JP4828725B2 - 海苔の処理方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、海苔養殖中に発生する壺状菌を駆除および予防を行う処理方法および処理液に関する。
【0002】
【従来の技術】
海苔養殖技術は年々進歩改良されているが、病害に対する対策は未だ十分ではなく、海苔養殖中に赤腐れ菌・壺状菌・付着細菌等の発生により海苔が腐敗してしまうことがある。
特に壺状菌に感染した原藻を製品にした場合、光沢の無い乾海苔になり、商品価値が著しく低下する。
そのため、壺状菌駆除に有効な処理方法が求められている。
【0003】
今までに、下記に示すような海苔養殖用の処理剤が開示されている。
特開昭62−99302号では、パラオキシ安息香酸エステルと乳化剤と乳化安定剤を含有することを特徴とするアマノリ類の壺状菌用殺菌剤について記載されている。また、特開昭63−230608号ではパラオキシ安息香酸エステルと乳化剤と乳化安定剤と有機酸及び無機酸を含有することを特徴とするアマノリ類の壺状菌用殺菌剤について記載されている。しかし、酢酸及び/又は乳酸とパラオキシ安息香酸エステルと無機塩類との併用使用で壺状菌駆除効果が高くなることについての記載や示唆はない。
【0004】
特開平9−201180号は、「海水に、無機塩類と酸とを加えて比重を1.02〜1.20に調整し、且つpHを0.5〜5.0に調整した海苔用処理液に、海苔または海苔が付着した養殖具を浸漬することを特徴とする海苔の処理方法。」とある。明細書中には、食塩と海苔用酸性処理剤を併用した実施例が記載されているが、後述する比較例においては実際に壺状菌駆除効果が充分にみられていないものである。また、パラオキシ安息香酸エステルとの併用使用についての記載や示唆はない。
【0005】
特開2000−256106号は、酸処理剤とパラオキシ安息香酸エステルと溶剤からなることを特徴とする養殖海苔用殺藻殺菌剤について記載されている。明細書中には酸とパラオキシ安息香酸エステルと栄養成分との併用についての記載は示されているが、病害の駆除効果を高めるために無機塩類を併用使用することについての記載や示唆はない。又、壺状菌駆除についての記載や示唆はない。
【0006】
従来の壺状菌駆除には高度な処理技術が要求されている。つまり、酸とパラオキシ安息香酸エステルからなる処理液では、十分な駆除効果が認められない。又、海苔が傷みやすく、処理時間幅が極めて短いという欠点もある。そこで、本発明の上記処理液に無機塩類を添加することで、より短時間での駆除が可能になり、且つ海苔が傷み難くなるので安全な処理時間幅が長くなるのである。
また、従来の方法では壺状菌の駆除に1分以上の処理時間が必要なため、より短時間での処理を必要とされてきた今日には通用しない技術と成ってきた。最近では、海苔生産者一軒当たりの養殖網の枚数が増加したために、養殖網1枚当たりの処理に要する時間を短くせざるを得なくなり、より短時間で効果のある安全な壺状菌駆除の処理方法が必要となってきている。
【0007】
【本発明が解決しようとする課題】
従来技術の殺藻剤では、壺状菌を短時間で駆除する効果が不十分となってきている。本発明の目的は、海苔自体に害を与えることなく、壺状菌を短時間で駆除する処理方法を提供することである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
前記の課題を解決するために、鋭意検討した結果、酢酸及び/又は乳酸とパラオキシ安息香酸エステルと無機塩類を併用することによって壺状菌を60秒以下の短時間で駆除できることを見いだした。即ち、本発明は以下の通りである。
(1)海苔養殖時に発生する壺状菌の駆除を行う海苔の処理方法であって、酢酸及び/又は乳酸とパラオキシ安息香酸エステルと無機塩類とを主成分とし、酢酸及び/又は乳酸濃度が0.01〜0.7W/V%の範囲であり、パラオキシ安息香酸エステル濃度が0.001〜0.5W/V%の範囲であり、海水に酢酸及び/又は乳酸とパラオキシ安息香酸エステルと無機塩類とを加えて比重を1.023〜1.068に調整した処理液で、60秒以内に処理することを特徴とする海苔の処理方法。
【0009】
(2)パラオキシ安息香酸エステルが、パラオキシ安息香酸ブチル・パラオキシ安息香酸イソブチル・パラオキシ安息香酸プロピル・パラオキシ安息香酸イソプロピル・パラオキシ安息香酸エチル・パラオキシ安息香酸メチルの中の1種以上であることを特徴とする(1)記載の海苔の処理方法。
【0010】
3)pH調整剤として有機酸・無機酸の中の1種以上を含有することを特徴とする(1)又は(2)記載の海苔の処理方法。
【0011】
(4)20秒以内で処理することを特徴とする(1)〜(3)の何れか1つに記載の海苔の処理方法。
【0012】
(5)パラオキシ安息香酸エステルとして、パラオキシ安息香酸イソプロピル・パラオキシ安息香酸イソブチル・パラオキシ安息香酸ブチルをそれぞれ40%・30%・30%の割合で配合することを特徴とする(1)〜(4)の何れか1つに記載の海苔の処理方法。
【0013】
(6)無機塩類として塩化ナトリウムを含有することを特徴とする(1)〜(5)の何れか1つに記載の海苔の処理方法。
【0014】
以下、本発明の実施の形態を詳しく説明する。本発明に記載する海水は通常の海苔養殖ができる海水であり、その比重は1.018〜1.020の範囲内である場合が多く、本発明はこのような比重の海水に酢酸及び/又は乳酸とパラオキシ安息香酸エステルと無機塩類とを添加し、比重を1.023〜1.068に調整して海苔養殖時に発生する壺状菌の駆除を行うものである。
【0015】
本発明に用いる酸としては、酢酸及び/又は乳酸が好ましい。実施例に後述するようにクエン酸・リンゴ酸・酒石酸・フマル酸・コハク酸・グルコン酸・アジピン酸・リン酸・塩酸・硫酸・硝酸等とパラオキシ安息香酸エステルおよび塩を海水に添加、混合しても60秒以内の短時間で壺状菌を駆除できない場合がある。
【0016】
本発明に用いられるパラオキシ安息香酸エステルとしては、特に限定されるものではないが、パラオキシ安息香酸ブチル・パラオキシ安息香酸イソブチル・パラオキシ安息香酸プロピル・パラオキシ安息香酸イソプロピル・パラオキシ安息香酸エチル・パラオキシ安息香酸メチル等があげられる。2種以上のエステルを一定の比率に混合して加熱溶融することにより得られる共融混合物を用いることもできる。特に、パラオキシ安息香酸イソプロピル・イソブチル・ブチルをそれぞれ40%・30%・30%の割合で配合すると駆除効果が高くなる。本発明での処理時におけるパラオキシ安息香酸エステルの濃度は0.001〜0.5W/V%であることが好ましい。0.001W/V%以下であると効果がでにくく0.5W/V%以上であると正常な海苔も傷む場合がある。また、必要に応じてポリグリセリン脂肪酸エステル等の乳化剤やポリビニルアルコール等の乳化安定剤を用いても良い。
【0017】
無機塩類として具体的には、塩化ナトリウム、塩化マグネシウム、塩化カルシウム、塩化カリウム、塩化アンモニウム、硫酸ナトリウム、硫酸マグネシウム、硫酸カルシウム、硫酸カリウム、硫酸アンモニウム、硝酸ナトリウム、硝酸マグネシウム、硝酸カルシウム、硝酸カリウム、硝酸アンモニウム、塩化鉄、硫酸鉄、硝酸鉄、リン酸ナトリウム、リン酸マグネシウム、リン酸カルシウム、リン酸カリウム、リン酸アンモニウムの中から選ばれた1種または2種以上のものを用いることができる。このような無機塩類を用いて比重を1.023〜1.068に調整たものを用いることが望ましい。つまり、比重が1.023以下であれば、壺状菌の駆除効果が従来処理と同程度であり、逆に比重が1.068以上であれば、比重が高すぎて正常な海苔も傷む場合があるので前述した範囲内で処理することが望ましい。
【0018】
pH調整剤として、クエン酸・リンゴ酸・酒石酸・フマル酸・コハク酸・グルコン酸・アジピン酸・フィチン酸・ケトグルタル酸・イタコン酸・リン酸・塩酸・硫酸・硝酸等の酸を添加することにより、雑藻類・病害の駆除効果が高くなると共に海苔への傷害を抑制することができる。pH調整するときの好ましいpH範囲は、0.5〜5.0である。
【0019】
【実施例】
次に、本発明を実施例及び比較例により更に詳述する。
実施例1〜2および比較例1〜11
酢酸又は乳酸が0.4W/V%、パラオキシ安息香酸ブチル、イソブチル、イソプロピルの比率を3:3:4に配合した3種混合が0.02W/V%と食塩が4%になるように海水に添加した液を調整した。この海水で壺状菌が感染した海苔葉体を5秒から180秒まで5秒間隔で処理した後、滅菌海水で洗浄した。2日後に壺状菌の駆除効果を顕微鏡で観察した。比較例としてクエン酸・リンゴ酸・酒石酸・フマル酸・コハク酸・グルコン酸・アジピン酸・リン酸・塩酸・硫酸・硝酸が0.4W/V%、パラオキシ安息香酸エステル3種混合が0.02W/V%および食塩が4%になるように海水に添加した液を用いた。結果を表1に示す。表1に示した濃度の単位はW/V%である。また、使用した海水の比重は1.018である。
【0020】
【表1】
Figure 0004828725
【0021】
比較例1乃至11に示した各種の酸とパラオキシ安息香酸エステル3種混合および食塩を海水に添加しても、60秒以内で壺状菌を駆除することはできなかった。しかし、実施例1、2に示したように酢酸又は乳酸とパラオキシ安息香酸エステル3種混合および食塩を海水に添加すると5秒という短時間で壺状菌を駆除できた。
【0022】
実施例3〜7及び比較例12〜15
酢酸0.4W/V%及びパラオキシ安息香酸ブチル、イソブチル、イソプロピルの比率を3:3:4に配合した3種混合0.02W/V%と食塩を表2に記載した割合になるように海水に溶解した液を調整した。この海水で壺状菌が感染した海苔葉体を5秒から180秒まで5秒間隔で処理した後、滅菌海水で洗浄した。2日後に壺状菌の駆除効果を顕微鏡で観察した。比較例として比重が1.088の処理液、酢酸0.4W/V%とパラオキシ安息香酸エステル3種混合0.02W/V%のみの処理液、酢酸0.4W/V%と食塩5%のみの処理液、パラオキシ安息香酸エステル3種混合0.02W/V%と食塩5%のみの処理液を用いた。結果を表2に示す。表2に示した濃度の単位はW/V%である。また、使用した海水の比重は1.018である。
【0023】
【表2】
Figure 0004828725
【0024】
比較例12に示したように、比重が1.088の場合は海苔が傷み処理できない。比較例13に示したように、酢酸とパラオキシ安息香酸エステル3種混合のみの処理では効果が弱く、また、海苔への傷害が20秒という短時間の処理で発生した。次に、比較例14に示したように酢酸と食塩のみの処理では、効果が全く見られない。更に比較例15に示したようにパラオキシ安息香酸エステル3種混合と食塩のみの処理では、極めて効果が弱かった。ところが実施例3乃至7に示したように酢酸とパラオキシ安息香酸エステル3種混合と食塩との併用使用して比重を1.023〜1.068に設定した場合のみ、5秒という極めて短時間で効果が見られた。また、実施例4、5に示したように40秒より短い時間の処理では傷害は見られなかった。このように酢酸とパラオキシ安息香酸エステル3種混合と食塩とを併用使用して比重を1.023〜1.068に設定した場合のみ壺状菌駆除の効果が高くなり、海苔への傷害が発生し難くなることがわかった。
【0025】
実施例8〜12及び比較例16〜18
乳酸0.4W/V%及びパラオキシ安息香酸エステル3種混合0.02W/V%と食塩を表2に記載した割合になるように海水に溶解した液を調整した。この海水で壺状菌が感染した海苔葉体を5秒から180秒まで5秒間隔で処理した後、滅菌海水で洗浄した。2日後に壺状菌の駆除効果を顕微鏡で観察した。
比較例として比重が1.088の処理液、乳酸0.4W/V%とパラオキシ安息香酸エステル3種混合0.02W/V%のみの処理液、乳酸0.4W/V%と食塩5W/V%のみの処理液を用いた。結果を表3に示す。なお、表3に示す濃度の単位はW/V%である。また、使用した海水の比重は1.018である。
【0026】
【表3】
Figure 0004828725
【0027】
比較例16に示したように、比重が1.088の場合は海苔が傷み処理できない。また、比較例17に示したように乳酸とパラオキシ安息香酸エステル3種混合のみの処理では効果が弱かった。また、比較例18に示したように乳酸と食塩との併用処理では、効果が全く見られなかった。一方実施例8乃至12に示したように乳酸とパラオキシ安息香酸エステル3種混合と食塩との併用使用の場合のみ、5秒という極めて短時間で効果が見られた。また、実施例9、10に示したように50秒よりも短い時間の処理では傷害は見られなかった。このことから、乳酸についてもパラオキシ安息香酸エステル3種混合と食塩とを併用使用すると壺状菌駆除の効果が高くなることがわかった。
【0028】
実施例13〜15及び比較例19〜24
酢酸及びパラオキシ安息香酸エステルと食塩を表4に示した割合になるように海水に溶解した液を調整した。この海水で壺状菌が感染した海苔葉体を5秒から180秒まで5秒間隔で処理した後、滅菌海水で洗浄した。2日後に壺状菌の駆除効果を顕微鏡で観察した。比較例として酢酸0.4W/V%とパラオキシ安息香酸エステル0.02W/V%の処理液、パラオキシ安息香酸エステル0.02W/V%と食塩5W/V%の処理液を用いた。結果を表4に示す。なお、表4に示した濃度はW/V%である。また、使用した海水の比重は1.018である。
【0029】
【表4】
Figure 0004828725
【0030】
比較例19乃至21に示したように酢酸とパラオキシ安息香酸イソプロピル、ブチル、イソブチルのみの処理では効果が弱かった。比較例22乃至24に示したようにパラオキシ安息香酸イソプロピル、ブチル、イソブチルと食塩のみの処理では、壺状菌を駆除できなかった。実施例13乃至15に示したように酢酸とパラオキシ安息香酸エステルと食塩との併用使用の場合のみ、5秒という極めて短時間で効果が見られた。このことから、パラオキシ安息香酸ブチル、イソブチル、イソプロピルの単独でも酢酸および食塩と併用使用することで壺状菌に対する駆除効果が高くなり、海苔への傷害が発生し難くなることがわかった。
【0031】
実施例16〜19及び比較例25〜32
酢酸0.4W/V%及びパラオキシ安息香酸エステル3種混合0.02W/V%と無機塩類を表5に記載した割合になるように海水に溶解した液を調整した。この海水で壺状菌が感染した海苔葉体を5秒から180秒まで5秒間隔で処理した後、滅菌海水で洗浄した。2日後に壺状菌の駆除効果を顕微鏡で観察した。
比較例として酢酸0.4W/V%と無機塩類5W/V%のみの処理液、パラオキシ安息香酸エステル3種混合0.02W/V%と無機塩類のみの処理液を用いた。結果を表5に示す。なお、表5に示した濃度はW/V%である。また、使用した海水の比重は1.018である。
【0032】
【表5】
Figure 0004828725
【0033】
比較例25、27、29、31に示したように酢酸と無機塩類のみの処理では壺状菌を駆除できなかった。また、比較例26に示したようにパラオキシ安息香酸エステル3種混合と塩化アンモニウムのみの処理では効果が弱く、比較例28、30、32に示したようにパラオキシ安息香酸エステル3種混合と無機塩類のみの処理では壺状菌を駆除できなかった。実施例16乃至19に示したように酢酸とパラオキシ安息香酸エステル3種混合と無機塩類との併用使用の場合のみ、5秒という極めて短時間で効果が見られた。このことから、食塩以外の無機塩類についてもパラオキシ安息香酸3種混合および酢酸と併用使用することで壺状菌に対する駆除効果が高くなることがわかった。
【0034】
実施例20〜25及び比較例33〜36
パラオキシ安息香酸エステル3種混合0.02W/V%及び食塩3W/V%と酢酸を表6に記載した割合になるように海水に溶解した液を調整した。この海水で壺状菌が感染した海苔葉体を5秒から180秒まで5秒間隔で処理した後、滅菌海水で洗浄した。2日後に壺状菌の駆除効果を顕微鏡で観察した。
比較例として酢酸1W/V%、パラオキシ安息香酸エステル3種混合0.02W/V%と食塩を併用使用した処理液、パラオキシ安息香酸エステル3種混合0.02W/V%と食塩のみの処理液、パラオキシ安息香酸エステル3種混合0.02W/V%と酢酸を表6に記載した割合に調整した処理液を用いた。結果は表6に示す。なお、表6に示す濃度の単位はW/V%である。また、使用した海水の比重は1.018である。
【0035】
【表6】
Figure 0004828725
【0036】
比較例33に示したように酢酸の使用濃度が1.0W/V%でパラオキシ安息香酸エステル3種混合と食塩を併用使用すると海苔が傷んで処理できない。比較例34に示したようにパラオキシ安息香酸エステル3種混合と食塩のみの処理では、壺状菌を駆除できなかった。また、比較例35、36に示したように酢酸の使用濃度を0.5、1.0W/V%と高くしても食塩を併用使用しない処理では効果が弱かった。実施例20乃至25に示したように酢酸の使用濃度を0.01〜0.7W/V%として、パラオキシ安息香酸エステル3種混合と食塩と併用使用すると、短時間で効果が見られることがわかった。
【0037】
実施例26〜31及び比較例37〜39
パラオキシ安息香酸エステル3種混合0.02W/V%及び食塩3W/V%と乳酸を表7に記載した割合になるように海水に溶解した液を調整した。この海水で壺状菌が感染した海苔葉体を5秒から180秒まで5秒間隔で処理した後、滅菌海水で洗浄した。2日後に壺状菌の駆除効果を顕微鏡で観察した。
比較例として乳酸1W/V%、パラオキシ安息香酸エステル3種混合0.02W/V%と食塩を併用使用した処理液、パラオキシ安息香酸3種混合と乳酸を表6に記載した割合に調整した処理液を用いた。結果は表7に示す。なお、表7に示す濃度の単位はW/V%である。また、使用した海水の比重は1.018である。
【0038】
【表7】
Figure 0004828725
【0039】
比較例37に示したように乳酸の使用濃度が1.0W/V%でパラオキシ安息香酸エステル3種混合と食塩を併用使用すると海苔が傷んで処理できない。比較例38、39に示したように乳酸の使用濃度を0.5、1.0W/V%と高くしても食塩を併用使用しない処理では効果が弱かった。実施例26乃至31に示したように乳酸の使用濃度を0.01〜0.7W/V%としてパラオキシ安息香酸エステル3種混合と食塩を併用使用すると、短時間で効果が見られることがわかった。
【0040】
実施例32〜36及び比較例40〜42
酢酸とパラオキシ安息香酸エステル3種混合及び食塩3W/V%と酢酸を表8に記載した割合になるように海水に溶解した液を調整した。この海水で壺状菌が感染した海苔葉体を5秒から180秒まで5秒間隔で処理した後、滅菌海水で洗浄した。2日後に壺状菌の駆除効果を顕微鏡で観察した。比較例として酢酸とパラオキシ安息香酸エステル3種混合のみの処理液、パラオキシ安息香酸エステル3種混合と食塩のみの処理液、パラオキシ安息香酸エステル3種混合1.0W/V%で酢酸と食塩を併用使用した処理液を用いた。結果は表8に示す。なお、表8に示す濃度の単位はW/V%である。また、使用した海水の比重は1.018である。
【0041】
【表8】
Figure 0004828725
【0042】
比較例40に示したように酢酸とパラオキシ安息香酸エステル3種混合のみの処理では効果が弱く、比較例41に示したようにパラオキシ安息香酸エステル3種混合と食塩のみの処理では壺状菌を駆除できなかった。比較例42に示したようにパラオキシ安息香酸エステル3種混合を1.0W/V%で酢酸と食塩を併用使用すると海苔が傷み処理できない。実施例32乃至36に示したようにパラオキシ安息香酸エステル3種混合の使用濃度が0.001〜0.5W/V%の場合に酢酸と食塩を併用使用すると、短時間で効果が見られることがわかった。
【0043】
実施例37、38及び比較例43
酢酸とパラオキシ安息香酸エステル3種混合と食塩3W/V%及びpH調整剤を表9に記載した割合になるように海水に溶解した液を調整した。この海水で壺状菌が感染した海苔葉体を5秒から180秒まで5秒間隔で処理した後、滅菌海水で洗浄した。2日後に壺状菌の駆除効果を顕微鏡で観察した。比較例として酢酸とパラオキシ安息香酸エステル3種混合と食塩のみの処理液を用いた。結果は表9に示す。なお、表9に示す濃度の単位はW/V%である。また、使用した海水の比重は1.018である。
【0044】
【表9】
Figure 0004828725
【0045】
実施例37、38に示したようにpH調整剤としてクエン酸又は塩酸を用いると壺状菌を短時間で駆除できることがわかった。
【0046】
実施例39及び比較例44〜49
酢酸とパラオキシ安息香酸エステル3種混合及び食塩を表10に記載した割合になるように海水に溶解した液を調整した。この海水で赤腐れ菌が感染した海苔葉体を5秒から180秒まで5秒間隔で処理した後、滅菌海水で洗浄した。2日後に赤腐れ菌の駆除効果を顕微鏡で観察した。また、壺状菌が感染した海苔葉体についても同様の試験を行った。比較例として酢酸、パラオキシ安息香酸エステル3種混合、食塩のそれぞれ単独の処理液、酢酸とパラオキシ安息香酸エステル3種混合のみの処理液、酢酸と食塩のみの処理液、パラオキシ安息香酸エステル3種混合と食塩のみの処理液を用いた。結果は表10に示す。なお、表10に示す濃度の単位はW/V%である。また、使用した海水の比重は1.018である。
【0047】
【表10】
Figure 0004828725
【0048】
比較例44に示したように酢酸単独でも、赤腐れ菌は60秒で駆除できるが、壺状菌は全く駆除できなかった。比較例48に示したように酢酸と塩を併用使用すると、赤腐れ菌は30秒という短時間で駆除できたが、壺状菌は全く駆除できなかった。比較例47に示したように酢酸とパラオキシ安息香酸エステル3種混合を併用使用すると、壺状菌は駆除できたが80秒の処理時間を要した。ところが実施例39に示したように酢酸とパラオキシ安息香酸エステル3種混合および塩を併用使用した場合にのみ15秒という短時間で壺状菌を駆除できた。
【0049】
【発明の効果】
本発明は海苔養殖時に発生する壺状菌の駆除を行う海苔の処理方法であって、酢酸及び/又は乳酸とパラオキシ安息香酸エステルと無機塩類とを併用することによって壺状菌を60秒以下の短時間で駆除することができ、しかも海苔への傷害が発生し難くなる。

Claims (6)

  1. 海苔養殖時に発生する壺状菌の駆除を行う海苔の処理方法であって、酢酸及び/又は乳酸とパラオキシ安息香酸エステルと無機塩類とを主成分とし、酢酸及び/又は乳酸濃度が0.01〜0.7W/V%の範囲であり、パラオキシ安息香酸エステル濃度が0.001〜0.5W/V%の範囲であり、海水に酢酸及び/又は乳酸とパラオキシ安息香酸エステルと無機塩類とを加えて比重を1.023〜1.068に調整した処理液で、60秒以内に処理することを特徴とする海苔の処理方法。
  2. パラオキシ安息香酸エステルが、パラオキシ安息香酸ブチル・パラオキシ安息香酸イソブチル・パラオキシ安息香酸プロピル・パラオキシ安息香酸イソプロピル・パラオキシ安息香酸エチル・パラオキシ安息香酸メチルの中の1種以上であることを特徴とする請求項1記載の海苔の処理方法。
  3. pH調整剤として有機酸・無機酸の中の1種以上を含有することを特徴とする請求項1又は2記載の海苔の処理方法。
  4. 20秒以内で処理することを特徴とする請求項1〜3の何れか1つに記載の海苔の処理方法。
  5. パラオキシ安息香酸エステルとして、パラオキシ安息香酸イソプロピル・パラオキシ安息香酸イソブチル・パラオキシ安息香酸ブチルをそれぞれ40%・30%・30%の割合で配合することを特徴とする請求項1〜4の何れか1つに記載の海苔の処理方法。
  6. 無機塩類として食塩を含有することを特徴とする請求項1〜5の何れか1つに記載の海苔の処理方法。
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