JP4820217B2 - コンバインの分草装置 - Google Patents

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本発明は、分草杆を分草作用姿勢と格納姿勢とに切換え揺動可能に構成したコンバインの分草装置に関する。
従来のコンバインの分草装置は、例えば、特許文献1に開示されているように、分草杆を出退操作する操作レバーを刈取り部に装備して、運転座席に着座した運転作業者が左手を伸ばして前後に揺動操作するよう構成したレバー式のものが知られている。
特開2003−153629号公報
近年では電動モータの機能向上に伴い、その小型化及びコストの低廉化が進んだため、従来のような、運転者が操作レバーを操作することで、連係ワイヤを引っ張って分草杆を分草作用姿勢と格納姿勢に切り替える構造に代えて、電動モータを使用して分草杆の姿勢変更を行う構造を採用したものが提唱されている。
従来のレバー式(機械式)の分草装置の場合、たとえ泥や土の多い環境で使用したとしても、レバー操作が重くなる程度で、作業後のメンテナンス等で泥や土を除去したり、グリスアップ等することで使用し続けることが可能である。しかし、電動モータやスイッチ等の電子機器類は泥や土の影響を受け易いため、泥や土の多い環境で使用すると、動作不良や故障を招き易く、最悪の場合には、短期間での交換が必要となる。
特に、分草杆はコンバインの刈取作業による泥や土の影響を受け易い低い位置に配置されているため、分草杆の姿勢変更操作に電動モータを使用する場合には、電動モータを泥や土の影響を受け難い高い位置に配置する必要がある。
本発明は、電動モータの配置を工夫することによって、動作不良や故障を起こし難いコンバインの分草装置を実現することを目的とする。
[I]
(構成)
本発明の第1特徴は、刈取り部における横一側の外側に装備した分草杆を、揺動支点周りに横外方に張り出した分草作用姿勢と刈取り部側に退避した格納姿勢とに切換え揺動可能に構成してあるコンバインの分草装置において次のように構成することにある。
刈取り部フレームからの動力を引起し装置の上部に伝達する縦伝動軸を内装する縦伝動ケースにブラケットを固定し、
前記ブラケットの機体外側部分の前面側に正逆回転可能な電動モータを連結するとともに、前記ブラケットの機体内側部分の後面側に後向きに設けられた操作軸に操作アームを揺動自在に支持して、前記電動モータから後方に延出した出力軸と前記操作アームとを連動し、
前記分草杆の前記揺動支点よりも上方に配置された前記操作アームと、前記分草杆とを機体上下向きの連係部材により連係する。
(作用)
本発明の第1特徴によると、正逆回転可能な電動モータと操作アームとを分草杆の揺動支点よりも上方に配置し、操作アームと分草杆とを機体上下向きの連係部材により連係することにより、電動モータと操作アームとを泥や土の影響を受け難い高い位置に配置することができる。
(発明の効果)
本発明の第1特徴によると、コンバインの刈取作業による泥や土の影響を受け難い高い位置に電動モータと操作アームとを配置することができるため、電動モータ及び操作アームの動作不良や故障を防止することができる。
[II]
(構成)
本発明の第2特徴は、本発明の第1特徴のコンバインの分草装置において次のように構成することにある。
前記操作アームを前記操作軸から機体外側に延出して、その延出端部と前記分草杆とを前記連係部材としての連係ロッドで連係する。
[III]
(構成)
本発明の第3特徴は、本発明の第1又は第2特徴のコンバインの分草装置において次のように構成することにある。
前記ブラケットの上下及び左右中央部に開口を形成し、前記電動モータの出力軸に連結された出力ギアと前記操作軸に連結された駆動ギアとを前記開口を介して連動させる。
[IV]
(構成)
本発明の第4特徴は、本発明の第1〜第3特徴のいずれか一つのコンバインの分草装置において次のように構成することにある。
前記ブラケットを、格納姿勢での前記分草杆と側面視で重複するように、前記縦伝動ケースの上下中間部に配備する。
図1〜図3に示すように、このコンバインは、左右一対のクローラ走行装置1を備えた走行機体2の前部に2条刈り仕様の刈取り部3が昇降及び横移動自在に連結されるとともに、走行機体2に運転部4、脱穀装置5、穀粒回収タンク6等が搭載されている。
刈取り部3には、植立穀稈を所定の刈取り姿勢に引起す左右一対の引起し装置7、引起した植立穀稈を切断するバリカン型の刈取り装置8、刈取り穀稈を後方に掻き込む左右一対の補助搬送ベルト9、刈取り穀稈の株元を掻き込み合流す左右一対の回転パッカ10、刈取り穀稈を後方上方に向けて搬送する供給搬送装置11等を備えて構成されており、刈取り部3全体が上下揺動自在に支持されている。
刈取り部3には、引起し装置7、刈取り装置8、補助搬送ベルト9、回転パッカ10、等を支持する角パイプ材からなる刈取り部フレーム12が前下がり傾斜姿勢で備えられている。この刈取り部フレーム12には伝動軸(図示せず)が内蔵されており、エンジン(図示せず)から刈取り部フレーム12に伝動された動力が刈取伝動軸を介して左右の縦伝動軸に伝動されて、刈取り部3の引起し装置7や刈取り装置8等を駆動するようになっている。
刈取り部3の左外側部に、サイドカバー28を備え、その外側に、刈取り走行時に未刈り植立作物が機体側に倒れ込んで刈取り部3の各部に引っ掛かったり、クローラ走行装置1で踏みつけられるのを回避するための分草杆18が起伏揺動自在に装備されている。後述するように、この分草杆18は運転部4の左側に設けた操作スイッチ19を操作することによって任意に出退操作できるようになっている。
図3〜図6に示すように、刈取伝動軸が内装される横向き伝動ケース15の左端部に固定されたクランクカバー20の後部にブラケット21が固定されており、このブラケット21に、操作アーム22がスペーサ27及びピン23を介して、揺動支点Pを通る機体前後方向の軸心P1周りに回動自在に支持されている。操作アーム22は側面視でU字状の折り曲げ材によって形成されている。この操作アーム22の端部に分草杆18の揺動パイプ18bが固着されており、他端には、後述する連係ロッド24の下端側が回動自在に取り付けられている。
図3及び図4に示すように、刈取り部3の左側部にサイドカバー28を備え、電動モータ33や、摩擦機構13などは、分草杆18の揺動支点Pの上方で、このサイドカバー28の内側に配設されている。サイドカバー28の内側の空間には、刈り取った稲の稲屑やほこりが入りにくいため、この空間に電動モータ33や摩擦機構13を配置することによって、電動モータ33の動作不良や故障を防止することができるとともに、摩擦機構13に刈り取った稲の稲屑やほこりが入り難くなり、安定した摩擦力を確保することが可能になる。
また、刈取作業時に、このサイドカバー28の外側を未刈作物(図示せず)が通過するため、電動モータ33や連係機構14などがこの未刈作物に接触することがない。そのため、刈取作業時に電動モータ33や連係機構14などが未刈作物の流れを遮ったり、未刈作物が電動モータ33や連係機構14等に絡みついたりすることを防止できる。
図3及び図4に示すように、連係ロッド24は側面視でコ字状に成形されており、その両端部が略同一平面上に位置する操作アーム22の後面側と操作アーム41の後面側に連係されている。このように、連係ロッド24を配置することにより、連係ロッド24を無理なく操作することができ、連係ロッド24の作動不良を防止することができる。
図3〜図6に示すように、分草杆18の本体パイプ18aの前端部は、左端分草具17に固定した取付ブラケット25にピン26を介して機体前後方向の軸心P1周りに回動自在に取り付けられている(図5参照)。このように構成することで、操作アーム22に取り付けた連係ロッド24を上下方向に押し引き操作すると、機体前後方向の軸心P1周りに操作アーム22が揺動し、この操作アーム22に固着した分草杆18が横外方に張り出した分草作用姿勢と、刈取り部側に退避した格納姿勢とに切換え揺動するようになっている。
ブラケット21の上部には後方に折り曲げられたストッパー部21aが形成されており、操作アーム22がストッパー部21aに接当することによって、分草作用姿勢と格納姿勢とに位置決めされるようになっている。
図7及び図8に示すように、横向き伝動ケース15から上方縦伝動軸を内装する縦伝動ケース16が延出され、この縦伝動ケース16にコ字状の固定ブラケット30が固着されており、この固定ブラケット30にモータブラケット31がボルト32によって固定されている。モータブラケット31には、電動モータ33がギアボックス34を介して固定されている。電動モータ33の出力はギアボックス34において減速された後、ギアボックス34から後方に延出した出力軸35に固定した出力ギア36に伝達されるようになっている。
出力ギア36は、モータブラケット31に形成された開口31Aを介して、後述する駆動ギア40と噛合されており、電動モータ33からギアボックス34を介して出力軸35に出力された動力が出力ギア36と駆動ギア40によってさらに減速されるようになっている。
図7及び図8に示すように、この分草装置の摩擦機構13は、2枚の摩擦板42、押付板43、皿バネ44等によって構成されている。以下、この摩擦機構13の構造及びその作用について詳細に説明する。
モータブラケット31には支軸37が後向きに固定されており、この支軸37に操作軸38が前後に設けた2つのカラー39を介して機体前後方向の軸心P2周りに回動自在に取り付けられている。この操作軸38と一体回動可能に、駆動ギア40、2枚の摩擦板42及び押付板43が取り付けられており、2枚の摩擦板42の間に、操作軸38に対して回動自在に操作アーム41が取り付けられている。押付板43の後方には、皿バネ44及び押え板45を備え、上述した駆動ギア40、2枚の摩擦板42、操作アーム41及び押付板43とともに、ナット46によって操作軸38に取り付けられている。
このように構成することで、ナット46を操作軸38にねじ込んで、押え板45を介して皿バネ44を押付板43に押し当てて、皿バネ44のバネ反力を作用させる。そのバネ反力によって、操作アーム41と2枚の摩擦板42の間に摩擦力を作用させる。摩擦力が作用すると、電動モータ33から出力ギア36を介して駆動ギア40に伝達された動力が操作アーム41に伝達されるようになっている。
この摩擦力は、ナット46のねじ込み代を変更することで調整できるようになっている。すなわち、ナット46を操作軸38に多くねじ込めば、皿バネ44のバネ反力が大きくため、摩擦板42に働く摩擦力を大きくすることができる。逆に、ナット46を緩めれば、皿バネ44のバネ反力が小さくなるため、摩擦板42に働く摩擦力を小さくすることができる。
図7及び図8に示すように、操作アーム41は、Z字状の折り曲げ板によって形成されており、その折り曲げられた先端部に前述した連係ロッド24が回動自在に取り付けられている。この操作アーム41は、上述した通り、分草杆18を固着した操作アーム22と連係ロッド24によって連係されており、操作アーム41が揺動すれば連係ロッド24を介して操作アーム22が揺動して、分草杆18の姿勢変更を行うことができるようになっている。このように、この分草装置の連係機構14は、操作アーム22、連係ロッド24、操作アーム41などによって構成されている。
図4及び図8に示すように、電動モータ33が正回転するとギアボックス34を介して出力ギア36が機体背面視で反時計回りに回転して、この出力ギア36に噛合された駆動ギア40が機体背面視で時計回りに回転する。駆動ギア40の回転が摩擦板42を介して操作アーム41に伝達されて、操作アーム41が駆動ギア40と一体回転(機体背面視で時計回りに回転)することで、操作ロッド24を引き上げて、この操作ロッド24に連係した操作アーム22を機体背面視で反時計回りに回転させることで、分草杆18を刈取り部側に退避した格納姿勢から横外方に張り出した分草作用姿勢に切換え揺動する。
一方、電動モータ33が逆回転するとギアボックス34を介して出力ギア36が機体背面視で時計回りに回転して、この出力ギア36に噛合された駆動ギア40が機体背面視で反時計回りに回転する。駆動ギア40の回転が摩擦板42を介して操作アーム41に伝達されて、操作アーム41が駆動ギア40と一体回転(機体背面視で反時計回りに回転)することで、操作ロッド24を押し下げて、この操作ロッド24に連係した操作アーム22を機体背面視で時計回りに回転させることで、分草杆18を横外方に張り出した分草作用姿勢から刈取り部側に退避した格納姿勢に切換え揺動する。
図2に示すように、電動モータ33の操作は、運転部4の左側に設けた操作スイッチ19を操作することにより行う。操作スイッチ19は分草杆18を分草作用姿勢に揺動させるための作用スイッチ19aと分草杆18を格納姿勢に揺動させるための格納スイッチ19bからなり、作用スイッチ19aを押すと電動モータ33が正回転して分草杆18が分草作用姿勢に向って揺動する。一方、格納スイッチ19bを押すと電動モータ33が逆回転して分草杆18が格納姿勢に向って揺動する。
[発明の実施の別形態]
前述の[発明を実施するための最良の形態]においては、連係部材の一例として連係ロッド24を用いた例を示したが、連係部材としては、連係ワイヤ(図示せず)やプッシュプルワイヤ(図示せず)等を採用してもよい。例えば、分草杆18の自重を利用して分草作用姿勢に分草杆18を作用させる構造を採用した場合には、引き操作のみできればよいため、連係ワイヤを採用することができる。連係ワイヤやプッシュプルワイヤを連係部材として採用すると、比較的自由に配線することができるため、電動アクチュエータを泥やほこりの影響を受け難い位置に配置することが可能となり、電動アクチュエータの作動不良や故障を防止することができる。
コンバインの全体左側面図 コンバインの全体平面図 分草装置付近の縦断側面図 分草装置付近の縦断背面図 分草杆の前部支持構造を示す側面図 分草杆の支持構造を示す平面図 摩擦機構取り付け部の縦断側面図 電動モータ取り付け部の縦断背面図
3 刈取り部
12 刈取り部フレーム
16 縦伝動ケース
18 分草杆
24 連係ロッド(連係部材)
31 モータブラケット(ブラケット)
31A 開口
33 電動モータ
35 出力軸
36 出力ギア
38 操作軸
40 駆動ギア
41 操作アーム
P 揺動支点

Claims (4)

  1. 刈取り部における横一側の外側に装備した分草杆を、揺動支点周りに横外方に張り出した分草作用姿勢と刈取り部側に退避した格納姿勢とに切換え揺動可能に構成してあるコンバインの分草装置であって、
    刈取り部フレームからの動力を引起し装置の上部に伝達する縦伝動軸を内装する縦伝動ケースにブラケットを固定し、
    前記ブラケットの機体外側部分の前面側に正逆回転可能な電動モータを連結するとともに、前記ブラケットの機体内側部分の後面側に後向きに設けられた操作軸に操作アームを揺動自在に支持して、前記電動モータから後方に延出した出力軸と前記操作アームとを連動し、
    前記分草杆の前記揺動支点よりも上方に配置された前記操作アームと、前記分草杆とを機体上下向きの連係部材により連係してあるコンバインの分草装置。
  2. 前記操作アームを前記操作軸から機体外側に延出して、その延出端部と前記分草杆とを前記連係部材としての連係ロッドで連係してある請求項1記載のコンバインの分草装置。
  3. 前記ブラケットの上下及び左右中央部に開口を形成し、前記電動モータの出力軸に連結された出力ギアと前記操作軸に連結された駆動ギアとを前記開口を介して連動させてある請求項1又は2記載のコンバインの分草装置。
  4. 前記ブラケットを、格納姿勢での前記分草杆と側面視で重複するように、前記縦伝動ケースの上下中間部に配備してある請求項1〜3のいずれか一項に記載のコンバインの分草装置。
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