JP4816948B2 - 機能性シートおよびその製造方法 - Google Patents

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本発明は、人やペットなどが快適な環境を得るうえで有用な機能など、種々の機能を持つ機能性シートおよびその製造方法に関する。
快適な環境は様々であり、個人差や固体差はあるが、環境を改善する機能性物品としては、一般的に夏季や運動後では冷感を与える機能を有するもの、冬季では保温機能を有するもの、蚊や蝿などの害虫が多い環境ではかかる害虫に対して殺虫作用や忌避作用のあるもの、室内の過乾燥や過湿を緩和するもの、などが考えられる。
このようなものとして、複数の並列した孔隙を有するハニカム構造板の両面に、その孔隙を塞ぐように板材が設けられ、上記板材の少なくとも一方は透湿性を有し、上記孔隙内に吸着剤が収容された機能性板材が、公知である(特許文献1参照)。
ペットを載せる金属製の放熱部材を備え、当該放熱部材の下側に、水を吸収可能な吸収材を備え、当該吸収材の下側に、水および水蒸気を通す孔を有するベース部材を備えたペット用マットが、公知である(特許文献2参照)。
さらに、ナイロン膜とポリエチレン膜とを塩化ビニリデンで貼合した気密性極薄膜内に硫酸ナトリウムなどの濃水和物を充填して完全密封した医療兼用適冷マットも、公知である(特許文献3参照)。
特開平8−244148号公報 特開2001−161196号公報 特開平7−250860号公報
上記従来技術のうち、特許文献1の機能性板材は、吸着剤が収容されるハニカム構造板が、そのハニカム構造に由来して可撓性に乏しく、このために機能性板材の全体が剛直であるので、寝具材などしては不適当である。特許文献2のペット用マットも、金属製の放熱部材含むので全体が剛直であって、特許文献1の機能性板材と同様の問題がある。これに対し、特許文献3の医療兼用適冷マットは、ナイロンとポリエチレンからなる極薄膜製であるので、特許文献1の機能性板材や特許文献2のペット用マットなどとは異なり、柔軟性に富むが、機械的強度が低いので、他物質との摩擦やエッジとの接触などにより破断し易く、このために、例えば、家庭用の寝具材やソファー材としては不向きである。
そこで、本発明の課題は、上記従来技術における問題を解決するべく、適度の剛直性、可撓性並びに良好な機械的強度とを具備していて、人やペット用の寝具材やソファー材その他の、種々の用途に好適である繊維集合体製の機能性シートとその製造方法を提供することにある。
すなわち、本発明にかかる機能性シートは、面内において互いに間隔をあけて孔あけ加工により設けられた複数の貫通孔を有する繊維集合体製の第一可撓性シートと、上記第一可撓性シートの片面に積層されて上記貫通孔の一方の開口を塞ぐ繊維集合体製の第二可撓性シートと、上記第二可撓性シートの反対側で上記第一可撓性シートに積層されて上記貫通孔の他方の開口を塞ぐ繊維集合体製の第三可撓性シートとを含み、上記第二可撓性シートと上記第三可撓性シートとで上記両開口が塞がれた上記複数の貫通孔の少なくとも一部の貫通孔の内部に機能性剤が収容されている、ことを特徴とする。
また、本発明にかかる機能性シートの製造方法は、上記機能性シートを製造する方法であって、
上記第一可撓性シートとなる基材層と、上記基材層の両面に設けられた粘着剤層と、上記粘着剤層の表面を覆う剥離可能な粘着保護層とが積層された原料シートに孔あけ加工を施して上記基材層を上記第一可撓性シートに加工する工程と、
孔あけ加工された上記原料シートから一方の粘着保護層を剥離し、露出した粘着剤層を介して、上記第二可撓性シートおよび第三可撓性シートのうちの一方を上記第一可撓性シートに貼り合わせて上記第一可撓性シートに形成された貫通孔の一方の開口を塞ぐ工程と、
第二可撓性シートおよび第三可撓性シートのうちの一方により一方の開口が塞がれている上記貫通孔の内部に機能性剤を充填する工程と、
機能性剤が収容された上記積層体から他方の上記粘着保護層を剥離し、露出した粘着剤層を介して、上記第二可撓性シートおよび第三可撓性シートのうちの残るシートを上記第一可撓性シートに貼り合わせて上記貫通孔の他方の開口を塞ぐ工程と、
を含む、ことを特徴とする。
本発明の機能性シートは、繊維集合体により形成されているので、ハニカム構造板や金属製機能性板材を含む従来技術のような剛直性はなく、しかも、極薄膜で形成された従来技術と比較して格段に優れた機械的強度を有する。このため、本発明の機能性シートは、人やペットの動きによりかなりの強度で摩擦されても破断しない。加えて、繊維集合体製であって通気性を有するので、貫通孔内に収容された機能性剤が大気を呼吸することが可能であり、そのため、機能性剤の機能に基づき室内の湿気調節など、種々の環境改善作用をなすことができる。
本発明の機能性シートの製造方法によれば、本発明の機能性シートを工業的に効率よく製造することができる。
以下、本発明にかかる機能性シートおよびその製造方法ついて詳しく説明するが、本発明の範囲はこれらの説明に拘束されることはなく、以下の例示以外についても、本発明の趣旨を損なわない範囲で適宜変更実施し得る。
図1〜3は、本発明にかかる機能性シートの実施形態を説明するものであり、この機能性シートSは、主要部としての第一可撓性シート22と、第二可撓性シート10と、第三可撓性シート30とを含み、機能性剤40が以下に述べるようにして第一可撓性シート22の内部に収容されてなるものである。
第一可撓性シート22は、その面内において互いに間隔をあけて設けられた複数の貫通孔24を有する多孔シート20を構成しており、第二可撓性シート10は、貫通孔24の一方の(図1では下側の)開口を塞ぐように第一可撓性シート22に貼り合わせ結合されている。機能性剤40は、第一可撓性シート22に設けられた複数の貫通孔24の少なくとも一部の貫通孔24内に充填され収容されている。そして、第三可撓性シート30が、貫通孔24の他方の(図1では上側の)開口を塞ぐようにして第一可撓性シート22に貼り合わせ結合されて、機能性シートSは3層積層体となっているのである。
第一可撓性シート22、第二可撓性シート10および第三可撓性シート30は、いずれも、主として、繊維集合体が用いられるが、同様の可撓性を持つゴム(天然、人工合成のいずれでも可)や樹脂発泡体で形成されたものを用いても良い。本発明における当該繊維集合体は、天然もしくは合成された繊維からなるシート状のもの、例えば、編物、織物、不織物、フェルト、マットなどである。
天然繊維としては、羊毛に代表される獣毛、絹などの動物繊維、綿、麻などの植物繊維、ビスコースレーヨン、タンパク繊維などの再生繊維、アセテートなどの半合成繊維、ポリエステル、ナイロン、ポリプロピレンなどに代表される合成繊維、カーボン、ステンレス、ガラスなどの無機繊維であってよい。ただし、無機繊維は上記可撓性シートの可撓性を損ねたり、切断端が機能性シートの使用者などの皮膚を傷付ける可能性があるので、使用量や使用方法に注意を要する。なお、例えば、長尺の極細カーボン繊維や極細ステンレス繊維などは、きわめて良好な可撓性と機械的強度とを有するので、機械的強度の優れた機能性シートの製造に有用である。
本発明の機能性シートは、その構成として、第一可撓性シート22の外面に位置する第二可撓性シート10と第三可撓性シート30の間で、それぞれの機能に区別を付ける第一の構成と、両シート10、30の機能に区別を付けない第二の構成の2つがある。第一の構成例として、第二可撓性シート10を、支持機能を有する裏材とし、第三可撓性シート30を、化粧機能を兼ねる表材とする構成例があり、この場合、第三可撓性シート30としては合成繊維類を用いた編物や織物であって、無加重状態における厚みが0.5mm〜2.0mmのものが好ましく、第二可撓性シート10としては合成繊維類を用いた不織物やマットであって、良好な可撓性とクッション性とを確保するために、無加重状態における厚みが1mm〜30mmのものが好ましい。
第一可撓性シート22の構成材料は、使用する機能性剤40の種類や機能を考慮して適宜選択すればよいが、機能性剤40が、前記した潮解性化合物である場合には、保水性の良好なフェルトが好ましくい。その際のフェルトとしては、100%羊毛フェルト、羊毛と他の繊維、例えば、ポリエステル、レーヨンなどの少なくとも1種を1重量%〜50重量%混紡した混紡フェルトなどであってよい。さらにそれらのフェルトは、木炭を混合した木炭混合フェルトであってもよい。木炭は、かかるフェルトの保水性を一層向上せしめる効果がある。その場合の木炭としては、粉状、塊状、板状、繊維状などの形状のものであって、少なくとも1種を1重量%〜50重量%配合すると良い。
機能性剤40は、機能性シートに求められる機能に応じて選ばれるものであって、冷却や保温などの体温調節剤、殺虫剤や害虫忌避剤、調湿剤などであり、それ以外の機能性剤であっても良く、いずれにおいても、それらの粉体や粒体が用いられる。就中、平均粒径が、0.2mm〜5mm、特に0.5mm〜2mmの粒体が好ましい。
冷却剤としては、塩化ナトリウム、水酸化ナトリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウムなどの潮解性化合物が例示される。これら潮解性化合物は、大気中の水分や人の汗を吸収して本発明の機能性シートを冷却するので、夏季や運動後の人に心地良い冷感を与える効果がある。犬などのように発汗しない動物でも、大気中の水分を吸収して本発明の機能性シートSを冷却するので、同様の効果がある。
なお、多くの潮解性化合物は、過度に水分を吸収すると水に溶解して液化する問題があるので、この場合、その吸水量を制限したり、液化した機能性剤40が染み出たりしないようにするための適当な防水措置を施しておくとよい。
潮解性化合物として天然塩を用いると、それらは塩化ナトリウム以外の多種類のミネラル分を含有するので水に難溶性であって、吸水に基づく液化を生じ難く、そのため、冷却用の機能性剤としては、特に好ましい。天然塩とは、例えば、35℃以下の水に対する溶解度が1重量%以下であって、15〜35℃の静止水には殆ど溶けないものであり、岩塩、海水を自然蒸発して得られる海水塩などが例示される。
機能性剤40は、例えば、第一可撓性シート22に第二可撓性シート10が張り合わされて、貫通孔24が底付きとなり、しかし、貫通孔24の上側開口が未だ塞がれていない状態の時に、各貫通孔24内に投入される。貫通孔24は、その後、第三可撓性シート30の第一可撓性シート22への貼着により、密封される。
機能性剤40として冷感剤が用いられているときは、第一可撓性シート22、第二可撓性シート10および第三可撓性シート30の3層積層体20からなる機能性シートSは、冷感シートとなり、枕等の寝装寝具などに好ましく用いられる。
冷感シートタイプのこの機能性シートSは、また、これを、図3に示すように、家庭内のフロアF上に置いておくと、夏季においては、機能性シートSによる冷感作用により、ペットPが好んで機能性シートSの上に座りに来る。
第三可撓性シート30が木炭混合繊維フェルト製であると、天然塩などの機能性剤40が集め過ぎた水分を分散保水させて揮発水分量を調節することができるので、過剰吸水した水分で機能性シートSの表面がびっしょりと濡れるのを防ぐことができる。
3層構造体における各層の接着強度は、例えば、水洗い50回対応程度を目安にすれば良い。
図4は、本発明にかかる機能性シートの製造方法の一例を示している。
第1工程では、まず、本発明の機能性シートSを構成する3層積層体の第一可撓性シート22を含む多孔シート20を得るための準備として、図4(a)に示す原料シート60が用意される。この原料シート60は、未だ、貫通孔24が穿孔されておらず、第一可撓性シート22の前駆体として機能する基材層22’と、基材層22’の両面に施された粘着剤層26と、粘着剤層26に粘着されて粘着剤層26を保護する保護シート50から構成されている。粘着剤保護シート50としては、紙シートなどの粘着剤層26から剥離容易なものが用いられる。
前記第1工程では、図4(b)に示すように、原料シート60に対し、孔あけ加工が施されて、粘着剤保護シート50、粘着剤層26および基材層22’を貫通する複数の貫通孔24が、互いの間に所望の間隔をあけて、穿孔される。この穿孔により、基材層22’は第一可撓性シート22に加工される。第5図はこのようにして得られた多孔シート20を示している。
本発明においては、貫通孔24の大きさ、開口形状、および、隣接する貫通孔24間の位置関係や間隔などについては特に制限はなく、本発明の機能性シートの用途に応じて適宜に決定すればよい。貫通孔24の開口形状は、例えば、円形や楕円形などの丸形、正方形などの方形や三角形など非丸形、あるいは、その他の形状であってよい。
本発明においては、貫通孔の大きさは、開口面積にして0.2cm以上が好ましく、より好ましくは0.2cm〜4cm、さらに好ましくは0.3cm〜2cmであり、貫通孔24間の間隔は、貫通孔の平均直径程度であることが好ましい。貫通孔24間の間隔は、必ずしも一定あるいは一定に近い規則性をもって設ける必要はないが、マトリックス状や千鳥状などの規則性をもって設けられると、可撓性が良好でしかも均一な機能性シートが得られる利点がある。
第2工程では、図4(b)に示された下側の粘着剤保護シート50が、図4(c)に示すように、粘着剤層26から剥離除去され、それに代わって、第二可撓性シート10が粘着剤層26を介して第一可撓性シート22に重ね合わされて貼着される。
第3工程では、第二可撓性シート10により下側の開口が塞がれて底付きとなった各貫通孔24内に、図4(d)に示すように、機能性剤40が充填される。
第4工程では、貫通孔24の上側の開口を塞ぐように第三可撓性シート30が粘着剤層26を介して第一可撓性シート22に重ね合わされ粘着される。
本発明にかかる機能性シートSは、例えば、このようにして得られる。
第3工程における各貫通孔24内への機能性剤40の充填量は、それが過大量であると、得られた機能性シートSの表面が機能性剤40により部分的に盛り上がって凹凸を生じ、かつ、第二可撓性シート10や第三可撓性シート30が第一可撓性シート22から剥離することがあり、他方、機能性剤40の充填量が過少量であると、得られた機能性シートSの機能性剤40の作用に基づく機能が不十分となるので、機能性剤40の充填量は、例えば、各貫通孔24の内容積の50容量%〜98容量%、特に70容量%〜95容量%が好ましい。
本発明にかかる機能性シートは、夏季や運動後のスポーツ選手に対しては冷感を与える汗拭き材、体温調節ができない小動物用の冷感シートや保温シート、一般家庭用の寝具ややソファーなど家具構成材、室内の湿度調節機能を有する敷物、冬季では保温機能を有す敷物、蚊や蝿などの害虫が多い環境ではかかる害虫に対して殺虫作用や忌避作用のある敷物、などとしての利用可能性が高い。
本発明の実施形態を示す断面図である。 図1の1部破断部を含む平面図である。 本発明にかかる機能性シートの使用例を示す一部断面側面図である。 本発明にかかる機能性シートの製造方法を示す工程毎の断面図である。 図4(b)の1部破断部を含む平面図である。
符号の説明
S 機能性シート
10 第二可撓性シート
20 多孔シート
22 第一可撓性シート
24 貫通孔
26 粘着剤層
30 第三可撓性シート
40 機能性剤
50 粘着剤保護シート
60 原料シート

Claims (6)

  1. 面内において互いに間隔をあけて孔あけ加工により設けられた複数の貫通孔を有する繊維集合体製の第一可撓性シートと、上記第一可撓性シートの片面に積層されて上記貫通孔の一方の開口を塞ぐ繊維集合体製の第二可撓性シートと、上記第二可撓性シートの反対側で上記第一可撓性シートに積層されて上記貫通孔の他方の開口を塞ぐ繊維集合体製の第三可撓性シートとを含み、上記第二可撓性シートと上記第三可撓性シートとで上記両開口が塞がれた上記複数の貫通孔の少なくとも一部の貫通孔の内部に機能性剤が収容されている、ことを特徴とする、機能性シート。
  2. 上記第一可撓性シートがフェルト製であり、上記第二可撓性シートが裏打ち層となる不織布製であり、上記第三可撓性シートが表層となるニット製である、請求項1に記載の機能性シート。
  3. 上記機能性剤が、吸放湿により冷熱を発生する粒状物である、請求項1または2に記載の機能性シート。
  4. 上記粒状物が天然塩である、請求項3に記載の機能性シート。
  5. 冷感シートである、請求項1から4までのいずれかに記載の機能性シート。
  6. 請求項1から5までのいずれかに記載の機能性シートを製造する方法であって、
    上記第一可撓性シートとなる基材層と、上記基材層の両面に設けられた粘着剤層と、上記粘着剤層の表面を覆う剥離可能な粘着保護層とが積層された原料シートに孔あけ加工を施して上記基材層を上記第一可撓性シートに加工する工程と、
    孔あけ加工された上記原料シートから一方の粘着保護層を剥離し、露出した粘着剤層を介して、上記第二可撓性シートおよび第三可撓性シートのうちの一方を上記第一可撓性シートに貼り合わせて上記第一可撓性シートに形成された貫通孔の一方の開口を塞ぐ工程と、
    第二可撓性シートおよび第三可撓性シートのうちの一方により一方の開口が塞がれている上記貫通孔の内部に機能性剤を充填する工程と、
    機能性剤が収容された上記積層体から他方の上記粘着保護層を剥離し、露出した粘着剤層を介して、上記第二可撓性シートおよび第三可撓性シートのうちの残るシートを上記第一可撓性シートに貼り合わせて上記貫通孔の他方の開口を塞ぐ工程と、
    を含む、ことを特徴とする、機能性シートの製造方法。
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