JP3378630B2 - 養殖海苔の赤腐れ菌駆除剤 - Google Patents
養殖海苔の赤腐れ菌駆除剤Info
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Description
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は海苔養殖における赤腐れ
菌駆除剤に関する。特にモグリ船による殺菌処理のよう
に、極めて短時間で赤腐れ菌を駆除し得て、海苔本体に
害を与えない駆除剤に関する。 【0002】 【従来の技術】海苔の養殖において、赤腐れ菌が発生す
ると、海苔の品質を低下させ、ひどくなると生産皆無と
なる恐れがある。一般的には、海苔養殖において、病害
の予防駆除方法として干出作業を行う。これは海苔網を
一度海水から出して干す方法であるが、この方法は多大
な労力と、時間をかけるわりには余り効果がない。 【0003】もう一つの方法として、クエン酸、リンゴ
酸等の有機酸溶液に浸漬処理することにより、赤腐れ菌
を駆除する方法がある。クエン酸の1〜2%溶液で、5
〜10分の処理が行われている。これらは赤腐れ菌を駆
除するのに時間がかかりすぎる欠点がある。 【0004】赤腐れ病といわれる病害は、海苔葉状体が
生長し、ようやく収穫が可能になった時点で、急速に発
生し、数日にして全漁場に蔓延し、葉状体を枯死流出せ
しめてしまうため被害は大きい。 【0005】赤腐れ菌の駆除に関して、開示されいる特
許には下記に示すものがある。特公昭60−13647
号公報には、クエン酸0.3〜5.0重量%を含み、p
Hが1.0〜6.0の処理液に浸漬させる雑藻、病害の
駆除、予防による海苔養殖法が記載されている。 【0006】特公昭60−13648号公報には、塩
酸、硝酸、硫酸、燐酸などの無機酸を添加して、pH
1.0〜4.0とする雑藻、病害の駆除、予防による海
苔養殖法が記載されている。 【0007】特公昭60−21950号公報には、フィ
チン酸又はその塩を有効成分とする海苔養殖用肥料、赤
腐れ病に対する予防効果、珪藻駆除効果が開示されてい
る。 【0008】特開昭57−8722号公報には、リン酸
又はその塩を含む処理液で海苔養殖中の網を処理して、
雑藻、赤腐れ病などの病害の除去、予防を行う海苔養殖
法が開示されている。 【0009】赤腐れ菌は、発生すると感染能力が高いた
め、早く処理をして完全に死滅させなくてはならない。
海苔葉体中の赤腐れ菌は、仮に99%殺しても、事実上
残りの1%の赤腐れ菌が急速に繁殖してしまうため、翌
日には葉体が赤く変色する状態にまでなってしまう。従
って、100%駆除しなければならない。100%駆除
できたとしても、海中からの感染が直ちに起こるため、
2〜6日の間隔で処理しなければ、海苔が壊滅状態とな
る。 【0010】海苔の生産者は、平均して100〜200
枚の海苔網を採苗しており、現在の処理剤は、網1枚当
り5分以上の処理時間を必要とするため、前後の時間を
考慮すると、1日で作業できるおよそ8時間で処理でき
る網は30〜40枚である。従って、赤腐れの蔓延がひ
どくなるにつれ、赤腐れ菌の駆除が間に合わなくなり、
海苔が腐れ、生産皆無となって、海苔の生産が終了する
のが現状である。 【0011】また、作業時間を短くするために、海苔網
の下に船を潜らせて、肥料やクエン酸等の溶液中に網を
素通しさせる方法を行うモグリ船といわれる船が使用さ
れている。これは船の性能上、20〜50秒と極めて短
い時間しか浸漬できない。そのため赤腐れ菌を駆除する
ための強力な処理剤の開発が切望されている。 【0012】 【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、海苔
自体に害を与えることなく、赤腐れ菌を短時間に駆除で
きる薬剤を提供することである。 【0013】 【課題を解決するための手段】本発明者らは、赤腐れ菌
を短時間で駆除できる薬剤の開発について鋭意研究を行
った結果、イタコン酸に、塩酸、酢酸、乳酸、フィチン
酸、コハク酸よりなる群より選ばれた少なくとも1種を
併わせ含む駆除剤が赤腐れ菌に対して効果的に作用し、
極めて短時間に、これを駆除し得ることを見いだし、本
発明を完成した。 【0014】すなわち、本発明は、イタコン酸0.1〜
0.5重量/容量%の水溶液に、塩酸、リン酸、酢酸、
乳酸、フィチン酸及びコハク酸よりなる群より選ばれた
少なくとも1種(但し、リン酸単独を除く)0.1〜
0.3重量/容量%を含有する養殖海苔の赤腐れ菌駆除
剤である。 【0015】試験例1よりわかる通り、本発明者らは酸
性物質の中でも、イタコン酸が赤腐れ菌に対して非常に
高い殺菌力を示すことを見いだした、さらに、殺菌力を
高める検討を行った結果、試験例4〜8に示すように、
イタコン酸にクエン酸、リンゴ酸、酒石酸、グルコン
酸、ケトグルタル酸の中の1種を併用した場合には、赤
腐れ菌の駆除可能な時間は、イタコン酸単独の場合と同
等か、それより長くなり、併用効果はない。ところがイ
タコン酸に、塩酸、リン酸、酢酸、乳酸、フィチン酸及
びコハク酸よりなる群より選んだ少なくとも1種以上
(但し、リン酸単独を除く)を併用した場合には、赤腐
れ菌をイタコン酸単独の場合よりも更に短時間で駆除す
ることができた。 【0016】特に、前記したもぐり船により処理を行
い、赤腐れ菌を駆除するためには、20〜60秒の処理
で赤腐れ菌を駆除しなければならない。それを試験例2
よりしらべてみれば、イタコン酸単独で使用する場合に
は0.5重量/容量%以上の濃度で処理しなければなら
ないことになる。 【0017】イタコン酸は、水に対して溶解度が小さ
く、水が20℃の場合、8.3重量/容量%しか溶解し
ない。海水だとさらに溶解度が小さくなる。イタコン酸
は20℃の海水に対して、最高で2.5%位しか、溶解
しない。試験例3のイタコン酸の溶解性試験が示してい
るように、1.0重量/容量%以上に溶解するには、時
間がかかり作業性が悪い。もぐり船の場合、約1,00
0リットルの処理液を調製するため、溶解性が良く、作
業性の良いものが望まれている。 【0018】従って、イタコン酸の溶解性を考慮する
と、0.5重量/容量%以下での使用が好ましい。そこ
で本発明者らは、前記のイタコン酸と併用して相乗効果
のある、即ちイタコン酸単独の場合より、更に短時間で
駆除できる塩酸、リン酸、酢酸、乳酸、フィチン酸及び
コハク酸よりなる群より選んだ少なくとも1種(但し、
リン酸単独を除く)を併用して、イタコン酸を0.5重
量/容量%以下で使用して、しかも60秒以内の処理で
赤腐れ菌を駆除できるのではないかに着目して、試験し
た結果、これを確認することができた。 【0019】(試験例1) イタコン酸、クエン酸、リンゴ酸、グルコン酸、酒石
酸、90%酢酸、90%乳酸、コハク酸、50%フィチ
ン酸、36%塩酸の0.5重量/容量%の海水溶液を調
製し、赤腐れ菌に感染した海苔葉体を、10秒、20
秒、30秒、40秒、50秒、1分、2分、3分、4
分、5分、6分、7分、8分、9分、10分浸漬処理し
た後に、取り出し、海水で洗浄後、静置培養し、2日後
の状態を顕微鏡下で観察し、赤腐れ菌を駆除できる時間
を調査した。処理水温は20℃にて行った。その結果を
表1に示す。 【0020】 【表1】 【0021】(試験例2) イタコン酸の濃度と赤腐れ菌駆除時間の関係を調べるた
めに、イタコン酸の0.01,0.05,0.1,0.
2,0.3,0.5,1.0,1.5重量/容量%の海
水溶液を調製し、試験例1と同様にして赤腐れ菌駆除試
験を行った。処理水温は20℃である。その結果を表2
に示す。 【0022】 【表2】 【0023】イタコン酸の濃度と海水への溶解時間と温
度との関係を調べるため、海水500mlにイタコン酸
を各濃度になるように添加し、実験用スターラー(LA
BO−STIRRER:LR−51B)で100rpm
で撹拌し、溶解する時間を調査した。その結果を表3に
示す。 【0024】 【表3】【0025】 【実施例】以下に実施例と比較例によって、本発明を更
に具体的に説明するが、本発明はこの実施例によって何
等限定されるものではない。 【0026】イタコン酸の濃度を0.5重量/容量%に
固定し、塩酸、酢酸、乳酸、フィチン酸、コハク酸を夫
々個々に0.1〜0.3重量/容量%の間に変化させて
調製した海水溶液に、赤腐れ菌に感染した海苔葉体を
5,10,20,30,40,50秒浸漬処理した後に
取り出し、海水で洗浄後静置培養し、2日後の状態を顕
微鏡下で監察し、赤腐れ菌の駆除効果を調査した。処理
水温は20℃である。 【0027】その結果を比較例と共に表4に示す。赤腐
れ菌の駆除効果の判定は、次の判定基準による。 ○:完全に駆除 △:かなり抑制し、微かに赤腐れ菌がみられる。 ×:赤腐れ菌がかなり拡がっている。 【0028】 【表4】 【0029】イタコン酸0.5重量/容量%の場合は、
本発明については、比較例であるが0.5重量/容量%
迄濃度を高くすれば、30秒の処理時間で駆除できる。
この場合、塩酸、酢酸、乳酸、フィチン酸、コハク酸を
0.1〜0.3重量/容量%併わせ用いると、20秒の
処理時間、酸と濃度によっては10秒の処理時間でも駆
除可能である。 【0030】比較例として、イタコン酸にクエン酸、リ
ンゴ酸、酒石酸、グルコン酸、ケトグルタル酸を併用し
た場合について、イタコン酸の濃度を0.5重量/容量
%に固定し、他の酸を夫々個々に0.1〜0.3重量/
容量%の間に変化させて調製した海水溶液に、前記実施
例1〜18と同様にして赤腐れ菌駆除効果を調査した。
駆除効果の判定基準も同様とする。その結果を表5に示
す。 【0031】 【表5】 【0032】これらの酸を併用した場合には、2〜3の
例外を除いて、他の酸を併用した相乗効果が認められな
いばかりか、ある場合には、かえって処理時間が長くな
ったり、効果が劣ったりすることが判明した。従って、
他の酸を併用しさえすればよいというものではないこと
が明らかである。 【0033】前記の実施例は、イタコン酸を0.5重量
/容量%と濃度を高くしたので、イタコン酸単味でも、
30秒の短い処理時間で赤腐れ菌を駆除できた、ただ本
発明の酸を併用すると10〜20秒と処理時間を更に短
かくできるものであった。そこでイタコン酸の濃度を薄
くし、イタコン酸単味では処理時間がかかりすぎる場合
について示す。 【0034】イタコン酸濃度を0.2重量/容量%に固
定し、36%塩酸、90%乳酸を夫々個々に0.1〜
0.3重量/容量%の間に変化させて調製した海水溶液
に赤腐れ菌に感染した海苔葉体を表6に示す一定時間浸
漬処理した後に取り出し、海水で洗浄後静置培養し、2
日後の状態を検鏡し、赤腐れ菌の駆除効果を調査した。
評価基準は表4,5と同一である。その結果を表6に示
す。 【0035】 【表6】【0036】イタコン酸濃度が0.2重量/容量%の場
合には、最少限2分の処理時間が必要であるが、それに
36%塩酸、90%乳酸を夫々0.1,0.2,0.3
重量/容量%併用した場合、併用酸が0.1重量/容量
%では若干不足気味であるが、0.1〜0.3重量/容
量%併用すれば、60秒以下で赤腐れ菌を駆除できる。 【0037】イタコン酸濃度を0.1重量/容量%に固
定し、36%塩酸、90%乳酸を夫々個々に0.1〜
0.3重量/容量%の間に変化させて調製した海水溶液
を用い、他は表6と同様にして赤腐れ菌駆除効果を調査
した。評価基準は表4〜6と同様である。その結果を表
7に示す。 【0038】 【表7】 【0039】イタコン酸濃度が0.1重量/容量%の場
合には、最少限4分の処理時間が必要であるが、それに
36%塩酸、90%乳酸を夫々0.1,0.2,0.3
重量/容量%併用した場合、3分以内の処理で赤腐れ菌
を駆除することができる。併用酸として0.1重量/容
量%では何れも不足であるが、36%塩酸、90%乳
酸、75%リン酸を0.2〜0.3重量/容量%併用す
れば、60秒以下で赤腐れ菌を駆除できる。 【0040】前記の併用した塩酸、リン酸、乳酸の効果
ではないかとされるおそれがあるので、各単味を0.
1,0.2,0.3重量/容量%使用した場合について
比較例を示す。36%塩酸、90%乳酸の0.1,0.
2,0.3重量/容量%の海水溶液を調製した後、表8
に示す一定時間浸漬処理した後に取り出し、海水で洗浄
後静置培養し、2日後の状態を検鏡し、赤腐れ菌の駆除
効果を調査した。処理水温及び評価基準は表4〜7と同
様である。その結果を表8に示す。 【0041】 【表8】【0042】この結果によれば、最も効果の大きい0.
3重量/容量%の場合で、塩酸、リン酸の場合で最少処
理時間2分、乳酸の場合で50秒であって、イタコン酸
0.1重量/容量%との併用である表7にくらべても大
幅に長時間の処理が必要であり、表4,6,7の結果が
併用した酸のみの効果でも、イタコン酸単味の効果でも
なく、両者の相乗効果によるものであることが明らかで
ある。 【0043】以上は処理温度20℃の場合であったが、
処理温度10℃の場合について、イタコン酸、75%リ
ン酸、90%乳酸、30%塩酸の2種以上を併用した場
合とイタコン酸0.1重量/容量%の場合を比較したの
が表9である。各海水溶液に、赤腐れ菌に感染した海苔
葉体を1分、1.5分、2分、2.5分、3分、3.5
分浸漬処理した後に取り出し、海水で洗浄後、静置培養
し、2日後の状態を顕微鏡下で観察し、赤腐れ菌の駆除
効果を調査した。処理水温は10℃である。評価基準は
表4〜8と同様である。 【0044】 【表9】 【0045】処理温度が10℃の場合には、イタコン酸
0.1重量/容量%単味では3.5分でも駆除できない
が、75%リン酸、90%乳酸と併用すれば1分で駆除
可能となる。この温度では赤腐れ菌の方の増殖速度も大
幅に低下する。 【0046】 【発明の効果】本発明の赤腐れ菌駆除剤は、赤腐れ菌に
対して、高い殺菌力を有しながら、海水に対して溶解度
が低く、高濃度としにくいイタコン酸に対し、塩酸、酢
酸、乳酸、フィチン酸及びコハク酸のそれ自身単味で
は、駆除所要時間の長い酸を1種以上(但し、リン酸単
独を除く)0.1〜0.3重量/容量%の濃度で併用す
ることにより、イタコン酸0.1〜0.5重量/容量%
の低濃度で、しかも、低温でもイタコン酸単独よりも短
時間処理で赤腐れ菌を駆除することができた。従来のク
エン酸による駆除作業にくらべて、作業時間を大幅に短
縮できて、もぐり船による駆除をも可能にしたので、赤
腐れ病による海苔の全滅を防ぐことができる。
菌駆除剤に関する。特にモグリ船による殺菌処理のよう
に、極めて短時間で赤腐れ菌を駆除し得て、海苔本体に
害を与えない駆除剤に関する。 【0002】 【従来の技術】海苔の養殖において、赤腐れ菌が発生す
ると、海苔の品質を低下させ、ひどくなると生産皆無と
なる恐れがある。一般的には、海苔養殖において、病害
の予防駆除方法として干出作業を行う。これは海苔網を
一度海水から出して干す方法であるが、この方法は多大
な労力と、時間をかけるわりには余り効果がない。 【0003】もう一つの方法として、クエン酸、リンゴ
酸等の有機酸溶液に浸漬処理することにより、赤腐れ菌
を駆除する方法がある。クエン酸の1〜2%溶液で、5
〜10分の処理が行われている。これらは赤腐れ菌を駆
除するのに時間がかかりすぎる欠点がある。 【0004】赤腐れ病といわれる病害は、海苔葉状体が
生長し、ようやく収穫が可能になった時点で、急速に発
生し、数日にして全漁場に蔓延し、葉状体を枯死流出せ
しめてしまうため被害は大きい。 【0005】赤腐れ菌の駆除に関して、開示されいる特
許には下記に示すものがある。特公昭60−13647
号公報には、クエン酸0.3〜5.0重量%を含み、p
Hが1.0〜6.0の処理液に浸漬させる雑藻、病害の
駆除、予防による海苔養殖法が記載されている。 【0006】特公昭60−13648号公報には、塩
酸、硝酸、硫酸、燐酸などの無機酸を添加して、pH
1.0〜4.0とする雑藻、病害の駆除、予防による海
苔養殖法が記載されている。 【0007】特公昭60−21950号公報には、フィ
チン酸又はその塩を有効成分とする海苔養殖用肥料、赤
腐れ病に対する予防効果、珪藻駆除効果が開示されてい
る。 【0008】特開昭57−8722号公報には、リン酸
又はその塩を含む処理液で海苔養殖中の網を処理して、
雑藻、赤腐れ病などの病害の除去、予防を行う海苔養殖
法が開示されている。 【0009】赤腐れ菌は、発生すると感染能力が高いた
め、早く処理をして完全に死滅させなくてはならない。
海苔葉体中の赤腐れ菌は、仮に99%殺しても、事実上
残りの1%の赤腐れ菌が急速に繁殖してしまうため、翌
日には葉体が赤く変色する状態にまでなってしまう。従
って、100%駆除しなければならない。100%駆除
できたとしても、海中からの感染が直ちに起こるため、
2〜6日の間隔で処理しなければ、海苔が壊滅状態とな
る。 【0010】海苔の生産者は、平均して100〜200
枚の海苔網を採苗しており、現在の処理剤は、網1枚当
り5分以上の処理時間を必要とするため、前後の時間を
考慮すると、1日で作業できるおよそ8時間で処理でき
る網は30〜40枚である。従って、赤腐れの蔓延がひ
どくなるにつれ、赤腐れ菌の駆除が間に合わなくなり、
海苔が腐れ、生産皆無となって、海苔の生産が終了する
のが現状である。 【0011】また、作業時間を短くするために、海苔網
の下に船を潜らせて、肥料やクエン酸等の溶液中に網を
素通しさせる方法を行うモグリ船といわれる船が使用さ
れている。これは船の性能上、20〜50秒と極めて短
い時間しか浸漬できない。そのため赤腐れ菌を駆除する
ための強力な処理剤の開発が切望されている。 【0012】 【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、海苔
自体に害を与えることなく、赤腐れ菌を短時間に駆除で
きる薬剤を提供することである。 【0013】 【課題を解決するための手段】本発明者らは、赤腐れ菌
を短時間で駆除できる薬剤の開発について鋭意研究を行
った結果、イタコン酸に、塩酸、酢酸、乳酸、フィチン
酸、コハク酸よりなる群より選ばれた少なくとも1種を
併わせ含む駆除剤が赤腐れ菌に対して効果的に作用し、
極めて短時間に、これを駆除し得ることを見いだし、本
発明を完成した。 【0014】すなわち、本発明は、イタコン酸0.1〜
0.5重量/容量%の水溶液に、塩酸、リン酸、酢酸、
乳酸、フィチン酸及びコハク酸よりなる群より選ばれた
少なくとも1種(但し、リン酸単独を除く)0.1〜
0.3重量/容量%を含有する養殖海苔の赤腐れ菌駆除
剤である。 【0015】試験例1よりわかる通り、本発明者らは酸
性物質の中でも、イタコン酸が赤腐れ菌に対して非常に
高い殺菌力を示すことを見いだした、さらに、殺菌力を
高める検討を行った結果、試験例4〜8に示すように、
イタコン酸にクエン酸、リンゴ酸、酒石酸、グルコン
酸、ケトグルタル酸の中の1種を併用した場合には、赤
腐れ菌の駆除可能な時間は、イタコン酸単独の場合と同
等か、それより長くなり、併用効果はない。ところがイ
タコン酸に、塩酸、リン酸、酢酸、乳酸、フィチン酸及
びコハク酸よりなる群より選んだ少なくとも1種以上
(但し、リン酸単独を除く)を併用した場合には、赤腐
れ菌をイタコン酸単独の場合よりも更に短時間で駆除す
ることができた。 【0016】特に、前記したもぐり船により処理を行
い、赤腐れ菌を駆除するためには、20〜60秒の処理
で赤腐れ菌を駆除しなければならない。それを試験例2
よりしらべてみれば、イタコン酸単独で使用する場合に
は0.5重量/容量%以上の濃度で処理しなければなら
ないことになる。 【0017】イタコン酸は、水に対して溶解度が小さ
く、水が20℃の場合、8.3重量/容量%しか溶解し
ない。海水だとさらに溶解度が小さくなる。イタコン酸
は20℃の海水に対して、最高で2.5%位しか、溶解
しない。試験例3のイタコン酸の溶解性試験が示してい
るように、1.0重量/容量%以上に溶解するには、時
間がかかり作業性が悪い。もぐり船の場合、約1,00
0リットルの処理液を調製するため、溶解性が良く、作
業性の良いものが望まれている。 【0018】従って、イタコン酸の溶解性を考慮する
と、0.5重量/容量%以下での使用が好ましい。そこ
で本発明者らは、前記のイタコン酸と併用して相乗効果
のある、即ちイタコン酸単独の場合より、更に短時間で
駆除できる塩酸、リン酸、酢酸、乳酸、フィチン酸及び
コハク酸よりなる群より選んだ少なくとも1種(但し、
リン酸単独を除く)を併用して、イタコン酸を0.5重
量/容量%以下で使用して、しかも60秒以内の処理で
赤腐れ菌を駆除できるのではないかに着目して、試験し
た結果、これを確認することができた。 【0019】(試験例1) イタコン酸、クエン酸、リンゴ酸、グルコン酸、酒石
酸、90%酢酸、90%乳酸、コハク酸、50%フィチ
ン酸、36%塩酸の0.5重量/容量%の海水溶液を調
製し、赤腐れ菌に感染した海苔葉体を、10秒、20
秒、30秒、40秒、50秒、1分、2分、3分、4
分、5分、6分、7分、8分、9分、10分浸漬処理し
た後に、取り出し、海水で洗浄後、静置培養し、2日後
の状態を顕微鏡下で観察し、赤腐れ菌を駆除できる時間
を調査した。処理水温は20℃にて行った。その結果を
表1に示す。 【0020】 【表1】 【0021】(試験例2) イタコン酸の濃度と赤腐れ菌駆除時間の関係を調べるた
めに、イタコン酸の0.01,0.05,0.1,0.
2,0.3,0.5,1.0,1.5重量/容量%の海
水溶液を調製し、試験例1と同様にして赤腐れ菌駆除試
験を行った。処理水温は20℃である。その結果を表2
に示す。 【0022】 【表2】 【0023】イタコン酸の濃度と海水への溶解時間と温
度との関係を調べるため、海水500mlにイタコン酸
を各濃度になるように添加し、実験用スターラー(LA
BO−STIRRER:LR−51B)で100rpm
で撹拌し、溶解する時間を調査した。その結果を表3に
示す。 【0024】 【表3】【0025】 【実施例】以下に実施例と比較例によって、本発明を更
に具体的に説明するが、本発明はこの実施例によって何
等限定されるものではない。 【0026】イタコン酸の濃度を0.5重量/容量%に
固定し、塩酸、酢酸、乳酸、フィチン酸、コハク酸を夫
々個々に0.1〜0.3重量/容量%の間に変化させて
調製した海水溶液に、赤腐れ菌に感染した海苔葉体を
5,10,20,30,40,50秒浸漬処理した後に
取り出し、海水で洗浄後静置培養し、2日後の状態を顕
微鏡下で監察し、赤腐れ菌の駆除効果を調査した。処理
水温は20℃である。 【0027】その結果を比較例と共に表4に示す。赤腐
れ菌の駆除効果の判定は、次の判定基準による。 ○:完全に駆除 △:かなり抑制し、微かに赤腐れ菌がみられる。 ×:赤腐れ菌がかなり拡がっている。 【0028】 【表4】 【0029】イタコン酸0.5重量/容量%の場合は、
本発明については、比較例であるが0.5重量/容量%
迄濃度を高くすれば、30秒の処理時間で駆除できる。
この場合、塩酸、酢酸、乳酸、フィチン酸、コハク酸を
0.1〜0.3重量/容量%併わせ用いると、20秒の
処理時間、酸と濃度によっては10秒の処理時間でも駆
除可能である。 【0030】比較例として、イタコン酸にクエン酸、リ
ンゴ酸、酒石酸、グルコン酸、ケトグルタル酸を併用し
た場合について、イタコン酸の濃度を0.5重量/容量
%に固定し、他の酸を夫々個々に0.1〜0.3重量/
容量%の間に変化させて調製した海水溶液に、前記実施
例1〜18と同様にして赤腐れ菌駆除効果を調査した。
駆除効果の判定基準も同様とする。その結果を表5に示
す。 【0031】 【表5】 【0032】これらの酸を併用した場合には、2〜3の
例外を除いて、他の酸を併用した相乗効果が認められな
いばかりか、ある場合には、かえって処理時間が長くな
ったり、効果が劣ったりすることが判明した。従って、
他の酸を併用しさえすればよいというものではないこと
が明らかである。 【0033】前記の実施例は、イタコン酸を0.5重量
/容量%と濃度を高くしたので、イタコン酸単味でも、
30秒の短い処理時間で赤腐れ菌を駆除できた、ただ本
発明の酸を併用すると10〜20秒と処理時間を更に短
かくできるものであった。そこでイタコン酸の濃度を薄
くし、イタコン酸単味では処理時間がかかりすぎる場合
について示す。 【0034】イタコン酸濃度を0.2重量/容量%に固
定し、36%塩酸、90%乳酸を夫々個々に0.1〜
0.3重量/容量%の間に変化させて調製した海水溶液
に赤腐れ菌に感染した海苔葉体を表6に示す一定時間浸
漬処理した後に取り出し、海水で洗浄後静置培養し、2
日後の状態を検鏡し、赤腐れ菌の駆除効果を調査した。
評価基準は表4,5と同一である。その結果を表6に示
す。 【0035】 【表6】【0036】イタコン酸濃度が0.2重量/容量%の場
合には、最少限2分の処理時間が必要であるが、それに
36%塩酸、90%乳酸を夫々0.1,0.2,0.3
重量/容量%併用した場合、併用酸が0.1重量/容量
%では若干不足気味であるが、0.1〜0.3重量/容
量%併用すれば、60秒以下で赤腐れ菌を駆除できる。 【0037】イタコン酸濃度を0.1重量/容量%に固
定し、36%塩酸、90%乳酸を夫々個々に0.1〜
0.3重量/容量%の間に変化させて調製した海水溶液
を用い、他は表6と同様にして赤腐れ菌駆除効果を調査
した。評価基準は表4〜6と同様である。その結果を表
7に示す。 【0038】 【表7】 【0039】イタコン酸濃度が0.1重量/容量%の場
合には、最少限4分の処理時間が必要であるが、それに
36%塩酸、90%乳酸を夫々0.1,0.2,0.3
重量/容量%併用した場合、3分以内の処理で赤腐れ菌
を駆除することができる。併用酸として0.1重量/容
量%では何れも不足であるが、36%塩酸、90%乳
酸、75%リン酸を0.2〜0.3重量/容量%併用す
れば、60秒以下で赤腐れ菌を駆除できる。 【0040】前記の併用した塩酸、リン酸、乳酸の効果
ではないかとされるおそれがあるので、各単味を0.
1,0.2,0.3重量/容量%使用した場合について
比較例を示す。36%塩酸、90%乳酸の0.1,0.
2,0.3重量/容量%の海水溶液を調製した後、表8
に示す一定時間浸漬処理した後に取り出し、海水で洗浄
後静置培養し、2日後の状態を検鏡し、赤腐れ菌の駆除
効果を調査した。処理水温及び評価基準は表4〜7と同
様である。その結果を表8に示す。 【0041】 【表8】【0042】この結果によれば、最も効果の大きい0.
3重量/容量%の場合で、塩酸、リン酸の場合で最少処
理時間2分、乳酸の場合で50秒であって、イタコン酸
0.1重量/容量%との併用である表7にくらべても大
幅に長時間の処理が必要であり、表4,6,7の結果が
併用した酸のみの効果でも、イタコン酸単味の効果でも
なく、両者の相乗効果によるものであることが明らかで
ある。 【0043】以上は処理温度20℃の場合であったが、
処理温度10℃の場合について、イタコン酸、75%リ
ン酸、90%乳酸、30%塩酸の2種以上を併用した場
合とイタコン酸0.1重量/容量%の場合を比較したの
が表9である。各海水溶液に、赤腐れ菌に感染した海苔
葉体を1分、1.5分、2分、2.5分、3分、3.5
分浸漬処理した後に取り出し、海水で洗浄後、静置培養
し、2日後の状態を顕微鏡下で観察し、赤腐れ菌の駆除
効果を調査した。処理水温は10℃である。評価基準は
表4〜8と同様である。 【0044】 【表9】 【0045】処理温度が10℃の場合には、イタコン酸
0.1重量/容量%単味では3.5分でも駆除できない
が、75%リン酸、90%乳酸と併用すれば1分で駆除
可能となる。この温度では赤腐れ菌の方の増殖速度も大
幅に低下する。 【0046】 【発明の効果】本発明の赤腐れ菌駆除剤は、赤腐れ菌に
対して、高い殺菌力を有しながら、海水に対して溶解度
が低く、高濃度としにくいイタコン酸に対し、塩酸、酢
酸、乳酸、フィチン酸及びコハク酸のそれ自身単味で
は、駆除所要時間の長い酸を1種以上(但し、リン酸単
独を除く)0.1〜0.3重量/容量%の濃度で併用す
ることにより、イタコン酸0.1〜0.5重量/容量%
の低濃度で、しかも、低温でもイタコン酸単独よりも短
時間処理で赤腐れ菌を駆除することができた。従来のク
エン酸による駆除作業にくらべて、作業時間を大幅に短
縮できて、もぐり船による駆除をも可能にしたので、赤
腐れ病による海苔の全滅を防ぐことができる。
フロントページの続き
(51)Int.Cl.7 識別記号 FI
A01N 57/12 A01N 57/12 C
59/00 59/00 Z
59/26 59/26
(56)参考文献 特開 平7−10711(JP,A)
特開 平7−53306(JP,A)
特開 平7−184491(JP,A)
特開 平5−139913(JP,A)
特開 平4−311325(JP,A)
特開 平2−291218(JP,A)
特開 昭63−230608(JP,A)
特開 昭59−82027(JP,A)
特開 昭57−8722(JP,A)
特開 昭56−155085(JP,A)
特開 昭55−88636(JP,A)
(58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名)
A01N 37/00
A01N 57/00
A01N 59/00
A01G 33/00
CA(STN)
REGISTRY(STN)
JICSTファイル(JOIS)
Claims (1)
- (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 イタコン酸0.1〜0.5重量/容量%
の水溶液に、塩酸、リン酸、酢酸、乳酸、フィチン酸及
びコハク酸よりなる群より選ばれた少なくとも1種(但
し、リン酸単独を除く)0.1〜0.3重量/容量%を
含有する養殖海苔の赤腐れ菌駆除剤。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP33087693A JP3378630B2 (ja) | 1993-12-27 | 1993-12-27 | 養殖海苔の赤腐れ菌駆除剤 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP33087693A JP3378630B2 (ja) | 1993-12-27 | 1993-12-27 | 養殖海苔の赤腐れ菌駆除剤 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPH07187914A JPH07187914A (ja) | 1995-07-25 |
JP3378630B2 true JP3378630B2 (ja) | 2003-02-17 |
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ID=18237506
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP33087693A Expired - Fee Related JP3378630B2 (ja) | 1993-12-27 | 1993-12-27 | 養殖海苔の赤腐れ菌駆除剤 |
Country Status (1)
Country | Link |
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Families Citing this family (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
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-
1993
- 1993-12-27 JP JP33087693A patent/JP3378630B2/ja not_active Expired - Fee Related
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
JPH07187914A (ja) | 1995-07-25 |
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