JP4816950B2 - 耐食性および耐摩耗性に優れたNi基合金およびそのNi基合金からなるコンダクターロール - Google Patents
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(a)CuおよびVのうちの1種または2種:0.1〜5%、
(b)BおよびCaのうちの1種または2種:0.001〜0.01%、
(c)Co:0.1〜5%、
以上(a)〜(c)のうちの1種または2種以上を含有し、残りがNiおよび不可避不純物からなる組成、並びに素地中に位相的最蜜構造を有するμ相(Ni7Mo6型金属間化合物相)が分散析出した組織を有する強度、硬度および耐食性に優れた析出強化型Ni基合金が知られている(特許文献1参照)。
(イ)質量%(以下、%は質量%を示す)でCr:18超〜21%未満、Mo:18超〜21%未満%、Ta:1超〜3.4%未満、Mg:0.001〜0.05%、N:0.001〜0.04%、Mn:0.05〜0.5%、Fe:0.01〜2%、Si:0.01〜0.1%、Al:0.01〜0.5%、Cu:0.01〜0.1%未満、V:0.001〜0.1%未満含有し、残部がNiおよび不可避不純物からなり、不可避不純物として含まれるC量を0.05%以下に調整した組成を有し、かつ素地中に微細な金属間化合物が分散析出している組織を有する析出強化型Ni基合金は、耐食性および耐摩耗性に一層優れ、この析出強化型Ni基合金からなるロールを連続電気めっきラインのコンダクターロールとして使用すると、使用寿命が一層長くなり、したがって、連続電気めっきラインにおけるコンダクターロールの交換回数を減らすことができる、
(ロ)前記素地中に分散析出する金属間化合物はγ’型金属間化合物相であることが一層好ましい、という研究結果が得られたのである。
(1)質量%で、Cr:18超〜21%未満、Mo:18超〜21%未満%、Ta:1超〜3.4%未満、Mg:0.001〜0.05%、N:0.001〜0.04%、Mn:0.05〜0.5%、Fe:0.01〜2%、Si:0.01〜0.1%、Al:0.01〜0.5%、Cu:0.01〜0.1%未満、V:0.001〜0.1%未満含有し、残部がNiおよび不可避不純物からなり、不可避不純物として含まれるC量を0.05%以下に調整した組成を有し、かつ素地中に微細な金属間化合物が分散析出している組織を有する耐食性および耐摩耗性に優れた析出強化型Ni基合金、
(2)前記(1)記載の金属間化合物は、γ’型金属間化合物相である耐食性および耐摩耗性に優れた析出強化型Ni基合金、
(3)前記(1)または(2)記載の組成を有する耐食性および耐摩耗性に優れた析出強化型Ni基合金からなる連続電気めっきラインのコンダクターロール、に特徴を有するものである。
CrおよびMoは、共に耐食性を向上させると同時に、一旦、単一相に固溶化したのち、適正な温度範囲で長時間時効熱処理することにより、素地中にγ’型金属間化合物相(Ni2(Cr、Mo)型金属間化合物相)を微細に析出させることにより析出硬化し、耐摩耗性を向上させる効果がある。その場合、Crは18%を超えて含有することが必要であるが、21%以上含有すると、Moとの組み合わせにおいて単一相化が困難となり、粗大なμ相(Ni7Mo6型金属間化合物相)を形成してしまい、耐食性劣化をもたらすので好ましくない。したがって、Crの含有量を18超〜21%未満に定めた。一層好ましくは、18.5〜20.5%である。
同様にMoは18%を超えて含有することが必要であるが、21%以上含有すると、Crとの組み合わせにおいて単一相化が困難となり、粗大なμ相を形成してしまい、耐食性劣化をもたらすので好ましくない。したがって、Moの含有量を18超〜21%未満に定めた。一層好ましくは、18.5〜20.5%である。
Taは耐孔食性を一段と改善する効果があり、Taを含むNi−Cr−Mo系合金を固溶化処理し、その後時効処理することによりNi−Cr−Mo系合金の耐孔食性を著しく改善することができるが、Taを1%以下添加しても十分な耐孔食性を改善する効果が得られないので好ましくなく、一方、3.4%を越えて含有すると、逆に耐孔食性が劣化してしまうので好ましくない。したがって、Taの含有量を1超〜3.4%に定めた。一層好ましい範囲は、1.1〜2.5%である。
N、MnおよびMgを共存させることにより、耐孔食性を含む耐食性全般を劣化させる粗大なμ相(Ni7Mo6型金属間化合物相)の生成を抑制することができる。すなわち、N、MnおよびMgは母相であるNi-fcc相を安定化させ、Cr、MoおよびTaの固溶化を促進し、前記μ相を析出し難くする。その効果として、耐摩耗性を付与する際に実施する時効処理時に、μ相の析出を抑制し、優先的にγ’相を微細に析出させることで耐食性劣化の抑止や耐摩耗性付与が可能になるのである。しかし、Nの含有量が0.001%未満ではμ相生成を抑制する効果がなく、したがって、時効処理により過剰なμ相生成を許し、その結果として耐孔食性の劣化や十分な耐摩耗性付与ができなくなるので好ましくない。一方、Nを0.04%を超えて含有すると窒化物を形成し高温加工性が劣化するためNの含有量を0.001〜0.04%(一層好ましくは、0.005〜0.03%)とした。
同様に、Mnの含有量が0.05%未満ではμ相生成を抑制する効果がなく、したがって、耐孔食性を改善すると同時に十分な耐摩耗性を付与することができなくなるので好ましくない。一方、Mnを0.5%を超えて含有するとμ相生成を抑制する効果がなくなり、耐孔食性が劣化すると同時に十分な耐摩耗性が得られないので好ましくない。したがって、Mnの含有量を0.05〜0.5%(一層好ましくは、0.1〜0.4%)とした。
同様に、Mgの含有量が0.001%未満ではμ相生成を抑制する効果がなく、したがって、耐孔食性を改善すると同時に十分な耐摩耗性を付与することができなくなるので好ましくない。一方、Mgを0.05%を超えて含有するとμ相生成を抑制する効果がなくなり、耐孔食性が劣化すると同時に十分な耐摩耗性が得られないので好ましくない。したがって、Mgの含有量を0.001〜0.05%(一層好ましくは、0.002%〜0.04%)とした。
なお、これら3元素の効果はそれぞれ等価ではなく、3元素が同時に所定の範囲で含有しないと効果がないことを見出している。
Fe、SiおよびAlは耐摩耗性を向上させる効果がある。Feは0.05%以上含有することで効果を示すものの、2%を超えて含有すると耐孔食性が劣化するので好ましくない。したがって、Feの含有量を0.05%〜2%(一層好ましくは、0.1〜1%未満)とした。
同様にSiは0.01%以上含有することで効果を示すものの、0.1%を超えて含有するとμ相生成を促進し、その結果、耐食性を劣化させるので好ましくない。したがって、Siの含有量を0.01%〜0.1%(一層好ましくは、0.02〜0.05%)とした。
同様にAlは0.01%以上含有することで効果を示すものの、0.5%を超えて含有すると耐食性を劣化させるので好ましくない。したがって、Alの含有量を0.01%〜0.5%(一層好ましくは、0.02〜0.4%)とした。
Cuは硫酸系の腐食環境下で耐食性を向上させる効果があるが、Cuを0.01%以上含有することで効果を示すものの、0.1以上含有すると硫酸系の腐食環境下で耐食性を劣化させるので好ましくない。したがって、Cuの含有量を0.01%〜0.1%未満とした。
Vはγ’相を析出しやすくする成分であるので添加するが、Vの含有量が0.001%未満ではγ’相の析出に時間がかかるので好ましくなく、一方、Vを0.1%以上含有するとμ相が析出するようになって耐食性が劣化する。したがって、Vの含有量を0.001〜0.1%未満とした。
Cは不可避不純物として含まれるが、Cが大量に含まれると結晶粒界近傍でCrと炭化物を形成し、金属イオンの溶出量を増大させることから耐食性を劣化させる。したがって、Cの含有量は少ないほど好ましく、不可避不純物に含まれるCの含有量の上限を0.05%と定めた。
さらに、表4に示される成分組成を有し、厚さ:40mmで約5kgの重さを有するインゴットを作製し、このインゴットに1230℃で5時間均質加熱処理を施し、1100〜1250℃の範囲内に保持しながら、1回の熱間圧延で1mmの厚さを減少させつつ、最終的に8mm厚とし、ついで、1000℃で30分間保持の時効処理を施し、この時効処理したインゴットの表面をバフ研磨することにより、表4に示される成分組成を有する従来Ni基合金板1〜3を用意した。これら従来Ni基合金板1〜3の素地中にはいずれもμ相が分散析出していた。
本発明Ni基合金板1〜23、比較Ni基合金板1〜23および従来Ni基合金板1〜3をそれぞれ縦:25mm、横:50mm、厚さ:8mmの寸法に切断して摩耗試験片を作製した。この試験片を用い、
摩耗距離:100mm、
最終荷重:18.2kg、
相手材:SUJ−2、
潤滑剤:なし、
摩耗速度:0.12m/sec、
の条件で大越式摩耗試験を実施し、比摩耗量を測定し、この比摩耗量を表1〜4に示すことにより耐摩耗性を評価した。ここで比摩耗量とは、大越式摩耗試験を実施することにより摩耗試験片が摩耗により減少した体積(体積減少量)をすべり距離と荷重で除した値である。
本発明Ni基合金板1〜23、比較Ni基合金板1〜23および従来Ni基合金板1〜3をそれぞれ縦:30mm、横:20mm、厚さ:8mmの寸法に切断して腐食試験片を作製し、この腐食試験片の表面を研磨し、最終的に耐水エメリー紙#400仕上げとした。これら研摩後の腐食試験片をアセトン中、超音波振動状態に5分間保持することにより脱脂し、これらを沸騰温度に保持したグリーン・デス液(11.5%H2SO4+1.2%HCl+1%FeCl3+1%CuCl2)中に24時間浸漬し、その後、腐食試験片の表面を観察し、孔食の有無を表1〜4に示した。
Claims (3)
- 質量%で、Cr:18超〜21%未満、Mo:18超〜21%未満%、Ta:1超〜3.4%未満、Mg:0.001〜0.05%、N:0.001〜0.04%、Mn:0.05〜0.5%、Fe:0.01〜2%、Si:0.01〜0.1%、Al:0.01〜0.5%、Cu:0.01〜0.1%未満、V:0.001〜0.1%未満含有し、残部がNiおよび不可避不純物からなり、不可避不純物として含まれるC量を0.05%以下に調整した組成を有し、かつ素地中に微細な金属間化合物が分散析出している組織を有することを特徴とする耐食性および耐摩耗性に優れた析出強化型Ni基合金。
- 請求項1記載の金属間化合物は、γ’型金属間化合物相であることを特徴とする耐食性および耐摩耗性に優れた析出強化型Ni基合金。
- 請求項1または2記載の組成を有する耐食性および耐摩耗性に優れた析出強化型Ni基合金からなることを特徴とする連続電気めっきラインのコンダクターロール。
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