JP4561018B2 - ポリアミド樹脂を含有するガラス繊維用集束剤 - Google Patents

ポリアミド樹脂を含有するガラス繊維用集束剤 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ガラス繊維用集束剤、ガラス繊維フィラメントが複数本集束されてなるガラス繊維束、ガラス繊維束を切断してなるガラス繊維チョップドストランド、及びガラス繊維チョップドストランドを含むフェノール樹脂を成形してなるガラス繊維強化フェノール樹脂成形物に関する。
【0002】
【従来の技術】
ガラス繊維強化熱硬化性樹脂は、耐熱性、絶縁抵抗性、耐摩耗性、曲げ強度、寸法安定性等に非常に優れているために、成形品を始めとする種々の用途に用いられている。中でも、マトリックス樹脂としてフェノール樹脂を用いるガラス繊維強化フェノール樹脂は、曲げ強度及び耐熱性が非常に優れていることから、高温状態で高い強度が要求される用途に多用されている。しかしながら、ガラス繊維強化フェノール樹脂は、衝撃が加わったときに亀裂を生じやすい等、耐衝撃性に不充分な点があるため、振動や衝撃を受ける用途、特に高温での耐衝撃性が要求される用途においては問題が生じる場合があった。
【0003】
かかる問題点を解決すべく、ガラス繊維強化フェノール樹脂の耐衝撃性の向上を図る手法が種々検討されている。例えば、フェノール樹脂に熱可塑性樹脂を含有させることにより耐衝撃性を向上させることが試みられ、ある程度の耐衝撃性の向上が達成可能になっているものの、変性により硬化後のフェノール樹脂が柔軟になる傾向があるため、曲げ強度等の力学特性が不充分になるという問題が発生していた。
【0004】
ガラス繊維強化樹脂の特性向上のためには、上記手法の他に、ガラス繊維強化樹脂に含まれるガラス繊維を集束する集束剤を改良することが試みられているが、既存の集束剤では、フェノール樹脂をマトリックス樹脂に用いた場合に、実用上充分な曲げ強度及び耐衝撃性を示すガラス繊維強化フェノール樹脂を得ることができないという問題があった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、かかる問題点に鑑みてなされたものであり、高い曲げ強度を示すとともに耐衝撃性にも優れたガラス繊維強化フェノール樹脂を得ることが可能なガラス繊維用集束剤を提供することを目的とする。また、かかるガラス繊維用集束剤で集束されたガラス繊維束及びかかるガラス繊維束を切断してなるガラス繊維チョップドストランドを提供することを目的とする。更に、かかるガラス繊維チョップドストランドを含むフェノール樹脂を成形してなるガラス繊維強化フェノール樹脂成形物を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、特定の樹脂を組み合わせたガラス繊維用集束剤を用いることにより、上記目的が達成可能であることを見出した。すなわち、マトリックス樹脂であるフェノール樹脂を熱可塑性樹脂で変性するのではなく、ガラス繊維を集束する集束剤に特定の樹脂を含有させることにより、高い曲げ強度及び耐衝撃性を示すガラス繊維強化フェノール樹脂が得られることを見出し、本発明を完成させた。
【0007】
すなわち、本発明のガラス繊維用集束剤は、下記一般式(1)で表されるN−置換アミド結合を有するポリアミド樹脂の水分散物と、ポリウレタン樹脂の水分散物と、シランカップリング剤と、潤滑剤と、を含むことを特徴とするものである。
【0008】
【化3】
Figure 0004561018
[式中、Xは水素原子、水酸基又はカルボキシル基、mは1以上の整数、nは1〜10の整数、をそれぞれ示す。]
【0009】
本発明においては、上記ガラス繊維用集束剤で被覆されたガラス繊維束でフェノール樹脂の強化を行うため、当該ガラス繊維用集束剤がフェノール樹脂とガラス繊維の界面付近に存在し、得られるガラス繊維強化フェノール樹脂は高い曲げ強度を示すとともに耐衝撃性にも優れるようになる。かかる効果の生じる理由は必ずしも明らかではないが、本発明においては、N−置換アミド結合を有するポリアミド樹脂が界面付近に存在することに起因するものであると発明者らは考察している。すなわち、本発明のガラス繊維用集束剤で集束したガラス繊維束を用いてガラス繊維強化フェノール樹脂を得る場合においては、上記ポリアミド樹脂がマトリックス樹脂であるフェノール樹脂全体に均一に分散されず、フェノール樹脂全体としての軟化が防止される。また、上記ポリアミド樹脂が、衝撃により応力の集中が生じやすい、フェノール樹脂とガラス繊維フィラメントとの界面付近に存在するため、界面付近で衝撃エネルギーを充分に吸収することができる。
【0010】
本発明においては、前記ポリウレタン樹脂に対する前記ポリアミド樹脂の比率が、重量比で0.03〜0.5であることが好ましい。かかる比率にすることにより、ガラス繊維強化フェノール樹脂の曲げ強度及び耐衝撃性が更に優れるようになる。
【0011】
本発明においては、また、前記シランカップリング剤が、下記一般式(2)で表されるシランカップリング剤であることが好ましい。
【0012】
【化4】
Figure 0004561018
[式中、R1及びR2は同一でも異なっていてもよい炭素数1〜10のアルキレン基、pは0又は1、qは1〜3の整数、をそれぞれ示す。]
【0013】
ガラス繊維用集束剤のシランカップリング剤成分として、上記化学構造を有したシランカップリング剤を用いることにより、高い曲げ強度及び耐衝撃性に加えて、高い耐熱性を得ることができるようになる。
【0014】
本発明は、また、上記ガラス繊維用集束剤により、ガラス繊維フィラメントが複数本集束されてなることを特徴とするガラス繊維束、並びに該ガラス繊維束を繊維長1〜6mmに切断してなることを特徴とするガラス繊維チョップドストランドを提供する。更には、該ガラス繊維チョップドストランドを含むフェノール樹脂を成形してなることを特徴とするガラス繊維強化フェノール樹脂成形物を提供する。
【0015】
【発明の実施の形態】
上述のように本発明のガラス繊維用集束剤は、上記一般式(1)で表されるN−置換アミド結合を有するポリアミド樹脂(以下「N−置換ポリアミド樹脂」という。)の水分散物と、ポリウレタン樹脂の水分散物と、シランカップリング剤と、潤滑剤とを含んでいる。以下、本発明のガラス繊維用集束剤の構成成分それぞれについて詳細に説明する。
【0016】
先ず、N−置換ポリアミド樹脂及びその水分散液について説明する。本発明におけるN−置換ポリアミド樹脂は、分子中のアミド結合の少なくとも一部が下記一般式(1)で表されるN−置換アミド結合であるポリアミド樹脂をいう。
【0017】
【化5】
Figure 0004561018
【0018】
式中、Xは水素原子(−H)、水酸基(−OH)又はカルボキシル基(−COOH)、mは1以上の整数、nは1〜10の整数である。ここで、mとしては、1〜5の整数がより好ましく、1〜3の整数が更に好ましい。nとしては1〜5の整数がより好ましく、1〜3の整数が更に好ましい。また、Xは、併用するウレタン樹脂その他の構成成分の種類に従って適宜好適な基の選択が可能である。
【0019】
N−置換ポリアミド樹脂は、N−置換アミド結合の数が増加するにしたがってアルコール可溶性や水分散性に優れるようになる。本発明においてはかかるN−置換ポリアミド樹脂の水分散物を用いるため、N−置換ポリアミド樹脂中のアミド基に占めるN−置換アミド結合の割合は、N−置換ポリアミド樹脂が良好な水分散性及び分散後の安定性を示す量であることが好ましい。かかる割合は、N−置換ポリアミド樹脂のアミド結合間の化学構造や、一般式(1)で表されるN−置換アミド結合におけるm、n、Xの種類にしたがって、適宜決定することができるが、一般には80モル%以上(更には90モル%以上)であることが好ましい。
【0020】
本発明におけるN−置換ポリアミド樹脂は、ポリアミド樹脂を高温・高圧下で、リン酸触媒等の触媒を用いてホルマリン及びアルコールを反応せしめることにより製造することができる(米国特許2,430,860号等)。原料として用いるポリアミド樹脂としては、アミド結合間の化学構造が、2価の脂肪族炭化水素、2価の脂環式炭化水素、2価の芳香族炭化水素、又はこれらの組み合わせであるポリアミド樹脂(ナイロン6、ナイロン66、ナイロン10、ナイロン12、ナイロン610等)が好ましい。
【0021】
主鎖及び/又は側鎖にポリオキシエチレン基等の水溶性基を有するポリアミド樹脂は水溶性及び/又は水分散性を示し、本発明におけるN−置換ポリアミド樹脂と同様に水系組成物に適用可能であるが、得られるガラス繊維強化フェノール樹脂の曲げ強度や耐衝撃性に劣るため、かかる樹脂を適用することは好ましくない。すなわち、本発明のN−置換ポリアミド樹脂は主鎖及び/又は側鎖にポリオキシエチレン基等の水溶性基を有しないことが好ましい。以上の観点から、本発明において用いるN−置換ポリアミド樹脂は、一般に、タイプ8ナイロンと称されるN−アルコキシメチル変性ポリアミド樹脂であることが特に好ましい。
【0022】
本発明においては上述したN−置換ポリアミド樹脂の水分散物を、ガラス繊維用集束剤の構成成分として用いる。水分散物の態様としては、エマルジョンやディスパージョンが挙げられる。N−置換ポリアミド樹脂の水分散物は界面活性剤等を用いないいわゆる自己乳化型の水分散物であっても、水分散物の形成及び安定性の観点から界面活性剤や保護コロイド等を添加したものであってもよい。水分散物中のN−置換ポリアミド樹脂の濃度(固形分濃度)は任意であるが、作業性等の観点から1〜30重量%が好適である。N−置換ポリアミド樹脂の水分散物は単独、若しくは2種類以上を組み合わせて用いることができる。
【0023】
次に、ポリウレタン樹脂及びその水分散液について説明する。本発明において用いることのできるポリウレタン樹脂は、ガラス繊維用集束剤の乾燥温度(室温〜130℃)においてガラス繊維フィラメント上に皮膜を形成可能なものであればよく、最低造膜温度が130℃以下(好ましくは80℃以下、更に好ましくは50℃以下、特に好ましくは20℃以下)のポリウレタン樹脂が好適である。
【0024】
また、ポリウレタン樹脂の水分散物として用いたときに以下のような性質を示すポリウレタン樹脂であることが好ましい。すなわち、ガラス板表面上にポリウレタン樹脂の水分散物を固形分換算で2g塗布し120℃にて3時間乾燥させ、φ20cmの乾燥皮膜を形成せしめ、放冷後、1cm角の升状にカッターナイフで切れ目を入れたときに、ガラス板から乾燥皮膜が剥離しないようなポリウレタン樹脂であることが好ましい。更には、1cm角の升状に切れ目を入れた乾燥皮膜に、粘着テープ(ニチバン社製、セロテープCT15)を貼付け、引き剥がしたときに乾燥皮膜がガラス板から剥離しないようなポリウレタン樹脂であることが好ましい。
【0025】
かかるポリウレタン樹脂は、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、オレフィン系ポリオール等のポリオールと、芳香族ポリイソシアネート、脂肪族ポリイソシアネート、脂環式ポリイソシアネート等のポリイソシアネートとを任意の当量比で反応させて得られたものが使用できる。ポリウレタン樹脂末端はイソシアネート基であっても水酸基であってもよく、これらの基は公知の手法によりブロック化されていてもよい。また、ポリウレタン樹脂の主鎖は公知の手法による変性がなされていてもよい。
【0026】
本発明において用いるポリウレタン樹脂は、直鎖状のポリウレタン樹脂が特に好ましい。直鎖状のポリウレタン樹脂を用いることにより、ガラス繊維用集束剤で集束したガラス繊維束(ガラス繊維チョップドストランド等)をフェノール樹脂と90℃程度で混練する場合に、ガラス繊維束の分散性を向上させることができ、ボイドの形成を防止してガラス繊維強化フェノール樹脂の曲げ強度等の向上を図ることができる。
【0027】
本発明においては上述したポリウレタン樹脂の水分散物を、ガラス繊維用集束剤の構成成分として用いる。水分散物の態様としては、エマルジョンやディスパージョンが挙げられる。ポリウレタン樹脂の水分散物は界面活性剤等を用いないいわゆる自己乳化型の水分散物であっても、水分散物の形成及び安定性の観点から界面活性剤や保護コロイド等を添加したものであってもよい。水分散物中のポリウレタン樹脂の濃度(固形分濃度)は任意であるが、作業性等の観点から1〜60重量%が好適である。ポリウレタン樹脂の水分散物は単独、若しくは2種類以上を組み合わせて用いることができる。
【0028】
次に、シランカップリング剤について説明する。本発明において用いられるシランカップリング剤は、加水分解性基と疎水基(有機基)とを有するシラン化合物であり、例えば、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、γ−(メタクリロイルオキシプロピル)トリメトキシシラン等の不飽和二重結合を有するシランカップリング剤;β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシジルオキシプロピルメチルジエトキシシラン等のエポキシ基を有するシランカップリング剤;γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等のメルカプト基を有するシランカップリング剤;γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン等のアミノ基を有するシランカップリング剤が例示可能である。
【0029】
本発明においては下記一般式(2)で表されるシランカップリング剤を用いることが特に好ましい。かかるシランカップリング剤を用いることにより、得られるガラス繊維強化フェノール樹脂が、高い曲げ強度及び耐衝撃性に加えて、高い耐熱性を発揮するようになる。なお、一般式(2)で表されるシランカップリング剤は塩酸塩等のような塩を形成していてもよい。
【0030】
【化6】
Figure 0004561018
【0031】
一般式(2)中、R1及びR2は同一でも異なっていてもよい炭素数1〜10のアルキレン基であるが、かかるアルキレン基は炭素数3〜6であることが好ましい。また、pは0又は1、qは1〜3の整数であるが、pは1、qは1又は2が好ましい。一般式(2)で表されるシランカップリング剤としては、N−β−(N−ビニルベンジルアミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン及びその塩酸塩が挙げられる。
【0032】
次に、潤滑剤について説明する。本発明のガラス繊維用集束剤は、ガラス繊維の製造工程における機械摩擦からガラス繊維を保護するために、潤滑剤を必須構成成分とする。かかる潤滑剤としては、高級飽和脂肪酸と高級飽和アルコールの縮合物等の合成油、ポリエチレンイミン等公知の潤滑剤がいずれも使用可能である。本発明において用いることのできる潤滑剤として特に好ましいものは、テトラエチレンペンタミンとステアリン酸の縮合物に酢酸を加えpHを4.5〜5.5に調整した調整物(以下、該調整物における固形分を「TEPA/SA」と記す。)である。TEPA/SAにおけるテトラエチレンペンタミンとステアリン酸の反応比率はモル比として、前者/後者=1/1〜1/2が好ましい。かかる潤滑剤を用いることにより、ガラス繊維が機械摩擦から保護されるとともに、ガラス繊維束中のガラス繊維モノフィラメント同士の摩擦をも減少させ、更にはガラス繊維に柔軟性を付与することが可能になる。
【0033】
次に、本発明のガラス繊維用集束剤における構成成分の機能について説明する。ガラス繊維用集束剤におけるポリウレタン樹脂は、ガラス繊維表面を被覆することにより複数のガラス繊維を集束するためのバインダーとして機能するとともに、ガラス繊維表面を保護する役割も有する。シランカップリング剤は、ガラスと反応性を有する加水分解性ケイ素基とフェノール樹脂との親和性を有する有機基を有していることから、ガラス繊維フィラメントとフェノール樹脂との界面接着性を向上させる働きを有する。また、潤滑剤は上述のように、ガラス繊維の製造工程における機械摩擦からガラス繊維を保護するとともに、ガラス繊維の柔軟性を付与することも可能である。N−置換ポリアミド樹脂は、フェノール樹脂の軟化を防ぎつつ、衝撃により応力の集中が生じやすいフェノール樹脂とガラス繊維の界面付近に偏在して衝撃エネルギーを吸収する働きを有すると考えられる。
そして、これらの機能があいまってガラス繊維強化フェノール樹脂の曲げ強度及び耐衝撃性の向上に寄与するものと考えられる。
【0034】
本発明のガラス繊維用集束剤は、上述したN−置換ポリアミド樹脂の水分散物、ポリウレタン樹脂の水分散物、シランカップリング剤及び潤滑剤に加えて、pH調整剤、帯電防止剤及び乳化剤等の添加成分を更に含んでいてもよい。また、本発明のガラス繊維用集束剤に対して、固形分調整等のために、上記水分散物に由来するものではない水(イオン交換水、蒸留水等)を更に添加してもよく、メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコールやその他有機溶剤を少量添加してもよい。
【0035】
pH調整剤としては、酢酸などの弱酸が好ましく、pH調整剤の添加によりガラス繊維用集束剤のpHを3.0〜5.0に調整することが好ましい。かかるpH調整により、シランカップリング剤の加水分解を促進させることができる。
【0036】
帯電防止剤としては、ポリオキシエチレンアルキルアミン、アルキルスルホネート、第4級アンモニウムクロライドが例示可能である。ガラス繊維用集束剤に帯電防止剤を添加することにより、ガラス繊維に生じる静電気の発生を低減させることができる。
【0037】
乳化剤としては、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等のアニオン性界面活性剤、脂肪族4級アンモニウム塩等のカチオン性界面活性剤、カルボキシベタイン等の両性界面活性剤、ポリオキシエチレンポリアルキルエーテル等のノニオン性界面活性剤等を用いることができる。
【0038】
上述した本発明のガラス繊維用集束剤の構成成分は、不揮発成分(N−置換ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、シランカップリング剤、潤滑剤、帯電防止剤、乳化剤等)と、揮発成分(水、有機溶剤、pH調整剤として用いられる酢酸、防腐剤として用いられるホルムアルデヒド等)とに大別することができる。ここで、不揮発成分とは110℃の乾燥により揮発しない成分を意味する。したがって、例えば、防腐剤に分類される化合物であっても化合物種によっては不揮発成分に属する場合がある。
【0039】
本発明のガラス繊維用集束剤における揮発成分の重量は、ガラス繊維用集束剤全重量を基準として、90〜99重量%であることが好ましく、94〜98重量%であることが好ましい。そして、揮発成分中、水の重量は90〜100重量%が好ましく、95〜100重量%がより好ましく、100重量%が特に好ましい。なお、揮発成分における水以外の成分は、上記の有機溶剤、pH調整剤として用いられる酢酸、防腐剤として用いられるホルムアルデヒド等である。
【0040】
したがって、本発明のガラス繊維用集束剤における不揮発成分の重量は、ガラス繊維用集束剤全重量を基準として、1〜10重量%であることが好ましく、2〜6重量%であることが好ましい。そして、不揮発成分の全重量を基準として、ポリウレタン樹脂は55〜95重量%(更には60〜90重量%)が好ましく、N−置換ポリアミド樹脂は1.5〜40重量%(更には2〜35重量%)が好ましく、シランカップリング剤は1〜10重量%(更には1〜5重量%)が好ましく、潤滑剤は0.5〜5重量%(更には1〜3重量%)が好ましい。
【0041】
不揮発成分の重量が1重量%未満である場合は、1回の塗布によるガラス繊維に対する付着量が少なく重ね塗りが必要になる場合があり、10重量%を超す場合には粘度が上昇して塗布性に悪影響を及ぼす場合がある。また、ポリウレタン樹脂の重量が上記下限値未満である場合は、ガラス繊維用集束剤の皮膜形成性が不充分になる傾向にあり、上記上限値を超す場合は、ガラス繊維用集束剤の不揮発成分の柔軟性が不充分となる場合がある。そして、N−置換ポリアミド樹脂の重量が上記下限値未満である場合は、得られるガラス繊維強化フェノール樹脂の耐衝撃性が不充分になる傾向にあり、上記上限値を超す場合は、得られるガラス繊維強化樹脂の曲げ強度が不充分になる場合がある。
【0042】
一方、シランカップリング剤の重量が上記下限値未満である場合は、ガラス繊維とマトリックス樹脂との接着性が低下してガラス繊維強化樹脂の曲げ強度が不充分になる場合があり、上記上限値を超す場合は、コストが向上する割に耐衝撃性や曲げ強度等の特性向上があまり見込めない傾向がある。そして、潤滑剤の重量が上記下限値未満である場合は、ガラス繊維チョップドストランドを作製するに当たりガラス繊維フィラメントの切れや毛羽立ち多くなる傾向にあり、上記上限値を超す場合は、ガラス繊維集束剤の集束性が低下する傾向にある。
【0043】
本発明のガラス繊維用集束剤が帯電防止剤及び/又は乳化剤を含む場合は、これらの重量はガラス繊維用集束剤の不揮発成分の全重量を基準として、以下のような値であることが好ましい。すなわち、帯電防止剤は不揮発成分の全重量を基準として1〜3重量%が好ましく、乳化剤は0.5〜2重量%が好ましい。
【0044】
本発明においては、ポリウレタン樹脂に対するN−置換ポリアミド樹脂の比率が、重量比で0.03〜0.5であることが好適である。すなわち、ポリウレタン樹脂100重量部に対するN−置換ポリアミド樹脂の重量が3〜50重量部であることが好ましい。ポリウレタン樹脂に対するN−置換ポリアミド樹脂の比率が0.03未満である場合は、得られるガラス繊維強化フェノール樹脂の耐衝撃性の向上が不充分になる傾向にあり、0.5を超す場合は得られるガラス繊維強化フェノール樹脂の曲げ強度が低下する傾向にある。ポリウレタン樹脂に対するN−置換ポリアミド樹脂の比率は、重量比で0.03〜0.3がより好ましく、0.15〜0.3が更に好ましい。
【0045】
本発明のガラス繊維用集束剤は、上述したN−置換ポリアミド樹脂の水分散物、ポリウレタン樹脂の水分散物、シランカップリング剤及び潤滑剤を混合し、必要に応じて、上記添加成分、水、有機溶剤等を加えることにより製造可能である。なお、N−置換ポリアミド樹脂の水分散物及びポリウレタン樹脂の水分散物はそれぞれ公知の合成方法にしたがって調整することができる。この場合において両者をそれぞれ別々に合成してもよく、一方の水分散液中で他方の樹脂を合成してもよい。また、潤滑剤は乳化剤で乳化した後に添加してもよく、シランカップリング剤がアルコール溶液として提供される場合はアルコール成分を除去することなく添加することも可能である。
【0046】
次に、本発明のガラス繊維束について説明する。本発明のガラス繊維束は、上述のガラス繊維用集束剤によりガラス繊維フィラメントが複数本集束されてなるものである。すなわち、本発明のガラス繊維束は、複数本のガラス繊維フィラメントと本発明のガラス繊維用集束剤とから構成されており、ガラス繊維用集束剤は複数のガラス繊維フィラメント間に存在し、ガラス繊維フィラメントを束ねる接着剤(バインダ)として機能している。また、ガラス繊維用集束剤はガラス繊維フィラメントの外周を連続又は不連続膜として被覆し、ガラス繊維を保護する機能も有している。なお、本発明において、ガラス繊維束に存在するガラス繊維用集束剤は、該集束剤の不揮発成分であることが好ましい。
【0047】
ガラス繊維用集束剤は、ガラス繊維束の使用時にガラス繊維フィラメントを束状に保っておくだけの強度を有していればよく、ガラス繊維束内に一様に分布している必要はない。すなわち、ガラス繊維フィラメント同士の接着性の観点からは、ガラス繊維用集束剤はガラス繊維束の外縁部から中心部へ向けて略均一の濃度で分布していることが好ましいが、例えば、外縁部の濃度が高く中心部の濃度が低い場合であってもガラス繊維フィラメントを保持可能であり実用上問題とならないため、かかる構成のガラス繊維束も本発明において採用可能である。
【0048】
本発明のガラス繊維束に用いられるガラス繊維フィラメントのフィラメント径は3〜23μmが好ましく、ガラス繊維束はかかるガラス繊維フィラメントが50〜1200本集束されてなるものであることが好ましい。ガラス繊維フィラメントのガラス組成としては、例えば、Eガラス、Sガラス、Cガラス等が挙げられる。本発明のガラス繊維束におけるガラス繊維フィラメントの総重量とガラス繊維用集束剤の重量との比は、前者100重量部に対して、後者が不揮発成分として0.2〜5.0重量部であることが好ましく、0.5〜2.0重量部であることがより好ましい。また、本発明のガラス繊維束の態様としては、ガラス繊維ヤーン及びガラス繊維ロービングが挙げられる。
【0049】
本発明のガラス繊維束は、例えば、白金ノズル(ブッシング)から引き出されたガラス繊維フィラメントにローラー型アプリケーターやベルト型アプリケーター等を用いてガラス繊維用集束剤を塗布し、これを集束機で集束することによってガラス繊維フィラメントを束ね、次いで、これを室温〜150℃で乾燥し、水等の揮発成分を除去することにより製造することができる。なお、適宜、加撚を施してもよい。
【0050】
このような方法により得られるガラス繊維束は長繊維であるが、必要に応じて、これを切断することにより、ガラス繊維チョップドストランドを得て、これをフェノール樹脂を強化するために用いてもよい。ガラス繊維チョップドストランドの繊維長は1〜6mmであることが好ましい。ガラス繊維チョップドストランドの繊維長が1mm未満である場合は、ガラス繊維チョップドストランド作製時の切断により毛羽が発生して嵩高になりやすく、マトリックス樹脂と混合しづらくなる傾向にあり、6mmを超す場合は、ガラス繊維チョップドストランド同士の絡み合いが生じてマトリックス樹脂と混合しづらくなる傾向にある。
【0051】
次に、本発明のガラス繊維強化フェノール樹脂成形物について説明する。本発明のガラス繊維強化フェノール樹脂成形物は、上述のガラス繊維チョップドストランドを含むフェノール樹脂を成形してなることを特徴とするものである。
【0052】
本発明のガラス繊維チョップドストランドを添加すべきフェノール樹脂は、フェノール、クレゾール、キシレノール、レゾルシン等のフェノール類と、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、フルフラール等のアルデヒド類との縮合によって得られるフェノール樹脂が好ましく、かかる樹脂はヘキサメチレンテトラミン等の硬化剤により硬化が可能である。本発明のガラス繊維強化フェノール樹脂成形物は、フェノール樹脂が未硬化である態様、フェノール樹脂が半硬化状態である態様、フェノール樹脂が硬化した態様のいずれも含むが、硬化した態様が好ましい。
【0053】
本発明においては、フェノール樹脂として、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂を用いることが好ましく、中でもノボラック型フェノール−ホルムアルデヒド樹脂が好ましい。フェノール樹脂用硬化剤としては、ヘキサメチレンテトラミン等の公知の架橋剤を使用することができる。フェノール樹脂に対して添加する硬化剤の量は、用いるフェノール樹脂や硬化剤の種類に基いて適宜決定される。例えば、ノボラック型フェノール−ホルムアルデヒド樹脂をヘキサメチレンテトラミンで硬化する場合においては、前者100重量部に対して後者10〜20重量部添加すればよい。また、離型剤として、ステアリン酸亜鉛等のステアリン酸塩を樹脂100重量部に対して1〜2重量部添加してもよい。
【0054】
本発明のガラス繊維強化フェノール樹脂成形物は、フェノール樹脂100重量部(フェノール樹脂が硬化剤や離型剤を含有する場合はそれらを含んで100重量部)に対して、本発明のガラス繊維チョップドストランドを150〜200重量部添加した組成物を成形したものであることが好ましい。なお、かかる組成物には、低収縮剤、充填剤、増粘剤等の添加成分を更に添加してもよい。成形は、フェノール樹脂と、ガラス繊維チョップドストランド及びその他添加物とを必要量秤取り、これらを混合した後に行ってもよく、また、押出成形機や射出成形機等を用いて連続的に混合を行い、例えば、金型中で加熱・加圧して成形してもよい。なお、混合・成形時の温度等を調整することにより、フェノール樹脂を未硬化状態や半硬化状態にすることもでき、硬化状態にすることもできる。
【0055】
硬化したフェノール樹脂を含むガラス繊維強化フェノール樹脂成形物は、室温および高温において曲げ強度および耐衝撃性に優れることから、例えば、使用条件の厳しいハイブリッド自動車用モーターにおける、整流子のモールド部に特に好適に用いることができる。
【0056】
【実施例】
以下、本発明の好適な実施例についてさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0057】
[ガラス繊維用集束剤の作製]
(実施例1)
酢酸を添加しpHを5に調製した純水9.37kgに、シランカップリング剤であるN−β−(N−ビニルベンジルアミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン塩酸塩(東レダウコーニング社製:SZ6032、シランカップリング剤濃度:40重量%)0.05kgを添加した。これに、ポリウレタン樹脂エマルジョン(大日本インキ化学工業社製:1660NS、ポリウレタン樹脂濃度:40重量%)0.8kgと、N−置換ポリアミド樹脂(一般式(1)におけるmは1、nは1、Xは水素原子)のエマルジョン(帝国化学社製:FS500、N−置換ポリアミド樹脂濃度:20重量%)0.05kgを添加し、室温で攪拌した。得られた溶液に、潤滑剤であるTEPA/SA(テトラエチレンペンタミンとステアリン酸とのモル比:前者/後者=1/2)7gを添加し、最後に純水を添加し総重量を10kgにして、ガラス繊維用集束剤を得た。
【0058】
(実施例2〜5)
N−置換ポリアミド樹脂のエマルジョン(帝国化学社製:FS500)の重量を、それぞれ0.1kg、0.25kg、0.5kg、0.75kgとした他は実施例1と同様にしてガラス繊維用集束剤を作製した。
【0059】
(実施例6)
N−置換ポリアミド樹脂のエマルジョン(帝国化学社製:FS500)の重量を0.25kgとし、N−β−(N−ビニルベンジルアミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン塩酸塩に代えて、アミノプロピルトリエトキシシラン0.05kgを用いた他は実施例1と同様にしてガラス繊維用集束剤を作製した。
【0060】
(比較例1)
N−置換ポリアミド樹脂のエマルジョンを用いなかった他は実施例1と同様にしてガラス繊維用集束剤を得た。
【0061】
(比較例2)
N−置換ポリアミド樹脂のエマルジョンに代えて、以下の(i)〜(iii)で表される化合物を反応せしめてなる水溶性ポリアミド樹脂(以下「水溶性ポリアミド樹脂1」という)の水溶液(水溶性ポリアミド樹脂1の濃度:20重量%、水溶液粘度(25℃):35cps)0.05kgを用いた他は、実施例1と同様にしてガラス繊維用集束剤を得た。なお、(iii)で表される化合物におけるR0はプロピル基を示し、aは1〜5の整数を示す。
【0062】
【化7】
Figure 0004561018
【0063】
(比較例3〜5)
水溶性ポリアミド樹脂1の水溶液の重量を、それぞれ0.1kg、0.25kg、0.5kgとした他は、比較例2と同様にしてガラス繊維用集束剤を得た。
【0064】
(比較例6)
N−置換ポリアミド樹脂のエマルジョンに代えて、以下の(ii)及び(iv)で表される化合物を反応せしめてなる水溶性ポリアミド樹脂(以下「水溶性ポリアミド樹脂2」という)の水溶液(水溶性ポリアミド樹脂2の濃度:20重量%、水溶液粘度(25℃):20cps)0.05kgを用いた他は、実施例1と同様にしてガラス繊維用集束剤を得た。なお、(iv)で表される化合物におけるbは1〜5の整数を示す。
【0065】
【化8】
Figure 0004561018
【0066】
(比較例7〜9)
水溶性ポリアミド樹脂2の水溶液の重量を、それぞれ0.1kg、0.25kg、0.5kgとした他は、比較例6と同様にしてガラス繊維用集束剤を得た。
【0067】
[ガラス繊維束及びガラス繊維チョップドストランドの作製]
(実施例7〜12及び比較例10〜18)
実施例1〜6及び比較例1〜9で得られたガラス繊維用集束剤のそれぞれを、ガラスフィラメント径11μmのガラス繊維フィラメント1600本からなる束(日東紡績株式会社製:240TEX)に塗布し、110℃で乾燥してガラス繊維束を得た。この場合において上記束100重量部に対して、ガラス繊維用集束剤(不揮発成分)が0.95重量部付着するようにした。次いで、得られたガラス繊維束を長さ3mmに切断し、ガラス繊維チョップドストランドを作製した。
なお、実施例1〜6及び比較例1〜9で得られたガラス繊維用集束剤を用いて得られたガラス繊維チョップドストランドが、それぞれ実施例7〜12及び比較例10〜18に該当する。
【0068】
[ガラス繊維強化フェノール樹脂成形物の作製]
(実施例13〜18及び比較例19〜27)
実施例7〜12及び比較例10〜18のガラス繊維チョップドストランドをそれぞれ60kg秤り取り、これをフェノール樹脂(大日本インキ化学工業社製、フェノライトTD−2106)35kgに添加し、さらにヘキサメチレンテトラミン4kgを添加しこれらを混合した後、厚さ6mm又は10mmの板状となるように180℃で硬化し、ガラス繊維強化フェノール樹脂成形物を得た。なお、実施例1〜6及び比較例1〜9で得られたガラス繊維用集束剤に由来するガラス繊維強化フェノール樹脂成形物が、それぞれ実施例13〜18及び比較例19〜27に該当する。
【0069】
(比較例28)
N−置換ポリアミド樹脂のエマルジョン(帝国化学社製:FS500)を110℃で乾燥し不揮発成分(N−置換ポリアミド樹脂)を得た。かかる不揮発成分1gをフェノール樹脂(大日本インキ化学工業社製、フェノライトTD−2106)に添加し90℃で混練することにより、N−置換ポリアミド樹脂で変性されたフェノール樹脂(以下「変性フェノール樹脂1」という。)10kgを得た。
次いで、比較例10のガラス繊維チョップドストランドを60kg秤取り、これを35kgの変性フェノール樹脂1に添加し、さらにヘキサメチレンテトラミン4kgを添加しこれらを混合した後、厚さ6mm又は10mmの板状となるように180℃で硬化し、ガラス繊維強化フェノール樹脂成形物を得た。得られたガラス繊維強化フェノール樹脂成形物は、含有する構成成分の種類及び重量は実施例13と同様であるが、N−置換ポリアミド樹脂がフェノール樹脂全体に分散されている点において異なる。
【0070】
(比較例29)
水溶性ポリアミド樹脂1の水溶液を110℃で乾燥し不揮発成分(水溶性ポリアミド樹脂1)を得た。かかる不揮発成分1gをフェノール樹脂(大日本インキ化学工業社製、フェノライトTD−2106)に添加し90℃で混練することにより、水溶性ポリアミド樹脂1で変性されたフェノール樹脂(以下「変性フェノール樹脂2」という。)10kgを得た。次いで、比較例10のガラス繊維チョップドストランドを60kg秤取り、これを35kgの変性フェノール樹脂2に添加し、さらにヘキサメチレンテトラミン4kgを添加しこれらを混合した後、厚さ6mm又は10mmの板状となるように180℃で硬化し、ガラス繊維強化フェノール樹脂成形物を得た。得られたガラス繊維強化フェノール樹脂成形物は、含有する構成成分の種類及び重量は比較例20と同様であるが水溶性ポリアミド樹脂1がフェノール樹脂全体に分散されている点において異なる。
【0071】
(比較例30)
水溶性ポリアミド樹脂2の水溶液を110℃で乾燥し不揮発成分(水溶性ポリアミド樹脂2)を得た。かかる不揮発成分1gをフェノール樹脂(大日本インキ化学工業社製、フェノライトTD−2106)に添加し90℃で混練することにより、水溶性ポリアミド樹脂2で変性されたフェノール樹脂(以下「変性フェノール樹脂3」という。)10kgを得た。次いで、比較例10のガラス繊維チョップドストランドを60kg秤取り、これを35kgの変性フェノール樹脂3に添加し、さらにヘキサメチレンテトラミン4kgを添加しこれらを混合した後、厚さ6mm又は10mmの板状となるように180℃で硬化し、ガラス繊維強化フェノール樹脂成形物を得た。得られたガラス繊維強化フェノール樹脂成形物は、含有する構成成分の種類及び重量は比較例24と同様であるが水溶性ポリアミド樹脂2がフェノール樹脂全体に分散されている点において異なる。
【0072】
[ガラス繊維強化フェノール樹脂の性能試験]
(曲げ強度試験)
実施例13〜18及び比較例19〜30で得られたガラス繊維強化フェノール樹脂成形物の形状を、厚さ6mm、幅12.7mm、長さ127mmとし、JIS K7055に準拠して、乾燥条件で25℃におけるガラス繊維強化フェノール樹脂の曲げ強度(MPa)を測定した。なお、曲げ強度は3点曲げ試験法により曲げ速度5mm/分で測定した。
【0073】
(シャルピー衝撃試験)
実施例13〜18及び比較例19〜30で得られたガラス繊維強化フェノール樹脂成形物の形状を、厚さ10mm、幅4mm、長さ80mmとし、JIS K7061に準拠して、25℃におけるガラス繊維強化フェノール樹脂のシャルピー衝撃値(kJ/m2)を測定した。なお、衝撃方向はフラットワイズであった。
【0074】
得られた曲げ強度及びシャルピー衝撃値を、含有するガラス繊維用集束剤の不揮発成分の組成とともに表1に示した。なお、実施例13〜18で得られたガラス繊維強化フェノール樹脂には、それぞれ実施例1〜6のガラス繊維用集束剤が用いられており、比較例19〜27で得られたガラス繊維強化フェノール樹脂にはそれぞれ比較例1〜9のガラス繊維用集束剤が用いられており、比較例28〜30で得られたガラス繊維強化フェノール樹脂には比較例1のガラス繊維用集束剤が用いられている。
【0075】
【表1】
Figure 0004561018
【0076】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、高い曲げ強度を示すとともに耐衝撃性にも優れたガラス繊維強化フェノール樹脂が提供される。また、かかるガラス繊維強化フェノール樹脂を得るために好適なガラス繊維束及びガラス繊維チョップドストランド、更には、ガラス繊維を集束して上記ガラス繊維束を作製可能なガラス繊維用集束剤を提供することが可能になる。

Claims (6)

  1. 下記一般式(1)で表されるN−置換アミド結合を有するポリアミド樹脂の水分散物と、ポリウレタン樹脂の水分散物と、シランカップリング剤と、潤滑剤と、を含むことを特徴とするガラス繊維用集束剤。
    Figure 0004561018
    [式中、Xは水素原子、水酸基又はカルボキシル基、mは1以上の整数、nは1〜10の整数、をそれぞれ示す。]
  2. 前記ポリウレタン樹脂に対する前記ポリアミド樹脂の比率が、重量比で0.03〜0.5であることを特徴とする請求項1記載のガラス繊維用集束剤。
  3. 前記シランカップリング剤が、下記一般式(2)で表されるシランカップリング剤であることを特徴とする請求項1又は2記載のガラス繊維用集束剤。
    Figure 0004561018
    [式中、R1及びR2は同一でも異なっていてもよい炭素数1〜10のアルキレン基、pは0又は1、qは1〜3の整数、をそれぞれ示す。]
  4. 請求項1〜3のいずれか一項に記載のガラス繊維用集束剤により、ガラス繊維フィラメントが複数本集束されてなることを特徴とするガラス繊維束。
  5. 請求項4記載のガラス繊維束を繊維長1〜6mmに切断してなることを特徴とするガラス繊維チョップドストランド。
  6. 請求項5記載のガラス繊維チョップドストランドを含むフェノール樹脂を成形してなることを特徴とするガラス繊維強化フェノール樹脂成形物。
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