JP4817784B2 - 熱伝導性ポリカーボネート系樹脂組成物および成形体 - Google Patents

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Description

本発明は、熱伝導性、成形加工性に優れ、成形品のそりが少なく、表面平滑性が優れているポリカーボネート系樹脂組成物およびその成形体に関するものである。
ポリカーボネート樹脂は優れた耐衝撃性、耐熱性、寸法安定性等のバランスの取れた性質を有しており、電気・電子分野、精密機械分野、自動車分野、保安・医療分野、食品・雑貨分野等の幅広い用途に採用されている。特に、OA分野、電気・電子分野、精密機械分野、自動車分野での需要が伸びている。
これらの分野においては、ほとんどの機器が発熱する部品を搭載しているが、近年、装置・部品の高性能化に伴い消費電力量が増え、部品からの発熱量が増大する傾向にあるため、局部的な高温が誤動作等のトラブルを引き起こす原因となることが懸念されている。
現状では、筐体やシャーシ、放熱板などに金属材料を用いて発生する熱を拡散させているが、安価な樹脂材料の熱伝導率を高めることで、これら金属部品の代替への要求が高まっている。
樹脂材料に熱伝導性を付与させる方法として、種々の熱伝導性フィラーを樹脂成分に混合する方法が多数報告されている。例えば、特許文献1には高熱伝導性無機繊維および高熱伝導性無機粉末を共に充填した熱伝導度の優れた熱可塑性樹脂が示されている。但し、該特許文献1では、熱可塑性樹脂として、ポリカーボネート樹脂を実際に使用した例はなく、また高熱伝導性無機繊維として、気相成長法炭素繊維ウィスカーが使用されているが、繊維径が小さく、アスペクト比が大きいため、樹脂中への均一な分散が困難であり、また分散時に繊維が切れる等して十分な熱伝導性が得られない。また、該特許文献1では、流動性や、射出成形品のそりや寸法安定性は全く評価されていない。
また特許文献2には、繊維径が5〜20μm、平均粒子径が10〜500μmの黒鉛化炭素繊維を含有した熱伝導性高分子材料が記載されている。但し、該特許文献2は、高熱伝導性を得るために、樹脂中への充填量を大きくすることを主眼としており、高分子材料の種類は、シリコーンゴム、エポキシ樹脂、熱可塑性エラストマーの他、熱可塑性樹脂としてはポリアセタールが使用されているのみで、これらはいずれも強度、外観などの点で、OA、電気・電子部品、精密機器等の筐体としての用途には不適切なものばかりであり、成形性や、射出成形品のそり、寸法安定性、表面平滑性の改善については全く意図されていない。
さらに、特許文献3には熱伝導性カーボン繊維と黒鉛とを配合してなる熱可塑性樹脂組成物が記載されている。しかし、該熱可塑性樹脂としては、具体的にはポリフェニレンサルファイド(PPS)が使用されているのみである。しかも、カーボン繊維と黒鉛との合計使用量が非常に多い量であり、成形品のそりや表面平滑性については、全く記載が無い。
更に特許文献4には、長さ方向の熱伝導率が400W/m・K以上の炭素繊維集合体を熱可塑性樹脂100重量部に30重量部以上配合してなる繊維強化樹脂組成物が記載されている。しかし、具体的にはポリブチレンテレフタレート樹脂に配合した例が記載されているのみで、具体的な熱伝導率は記載が無く、また実際には該炭素繊維集合体の配合量が多く、流動性や成形品のそり、表面平滑性に関する記載も無い。
ところで、該特許文献1から4のいずれにも炭素繊維が含有されているが、これにより成形体表面の平滑性が劣る。このように成形体表面に凹凸があると、他の部材や手が擦れたとき、凸部が磨耗したり、凸部分の根元に応力が集中したりするため、凸部が破損や剥離してしまい、樹脂粉が発生する。このように電気伝導性の良い炭素繊維や熱伝導性粉体を含む樹脂粉が電子機器中の電子基板等の上に付着すると、電気的に短絡が発生し、問題となる可能性がある。このような理由から、熱伝導性樹脂組成物の成形体の表面を平滑にすることも求められている。しかし、特許文献1から4のいずれにも成形体の表面平滑性に関する記述は見られない。
特開平8−283456公報 特開2002−88250公報 特開2003−49081公報 特開2000−143826号公報
本発明は、熱伝導性、成形加工性に優れ、成形品のそりが少なく、表面平滑性の優れた、ポリカーボネート系樹脂組成物およびその成形体を提供することを目的とするものである。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、ポリカーボネート樹脂またはポリカーボネートと他の樹脂とのアロイに、特定の熱伝導性炭素繊維、熱伝導性粉末、芳香族ポリカーボネートオリゴマーを特定量加えることにより、熱伝導性、成形加工性に優れ、成形品のそりが少なく、表面平滑性の優れた樹脂組成物およびその成形体が得られることを見出し、本発明に到達した。
すなわち本発明は、(A)ポリカーボネート系樹脂100重量部に対し、
(B)平均重合度2〜15の芳香族ポリカーボネートオリゴマー1重量部以上40重量部以下、
(C)黒鉛化されてなる炭素繊維であって、長さ方向の熱伝導率が100W/m・K以上、かつ繊維平均径5〜20μmの炭素繊維5重量部以上40重量部未満、及び
(D)熱伝導率が10W/m・K以上で平均粒子径が1〜500μmの熱伝導性黒鉛粉体5重量部以上100重量部以下含有する組成物であって、
該組成物を樹脂温度(パージ樹脂の実測温度)300℃、金型温度110℃、射出圧力147MPaの条件で射出成形して得た、縦100mm、横100mm、厚み3mmの成形品について
a)測定長さは4.0mm、カットオフ波長0.8mm、測定速度0.3mm/sとして測定した、表面粗さが、10点平均粗さで8.74μm以下であり、かつ
b)ニチバン製セロファンテープ(「CT405A−18」)を使用し、試料の測定表面に貼り付け、90度の方向に勢い良く引張り剥離する操作を略同一位置で10回連続して行い、観察した粉落ち評価が○(粉落ち無し)であることを特徴とするポリカーボネート系樹脂組成物、及び該熱伝導性ポリカーボネート系樹脂組成物を成形してなることを特徴とする成形体であって、特にOA、電気・電子、精密機器部品の筐体として有用な成形体に関するものである。
本発明のポリカーボネート系樹脂組成物は、熱伝導性、成形加工性に優れ、成形品のそりが少なく、寸法安定性が良好で、表面平滑性に優れて、粉落ちの観察されない成形体を与えるため、その工業的有用性は大きく、OA機器、電気・電子部品、精密機器の筐体を始めとする、多くの分野に有用なものである。
以下本発明を詳細に説明する。
本発明で用いられる(A)ポリカーボネート系樹脂とは、ポリカーボネート樹脂単独(ポリカーボネート樹脂単独とは、ポリカーボネート樹脂の1種のみを含む態様に限定されず、例えば、モノマー組成や分子量が互いに異なる複数種のポリカーボネート樹脂を含む態様を含む意味で用いる)、又はポリカーボネート樹脂と他の熱可塑性樹脂とのアロイ(混合物)である。該アロイとしては、ポリカーボネート樹脂100重量部に対して他の熱可塑性樹脂が100重量部以下の割合で含むのが好ましく、70重量部以下の割合で含むのがより好ましい。該他の熱可塑性樹脂としては、熱可塑性ポリエステル樹脂やスチレン系樹脂が好ましく、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、またはアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体がより好ましく、さらに好ましくは、ポリカーボネート樹脂100重量部に対してポリブチレンテレフタレート樹脂もしくはポリエチレンテレフタレート樹脂を100重量部以下の割合で含むポリカーボネート樹脂系アロイ、またはアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体を10〜70重量部の割合で含むポリカーボネート樹脂系アロイである。
本発明では、ポリカーボネート樹脂として、芳香族ポリカーボネート樹脂、脂肪族ポリカーボネート樹脂、芳香族−脂肪族ポリカーボネート樹脂を用いることができるが、中でも芳香族ポリカーボネート樹脂が好ましい。該芳香族ポリカーボネート樹脂としては、芳香族ジヒドロキシ化合物をホスゲンまたは炭酸のジエステルと反応させることによって得られる熱可塑性芳香族ポリカーボネート重合体または共重合体である。
該芳香族ジヒドロキシ化合物としては、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(=ビスフェノールA)、テトラメチルビスフェノールA、ビス(4−ヒドロキシフェニル)−P−ジイソプロピルベンゼン、ハイドロキノン、レゾルシノール、4,4−ジヒドロキシビフェニルなどが挙げられ、好ましくはビスフェノールAが挙げられる。さらに、難燃性をさらに高める目的で上記の芳香族ジヒドロキシ化合物にスルホン酸テトラアルキルホスホニウムが1個以上結合した化合物や、シロキサン構造を有する両末端フェノール性OH基含有のポリマーあるいはオリゴマーを使用することができる。
本発明で用いる芳香族ポリカーボネート樹脂としては、好ましくは、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンから誘導されるポリカーボネート樹脂、または2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンと他の芳香族ジヒドロキシ化合物とから誘導されるポリカーボネート共重合体が挙げられる。さらに2種以上のポリカーボネート樹脂を併用してもよい。
該ポリカーボネート樹脂の分子量は、溶媒としてメチレンクロライドを用い、温度25℃で測定された溶液粘度より換算した粘度平均分子量で、14,000〜30,000の範囲であり、好ましくは15,000〜28,000、より好ましくは16,000〜26,000である。粘度平均分子量が14,000未満では機械的強度が不足し、30,000を越えると成形性に難を生じやすく好ましくない。
このような芳香族ポリカーボネート樹脂の製造方法については、限定されるものでは無く、ホスゲン法(界面重合法)あるいは、溶融法(エステル交換法)等で製造することができる。さらに、溶融法で製造された、末端基のOH基量を調整した芳香族ポリカーボネート樹脂を使用することができる。
さらに、芳香族ポリカーボネート樹脂としては、バージン原料だけでなく、使用済みの製品から再生された芳香族ポリカーボネート樹脂、いわゆるマテリアルリサイクルされた芳香族ポリカーボネート樹脂の使用も可能である。使用済みの製品としては、光学ディスクなどの光記録媒体、導光板、自動車窓ガラスや自動車ヘッドランプレンズ、風防などの車両透明部材、水ボトルなどの容器、メガネレンズ、防音壁やガラス窓、波板などの建築部材などが好ましく挙げられる。また、再生芳香族ポリカーボネート樹脂としては、製品の不適合品、スプルー、またはランナーなどから得られた粉砕品またはそれらを溶融して得たペレットなども使用可能である。
本発明で用いられる好ましい他の熱可塑性樹脂であるポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)としては、ジメチルテレフタレートとエチレングリコールのエステル交換反応、またはテレフタル酸とエチレングリコールの直接エステル化反応のいずれで製造されたものでも良い。
本発明で用いられる好ましい他の熱可塑性樹脂であるポリブチレンテレフタレート樹脂(PBT)としては、ジメチルテレフタレートと1,4−ブタンジオールのエステル交換反応によるDMT法、テレフタル酸と1,4−ブタンジオールの直接重合法のいずれで製造されたものでも良い。
また、該PET、PBTのいずれの場合においても、重縮合反応時に、テレフタル酸又はそのジアルキルエステルと共に、フタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸、トリメリット酸やそれらのジアルキルエステル等の二塩基酸、三塩基酸等や、またそれらのジアルキルエステルを使用することができる。これらの使用量は、テレフタル酸又はそのジアルキルエステル100重量部に対して40重量部以下の範囲であることが好ましい。
また、同じく重縮合反応時に、該エチレングリコール、又は1,4−ブタンジオールと共に、他の脂肪族グリコールとして、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ヘキサメチレングリコール等や、脂肪族グリコール以外に例えばシクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、キシレングリコール、2、2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、グリセリン、ペンタエリスリトール等の他のジオール類や多価アルコール類を併用することができる。これらジオール類又は多価アルコール類の使用量は、脂肪族グリコール100重量部に対して40重量部以下の範囲であることが好ましい。これらの使用量は、テレフタル酸又はそのジアルキルエステル100重量部に対して40重量部以下の範囲であることが好ましい。
ポリエステル樹脂の分子量としては、フェノールとテトラクロロエタンの混合溶媒(重量比=50/50)中、30℃で測定される極限粘度で、好ましくは0.5〜1.8であり、さらに好ましくは0.7〜1.5である。
さらに、本発明のPETとPBTとしては、バージン原料だけでなく、使用済みの製品から再生されたPETとPBT、いわゆるマテリアルリサイクルされたPETとPBTの使用も可能である。使用済みの製品としては、容器、フィルム、シート、繊維等が主として挙げられるが、より好適なものはPETボトル等の容器である。また再生PETとPBTとしては、製品の不適合品、スプルー、ランナー等から得られた粉砕品又はそれらを溶融して得たペレット等も使用可能である。
本発明において、(A)ポリカーボネート系樹脂がポリブチレンテレフタレート樹脂もしくはポリエチレンテレフタレート樹脂とのアロイである場合には、ポリカーボネート樹脂100重量部に対し、ポリブチレンテレフタレート樹脂もしくはポリエチレンテレフタレート樹脂100重量部以下の割合で含むことが好ましい。
また、本発明で用いられる好ましい他の熱可塑性樹脂として、スチレン系樹脂もあげられる。スチレン系樹脂としてはアクリロニトリルースチレン共重合体、アクリロニトリル−スチレン−ブタジエン共重合体、アクリロニトリル−エチレンプロピレンゴム−スチレン共重合体、アクリロニトリル−スチレン−アクリルゴム共重合体等が例示できる。これらスチレン系樹脂の重合方法として塊状重合法や乳化重合法が例示できるが、塊状重合法により重合された樹脂が望ましい。
さらに、本発明のスチレン系樹脂としては、バージン原料だけでなく、使用済みの製品から再生されたスチレン系樹脂、いわゆるマテリアルリサイクルされたスチレン系樹脂の使用も可能である。使用済みの製品としては、ハウジング等が主として挙げられる。また再生スチレン系樹脂としては、製品の不適合品、スプルー、ランナー等から得られた粉砕品又はそれらを溶融して得たペレット等も使用可能である。
本発明において、(A)ポリカーボネート系樹脂がスチレン系樹脂とのアロイである場合には、(A)ポリカーボネート系樹脂が、ポリカーボネート樹脂100重量部に対し、スチレン系樹脂100重量部以下の割合で含むことが好ましい。
本発明における(B)芳香族ポリカーボネートオリゴマーとしては、ビスフェノールA(BPA)をホスゲンまたは炭酸ジエステルとを適当な分子量調節剤を用いて反応させることによって得られるものである。また、ビスフェノールAの一部を他の二価のフェノールで置き換えた共重合型のものであってもよく、他の二価フェノールとしては上記芳香族ポリカーボネート樹脂で説明した二価フェノールが用いられる。
末端停止剤または分子量調節剤としては、一価のフェノール性水酸基を有する化合物や芳香族カルボン酸基を有する化合物等が挙げられ、通常のフェノール、p−t−ブチルフェノール、2,3,6−トリブロモフェノール等の他に、長鎖アルキルフェノール、脂肪族カルボン酸クロライド、脂肪族カルボン酸、ヒドロキシ安息香酸等が挙げられる。本発明で使用される芳香族ポリカーボネートオリゴマーは、一種でも、または二種類を混合して使用しても良い。かかる芳香族ポリカーボネートオリゴマーは、重合度1では成形時に成形品からブリードアウトしやすく、他方重合度が大きくなると満足する流動性、表面平滑性が得られ難くなるため、好ましくは重合度2〜15である。芳香族ポリカーボネートオリゴマーの配合量は、本発明の樹脂組成物中の(A)ポリカーボネート系樹脂100重量部に対して1重量部以上40重量部以下である。1重量部未満では、充分な流動性と表面平滑性は得られにくく、40重量部を超えると、機械的特性を低下させる。より好ましい配合量は(A)ポリカーボネート系樹脂100重量部に対して2重量部以上30重量部以下である。
本発明では(C)黒鉛化されてなる炭素繊維として、長さ方向の熱伝導率が100W/m・K以上、かつ繊維平均径5〜20μmの炭素繊維を5重量部以上40重量部未満使用する。該炭素繊維としては、好ましくは長さ方向の熱伝導率が400W/m・K以上のものである。
(C)黒鉛化されてなる炭素繊維の熱伝導率が上記範囲を外れた場合は、本発明のごとく低充填率において十分な熱伝導性を得ることが出来ない。該本発明で使用する炭素繊維は、例えば、特開2000−143826号公報に記載されている、通常2〜20mmにカットされた炭素短繊維(チョップドストランド)を嵩密度450〜800g/lで収束してなり、次いで黒鉛化されてなる炭素短繊維収束体が好ましいものとして挙げられる。該炭素短繊維収束体は、炭素繊維をサイジング剤で収束させた後、所定の長さに切断して、黒鉛化処理することにより、サイジング剤の含有量を0.1重量%以下にしたものである。該黒鉛化処理の条件としては、例えば、不活性ガス雰囲気中、2800℃〜3300℃で加熱する方法が挙げられる。また、他の方法としては、連続した繊維(ロービング)を黒鉛化処理した後、所定の長さにカットして用いることも可能である。炭素繊維の平均繊維径は画像処理装置(例えば(株)東芝製、画像処理R&Dシステム TOSPIX−i)で測定でき、5〜20μmである。5μm未満ではポリカーボネート樹脂へ混合充填した時の熱伝導性が低下したり、成形品のそりが大きくなったりするなどの問題を生じやすく、20μmを越えると寸法安定性が低下し、良外観が出にくい。また、サイジング剤の含有量は0.1重量%より多いと、熱伝導率の低下を招きやすい。炭素繊維の配合量は40重量部未満であり、これより多いと成形加工性や寸法安定性が低下し、そりが大きくなる。更に、該配合量が5重量部未満であると、十分な熱伝導率が得られない。該配合量としては、好ましくは10重量部以上40重量部未満であり、より好ましくは15重量部以上35重量部以下である。
更に該炭素繊維としては、好ましくは長繊維状のものを使用するのが良い。例えば、1〜30mm、好ましくは2〜20mmのものを用いる。該長繊維状のものを使用することで、熱伝導性の改善、及び成形品のそりの低減の点等で効果的である。
本発明では、熱伝導性、成形加工性を高め、成形品のそりを少なくするために、(D)熱伝導率が10W/m・K以上で平均粒子径が1〜500μmの熱伝導性黒鉛体5重量部以上100重量部以下を併用することが必要である。前記(D)成分の平均粒子径は、JIS Z8825−1に準拠し、レーザー回折法により測定し、JIS Z8819−2に準拠して求めた値である。この値が500μmを超えた場合や、含有量として100重量部を超えた場合は、成形加工性が低下する。該(D)成分の平均粒子径が1μm未満でも、配合時に飛散するなど、取り扱いが困難であり、樹脂中に均一に分散させるのも困難である。該(D)成分の平均粒子径は、5〜100μmであるのが好ましい。さらに、含有量として5重量部未満であると、十分な熱伝導性が得られない。該(C)の炭素繊維の量が少ない場合は、(D)の熱伝導性粉体の量を比較的多めにして、所定の熱伝導率が得られるように、適宜調整する。例えば、(C)の炭素繊維の量が5重量部以上25重量部以下の場合は、(D)の熱伝導性粉体の量は20重量部以上100重量部以下が好ましく、より好ましくは20重量部以上80重量部以下である。(C)の炭素繊維の量が25重量部以上40重量部未満の場合は、(D)の熱伝導性粉体の量を5重量部以上40重量部以下とすることが好ましく、より好ましくは5重量部以上20重量部以下とするのが好ましい。
本発明では、難燃性を付与するために難燃剤を用いることができる。難燃剤としては、組成物の難燃性を向上させるものであれば特に限定されないが、リン酸エステル化合物、有機スルホン酸金属塩、シリコーン化合物が好適である。
該本発明で用いるリン酸エステル化合物としては、たとえば、次式(1)で示される化合物が好ましい。
Figure 0004817784
(式中、R、R、R、Rは互いに独立して、置換されていても良いアリール基を示し、Xは他に置換基を有していても良い2価の芳香族基を示す。nは0〜5の数を示す。)
上記式(1)においてR〜Rで示されるアリール基としては、フェニル基、ナフチル基等が挙げられる。またXで示される2価の芳香族基としては、フェニレン基、ナフチレン基や、例えばビスフェノールから誘導される基等が挙げられる。これらの置換基としては、アルキル基、アルコキシ基、ヒドロキシル基等が挙げられる。nが0の場合はリン酸エステルであり、nが0より大きい場合は縮合リン酸エステル(混合物を含む)である。
具体的には、ビスフェノールAビスホスフェート、ヒドロキノンビスホスフェート、レゾルシノールビスホスフェート、レゾルシノール−ジフェニルホスフェート、あるいはこれらの置換体、縮合体などを例示できる。かかる成分として好適に用いることができる市販の縮合リン酸エステル化合物としては、たとえば、大八化学工業(株)より、「CR733S」(レゾルシノールビス(ジフェニルホスフェート))、「CR741」(ビスフェノールAビス(ジフェニルホスフェート))、旭電化工業(株)より「FP500」(レゾルシノールビス(ジキシレニルホスフェート))といった商品名で販売されており、容易に入手可能である。
本発明組成物中のリン酸エステル系難燃剤の含有量は、(A)ポリカーボネート系樹脂100重量部に対し1〜50重量部であり、好ましくは3〜40重量部、とくに好ましくは5〜30重量部である。リン酸エステル系難燃剤の含有量が1重量部未満では難燃性が不十分であり、50重量部を越えると耐熱性が低下し過ぎるので、好ましくない。
本発明で用いられる有機スルホン酸金属塩としては、好ましくは脂肪族スルホン酸金属塩および芳香族スルホン酸金属塩等が挙げられる。有機スルホン酸金属塩を構成する金属としては、好ましくは、アルカリ金属、アルカリ土類金属などが挙げられ、例えば、ナトリウム、リチウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム及びバリウム等が挙げられる。有機スルホン酸金属塩は、2種以上の塩を混合して使用することもできる。
上記脂肪族スルホン酸塩としては、好ましくは、フルオロアルカン−スルホン酸金属塩、より好ましくは、パーフルオロアルカン−スルホン酸金属塩が挙げられる。また、フルオロアルカン−スルホン酸金属塩としては、好ましくは、フルオロアルカン−スルホン酸のアルカリ金属塩、フルオロアルカン−スルホン酸のアルカリ土類金属塩が挙げられ、より好ましくは、炭素数4〜8のフルオロアルカンスルホン酸のアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩などが挙げられる。該フルオロアルカン−スルホン酸金属塩の具体例としては、パーフルオロブタン−スルホン酸ナトリウム、パーフルオロブタン−スルホン酸カリウム、パーフルオロメチルブタン−スルホン酸ナトリウム、パーフルオロメチルブタン−スルホン酸カリウム、パーフルオロオクタン−スルホン酸ナトリウム、パーフルオロオクタン−スルホン酸カリウムなどが挙げられる。
また、芳香族スルホン酸金属塩としては、好ましくは、芳香族スルホン酸アルカリ金属塩、芳香族スルホン酸アルカリ土類金属塩、芳香族スルホンスルホン酸アルカリ金属塩、芳香族スルホンスルホン酸アルカリ土類金属塩などが挙げられ、芳香族スルホンスルホン酸アルカリ金属塩、芳香族スルホンスルホン酸アルカリ土類金属塩は重合体であってもよい。該芳香族スルホン酸金属塩の具体例としては、3,4−ジクロロベンゼンスルホン酸ナトリウム塩、2,4,5−トリクロロベンゼンスルホン酸ナトリウム塩、ベンゼンスルホン酸ナトリウム塩、ジフェニルスルホン−3−スルホン酸のナトリウム塩、ジフェニルスルホン−3−スルホン酸のカリウム塩、4,4'−ジブロモジフェニル−スルホン−3−スルホン酸のナトリウム塩、4,4'−ジブロモジフェニル−スルホン−3−スルホン酸のカリウム塩、4−クロロ−4'−ニトロジフェニルスルホン−3−スルホン酸のカルシウム塩、ジフェニルスルホン−3,3'−ジスルホン酸のジナトリウム塩、ジフェニルスルホン−3,3'−ジスルホン酸のジカリウム塩などが挙げられる。
有機スルホン酸金属塩の配合量は、(A)ポリカーボネート系樹脂100重量部に対し、0.01重量部以上5重量部以下が好ましく、より好ましくは0.02重量部以上3重量部以下、とりわけ好ましくは0.03重量部以上2重量部以下である。有機スルホン酸金属塩の配合量が0.01重量部未満であると充分な難燃性が得られ難く、5重量部を越えると熱安定性が低下しやすい。
本発明で用いるシリコーン難燃剤は、直鎖状あるいは分岐構造を有するポリオルガノシロキサンが好ましい。ポリオルガノシロキサンが有する有機基は、炭素数が1〜20のアルキル基及び置換アルキル基のような炭化水素またはビニル及びアルケニル基、シクロアルキル基、ならびにフェニル、ベンジルのような芳香族炭化水素基などの中から選ばれる。
ポリジオルガノシロキサンは、官能基を含有していなくても、官能基を含有していてもよい。官能基を含有しているポリジオルガノシロキサンの場合、官能基はメタクリル基、アルコキシ基またはエポキシ基であることが好ましい。
また、これらポリオルガノシロキサンはシリカに担持されていてもよい。
また、本発明では燃焼時の滴下防止を目的として、滴下防止剤を含むことができ、好ましくはフッ素樹脂が挙げられる。ここでフッ素樹脂としては、フルオロエチレン構造を含む重合体、共重合体であり、たとえば、ジフルオロエチレン重合体、テトラフルオロエチレン重合体、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレンとフッ素を含まないエチレン系モノマーとの共重合体である。好ましくは、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)であり、その平均分子量は、500,000以上であることが好ましく、特に好ましくは500,000〜10,000,000である。
本発明で用いることができるポリテトラフルオロエチレンとしては、現在知られているすべての種類のものを用いることができるが、ポリテトラフルオロエチレンのうち、フィブリル形成能を有するものを用いると、さらに高い溶融滴下防止性を付与することができる。フィブリル形成能を有するポリテトラフルオロエチレン(PTFE)には特に制限はないが、例えば、ASTM規格において、タイプ3に分類されるものが挙げられる。その具体例としては、例えばテフロン(登録商標)6−J(三井・デュポンフロロケミカル(株)製)、ポリフロンD−1、ポリフロンF−103、ポリフロンF201(ダイキン工業(株)製)、CD076(旭アイシーアイフロロポリマーズ(株)製)等が挙げられる。また、上記タイプ3に分類されるもの以外では、例えばアルゴフロンF5(モンテフルオス(株)製)、ポリフロンMPA、ポリフロンFA−100(ダイキン工業(株)製)等が挙げられる。これらのポリテトラフルオロエチレン(PTFE)は、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせてもよい。上記のようなフィブリル形成能を有するポリテトラフルオロエチレン(PTFE)は、例えばテトラフルオロエチレンを水性溶媒中で、ナトリウム、カリウム、アンモニウムパーオキシジスルフィドの存在下で、1〜100psiの圧力下、温度0〜200℃、好ましくは20〜100℃で重合させることによって得られる。
また、溶媒にて分散されたテフロン(登録商標)30−J(三井・デュポンフロロケミカル(株)製)であっても構わない。
また、ポリテトラフルオロエチレン粒子と有機系重合体粒子とからなるポリテトラフルオロエチレン含有混合粉体であってもよい。有機系重合体粒子を生成するための単量体の具体例としては、スチレン、p−メチルスチレン、o−メチルスチレン、p−クロルスチレン、o−クロルスチレン、p−メトキシスチレン、o−メトキシスチレン、2,4−ジメチルスチレン、α−メチルスチレン等のスチレン系単量体、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸ブチル、アクリル酸−2−エチルヘキシル、メタクリル酸−2−エチルヘキシル、アクリル酸ドデシル、メタクリル酸ドデシル、アクリル酸トリドデシル、メタクリル酸トリドデシル、アクリル酸オクタデシル、メタクリル酸オクタデシル、アクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル等の(メタ)アクリル酸エステル系単量体、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアン化ビニル系単量体、ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル等のビニルエーテル系単量体、酢酸ビニル、酪酸ビニル等のカルボン酸ビニル単量体、エチレン、プロピレン、イソブチレン等のオレフィン系単量体、ブタジエン、イソプレン、ジメチルブタジエン等のジエン系単量体等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。好ましくは、これらの単量体の重合体または共重合体を2種以上用い、有機系重合体粒子を得ることができる。
該滴下防止剤の配合量としては、好ましくはポリカーボネート系樹脂組成物中0.05重量%以上0.5重量%以下であり、より好ましくは0.2重量%以上0.5重量%以下である。
また、本発明では衝撃強度向上の為に耐衝撃性改良剤としてエラストマーを含むことができる。該エラストマーとしては、特に限定されるものではないが、多層構造重合体が好ましい。多層構造重合体としては、例えば、アルキル(メタ)アクリレート系重合体を含む物が挙げられる。これらの多層構造重合体としては、例えば、先の段階の重合体を後の段階の重合体が順次被覆するような連続した多段階シード重合によって製造される重合体であり、基本的な重合体構造としては、ガラス転移温度の低い架橋成分である内核層と組成物のマトリックスとの接着性を改善する高分子化合物から成る最外核層を有する重合体である。これら多層構造重合体の最内核層を形成する成分としては、ガラス転移温度が0℃以下のゴム成分が選択される。これらゴム成分としては、ブタジエン等のゴム成分、スチレン/ブタジエン等のゴム成分、アルキル(メタ)アクリレート系重合体のゴム成分、ポリオルガノシロキサン系重合体とアルキル(メタ)アクリレート系重合体が絡み合って成るゴム成分、あるいはこれらの併用されたゴム成分が挙げられる。さらに、最外核層を形成する成分としては、芳香族ビニル単量体あるいは非芳香族系単量体あるいはそれらの2種類以上の共重合体が挙げられる。芳香族ビニル単量体としては、スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン、モノクロルスチレン、ジクロルスチレン、ブロモスチレン等を挙げることができる。これらの中では、特にスチレンが好ましく用いられる。非芳香族系単量体としては、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアン化ビニルやシアン化ビニリデン等を挙げることができる。
該耐衝撃性改良剤の配合量としては、好ましくはポリカーボネート系樹脂組成物中1重量%以上10重量%以下であり、より好ましくは2重量%以上5重量%以下である。
また、本発明の樹脂組成物には、弾性率、強度、荷重たわみ温度の向上のため、補強材を添加することができる。ここで、補強材としては、シリカ、珪藻土、軽石粉、軽石バルーン、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、塩基性炭酸マグネシウム、硫酸カルシウム、チタン酸カリウム、硫酸バリウム、亜硫酸カルシウム、タルク、クレー、マイカ、ガラス繊維、ガラスフレーク、ガラスビーズ、珪酸カルシウム、モンモリロナイト、ベントナイト、硫化モリブデン、ボロン繊維、炭化珪素繊維、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維、ホウ酸アルミニウム等を例示できる。特に限定されるものではないが、ガラス繊維、ガラスフレーク、タルク、マイカが好ましい。
該耐衝撃性改良剤の配合量としては、好ましくはポリカーボネート樹脂100重量部に対し、1重量部以上100重量部以下であり、より好ましくは10重量部以上80重量部以下である。
また、本発明の樹脂組成物には、必要に応じて、紫外線吸収剤、酸化防止剤等の安定剤、顔料、染料、滑剤、離型剤等の添加剤をそれぞれ必要量添加できる。
本発明の樹脂組成物を得るための方法としては、特に限定されず、各種混練機、例えば、一軸および多軸混練機、バンバリーミキサー、ロール、ブラベンダープラストグラム等で、上記成分を混練した後、冷却固化する方法や、適当な溶媒、例えば、ヘキサン、ヘプタン、ベンゼン、トルエン、キシレン等の炭化水素およびその誘導体に上記成分を添加し、溶解する成分同志、あるいは溶解する成分と不溶解成分を懸濁状態で混ぜる溶液混合法等が用いられる。工業的コストからは溶融混練法が好ましいが、これに限定されるものではない。溶融混練においては、単軸や二軸の押出機を用いることが好ましい。
本発明においては、(C)の炭素繊維の長さが長い方が、熱伝導性や、成形品のそりの改善等の点で好ましい。また、(D)の熱伝導性粉体は鱗片状などの扁平である方が、熱伝導性や成形品のそりの改善等の点で好ましい。このような長さの長い炭素繊維(C)や、扁平な熱伝導性粉体(D)を使用した場合、樹脂中へ配合する際に、この長い繊維や扁平な粉体が折れて短くならないように、配合時の操作条件に配慮すると良い。このためには、例えば、混練時、炭素繊維(C)と熱伝導性粉体(D)とを押出機の途中からフィードする方法が好ましい。中でも、二軸押出機を用い、炭素繊維(C)と熱伝導性粉体(D)とを押出機の途中からフィードする方法が好ましい。かかる方法を取ることにより、混練時に炭素繊維や熱伝導性粉体が折れて短くなるのを抑えられ、安定した生産が可能となる。
または、炭素繊維(C)や熱伝導性粉体(D)を、配合する樹脂(A)の一部、または樹脂(A)と芳香族ポリカーボネートオリゴマー(B)の混合物の一部に予め混合したり、樹脂(A)、または樹脂(A)と芳香族ポリカーボネートオリゴマー(B)の混合物の一部で炭素繊維(C)及び/または熱伝導性粉体(D)を被覆したりして、マスターバッチを調製した後、残りの樹脂(A)、または樹脂(A)と芳香族ポリカーボネートオリゴマー(B)に配合する方法も挙げられる。もし、樹脂(A)がポリカーボネート樹脂以外の種類の樹脂を含む場合には、該樹脂(A)の一部とは、ポリカーボネート樹脂の一部であっても、ポリカーボネート樹脂以外の樹脂の一部または全部であっても、ポリカーボネート樹脂とそれ以外の樹脂との混合物の一部であっても良い。混合物の場合は、マスターバッチの樹脂組成物の比率が、目的の樹脂組成物の比率と異なっていても、後から配合する成分の量の加減により、目的の比率に調整できれば良い。また、炭素繊維(C)あるいは熱伝導性粉体(D)が複数種から構成される場合は、それら全てを同時にマスターバッチにしてもよいし、その一部をマスターバッチにしたり、複数のマスターバッチにしたりしても良い。また、ポリカーボネート樹脂と他の樹脂とで、炭素繊維(C)や熱伝導性粉体(D)の分散性に差がある場合は、それらが良く分散する樹脂で、マスターバッチを調製するのが良い。
本発明の樹脂組成物を用いて成形体を得る方法は、特に限定されるものでなく、熱可塑性樹脂組成物について一般に用いられている成形法、例えば、射出成形、中空成形、押出成形、シート成形、熱成形、回転成形、積層成形等の成形方法が適用できる。中でも、射出成形により得られた成形体は、特に熱伝導率が高くなる傾向があるので好ましい。
本発明の成形体は、OA機器部品や電気電子部品、精密機器部品に幅広く用いられるが、特にOA機器の筐体や電気電子機器の筐体等に好適であり、例えば、ノート型パソコン、電子手帳、携帯電話、PDA、デジタルカメラ、プロジェクター等が挙げられる。また、OA機器や電気電子機器の内部部品にも好適であり、例えば、コネクタ部材やパソコン部材、携帯電話、プリンター、コピー機、スキャナー、テレビ、音響機器、照明、事務機器、AV機器の内部部品等が挙げられる。
以下に本発明を実施例によって、詳しく説明するが、本発明はこれらの範囲内に限定されるものでは無い。
なお、以下の実施例において、各成分として次に示すものを用いた。
(A)樹脂
(A−1)ポリカーボネート樹脂:ポリ−4,4−イソプロピリデンジフェニルカーボネート、三菱エンジニアリングプラスチックス(株)製、商品名:ユーピロン(登録商標)S−3000、粘度平均分子量21,000(以下、PCと略記する)
(A−2)ポリエチレンテレフタレート樹脂:三菱化学(株)製、商品名:ノバペックス(登録商標)GG500(以下、PETと略記する)
(A−3)ポリブチレンテレフタレート樹脂:三菱エンジニアリングプラスチックス(株)製、商品名:ノバデュラン(登録商標)5010(以下、PBTと略記する)
(A−4)アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂):日本エーアンドエル(株)製、商品名UT−61(以下、ABSと略記する)
(B)芳香族ポリカーボネートオリゴマー:ビスフェノールAとホスゲンから常法により得られた平均重合度7の粉粒状芳香族ポリカーボネートオリゴマー、三菱エンジニアリングプラスチックス(株)製、商品名:ユーピロン(登録商標)AL071(以下PCオリゴマーと略記する)
(C−1)炭素繊維:三菱化学産資(株)製、商品名:ダイアリードK223HG、繊維径10μm、長さ6mm、サイジング剤含有率0.0%、熱伝導率540W/m・K
(C−2)炭素繊維:三菱化学産資(株)製、商品名:ダイアリードK223GM、繊維径10μm、長さ6mm、サイジング剤含有率6.2%、熱伝導率20W/m・K
(D−1)酸化アルミニウム:昭和電工(株)製、商品名AS−10、平均粒子径39μm、熱伝導率30W/m・K
(D−2)窒化アルミニウム:(株)トクヤマ製、商品名SH02−SW10 タイプI、平均粒子径12.6μm、熱伝導HP−1CA、平均粒子径16μm、熱伝導率60W/m・K
(D−3)鱗状黒鉛:西村黒鉛(株)製、商品名PB−90、平均粒子径26μm
(E−1)難燃剤:リン酸エステル化合物:レゾルシノールビス(ジキシレニルホスフェート)、旭電化工業(株)製、商品名:FP500
(E−2)難燃剤:ぺルフルオロブタンスルホン酸カリウム:(株)トーケムプロダクツ製、商品名KFBS
(F)フッ素樹脂:ポリテトラフルオロエチレン、ダイキン工業(株)製、商品名:ポリフロンF−201L
(G)エラストマー:(ブタジエン&スチレン)コア/アクリルシェルの多層構造重合体、三菱レイヨン(株)製、商品名:メタブレンE−901
(H)ガラスフレーク:日本板硝子(株)製、商品名マイクログラスフレカ REFG101
実施例1〜7、比較例1〜4
表1に示す割合にて調製した(A)ポリカーボネート系樹脂、(B)芳香族ポリカーボネートオリゴマー、難燃剤、フッ素樹脂、エラストマー、ガラスフレークをタンブラーミキサーにて均一に混合したのち、二軸押出機(日本製鋼所製、TEX30XCT、L/D=42、バレル数12)を用いて、シリンダー温度280℃、スクリュー回転数200rpmにて押出機上流部のバレル1より押出機にフィードし、溶融混練させ、さらに押出機混練部の途中のバレル7より(C)炭素繊維および(D)熱伝導性粉体を表1に示す割合にて押出機に途中フィードして溶融混練して樹脂組成物をペレット化した。
この樹脂組成物を用いて以下の(1)〜(6)の評価を行った。結果を表1に示す。
[評価方法]
(1)熱伝導率
射出成形機(住友重機械工業製、SH100、型締め力100T)を用いて、樹脂温度(パージ樹脂の実測温度):300℃,金型温度:110℃にて,金型:縦100mm、横100mm、厚み3mmの成形品を射出圧力:147MPaの条件で射出成形し、得られた射出成形品を3枚重ねて、迅速熱伝導率測定装置(京都電子工業製、Kemtherm QTM−D3)を用いて、射出成形品の熱伝導率を測定した。
(2)表面平滑性
上記(1)と同じ方法で作成した成形品について、表面粗さ形状測定機((株)東京精密製、サーフコム3000A−STD−3DF)を用いて、表面粗さ(10点平均粗さ:Rz)を測定した。測定長さは4.0mm、カットオフ波長0.8mm、測定速度0.3mm/sとした。
(3)粉落ち評価
上記(1)と同じ方法で作成した成形品について、ニチバン製セロファンテープ(「CT405A−18」)を使用し、試料の測定表面に貼付け、90度の方向に勢い良く引張り剥離する。この操作を略同一位置で10回連続して行い、粉落ちの有無を観察した。粉落ち無しを「○」,粉落ち有りを「×」で表した。
(4)流動長
射出成形機(住友重機械工業製、SG75サイキャップM−2、型締め力75T)を用いて、樹脂温度(パージ樹脂の実測温度):300℃,金型温度:100℃,金型:20mm幅×2mm厚み,射出圧力:147MPaの条件で流動長を測定した。
(5)そり
射出成形機(東芝機械製、IS150、型締め力150T)を用い、シリンダー温度280℃、金型温度80℃の条件で、150mm×150mm/高さ20mm/厚み2mmの箱型の試験片を成形した。次いで、この試験片の天面の反りを、ミツトヨ社製三次元測定機を用いて測定した。測定は、天面の中心線に沿って10mm間隔で15点測定し、両端を結んだ基準線からの最大落ち込み量を反りとした。
(6)難燃性
アンダーライターズラボラトリーズインコーポレーションのUL−94「材料分類のための燃焼試験」(以下、UL−94)に示される試験方法に従って、厚さが1/16インチの5本の試験片について試験し、その結果に基づいてUL−94規格のV−0、V−1およびV−2のいずれかの等級に評価した。該試験片は、射出成形機(日本製鋼所製、J50、型締め力50T)を用い、樹脂温度(パージ樹脂の実測温度)290℃、金型温度90℃、射出圧力147MPaの条件で射出成形した。UL−94についての各等級基準は、概略以下のとおりである。
(i) V−0:10秒接炎後の燃焼時間が10秒以下であり、5本のトータル燃焼時間が50秒以下かつ、全試験片とも脱脂綿に着火するような微粒炎を落下しない。
(ii)V−1:10秒接炎後の燃焼時間が30秒以下であり、5本のトータル燃焼時間が250秒以下、かつ、全試験片とも脱脂綿に着火するような微粒炎を落下しない。
(iii)V−2:10秒接炎後の燃焼時間が30秒以下であり、5本のトータル燃焼時間が250秒以下、かつ、これらの試験片から落下した微粒炎から脱脂綿に着火する。
(iv)NG:上記いずれの燃焼時間にも該当せず、燃焼し続けた場合。
Figure 0004817784
実施例〜7と比較例〜4を比較することにより、ポリカーボネート樹脂またはポリカーボネートと他の樹脂とのアロイに、特定の熱伝導性炭素繊維、熱伝導性粉末、芳香族ポリカーボネートオリゴマーを特定量加えることにより、熱伝導性、成形加工性に優れ、成形品のそりが少なく、表面平滑性の優れて、粉落ちが観察されないものである樹脂組成物およびその成形体が得られることが明らかである。
本発明のポリカーボネート系樹脂組成物は、熱伝導性、成形加工性に優れ、成形品のそりが少なく、寸法安定性が良好で、表面平滑性に優れて、粉落ちが観察されない成形体を与えるため、その工業的有用性は大きい。また、それを用いた成形品は、OA機器、電気・電子部品、精密機器の筐体を始めとする、多くの分野に有用なものである。

Claims (7)

  1. (A)ポリカーボネート系樹脂100重量部に対し、(B)平均重合度2〜15の芳香族ポリカーボネートオリゴマー1重量部以上40重量部以下、(C)黒鉛化されてなる炭素繊維であって、長さ方向の熱伝導率が100W/m・K以上、かつ繊維平均径5〜20μmの炭素繊維5重量部以上40重量部未満、及び(D)熱伝導率が10W/m・K以上で平均粒子径が1〜500μmの熱伝導性黒鉛粉体5重量部以上100重量部以下を含有してなる組成物であって、
    該組成物を樹脂温度(パージ樹脂の実測温度)300℃、金型温度110℃、射出圧力147MPaの条件で射出成形して得た、縦100mm、横100mm、厚み3mmの成形品について
    a)測定長さは4.0mm、カットオフ波長0.8mm、測定速度0.3mm/sとして測定した、表面粗さが、10点平均粗さで8.74μm以下であり、かつ
    b)ニチバン製セロファンテープ(「CT405A−18」)を使用し、試料の測定表面に貼り付け、90度の方向に勢い良く引張り剥離する操作を略同一位置で10回連続して行い、観察した粉落ち評価が○(粉落ち無し)である
    ことを特徴とする熱伝導性ポリカーボネート系樹脂組成物。
  2. (A)ポリカーボネート系樹脂が、ポリカーボネート樹脂単独であることを特徴とする請求項1に記載の熱伝導性ポリカーボネート系樹脂組成物。
  3. (A)ポリカーボネート系樹脂が、ポリカーボネート樹脂100重量部に対し、ポリブチレンテレフタレート樹脂もしくはポリエチレンテレフタレート樹脂を100重量部以下の割合で含むポリカーボネート樹脂系アロイである請求項1に記載のポリカーボネート系樹脂組成物。
  4. (A)ポリカーボネート系樹脂が、ポリカーボネート樹脂100重量部に対し、スチレン系樹脂100重量部以下の割合で含むポリカーボネート樹脂系アロイであることを特徴とする請求項1に記載の熱伝導性ポリカーボネート系樹脂組成物。
  5. (C)の炭素繊維が、長さ方向の熱伝導率が400W/m・K以上であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のポリカーボネート系樹脂組成物。
  6. 請求項1〜5のいずれか1項に記載のポリカーボネート系樹脂組成物を成形してなる成形体。
  7. OA、電気・電子部品、精密機器部品の筐体である請求項6に記載の成形体。
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