JP2010031301A - Ni−Cr−Al合金素材 - Google Patents
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Abstract
【課題】 良好な加工性を有し、しかも析出硬化熱処理によって所定の強度を得ることのできる固溶化処理後のNi−Cr−Al合金素材を提供する。
【解決手段】 質量%で、Cr:34〜40%、Al:3.4〜4.2%、Mo:0.2〜2.5%、Si:0.5%以下、Mn:0.5%以下、Fe:2%以下、Ti+Nb+Ta+V+Zr:0.3%未満、残部を不可避的不純物及びNiとし、且つ、41%>Cr+0.54Mo+0.9Fe>36%を満たす合金組成を有し、断面において400HV以下の最大硬さを有する。
【選択図】なし
【解決手段】 質量%で、Cr:34〜40%、Al:3.4〜4.2%、Mo:0.2〜2.5%、Si:0.5%以下、Mn:0.5%以下、Fe:2%以下、Ti+Nb+Ta+V+Zr:0.3%未満、残部を不可避的不純物及びNiとし、且つ、41%>Cr+0.54Mo+0.9Fe>36%を満たす合金組成を有し、断面において400HV以下の最大硬さを有する。
【選択図】なし
Description
本発明は、Ni−Cr−Al合金素材に関し、特に析出硬化熱処理を施して使用される固溶化熱処理後のNi−Cr−Al合金素材に関する。
エンジン部品、軸受、金型及び医療用ワイヤなどの材料のように、高い硬度と高い引張強度、そして高い耐食性や、非磁性である、といった各種性質を要求される部品の材料として、特許文献1及び2のようなNi−Cr−Al合金が知られている。かかるNi基合金は、析出硬化熱処理(時効熱処理)によって金属間化合物であるNi3Alからなるγ’相及びCr固溶体相であるα相を複合析出させて、その機械強度を高めて使用される。
詳細には、加工後の合金素材をα相、γ相及びγ’相の三相共存領域温度まで、典型的には600℃程度に加熱して時効熱処理が行われる。つまり、母相であるγ相中に微細析出するγ’粒子は、不連続析出により形成される層状の(γ+α)セル状組織に取り込まれて、γ母相に対してγ’相及びα相が複合して析出し、(γ+α+γ’)セル状組織(以下において、単に「セル状組織」と称する。)が形成される。かかるセル状組織によって高い硬度と高い引張り強度が与えられるのである。
例えば、特許文献1及び2では、このような合金系が開示されており、特に、特許文献1では、600HV以上の硬さと2000MPa以上の引張り強度を達成し得る合金系が開示されている。
特開2002−69557号公報
特開2006−274443号公報
Ni−Cr−Al合金素材は、一般的に、母合金をNi固溶体相であるγ相の単相領域まで加熱して冷却する固溶化熱処理を行った後に、切削加工やドリル加工などの所定の機械加工を行ってから上記した析出硬化熱処理を施している。ここで金型や軸受などの比較的大なる断面積を有する部品を機械加工しようとする場合、析出硬化熱処理前にもかかわらず、このような加工が困難となる場合がある。特に、80cm2以上の断面積を有する丸棒部材において、表層から50mm以上離れた部分におけるドリル被削性の低下が問題となっている。これは、固溶化熱処理の冷却過程において、上記したα相、γ相及びγ’相の三相共存領域温度を通過するため、特に、冷却速度の遅い素材内部において、硬度の高いセル状組織が部分的に形成されてしまうためである。
ところで、このようなセル状組織の形成過程では、γ’相の析出によりNi及びAlが消費されγ母相中のCr濃度が相対的に高くなって、(γ+α)セル状組織を形成するための駆動力が増加する。そこで、合金組成中のCr量を減ずることで、(γ+α)セル状組織の形成駆動力を低減し、溶体化処理後の冷却過程におけるセル状組織の形成を抑制し得る。しかしながら、析出硬化熱処理においては、溶体化処理後の冷却過程と逆に、セル状組織を積極的に得なければ機械的強度及び硬度を得られない。つまり、合金組成中のCr量を減ずると、最終製品における所定の機械強度が得られないのである。
本発明は、かかる状況に鑑みてなされたものであって、その目的は良好な加工性を有し、しかも析出硬化熱処理によって所定の強度を得ることのできる固溶化熱処理後のNi−Cr−Al合金素材の提供である。
本発明によるNi−Cr−Al合金素材は、固溶化熱処理後のNi−Cr−Al合金素材であって、質量%で、Cr:34〜40%、Al:3.4〜4.2%、Mo:0.2〜2.5%、Si:0.5%以下、Mn:0.5%以下、Fe:2%以下、Ti+Nb+Ta+V+Zr:0.3%未満、残部を不可避的不純物及びNiとし、且つ、(A)式:41%>Cr+0.54Mo+0.9Fe>36%を満たす合金組成を有し、断面において400HV以下の最大硬さを有することを特徴とする。
かかるNi−Cr−Al合金素材においては、所定量のMoによってセル状組織の形成及び成長を遅延させて固溶化熱処理の連続冷却過程におけるセル状組織の形成及び成長を抑制し、結果として、冷却速度の遅い素材内部においても400HV以下の最大硬さとすることができる。つまり、素材内部まで比較的均一な組織を得られて、良好な加工性を有する。その一方で、(A)式を満たすCr及びMo、Fe量にすることで、所定温度に加熱して保持する時効熱処理(析出硬化熱処理)に対しては、セル状組織の形成及び/又は成長を大きく抑制することなく、所定の機械強度を与え得るのである。
上記したNi−Cr−Al合金組成において、質量%で、B:0.001〜0.01%及び/又はMg:0.001〜0.005%を含むことを特徴としてもよい。所定量のB及び/又はMgの添加により、上記した所定量のMoの添加による特性を損なうことなく、良好な熱間加工性を与え得る。
上記したNi−Cr−Al合金組成において、質量%で、C:0.01〜0.1%を含み、且つ、(B)式:−0.05%≦C−0.25Ti−0.13Nb−0.07Ta−0.24V−0.13Zr≦0.1%を満たすことを特徴としてもよい。所定量のCにより炭化物を生成させて、上記したMoの添加による特性を損なうことなく、固溶化熱処理における結晶粒の粗大化を抑制し得る。
上記したNi−Cr−Al合金組成において、質量%で、Mo+0.5W:0.2〜2.5%を満たすようにMoの一部を置換して0.1〜4.0%のWを含み、且つ、(A’)式:41%>Cr+0.54Mo+0.25W+0.9Fe>36%を満たすことを特徴としてもよい。所定量のMoを相対的に安価なWに置換しても、上記したMoの添加による特性を損なうことなく、同様の効果が得られるとともに、製造コストを低減できる。
以上において、更にNi−Cr−Al合金組成において、質量%で、Cu:0.1〜5%及び/又はCo:0.1〜10%を含むことを特徴としてもよい。所定量のCu及び/又はCoを添加しても、上記したMoの添加による特性を損なうことなく、Cuによっては耐硫酸腐食性を向上させ、Coにおいては固溶強化による機械的強度の向上を得られる。
なお、上記したNi−Cr−Al合金素材において、前記断面において平均結晶粒径を有するミクロ組織内の析出相の面積率が10%以下であることを特徴としてもよい。素材の大きさ及び形状によって、固溶化熱処理の冷却過程における冷却速度が部分的に異なる。故に、大きさ及び形状の異なる素材であっても、素材内部まで平均結晶粒径を有するミクロ組織内の析出相の面積率が10%以下の均一な組織を有することで、より良好な加工性を与え得る。
上記したNi−Cr−Al合金組成において、1100℃〜1250℃の温度においてγ単相組織とし得ることを特徴としてもよい。固溶化熱処理の温度を比較的低温とし得るので、結晶粒の粗大化を防止できる。
以下において、図3に示す各組成の母合金150kgを真空誘導炉で溶製しインゴットを得た。かかるインゴットを950〜1200℃の温度範囲で鍛造し、直径200mmの丸棒状の鍛造材を得た。かかる鍛造材の一部は直径18mmの丸棒にさらに鍛造し、1150℃で1時間保持した後に水冷する固溶化熱処理を行った試験材とした。
連続冷却析出特性試験は、フォーマスタ試験機を用いて行った。すなわち、固溶化熱処理を行った試験材を1100℃に加熱した後に、冷却速度を1.7℃/sec.で制御しながら室温まで冷却した。(この冷却速度は直径200mmの丸棒を冷却した時の中心部の冷却速度を模擬している。)その後、断面を切り出した試験片においてビッカース硬さを測定した。また、かかる試験片において断面組織を観察し、セル状組織部(析出相)の面積率を計測した。
時効硬さ試験は、固溶化熱処理を行った試験材を600℃で16時間保持して水冷する時効熱処理を行った後に、その断面を切り出してビッカース硬さを測定して行った。
ドリル切削試験は、直径200mm(横断面積314cm2)の鍛造材を1150℃で2時間保持して水冷する固溶化熱処理を行った後に、ドリル切削を行ってドリル刃の寿命を求めることで行った。すなわち、オイルホールを備えたφ5のTiAlNiコーティングされた超硬ドリルによりクーラントを内部給油しながら切削を行って、VL1000による切削評価を行った。つまり、0.15mm/rev.の送り速度で30mm(ノンステップ、非貫通)の深さの穴を穿孔し、穿孔不能になるまでの合計の穿孔深さ(ドリル寿命)を測定する。これをドリル寿命が1000mmになる切削速度(ドリルの周速)に換算した。
なお、図1及び図2に析出硬化熱処理を施して使用される固溶化熱処理後のNi−Cr−Al合金素材の典型的な組織を示した。図1に示すように、Moを添加していない合金素材では、固溶化熱処理後に、結晶粒界に厚く形成された(γ+α+γ’)セル状組織が観察される。その一方、図2に示すように、Moを1%添加した合金素材では、結晶粒界にわずかにしかセル状組織が形成されない。
以上により、図3に示す各組成の母合金について、連続冷却析出特性試験、時効硬さ試験及びドリル切削試験の結果を図4に示した。なお、連続冷却析出特性試験、及び、時効硬さ試験は、断面における最大硬度を示している。
図3のNo.1〜4に示すように、本発明の第1の実施例による合金は、Ni−Cr−Al合金にMoを所定量だけ加えた合金である。No.3の合金はFeの量を、No.4の合金はMoの量を相対的に多くしたが、いずれの合金も、(A)式:41%>Cr+0.54Mo+0.9Fe>36%を満たしている。なお、かかる(A)式についての詳細は後述する。これらの合金は、図4からわかるように、連続冷却析出特性試験では断面において400HV以下の硬さである一方、時効硬さ試験では断面において650HV程度の硬さを得られている。併せて、ドリル切削試験では80m/min程度以上の良好な値を示しているように、冷却析出特性試験において400HV以下の硬さであれば、ドリル切削試験において良好な値が得られると推定される。また、連続冷却析出特性試験の試験片断面において平均結晶粒径を有するミクロ組織内のセル状組織部(析出相)の面積率を計測すると10%以下であって、均一な組織を有していた。
なお、図3のNo.101及び102に示すように、本発明の第1の実施例に対する比較例としての合金は、Ni−Cr−Al合金にMoを加えない合金である。すなわち、(A)式:41%>Cr+0.54Mo+0.9Fe>36%を満たしていない。かかる合金は、図4からわかるように、時効硬さ試験では断面において650HV程度の硬さを得られるものの、連続冷却析出特性試験では断面において400HV以上の硬さである。つまり、上記推定を裏付けるべく、ドリル切削試験では本実施例の合金と比較して、良好な値を得られていない。また、連続冷却析出特性試験の試験片断面においてセル状組織部の面積率を計測すると、10%を超えていた。
また、図3のNo.103及び104に示すように、本発明の第1の実施例に対する比較例としての合金は、Ni−Cr−Al合金にMoを加えたとしても、Cr量について、(A)式:41%>Cr+0.54Mo+0.9Fe>36%を満たしていない。かかる合金は、図4からわかるように、Cr量が少ないと、連続冷却析出特性試験において所定の硬さ以下となり、ドリル切削試験で良好な値を得ることができる。その一方で、時効硬さ試験において所定の硬さを得られない。逆に、Cr量が多いと、時効硬さ試験において硬さをほぼ所定の硬さ程度に得ることが出来るが、ドリル切削試験では本実施例の合金と比較して、良好な値を得られない。また、連続冷却析出特性試験の試験片断面において平均結晶粒径を有するミクロ組織内のセル状組織部の面積率を計測すると、10%を超えていた。
なお、Moについては、セル状組織の形成を遅延させることが本実施例からも判る。一方、0.1%を下回るとその十分な効果を得られないことが判った。また、4.0%を越えると、析出硬化熱処理により所定の硬度を達成すべく、所定量のセル状組織を形成するために多大な時間を要するとともに、コストの上昇を招来してしまう。なお、耐食性、特に耐硫酸腐食性を向上させる効果も観察された。そこで、好ましくは0.2〜2.5%を含む合金が良好であることを得た。
一方で、Crについては、上記したように、セル状組織のα相の主な形成元素である。また、耐食性の向上にも影響を与える。なお、上記したように、図3のNo.103及び104に示すように、本発明の第1の実施例に対する更なる比較例としての合金についての結果等を考慮して、好ましくは35〜39%を含む合金が良好であることを得た。
ところで、Feについては、原料などから不可避的に混入されるが、セル状組織の形成の促進に大きく影響を与えるとともに、耐食性低下にも影響を与えることが判った。そこで、好ましくは2%以下とすべきである。
本発明者は、Mo、Cr及びFeの一般的な固溶化熱処理と時効熱処理におけるセル状組織の形成及び成長の遅延と促進とのバランスを考慮して、(A)式:41%>Cr+0.54Mo+0.9Fe>36%を得るに至った。いずれの元素もα相の析出量に影響し、36%を下回ると最高時効硬さ600HV以上が得られない。41%を上回ると熱間加工が困難になる。
更に、本実施例においては、Alとともに、Si及びMnを含んでいる。
まず、Alについては、金属間化合物であるNi3Alからなるγ’相を生成するために必要であることは勿論、耐高温腐食性の向上に寄与する。
ここで、図31のNo.106に示すように、本発明の第1の実施例に対する比較例としての合金は、Alが4.5%である。図4からわかるように、連続冷却試験及び時効硬さ試験の双方において硬さが本発明の合金に比べ相対的に大きくなる。連続冷却析出特性試験の試験片断面において平均結晶粒径を有するミクロ組織内のセル状組織部の面積率を計測すると、10%を超えて、不均一な組織を有していた。これを裏付けるように、ドリル切削試験では上記した本実施例の合金と比較して、良好な値を得られない。
なお、図3のNo.105に示すように、後述するWを含む実施例に対して、Alが3.2%であると、図4からわかるように、時効硬さ試験において硬さで所定の硬さを得られない。時効硬さ試験を実施した試験片の断面において平均結晶粒径を有するミクロ組織内のセル状組織部の面積率を計測すると、非常に低い面積率であった。つまり、γ’相の析出が不完全で、セル状組織の形成及び成長が不完全であった。
すなわち、Alが3.4%を下回るとγ’相の生成が少なく、十分な機械的強度を得られず、4.2%を越えると逆に上記したようにセル状組織の生成を促進させ過ぎてしまう。そこで、好ましくは、3.4〜4.2%を含む合金が良好であることを得た。
Siについては、脱酸元素である一方、セル状組織の形成を促進させることが観察された。そこで、好ましくは、0.5%以下を含む合金が良好であることを得た。
Mnについても脱酸元素である一方、セル状組織の形成を促進させることが観察された。そこで、好ましくは、0.5%以下を含む合金が良好であることを得た。
図3のNo.8に示すように、本発明の第2の実施例による合金は、Ni−Cr−Al合金に実施例1と同様にMoを加えるとともに、B及び/又はMgを更に加えた合金である。なお、添加量は、B:0.001〜0.01%及び/又はMg:0.001〜0.005%である。これらの合金は、図4からわかるように、連続冷却析出特性試験では断面において400HV以下の硬さである一方、時効硬さ試験では断面において650HV程度の硬さと良好な値を示している。また、連続冷却析出特性試験の試験片断面においてセル状組織部の面積率を計測すると、10%以下であって、均一な組織を有していた。さらに、ドリル切削試験では80m/min程度以上と良好な値を示している。
なお、B及びMgは、実施例1のMoを加えたNi−Cr−Al合金の機械的特性を変化させることなく、熱間加工性等を向上させ得ることが判る。故に、後述する実施例においては、これら元素を含むように組成を調整している。
なお、Bについては、上記したように、結晶粒界に偏析して粒界を強めて熱間加工性やクリープ強度を高める効果が確認された。一方で、過剰に含まれると熱間加工性を低下させ得ることも判った。そこで、好ましくは、0.001〜0.01%を含む合金が良好であることを得た。
また、Mgについては、脱酸及び脱硫元素であって、熱間加工性を高めるが、過剰に含まれると、B同様に熱間加工性を低下させ得ることも判った。そこで、好ましくは、0.001〜0.01%を含む合金が良好であることを得た。なお、Mgと同様にCaを含んでいても良いことを得た。
図3のNo.5〜7及び9〜14に示すように、本発明の第3の実施例による合金は、第2の実施例のNi−Cr−Al合金にCを加えた合金である。いずれの合金も、質量%で、C:0.01〜0.1%を含み、且つ、(B)式:−0.05%≦C−0.25Ti−0.13Nb−0.07Ta−0.24V−0.13Zr≦0.1%を満たしている。なお、かかる(B)式についての詳細は後述する。これらの合金は、図4からわかるように、連続冷却析出特性試験では断面において400HV以下の硬さである一方、時効硬さ試験では断面において650HV程度の硬さと良好な値を示している。また、断面においてセル状組織部の面積率を計測すると、10%以下であって、均一な組織を有していた。さらに、ドリル切削試験では80m/min程度以上の良好な値を示している。
なお、Cについては、溶製時に脱酸剤として作用するほか、Ti、Nb、Ta、V及びZr等と炭化物を形成して固溶化熱処理における結晶粒の粗大化を抑制するとともに、結晶粒界の強化に寄与する。一方で、0.1%を越えると、靭性や耐食性を低下させることが確認された。
ところで、Ti、Nb、Ta、V及びZr等は、原料などから不可避的に混入されるが、セル状組織の形成の促進に大きく影響を与える。好ましくは、0.3%未満とすべきである。ところが、CとともにMc型炭化物を形成して固溶化熱処理時の結晶粒粗大化を抑制することが観察された。ここで、図3のNo.107及び108に示すように、本発明の第3の実施例に対する比較例としての合金は、(B)式:−0.05%≦C−0.25Ti−0.13Nb−0.07Ta−0.24V−0.13Zr≦0.1%を満たしていない。かかる合金は、図4からわかるように、連続冷却析出特性試験では断面において400HVを越える硬さでありドリル切削試験において本実施例の合金と比較して、良好な値を得られない。これを裏付けるように、連続冷却析出特性試験の試験片断面においてセル状組織部の面積率を計測すると、10%を超えていた。故に、これらを考慮して、本発明者は、(B)式:−0.05%≦C−0.25Ti−0.13Nb−0.07Ta−0.24V−0.13Zr≦0.1%を得るに至った。
図3のNo.15〜20に示すように、本発明の第4の実施例による合金は、第1乃至3の実施例のNi−Cr−Al合金においてMoの一部をWで置換した合金である。いずれの合金も、0.1〜4.0%のWを含み、Mo+0.5W:0.2〜2.5%を満たすようにMoの一部を置換して、且つ、(A’)式:41%>Cr+0.54Mo+0.25W+0.9Fe>36%を満たす。なお、かかるにMoの一部の置換、及び、(A‘)式についての詳細は後述する。これらの合金は、図4からわかるように、連続冷却析出特性試験では断面において400HV以下の硬さである一方、時効硬さ試験では断面において650HV程度の硬さと良好な値を示している。また、連続冷却析出特性試験の試験片断面においてセル状組織部の面積率を計測すると、10%以下であって、均一な組織を有していた。さらに、ドリル切削試験では80m/min程度以上の良好な値を示している。
なお、Wについては、セル状組織の生成を遅延させるとともに、Moの一部をMo+0.5W:0.2〜2.5%を満たすように置換できることが確認された。一方、4.0%を越えると、α−Wが析出して熱間加工性が低下することも併せて確認された。そこで、好ましくは、0.1〜4.0%を含む合金が良好であることを得た。
なお、本発明者は、実施例1と同様に、Mo、Cr及びFeにWを併せて、一般的な固溶化熱処理と時効熱処理におけるセル状組織の形成のバランスを考慮して、(A’)式:41%>Cr+0.54Mo+0.25W+0.9Fe>36%を得るに至った。
図3のNo.21〜24に示すように、本発明の第5の実施例による合金は、第1乃至4の実施例のNi−Cr−Al合金に、Cu及び/又はCoを更に加えた合金である。なお、添加量は、Cu:0.1〜5%及び/又はCo:0.1〜10%である。これらの合金は、図4からわかるように、連続冷却析出特性試験では断面において400HV以下の硬さである一方、時効硬さ試験では断面において650HV程度の硬さと良好な値を示している。また、連続冷却析出特性試験の試験片断面においてセル状組織部の面積率を計測すると、10%以下であって、均一な組織を有していた。さらに、ドリル切削試験では80m/min程度以上の良好な値を示している。
なお、Cu及びCoも、BやMgと同様に、実施例1乃至4のNi−Cr−Al合金の機械的特性をほとんど変化させることなく、固溶強化及び/又は耐硫酸腐食性の改善効果などを与え得る。
なお、Coについては、効果は小さいがセル状組織の生成を遅延させるとともに固溶強化の効果を与える。一方で、過剰に含まれると熱間加工性を低下させ、コストも上昇する。そこで、好ましくは、0.1〜10%を含む合金が良好であることを得た。
Cuについては、耐硫酸腐食性を向上させるとともにセル状組織の生成を遅延させる。一方で、過剰に含まれると熱間加工性を低下させる。そこで、好ましくは、0.1〜5%を含む合金が良好であることを得た。
以上、本実施例によれば、所定量のMoによって固溶化熱処理の連続冷却過程におけるセル状組織の形成及び成長が抑制されて、冷却速度の遅い素材内部においても400HV以下の最大硬さとすることができる。これにより、素材内部まで比較的均一な組織を得られて、良好な加工性を有する。その一方で、上記(A)式を満たす所定量のMoでは、所定温度に加熱して保持する時効熱処理(析出硬化熱処理)においてセル状組織の形成及び/又は成長を大きく抑制せず、所定の強度を与え得る。つまり、(A)式を満たす所定量のMoによって、固溶化熱処理の連続冷却過程及び析出硬化熱処理の等温時効過程におけるセル状組織の形成及び成長を制御される。故に、素材内部まで比較的均一な組織を得られて良好な加工性を与えるとともに、最終製品においては所定の機械強度を与えるのである。
なお、図3のNo.101乃至108に示す比較例は、上記した対応実施例以外の実施例の合金組成を決定するために適宜、参照された。
以上、本発明による代表的実施例及びこれに基づく変形例を説明したが、本発明は必ずしもこれらに限定されるものではなく、当業者であれば、添付した請求項の範囲を逸脱することなく種々の代替実施例及び改変例を見出すことができる。
Claims (7)
- 析出硬化熱処理を施して使用されるNi−Cr−Al合金素材であって、
質量%で、Cr:34〜40%、Al:3.4〜4.2%、Mo:0.2〜2.5%、Si:0.5%以下、Mn:0.5%以下、Fe:2%以下、Ti+Nb+Ta+V+Zr:0.3%未満、残部を不可避的不純物及びNiとし、且つ、(A)式:41%>Cr+0.54Mo+0.9Fe>36%を満たす合金組成を有し、
断面において400HV以下の最大硬さを有することを特徴とするNi−Cr−Al合金素材。 - 質量%で、B:0.001〜0.01%及び/又はMg:0.001〜0.005%を含むことを特徴とする請求項1記載のNi−Cr−Al合金素材。
- 質量%で、C:0.01〜0.1%を含み、且つ、(B)式:−0.05%≦C−0.25Ti−0.13Nb−0.07Ta−0.24V−0.13Zr≦0.1%を満たすことを特徴とする請求項1又は2に記載のNi−Cr−Al合金素材。
- 質量%で、Mo+0.5W:0.2〜2.5%を満たすようにMoの一部を置換して0.1〜4.0%のWを含み、且つ、(A’)式:41%>Cr+0.54Mo+0.25W+0.9Fe>36%を満たすことを特徴とする請求項1乃至3のうちの1つに記載のNi−Cr−Al合金素材。
- 質量%で、Cu:0.1〜5%及び/又はCo:0.1〜10%を含むことを特徴とする請求項1乃至4のうちの1つに記載のNi−Cr−Al合金素材。
- 前記断面において平均結晶粒径を有するミクロ組織内の析出相の面積率が10%以下であることを特徴とする請求項1乃至5のうちの1つに記載のNi−Cr−Al合金素材。
- 1100℃〜1250℃の温度においてγ単相組織とし得ることを特徴とする請求項1乃至6のうちの1つに記載のNi−Cr−Al合金素材。
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CN113924182A (zh) * | 2019-05-28 | 2022-01-11 | 奥钢联精密带钢有限公司 | 用于锯链的切割部件及其制造方法 |
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2008
- 2008-07-25 JP JP2008191697A patent/JP2010031301A/ja active Pending
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