JP4825503B2 - 発泡糸 - Google Patents

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Description

本発明は、発泡糸に関し、詳しくは、パール調光沢、表面平滑性、耐摩耗性に優れ、発泡繊維でありながら繊度あたりの繊維強度低下が少ない、ポリプロピレン製発泡糸に関する。
発泡糸は、その糸中に気泡を含有することから、軽量性、保温性に優れるものである。このような発泡糸の製造方法には、モノフィラメント成形、マルチフィラメント成形、ヤーン成形により製造する手法がある。モノフィラメント成形やヤーン成形は、繊度が100〜10000dtexの太繊維の発泡糸を製造しやすいという特徴を有する成形方法であることより、該発泡糸を用いた各種ロープ用原糸、カーペット用基布、フレコン袋、畳表、光輝縁などの用途に好適に用いられているが、その成形品には強度的に問題があるものがあった。
例えば、プロピレン系樹脂の発泡糸からなる畳表は、既に20〜30年前から商品化されているが、現状の発泡糸では、生産速度を数十m/分程度まで落とさなければ生産できなかったり、該発泡糸を用いて得た製品の耐摩耗性が劣るといった問題を抱えている。そこで、この様なポリオレフィン系樹脂からなる発泡糸の改良を行うための、多様な提案がこれまでにもなされている。
例えば、繊度3000〜10000dtexの熱可塑性樹脂線状発泡体で構成される模造イ草で、主体となる熱可塑性樹脂に対し、メルトフローレート(MFR)が2以上低い熱可塑性樹脂を混合させることを特徴とする熱可塑性樹脂混合物により得られる模造イ草に関し、従来技術比較で、耐久性と生産性向上を謳っている技術(例えば、特許文献1参照。)、未発泡糸で人造イ草の耐摩耗性を向上させるために特定のプロピレン系共重合体を使用することを特徴としている技術(例えば、特許文献2参照。)、未発泡のフィラメント糸を内部芯材層として、これに発泡倍率1〜2倍の塗膜樹脂層を被覆した線状体であることを特徴とする人造イ草に関し、天然イ草比較で耐摩耗性、表面のテカリ、ベタツキ感の向上を謳っている技術(例えば、特許文献3参照)等がある。
しかしながら、特許文献1の技術では、実質MFRの異なる2種類の熱可塑性樹脂のブレンド系であるが、例えばポリプロピレン、ポリエチレンなどの場合、重合様式によっては同一MFRであっても分子量分布が大きく異なる場合があるため、当該技術をもってしても耐摩耗性などの改善できないケースも発生する。また、単なる2種類の異なるMFRを有する熱可塑性樹脂をブレンドするだけでは、十分なパール調光沢、表面平滑性、耐摩耗性および繊維強度を有する発泡糸は得られないのが現状である。
また、特許文献2の技術では、未発泡のため織物にしたときの表面のテカリやクッション性に欠けるなどの問題が発生し、特許文献3の技術では、芯材層に発泡樹脂を塗布するといった特殊工程を有するため、製造面でのコスト増や塗膜樹脂層に凹凸が発生するため、必ずしも耐摩耗性が優れるといったことにならない問題が発生する。
特開2002−180350号公報 特開2004−11072号公報 特開2005−23690号公報
本発明は、上記問題点に鑑み、ポリプロピレン組成物を用い、パール調光沢、表面平滑性、耐摩耗性に優れ、発泡繊維でありながら繊度あたりの繊維強度低下が少ない発泡糸を提供することを目的とするものである。
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意検討し、繊維成形による発泡糸の利用に関し種々の検討を行ってきた結果、特定の固有粘度を有する高分子量ポリエチレンと特定の固有粘度を有するプロピレン(共)重合体を含むポリプロピレン組成物を用いることで、発泡糸製造での生産性やハンドリングの容易さを実現でき、かつ耐摩耗性やパール調光沢に優れ、また発泡による繊維強度低下もない発泡糸が生産できることを見出し本発明を完成した。
すなわち、本発明の第1の発明によれば、下記の(a)成分および(b)成分を含むポリプロピレン組成物(A)50〜80重量%と下記の特性(i)及び(ii)を有するプロピレン系樹脂(B)50〜20重量%を含むポリプロピレン組成物(X)を主成分とし、発泡剤を配合する材料から成形される発泡糸の製造方法であって、
発泡糸の引張強度Tb(cN/dtex)と、該材料から発泡剤のみを配合しない材料から発泡糸の成形条件と同条件で成形される未発泡糸の引張強度Tn(cN/dtex)との比(Tb/Tn)は、Tb/Tn>0.8であることを特徴とする発泡糸の製造方法が提供される。
(a)成分:135℃のテトラリン中で測定した固有粘度[η]が15〜100dl/gの範囲の高分子量ポリエチレン 0.01〜5.0重量部
(b)成分:プロピレン単独重合体またはプロピレン重合単位を50重量%以上含有するプロピレン・α−オレフィン共重合体からなり、135℃のテトラリン中で測定した固有粘度[η]が0.2〜10dl/gの範囲のプロピレン(共)重合体 100重量部
特性(i)MFRが0.5〜100g/10分
特性(ii)GPC測定による分子量分布が9以下
また、本発明の第の発明によれば、第1の発明において、上記ポリプロピレン組成物(X)の結晶化温度Tcが下記範囲であることを特徴とする発泡糸の製造方法が提供される。
80℃≦Tc≦130℃
また、本発明の第の発明によれば、第1又は2の発明において、発泡倍率が1.1〜6倍であることを特徴とする発泡糸の製造方法が提供される。
また、本発明の第の発明によれば、第1〜のいずれかの発明において、発泡糸中の発泡セルのアスペクト比が20以上であることを特徴とする発泡糸の製造方法が提供される。
また、本発明の第の発明によれば、第1〜のいずれかの発明において、分繊テスターによる繊維破断までの回数が200回以上であることを特徴とする発泡糸の製造方法が提供される。
本発明における発泡糸は、紡糸工程において通常の未発泡糸の生産速度と同一水準で生産することが可能であるだけでなく、未発泡糸比較で繊度あたりの繊維強力を落とすことなく、更には表面テカリを抑えたパール調光沢、表面平滑性、耐摩耗性に優れた効果を有する発泡糸である。
本発明は、(a)高分子量ポリエチレン及び(b)プロピレン(共)重合体を含有するポリプロピレン組成物(A)、必要に応じて、さらに、プロピレン系樹脂(B)を含有するポリプロピレン組成物(X)を主成分とする発泡糸である。以下に、構成成分、製法等について詳細に説明する。
I.発泡糸の材料樹脂
1.ポリプロピレン組成物(A)の構成成分
(a)高分子量ポリエチレン
本発明で用いるポリプロピレン組成物(A)に用いる(a)高分子量ポリエチレンは、135℃のテトラリン中で測定した固有粘度[η]が15〜100dl/gの範囲のものであれば特に制限はなく、具体的には、エチレン単独重合体またはエチレン重合単位を50重量%以上含有するエチレン・α−オレフィン共重合体を挙げることができる。(a)成分のエチレン・α−オレフィン共重合体におけるα−オレフィンとしては、特に限定されないが、炭素数3〜12のα−オレフィンが好ましく用いられる。具体的にはプロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、4−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ペンテンなどが挙げられ、これらのα−オレフィンは1種のみならず2種以上であっても良い。
これらの中では、エチレン単独重合体、エチレン重合単位を50重量%以上含有するエチレン・α−オレフィンランダム共重合体が好ましく、より好ましくはエチレン単独重合体、エチレン重合単位を70重量%以上含有するエチレン・α−オレフィンランダム共重合体、特に好ましくはエチレン単独重合体、エチレン重合単位を90重量%以上含有するエチレン・α−オレフィンランダム共重合体を挙げることができ、これらの1種以上の混合物であっても良い。
(a)成分の135℃のテトラリン中で測定される固有粘度[η]は、15〜100dl/gであり、好ましくは17〜50dl/gの範囲である。固有粘度[η]が15dl/g未満であると、得られるポリプロピレン組成物(A)の溶融張力が不十分となってしまい、結果として糸の発泡特性が悪化してしまう。また固有粘度[η]の上限については、(b)成分のプロピレン(共)重合体の固有粘度[η]との差が大きいと、組成物とした際に(b)成分中への(a)成分の分散が悪くなり、結果として溶融張力が上昇しなくなり、さらに製造上の効率からも、100dl/g程度とするのが良い。また、(a)成分は、135℃のテトラリン中で測定した固有粘度[η]を15dl/gにまで高分子量化させる必要があるため、高分子量化の効率からエチレン重合単位が50重量%以上であることが好ましい。
(a)成分の高分子量ポリエチレンの密度については、特に制限はないが、具体的には880〜980g/l程度のものが好適である。
(b)プロピレン(共)重合体
本発明で用いるポリプロピレン組成物(A)に用いる(b)プロピレン(共)重合体は、135℃のテトラリン中で測定した固有粘度[η]が0.2〜10dl/gの範囲のものであれば特に制限はなく、具体的には、プロピレン単独重合体またはプロピレン重合単位を50重量%以上含有するプロピレン・α−オレフィン共重合体を挙げることができる。(b)成分におけるプロピレンと共重合するα−オレフィンとしては、特に限定されないが、炭素数2、4〜12のα−オレフィンが好ましく用いられる。具体的にはエチレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、4−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ペンテンなどが挙げられ、これらのα−オレフィンは1種のみならず2種以上であっても良い。
これらの中では、プロピレン単独重合体、プロピレン重合単位が90重量%以上のプロピレン・α−オレフィンランダム共重合体が好ましく、さらに好ましくはプロピレン重合単位が70重量%以上のプロピレン・α−オレフィン共重合体である。これらの(共)重合体は1種のみならず2種以上の混合物であっても良い。
なお、連続した重合を行い(b)成分のプロピレン(共)重合体を得る場合は、その全体を占めるプロピレン重合単位含有量が50重量%以上入っていればよく。連続重合における1段以上でプロピレン重合単位含有量が50重量%未満の重合物ができても、連続重合によって得られた(b)成分のプロピレン(共)重合体全体において、プロピレン重合単位含有量が50重量%以上となっていればよい。
(b)成分の135℃のテトラリン中で測定される固有粘度[η]は、0.2〜10dl/gであり、好ましくは0.5〜8dl/gである。(b)成分の固有粘度[η]が0.2dl/g未満の場合、得られるポリプロピレン組成物(A)の発泡特性が悪化し、発泡糸の製造が困難になる。また10dl/gを超えると得られるポリプロピレン組成物(A)の流動性が悪化するため、発泡糸の生産性が著しく低下してしまう。
また、(b)成分の立体規則性については、特に制限はなく結晶性を有するプロピレン(共)重合体であれば本発明の目的を達成するどのようなプロピレン(共)重合体であってもよい。具体的には13C−NMR(核磁気共鳴スペクトル)で測定したアイソタクチックペンタッド分率(mmmm)で0.80〜0.99、好ましくは0.85〜0.99、特に好ましくは0.90〜0.99のものが使用される。
ここで、アイソタクチックペンタッド分率(mmmm)とは、A.Zambelli等によって提案(Macromolecules 6,925(1973))された13C−NMRにより測定される、ポリプロピレン分子鎖中のペンタッド単位でのアイソタクチック分率であり、スペクトルの測定におけるピークの帰属決定法は、A.Zambelli等によって提案(Macromolecules 8,687(1975))された帰属に従って決定される。具体的には、ポリマー濃度20重量%のo−ジクロロベンゼン、臭化ベンゼン=8/2重量比の混合溶液を用い、67.20MHz、130℃にて測定することによって求められる。測定装置としては、例えばJEOL−GX270NMR測定装置(日本電子(株)製)が用いられる。
本発明に用いるポリプロピレン組成物(A)は、前記した(a)成分の高分子量ポリエチレン0.01〜5重量部、好ましくは0.02〜2重量部、特に好ましくは0.05〜1重量部と、(b)成分のプロピレン(共)重合体100重量部からなる。(a)成分の量が0.01重量部未満であると、得られるポリプロピレン組成物(A)の溶融張力の向上効果が少なく、糸の発泡特性が悪化してしまう。また5重量部を超えると効果が飽和するほか、得られるポリプロピレン組成物(A)の均質性が損なわれる場合があり、その結果紡糸時の糸切れ等を誘発するため好ましくない。
また、(a)成分の高分子量ポリエチレンは、数平均粒子直径が1〜5000nmの範囲、好ましくは10〜500nmの範囲の微粒子として、(b)成分のプロピレン(共)重合体中に微分散して存在していることが望ましい。
2.ポリプロピレン組成物(A)の特性
(1)溶融張力(MS)と固有粘度[η]の関係
本発明に用いられるポリプロピレン組成物(A)は、230℃における溶融張力(MS)と135℃のテトラリン中で測定した固有粘度[η]とが、下記式(1)の関係を満足することが好ましい。
log(MS)>4.24×log[η]−1.05 …(1)
上限については特に限定されないが、あまりにも溶融張力が高いとポリプロピレン組成物(A)の流動性が悪化することから、より好ましくは、下記式(1’)を満足し、
4.24×log[η]+0.50>log(MS)>4.24×log[η]−1.05 …(1’)
最も好ましくは、下記式(1”)で示される関係を満足する。
4.24×log[η]+0.24>log(MS)>4.24×log[η]−0.93 …(1”)
ここで、230℃における溶融張力(MS)は、メルトテンションテスター2型((株)東洋精機製作所製)を用いて、装置内にてポリプロピレン組成物を230℃に加熱し、溶融ポリプロピレン組成物(A)を直径2.095mmのノズルから20mm/分の速度で23℃の大気中に押し出してストランドとし、このストランドを3.14m/分の速度で引き取る際の糸状ポリプロピレン組成物(A)の張力を測定した値(単位:cN)である。
(2)結晶化温度(Tc)
本発明におけるポリプロピレン系組成物(A)は、DSC測定により結晶化ピーク温度として得られる結晶化温度(Tc)が下記範囲であることが望ましい。
80℃≦Tc≦130℃
Tcが130℃を超えると紡糸ノズル直下でのポリプロピレン系組成物(A)の固化が早くなる傾向があり、紡糸速度を上げた際に紡糸ノズル直下での溶融伸びが不足することによる糸切れが多発し、発泡糸の生産が困難となりやすいので好ましくない。一方、結晶化温度に関して下限を規定する必要は特に無いが、80℃以下のものを製造することは実質的に難しい。
ここで、結晶化温度(Tc)は、DSC測定により測定される融解ピーク温度により定義され、DSC測定はセイコー社製DSCを用い、試料5.0mgを採り、200℃で5分間保持した後、40℃まで10℃/分の降温速度で結晶化させたときの結晶化ピーク温度をTcとした(単位:℃)。
3.ポリプロピレン組成物(A)の製法
本発明に用いるポリプロピレン組成物(A)の製造方法は、上記(a)成分と(b)成分を上記の量比で含有するようにして得られる方法であれば、どのような製造方法であってもよく、例えば、(a)成分と(b)成分を溶融混練する方法、(a)成分と(b)成分を連続した重合法中で共重合する方法が挙げられる。
これらの製造方法の中では、以下に諸述するエチレンにより予備活性化された触媒の存在下に、プロピレンまたはプロピレンと炭素数2、4〜12のα−オレフィンとを本(共)重合させる共重合方法が好ましい。
上記共重合方法とは、少なくともチタン化合物を含む遷移金属化合物触媒成分、遷移金属原子1モルに対し0.01〜1,000モルの周期表(1991年版)第1族、第2族、第12族および第13族に属する金属よりなる群から選択された金属の有機金属化合物(AL1)および遷移金属原子1モルに対し0〜500モルの電子供与体(E1)の組み合わせからなるポリオレフィン製造用触媒、ならびに、この触媒に担持した遷移金属化合物成分1g当たり0.01〜100gの135℃のテトラリン中で測定した固有粘度[η]が0.2〜10dl/gの(b)成分および遷移金属化合物触媒成分1g当たり0.01〜5,000gの135℃のテトラリン中で測定した固有粘度[η]が15dl/g〜100dl/gである成分(a)からなる予備活性化触媒の存在下に、プロピレン単独またはプロピレンと炭素数2、4〜12のα−オレフィンを本(共)重合させることを特徴とする方法である。
本明細書中において「予備活性化」の用語は、ポリオレフィン製造用触媒の高分子量化活性を、プロピレンまたはプロピレンと炭素数2、4〜12のα−オレフィンとの(共)重合を実施するに先立って、予め活性化することを意味し、ポリオレフィン製造用触媒の存在下にオレフィンを予備活性化(共)重合して触媒に担持させることにより行う。
該方法で使用する予備活性化触媒は、少なくともチタン化合物を含む遷移金属化合物触媒成分、遷移金属原子1モルに対し0.01〜1,000モルの周期表(1991年版)第1族、第2族、第12族および第13族に属する金属よりなる群から選択された金属の有機金属化合物(AL1)および、遷移金属原子1モルに対し0〜500モルの電子供与体(E1)、の組み合わせからなるポリオレフィン製造用触媒、ならびに、この触媒に担持した遷移金属化合成分1g当たり0.01〜100gの135℃のテトラリン中で測定した固有粘度[η]が0.2〜10dl/gの本(共)重合目的の成分(b)、および遷移金属化合物触媒成分1g当たり0.01〜5000g程度の135℃のテトラリン中で測定した固有粘度[η]が15〜100dl/gである成分(a)からなる。
前記予備活性化触媒において、遷移金属化合物触媒成分としては、ポリオレフィン製造用として提案されている少なくともチタン化合物を含む遷移金属化合物触媒成分を主成分とする公知の触媒成分のいずれも使用することができ、なかでも工業生産上、チタン含有固体触媒成分が好適に使用される。
チタン含有固体触媒成分としては、三塩化チタン組成物を主成分とするチタン含有固体触媒成分(特公昭56−3356号公報、特公昭59−28573号公報、特公昭63−66323号公報等)、マグネシウム化合物に四塩化チタンを担持した、チタン、マグネシウム、ハロゲン、および電子供与体を必須成分とするチタン含有担持型触媒成分(特開昭62−104810号公報、特開昭62−104811号公報、特開昭62−104812号公報、特開昭57−63310号公報、特開昭57−63311号公報、特開昭58−83006号公報、特開昭58−138712号公報等)などが提案されており、これらのいずれをも使用できる。
有機金属化合物(AL1)として、周期表(1991年版)第1族、第2族、第12族および第13族に属する金属よりなる群から選択される金属の有機基を有する化合物、たとえば、有機リチウム化合物、有機ナトリウム化合物、有機マグネシウム化合物、有機亜鉛化合物、有機アルミニウム化合物などを、前記遷移金属化合物触媒成分と組み合わせて使用することができる。
特に、一般式がAlR 3−(p+q)(式中、R、Rはアルキル基、シクロアルキル基、アリール基等の炭化水素基およびアルコキシ基の同種または異種を、Xはハロゲン原子を表わし、pおよびqは0<p+q≦3の正数を表わす。)で表わされる有機アルミニウム化合物を好適に使用することができる。
有機アルミニウム化合物の具体例としては、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリ−n−プロピルアルミニウム、トリ−n−ブチルアルミニウム、トリ−i−ブチルアルミニウム、トリ−n−ヘキシルアルミニウム、トリ−i−ヘキシルアルミニウム、トリ−n−オクチルアルミニウム等のトリアルキルアルミニウム、ジエチルアルミニウムクロライド、ジ−n−プロピルアルミニウムクロライド、ジ−i−ブチルアルミニウムクロライド、ジエチルアルミニウムブロマイド、ジエチルアルミニウムアイオダイド等のジアルキルアルミニウムモノハライド、ジエチルアルミニウムハイドライド等のジアルキルアルミニウムハイドライド、エチルアルミニウムセスキクロライド等のアルキルアルミニウムセスキハライド、エチルアルミニウムジクロライド等のモノアルキルアルミニウムジハライドなどの他ジエトキシモノエチルアルミニウム等のアルコキシアルキルアルミニウムを挙げることができ、好ましくは、トリアルキルアルミニウムおよびジアルキルアルミニウムモノハライドを使用する。これらの有機アルミニウム化合物は、1種だけでなく2種類以上を混合して用いることもできる。
本発明に用いるポリプロピレン組成物(A)の製造において電子供与体(E1)は、ポリオレフィンの生成速度および/または立体規則性を制御する目的で必要に応じて使用される。
電子供与体(E1)としては、たとえばエーテル類、アルコール類、エステル類、アルデヒド類、脂肪酸類、ケトン類、ニトリル類、アミン類、アミド類、尿素または、チオ尿素類、イソシアネート類、アゾ化合物、ホスフィン類、ホスファイト類、ホスフィナイト類、硫化水素およびチオエーテル類、ネオアルコール類などの分子中に酸素、窒素、硫黄、燐のいずれかの原子を有する有機化合物およびシラノール類および分子中にSi−O−C結合を有する有機ケイ素化合物などが挙げられる。
エーテル類としては、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジ−n−プロピルエーテル、ジ−n−ブチルエーテル、ジ−i−アミルエーテル、ジ−n−ペンチルエーテル、ジ−n−ヘキシルエーテル、ジ−i−ヘキシルエーテル、ジ−nオクチルエーテル、ジ−i−オクチルエーテル、ジ−n−ドデシルエーテル、ジフェニルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、テトラヒドロフラン等が、アルコール類としては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペントノール、ヘキサノール、オクタノール、2−エチルヘキサノール、アリルアルコール、ベンジルアルコール、エチレングリコール、グリセリン等が、またフェノール類として、フェノール、クレゾール、キシレノール、エチルフェノール、ナフトール等が挙げられる。
エステル類としては、メタクリル酸メチル、ギ酸メチル、酢酸メチル、酪酸メチル、酢酸エチル、酢酸ビニル、酢酸−n−プロピル、酢酸−i−プロピル、ギ酸ブチル、酢酸アミル、酢酸−n−ブチル、酢酸オクチル、酢酸フェニル、プロピオン酸エチル、安息香酸メチル、安息香酸エチル、安息香酸プロピル、安息香酸ブチル、安息香酸オクチル、安息香酸−2−エチルヘキシル、トルイル酸メチル、トルイル酸エチル、アニス酸メチル、アニス酸エチル、アニス酸プロピル、アニス酸フェニル、ケイ皮酸エチル、ナフトエ酸メチル、ナフトエ酸エチル、ナフトエ酸プロピル、ナフトエ酸ブチル、ナフトエ酸−2−エチルヘキシル、フェニル酢酸エチル等のモノカルボン酸エステル類、コハク酸ジエチル、メチルマロン酸ジエチル、ブチルマロン酸ジエチル、マレイン酸ジブチル、ブチルマレイン酸ジエチル等の脂肪族多価カルボン酸エステル類、フタル酸モノメチル、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジ−n−プロピル、フタル酸モノ−n−ブチル、フタル酸ジ−n−ブチル、フタル酸ジ−i−ブチル、フタル酸ジ−n−ヘプチル、フタル酸ジ−2−エチルヘキシル、フタル酸ジ−n−オクチル、i−フタル酸ジエチル、i−フタル酸ジプロピル、i−フタル酸ジブチル、i−フタル酸ジ−2−エチルヘキシル、テレフタル酸ジエチル、テレフタル酸ジプロピル、テレフタル酸ジブチル、ナフタレンジカルボン酸ジ−i−ブチル等の芳香族多価カルボン酸エステル類が挙げられる。
アルデヒド類としては、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ベンズアルデヒド等がカルボン酸類として、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、修酸、コハク酸、アクリル酸、マレイン酸、吉草酸、安息香酸などのモノカルボン酸類および無水安息香酸、無水フタル酸、無水テトラヒドロフタル酸などの酸無水物が、ケトン類として、アセトン、メチルエチルケトン、メチル−i−ブチルケトン、ベンゾフェノン等が例示される。
窒素含有化合物としては、アセトニトリル、ベンゾニトリル等のニトリル類、メチルアミン、ジエチルアミン、トリブチルアミン、トリエタノールアミン、β(N,N−ジメチルアミノ)エタノール、ピリジン、キノリン、α−ピコリン、2,4,6−トリメチルピリジン、2,2,5,6−テトラメチルピペリジン、2,2,5,5,テトラメチルピロリジン、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、アニリン、ジメチルアニリン等のアミン類、ホルムアミド、ヘキサメチルリン酸トリアミド、N,N,N’,N’,N”−ペンタメチル−N’−β−ジメチルアミノメチルリン酸トリアミド、オクタメチルピロホスホルアミド等のアミド類、N,N,N’,N’−テトラメチル尿素等の尿素類、フェニルイソシアネート、トルイルイソシアネート等のイソシアネート類、アゾベンゼン等のアゾ化合物が例示される。
燐含有化合物としては、エチルホスフィン、トリエチルホスフィン、トリ−n−オクチルホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリフェニルホスフィンオキシド、ジメチルホスフィン、ジ−n−オクチルホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリフェニルホスフィンオキシド等のホスフィン類、ジメチルホスファイト、ジ−n−オクチルホスファイト、トリエチルホスファイト、トリ−n−ブチルホスファイト、トリフェニルホスファイト等のホスファイト類が例示される。
硫黄含有化合物としては、ジエチルチオエーテル、ジフェニルチオエーテル、メチルフェニルチオエーテル等のチオエーテル類、エチルチオアルコール、n−プロピルチオアルコール、チオフェノール等のチオアルコール類が挙げられ、さらに、有機ケイ素化合物として、トリメチルシラノール、トリエチルシラノール、トリフェニルシラノール等のシラノール類、トリメチルメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、メチルフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジイソプロピルジメトキシシラン、ジイソブチルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ブチルトリエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、エチルトリイソプロポキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、シクロペンチルメチルジメトキシシラン、シクロペンチルトリメトキシシラン、ジシクロペンチルジメトキシシラン、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン、シクロヘキシルトリメトキシシラン、ジシクロヘキシルジメトキシシラン、2−ノルボルニルメチルジメトキシシラン等のSi−O−C結合を有する有機ケイ素化合物等が挙げられる。
これらの電子供与体は、単独あるいは2種類以上を混合して使用することができる。
予備活性化触媒において、成分(a)は、135℃のテトラリン中で測定した固有粘度[η]が15〜100dl/g、好ましくは17〜50dl/gの範囲のエチレン単独重合体またはエチレン重合単位が50重量%以上、好ましくは70重量%以上、さらに好ましくは90重量%以上であるエチレンと炭素数3〜12のオレフィンとの共重合体であり、最終的にポリプロピレン組成物(A)の(a)成分の高分子量ポリエチレンを構成する。
成分(a)の遷移金属化合物触媒成分1g当たりの担持量は0.01〜5,000g、好ましくは0.05〜2,000g、さらに好ましくは0.1〜1,000gである。遷移金属化合物触媒成分1g当たりの担持量が0.01g未満では、本(共)重合で最終的に得られるポリプロピレン組成物(A)の溶融張力の向上効果が不十分であり、また5,000gを超える場合にはそれらの効果の向上が顕著でなくなるばかりでなく、最終的に得られるポリプロピレン組成物(A)の均質性が悪化する場合があるので好ましくない。
一方、(b)成分は、135℃のテトラリン中で測定した固有粘度[η]が0.2〜10dl/gのプロピレン(共)重合体であり、ポリプロピレン組成物(A)の一部として組み入れられる。(b)成分は、(a)成分の最終的に得られるポリプロピレン組成物(A)への分散性を付与する成分であり、その意味からもその固有粘度[η]は、(a)成分の固有粘度[η]より小さく、最終的に得られるポリプロピレン組成物(A)の固有粘度[η]より大きいことが好ましい。
(b)成分の遷移金属化合物触媒成分1g当たりの担持量は0.01〜100g、換言すれば最終的に得られるポリプロピレン組成物(A)基準で0.001〜1重量%の範囲が好適である。(b)成分の担持量が小さいと目的とするポリプロピレン組成物(A)への(a)成分の分散性が不十分となり、また大きすぎると(a)成分のポリプロピレン組成物(A)への分散性は飽和してしまうばかりでなく、予備活性化触媒の製造効率が低下を招く。
本発明において、予備活性化触媒は、前記少なくともチタン化合物を含む遷移金属化合物触媒成分、有機金属化合物(AL1)および所望により使用される電子供与体(E1)の組み合わせからなるポリオレフィン製造用触媒の存在下に、本(共)重合目的のポリプロピレンまたはプロピレンと炭素数2、4〜12のα−オレフィンを予備(共)重合させて(b)成分の一部を生成させ、次いでエチレンまたはエチレンと炭素数3〜12のα−オレフィンを予備活性化(共)重合させて(a)成分を生成させて、遷移金属化合物触媒成分に(b)成分および(a)成分を担持させる予備活性化処理により製造される。
この予備活性化処理において、チタン化合物を含む遷移金属化合物触媒成分、触媒成分中の遷移金属1モルに対し0.01〜1,000モル、好ましくは0.05〜500モルの有機金属化合物(AL1)、および触媒成分中の遷移金属1モルに対し0〜500モル、好ましくは0〜100モルの電子供与体(E1)の組み合わせからなるポリオレフィン製造用触媒として使用する。
このポリオレフィン製造用触媒をエチレンまたはエチレンと炭素数3〜12のα−オレフィンの(共)重合容積1リットル当たり触媒成分中の遷移金属原子に換算して、0.001〜5,000ミリモル、好ましくは0.01〜1,000ミリモル存在させ、溶媒の不存在下または遷移金属化合物触媒成分1gに対し100リットルまでの溶媒中において、本(共)重合目的のプロピレンまたはプロピレンと炭素数2、4〜12のα−オレフィンとの混合物0.01〜500gを供給して予備(共)重合させて遷移金属化合物触媒成分1gに対し0.01〜100gの(b)成分の一部を生成させ、次いでエチレンまたはエチレンと炭素数3〜12のα−オレフィンとの混合物0.01〜10,000gを供給して予備活性化(共)重合させて遷移金属化合物触媒成分1gに対し0.01〜5,000gの(a)成分を生成させることにより、遷移金属化合物触媒成分に(b)および(a)が被覆担持される。
本明細書中において、「重合容積」の用語は、液相重合の場合には重合器内の液相部分の容積を、気相重合の場合には重合器内の気相部分の容積を意味する。遷移金属化合物触媒成分の使用量は、プロピレンの効率的、かつ制御された(共)重合反応速度を維持する上で、前記範囲であることが好ましい。また、有機金属化合物(AL1)の使用量が少なすぎると(共)重合反応速度が遅くなりすぎ、また大きくしても(共)重合反応速度のそれに見合う上昇が期待できないばかりか、最終的に得られるポリプロピレン組成物(A)中に有機金属化合物(AL1)の残渣が多くなるので好ましくない。さらに、電子供与体(E1)の使用量が大きすぎると、(共)重合反応速度が低下する。溶媒使用量が大きすぎると、大きな反応容器を必要とするばかりでなく、効率的な(共)重合反応速度の制御および維持が困難となる。
予備活性化処理は、たとえば、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、i−オクタン、デカン、ドデカン等の脂肪族炭化水素、シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂環族炭化水素、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等の芳香族炭化水素、他にガソリン留分や水素化ジーゼル油留分等の不活性溶媒、オレフィン自身を溶媒とした液相中で行うことができ、また溶媒を用いずに気相中で行うことも可能である。
予備活性化処理は、水素の存在下においても実施してもよいが、固有粘度[η]が15〜100dl/gの高分子量ポリエチレンである(a)成分を生成させるためには、水素は用いないほうが好適である。
予備活性化処理において、本(共)重合目的のプロピレンまたはプロピレンと炭素数2、4〜12のα−オレフィンとの混合物の予備(共)重合条件は、(b)成分が遷移金属化合物触媒成分1g当たり0.01g〜100g生成する条件であればよく、通常−40〜100℃の温度下、0.1〜5MPaの圧力下で、1分〜24時間実施する。またエチレンまたはエチレンと炭素数3〜12のα−オレフィンとの混合物の予備活性化(共)重合条件は、(a)成分が遷移金属化合物触媒成分1g当たり0.01g〜5,000g好ましくは0.05〜2,000g、さらに好ましくは0.1〜1,000gの量で生成するような条件であれば特に制限なく、通常−40〜40℃、好ましくは−40〜30℃、さらに好ましくは−40〜20℃程度の比較的低温下、0.1〜5MPa、好ましくは0.2〜5MPa、さらに好ましくは0.3〜5MPaの圧力下で、1分〜24時間、好ましくは5分〜18時間、さらに好ましくは10分〜12時間である。
また、前記予備活性化処理後に、予備活性化処理による本(共)重合活性の低下を抑制することを目的として、本(共)重合目的のプロピレンまたはプロピレンと炭素数2、4〜12のα−オレフィンとの混合物による付加重合を行い、遷移金属化合物触媒成分1g当たり0.01〜100gの(b)成分の一部を得ても良い。この場合、有機金属化合物(AL1)、電子供与体(E1)、溶媒、およびプロピレンまたはプロピレン炭素数2、4〜12のα−オレフィンとの混合物の使用量はエチレンまたはエチレンとその他のオレフィンオレフィンとの混合物による予備活性化重合と同様な範囲で行うことができるが、遷移金属原子1モルあたり0.005〜10モル、好ましくは0.01〜5モルの電子供与体の存在下で行うのが好ましい。また、反応条件については−40〜100℃の温度下、0.1〜5MPaの圧力下で、1分〜24時間実施する。
付加重合に使用される有機金属化合物(AL1)、電子供与体(E1)、溶媒の種類については、エチレンまたはエチレンと炭素数3〜12のα−オレフィンとの混合物による予備活性化重合と同様なものが使用でき、プロピレンまたは炭素数2、4〜12のα−オレフィンとの混合物については本(共)重合目的と同様の組成のものを使用する。付加重合で生成するポリプロピレンの固有粘度[η]は、(a)成分の固有粘度[η]より小さい範囲であり、最終的には本(共)重合後の(b)成分の一部として組み入れられる。
予備活性化触媒は、そのまま、または追加の有機金属化合物(AL2)および電子供与体(E2)をさらに含有させたオレフィン本(共)重合触媒として、目的のポリプロピレン組成物(A)を得るためのプロピレンまたはプロピレンと炭素数2、4〜12のα−オレフィンとの本(共)重合に用いることができる。
前記オレフィン本(共)重合用触媒は、前記予備活性化触媒、予備活性化触媒中の遷移金属原子1モルに対し、有機金属化合物(AL2)を活性化触媒中の有機金属化合物(AL1)との合計(AL1+AL2)で0.05〜3000モル、好ましくは0.1〜1,000モルおよび活性化触媒中の遷移金属原子1モルに対し電子供与体(E2)を予備活性化触媒中の電子供与体(E1)との合計(E1+E2)で0〜5,000モル、好ましくは0〜3,000モルからなる。有機金属化合物の含有量(AL1+AL2)が小さすぎると、プロピレンまたはプロピレンと炭素数2、4〜12のα−オレフィンの本(共)重合における(共)重合反応速度が遅すぎ、一方過剰に大きくしても(共)重合反応速度の期待されるほどの上昇が認められず非効率的であるばかりでなく、最終的に得られるポリプロピレン組成物(A)中に残留する有機金属化合物残渣が多くなるので好ましくない。さらに、電子供与体の含有量(E1+E2)が過大になると、(共)重合反応速度が著しく低下する。
オレフィン本(共)重合触媒に必要に応じて追加使用される有機金属化合物(AL2)および電子供与体(E2)の種類については既述の有機金属化合物(AL1)および電子供与体(E1)と同様なものを使用できる。また、1種の単独使用でもよく2種以上を混合使用してもよい。また予備活性化処理の際に使用したものと同種でも異なっていてもよい。
オレフィン本(共)重合触媒は、前記予備活性化触媒中に存在する溶媒、未反応のオレフィン、有機金属化合物(AL1)、および電子供与体(E1)等を濾別またはデカンテーションして除去して得た粉粒体もしくはこの粉粒体に溶媒を添加した懸濁液と、追加の有機金属化合物(AL2)および所望により電子供与体(E2)とを組み合わせてもよく、また、存在する溶媒および未反応のオレフィンを減圧蒸留または不活性ガス流等により蒸発させて除去して得た粉粒体または粉粒体に溶媒を添加した懸濁液と、所望により有機金属化合物(AL2)および電子供与体(E2)とを組み合わせて製造してもよい。
該方法において、前記予備活性化触媒またはオレフィン本(共)重合用触媒の使用量は、重合容積1リットルあたり、予備活性化触媒中の遷移金属原子に換算して、0.001〜1,000ミリモル、好ましくは0.005〜500ミリモル使用する。遷移金属化合物触媒成分の使用量を上記範囲とすることにより、プロピレンまたはプロピレンと炭素数2、4〜12のα−オレフィンとの混合物の効率かつ制御された(共)重合反応速度を維持することができる。
ポリプロピレン組成物(A)の(b)成分の大部分を占めるプロピレンまたはプロピレンと炭素数2、4〜12のα−オレフィンとの混合物の本(共)重合は、その重合プロセスとして公知のオレフィン(共)重合プロセスが使用可能であり、具体的にはプロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、i−オクタン、デカン、ドデカン等の脂肪族炭化水素、シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂環族炭化水素、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等の芳香族炭化水素、他にガソリン留分や水素化ジーゼル油留分等の不活性溶媒中で、オレフィンの(共)重合を実施するスラリー重合法、オレフィン自身を溶媒として用いるバルク重合法、オレフィンの(共)重合を気相中で実施する気相重合法、さらに(共)重合して生成するポリオレフィンが液状である溶液重合、あるいはこれらのプロセスの2以上を組み合わせた重合プロセスを使用することできる。
上記のいずれの重合プロセスを使用する場合も、重合条件として、重合温度は20〜120℃、好ましくは30〜100℃、特に好ましくは40〜100℃の範囲、重合圧力は0.1〜5MPa、好ましくは0.3〜5MPaの範囲において、連続的、半連続的、若しくはバッチ的に重合時間は5分間〜24時間程度の範囲で実施される。上記の重合条件を採用することにより、(b)成分を高効率かつ制御された反応速度で生成させることができる。
本(共)重合の終了後、必要に応じて公知の触媒失活処理工程、触媒残渣除去工程、乾燥工程等の後処理工程を経て、目的とする高溶融張力を有するポリプロピレン組成物(A)が得られる。
本発明に用いるポリプロピレン組成物(A)の製造方法のより好ましい態様においては、本(共)重合において生成する(b)成分のポリプロピレンおよび最終的に得られるポリプロピレン組成物(A)の固有粘度[η]が0.2〜10dl/g、好ましくは0.7〜5dl/gの範囲となり、かつ得られるポリプロピレン組成物(A)中に、使用した予備活性化触媒に由来する(a)成分が、全(b)成分合計量100重量部に対し、0.01〜5重量部の範囲になるように重合条件を選定する。
また、公知のオレフィンの重合方法と同様に、重合時に水素用いることにより得られる(共)重合体の分子量を調整することができる。
本発明に用いるポリプロピレン組成物(A)の製造方法においては、(a)成分を予備活性化工程によって生成させ、最終的に得られるポリプロピレン組成物(A)中に均一分散させる方法をとっているので、予備活性化触媒の必要量をまとめて調製することが可能な一方、プロピレンまたはプロピレンと炭素数2、4〜12のα−オレフィンとの本(共)重合では既存のプロセスを用いて通常のオレフィン(共)重合を実施すればよいので、通常のポリオレフィン製造と比較して同等の生産性を維持することができる。
4.ポリプロピレン組成物(X)
本発明の発泡糸で用いるポリプロピレン組成物(A)には、必要に応じて、プロピレン系樹脂(B)を配合したポリプロピレン組成物(X)を用いることができる。
本発明で用いることのできるプロピレン系樹脂(B)は、MFRが0.5〜100g/10分、好ましくは0.8〜80g/10分、特に好ましくは1.0〜60g/10分のものが使用される。プロピレン系樹脂(B)のMFRが0.5g/10分未満では、ポリプロピレン組成物(A)への溶融分散が悪化したり、ポリプロピレン組成物(X)の流動性が悪化したりするため、発泡糸の生産性が著しく低下し好ましくない。MFRが100g/10分を超えると、ポリプロピレン組成物(A)への溶融分散が悪化するため、発泡糸の生産性が著しく低下してしまうため好ましくない。
ここで、MFRはJIS K7210 表1の条件14<温度230℃,荷重21.18N>に準じて測定する値である。
また、プロピレン系樹脂(B)のGPC法による分子量分布(Mw/Mn)は9以下、好ましくは8.5以下、特に好ましくは8.0以下である。プロピレン系樹脂(B)の分子量分布が9を超えると、高分子量成分量が相当量増加することにより、ポリプロピレン組成物(A)への溶融分散が著しく悪化し、紡糸時の糸切れ発生を伴い、結果として発泡糸の生産が困難となってしまうため好ましくない。
ここで、分子量分布は、GPC法で得られる重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比で表され、GPC法による分子量測定法は以下の通りである。
本発明においては、重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)、またW(M≦5000)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法で測定して得られるものとする。保持容量から分子量への換算は、予め作成しておいた標準ポリスチレンによる検量線を用いて行う。
使用する標準ポリスチレンは何れも東ソー(株)製の以下の銘柄である。
F380,F288,F128,F80,F40,F20,F10,F4,F1,A5000,A2500,A1000
各々が0.5mg/mlとなるようにo−ジクロロベンゼン(0.5mg/mlのBHTを含む)に溶解した溶液を0.2ml注入して較正曲線を作成する。
較正曲線は最小二乗法で近似して得られる三次式を用いる。分子量への換算に使用する、粘度式の[η]=K×Mα は以下の数値を用いる。
PS:K=1.38×10−4 α=0.7
PP:K=1.03×10−4 α=0.78
なお、GPCの測定条件は以下の通りである。
装置:WATERS社製 GPC(ALC/GPC 150C)
検出器:FOXBORO社製 MIRAN 1A IR検出器(測定波長:3.42μm)
カラム:昭和電工社製AD806M/S(3本)
移動相溶媒:o−ジクロロベンゼン
測定温度:140℃
流速:1.0ml/min
注入量:0.2ml
試料の調製:試料はo−ジクロロベンゼン(0.5mg/mlのBHTを含む)を用いて1mg/mlの溶液を調製し、140℃で約1時間を要して溶解させる。
本発明で必要において用いられるプロピレン系樹脂Bは、上記の物性を満足するものであれば特に限定はなく、プロピレン単独重合体またはプロピレン重合単位を50重量%以上含有するプロピレンと炭素数2、4〜12のα−オレフィンとの共重合体を1種以上含むものであり、α−オレフィンには、エチレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、4−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ペンテンなどが挙げられ、これらのα−オレフィンは1種のみならず2種以上であっても良い
かかる(共)重合体の製造方法としては、上記の物性を満足するものが得られるのであれば、その製造方法は特に制限されず、重合触媒として、チタン系触媒、バナジウム系触媒、クロム系触媒、メタロセン系触媒、フェノキシイミン系触媒、担時型触媒など公知の触媒を使用して製造することができる。
ポリプロピレン組成物(X)におけるポリプロピレン組成物(A)とプロピレン系樹脂(B)の組成比は、ポリプロピレン組成物(A)が30〜95重量%とプロピレン系樹脂(B)70〜5重量%とからなることが好ましく、ポリプロピレン組成物(A)40〜90重量%とプロピレン系樹脂(B)60〜10重量%からなることがさらに好ましく、ポリプロピレン組成物(A)50〜80重量%とプロピレン系樹脂(B)50〜20重量%からなることが最も好ましい。プロピレン系樹脂(B)の配合量が70重量%を超えると、ポリプロピレン組成物(A)の寄与が低くなることにより発泡糸の生産が困難となってしまうため好ましくない。
本発明におけるポリプロピレン系組成物(X)は、DSC測定により結晶化ピーク温度として得られる結晶化温度(Tc)が下記範囲であることが望ましい。
80℃≦Tc≦130℃
Tcが130℃を超えると紡糸ノズル直下でのポリプロピレン系組成物(X)の固化が早くなる傾向があり、紡糸速度を上げた際に紡糸ノズル直下での溶融伸びが不足することによる糸切れが多発し、発泡糸の生産が困難となりやすいので好ましくない。結晶化温度に関して下限を規定する必要は特に無いが、80℃以下のものを製造することは実質的に難しい。
ここで、結晶化温度(Tc)は、DSC測定により測定される融解ピーク温度により定義され、DSC測定はセイコー社製DSCを用い、試料5.0mgを採り、200℃で5分間保持した後、40℃まで10℃/分の降温速度で結晶化させたときの結晶化ピーク温度をTcとした(単位:℃)。
II.発泡糸
1.構成成分の配合
本発明の発泡糸は、上記ポリプロピレン組成物(A)またはポリプロピレン組成物(X)と発泡剤および/または付加的成分とからなる材料から成形される。
発泡剤とは、分解することによって気体を発生させる物資あるいは揮発性液体であり、プラスチックまたはゴム等に使用されている公知のものであれば問題なく使用できる。具体的には、重曹、アゾジカルボンアミド、ジニトロペンタメチレンテトラミン、P,P’−オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジド、P,P’−オキシビスベンゼンスルホニルセミカルバジッド、N,N’−ジメチル−N,N’−ジニトロソテレフタルアミド、ジクロロジフロロメタン等が例示でき、取り扱い性がよいという理由により、重曹、アゾジカルボンアミド、ジクロロジフロロメタン等が好ましい。
発泡剤の配合量は、ポリプロピレン組成物(A)又はポリプロピレン組成物(X)100重量部に対し、発泡剤0.05〜5重量部、好ましくは0.1〜14重量部、更に好ましくは0.2〜3重量部の範囲で用いるとよい。発泡剤をこの範囲にすることにより、発泡倍率が高く、均一に発泡セルを持つ発泡体が得られる。発泡剤が5重量部を超えると、発泡しすぎることにより紡糸ノズル直下での糸切れが多発したり、発泡セルが糸表面で破裂し表面荒れが顕著になるといった問題を引き起こすため好ましくない。
本発明の発泡糸においては、発泡糸の性質をより高めたり耐酸化性などの他の性質を付加させたりするために、付加的成分を任意成分として、本発明の効果を著しく損なわない範囲内で配合することもできるが、これら添加剤において本発明の用途である繊維分野における要求を満足させるものを選択することが必要である。
付加的成分の具体例としては、プロピレン系樹脂に配合可能なポリオレフィン、プロピレン系樹脂の酸化劣化を防ぐための酸化防止剤、プロピレン系樹脂に存在する酸性の触媒残渣を中和するための中和剤を挙げることができる。
上記配合可能なポリオレフィンとしては、具体的には、低密度ポリエチレン、エチレン−α−オレフィン共重合体、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、プロピレンブロック共重合体、プロピレンランダム共重合体を挙げることができる。
上記酸化防止剤は、混練造粒や紡糸成形時の劣化防止だけでなく、原料保管や製品保管時に熱や空気により分子切断が進行し著しい物性の低下や揮発成分の発生に伴う臭いの悪化を防止するために使用する。酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤等が好ましい。
具体的なフェノール系酸化防止剤としては、トリス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−イソシアヌレイト、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、ペンタエリスリチル−テトラキス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、3,9−ビス[2−〔3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ〕−1,1−ジメチルエチル]−2,4,8,10テトラオキサスピロ〔5,5〕ウンデカン、1,3,5−トリス(4−t−ブチル−3−ヒドロキシ−2,6−ジメチルベンジル)イソシアヌル酸等である。
この中でも薬剤への揮発、抽出の観点より分子量が高く低揮発性でかつ耐抽出性に優れたトリス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−イソシアヌレイト、ペンタエリスリチル−テトラキス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼンがより好ましい。
具体的なリン系酸化防止剤としては、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイト、ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリスリトール−ジフォスファイト、テトラキス−(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)4,4−ビフェニレン−ジフォスファイト、ジステアリル−ペンタエリスリトール−ジフォスファイト、ジステアリル−ペンタエリスリトール−ジフォスファイト、ビス(4−メチル−2,6−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリスリトール−ジフォスファイト等である。
具体的なイオウ系酸化防止剤としては、ジミリスチルチオジプロピオネート、ジステアリルチオジプロピオネート、ジラウリルチオジプロピオネート、ペンタエリスリチルテトラキス(3−ラウリルチオプロピオネート)等である。
フェノール系酸化防止剤の配合量は、ポリプロピレン組成物(A)またはポリプロピレン組成物(X)100重量部あたり、0.005〜0.5重量部、好ましくは0.01〜0.3重量部である。0.005重量部未満では製品の耐酸化劣化性が充分ではなく、一方、0.5重量部を超えると、不経済であるばかりか、変色の問題、ブリードの問題が発生し好ましくない。
リン系酸化防止剤の配合量は、ポリプロピレン組成物(A)またはポリプロピレン組成物(X)100重量部あたり、0.005〜1重量部、好ましくは0.01〜0.6重量部である。0.005重量部未満では製品の耐酸化劣化性が充分ではなく、一方、0.5重量部を超えると、不経済であるばかりか、変色の問題、ブリードの問題が発生し好ましくない。
イオウ系酸化防止剤の配合量は、ポリプロピレン組成物(A)またはポリプロピレン組成物(X)100重量部あたり、0.01〜1重量部、好ましくは0.03〜0.6重量部である。0.01重量部未満では製品の耐酸化劣化性が充分ではなく、一方、0.6重量部を超えると、不経済であるばかりか、変色の問題、ブリードの問題が発生し好ましくない。
上記中和剤は、チーグラー・ナッタ型触媒を用いて製造したプロピレン系樹脂の使用に際しては、触媒残渣中に塩素が含まれ、これを中和するために用いられる。一般的にポリプロピレン系樹脂に用いられる中和剤としては、脂肪酸金属塩やハイドロタルサイト類が挙げられる。
具体的な脂肪酸金属塩としては、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸リチウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸カリウム、12−ヒドロキシステアリン酸カルシウム、12−ヒドロキシステアリン酸マグネシウム、12−ヒドロキシステアリン酸亜鉛、12−ヒドロキシステアリン酸リチウム、ラウリン酸カルシウム、リシノール酸カルシウム、ベヘン酸カルシウム、モンタン酸カルシウム、モンタン酸マグネシウム、ベヘン酸マグネシウム、ラウリン酸亜鉛、ベヘン酸亜鉛、オレイン酸亜鉛、ミリスチン酸リチウム、ベヘン酸リチウム、モンタン酸リチウムなどが挙げられる。
具体的なハイドロタルサイトとしては、マグネシウム、カルシウム、亜鉛、アルミニウム、ビスマス等の含水塩基性炭酸塩又は結晶水を含まないもので、天然物及び合成品が含まれる。天然物としては、MgAl(OH)16CO・4HOの構造のものが挙げられる。また、合成品としては、Mg0.7Al0.3(OH)(CO0.15・0.54HO、Mg4.5Al(OH)13CO・3.5HO、Mg4.2Al(OH)12.4CO、ZnAl(OH)16CO・4HO、CaAl(OH)16CO・4HO、Mg14Bi(OH)29.6・4.2HO等が挙げられる。
これら中和剤の配合量は、ポリプロピレン組成物(A)またはポリプロピレン組成物(X)100重量部あたり、0.5重量部以下、好ましくは0.2重量部以下である。0.5重量部を超えると、不経済であるばかりでなく、ブリード等の問題が発生する。
その他の付加的成分としては、従来公知のポリオレフィン系樹脂用配合剤として使用される光安定剤、紫外線吸収剤、アンチブロッキング剤、滑剤、帯電防止剤、金属不活性剤、過酸化物、充填剤、抗菌防黴剤、蛍光増白剤、難燃剤、造核剤、親水化剤、結晶化抑制剤、タルク、無機フィラーといった各種添加剤を加えることができる。これら添加剤の配合量は、ポリプロピレン組成物(A)またはポリプロピレン組成物(X)100重量部あたり、0.0001〜3重量部、好ましくは0.001〜1重量部である。さらに、本発明の効果を著しく損なわない範囲内で、柔軟性を付与する成分としてエラストマーも配合することができる。エラストマーの配合量は、ポリプロピレン組成物(A)またはポリプロピレン組成物(X)100重量部あたり、1〜30重量部、好ましくは5〜20重量部である。
上記添加剤成分の配合方法としては、ポリプロピレン組成物(A)またはポリプロピレン組成物(X)のパウダーに直接添加剤を予備混合して溶融混練混合する方法、また予め添加剤を高濃度にしたマスターバッチをブレンドする方法等で配合物を得ることができる。上記機械的混合或いは溶融混練に用いられる混合機或いは混練機としては、例えば、ヘンシェルミキサー、スーパーミキサー、Vブレンダー、タンブラーミキサー、リボンブレンダー、バンバリーミキサー、ニーダーブレンダー、ブラベンダープラストグラフ、ロール、一軸スクリュー押出造粒機、二軸スクリュー押出造粒機等を挙げることができる。また、溶融混練温度は一般に100〜300℃で行われる。
2.発泡糸の製造
本発明の発泡糸は、溶融紡糸法、具体的にはマルチフィラメント成形法、モノフィラメント成形法やヤーン成形等によって得られる。
特に、モノフィラメント成形では繊維径が100〜10000dtexの糸を得るのに適した製法として広く用いられている。その成形概要は、以下の通りである。
原料を押出機により溶融させた後、孔径0.3mm〜3mm、孔数数十〜数百の紡糸ノズルヘッドから、溶融ストランドが押し出される。溶融ストランドは紡糸ノズル直下10〜500mmに据え付けてある冷却水槽へ導入され溶融ストランドは冷却固化される。冷却固化されたストランドは複数の繰出ロールにより延伸槽へと運ばれる。繰出ロール速度は通常数m〜数十m/分で実施される。延伸槽でストランドは効率よく延伸される延伸槽は湿式と乾式タイプがあり、湿式の場合は通常60〜100℃の加熱水が用いられる。乾式の場合では熱板あるいはオーブンが用いられる。温度は通常60〜160℃の範囲内である。延伸されたストランドは、場合によっては熱セットを施された後に巻き取り機へと運ばれる。
3.発泡糸の特性
(1)発泡倍率
本発明の発泡糸の発泡倍率は、1.1〜6倍が好ましく、1.2〜5.5倍がより好ましい。1.1倍未満では、耐摩耗性能やパール調光沢が発現しないため好ましくない。また6倍を超える発泡糸の生産は扁平形状になるなど、現時点では技術的に難度が高く現実的ではない。
ここで、発泡倍率は、下記式により算出する値であり、糸の密度は、比重測定装置を用いて測定する値である。
発泡倍率=未発泡糸の密度/発泡糸の密度
(2)引張強度
本発明の発泡糸の引張強度(Tb)と未発泡糸の引張強度(Tn)の比Tb/Tnは、 Tb/Tn>0.8
が好ましく、
Tb/Tn>0.85
がより好ましい。
Tb/Tnが0.8以下であれば、発泡糸の強度低下が激しくなる恐れがあり好ましくない。
ここで、引張強度は、JIS L 1013に準拠して測定する値である。
(3)発泡セルのアスペクト比
本発明の発泡糸中の発泡セルのアスペクト比は、15以上が好ましく、18以上が更に好ましく、20以上が最も好ましい。アスペクト比が15未満であると、糸の長手方向に発泡セルが伸張されていないことになり、結果的にパール調光沢が発現され難くなるため好ましくない。
ここで、発泡セルのアスペクト比は、走査型電子顕微鏡で発泡糸の長手方向の断面写真撮影を行い、発泡セルについて、縦横のサイズを計測しその縦横比率を算出した値である。
(4)分繊テスターによる耐摩耗性
本発明の発泡糸の分繊テスターによる繊維破断までの回数は、200回以上が好ましく、220回以上がより好ましい。200回未満では未発泡糸との優位性が乏しく、耐摩耗性が良いとは判断できず好ましくない。
ここで、分繊テスターによる破断回数は、所定の摩耗試験機を使用し、糸をサンドペーパー上で往復運動をさせながら破断するまでの回数である。なお、測定条件は回転速度60cycle/minとし、分銅90g、サンドペーパーAA−240を使用した。回数が多いほど、耐摩耗性に優れることを示している。
4.発泡糸の用途
本発明の発泡糸は、紡糸工程において通常の未発泡糸の生産速度と同一水準で生産することが可能であるだけでなく、上記特性(1)〜(4)を有するので、未発泡糸比較で繊度あたりの繊維強力を落とすことなく、更には耐摩耗性に優れ、表面テカリを抑えたパール調光沢という効果を有する。したがって、畳表、光輝縁、カーペット、各種ロープ、インテリア用のクロスシート等への展開が可能となる。
以下に実施例、比較例を用いて本発明を詳細に説明するが、本発明は、実施例のみに限定されるものではない。なお、実施例で用いた重合体の物性測定方法、発泡糸の物性測定方法、用いた材料は以下の通りである。
1.重合体の物性
(1)MFR:JIS K7210 表1の条件14<温度230℃,荷重21.18N>に準じて測定した。
(2)固有粘度:三井東圧化学製のオストヴァルト粘度計を用い、135℃のテトラリン中で測定した(単位:dl/g)。
(3)溶融張力:前述の方法に準拠して測定した。
(4)Q値(分子量分布):前述の方法に準拠して測定した。
(5)結晶化温度:前述の方法に準拠して測定した。
2.発泡糸の物性
(1)紡糸性:下記判定基準にて、紡糸性を判定した。
○:糸切れもなく安定
△:糸切れは発生するが、紡糸は可能
×:紡糸ノズル直下で糸切れが多発し、紡糸不能
(2)肌荒れ(未延伸/延伸糸):下記判定基準にて、未延伸糸、延伸糸の肌荒れを判定した。
○:日本電子(株)社製電界放出形走査型電子顕微鏡JSM−7401Fによる倍率200倍の観察においても表面荒れが観察されない
△:日本電子(株)社製電界放出形走査型電子顕微鏡JSM−7401Fによる倍率200倍の観察において表面荒れが観察
×:目視で表面荒れが観察
(3)発泡糸/未発泡糸の密度:長さ200mmに切り取った発泡糸、あるいは未発泡糸をメトラー・トレド(株)社製自動比重測定装置SGM−6にて測定した。
(4)発泡糸の発泡倍率:下式にて発泡倍率を算出した。
発泡倍率=未発泡糸の密度/発泡糸の密度
(5)発泡糸/未発泡糸の引張強度比:発泡糸、あるいは未発泡糸を東洋精機(株)製テンシロンにて引張測定を実施し、発泡糸の強度(Tb)と未発泡糸の強度(Tn)および未発泡糸の強度に対する発泡糸の強度比(Tb/Tn)を算出した。
なお、測定条件はチャック間隔200mm、引張速度200mm/分で実施した。
(6)発泡セルのアスペクト比:日本電子(株)社製電界放出形走査型電子顕微鏡JSM−7401Fで倍率200倍の発泡糸の長手方向の断面写真撮影を行い、発泡セルについて、縦横のサイズを計測しその縦横比率をアスペクト比とし、合計5箇所の発泡セルのアスペクト比を平均して求めた。
(7)パール光沢:下記判定基準にて、パール光沢性を判定した。
有:パール状に輝いている
やや有:若干パール光沢が感じられる
なし:パール光沢が感じられない
(8)摩耗性:安田精機製作所製摩耗試験機を使用し、測定を1サンプルにつき10回実施し、その平均値を摩耗回数とした。
なお、測定条件は回転速度60cycle/minとし、分銅90g、サンドペーパーAA−240を使用した。回数が多いほど、耐摩耗性に優れることを示している。
3.原材料
(1)(A)ポリプロピレン組成物として、製造例1で得た組成物を用いた。
(製造例1)
(1)遷移金属化合物触媒成分の調製
撹拌機付きステンレス製反応器中において、デカン37.5リットル、無水塩化マグネシウム7.14kg、および2−エチル−1−ヘキサノール35.1リットルを混合し、撹拌しながら140℃に4時間加熱して均一な溶液とした。この均一溶液中に無水フタル酸1.67kgを添加し、さらに130℃にて1時間撹拌して、無水フタル酸をこの均一溶液に溶解した。得られた均一溶液を室温(23℃)に冷却した後、この均一溶液を−20℃に保持した四塩化チタン200リットル中に3時間かけて全量滴下した。滴下後、4時間かけて110℃に昇温し、110℃に達したところでフタル酸ジ−i−ブチル5.03リットルを添加し、2時間110℃にて撹拌保持して反応を行った。2時間の反応終了後、熱濾過にて固体部を採取し、固体部を275リットルの四塩化チタンにて再懸濁させた後、再び110℃で2時間、反応を持続した。反応終了後、再び熱濾過により固体部を採取し、n−ヘキサンにて、洗浄液中に遊離のチタンが検出されなくなるまで充分洗浄した。続いて、濾過により溶媒を分離し、固体部を減圧乾燥してチタン2.4重量%を含有するチタン含有担持型触媒成分(遷移金属化合物触媒成分)を得た。
(2)予備活性化触媒の調製
内容積30リットルの傾斜羽根付きステンレス製反応器を窒素ガスで置換後、n−ヘキサン20リットル、トリエチルアルミニウム40ミリモル、および前項で調製したチタン含有担持型触媒成分80g(チタン原子換算で40ミリモル)を添加した後、15℃でプロピレン420gを120分間供給して予備重合を行った。反応時間終了後、未反応のプロピレンを反応器外に放出し、反応器の気相部を1回、窒素置換した。別途、同一の条件で行った予備重合後に生成したポリマーを分析した結果、チタン含有担持型触媒成分1g当たり、2.1gのポリプロピレン(W01)が生成し、このポリプロピレンの固有粘度[η]は2.9dl/gであった。
次いで反応器内の温度を1℃に保持しながら、反応器内の圧力を0.59MPaに維持するようにエチレンを反応器に連続的に6時間供給して、予備活性化を行った。反応時間終了後、未反応のエチレンを反応器外に放出し、反応器の気相部を1回、窒素置換して、予備活性化触媒スラリーとした。別途、同一の条件で予備重合と予備活性化を行った結果、予備活性化後に生成していた重合体の生成量(W0T)は、チタン含有担持型触媒成分1g当たり55.3gであり、かつこの重合体の固有粘度[η0T]は30.8dl/gであった。
エチレンによる予備活性化で得られたチタン含有担持型触媒成分1g当たりに含有されている高分子量ポリエチレン(a)成分の生成量(W02)は、予備活性化処理後に生成していたチタン含有担持型触媒成分1g当たりの重合体の生成量(W0T)と予備重合後のチタン含有担持型触媒成分1g当たりのポリプロピレン(W01)との差として次式で求められる。
02=W0T−W01
また、エチレンによる予備活性化で生成した高分子量ポリエチレン(a)成分の固有粘度[η]は、予備重合で生成したポリプロピレンの固有粘度[η]、および予備重合工程に引き続く予備活性化工程終了後に生成していた重合体の固有粘度[η0T]から次式により求められる。
[η]=([η0T]×W0T−[η]×W01)/(W0T−W01
上記の式に従って、エチレンによる予備活性化で生成したエチレン重合体(a)量は、チタン含有担持型触媒成分1g当たり53.2g、その固有粘度[η]は31.9dl/gと算出された。
(3)重合工程(I)
内容積500リットルの撹拌機付き、ステンレス製重合器を窒素置換した後、n−ヘキサン240リットル、トリエチルアルミニウム780ミリモル、ジイソプロピルジメトキシシラン78ミリモル、および上記で得た予備活性化触媒スラリーの1/10量を投入した。引き続いて、水素315リットルを重合器内に導入し、重合温度70℃、重合器内の気相部圧力を1.0MPaに保持しながらプロピレンを連続的に1.5時間供給して、プロピレン重合体(I)の製造(重合工程(I))を実施した。重合終了後、重合器内の温度を30℃まで冷却した後、水素と未反応プロピレンを放出した。次いで、重合スラリーの一部を抜き出して測定した結果、メルトフローレート(MFR(i))は11dg/分であり、予備活性化で生成した高分子量ポリエチレン(a)成分の含有率は0.82重量%であった。
(4)重合工程(II)
重合器内温度を60℃に昇温後、水素2リットル、エチレン4.3kg、およびプロピレン12kgを、2時間連続して供給し、オレフィン重合体(II)の製造(重合工程(II))を実施した。重合終了後、重合器内の温度を30℃まで冷却して、水素と未反応のエチレンおよびプロピレンを放出した。次いで、メタノール50リットルを重合器内に導入し、触媒失活反応を60℃にて30分間実施した。更に20重量%の苛性ソーダ水溶液0.7リットルを加え、20分間攪拌した後、純水100リットルを加えて、20分間攪拌した。水層を抜き出した後に、再度300リットルの純水を加え、20分間攪拌して水層を抜き出した。ついでヘキサンスラリーを抜き出し、濾過、乾燥した。得られたオレフィン重合体(II)中のエチレン単位含有量は61重量%((b)成分中のエチレン単位含有量は4.9重量%)であった、また、プロピレン重合体(I)とオレフィン重合体(II)との組成比は重量比で92:8であった。
また、本発明で言う「プロピレン(共)重合体(b)成分」の生成量は、重合工程(II)終了後の重合体の生成量から、予備重合で得られたポリプロピレンと予備活性化で得られたエチレン重合体(a)の生成量を差し引くことにより算出された。
その結果、固有粘度[η]が31.9dl/gの高分子量ポリエチレン(a)成分が0.75重量部と固有粘度[η]が2.0dl/gのプロピレン(共)重合体(b)成分が100重量部の重合体混合物が得られているのがわかった。該重合体混合物は、MFRが5.0g/10分、エチレン含有量は4.9重量%であった。
得られた重合体混合物100重量部に対して、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール0.1重量部、およびステアリン酸カルシウム0.1重量部を混合して、該混合物をスクリュー径40mmの押出造粒機を用いて、樹脂温度が300℃にて造粒(溶融混練)し、ポリプロピレン組成物(A)を得た。得られたポリプロピレン組成物(A)は、MFRが4.7g/10分、溶融張力が8.4cN、固有粘度[η]が2.3dl/gであった。
(2)プロピレン系樹脂Bとして、次のB1、B2、B3を用いた。
B1:日本ポリプロ(株)製FY4(MFR5.0g/10分、Q値4.0)
B2:日本ポリプロ(株)製FY6H(MFR2.0g/10分、Q値4.0)
B3:日本ポリプロ(株)製SA4L(MFR5.0g/10分、Q値9.2)
(3)発泡剤:重曹系発泡剤のマスターバッチであるベーリンガーインゲルハイムケミカルズ(株)製ハイドロセロール H−CF40Eを用いた。
(4)酸化防止剤:1、3、5−トリス[(4−tert−ブチル−3−ヒドロキシ−2、6−キシリル)メチル]−1、3、5−トリアジン−2、4、6(1H、3H、5H)−トリオン(サイテック製、商品名サイアノックス1790)を用いた。
(5)中和剤:ステアリン酸カルシウム(日東化成工業製、商品名Ca−St)を用いた。
(実施例1)
ポリプロピレン組成物(A)100重量部に対して、発泡剤を2重量部、酸化防止剤を0.04重量部、及び中和剤を0.05重量部配合し、ヘンシェルミキサーで500rpm、3分間高速混合した後、φ50mm単軸押出機(ユニオンプラスチック社製)を使用し、押出温度230℃の条件で、溶融、混練、冷却、カットしてペレットを調製した。
次に得られたペレットを下記の条件によりモノフィラメント成形し、繊度500dtexの発泡糸を得た。
この時の組成内容を表1に、得られた発泡糸の諸物性を表2に示す。
押出機:スクリュー系:40mmφ、L/D:24
紡糸ノズル:ノズル径:1.0mmφ、孔数:40孔
紡糸条件:
紡糸温度:C1/C2/C3/A/D=180℃/210℃/230℃/200℃/180℃
吐出量:13kg/h
延伸槽温度:95℃(沸騰水)
糸繰出速度:14.3m/min
巻取(延伸)速度:100m/min(7倍延伸)
(実施例2)
発泡剤を4重量部とした以外は、実施例1に準拠し、500dtexの発泡糸を得た。組成内容を表1に、得られた発泡糸の諸物性を表2に示す。
(実施例3)
ポリプロピレン組成物(X)として、ポリプロピレン組成物(A)を75重量%とプロピレン系樹脂B1を25重量%とからなる組成物をドライブレンドし、発泡糸用原料とした以外は、実施例1に準拠し、500dtexの発泡糸を得た。組成内容を表1に、得られた発泡糸の諸物性を表2に示す。
(実施例4)
ポリプロピレン組成物(X)として、ポリプロピレン組成物(A)を50重量%とプロピレン系樹脂B1を50重量%とからなる組成物をドライブレンドし、発泡糸用原料とした以外は、実施例1に準拠し、500dtexの発泡糸を得た。この時の組成内容を表1に得られた発泡糸の諸物性を表2に示す。
(実施例5)
発泡剤を1重量部とした以外は、実施例1に準拠し、500dtexの発泡糸を得た。この時の組成内容を表1に、得られた発泡糸の諸物性を表2に示す。
(比較例1)
発泡剤を用いなかった以外は、実施例1に準拠し、500dtexの未発泡糸を得た。この時の組成内容を表1に、得られた未発泡糸の諸物性を表2に示す。
(比較例2)
ポリプロピレン組成物(A)の代わりにプロピレン系樹脂B1を100重量%からなる組成物を用い、発泡剤を用いなかった以外は、実施例1に準拠し、500dtexの未発泡糸を得た。この時の組成内容を表1に、得られた未発泡糸の諸物性を表2に示す。
(比較例3)
ポリプロピレン組成物(A)の代わりにプロピレン系樹脂B1を100重量%からなる組成物を用いた以外は、実施例1に準拠し、500dtexの発泡糸を得ようと試みたが、紡糸時の糸切れが著しく発泡糸を得ることは出来なかった。この時の組成内容を表1に示す。
(比較例4)
ポリプロピレン組成物(A)の代わりにプロピレン系樹脂B3を100重量%からなる組成物を用いた以外は、実施例1に準拠し、500dtexの発泡糸を得ようと試みたが、紡糸時の糸切れが著しく発泡糸を得ることは出来なかった。この時の組成内容を表1に示す。
(比較例5)
ポリプロピレン組成物(X)の代わりにプロピレン系樹脂B1を50重量%とプロピレン系樹脂B2を50重量%とからなる組成物をドライブレンドし、発泡糸用原料とした以外は、実施例1に準拠し、500dtexの発泡糸を得た。この時の組成内容を表1に、得られた発泡糸の諸物性を表2に示す。
Figure 0004825503
Figure 0004825503
本発明の発泡糸は、紡糸工程において通常の未発泡糸の生産速度と同一水準で生産することが可能であるだけでなく、未発泡糸比較で繊度あたりの繊維強力を落とすことなく、更には耐摩耗性に優れ、表面テカリを抑えたパール調光沢という効果を有するので、畳表や光輝縁、カーペット等への展開が可能となる有用なものである。

Claims (5)

  1. 下記の(a)成分および(b)成分を含むポリプロピレン組成物(A)50〜80重量%と下記の特性(i)及び(ii)を有するプロピレン系樹脂(B)50〜20重量%を含むポリプロピレン組成物(X)を主成分とし、発泡剤を配合する材料から成形される発泡糸の製造方法であって、
    発泡糸の引張強度Tb(cN/dtex)と、該材料から発泡剤のみを配合しない材料から発泡糸の成形条件と同条件で成形される未発泡糸の引張強度Tn(cN/dtex)との比(Tb/Tn)は、Tb/Tn>0.8であることを特徴とする発泡糸の製造方法。
    (a)成分:135℃のテトラリン中で測定した固有粘度[η]が15〜100dl/gの範囲の高分子量ポリエチレン 0.01〜5.0重量部
    (b)成分:プロピレン単独重合体またはプロピレン重合単位を50重量%以上含有するプロピレン・α−オレフィン共重合体からなり、135℃のテトラリン中で測定した固有粘度[η]が0.2〜10dl/gの範囲のプロピレン(共)重合体 100重量部
    特性(i)MFRが0.5〜100g/10分
    特性(ii)GPC測定による分子量分布が9以下
  2. 上記ポリプロピレン組成物(X)の結晶化温度Tcが下記範囲であることを特徴とする請求項1に記載の発泡糸の製造方法。
    80℃≦Tc≦130℃
  3. 発泡倍率が1.1〜6倍であることを特徴とする請求項1又は2に記載の発泡糸の製造方法。
  4. 発泡糸中の発泡セルのアスペクト比が20以上であることを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載の発泡糸の製造方法。
  5. 分繊テスターによる繊維破断までの回数が200回以上であることを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載の発泡糸の製造方法。
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