JP3684391B2 - 高通気性マット - Google Patents

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、通気性に優れた寝具用マットに関し、詳細には、形状安定性に優れた一体型の高通気性マットに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
蒸し暑い夏に快適な睡眠を得るため、通気性に優れた寝具用マットが種々考案されている。例えば実開昭60−167565号には、緩衝性多孔質シート材料と多数の突起部を有する緩衝性シート芯材を重ね合わせた構造の寝具用複合芯材が開示されている。しかしこの技術では、シート芯材の突起部が就寝者の重量で潰れるのを防ぐために、かなりの剛性を持つプラスチックフィルムで緩衝性突起シート状芯材を製造しなければならず、この層における通気性は全く考慮されていないものであった。また表層部に相当する緩衝性多孔質シート材料としても、緩衝性、弾性、柔軟性、適度の強度が要求されるため、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル等の疎水性高分子材料の発泡シートが用いられているが、この様な素材ではたとえ多孔質化されていてもほとんど通気性はなく、直接この寝具上に就寝した場合、就寝者が発汗した時はぬるぬるして寝心地の悪いものであった。
【0003】
一方、より通気性に着目した例として、実公平5−46704号には、立体的網目状繊維組織からなる通気マットの上下にフェルトマットを接着せずに被覆体で一体に構成した3層構造のマット状寝具が開示されている。しかし、この3層は相互に接着されていないため、乳幼児等の寝返りなどの際にずれやすい。また、この公報に記載されているフェルトマットは、単なるポリエステル繊維で作られたフェルト層であり、吸水性、吸湿性に欠け、さらに嵩高性に劣っているものであった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、上記従来の問題点を解決して、吸汗性、吸・放湿性に優れ、乳幼児から大人まで使用可能なクッション性・形状安定性を有する高通気性マットを提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明の高通気性マットは、少なくとも3層構造のマットであって、主として天然繊維から構成された表層部と、主として吸汗性ポリエステル繊維からなる中層部および下層部が積層されており、該表層部および中層部はニードルパンチで一体化され、かつ両層を貫通する複数の通気孔が穿設されると共に、中層部と下層部は通気性ホットメルトシートを介して接着されているところに特徴を有する。
【0006】
表層部の目付が100〜500g/m2 、中層部の目付が700〜1500g/m2 、下層部の目付が1000〜2000g/m2 であること、さらに中層部の目付が下層部の目付より小さいものであること、中層部および下層部が、主として吸汗性ポリエステル繊維からなる目付10〜15g/m2 のカードウエブを積層し、ニードルパンチ後に熱圧着したものであることは、通気性、クッション性、形状安定性の全てに優れたマットを形成するための好適な実施態様である。下層部の外側に、さらに高吸湿性の消臭性防かび層を設けることは、衛生上の点から好ましい。
【0007】
【作用】
本発明では、マットの主たる構成成分であるポリエステル繊維として汗の吸・放出性に優れた吸汗性ポリエステルを用いたので、従来の普通のポリエステル繊維のみを使用したマットに比べて、高い目付にしても優れた吸汗性を有している。従って、各層の目付を規定することによって、吸汗性、通気性、クッション性の全てに優れたマットを提供することに成功した。また、綿主体の表層部と吸汗性ポリエステルからなる中層部をニードルパンチで一体化したので、通気孔が形成されている層の形状安定性が向上すると共に、ニードルパンチ孔によってさらに通気性、透水性が増大した。さらに、通気孔が設けられていない吸汗性ポリエステルからなる下層部と前記中層部を、通気性ホットメルトシートで接着させているので、通気性を犠牲にすることなく、しかも簡単に製造することができる。
【0008】
【実施例】
以下図面に示した実施例に基づいて本発明をさらに詳述するが、下記実施例は本発明を制限するものではない。
図1には、本発明の3層構造の実施例に相当する高通気性マット1の斜視図を、図2には断面図を示した。図1および図2において、2は主として天然繊維からなる表層部、3は主として吸汗性ポリエステルからなる中層部、4は主として吸汗性ポリエステルからなる下層部、5は通気性ホットメルトシート(図1では見えない)である。
【0009】
表層部としては、肌ざわりが良く吸湿性に優れた綿を主体とするフェルト状マットが好ましい。綿以外にも、麻や羊毛等の天然繊維が利用できる。綿はコーマ綿が好ましく、綿と混合され得る他の合成繊維としてはポリエステル繊維や、アクリル繊維等公知の繊維が利用できる。綿を60%以上用いること、表層部の目付を100〜500g/m2 (好ましくは150〜350g/m2 )とすることが強度、吸湿性、肌ざわりの点で推奨される。目付が小さ過ぎると、表層部が弱くなることがある。表層部の厚みは特に限定されないが、0.1〜5cm程度が好ましい。
【0010】
中層部は、吸汗性ポリエステルを60%以上含む繊維からなる目付700〜1500g/m2 のマットとする。目付が小さ過ぎると良好なクッション性が得られない。吸汗性ポリエステルとは、通常のポリエステル繊維に比べ吸汗性に優れているのが特徴であり、例えば東洋紡績株式会社製「エスマーブル」が好適に用いられる。吸汗性ポリエステル以外には、普通のポリエステル繊維や、アクリル繊維の他、低融点のポリエステルやポリオレフィンなどを熱接着用繊維として混合することが推奨される。
【0011】
中層部のマットは、吸汗性ポリエステルを主体とする繊維から目付10〜15g/m2 程度のカードウエブを作り、これを700〜1500g/m2 のうちの所望する目付になる様に積層しこれをニードルパンチすることによって得ることができる。ニードルパンチを施すことによってクッション性が長く持続し、「へたり」が少なくなる。この時、熱接着用繊維を適当量(40%以下)加えておき、ニードルパンチ後に熱圧着することによって、より一層形状安定性に優れたマットを得ることができる。熱接着用繊維による賦形のみでは、形状安定性が出にくく、長期の使用によって「へたり」が生じることがある。また、ニードルパンチによって、厚み方向に多数の微細な貫通孔ができるため、さらに通気性や透水性に優れるものとなる。中層部は、厚み約1〜5cm程度のマットとすることが好ましい。
【0012】
表層部と中層部は両者をニードルパンチで一体化した後、下層部と接着する前に(接着後であっても良い)、穿孔されて通気孔が設けられる。通気性の点から、直径0.5〜3cmの通気孔を5〜30個/100cm2 設けることが好ましい。表層部を構成する綿にはニードルパンチによる微細な貫通孔も多数開いているため、透水性に優れたものとなる。
【0013】
下層部は、前記吸汗性ポリエステルを60%以上含む繊維からなる目付1000〜2000g/m2 のマットとする。目付が小さ過ぎると良好なクッション性が得られない。下層部は中層部より目付が大きい方が望ましい。下層部においてマットの適度な固さおよび弾力性、すなわちクッション性を確保し、中層部は吸汗・放出の役割のために、目付を下層部より小さくする方が好ましいためである。下層部の厚みは、中層部と同程度で構わない。なお、下層部で吸汗性ポリエステルと共に使用できる繊維は、中層部において例示したものと同じであり、製造方法も同じである。
【0014】
下層部と中層部の接着は、通気性ホットメルトシートを用いる。通常の接着剤の使用や、非通気性ホットメルトシートの使用は、本発明のマットの通気性を損なうことになるので用いることはできない。通気性ホットメルトシートとは、くもの巣状のスパンボンド不織布状ホットメルト接着剤であり、かなり疎なランダム網目状にホットメルトファイバーが吹き付けられて、一枚の薄いシートを形成したものである(例えば東洋紡績株式会社製「ダイナック」など)。良好な通気性と作業性を有し、有害物質が全く含まれていないため、本発明のマットに好適に用いられる。ポリアミド系、ポリエステル系等の目付10〜60g/m2 程度のものが利用できる。接着方法は、下層部と中層部の間に通気性ホットメルトシートを挟み、熱圧着することによって簡単に行える。
【0015】
本発明では、図3に示す様に4層構造のマットとしても良い。図3の例は下層部の外側に、高吸湿性の消臭性防かび層を設けたものである。高吸湿性の消臭性防かび層には、東洋紡績株式会社製の変性アクリロニトリル系繊維「N−38」を用いると、高い吸湿性および消臭性、防かび性を併せ持った最下層を形成することができ、悪臭を発したり、かびが生えたりという様な不潔な環境となることがない。
【0016】
なお、最下層は防かび層に限定されず、吸水性ポリマーを含んだ吸水保持層であってもよく、このときは発散しきれなかった汗もしくは尿が最下層で吸収されるため、マットを置いてある畳または板間を汚すことがない。そのほか用途に応じた最下層を設けることができる。
【0017】
【発明の効果】
本発明の高通気性マットは以上の様に構成されているので、次の作用効果を発揮する。
▲1▼就寝者の肌に近い表層部は、綿等の天然繊維主体であるため肌ざわりがよく、肌の敏感な乳幼児や、皮膚の弱い者であっても安心・安全である。
▲2▼上記表層部と中層部はニードルパンチで一体化されているので、表層部において、透水性や通気性をより高めるために目付を低くしても、表層部の強度を保持することができ、表層部のみが剥れて破損することはない。また、ニードルパンチの貫通孔によって、より一層、通気性、透水性が向上した。
▲3▼綿主体の表層部と中層部を貫通する通気孔や、ニードルパンチの貫通孔があるためだけでなく、中層部を構成するポリエステル繊維自身に汗の吸収性に優れた素材を用いているので、表層部から中層部へ汗が移動し易く、移動した汗が通気孔から非常に発散し易い。また、吸汗性ポリエステル繊維は、汗の吸収性だけでなく放出性にも優れているため、乾燥が非常に早い。
【0018】
▲4▼下層部にも吸汗性ポリエステル層が設けられており、しかも中層部と下層部の間は通気性ホットメルトシートによって接着されているだけであるため、中層部から下層部への汗の移動が可能であり、下層部の側面全体から汗を蒸発させることができる。
▲5▼中層部、下層部には、吸汗性に優れたポリエステル繊維を用いているため、目付を高くしても吸水性や通気性が損なわれないので、クッション性に優れた高目付のマットを作ることができる。また中層部および下層部は、それぞれが薄いカードウエブを数十〜百数十枚積層してニードルパンチされたものであるため、形状安定性に優れ、長期間の使用によっても「へたり」が少ない。またニードルパンチの貫通孔による通気性、透水性向上というメリットも享受できる。
▲6▼3層全てが一体化されているので、就寝中にずれる等の不都合がない。
▲7▼下層部の外側に高吸湿性の消臭性防かび層を設ければ、かびが生えたり悪臭を発する様な不潔な環境となることもない。
【0019】
本発明の高通気性マットは、乳幼児はもとより大人の寝具としても有用なマットであり、素材を選択することによって、真夏から真冬まで種々の季節に対応できるマットを製造できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の高通気性マットの斜視説明図である。
【図2】本発明の高通気性マットの断面説明図である。
【図3】本発明の高通気性マットの他の例を示す断面説明図である。
【符号の説明】
1 高通気性マット
2 表層部
3 中層部
4 下層部
5 通気性ホットメルトシート
6 通気孔
7 高吸湿性消臭性防かび層

Claims (4)

  1. 少なくとも3層構造のマットであって、主として天然繊維から構成された表層部と、主として吸汗性ポリエステル繊維からなる中層部、および主として吸汗性ポリエステル繊維からなる下層部が積層されており、
    該表層部および中層部はニードルパンチで一体化され、かつ両層を貫通する複数の通気孔が穿設されており、
    上記中層部および下層部の各々は、主として吸汗性ポリエステル繊維からなる目付10〜15g/m 2 のカードウエブを複数枚積層し、ニードルパンチ後に熱圧着したものであり、中層部と下層部は通気性ホットメルトシートを介して接着されていることを特徴とする高通気性マット。
  2. 表層部の目付が100〜500g/m2、中層部の目付が700〜1500g/m2、下層部の目付が1000〜2000g/m2である請求項1に記載の高通気性マット。
  3. 中層部の目付が、下層部の目付より小さいものである請求項2に記載の高通気性マット。
  4. 下層部の外側に、さらに高吸湿性の消臭性防かび層を設けたものである請求項1〜3のいずれかに記載の高通気性マット。
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