以下、本発明の使用済み媒体廃棄装置について図面を参照しつつ説明する。なお、本発明は、その技術的特徴を有する範囲において、以下の説明及び図面に限定されるものではない。
まず、本発明の使用済み媒体廃棄装置の詳細を説明する前に、本発明の使用済み媒体廃棄装置が好ましく装着される媒体発行装置の全体構成について説明する。なお、使用済み媒体廃棄装置の装着が以下に説明する媒体発行装置に限定されないことは言うまでもない。
(媒体発行装置)
図1は、本発明の使用済み媒体廃棄装置が好ましく装着される媒体発行装置の一例を示す透視側面図である。図1に示す媒体発行装置1は、カード状記録媒体(単に「媒体2」ということがある)を発行する装置であって、装置奥側に配置され、媒体2を図中の上下方向に積層して収納するとともに、積層された媒体2のうち最低位の媒体2aを1枚毎に繰り出し可能な媒体繰り出し部21を有するホッパー20と、媒体2の積層方向に対して鋭角をなす方向へ向けて、媒体繰り出し部21から繰り出された媒体2を搬送する傾斜搬送路30と、傾斜搬送路30の媒体繰り出し部21とは反対側の一端である手前側上方の対角位置に配置された、媒体2を排出する媒体排出口10と、傾斜搬送路30上に設けられ、媒体2に対して所定情報の書き込みを行なう情報書き込み機構(例えば印字装置70等)と、媒体排出口10の内側下方に設けられた、廃棄媒体保管カセット50及び廃棄媒体搬送装置90を有する使用済み媒体廃棄装置と、を少なくとも備えている。
さらに詳しくは、図1に示す媒体発行装置1は、媒体排出口10と傾斜搬送路30との間に設けられ、媒体2を回動させてその搬送される方向を切り替える第1の媒体回動部80と、媒体繰り出し部21と傾斜搬送路30との間に設けられ、媒体2を回動させてその搬送される方向を切り替える第2の媒体回動部60とを備えている。また、媒体排出口10の内側には、所定情報の読み取り、書込み又は書換えのために媒体2に対して非接触の通信処理を行なう非接触通信部100を備えている。また、図1に示すように、第1の媒体回動部80から媒体2を受け取って磁気データの読み取り又は書込みを行なう磁気媒体リーダライタ120が第1の媒体回動部80の下に設けられていてもよいし、第2の媒体回動部60の上方にクリーニング媒体保持部110を備えていてもよい。
媒体発行装置1の全体的な配置構成として、ホッパー20が備える媒体繰り出し部21と、媒体2を発行するための媒体排出口10とが、傾斜搬送路30を間に挟んで装置側面視で対角位置に配置される。そのため、媒体排出口10の内側下方にスペースを与えることができ、そのスペースに、廃棄媒体保管カセット50(リジェクトカセット又は廃棄媒体保管部ともいう)及び廃棄媒体搬送装置90(廃棄媒体搬送部ともいう)を有する本発明に係る使用済み媒体廃棄装置を設けることができる。なお、こうした配置構成は、装置1全体の長さ(図1を平面視した場合の左右の長さ)を短縮して装置全体の大きさを小さくすることができ、さらには、装置外形を作製し易い矩形状とすることができる。
以下、媒体発行装置1の構成等について簡単に説明する。図中、「S」はセンサーを表している。
ホッパー20は、スタッカ(カセット式媒体収納容器)25と媒体送り出し機構22とより構成され、スタッカ25(カセット式媒体収納容器)と媒体送り出し機構22との間には媒体繰り出し部21が形成されている。スタッカ25(カセット式媒体収納容器)は、媒体2を積層収納する媒体収納容器で、媒体発行装置1の一部としてホッパー20から着脱可能にカセット式媒体収納容器として設けられている。なお、本実施の形態では、カセット式媒体収納容器25と示す。このカセット式媒体収納容器25内には、接触式又は非接触式のICカードや磁気カード等の媒体2が収納される。その媒体2は、後述する媒体排出口10と略等しい高さの最上位部27よりも下側に積層して収納されている。なお、そうした媒体2は、利用期限や貨幣価値等の各種情報が完全に記録されていない発行前ものである。また、エンボスの有無は問わない。カセット式媒体収納容器25の下側には、図1に示すように、ゲート部23が設けられており、このゲート部23から、後述する媒体送り出し機構22によって最低位の媒体2aが一枚毎送り出される。このゲート部23は、最低位の媒体2aを一枚のみ送り出すことができる所定の隙間を設けるように、カセット式媒体収納容器25の底板とカセット式媒体収納容器25の側板をなす基準板との間に設けられている。
また、カセット式媒体収納容器25には、カセット式媒体収納容器25をホッパー20から脱着したときにゲート部23を塞ぐシャッタ24を有するシャッタ構造(図示しない)が設けられていてもよいし、カセット式媒体収納容器25内に収容される媒体2を上方から押し下げるように作用するおもり26が設けられていてもよい。
媒体送り出し機構22は、ホッパー20の底部にカセット式媒体収納容器25と対向して配置され、カセット式媒体収納容器25内に収容される複数の媒体2のうち最低位に載置された媒体2aをカセット式媒体収納容器25(即ちホッパー20)の外に送り出す装置である。この媒体送り出し機構22は、カセット式媒体収納容器25の最低位に載置されたカード状媒体2aをゲート部23を経由してカセット式媒体収納容器25(即ちホッパー20)の外に押し出す押出部材221を備えている。この押出部材221には、カード状媒体2aの後端縁に係合してその媒体2aを押し出す爪部が形成されていることが好ましい
押出部材221は、例えば2つのスプロケット223,223間に掛け渡されたチェーン222に取り付けられている。このスプロケットは、例えば図1に示すように、ステッピングモータ等の駆動手段224により伝動ベルト225等を介して駆動制御することができ、これにより押出部材221は、カード状媒体2aを押し出すように駆動される。
媒体排出口10は、媒体発行装置1から最終的に媒体2を排出するゲートであり、装置前面であり且つ装置上部に設けられている。上記のホッパー20の媒体繰り出し部21から繰り出された媒体2は、ホッパー20と媒体排出口10との間に設けられた傾斜搬送路30を経由して、媒体排出口10に搬送される。なお、傾斜搬送路30は、媒体繰り出し部21から繰り出された媒体2を媒体排出口10へ向けて搬送する搬送路である。この媒体排出口10は、図1においては媒体発行装置1の上部に設けられているので、その媒体排出口10の装置内側下方には広いスペースを確保することができる。そのスペースには、廃棄すべき使用済み媒体を保管する本発明に係る廃棄媒体保管カセット50が配置されている。
この媒体排出口10は、媒体2を新規に発行する場合は文字通り媒体排出口となるが、更新発行や書き換え発行する場合は、所定情報を書き換えるべき使用中の媒体がこの媒体排出口10から挿入される媒体挿入口としても機能するとともに、所定情報の書き込み又は書き換えを完了した前記媒体を排出する媒体排出口としても機能する。従って、この媒体排出口10が媒体挿入口及び媒体排出口の両方の機能を有する場合、媒体排出口が媒体の取り込み口としても用いられるので、磁気カードやICカード等の新規発行のみならず、更新発行や書き換え発行用の媒体発行装置として用いられる。
なお、媒体排出口10には、一般的な媒体排出口ないし挿入口に設けられている各種の機能を付加させてもよく、例えば、図1に示すように、シャッタ11とシャッタ用ソレノイド12とを有するシャッタ機構13を備えていてもよい。また、図示しないが、媒体排出口10には、挿入される媒体種の情報を予め読み取るプリヘッドを備えていてもよいし、また、挿入される媒体の幅寸法の適否を検査する幅センサー等が設けられていてもよい。
傾斜搬送路30は、媒体排出口10とホッパー20との間に設けられ、ホッパー20の媒体繰り出し部21から繰り出された媒体2を媒体排出口10へ向けて搬送する搬送路である。傾斜搬送路30には、媒体2を上下から挟んで所定の方向に搬送する対向した搬送用のローラ(以下、対向ローラともいう)31,32,33が設けられている。上述したように、媒体排出口10は装置上部に設けられ、ホッパー20の媒体繰り出し部21は装置下方に設けられているので、その間に配置されて媒体2の搬送路となる傾斜搬送路30は、装置1の枠体の対角線状に設けられている。対角線状に設けられた傾斜搬送路30は、同じ長さの搬送路が必要な場合、搬送路を水平配置した場合に比してその長さを短くすることができるので、装置全体の大きさ(特に図1における左右方向の長さL)を小さくして省スペース化を図ることができる。
情報書き込み機構は、傾斜搬送路30上に設けられて、媒体2に対して所定情報の書き込みを行なうものであり、図1に示すような印字装置70を例示できる。この情報書き込み機構は、所定の情報の書き込み及び書き換えが可能であることが好ましく、具体的には、図1中の印字装置70に示すように、印字ヘッド71や消去ヘッド72を有することが好ましい。
情報書き込み機構である印字装置70は、ホッパー20側から媒体排出口10に向かって、媒体搬送用の対向ローラ31、消去ヘッド72、媒体搬送用の対向ローラ32、印字ヘッド71、媒体搬送用の対向ローラ33の順で配設されている。消去ヘッド72と印字ヘッド71は、それぞれがプラテンローラ34を対向配置し、そのプラテンローラ34との間に媒体2を挟むようにして、媒体2に印字された情報を消去し又は新たな情報を印字する。
印字装置70には、媒体表面に対して消去ヘッド72を昇降させる消去ヘッド駆動モータ73が設けられ、また、媒体表面に対して印字ヘッド71を昇降させる印字ヘッド駆動モータ74が設けられていることが望ましい。こうした各ヘッドの駆動モータ73,74は、媒体2に情報を印字することが必要な際又は媒体2に印字された情報を消去することが必要な際にそれぞれ独立に作動し、プラテンローラ34上の媒体2に接触するまで、消去ヘッド72又は印字ヘッド71を降下させる。一方、上記の消去や印字が終了した場合は、プラテンローラ34上の媒体2から離れる方向に消去ヘッド72又は印字ヘッド71を上昇させる。消去や印字が必要でない場合は、各ヘッドの駆動モータ73,74は動作せず、消去ヘッド72及び印字ヘッド71は傾斜搬送路30から退避した位置に保持される。なお、駆動モータ73,74は、図示しないギアやカム等の昇降機構によって、消去ヘッド72及び印字ヘッド71を駆動する。
第1の媒体回動部80は、図1に示すように、媒体排出口10と傾斜搬送路30との間に設けられ、媒体2を回動させてその搬送される方向を切り替えるように動作する。この第1の媒体回動部80は、媒体2を保持及び搬送する回動搬送路81と、回動搬送路81の両端近傍に設けられた対向ローラ82,83と、回動搬送路81の長手方向の中央位置を軸中心とする回動軸84とを少なくとも有している。
回動軸84は、ベルト86を介して回動軸用モータ85で回動させることができ、回動搬送路81の方向を、傾斜搬送路30と一致接続させるように回動させたり、媒体排出口10に向かうように回動させることができる。また、後述するように、廃棄媒体保管カセット50が媒体排出口10の下側に設けられる場合には、その廃棄媒体搬送装置90の搬送路91と一致させるように回動させることができる。
第1の媒体回動部80を所定の角度回動させるための回動制御は、各種の方法で行なうことができる。例えばステッピングモータとロータリーエンコーダとで回動制御してもよいし、光電センサーと所定形状に作製したポジショニングスリット(遮蔽スリットともいう)とで回動制御してもよい。いずれの場合であっても、傾斜搬送路30と一致させる角度と、媒体排出口10に向かう搬送路に一致させる角度の、少なくとも2つの角度に精度良く回動させる。また、さらに複数の角度に制御する場合には、それぞれの角度に精度良く回動させる。第1の媒体回動部80は、右回りに回転させることもできるし左回りに回転させることもできる。そうした回転動作により、媒体2の搬送時間を短縮することができる。
この第1の媒体回動部80は、(A)傾斜搬送路30から搬送された媒体2を媒体排出口10に搬送する場合には、第1の媒体回動部80の搬送路81を傾斜搬送路30と同じ角度に傾斜させておき、傾斜搬送路30から搬送された媒体2を対向ローラ82,83により一旦保持し、次いで所定角度回転して媒体排出口10側の搬送路101と一致させ、次いで第1の媒体回動部80から対向ローラ82,83により媒体2を送り出す。また、(B)媒体排出口10から搬送された媒体2を傾斜搬送路30に搬送する場合には、第1の媒体回動部80の搬送路81を媒体排出口10側の搬送路101と一致させておき、媒体排出口10から搬送された媒体2を対向ローラ82,83により一旦保持し、次いで所定角度回転して傾斜搬送路30の角度と一致させ、次いで第1の媒体回動部80から媒体2を送り出す。
第2の媒体回動部60は、図1に示すように、媒体繰り出し部21と傾斜搬送路30との間に設けられ、媒体2を回動させてその搬送される方向を切替るように動作する。この第2の媒体回動部60は、媒体2を保持及び搬送する回動搬送路61と、回動搬送路61の両端近傍に設けられた対向ローラ62,63と、回動搬送路61の長手方向の中央位置を軸中心とする回動軸64とを少なくとも有している。
回動軸64は、ベルト66を介して回動軸用モータ65で回動させることができ、回動搬送路61の方向を、傾斜搬送路30と一致接続させるように回動させたり、媒体繰り出し部21と同じ水平方向に回動させることができる。また、後述するように、クリーニング媒体保持部110がこの第2の媒体回動部60の上側に設けられる場合には、そのクリーニング媒体保持部110の搬送路111と一致させるように回動させることができる。
第2の媒体回動部60を所定の角度回動させるための回動制御も上記第1の媒体回動部80と同様、各種の方法で行なうことができる。例えばステッピングモータとロータリーエンコーダとで回動制御してもよいし、光電センサと所定形状に作製したポジショニングスリット(遮蔽スリットともいう)とで回動制御してもよい。いずれの場合であっても、傾斜搬送路30と一致させる角度と、媒体繰り出し部21と同じ水平方向の、少なくとも2つの角度に精度良く回動させる。また、さらに他の角度に制御する場合には、その角度に精度良く回動させる。第2の媒体回動部60は、右回りに回転させることもできるし左回りに回転させることもできる。そうした回転動作により、媒体2の搬送時間を短縮することができる。
この第2の媒体回動部60は、(A)媒体繰り出し部21から搬送された媒体2を傾斜搬送路30に搬送する場合には、第2の媒体回動部60の搬送路61を媒体繰り出し部21と同じ水平にし、媒体繰り出し部21から搬送された媒体2を対向ローラ62,63により一旦保持し、次いで所定角度回転して傾斜搬送路30と同じ角度にし、次いで第2の媒体回動部60から対向ローラ62,63により媒体2を傾斜搬送路30に送り出す。また、(B)傾斜搬送路30から搬送された媒体2を再び傾斜搬送路30に搬送して媒体2に印字したり印字消去したりする場合には、第2の媒体回動部60の搬送路61を傾斜搬送路30の角度と一致させておき、傾斜搬送路30から搬送された媒体2を対向ローラ62,63により一旦保持し、第2の媒体回動部60を回動させることなく再び傾斜搬送路30に送り出す。
非接触通信部100は、媒体排出口10の内側に設けられ、所定情報の読み取り、書き込み又は書換えのために媒体2に対して非接触の通信処理を行なう部材である。非接触通信部100が設けられていることにより、非接触ICカードに対しても適用することができる。この非接触通信部100は、媒体排出口10から挿入された媒体2を搬送する搬送路101を有し、さらに、その搬送路101の長手方向の両端近傍には媒体を挟んで搬送する対向ローラ102,103が設けられている。搬送路101の中央の一面側(図1において上側)には、非接触での通信を行なうアンテナ部104が設けられている。このアンテナ部104は、非接触ICカードとの間で情報通信を行なうことができ、非接触ICカードに情報の送受を行なう。なお、図1に示すように、必要に応じて、媒体2の有無を検知しアンテナ部104との通信の信頼性を確保したり、又は磁気媒体2の裏表の姿勢を検知して印字する磁気データ処理の方向を確認したりする目的でセンサ105が設けられていてもよい。
磁気媒体リーダライタ120は、第1の媒体回動部80の下に設けられていてもよい。媒体2が有する所定情報が磁気データである場合に、第1の媒体回動部80から媒体2を受け取って磁気データの読み取り又は書込み行なう。また、この磁気媒体リーダライタ120を第1の媒体回動部80の下に設ける代わりに、第2の媒体回動部60の上に設けてもよい。磁気媒体リーダライタ120は、第1の媒体回動部80又は第2の媒体回動部60から媒体2を受け取る搬送路121と、磁気データを媒体2から読みとる磁気ヘッド122を有している。さらに、その磁気媒体リーダライタ120には、媒体2を搬送する対向ローラ123が設けられている。対向ローラ123は、後述するA駆動モータ140により駆動される。その駆動力伝達は、対向ローラ123の一方のローラに設けた電磁クラッチ124により駆動切断及び接続がなされる。
クリーニング媒体保持部110は、図1に示すように、第2の媒体回動部60の上方に設けられていてもよい。このクリーニング媒体保持部110は、印字装置が有する印字ヘッド71や消去ヘッド72をクリーニングするためのクリーニング媒体114を収容し、そのクリーニング媒体114を第2の媒体回動部60との間で授受可能に保持する。また、媒体発行装置1においては、第1の媒体回動部80の下側にスペースが与えられるので、このクリーニング媒体保持部110を第2の媒体回動部60の上方に設ける代わりに、第1の媒体回動部80の下に設けてもよい。
クリーニング媒体保持部110は、第2の媒体回動部60との間でクリーニング媒体114を接受する搬送路111と、クリーニング媒体114を搬送する対向ローラ112が設けられている。こうしたクリーニング媒体保持部110が収容するクリーニング媒体114により、印字装置70の印字ヘッド71や消去ヘッド72を定期的又は任意のタイミングでクリーニングすることができる。
電源部130は、図1に示すように、第1の媒体回動部80の下方及び印字装置70の下方のスペースに設けることができる。
(使用済み媒体廃棄装置)
次に、本発明に係る使用済み媒体廃棄装置について詳しく説明する。図2は、本発明の使用済み媒体廃棄装置を側面視したときの透視図である。図1及び図2に示すように、本発明の使用済み媒体廃棄装置は、廃棄すべき使用済み媒体2bを保管する廃棄媒体保管カセット50と、使用済み媒体2bの静電気を除去する除電ブラシ93を有し、使用済み媒体2bを受け取って廃棄媒体保管カセット50内に送り出す廃棄媒体搬送装置90とで構成されている。この使用済み媒体廃棄装置は、媒体排出口10の内側下方に確保されたスペースに設けられている。こうして構成された使用済み媒体廃棄装置は、使用済み媒体2bの処理をユーザーに委ねることなく行なうことができるとともに、除電ブラシ93が使用済み媒体2bの静電気を除去するので、使用済み媒体2bが廃棄媒体保管カセット50の内壁面(特に媒体搬送方向前面の内壁面)等に張り付くのを防ぐことができ、規定の収納量を検知するセンサー52等による誤情報を防ぐことができる。
(廃棄媒体保管カセット)
廃棄媒体保管カセット50(リジェクトカセット又は廃棄媒体保管部ともいう)は、図1に示すように、媒体排出口10の内側下方に設けられ、廃棄すべき使用済み媒体2bを保管する部材である。廃棄媒体保管カセット50は、アルミニウム合金製又はステンレス鋼製の枠体であり、媒体発行装置1の一部をなすユニットとして着脱可能に設けられている。この廃棄媒体保管カセット50内には、一定期間使用後の媒体で、設定された廃棄時期に至った使用済み媒体2bが投入され廃棄のために収容される。なお、廃棄時期の判断は、媒体に記録された情報データを非接触通信部100又は磁気媒体リーダライタ120で読み取ることにより行なうことができる。なお、図1に示すように、非接触通信部100は媒体排出口10の内側に設けられた部材であり、磁気媒体リーダライタ100は第1の媒体回動部80の下側に設けられた部材である。
廃棄媒体保管カセット50への使用済み媒体2bの投入は、廃棄媒体搬送装置90を経由して行われる。媒体排出口10から投入された媒体2は、すぐ後ろ(装置1の内部側)に配置された非接触通信部100により、又は、第1の媒体回動部80を経由して送られた磁気媒体リーダライタ120により、情報データが読みとられて廃棄媒体であるか否かが判断される。非接触通信部100により廃棄すべき使用済み媒体2bであることが読みとられた場合、その使用済み媒体2bは、第1の媒体回動部80に搬送され、そこで保持されつつ廃棄媒体搬送装置90の角度と同じになるまで第1の媒体回動部80が回転する。次いで、第1の媒体回動部80から廃棄媒体搬送装置90に使用済み媒体2bが搬送される。一方、磁気媒体リーダライタ100により廃棄すべき使用済み媒体2bであることが読みとられた場合、その使用済み媒体2bは、第1の媒体回動部80に戻され、そこで保持されつつ廃棄媒体搬送装置90の角度と同じになるまで第1の媒体回動部80が回転する。次いで、第1の媒体回動部80から廃棄媒体搬送装置90に使用済み媒体2bが搬送される。
このとき、廃棄媒体搬送装置90に搬送された使用済み媒体2bは、そこで保持されずに廃棄媒体保管カセット50に投入されてもよいが、好ましくは新規の媒体を発行するまで、すなわち新規媒体がホッパー20から発行され、印字装置70で印字され、非接触通信部100で情報通信が完了したのを確認するまで保持(一時保留)されることが好ましい。そして、新規媒体への情報通信が完了したのを確認し、新規媒体が発行されてから、使用済み媒体2bを、一時保留部としての廃棄媒体搬送装置90から廃棄媒体保管カセット50に投入することが好ましい。こうした方式をとることにより、新規媒体を更新発行する場合に、情報書き込み等を確実に行ったのを確認した後に今までの非接触ICカードを廃棄することができ、その結果、非接触ICカードの更新発行においても、迅速且つ確実な処理を行なうことができる。
廃棄媒体保管カセット50は、図1及び図2に示すように、廃棄媒体搬送装置90から傾斜した状態で投入されるので、その底面51は、廃棄媒体搬送装置90の媒体搬送路91の傾斜方向と同じ方向にほぼ同程度の角度で傾斜していることが好ましい。底面51を例えば30°〜50°程度の傾斜形状にすることにより、傾斜した状態で落下した使用済み媒体2bの落下姿勢を変化させることなく受けることができるので、使用済み媒体2bを廃棄媒体保管カセット内に整列した態様で整然と積層させることができる。また、底面51を傾斜面とすれば、図2を平面視したときの幅方向の長さを短縮することができ、装置を小型化できるという効果もある。
また、廃棄媒体保管カセット50内の側面には開口部54が形成され、その開口部54から廃棄媒体保管カセット50内に突出するようにレバー式のセンサー52が設けられていることが好ましい。このレバー式のセンサー52は、センサー52のみが廃棄媒体保管カセット50内に突出するようにセンサー本体53に設けられているものであり、センサー本体53は、媒体発行装置1内の他のシャーシ部材に固定されている。
レバー式のセンサー52は、使用済み媒体2bが廃棄媒体保管カセット50内を落下する際に、そのセンサー52に当たってセンサーレバーが下側に倒れることにより検知するものである。このセンサー52により、廃棄媒体保管カセット50内に投入された使用済み媒体2bの量をカウントすることができる。なお、センサーとしては、レバー式のセンサー52の他、光学式のセンサーを用いてもよい。好ましくは、レバー式のセンサー52と光学式のセンサーの両方を用いた場合であり、レバー式のセンサー52で投入枚数のカウントをするとともに、光学式センサー規定の収容量に到達したか否かを検知することができる。光学式センサーは、図示しないが、廃棄媒体保管カセット50内が使用済み媒体2bで満たされる付近の部位に好ましく設けられ、通常は、廃棄媒体保管カセット50内の上方で、図示のレバー式のセンサー52の近傍に設けられる。こうしたセンサー52により、廃棄媒体保管カセット50を取り外して使用済み媒体2bを廃棄処理することが必要であるとの情報を、媒体発行装置1が備える上位の制御装置に出力することができる。
また、廃棄媒体保管カセット50の上方は、使用済み媒体2bが投入され易いように、大きな投入口55が設けられている。投入口55には、廃棄媒体搬送装置90から投入される使用済み媒体2bを廃棄媒体保管カセット50内にガイドするガイド部材57が設けられていてもよい。なお、このガイド部材57は、必ずしも廃棄媒体保管カセット50に設けられていなくてもよく、媒体発行装置1内の他のシャーシ部材に固定されていてもよい。
図3は、廃棄媒体保管カセットの一例を示す斜視図であり、図4は、図3の廃棄媒体保管カセットを反対面から見たときの斜視図である。廃棄媒体保管カセット50には、図3に示すように、任意の形状からなる引き出し取っ手59が設けられていることが好ましい。図3に例示した引き出し取っ手59は、平板を加工して作製したものであり、平板部58が廃棄媒体保管カセット50の側面に溶接又はネジ止め等で固定されている。こうした引き出し取っ手59により、媒体発行装置1内に着脱可能に設けられた廃棄媒体保管カセット50を簡単に着脱することができる。なお、こうした引き出し取っ手59は図3に示す形態に限定されず、その取っ手を掴んで手前側に引き出すことができるような形態であれば他の形態であっても構わない。
廃棄媒体保管カセット50の前記引き出し取っ手59が設けられた面の反対面には、図4に示すように、廃棄媒体保管カセット50を媒体発行装置に固定するピン511が設けられている。図4においては、2本のカセット位置決めピン511が設けられている。図5は、ピン511とそのピン511を係合固定する係合部材521の拡大断面図である。廃棄媒体保管カセット50を媒体発行装置1の装着する際には、廃棄媒体保管カセット50に設けられたピン511が係合部材521の凹部524内に挿入されることにより、媒体発行装置1に脱着可能に装着される。その係合部材521は、廃棄媒体保管カセット50を装着位置にセットした際に、ピン511に対向する位置に設けられている。
ピン511は、図5に示すように、廃棄媒体保管カセット50の側面側から、第1の円形部材513と、当該円形部材513よりも小径の第2の円形部材514と、前記第1の円形部材513と同一径の第3の円形部材512とからなり、各円形部材の軸を同一にした形態で構成されている。各円形部材512,513,514は、一体形成されているものであっても良いし、各円形部材512,513,514を重ね合わせて構成したものであっても良い。
係合部材521は、ピン511の最大直径と同じ円形の凹部524を有している。その凹部524内には、第2の円形部材514に対応するリング522が設けられている。そのリング522は、ピン511をその凹部524に挿入して廃棄媒体保管カセット50の外面515が係合部材521の対向面523に当接した際に、第2の円形部材514の凹みに係合して廃棄媒体保管カセット50を媒体発行装置1に脱着可能に装着するための部材である。こうした係合機構により、媒体発行装置1に対し、廃棄媒体保管カセット50を横方向位のみの単純操作で容易に着脱することができる。上記では、2本のカセット位置決めピン511が設けられているが、その本数は特に限定されず、1本であってもよいし、3本以上であってもよい。また、係合部材521が備える凹部524に代えて、媒体発行装置1側に設けた貫通穴(図示しない)であってもよい。また、ピン511をカセットの専用位置決めとしてのみ使い、係合部材521の代わりにローラキャッチ等を設けてもよい。
図6は、ローラキャッチとキーパーの一例を示す形態図である。廃棄媒体保管カセット50において、例えば上記したピン511や係合部材521等をカセットの位置決め手段として用いた場合、図6に示すようなローラキャッチ525とキーパー527を用いて、廃棄媒体保管カセット50を媒体発行装置1のシャーシ部材に固定してもよい。ローラキャッチ525は、バネ機構によって対向ローラ526,526が向かい合う方向に付勢するようになっており、そのローラキャッチ525のローラ間にキーパー527の先端528が入り込んで固定される。キーパー527は廃棄媒体保管カセット50に固定され、ローラキャッチ525は媒体発行装置1内のシャーシ部材(図示しない)に固定されて使用される。
廃棄媒体保管カセット50は上記のように金属で形成されているので、ピン521や係合部材521も金属製とし、さらにこの廃棄媒体保管カセット50が装着される媒体発行装置1のシャーシも金属製とすれば、それらを全て接地させておくことにより、後述する除電した使用済み媒体2bを廃棄媒体保管カセット50に投入した場合であっても、静電気により積層形態が乱れることはない。
(廃棄媒体搬送装置)
次に、廃棄媒体搬送装置90について詳しく説明する。廃棄媒体搬送装置90は、図1に示すように、第1の媒体回動部80と廃棄媒体保管カセット50との間に設けられ、第1の媒体回動部80から使用済みの媒体2bを受け取って、廃棄媒体保管カセット50に搬送するための部材である。本発明においては、上記のように媒体繰り出し部21と媒体排出口10とが装置側面視(図1を平面視した形態と同じ)で対角位置に配置され、その媒体排出口10の装置内側下方及び第1の媒体回動部80の下方にスペースが与えられるので、そのスペースに廃棄媒体搬送装置90を設けることができる。
図2において、廃棄媒体搬送装置90は、廃棄媒体搬送装置90内の媒体搬送路91が斜めに傾斜するように配置されていることが好ましい。その結果、使用済み媒体2bを廃棄媒体保管カセット50内に傾斜した状態で落下させることができる。このように、傾斜に沿って使用済み媒体2bを廃棄媒体保管カセット50内に落下させることができるので、廃棄媒体搬送装置から廃棄媒体保管カセットへの媒体の受け渡し構造を容易で確実な構造で省スペース化することができる。また、廃棄媒体保管カセットへの媒体の落下姿勢のばらつきを抑え、使用済み媒体を廃棄媒体保管カセット内に整列した態様で積層させることができる。
図7は、図2に示す廃棄媒体搬送装置90を傾斜角に直交する上方向から見たときの図であり、図8は、廃棄媒体搬送装置90をA方向から見たときの図であり、図9は、図2に示す廃棄媒体搬送装置90を傾斜角に直交する下方向から見たときの図である。廃棄媒体搬送装置90における使用済み媒体2bの搬送手段は、通常、駆動ローラと、駆動ローラに対向する加圧ローラとにより行われる。例えば図2、図8及び図9においては、駆動ローラ98と、その駆動ローラ98に対向して設けられる加圧ローラ92とで、使用済み媒体2bを挟んで搬送する。駆動ローラ98は、電磁クラッチ94により回転する軸941に固定され、その軸の他端には手動回転用のつまみ942が設けられている。また、加圧ローラ92は、円柱状の支持部材917に設けられたバネ923と、バネ923に連結する連結部材924とにより、前記の駆動ローラ98側に付勢するように設けられている。なお、符号925は、連結部材924に設けられて、バネ923を固定する部材である。
駆動ローラ98が電磁クラッチ94で作動する場合、その作動の開始は、図7及び図9に示すセンサー96,97が検知したタイミングで行われるが、その他の方法であってもよい。センサー96,97は、一般的な光学的センサーであってもよいし、近接スイッチ型のセンサーであってもよい。センサー96,97を設ける位置は特に限定されないが、廃棄媒体搬送装置90の媒体搬送路91(図2参照)に使用済み媒体2bが入ったときに検知できるように、入り口付近にセンサー96が設けられていることが好ましい。また、駆動ローラ98の直前にもセンサー97設けられていることが好ましく、その位置で使用済み媒体2bを検知することにより、駆動ローラ98の始動動作と停止動作を行なうことができる。なお、符号961,971は、センサー96,97の出力端子である。
ここで、廃棄媒体搬送装置90の作動タイミングについて説明する。廃棄媒体搬送装置90が第1の媒体回動部80から媒体2を受け取る場合、センサ96が媒体2を検知すると対向ローラ92が駆動され、廃棄媒体搬送装置90の搬送路91に媒体2が取り込まれる。そして、センサ95が媒体2を検知すると、対向ローラ92の駆動が停止され、媒体2は搬送路91内に一時保留される。一時保留状態では、両方のセンサ95、96が媒体2を検知して、搬送路91内の媒体2の存在が判断される。廃棄媒体保管カセット50に使用済み媒体2bを投入する場合は、センサ95のみが媒体2を検知した状態から完全に検知しない状態になるまで、対向ローラ92が駆動される。
廃棄媒体搬送装置90は、使用済み媒体2bの静電気を除去する除電ブラシ93を有し、さらに、廃棄媒体保管カセット50内に送り出す使用済み媒体2bを検知するセンサー95を有している。
除電ブラシ93は、廃棄媒体搬送装置90の駆動ローラ98から廃棄媒体保管カセット50側であって、駆動ローラ98の近傍に設けられていることが好ましい。その徐電ブラシ93は、使用済み媒体2bの上面に接触し、使用済み媒体2bに帯電した静電気を除去して、使用済み媒体2bが廃棄媒体保管カセット50内の壁面に張り付いたり縦になってしまうのを防ぐことができる。その結果、使用済み媒体2bを廃棄媒体保管カセット50内に整然と積み重ねることができる。このように使用済み媒体2bが廃棄媒体保管カセット50内に整然と積み重ねられることにより、廃棄媒体保管カセット50内に設けられた光学式センサー(図示しない)による使用済み媒体2bの量の正確な検出が妨げられることはない。
除電ブラシ93は、カーボン製等からなる導電性ブラシであり、除電ブラシ93の長さは、媒体搬送路91を通過する使用済み媒体2bの上面に接触することができる長さで設けられている。また、除電ブラシ93の幅は特に限定されないが、効果的な除電を行なう観点からは、媒体幅の1/2程度又はそれ以上の幅であって、使用済み媒体2bの幅方向にほぼ中央に設けられていることが好ましい。なお、図7及び図8に示すように、除電ブラシ93を構成する導電性のブラシは掴持部材918によって固定されている。その掴持部材918は、ブラケット920の曲げ部926にネジ等で固定され、そのブラケット920は、廃棄媒体搬送装置90を構成する側板921にネジ止め等で固定されている。
また、除電ブラシ93を駆動ローラ98の近傍に配置する場合においては、上記のように、媒体搬送路91を通過する使用済み媒体2bの上面に接触するように上方に配置する代わりに、使用済み媒体2bの下面に接触するように下方に配置してもよい。
符号95のセンサーは、媒体搬送路91の使用済み媒体2bが廃棄媒体保管カセット50内に送り出されるのを検知するためのセンサーであり、したがって、そのセンサー95は、廃棄媒体搬送装置90の駆動ローラ98から廃棄媒体保管カセット50側であって、通常、使用済み媒体2bの幅方向のほぼ中央に設けられている。センサー95は、図7及び図9に示すように、上記の除電ブラシ93よりも廃棄媒体保管カセット50側に配置することが好ましいが、除電ブラシ93との位置関係が逆であっても構わない。また、センサー95と除電ブラシ93とは、媒体搬送路91の進行方向にほぼ一直線にして幅方向の中央に設けることが好ましく、落下させる使用済み媒体2bのバランスを保って、廃棄媒体保管カセット50内で使用済み媒体2bが裏返るのを防ぐことができる。また、センサー95の種類は、光学式センサーであってもよいし、図示のようなレバー式センサーであってもよい。こうしたセンサー95を設けることにより、廃棄媒体保管カセット50内に落下させる使用済み媒体2bを検知することができるので、使用済み媒体2bの廃棄の実行を媒体発行装置1が備える上位の制御装置に出力することができる。
上記センサー95がレバー式センサーである場合(以下、レバー式センサーの符号を95とする。)、そのレバー式センサー95は、使用済み媒体2bを下方に付勢するように作用するので、例えば廃棄媒体保管カセット50内への使用済み媒体2bの落下をアシストすることができる。その結果、落下させる使用済み媒体2bのバランスを保って、廃棄媒体保管カセット50内で使用済み媒体2bが裏返ったり壁に張り付いたりするのを防ぐので、廃棄媒体保管カセット50内の収容量検知用のセンサーの誤動作を防ぐことができる。レバー式センサー95は、センサー本体919に先端が上下するように設けられ、そのセンサー本体919はブラケット920にはめ込み、接着又はネジ止め等適宜の方法により固定れている。
廃棄媒体搬送装置90の全体構造は、媒体搬送路91の幅方向に配置された一対の側板921,921と、その側板921,921間を掛け渡す2本の支柱部材912,913とブラケット920とで構成されている。媒体搬送路91は、廃棄媒体搬送装置90内の中央に配置され、側板921,921にネジ等で固定された左右一対の上側搬送ガイド部材915,915と、同じく側板921,921にネジ等で固定された左右一対の下側搬送ガイド部材927,927とで構成されている。このうち、上側搬送ガイド部材915,915は、図2に示すように、廃棄媒体保管カセット50の入り口付近まで長く延びているが、下側搬送ガイド部材927,927は、廃棄媒体保管カセット50内に落下しやすいように、駆動ローラ98と除電ブラシ93との間で終わっている。また、上側搬送ガイド部材915,915と下側搬送ガイド部材927,927の媒体搬送路入口部916は、図2に示すように、媒体が入りやすいようにテーパ状に開口していることが好ましい。同様に、廃棄媒体搬送装置90を構成する側板921,921のうち、媒体搬送路入口部916側の側板922も、媒体が入りやすいようにテーパ状に開口していることが好ましい。
本発明の使用済み媒体廃棄装置は、こうした廃棄媒体保管カセット50と廃棄媒体搬送装置90とを有するので、従来行われていなかった廃券処理を行なうことができるとともに、第1の媒体回動部80を利用して手間をかけずに迅速に廃棄処理を行なうことができる。また、この廃棄媒体保管カセット50と廃棄媒体搬送装置90とは、ユニットとしてワンタッチで着脱可能なように媒体発行装置1に取り付けられていることが好ましい。さらに、上記使用済み媒体廃棄装置を備えた媒体発行装置1を構成すれば、磁気カードやICカード等の媒体の更新発行時において、廃棄することになる使用済み媒体2bを容易且つ不具合なく廃棄することができる。その結果、媒体発行装置全体としての利便性やセキュリティを向上させることができる。
(駆動システム)
図10は、本発明の使用済み媒体廃棄装置を備えた媒体発行装置の駆動方式の実施の形態を示す透視側面図である。この媒体発行装置1においては、本実施の形態の媒体発行装置1は、図10に示すように、主に2つの駆動モータ(A駆動モータ140とB駆動モータ150)により駆動される。なお、この媒体発行装置1及び駆動システムは例示であって、本発明に係る使用済み媒体廃棄装置が装着される媒体廃棄装置として限定されるものではない。
A駆動モータ140は、複数のベルトやプーリが組み合わされて、例えば図10に示すように、廃棄媒体搬送装置90、第1の媒体回動部80、及び非接触通信部100の各搬送用の対向ローラを駆動して、媒体の搬送を行なう。具体的には、廃棄媒体搬送装置90における媒体2の搬送を行なうA駆動モータ140の駆動力は、ベルト143を介してプーリ141に伝わる。さらに、プーリ141の回転駆動は、それに連接されたギア142により廃棄媒体搬送装置90の対向ローラ92に伝達されこれを駆動させる。そして、対向ローラ92への駆動力伝達が電磁クラッチ94によって接続(電磁クラッチ94がON状態)又は切断(電磁クラッチ94がOFF状態)されることにより、廃棄すべき使用済み媒体を一時的に保持する一時保留部である廃棄媒体搬送装置90における媒体の保持、第1の媒体回動部80への媒体の戻し、又は、廃棄媒体保管カセット50への媒体の送り等が行われる。
すなわち、廃棄媒体搬送装置90において、媒体搬送路91内に保持された使用済み媒体2bは、装置の上位からの指示で電磁クラッチ94がONし、さらにA駆動モータ140からの駆動がギア142から伝達されることにより、廃棄媒体保管カセット50内に送り出される。このとき、電磁クラッチ94がONの場合のみ駆動ローラ98が動作する。
また、そのプーリ141にかけられた他のベルト144は、第1の媒体回動部80の搬送駆動軸145と非接触通信部100の搬送用の対向ローラ103と同軸配置したプーリに掛け渡されている。そのため、A駆動モータ140の駆動力は、非接触通信部100の対向ローラ103を駆動して、媒体を第1の媒体回動部80側に搬送したり、媒体排出口10側に搬送したりする。また、第1の媒体回動部80の搬送駆動軸145は、ベルトとプーリを介して対向ローラ83を回転させ、さらにその対向ローラ83は、ベルトとプーリを介して他の対向ローラ82を回転させるので、A駆動モータ140の駆動力は、第1の媒体回動部80の対向ローラ82,83を駆動して、媒体を第1の媒体回動部80内に保持したり、印字装置70、非接触通信部100及び廃棄媒体保管カセット50との間で媒体の搬送したりすること等が行われる。
なお、第1の媒体回動部80の回動軸84の回動は、その回動軸84にベルトを介して動力を送る回動軸用モータ85により行われる。
B駆動モータ150もA駆動モータ140と同様、複数のベルトやプーリが組み合わされて、例えば図10に示すように、印字装置70、第2の媒体回動部60、及びクリーニング媒体保持部110の各搬送用のローラを駆動して、媒体の搬送を行なう。具体的には、B駆動モータ150の駆動力は、ベルト153を介してプーリ151,152に伝わり、そのプーリ151,152が備えるプーリに同軸状に連接したプラテンローラ34,34を回転させるとともに、そのプラテンローラ34と同軸上のプーリからベルトを介して媒体搬送用の対向ローラ31,32,33を回転させる。こうした回転により、印字装置70内での媒体の搬送等が行われる。
また、B駆動モータ150の駆動力は、媒体搬送用の対向ローラ31と同軸状に連接したプーリにかけられた他のベルト156を介してクリーニング媒体保持部110のプーリ154に伝わり、そのプーリ154に連接されたギア157によりクリーニング媒体保持部110の112を駆動させる。これにより、クリーニング媒体保持部110におけるクリーニング媒体の保持、第2の媒体回動部60へのクリーニング媒体の授受等が行われる。
さらに、B駆動モータ150の駆動力は、媒体搬送用の対向ローラ31と同軸状に連接したプーリにかけられた他のベルト156を介してクリーニング媒体保持部110のプーリ154に伝わり、そのプーリ154に連接されたギア157によりクリーニング媒体保持部110の対向ローラ112を駆動させる。そして、電磁クラッチ113が切断(OFF状態)されている場合は、クリーニング媒体保持部110におけるクリーニング媒体の保持がなされ、電磁クラッチ113が接続(ON状態)されている場合には、B駆動モータ150の回転に応じて、第2の媒体回動部60との間でのクリーニング媒体114の授受が行われる。
なお、第2の媒体回動部60の回動軸64の回動は、その回動軸64にベルトを介して動力を送る回動軸用モータ65により行われる。
以上のように、媒体2の搬送用の駆動モータを用いることにより、媒体の更新発行のように、古い媒体と新しい媒体とを装置内で独立に搬送することができるので、処理時間を短縮することができるとともに、ベルトやプーリ等の削減も可能になるので、小型化と低コストかを実現できる。なお、図1及び図10においては、A駆動モータ140とB駆動モータ150の2つを主に用いているが、一つの駆動モータで構成してもよい。なお、一つの駆動モータで構成する場合は、機械的なクラッチ等で設けることが好ましい。
(媒体発行方法)
次に、新規発行の動作について説明する。媒体2の新規発行は、ホッパー20内に積層された媒体2のうち最低位の媒体2aを押出部材221の爪部にて繰り出して、第2の媒体回動部60内に搬送した後、第2の媒体回動部60を傾斜搬送路30と同じ角度に回動させて媒体の搬送方向を切替る。次に、第2の媒体回動部60から傾斜搬送路30上に配置された印字装置70内に搬送し、印字装置70が備える印字ヘッド71により媒体表面に所定の情報が印字される。このときの印字ヘッド71は、印字ヘッド駆動モータ74により媒体表面に接触するまで印字ヘッド71を下降し、媒体表面に接触した状態で印字する。印字が終了した後は、印字ヘッド駆動モータ74により印字ヘッド71を元の位置に上昇する。その後、媒体2は、傾斜搬送路30と同じ角度に回動した状態で待機している第1の媒体回動部80に搬送される。媒体2を受け取った第1の媒体回動部80は、媒体2を非接触通信部100に搬送するために水平方向になるまで回動し、その後、非接触通信部100に搬送する。この非接触通信部100においては、アンテナ部104と媒体2との間の非接触通信によって媒体2に内蔵されているICに所定の情報が格納記憶され、最後に、媒体排出口10に媒体2が送られて利用者の手に渡る。なお、必要により、非接触通信部100による処理の前に、第1の媒体回動部80から一旦分岐して、磁気媒体リーダライタ120による磁気データの記録処理が行なわれてもよい。
次に、書き換え発行の動作について説明する。書き換え発行は、媒体排出口10に使用中の媒体2が挿入されると、媒体排出口10が備える幅センサ(図示しない)がカード状媒体2を検知し、シャッタ11を開けて非接触通信部100に搬送される。非接触通信部100では、媒体2に内蔵されているICとの間で所定の情報の読み取り及び書き込みが非接触通信により実行され、その後非接触通信部100と同じ水平に保持された第1の媒体回動部80に搬送される。媒体2を受け取った第1の媒体回動部80は、傾斜搬送路30と同じ角度まで回動した後、印字装置70内に媒体2を搬送し、その後、傾斜搬送路30と同じ角度まで回動させておいた第2の媒体回動部60まで媒体2を搬送する。その第2の媒体回動部60から、装置上位からの指示で再度印字装置70内に搬送し、先ず、消去ヘッド72で今までの印字データを消去し、引き続いて、印字ヘッド71で新しい情報を印字する。印字した後は、第1の媒体回動部80、非接触通信部100を経由して、媒体排出口10から利用者の手に返却される。なお、この場合も、必要により、非接触通信部100による処理の後に、磁気媒体リーダライタ120による磁気データの記録処理が行なわれてもよい。
次に、更新発行の動作について説明する。更新発行(使用可能期限となった媒体を廃棄し、新たに媒体を発行することをいう)は、媒体排出口10に使用中の媒体2が挿入されると、媒体排出口10が備える幅センサがカード状媒体2を検知し、シャッタ11を開けて非接触通信部100に搬送される。非接触通信部100では、媒体2に対する非接触通信による所定の情報の読み取りみが実行され、この通信結果に基づき更新発行とすることが決定されると、更新のため読み取られた所定の情報は上位装置等に一時保存される。そして、更新される媒体2は非接触通信部100と同じ水平に保持された第1の媒体回動部80に搬送される。第1の媒体回動部80に取り込まれた媒体2は、傾斜搬送路30には搬送されず、第1の媒体回動部80を逆回転により、斜め下方に配置された一時保留部としての廃棄媒体搬送装置90に搬送され、廃棄処理待ちの媒体として保持される。次に、上記の新規発行と同じ手順で新しい媒体2が発行される。この新しい媒体2が第1の媒体回動部80を経由して、非接触通信部100に搬送されそこで、上位装置等に一時保存された情報が新しい媒体2に対して書き込まれる。そして、この書き込みが確認され、又は媒体排出口10から利用者の手に新たな媒体2が渡ったことが確認された時点で、一時保留部である廃棄媒体搬送装置90に保持された廃棄処理待ちの使用済み媒体2は、更にその斜め下方の廃棄媒体保管カセット50に除電ブラシ93で除電されて投入される。
以上説明したように、本発明に係る使用済み媒体廃棄装置が装着された一例としての媒体発行装置によれば、磁気カードやICカード等の新規発行や更新発行、さらには書き換え発行を行なうことができる、省スペース対応の媒体発行装置を提供することができる。さらに、処理時間が短く、媒体両面への印字も可能で、ホッパーの収容量も増すことができる媒体発行装置を提供することができる。