、を用いる、硬化または重合を意味する。
【0014】
「触媒有効量」は、硬化性組成物の重合を引き起こして重合生成物をもたらし、少なくともある程度、明記した条件下で組成物の粘度の増大を起こすのに十分な量を意味する。
【0015】
「有機金属塩」は、有機金属錯カチオンのイオン性塩を意味し、そこにおいて、前記カチオンは、元素の周期表の遷移金属の系列の金属原子に結合している有機基の少なくとも1個の炭素原子を含有する(「Basic Inorganic Chemistry」、F.A.コットン、G・ウィルキンソン、ワイリー、1976年、497ページ)。
【0016】
「開始剤」及び「触媒」は交換可能に用いられ、化学反応の速度を変化させることができる有機金属錯カチオンの少なくとも1つの塩を意味する。
【0017】
「カチオン硬化性モノマー」は、少なくとも1つのエポキシドあるいビニルエーテル含有材料を意味する。
【0018】
本明細書中で用いた「重合性組成物」または「硬化性組成物」は、開始剤系とカチオン硬化性モノマーとの混合物を意味する。アルコール及び補助剤が任意に存在してもよい。
【0019】
「重合する」または「硬化する」は、熱、放射線、及び光、の少なくとも1つの形態でいずれかの組合せ及び順序で組成物に十分なエネルギーを供給して前記組成物の物理的状態を変え、それを流体からより流動性でない状態に変化させ、粘着状態から不粘着状態に変化させ、可溶状態から不溶状態に変化させ、または化学反応でのその消費によって重合性材料の量を減少させることを意味する。
【0020】
「開始系」、「開始剤系」、または「二成分開始剤」は、有機金属錯カチオンの少なくとも1つの塩及び少なくとも1つの促進剤を意味し、その系は、重合を開始することができる。
【0021】
「促進剤」(accelerator)または「促進添加剤」(accelerating additive)は、重合温度を低下させるか、または所定の温度で速度または重合度の増大を可能にすることによって本発明の組成物の硬化を加減する化合物の特定クラスの要素の少なくとも1つを意味する。
【0022】
「エポキシ含有」(epoxy−containing)は、少なくとも1つのエポキシを含む材料を意味し、更に、安定化添加剤、促進添加剤、充填剤、ジオール、及び他の添加剤を含んでもよい。
【0023】
「基」または「化合物」または「配位子」は、置換を可能にするか、または所望の生成物を妨害しない従来の置換基の代わりに用いてもよい化学種を意味し、例えば、置換基は、アルキル、アルコキシ、アリール、フェニル、ハロ(F、Cl、Br、I)、シアノ、ニトロなどであってもよく、
【0024】
「エポキシ/ポリオール」及び「触媒/添加剤」などは、スラッシュ(“/”)の両側の物質の組合せを意味する。
【0025】
本発明の少なくとも1つの実施態様の利点は、前記開始剤系が、本発明の促進剤を用いずに開始された反応のために必要とされる温度より低い温度で熱または光重合性組成物の硬化を開始することができるということである。
【0026】
本発明の少なくとも1つの実施態様の別の利点は、前記開始剤系が、所定の温度で熱または光重合性組成物の増強された硬化を提供することができるということである。例えば、所定の温度において、硬化時間は、本発明の促進剤を用いずに開始された反応のための硬化時間と比較して低減され得る。
【0027】
詳細な開示
本発明は、少なくとも1つのカチオン重合性材料とそのための開始系とを含むエネルギー重合性組成物を提供するものであり、前記開始系は、少なくとも1つの有機金属錯塩と少なくとも1つの促進剤とを含む。前記硬化組成物は、有用な物品または被覆物品を提供する。
【0028】
この発明の方法によって硬化または重合することができるエポキシ化合物はカチオン重合をすることが周知のエポキシ化合物であり、1,2−、1,3−及び1,4−環状エーテル(1,2−、1,3−及び1,4−エポキシドとも称される)などがある。
【0029】
適したエポキシ樹脂の記載については、「Encyclopedia of Polymer Science and Technology」、6、(1986年)、322ページ、を参照のこと。特に、有用な環状エーテルには、シクロヘキセンオキシド及びニューヨーク州、ニューヨークのユニオンカーバイド製の樹脂のERLシリーズタイプ、例えば、ビニルシクロヘキセンオキシド、ビニルシクロヘキセンジオキシド、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、ビス−(3,4−エポキシシクロヘキシル)アジペート及び2−(3,4−エポキシシクロヘキシル(epoxycylclohexyl)−5,5−スピロ−3,4−エポキシ)シクロヘキセン−メタジオキサンなどの脂環式エポキシなどがある。同様に、グリシジルエーテルタイプのエポキシ樹脂、例えば、プロピレンオキシド、エピクロロヒドリン、スチレンオキシド、グリシドールの他、ビスフェノールAのジグリシジルエーテル及びこの材料の鎖延長変種など、テキサス州、ヒューストンのシェルケミカルカンパニー製のエポキシ樹脂のEPONシリーズタイプ、例えば、EPON 828、EPON 1001、EPON 1004、EPON 1007、EPON 1009、及びEPON 2002または他の製造元のそれらの同等物、ジシクロペンタジエンジオキシド、ペンシルベニア州、フィラデルフィアのエルフアトケムノースアメリカ社製のVIKOLOX及びVIKOFLEX樹脂として入手できるエポキシ化アマニ及びダイズ油などのエポキシ化植物油、テキサス州、ヒューストンのシェルケミカルカンパニー製のL−207など、エポキシ化KRATON LIQUIDポリマー、ペンシルベニア州、フィラデルフィアのエルフアトケム製のPOLYBD樹脂などのエポキシ化ポリブタジエン、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、フェノールホルムアルデヒドのポリグリシジルエーテル、ミシガン州、ミッドランドのダウケミカル社製のDEN431及びDEN438などのエポキシ化フェノールノボラック樹脂、ニューヨーク州、ホーソーンのチバ製のARALDITE ECN 1299などのエポキシ化クレゾールノボラック樹脂、レソルシノールジグリシジルエーテル、及びニュージャージー州、フォートリーのダイセルUSA社製のEPOFRIEND A1010などのEPOFRIEND樹脂などのエポキシ化ポリスチレン/ポリブタジエンブレンド、及びレソルシノールジグリシジルエーテルなどがある。
【0030】
好ましいエポキシ樹脂には、ERLタイプの樹脂、特に3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、ビス−(3,4−エポキシシクロヘキシル)アジペート及び2−(3,4−エポキシシクロヘキシル(epoxycylclohexyl)−5,5−スピロ−3,4−エポキシ)シクロヘキセン−メタ−ジオキサンの他、2,2−ビス−[p−(2,3−エポキシプロポキシ)フェニルプロパン及びこの材料の鎖延長変種などのビスフェノールA EPONタイプの樹脂などがある。1つより多いエポキシ樹脂のブレンドを用いることもまた、この発明の範囲内にある。異なった種類の樹脂が、いずれの比率で存在してもよい。
【0031】
ビニルエーテルモノマーをカチオン硬化性材料として用いることはこの発明の範囲内にある。ビニルエーテル含有モノマーは、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、第三−ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル(ニュージャージー州、ウェインのインターナショナルスペシャルティズプロダクツ製のRAPI−CURE DVE−3)、1,4−シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル(ニュージャージー州、ウェインのインターナショナルスペシャルティズプロダクツ製のRAPI−CURE CHVE)、トリメチロールプロパントリビニルエーテル(ニュージャージー州、マウントオリーブのBASFコーポレーション製のTMPTVE)及びVECTOMER 2010、VECTOMER 2020、VECTOMER 4010、及びVECTOMER 4020など、アーライドシグナル製のVECTOMERジビニルエーテル樹脂、または他の製造元のそれらの同等物、であってもよい。1つより多いビニルエーテル樹脂のブレンドを用いることは、この発明の範囲内にある。
【0032】
1つ以上のビニルエーテル樹脂とブレンドされた1つ以上のエポキシ樹脂を用いることもまた、この発明の範囲内にある。異なった種類の樹脂が、いずれの比率で存在してもよい。
【0033】
二官能性モノマーもまた用いてもよく、この発明に有用な例は、少なくとも1つのカチオン重合性官能価、またはカチオン重合性モノマーと共重合する官能価、例えば、エポキシ−アルコール共重合を可能にする官能価を有する。
【0034】
2つ以上の重合性組成物が存在しているとき、それらが、いずれの比率で存在してもよい。
【0035】
開始剤系の有機金属錯カチオンの適した塩には、米国特許第5,089,536号(第2欄、48行目〜第16欄、10行目)に開示されたそれらの塩などがあるがそれらに制限されない。
【0036】
本発明の好ましい組成物において、開始剤系の有機金属錯塩は、以下の式:

[(L1y(L2zM]+qn (I)
によって表され、式中、
MがCr、Ni、Mo、W、Mn、Tc、Re、Fe、Ru、Os、Co、Rh及びIrを含有する基から選択され、
1が、芳香族化合物及び複素環式芳香族化合物から選択され得る同一または異なった、パイ−電子を寄与する配位子を表し、前記配位子が6個のパイ−電子をMの価電子殻に寄与することができ、
2が、シクロペンタジエニル及びインデニルアニオン基から選択され得る同一または異なった、パイ−電子を寄与する配位子を表し、前記配位子が6個のパイ−電子をMの価電子殻に寄与することができ、
qが1または2の値を有する整数、錯カチオンの残留電荷であり、
y及びzがゼロ、1、または2、の値を有する整数であるが、ただし、y及びzの合計が2に等しく、
Xが、トリス−(高フッ素化アルキル)スルホニルメチド、ビス−(高フッ素化アルキル)スルホニルイミド、トリス−(フッ素化アリール)スルホニルメチド、テトラキス−(フッ素化アリール)ボレート、有機スルホネートアニオン、及び金属またはメタロイドのハロゲン含有錯アニオンから選択されるアニオンであり、
nが1または2の値を有する整数、錯カチオン上の電荷qを中和するために必要とされる錯アニオンの数、である。
【0037】
配位子L1及びL2は、遷移金属有機金属化合物の技術分野で周知である。
【0038】
配位子L1は、化合物の全分子量には関係なく、アクセシブルな芳香族基を有するいずれかのモノマーまたはポリマー化合物によって提供される。「アクセシブルな(accessible)」は、不飽和基を有する化合物(またはアクセシブルな化合物を調製する前駆化合物)が、アルコール、例えば、メタノール、ケトン、例えば、メチルエチルケトン、エステル、例えば、アミルアセテート、ハロカーボン、例えば、トリクロロエチレン、アルカン、例えば、デカリン、芳香族炭化水素、例えば、アニソール、エーテル、例えば、テトラヒドロフラン、などの反応媒体に可溶性であることを意味するか、または、前記化合物が、不飽和基(すなわち、芳香族基)がその不飽和基とMとの間にpi−結合を形成するために十分に金属に近いように、大きな表面積の非常に微細な粒子に可分性であることを意味する。ポリマー化合物は、以下に説明するように、配位子がポリマー鎖上の基であり得ることを意味する。
【0039】
配位子L1の具体例は、25個までの環及び100個までの炭素原子及び、窒素、硫黄、非ペルオキシ酸素、リン、ヒ素、セレン、ホウ素、アンチモン、テルリウム、ケイ素、ゲルマニウム、及び錫から選択された10個までのヘテロ原子を有する置換及び非置換炭素環及び複素環芳香族配位子、例えば、eta6−ベンゼン、eta6−メシチレン、eta6−トルエン、eta6−p−キシレン、eta6−o−キシレン、eta6−m−キシレン、eta6−クメン、eta6−ズレン、eta6−ペンタメチルベンゼン、eta6−ヘキサメチルベンゼン、eta6−フルオレン、eta6−ナフタレン、eta6−アントラセン、eta6−ペリレン、eta6−クリセン、eta6−ピレン、eta6−トリフェニルメタン、eta6−パラシクロファン、及びeta6−カルバゾールなどである。他の適した芳香族化合物を、多くの化学ハンドブックのいずれかを調べることによって、見いだすことができる。
【0040】
配位子L2の具体例は、置換及び非置換eta5−シクロペンタジエニルアニオン、例えば、eta5−シクロペンタジエニルアニオン、eta5−メチルシクロペンタジエニルアニオン、eta5−ペンタメチルシクロペンタジエニルアニオン、eta5−トリメチルシリルシクロペンタジエニルアニオン、eta5−トリメチル錫シクロペンタジエニルアニオン、eta5−トリフェニル錫シクロペンタジエニルアニオン、eta5−トリフェニルシリルシクロペンタジエニルアニオン、及びeta5−インデニルアニオンから誘導された配位子である。
【0041】
配位子L1及びL2の各々は、配位子の、金属原子に対する錯化作用を妨げない基、または、金属原子との競合が起きないという範囲で、配位子の溶解度を低減させない基によって置換され得る。その全てが好ましくは30個より少ない炭素原子と、窒素、硫黄、非ペルオキシ酸素、リン、ヒ素、セレン、アンチモン、テルリウム、ケイ素、ゲルマニウム、錫、及びホウ素から選択された10個までのヘテロ原子とを有する置換基の例には、メチル、エチル、ブチル、ドデシル、テトラコサニル、フェニル、ベンジル、アリル、ベンジリデン、エテニル、及びエチニルなどのヒドロカルビル基、シクロヘキシルなどのシクロヒドロカルビル、メトキシ、ブトキシ、及びフェノキシなどのヒドロカルビルオキシ基、メチルメルカプト(チオメトキシ)、フェニルメルカプト(チオフェノキシ)などのヒドロカルビルメルカプト基、メトキシカルボニル及びフェノキシカルボニルなどのヒドロカルビルオキシカルボニル、ホルミル、アセチル、及びベンゾイルなどのヒドロカルビルカルボニル、アセトキシ及びシクロヘキサンカルボニルオキシなどのヒドロカルビルカルボニルオキシ、ヒドロカルビルカルボンアミド、例えば、アセトアミド、ベンズアミドの他、アゾ、ボリル、ハロ、例えば、クロロ、ヨード、ブロモ、及びフルオロ、ヒドロキシ、シアノ、ニトロ、ニトロソ、オキソ、ジメチルアミノ、ジフェニルホスフィノ、ジフェニルアルシノ、ジフェニルスチビン、トリメチルゲルマン、トリブチル錫、メチルセレノ、エチルテルロ、及びトリメチルシロキシ、などがある。
【0042】
配位子L1及びL2は独立に、ポリマーの単位であってもよい。L1は例えば、ポリスチレン、またはポリメチルフェニルシロキサン中のフェニル基、またはポリビニルカルバゾール中のカルバゾール基であってもよい。L2は、例えば、ポリ(ビニルシクロペンタジエン)中のシクロペンタジエン基であってもよい。1000,000まで、またはそれ以上の重量平均分子量を有するポリマーを用いることができる。前記ポリマー中に存在している芳香族基の5〜50%が金属カチオンと錯体を形成することが好ましい。
【0043】
上に記載した以外に、被覆組成物中の有機金属錯カチオンのイオン性塩中の対イオンとして使用するための、式Iの適したアニオン、Xは、式:
DQr (II)
によって表すことができるアニオンであり、式中、
Dが、周期表のIB族〜VIIB族及びVIII族の金属またはIIIA族〜VA族の金属またはメタロイド(CAS表記法)であり、
Qがハロゲン原子、ヒドロキシル基、または置換または非置換フェニル基、または置換または非置換アルキル基、であり、
rが1〜6の値を有する整数である。
【0044】
好ましくは、前記金属は、銅、亜鉛、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、またはニッケルであり、前記メタロイドは好ましくは、ホウ素、アルミニウム、アンチモン、錫、ヒ素、及びリンである。好ましくは、ハロゲン原子Qは、塩素またはフッ素である。適したアニオンの具体例は、B(フェニル)4 -、B(フェニル)3(アルキル)-であり、そこにおいて、アルキルがエチル、プロピル、ブチル、ヘキシル等、BF4 -、PF6 -、AsF6 -、SbF6 -、FeCl4 -、SnCl5 -、SbF5OH-、AlCl4 -、AlF6 -、GaCl4 -、InF4 -、TiF6 -、ZrF6 -、B(C654 -、B(C63(CF324 -である。
【0045】
有機金属錯カチオンのイオン性塩中の対イオンとして有用な、式Iの付加的な適したアニオン、Xには、Xが有機スルホネートであるアニオンなどがある。適したスルホネート含有アニオンの具体例は、CH3SO3 -、CF3SO3 -、C65SO3 -、p−トルエンスルホネート、p−クロロベンゼンスルホネート及び関連異性体である。付加的な適したアニオンには、米国特許第5,554,664号に記載されているように、トリス−(高フッ素化アルキル)スルホニルメチド、ビス−(高フッ素化アルキル)スルホニルイミド、トリス−(フッ素化アリール)スルホニルメチド、などがある。好ましくは、アニオンは、BF4 -、PF6 -、SbF6 -、SbF5OH-、AsF6 -、SbCl6 -、CF3SO3 -、C(SO2CF33 -、そしてN(SO2CF32 -である。
【0046】
有機金属塩は本技術分野に周知であり、例えば、欧州特許第094,914号、094,915号、126,712号、及び米国特許第5,089,536号、5,059,701号、5,191,101号に開示されているように調製することができる。同様に、二置換(disubstituted)フェロセン誘導体を、J.Amer.Chem.Soc.、1978年、100、7264、に記載された一般手順によって調製することができる。Inorg.Chem.、1971年、10、1559に記載された手順によって、フェロセン誘導体を酸化して相応するフェロセニウム塩を調製することができる。
【0047】
本発明の組成物に有用な有機金属の錯カチオンの好ましい塩は、式Iから得られ、式中、L1が、好ましくはベンゼンベースの、芳香族化合物のクラスから選択され、L2が、シクロペンタジエニルアニオン基を含有する化合物のクラスから選択され、MがFeであり、Xが、テトラフルオロボレート、ヘキサフルオロホスフェート、ヘキサフルオロアルセネート、ヘキサフルオロアンチモネート、トリス−(トリフルオロメチルスルホニル)メチド、ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、ヒドロキシペンタフルオロアンチモネートまたはトリフルオロメタンスルホネートからなる群から選択される。本発明に有用な有機金属錯カチオンの最も好ましい塩は式Iに含まれ、式中、L1だけが存在しているか、またはL1及びL2の両方が存在しており、MがFeであり、Xがテトラフルオロボレート、ヘキサフルオロホスフェート、ヘキサフルオロアルセネート、ヘキサフルオロアンチモネート、ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、ヒドロキシペンタフルオロアンチモネート、トリフルオロメタンスルホネート、及びトリス−(トリフルオロメチルスルホニル)メチドからなる群から選択される。有機金属錯カチオンが、混合物及び異性混合物として用いられてもよい。
【0048】
本発明の好ましい組成物において、有機金属錯カチオンの塩には、米国特許第5,089,536号に開示された塩などがある。
【0049】
本発明の組成物を調製するのに有用な有機金属錯カチオンの好ましい塩の例には、ビス−(eta6−アレーン)鉄錯カチオン、ビス(eta5−シクロペンタジエニル)鉄錯カチオン、及び(eta5−シクロペンタジエニル)鉄アレーン錯カチオン、例えば、
ビス−(eta6−クメン)鉄(2+)ヘキサフルオロアンチモネート、
ビス−(eta6−ズレン)鉄(2+)ヘキサフルオロアンチモネート、
ビス−(eta6−メシチレン)鉄(2+)トリフルオロメタンスルホネート、ビス−(eta6−メシチレン)鉄(2+)ヘキサフルオロアンチモネート、
ビス−(eta6−メシチレン)鉄(2+)トリス−(トリフルオロメチルスルホニル)メチド、
ビス−(eta6−ヘキサメチルベンゼン)鉄(2+)ヘキサフルオロアンチモネート、
ビス−(eta6−ペンタメチルベンゼン)鉄(2+)ヘキサフルオロアンチモネート、
ビス−(eta6−ナフタレン)鉄(2+)ヘキサフルオロアンチモネート、
ビス−(eta6−ピレン)鉄(2+)ヘキサフルオロアンチモネート、
(eta6−ナフタレン)(eta5−シクロペンタジエニル)鉄(1+)ヘキサフルオロアンチモネート、
(eta6−ピレン)(eta5−シクロペンタジエニル)鉄(1+)ヘキサフルオロアンチモネート、
ビス−(eta5−ペンタメチルシクロペンタジエニル)(l+)ヘキサフルオロアンチモネート、
ビス−(eta5−メチルシクロペンタジエニル)鉄(l+)ヘキサフルオロアンチモネート、
ビス−(eta5−トリメチルシリルシクロペンタジエニル)鉄(l+)ヘキサフルオロアンチモネート、
ビス−(eta5−インデニル)鉄(l+)ヘキサフルオロアンチモネート、
(eta5−シクロペンタジエニル)(eta5−メチルシクロペンタジエニル)鉄(1+)ヘキサフルオロアンチモネート、
ビス−(eta5−シクロペンタジエニル)鉄(l+)トリフルオロメタンスルホネート、
ビス−(eta5−シクロペンタジエニル)鉄(l+)ヘキサフルオロアンチモネート、
ビス−(eta5−シクロペンタジエニル)鉄(l+)トリス−(トリフルオロメチルスルホニル)メチド、
(eta6−キシレン(混合異性体))(eta5−シクロペンタジエニル)鉄(l+)ヘキサフルオロアンチモネート、
(eta6−キシレン(混合異性体))(eta5−シクロペンタジエニル)鉄(l+)ヘキサフルオロホスフェート、
(eta6−キシレン(混合異性体))(eta5−シクロペンタジエニル)鉄(l+)トリス−(トリフルオロメチルスルホニル)メチド、
(eta6−キシレン(混合異性体))(eta5−シクロペンタジエニル)鉄(l+)ビス−(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、
(eta6−m−キシレン)(eta5−シクロペンタジエニル)鉄(l+)テトラフルオロボレート、
(eta6−o−キシレン)(eta5−シクロペンタジエニル)鉄(l+)ヘキサフルオロアンチモネート、
(eta6−p−キシレン)(eta5−シクロペンタジエニル)鉄(l+)トリフルオロメタンスルホネート、
(eta6−トルエン)(eta5−シクロペンタジエニル)鉄(l+)ヘキサフルオロアンチモネート、
(eta6−クメン)(eta5−シクロペンタジエニル)鉄(l+)ヘキサフルオロアンチモネート、
(eta6−m−キシレン)(eta5−シクロペンタジエニル)鉄(l+)ヘキサフルオロアンチモネート、
(eta6−ヘキサメチルベンゼン)(eta5−シクロペンタジエニル)鉄(l+)ヘキサフルオロアンチモネート、
(eta6−メシチレン)(eta5−シクロペンタジエニル−)鉄(l+)ヘキサフルオロアンチモネート、
(eta6−クメン)(eta5−シクロペンタジエニル)鉄(l+)ヘキサフルオロホスフェート、
(eta6−クメン)(eta5−シクロペンタジエニル)鉄(l+)トリス−(トリフルオロメチルスルホニル)メチド、及び(eta6−メシチレン)(eta5−シクロペンタジエニル)鉄(l+)ペンタフルオロヒドロキシアンチモネート、などがある。
【0050】
本発明の重合性組成物において、開始剤の塩は、硬化性組成物、すなわち、存在している場合があるいずれの溶剤をも除いた全組成物の、概して0.01〜20重量パーセント(wt%)、好ましくは0.1〜10重量%の範囲で、重合を開始するために触媒有効量で存在することができる。
【0051】
本発明の促進剤は、材料の4つのクラスから選択されてもよい。これらの材料の活性部分(式III〜VIを参照)は、本発明の組成物中、ポリマーの一部であってもよく、またはいずれかの成分の一部として含有されてもよい。
【0052】
クラス1は、式III:
【化1】
Figure 0004828775
によって記載される。
【0053】
クラス1の分子が芳香族カルボキシル含有分子を含み、式中、各R1が、独立に、水素、またはクロロ、ヨード、ブロモ、フルオロ、ヒドロキシ、シアノ、ニトロ、ニトロソ、カルボキシル、ホルミル、アセチル、ベンゾイル、トリアルキルシリル、及びトリアルコキシシロから選択された基であってもよい。更に、各R1が、独立に、30個までの炭素原子を含有する置換及び非置換アルキル、アルケニル、アルキニル、及びアルコキシ基、または1〜4個の置換または非置換芳香環の基から選択されたラジカル部分であってもよく、そこにおいて、2〜4個の環が接合しているか、または接合していなくてもよく、2個のR1が全体として、飽和しているかまたは不飽和である少なくとも1個の環を形成することができる。置換基が、促進添加剤と金属錯体との錯化作用を妨げないか、または本発明のカチオン重合を妨げないことが重要である。
【0054】
30個より少ない炭素原子と、炭素鎖に割り込んで、例えば、硫黄または非ペルオキシ酸素から選択されたエーテルまたはチオ結合を形成することができる、10個までのヘテロ原子と、をその全てが好ましくは有する、いずれかのR1基中に存在していてもよいかまたは環に直接に結合していてもよい置換基の例には、メチル、エチル、ブチル、ドデシル、テトラコサニル、フェニル、ベンジル、アリル、ベンジリデン、エテニル、及びエチニルなどのヒドロカルビル基、シクロヘキシルなどのシクロヒドロカルビル基、メトキシ、ブトキシ、及びフェノキシなどのヒドロカルビルオキシ基、メチルメルカプト(チオメトキシ)、フェニルメルカプト(チオフェノキシ)などのヒドロカルビルメルカプト基、メトキシカルボニル、プロポキシカルボニル、及びフェノキシカルボニルなどのヒドロカルビルオキシカルボニル、ホルミル、アセチル、及びベンゾイルなどのヒドロカルビルカルボニル、アセトキシ、及びシクロヘキサンカルボニルオキシなどのヒドロカルビルカルボニルオキシ、トリフルオロメチル及びペンタフルオロフェニルなどのペルフルオロヒドロカルビル基、アゾ、ボリル、ハロ、例えば、クロロ、ヨード、ブロモ、及びフルオロ、ヒドロキシ、カルボキシル、シアノ、ニトロ、ニトロソ、トリメチルシロキシの他、シクロペンタジエニル、フェニル、ナフチル及びインデニルなどの芳香族基などがある。更に、R1は、ポリマーの単位であってもよい。適したクラスI促進剤の例には、安息香酸、サリチル酸、2,3−ジヒドロキシ安息香酸、2,3,4−トリヒドロキシ安息香酸、o−アニス酸、2−エトキシ安息香酸、o−トルイル酸、m−トルイル酸、p−トルイル酸の他、ハロ芳香族酸、例えば、2−フルオロ安息香酸、3−フルオロ安息香酸、4−フルオロ安息香酸、4−トリフルオロメチル安息香酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、4−ブトキシ安息香酸、4−ノニルオキシ安息香酸、4−オクチル安息香酸、2−(p−トルオイル)安息香酸、2−ニトロ安息香酸、3−ニトロ安息香酸、4−ニトロ安息香酸、及び4−ビフェニルカルボン酸、などがある。クラス1からの好ましい添加剤は、置換安息香酸及びサリチル酸である。クラス1からの最も好ましい添加剤は、安息香酸、サリチル酸、及びo−アニス酸である。
【0055】
クラス1の促進剤は、全重合性組成物の0.01〜10.0重量パーセント、好ましくは0.1〜4重量パーセントの範囲の量で存在してもよい。
【0056】
クラス2は、式IV:
【化2】
Figure 0004828775
によって記載される。
【0057】
クラス2の分子は、脂肪族カルボン酸部分(aliphatic carboxylic moiety)を有するそれらの化合物を含み、そこにおいて、各R2が、他のR2と同一かまたは異なっていてもよく、クラス1の促進剤のR1について記載した材料と同じ材料であってもよい。更に、2つのR2が全体として、カルボニル基を形成することができる。このクラスの適した促進剤の例は、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、ラウリン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、クロロ酢酸、トリフルオロ酢酸、2−ブロモ吉草酸、グリコール酸、乳酸、ピルビン酸、シクロブタンカルボン酸、シクロペンタンカルボン酸、シクロヘキサンカルボン酸、4−メチル−1−シクロヘキサンカルボン酸、フェニル酢酸、シクロヘキシル酢酸の他、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカンジオン酸(undecanedioic acid)、デカンジカルボン酸、マレイン酸、フマル酸、トランス−1,2−シクロヘキサンジカルボン及びヘキサフルオログルタル酸などの多官能性カルボン酸、である。クラス2からの好ましい添加剤は、非重合置換及び非置換脂肪族カルボン酸である。クラス2からの最も好ましい化合物は、シクロヘキサンカルボン酸及びフェニル酢酸である。クラス2の促進剤は、全重合性組成物の0.01〜10.0重量パーセント、好ましくは0.01〜4重量パーセントの範囲の量で存在してもよい。
【0058】
クラス3は、式V:
【化3】
Figure 0004828775
によって定義される。
【0059】
クラス3の分子はサリチル酸のエステルを含み、そこにおいて、各R1が、独立に、式IIIと同じ定義を有し、R3がC1〜C10置換または非置換アルキル基、及び、2〜4個の環が接合しているか、または接合していなくてもよい1〜4個の置換または非置換芳香環の基から選択されてもよい。このクラスの適した促進剤の例は、メチルサリチレート、エチルサリチレート、フェニルサリチレート、2−エチルヘキシルサリチレート、メチル4−メトキシサリチレート、及びメチル−2,6−ジヒドロキシ−4−メチルベンゾエートである。クラス3からの好ましい添加剤はサリチル酸の置換及び非置換エステルである。クラス3からの好ましい化合物は、メチルサリチレートである。クラス3促進剤はビス−eta6−アレーンタイプの有機金属塩について特に有用であり、全重合性組成物の0.01〜10.0重量パーセント、好ましくは0.1〜4重量パーセントの範囲の量で存在していてもよい。
【0060】
クラス4は、式VI:
【化4】
Figure 0004828775
によって定義される。
【0061】
クラス4の分子は式VIによって定義され、そこにおいて、各R1が、独立に、式IIIと同じ定義を有し、R4が水素であってもよく、または式VにおいてR3のために記載したのと同じ材料であってもよい。クラス4の分子の例は、サルチルアルデヒド、o−ヒドロキシアセトフェノン、2−ヒドロキシベンゾフェノン、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、5−クロロ−2−ヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−4’−メチルベンゾフェノン、及び2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、である。クラス4からの好ましい添加剤は、α−ヒドロキシ芳香族ケトンである。クラス4からの好ましい化合物は、サリチルアルデヒド(salicyladehyde)、o−ヒドロキシアセトフェノン、及び2−ヒドロキシベンゾフェノンである。クラス4の促進剤は、ビス−eta6−アレーンタイプの有機金属塩について特に有用であり、全重合性組成物の0.01〜10.0重量パーセント、好ましくは0.1〜4重量パーセントの範囲の量で存在してもよい。
【0062】
異なったクラスの、または同じクラス内でも、促進剤は、いずれかの所定の開始剤に対して等しく有効ではない場合があることが、指摘されるべきである。
【0063】
異なったクラス1〜4から選択された1つ以上の促進添加剤を用いることもまた、この発明の範囲内である。異なった種類の添加剤は、合計10.0重量パーセントまでいずれの比率で存在してもよい。
【0064】
重合性組成物に強化剤及び柔軟剤としてモノまたはポリアルコールを加えることもまた好ましく、この発明の範囲内であり得る。アルコールまたはポリオールは、鎖の延長を助け、硬化する間のエポキシドの過度の架橋を妨ぐのを助ける。
【0065】
代表的なモノ−アルコールには、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、2−メチル−2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、1−ペンタノール、ネオペンチルアルコール、3−ペンタノール、1−ヘキサノール、1−ヘプタノール、1−オクタノール、2−フェノキシエタノール、シクロペンタノール、シクロヘキサノール、シクロヘキシルメタノール、3−シクロヘキシル−1−プロパノール、2−ノルボルナンメタノール、及びテトラヒドロフルフリルアルコールなどが挙げられる。
【0066】
好ましくは、本発明に有用なポリオールは、2〜5個の、より好ましくは2〜4個の、非フェノールヒドロキシル基を有する。有用なポリオールの例には、1,2−エタンジオール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、及び2−エチル−1,6−ヘキサンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、ネオペンチルグリコール、グリセロール、トリメチロールプロパン、1,2,6−ヘキサントリオール、トリメチロールエタン、ペンタエリトリトール、キニトール、マンニトール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、グリセリン、2−エチル−2−(ヒドロキシメチル)−1,3−プロパンジオール、2−エチル−2−メチル−1,3−プロパンジオール、ペンタエリトリトール、2−エチル−1,3−ペンタンジオール、及び2,2−オキシジエタノール、ソルビトール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,4−ベンゼンジメタノール、2−ブテン−1,4−ジオール、及びポリアルコキシル化(polyalkoxylated)ビスフェノールA誘導体、などがあるがこれらに制限されない。有用なポリオールの他の例は、米国特許第4,503,211号に開示されている。
【0067】
より高分子量のポリオールには、ユニオンカーバイド製のカーボワックスポリエチレンエポキシド材料など、分子量の範囲が200〜20,000のポリエチレン及びポリプロピレンオキシドポリマー、ユニオンカーバイド製のTONEポリオール材料など、分子量の範囲が200〜5,000のカプロラクトンポリオール、デュポン(デラウェア州、ウィルミントン)製のTERATHANE材料など、分子量の範囲が200〜4,000のポリテトラメチレンエーテルグリコール、エルフアトケム製のPOLY BDなどのヒドロキシル末端ポリブタジエン樹脂、ニュージャージー州、サマセットのクリーノヴァ製のDYNAPOLコポリエステル材料などのヒドロキシル末端ポリエステル材料、または他の供給元による同等の材料などがある。
【0068】
アルコール官能性成分が材料の混合物として存在してもよく、モノ及びポリ−ヒドロキシル含有材料を含有することができる。アルコールは好ましくは、組成物中のエポキシの、ヒドロキシに対する比が約1:0.1〜1:1、より好ましくは約1:0.2〜1:0.8、最も好ましくは約1:0.2〜1:0.6となるのに十分な量で存在している。
【0069】
熱可塑性オリゴマーまたはポリマー樹脂を混入して薄膜ベースの組成物の製造を助けることもまた、この発明の範囲内である。これらの熱可塑性樹脂は薄膜を形成するのを容易にすることができ、すなわち、薄膜形成要素として用いられ、或る場合には、適切な溶剤を用いて接着をやり直すことができる。熱可塑性樹脂には、好ましくはガラス転移温度及び/または融点が120℃より低い熱可塑性樹脂が挙げられる。有用な熱可塑性樹脂は、カチオン硬化性モノマーのカチオン重合を妨げる基を本質的に含まない。より詳しくは、有用な熱可塑性樹脂は、アミン、アミド、ニトリル、硫黄またはリン官能性基などの求核性基を本質的に含まない。更に、適した熱可塑性樹脂は、テトラヒドロフラン(tetrohydrofuran)(THF)またはメチルエチルケトン(MEK)などの溶剤に可溶性であり、用いたエポキシ樹脂との相溶性を示す。
【0070】
この相溶性は、エポキシ樹脂と熱可塑性樹脂とのブレンドを、相分離せずに溶剤流延させることを可能にする。これらの特徴を有する、この発明に有用な熱可塑性樹脂の非制限的な例には、ポリエステル、コポリエステル、アクリル及びメタクリル樹脂、ポリスルホン、サウスカロライナ州、ロックヒルのフェノキシアソーシェーツ製のPAPHEN材料などのフェノキシ樹脂の他、ノボラック樹脂などがある。組成物を調製するときに1つより多い熱可塑性オリゴマーまたはポリマー樹脂のブレンドを用いることもまた、この発明の範囲内である。
【0071】
この発明の組成物の可使時間を増大させることが望ましいとき、安定化添加剤を含有することも有用であることがある。有用な可使時間安定化添加剤には、1,10−フェナントロリン、2,2’−ジピリジル、及び2,4,6−トリピリジトリアジンなどのルイス塩基性窒素キレート配位子、トリアルキル、トリアリール、トリシクロアルキル、及びトリアルカリールアミン、ホスフィン、ホスフィン酸化物、ホスフィット、アルシンの他、トリフェニルホスフィン、トリフェニルスチビン、トリフェニルアルシン、ジエチル−o−トルイジン、及びトリフェニルホスフィットなどのスチビン、全てウィスコンシン州、ミルウォーキーのアルドリッチケミカルカンパニー製の、12−CROWN−4、15−CROWN−5、18−CROWN−6、21−CROWN−7、及びKRYPTOFIX 211などの大環状クリプタンド(macrocyclic kryptands)及びクラウンエーテル、及びケトンまたはアルデヒドと一次アミンとの縮合によって概して作製される、シッフ塩基誘導体、などがある。適した安定化添加剤は、米国特許第5,494,943号に記載されている。
【0072】
式Iによって記載された有機金属錯イオン性塩と、クラス1〜4からとられた少なくとも1つの促進剤と、を含有する適した開始系は、概して熱及び/または光の形態で、十分なエネルギーを適用した時に、本発明の組成物の重合を触媒するそれらの組合せを含有する。触媒活性のレベルは、有機金属塩中の配位子及び対イオンの選択、少なくとも1つの促進剤のタイプ及び量の選択などのいろいろな因子に依存する。
【0073】
重合の温度及び用いた開始剤系の量は、用いた特定の重合性組成物及び重合生成物の望ましい適用に依存して変化する。
【0074】
シランカップリング剤の添加は、本発明の硬化組成物の調製において任意である。好ましくはシランカップリング剤を重合性組成物に添加して、少なくとも1つの基材表面がガラス、酸化物、または、シランカップリング剤の添加により利点があるいずれかの他の表面である時に接着性を改善する。存在するとき、シランカップリング剤は、エポキシ樹脂、例えば、3−グリシドキシプロピルトリメトキシルシランと反応することができる官能性基を含有する。
【0075】
好ましくは有機性の溶剤を、重合性モノマー中に開始剤系を溶解するのを助けるために、及び加工助剤として用いることができる。重合性組成物の調製を簡単にするために少量の溶剤中に有機金属錯塩の濃縮溶液を調製することが、有利であることがある。有用な溶剤は、ガンマ−ブチロラクトン、ガンマ−バレロラクトン、及びイプシロン−カプロラクトンなどのラクトン、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロペンタノン、及びシクロヘキサノンなどのケトン、テトラメチレンスルホン、3−メチルスルホラン、2,4−ジメチルスルホラン、ブタジエンスルホン、メチルスルホン、エチルスルホン、プロピルスルホン、ブチルスルホン、メチルビニルスルホン、2−(メチルスルホニル)エタノール、2,2’−スルホニルジエタノールなどのスルホン、ジメチルスルホキシドなどのスルホキシド、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート及びビニレンカーボネートなどの環状カーボネート、エチルアセテート、メチルセロソルブアセテート、メチルホルメートなどのカルボン酸エステル、及びメチレンクロリド、ニトロメタン、アセトニトリル、グリコールスルフィット及び1,2−ジメトキシエタン(グライム)などの他の溶剤である。いくつかの適用において、米国特許第4,677,137号に記載されているように、シリカ、アルミナ、粘土などの不活性担体上に開始剤を吸着することが、有利であることがある。
【0076】
本発明の組成物を硬化するために適した熱源には、誘導加熱コイル、オーブン、ホットプレート、ヒートガンの他、レーザー、マイクロ波源などの赤外線源、などがある。適した光及び放射線源には、紫外線源、可視光源、及び電子ビーム源などがある。
【0077】
本発明の物品を提供するのに有用な適した基材には、例えば、金属(例えば、アルミニウム、銅、カドミウム、亜鉛、ニッケル、鋼、鉄、銀)、ガラス、紙、木材、いろいろな熱可塑性薄膜(例えば、ポリエチレンテレフタレート、可塑化ポリビニルクロリド、ポリプロピレン、ポリエチレン)、熱硬化性薄膜(例えば、ポリイミド)、布、セラミックス及びセルロースアセテートなどのセルロース系材料などがある。
【0078】
前記組成物に、任意に、着色剤、研磨粒体、抗酸化安定剤、熱劣化安定剤、光安定剤、導電粒子、粘着付与剤、流動剤、増粘剤、艶消剤、不活性充填剤、結合剤、発泡剤、殺カビ剤、殺菌剤、界面活性剤、可塑剤、ゴム強化剤、及び当業者に周知の他の添加剤などの補助剤を添加してもよい。それらはまた、無機及び有機の両方の充填剤など、実質的に非反応性であってもよい。これらの補助剤は、もし存在する場合、それらの所期の目的のための有効量で添加される。
【0079】
この発明の組成物は、物品に耐磨耗性または保護被覆を提供するために有用である。前記組成物は、封入剤、密封剤、ステレオフォトリソグラフィによって作られたような成形物品または3次元物体として有用である。それらはまた、ホットメルト、感圧、及び構造用接着剤などの接着剤として、及び研磨剤用の結合剤として有用である。前記組成物はまた、フォトレジスト及びフォトリソグラフィなどの画像形成の適用に有用であることがある。
【0080】
概して、組成物の物理的性質、すなわち、硬度、剛性、弾性率、伸び、強度などが、エポキシ樹脂、アルコール含有材料を用いる場合には、エポキシのアルコールに対する比率及びアルコールの性質、を選択することによって決定される。特定の使用に依存して、前記系のこれらの物理的性質の各々が、特定の最適値を有する。概して、より大きなエポキシ/アルコールの比の硬化材料は、より小さいエポキシ/アルコールの比の硬化材料より剛性である。概して、エポキシ/アルコール組成物については、より短鎖のポリオールが、より長鎖のポリオールを用いるときより剛性である硬化組成物をもたらす。組成物の剛性はまた、より短鎖の一官能性アルコールを用いてポリオールを取り替えることによって、増大させることができる。エポキシ/アルコール混合物は概して、エポキシのみの組成物より速く硬化する。脂環式エポキシは、グリシジルエーテルエポキシより急速に硬化する。エポキシのこれら2つのタイプの混合物を用いて、所望のレベルまで硬化速度を調節する。
【0081】
本発明の材料を用いて被覆研磨物品を作製するために、研磨粒子を硬化性組成物に添加しなくてはならない。一般的な手順は、紙、布、ポリエステルなどの適した基材を選択し、硬化性組成物からなる「メイクコート」でこの基材を被覆し、研磨粒子を適用し、次に、エネルギー源の適用によって硬化することである。メイクコートより硬い材料に硬化する「サイズコート」を、次に、メイクコートの上に被覆し、硬化する。サイズコートは、研磨粒子を所定の場所に固定するのに役立つ。これ及び他の適用のために、被覆は好ましくは、バー、ナイフ、リバースロール、押出ダイ、刻み付きロール、またはスピン被覆などの方法によって、または、噴霧、はけ塗り、または積層によって提供される。
【0082】
構造用/半構造用接着剤を作製するために、硬化性組成物は、シリカ充填剤、ガラス気泡及び強化剤などの付加的な補助剤を含有することができる。これらの補助剤は、硬化組成物に靭性を付加し、その濃度を低減させる。概してより短鎖のポリオールを用いて、硬化エポキシの鎖延長によって靭性を提供する。概して非常に長鎖のジオールは、構造用/半構造用の適用のために必要とされる強度を有しない軟質の硬化組成物を製造する。3より大きい高ヒドロキシル官能価を有するポリオールを用いることにより、脆い接着剤をもたらす過剰架橋材料(overcrosslinked material)を製造することができる。
【0083】
本発明の材料を用いて磁気媒体を作製するために、磁気粒子が、硬化性組成物に添加されなくてはならない。磁気媒体は、適した基材、概して、ポリエステルのようなポリマー基材上に被覆される必要がある。十分なキャリヤー溶剤を添加して、好適に薄い、均一な被覆の製造を可能にするために、概して、被覆は非常に薄い。被覆が急速に硬化しなくてはならないので、迅速な開始剤系及び硬化性材料が選択されなくてはならない。硬化組成物が中程度の大きさの弾性率を有しなくてはならないので、硬化性材料は適切に選択されなくてはならない。
【0084】
本発明の材料から透明な耐磨耗性被覆を作製するために、組成物を選択するための2つの重要な基準は、硬化組成物の透明度及び靭性である。概して、粒状補助剤は、それらが硬化組成物の光沢及び透明度を低減させるので、添加されない。任意に、顔料または染料を添加して着色薄膜を製造することができる。
【0085】
導電性接着剤を作製するために、硬化性組成物は、所望の接点間に接着剤による導通を提供するレベルまで導電粒子を充填される。導電接着剤の1つのクラスはしばしば、「z軸接着剤」または「異方導電接着剤」と称される。接着剤のこのクラスは、接着剤のx−y面ではなく、z軸の接点間に導通を提供するレベルまで導電粒子を充填される。このようなz軸接着剤はしばしば、ポリマー薄膜など、キャリヤー基材上に薄膜接着剤として製造される。z軸接着剤のために適した材料の記載は、米国特許第5,362,421号に開示されている。
【0086】
成形物品は、当業者に周知の手段によって、例えば、反応射出成形、流延(casting)などによって作製される。
【0087】
この発明の目的及び利点は以下の例によって更に示されるが、それらは、本発明を制限するものとしてと解釈されるべきではない。
【0088】

において、特に指示しない限り、すべての部、比、及びパーセントは重量基準である。用いたすべての材料は、特に指示しない限り、ウィスコンシン州、ミルウォーキーのアルドリッチケミカルカンパニー製である。特に指示しない限り、すべての例を、(酸素及び水蒸気の通常の量の存在下で)周囲気圧で調製した。
【0089】
一般的な試料調製の手順は、次の通りであった。促進添加剤の望ましい量を、エポキシ含有組成物と混合した。得られた混合物を、必要ならば、昇温し、成分の完全な溶解を確実にした。混合物を使用前に室温(23℃)に冷却させた。硬化性混合物を調製するために、カチオン有機金属触媒の所望の量を計り取り、所望の量の溶剤を添加して触媒を溶解し、次に、エポキシ及び促進剤を含有する混合物の適切な量を添加し、その後に、木製塗布用棒を用いて手で完全に混合した。
【0090】
試験
示差走査熱量測定(DSC)
示差走査熱量測定(DSC)を、TAインストルメント社(デラウェア州、ニューキャッスル)912 DSC上で行い、カチオン重合性モノマーの熱硬化に相応する発熱反応熱を測定するために用いた。DSC試料は一般に、6〜12mgであった。試験を、密封したアルミニウム製の、液体試料パン内で、室温(23℃)〜300℃、10℃/分の速度で行った。反応プロセスからのデータは、熱流対温度を示す図表上にグラフ化した。発熱ピーク下の積分した面積は、反応の間に生み出された全発熱エネルギーを表し、ジュール/グラム(J/g)単位で測定される。発熱エネルギーは硬化の程度、すなわち、重合度に比例している。発熱プロフィル、すなわち、開始温度(反応が起こり始める温度)、ピーク温度及び最終温度が、材料を硬化するために必要な条件についての情報を提供する。いずれかの特定の反応について、発熱の開始及び/またはピーク温度が低い方へ移行することは、反応材料が、より短いゲル化時間と相関する、より低い温度で重合していることを示す。
【0091】
示差光熱量測定(Differential Photo−calorimetry)(DPC)
示差光熱量測定を用いて、露光する間にカチオン重合性モノマーの光開始硬化に相応する発熱反応熱を測定した。DPC試料の大きさは一般に、6〜12mgであった。試験を、TAインストルメント社製930示差光熱量計(デラウェア州、ニューキャッスル製のTAインストルメント社)を備えた、TAインストルメント社製912 DSCベースで、窒素パージ下、開放アルミニウムパン内で行った。200ワットの水銀ランプを、光分解工程のために用いた。代表的な実験において、試料を、全DPC実験を通じて所望の温度で等温に保持する。試料を2分間、暗い状態に置き、次いでシャッターを開放して試料を5分間、照射させ、その後、シャッターを閉じ、試料を更に2分間、暗い状態に置く。DPC実験の後すぐに、試料に蓋をし、上に記載したようにDSC実験において10℃/分で加熱した。DPC実験からのデータは、熱流対温度を示す図表上にグラフ化した。発熱ピーク下の積分した面積は、照射の間に生み出された全発熱エネルギーを表し、ジュール/グラム(J/g)単位で測定される。発熱エネルギーは硬化の程度に比例し、いずれの特定の反応についても、全DPC発熱エネルギーの増大は、照射する間により高度の硬化を示す。
【0092】
引張試験用試料の作製
引張試験用試料を作製するために、ASTM D638−98タイプIVダイを用いて厚さ0.79ミリメートル(mm)のシリコーンゴム材料から型を切り取った。サンドイッチ構造体を作製するために、最初にアルミニウムパネル上に従来のシリコン剥離層を、剥離面を上にして被覆した100ミクロメーター(μm)のポリエステルシートを置いた。シリコーンゴムの型を、この層の上に置いた。硬化される重合性組成物を、型に適用した。剥離面を下にして剥離層の被覆された第2の*ポリエステルを、型の上に置き、ゴムローラを用いて試料を均し、気泡を除去した。特定の例で記載したように、試料を、いろいろな温度サイクルで硬化した。この手順を用いて、再現可能な試料を引張試験のために作製した。
【0093】
引張試験の手順
引張試験を、ASTM D638−98引張試験方法標準に記載された方法に従って行った。試料を5mm/分の歪み速度で試験した。インストロンモデル1122引張試験機を試験のために用いた。極限引張力は、MPa単位で記録され、破断点強度であり、伸びのパーセントを、伸びの尺度としてクロスヘッドの移動を用いて%単位で記録し、引張エネルギーの吸収が、破断点の引張エネルギーを試料の表面積で割った値であり、1ミリメートル当たりのニュートン(n/mm)単位で記録し、弾性率は、MPa単位で記録し、1%伸び率における弾性率である。
【0094】
用語の説明
で用いた成分の同定
ERL4221:3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート(コネチカット州、ダンバリーのユニオンカーバイドコーポレーション製のERL−4221)
EPON 828:ビスフェノールAのジグリシジルエーテル(テキサス州、ヒューストンのシェルケミカルカンパニー製のEPON 828)
CHDM:1,4−シクロヘキサンジメタノール
CHAA:シクロヘキシル酢酸
CHCA:シクロヘキサンカルボン酸
MMOB:メチル2−メトキシベンゾエート
o−HAP:2’−ヒドロキシアセトフェノン
開始剤
(メシチレン)2Fe(SbF62:ビス−(eta6−メシチレン)鉄(+1)ビス−ヘキサフルオロアンチモネート
CpFeXylSbF6:(eta6−キシレン)(eta5−シクロペンタジエニル)−鉄(+1)ヘキサフルオロアンチモネート
Cp:シクロペンタジエニル
Xyl:キシレン(混合異性体)
【0095】
比較例C1
促進添加剤を含有しなかったエポキシ含有組成物のゲル化時間を確認するために、(メシチレン)2Fe(SbF62を0.02g、アルミニウム秤量皿(VWR/ペンシルベニア州、ウェストチェスターのサイエンティックプロダクツ社製)中に秤量し、その後に、プロピレンカーボネート溶剤0.04gを添加した。溶剤中の開始剤の溶解を助けるために、混合物を木製塗布用棒(メイン州、ギルフォードのハードウッドプロダクツ社製のピューリタンブランド)を用いて撹拌した。得られた触媒溶液に、以下、「モノマー混合物」と称される、EPON 828/1,6−ヘキサンジオール/CHDM混合物(混合物の全重量に対して88:6:6重量%の比)(w/w)を2.0g、添加した。モノマー混合物を調製するために、最初に、1,6−ヘキサンジオールとCHDMとの50:50重量比の混合物を60℃で加熱し、得られた液体を室温に冷却させ、次に、この液体12重量%を、適切な量のEPON 828に添加した。得られた混合物を80℃で30分間、加熱し、次いで30秒間、激しく振り、均一な溶液を得たが、それは、30分にわたって室温に冷却した時に、乳白色になった。次に、モノマー混合物を触媒溶液に添加し、それをその後に、木製塗布用棒を用いて手で完全に混合した。得られた調合物を、次いで、125℃に予熱されたホットプレート上に置き、ゲル化時間を測定した。ゲルの存在を、液体樹脂の固化が示した。ゲル化時間または硬化時間を確認するために、棒で試料に触れ、試料が液体ではなくなった時を記録した。このにおいて、ゲルは、1分27秒後に形成された。
【0096】
1〜3
クラス1促進添加剤1重量%を熱硬化性組成物に添加する効果を調べた。エポキシ樹脂中の促進添加剤(「添加剤」)の原液を調製するために、ガラスジャー中で、添加剤0.1gとEPON 828/1,6−ヘキサンジオール/1,4−CHDM(88:6:6w/w)混合物(比較例C1に記載されているのと同様にして調製した)10gとを配合した。エポキシ/促進剤混合物を保有するガラスジャーに蓋をし、80℃に予熱されていたデスパッチLFD 1−42−3オーブン(ミネソタ州、ミネアポリスのデスパッチインダストリーズ社製)内に、約30分間、置き、成分を完全に溶解することを確実にした。加熱後に、ジャーを15秒間、激しく振り、次に、混合物を、使用前に室温(23℃)に冷却させた。これは、エポキシ中に添加剤1%w/w溶液を生じた。
【0097】
各々の例について、(メシチレン)2Fe(SbF62を0.02g、アルミニウム皿に秤量し、その後に、プロピレンカーボネート溶剤0.04gを添加した。溶剤中に開始剤を溶解するのを助けるために、混合物を、木製塗布用棒を用いて撹拌した。得られた触媒溶液に、適した原液2.0gを添加し、その後に、木製塗布用棒を用いて、手で、完全に混合した。
【0098】
ゲル化時間を、比較例C1に記載した熱重合手順に従って125℃で確認した。表1のデータは、使用した条件下で、クラス1タイプの促進添加剤を混入することにより、比較例C1で得られたゲル化時間と比較した時に調合物のゲル化時間を減少させたことを示す。
【0099】
【表1】
Figure 0004828775
【0100】
4〜6
クラス1促進添加剤2重量%を熱硬化性組成物に添加する効果を調べた。エポキシ樹脂中の促進添加剤の原液を調製するために、ガラスジャー中で、添加剤0.2gとEPON 828/1,6−ヘキサンジオール/1,4−CHDM(88:6:6w/w)混合物(比較例C1に記載されているのと同様にして調製した)10gとを配合した。エポキシ/促進剤混合物を保有するガラスジャーに蓋をし、80℃に予熱されたデスパッチLFD 1−42−3オーブン(ミネソタ州、ミネアポリスのデスパッチインダストリーズ社製)内に、約30分間、置き、成分を完全に溶解することを確実にした。加熱後に、ジャーを激しく振り、次に、混合物を、使用前に室温(23℃)に冷却させた。これは、エポキシ中の添加剤2%w/w溶液を生じた。
【0101】
各々の例について、(メシチレン)2Fe(SbF62を0.02g、アルミニウム皿に秤量し、その後に、プロピレンカーボネート溶剤0.04gを添加した。溶剤中に開始剤を溶解するのを助けるために、混合物を、木製塗布用棒を用いて撹拌した。得られた触媒溶液に、適した原液2.0gを添加し、その後に、木製塗布用棒を用いて、手で、完全に混合した。
【0102】
ゲル化時間を、比較例C1に記載した熱重合手順に従って125℃で確認した。表1のデータは、使用した条件下で、クラス1タイプの促進添加剤を混入することにより、比較例C1で得られたゲル化時間と比較した時に調合物のゲル化時間を減少させたことを示す。
【0103】
【表2】
Figure 0004828775
【0104】
比較例C2
促進添加剤を含有しない光開始エポキシ組成物のゲル化時間を確認するために、CpFeXylSbF6を0.02g、アルミニウム秤量皿に秤量し、その後に、プロピレンカーボネート溶剤0.04gを添加した。溶剤中の開始剤の溶解を助けるために、混合物を木製塗布用棒を用いて撹拌した。得られた触媒溶液に、EPON 828/1,6−ヘキサンジオール/CHDM(88:6:6w/w)混合物(比較例C1に記載したのと同様にして調製した)を2.0g、添加し、その後に、木製塗布用棒を用いて手で完全に混合した。次に、得られた試料を、ケーシングのガラスカバーを取り除いた500ワットのタングステンハロゲン電球下に置いた。試料を光源から21cm離して配置し、ゲル化(gellation)が観察されるまで、連続的に照射した。ゲルの存在は、液体樹脂の固化によって示された。この比較例において、ゲルは、3分30秒後に形成された。
【0105】
7〜9
クラス1促進添加剤を含有する光開始エポキシ組成物のゲル化時間を調べた。エポキシ樹脂中の異なったクラス1促進添加剤の原液を調製するために、ガラスジャー中で、添加剤0.1gとEPON 828/1,6−ヘキサンジオール/1,4−CHDM(88:6:6w/w)混合物(比較例C1に記載されているのと同様にして調製した)10gとを配合した。エポキシ/促進剤混合物を保有するガラスジャーに蓋をし、80℃に予熱されたデスパッチLFD 1−42−3オーブン(ミネソタ州、ミネアポリスのデスパッチインダストリーズ社製)内に、約30分間、置き、成分を完全に溶解することを確実にした。加熱後に、ジャーを15秒間、激しく振り、次に、混合物を、使用前に室温(23℃)に冷却させた。これは、エポキシ中の添加剤1%w/w溶液を生じた。
【0106】
各々の例について、CpFeXylSbF6を0.02g、アルミニウム皿に秤量し、その後に、プロピレンカーボネート溶剤0.04gを添加した。溶剤中に開始剤を溶解するのを助けるために、混合物を、木製塗布用棒を用いて撹拌した。得られた触媒溶液に、適した原液2.0gを添加し、その後に、木製塗布用棒を用いて、手で、完全に混合した。ゲル化時間を、比較例C2に記載した光重合手順に従って確認し、結果を表3に示す。表3のデータは、クラス1タイプの促進添加剤をエポキシ含有調合物中に混入することにより、比較例C2で得られたゲル化時間と比較した時にゲル化時間を減少させることを示す。
【0107】
【表3】
Figure 0004828775
【0108】
10〜12
クラス1促進添加剤を含有する光開始エポキシ組成物のゲル化時間を調べた。エポキシ樹脂中の異なったクラス1促進添加剤の原液を調製するために、ガラスジャー中で、添加剤0.2gとEPON 828/1,6−ヘキサンジオール/1,4−CHDM(88:6:6w/w)混合物(比較例C1に記載されているのと同様にして調製した)10gとを配合した。エポキシ/促進剤混合物を保有するガラスジャーに蓋をし、80℃に予熱されたデスパッチLFD 1−42−3オーブン(ミネソタ州、ミネアポリスのデスパッチインダストリーズ社製)内に、約30分間、置き、成分を完全に溶解することを確実にした。加熱後に、ジャーを15秒間、激しく振り、次に、混合物を、使用前に室温(23℃)に冷却させた。これは、エポキシ中の添加剤2%w/w溶液を生じた。
【0109】
各々の例について、CpFeXylSbF6を0.02g、アルミニウム皿に秤量し、その後に、プロピレンカーボネート溶剤0.04gを添加した。溶剤中に開始剤を溶解するのを助けるために、混合物を、木製塗布用棒を用いて撹拌した。得られた触媒溶液に、適した原液2.0gを添加し、その後に、木製塗布用棒を用いて、手で、完全に混合した。ゲル化時間を、比較例C2に記載した光重合手順に従って確認し、結果を表4に示す。表4のデータは、クラス1タイプの促進添加剤をエポキシ含有調合物中に混入することにより、比較例C2で得られたゲル化時間と比較した時にゲル化時間を減少させることを示す。更に、例7〜9と比較したとき、表4のデータは、2%の促進添加剤を混入することにより、1%の促進添加剤を含有する調合物より速いゲル化時間を提供したことを示す。
【0110】
【表4】
Figure 0004828775
【0111】
13〜15及び比較例C3
いろいろなクラス1促進添加剤を光開始組成物に添加する効果を調べた。これらの例について、エポキシ組成物の光開始重合を、促進添加剤を用いて及び用いずに、示差光熱量測定(DPC)を用いて調査し、その後に、示差走査熱量測定(DSC)を用いて調査した。エポキシ樹脂中1%の添加剤を有する原液を調製するために、ガラスジャー中で、添加剤0.1gとEPON 828/1,6−ヘキサンジオール/1,4−CHDM(88:6:6w/w)混合物(比較例C1に記載されているのと同様にして調製した)10gとを配合した。エポキシ/促進剤混合物を保有するガラスジャーに蓋をし、80℃に予熱されたデスパッチLFD 1−42−3オーブン内に、約30分間、置き、促進剤を最も多く溶解することを確実にした。加熱後に、ジャーを15秒間、激しく振り、次に、混合物を、使用前に室温(23℃)に冷却させた。これは、エポキシ中の添加剤1%w/w溶液を生じた。
【0112】
各々の例について、CpFeXylSbF6を0.02g、アルミニウム皿に秤量し、その後に、プロピレンカーボネート溶剤0.04gを添加した。溶剤中に開始剤を溶解するのを助けるために、混合物を、木製塗布用棒を用いて撹拌した。得られた触媒溶液に、適した原液2.0gを添加し、その後に、木製塗布用棒を用いて、手で、完全に混合した。
【0113】
比較例C3について、CpFeXylSbF6を0.02g、アルミニウム皿に秤量し、その後に、プロピレンカーボネート溶剤0.04gを添加した。溶剤中に開始剤を溶解するのを助けるために、混合物を、木製塗布用棒を用いて撹拌した。得られた触媒溶液に、EPON 828/1,6−ヘキサンジオール/CHDM(88:6:6w/w)混合物(比較例C1に記載したのと同様にして調製した)を2.0g、添加し、その後に、木製塗布用棒を用いて手で完全に混合した。
【0114】
及び比較例の得られた溶液に光を当て、次に、本明細書に記載したDPC及びDSC試験方法によって加熱し、結果を表5に示した。DPC試験を、30℃で行った。本質的に発熱は、DPCの例または比較例のいずれにも観察されなかった。しかしながら、促進添加剤の効果を、後続のDSC試験からみることができる。表5のデータは、クラス1添加剤1%を添加した時に発熱ピーク温度が、より低い温度に移行することを示す。DSC発熱エネルギーを、55℃〜225℃の曲線下、エネルギーを積分することによって求めた。次に、比較例C3のピーク最高温度(117℃)より上及び下の両方の積分された発熱エネルギーの量を、計算した。比較例のピーク温度の下の全DSC発熱エネルギーの面積がより大きくなると、それだけ硬化度がより大きくなる。有意により大きな硬化度が、添加剤が存在していなかった対照標準に対して、クラス1添加剤1%を添加した時に得られたことが、表5から見ることができる。
【0115】
【表5】
Figure 0004828775
【0116】
16〜18
いろいろなクラス1促進添加剤を光開始組成物に添加する効果を調べた。これらの例について、エポキシ組成物の光開始重合を、促進添加剤を用いて及び用いずに、示差光熱量測定(DPC)を用いて調査し、その後に、示差走査熱量測定(DSC)を用いて調査した。エポキシ樹脂中に2%の添加剤を有する原液を調製するために、ガラスジャー中で、添加剤0.2gとEPON 828/1,6−ヘキサンジオール/1,4−CHDM(88:6:6w/w)混合物(比較例C1に記載されているのと同様にして調製した)10gとを配合した。エポキシ/促進剤混合物を保有するガラスジャーに蓋をし、80℃に予熱されたデスパッチLFD 1−42−3オーブン内に、約30分間、置き、促進剤を最も多く溶解することを確実にした。加熱後に、ジャーを15秒間、激しく振り、次に、混合物を、使用前に室温(23℃)に冷却させた。これは、エポキシ中に添加剤2%w/w溶液を生じた。
【0117】
各々の例について、CpFeXylSbF6を0.02g、アルミニウム皿に秤量し、その後に、プロピレンカーボネート溶剤0.04gを添加した。溶剤中に開始剤を溶解するのを助けるために、混合物を、木製塗布用棒を用いて撹拌した。得られた触媒溶液に、適した原液2.0gを添加し、その後に、木製塗布用棒を用いて、手で、完全に混合した。得られた例の溶液は、本明細書に記載したDPC及びDPS試験法に従い光、次に熱を適用して、表6の結果を得た。DPC試験は30℃で行った。本質的に発熱は、DPCの例について観察されなかった。表5のデータと比較したとき、表6のデータは、クラス1添加剤2%がエポキシ調合物中に混入されたときに発熱ピーク温度が更により低い温度に移行することを示す。DSC発熱エネルギーを、55℃〜225℃の曲線下、エネルギーを積分することによって求めた。次に、比較例C3のピーク最高温度(117℃)より上及び下の両方の積分された発熱エネルギーの量を、計算した。比較例のピーク温度より下の全DSC発熱エネルギーの面積がより大きくなると、それだけ硬化度がより大きくなる。有意により大きな硬化度は、添加剤が存在していなかった対照標準、C3に対して、クラス1添加剤2%を添加した時に得られたことが、表6からみることができる。
【0118】
【表6】
Figure 0004828775
【0119】
19〜22及び比較例C4
クラス1促進添加剤を熱硬化性組成物に添加する効果を、DSCによって調べた。0.25%、0.5%、1%、及び2%のo−アニス酸を有する促進剤/エポキシ混合物の原液を調製するために、それぞれ、o−アニス酸0.025g、0.05g、0.1g、0.2gを、EPON 828/1,6−ヘキサンジオール/1,4−CHDM(88:6:6w/w)混合物(比較例C1に記載されているのと同様にして調製した)10gを保有する別個のガラス瓶に添加し、木製塗布機を用いて、手で十分に混合した。各々の例について、(メシチレン)2Fe(SbF62を0.02g、アルミニウム皿に秤量し、その後に、プロピレンカーボネート溶剤0.04gを添加した。溶剤中に開始剤を溶解するのを助けるために、混合物を、木製塗布用棒を用いて撹拌した。得られた触媒溶液に、適した原液2.0gを添加し、その後に、木製塗布用棒を用いて、手で、完全に混合した。
【0120】
比較例C4について、(メシチレン)2Fe(SbF62を0.02g、アルミニウム皿に秤量し、その後に、プロピレンカーボネート溶剤0.04gを添加した。溶剤中に開始剤を溶解するのを助けるために、混合物を、木製塗布用棒を用いて撹拌した。得られた触媒溶液に、EPON 828/1,6−ヘキサンジオール/CHDM(88:6:6w/w)混合物(比較例C1に記載したのと同様にして調製した)を2.0g、添加し、その後に、木製塗布用棒を用いて手で完全に混合した。
【0121】
試料を、試験の節に記載したようにDSCによって分析し、試料は、50℃〜225℃で積分された。表7の結果は、少量のクラス1の促進添加剤が、添加剤を混入しなかった比較例C4と比較したとき、ピーク発熱温度を有意に低減させることを示す。更に、添加剤の濃度を増大させることにより、継続的にピーク発熱温度の低下をもたらした。
【0122】
【表7】
Figure 0004828775
【0123】
23〜25及び比較例C5
クラス1促進添加剤を熱硬化性組成物に添加する効果を、調べた。0.5%、1%、及び2%の安息香酸を有する促進剤/エポキシ混合物の原液を調製するために、それぞれ、0.4g、0.8g、及び1.6gを、EPON 828/1,6−ヘキサンジオール/CHDM(88:6:6w/w)混合物(比較例C1に記載されているのと同様にして調製した)80gを保有する別個のガラス瓶に添加し、木製塗布機を用いて、手で十分に混合した。各々の例について、(メシチレン)2Fe(SbF62を0.2g、アルミニウム皿に秤量し、その後に、プロピレンカーボネート溶剤0.4gを添加した。溶剤中に開始剤を溶解するのを助けるために、混合物を、木製塗布用棒を用いて撹拌した。得られた触媒溶液に、適した原液40gを添加し、その後に、木製塗布用棒を用いて、手で、完全に混合した。
【0124】
比較例C5について、(メシチレン)2Fe(SbF62を0.2g、アルミニウム皿に秤量し、その後に、プロピレンカーボネート溶剤0.4gを添加した。溶剤中に開始剤を溶解するのを助けるために、混合物を、木製塗布用棒を用いて撹拌した。得られた触媒溶液に、EPON 828/1,6−ヘキサンジオール/CHDM(88:6:6w/w)混合物(比較例C1に記載したのと同様にして調製した)を40g、添加し、その後に、木製塗布用棒を用いて手で完全に混合した。
【0125】
引張試験の試料を、試験の節に記載したように作製した。試料を硬化するために、室温(23℃)から120℃に40分間にわたって加熱し、その後に、3時間、120℃に保持した。引張試験を試験の節に記載したように行った。引張試験の結果を表8に示す。表8の結果から見ることができるように、全ての場合において、クラス1添加剤の安息香酸の存在は、増大した弾性率、破断点歪みのパーセント、及び引張エネルギー吸収を有する材料をもたらす。更に、例23〜25は、安息香酸のレベルを増大させることにより、引張エネルギー吸収の増大によって明らかにされるようなより強靭な硬化材料を実際にもたらしたことを示す。
【0126】
【表8】
Figure 0004828775
【0127】
26〜29
クラス2促進添加剤1重量%を熱硬化性組成物に添加する効果を調べた。エポキシ樹脂中の促進添加剤(「添加剤」)の原液を調製するために、ガラスジャー中で、添加剤0.1gとEPON 828/1,6−ヘキサンジオール/1,4−CHDM(88:6:6w/w)混合物(比較例C1に記載されているのと同様にして調製した)10gとを配合した。エポキシ/促進剤混合物を保有するガラスジャーに蓋をし、80℃に予熱されていたデスパッチLFD 1−42−3オーブン(ミネソタ州、ミネアポリスのデスパッチインダストリーズ社製)内に、約30分間、置き、成分を完全に溶解することを確実にした。加熱後に、ジャーを15秒間、激しく振り、次に、混合物を、使用前に室温(23℃)に冷却させた。これは、エポキシ中に添加剤1%w/w溶液を生じた。
【0128】
各々の例について、(メシチレン)2Fe(SbF62を0.02g、アルミニウム皿に秤量し、その後に、プロピレンカーボネート溶剤0.04gを添加した。溶剤中に開始剤を溶解するのを助けるために、混合物を、木製塗布用棒を用いて撹拌した。得られた触媒溶液に、適した原液2.0gを添加し、その後に、木製塗布用棒を用いて、手で、完全に混合した。
【0129】
ゲル化時間を、比較例C1に記載した熱重合手順に従って125℃で確認した。表9のデータは、使用した条件下で、クラス2タイプの促進添加剤を混入することにより、比較例C1で得られたゲル化時間と比較した時に調合物のゲル化時間を減少させたことを示す。
【0130】
【表9】
Figure 0004828775
【0131】
30〜33
クラス2促進添加剤2重量%を熱硬化性組成物に添加する効果を調べた。エポキシ樹脂中の促進添加剤(「添加剤」)の原液を調製するために、ガラスジャー中で、添加剤0.2gとEPON 828/1,6−ヘキサンジオール/1,4−CHDM(88:6:6w/w)混合物(比較例C1に記載されているのと同様にして調製した)10gとを配合した。エポキシ/促進剤混合物を保有するガラスジャーに蓋をし、80℃に予熱されていたデスパッチLFD 1−42−3オーブン(ミネソタ州、ミネアポリスのデスパッチインダストリーズ社製)内に、約30分間、置き、成分を完全に溶解することを確実にした。加熱後に、ジャーを15秒間、激しく振り、次に、混合物を、使用前に室温(23℃)に冷却させた。これは、エポキシ中に添加剤1%w/w溶液を生じた。
【0132】
各々の例について、(メシチレン)2Fe(SbF62を0.02g、アルミニウム皿に秤量し、その後に、プロピレンカーボネート溶剤0.04gを添加した。溶剤中に開始剤を溶解するのを助けるために、混合物を、木製塗布用棒を用いて撹拌した。得られた触媒溶液に、適した原液2.0gを添加し、その後に、木製塗布用棒を用いて、手で、完全に混合した。
【0133】
ゲル化時間を、比較例C1に記載した熱重合手順に従って125℃で確認した。表10のデータは、使用した条件下で、クラス2タイプの促進添加剤を混入することにより、比較例C1で得られたゲル化時間と比較した時に調合物のゲル化時間を減少させたことを示す。
【0134】
【表10】
Figure 0004828775
【0135】
34〜37
クラス2促進添加剤を含有する光開始エポキシ組成物のゲル化時間を調べた。エポキシ樹脂中の異なったクラス2促進添加剤の原液を調製するために、ガラスジャー中で、添加剤0.1gとEPON 828/1,6−ヘキサンジオール/1,4−CHDM(88:6:6w/w)混合物(比較例C1に記載されているのと同様にして調製した)10gとを配合した。エポキシ/促進剤混合物を保有するガラスジャーに蓋をし、80℃に予熱されたデスパッチLFD 1−42−3オーブン(ミネソタ州、ミネアポリスのデスパッチインダストリーズ社製)内に、約30分間、置き、成分を完全に溶解することを確実にした。加熱後に、ジャーを15秒間、激しく振り、次に、混合物を、使用前に室温(23℃)に冷却させた。これは、エポキシ中に添加剤1%w/w溶液を生じた。
【0136】
各々の例について、CpFeXylSbF6を0.02g、アルミニウム皿に秤量し、その後に、プロピレンカーボネート溶剤0.04gを添加した。溶剤中に開始剤を溶解するのを助けるために、混合物を、木製塗布用棒を用いて撹拌した。得られた触媒溶液に、適した原液2.0gを添加し、その後に、木製塗布用棒を用いて、手で、完全に混合した。ゲル化時間を、比較例C2に記載した光重合手順に従って確認し、結果を表11に示す。表11のデータは、クラス2タイプの促進添加剤をエポキシ含有調合物中に混入することにより、比較例C2で得られたゲル化時間と比較した時にゲル化時間を減少させることを示す。
【0137】
【表11】
Figure 0004828775
【0138】
38〜41
クラス2促進添加剤を含有する光開始エポキシ組成物のゲル化時間を調べた。エポキシ樹脂中の異なったクラス2促進添加剤の原液を調製するために、ガラスジャー中で、添加剤0.2gとEPON 828/1,6−ヘキサンジオール/1,4−CHDM(88:6:6w/w)混合物(比較例C1に記載されているのと同様にして調製した)10gとを配合した。エポキシ/促進剤混合物を保有するガラスジャーに蓋をし、80℃に予熱されたデスパッチLFD 1−42−3オーブン(ミネソタ州、ミネアポリスのデスパッチインダストリーズ社製)内に、約30分間、置き、成分を完全に溶解することを確実にした。加熱後に、ジャーを15秒間、激しく振り、次に、混合物を、使用前に室温(23℃)に冷却させた。これは、エポキシ中に添加剤2%w/w溶液を生じた。
【0139】
各々の例について、CpFeXylSbF6を0.02g、アルミニウム皿に秤量し、その後に、プロピレンカーボネート溶剤0.04gを添加した。溶剤中に開始剤を溶解するのを助けるために、混合物を、木製塗布用棒を用いて撹拌した。得られた触媒溶液に、適した原液2.0gを添加し、その後に、木製塗布用棒を用いて、手で、完全に混合した。ゲル化時間を、比較例C2に記載した手順に従って確認し、結果を表12に示す。表12のデータは、クラス2タイプの促進添加剤をエポキシ含有調合物中に混入することにより、比較例C2で得られたゲル化時間と比較した時にゲル化時間を減少させることを示す。
【0140】
【表12】
Figure 0004828775
【0141】
42〜43及び比較例C6
クラス3促進添加剤を熱硬化性組成物に添加する効果を調べた。エポキシ樹脂中1%、及び2%のメチルサリチレートの原液を調製するために、ガラスジャー中に、それぞれ、添加剤0.1g及び0.2gを、EPON 828/1,6−ヘキサンジオール/1,4−CHDM(88:6:6w/w)混合物(比較例C1に記載されているのと同様にして調製した)10gと配合した。エポキシ/促進剤混合物を保有するガラスジャーに蓋をし、80℃に予熱されたデスパッチLFD 1−42−3オーブン(ミネソタ州、ミネアポリスのデスパッチインダストリーズ社製)内に、約30分間、置き、成分を完全に溶解することを確実にした。加熱後に、ジャーを15秒間、激しく振り、次に、混合物を、使用前に室温(23℃)に冷却させた。これは、エポキシ中の添加剤1%及び2%w/w溶液を生じた。
【0142】
各々の例について、(メシチレン)2Fe(SbF62を0.02g、アルミニウム皿に秤量し、その後に、プロピレンカーボネート溶剤0.04gを添加した。溶剤中に開始剤を溶解するのを助けるために、混合物を、木製塗布用棒を用いて撹拌した。得られた触媒溶液に、適した原液2.0gを添加し、その後に、木製塗布用棒を用いて、手で、完全に混合した。
【0143】
比較例C6について、(メシチレン)2Fe(SbF62を0.02g、アルミニウム皿に秤量し、その後に、プロピレンカーボネート溶剤0.04gを添加した。溶剤中に開始剤を溶解するのを助けるために、混合物を、木製塗布用棒を用いて撹拌した。得られた触媒溶液に、EPON 828/1,6−ヘキサンジオール/CHDM(88:6:6w/w)混合物(比較例C1に記載したのと同様にして調製した)を2.0g、添加し、その後に、木製塗布用棒を用いて手で完全に混合した。
【0144】
試料を、試験の節に記載したようにDSC実験によって分析し、50℃〜225℃で積分した。表13の結果は、使用した条件下で、クラス3の促進添加剤を混入することにより、添加剤を混入しなかった比較例C6のデータと比較したとき、より低いピーク発熱温度、100℃でのより高い転化のパーセントを有する硬化をもたらしたことを示す。
【0145】
【表13】
Figure 0004828775
【0146】
44〜45
クラス4促進添加剤を熱硬化性組成物に添加する効果を調べた。エポキシ樹脂中1%、及び2%のo−ヒドロキシアセトフェノンの原液を調製するために、ガラスジャー中に、それぞれ、添加剤0.1g、0.2gを、EPON 828/1,6−ヘキサンジオール/1,4−CHDM(88:6:6w/w)混合物(比較例C1に記載されているのと同様にして調製した)10gと配合した。エポキシ/促進剤混合物を保有するガラスジャーに蓋をし、80℃に予熱されていたデスパッチLFD 1−42−3オーブン(ミネソタ州、ミネアポリスのデスパッチインダストリーズ社製)内に、約30分間、置き、成分を完全に溶解することを確実にした。加熱後に、ジャーを15秒間、激しく振り、次に、混合物を、使用前に室温(23℃)に冷却させた。これは、エポキシ中の添加剤1%及び2%w/w溶液を生じた。
【0147】
各々の例について、(メシチレン)2Fe(SbF62を0.02g、アルミニウム皿に秤量し、その後に、プロピレンカーボネート溶剤0.04gを添加した。溶剤中に開始剤を溶解するのを助けるために、混合物を、木製塗布用棒を用いて撹拌した。得られた触媒溶液に、適した原液2.0gを添加し、その後に、木製塗布用棒を用いて、手で、完全に混合した。
【0148】
試料を、試験の節に記載したようにDSC実験によって分析し、50℃〜225℃で積分した。表14の結果は、使用した条件下で、クラス4タイプの促進添加剤を混入することにより、添加剤を混入しなかった比較例C6のデータと比較したとき、より低いピーク発熱温度、100℃でのより高い転化のパーセントを有する硬化をもたらすことを示す。
【0149】
【表14】
Figure 0004828775
【0150】
46〜47
いろいろな量のクラス4促進添加剤を熱硬化性組成物に添加することによるゲル化時間に及ぼす効果を調べた。エポキシ樹脂中1%、及び2%のo−ヒドロキシアセトフェノンの原液を調製するために、ガラスジャー中に、それぞれ、添加剤0.1g及び0.2gを、EPON 828/1,6−ヘキサンジオール/1,4−CHDM(88:6:6w/w)混合物(比較例C1に記載されているのと同様にして調製した)10gと配合した。エポキシ/促進剤混合物を保有するガラスジャーに蓋をし、80℃に予熱されていたデスパッチLFD 1−42−3オーブン(ミネソタ州、ミネアポリスのデスパッチインダストリーズ社製)内に、約30分間、置き、成分を完全に溶解することを確実にした。加熱後に、ジャーを15秒間、激しく振り、次に、混合物を、使用前に室温(23℃)に冷却させた。これは、エポキシ中に添加剤1%及び2%w/w溶液を生じた。
【0151】
各々の例について、(メシチレン)2Fe(SbF62を0.02g、アルミニウム皿に秤量し、その後に、プロピレンカーボネート溶剤0.04gを添加した。溶剤中に開始剤を溶解するのを助けるために、混合物を、木製塗布用棒を用いて撹拌した。得られた触媒溶液に、適した原液2.0gを添加し、その後に、木製塗布用棒を用いて、手で、完全に混合した。
【0152】
ゲル化時間を、比較例C1に記載した手順に従って125℃で確認した。表15の結果は、使用した条件下で、クラス4タイプの促進添加剤を混入することにより、添加剤を混入しなかった比較例C1のデータと比較したとき、調合物のゲル化時間を減少させたことを示す。
【0153】
【表15】
Figure 0004828775
【0154】
48〜49
クラス4促進添加剤を含有する光開始エポキシ組成物のゲル化時間を調べた。エポキシ樹脂中の異なったクラス4添加剤の1%及び2%の原液を調製するために、ガラスジャー中で、o−ヒドロキシアセトフェノン0.1g及び0.2gとEPON 828/1,6−ヘキサンジオール/1,4−CHDM(88:6:6w/w)混合物(比較例C1に記載されているのと同様にして調製した)10gとを配合した。エポキシ/促進剤混合物を保有するガラスジャーに蓋をし、80℃に予熱されていたデスパッチLFD 1−42−3オーブン(ミネソタ州、ミネアポリスのデスパッチインダストリーズ社製)内に、約30分間、置き、成分を完全に溶解することを確実にした。加熱後に、ジャーを15秒間、激しく振り、次に、混合物を、使用前に室温(23℃)に冷却させた。これは、エポキシ中o−ヒドロキシアセトフェノン1%及び2%w/w溶液を生じた。
【0155】
各々の例について、CpFeXylSbF6を0.02g、アルミニウム皿に秤量し、その後に、プロピレンカーボネート溶剤0.04gを添加した。溶剤中に開始剤を溶解するのを助けるために、混合物を、木製塗布用棒を用いて撹拌した。得られた触媒溶液に、適した原液2.0gを添加し、その後に、木製塗布用棒を用いて、手で、完全に混合した。ゲル化時間を、比較例C2に記載した手順に従って確認し、結果を表16に示す。表16のデータは、この特定のクラス4添加剤が、比較例C2で得られたゲル化時間と比較した時に、CpFeXylSbF6塩によって触媒されたカチオン重合のための有効な促進剤でなかったことを示す。
【0156】
【表16】
Figure 0004828775
【0157】
比較例C7〜C10
触媒を有しないエポキシ含有組成物の熱的安定性に及ぼす効果を調べた。いろいろな量のクラス1添加剤を、本発明に有用な触媒を含有しなかったエポキシ含有組成物に添加し、DSCによって分析した。エポキシ樹脂中1%及び2%のクラス1添加剤の原液を調製するために、ガラスジャー中に、それぞれ、添加剤0.1g及び0.2gを、EPON 828/1,6−ヘキサンジオール/1,4−CHDM(88:6:6w/w)混合物(比較例C1に記載されているのと同様にして調製した)10gと配合した。エポキシ/促進剤混合物を保有するガラスジャーに蓋をし、80℃に予熱されていたデスパッチLFD 1−42−3オーブン(ミネソタ州、ミネアポリスのデスパッチインダストリーズ社製)内に、約30分間、置き、成分を完全に溶解することを確実にした。加熱後に、ジャーを15秒間、激しく振り、次に、混合物を、使用前に室温(23℃)に冷却させた。これは、エポキシ中に添加剤1%及び2%w/w溶液を生じた。試料を、試験の節に記載したようにDSC実験によって分析した。比較例C4のデータと比較したとき、表17の結果は、クラス1添加剤が、添加剤を混入しなかった時に観察された温度でエポキシ含有組成物と反応しないことを示す。更に、本発明の添加剤のために一般に用いたレベルにおいて、表17の比較例のデータは、高温でも、全発熱エネルギーが、本発明に有用な触媒を混入しなかった時に観察された全発熱のほんの数分の一に過ぎないことを示す。
【0158】
【表17】
Figure 0004828775
【0159】
比較例C11〜C14
いろいろな量のメチル2−メトキシベンゾエートをエポキシ含有組成物に添加することによるゲル化時間に及ぼす効果を調べた。エポキシ樹脂中1%、及び2%のメチル2−メトキシベンゾエートの原液を調製するために、ガラスジャー中に、それぞれ、添加剤0.1g及び0.2gを、EPON 828/1,6−ヘキサンジオール/1,4−CHDM(88:6:6w/w)混合物(比較例C1に記載されているのと同様にして調製した)10gと配合した。エポキシ/促進剤混合物を保有するガラスジャーに蓋をし、80℃に予熱されていた、デスパッチLFD 1−42−3オーブン(ミネソタ州、ミネアポリスのデスパッチインダストリーズ社製)内に、約30分間、置き、成分を完全に溶解することを確実にした。加熱後に、ジャーを15秒間、激しく振り、次に、混合物を、使用前に室温(23℃)に冷却させた。これは、エポキシ中メチル2−メトキシベンゾエート1%及び2%w/w溶液を生じた。
【0160】
比較例C11〜C12について、(メシチレン)2Fe(SbF62を0.02g、アルミニウム皿に秤量し、その後に、プロピレンカーボネート溶剤0.04gを添加した。溶剤中に開始剤を溶解するのを助けるために、混合物を、木製塗布用棒を用いて撹拌した。得られた触媒溶液に、適した原液2.0gを添加し、その後に、木製塗布用棒を用いて、手で、完全に混合した。
【0161】
比較例C13〜C14について、CpFeXylSbF6を0.02g、アルミニウム皿に秤量し、その後に、プロピレンカーボネート溶剤0.04gを添加した。溶剤中に開始剤を溶解するのを助けるために、混合物を、木製塗布用棒を用いて撹拌した。得られた触媒溶液に、適した原液2.0gを添加し、その後に、木製塗布用棒を用いて、手で、完全に混合した。
【0162】
C11及びC12のゲル化時間を、比較例C1に記載した手順に従って確認し、C13及びC14のゲル化時間を、比較例C2に記載した手順に従って確認し、結果を表18に示す。比較例C1及びC2と比較したとき、表18のデータは、メチル2−メトキシベンゾエートが、この発明に記載されたカチオン重合のための有用な促進添加剤ではないことを示す。
【0163】
【表18】
Figure 0004828775
【0164】
50〜51
いろいろな量のクラス3促進添加剤を熱硬化性組成物に添加することによるゲル化時間に及ぼす効果を調べた。エポキシ樹脂中1%、及び2%のメチルサリチレートの原液を調製するために、ガラスジャー中に、それぞれ、添加剤0.1g、0.2gを、EPON 828/1,6−ヘキサンジオール/1,4−CHDM(88:6:6w/w)混合物(比較例C1に記載されているのと同様にして調製した)10gと配合した。エポキシ/促進剤混合物を保有するガラスジャーに蓋をし、80℃に予熱されていたデスパッチLFD 1−42−3オーブン(ミネソタ州、ミネアポリスのデスパッチインダストリーズ社製)内に、約30分間、置き、成分を完全に溶解することを確実にした。加熱後に、ジャーを15秒間、激しく振り、次に、混合物を、使用前に室温(23℃)に冷却させた。これは、エポキシ中の添加剤1%及び2%w/w溶液を生じた。
【0165】
各々の例について、(メシチレン)2Fe(SbF62を0.02g、アルミニウム皿に秤量し、その後に、プロピレンカーボネート溶剤0.04gを添加した。溶剤中に開始剤を溶解するのを助けるために、混合物を、木製塗布用棒を用いて撹拌した。得られた触媒溶液に、適した原液2.0gを添加し、その後に、木製塗布用棒を用いて、手で、完全に混合した。
【0166】
ゲル化時間を、比較例C1に記載した手順に従って125℃で確認し、結果を表19に示した。表19のデータは、使用した条件下で、クラス3タイプの促進添加剤を混入することにより、添加剤を混入しなかった比較例C1で得られたゲル化時間と比較したとき、調合物のゲル化時間を減少させたことを示す。
【0167】
【表19】
Figure 0004828775
【0168】
52〜53
クラス3促進添加剤を含有する光開始エポキシ組成物のゲル化時間を調べた。エポキシ樹脂中の異なったクラス3添加剤の1%及び2%の原液を調製するために、ガラスジャー中で、メチルサリチレート0.1g及び0.2gとEPON 828/1,6−ヘキサンジオール/1,4−CHDM(88:6:6w/w)混合物(比較例C1に記載されているのと同様にして調製した)10gとを配合した。エポキシ/促進剤混合物を保有するガラスジャーに蓋をし、80℃に予熱されていたデスパッチLFD 1−42−3オーブン(ミネソタ州、ミネアポリスのデスパッチインダストリーズ社製)内に、約30分間、置き、成分を完全に溶解することを確実にした。加熱後に、ジャーを15秒間、激しく振り、次に、混合物を、使用前に室温(23℃)に冷却させた。これは、エポキシ中メチルサリチレート1%及び2%w/w溶液を生じた。
【0169】
各々の例について、CpFeXylSbF6を0.02g、アルミニウム皿に秤量し、その後に、プロピレンカーボネート溶剤0.04gを添加した。溶剤中に開始剤を溶解するのを助けるために、混合物を、木製塗布用棒を用いて撹拌した。得られた触媒溶液に、適した原液2.0gを添加し、その後に、木製塗布用棒を用いて、手で、完全に混合した。ゲル化時間を、比較例C2に記載した手順に従って確認し、結果を表20に示す。表20のデータは、この特定のクラス3添加剤が、比較例C2で得られたゲル化時間と比較した時に、CpFeXylSbF6塩によって触媒されたカチオン重合のための有効な促進剤でなかったことを示す。
【0170】
【表20】
Figure 0004828775

Claims (2)

  1. (1)エポキシ化合物を含むカチオン硬化性材料、
    (2)遷移金属原子に結合した少なくとも1個の炭素原子を含有する有機金属錯カチオンの塩の少なくとも1つ、前記有機金属錯カチオンの塩は下記式(I)を有している、
    [(L(LM]+q (I)
    (式中、
    MがCr、Ni、Mo、W、Mn、Tc、Re、Fe、Ru、Os、Co、Rh及びIrを含有する基から選択され、
    が、芳香族化合物及び複素環式芳香族化合物から選択され得る同一または異なった、パイ−電子を寄与する配位子の0、1または2個を表し、前記配位子が6個のパイ−電子をMの価電子殻に寄与することができ、
    が、シクロペンタジエニル及びインデニルアニオン基から選択され得る同一または異なった、パイ−電子を寄与する配位子の0、1または2個を表し、前記配位子が6個のパイ−電子をMの価電子殻に寄与することができ、
    qが1または2の値を有する整数、前記錯カチオンの残留電荷であり、
    y及びzが0または2、の値を有する整数であるが、ただし、y及びzの合計が2に等しく、
    Xが、トリス−(高フッ素化アルキル)スルホニルメチド、ビス−(高フッ素化アルキル)スルホニルイミド、トリス−(フッ素化アリール)スルホニルメチド、テトラキス−(フッ素化アリール)ボレート、有機スルホネートアニオン、及び金属またはメタロイドのハロゲン含有錯アニオンから選択されるアニオンであり、
    nが1または2の値を有する整数、前記錯カチオン上の電荷qを中和するために必要とされる錯アニオンの数、である)、及び
    (3)クラス1、2、3または4から選択された少なくとも1つの化合物を含む促進剤を含む組成物であって、
    クラス1が式IIIによって表された化合物を含み、
    Figure 0004828775
    クラス2が式IVによって表された化合物を含み、
    Figure 0004828775
    クラス3が式Vによって表された化合物を含み、
    Figure 0004828775
    クラス4が式VIによって表された化合物を含み、
    Figure 0004828775
    (式中、各R1は、独立に、水素、またはクロロ、ヨード、ブロモ、フルオロ、シアノ、ニトロ、ニトロソ、カルボキシル、ホルミル、アセチル、ベンゾイル、トリアルキルシリル、トリアルコキシシリル、30個までの炭素原子を含有する置換又は非置換アルキル、30個までの炭素原子を含有する置換又は非置換アルケニル、30個までの炭素原子を含有する置換又は非置換アルキニル、または30個までの炭素原子を含有する置換又は非置換アルコキシ基、2〜4個の芳香族環が接合しあるいは接合していない1〜4個の環を有する置換または非置換芳香族基から選択される基であるが、2個のR1が全体として少なくとも1個の飽和または不飽和の環を形成することができる;
    各R2は、独立に、水素、またはクロロ、ヨード、ブロモ、フルオロ、ヒドロキシ、シアノ、ニトロ、ニトロソ、カルボキシル、ホルミル、アセチル、ベンゾイル、トリアルキルシリル、トリアルコキシシリル、30個までの炭素原子を含有する置換又は非置換アルキル、30個までの炭素原子を含有する置換又は非置換アルケニル、30個までの炭素原子を含有する置換又は非置換アルキニル、30個までの炭素原子を含有する置換又は非置換アルコキシ基、または2〜4個の芳香族環が接合しあるいは接合していない1〜4個の環を有する置換または非置換芳香族基から選択される基であるが、2個のR2が全体として少なくとも1個の飽和または不飽和の環を形成するか、または2個のR2が全体としてカルボニル基を形成することができる;
    3は、10個までの炭素原子を有する置換又は非置換アルキル基、または2〜4個の芳香族環が接合しあるいは接合していない1〜4個の環を有する置換または非置換芳香族基から選択される;
    4は、水素、10個までの炭素原子を有する置換又は非置換アルキル基、または2〜4個の芳香族環が接合しあるいは接合していない1〜4個の環を有する置換または非置換芳香族基から選択される)
    前記組成物を硬化する方法。
  2. エネルギー重合性組成物であって、
    a)エポキシ化合物を含む少なくとも1つのカチオン硬化性材料と、
    b)(1)遷移金属原子に結合した少なくとも1個の炭素原子を含有する有機金属錯カチオンの塩の少なくとも1つ前記有機金属錯カチオンの塩は下記式(I)を有している、
    [(L(LM]+q (I)
    (式中、
    MがCr、Ni、Mo、W、Mn、Tc、Re、Fe、Ru、Os、Co、Rh及びIrを含有する基から選択され、
    が、芳香族化合物及び複素環式芳香族化合物から選択され得る同一または異なった、パイ−電子を寄与する配位子の0、1または2個を表し、前記配位子が6個のパイ−電子をMの価電子殻に寄与することができ、
    が、シクロペンタジエニル及びインデニルアニオン基から選択され得る同一または異なった、パイ−電子を寄与する配位子の0、1または2個を表し、前記配位子が6個のパイ−電子をMの価電子殻に寄与することができ、
    qが1または2の値を有する整数、前記錯カチオンの残留電荷であり、
    y及びzが0または2、の値を有する整数であるが、ただし、y及びzの合計が2に等しく、
    Xが、トリス−(高フッ素化アルキル)スルホニルメチド、ビス−(高フッ素化アルキル)スルホニルイミド、トリス−(フッ素化アリール)スルホニルメチド、テトラキス−(フッ素化アリール)ボレート、有機スルホネートアニオン、及び金属またはメタロイドのハロゲン含有錯アニオンから選択されるアニオンであり、
    nが1または2の値を有する整数、前記錯カチオン上の電荷qを中和するために必要とされる錯アニオンの数、である)、及び
    (2)クラス1、2、3または4から選択され、
    クラス1が式IIIによって表された化合物を含み、
    Figure 0004828775
    クラス2が式IVによって表された化合物を含み、
    Figure 0004828775
    クラス3が式Vによって表された化合物を含み、
    Figure 0004828775
    クラス4が式VIによって表された化合物を含む、
    Figure 0004828775
    (式中、各R1は、独立に、水素、またはクロロ、ヨード、ブロモ、フルオロ、シアノ、ニトロ、ニトロソ、カルボキシル、ホルミル、アセチル、ベンゾイル、トリアルキルシリル、トリアルコキシシリル、30個までの炭素原子を含有する置換又は非置換アルキル、30個までの炭素原子を含有する置換又は非置換アルケニル、30個までの炭素原子を含有する置換又は非置換アルキニル、または30個までの炭素原子を含有する置換又は非置換アルコキシ基、2〜4個の芳香族環が接合しあるいは接合していない1〜4個の環を有する置換または非置換芳香族基から選択される基であるが、2個のR1が全体として少なくとも1個の飽和または不飽和の環を形成することができる;
    各R2は、独立に、水素、またはクロロ、ヨード、ブロモ、フルオロ、ヒドロキシ、シアノ、ニトロ、ニトロソ、カルボキシル、ホルミル、アセチル、ベンゾイル、トリアルキルシリル、トリアルコキシシリル、30個までの炭素原子を含有する置換又は非置換アルキル、30個までの炭素原子を含有する置換又は非置換アルケニル、30個までの炭素原子を含有する置換又は非置換アルキニル、30個までの炭素原子を含有する置換又は非置換アルコキシ基、または2〜4個の芳香族環が接合しあるいは接合していない1〜4個の環を有する置換または非置換芳香族基から選択される基であるが、2個のR2が全体として少なくとも1個の飽和または不飽和の環を形成するか、または2個のR2が全体としてカルボニル基を形成することができる;
    3は、10個までの炭素原子を有する置換又は非置換アルキル基、または2〜4個の芳香族環が接合しあるいは接合していない1〜4個の環を有する置換または非置換芳香族基から選択される;
    4は、水素、10個までの炭素原子を有する置換又は非置換アルキル基、または2〜4個の芳香族環が接合しあるいは接合していない1〜4個の環を有する置換または非置換芳香族基から選択される)
    少なくとも1つの促進剤、
    を含む二成分開始剤系とを含む、エネルギー重合性組成物。
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