JP4827336B2 - 電動工具 - Google Patents

Description

【０００１】
【発明の属する技術分野】
本発明は、特に、丸鋸装置等の電動工具であって、ハウジング内に中空スピンドルを駆動するモータと、ツールを収容するための迅速固定装置とを具え、この迅速固定装置は、中空スピンドル内に同軸状に移動自在に配置した固定スピンドルを設け、この固定スピンドルを弾性素子によって軸線方向の移動を固定するようにし、またこの固定スピンドルのツール側とは反対側の端部に設け、一方の端部に回動軸を設けた固定レバーによって、ツールを中空スピンドルに対して回転不能に固定する固定位置と交換位置との間で回動自在にし、また前記ツールを固定スピンドルのツール側端部に装着可能な固定フランジと中空スピンドルとの間に固定可能に配置した電動工具に関するものである。
【０００２】
【従来の技術】
上述の電動工具は、手作業でツールを交換することができるようにする迅速固定装置を設けるのが一般的である。通常の既知の固定装置とは異なり、この迅速固定装置は補助工具を必要とせずに固定装置の固定解除又は固定を行なうものである。例えば、既知の固定装置は、固定フランジに固定するねじボルト及びナットにより構成することができる。これら既知の技術によっては、例えば、ツールの交換のために、ユーザーは補助工具として開口スパナをを使用することを強要される。これに対し、迅速固定装置は、例えば、ツール交換のために例えば、固定レバーを操作するだけで済む。
【０００３】
上述の電動工具は例えば、ドイツ国実用新案登録第４，３３６，６２０号に記載のものがあり、ハウジング内に中空スピンドルを駆動するモータと、ツールを収容するための迅速固定装置とを有する。迅速固定装置は、中空スピンドル内に同軸状に移動自在に配置した固定スピンドルを設け、この固定スピンドルを弾性素子によって軸線方向の移動を固定する。固定スピンドルのツール側とは反対側の端部に設けた固定レバーによって、迅速固定装置を固定位置と交換位置との間で調整自在にする。固定位置ではツールは中空スピンドルと固定フランジとの間に固定される。固定レバーの回動軸に連結する側の端部に偏心輪を配置し、この偏心輪をボルトによって固定スピンドルに接触させる。固定レバーを交換位置に回動することによって、固定スピンドルは偏心輪によって弾性素子の力及び偏心輪とボルトとの間の摩擦に抗して、ツールを軸線方向に移動する。この交換位置では、補助工具の補助なしに固定フランジを回して外し、ツールを交換することができる。
【０００４】
この既知の技術は、補助工具例えば、開口スパナを使用することなくツールを交換することができるという利点がある。ユーザーは交換位置に固定レバーを位置調整し、固定フランジを回して固定スピンドルから取り外し、例えば、固定装置からツールを取り外し、別のツールを新たに位置決めすることができるようになる。
【０００５】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、既知の従来技術では固定レバーの操作性に難点がある。一方では、ユーザーは位置調整のために加える操作力が大きく、固定レバーと固定スピンドルとの間の摩擦損失が高いという欠点がある。他方では、固定レバーは中間位置では固定装置を固定することもゆるめることもできない問題がある。
【０００６】
従って、本発明の目的は、ユーザーが大きな操作力を加えることなしに、固定及び固定解除することができる迅速固定装置を有する電動工具を得るにある。更に、迅速固定装置は固定位置及び交換位置の双方位置を明確にとり、また製造安価な電動工具を得るにある。
【０００７】
【課題を解決するための手段】
この目的を達成するため、本発明電動工具は、特に、丸鋸装置等の電動工具であって、ハウジング内に配置した、モータで駆動される中空スピンドルに対して、ツールを固定するための迅速固定装置を具え、この迅速固定装置は、
前記電動工具の前記中空スピンドル内で軸線方向変位可能となるように前記中空スピンドル内に移動自在に配置した固定スピンドルと、
前記固定スピンドルの軸線方向の移動を抑制するよう前記中空スピンドルと前記固定スピンドルとの間に配置した弾性素子と、
前記ツールを前記中空スピンドルに対して固定して前記ツールが前記中空スピンドル一緒に回転できるよう前記固定スピンドルのツール側端部に装着可能な固定フランジと、及び
前記固定スピンドルのツール側とは反対側の端部側に設け、回動軸線の周りに回動可能な固定レバーであって、前記ツールを前記中空スピンドルに対して相対回転不能にクランプする固定位置と、前記ツールを交換できるよう前記クランプを釈放する交換位置との間で回動自在にし、また摺動素子を有し、前記固定レバーを固定位置から前記交換位置に回動する際に、前記摺動素子が前記弾性素子の弾性押圧力に抗して前記固定スピンドルを前記中空スピンドルに対して前記クランプを釈放する交換位置に軸線方向に変位させる力を前記固定スピンドルに加えるようにし、前記摺動素子は、前記ツール側とは反対側における前記固定スピンドルの端部に設けた接触面に係合可能な接触領域を有する構成とした、該固定レバーと、
を備え、
前記固定スピンドルの前記接触面のスパンにおいて、前記固定レバーの前記固定位置では、少なくとも前記摺動素子の前記接触領域における前記固定スピンドルの接触面との接触ポイントと、前記固定レバーの回動軸線との間の半径方向距離のｓｉｎ（α）倍に対応する長さを有し、前記角度（α）は、前記接触ポイント及び前記固定レバーの回動軸線を結ぶラインと前記固定スピンドルの長手方向軸線とがなす角度とし、また
前記摺動素子は、所定かつ一定の半径を有する環状の軸受素子として構成し、また前記環状の軸受素子の軸線は、前記回動軸線に平行かつ離間しており、前記半径は前記環状の軸受素子の軸線から延びているものとしたことを特徴とする。
【０００８】
固定レバーに摺動素子を設ける構成によって、ユーザーが加える力は少なくて済み、固定スピンドルと摺動素子との間の摩擦も極めて少なくなる。大きな固定力を有する迅速固定装置でも加える操作力の大幅な減少という特性は得られる。更に、摺動素子を選択することによって、弾性素子の必要な固定力に適合させることができるようになる。大きな固定力が要求される場合には、コストはかかるものの、摺動特性を極めて良好な摺動素子を使用することができる。更に、従来既知の技術の迅速固定装置とは異なり、摺動素子を使用することによって摩耗が少なくなり、電動工具の過剰な応力にも耐用時間が大幅に増大する。接触面の寸法は電動工具の迅速固定機構の構造をコンパクトにすることを保証し、作業性も向上させることができる。
【０００９】
迅速固定装置の位置調整特性を良好にするため、本発明の好適な実施例においては、回動角度（α）を３０゜〜１２０゜の範囲とする。回動角度の選択は、中空スピンドルと固定スピンドルとの間の相対移動量も決定する。回動角度が大きくなればなるほど、固定位置と交換位置との間の相対移動量も大きくなる。迅速固定装置の相対移動量を一層大きくし、かつ一層構造をコンパクトにするには、接触面の回動方向のスパンを大きくする。特に、例えば、手持ち丸鋸装置の場合には、最適な回動角度をは８０゜である。
【００１０】
好適な実施例においては、交換位置における前記半径方向距離のラインと前記長手方向軸線とのなす端部角度を５゜〜３０゜の範囲とする。この構成によって迅速固定装置の不確定な中間位置は排除される。固定レバーは固定位置か交換位置かのいずれかの位置に回動する。特に、交換位置では、例えば、止め面によって、固定レバーを厳密な位置に固定する。端部角度は場合によっては、交換位置への回動を確実にする。端部角度を大きく選択すればするほど、ツールの方向とは反対方向への固定スピンドルの逆行によって相対移動量の損失が大きくなる。他方、大きな端部角度は交換位置におけるスナップ係止が確実になる。
【００１１】
コンパクトな構造でもスナップ係止を最適にするため、端部角度を１０゜とすると好適である。
【００１２】
高い固定力を安価にかつ均一に得るようにするため、摺動素子は回動軸に平行な軸線を有しかつある半径を有する軸受素子とすると好適である。軸受素子は極めて耐久性が高く、摩擦が少なく従って、寿命が長いという特徴がある。更に、このような素子の需要は多くあるので、製造コストを安価にすることができるという利点がある。
【００１３】
最適な調整特性を得るためには、摺動素子の半径を前記半径方向距離の０．２〜０．６倍、特に、この半径を前記半径方向距離の０．４倍とするとよい。
【００１４】
【発明の実施の形態】
次に、図面につき本発明の好適な実施の形態を説明する。
【００１５】
図１及び図２には、本発明による電動工具の一部の断面を示し、この電動工具はハウジング１内に収納しかつ中空スピンドル２を駆動する図示しないモータと、ツール３を収容するための迅速固定装置とを有する。この迅速固定装置には、中空スピンドル２内に同軸状に移動自在に配置した固定スピンドル４を設け、この固定スピンドル４は弾性素子５によって軸線方向の移動を固定する。弾性素子５の端部を中空スピンドル２のツール側とは反対側の端部に設けた段差付きの孔内に配置し、弾性素子５のこの端部とは反対側の端部を固定スピンドル４に固定したフランジ１３をより保持する。固定スピンドル４のツール側とは反対側の端部に配置した固定レバー６によって、図１に示す固定位置と図２に示す交換位置との間で迅速固定装置を調整することができる。固定位置では、ツール３は中空スピンドル２と固定フランジ７との間に固定される。
【００１６】
固定レバー６を図１に示す固定位置から図２に示す交換位置に回動することによって、固定スピンドル４は、摺動素子８、特に、リング状の軸受素子によって弾性素子５の力に抗してツール３の方向に軸線方向に移動する。摺動素子８は、固定レバー６の回動軸線９から接触ポイントにいたる半径方向距離ａのラインを有する。この交換位置において、固定フランジ７は補助工具なしに回すことができ、例えば、固定フランジ７と中空スピンドル２との間に配置したツール３を交換することができる。距離ａのラインと固定スピンドル４の長手方向軸線とがなす端部角度βは、固定スピンドル４の交換位置に留まることを確実にする。このとき、固定レバー６はハウジング１の止め面１２に圧着する。
【００１７】
図１には、固定レバーが固定スピンドル４に接触するが、弾性素子５にはいかなる力も加えていない状態を示す。この状態では固定スピンドル４の長手方向軸線は、摺動素子８の回動軸線９と接触領域との間の半径方向距離ａのラインに対して角度αをなし、この角度αは図示の実施例では約８０゜である。接触面１１は回動方向に延在するスパンＫを有し、このスパンＫは少なくとも距離ａのｓｉｎ（α）倍に相当する。
【図面の簡単な説明】
【図１】 本発明による迅速固定装置の固定位置の状態を示す断面図である。
【図２】 ほよる迅速固定装置の固定スピンドルが摺動素子に圧着している状態の交換位置を示す断面図である。
【符号の説明】
1 ハウジング
2 中空スピンドル
3 ツール
4 固定スピンドル
5 弾性素子
6 固定レバー
7 固定フランジ
8 摺動素子
9 回動軸線
11 接触面
12 止め面
13 フランジ

Claims (7)

1. 電動工具であって、ハウジング（１）内に配置した、モータで駆動される中空スピンドル（２）に対して、ツール（３）をクランプするための迅速固定装置を具え、この迅速固定装置は、
   前記電動工具の前記中空スピンドル（２）内で軸線方向変位可能となるように前記中空スピンドル（２）内に移動自在に配置した固定スピンドル（４）と、
   前記固定スピンドル（４）の軸線方向の移動を抑制するよう前記中空スピンドル（２）と前記固定スピンドル（４）との間に配置した弾性素子（５）と、
   前記ツール（３）を前記中空スピンドル（２）に対して固定して前記ツール（３）が前記中空スピンドル（２）一緒に回転できるよう前記固定スピンドル（４）のツール側端部に装着可能な固定フランジ（７）と、及び
   前記固定スピンドル（４）のツール側とは反対側の端部側に設け、回動軸線（９）の周りに回動可能な固定レバー（６）であって、前記ツール（３）を前記中空スピンドル（２）に対して相対回転不能にクランプする固定位置と、前記ツール（３）を交換できるよう前記クランプを釈放する交換位置との間で回動自在にし、また摺動素子（８）を有し、前記固定レバー（６）を固定位置から前記交換位置に回動する際に、前記摺動素子（８）が前記弾性素子（５）の弾性押圧力に抗して前記固定スピンドル（４）を前記中空スピンドル（２）に対して前記クランプを釈放する交換位置に軸線方向に変位させる力を、前記固定スピンドル（４）に加えるようにし、前記摺動素子（８）は、前記ツール（３）側とは反対側における前記固定スピンドル（４）の端部に設けた接触面（１１）に係合可能な接触領域を有する構成とした、該固定レバー（６）と、
   を備え、
   前記固定スピンドル（４）の前記接触面（１１）のスパン（Ｋ）において、前記固定レバー（６）の前記固定位置では、少なくとも前記摺動素子（８）の前記接触領域における前記固定スピンドル（４）の接触面（１１）との接触ポイントと、前記固定レバー（６）の回動軸線（９）との間の半径方向距離（ａ）のｓｉｎ（α）倍に対応する長さを有し、前記角度（α）は、前記接触ポイント及び前記固定レバー（６）の回動軸線（９）を結ぶラインと前記固定スピンドル（４）の長手方向軸線とがなす角度とし、また
   前記摺動素子（８）は、所定かつ一定の半径（Ｒ）を有する環状の軸受素子として構成し、また前記環状の軸受素子の軸線は、前記回動軸線（９）に平行かつ離間しており、前記半径（Ｒ）は前記環状の軸受素子の軸線から延びているものとした
   ことを特徴とする電動工具。
2. 前記回動角度（α）を３０゜〜１２０゜の範囲とした請求項１記載の電動工具。
3. 前記回動角度（α）を８０゜とした請求項２記載の電動工具。
4. 前記交換位置における前記半径方向距離（ａ）のラインと前記長手方向軸線とのなす端部角度（β）を５゜〜３０゜の範囲とした請求項１乃至３のうちのいずれか一項に記載の電動工具。
5. 前記端部角度（β）を１０゜とした請求項４記載の電動工具。
6. 半径（Ｒ）を前記半径方向距離（ａ）の０．２〜０．６倍とした請求項１記載の電動工具。
7. 半径（Ｒ）を前記半径方向距離（ａ）の０．４倍とした請求項６記載の電動工具。

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