JP4103213B2 - 予備発泡粒子の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、生産性に優れ、耐熱性、機械的強度、耐衝撃性、軽量性、経済性に優れた型内発泡成形体が得られる、非架橋のプロピレン系重合体組成物を用いる予備発泡粒子の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
発泡剤を含有する熱可塑性樹脂予備発泡粒子を型内で加熱成形して所望の形状の成形体を得る方法が知られている。特にポリプロピレン系樹脂を基材樹脂に使用した成形体は、耐熱性、機械的強度、耐衝撃性のバランスに優れている。
【0003】
しかし、ポリプロピレン系樹脂の型内成形体を得るための予備発泡粒子を製造するには、従来、▲1▼ポリプロピレン系樹脂を造粒する工程、▲2▼発泡剤を加圧含浸する工程、および▲3▼除圧発泡により予備発泡粒子を製造する工程からなる方法によっていた。このため設備が大型化し、その取得費用が高額になり、また広い設置面積が必要になるという問題点を有していた。またバッチ式であるため、生産性が悪いだけでなく、予備発泡の最後の方で得られる物と初期に得られる物との発泡倍率が異なり、品質の均一性を維持するのが困難であった。さらには大量に予備発泡粒子を得ようとする場合、上記▲1▼〜▲3▼の一連の工程を繰り返す必要があり、特に加熱、冷却の操作を毎回行わなければならないために熱効率が非常に悪く、エネルギー消費が膨大になるという欠点もあった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
このような欠点を改良すべく、従来より種々の提案がなされている。例えば、特開昭60−168610公報、特開昭59−67022号公報、特開昭59−85724号公報には、上記▲1▼〜▲3▼の工程の全部または一部を連続式で行う方法が提案されている。しかしながら、これらの方法でもなお設備の大型化は避けられず、設備の設置場所が制限され、このようにして得られた予備発泡粒子を用いた成形体はやはり高コストとなる。
【0005】
一方、特開平6−234878号公報には、押出機中、発泡剤の存在下で溶融強度5〜40cNのポリプロピレン系樹脂を押出し、発泡ストランドをカットして予備発泡粒子を得る方法(押出発泡ビーズ法)が開示されており、前記予備発泡粒子製造工程▲1▼〜▲3▼を一工程に簡略化できて連続生産が可能となるので、この方法は生産性の点では比較的優秀である。また、ポリプロピレン系樹脂が架橋していないため、リサイクル性も良好である。しかしながら、この方法で用いられるポリプロピレン系樹脂は、高分子鎖の一部が枝分かれしている重合体であり、このような重合体を得るにはプロピレンの重合後、電子線照射するかまたは特定の有機過酸化物で処理する必要がある。従って、そのための高価な処理設備が必要になり、また架橋しないように精密に制御しなければならないので、原料樹脂の価格が高くなってしまい、成形体トータルコストでは必ずしも安価にならない。
【0006】
本発明は、発泡セルの大きさが均一かつ緻密な予備発泡粒子を低コストで製造する方法を提供することを目的とするものである。
【0007】
本発明者等は、以上のような問題の解決を図るため鋭意研究した結果、特定の固有粘度を有する高分子量のエチレン(共)重合体と特定の固有粘度を有するプロピレン(共)重合体とを含むプロピレン系重合体組成物を用いた押出発泡ビーズ法により、前述の問題点が解決されることを見出し、本発明に至った。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は、下記(a)、(b)を主成分とするプロピレン系重合体組成物を含む樹脂組成物と発泡剤とを押出機で高温高圧下に溶融混練した後、圧力開放しながら押出機より押出して発泡ストランドとし、次いで該発泡ストランドをカットして発泡粒子とすることを特徴とする予備発泡粒子の製造方法である。
(a)135℃のテトラリン中で測定した固有粘度が0.2〜10dl/gである、プロピレン単独重合体またはプロピレン重合単位を50重量%以上含有するプロピレン−オレフィン共重合体(これらをまとめて、「プロピレン(共)重合体」と称する)。
(b)(a)成分100重量部あたり、135℃のテトラリン中で測定した固有粘度が15〜100dl/gである、エチレン単独重合体またはエチレン重合単位を50重量%以上含有するエチレン−オレフィン共重合体(これらをまとめて、「エチレン(共)重合体」と称する)0.01〜5.0重量部。
【0009】
前記プロピレン系重合体組成物は、チタン化合物を含む遷移金属化合物触媒成分、遷移金属原子1モルに対し0.01〜1000モルの周期表(1991年版)第1族、第2族、第12族および第13族に属する金属よりなる群から選択された金属の有機金属化合物および遷移金属原子1モルに対し0〜500モルの電子供与体の組合せからなるポリオレフィン製造用触媒と、この触媒に担持された上記の(b)成分であるエチレン(共)重合体とを含む予備活性化触媒の存在下に、プロピレンを単独で重合させるかまたはプロピレンとプロピレン以外のオレフィンを共重合させて(a)成分のプロピレン(共)重合体を製造させてなることが好ましい。
【0010】
また、本発明で使用する発泡剤は、沸点−50〜100℃の炭化水素、沸点−50〜100℃のハロゲン化炭化水素及び無機ガスよりなる群から選択される1種以上の化合物であることが好ましい。
【0011】
【発明実施の形態】
プロピレン系重合体組成物の(b)成分であるエチレン(共)重合体は、135℃のテトラリン中で測定した固有粘度(以下、固有粘度の測定は、全て同じ溶媒、測定温度で実施した。)が15〜100dl/g、好ましくは17〜50dl/gの重合体である。このように、固有粘度を15dl/g以上にまで高分子量化させる必要があるため、(b)成分のエチレン(共)重合体は高分子量化の効率面からエチレン重合単位を50重量%以上とすることが好ましい。即ち、エチレン単独重合体またはエチレン重合単位を50重量%以上、好ましくは70重量%以上、特に好ましくは90重量%以上含有するエチレン−オレフィン共重合体が適しており、これらの重合体は1種のみならず2種以上の混合物であってもよい。
【0012】
(b)成分のエチレン(共)重合体の固有粘度が15dl/g未満であると、得られる予備発泡粒子の気泡径が不均一になりやすく、場合によっては気泡が破壊され連続気泡が増加する。さらに、このような予備発泡粒子を使用した成形品は、ひけの発生や寸法収縮のため外観が損なわれる。また該固有粘度の上限については特に限定されないが、(a)成分のプロピレン(共)重合体の固有粘度との差が大きいと、組成物とした際に(a)成分のプロピレン(共)重合体中への(b)成分のエチレン(共)重合体の分散が悪くなり、結果として溶融時の強度が上昇しなくなり成形性の向上効果が不十分になる。さらに製造上の効率からもエチレン(共)重合体の固有粘度の上限は100dl/g程度とするのがよい。
【0013】
(b)成分がエチレン共重合体である場合のエチレンと共重合されるエチレン以外のオレフィンとしては、特に限定されないが、炭素数3〜12のオレフィンが好ましく用いられる。具体的には、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、4−メチル−1−ペンテン,3−メチル−1−ペンテン等が挙げられ、これらのオレフィンは1種のみならず2種以上であってもよい。
【0014】
(b)成分のエチレン(共)重合体の密度については、特に制限はないが、具体的には、0.880〜0.980g/cm3程度のものが好適である。
【0015】
プロピレン系重合体組成物を構成する(a)成分のプロピレン(共)重合体は、その固有粘度が0.2〜10dl/g、好ましくは0.5〜8dl/g、更に好ましくは1.0〜5.0dl/gの結晶性プロピレン(共)重合体であって、0.2dl/g未満の場合、または10dl/gを超える場合、予備発泡粒子の成形性が悪化する。また該プロピレン(共)重合体は、プロピレン単独重合体またはプロピレン重合単位を50重量%以上、好ましくは70重量%以上含有するプロピレン−オレフィンランダム共重合体もしくはプロピレン−オレフィンブロック共重合体である。型内成型時の予備発泡粒子相互の融着性や型内発泡時の温度をあまり高くしなくてもよいことなどを考慮すると、プロピレン重合単位含有量が80〜99重量%のプロピレン−オレフィンランダム共重合体が特に好ましい。これらの重合体は1種のみならず2種以上の混合物であってもよい。
【0016】
(a)成分がプロピレン共重合体である場合のプロピレンと共重合されるプロピレン以外のオレフィンとしては、特に限定されないが、炭素数2〜12のオレフィンが好ましく用いられる。具体的には、エチレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、4−メチル−1−ペンテン,3−メチル−1−ペンテン等が挙げられ、これらのオレフィンは1種のみならず2種以上であってもよい。
【0017】
(a)成分のプロピレン(共)重合体の立体規則性については特に制限はなく、結晶性であれば、どのようなプロピレン(共)重合体であってもよい。具体的には13C−NMR(核磁気共鳴スペクトル)で測定したアイソタクチックペンタッド分率(mmmm)が0.80〜0.99、好ましくは0.85〜0.99の結晶性を有するプロピレン(共)重合体が使用される。
【0018】
アイソタクチックペンタッド分率(mmmm)とはエイ・ザンベリ(A.Zambelli)等によって提案(Macromolecules 6, 925 (1973))された13C−NMRにより測定される、ポリプロピレン分子鎖中のペンタッド単位でのアイソタクチック分率であり、スペクトルの測定におけるピークの帰属決定法はエイ・ザンベリ(A.Zambelli)等によって提案(Macromolecules 8, 687 (1975))された帰属に従って決定される。具体的には、o−ジクロロベンゼン/臭化ベンゼン=8/2重量比の混合溶媒によるポリマー濃度20重量%の溶液を用い、67.20MHz、130℃にて測定することによって求められる。測定装置としては、たとえばJEOL−GX270NMR測定装置(日本電子(株)製)が用いられる。
【0019】
本発明において、プロピレン系重合体組成物の230℃における溶融張力MS(単位:cN)とその固有粘度[ηI](単位:dl/g)との間に、
log(MS)>4.24×log[ηI]−1.10
で表される関係を有することが好ましい。溶融張力MSが小さいと、溶融樹脂中に発泡剤(発泡剤が分解して生成する成分を含む)を保持しにくくなり、その結果、樹脂中から逃散して十分な発泡ができなかったり、連続気泡の発泡体となる。上限については特に限定されないが、あまりにも溶融張力MSが大きいと高発泡倍率の予備発泡粒子が製造しにくくなる。
【0020】
ここで、230℃における溶融張力MSは、メルトテンションテスター2型((株)東洋精機製作所製)を用いて、装置内にてプロピレン系重合体組成物を230℃に加熱し、溶融プロピレン系重合体組成物を直径2.095mmのノズルから20mm/分の速度で23℃の大気中に押し出してストランドとし、このストランドを3.14m/分の速度で引き取る際の糸状プロピレン系重合体組成物の張力を測定した値(単位:cN)である。
【0021】
本発明に用いるプロピレン系重合体組成物は、(b)成分のエチレン(共)重合体が該組成物中に微粒子として分散していることが好ましい。また該エチレン(共)重合体は数平均粒子直径が1〜5000nmであることが好ましく、10〜500nmの範囲が特に好ましい。
【0022】
本発明に用いるプロピレン系重合体組成物の製造方法としては、どのような製造方法を採用してもよいが、エチレンまたはエチレンとその他のオレフィンとの混合物により予備活性化された触媒の存在下に、プロピレン単独あるいはプロピレンとプロピレン以外のオレフィンを重合させる方法が好ましい。
【0023】
本発明における用語「予備活性化」は、プロピレン単独重合またはプロピレンと他のオレフィンとの共重合を実施するに先立って、ポリオレフィン製造用触媒を予め活性化することを意味し、ポリオレフィン製造用触媒の存在下にエチレンを単独で重合するかまたはエチレンとその他のオレフィンとを共重合して、触媒に少量のエチレン(共)重合体を担持させることにより行う。重合効率を上げるなどの目的で、上記エチレン(共)重合体の担持に先立って、プロピレン単独またはプロピレンとその他のオレフィンとの混合物による予備重合を行い、少量のプロピレン(共)重合体を担持させることが望ましい。このとき、プロピレン(共)重合体の代わりに、またはプロピレン(共)重合体に追加してプロピレン以外のオレフィンの重合体を予備重合により担持させてもよい。
【0024】
即ち、本発明における好ましい予備活性化触媒は、チタン化合物等を含む遷移金属化合物触媒成分、遷移金属原子1モルに対し0.01〜1000モルの周期表(1991年版)第1族、第2族、第12族および第13族に属する金属よりなる群から選択された金属の有機金属化合物および遷移金属原子1モルに対し0〜500モルの電子供与体の組合せからなるポリオレフィン製造用触媒と、該触媒に担持させた、触媒中の遷移金属化合物触媒成分1g当たり0.01〜100gの、固有粘度が15dl/gより小さいプロピレン(共)重合体、および遷移金属化合物触媒成分1g当たり0.01〜5000gの、固有粘度が15〜100dl/gであるエチレン(共)重合体からなるものである。
【0025】
前記のオレフィン(共)重合用予備活性化触媒においては、遷移金属化合物触媒成分として、ポリオレフィン製造用として提案されている遷移金属化合物触媒成分を主成分とする公知の触媒成分のいずれをも使用することができ、なかでも工業生産上、チタン含有固体触媒成分が好適に使用される。
【0026】
チタン含有固体触媒成分としては、三塩化チタン組成物を主成分とするチタン含有固体触媒成分(特公昭56−3356号公報、特公昭59−28573号公報、特公昭63−66323号公報等)、マグネシウム化合物に四塩化チタンを担持した、チタン、マグネシウム、ハロゲン、および電子供与体を必須成分とするチタン含有担持型触媒成分(特開昭62−104810号公報、特開昭62−104811号公報、特開昭62−104812号公報、特開昭57−63310号公報、特開昭57−63311号公報、特開昭58−83006号公報、特開昭58−138712号公報等)などが提案されており、これらのいずれをも使用することができる。
【0027】
上記以外の遷移金属化合物触媒成分として、通常メタロセンと称されるπ電子共役配位子を少なくとも1個有する遷移金属化合物も用いることができる。この時の遷移金属は、Zr,Ti,Hf,V,Nb,TaおよびCrから選択することが好ましい。
【0028】
π電子共役配位子の具体例としては、η−シクロペンタジエニル構造、η−ベンゼン構造、η−シクロプタトリエニル構造、又は、η−シクロオクタテトラエン構造を有する配位子が挙げられ、特に好ましいのは、η−シクロペンタジエニル構造を有する配位子である。
【0029】
η−シクロペンタジエニル構造を有する配位子としては、たとえば、シクロペンタジエニル基、インデニル基、フルオレニル基等が挙げられる。これらの基は、アルキル基、アリール基およびアラルキル基のような炭化水素基、トリアルキルシリル基のようなケイ素置換炭化水素基、ハロゲン原子、アルコキシ基、アリーロキシ基、鎖状および環状アルキレン基などで置換されても良い。
【0030】
遷移金属化合物がπ電子共役配位子を2個以上含む場合には、そのうち2個のπ電子共役配位子同士は、アルキレン基、置換アルキレン基、シクロアルキレン基、置換シクロアルキレン基、置換アルキリデン基、フェニル基、シリレン基、置換ジメチルシリレン基、ゲルミル基などを介して架橋していてもよい。このときの遷移金属触媒成分は、上記のようなπ電子配位子を少なくとも1個有する他に、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基のような炭化水素基、ケイ素置換炭化水素基、アルコキシ基、アリーロキシ基、置換スルホナト基、アミドシリレン基、アミドアルキレン基などを有していてもよい。なお、アミドシリレン基やアミドアルキレン基のような2価の基はπ電子共役配位子と結合していてもよい。
【0031】
上記のような通常メタロセンと称されるπ電子共役配位子を少なくとも1個有する遷移金属化合物触媒成分は、微粒子状担体に担持させて用いることも可能である。このような微粒子状担体としては、無機又は有機化合物であって、粒子径が5〜300μm、好ましくは10〜200μmの顆粒状ないしは球状の微粒子固体が使用される。このうち無機化合物としては、SiO2,Al2O3,MgO,TiO2,ZnO等またはこれらの混合物が挙げられ、これらの中ではSiO2またはAl2O3を主成分とするものが好ましい。また、担体に使用する有機化合物としては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン等の炭素数2〜12のα−オレフィンの重合体または共重合体、さらにはスチレンまたはスチレン誘導体の重合体または共重合体が挙げられる。
【0032】
有機金属化合物としては、周期表(1991年版)第1族、第2族、第12族および第13族に属する金属よりなる群から選択された金属の有機基を有する化合物、たとえば、有機リチウム化合物、有機ナトリウム化合物、有機マグネシウム化合物、有機亜鉛化合物、有機アルミニウム化合物などを挙げることができ、、これらの1種または2種以上を前記遷移金属化合物触媒成分と組み合わせて使用することができる。
【0033】
特に、一般式がAlR1 pR2 qX3-(p+q)(式中、R1およびR2は、アルキル基、シクロアルキル基、アリ−ル基等の炭化水素基およびアルコキシ基の同種または異種を、Xはハロゲン原子を表わし、pおよびqは、0<p+q≦3の整数を表わす)で表わされる有機アルミニウム化合物を好適に使用することができる。
【0034】
有機アルミニウム化合物の具体例としては、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリ−n−プロピルアルミニウム、トリ−n−ブチルアルミニウム、トリ−i−ブチルアルミニウム、トリ−n−ヘキシルアルミニウム、トリ−i−ヘキシルアルミニウム、トリ−n−オクチルアルミニウム等のトリアルキルアルミニウム、ジエチルアルミニウムクロライド、ジ−n-プロピルアルミニウムクロライド、ジ−i−ブチルアルミニウムクロライド、ジエチルアルミニウムブロマイド、ジエチルアルミニウムアイオダイド等のジアルキルアルミニウムモノハライド、ジエチルアルミニウムハイドライド等のジアルキルアルミニウムハイドライド、エチルアルミニウムセスキクロライド等のアルキルアルミニウムセスキハライド、エチルアルミニウムジクロライド等のモノアルキルアルミニウムジハライドなどの他、ジエトキシモノエチルアルミニウム等のアルコキシアルキルアルミニウムをも挙げることができ、このうちトリアルキルアルミニウムまたはジアルキルアルミニウムモノハライドを好適に使用することができる。これらの有機アルミニウム化合物は、1種だけでなく2種類以上を混合して用いることもできる。
【0035】
また、有機金属化合物としてアルミノキサン化合物も使用することができる。アルミノキサンとは、下記一般式化1、または化2で表される有機アルミニウム化合物である。
【0036】
【化1】
【0037】
【化2】
【0038】
化1および化2において、Rは炭素数1〜6、好ましくは、1〜4の炭化水素基であり、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、イソブチル基、ペンチル基、ヘキシル基などのアルキル基、アリル基、2−メチルアリル基、プロペニル基、イソプロペニル基、2−メチル−1−プロペニル基、ブテニル基等のアルケニル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基、およびアリール基などである化合物が挙げられる。これらのうち特に好ましいのは、アルキル基であり、各Rは同一でも異なっていても良い。pは2〜40の整数であるが、好ましくは6〜30、特に好ましくは8〜30である。
【0039】
また、使用できる有機金属化合物として、更にホウ素系有機金属化合物も挙げることができる。このホウ素系有機金属化合物は、遷移金属化合物とホウ素原子を含むイオン性化合物もしくはホウ素原子含有ルイス酸を反応させることにより得られる。このとき用いられる遷移金属化合物としては、オレフィン(共)重合用予備活性化触媒を製造する際に使用する遷移金属化合物触媒成分と同様のものが使用可能であるが、好ましく用いられるのは、前述した通常メタロセンと称される少なくとも1個のπ電子共役配位子を有する遷移金属化合物触媒成分である。
【0040】
ホウ素原子を含むイオン性化合物としては、具体的には、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸トリエチルアンモニウム、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸トリ−n−ブチルアンモニウム、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸トリフェニルアンモニウム、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸メチルアンモニウム、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸トリジメチルアンモニウム、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸トリメチルアンモニウム等が挙げられる。
【0041】
ホウ素原子含有ルイス酸としては、下記の一般式化3で表される化合物が使用可能である。
【化3】
BR1R2R3
(式中、R1、R2、R3は、それぞれ独立してフッ素原子またはフッ素化メチル基などの置換基を有しても良いフェニル基、またはアルキル基を示す。)
【0042】
上記一般式で表される化合物として具体的には、トリ(n−ブチル)ホウ素、トリフェニルホウ素、トリス[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]ホウ素、トリス(4−フルオロメチルフェニル)ホウ素、トリス(3,5−ジフルオロフェニル)ホウ素、トリス(2,4,6−トリフルオロフェニル)ホウ素、トリス(ペンタフルオロフェニル)ホウ素等が挙げられ、トリス(ペンタフルオロフェニル)ホウ素が特に好ましい。
【0043】
電子供与体は、ポリオレフィンの生成速度および/または立体規則性を制御することを目的として必要に応じて使用される。
電子供与体として、たとえば、エーテル類、アルコール類、エステル類、アルデヒド類、脂肪酸類、ケトン類、ニトリル類、アミン類、アミド類、尿素およびチオ尿素類、イソシアネート類、アゾ化合物、ホスフィン類、ホスファイト類、ホスフィナイト類、硫化水素およびチオエーテル類、ネオアルコール類などの分子中に酸素、窒素、硫黄、燐のいずれか1種または2種以上の原子を有する化合物および有機ケイ素化合物などが挙げられる。
【0044】
エーテル類としては、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジ−n−プロピルエーテル、ジ−n−ブチルエーテル、ジ−i−アミルエーテル、ジ−n−ペンチルエーテル、ジ−n−ヘキシルエーテル、ジ−i−ヘキシルエーテル、ジ−nオクチルエーテル、ジ−i−オクチルエーテル、ジ−n−ドデシルエーテル、ジフェニルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、テトラヒドロフラン等が、アルコール類としては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ぺントノール、ヘキサノール、オクタノール、2−エチルヘキサノール、アリルアルコール、ベンジルアルコール、エチレングリコール、グリセリン等が、またフェノール類として、フェノール、クレゾール、キシレノール、エチルフェノール、ナフトール等が挙げられる。
【0045】
エステル類としては、メタクリル酸メチル、ギ酸メチル、酢酸メチル、酪酸メチル、酢酸エチル、酢酸ビニル、酢酸−n−プロピル、酢酸−i−プロピル、ギ酸ブチル、酢酸アミル、酢酸−n−ブチル、酢酸オクチル、酢酸フェニル、プロピオン酸エチル、安息香酸メチル、安息香酸エチル、安息香酸プロピル、安息香酸ブチル、安息香酸オクチル、安息香酸−2−エチルヘキシル、トルイル酸メチル、トルイル酸エチル、アニス酸メチル、アニス酸エチル、アニス酸プロピル、アニス酸フェニル、ケイ皮酸エチル、ナフトエ酸メチル、ナフトエ酸エチル、ナフトエ酸プロピル、ナフトエ酸ブチル、ナフトエ酸−2−エチルヘキシル、フェニル酢酸エチル等のモノカルボン酸エステル類、コハク酸ジエチル、メチルマロン酸ジエチル、ブチルマロン酸ジエチル、マレイン酸ジブチル、ブチルマレイン酸ジエチル等の脂肪族多価カルボン酸エステル類、フタル酸モノメチル、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジ−n−プロピル、フタル酸モノ−n−ブチル、フタル酸ジ−n−ブチル、フタル酸ジ−i−ブチル、フタル酸ジ−n−ヘプチル、フタル酸ジ−2−エチルヘキシル、フタル酸ジ−n−オクチル、i−フタル酸ジエチル、i−フタル酸ジプロピル、i−フタル酸ジブチル、i−フタル酸ジ−2−エチルヘキシル、テレフタル酸ジエチル、テレフタル酸ジプロピル、テレフタル酸ジブチル、ナフタレンジカルボン酸ジ−i−ブチル等の芳香族多価カルボン酸エステル類が挙げられる。
【0046】
アルデヒド類としては、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ベンズアルデヒド等が、カルボン酸類としてギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、修酸、コハク酸、アクリル酸、マレイン酸、吉草酸、安息香酸などのモノカルボン酸類および無水安息香酸、無水フタル酸、無水テトラヒドロフタル酸などの酸無水物が、ケトン類としてアセトン、メチルエチルケトン、メチル−i−ブチルケトン、ベンゾフェノン等が例示される。
【0047】
窒素含有化合物としては、アセトニトリル、ベンゾニトリル等のニトリル類、メチルアミン、ジエチルアミン、トリブチルアミン、トリエタノールアミン、β(N,N−ジメチルアミノ)エタノール、ピリジン、キノリン、α−ピコリン、2,4,6−トリメチルピリジン、2,2,5,6−テトラメチルピペリジン、2,2,5,5,テトラメチルピロリジン、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、アニリン、ジメチルアニリン等のアミン類、ホルムアミド、ヘキサメチルリン酸トリアミド、N,N,N’,N’,N”−ペンタメチル−N’−β−ジメチルアミノメチルリン酸トリアミド、オクタメチルピロホスホルアミド等のアミド類、N,N,N’,N’−テトラメチル尿素等の尿素類、フェニルイソシアネート、トルイルイソシアネート等のイソシアネート類、アゾベンゼン等のアゾ化合物類が例示される。
【0048】
燐含有化合物としては、エチルホスフィン、トリエチルホスフィン、トリ−n−オクチルホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリフェニルホスフィンオキシド等のホスフィン類、ジメチルホスファイト、ジ−n−オクチルホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリフェニルホスフィンオキシド等のホスフィン類、ジメチルホスファイト、ジ−n−オクチルホスファイト、トリエチルホスファイト、トリ−n−ブチルホスファイト、トリフェニルホスファイト等のホスファイト類が例示される。
【0049】
硫黄含有化合物としては、ジエチルチオエーテル、ジフェニルチオエーテル、メチルフェニルチオエーテル等のチオエーテル類、エチルチオアルコール、n−プロピルチオアルコール、チオフェノール等のチオアルコール類が挙げられ、さらに、有機ケイ素化合物として、トリメチルシラノール、トリエチルシラノール、トリフェニルシラノール等のシラノール類、トリメチルメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、メチルフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジ−i−プロピルジメトキシシラン、ジ−i−ブチルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ブチルトリエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、エチルトリイソプロポキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、シクロペンチルメチルジメトキシシラン、シクロペンチルトリメトキシシラン、ジシクロペンチルジメトキシシラン、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン、シクロヘキシルトリメトキシシラン、ジシクロヘキシルジメトキシシラン、2−ノルボルニルメチルジメトキシシラン等の分子中にSi−O−C結合を有するアルコキシシラン類等が挙げられる。
これらの電子供与体は、単独であるいは2種類以上を混合して使用することができる。
【0050】
プロピレン系重合体組成物の(b)成分となるエチレン(共)重合体の、予備活性化触媒中における遷移金属化合物触媒成分1g当たりの担持量は0.01〜5,000g、好ましくは0.05〜2,000g、さらに好ましくは0.1〜1,000gである。該担持量が遷移金属化合物触媒成分1g当たり0.01g未満では、該予備活性化触媒を用いて得られるプロピレン系重合体組成物の溶融張力の向上効果が不十分であり、成形性への向上効果が不十分である。また5,000gを越える場合にはそれらの効果の向上が顕著でなくなるばかりでなく、プロピレン系重合体組成物の均質性が悪化する場合があるので好ましくない。
【0051】
一方、予備活性化触媒中のプロピレン(共)重合体は、前述のごとく固有粘度が15dl/gより小さいプロピレン(共)重合体であって、遷移金属化合物触媒成分1g当たりの担持量は0.01〜100gの範囲が好適である。該プロピレン(共)重合体はプロピレン系重合体組成物の(a)成分の一部として組み入れられる。
【0052】
予備活性化触媒は、次に述べる予備活性化処理により製造するのが好ましい。即ち、遷移金属化合物触媒成分、該触媒成分中の遷移金属1モルに対し0.01〜1,000モル、好ましくは0.05〜500モルの有機金属化合物、および該遷移金属1モルに対し0〜500モル、好ましくは0〜100モルの電子供与体の組み合わせからなるポリオレフィン製造用触媒を、重合容積1リットル当たり、触媒成分中の遷移金属原子に換算して0.001〜5,000ミリモル、好ましくは0.01〜1,000ミリモル存在させ、溶媒の不存在下または遷移金属化合物触媒成分1gに対し100リットルまでの溶媒の存在下において、所要量のプロピレン単独またはプロピレンとその他のオレフィンとの混合物を供給し予備重合させて遷移金属化合物触媒成分1gに対し0.01〜100gのプロピレン(共)重合体を生成させ、次いで所要量のエチレン単独またはエチレンとその他のオレフィンとの混合物を供給し予備活性化重合させて遷移金属化合物触媒成分1gに対し0.01〜5,000gのエチレン(共)重合体を生成させることにより、遷移金属化合物触媒成分にプロピレン(共)重合体およびエチレン(共)重合体を被覆担持させる。
なお、本明細書中において、「重合容積」の用語は、液層重合の場合には重合器内の液相部分の容積を、気相重合の場合には重合器内の気相部分の容積を意味する。
【0053】
遷移金属化合物触媒成分の使用量は、効率的、かつ制御された重合反応速度を維持する上で、前記範囲であることが好ましい。また、有機金属化合物の使用量が、少なすぎると重合反応速度が遅くなりすぎ、また大きくしても重合反応速度のそれに見合う上昇が期待できないばかりか、目的のプロピレン系重合体組成物中に有機金属化合物の残さが多くなるので好ましくない。さらに、電子供与体の使用量が大きすぎると、重合反応速度が低下する。
【0054】
予備活性化処理は、前述のごとく溶媒を用いて液相中で行うことができ、また溶媒を用いずに気相中で行うことも可能である。溶媒を用いる場合には使用量が多すぎると、大きな反応容器を必要とするばかりでなく、効率的な重合反応速度の制御及び維持が困難となる。溶媒としては、例えば、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、イソオクタン、デカン、ドデカン等の脂肪族炭化水素、シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂環族炭化水素、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等の芳香族炭化水素、他にガソリン留分や水素化ジーゼル油留分等の不活性溶媒、オレフィン自身などを用いることができる。
【0055】
また、予備活性化処理は水素の存在下において実施してもよいが、固有粘度15〜100dl/gの高分子量のエチレン(共)重合体を生成させるためには、水素は用いないほうが好適である。
【0056】
予備活性化処理におけるプロピレン単独またはプロピレンとその他のオレフィンとの混合物の予備重合条件は、プロピレン(共)重合体が遷移金属化合物触媒成分1g当たり0.01g〜100g生成する条件であればよく、通常、−40℃〜100℃の温度下、0.1MPa〜5MPaの圧力下で、遷移金属化合物触媒成分1g当たり0.01〜500gのモノマーを供給して1分〜24時間重合反応を行う。またエチレン単独またはエチレンとその他のオレフィンとの混合物の予備活性化重合条件は、エチレン(共)重合体が遷移金属化合物触媒成分1g当たり0.01〜5,000g、好ましくは0.05〜2,000g、さらに好ましくは0.1〜1,000gの量で生成するような条件であれば特に制限はなく、通常、−40℃〜40℃、好ましくは−40℃〜30℃、さらに好ましくは−40℃〜20℃程度の比較的低温度下、0.1MPa〜5MPa、好ましくは0.2MPa〜5MPa、特に好ましくは0.3MPa〜5MPaの圧力下で、遷移金属化合物触媒成分1g当たり0.01〜10,000gのモノマーを供給し、1分〜24時間、好ましくは5分〜18時間、特に好ましくは10分〜12時間の重合反応を行う。
【0057】
また、前記予備活性化処理後に、予備活性化処理による重合活性の低下を抑制することを目的として、プロピレン単独、プロピレンとその他のオレフィンとの混合物またはプロピレン以外のオレフィンによる追加の重合を、遷移金属化合物触媒成分1g当たりのプロピレン(共)重合体またはプロピレン以外のオレフィンの重合体の生成量が0.01〜100gの範囲内であるように行ってもよい。この場合、有機金属化合物、電子供与体、溶媒などの使用量はエチレンまたはエチレンとその他のオレフィンとの混合物による予備活性化重合と同様な範囲で行うことができるが、遷移金属原子1モル当たり0.005〜10モル、好ましくは0.01〜5モルの電子供与体の存在下に行うのが好ましい。また、反応条件については−40〜100℃の温度下、0.1〜5MPaの圧力下で、1分から24時間実施する。
【0058】
予備活性化触媒は、そのままオレフィン(共)重合用触媒として、または追加の有機金属化合物及び電子供与体をさらに含有させて、プロピレン系重合体組成物を得るための重合に用いる。このとき、追加の有機金属化合物の使用量は、予備活性化触媒中の遷移金属原子1モルに対し予備活性化触媒中の有機金属化合物との合計で0.05〜3,000モル、好ましくは0.1〜1,000モルの範囲内とし、また追加の電子供与体の使用量は、予備活性化触媒中の電子供与体との合計で0〜5,000モル、好ましくは0〜3,000モルの範囲内とするのがよい。
【0059】
有機金属化合物の合計の含有量が少なすぎると、プロピレン系重合体組成物を得るための重合における重合反応速度が遅すぎ、一方過剰に多くしても該重合反応速度の期待されるほどの上昇は認められず非効率的であるばかりではなく、最終的に得られるプロピレン系重合体組成物中に残留する有機金属化合物残さが多くなるので好ましくない。さらに電子供与体の合計の含有量が過大になると該重合反応速度が著しく低下する。
【0060】
予備活性化触媒に必要に応じて追加使用される有機金属化合物や電子供与体の種類については、既に例示した有機金属化合物および電子供与体と同様なものを使用することができる。また、1種の単独使用でもよく2種以上を混合使用してもよい。更に、予備活性化処理の際に使用したものと同種でも異なっていてもよい。
【0061】
有機金属化合物や電子供与体を追加するにあたっては、予備活性化触媒中に存在する溶媒、未反応のオレフィン、既に存在する有機金属化合物および電子供与体等を濾別またはデカンテーションにより除去するか、または溶媒および未反応のオレフィンを減圧蒸留または不活性ガス流等により蒸発させ除去して一旦紛粒体とした後、得られた粉粒体もしくはこの粉粒体に溶媒を添加した懸濁液と、追加の有機金属化合物および所望により電子供与体とを組み合わせて、オレフィン(共)重合用触媒としてもよい。
【0062】
プロピレン系重合体組成物の製造方法において、オレフィン(共)重合用触媒の使用量は、重合容積1リットルあたり、触媒中の遷移金属原子に換算して、0.001〜1,000ミリモル、好ましくは0.005〜500ミリモルである。遷移金属化合物触媒成分の使用量を上記範囲とすることにより、プロピレン単独またはプロピレンとその他のオレフィンとの混合物の効率的かつ制御された(共)重合反応速度を維持することができる。
【0063】
プロピレン系重合体組成物を得るためのプロピレン単独またはプロピレンとその他のオレフィンとの混合物の重合においては、その重合プロセスとして公知のオレフィン重合プロセスが使用可能であり、具体的には、前述の不活性溶媒中でオレフィンの重合を実施するスラリー重合法、オレフィン自身を溶媒として用いるバルク重合法、オレフィンの重合を気相中で実施する気相重合法、さらに重合して生成するポリオレフィンが液状である液相重合、あるいはこれらのプロセスの2以上を組み合わせた重合プロセスを使用することができる。
【0064】
上記のいずれの重合プロセスを使用する場合も、重合条件として、重合温度は20〜120℃、好ましくは30〜100℃、特に好ましくは40〜100℃の範囲、重合圧力は0.1〜5MPa、好ましくは0.3〜5MPaの範囲において、連続的、半連続的、若しくはバッチ的に重合時間は5分間〜24時間程度の範囲が採用される。上記の重合条件を採用することにより、プロピレン系重合体組成物の(a)成分であるプロピレン(共)重合体を高効率かつ制御された反応速度で生成させることができる。
【0065】
なお、プロピレン(共)重合体の分子量調節には、重合時に水素等の分子量調節剤を使用することが有効であり、この使用量を加減することによってプロピレン(共)重合体の固有粘度を本発明の目的に合うように調節することができる。重合反応終了後、必要に応じ公知の触媒失活処理工程、触媒残さ除去工程、乾燥工程等の後処理工程を経て、プロピレン系重合体組成物を得ることができる。
【0066】
本発明においては、前記プロピレン系重合体組成物を単独で用いるのみならず、該プロピレン系重合体組成物に他の樹脂を混合して用いることもできる。他の樹脂としては、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、直鎖状超低密度ポリエチレン、エチレン・酢酸ビニル共重合体等のエチレン系樹脂、シンジオタクチックポリプロピレン、ブテン系樹脂、環状オレフィン系樹脂、石油樹脂、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂、フッ素系樹脂、エチレン・プロピレンゴム、エチレン・ブテンゴム等の熱軟化性樹脂が挙げられ、1種のみならず2種以上用いることができる。配合量はプロピレン系重合体組成物100重量部に対し、最大50重量部程度が好ましい。
【0067】
更に、本発明のプロピレン系重合体組成物に対しては、上述した成分に加えて安定剤として酸化防止剤、中和剤、耐候剤、紫外線吸収剤、その他添加剤として帯電防止剤、滑剤、難燃剤、着色剤、及びタルク、炭酸カルシウム等の無機充填剤等を本発明の目的を損なわない範囲で配合することができる。
【0068】
上記の各成分の混合には、例えばヘンシェルミキサー(商品名)、スーパーミキサー(商品名)などの高速撹拌機付混合機、リボンブレンダー、タンブラーなどの通常の混合装置を使用すればよい。また、溶融混練を必要とする場合には通常の単軸押出機または二軸押出機などが使われる。混練温度は190〜300℃が一般的であり、好ましくは200〜270℃、より好ましくは200〜250℃である。
【0069】
本発明の予備発泡粒子の製造方法は、前記プロピレン系重合体組成物に必要に応じて他の樹脂、熱安定剤、無機充填材等の添加剤を配合した樹脂組成物(以下、「樹脂組成物A」と称する)と発泡剤とを、押出機で高温高圧下で溶融混練した後、この溶融混練物を押出機先端に取り付けた多孔ダイ等を通して、圧力開放しながら押出機内から押出して発泡ストランドとし、次いで該発泡ストランドをカットすることにより予備発泡粒子とする方法である。
【0070】
本発明の予備発泡粒子の製造においては、前記樹脂組成物Aと発泡剤との混合物を押出機内から圧力開放しながら押出す際に、溶融混合物中の発泡剤が膨張することにより発泡が行われるが、溶融混練温度を高くすると溶融混合物の粘度が低下してしまって、発泡剤が溶融混合物中に保持されずに逃散して十分に発泡が行われなかったり、連続気泡の発泡体となったりすることになる。逆に溶融混合物の粘度を高くするために溶融混練温度を低くすると樹脂成分の結晶化が進行し、発泡が不十分となったり、均一な発泡が起こり難くなる。さらには予備発泡粒子の表面に凹凸が発生したりするため、予備発泡粒子の型内への充填がスムーズに行われない。この発泡に適した温度範囲は使用樹脂の結晶化温度や分子量などによって異なっており、また発泡剤の量によっても異なる。一般的に、結晶化温度が低く分子量が小さい樹脂を用いる場合、あるいは発泡剤の量が多い場合は押出発泡に適する温度は低くなる。
【0071】
予備発泡粒子の製造に用いる押出機としては、押出機1機の1段式及び押出機2機を直列に連結した2段式(タンデム式)を挙げることができる。樹脂の可塑化、樹脂と添加剤との混合、及び樹脂の冷却段階と続いて押出を効率よく実施して均一な発泡セルを有する発泡体を得るには2段式が特に好ましい。
【0072】
押出された発泡ストランドをカットする方法には種々あるが、多孔ダイから出て発泡しつつある際に冷却しながらカットする、いわゆるホットカット方式が、得られた予備発泡粒子の形状が丸みを帯び、型内への充填がスムーズ行いやすい点から好ましい。
【0073】
発泡剤としては無機ガス、揮発性発泡剤、分解型発泡剤等を用いることができる。無機ガスとしては二酸化炭素、窒素、水蒸気等の不活性ガスを用いることができ、また揮発性発泡剤としてはプロパン、n−ブタン、i−ブタン、ペンタン、シクロペンタン、ヘプタン等の脂肪属炭化水素、トリクロルフルオルメタン、ジクロルジフルオルメタン、ジクロルテトラフルオルエタン、テトラフルオロエタン、メチルクロライド等のハロゲン化炭化水素等を用いることができる。分解型発泡剤としてアゾジカルボンアミド、ジニトロソペンタメチレンテトラミン、重炭酸ナトリウム、クエン酸等を用いることができるが、高発泡倍率の予備発泡粒子が得られやすい点、経済性の点から無機ガス及び揮発性発泡剤が好ましい。特に炭化水素としてブタン、ハロゲン化炭化水素ではテトラフルオロエタン、無機ガスでは二酸化炭素が、発泡特性成型品の品質、経済性の点で好ましい。なお、これらの発泡剤は混合して用いることもできる。
【0074】
発泡剤の添加は、通常、低沸点の非分解型発泡剤の場合には、押出機内で樹脂組成物を溶融した後、押出機の途中に設けたバレル孔より発泡剤を押出機内に注入することによって行い、また分解型発泡剤の場合には、樹脂組成物と予備混合してから押出機に導入することによって行う。
【0075】
本発明においては、発泡セルの大きさを調整する目的で気泡調整剤(発泡核剤)を添加しても良い。気泡調整剤としてはタルク、二酸化珪素、二酸化チタン、炭酸カルシウム、重炭酸ナトリウム等の無機粉末や、クエン酸、重炭酸ナトリウムとクエン酸の混合物等が挙げられ、これらの気泡調整剤は混合して用いることもできる。気泡調整剤の配合量は所望する発泡体の物性により異なるが、一般的には、プロピレン系重合体組成物100重量部に対し0.01〜3重量部程度である(無機充填剤を多量に含有させる場合は除く)。
【0076】
本発明で得られる予備発泡粒子の発泡倍率は、特に制限はないが、1.1〜70倍が好ましく、より好ましくは5〜60倍である。発泡倍率が1.1倍未満では、緩衝特性、軽量性が不十分であり、経済性の面でも好ましくない。70倍を越えると気泡径が大きくなり過ぎ、歪んで不均一になり、しかも機械的強度が低下するので好ましくない。
【0077】
また、予備発泡粒子の気泡径は50〜2000μmが好ましく、より好ましくは100〜1000μmである。気泡径が50μm未満では耐熱性、機械的強度が不十分であり、2000μmを越えると緩衝特性が低下するので好ましくない。
【0078】
なお、予備発泡粒子の独立気泡率は50%以上が好ましく、より好ましくは70%以上である。独立気泡率が50%未満では、型内成型時の二次発泡性、緩衝特性、機械的強度が不十分で好ましくない。
【0079】
前記のようにして得られた予備発泡粒子は、通常の養生後、必要に応じて内圧付与し、成形金型に充填して加熱発泡成形することができる。
【0080】
【実施例】
以下に、本発明を実施例および比較例によりさらに詳細に説明する。
実施例および比較例において使用する用語の定義および測定方法は以下の通りである。
−プロピレン系重合体組成物−
固有粘度[η]:、オストヴァルト粘度計(三井東圧化学(株)製)を用いて135℃のテトラリン中で極限粘度を測定した(単位:dl/g)。
プロピレン系重合体組成物中のコモノマー重合単位含有量:13C−NMR法によって測定(日本電子(株)製FT−NMRスペクトロメーター使用)された各ピークの面積から算出した(単位:重量%)。
【0081】
−予備発泡粒子−
発泡倍率:プロピレン系重合体組成物の密度を0.90g/cm3として、次の式:
発泡倍率(単位:倍)=0.90/予備発泡粒子の密度(単位:g/cm3)
より求めた。予備発泡粒子の密度は、重量と水没法により求めた体積とから算出した。
平均気泡径:予備発泡粒子の断面をカメラ付き顕微鏡にて写真撮影して気泡径を測定し、測定した気泡径の平均値を算出した(単位:mm)。
気泡径分布:上記の方法にて気泡径を測定し、次の式:
A=最大気泡径/平均気泡径
によりAを求め評価した。○:Aが2.0未満、×:Aが2.0以上
−型内発泡成形体−
密度:成形体を20分割した個々の密度を重量と水没法により求めた体積とから算出し、平均値を求め、密度とした(単位:g.cm3)。
密度分布:上記の方法により密度を求め、次の式:
B=(密度の最大値−密度の最小値)/密度の平均値
によりBを求め評価した。○:Bが0.10未満、×:Bが0.10以上
性状:成型品の表面外観および粒子相互の融着性を目視にて評価した。
○:表面が平滑であり、各粒子間がよく融着している
×:表面のひけや変形が見られ、各粒子間の融着性が悪い
【0082】
(実施例1)
(1)遷移金属化合物触媒成分の調製
撹拌機付きステンレス製反応器中において、デカン37.5リットル、無水塩化マグネシウム7.14kg、および2−エチル−1−ヘキサノール35.1リットルを混合し、撹拌しながら140℃にて4時間加熱反応を行って均一な溶液とした。この均一溶液中に無水フタル酸1.67kgを添加し、さらに130℃にて1時間撹拌混合を行い、無水フタル酸をこの均一溶液に溶解した。
得られた均一溶液を室温(23℃)に冷却した後、この均一溶液を−20℃に保持した四塩化チタン200リットル中に3時間かけて全量滴下した。滴下後、4時間かけて110℃に昇温し、110℃に達したところでフタル酸ジ−i−ブチル5.03リットルを添加し、110℃にて2時間撹拌して反応を行った。反応終了後、熱濾過して固体部を採取し、固体部を275リットルの四塩化チタンにより再懸濁させた後、再び110℃で2時間、反応を持続した。
反応終了後、再び熱濾過により固体部を採取し、n−ヘキサンにて、洗浄液中に遊離のチタンが検出されなくなるまで充分洗浄した。続いて、濾過により溶媒を分離し、固体部を減圧乾燥してチタン2.4重量%を含有するチタン含有担持型触媒成分(遷移金属化合物触媒成分)を得た。
【0083】
(2)予備活性化触媒の調製
内容積30リットルの傾斜羽根付きステンレス製反応器を窒素ガスで置換後、n−ヘキサン18リットル、トリエチルアルミニウム60ミリモルおよび前項で調整したチタン含有担持型触媒成分150g(チタン原子換算で75.16ミリモル)を添加した後、プロピレン500gを供給し、−2℃で40分間、予備重合を行った。
別途、同一の条件で行った予備重合後に生成したポリマーを分析した結果、チタン含有担持型触媒成分1g当たり、3.0gのポリプロピレンが生成し、このポリプロピレンの固有粘度〔ηA〕は2.80dl/gであった。
【0084】
反応時間終了後、未反応のプロピレンを反応器外に放出し、反応器の気相部を1回、窒素置換した後、反応器内の温度を−1℃に保持しながら、反応器内の圧力を0.59MPaに維持するようにエチレンを反応器に連続的に4時間供給し、予備活性化重合を行った。
別途、同一の条件で行った予備活性化重合後に生成したポリマーを分析した結果、チタン含有担持型触媒成分1g当たり、ポリマーが50.6g存在し、かつポリマーの固有粘度〔ηT〕は30.5dl/gであった。
【0085】
エチレンによる予備活性化重合で生成したチタン含有担持型触媒成分1g当たりのポリエチレン量(WB)は、予備活性化処理後のチタン含有担持型触媒成分1g当たりのポリマー生成量(WT)と予備重合後のチタン含有担持型触媒成分1g当たりのポリプロピレン生成量(WA)との差として次式で求められる。
WB=WT−WA
また、エチレンによる予備活性化重合で生成したポリエチレンの固有粘度[ηB]は、予備重合で生成したポリプロピレンの固有粘度[ηA]および予備活性化処理で生成したポリマーの固有粘度[ηT]から次式により求められる。
[ηB]=([ηT]×WT−[ηA]×WA)/(WT−WA)
【0086】
反応時間終了後、未反応のエチレンを反応器外に放出し、反応器の気相部を1回窒素置換し、プロピレン系重合体組成物製造のための予備活性化触媒スラリーとしたが、別途、同一条件で行ったプロピレンによる予備重合及びエチレンによる予備活性化重合のデータを用いた上記式による計算結果から、エチレンによる予備活性化重合で生成したポリエチレン量は、チタン含有担持型触媒成分1g当たり47.6g、固有粘度[ηB]は32.2dl/gであった。。
【0087】
(3)プロピレン系重合体組成物の製造
内容積500リットルの撹拌機付きステンレス製重合器を窒素置換した後、20℃においてn−ヘキサン240リットル、トリエチルアルミニウム780ミリモル、ジイソプロピルジメトキシシラン130ミリモル、および前記で得た予備活性化触媒スラリーのチタン含有担持型触媒成分として4.5g相当分を重合器内に投入した。引き続いて、60℃に昇温した後、プロピレン濃度に対する水素濃度比およびエチレン濃度比をどちらも0.03になるように調整して、重合器内の気相部圧力0.79MPaを保持しながらプロピレン、水素およびエチレンを連続的に3時間重合器内に供給しプロピレン・エチレンの共重合を実施した。重合時間経過後、メタノール1リットルを重合器内に導入し、触媒失活反応を60℃にて15分間実施し、引き続き未反応ガスを排出後、溶媒分離、重合体の乾燥を行い、固有粘度2.19dl/g、エチレン重合単位含有量3.4重量%のポリマー43.2kgを得た。
得られたポリマーは予備活性化処理により生成した(b)成分に該当するポリエチレンの含有率0.50重量%のプロピレン系重合体組成物であり、(a)成分に該当するプロピレン・エチレンランダム共重合体の固有粘度は2.04dl/g、エチレン重合単位含有量は2.9重量%であった。
【0088】
(4)予備発泡粒子の製造
このプロピレン系重合体組成物100重量部と、テトラキス[メチレン−3−(3’−5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]0.3重量部、1,1,3−トリス(2−メチル−5−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)ブタン0.1重量部、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイト0.01重量部、ステアリン酸カルシウム0.1重量部を混合し、次いでシリンダー設定温度230℃、スクリュー径40mmの造粒機を用いてペレット状の樹脂組成物Aを得た。
【0089】
このペレット状の樹脂組成物Aを下記の方法で予備発泡粒子に加工した。得られた予備発泡粒子の性状を表1に示す。
バレルの途中に発泡剤注入用のバレル孔を有する40mmφ押出機(単軸押出機、L/D比32)と50mmφ押出機(単軸押出機、L/D比26)とを連結した発泡用押出設備に、樹脂組成物A100重量部に気泡調整剤としてのタルク(平均粒径8μm)を0.5重量部の割合で加えた混合物を15kg/時で40mmφ押出機に供給し、40mmφ押出機のバレル孔より発泡剤としてブタンを2.1kg/時で注入して溶融混合した後、50mmφ押出機で発泡粒子の表面に凹凸が発生しない最低の樹脂温度になるように温度を調整し、次いで50mmφ押出機の先端に取り付けられた多孔ダイ(孔径:1mmφ、孔数:24個)より発泡ストランドを押出して、該多孔ダイに接して回転刃を有するストランドカッターにて発泡ストランドを切断し、予備発泡粒子を製造した。尚、40mmφ押出機の温度は1ゾーン235℃、2ゾーン205℃、3ゾーン185℃、4ゾーン185℃、50mmφ押出機の温度は1ゾーン143℃、2ゾーン138℃、3ゾーン〜5ゾーン133℃、押出樹脂温度は135℃(押出樹脂温度は50mmφ押出機と多孔ダイの間に設けたブレーカープレート部で測定した)。
【0090】
(5)型内発泡成形体の製造
この予備発泡粒子を0.7MPaの窒素加圧雰囲気下に1日間保持した後、成型用金型に充填し、145℃の水蒸気で40秒間加熱して型内発泡成形体に加工した。得られた型内発泡成形体の性状を表1に示す。
【0091】
(実施例2)
(1)遷移金属化合物触媒成分の調製
実施例1と同一の条件で、チタン含有担持型触媒成分を得た。
(2)予備活性化触媒の調製
実施例1と同一の条件で、予備活性化触媒スラリーを得た。
(3)プロピレン系重合体組成物の製造
プロピレン濃度に対する水素濃度比を0.04に変えたことを除いては実施例1と同一の条件でプロピレン系重合体組成物の製造を行い、固有粘度2.05g/dl、エチレン重合単位含有量3.4重量%のポリマー44.3kgを得た。得られたポリマーは予備活性化処理により生成した(b)成分に該当するポリエチレンの含有量0.48重量%のプロピレン系重合体組成物であり、(a)成分に該当するプロピレン・エチレンランダム共重合体の固有粘度は1.90g/dl、エチレン重合単位含有量は2.9重量%であった。
(4)予備発泡粒子の製造
実施例1と同一の条件でペレット状の樹脂組成物Aを得、これを実施例1と同一の条件で予備発泡粒子に加工した。得られた予備発泡粒子の性状を表1に示す。
(5)型内発泡成形体の製造
この予備発泡粒子を、実施例1と同一の条件で型内発泡成形体に加工した。得られた型内発泡成形体の性状を表1に示す。
【0092】
(比較例1)
(1)遷移金属化合物触媒成分の調製
実施例1と同一の条件で、チタン含有担持型触媒成分を得た。
(2)予備活性化触媒の調製
エチレンによる予備活性化重合条件を変化させて、ポリエチレンの遷移金属化合物触媒成分1gあたりの生成量を47.6gより0.07gへ変えたことを除いては実施例1と同一の条件で、予備活性化触媒スラリーを得た。
(3)プロピレン系重合体組成物の製造
実施例1と同一条件で、固有粘度2.04dl/g、エチレン重合単位含有量2.9重量%のポリマーを得た。
得られたポリマーは予備活性化処理により生成した(b)成分に該当するポリエチレンの含有率0.00073重量%のプロピレン系重合体組成物であり、(a)成分に該当するプロピレン・エチレンランダム共重合体の固有粘度は2.04dl/gで、エチレン重合単位含有量は2.9重量%であった。
【0093】
(4)予備発泡粒子の製造
実施例1と同一の条件で、ペレット状の樹脂組成物Aを得た。
この樹脂組成物Aを、50mmφ押出機の温度を130〜150℃の範囲で発泡粒子の表面に凹凸が発生しない最低の樹脂温度(表1に記載)となる様に変えたことを除いては実施例1と同様にして、予備発泡粒子に加工した。得られた予備発泡粒子の性状を表1に示す。
(5)型内発泡成形体の製造
この予備発泡粒子を、実施例1と同一の条件で型内発泡成形体に加工した。得られた型内発泡成形体の性状を表1に示す。
【0094】
(比較例2)
(1)遷移金属化合物触媒成分の調製
実施例1と同一条件で、チタン含有担持型触媒成分を得た。
(2)予備活性化触媒の調製
比較例1と同一条件で、予備活性化触媒スラリーを得た。
(3)プロピレン系重合体組成物の製造
実施例2と同一条件で、固有粘度1.90dl/g、エチレン重合単位含有量2.9重量%のポリマーを得た。
得られたポリマーは予備活性化処理により生成した(b)成分に該当するポリエチレンの含有率0.00071重量%のプロピレン系重合体組成物であり、(a)成分に該当するプロピレン・エチレンランダム共重合体の固有粘度は1.90dl/gで、エチレン重合単位含有量2.9重量%あった。
【0095】
(4)予備発泡粒子の製造
実施例1と同一の条件で、ペレット状の樹脂組成物Aを得た。
この樹脂組成物Aを、50mmφ押出機の温度を130〜150℃の範囲で発泡粒子の表面に凹凸が発生しない最低の樹脂温度(表1に記載)となる様に変えたことを除いては実施例1と同様にして、予備発泡粒子に加工した。得られた予備発泡粒子の性状を表1に示す。
(5)型内発泡成形体の製造
この予備発泡粒子を、実施例1と同一の条件で型内発泡成形体に加工した。得られた型内発泡成形体の性状を表1に示す。
【0096】
【表1】
【0097】
(実施例3)
(1)遷移金属化合物触媒成分の調製
実施例1と同一条件で、チタン含有担持型触媒成分を得た。
(2)予備活性化触媒の調製
実施例1と同一条件で、予備活性化触媒スラリーを得た。
(3)プロピレン系重合体組成物の製造
コモノマーをエチレンから1−ブテンに変え、プロピレン濃度に対する水素濃度比および1−ブテン濃度比を0.035および0.05、重合時間を3.5時間に変えたことを除いては実施例1と同一の条件で、プロピレン系重合体組成物の製造を行い、固有粘度2.03g/dl、1−ブテン重合単位含有量5.8重量%のポリマー40.6gを得た。
得られたポリマーは(b)成分に該当する予備活性化処理により生成したポリエチレン含有率0.53重量%のプロピレン系重合体組成物であり、(a)成分に該当するプロピレン・1−ブテンランダム共重合体の固有粘度は1.87dl/g、1−ブテン重合単位含有量は5.8重量%であった。
【0098】
(4)予備発泡粒子の製造
実施例1と同一の条件で、ペレット状の樹脂組成物Aを得た。
この樹脂組成物Aを、ブタン注入量を1.8kg/時に変え、50mmφ押出機の温度を130〜150℃の範囲で発泡粒子の表面に凹凸が発生しない最低の樹脂温度(表2に記載)となる様に変えたことを除いては実施例1と同様にして、予備発泡粒子に加工した。得られた予備発泡粒子の性状を表2に示す。
(5)型内発泡成形体の製造
この予備発泡粒子を、実施例1と同一の条件で型内発泡成形体に加工した。得られた型内発泡成形体の性状を表2に示す。
【0099】
(実施例4)
(1)遷移金属化合物触媒成分の調製
実施例1と同一条件で、チタン含有担持型触媒成分を得た。
(2)予備活性化触媒の調製
実施例1と同一条件で、予備活性化触媒スラリーを得た。
(3)プロピレン系重合体組成物の製造
コモノマーとしてエチレンと1−ブテンを用い、プロピレン濃度に対する水素濃度比、エチレン濃度比および1−ブテン濃度比を0.04、0.025および0.038に変えたことを除いては実施例1と同一の条件でプロピレン系重合体組成物の製造を行い、固有粘度2.08g/dl、エチレン重合単位含有量2.9重量%、1−ブテン重合単位含有量3.9重量%のポリマー41.9gを得た。
得られたポリマーは(b)成分に該当する予備活性化処理により生成したポリエチレンの含有率0.51重量%のプロピレン系重合体組成物であり、(a)成分に該当するプロピレン・エチレン・1−ブテンランダム共重合体の固有粘度は1.93dl/g、エチレン重合単位含有量は2.4重量%、1−ブテン重合単位含有量は3.9重量%であった
【0100】
(4)予備発泡粒子の製造
実施例1と同一の条件で、ペレット状の樹脂組成物Aを得た。
この樹脂組成物Aを、ブタン注入量を1.5kg/時に変え、50mmφ押出機の温度を130〜150℃の範囲で発泡粒子の表面に凹凸が発生しない最低の樹脂温度(表2に記載)となる様に変えたことを除いては実施例1と同様にして、予備発泡粒子に加工した。得られた予備発泡粒子の性状を表2に示す。
(5)型内発泡成形体の製造
この予備発泡粒子を、水蒸気の温度を140℃、加熱時間を30秒間に変えたことを除いては実施例1と同様にして、型内発泡成形体に加工した。得られた型内発泡成形体の性状を表2に示す。
【0101】
(比較例3)
(1)遷移金属化合物触媒成分の調製
実施例1と同一の条件で、チタン含有担持型触媒成分を得た。
(2)予備活性化触媒の調製
比較例1と同一の条件で、予備活性化触媒スラリーを得た。
(3)プロピレン系重合体組成物の製造
実施例3と同一の条件でプロピレン系重合体組成物の製造を行い、固有粘度1.87dl/g、1−ブテン重合単位含有量5.8重量%のポリマーを得た。
得られたポリマーは、(b)成分に該当する予備活性化処理により生成したポリエチレンの含有率0.00078重量%のプロピレン系重合体組成物であり、(a)成分に該当するプロピレン・1−ブテンランダム共重合体の固有粘度は1.87dl/g、1−ブテン重合単位含有量は5.8重量%であった。
【0102】
(4)予備発泡粒子の製造
実施例1と同一の条件で、ペレット状の樹脂組成物Aを得た。
この樹脂組成物Aを、ブタン注入量を1.8kg/時に変え、50mmφ押出機の温度を130〜150℃の範囲で発泡粒子の表面に凹凸が発生しない最低の樹脂温度(表2に記載)となる様に変えたことを除いては実施例1と同様にして、予備発泡粒子に加工した。得られた予備発泡粒子の性状を表2に示す。
(5)型内成形成形体の製造
実施例1と同一の条件で、型内発泡成形体に加工した。得られた型内発泡成形体の性状を表2に示す。
【0103】
(比較例4)
(1)遷移金属化合物触媒成分の調製
実施例1と同一条件で、チタン含有担持型触媒成分を得た。
(2)予備活性化触媒の調製
比較例1と同一条件で、予備活性化触媒スラリーを得た。
(3)プロピレン系重合体組成物の製造
実施例4と同一の条件でプロピレン系重合体組成物の製造を行い、固有粘度1.93dl/g、エチレン重合単位含有量2.4重量%、1−ブテン重合単位含有量3.9重量%のポリマーを得た。
得られたポリマーは(b)成分に該当する予備活性化処理により生成したポリエチレンの含有率0.00075重量%のプロピレン系重合体組成物であり、(a)成分に該当するポリプロピレンの固有粘度は1.93dl/gで、エチレン重合単位含有量2.4重量%、1−ブテン重合単位含有量は3.9重量%であった。
【0104】
(4)予備発泡粒子の製造
実施例1と同一の条件で、ペレット状の樹脂組成物Aを得た。
この樹脂組成物Aを、ブタン注入量を1.5kg/時に変え、50mmφ押出機の温度を130〜150℃の範囲で発泡粒子の表面に凹凸が発生しない最低の樹脂温度(表2に記載)となる様に変えたことを除いては実施例1と同様にして、予備発泡粒子に加工した。得られた予備発泡粒子の性状を表2に示す。
(5)型内発泡成形体の製造
この予備発泡粒子を、水蒸気の温度を140℃、加熱時間を30秒間に変えたことを除いては実施例1と同様にして、型内発泡成形体に加工した。得られた型内発泡成形体の性状を表2に示す。
【0105】
【表2】
【0106】
(実施例5)
(1)遷移金属化合物触媒成分の調製
実施例1と同一条件で、チタン含有担持型触媒成分を得た。
(2)予備活性化触媒の調製
エチレンによる予備活性化重合条件を変化させて、ポリエチレンの遷移金属化合物触媒成分1gあたりの生成量を47.6gより71.6gへ変えたことを除いては実施例1と同一の条件で、予備活性化触媒スラリーを得た。
【0107】
(3)プロピレン系重合体組成物の製造
窒素置換された、内容積110リットルの撹拌機を備えた連続式横型気相重合器(長さ/直径=3.7)に、ポリプロピレンパウダーを25kg導入し、さらに予備活性化触媒スラリーをチタン含有担持型触媒成分として0.62g/h、またトリエチルアルミニウムおよびジイソプロピルジメトキシシランをチタン含有担持型触媒成分中のチタン原子に対し、それぞれモル比が90および15となるように連続的に供給した。
さらに、重合温度70℃の条件下、重合器内の水素濃度のプロピレン濃度に対する比が0.0055となるように水素を、さらに重合器内の圧力が2.15MPaを保持するようにプロピレンをそれぞれ重合器内に供給して、プロピレンの気相重合を150時間連続して行った。
重合期間中は重合器内の重合体の保有レベルが60容積%に維持するように重合器からポリマーを11kg/hの速度で抜き出した。
抜き出したポリマーを、水蒸気を5容積%含む窒素ガスにより100℃にて30分間接触処理し、固有粘度が1.98dl/gであるポリマーを得た。
得られたポリマーは(b)成分に該当する予備活性化処理により生成したポリエチレンの含有率0.40重量%のプロピレン系重合体組成物であり、(a)成分に該当するポリプロピレンの固有粘度は1.86dl/gであった。
【0108】
(4)予備発泡粒子の製造
このプロピレン系重合体組成物100重量部に対し、テトラキス[メチレン−3−(3’−5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]0.3重量部、1,1,3−トリス(2−メチル−5−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)ブタン0.1重量部、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイト0.01重量部、ステアリン酸カルシウム0.1重量部、1−ブテン重合体[MFR(190℃測定)4.0g/10分、密度0.900g/cm3、融点104℃]10重量部を混合し、次いでシリンダー設定温度230℃、スクリュー径40mmの造粒機を用いてペレット状の樹脂組成物Aとした。
この樹脂組成物Aを、ブタン注入量を1.8kg/時に変え、50mmφ押出機の温度を150〜160℃の範囲で発泡粒子の表面に凹凸が発生しない最低の樹脂温度(表3に記載)となる様に変えたことを除いては実施例1と同様にして、予備発泡粒子に加工した。得られた予備発泡粒子の性状を表3に示す。
【0109】
(5)型内発泡成形体の製造
この予備発泡粒子を、水蒸気の温度を153℃、加熱時間を45秒間に変えたことを除いては実施例1と同様にして、型内発泡成形体に加工した。得られた型内発泡成形体の性状を表3に示す。
【0110】
(実施例6)
(1)遷移金属化合物触媒成分の調製
実施例1と同一の条件で、チタン含有担持型触媒成分を得た。
(2)予備活性化触媒の調製
実施例1と同一の条件で、予備活性化触媒スラリーを得た。
(3)プロピレン系重合体組成物の製造
実施例1と同一の条件で、プロピレン系重合体組成物を得た。
【0111】
(4)予備発泡粒子の製造
1−ブテン重合体を低密度ポリエチレン[MFR(190℃測定)7.0g/10分、密度0.919g/cm3]に変えたことを除いては実施例5と同様にして、ペレット状の樹脂組成物Aを得た。
この樹脂組成物Aを、ブタン注入量を1.8kg/時に変え、50mmφ押出機の温度を130〜150℃の範囲で発泡粒子の表面に凹凸が発生しない最低の樹脂温度(表3に記載)となる様に変えたことを除いては実施例1と同様にして、予備発泡粒子に加工した。得られた予備発泡粒子の性状を表3に示す。
(5)型内発泡成形体の製造
この予備発泡粒子を、実施例1と同一の条件で型内発泡成形体に加工した。得られた型内発泡成形体の性状を表3に示す。
【0112】
(比較例5)
(1)遷移金属化合物触媒成分の調製
実施例1と同一の条件で、チタン含有担持型触媒成分を得た。
(2)予備活性化触媒の調製
比較例2と同一の条件で、予備活性化触媒スラリーを得た。
(3)プロピレン系重合体組成物の製造
比較例1と同一条件で、プロピレン系重合体組成物を得た。
【0113】
(4)予備発泡粒子の製造
実施例6と同様にして、ペレット状の樹脂組成物Aを得た。
この樹脂組成物Aを、ブタン注入量を1.8kg/時に変え、50mmφ押出機の温度を130〜150℃の範囲で発泡粒子の表面に凹凸が発生しない最低の樹脂温度(表3に記載)となる様に変えたことを除いては実施例1と同様にして、予備発泡粒子に加工した。得られた予備発泡粒子の性状を表3に示す。
(5)型内発泡成形体の製造
この予備発泡粒子を、実施例1と同一の条件で型内発泡成形体に加工した。得られた型内発泡成形体の性状を表3に示す。
【0114】
【表3】
【0115】
【発明の効果】
本発明によれば、均一な発泡倍率、連続気泡による粗大な気泡のない均一な気泡径を有する予備発泡粒子が得られる。この予備発泡粒子により緩衝特性、断熱性、機械的強度等に優れ、特に緩衝材、断熱材、包装材等として好適に使用される発泡成形体が得られる。また、この製造方法、工程が連続式で簡略化されているので、従来のような大型の設備や、電子線照射等の特別な後処理設備を必要とせず、生産性、経済性に優れている。
Claims (3)
- 下記(a)、(b)を主成分とするプロピレン系重合体組成物を含む樹脂組成物と発泡剤とを押出機で高温高圧下に溶融混練した後、圧力開放しながら押出機から押出して発泡ストランドとし、次いで該発泡ストランドをカットして発泡粒子とすることを特徴とする予備発泡粒子の製造方法。
(a)135℃のテトラリン中で測定した固有粘度が0.2〜10dl/gである、プロピレン単独重合体またはプロピレン重合単位を50重量%以上含有するプロピレン−オレフィン共重合体(これらをまとめて、「プロピレン(共)重合体」と称する)。
(b)(a)成分100重量部あたり、135℃のテトラリン中で測定した固有粘度が15〜100dl/gである、エチレン単独重合体またはエチレン重合単位を50重量%以上含有するエチレン−オレフィン共重合体(これらをまとめて、「エチレン(共)重合体」と称する)0.01〜5.0重量部。 - プロピレン系重合体組成物が、チタン化合物を含む遷移金属化合物触媒成分、遷移金属原子1モルに対し0.01から1000モルの周期表(1991年版)第1族、第2族、第12族および第13族に属する金属よりなる群から選択された金属の有機金属化合物および遷移金属原子1モルに対し0〜500モルの電子供与体の組合せからなるポリオレフィン製造用触媒と、この触媒に担持された請求項1に記載の(b)成分であるエチレン(共)重合体とを含む予備活性化触媒の存在下に、プロピレンを単独で重合させるかまたはプロピレンとプロピレン以外のオレフィンとを共重合させて(a)成分のプロピレン(共)重合体を製造してなる請求項1に記載の予備発泡粒子の製造方法。
- 発泡剤が沸点−50〜100℃の炭化水素、沸点−50〜100℃のハロゲン化炭化水素及び無機ガスよりなる群から選択される1種以上の化合物であることを特徴とする請求項1または2に記載の予備発泡粒子の製造方法。
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