JP5725630B1 - 熱間鍛造性および耐食性に優れたNi基合金 - Google Patents
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Abstract
Description
重量%で、Cr:16〜27%、Mo:16〜26%(ただし、Cr+Mo≦44%)、Ta:1.1〜3.5%、Fe:0.01〜6%、Mn:0.0001〜3%、Si:0.0001〜0.3%、C:0.001〜0.1%、Mg:0.0001〜0.3%を含有し、さらに、必要に応じて、
(a)B:0.001〜0.01%、Zr:0.001〜0.01%、Ca:0.001〜0.01%のうち少なくとも1種、
(b)Nb:0.1〜0.5%、W:0.1〜2%、Cu:0.1〜2%のうち少なくとも1種、
(c)Ti:0.05〜0.8%、Al:0.01〜0.8%のうち少なくとも1種、
(d)Co:0.1〜5%、V:0.1〜0.5%のうち少なくとも1種、
(e)Hf:0.1〜2%
前記(a)〜(e)の内の1種または2種以上を含み、残部がNiおよび不可避不純物からなる組成を有するNi基合金が用いられていることが知られている。
重量%で、Cr:15〜35%、Mo:16〜24%(ただし、Cr+Mo≦43%)、Ta:1.1〜8%、Mn:0.0001〜3%、Si:0.0001〜0.3%、C:0.001〜0.1%、N:0.0001〜0.1%を含有し、残りがNiおよび不可避不純物からなる組成を有するNi基合金が用いられていることが知られている。
すなわち、機器に適用するNi基耐食合金部材の大型化を実現すれば、こうした要求に応えられるが、そのためには鋳造されたままの大型のインゴットを均質化熱処理後に熱間鍛造によって成形することとなるために、優れた熱間鍛造性が要求される。
一度の鍛造で変形量を大きくしないと、凝固組織を破壊し組織の均質化を図ることに支障となるため、熱間鍛造温度を下げても変形能の高い温度領域を選定せざるを得ないでいる。そのため、大型のインゴットを鍛造しようとすると、鍛造プレス機の能力によって、形状が限定されてしまい、大型化することに制約を受けている。
熱間鍛造時に変形量を大きくすると、加工発熱により温度上昇し、変形能が急減する領域に達する可能性があるので、その温度よりも20℃程度低い温度を鍛造上限温度として設定するなどの制約も受ける。
当然のことながら、主要な合金元素であるCr, Mo, Taを低減すれば、熱間鍛造性も向上し、大型化に対応できるが、この方法では耐食性劣化が大きくなるため、意味がない。
このような状況のもと、前記特許文献1、2に記載される従来Ni基合金で作製された化学プラントや公害防止装置に用いられる機器部材などは、上記部材の大型化による溶接線低減の要求に対して、十分に満足できるものではなかった。
「(1) 質量%で、
Cr: 18超〜21%未満、
Mo: 18超〜21%未満、
Ta: 1.1〜2.5%、
Mg: 0.001〜0.05%、
N : 0.001〜0.04%、
Mn: 0.001〜0.5%、
Si: 0.001〜0.05%、
Fe: 0.01〜1%、
Co: 0.01%以上1%未満、
Al: 0.01〜0.5%、
Ti: 0.01%以上0.1%未満、
V : 0.005%以上0.1%未満、
Nb: 0.001%以上0.1%未満、
B : 0.0001〜0.01%、
Zr: 0.001〜0.05%を含有し、
残りがNiおよび不可避不純物から成ることを特徴とする熱間鍛造性および耐食性に優れたNi基合金。
(2) 質量%で、
Cu: 0.001%以上0.1%未満及び
W : 0.001%以上0.1%未満の1種または2種、
をさらに含有することを特徴とする前記(1)に記載の熱間鍛造性および耐食性に優れたNi基合金。
(3) 質量%で、
Ca: 0.001%以上0.05%未満、
をさらに含有することを特徴とする前記(1)または(2)に記載の熱間鍛造性および耐食性に優れたNi基合金。
(4) 質量%で、
Hf: 0.001%以上0.05%未満、
をさらに含有することを特徴とする前記(1)乃至(3)のいずれかに記載の熱間鍛造性および耐食性に優れたNi基合金。
(5) 前記(1)乃至(4)のいずれかに記載の熱間鍛造性および耐食性に優れたNi基合金により構成されたことを特徴とする大型構造部材。」
を特徴とするものである。
CrおよびMoは、塩酸、硫酸等の酸に対する耐食性を向上させる効果がある。特に石油化学プラントでは、高温であるが比較的濃度の低い酸が扱われることが多い。比較的濃度の低い酸に対しては、Moを含有するCr型不動態皮膜によって耐食性が発揮されるため、CrとMoは組合せとして同時に含有することで効果が発揮される。この場合、Crは18質量%(以下、「質量%」を、単に、「%」と記す。)を超えて含有することが必要であるが、21%以上含有するとMoとの組み合わせにおいて、高温領域での変形抵抗が急激に大きくなるため熱間鍛造性低下を招くので、その含有量を18%超〜21%未満とした。好ましくは、18.5%〜20.5%である。同様に、Moは18%を超えて含有することが必要であるが、21%以上含有するとCrとの組み合わせにおいて、高温領域での変形能が急激に低下することにより熱間鍛造性低下を招くので、その含有量を18%超〜21%未満とした。好ましくは、18.5%〜20.5%である。
Taは、その少量添加により不動態皮膜を格段と強化・改善する効果がある。Taを1.1%以上含有することにより、酸に対する耐食性を著しく改善する効果が発揮されるが、2.5%を超えて含有すると、高温領域での変形能が急激に低下することにより熱間鍛造性低下を招くので、その含有量を1.1〜2.5%とした。好ましくは、1.5%〜2.2%である。
N、MnおよびMgを共存させることにより、1000℃以下での熱間鍛造性を劣化させる粗大なμ相(Ni7Mo6型)の生成を抑制することができる。すなわち、N、MnおよびMgは母相であるNi−fcc相を安定化させ、CrおよびMo, Taの固溶化を促進しμ相を析出しにくくする効果がある。その効果として、1000℃を下回る温度領域でも変形抵抗の急激な増大や変形能の急激な低下をもたらすことなく、良好な熱間鍛造性を維持できる。
しかし、Nの含有量が0.001%未満では、μ相生成を抑制する効果は無く、したがって1000℃以下での熱間鍛造工程で過剰なμ相生成を許し、その結果として、熱間鍛造性の劣化がもたらされる、一方、0.04%を超えて含有すると窒化物を形成し、高温加工性が劣化し部材への加工が困難となるため、その含有量を0.001%〜0.04%とした。好ましくは、0.005%〜0.03%である。
同様に、Mnの含有量が0.001%未満では、μ相生成を抑制する効果は無く、したがって1000℃以下での熱間鍛造性を劣化することとなり、一方、0.5%を超えて含有すると、μ相生成を抑制する効果が無くなり、耐食性が劣化するため、その含有量を0.001%〜0.5%とした。好ましくは、0.005%〜0.1%である。
同様に、Mgの含有量が0.001%以下では、μ相生成を抑制する効果は無く、したがって1000℃以下での熱間鍛造性を劣化することとなる、一方0.05%を超えて含有すると、μ相生成を抑制する効果が無くなり、耐食性が劣化するため、その含有量を0.001%〜0.05%とした。好ましくは、0.005%〜0.04%である。
なお、これら3元素の効果はそれぞれ等価ではなく、3元素が同時に所定の範囲で含有されていないと効果がないことを見いだしている。
Siは、脱酸剤として添加することにより、酸化物を低減し、これにより、熱間鍛造性に関わる高温での変形能を向上させる効果がある。その効果は、Siを0.001%以上含有することにより発揮されるが、0.05%を超えて含有すると、粒界における濃縮をもたらすこととなるため、熱間鍛造性における変形能が急激に低下することとなるため、Si含有量を0.001〜0.05%とした。好ましくは、0.005%〜0.03%である。
FeおよびCoは、1200℃以上の温度域での靭性を向上させることによって割れを防止する効果がある。Feを0.01%以上含有することで、その効果を示すが、1%を超えて含有すると、耐食性を低下させるため、Fe含有量を0.01%〜1%とした。好ましくは、0.1%〜1%未満である。
同様に、Coを0.01%以上含有することで、その効果を示すが、1%以上含有すると高温領域での変形抵抗を大きくしてしまうため、Co含有量を0.01%以上1%未満とした。好ましくは、0.1%〜1%未満である。
AlおよびTiは、熱間鍛造性に関わる高温での変形能を向上させる効果がある。
Alを0.01%以上含有することで、その効果を示すが、0.5%を超えて含有すると、変形抵抗を大きくしてしまうため、Al含有量を0.01%〜0.5%とした。好ましくは、0.1%〜0.4%である。
同様に、Tiを0.01%以上含有することで、その効果を示すが、0.1%以上含有すると、変形抵抗を大きくしてしまうため、Ti含有量を0.01%以上0.1%未満とした。好ましくは、0.03%〜0.09%未満である。
VおよびNbは、高温領域において結晶粒の粗大化を抑性する効果がある。これによって、特に1200℃以上での熱間鍛造性に関わる変形能を著しく向上させる。Vを0.005%以上含有することで、その効果を示すが、0.1%以上含有すると、逆に変形能低下をもたらすため、V含有量を0.005%以上0.1%未満とした。好ましくは、0.01%〜0.09%である。
同様に、Nbを0.001%以上含有することで、その効果を示すが、0.1%以上含有すると耐食性を劣化させるため、Nb含有量を0.001%以上0.1%未満とした。好ましくは、0.005%〜0.09%である。
ZrおよびBは、1200℃以上の温度域での熱間鍛造性における変形能を向上させる効果がある。Bを0.0001%以上含有することで、その効果を示すが、0.01%を超えて含有すると、逆に変形能を低下させるため、B含有量を0.0001%〜0.01%とした。好ましくは、0.0005%〜0.005%である。
同様に、Zrを0.001%以上含有することで、その効果を示すが、0.05%を超えて含有すると、逆に変形能を低下させるため、Zr含有量を0.001%〜0.05%とした。好ましくは、0.005%〜0.03%である。
CuおよびWは、硫酸および塩酸系の腐食環境で耐食性を向上させる効果があるので、必要に応じて添加する。Cuを0.001%以上含有することで、その効果を示すが、0.1%以上含有すると、熱間鍛造性が劣化する傾向にあるため、Cu含有量を0.001%以上0.1%未満とした。好ましくは、0.005%〜0.09%である。
同様に、Wを0.001%以上含有することで、その効果を示すが、0.1%以上含有すると熱間鍛造性が劣化する傾向にあるため、W含有量を0.001%以上0.1%未満とした。好ましくは、0.005%〜0.09%である。
Caは、1200℃以上の温度域での熱間鍛造性における変形能を向上させる効果があるので、必要に応じて添加する。Caを0.001%以上含有することで、その効果を示すが、0.05%以上含有すると、逆に変形能を低下させるため、Ca含有量を0.001%以上0.05%未満とした。好ましくは、0.005%〜0.01%である。
Hfは、1200℃以上の温度域での熱間鍛造性における変形抵抗を低減させる効果があるので、必要に応じて添加する。Hfを0.001%以上含有することで、効果を示すが、0.05%以上含有すると、変形能を劣化させる傾向にあるため、Hf含有量を0.001%以上0.05%未満とした。好ましくは、0.002%〜0. 01%である。
溶解原料としてP,S,Sn,Zn,Pb,Cの含有は避けられない。P;0.01%未満、S;0.01%未満、Sn;0.01%未満、Zn;0.01%未満、Pb;0.002%未満、C;0.01%未満であれば、合金特性をなんら損なうものではないから、上記した成分元素の上記した範囲内での含有は許容される。
したがって、この発明のNi基合金によれば、石油化学プラント、医薬品中間体製造プラントや公害防止装置に用いられる機器全体としての耐食性を向上させることができ、また、メンテナンスの頻度を低減させることができるなど、産業上優れた効果を発揮するものである。
なお、表9に示す従来Ni基合金1および2は、前記特許文献1(特許第2910565号公報)に開示される合金に相当し、また、従来Ni基合金3は、前記特許文献2(特開平7−316697号公報)に開示される合金に相当する。
図1に熱間ねじり試験装置の外観概略図を示すように、熱間ねじり試験装置は、モーター(1)、ギヤボックス(2)、クラッチ(3)、電気炉(4)、試験片(5)、ロードセル(6)を備え、モーター(1)の回転駆動により、電気炉(4)内に取り付けた試験片(5)にねじりを与え、ロードセル(6)で、試験片(5)に付加されたせん断応力の値を測定する試験装置である。
図2に示すように、試験片(5)のサイズは、平行部直径8mm、平行部長さ30mmの平滑丸棒型である。そして、電気炉(4)内に試験片(5)を装着し、電気炉(4)内の試験温度を1250℃とし、モーター(1)を回転駆動することにより、ねじり速度100rpmの両端拘束ねじり試験を実施した。
試験の結果得られた最大せん断応力(kg/mm2)(変形抵抗)とねじり回数(回)(変形能)を表2、4、6、8、10に示した。
表1、3、5、7、9の角棒より、100mm切り出した素材を900〜1250℃の範囲内に保持しながら、熱間鍛造により5mm厚の板を製造した(1回のプレスで30mm→5mmとした)。
5mm板を1180℃に30分間保持して水冷した後、25×25×3mmtの板片を切り出し、表面を研磨し最終的に耐水エメリー紙#400仕上げとして、腐食試験片を作製した。
研磨後の試料をアセトン中超音波振動状態に5分間保持し脱脂した。
前記本発明Ni基合金1〜46、比較Ni基合金1〜20および従来合金1〜3をそれぞれ、沸騰温度に保持した1%塩酸および10%硫酸液中で24時間の浸漬試験を実施し、試験前後の重量減によって算出した腐食速度を表2、4、6、8、10に示した。
また、この発明から外れた比較Ni基合金1〜30は、本発明Ni合金1〜46に比べ、耐食性に劣るか、または1250℃での変形能(ねじり回数)が小さいか、腐食試験片製造のための1000℃以下での鍛造工程で割れたなど、熱間鍛造性に劣ることがわかる。
また、この発明のNi基合金は、熱間鍛造性に優れることから、大径でかつ長尺のシームレスチューブを容易に作製することができ、新たな分野へ適用される新材料としても期待される。
Claims (5)
- 質量%で、
Cr: 18超〜21%未満、
Mo: 18超〜21%未満、
Ta: 1.1〜2.5%、
Mg: 0.001〜0.05%、
N : 0.001〜0.04%、
Mn: 0.001〜0.5%、
Si: 0.001〜0.05%、
Fe: 0.01〜1%、
Co: 0.01%以上1%未満、
Al: 0.01〜0.5%、
Ti: 0.01%以上0.1%未満、
V : 0.005%以上0.1%未満、
Nb: 0.001%以上0.1%未満、
B : 0.0001〜0.01%、
Zr: 0.001〜0.05%を含有し、
残りがNiおよび不可避不純物から成ることを特徴とする熱間鍛造性および耐食性に優れたNi基合金。 - 質量%で、
Cu: 0.001%以上0.1%未満及び
W : 0.001%以上0.1%未満の1種または2種、
をさらに含有することを特徴とする請求項1に記載の熱間鍛造性および耐食性に優れたNi基合金。 - 質量%で、
Ca: 0.001%以上0.05%未満、
をさらに含有することを特徴とする請求項1または2に記載の熱間鍛造性および耐食性に優れたNi基合金。 - 質量%で、
Hf: 0.001%以上0.05%未満、
をさらに含有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の熱間鍛造性および耐食性に優れたNi基合金。 - 請求項1乃至4のいずれか一項に記載の熱間鍛造性および耐食性に優れたNi基合金により構成されたことを特徴とする大型構造部材。
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