図1は、本発明の第1の関連技術に係る基板処理装置1の構成を示す図である。基板処理装置1は、表面に絶縁膜(例えば、酸化膜)が形成された半導体基板9(例えば、シリコン基板であり、以下、単に「基板9」という。)に処理液を供給してエッチング等の処理を行う装置である。
図1に示すように、基板処理装置1は、基板9を下側から保持する基板保持部2、基板9の上方に配置されて基板9の上側の主面(以下、「上面」という。)に向けて洗浄液を吐出する処理液供給部3、基板保持部2の周囲を囲むカップ部41、カップ部41を図1中の上下方向に移動するシリンダ機構である昇降機構5、および、これらの構成を制御する制御部10を備える。図1では、図示の都合上、基板保持部2の一部を断面にて描いている(図3ないし図7、図9、図12、図13、並びに、図15ないし図24においても同様)。
基板保持部2は、略円板状の基板9を下側および外周側から水平に保持するチャック21、基板9をチャック21と共に回転する回転機構22を備える。回転機構22はチャック21の下側に接続されるシャフト221、および、シャフト221を回転するモータ222を備え、モータ222が駆動されることにより、基板9の法線方向に平行かつ基板9の中心を通る中心軸J1を中心にシャフト221およびチャック21と共に基板9が回転する。
処理液供給部3は、供給管31に接続される吐出部32を有する。供給管31は吐出部32とは反対側にて分岐しており、一方は純水用バルブ331を介して純水の供給源へと接続し、他方は薬液用バルブ332を介して所定の薬液の供給源へと接続する。処理液供給部3では、純水用バルブ331または薬液用バルブ332が開放されることにより、吐出部32から純水または(希釈された)薬液である処理液が基板9上に供給される。なお、吐出部32から吐出される薬液は水を含む液体であり、導電性を有している。
カップ部41は、チャック21の外周に配置されて基板9上に供給された処理液の周囲への飛散を防止する周壁部411を有し、周壁部411の上部は処理液供給部3側(上方)へと向かうに従って直径が小さくなる傾斜部412となっている。本関連技術では、周壁部411はテフロン(登録商標)等のフッ素樹脂や塩化ビニル樹脂にて形成され、内周面411aは撥水性(疎水性)を有し、外周面411bはプラズマ処理やオゾン処理等の親水化処理が施されることにより親水性を有している。なお、カップ部41の材料によっては外周面411bの粗度を増大させることにより、親水性(濡れ性)が向上されてもよい。
周壁部411の下端部には、中心軸J1側へと突出してチャック21の下方を覆う環状の底部413が取り付けられ、底部413には洗浄液を排出する排出口(図示省略)が設けられる。また、周壁部411の下端部には、底部413とは反対側に環状に広がるとともに先端が上方へと屈曲する補助排水部414が形成されており、後述するように周壁部411の外周面411bに付与される水は補助排水部414を介して排出される。補助排水部414は導電材料にて形成され、カップ部41から離れた位置にて接地部61により接地される。
次に、基板処理装置1が処理液を基板に供給して基板を処理する動作の流れについて図2を参照しつつ説明する。基板処理装置1では、実際に基板9に対して処理を行う前の準備として、不要な基板(いわゆる、ダミー基板)を用いて処理が行われる。まず、昇降機構5によりカップ部41の上端部がチャック21よりも下方に位置するまでカップ部41を下降し、外部の搬送機構によりダミー基板がチャック21上に載置され、基板保持部2にて保持される。
図3は基板保持部2にてダミー基板9aが保持された直後の基板処理装置1を示す図である。ダミー基板9aが保持されると、処理液供給部3において純水用バルブ331(図1参照)のみを開放することによりダミー基板9aの上面上に純水が供給されるとともに、基板保持部2によるダミー基板9aの回転が開始される。このとき、処理液供給部3から供給されて回転するダミー基板9aから飛散する純水は、カップ部41における傾斜部412の外周面411bに付着する。既述のように、外周面411bには親水化処理が施されており、傾斜部412へと付与される純水は外周面411b上に保持されつつ外周面411bに沿って広がり、周壁部411の外周面411bに薄い水の層(すなわち、水の膜であり、図3中にて符号71を付す太線にて示す。)が形成される(ステップS10)。後述するように、カップ部の内周面に水または他の液体が保持される場合があるため、図2のステップS10では、一般化した処理の内容を示している。
また、ダミー基板9aから飛散する余剰な水は外周面411bに沿って補助排水部414まで到達して排出される。実際には、基板処理装置1の周囲は専用のカバーにより覆われていることにより、カップ部41よりも外側へと飛散する純水が問題になることはない(後述の図4、図13および図20の基板処理装置1,1a,1bにおいて同様)。
このとき、外周面411b上の水の層71には空気中の二酸化炭素(CO2)等が溶け込むことにより、水の層71は絶縁材料にて形成される周壁部411に比べて十分に小さい比抵抗を有することとなる。すなわち、カップ部41の外周面411bに導電性が生じた表面層が形成される。また、水の層71は補助排水部414まで連続することにより、補助排水部414を介して接地部61により実質的に電気的に接地される。
ダミー基板9aを回転しつつ所定時間だけ純水が外周面411bに付与されると、図1の純水用バルブ331を閉じて純水の吐出が停止されるとともにダミー基板9aの回転が停止される。そして、外部の搬送機構によりダミー基板9aが取り出された後、処理対象の基板9がチャック21上に載置されて基板保持部2にて保持される(すなわち、基板9がロードされる。)(ステップS11)。続いて、カップ部41が上昇してチャック21がカップ部41内に収容される。その後、基板保持部2による基板9の回転が開始されるとともに、処理液供給部3において純水用バルブ331のみを開放することにより基板9の上面上に純水が供給され、基板9の純水での前洗浄処理(プレリンス)が行われる(ステップS12)。このとき、処理液供給部3から供給されて回転する基板9から飛散する純水は、カップ部41の内周面411aにて受け止められることにより、カップ部41の内周面411aにて摩擦帯電が生じるが、基板処理装置1では、導電性が生じた表面層である水の層71(図3参照)により周壁部411の電荷容量(静電容量)が大きくなることにより、内周面411aの(接地電位に対する)帯電電位の大きさは大幅には増大しない(すなわち、水の層71が無い場合に比べて、カップ部41の帯電電位が抑制される)。したがって、チャック21上の基板9はほとんど誘導帯電しない。
続いて、処理液供給部3において純水用バルブ331が閉じられるとともに、薬液用バルブ332が開放されることにより、基板9の上面に付与される処理液が純水から薬液に切り替えられる(ステップS13)。基板9への薬液の付与は所定時間だけ継続され、これにより、基板9に薬液を用いた処理が施されることとなる。なお、純水の供給時と同様に、処理液供給部3から供給されて回転する基板9から飛散する薬液は、カップ部41の内周面411aにて受け止められ、底部413における排出口から排出される。
基板9に薬液が所定時間だけ付与されると、薬液用バルブ332が閉じられるとともに、純水用バルブ331が開放されることにより、基板9の上面に付与される処理液が薬液から純水に切り替えられ、その後、昇降機構5によりカップ部41の上端部(傾斜部412の端部)がチャック21よりも下方へと下降して(図3参照)、純水による基板9の後洗浄が行われる(ステップS14)。このとき、処理液供給部3から供給されて回転する基板9から飛散する純水は、周壁部411の傾斜部412における外周面411bへと付着する。このように、基板9の後洗浄にて処理液供給部3から純水が吐出される際に、カップ部41の上端部を基板9の下方に配置することにより、基板9から飛散する純水がカップ部41の外周面411bに容易に、かつ、効率よく付与される。したがって、仮に、カップ部41の外周面411bの水の層71が乾燥して部分的に消失した場合であっても、外周面411bに純水が補給されることにより、水の層71が補修されることとなる。
純水による基板9の後洗浄が完了すると、純水の吐出が停止されるとともに基板9の回転が停止される。外部の搬送機構により基板9が取り出された後(すなわち、基板9がアンロードされた後)(ステップS15)、次の処理対象の基板9がチャック21上に載置されて基板保持部2にて保持される(ステップS16,S11)。そして、上記の動作と同様に、純水による基板9の前洗浄(ステップS12)、薬液による基板9の処理(ステップS13)、および、純水による基板9の後洗浄(ステップS14)が行われる。このとき、基板処理装置1では、現在の基板9よりも先行して処理される先行基板9が基板保持部2に保持されている間に、カップ部41の外周面411bに純水が付与されていることにより、カップ部41の帯電電位を確実に抑制することが可能となる。基板9の後洗浄が完了すると、その後、基板9はアンロードされる(ステップS15)。
所望の枚数の基板9に対して上記ステップS11〜S15の処理が繰り返されると(ステップS16)、基板処理装置1における動作が完了する。
以上に説明したように、図1の枚葉式の基板処理装置1では、基板保持部2の周囲を囲むことにより基板9から飛散する処理液を受け止めるカップ部41が絶縁材料にて形成され、基板9を処理する際に、カップ部41の外周面411bにおいて水が保持される。これにより、カップ部の全体を特殊な導電材料にて形成して基板処理装置1の製造コストを大幅に増大させることなく、純水が飛散する際に生じるカップ部41の帯電電位を抑制することができ、その結果、基板9の誘導帯電により基板9への処理液の供給時に基板9上にて放電が生じてしまうことを防止することができる。
また、カップ部41では、外周面411bに親水化処理を施すのみにより、外周面411bにて水を容易に保持することができ、高価な部品を別途設けることなく、外周面411bに周壁部411よりも比抵抗が小さい表面層を容易に形成することができる。さらに、カップ部41にて水が保持された状態で、水の層71が実質的に電気的に接地されることにより、カップ部41の帯電電位をさらに抑制することができる。
図4は、カップ部に水の層を形成して帯電電位を抑制する基板処理装置1の他の例を示す図である。図4の基板処理装置1のカップ部41では、周壁部411の外周面411bに対する親水化処理が省略されるとともに、外周面411bに沿って繊維材料46(図4中にて太線にて示す。)が接着にて取り付けられる点で、図1の基板処理装置1と異なる。
図4の基板処理装置1では、図1の基板処理装置1の場合と同様に、カップ部41の上端部がチャック21よりも下方に位置する状態で、回転する基板9から飛散する純水が周壁部411の外周面411bに付与され、純水は繊維材料46に染み込んで外周面411bにて容易に保持される。繊維材料46に染み込んだ純水は、空気中の二酸化炭素等が溶け込んで比抵抗が下がることにより、カップ部41の外周面411bに導電性が生じた表面層が形成されることとなる。また、繊維材料46中の水は接地部61により実質的に電気的に接地される。図4の基板処理装置1では、基板9の処理において純水が飛散する際に生じるカップ部41の帯電電位が、外周面411b上に形成される水の層により抑制される。これにより、基板9の誘導帯電により基板9への処理液の供給時に基板9上にて放電が生じてしまうことを防止することができる。
また、図4の基板処理装置1において、繊維材料46に代えて、例えばフッ素樹脂にて形成されるメッシュ部材が設けられ、メッシュ部材にて水を保持することにより、純水が飛散する際に生じるカップ部41の帯電電位が抑制されてもよい。
図5は、カップ部に水の層を形成して帯電電位を抑制する基板処理装置1のさらに他の例を示す図である。図5の基板処理装置1のカップ部41では、周壁部411の外周面411bに対する親水化処理が省略され、内周面411aに対して親水化処理が施される。また、カップ部41の底部413aは、周壁部411の下側の端部から内側に環状に広がるとともに先端が上方へと屈曲する。底部413aは処理液に対する耐食性を有する導電材料にて形成され、接地部61が接続される。他の構成は図1の基板処理装置1と同様であり、同符号を付している。
図5の基板処理装置1にて基板9を処理する際には、図2のステップS10の処理では、ダミー基板を保持するチャック21がカップ部41内に収容された状態で、ダミー基板の上面上に純水が供給されるとともに、基板保持部2によるダミー基板の回転が開始される(すなわち、カップ部41の外周面411bに純水は付与されない。)。これにより、処理液供給部3から供給されて回転するダミー基板から飛散する純水がカップ部41における内周面411aに付着し、内周面411aに導電性が生じた水の層71が形成される。その後、ダミー基板が取り出された後、処理対象の基板9がチャック21上に載置され(ステップS11)、純水による基板9の前洗浄(ステップS12)、薬液による基板9の処理(ステップS13)、および、純水による基板9の後洗浄(ステップS14)が行われる。ステップS14の基板9の純水による後洗浄では、チャック21がカップ部41内に収容されたままとされる。
図5の基板処理装置1では、カップ部41の内周面411aにて水が保持されることにより、基板9の処理時に回転する基板9から飛散する純水により、カップ部41の内周面411aにて摩擦帯電が生じることが抑制され、さらに、摩擦帯電が生じたとしても、接地部61を介して実質的に接地される水の層71によりカップ部41の帯電電位が確実に抑制される。その結果、基板9の誘導帯電により基板9への処理液の供給時に基板9上にて放電が生じてしまうことを防止することができる。図5の基板処理装置1では、導電材料が用いられる部位がカップ部41の一部(底部413a)のみであるため、カップ部41の製造コストが大幅に増大することはない。なお、図5の基板処理装置1において、カップ部41の内周面411aに繊維材料またはメッシュ部材が設けられ、内周面411aにて水が保持されてもよい。
次に、基板処理装置1においてカップ部の帯電電位を抑制する他の手法について説明する。図6は、基板処理装置1のさらに他の例を示す図である。図6の基板処理装置1のカップ部41Aでは、図4の基板処理装置1における繊維材料46に代えて導電性樹脂フィルム47(図6中にて太線にて示す。)が、本体の外周面に貼付される。これにより、カップ部41Aの外周面411bの全体が導電性樹脂フィルム47の表面となる。導電性樹脂フィルム47には、接地部61が直接接続されて導電性樹脂フィルム47が電気的に接地される。なお、導電性樹脂フィルム47は接着以外に、ネジ止め等により固定されてもよく、さらに、コーティングにより導電性樹脂フィルムがカップ部41Aの本体の外周面に形成されてもよい。
また、基板処理装置1にて基板9を処理する際には、図2のステップS10の処理が省略され、ステップS14の基板9の純水による後洗浄時にもチャック21がカップ部41A内に収容されたままとされる(すなわち、カップ部41Aの外周面411bに純水は付与されない。)。
以上のように、図6の基板処理装置1では、本体の外周面に導電性樹脂フィルム47を貼付するのみでカップ部41Aの全周に本体よりも比抵抗が小さい部材を容易に設けることができる。これにより、周壁部411の電荷容量が大きくなり、外周面411bに純水を付与する動作を行うことなく、純水が飛散する際に生じるカップ部41Aの帯電電位を周壁部411の全周にて抑制することができ、基板9上における放電の発生を防止することが実現される。また、図6の基板処理装置1では導電性樹脂フィルム47が電気的に接地されることにより、カップ部41Aの帯電電位をさらに抑制することが可能となる。
図7は、基板処理装置1のさらに他の例を示す図であり、図8は、図7中の矢印A−Aの位置におけるカップ部41Aの断面図である。図7および図8に示すように、カップ部41Aの周壁部411は、導電性樹脂や導電性カーボン(例えば、ガラス状カーボン)等により形成される複数の(図8の例では、4個の)導電部材47aを有し、導電部材47aは絶縁材料にて形成されるカップ部41Aの本体(図7のカップ部41Aでは、周壁部411において導電部材47aを除く部位)よりも比抵抗が小さくされる。複数の導電部材47aはカップ部41Aの周方向に等間隔にて配置される(すなわち、中心軸J1を中心とする円周上において等角度間隔にて配置される。)。実際には、複数の導電部材47aは、カップ部41Aの外周面411b上に形成されるとともに、中心軸J1に沿って伸びる複数の凹部にそれぞれ嵌め込まれ、導電部材47aの中心軸J1とは反対側の表面が、周壁部411の外周面411bに含まれる。また、各導電部材47aは、接地部61により接地される。このように、外周面411bがカップ部41Aの本体よりも比抵抗が小さい導電部材47aの表面を部分的に含む場合であっても、周壁部411の電荷容量が大きくなり、純水が飛散する際に生じるカップ部41Aの帯電電位が抑制される。
以上のように、図6および図7のカップ部41Aでは、外周面411bが本体よりも比抵抗が小さい部材の表面を含むことにより、純水が飛散する際に生じるカップ部41Aの帯電電位を抑制することができ、これにより、基板9の誘導帯電により基板9上にて放電が生じてしまうことを防止することができる。また、図6および図7のカップ部41Aは、カップ部の全体を特殊な導電材料にて形成する場合に比べて、低コストにて製造することができる。
次に、基板処理装置1においてカップ部の帯電電位を抑制するさらに他の手法について説明する。図9は、本発明の一の実施の形態に係る基板処理装置1を示す図であり、図10は、図9中の矢印B−Bの位置におけるカップ部41Bの断面図である。図9および図10に示すように、カップ部41Bの周壁部411には、中心軸J1を中心とする深い環状溝415が形成されており、環状溝415には、二酸化炭素等が溶け込んだ水や、メタノール(CH3OH)に塩化アンモニウム(NH4Cl)を溶解させたもの等、導電性を有する液体(後述するように、周壁部411の内部に封入される液体であり、以下、「封入液」という。)47bが注入される。図9に示すように、環状溝415の傾斜部412側の開口は環状の蓋部材416により閉塞されることにより、周壁部411の内部にて封入液47bが保持(封入)される。また、周壁部411において環状溝415の外側の一部は電極部417として、導電性樹脂等の導電材料にて形成されており、電極部417が接地部61に接続されることにより、封入液47bが実質的に接地される。
このように、図9および図10に示すカップ部41Bでは、基板保持部2の周囲を囲んで基板9から飛散する処理液を受け止める周壁部411が、カップ部41Bの本体(図9のカップ部41Bでは、周壁部411において封入液47bを除く部位)を形成する材料よりも比抵抗が小さい部位を内部に全周に亘って有している。これにより、周壁部411の電荷容量が大きくなり、純水が飛散する際に生じるカップ部41Bの帯電電位を周壁部411の全周にて抑制することができ、基板9上における放電の発生を防止することが可能となる。また、封入液47bが電気的に接地されることにより、カップ部41Bの帯電電位をさらに抑制することが可能となる。なお、基板9の処理には、通常、純水が用いられるため、封入液として二酸化炭素が溶け込んだ水を用いる場合には封入液を容易に準備することができる。
図11は、カップ部41Bの他の例を示す図であり、図10に対応するカップ部41Bの断面図である。図11のカップ部41Bでは、中心軸J1に垂直な断面形状が円形となる複数の深い孔415a(実際には、図9の環状溝415とほぼ同じ深さとなる4個の孔415a)が周壁部411の周方向に等間隔にて形成されており、各孔415aには、導電性樹脂または導電性カーボン(例えば、ガラス状カーボン)等により形成される円柱状の導電部材47cが挿入される。また、周壁部411において各導電部材47cの外側に形成される微小な孔を介して導電部材47cが接地部61(図示省略)に接続される。このように、周壁部411の内部において、カップ部41Bが本体を形成する材料よりも比抵抗が小さい部位を周壁部411の周方向に関して部分的に有する場合であっても、飛散する純水によるカップ部41Bの帯電電位が抑制される。
以上のように、図10および図11のカップ部41Bでは、周壁部411が内部にカップ部41Bの本体を形成する材料よりも比抵抗が小さい部位を有することにより、純水が飛散する際に生じるカップ部41Bの帯電電位を抑制することができ、これにより、基板9の誘導帯電により基板9上にて放電が生じてしまうことを防止することができる。また、図10および図11のカップ部41Bは、カップ部の全体を特殊な導電材料にて形成する場合に比べて、低コストにて製造することができる。なお、図10の環状溝415に導電性樹脂または導電性カーボン等により形成される環状の導電部材が挿入されてもよく、図11の孔415aに封入液が封入されてもよい。さらに、周壁部411が導電部材の部位と封入液の部位とを周方向の位置を互いにずらしつつ内部に有していてもよい。
次に、基板処理装置1においてカップ部の帯電電位を抑制するさらに他の手法について説明する。図12は、他の関連技術に係る基板処理装置1を示す図である。図12の基板処理装置1では、カップ部41Cの周壁部411の周囲に、その内周面が周壁部411の外周面411bに倣うとともに外周面411bとの間にて小さい間隙(例えば、1ミリメートル(mm)〜10センチメートル(cm)の幅の間隙)を形成する略円筒状の円筒部材81(図12中にて断面の平行斜線の図示を省略している。後述の図23の円筒部材81aにおいて同様。)が設けられる。円筒部材81は、ステンレス鋼等の金属にて形成され、表面はテフロン(登録商標)等のフッ素樹脂にてコーティングされる。また、円筒部材81は接地部61により接地される。
図12の基板処理装置1では、導電性の円筒部材81がカップ部41Cの外周面411bに近接して設けられることにより、周壁部411の電荷容量が実質的に大きくなる。これにより、カップ部の全体を特殊な導電材料にて形成して基板処理装置1の製造コストを大幅に増大させることなく、純水が飛散する際に生じるカップ部41Cの帯電電位を抑制することができ、その結果、基板9の誘導帯電により基板9上にて放電が生じてしまうことを防止することができる。また、円筒部材81が接地されることにより、カップ部41Cの帯電電位をさらに抑制することができる。
ところで、基板処理装置1における基板9の処理では、半導体製品の製造における一定の歩留まりを確保するため、基板9上への金属不純物の付着を防止することが要求されている。したがって、カップ部における金属の溶出を避けるため、通常の設計のカップ部では内部や表面に金属を用いることはできない。これに対し、図12の基板処理装置1では、円筒部材81がカップ部41Cから離れて設けられるため、金属を用いて安価に形成することが可能となる。なお、上記の円筒部材81は、フッ素樹脂にてコーティングされることにより、腐食することが防止されている。もちろん、円筒部材81は、導電性樹脂や導電性カーボンにより形成されてもよい。
図13は、本発明の第2の関連技術に係る基板処理装置1aの構成を示す図である。図13の基板処理装置1aでは、同心状の複数のカップ部42〜45が設けられるとともに、処理液供給部3aが複数種類の薬液が吐出可能とされる。また、基板処理装置1aの昇降機構5はモータ51およびボールネジ機構52を有し、昇降機構5によりカップ部42〜45が基板保持部2に対して中心軸J1に沿う方向に一体的に移動可能とされる。なお、基板保持部2の構成は図1の基板処理装置1と同様であり、図13の基板処理装置1aでは制御部の図示が省略されている(後述の図20の基板処理装置1bにおいて同様)。
各カップ部42〜45では、周壁部421,431,441,451と底部423,433,443,453とが分離して設けられており、複数の底部423,433,443,453は一体的に形成される。詳細には、絶縁材料にて形成される複数の底部423,433,443,453は中心軸J1を中心とする環状とされ、複数の底部423,433,443,453の下面(処理液供給部3aとは反対側の面)には、接地された導電板490が設けられる。底部423と底部433との境界、底部433と底部443との境界、および、底部443と底部453との境界、並びに、底部453の外側の境界のそれぞれには、処理液供給部3a側(上方)に向かって突出するとともに中心軸J1を中心とする円筒状の仕切部491,492,493,494が設けられる。周壁部421,431,441,451のそれぞれの下部は、仕切部491,492,493,494を跨ぐようにして内側円筒部4211,4311,4411,4511および外側円筒部4212,4312,4412,4512(図13の左側の符号を参照)に分かれている。また、周壁部421,431,441,451の上部は、処理液供給部3a側へと向かうに従って直径が小さくなる傾斜部422,432,442,452となっており、内側に配置されるカップ部42〜45ほどその傾斜部422,432,442,452が処理液供給部3aから離れた位置に(すなわち、下方に)配置される。
各周壁部421,431,441,451は絶縁材料にて形成され、内周面421a,431a,441a,451aおよび外周面421b,431b,441b,451b(図13の左側の符号を参照)のそれぞれには同様の親水化処理が施される。なお、以下の説明では、周壁部421,431,441,451の下部において、内側円筒部4211,4311,4411,4511の内側面が内周面421a,431a,441a,451aの一部であるとみなし、外側円筒部4212,4312,4412,4512の外側面が外周面421b,431b,441b,451bの一部であるとみなす。
昇降機構5は、カップ部42〜45と同様の絶縁材料にて形成される支持部材53を有し、端部が外側のカップ部45(以下、「最外カップ部45」とも呼ぶ。)の周壁部451に接続される。また、複数のカップ部42〜45の周壁部421,431,441,451は部分的に互いに接続しており、モータ51が駆動されることにより、支持部材53を介して複数の周壁部421,431,441,451が基板保持部2に対して中心軸J1に沿う方向に一体的に昇降する。支持部材53には、ボールネジ機構52を介して接地される導電シート531が設けられ、支持部材53の表面にもカップ部42〜45と同様の親水化処理が施される。
処理液供給部3aは、4個のバルブ331〜334を有し、純水用バルブ331を開放することにより吐出部32から純水が吐出され、第1薬液用バルブ332を開放することにより吐出部32から第1薬液が吐出され、第2薬液用バルブ333を開放することにより吐出部32から第2薬液が吐出され、第3薬液用バルブ334を開放することにより吐出部32から第3薬液が吐出される。なお、第1ないし第3薬液は導電性を有するとともに、水を含む液体とされる。
図14は、基板処理装置1aが処理液を基板に供給して基板を処理する動作の流れの一部を示す図であり、図2のステップS13にて行われる処理を示している。最初に、基板処理装置1aにおける基本的な動作について図2のステップS11ないしステップS16、並びに、図14を参照して説明する。
図13の基板処理装置1aにおける基本的な動作では、まず、基板9がチャック21上に載置されて基板保持部2にて保持され(図2:ステップS11)、続いて、昇降機構5によりカップ部42〜45が上昇して、図15に示すように、基板9が内側の周壁部421の傾斜部422と内側円筒部4211との間の位置(以下、「前洗浄位置」という。)に配置される。そして、基板9の回転が開始されるとともに、処理液供給部3aから純水が基板9上に供給され(図1参照)、純水にて基板9の前洗浄が行われる(ステップS12)。このとき、回転する基板9から飛散する純水は、カップ部42の周壁部421の内周面421aにて受け止められる。なお、余剰な純水は底部423に設けられる排出口から排出される。
純水の供給開始時刻から所定時間経過すると、処理液供給部3aにおいて純水の吐出が停止され、その後、カップ部42〜45が下降して、図16に示すように、基板9が内側から2番目の周壁部431の傾斜部432と、内側の周壁部421の傾斜部422との間の位置に配置される。なお、基板処理装置1aでは、基板9が昇降する間も基板9の回転は維持されるが、もちろん、一旦、停止されてもよい。
そして、処理液供給部3aによる第1薬液の吐出が開始され、基板9に対して第1薬液を用いた処理が施される(図14:ステップS131)。このとき、回転する基板9から飛散する第1薬液の大部分は、カップ部43の周壁部431の内周面431aにて受け止められ、内周面431aから滴下する第1薬液や、基板9から飛散する第1薬液の一部は内側の周壁部421の外周面421bにも付着する。なお、余剰な第1薬液は底部433に設けられる回収口から回収され、再利用される(後述の第2および第3薬液において同様)。
第1薬液の吐出開始から所定時間経過後、処理液供給部3aからの第1薬液の吐出が停止され、昇降機構5により、カップ部42〜45が上昇して基板9が図15に示す前洗浄位置に戻される。続いて、基板9上への純水の供給が開始され、純水にて基板9上の第1薬液が除去される(ステップS132)。吐出部32からの純水の吐出は所定時間だけ継続された後、停止され、昇降機構5により基板9が周壁部441の傾斜部442と周壁部431の傾斜部432との間に配置される。そして、第2薬液の吐出が開始され、基板9に対して第2薬液を用いた処理が施される(ステップS133)。このとき、回転する基板9から飛散する第2薬液の大部分は、カップ部44の周壁部441の内周面441aにて受け止められる(図13参照)。また、内周面441aから滴下する第2薬液や、基板9から飛散する第2薬液の一部は内側の周壁部431の外周面431bにも付着する。
第2薬液の吐出開始から所定時間経過後、処理液供給部3aからの第2薬液の吐出が停止される。基板9は前洗浄位置に戻され、基板9上への純水の供給が所定時間だけ行われることにより、純水にて基板9上の第2薬液が除去される(ステップS134)。その後、純水の供給が停止され、基板9が周壁部451の傾斜部452と周壁部441の傾斜部442との間に配置される。そして、第3薬液の吐出が開始され、基板9に対して第3薬液を用いた処理が施される(ステップS135)。このとき、回転する基板9から飛散する第3薬液の大部分は、最外カップ部45の周壁部451の内周面451aにて受け止められる。また、内周面451aから滴下する第3薬液や、基板9から飛散する第3薬液の一部は周壁部441の外周面441bにも付着する。
第3薬液の吐出開始から所定時間経過後、処理液供給部3aからの第3薬液の吐出が停止され、カップ部42〜45が下降することにより、図17に示すように、周壁部451の上端部が基板9の下方に配置される。そして、吐出部32から基板9上に純水が吐出され、純水にて基板9の後洗浄が行われる(図2:ステップS14)。このとき、回転する基板9から飛散する純水が周壁部451の傾斜部452における外周面451bに付与される。そして、基板9の後洗浄が完了すると、基板9がアンロードされ(ステップS15)、次の処理対象の基板9が基板処理装置1aにロードされる(ステップS16,S11)。
基板処理装置1aにおける実際の処理では、事前準備として、まず、ダミー基板がロードされて上記ステップS12〜S14と同様の動作が行われ、カップ部42〜45の内周面および外周面に水を含む液体が保持される(ステップS10)。具体的には、ステップS12(並びに、ステップS132,S134)に相当する処理では、回転するダミー基板から飛散する純水が周壁部421の内周面421aにて受け止められ、カップ部42の内周面421aに水の層(図15および図17中にて符号72aを付す太線にて示す。)が形成され、ステップS131に相当する処理では、回転するダミー基板から飛散する第1薬液が周壁部431の内周面431aにて受け止められるとともに周壁部421の外周面421bにも付着し、カップ部43の内周面431aおよびカップ部42の外周面421bのそれぞれに第1薬液の層(図16および図17中にて符号73a,72bを付す太線にて示す。)が形成される。また、ステップS133に相当する処理では、回転するダミー基板から飛散する第2薬液が周壁部441の内周面441aにて受け止められるとともに周壁部431の外周面431bにも付着し、カップ部44の内周面441aおよびカップ部43の外周面431bのそれぞれに第2薬液の層(図17中にて符号74a,73bを付す太線にて示す。)が形成され、ステップS135に相当する処理では、回転するダミー基板から飛散する第3薬液が周壁部451の内周面451aにて受け止められるとともに周壁部441の外周面441bにも付着し、最外カップ部45の内周面451aおよびカップ部44の外周面441bのそれぞれに第3薬液の層(図17中にて符号75a,74bを付す太線にて示す。)が形成される。そして、ステップS14に相当する処理では、回転するダミー基板から飛散する純水が周壁部451の外周面451bにて受け止められ、最外カップ部45の外周面451bにも導電性が生じた水の層(図17中にて符号75bを付す太線にて示す。)が形成される。その結果、各カップ部42〜45の内周面421a,431a,441a,451aおよび外周面421b,431b,441b,451bが、水、第1薬液、第2薬液または第3薬液の層72a,73a,74a,75a,72b,73b,74b,75bを周壁部421,431,441,451よりも比抵抗が小さい表面層として有することとなる。
実際には、最外カップ部45の外周面451bに純水を付与する際に、図13の支持部材53の表面にも純水が付着するため、外周面451bの水の層75bは、支持部材53の表面の水の層、導電シート531、および、ボールネジ機構52を介して実質的に電気的に接地される。すなわち、支持部材53の表面の水の層、導電シート531、および、ボールネジ機構52が水の層75bを接地させる接地部となっている。なお、導電シート531は外周面451bの水の層75bに直接接続するように設けられてもよい。
そして、ダミー基板がアンロードされた後、実際の処理対象の基板9に対して基板処理装置1aの基本動作に係る上記ステップS11〜S16が行われる。このとき、図17中の内側のカップ部42の内周面421aに形成される導電性が生じた表面層により、ステップS12,S132,S134にて回転する基板9から飛散する純水により、カップ部42の内周面421aにて摩擦帯電が生じることが抑制され、さらに、カップ部42の外周面421b並びにその外側のカップ部43〜45の内周面および外周面に形成される表面層により、基板9の誘導帯電が確実に抑制される。また、最外カップ部45の外周面451bに形成される表面層により、ステップS14にて回転する基板9から飛散する純水により最外カップ部45の外周面451bにて摩擦帯電が生じることが抑制され、加えて、最外カップ部45およびその内側のカップ部42〜44に形成される表面層により、基板9の誘導帯電が確実に抑制される。さらに、仮に、図13のカップ部42〜45の底部423,433,443,453が帯電した場合であっても、導電板490により底部423,433,443,453の帯電電位が低減され、基板9の誘導帯電が抑制される。
また、実際の処理対象の基板9に対するステップS12,S131〜S135,S14においても、カップ部42〜45の内周面421a,431a,441a,451aおよび外周面421b,431b,441b,451bのそれぞれに純水、第1薬液、第2薬液または第3薬液が付与されることにより、当該基板9の次の基板9を処理する際において、カップ部42〜45の内周面421a,431a,441a,451aおよび外周面421b,431b,441b,451bのそれぞれが導電性を有する水、第1薬液、第2薬液または第3薬液を保持した状態が確実に維持される。
ここで、図13の基板処理装置1aと同様の構造であって、複数のカップ部の内周面および外周面のいずれにも親水化処理が施されていない比較例の基板処理装置における基板の放電現象の一例について述べる。比較例の基板処理装置では、基板が前洗浄位置に配置された状態で基板上に純水が供給されることにより、最も内側のカップ部に純水が飛散し、純水が流れ落ちた後に当該カップ部が帯電した状態となる。そして、この帯電に起因して基板の本体が誘導帯電してしまう。このとき、仮に、基板上に純水が残存した状態が維持されると、既述のように二酸化炭素等が溶け込んで純水が導電性を有する水となることにより、基板上にて放電が生じる場合がある。また、基板上に導電性が生じた水が残存した状態でカップ部が昇降すると、帯電したカップ部との相対的な位置が変化することにより基板の本体の電位が変化するため、カップ部の昇降の際に基板上にて放電が生じてしまう(すなわち、基板上の絶縁膜の絶縁破壊が発生する)こともある。
これに対し、図13の基板処理装置1aでは、各カップ部42〜45の内周面421a,431a,441a,451aおよび外周面421b,431b,441b,451bにて水、第1薬液、第2薬液または第3薬液が保持された状態で基板9に対する処理が行われることにより、飛散する純水によるカップ部の帯電電位を、当該カップ部および他のカップ部に形成される水を含む液体の層により確実に抑制することができる。その結果、基板9への処理液の供給時や、カップ部42〜45の昇降時等に、カップ部の帯電により基板9上にて放電が生じてしまうことを防止することができる。なお、基板処理装置1aの設計によっては、内側のカップ部42〜44も、実質的に電気的に接地されてもよい(後述の図18および図19の基板処理装置1aにおいて同様)。
図18は、基板処理装置1aの他の例を示す図である。図18の基板処理装置1aでは、図6のカップ部41Aと同様に、各周壁部421,431,441,451の本体の内周面および外周面に導電性樹脂フィルム47が貼付され、カップ部42A〜45Aの内周面421a,431a,441a,451aおよび外周面421b,431b,441b,451bのそれぞれが導電性樹脂フィルム47の表面とされる。なお、図18の基板処理装置1aでは、図13の最外カップ部45の周壁部451の外側円筒部4512が省略されているため、外周面451bは、内側円筒部4511の外周面に相当する部位を含んでいる。また、最外カップ部45Aの外周面451bは接地部61に直接接続される。複数のカップ部42A〜45Aの配置、および、装置の他の構成は、図13の基板処理装置1aと同様であり、同符号を付している。
図18の基板処理装置1aにて基板9を処理する際には、図2のステップS10の処理が省略され、ステップS14の基板9の純水による後洗浄時にもチャック21がカップ部42A〜45A内に収容されたままとされる(すなわち、最外カップ部45Aの外周面451bに純水は付与されない。)(後述の図19の基板処理装置1a、並びに、図21ないし図23の基板処理装置1bにおいて同様。)。
以上のように、図18の基板処理装置1aでは、各カップ部42A〜45Aの内周面421a,431a,441a,451aおよび外周面421b,431b,441b,451bが、周壁部421,431,441,451の本体よりも比抵抗が小さい部材の表面とされることにより、飛散する純水によるカップ部の帯電電位を確実に抑制することができ、その結果、基板9への処理液の供給時等に、カップ部の帯電により基板9上にて放電が生じてしまうことを防止することができる。なお、図7のカップ部41Aと同様に、カップ部42A〜45Aの内周面および外周面が、周方向に等間隔に配列される導電部材の表面を部分的に含んでいてもよい。
図19は、本発明の他の実施の形態に係る基板処理装置1aを示す図である。図19の基板処理装置1aの各カップ部42B〜45Bでは、図11のカップ部41Bと同様に、各周壁部421,431,441,451の内部に棒状の複数の導電部材(図19中にて符号47cを付して太線にて示す。)が設けられる。実際には、複数の導電部材47cは、周壁部421,431,441,451の周方向に等間隔にて配置される(図11参照)。また、カップ部42B〜45Bの内周面421a,431a,441a,451aおよび外周面421b,431b,441b,451bは、絶縁材料の表面のままとされ、撥水性を有する(後述の図22および図23の基板処理装置1bにおいて同様)。複数のカップ部42B〜45Bの配置、および、装置の他の構成は、図13の基板処理装置1aと同様であり、同符号を付している。
図19の基板処理装置1aでは、同様の構造とされる複数のカップ部42B〜45Bのそれぞれにおいて、周壁部421,431,441,451が、その本体(図19のカップ部42B〜45Bでは、周壁部421,431,441,451において導電部材47cを除く部位)を形成する材料よりも比抵抗が小さい部位を内部に有している。これにより、飛散する純水によるカップ部の帯電電位を確実に抑制することができ、基板9上における放電の発生を防止することが可能となる。なお、周壁部421,431,441,451の全周に亘って内部に導電部材や封入液が設けられてもよい(後述の図22の周壁部451において同様)。
図20は、本発明の第3の関連技術に係る複数のカップ部42〜45を有する基板処理装置1bを示す図である。図20の基板処理装置1bでは、図13の基板処理装置1aにおける外側のカップ部45(すなわち、最外カップ部45)の周壁部451の外側円筒部4512が省略される。また、最外カップ部45の外周面451b(ただし、図13の最外カップ部45の内側円筒部4511の外周面に相当する部位を含む。)のみに親水化処理が施され、最外カップ部45の内周面451a、並びに、他のカップ部42〜44の内周面421a,431a,441aおよび外周面421b,431b,441bは、絶縁材料の表面のままとされ、撥水性を有する。また、最外カップ部45の下端部には、最外カップ部45とは反対側に環状に広がるとともに先端が上方へと屈曲する補助排水部454が設けられ、導電材料にて形成される補助排水部454は最外カップ部45から離れた位置にて接地部61により接地される。内側のカップ部42〜44の形状、および、基板処理装置1bの他の構成は図13の基板処理装置1aと同様である。
基板処理装置1bにおける基本的な動作は、図13の基板処理装置1aと同様であるが、ダミー基板を用いて行う事前準備での処理が異なっている。具体的には、ダミー基板を用いた処理では(図2:ステップS10)、カップ部42〜45が昇降機構5により基板保持部2に対して中心軸J1に沿う方向に一体的に移動することにより、最外カップ部45の周壁部451の上端部がダミー基板の下方に配置される。続いて、純水の吐出が開始され(図17参照)、回転するダミー基板から飛散する純水にて最外カップ部45の外周面451bに水の層(図20中にて符号75bを付す太線にて示す。)が形成され、ダミー基板を用いてカップ部に液体を保持させる処理が完了する。そして、実際の処理対象の基板9に対して、図13の基板処理装置1aと同様に、基本動作に係る上記ステップS11〜S16が行われる。
このとき、ステップS12,S132,S134にて回転する基板9から飛散する純水によりカップ部42の内周面421aにて摩擦帯電が生じるが、最外カップ部45の外周面451bの全体に形成される導電性を有する水の層75bにより内側のカップ部42の帯電電位をある程度抑制することができ、これにより、基板9上にて放電が生じてしまうことを防止することができる。
以上のように、図1、図4および図20の基板処理装置1,1bでは、カップ部の外周面のみにて水を含む液体が保持され、図5の基板処理装置1では、カップ部の内周面のみにて水を含む液体が保持され、図13の基板処理装置1aでは、カップ部の内周面および外周面にて水を含む液体が保持されることにより、純水の飛散により帯電するカップ部の帯電電位が抑制される。したがって、カップ部の帯電電位を抑制するという観点では、カップ部の内周面および外周面の少なくとも一方の面に水を含む液体が保持されることが必要となる。
ところで、基板処理装置の設計や、基板処理装置において用いられる薬液の種類によっては、図1の基板処理装置1および図20の基板処理装置1bのように、1つのカップ部41の外周面411b、または、同心状の複数のカップ部42〜45のうちの最外カップ部45の外周面451b、すなわち、薬液を用いた基板処理の際に基板9から飛散する薬液が付着しない面のみに水の層71,75bを形成することが、プロセスに影響を与えないという観点で好ましい場合もある。したがって、プロセスに影響を与えることなくカップ部41〜45の帯電電位を容易に抑制するには、少なくとも1つのカップ部のうち最も外側に位置する最外カップ部41,45の外周面411b,451bにおいて水を含む液体が保持されることが好ましい。
図21は、基板処理装置1bの他の例を示す図である。図21の基板処理装置1bは、図18のカップ部42A〜45Aにおいて、最外カップ部45Aの周壁部451の外周面451bのみを導電性樹脂フィルム47の表面としたものとなっており、最外カップ部45Aの内周面451a、並びに、他のカップ部42A〜44Aの内周面421a,431a,441aおよび外周面421b,431b,441bは、絶縁材料の表面のままとされ、撥水性を有する。図21の基板処理装置1bにおいても、基板9から飛散する純水により、周壁部421の全体が絶縁材料にて形成されるカップ部42Aの内周面421aにて摩擦帯電が生じるが、最外カップ部45Aにより内側のカップ部42Aの帯電電位をある程度抑制することができ、これにより、基板9上にて放電が生じてしまうことを防止することができる。
また、図6および図21の基板処理装置1,1bでは、カップ部(最外カップ部)の外周面のみがカップ部の本体よりも比抵抗が小さい部材の表面を含み、図18の基板処理装置1aでは、カップ部の内周面および外周面がカップ部の本体よりも比抵抗が小さい部材の表面を含むが、基板処理装置では、カップ部の内周面のみが本体よりも比抵抗が小さい部材の表面を含むことによりカップ部の帯電電位を抑制することも可能である。すなわち、純水の飛散により帯電するカップ部の帯電電位を抑制するには、カップ部の内周面および外周面の少なくとも一方の面がカップ部の本体よりも比抵抗が小さい部材の表面を含むことが必要となる。
図22は、本発明の他の実施の形態に係る基板処理装置1bを示す図である。図22の基板処理装置1bは、図19の基板処理装置1aと比較して、棒状の複数の導電部材47c(図22中にて太線にて示す。)が最外カップ部45Bのみに設けられる点で相違しており、他の構成は同様である。図22の基板処理装置1bでは、基板9から飛散する純水により生じる内側のカップ部42Bの帯電電位が、最外カップ部45Bによりある程度抑制することができ、これにより、基板9上にて放電が生じてしまうことを防止することができる。
図23は、他の関連技術に係る基板処理装置1bを示す図である。図23の基板処理装置1bでは、図12の基板処理装置1と同様に、最外カップ部45Cの周壁部451の周囲に、外周面451bに倣うとともに外周面451bとの間にて間隙を形成する略円筒状の円筒部材81aが設けられる。また、円筒部材81aは接地部61に接続されて接地される。複数のカップ部42C〜45Cを有する基板処理装置1bにおいても、図12の基板処理装置1と同様に、導電性の円筒部材81aが最外カップ部45Cの外周面451bに近接して設けられることにより、基板9から飛散する純水により生じる内側のカップ部42Cの帯電電位がある程度抑制され、基板9上にて放電が生じてしまうことが防止される。
以上のように、基板処理装置では、少なくとも1つのカップ部のうち最も外側に位置する最外カップ部41C,45Cの外周面411b,451bに、最外カップ部41C,45Cよりも比抵抗が小さい円筒部材が近接して設けられることにより、カップ部の構造を変えることなくカップ部の帯電電位を抑制することが可能となる。
以上、本発明に係る実施の形態について説明してきたが、上記実施の形態は様々な変形が可能である。
既述のように、基板処理装置では、カップ部の内周面および外周面の少なくとも一方の面に水を含む液体が保持される、または、カップ部の内周面および外周面の少なくとも一方の面がカップ部の本体よりも比抵抗が小さい部材の表面を含むことにより、カップ部の帯電電位を抑制することが可能となるが、内周面を撥水性として一定の排水性能を確保する必要がある場合には、図1のカップ部41、図4のカップ部41、図6のカップ部41A、図20の最外カップ部45および図21の最外カップ部45Aのように、外周面のみに水を含む液体が保持される、または、外周面のみに本体よりも比抵抗が小さい部材の表面が含まれることが好ましい。その一方で、基板9から飛散する純水は、通常、カップ部の内周面との間にて摩擦帯電を生じさせるため、少なくとも内周面にて水を含む液体が保持される、または、少なくとも内周面にて比抵抗が小さい部材の表面が含まれることにより、カップ部の帯電量を少なくしてカップ部の帯電電位をさらに抑制することが可能となる。
図1、図4、図5、図13および図20の基板処理装置1,1a,1bでは、処理液供給部3,3aから吐出される処理液によりカップ部の内周面または外周面に水を含む液体の層が形成されるが、例えば、図24に示すカップ部41のように、周壁部411の上端部の周囲に環状の供給管481が液体付与部として設けられ、供給管481に形成される複数の孔部482から周壁部411の外周面411bに水を含むとともに導電性を有する液体が付与されてもよい。なお、図24のカップ部41では、周壁部411の周囲に、外周面411bに倣うとともに外周面411bとの間にて微小な間隙を形成する略円筒状の補助部材483(図24中にて断面の平行斜線の図示を省略している。)が設けられ、周壁部411の外周面411bと補助部材483との間にて供給管481から付与される液体の保持が可能となっている。また、図24のカップ部41のように、連続的に液体を供給する液体付与部が設けられる場合には、例えば、カップ部の外周面に複数の溝を形成することのみにより、外周面にて純水等が実質的に保持されて導電性が生じた表面層が形成されてもよい。
図4のカップ部41における繊維材料46またはメッシュ部材を用いる手法は、複数のカップ部42〜45を有する図13または図20の基板処理装置1a,1bにて採用されてもよい。
既述のように、基板処理装置における基板9の処理では基板9上への金属不純物の付着を防止することが要求されているため、通常、カップ部の内部や表面に金属を用いることはできないが、カップ部の設計や処理対象の基板の種類等によっては、図9の封入液47bに代えて、溶出しにくい金属(例えば、金や白金等)にて形成される環状部材を環状溝415内に設けたり、図11、図19および図22の導電部材47cを当該金属にて形成してもよい。なお、カップ部における金属の溶出を確実に防止するには、導電部材は非金属の材料にて形成されることが好ましい。
図8のカップ部41Aでは、4個の導電部材47aが周壁部411の周方向に等間隔にて配置されるが、カップ部41Aのほぼ全周にて帯電電位を抑制するという観点では、その表面が周壁部411の内周面411aまたは外周面411bに含まれるとともに、カップ部41Aの本体よりも比抵抗が小さい部材が、カップ部41Aの周方向に等間隔にて配置される3以上の要素部材の集合として設けられることが重要となる。図11のカップ部41Bにおいても同様に、4個の導電部材47cが周壁部411の周方向に等間隔にて配置されるが、カップ部41Bのほぼ全周にて帯電電位を抑制するには、周壁部411の内部に設けられるとともに、カップ部41Bの本体よりも比抵抗が小さい部位が、周壁部411の周方向に等間隔にて配置される3以上の要素部位の集合として設けられることが重要となる。
上記第1ないし第3の関連技術では、処理液供給部3,3aから純水および薬液が基板9上に供給されるが、純水のみを供給する装置であっても、既述のように、基板上に水が残存した状態で基板上にて放電が生じる場合もある。したがって、基板処理装置が、少なくとも純水を処理液として基板上に供給する処理液供給部を有する場合に、カップ部の帯電電位を抑制して基板上における放電の発生を防止する上記手法が用いられることが重要となる。
図1、図4、図13および図20の基板処理装置1,1a,1bでは、基板9の法線方向が上下方向を向くように基板9が保持され、カップ部の上端部が基板9よりも下方に配置された状態で基板9を純水にて洗浄することにより、基板9の処理途上にて最も外側のカップ部(1つのカップ部のみが設けられる場合には当該カップ部)の外周面に効率よく純水を付与して、水の層が容易に形成されるが、最も外側のカップ部の外周面に純水を付与する必要がない場合には、基板9の法線方向は必ずしも上下方向を向く必要はない。また、最も外側のカップ部の外周面への純水の付与は、必ずしも全ての基板9の処理時に行われる必要はなく、所定枚数置きの基板9の処理時にのみ行われてもよい。
基板処理装置1,1a,1bでは、基板保持部2により回転する基板9から飛散する処理液がカップ部にて受け止められるが、例えば、基板保持部にて回転機構が省略され、基板保持部に保持される基板9上に純水が供給された後、別途設けられるエアナイフにより基板9上から飛散する純水がカップ部にて受け止められてもよい。この場合においても、飛散する純水によりカップ部が帯電するため、カップ部の帯電電位を抑制する上記手法が用いられることが必要となる。
上記実施の形態では、昇降機構5によりカップ部が基板9に対して昇降するが、カップ部が固定され、基板9を保持する基板保持部2が昇降してもよい。すなわち、カップ部は基板保持部2に対して相対的に昇降すればよい。
図6ないし図12、図18、図19、並びに、図21ないし図23のカップ部(の本体)は、必ずしも絶縁材料にて形成される必要はない。内周面および外周面の少なくとも一方の面が本体よりも比抵抗が小さい部材の表面を含むカップ部、および、内部に本体よりも比抵抗が小さい部位を有するカップ部は、本体が当該部材、または、当該部位よりも高い比抵抗(例えば、2MΩ・cm以上)を有する半導電材料にて形成されていてもよく、この場合も、当該部材または当該部位によりカップ部の帯電電位を抑制して基板9の誘導帯電を低減することが可能となる。同様に、円筒部材が最外カップ部の外周面に近接して設けられる1つのカップ部または複数のカップ部も、当該円筒部材よりも比抵抗が高い半導電材料にて形成されていてもよい。
基板処理装置における処理対象は、半導体基板以外に、例えばガラス基板等の基板であってもよい。