以下に、本発明を適用可能な実施の形態が説明される。以下の説明は、本発明の実施形態を説明するものであり、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。説明の明確化のため、以下の記載は、適宜、省略及び簡略化がなされている。又、当業者であれば、以下の実施形態の各要素を、本発明の範囲において容易に変更、追加、変換することが可能であろう。尚、各図において同一の符号を付されたものは同様の要素を示しており、適宜、説明が省略される。
発明の実施の形態1.
本実施の形態にかかる検査装置について図1を用いて説明する。ここでは試料であるフォトマスク30に付着した欠陥を検出する検査装置を例に挙げて説明する。11は透過照明光源、12は透過側フィルタ、13は駆動モータ、14はミラー、15は対物レンズ、16はステージ、21は落射照明光源、22は落射側フィルタ、23は駆動モータ、24はビームスプリッタ、25は対物レンズ、41はレンズ、42は検出器、50は処理装置である。また、試料であるフォトマスク30には、光を反射する遮光パターン31が設けられている。具体的には、透明なガラス基板の上にクロム膜等の遮光膜を成膜、パターニングすることにより、フォトマスク30上に遮光パターン31が形成される。従って、フォトマスク30のうち、遮光パターン31が設けられていない領域は光を透過する透過パターン32となる。すなわち、フォトマスク30は遮光パターン31と透過パターン32とを備えている。遮光パターン31は透過パターン32よりも高い反射率を有している。このフォトマスク30はステージ16上に載置されている。フォトマスク30は、遮光パターン31が形成されたパターン面が上になるようにステージ16上に載置されている。なお、ステージ16は透明ステージであり、入射した光を透過する。
透過照明光源11から出射された透過照明光をフォトマスク30に入射させるための透過照明用光学系について説明する。透過照明光源11は、例えば、ランプ光源であり、透過照明光を透過側フィルタ12の方向に出射する。透過照明光源11からの透過照明光は、透過側フィルタ12を通過して、ミラー14に入射する。ミラー14はフォトマスク30が載置されたステージ16の下方に配置されており、透過照明光源11からの透過照明光をフォトマスク30の方向に反射する。ミラー14で反射された透過照明光は、対物レンズ15に入射する。対物レンズ15により屈折された透過照明光はステージ16を介してフォトマスク30に入射する。また、対物レンズ15は透過照明光をフォトマスク30のパターン面上に集光する。
対物レンズ15によって集光されフォトマスク30に入射した透過照明光のうち、フォトマスク30を透過した透過光は、対物レンズ25で屈折され、ビームスプリッタ24に入射する。ビームスプリッタ24は、例えば、ハーフミラーであり、入射光のうち半分を透過し、半分を反射する。ビームスプリッタ24を透過した透過光は、レンズ41で屈折され、検出器42に入射する。検出器42は、2次元CCDカメラなどの撮像素子であり、フォトマスク30の光学像を撮像する。すなわち、レンズ41は、透過光を検出器42の受光面上に集光する。これにより、フォトマスク30の透過照明光が照射された領域の透過像を撮像することができる。検出器42は、検出した光の光量に基づく検出信号を処理装置50に出力する。処理装置50は、例えば、検出信号に基づいて欠陥判定を行なうためのアナログ回路と、欠陥判定した結果を、記憶、表示するためのパーソナルコンピュータとを含む。
次に、落射照明光源21から出射された落射照明光をフォトマスク30に入射させるための落射照明用光学系について説明する。落射照明光源21は、例えば、ランプ光源であり、落射照明光を落射側フィルタ22の方向に出射する。落射照明光源21からの落射照明光は、落射側フィルタ22を通過して、ビームスプリッタ24に入射する。ビームスプリッタ24はステージ16上に載置されたフォトマスク30の上方に配置されており、入射した落射照明光のうちの一部をフォトマスク30の方向に反射する。ビームスプリッタ24で反射された落射照明光は、対物レンズ25に入射する。対物レンズ25は落射照明光をフォトマスク30のパターン面上に集光する。
対物レンズ25によって集光されフォトマスク30に入射した落射照明光のうち、フォトマスク30で反射された反射光は、対物レンズ25で屈折され、ビームスプリッタ24に入射する。ビームスプリッタ24を透過した反射光は、レンズ41で屈折され、検出器42に入射する。レンズ41は、反射光を検出器42の受光面上に集光する。これにより、フォトマスク30の落射照明光が照射された領域の反射像を撮像することができる。
ここで、落射照明用光学系の対物レンズ25と透過照明用光学系の対物レンズ15とは、同一光軸上に配置されている。従って、対物レンズ15から出射された透過照明光と、対物レンズ25から出射された落射照明光とは、フォトマスク30の同じ位置に入射する。そして、対物レンズ15から出射された透過照明光のうち、フォトマスク30を透過した透過光と、対物レンズ25から出射された落射照明光のうち、フォトマスク30で反射された反射光とは、同一光軸上を同じ方向に伝播する。すなわち、透過照明光のうち、フォトマスク30を透過した透過光と、落射照明光のうち、フォトマスク30で反射された反射光とは、共通の光路を通って検出器42に入射する。従って、同時に落射照明光と透過照明光とを用いてフォトマスク30を照明して、検出器42により検出することにより、反射像と透過像とを重ね合わせた光学像を撮像することができる。
フォトマスク30が載置されているステージ16は、水平方向に移動可能に設けられたX−Yステージである。従って、ステージ16を水平方向に移動させることにより、フォトマスク30上における、落射照明光及び透過照明光の入射位置が相対的に変化する。よって、フォトマスク30上の照明領域を走査することができ、フォトマスク30の任意の箇所の検査を行うことができる。さらに、ステージ16を、例えば、ラスタ走査することにより、フォトマスク30の全面を検査することができる。
また、透過側フィルタ12及び落射側フィルタ22は、例えば、NDフィルタであり、入射した光を減衰させて、透過する。さらに、透過側フィルタ12及び落射側フィルタ22は、その回転角度に応じて光透過率が異なる。例えば、透過側フィルタ12及び落射側フィルタ22は、光透過率が異なる複数の領域に分割されており、入射位置に応じてステップ状に光透過率が変化する。従って、透過側フィルタ12を駆動モータ13によって回転させることにより、透過照明光の光量を調整することができる。すなわち、透過照明光が透過側フィルタ12のうち所望の光透過率を有する領域を通過するように、駆動モータ13の回転角度を調整する。また、落射側フィルタ22を駆動モータ23によって回転させることにより、落射照明光の光量を調整することができる。すなわち、落射照明光が落射側フィルタ22のうち所望の光透過率を有する領域を通過するように、駆動モータ23の回転角度を調整する。これにより、検出器42で検出される透過光の光量と、反射光の光量とが所望の割合になるように調整することができる。
本発明では、落射照明光源21からの落射照明光のうち遮光パターン31で反射された反射光が透過照明光源11からの透過照明光のうち透過パターン32を透過した透過光の光量の1.5倍以上となって検出器で検出されるように、光量を調整する。さらに、反射光の光量が透過光の光量の2倍以上とすることが好ましい。例えば、透過側フィルタ12及び落射側フィルタ22を回転させて、所望の光量になるように調整する。なお、透過側フィルタ12又は落射側フィルタ22のいずれか一方のみで光量を調整可能な場合は、一方のフィルタを設けなくてもよい。さらに、光量を調整する光量調整手段は、フィルタ及びフィルタを回転させるモータに限られるものではない。例えば、複数のフィルタを光路上に出し入れすることによって、光量を調整してもよい。さらに、落射照明光源21又は透過照明光源11の出力を変化させて光量を調整してもよい。
フォトマスク30の透過パターン32は、高い光透過率を有し、入射した光のほとんどを透過させる。また、透過パターン32は、入射した光の極わずかな一部を正反射させる。例えば、透過パターンは約92%の光透過率を有し、約4%の反射率を有している。フォトマスク30の遮光パターン31は、入射した光の略全てを遮光する。また、遮光パターン31によって遮光された光のうちの一部は、遮光パターン31の表面で正反射される。例えば、遮光パターン31の反射率は約10%であり、遮光パターン31の光透過率は理想的には略0%である。遮光パターン31での反射率は、透過パターン32での反射率よりも高くなる。従って、遮光パターン31の領域では、透過照明光の光量の変化が透過像と反射像との合成像の撮像に大きく影響し、落射照明光の光量の変化はほとんど影響しない。透過パターン32の領域では、落射照明光の光量及び透過照明光の光量の変化が合成像の撮像に影響する。また、透過パターン32の領域では、透過照明光の光量の変化よりも落射照明光の光量の変化の方が合成像の撮像に対して影響が大きい。
このように、照明光が遮光パターン31に入射するか透過パターンに入射するかによって、検出器42で検出される光量が変化する。さらに、遮光パターン31か透過パターンかによって、検出器42で検出される光量のうち、透過照明光と落射照明光との割合が変化する。ここで、落射照明光と反射照明光とによって照明されたフォトマスク30の像について図2を用いて説明する。図2(a)は、フォトマスク30の照明領域の構成を模式的に示す平面図である。なお、図2では、欠陥のない正常な箇所の像が示されている。図2(b)は反射像のプロファイルであり、図2(c)は透過像のプロファイルである。図2(d)は、反射像と透過像とを重ね合わせて合成した合成像のプロファイルである。なお、説明の明確化のため、図2(b)〜図2(d)のプロファイルにおいて、ノイズ等の影響を無視して説明する。
図2(a)に示すように照明された視野内の中央には遮光パターン31がY方向に沿って形成され、その両側に透過パターン32が形成されれている。ここで、ステージ16をX方向に走査した場合における、検出器42で検出される検出光量のプロファイルについて説明する。透過パターン32では、落射照明光源21からの落射照明光が高い透過率でフォトマスク30を透過するため、図2(b)に示すように検出器42によって検出される反射光の光量Irは低くなる。遮光パターン31では、落射照明光源21からの落射照明光は、一定の割合で反射されるため、検出器42によって検出される反射光の光量Irが高くなる。なお、図2(b)では、横軸にX方向の位置、縦軸に反射光のうち検出光で検出される光の光量Irを示している。また、図2(b)において、71はX方向の位置を変化させたときの、反射光のうち検出器42で検出される光量Irのプロファイルを示している。図2(b)のプロファイル71では、落射照明光の照明領域が透過パターン32から遮光パターン31に移動すると、遮光パターン31のパターンエッジから徐々に光量Irが立ち上がっていく。そして、遮光パターン31の中央近傍では、光量Irが略一定になる。さらに、落射照明光の照明領域が遮光パターン31から透過パターン32に移動すると、遮光パターン31のパターンエッジで、光量Irが徐々に立ち下がっていく。そして、透過パターン32の中央近傍では、光量Irが略一定になる。
図2(c)には、X方向の位置を変化させたときに、検出器42で検出される透過照明光の光量Itのプロファイル72が示されている。透過パターン32では、透過照明光が高い割合で透過するため、検出光の光量Itが高くなる。一方、遮光パターン31では、透過照明光のほとんどが遮光されるため、検出光の光量Itが低くなる。図2(c)のプロファイル72では、透過照明光の照明領域が透過パターン32から遮光パターン31に移動すると、遮光パターン31のパターンエッジから徐々に光量Itが立ち下がっていく。そして、遮光パターン31の中央近傍では、光量Itが略一定になる。さらに、透過照明光の照明領域が遮光パターン31から透過パターン32に移動すると、遮光パターン31のパターンエッジで、光量Itが徐々に立ち上がっていく。そして、透過パターン32の中央近傍では、光量Itが略一定になる。
図2(c)には、さらに、透過照明光源11からの透過照明光を透過側フィルタ12によって調整したときの、光量Itのプロファイル73が示されている。ここでプロファイル73は、透過光の光量Itが、反射光の光量Irの1/2倍となるように調整したときのものである。具体的には、駆動モータ13を駆動して、透過側フィルタ12の透過率が低い領域を光路上に配置する。これにより、光量を調整することができる。具体的には、透過照明光による透過像と、反射照明光による反射像とを検出器42によって別々に撮像する。そして、透過像の透過パターン32に対応する画素での検出光量と、反射像の遮光パターン31に対応する画素での検出光量とを比較して、適切な光量を調整する。もちろん、1画素での検出光量を比較してもよく、複数の画素での検出光量を比較してもよい。
図2(d)には、光量を調整した状態で、透過像と反射像との合成像を撮像したときの光量Iのプロファイル74が示されている。すなわち、プロファイル74は、落射照明光と反射照明光とを同時に照射して、照明領域を移動したときに検出器42によって検出された光量Iの変化を示している。ここで、光量Iは、透過照明光のうちフォトマスク30を透過した透過光と落射照明光のうちフォトマスク30で反射された反射光とを足し合わせたものとなる。
図2(d)に示すように、透過パターン32において、光量Iは略一定となっている。また、遮光パターン31において、光量Iは略一定となっている。ここで、照明光の光量を調整しているため、遮光パターンにおける光量Iが、透過パターン32における光量Iよりも高くなっている。遮光パターン31のパターンエッジでは、光量Itが低くなっている。すなわち、遮光パターン31のパターンエッジにおいて、プロファイルが傾斜しているため、光量Irが立ち上がる位置と、光量Itが立ち下がる位置とがずれて、光量Iが低下する。また、遮光パターン31のパターンエッジにおいて、プロファイルが傾斜しているため、光量Irが立ち下がる位置と、光量Itが立ち上がる位置とがずれて、光量Iが低下する。従って、遮光パターン31と透過パターン32との境界で、光量Iのプロファイル74が落ち込む。反射光の光量が透過光の光量の2倍となるよう調整しているため、反射光と透過光とを同程度に調整した場合と比べて、パターンエッジでのプロファイル74の落ち込みを低減することができる。
次に、欠陥が存在する箇所におけるフォトマスク30の像について図3を用いて説明する。図3(a)は、フォトマスク30の照明領域の構成を示す平面図であり、図2(a)と同様のパターンを照明した場合において、透過パターン32上に異物34が存在し、かつ遮光パターン31上に異物33が存在している箇所を示している。図3(b)は反射像のプロファイルであり、図3(c)は透過像のプロファイルである。図3(d)は反射像と透過像とを重ね合わせて合成した合成像のプロファイルである。なお、説明の明確化のため、図3(b)〜図3(d)のプロファイルにおいて、ノイズ等の影響を無視して説明する。
まず、反射像のプロファイルについて図3(b)を用いて説明する。透過パターン32に異物34が付着して欠陥となっている箇所では、入射光が散乱され、図3(b)に示すように反射像のプロファイル71が落ち込む。すなわち、透過パターン32の欠陥箇所では、検出光量が低下して、反射像のプロファイル71に窪み71aが発生する。また、遮光パターン31に異物33が付着して欠陥となっている箇所でも、入射光が散乱され、反射像のプロファイル71が落ち込む。すなわち、遮光パターン31の欠陥箇所でも、反射像のプロファイル71に窪み71bが発生する。ここで、反射像では、透過パターン32の表面で反射される反射光の光量が小さいため、窪み71aで光量Irが最も低くなる。一方、遮光パターン31の表面で反射される反射光の光量が大きいため、窪み71bでは、透過パターン32の非欠陥箇所よりも光量Irが高くなる。また、透過パターン32の欠陥箇所と非欠陥箇所とでは、光量Irの差が小さい。すなわち、窪み71bでの光量Irの低下が小さい。一方、遮光パターン31の欠陥箇所と非欠陥箇所では、光量Irの差が大きい。すなわち窪み71bでの光量Irの低下が大きい。
次に、透過像のプロファイルについて図3(c)を用いて説明する。図3(c)において、72は透過照明光の光量を調整する前のプロファイルを示し、73は光量を調整した後のプロファイルを示している。透過パターン32上に異物34が付着して欠陥となっている箇所では、照明光が散乱されるため、透過光のプロファイル72、73が落ち込む。すなわち、透過パターン32の欠陥箇所では、検出光量が低下して、透過像のプロファイル73に窪み73aが発生する。一方、遮光パターン31では、異物33の有無にかかわらず、照明光のほとんどが透過しないため、光量Itにほとんど変化がない。すなわち、遮光パターン31上に異物が付着して欠陥となっている箇所には、プロファイルに窪みが発生しない。また、透過照明光の光量は調整されているため、異物34の箇所での、窪み73aの光量が低下している。
次に、透過像と反射像とを重ね合わせて合成した合成像のプロファイルについて、図3(d)を用いて説明する。透過パターン32上の異物34に対応する箇所では、合成像のプロファイル74が落ち込んでいる。すなわち、合成像のプロファイル74には、異物34によって窪み74aが発生している。また、遮光パターン31上の異物に対応する箇所では、合成像のプロファイル74が落ち込んでいる。すなわち、異物33によって、プロファイル74に窪み74bが生じている。さらに、図2(d)を用いて説明したように、遮光パターン31のパターンエッジでプロファイル74が落ち込んでいる。すなわち、パターンエッジに対応する箇所では、プロファイル74に窪み74cが発生している。
ここで、透過照明光と反射照明光との光量を調整しているため、それぞれの窪みが異なるレベルとなる。すなわち、異物34による窪み74aが最も低く、パターンエッジでの窪み74cが最も高くなる。異物33により窪み74bは窪み74aと窪み74cとの間になる。従って、プロファイル74と2つのスレッショルドレベル(しきい値)75、76とを比較して、欠陥の判定を行なうことにより、遮光パターン31上に存在する欠陥か、透過パターン32上に存在する欠陥かを判別することができる。すなわち、スレッショルドレベル75によって、パターンエッジか、欠陥かを判別することができる。さらに、スレッショルドレベル76によって、遮光パターン31上の欠陥か、透過パターン32上の欠陥かを判別することができる。ここで、スレッショルドレベル75は、パターンエッジの窪み74cと遮光パターン31の窪み74bとの間に設定し、スレッショルドレベル76は、遮光パターン31の窪み74bと透過パターン32の窪み74aとの間に設定されている。
具体的には、検出器42から出力される検出信号を、設定されたスレッショルドレベル75、76と比較する。そして、スレッショルドレベル75、76よりも検出信号のレベルが低くなった箇所を記憶する。すなわち、検出信号が弱くなっている箇所をその座標とともに記憶する。スレッショルドレベル76よりも検出信号のレベルが低くなった箇所を、透過パターン32上の欠陥と判定する。スレッショルドレベル76よりも検出信号のレベルが低くなった箇所のうち、透過パターン32上の欠陥と判定された箇所を除いた箇所が遮光パターン31上の欠陥と判定される。このように、光量を調整しているため、欠陥が遮光パターン31上存在するか透過パターン32上に存在するかよって、検出信号のレベルが大きく変化する。従って、遮光パターン31上に存在する欠陥か、透過パターン32上に欠陥かを効果的に判別することができ、誤検出を防ぐことができる。さらに、光量を調整しているため、パターンエッジでのプロファイル74の落ち込みを低減することができる。よって、パターンエッジでの擬似欠陥の発生を効果的に防ぐことができ、正確に検査を行うことができる。
上記の処理は処理装置50によって行なわれる。この処理装置50の構成について図4を用いて説明する。図4は処理装置50の構成を示すブロック図である。処理装置50は、スレッショルドレベル設定部51と、比較部52と、欠陥判定部53と、走査制御部54と、光量調整部55と、スレッショルドレベル選択部56とを備えている。
光量調整部55は、駆動モータ13及び駆動モータ23を制御して、透過照明光と落射照明光との光量を調整する。これにより、落射照明光のうちフォトマスク30の遮光パターン31で反射され検出器42で検出された検出光量が、透過照明光のうちフォトマスク30の透過パターン32を透過して、検出器で検出された検出光量の1.5倍以上になる。具体的には、欠陥検出の前に、フォトマスク30の任意の位置に透過照明光のみを照射して、検出器42により透過像を撮像する。また、フォトマスク30の任意の位置に落射照明光のみを照射して検出器42により反射像を撮像する。そして、光量調整部55は、反射像における遮光パターン31の画素での検出光量と、透過像における透過パターン32の画素での検出光量とを比較する。そして、光量調整部55は、透過照明光と落射照明光の割合を調整する。具体的には、駆動モータ13及び駆動モータ23を駆動して、透過側フィルタ12及び落射側フィルタ22を回転させる。これにより、透過側フィルタ12及び落射側フィルタ22の光透過率が変化して、光量の割合を調整することができる。なお、光量の調整は、駆動モータ13又は駆動モータ23の一方のみを駆動して調整を行ってもよい。また、透過側フィルタ12及び落射側フィルタ22の一部の領域に、光を遮光する遮光部を設けてもよい。すなわち、反射像を撮像するときは、透過側フィルタ12で透過照明光を遮光し、透過像を撮像するときは、落射側フィルタ22で落射照明光を遮光する。これにより、光量を調整するための反射像及び透過像のそれぞれを容易に撮像することができる。
次に、欠陥判定を行なうための処理について説明する。欠陥判定の処理では、上記のように光量を調整した状態で、落射照明光及び透過照明光を同時に照射する。そして、フォトマスク30を透過した透過光と、フォトマスク30で反射された反射光とを、一つの検出器42で検出する。この検出器42によって検出された検出信号が処理装置50に入力される。検出器42からの検出信号は、検出光量に応じたレベルとなっている。検出信号は、例えば、図2(d)及び図3(d)で示したプロファイル74のようになっている。この検出器42からの検出信号は、比較部52に入力される。
スレッショルドレベル設定部51は、調整された光量に応じたスレッショルドレベルが複数設定されている。スレッショルドレベル設定部51は、例えば、図3(d)に示すようなパターンエッジにおける検出信号のレベルと、遮光パターン31の欠陥における検出信号のレベルとの間にスレッショルドレベルAを設定している。すなわち、スレッショルドレベルAは、図3(d)に示す、遮光パターンの欠陥におけるプロファイル74の窪み74bと、パターンエッジにおけるプロファイルの窪み74cとを判別するスレッショルドレベル75となる。さらに、スレッショルドレベル設定部51は、透過パターン32の欠陥における検出信号のレベルと、遮光パターン31の欠陥における検出信号のレベルとの間にスレッショルドレベルBを設定している。すなわち、スレッショルドレベルBは、図3(d)に示す、透過パターンの欠陥におけるプロファイル74の窪み74bと、遮光パターン31におけるプロファイルの窪み74aとを判別するスレッショルドレベル76となる。
比較部52は、スレッショルドレベル設定部51で設定されたそれぞれのスレッショルドレベルと、検出信号とを比較して、欠陥検出を行なう。例えば、比較部52は、スレッショルドレベルと検出信号を比較するコンパレータを備えている。そして、比較部52のコンパレータは比較結果に基づく比較信号を出力。すなわち、比較部52は、検出信号のレベルが、設定されたスレッショルドレベルよりも低くなったことを示す比較信号を出力する。これにより、欠陥検出を行なうことができる。また、比較部52は、設定されたスレッショルドレベルのそれぞれに対応するコンパレータを備えている。すなわち、比較部52には、スレッショルドレベルの数と同じ数だけ、コンパレータが設けられている。
走査制御部54は、ステージ16の走査を制御する。すなわち、ステージ16を駆動する駆動機構を制御して、フォトマスク30を走査する。これにより、フォトマスク30の任意の位置に、照明光を照射することができる。また、走査制御部54は、駆動機構からの駆動信号に基づいて、フォトマスク30上の照明領域の位置を認識している。すなわち、フォトマスク上において照明光が入射している領域の座標が認識されている。
欠陥判定部53は、比較部52からの比較信号に基づいて、フォトマスク30上の欠陥の位置を特定する。すなわち、走査制御部54によって認識されている照明領域のうち、検出信号がスレッショルドレベルを下回った検出器42上の画素に対応する箇所をフォトマスク30の欠陥箇所として認識する。欠陥判定部53は、スレッショルドレベルA及びスレッショルドレベルBによって欠陥箇所と判定された位置をそれぞれ記憶する。そして、遮光パターン上の欠陥か、透過パターン上の欠陥かを判定する。具体的には、スレッショルドレベルBに基づいて判定された欠陥箇所を透過パターン32上の欠陥箇所として判定する。さらに、スレッショルドレベルAに基づいて判定された欠陥箇所から、スレッショルドレベルBに基づいて判定された欠陥箇所を除いた箇所を遮光パターン上の欠陥箇所として判定する。換言すると、スレッショルドレベルAに基づいて判定された欠陥箇所のうち、スレッショルドレベルBに基づいて判定された欠陥箇所と共通する箇所を透過パターン32上の欠陥箇所として判定する。さらに、スレッショルドレベルAに基づいてのみ判定された欠陥箇所を、遮光パターン上の欠陥箇所として判定する。これにより、欠陥が、遮光パターン31に存在するか、透過パターン32に存在するかを容易に判別することができる。また、一つの検出器42のみで欠陥の判別を行なうことができるため、装置構成を簡易なものとすることができる。
上記のように欠陥を判定することにより、検査をより正確に行なうことができる。例えば、欠陥の数でマスクの良否判定を行なう際、透過パターン上の欠陥のみの数をカウントすることが可能である。すなわち、透過パターン32上の欠陥は露光によるパターン転写に対して影響が大きいが、遮光パターン31上の欠陥は露光にパターン転写に対して影響が小さい。従って、遮光パターン31上の欠陥の数が多いフォトマスク30を用いた場合でも、正常にパターンを転写できる場合がある。上記のように、欠陥が遮光パターン31上に存在するか、透過パターン32上に存在するかを判定することにより、正常に露光可能なフォトマスク30が不良品として判定されるのを防ぐことができる。これにより、生産性を向上することができる。もちろん、透過パターン32上の欠陥の数及び遮光パターン31上の欠陥の数に対して、別々にしきい値を設けて、フォトマスク30の良否判定を行なうことも可能である。
上記のように、複数のスレッショルドレベルに基づいて欠陥の種別を判定する構成では、スレッショルドレベルの設定が重要となる。すなわち、スレッショルドレベル75を必要以上に高くしてしまうと、パターンエッジによる窪み74cを欠陥として判別してしまうおそれがある。また、スレッショルドレベル75を必要以上に低くしてしまうと、透過パターン32上の欠陥が、遮光パターン31上の欠陥として判定されていしまうおそれがある。さらに、スレッショルドレベル76を必要以上に高くしてしまうと、遮光パターン31上の欠陥を透過パターン32上の欠陥として判別してしまうおそれがある。また、スレッショルドレベル76を必要以上に低くしてしまうと、遮光パターン31上の欠陥が欠陥として判定されなくなってしまうおそれがある。さらに、ショットノイズなどによって欠陥が誤検出されてしまうおそれもある。従って、正確な欠陥検出を行なうためには、スレッショルドレベルを好適なレベルに設定する必要がある。
本発明では、より正確に欠陥検出を行なうために、スレッショルドレベル設定部51で予め3以上のスレッショルドレベルを設定している。そして、それぞれのスレッショルドレベルでの比較結果を記憶するメモリバンクをスレッショルドレベル毎に設け、全てのスレッショルドレベルで欠陥を検出する。従って、メモリバンクのポインタ位置に基づいて、検出欠陥数を認識することができる。さらに、予め設定された3以上のスレッショルドレベルから、2つのスレッショルドレベルをスレッショルドレベル75、76としてそれぞれ選択するスレッショルドレベル選択部56が処理装置50に設けられている。すなわち、好適なスレッショルドレベル75及びスレッショルドレベル76を選択するため、スレッショルドレベルを予め複数設定する。そして、それぞれのスレッショルドレベルにおいて、同時並行して、欠陥検出を行なっている。その中から、好適なスレッショルドレベルを選択して、欠陥の数をカウントしている。具体的には、複数のアナログ信号である検出信号を、比較部52に設けられている複数のコンパレータに分岐して入力する。そして、それぞれのコンパレータからの比較信号に基づいて欠陥を検出する。検出した結果の中から好適な2つのスレッショルドレベルを選択する。
例えば、スレッショルドレベルを一定の電圧レベル毎に多数設定する。この多数のスレッショルドレベルをスレッショルドレベルA、スレッショルドレベルB、スレッショルドレベルC・・・として、スレッショルドレベル設定部51に各々記憶させておく。そして、比較部52は、検出信号とスレッショルドレベルとの比較を行なう。このとき、比較部52にスレッショルドレベルの設定数と同じ数だけコンパレータを設け、複数のスレッショルドレベルと検出信号との比較を並行して行なう。並行して比較した結果をそれぞれ対応するメモリバンクに記憶させる。この比較結果に基づいて欠陥が検出される。これにより、処理時間を短縮することができる。
そして、検査する領域全体を走査しながら、検出信号とスレッショルドレベルの比較を行なう。これにより、検査する領域における、設定レベルと欠陥数との関係を求めることができる。設定レベルが高くなるほど、検出信号がスレッショルドレベルを下回る箇所が増えるため、欠陥の検出数が増加する。すなわち、厳しく設定されたスレッショルドレベルでは、検出感度が低下して、欠陥の検出数が実欠陥数より少なくなる。一方、緩く設定されたスレッショルドレベルでは、検出感度が高くなるが、ノイズ等が欠陥として検出される。そのため、擬似欠陥が増加して、欠陥の検出数が実欠陥数よりも多くなり、メモリバンクがオーバフローする。従って、欠陥の検出数が極めて多くなっているスレッショルドレベル及び極めて少なくなっているスレッショルドレベルの結果を捨てる。すなわち、欠陥の検出数がしきい値を超えた場合、擬似欠陥が発生するレベルであると判定して、このスレッショルドレベルでの比較結果を捨てる。また、欠陥の検出箇所をレビューして、欠陥箇所が検出されていないスレッショルドレベルを求める。すなわち、感度の低いスレッショルドレベルでは、欠陥箇所が正常箇所として認識されていると判定して、このスレッショルドレベルでの比較結果を捨てる。そして、残されたスレッショルドレベルの中から、2つのスレッショルドレベルを選択する。これにより、最適感度での検査を行うことができる。スレッショルドレベルの選択は、処理装置50によって自動的に行なってもよく、あるいは作業者が行なってもよい。これにより、最適感度で欠陥検出を行なうことができ、正確に欠陥を検出することができる。よって、正確に検査を行うことができる。
あるいは、複数のスレッショルドレベルにより欠陥を検出すると、あるレベル以上のスレッショルドレベルでは、擬似欠陥が発生し始める。異なるスレッショルドレベルでの欠陥の検出結果を表示させて、擬似欠陥が発生するスレッショルドレベルを求める。そして、擬似欠陥が発生するレベルよりも低いスレッショルドレベルを選択することにより、最適感度で欠陥検出を行なうことができる。
さらに、フォトマスク30の領域に応じて、選択されるスレッショルドレベルを切換えて欠陥検出を行なうことも可能である。すなわち、フォトマスク30の中で、異なるスレッショルドレベルを選択するようにする。これにより、フォトマスク30の領域に応じて最適な感度が変化した場合でも、正確に欠陥を検出することができる。具体的には、照明光が変動して、透過照明光と落射照明光の割合が変化した場合、その照明光の変動に応じて、選択されるスレッショルドレベルを切換える。あるいは、検出器42の検出感度の変動に応じて、スレッショルドレベルを切換えてもよい。これにより、正確に欠陥を検出することができる。さらに、遮光パターン31の反射率が変化しているフォトマスク30に対して、反射率の変化に応じて異なるスレッショルドレベルを選択することで、正確に検査を行うことができる。もちろん、透過パターン32の透過率又は反射率が変化しているフォトマスクに対して、選択されるスレッショルドレベルを切換えても欠陥検出をしてもよい。
さらに、フォトマスク30のパターン領域に応じて、選択されるスレッショルドレベルを切換えることも可能である。例えば、メモリセルのパターンがマトリクス状に形成されたフォトマスク30を検査する場合、メモリセル毎に選択されるスレッショルドレベルを切換えてもよい。また、メモリセルのパターン領域と、その周辺回路のパターン領域で、選択されるスレッショルドレベルを切換えてもよい。さらに、検査を厳しく行いたい領域と、検査を緩く行いたい領域とで、感度を変えることが可能である。すなわち、高い感度で検査を行いたい領域では、スレッショルドレベルを厳しく設定し、低い感度で検査を行いたい領域では、スレッショルドレベルを緩く設定する。例えば、パターンエッジが多数ある領域では、擬似欠陥の検出を防ぐため、低い感度で検査を行うことができる。これにより、検査をより正確に行うことができる。
また、欠陥の数が予め既知の標準試料を検査して、その検査結果に基づいて最適な感度を有するスレッショルドレベルを選択してもよい。
また、厳しく設定されたスレッショルドレベルで検出された欠陥は、欠陥のサイズが大きく、検出信号の落ち込みが大きいものと判定することができる。具体的には、複数のスレッショルドレベルを設定し、検出信号とそれぞれのスレッショルドレベルとを比較する。そして、この比較結果に基づいて欠陥のサイズを判別することも可能である。
なお、処理装置50は、物理的に単一な装置にかぎるものではない。例えば、スレッショルドレベル設定部51、比較部52、欠陥判定部53、走査制御部54、光量調整部55及びスレッショルドレベル選択部56はそれぞれ異なる装置に組み込まれていても良い。また、上記の処理は、アナログ回路を用いて演算してもよく、デジタル回路を用いて演算してもよい。すなわち、スレッショルドレベルは、デジタル値及びアナログ値のいずれであってもよい。もちろん、処理装置50の一部のみをアナログ回路で構成してもよい。この場合、処理装置50は、アナログ回路とデジタル回路とから構成される。
また、検出器42には、例えば、CCDセンサ、CMOSセンサ、フォトダイオードアレイなどを用いることができる。さらには、遅延積算(Time-Delay Integration:TDI)方式の撮像装置であってもよい。この場合、ステージの走査方向と信号電荷の垂直転送方向とを一致させるとともに、走査速度と転送速度とを同期させる。これにより、検出感度を向上することができる。また、上述の検査装置はフォトマスクの検査に限らず、透過パターンと遮光パターンを有する基板であれば利用することができる。例えば、検査の対象となる試料としては、フォトマスクの他、カラーフィルタ基板などを挙げることができる。また、遮光パターン31は、遮光膜に限られるものではなく、透過パターン32よりも反射率が高いものであればよい。遮光パターン31としては、例えば、半透明膜のパターンからなる位相シフトパターンであってよい。すなわち、本発明にかかる検査装置は、位相シフトマスクの検査に用いることが可能である。
フォトマスク30を検査した場合、検査結果に基づいて、欠陥を修正する。そして、欠陥が修正されたフォトマスクを使用して、例えば、シリコンウエハ上に形成されたフォトレジストを露光する。そして、このレジストを現像して、半導体装置等のパターン基板を製造することができる。もちろん、レジストを現像した後に、必要なエッチング処理を行なうことも可能である。これにより、正確に検査されたフォトマスクを用いることができるため、パターン基板の生産性を向上することができる。
なお、透過照明光源11と落射照明光源21は別々の光源に限られるものではない。例えば、一つの光源からの照明光をビームスプリッタや光ファイバで分岐して、落射照明光と透過照明光を生成してもよい。この場合、1つの光源で透過照明光源11と落射照明光源21を構成することができるため、部品点数削減することができる。さらに、光源からの光量の変化による、透過照明光と落射照明光との割合の変化を打ち消すことができる。
上述の光学系では簡易な構成で透過光と反射光との合成像を検出することができる。そして、2つあるいはそれ以上のスレッショルドレベルを設定することにより、欠陥が遮光パターン上に存在するか、透過パターン上に存在するかを判定することができる。さらに、より多くのスレッショルドレベルを設定することにより、欠陥の種別を判定することができる。例えば、遮光パターンと同じ材質が付着した欠陥とそれとは異なる物質が付着した欠陥とを判別することができる。
以下、追加分
発明の実施の形態2.
本実施の形態にかかる検査方法では、実施の形態1と同様に、反射像と透過像とを重ね合わせて欠陥を検出している。また、本実施の形態にかかる検査方法では、実施の形態1と異なる演算処理が行われている。具体的には、実施の形態1では、遮光パターン31上に存在する欠陥と透過パターン32上に存在する欠陥とを判別するために、異なるスレッショルドレベルを設定した。本実施の形態では、より精度の高い検査を行うため、合成像のプロファイル74を微分して、一つの窪みに対するエッジペアを定義する。そしてエッジペアを積分して、エッジペア内の面積を求める。その面積に基づいて、パターンエッジの位置を特定する。そして、検査した領域を透過領域、パターンエッジ領域、反射領域に分け、それぞれに異なるスレッショルドレベルを設定する。これにより、より正確に欠陥を検出することができる。なお、本実施の形態にかかる検査装置の基本的構成は、実施の形態1で示した検査装置と同様であるため説明を省略する。
本実施の形態にかかる演算処理について図5〜図8を用いて説明する。図5(a)は、フォトマスク30の照明領域の構成を模式的に示す平面図である。なお、図5では、欠陥箇所の像が示されている。図5(b)は、反射像と透過像とを重ね合わせて合成した合成像のプロファイルである。図6は、図5(b)で示したプロファイルに対応する検出信号を演算処理することによって得られた信号を示している。図7は本実施の形態で設定されたスレッショルドレベルを示す図である。図8は、本実施の形態にかかる演算処理を行うための回路を示すブロック図である。
図5(a)に示すように、透過パターン32には、異物34a及び34bが付着している。異物34aは異物34bよりも大きい。また、遮光パターン31には、異物33aと異物33bが付着している。異物33aは異物33bよりも大きい。
合成像のプロファイルには、図5(b)に示すように、透過パターン32上の異物34a、34bに対応する窪み74aと、遮光パターン31上の異物33a、33bに対応する窪み74bと、パターンエッジに対応する窪み74cが現れる。ここで、それぞれの窪みは、それぞれ異なるレベルになっている。さらに、欠陥のサイズによって、異なるレベルとなる。すなわち、異物34aに対応する窪み74aと異物34bに対応する窪み74aとが異なるレベルになっている。また、異物33aに対応する窪み74bと異物33bに対応する窪み74bとが異なるレベルになっている。
ここで、欠陥に対応する窪み74a、74bは左右対称になっている。すなわち、窪みの両外側では、検出信号のレベルが略等しくなっている。具体的には、異物34bの位置になると、検出信号が、透過パターン32に対応するレベルから窪み74aの最低部まで低下し、異物34bを過ぎると透過パターン32に対応するレベルに戻る。遮光パターン上の異物34aに対応する窪み74aについても同様になっている。また、異物33a、33bに値合おうする窪み74bについても左右対称になっている。
一方、透過光と反射光との光量を調整しているため、パターンエッジに対応する窪み74cは、左右対称になっていない。すなわち、パターンエッジに対応する窪み74cの両外側のうち、一方では、検出信号が透過パターン32のレベルとなり、他方では、検出信号が遮光パターン31に対応するレベルとなる。パターンエッジに対応する窪み74cは、非対称になる。具体的には、透過パターン32から遮光パターン31になるパターンエッジの場合、エッジ位置になると、検出信号が、透過パターン32に対応するレベルから窪み74cの最低部まで低下し、エッジ位置を過ぎると遮光パターン31に対応する対応するレベルに戻る。もちろん、遮光パターン31から透過パターン32になるパターンエッジの場合、検出信号が、遮光パターン31に対応するレベルから窪み74cの最低部まで低下し、欠陥位置を過ぎると透過パターン32に対応する対応するレベルに戻る。従って、パターンエッジに対応する窪み74cは非対称となる。
図5(b)に示すプロファイルのXについての一次微分は、図6(a)のようになる。ここで、図6(a)に示される信号を微分信号とする。微分信号には、それぞれの窪みに対して、正のピークと負のピークが表れる。すなわち、1つの窪みに対して微分信号に現れる2つのピークの符号は反対となる。また、窪みにおけるプロファイルでは、合成光量が、一度下がってから、元に戻る。すなわち、窪みでは、プロファイル74の傾きがマイナスになってからプラスになる。換言すると、一つの窪みに対してマイナスの傾きを持つ部分とプラスの傾きを持つ部分とが存在する。そのため、微分信号には、図6(b)に示すように、負の部分が現れてから、正の部分が現れる。ここで、微分信号において、一つの窪みに対応する正の部分と負の部分とをエッジペアとする。すなわち、エッジペアは負の部分と負の部分の後に現れる正の部分とから構成される。エッジペアは、欠陥箇所又はパターンエッジに対応する。エッジペア以外の箇所では、微分信号のレベルは略0となる。
例えば、微分信号に対して、正のエッジペア検出用スレッショルドレベルPedと、負のエッジペア検出用スレッショルドレベルNedとを設定する。これによって、エッジペアを検出することができる。図6(a)に示すように、微分信号と正負のエッジペア検出用スレッショルドレベルPed、Nedとを比較する。そして、微分信号がエッジペア検出用スレッショルドレベルNedを越えたタイミングから設定時間以内に、微分信号がエッジペア検出用スレッショルドレベルPedを越えれば、エッジペアとして検出される。ここでは、微分信号が正負のエッジペア検出用スレッショルドレベルPed、Nedを超えたタイミングの中央をエッジペアの箇所として検出する。エッジペアが検出された箇所には、窪み、すなわち、パターンエッジ又は欠陥が存在する。
図1に示した検査装置では、反射光の光量が透過光の光量の1.5倍以上となるよう調整されている。そのため、パターンエッジに対応する窪み74cでは、微分信号が非対称になる。すなわち、欠陥がない箇所では、遮光パターン31における合成光量が透過パターン32における合成光量の1.5倍となっている。パターンエッジでのエッジペア84cを構成する正の部分と負の部分とでは、大きさが異なる。一方、異物33a、33b、34a、34bに対応する窪み74a、74bでは、欠陥箇所での微分信号が略対称になる。よって、窪み74a、74bに対応するエッジペアを構成する正の部分と負の部分とでは、大きさが略同じとなる。
ここで、エッジペアを積分して、正の部分と負の部分の面積を足し合わせると図6(b)に示すようになる。図6(b)に示される信号を積分信号とする。なお、図6(b)に示されている積分信号は、符号付の積分によるものである。具体的には、エッジペアのうち、正の部分のうち一定のレベル(例えば、Ped)以上となっている部分の面積の絶対値から、負の部分のうちが一定のレベル(例えば、Ned)以下となっている部分の面積の絶対値を引くことにより積分信号が得られる。すなわち、積分信号は、エッジペアの符号付面積に対応するレベルとなる。パターンエッジに対応するエッジペア84cでは、積分信号の絶対値が大きくなる。パターンエッジに対応するエッジペア84cでは、正の部分と負の部分とで面積が異なるため、積分信号が正又は負の大きな出力を有する。微分信号のエッジペア84cに対して符号付の面積合算をすることによって得られる積分値は、パターンエッジで正又は負の大きな値となる。具体的には、透過パターン32から遮光パターン31になるパターンエッジでは、正の部分が大きいため、積分信号に大きな正のピークが現れる。一方、遮光パターン31から透過パターンになるパターンエッジでは、負の部分が大きいため、積分信号に大きな負のピークが現れる。
一方、異物34a、34bに対応するエッジペア84a、84bでは、プロファイルが左右対称であるため、微分信号の正の部分と負の部分の面積が略等しくなる。すなわち、パターンエッジ以外では、正の部分と負の部分とが打ち消しあって、合算値が正又は負の非常に小さな値、すなわち、0に近い値となる。このように、欠陥箇所では、積分信号が正又は負に小さなピークが現れる。すなわち、本実施の形態では、遮光パターン31からの反射光を透過パターン32からの透過光の1.5倍としているため、パターンエッジと欠陥箇所で、積分信号のレベルに差が生じる。さらに、透過パターン32から遮光パターン31に走査されるパターンエッジと、遮光パターン31から透過パターン32に走査されるパターンエッジとで、積分信号のピークの符号が異なる。すなわち、透過パターン32から遮光パターン31に走査されるパターンエッジでは、積分信号に正のピークが現れ、遮光パターン31から透過パターン32に走査されるパターンエッジでは、積分信号に負のピークが現れる。
ここで、パターンエッジの位置を検出するため、積分信号に正と負のエッジ検出用スレッショルドレベルPth、Nthを設定する。すなわち、正のエッジ検出用スレッショルドレベルPthを越えた位置が、透過パターン32から遮光パターン31になるパターンエッジと判定される。また、負のエッジ検出用スレッショルドレベルNthを越えた位置が、遮光パターン31から遮光パターン32になるパターンエッジと判定される。このように積分信号とエッジ検出用スレッショルドレベルとを比較することによって、パターンエッジの位置を検出することができる。
そして、上記の演算処理で検出されたパターンエッジ箇所に基づいて、検査した領域を透過域、エッジ域、反射域に分割する。具体的には、図6(c)に示すように、スレッショルドレベルを越えた箇所Rin,Routを膨張させた領域をエッジ域とする。すなわち、エッジ検出用スレッショルドレベルを越えた箇所Rin,Routを含む一定の領域をエッジ域とする。また、正のエッジ検出用スレッショルドレベルPthを超えた箇所Rinから負のエッジ検出用スレッショルドレベルNthを越えた箇所Routまでの領域のうち、エッジ域を除いた領域を遮光パターン31による反射域と判定する。よって、反射域は、正のエッジ検出用スレッショルドレベルPthを越えた箇所Rinと負のエッジ検出用スレッショルドレベルNthを越えた箇所Routで挟まれた領域よりも、エッジ域分だけ狭くなる。さらに、反射域及びエッジ域以外を透過域とする。よって、透過域は、負のエッジ検出用スレッショルドレベルNthを超えた箇所Routから正のエッジ検出用スレッショルドレベルPthを越えた箇所Rinまでの領域よりも、エッジ域分だけ狭くなる。また、エッジ域は、通常、透過域と反射域とに挟まれる。このように、微分信号のエッジペアを積分した積分信号に基づいて照明領域を透過域、エッジ域、反射域に分割することができる。
そして、図7(b)に示すように、透過域、エッジ域及び反射域のそれぞれに対して、それぞれ異なるスレッショルドレベルを設定する。なお、図7(b)は図5(b)で示した合成像のプロファイルに、欠陥検出用スレッショルドレベルを設定したものである。また、図7(a)は図5(a)と同じ、照明領域を示している。ここで、透過域用スレッショルドレベルTthと、反射域用スレッショルドレベルRthと、エッジ域用スレッショルドレベルEthとで異なるレベルになっている。具体的には、エッジ域用スレッショルドレベルEthが最も低く、反射域用スレッショルドレベルRthが最も高い。透過域用スレッショルドレベルTthは、エッジ域用スレッショルドレベルEthと、反射域用スレッショルドレベルRthとの間に設定されている。このように、領域に応じて3つのスレッショルドレベルを設定することによって、より検出感度を向上することができる。よって、より精度よく欠陥を検出することができる。さらに、パターンエッジに存在する欠陥を検出することができる。
上記の処理を行うための回路構成について図8について説明する。すなわち、図8に示す構成を図4に示した処理装置50に追加することによって、上記の演算処理を行うことができる。
透過像と反射像との合成像に基づく検出信号は、一次微分回路61に入力される。一次微分回路61によって、検出信号を微分する。これにより、図6(a)に示した微分信号を得ることができる。1次微分回路61からの微分信号は、エッジペア積分器62に入力される。エッジペア積分器62では、微分信号とエッジペア検出用スレッショルドレベルPed,Nedとを比較して、エッジペアを検出する。そして、エッジペア積分器62は、それぞれのエッジペアに対して、符号付の積分を行なう。これにより、微分信号に基づいてエッジペアの合算面積を得ることができる。具体的には、微分信号において、検出信号のうち正の傾きを持つ部分と負の傾きを持つ部分とからなるエッジペアを求める。ここでは、図6(a)に示すように微分信号が、負のエッジペア検出用スレッショルドレベルNedを越えてから、一定の時間以内に、エッジペア検出用スレッショルドレベルPedを越えた場合エッジペアと検出される。これにより、パターンエッジ及び欠陥の位置を示すエッジペアが検出される。そして、エッジペア積分器62は、エッジペアに対応する部分の微分信号の符号付面積に対応する積分信号を生成する。ここでは、1つのエッジペアにおいて、エッジペア検出用スレッショルドレベルPed、Nedを越えた部分を積分して、符号付面積を求める。このように、エッジペア積分器62は、エッジペアを検出して、そのエッジペアの符号付面積を算出する。よって、エッジペア積分器62から図6(b)に示す積分信号が出力される。
エッジ判別用比較器63には、エッジペア積分器62からの積分信号が入力される。さらに、エッジ判別用比較器63には、正のエッジ検出用スレッショルドレベルPthと負のエッジ検出用スレッショルドレベルNthが設定されている。エッジ判別用比較器63は、コンパレータを備えており、積分信号とエッジ検出用スレッショルドレベルPth、Nthとを比較する。そして、エッジ判別用比較器63は比較結果に基づく比較信号をエッジ膨張器64に出力する。ここでは、正のエッジ検出用スレッショルドレベルPthを越えたタイミングを示す比較信号Rinと、負のエッジ検出用スレッショルドレベルNthを越えたタイミングを示す比較信号Routとが出力される。これにより、エッジ位置を検出することができる。
エッジ膨張器64は、例えば、ディレイ回路を有しており、比較信号Rin、Routのタイミングをエッジ域に対応する時間だけ膨張させる。すなわち、比較信号のピークを含む一定の時間幅を設定する。換言すると、エッジ膨張器64は、積分信号がエッジ検出用スレッショルドレベルを越えたタイミングを示す比較信号を膨張させて、エッジ域に対応する所定の時間幅を設定する。この時間幅には、積分信号がエッジ検出用スレッショルドレベルを越えたタイミングが含まれる。すなわち、エッジ膨張器64は、積分信号がエッジ検出用スレッショルドレベルを越えたタイミングを含む時間幅を設定する回路である。エッジ膨張器64からの出力信号は領域区分回路65に出力される。
領域区分回路65は、エッジ膨張器64からの出力に基づいて、試料を各領域を区分する。これにより、試料上のどの領域が照明されているときの検出信号であるかを容易に識別することができる。すなわち、パターンエッジの位置に基づいて、透過域を示す透過域ゲート、反射域を示す反射域ゲート及びエッジ域を示すエッジ域ゲートを出力する。これにより、照明領域が透過域、反射域又はエッジ域のいずれかであるかが判定される。具体的には、比較信号のピークタイミングを膨張することによって得られた時間幅がエッジ域と判定される。さらに、比較信号Rinが入力されてから比較信号Routが入力されるまでの時間のうち、エッジ域を除いた時間が反射域と判定される。そして、それ以外の時間が透過域と判定される。このように、領域区分回路65は、エッジ判別用比較器63での比較結果に基づいて、試料を透過パターン32と遮光パターン31との間のパターンエッジに対応するエッジ域に区分する。そして、領域区分回路65は、エッジ判別用比較器63での比較結果に基づいて、試料のパターンエッジ域以外の領域を透過パターン32に対応する透過域と、遮光パターン31に対応する反射域とに区分する。
欠陥検出用比較器67には、透過域を示す透過域ゲート、反射域を示す反射域ゲート及びエッジ域を示すエッジ域ゲートが入力される。また、欠陥検出用比較器67には、欠陥を検出するため、反射域用スレッショルドレベルRth、透過域用スレッショルドレベルTth及びエッジ域用スレッショルドレベルEthが入力されている。透過像と反射像との合成像に基づく検出信号は、遅延回路66により遅延される。欠陥検出用比較器67には、遅延回路66によって遅延された検出信号が入力される。これにより、遅延回路によって遅延された検出信号と、上記の処理を経て入力された各ゲートとのタイミングが合わせられる。
欠陥検出用比較器67は、透過域ゲートが入力されている間は、透過域用スレッショルドレベルTthと検出信号を比較した結果に基づいて欠陥が検出される。また、欠陥検出用比較器67は、反射域ゲートが入力されている間は、反射域用スレッショルドレベルRthと検出信号を比較し、この比較結果に基づいて欠陥の位置を特定する。エッジ域ゲートが入力されている間は、エッジ域用スレッショルドレベルEthと検出信号とを比較し、比較結果に基づいて欠陥の位置を特定する。具体的には、欠陥検出用比較器67は、各ゲートと、各コンパレータからの比較信号との論理積(AND)を出力する。そして、欠陥検出用比較器67は、検出信号がスレッショルドレベルを越えたタイミングで欠陥信号を出力する。これにより欠陥の位置を特定することができる。さらに、領域に応じて異なる欠陥検出用スレッショルドレベルが設定されているため、より精度の高い検査を行うことができる。また、パターンエッジの欠陥の検出をより高い精度で行なうことができる。
このように欠陥検出用比較器67は、透過域では、検出信号と透過域用スレッショルドレベルTthとを比較する。この比較結果に基づいて、透過パターン上の欠陥が検出される。また、欠陥検出用比較器67は、反射域では、反射域用スレッショルドレベルRthと検出信号を比較する。この比較結果に基づいて遮光パターン上の欠陥が検出される。さらに、欠陥検出用比較器67は、エッジ域では、検出信号とエッジ域用スレッショルドレベルEthとを比較する。そして、この比較結果に基づいて、エッジ域での欠陥が検出される。従って、各領域で、より精度よく欠陥を検出することができる。
発明の実施の形態3.
本実施の形態にかかる検査方法では、実施の形態1、2と同様に、反射像と透過像とを重ね合わせて欠陥を検出している。本実施の形態では、より精度の高い検査を行うため、実施の形態2に対して処理を加えている。ここでは、エッジ域の欠陥をより精度よく検出するための演算処理を行っている。具体的には、パターンエッジ近傍に欠陥が存在する場合、欠陥のエッジペアとパターンエッジのエッジペアが一部重複した状態で現れる場合がある。この場合、1つのエッジペアを組み合わせて積分すると、パターンエッジを検出することができなくなってしまう場合がある。従って、本実施の形態では、設定時間幅に含まれるエッジペアについて積分を行なっている。すなわち、設定された時間幅に2つ以上のエッジペアが含まれる場合、2つのエッジペアについて積分値をまとめて算出している。以下に本実施の形態にかかる検出装置における演算処理について図を参照して説明する。
上記の演算処理について図9を用いて詳細に説明する。図9は、本実施の形態にかかる検査方法において、パターンエッジ近傍の欠陥を検出するための処理を説明するための図である。具体的には、図9(a)は、フォトマスク30の照明領域の構成を模式的に示す平面図である。図9(b)は、反射像と透過像とを重ね合わせて合成した合成像のプロファイルである。図9(c)は、図9(b)で示される合成像のプロファイルの微分信号を示している。図9(d)は、図9で示される微分信号に現れるエッジペアを積分した積分信号を示している。図9(e)は、設定時間幅において、図9で示される微分信号を、積分した信号を示している。なお、図9(e)で示されている信号を時間幅積分信号とする。
図9では、遮光パターン31上であって透過パターン32とのエッジの近傍に存在する場合を示している。図9(a)に示すようにパターンエッジの近傍に欠陥が存在する場合、その検出信号は図9(b)に示すようになる。すなわち、パターンエッジによる窪みと欠陥による窪みとが重ね合わせられるため、プロファイル74が複雑な形状となる。具体的には、欠陥が存在するパターンエッジ近傍で、プロファイル74には2つの窪み74dが連続して現れる。すなわち、プロファイル74の窪み74dでは、透過パターン32のレベルよりも下がった後、透過パターン32と遮光パターン31との間のレベルとまで上がる。さらに、プロファイル74の窪み74dでは、再度、透過パターン32のレベルよりも下がる。従って、2つの窪み74dの間において、プロファイル74の窪み74dは、透過パターン32と遮光パターン31との間のレベルとなる箇所が存在する。
このようなプロファイル74を有する検出信号を実施の形態2と同様に微分すると、図9(c)に示すようになる。ここでは窪み74dに対応する箇所では、2つのエッジペア84dが現れる。実施の形態2で示したように、エッジペアのそれぞれについて符号付積分をすると図9(d)に示すようになる。この場合、パターンエッジにおいて、図9(d)に示すように、正のエッジ検出用スレッショルドレベルPthを越えなくなってしまうおそれがある。すなわち、2つの窪み74dのうち、パターンエッジに基づく正の傾きと、欠陥による負の傾きとが打ち消しあって積分信号のレベルが低くなってしまう。従って、パターンエッジにおいて正のエッジ検出用スレッショルドレベルPthを越えない箇所が発生してしまう。この場合、実施の形態2で示した領域区分を行なうことができず、欠陥を精度よく検出することができなくなってしまうおそれがある。このように、パターンエッジ近傍に欠陥が存在する場合、1組のエッジペアで符号付積分すると、積分値がパターンエッジ部と欠陥部に分散してしまう。そのため、積分信号の強度が弱くなってしまい、エッジ検出用スレッショルドレベルPth、Nthを越えないおそれがある。
そこで、本実施の形態では、設定時間幅Tspにおいて微分信号を積分している。すなわち、微分信号の符号付の積分を所定の時間幅だけ行なう。この時間幅は予め設定しておいてもよい。このように、設定時間幅Tspだけ微分信号を符号付で積分した時間幅積分信号は図9(e)に示すようになる。時間幅積分信号では、図9(d)で示した2つエッジペアに対応する積分信号が足し合わせられる。例えば、最初のエッジペアを検出後、所定の時間内にもう一つのエッジペアが現れた場合、2つのエッジペアの符号付面積を算出する。この時間幅積分信号をエッジ検出用スレッショルドレベルPth、Nthと比較することによって、パターンエッジを検出することができる。
具体的には、図9(d)に示すように、積分信号に対して、正のエッジペア連続出現用スレッショルドレベルPthoと負のエッジペア連続出現用スレッショルドレベルNthoを設定する。ここで、正負のエッジペア連続出現用スレッショルドレベルPtho、Nthoは、正負のエッジ検出用スレッショルドレベルPth、Nthを越えないレベルにそれぞれ設定されている。すなわち、正負のエッジ検出用スレッショルドレベルPth、Nthの間に、正及び負のエッジペア連続出現用スレッショルドレベルPtho、Nthoが設定される。積分信号は正負のエッジペア連続出現用スレッショルドレベルPtho、Nthoとそれぞれ比較される。そして、設定時間幅Tsp内に、積分信号が、エッジペア連続出現用スレッショルドレベルを越えるか否かを判定する。例えば、エッジペア連続出現用スレッショルドレベルPtho、Nthoを越えたタイミングが設定時間幅Tsp以内なら、2つのエッジペアの符号付面積を符号付きで積算する。
このように、正負のエッジペア連続出現用スレッショルドレベルPtho、Nthoと積分信号の比較結果に基づいて、エッジペアが設定時間幅Tsp以内に連続して出現している否かを判定する。そして、2つ以上のエッジペアが設定時間幅Tsp以内に存在する場合、各エッジペアの符号付面積を符号付で積算する。これにより、設定時間幅内Tspに存在するエッジペアの符号付面積を算出することができる。この設定時間幅内に存在する2つのエッジペアの符号付面積に対応する時間幅積分信号をエッジ検出用スレッショルドレベルPth、Nthと比較することによって、パターンエッジを検出することができる。これにより、パターンエッジの位置をより確実に判別することができる。そして、実施の形態2と同様に、エッジ域、透過域及び反射域を設定する。そして、領域毎に異なるスレッショルドレベルを設定して欠陥を検出する。
上記の演算によって、パターンエッジ近傍に欠陥が存在する場合でも、パターンエッジを確実に検出することができる。よって、より精度よく欠陥を検出することが可能になる。このように、エッジペアが設定時間内に2以上出現するか否かを判別する。そして、連続して2以上のエッジペアが出現した場合に、2以上のエッジペアに対応する部分の符号付面積を加算して、時間幅積分信号を出力する。これにより、確実にパターンエッジを検出することができるため、正確に領域を区分することができる。さらに、パターンエッジ近傍の欠陥を検出することができる。
さらに、積分信号が、エッジペア連続出現用スレッショルドレベルPtho、Nthoとを比較して、設定時間内にエッジペアが連続して出現していることが検出された場合、以下の情報を得ることができる。具体的には、設定時間内に、積分信号が越えるエッジペア連続出現用スレッショルドレベルの符号に着目することによって、パターンエッジ判定及びパターンエッジ近傍の欠陥判定を行なうことができる。
具体的には、積分信号が設定時間以内に、連続して、正のエッジペア連続出現用スレッショルドレベルPthoを越えた場合、パターンエッジ近傍に欠陥が存在すると判定する。すなわち、図9(d)に示すように、透過パターン32から遮光パターンに照明領域が移動している場合、積分信号が設定時間内に、正のエッジペア連続出現用スレッショルドレベルPthoを連続して2回越える。また、透過パターン32から遮光パターンに照明領域が移動してい場合、積分信号が設定時間内に、負のエッジペア連続出現用スレッショルドレベルNthoを連続して2回越える。このように、積分信号が、設定時間内に連続して2回同じ符号のエッジペア連続出現用スレッショルドレベルを越える場合、パターンエッジ近傍に欠陥があると判定される。
さらに、積分信号が設定時間以内に、異符号、すなわち、正のエッジペア連続出現用スレッショルドレベルPthoと負のエッジペア連続出現用スレッショルドレベルNthoとを越える場合について、図10を用いて説明する。図10(a)は、遮光パターンが設けられている方向と、走査方向が平行でない箇所を示す図である。図10(b)は、図10(a)に示す箇所の、合成像のプロファイルを示す図である。図10(c)は、図10(b)の微分信号を示す図である。図10(d)は、図10(c)の積分信号を示す図である。
図10(a)では、遮光パターン31が走査方向に対して傾いている場合において、照明領域が遮光パターン31の角近傍を通っていく。ここでは、例えば、パターンエッジが走査方向に対して45°傾いている。この場合、照明光は、透過パターン32、遮光パターン31、透過パターン32の順番で走査される。すなわち、透過パターン32から遮光パターン31になるパターンエッジを照明した後、すぐに、遮光パターン31から透過パターン32になるパターンエッジを照明する。従って、合成像のプロファイルは、図10(b)に示すようになる。プロファイル74には、パターンエッジに対応する窪み74cが連続して出現する。ここで、遮光パターン31の角近傍を斜めに走査しているため、窪み74cでは、遮光パターン31のレベルとならない。すなわち、照明領域の一部がパターンエッジをはみ出してしまい、完全に遮光パターン31を照明することができない。よって、2つの窪み74cの中間でも、遮光パターン31と透過パターンを照明することとなる。よって、遮光パターン31の角近傍では、検出信号は、遮光パターン31のレベルまで上昇しない。
ここで、2つの窪み74cのそれぞれは、非対称となっている。すなわち、2つの窪み74cの最低部のレベルは略同じであるが、窪み74cの両外側のレベルが反対になっている。すなわち、1つ目の窪み74cの前は透過パターンのレベルとなり、後は遮光パターン31のレベル近傍となる。さらに、2つ目の窪み74cの前は遮光パターン31のレベル近傍となり、後は透過パターン32のレベルになる。すなわち、プロファイル74は、透過パターン32のレベル、一つ目の窪み74c、遮光パターン31のレベル近傍、2つめの窪み、透過パターン32のレベルの順番となる。
このプロファイルの微分信号は、図10(c)に示すようになる。上記のように窪み74cのそれぞれは非対称となっているので、微分信号に現れるエッジペアは、正と負で異なるレベルとなる。すなわち、一つ目の窪み74cに対応する1つ目のエッジペア84cでは、正の部分が大きくなる。一方。2つ目の窪み74cに対応する2つ目のエッジペア84cでは負の部分が大きくなる。すなわち、遮光パターン31の角近傍では、検出信号の傾きが、負、正、負、正の順番で変化する。
それぞれのエッジペアに対する符号付積分を示す積分信号は、図10(d)に示すようになる。ここで、1つ目のエッジペアでは、正の部分が広いため、正のピークが現れる。一方、2つ目のエッジペアでは、負の部分が広いため、負のピークが現れる。よって、積分信号は、設定時間幅Tsp内に、エッジペア連続出現用スレッショルドを正、負の順番で越える。このように、設定時間幅Tsp内に積分信号が越えるエッジペア連続出現用スレッショルドの符号が異なる場合、遮光パターン31の角近傍を走査していることが検出される。よって、2つのパターンエッジを走査したと判定される。
なお、パターンエッジが、走査方向と傾斜している場合において、透過パターン32の角近傍では、遮光パターン31、透過パターン32、遮光パターン31の順番で照明される。この場合、積分信号は、設定時間幅Tsp内に、エッジペア連続出現用スレッショルドを負、正の順番で越える。すなわち、図10(a)の遮光パターン31と透過パターン32とが入れ替わっている場合は、積分信号に、負のピークが現れた後、正のピークが現れる。よって、設定時間幅Tsp内に、エッジペア連続出現用スレッショルドを負、正の順番で越えることが検出された場合、透過パターン32の角近傍を走査していると判定される。この場合も、2つのパターンエッジを走査したと判定される。
さらに、図10(a)で示した遮光パターン31の角近傍に欠陥が存在している場合、積分信号が、例えば、設定時間幅Tsp内に、正、正、負の順番で越える。この場合、設定時間内で、同じ符号が連続しているとともに、異符号も連続している。したがって、設定時間内に、積分信号が同符号を連続して越えているとともに、異符号を越えている場合、走査方向に傾斜しているパターンの角近傍に欠陥があると判定される。このように、設定時間内に積分信号が越えるエッジペア連続出現用スレッショルドの符号に着目することによって、遮光パターン31の角近傍を走査していることが検出される。
上記のように、設定時間内に、積分信号が越えるエッジペア連続出現用スレッショルドレベルの符号の順番によって、走査方向に対して傾斜したパターンのパターンエッジか否か、及びパターンエッジ近傍の欠陥か否かを判別することができる。すなわち、積分信号が、正、正の順番でエッジペア連続出現用スレッショルドレベルを越えた場合、透過パターン32から遮光パターンへと変わるパターンエッジがあり、かつ、パターンエッジ近傍に欠陥があると判定する。積分信号が、負、負の順番でエッジペア連続出現用スレッショルドレベルを越えた場合、遮光パターン31から透過パターン32へと変わるパターンエッジがあり、かつ、パターンエッジ近傍に欠陥があると判定する。一方、積分信号が正、負の順番でエッジペア連続出現用スレッショルドレベルを越えた場合、パターンエッジが走査方向に対して傾斜し、かつ、遮光パターン31の角であると判定される。すなわち、透過パターン、遮光パターン31、透過パターン32の順番で変わっていると判定する。また、積分信号が負、正の順番でエッジペア連続出現用スレッショルドレベルを越えた場合、パターンエッジが走査方向に対して傾斜し、かつ、透過パターン32の角であると判定される。すなわち、遮光パターン31、透過パターン32、遮光パターン31の順番で変わっていると判定する。
このように、エッジペアが設定時間内に2以上出現するか否かを判別する。そして、設定時間内に出現する2つのエッジペアの符号付面積が、同符号である場合に、前記2つのエッジペアに対応する位置が、パターンエッジであり、かつ欠陥が存在すると判定する。これにより、確実に領域を区分することができる。さらには、パターンエッジ近傍の欠陥を検出することができる。一方、設定された時間内に出現する2つのエッジペアの符号付面積が、異符号である場合に、走査方向とパターンエッジの方向が傾いており、2つのエッジペアに対応する位置がパターンの角近傍であると判定する。これにより、パターンが走査方向に傾いていることを検出することができる。
なお、走査方向と、パターンエッジが平行な場合でも、パターン幅が狭いときは、設定時間内に、積分信号に異符号のピークが現れる。すなわち、パターン幅が狭いとき、設定時間内に2回パターンエッジを越える。この場合、図10(b)で示した検出信号となる。よって、設定時間以内に、異符号のエッジペア連続出現用スレッショルドレベルを越える場合、2回パターンエッジを越えていると判定することができる。
設定時間内に、積分信号が越えたエッジペア連続出現用スレッショルドレベルの符号の順番に着目することによって、上記の情報を得ることができる。次に、図11を用いて、上記の処理を行うための回路構成について説明する。図11は、本実施の形態にかかる検査装置において、処理装置50の一部である回路構成を示すブロック図である。なお、図8で示した構成と同様の構成については、同様の処理が行われるため説明を省略する。
図11に示すように、透過反射合成像に対応する検出信号は、1次微分回路61によって微分され、エッジペア積分器62によって、各エッジペアの符号付面積が算出される。エッジペアの符号付面積に対応する積分信号はエッジ判別前比較器68に入力される。エッジ判別前比較器68には、エッジペア連続出現用スレッショルドレベルPtho、Nthoが入力されている。エッジ判別前比較器68は、正負のエッジペア連続出現用スレッショルドレベルPtho、Nthoと、積分信号とを比較して、比較結果に基づく比較信号をエッジペア論理回路69に出力する。また、エッジペア論理回路69には、設定時間幅Tspが入力されている。
エッジペア論理回路69は、エッジ判別前比較器68の比較信号に基づいて、設定時間幅Tsp内に、積分信号が2回以上エッジペア連続出現用スレッショルドレベルPtho、Nthoを越えるか否かを判定する。積分信号が2回以上エッジペアを連続して越える場合、その符号が同じか否かを判定する。同符号である場合、エッジ領域内に欠陥ありと判定する。この判定結果は、欠陥検出用比較器67に入力される。一方、異符号の場合、エッジ領域と判定する。この結果は領域区分回路65に入力される。すなわち、異符号の場合、時間幅積分信号が、エッジ検出用スレッショルドレベルを越えなくなってしまうおそれがあるため、検出されたエッジの位置が領域区分回路65に直接、入力される。
エッジペア論理回路69は、設定時間幅Tspで2回エッジペア連続出現スレッショルドレベルを越えていると判定された場合、エッジペア積分加算回路70は時間幅積分信号を生成する。すなわち、図9(e)に示したように、2つのエッジペアに対応する符号付面積を積算する。設定時間幅で、1回しかエッジペア連続出現スレッショルドレベルを越えていないと判定された場合、1つのエッジペアに対応する符号付面積をそのまま、時間幅積分信号として出力する。このように、エッジペア論理回路69は、設定時間幅で、エッジペア連続出現スレッショルドレベルを越えた回数及びその符号を判定する。そして、エッジペア積分加算回路70は、エッジペア論理回路69からの出力に基づいて、時間幅積分信号をエッジ判別用比較器63に出力する。
エッジ判別用比較器63は、時間幅積分信号と、エッジ検出用スレッショルドレベルPth、Nthが入力される。エッジ判別用比較器63は、これらを比較して、比較結果を出力する。これにより、エッジの位置が検出される。すなわち、エッジ判別用比較器63の比較結果を示す比較信号は、エッジの位置を示している。ここでは、実施の形態2と同様に、比較信号Rin,Routが出力される。エッジ膨張器64は実施の形態2と同様にエッジを膨張させる。エッジ膨張器64からの出力は、領域区分回路65に入力される。領域区分回路65は、実施の形態2と同様に、3つの領域に区分する。すなわち、透過域を示す透過域ゲート、反射域を示す反射域ゲート、及び、パターンエッジを示すエッジ域ゲートを欠陥検出用比較器67に出力する。さらに、本実施の形態では、エッジペア論理回路69からエッジ領域と判定された箇所が領域区分回路65に加えられている。領域区分回路65は、エッジ膨張器64及びエッジペア論理回路69の出力信号に基づいて、領域を区分する。そして、領域区分回路65は、区分結果に基づく各ゲートを出力する。
欠陥検出用比較器67には、各ゲートが入力される。また、欠陥検出用比較器67には、遅延回路66によって遅延された検出信号が入力されている。さらに、欠陥検出用比較器67には、領域に応じて設定された欠陥検出用スレッショルドレベルRth,Tth、Ethが入力されている。そして、欠陥検出用比較器67は、実施の形態2と同様に、これらの信号に基づいて、欠陥箇所を特定する。これにより、領域毎に異なる欠陥検出用スレッショルドレベルで欠陥箇所が特定される。さらに、本実施の形態では、上記の比較結果により特定された欠陥箇所に対して、エッジペア論理回路69で検出された欠陥箇所を加える。このように、欠陥検出用比較器67は、各ゲートにより選択された欠陥検出用スレッショルドレベルとの比較結果、及びエッジペア論理回路69からの出力信号により欠陥箇所を特定する。これにより、欠陥を精度よく検出することができる。これにより、検査をより正確に行なうことができる。
なお、実施の形態1〜3にかかる検査装置又は検査方法をそれぞれ組み合わせて用いてもよい。また、実施の形態3は実施の形態2の演算処理に対して加えた構成について説明したが、実施の形態3を単独で用いてもよく、実施の形態1と組み合わせてもよい。。また、実施の形態1〜3で示した処理を同時に行いながら、欠陥を検出するようにしてもよい。また、実施の形態2、3で示した検査方法、検査装置は、例えば、マスクなどのパターン基板の検査に好適である。そして、上記の検査方法、検査装置によって、マスクを検査して、半導体基板やカラーフィルタ基板のパターン形成のための露光を行なうことによって、パターン基板の生産性を向上することができる。