JP4824186B2 - ガラス繊維用集束剤 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ガラス繊維用集束剤、そのガラス繊維用集束剤で被覆されたガラス繊維束に関する。
【0002】
【従来の技術】
ガラス繊維強化フェノール樹脂等のガラス繊維強化樹脂は、一般に未硬化のマトリックス樹脂中にガラス繊維チョップドストランドを含有させ、該マトリックス樹脂を硬化することにより作製される。ここで用いられるガラス繊維チョップドストランドは、集束剤で束ねたガラス繊維モノフィラメントの切断物(繊維長は数mm程度)であるため、得られるガラス繊維強化樹脂におけるマトリックス樹脂とガラス繊維の界面には集束剤が存在し、この集束剤がガラス繊維強化樹脂の性能を大きく左右することになる。
【0003】
このようなガラス繊維強化樹脂は近年その用途が拡大し、より高い曲げ強度及び耐熱性(例えば半田溶融温度における耐熱性)が要求されるようになってきており、集束剤を工夫することによってその要求に応える試みが積極的になされている。例えば、特開昭63−297248号公報には、チタン系シランカップリング剤、塩化アンモニウム、カチオン界面活性剤及び水からなるサイジング剤(集束剤)が開示されており、このサイジング剤を用いることによりオキシナイトライドガラス繊維とマトリックス樹脂との密着性が向上したガラス繊維強化樹脂を得ることが可能であると記載されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記公報に開示されたサイジング剤は、オキシナイトライドガラス繊維以外の、Eガラス、Sガラス、Cガラス等からなる通常のガラス繊維に対しては密着性向上効果に劣り、又、得られるガラス繊維強化樹脂の曲げ強度や半田耐熱も十分でないという問題点がある。
【0005】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、Eガラス、Sガラス、Cガラス等からなる通常のガラス繊維を集束するために特に適した集束剤であって、該集束剤で集束したガラス繊維を用いることにより、ガラス繊維とマトリックス樹脂との密着性を向上させることができ、更に、高い曲げ強度及び耐熱性を発揮するガラス繊維強化樹脂を得ることが可能な集束剤を提供することを目的とする。本発明は、また、該集束剤で被覆されたガラス繊維束を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記の目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、カップリング剤成分として、チタネート系カップリング剤とシラン系カップリング剤とを含有するガラス繊維用集束剤が、Eガラス等の通常のガラス繊維を集束するために適しており、該集束剤で集束したガラス繊維を用いることにより、ガラス繊維とマトリックス樹脂との密着性を向上させることができ、更に、高い曲げ強度及び耐熱性を発揮するガラス繊維強化樹脂を得ることが可能であることを見出し、本発明を完成させた。
【0007】
すなわち、本発明のガラス繊維用集束剤は、カップリング剤と、ウレタン樹脂と、水とを含むガラス繊維用集束剤であって、前記カップリング剤は、チタネート系カップリング剤とシラン系カップリング剤とを含むものであることを特徴とするものである。又、本発明のガラス繊維束は、上記ガラス繊維用集束剤の不揮発成分で被覆されていることを特徴とするものである。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、本発明のガラス繊維用集束剤について詳細に説明する。
上述のように本発明のガラス繊維用集束剤は、カップリング剤成分として、チタネート系カップリング剤とシラン系カップリング剤とを含むことを特徴としている。ここで、カップリング剤成分におけるチタネート系カップリング剤とシラン系カップリング剤の合計量は、カップリング剤全重量を基準として80重量%以上であることが好ましく、100重量%(全てがチタネート系カップリング剤とシラン系カップリング剤)であることが特に好ましい。
【0009】
本発明におけるチタネート系カップリング剤は、加水分解性基と疎水基とを有するチタン化合物であればよく、その化学構造は特に制限されないが、得られるガラス繊維強化樹脂の曲げ強度及び耐熱性が優れることから、下記一般式(1)で表される化合物(以下「化合物1」という。)及び下記一般式(2)で表される化合物(以下「化合物2」という。)からなる群より選ばれる少なくとも1つの化合物であることが好ましい。
【化7】
【化8】
【0010】
先ず、化合物1について説明する。化合物1における、R1は炭素数1〜6のアルキル基であり、R2は炭素数4〜20の1価有機基であり、nは1〜3の整数である。ここで、R1は炭素数1〜3のアルキル基がより好ましく、R2は炭素数4〜18の有機基がより好ましく、nは1がより好ましい。
【0011】
化合物1は、チタネート系カップリング剤の反応性及びガラス繊維とマトリックス樹脂との親和性の観点から、下記一般式(3)で表される化合物(以下「化合物3」という。)及び下記一般式(4)で表される化合物(以下「化合物4」という。)からなる群より選ばれる少なくとも1つの化合物であることが更に好ましい。なお、化合物3及び化合物4における、pは1〜3の整数、qは6〜18の整数、rは1〜14の整数、nは1〜3の整数である。
【化9】
【化10】
【0012】
化合物1におけるR1及びR2として特に好ましい組み合わせとしては、下記表1に示されるもの(1−1、1−2、1−3及び1−4)が挙げられる。なお、本発明においては、化合物1の1種のみを用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【表1】
【0013】
次に、化合物2について説明する。化合物2におけるR3は炭素数1〜6の2価有機基、R4は炭素数4〜20の1価有機基である。ここで、R3は炭素数1〜4の2価有機基がより好ましく、R4は炭素数8〜20の1価有機基がより好ましい。
【0014】
化合物2は、チタネート系カップリング剤の反応性及びガラス繊維とマトリックス樹脂との親和性の観点から、下記一般式(5)で表される化合物(以下「化合物5」という。)であることが更に好ましい。なお、化合物5におけるxは0又は1、yは1〜5の整数、zは2〜10の整数、である。
【化11】
【0015】
化合物2におけるR3及びR4として特に好ましい組み合わせとしては、下記表2に示されるもの(2−1及び2−2)が挙げられる。なお、本発明においては、化合物2の1種のみを用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【表2】
【0016】
チタネート系カップリング剤としては、上記化合物の他に、下記一般式(7)で表される化合物(以下「化合物7」という。)を用いることも可能である。
【化12】
【0017】
化合物7におけるR7は炭素数1〜20の1価有機基であり、R8は炭素数4〜20のアルキル基である。ここで、R7は炭素数3〜16の1価有機基がより好ましく、R8は炭素数6〜16のアルキル基がより好ましい。
【0018】
化合物7におけるR7及びR8として特に好ましい組み合わせとしては、下記表3に示されるもの(7−1、7−2及び7−3)が挙げられる。なお、本発明において化合物7を用いる場合は、1種のみを用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【表3】
【0019】
次に、本発明におけるシラン系カップリング剤について説明する。本発明においては、上述したチタネート系カップリング剤と組み合わせて、1種又は2種以上のシランカップリング剤を用いることができる。シラン系カップリング剤は、加水分解性基と疎水基とを有するシラン化合物であればよく、その化学構造は特に制限されず、例えば、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、γ−(メタクリロイルオキシプロピル)トリメトキシシラン等の不飽和二重結合を有するシラン化合物;β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシジルオキシプロピルメチルジエトキシシラン等のエポキシ基を有するシラン化合物;γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等のメルカプト基を有するシラン化合物が好適に用いられる。
【0020】
本発明におけるシラン系カップリング剤としては上記の他に、下記一般式(6)で表される化合物(以下「化合物6」という。)が特に好適に用いられる。なお、化合物6におけるR5およびR6は同一でも異なっていてもよい炭素数1〜10のアルキレン基、mは0又は1、lは0又は1、pは1〜3の整数である。ここで、R5およびR6は同一でも異なっていてもよい炭素数3〜6のアルキレン基がより好ましい。
【化13】
【0021】
化合物6としては、下記一般式(6a)で表される化合物(以下「化合物6a」という。)及び下記一般式(6b)で表される化合物(以下「化合物6b」という。)の2つの態様がある。本発明においては、得られるガラス繊維強化樹脂の耐熱性の観点から、化合物6として化合物6bを用いることが好ましい。なお、化合物6bは塩酸塩等のような塩を形成していてもよい。
【化14】
【化15】
【0022】
次に、本発明におけるウレタン樹脂について説明する。本発明におけるウレタン樹脂は、ガラス繊維上で皮膜を形成可能なウレタン樹脂(すなわちウレタン樹脂の最低増膜温度がガラス繊維に本発明の集束剤を塗布する温度以上)であればよく、その化学構造等は特に制限されない。ウレタン樹脂としては、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、オレフィン系ポリオール等のポリオールと、芳香族ポリイソシアネート、脂肪族ポリイソシアネート、脂環式ポリイソシアネート等のポリイソシアネートとを任意の当量比で反応させてなるウレタン樹脂を用いることができる。ウレタン樹脂末端はイソシアネート基であっても水酸基であってもよく、これらの基は公知の手法によりブロック化されていてもよい。また、ウレタン樹脂の主鎖は公知の手法による変成がなされていてもよい。
【0023】
上記ウレタン樹脂は、本発明のガラス繊維用集束剤における水に溶解していてもよく分散していてもよい。すなわち、ウレタン樹脂は水溶性であっても非水溶性であってもよい。また、ウレタン樹脂は水中で合成したものであっても、別途合成したものを水中に溶解又は分散したものであってもよい。本発明におけるウレタン樹脂は、エマルジョン又はディスパージョンとして提供されるものであることが特に好ましい。
【0024】
本発明のガラス繊維用集束剤は、上述したチタネート系カップリング剤、シラン系カップリング剤、ウレタン樹脂の他に、水を必須成分とする。水は上述した成分を溶解又は分散可能であればよく、例えば、イオン交換水、蒸留水が好適に用いられる。
【0025】
本発明のガラス繊維用集束剤は、チタネート系カップリング剤、シラン系カップリング剤及びウレタン樹脂を、水に溶解及び/又は分散することにより得ることができる。保存安定性の観点から、チタネート系カップリング剤及びシラン系カップリング剤はアルコール溶液等として提供される場合があり、又、ウレタン樹脂はエマルジョン又はディスパージョンとして提供される場合があるため、このような場合はこれらをそのまま水と混合すればよい。
【0026】
本発明のガラス繊維用集束剤における各成分の含有量は特に制限されないが、ガラス繊維に対する塗布性を考慮すると、水の含有量はガラス繊維用集束剤の全重量を基準として、90〜99重量%が好ましく、94〜98重量%がより好ましい。水の含有量が90重量%未満である場合は不揮発成分の含有量が多くなるためガラス繊維に対する塗布が困難になる傾向にあり、99重量%を超す場合は、1回の塗布でガラス繊維に付着させることのできる不揮発成分の量が低下するため重ね塗りが必要となる場合が生じる。
【0027】
本発明のガラス繊維用集束剤に含まれる不揮発成分における各成分の重量比は以下のような比率であることが好ましい。すなわち、チタネート系カップリング剤はウレタン樹脂100重量部に対し0.5〜15重量部であることが好ましく、1〜12重量部がより好ましい。また、シラン系カップリング剤はウレタン樹脂100重量部に対し0.5〜30重量部であることが好ましく、5〜20重量部がより好ましい。チタネート系カップリング剤の重量が0.5重量部未満である場合及びシラン系カップリング剤の重量が0.5重量部未満である場合は、得られるガラス繊維強化樹脂における、ガラス繊維とマトリックス樹脂の密着性や曲げ強度及び耐熱性の向上の度合いが小さくなる傾向にあり、チタネート系カップリング剤の重量が15重量部を超す場合及びシラン系カップリング剤の重量が30重量部を超す場合は、添加量に見合った曲げ強度及び耐熱性の向上効果が得られない傾向にある。
【0028】
本発明のガラス繊維用集束剤は、チタネート系カップリング剤、シラン系カップリング剤、ウレタン樹脂及び水に加えて、柔軟剤を更に含むことが好ましい。
【0029】
本発明において用いられる柔軟剤としては、ガラス繊維表面に選択的に吸着し、ある程度の潤滑性を示す材料が好ましい。このような材料としては、テトラエチレンペンタミンとステアリン酸の縮合物(以下「TEPA/SA」と略記する。)が挙げられる。TEPA/SAにおけるテトラエチレンペンタミンとステアリン酸の反応比率はモル比として、前者/後者=1/1〜1/2が一般的である。本発明のガラス繊維用集束剤に柔軟剤を含有させることにより、ガラス繊維に柔軟性を付与することが可能になり、又、ガラス繊維ストランド中のガラス繊維フィラメント同士の摩擦を減少させることも可能になる。柔軟剤は、ウレタン樹脂100重量部に対し0.5〜10重量部(好ましくは1〜8重量部)用いることが好ましい。
【0030】
本発明のガラス繊維用集束剤は、更に、界面活性剤、潤滑剤、帯電防止剤等を含有するものであってもよい。本発明のガラス繊維用集束剤は、また、カップリング剤の加水分解を促進させるための酢酸等の弱酸を含有していてもよく、メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコールやその他有機溶剤を少量含有していてもよい。
【0031】
界面活性剤としては、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、ノニオン界面活性剤等を用いることができる。界面活性剤を用いることにより、ガラス繊維用集束剤における水以外の成分の分散・乳化を容易にすることが可能になる。界面活性剤は、ガラス繊維用集束剤の不揮発成分100重量部に対して0.5〜2重量部が好ましい。
【0032】
潤滑剤としては、高級飽和脂肪酸と高級飽和アルコールの縮合物等の合成油の1種または2種以上が好適に用いられる。潤滑剤が含まれたガラス繊維用集束剤を用いることにより、ガラス繊維の製造工程における機械摩擦からガラス繊維が保護される。潤滑剤はウレタン樹脂100重量部に対し0.5〜10重量部が好ましく、1〜8重量部であることがより好ましい。
【0033】
帯電防止剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルアミン、アルキルスルホネート、第4級アンモニウムクロライド等を用いることができる。ガラス繊維用集束剤に帯電防止剤を添加することにより、ガラス繊維に生じる静電気の発生を低減させることができる。帯電防止剤はガラス繊維用集束剤の不揮発成分100重量部に対して1〜3重量部が好ましい。
【0034】
次に、本発明のガラス繊維束について説明する。本発明のガラス繊維束は、上記本発明のガラス繊維用集束剤の不揮発成分で被覆されていることを特徴とする。本発明のガラス繊維束の形状は特に制限されず、長繊維であってもガラス繊維チョップドストランドであってもよい。なお、本発明において不揮発成分とは110℃の乾燥により揮発しない成分をいう。
【0035】
ガラス繊維用集束剤で被覆されるガラス繊維としては、Eガラス、Sガラス、Cガラスなどからなるガラス繊維がいずれも使用可能である。ガラス繊維を被覆するガラス繊維用集束剤の乾燥重量は、ガラス繊維100重量部に対して0.2〜1.5重量部であることが好ましく、0.2〜0.8重量部であることがより好ましい。
【0036】
本発明のガラス繊維束を得る方法は特に制限されない。例えば、白金ノズル(ブッシング)から引き出されたガラス繊維フィラメントにローラー型アプリケーターやベルト型アプリケーター等を用いてガラス繊維用集束剤を塗布し、これを集束機で集束することによってガラス繊維を束ね、次いで、これを室温〜150℃で乾燥し、水等の揮発分を除去することにより得ることができる。このような方法により得られるガラス繊維束は長繊維であるが、必要に応じて、これを1.5〜9mmに切断してガラス繊維チョップドストランドに加工してもよい。
【0037】
上記方法等により得られる本発明のガラス繊維束は、例えば、フェノール樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリアミド樹脂、PBT樹脂およびPET樹脂等のマトリックス樹脂に添加して、ガラス繊維強化樹脂の作製に使用することができる。本発明のガラス繊維束を用いて作製されたガラス繊維強化樹脂は、高い曲げ強度及び耐熱性を発揮する。かかる特性が得られる理由は必ずしも明らかではないが、チタネート系カップリング剤のみ又はシラン系カップリング剤のみ含有するガラス繊維用集束剤を用いた場合は上記特性が不充分であることから、本発明のガラス繊維用集束剤においては、チタネート系カップリング剤とシラン系カップリング剤との間で何らかの相互作用が生じているものと考えられる。
【0038】
本発明のガラス繊維束を添加するマトリックス樹脂としては、強度、耐熱性および価格の観点から、フェノール樹脂が好ましい。フェノール樹脂としては、フェノール、クレゾール、キシレノール、レゾルシン等のフェノール類と、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、フルフラール等のアルデヒド類との縮合によって得られる樹脂が適用可能であるが、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂(好ましくはノボラック型フェノール−ホルムアルデヒド樹脂)が特に好適である。また、マトリックス樹脂がフェノール樹脂である場合においては、ヘキサメチレンテトラミン等の公知の架橋剤を用いることにより硬化させることが好ましい。
【0039】
このようにして得られたガラス繊維強化フェノール樹脂は、マトリックス樹脂であるフェノール樹脂とガラス繊維との密着性に優れ、又、曲げ強度及び耐熱性も非常に高いことから、例えば、使用条件の厳しいハイブリッド自動車用モーターにおける、整流子のモールド部に特に好適に用いることができる。
【0040】
【実施例】
以下、本発明の好適な実施例についてさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0041】
ガラス繊維用集束剤の作製
(実施例1)
チタネート系カップリング剤として下記化学式(8)で表される化合物(以下「化合物8」という。)を95%含有する化合物(味の素社製、プレンアクトKR ET)、シラン系カップリング剤としてN−β−(N−ビニルベンジルアミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン塩酸塩(東レダウコーニング社製:SZ6032、該塩酸塩の含有量:40重量%)、ウレタン樹脂として日本エヌ・エス・シー社製ウレタンエマルジョン7C801(ウレタン樹脂の含有量:45重量%)、柔軟剤としてTEPA/SA(テトラエチレンペンタミンとステアリン酸とのモル比:前者/後者=1/2)を用いて、ガラス繊維用集束剤を作製した。
【化16】
【0042】
具体的には、水80kgにpH調整剤として酢酸(95重量%水溶液)を100g投入した後、SZ6032を750g(N−β−(N−ビニルベンジルアミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン塩酸塩として300g)加え30分攪拌した。次いで、攪拌を継続しつつプレンアクトKR ETを52.6g(化合物8として50g)、7C801を6kg(ウレタン樹脂として2.7kg)添加し、更に、TEPA/SAを35g加えた。次に、水を加えて合計重量を100kgとして、5分間攪拌してガラス繊維用集束剤を作製した。得られたガラス繊維用集束剤における不揮発成分の含有量(重量%)と、該不揮発成分におけるポリウレタン樹脂100重量部に対する各成分の重量部を表4に示した。
【0043】
(実施例2〜5)
プレンアクトKR ETの重量を、73.7g(化合物8として70g)、105.3g(化合物8として100g)、210.5g(化合物8として200g)、315.8g(化合物8として300g)、とした他はそれぞれ実施例1と同様にして、ガラス繊維用集束剤を作製した。得られたガラス繊維用集束剤における不揮発成分の含有量(重量%)と、該不揮発成分におけるポリウレタン樹脂100重量部に対する各成分の重量部を表4に示した。
【0044】
(実施例6)
750gのSZ6032に代えて、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン(日本ユニカー社製、A1100、γ−アミノプロピルトリエトキシシランの含有量:100重量%)500gを用いた他は、実施例3と同様にして、ガラス繊維用集束剤を作製した。得られたガラス繊維用集束剤における不揮発成分の含有量(重量%)と、該不揮発成分におけるポリウレタン樹脂100重量部に対する各成分の重量部を表4に示した。
【0045】
(実施例7)
750gのSZ6032に代えて、N−β―アミノエチル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン(日本ユニカー社製、A1120、N−β―アミノエチル−γ−アミノプロピルトリメトキシシランの含有量:100重量%)500gを用いた他は、実施例3と同様にして、ガラス繊維用集束剤を作製した。得られたガラス繊維用集束剤における不揮発成分の含有量(重量%)と、該不揮発成分におけるポリウレタン樹脂100重量部に対する各成分の重量部を表4に示した。
【0046】
(実施例8)
105.3gのプレンアクトKR ETに代えて、下記化学式(9)で表される化合物(以下「化合物9」という。)100重量%からなる味の素社製チタネート系カップリング剤、プレンアクトKR 9SAを100g添加し、ノニオン界面活性剤(花王社製、エマルゲン911)40gを添加した他は、実施例3と同様にして、ガラス繊維用集束剤を作製した。得られたガラス繊維用集束剤における不揮発成分の含有量(重量%)と、該不揮発成分におけるポリウレタン樹脂100重量部に対する各成分の重量部を表4に示した。
【化17】
【0047】
(実施例9)
105.3gのプレンアクトKR ETに代えて、下記化学式(10)で表される化合物(以下「化合物10」という。)100重量%からなる味の素社製チタネート系カップリング剤、プレンアクトKR 138Sを100g添加し、ノニオン界面活性剤(花王社製、エマルゲン911)40gを添加した他は、実施例3と同様にして、ガラス繊維用集束剤を作製した。得られたガラス繊維用集束剤における不揮発成分の含有量(重量%)と、該不揮発成分におけるポリウレタン樹脂100重量部に対する各成分の重量部を表4に示した。
【化18】
【0048】
(比較例1)
プレンアクトKR ETを用いなかった他は、実施例3と同様にして、ガラス繊維用集束剤を作製した。得られたガラス繊維用集束剤における不揮発成分の含有量(重量%)と、該不揮発成分におけるポリウレタン樹脂100重量部に対する各成分の重量部を表4に示した。
【0049】
(比較例2)
SZ6032を用いなかった他は、実施例3と同様にして、ガラス繊維用集束剤を作製した。得られたガラス繊維用集束剤における不揮発成分の含有量(重量%)と、該不揮発成分におけるポリウレタン樹脂100重量部に対する各成分の重量部を表4に示した。
【表4】
【0050】
ガラス繊維束の作製
ガラスフィラメント径11μmのガラス繊維(Eガラス)1600本に、実施例1〜9及び比較例1〜2のガラス繊維用集束剤を塗布した後集束し、更に110℃で乾燥して、240TEXのガラス繊維束を得た。このとき、ガラス繊維100重量部に対して、ガラス繊維用集束剤の不揮発成分が0.95重量部付着するようにした。
【0051】
ガラス繊維強化樹脂の作製
上記のようにして得られたガラス繊維束を長さ3mmに切断し、ガラス繊維チョップドストランドを作製した。このチョップドストランド60kgをフェノール樹脂(日立化成工業社製、HP−209NC、数平均分子量:850、軟化点:100℃)35kgに添加し、さらにヘキサメチレンテトラミン4kgを添加しこれらを混合した後、180℃において硬化し、ガラス繊維強化フェノール樹脂を得た。
【0052】
ガラス繊維強化樹脂の評価
(曲げ強度試験:常態)
JIS K7055に準拠して、乾燥条件でガラス繊維強化フェノール樹脂の室温(25℃)における曲げ強度(MPa)を測定した。なお、試験片の形状は、厚さ6mm、幅12.7mm、長さ127mmであり、3点曲げ試験法により、曲げ速度5mm/分で試験を行った。結果を表5に示した。
【0053】
(曲げ強度試験:加熱後)
厚さ6mm、幅12.7mm、長さ127mmのガラス繊維強化フェノール樹脂試験片を470℃の溶融半田に10秒間浸漬した。溶融半田から取り出した後、付着した半田を除去して、JIS K7055に準拠して、3点曲げ試験法により、曲げ速度5mm/分で室温(25℃)における曲げ強度(MPa)を測定した。結果を表5に示した。
【表5】
【0054】
(ガラス繊維とマトリックス樹脂の密着性)
常態における曲げ強度試験により破断したガラス繊維強化フェノール樹脂試験片の破断面を走査型電子顕微鏡で観察し、電子顕微鏡写真(倍率:500倍)を得た。得られた電子顕微鏡写真を図1〜11に示した。なお、実施例1〜9における電子顕微鏡写真が図1〜9に、比較例1〜2における電子顕微鏡写真が図10〜11にそれぞれ対応する。
【0055】
表4に示されるように実施例1〜9のガラス繊維強化フェノール樹脂は、常態においても半田溶融温度での加熱後においても高い曲げ強度を示した。また、図1〜9の破断面の電子顕微鏡写真から明らかなように、ガラス繊維とマトリックス樹脂との密着性が良好であった。これに対して、比較例2のガラス繊維強化フェノール樹脂は、常態においても半田溶融温度での加熱後においても曲げ強度が非常に劣っており、電子顕微鏡写真(図11)に示されるように、破断面においてマトリックス樹脂が付着していないガラス繊維の突起が多く見られ、マトリックス樹脂とガラス繊維との密着性が不充分であった。比較例1のガラス繊維強化フェノール樹脂は、比較例1のものよりも良好な曲げ強度を示したが、電子顕微鏡写真(図10)に示されるように、破断面においてマトリックス樹脂が付着していないガラス繊維の突起が見られ、マトリックス樹脂とガラス繊維との密着性が充分とはいえない状態であった。
【0056】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、ガラス繊維とマトリックス樹脂との密着性を向上させることができ、更に、高い曲げ強度及び耐熱性を発揮するガラス繊維強化樹脂を得ることが可能な集束剤を提供することが可能となる。また、かかる集束剤で被覆したガラス繊維束を提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1におけるガラス繊維強化フェノール樹脂試験片の破断面の電子顕微鏡写真である(倍率:500倍)。
【図2】実施例2におけるガラス繊維強化フェノール樹脂試験片の破断面の電子顕微鏡写真である(倍率:500倍)。
【図3】実施例3におけるガラス繊維強化フェノール樹脂試験片の破断面の電子顕微鏡写真である(倍率:500倍)。
【図4】実施例4におけるガラス繊維強化フェノール樹脂試験片の破断面の電子顕微鏡写真である(倍率:500倍)。
【図5】実施例5におけるガラス繊維強化フェノール樹脂試験片の破断面の電子顕微鏡写真である(倍率:500倍)。
【図6】実施例6におけるガラス繊維強化フェノール樹脂試験片の破断面の電子顕微鏡写真である(倍率:500倍)。
【図7】実施例7におけるガラス繊維強化フェノール樹脂試験片の破断面の電子顕微鏡写真である(倍率:500倍)。
【図8】実施例8におけるガラス繊維強化フェノール樹脂試験片の破断面の電子顕微鏡写真である(倍率:500倍)。
【図9】実施例9におけるガラス繊維強化フェノール樹脂試験片の破断面の電子顕微鏡写真である(倍率:500倍)。
【図10】比較例1におけるガラス繊維強化フェノール樹脂試験片の破断面の電子顕微鏡写真である(倍率:500倍)。
【図11】比較例2におけるガラス繊維強化フェノール樹脂試験片の破断面の電子顕微鏡写真である(倍率:500倍)。
Claims (6)
- 請求項1〜3のいずれか一項に記載のガラス繊維用集束剤の不揮発成分で被覆されていることを特徴とするガラス繊維束。
- マトリックス樹脂をフェノール樹脂とし、未硬化の前記マトリックス樹脂に請求項4に記載のガラス繊維束を切断してなるチョップドストランドを含有させ、前記マトリックス樹脂を硬化することを特徴とするガラス繊維強化フェノール樹脂の製造方法。
- マトリックス樹脂をフェノール樹脂とし、未硬化の前記マトリックス樹脂に請求項4に記載のガラス繊維束を切断してなるチョップドストランドを含有し、前記マトリックス樹脂を硬化させてなるガラス繊維強化フェノール樹脂。
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