以下、本発明のカセット式媒体収納容器、ホッパー及び媒体発行装置について図面を参照しつつ説明する。なお、本発明は、その技術的特徴を有する範囲において、以下の説明及び図面に限定されるものではない。
まず、本発明のカセット式媒体収納容器の詳細を説明する前に、本発明のカセット式媒体収納容器が好ましく装着される媒体発行装置の全体構成について説明する。なお、カセット式媒体収納容器の装着対象が以下に説明する媒体発行装置に限定されないことは言うまでもない。
(媒体発行装置)
図1は、本発明のカセット式媒体収納容器が好ましく装着される媒体発行装置の実施の形態を示す透視側面図である。図1に示す媒体発行装置1は、カード状記録媒体(単に「媒体2」ということがある)を発行する装置であって、装置奥側に配置され、媒体2を積層して収納するカセット式媒体収納容器25及び積層された媒体2のうち最低位の媒体2aを1枚毎に繰り出し可能な媒体繰り出し部21を有するホッパー20と、媒体2の積層方向に対して鋭角をなす方向(図1では右斜め上)へ向けて、媒体繰り出し部21から繰り出された媒体2を搬送する傾斜搬送路30と、傾斜搬送路30の媒体繰り出し部21とは反対側の一端である手前側に配置されて、媒体2を排出する媒体排出口10と、傾斜搬送路30上に設けられ、媒体2に対して所定情報の書き込みを行なう情報書き込み機構(例えば印字装置70等)とを少なくとも備えている。
図1に示す媒体発行装置1は、媒体排出口10がホッパー20の媒体繰り出し部21よりも媒体積層方向の上側の対角位置に配置されている具体的な実施の形態を示したものであって、ホッパー20が、カセット式媒体収納容器25内に積層された媒体2のうち最低位の媒体2aを1枚毎に繰り出し可能な媒体繰り出し部21を有し、媒体排出口10が、媒体繰り出し部21よりも媒体積層方向の上側に対角配置されている。こうした対角配置により、ホッパー20の高さ方向にスペースが与えられるので、媒体収納量の多いカセット式媒体収納容器25を用いることができる。
さらに詳しくは、図1に示す媒体発行装置1は、媒体排出口10と傾斜搬送路30との間に設けられ、媒体2を回動させて媒体搬送方向を切り替える第1の媒体回動部80と、媒体繰り出し部21と傾斜搬送路30との間に設けられ、媒体2を回動させて媒体搬送方向を切り替える第2の媒体回動部60とを備えている。また、媒体排出口10の内側に設けられ、所定情報の読み取り、書込み又は書換えのために媒体2に対して非接触の通信処理を行なう非接触通信部100を備えている。また、図1に示すように、第1の媒体回動部80から媒体2を受け取って磁気データの読み取り又は書込み行なう磁気媒体リーダライタ120が第1の媒体回動部80の下に設けられていてもよいし、第2の媒体回動部60の上方にクリーニング媒体保持部110を備えていてもよい。こうした配置構成は、装置1全体の長さ(図1を平面視した場合の左右の長さ)を短縮して装置全体の大きさを小さくすることができ、さらには、装置外形を作製し易い矩形状とすることができる。
以下、媒体発行装置1の構成等について簡単に説明する。図中、「S」はセンサーを表している。
図2は、本発明に係るカセット式媒体収納容器25を有するホッパーの実施の形態を示す模式的な透視断面図である。ホッパー20は、カセット式媒体収納容器25と媒体送り出し機構22とより構成され、その媒体送り出し機構22は媒体繰り出し部21を有している。
本発明に係る媒体収納容器25は、カード状記録媒体2を積層して収納する媒体収納部250と、その媒体収容部250の側面の一部をなす第1の基準板231と、媒体収容部250の底面をなす第2の基準板232と、第1の基準板231と第2の基準板232との間に設けられるとともに、最低位の媒体2aを通過させる隙間を備えるゲート部23と、第1の基準板231と平行して設けられ、カセット式媒体収納容器25を媒体繰り出し機構から脱着したときに隙間を塞ぐシャッタ24と、を有し、積層された前記媒体2のうち最低位の媒体2aを繰り出す媒体繰り出し機構の上に配置されるカセット式媒体収納容器25であって、第1の基準板231は、シャッタ24の先端部であるシャッタ先端247の進出を許容する切込部266を有し、切込部266に進出するシャッタ先端247は、第1の基準板231の媒体収納部側の面と略面一となるように、湾曲又は屈曲している。
こうした媒体収納容器25は、媒体2を積層収納する容器で、アルミニウム合金製又はステンレス鋼製の枠体であり、媒体発行装置1の一部としてホッパー20から着脱可能に設けられている。この媒体収納容器25内には、接触式又は非接触式のICカードや磁気カード等の媒体2が収納される。その媒体2は、例えば図1においては、後述する媒体排出口10と略等しい高さの最上位部27よりも下側に積層して収納されている。なお、そうした媒体2は、利用期限や貨幣価値等の各種情報が完全に記録されていない発行前ものである。また、エンボスの有無は問わない。
媒体収納容器25の媒体収納部250の下側には、図2に示すように、ゲート部23が設けられており、このゲート部23から、後述する媒体送り出し機構22によって最低位の媒体2aが一枚毎送り出される。このゲート部23は、最低位の媒体2aを一枚のみ送り出すことができる所定の隙間を設けるように、第1の基準板231と第2の基準板232が対向配置されている。一方の第2の基準板232は、基準となる底面233を構成し、他方の第1の基準板231は、その底面233に対し、垂直方向に延びる形態で媒体収納部250の側面の一部を構成している。
また、詳しくは後述するが、媒体収納容器25には、その媒体収納容器25をホッパー20から脱着したときにゲート部23を塞ぐためのシャッタ24が設けられていている。また、媒体収納容器25内に収容される媒体2を上方から押し下げるように作用するおもり26が設けられていることが好ましい。シャッタ24は、媒体2を入れた媒体収納容器25を媒体発行装置1に装着するとき、又はホッパー20から取り外して持ち運ぶときに、ゲート部23から媒体2の飛出しや落下等するのを防ぐように作用する。また、おもり26は、スライド機構を備えたものでもよいし、チェーン等で媒体収納容器25に取り付けられていてもよく、何れの場合もおもり26の紛失防止に効果的である。
媒体送り出し機構22は、図2に示すように、ホッパー20の底部に媒体収納容器25と対向して配置され、媒体収納容器25内に収容される複数の媒体2のうち最低位に載置された媒体2aを媒体収納容器25の外に送り出す装置である。この媒体送り出し機構22は、媒体収納容器25の最低位に載置されたカード状媒体2aをゲート部23を経由して媒体収納容器25の外に押し出す押出部材221を備えている。この押出部材221には、カード状媒体2aの後端縁に係合してその媒体2aを押し出す爪部226が形成されていることが好ましい。
押出部材221は、例えば2つのスプロケット223,223間に掛け渡されたチェーン222に取り付けられている。なお、図2においては、2つのスプロケット223,223が用いられているが、3つ以上のスプロケットで構成されたものであっても構わない。このスプロケットは、例えば図2に示すように、ステッピングモータ等の駆動手段224により伝導ベルト225等を介して駆動制御することができ、これにより押出部材221は、カード状媒体2aを押し出すように駆動される。
なお、図1及び図2に示す形態は、媒体送り出し機構22の一例の概略形態であり、必ずしもそれらの形態に限定されるものではない。例えば、チェーン222とスプロケット223により押出部材221を駆動する構成に代えて、押出部材221をリードスクリューに取り付けて、駆動させる構成としてもよい。
媒体繰り出し部21は、媒体収納容器25内に収容される複数の媒体2のうち最低位に載置された媒体2aが媒体収納容器25(即ちホッパー20)の外に繰り出される部分であり、媒体収納容器25の下側に設けられたゲート部23及びその周辺部により構成される。
媒体排出口10は、媒体発行装置1から最終的に媒体2を排出するゲートであり、装置前面であり且つ装置上部に設けられている。上記のホッパー20の媒体繰り出し部21から繰り出された媒体2は、ホッパー20と媒体排出口10との間に設けられた傾斜搬送路30を経由して、媒体排出口10に搬送される。なお、傾斜搬送路30は、媒体繰り出し部21から繰り出された媒体2を媒体排出口10へ向けて搬送する搬送路である。この媒体排出口10は、図1においては媒体発行装置1の上部に設けられているので、その媒体排出口10の装置内側下方には広いスペースを確保することができる。そのスペースには、後述するように、廃棄すべき使用済み媒体を保管する廃棄媒体保管部50等を配置することができる。
この媒体排出口10は、媒体2を新規に発行する場合は文字通り媒体排出口となるが、更新発行や書き換え発行する場合は、所定情報を書き換えるべき使用中の媒体がこの媒体排出口10から挿入される媒体挿入口としても機能するとともに、所定情報の書き込み又は書き換えを完了した前記媒体を排出する媒体排出口としても機能する。従って、この媒体排出口10が媒体挿入口及び媒体排出口の両方の機能を有する場合、媒体排出口が媒体の取り込み口としても用いられるので、磁気カードやICカード等の新規発行のみならず、更新発行や書き換え発行用の媒体発行装置として用いられる。
なお、上記の媒体排出口10には、一般的な媒体排出口ないし挿入口に設けられている各種の機能を付加させてもよく、例えば、図1に示すように、シャッタ11とシャッタ用ソレノイド12とを有するシャッタ機構13を備えていてもよい。また、図示しないが、媒体排出口10には、挿入される媒体種の情報を予め読み取るプリヘッドを備えていてもよいし、また、挿入される媒体の幅寸法の適否を検査する幅センサ等が設けられていてもよい。
傾斜搬送路30は、媒体排出口10とホッパー20との間に設けられ、ホッパー20の媒体繰り出し部21から繰り出された媒体2を媒体排出口10へ向けて搬送する搬送路である。傾斜搬送路30には、媒体2を上下から挟んで所定の方向に搬送する対向した搬送用のローラ(以下、対向ローラともいう)31,32,33が設けられている。上述したように、媒体排出口10は装置上部に設けられ、ホッパー20の媒体繰り出し部21は装置下方に設けられているので、その間に配置されて媒体2の搬送路となる傾斜搬送路30は、装置1の枠体の対角線状に設けられている。対角線状に設けられた傾斜搬送路30は、同じ長さの搬送路が必要な場合、搬送路を水平配置した場合に比してその長さを短くすることができるので、装置全体の大きさ(特に図1における左右方向の長さL)を小さくして省スペース化を図ることができる。
この傾斜搬送路30と媒体排出口10との間には、媒体2を回動させて搬送される方向を切替る第1の媒体回動部80が設けられ、また、傾斜搬送路30と媒体繰り出し部21との間には、媒体2を回動させて搬送される方向を切替る第2の媒体回動部60とが設けられていることが望ましい。なお、傾斜搬送路30と媒体排出口10及び媒体繰り出し部21との間は、第1及び第2の回動部に代えて、媒体をガイドしてカーブをなす屈曲した搬送路としてもよい。
情報書き込み機構は、傾斜搬送路30上に設けられて、媒体2に対して所定情報の書き込みを行なうものであり、図1に示すような印字装置70を例示できる。この情報書き込み機構は、所定の情報の書き込み及び書き換えが可能であることが好ましく、具体的には、図1中の印字装置70に示すように、印字ヘッド71や消去ヘッド72を有することが好ましい。
情報書き込み機構である印字装置70は、ホッパー20側から媒体排出口10に向かって、媒体搬送用の対向ローラ31、消去ヘッド72、媒体搬送用の対向ローラ32、印字ヘッド71、媒体搬送用の対向ローラ33の順で配設されている。消去ヘッド72と印字ヘッド71は、それぞれがプラテンローラ34を対向配置し、そのプラテンローラ34との間に媒体2を挟むようにして、媒体2に印字された情報を消去し又は新たな情報を印字する。
印字装置70には、媒体表面に対して消去ヘッド72を昇降させる消去ヘッド駆動モータ73が設けられ、また、媒体表面に対して印字ヘッド71を昇降させる印字ヘッド駆動モータ74が設けられていることが望ましい。こうした各ヘッドの駆動モータ73,74は、媒体2に情報を印字することが必要な際又は媒体2に印字された情報を消去することが必要な際にそれぞれ独立に作動し、プラテンローラ34上の媒体2に接触するまで、消去ヘッド72又は印字ヘッド71を降下させる。一方、上記の消去や印字が終了した場合は、プラテンローラ34上の媒体2から離れる方向に消去ヘッド72又は印字ヘッド71を上昇させる。消去や印字が必要でない場合は、各ヘッドの駆動モータ73,74は動作せず、消去ヘッド72及び印字ヘッド71は傾斜搬送路30から退避した位置に保持される。
第1の媒体回動部80は、図1に示すように、媒体排出口10と傾斜搬送路30との間に設けられ、媒体2を回動させてその搬送される方向を切替るように動作する。この第1の媒体回動部80は、媒体2を保持及び搬送する回動搬送路81と、回動搬送路81の両端近傍に設けられた対向ローラ82,83と、回動搬送路81の長手方向の中央位置を軸中心とする回動軸84とを少なくとも有している。
回動軸84は、ベルト86を介して回動軸用モータ85で回動させることができ、回動搬送路81の方向を、傾斜搬送路30と一致接続させるように回動させたり、媒体排出口10に向かうように回動させることができる。また、後述するように、廃棄媒体保管部50が媒体排出口10の下側に設けられる場合には、その廃棄媒体搬送部90の搬送路91と一致させるように回動させることができる。また、後述のように、磁気媒体リーダライタ120が第1の媒体回動部80の下方に設けられる場合には、その磁気媒体リーダライタ120の搬送路121と一致させるように回動させることができる。
第1の媒体回動部80を所定の角度回動させるための回動制御は、各種の方法で行なうことができる。例えばステッピングモータとロータリーエンコーダとで回動制御してもよいし、光電センサと所定形状に作製したポジショニングスリット(遮蔽スリットともいう)とで回動制御してもよい。いずれの場合であっても、傾斜搬送路30と一致させる角度と、媒体排出口10に向かう搬送路に一致させる角度の、少なくとも2つの角度に精度良く回動させる。また、さらに複数の角度に制御する場合には、それぞれの角度に精度良く回動させる。第1の媒体回動部80は、右回りに回転させることもできるし左回りに回転させることもできるので、現在の位置から次に回転移動する位置への回転角度が最も小さくなる方向に回転させることが好ましい。そうした回転動作により、媒体2の搬送時間を短縮することができる。さらに、この第1の媒体回動部80は、回動軸84を中心にして回動するので、回動角度を少なくとも180°以上(360°も可能である)に大きくとることができる。
この第1の媒体回動部80は、(A)傾斜搬送路30から搬送された媒体2を媒体排出口10に搬送する場合には、第1の媒体回動部80の搬送路81を傾斜搬送路30と同じ角度に傾斜させておき、傾斜搬送路30から搬送された媒体2を対向ローラ82,83により一旦保持し、次いで所定角度回転して媒体排出口10側の搬送路101と一致させ、次いで第1の媒体回動部80から対向ローラ82,83により媒体2を送り出す。また、(B)媒体排出口10から搬送された媒体2を傾斜搬送路30に搬送する場合には、第1の媒体回動部80の搬送路81を媒体排出口10側の搬送路101と一致させておき、媒体排出口10から搬送された媒体2を対向ローラ82,83により一旦保持し、次いで所定角度回転して傾斜搬送路30の角度と一致させ、次いで第1の媒体回動部80から媒体2を送り出す。
第2の媒体回動部60は、図1に示すように、媒体繰り出し部21と傾斜搬送路30との間に設けられ、媒体2を回動させてその搬送される方向を切替るように動作する。この第2の媒体回動部60は、媒体2を保持及び搬送する回動搬送路61と、回動搬送路61の両端近傍に設けられた対向ローラ62,63と、回動搬送路61の長手方向の中央位置を軸中心とする回動軸64とを少なくとも有している。
回動軸64は、ベルト66を介して回動軸用モータ65で回動させることができ、回動搬送路61の方向を、傾斜搬送路30と一致接続させるように回動させたり、媒体繰り出し部21と同じ水平方向に回動させることができる。また、後述するように、クリーニング媒体保持部110がこの第2の媒体回動部60の上側に設けられる場合には、そのクリーニング媒体保持部110の搬送路111と一致させるように回動させることができる。
第2の媒体回動部60を所定の角度回動させるための回動制御も上記第1の媒体回動部80と同様、各種の方法で行なうことができる。例えばステッピングモータとロータリーエンコーダとで回動制御してもよいし、光電センサと所定形状に作製したポジショニングスリット(遮蔽スリットともいう)とで回動制御してもよい。いずれの場合であっても、傾斜搬送路30と一致させる角度と、媒体繰り出し部21と同じ水平方向の、少なくとも2つの角度に精度良く回動させる。また、さらに他の角度に制御する場合には、その角度に精度良く回動させる。第2の媒体回動部60は、右回りに回転させることもできるし左回りに回転させることもできるので、現在の位置から次に回転移動する位置への回転角度が最も小さくなる方向に回転させることが好ましい。そうした回転動作により、媒体2の搬送時間を短縮することができる。
この第2の媒体回動部60は、(A)媒体繰り出し部21から搬送された媒体2を傾斜搬送路30に搬送する場合には、第2の媒体回動部60の搬送路61を媒体繰り出し部21と同じ水平にし、媒体繰り出し部21から搬送された媒体2を対向ローラ62,63により一旦保持し、次いで所定角度回転して傾斜搬送路30と同じ角度にし、次いで第2の媒体回動部60から対向ローラ62,63により媒体2を傾斜搬送路30に送り出す。また、(B)傾斜搬送路30から搬送された媒体2を再び傾斜搬送路30に搬送して媒体2に印字したり印字消去したりする場合には、第2の媒体回動部60の搬送路61を傾斜搬送路30の角度と一致させておき、傾斜搬送路30から搬送された媒体2を対向ローラ62,63により一旦保持し、第2の媒体回動部60を回動させることなく再び傾斜搬送路30に送り出す。
媒体発行装置1には、廃棄媒体保管部50や廃棄媒体搬送部90を設けることができる。廃棄媒体保管部50は、図1においては媒体排出口10の内側下方に設けられ、廃棄すべき使用済み媒体を保管するカセット部材であり、「廃棄媒体保管カセット」ということもできる。
廃棄媒体保管部50は、上記のホッパー20と同様、アルミニウム合金製又はステンレス鋼製の枠体であり、媒体発行装置1の一部をなすユニットとして着脱可能に設けられている。この廃棄媒体保管部50内には、一定期間使用後の媒体で、設定された廃棄時期に至った媒体が投入され廃棄のために収容される。廃棄される媒体2は、図1に示すように、廃棄媒体搬送部90から廃棄媒体保管部50に対して斜めの状態で投入されるので、廃棄媒体保管部50の底面51もほぼ同じ角度の傾斜形状であることが好ましい。なお、廃棄媒体保管部50内には、廃棄媒体が投入されたことを確認するセンサ52が設けられていることが好ましい。センサ52は、図1に示すような機械式のセンサであってもよいし、光学式のセンサであってもよい。
廃棄媒体搬送部90は、第1の媒体回動部80と廃棄媒体保管部50との間に設けられ、第1の媒体回動部80から使用済みの媒体を受け取って、廃棄媒体保管部50に搬送するための部材である。廃棄媒体搬送部90が有する搬送手段は、印字装置70内に設けられているような駆動モータにより駆動する対向ローラ92である。対向ローラ92は、後述するA駆動モータ140により駆動される。その駆動力伝達は、対向ローラ92の一方のローラに設けた電磁クラッチ94により駆動切断及び接続がなされる。
電磁クラッチ94の作動即ち対向ローラ92の駆動タイミングの制御は、搬送路91の両端に設けられた媒体2の位置を検知するセンサ95、96が検知した媒体2の位置に基づき行われるようになっている。即ち、センサ96が媒体2を検知した場合に第1の媒体回動部80から搬送路91への取り込みが開始され、センサ95及び96の両方が検知した場合に搬送路91内の媒体2の存在(一時保留)が検知され、センサ96のみによる検知から完全に検知されなくなった場合に廃棄媒体保管部50への媒体2の投入が判断される。なお、センサ95は媒体2のレバーへの接触を検知するレバー式検知センサであり、センサ96は媒体2による遮光を検知するフォトセンサであることが好ましいが、その他の方法で検知するセンサであってもよい。
また、その廃棄媒体搬送部90の対向ローラ92から廃棄媒体保管部50側には、徐電ブラシ93が設けられていることが好ましい。その徐電ブラシ93は、廃棄媒体の静電気を除去して、廃棄媒体が廃棄媒体保管部50内の壁面に張り付いたり縦になってしまうのを防ぐことができるので、廃棄媒体を整然と積み重ねることができる。さらにレバー式検知センサ95のレバーは廃棄媒体の後端を上方から下方に押すように機能するので、除電された廃棄媒体を廃棄媒体保管部50内の壁面に張り付いたり縦方向に立たせること無く整然と重ねることができるように作用する。
非接触通信部100は、媒体排出口10の内側に設けられ、所定情報の読み取り、書き込み又は書換えのために媒体2に対して非接触の通信処理を行なう部材である。非接触通信部100が設けられていることにより、非接触ICカードに対しても適用することができる。この非接触通信部100は、媒体排出口10から挿入された媒体2を搬送する搬送路101を有し、さらに、その搬送路101の長手方向の両端近傍には媒体を挟んで搬送する対向ローラ102,103が設けられている。搬送路101の中央の一面側(図1において上側)には、非接触での通信を行なうアンテナ部104が設けられている。このアンテナ部104は、非接触ICカードとの間で情報通信を行なうことができ、非接触ICカードに情報の送受を行なう。なお、図1に示すように、必要に応じて、媒体2の有無を検知しアンテナ部104との通信の信頼性を確保したり、又は媒体2の表裏の方向を検知したりするための目的でセンサ105が設けられていてもよい。
磁気媒体リーダライタ120は、第1の媒体回動部80の下に設けられていてもよい。この磁気媒体リーダライタ120は、媒体2が有する所定情報が磁気データである場合に、第1の媒体回動部80から媒体2を受け取って磁気データの読み取り又は書き込み行なう。また、この磁気媒体リーダライタ120を第1の媒体回動部80の下に設ける代わりに、第2の媒体回動部60の上に設けてもよい。磁気媒体リーダライタ120は、第1の媒体回動部80又は第2の媒体回動部60から媒体2を受け取る搬送路121と、磁気データを媒体2から読み取る磁気ヘッド122を有している。さらに、その磁気媒体リーダライタ120には、媒体2を搬送する対向ローラ123が設けられている。対向ローラ123は、後述するA駆動モータ140により駆動される。その駆動力伝達は、対向ローラ123の一方のローラに設けた電磁クラッチ124により駆動切断及び接続がなされる。
クリーニング媒体保持部110は、図1に示すように、第2の媒体回動部60の上方に設けられていてもよい。クリーニング媒体保持部110は、印字装置が有する印字ヘッド71や消去ヘッド72をクリーニングするためのクリーニング媒体114を収容し、そのクリーニング媒体114を第2の媒体回動部60との間で授受可能に保持する。そして、クリーニング媒体114は、第2の媒体回動部60から傾斜搬送路30(印字装置70)へ搬送され、印字ヘッド71や消去ヘッド72のクリーニングを行なう。
クリーニング媒体保持部110は、第2の媒体回動部60との間でクリーニング媒体114を接受する搬送路111と、クリーニング媒体114を搬送する対向ローラ112が設けられている。対向ローラ112は、後述するB駆動モータ150により駆動される。その駆動力伝達は、対向ローラ112の一方のローラに設けた電磁クラッチ113により駆動切断及び接続がなされる。搬送路111の両端にはセンサS(115),S(116)が設けられており、クリーニング媒体114の保持及び送り出しの状況が検知及び制御される。こうしたクリーニング媒体保持部110が収容するクリーニング媒体114により、印字装置70の印字ヘッド71や消去ヘッド72を定期的又は任意のタイミングでクリーニングすることができる。
電源部130は、図1に示すように、第1の媒体回動部80の下方及び印字装置70の下方のスペースに設けることができる。この電源部130は、ユニットとしてワンタッチで着脱可能なように媒体発行装置1に取り付けられていることが好ましい。
(カセット式媒体収納容器)
本発明に係るカセット式媒体収納容器の概要は既に説明したが、以下では、特に、ゲート部23及びその周辺部により構成される媒体繰り出し部21等について詳しく説明する。
図3は、本発明のカセット式媒体収納容器の実施の形態である。なお、図3(A)は側面図であり、図3(B)は部分的に切欠表示した右側面図である。カセット式媒体収納容器25は、図3に示すように、本体部251と底部252と蓋部材253とで構成されている。図示の例では、本体部251の側板が開口部254を有し、積層されたカード状媒体2を視認しやすくなっているが、こうした開口部254は設けられていなくてもよい。また、図示の例では、蓋部材253を開閉可能に構成するとともに、倒起可能な取っ手255を設け、さらにロック機構256を設けているものを好ましく例示しているが、これらは図示の形態に限定されない。なお、符号257はカバー部材を表している。
媒体繰り出し部21は、ゲート部23及びその周辺部により構成され、具体的には、媒体2が通過できるだけの隙間を構成する第1の基準板231、第2の基準板232と、シャッタ24とを少なくとも備えている。図3(B)のカバー部材257の一部を切り欠いた一部切り欠き図に示すように、第1の基準板231とシャッタ24は、底面233を構成する第2の基準板232に対向して設けられ、第1の基準板231は、底面233との間に所定の隙間を形成している。一方、シャッタ24は、カセット式媒体収納容器25がホッパー20に装着されない場合は下方にシフトしてその底面233側の先端が底面233に当接又は前記隙間を塞ぐように接近し、カセット式媒体収納容器25がホッパー20に装着された場合はその底面233側の先端が前記隙間を塞がないように上方にシフトする。
図4は、媒体送り出し部の詳細な説明図であって、(A)は第1の基準板231とシャッタ24とが重なり合った実際の形態を示す断面図(A−A断面図)であり、(B)は透視側面図である。また、図5は、第1の基準板231とシャッタ24とをそれぞれ示した図であって、(A)は第1の基準板231の側面図であり、(A’)は第1の基準板231の右側面図であり、(B)はシャッタ24の側面図であり、(B’)はシャッタ24の右側面図である。なお、図4(B)では、図4(A)中に示したカバー部材257とネジ部材258は省略している。
図4及び図5に示すように、第1の基準板231は、底面233との間に一定の隙間が確保されるように本体部251に固定されている。第1の基準板231の、シャッタ側の面には、シャッタ24が備えるスライド用長穴242,243に対応するピン部材261,262が上下方向に対角状に配置されている。こうしたピン部材261,262は、本実施形態では対角状に計2つ設けられているが、それに限定されず、3つ以上であってもよい。そのピン部材261,262と、シャッタ24のスライド用長穴242,243とが係合することにより、シャッタ24の上下方向へのスライドを安定して行なうことができる。
シャッタ24の上方向へのスライドは、カセット式媒体収納容器25がホッパー20に装着された場合に、ホッパー20に設けられたフック(図示しない)がシャッタ24に設けられた上下動突起241を上方向に押し上げることにより行われる。一方、シャッタ24の下方向へのスライドは、カセット式媒体収納容器25がホッパー20から取り外された場合に、シャッタ24の上下動突起241がホッパー20に設けられたフック(図示しない)から離れることにより行われる。なお、シャッタ24が備える上下動突起241は折り曲げ加工して設けられているが、その上下動突起241を溶接や接着等で設けてもよい。
このとき、図4に示すように、第1の基準板231には、シャッタ24を弾性的に上下動させるためのバネ部材267を係合するバネ掛け突起264が設けられ、シャッタ24にも、そのバネ部材267を係合するバネ掛け突起245が、前記第1の基準板231が備えるバネ掛け突起264よりも相対的に上方の位置に設けられており、それらによって、シャッタ24は下方向に付勢力が与えられている。したがって、カセット式媒体収納容器25がホッパー20に装着されてシャッタ24が上方向にスライドした場合には、シャッタ24は、下方向に付勢力を有した状態となっているので、カセット式媒体収納容器25がホッパー20から取り外された場合には、その付勢力により、シャッタ24は速やかにゲート部23を塞ぐことができる。
シャッタ24の上下動機構は特に限定されず、図示の例以外の機構であっても構わないし、バネ部材267以外の付勢方法であってもよい。また、第1の基準板231が備える、バネ掛け突起264の下の開口部263は、バネ掛け突起264を折り曲げ加工するために設けられたものであるので、バネ掛け突起264を溶接や接着等で設ける場合にはその開口部263は不要である。また、シャッタ24に形成された開口部244は、第1の基準板231が備えるバネ掛け突起264に対応する位置に形成されたものであり、シャッタ24の上下動持にそのバネ掛け突起264がシャッタ24に干渉しない大きさで形成されている。
第1の基準板231の底面233側には、ゲート部23から最低位の媒体2aを繰り出すことができるだけの隙間が形成されるが、その隙間は、基準板先端265と底面233とによって決定されている。本実施形態においては、基準板先端265は、第1の基準板231の略中央部に所定の幅で設けられ、その基準板先端265の幅方向両側には、シャッタ24のシャッタ先端247,247が配置される切込部266,266が形成されている。
基準板先端265は図示のように1つであってもよいし、2つ以上であってもよい。また、基準板先端265が設けられている部位も幅方向の中央でなくても構わない。また、シャッタ先端247,247が配置される切込部266,266も2つ以上設けられていてもよいし、1つであってもよいが、1つの場合には、本実施形態とは逆に、例えば幅の広いシャッタ先端247を略中央部に設け、その両側に基準板先端265を2つ設けるようにしてもよい。なお、符号246は、第1の基準板231の基準板先端265に対応した位置に設けられるガイド部材である。
シャッタ先端247、247は、媒体収納部250の側の面において、基準板先端265と略面一になるように湾曲又は屈曲して形成されている。具体的には、図5(B’)に示すように、シャッタ先端247は、傾斜部248と鉛直部249とで構成され、それらが折れ曲がって形成されている。すなわち、第1の基準板231とシャッタ24とは平行に対向配置されているが、シャッタ先端247,247は、第1の基準板231の切込部266,266に折れ曲がって入り込み、基準板先端265と媒体収納部250の側の面において、略面一になっている。
以上説明したように、本発明に係るカセット式媒体収納容器25は、シャッタ24の隙間側の先端(シャッタ先端247)が、媒体収納部250の側の面において、媒体幅のうち第1の基準板231が設けられていない部位(切込部266,266)に第1の基準板231と略面一となるように湾曲又は屈曲しているので、底面233と第1の基準板231との隙間に最低位以外のカードが入り込むのを防ぐことができる。その結果、媒体収納容器25をホッパー20に装着してシャッタ24を開けた場合に、何ら不具合なく最低位のカード2aをゲート部23から送り出すことができる。
なお、シャッタ24が上方向にスライドした場合、切込部266の大きさにもよるが、シャッタ先端247はそのままの形態で上方向にスライドしてもよいし、傾斜部248が第1の基準板231の当接部234に当たって、シャッタ24の下端側が手前に若干シフトする。
図6は、おもりの形態を示す平面図であり、図7は、図6のB−B断面図である。本発明に係るカセット式媒体収納容器25において、おもりは特に限定されないが、図6及び図7に示すおもり26を用いることができる。このおもり26は、重しとなる例えば金属製の板部材291,292を有し、その上部には、チェーン295を収容する受け皿293が設けられている。そして、その受け皿293には、チェーン295が、チェーン止め294により受け皿293に固定されている。
このおもり26の特徴は、チェーン295が取り付けられている点と、チェーン295を収容する受け皿293を有する点にあり、チェーン295によっておもりの紛失を防ぐことができるとともに、そのチェーン295を収容する受け皿293がおもり26上面に設けられているので、収容された媒体が満杯にして蓋部材253を閉める場合に、チェーン295を収納して媒体収納部250の外側の装置等引っ掛ることを防止して使い勝手が向上する。
本発明のカセット式媒体収納容器25が備えるおもり26としては、図示のものを好ましく用いることができるが、特に限定されず各種の形態をとることができる。例えば、板部材291,292は1枚でも2枚以上でもよく、その材質も金属以外であっても構わない。また、受け皿の形態も図示のもの以外のものであってもよい。また、図示の形態は、左右に凹部298を有する形態であるが、媒体収納部250を囲む周壁にガイドされて、媒体積層方向に移動する形であれば、全体の形態についても種々変形できる。
受け皿293は、周縁に縁部299が形成されることによってチェーン295を収容できる。縁部299は全周縁に設けてもよいし、図6に示すように、チェーン295が延びる方向には設けないようにしてもよい。また、チェーン295の種類も、切断しにくく屈曲にも強く長期間使用可能なものであれば、図示のチェーンの他、各種のものを用いることができる。また、こうしたチェーン295と同様の作用効果を奏するものであれば、チェーン295に限らず、紐やワイヤ等の均等物に置き換えてもよい。
図8は、蓋部材の形態を示す図であって、(A)は平面図であり、(B)は側面図であり、(C)は左側面図である。本発明のカセット式媒体収納容器においては、蓋部材として図示の蓋部材253が好ましく用いられるが、それ以外の形態の蓋部材であってもよい。
図8に示す蓋部材253の一方の端部の側板260,260は、回動可能な接続部258を介して本体部251に取り付けられている。そのため、この蓋部材253は、その接続部258を中心に開閉することができる。また、蓋部材253の、接続部258の反対側には、ロック機構256が設けられている。このロック機構については後に詳述するが、ロック板271が本体部251に設けられたスリットに係合することにより蓋部材253を本体部251にロックすることができる。なお、符号259は、蓋部材253の前面板を表している。
図8に示す蓋部材253は、倒起可能な取っ手255が設けられている。この取っ手255は、カセット式媒体収納容器25をホッパー20から取り外す際に好ましく用いられる。この取っ手255は、両側に配置された側板262,262と、その側板間をわたす取っ手部269と、指をかけて持ち運ぶ際の受け面部268とで主に構成され、回動可能な接続部261を介して蓋部材253の略中央に取り付けられている。
この取っ手255は、蓋部材253に対して起こした際に、蓋部材253に対して所定の位置(図示では直角となっている)で固定され、その位置を超えて回らないようにするストッパー263が、図8(B)に示すように設けられていることが好ましい。そのストッパー263は、蓋部材253の側板260,260から突出するように設けられている。そして、そのストッパー263に、取っ手255を構成する側板262,262に設けられた当接部265,265が当たることによって、取っ手255がその位置を超えて回らないようになっている。なお、符号263aは、取っ手255を倒したときに側板262,262がストッパー263,263に当たらないようにした凹みである。
本発明に係るカセット式媒体収納容器25がこうした蓋部材253を備えれば、カセット式媒体収納容器25をホッパー20から取り外した後の持ち運びが容易になる。また、媒体発行装置1をケーシングに対して、手前方向へ引き出し可能に取り付けられる場合には、取っ手255がケーシングへの挿入時に、ケーシングに当接して倒れるので、ホッパー20などの損傷を防止することができる。
図9は、ロック機構の説明図であって、(A)はカセット式媒体収納容器の中から蓋部材をみたときのロック機構の形態を示す図であり、(B)はC−C断面図である。図示のロック機構256は、蓋部材253の、接続部258の反対側に設けられている。このロック機構256は、ロック板271の先端部272が本体部251に設けられたスリット274に係合することにより蓋部材253を本体部251にロックすることができる。その結果、カセット式媒体収納容器25をホッパー20から取り外した後に取っ手255を持って持ち運びする際に、蓋部材253を閉じた状態で安全に運ぶことができる。なお、図示のロック機構256は、本発明のカセット式媒体収納容器25において好ましく用いられるが、それ以外の態様のロック機構を採用することもできる。
ロック機構256は、図9に示すように、ドライバーやコイン等を挿入するスリット276を有した回転部275と、その回転部275に連結されて蓋部材253の裏面側に配置されたロック板271とを有している。ロック板271は先端部272を有し、その先端部272は、ロック板271を所定の位置まで回転させたときに、本体部251に設けられたスリット274に係合する。これにより、蓋部材253を本体部251にロックすることができる。なお、符号273は、ロック板271を回転部275に連結するためのネジ部材273である。
このロック機構256は、ロック板271と蓋部材253との間に、板バネ281が設けられている。板バネ281は矩形穴282,283を2箇所に有し、蓋部材253の裏面にはその矩形穴282,283に係合する鋼球284が設けられている。この板バネ281は、回転部275に固定されており、ロック板271の回動に合わせて回動する。そして、矩形穴282,283と鋼球との位置関係は、図9(A)に示すように、ロック板271を回動させてロック板271の先端部272が本体部251のスリット274に係合したときに、板バネ281が有する矩形穴282が鋼球284に係合し、一方、ロック板271を図9(A)中の矢印に沿って破線部まで回動し、ロック板271の先端部272を本体部251のスリット274から完全に解放したときに、板バネ281が有する矩形穴283が鋼球284に係合するように配置する。矩形穴282,283と鋼球との位置関係を上記のようにすることにより、矩形穴282,293と鋼球284とが係合する際の音又は衝撃により、蓋部材253のロックし忘れ等を防ぐことができる。なお、符号285は、板バネ281の両端面が当接する位置にそれぞれ設けられたものであり、ロック板271のオーバーランを防ぐためのピン部材である。
(駆動システム)
図10は、本発明のカセット式媒体収納容器を備えた媒体発行装置の駆動方式の一例を示す透視側面図である。この媒体発行装置1においては、図10に示すように、主に2つの駆動モータ(A駆動モータ140とB駆動モータ150)により駆動させている。なお、この媒体廃棄装置1及び駆動システムは例示であって、本発明に係るカセット式媒体収納容器が装着されるホッパー又は媒体廃棄装置として限定されるものではない。
A駆動モータ140は、複数のベルトやプーリが組み合わされて、例えば図10に示すように、一時保留部である廃棄媒体搬送部90、第1の媒体回動部80、及び非接触通信部100の各搬送用の対向ローラを駆動して、媒体の搬送を行なう。
廃棄媒体搬送部90における媒体2の搬送を行なうA駆動モータ140の駆動力は、ベルト143を介してプーリ141に伝わる。さらに、プーリ141の回転駆動は、それに連接されたギア142により廃棄媒体搬送部90の対向ローラ92に伝達されこれを駆動させる。そして、対向ローラ92への駆動力伝達が電磁クラッチ94によって接続(電磁クラッチ94がON状態)又は切断(電磁クラッチ94がOFF状態)されることにより、廃棄すべき媒体を一時的に保持する一時保留部である廃棄媒体搬送部90における媒体の保持、第1の媒体回動部80への媒体の戻し、又は、廃棄媒体保管部50への媒体の送り等が行われる。
また、プーリ141にかけられた他のベルト144は、第1の媒体回動部80の回動軸84と同軸に回転自在に取り付けられた搬送駆動プーリ145と非接触通信部100の搬送用の対向ローラ103と同軸配置したプーリに掛け渡されている。
そして、非接触通信部100を駆動するA駆動モータ140の駆動力は、対向ローラ103と同軸配置したプーリにより対向ローラ103及び対向ローラ103とベルトにより連結されて同期回転する対向ローラ102に伝達される。非接触通信部100は、対向ローラ102及び103によって媒体2を第1の媒体回動部80側に搬送したり、媒体排出口10側に搬送したりする。
次に、プーリ141にかけられたベルト144により第1の媒体回動部80の搬送駆動プーリ145に伝達されたA駆動モータ140の駆動力は、第1の媒体回動部80における媒体2の搬送を行なう。即ち、搬送駆動プーリ145の回転は、ギア146を介して対向ローラ82を回転させ、さらにその対向ローラ82は、ベルトとプーリを介して他の対向ローラ83を回転させる。このように第1の媒体回動部80は、A駆動モータ140の駆動力によって、第1の媒体回動部80の対向ローラ82,83を駆動して、媒体2を第1の媒体回動部80内に保持したり、印字装置70、非接触通信部100及び廃棄媒体保管部50との間で媒体の搬送等を行なう。
さらに、第1の媒体回動部80の回動は、その回動軸84にベルト86を介して駆動力を送る回動軸用モータ85により行われる。このとき、回動軸84と同軸に回転自在に取り付けられた搬送駆動プーリ145は、図10に示すように、対向ローラ82にギア146で連結しているとともにベルト144により回転が規制されているので、第1の媒体回動部80を回動させると、搬送駆動プーリ145に対してギア146が相対的に回転して対向ローラ82及び83が回転して搬送路81内で保持された媒体2に対して搬送力が作用する。そこで、駆動モータ85による第1の媒体回動部80の回動に合わせて、上記の搬送力の作用をキャンセルする方向に媒体2を搬送するようにA駆動モータ140が搬送駆動プーリ145を駆動する。
B駆動モータ150もA駆動モータ140と同様、複数のベルトやプーリが組み合わされて、例えば図10に示すように、印字装置70、第2の媒体回動部60、及びクリーニング媒体保持部110の各搬送用の対向ローラを駆動して、媒体の搬送を行なう。具体的には、B駆動モータ150の駆動力は、ベルト153を介してプーリ151,152に伝わり、そのプーリ151,152が備えるプーリに同軸状に連接したプラテンローラ34,34を回転させるとともに、そのプラテンローラ34,34からベルトを介して媒体搬送用の対向ローラ31,32,33を回転させる。こうした回転により、印字装置70内での媒体の搬送等が行われる。
次に、B駆動モータ150の駆動力は、媒体搬送用の対向ローラ31と同軸状に連接したプーリにかけられた他のベルト156を介してクリーニング媒体保持部110のプーリ154に伝わり、そのプーリ154に連接されたギア157によりクリーニング媒体保持部110の対向ローラ112を駆動させる。そして、電磁クラッチ113が切断(OFF状態)されている場合は、クリーニング媒体保持部110におけるクリーニング媒体の保持がなされ、電磁クラッチ113が接続(ON状態)されている場合には、B駆動モータ150の回転に応じて、第2の媒体回動部60との間でのクリーニング媒体114の授受が行われる。
さらに、B駆動モータ150の駆動力は、媒体搬送用の対向ローラ31と同軸状に連接したプーリにかけられた他のベルト156を介して、第2の媒体回動部60の搬送駆動プーリ155を回転させる。この搬送駆動プーリ155は、図示しないギアやベルトとプーリを介して対向ローラ63を回転させ、さらにその対向ローラ63は、図示しないベルトとプーリを介して他の対向ローラ62を回転させる。このように、B駆動モータ150の駆動力は、第2の媒体回動部60の対向ローラ62,63を駆動して、媒体2及びクリーニング媒体114を第2の媒体回動部60内に保持したり、印字装置70との間でやり取りしたり、新規発行される媒体2を媒体繰り出し部21から受け取ったりする。また、クリーニング媒体保持部110との間でのクリーニング媒体114の授受も行われる。
さらに、第2の媒体回動部60の回動は、その回動軸64にベルト66を介して駆動力を送る回動軸用モータ65により行われる。このとき、回動軸64と同軸に回転自在に取り付けられた搬送駆動プーリ155は、第1の媒体回動部80の搬送駆動プーリ145同様に、対向ローラ62等にギア等で連結しているとともにベルト156により回転が規制されているので、第2の媒体回動部60を回動させると、搬送駆動プーリ155に対する相対回転により対向ローラ62及び63が回転して搬送路61内で保持された媒体2(又はクリーニング媒体114)に対して搬送力が作用する。そこで、駆動モータ65による第2の媒体回動部60の回動に合わせて、上記の搬送力の作用をキャンセルする方向に媒体2(又はクリーニング媒体114)を搬送するようにB駆動モータ150が搬送駆動プーリ155を駆動する。
以上のように、媒体2の搬送用の駆動モータを用いることにより、媒体の更新発行のように、古い媒体と新しい媒体とを装置内で独立に搬送することができるので、処理時間を短縮することができるとともに、ベルトやプーリ等の削減も可能になるので、小型化と低コスト化を実現できる。なお、図1及び図10においては、A駆動モータ140とB駆動モータ150の2つを主に用いているが、一つの駆動モータで構成してもよい。なお、一つの駆動モータで構成する場合は、機械的なクラッチ等で設けることが好ましい。
(媒体発行方法)
次に、新規発行の動作について説明する。媒体2の新規発行は、ホッパー20内に積層された媒体2のうち最低位の媒体2aを押出部材221の爪部にて繰り出して、第2の媒体回動部60内に搬送した後、第2の媒体回動部60を傾斜搬送路30と同じ角度に回動させて媒体の搬送方向を切替る。次に、第2の媒体回動部60から傾斜搬送路30上に配置された印字装置70内に搬送し、印字装置70が備える印字ヘッド71により媒体表面に所定の情報が印字される。このときの印字ヘッド71は、印字ヘッド駆動モータ74により媒体表面に接触するまで下降し、媒体表面に接触した状態で印字する。印字が終了した後は、印字ヘッド駆動モータ74により印字ヘッド71を元の位置に上昇する。その後、媒体2は、傾斜搬送路30と同じ角度に回動した状態で待機している第1の媒体回動部80に搬送される。媒体2を受け取った第1の媒体回動部80は、媒体2を非接触通信部100に搬送するために水平方向になるまで回動し、その後、非接触通信部100に搬送する。この非接触通信部100においては、アンテナ部104と媒体2との間の非接触通信によって媒体2に内蔵されているICに所定の情報が格納記憶され、最後に、媒体排出口10に媒体2が送られて利用者の手に渡る。なお、必要により、非接触通信部100による処理の前に、第1の媒体回動部80から一旦分岐して、磁気媒体リーダライタ120による磁気データの記録処理が行なわれてもよい。
次に、書き換え発行の動作について説明する。書き換え発行は、媒体排出口10に使用中の媒体2が挿入されると、媒体排出口10が備える幅センサ(図示しない)がカード状媒体2を検知し、シャッタ11を開けて非接触通信部100に搬送される。非接触通信部100では、媒体2に内蔵されているICとの間で所定の情報の読み取り及び書き込みが非接触通信により実行され、その後非接触通信部100と同じ水平に保持された第1の媒体回動部80に搬送される。媒体2を受け取った第1の媒体回動部80は、傾斜搬送路30と同じ角度まで回動した後、印字装置70内に媒体2を搬送し、その後、傾斜搬送路30と同じ角度まで回動させておいた第2の媒体回動部60まで媒体2を搬送する。その第2の媒体回動部60から、装置上位からの指示で再度印字装置70内に搬送し、先ず、消去ヘッド72で今までの印字データを消去し、引き続いて、印字ヘッド71で新しい情報を印字する。印字した後は、第1の媒体回動部80、非接触通信部100を経由して、媒体排出口10から利用者の手に返却される。なお、この場合も、必要により、非接触通信部100による処理の後に、磁気媒体リーダライタ120による磁気データの記録処理が行なわれてもよい。
次に、更新発行の動作について説明する。更新発行(使用可能期限となった媒体を廃棄し、新たに媒体を発行することをいう)は、媒体排出口10に使用中の媒体2が挿入されると、媒体排出口10が備える幅センサがカード状媒体2を検知し、シャッタ11を開けて非接触通信部100に搬送される。非接触通信部100では、媒体2に対する非接触通信による所定の情報の読み取りが実行され、この通信結果に基づき更新発行とすることが決定されると、更新のため読み取られた所定の情報は上位装置等に一時保存される。そして、更新される媒体2は非接触通信部100と同じ水平に保持された第1の媒体回動部80に搬送される。第1の媒体回動部80に取り込まれた媒体2は、傾斜搬送路30には搬送されず、第1の媒体回動部80を逆回転により、斜め下方に配置された一時保留部としての廃棄媒体搬送部90に搬送され、廃棄処理待ちの媒体として保持される。次に、上記の新規発行と同じ手順で新しい媒体2が発行される。この新しい媒体2が第1の媒体回動部80を経由して、非接触通信部100に搬送されそこで、上位装置等に一時保存された情報が新しい媒体2に対して書き込まれる。そして、この書き込みが確認され、又は媒体排出口10から利用者の手に新たな媒体2が渡ったことが確認された時点で、一時保留部である廃棄媒体搬送部90に保持された廃棄処理待ちの使用済み媒体2は、更にその斜め下方の廃棄媒体保管部50に除電ブラシ93で除電されて投入される。
次に、媒体廃棄の動作について説明する。廃棄媒体保管部50への媒体2の投入(廃棄)は、廃棄媒体搬送部90を経由して行われる。媒体排出口10から投入された媒体2は、すぐ後ろ(装置1の内部側)に配置された非接触通信部100により、又は、第1の媒体回動部80を経由して送られた磁気媒体リーダライタ120により、情報が読み取られて廃棄媒体であるかが判断される。非接触通信部100により廃棄媒体であることが読み取られた場合、その廃棄媒体は、第1の媒体回動部80に搬送され、そこで保持されつつ廃棄媒体搬送部90の角度と同じになるまで第1の媒体回動部80が回転する。次いで、第1の媒体回動部80から廃棄媒体搬送部90に廃棄媒体が搬送される。一方、磁気媒体リーダライタ100により廃棄媒体であることが読み取られた場合、その廃棄媒体は、第1の媒体回動部80に戻され、そこで保持されつつ廃棄媒体搬送部90の角度と同じになるまで第1の媒体回動部80が回転する。次いで、第1の媒体回動部80から廃棄媒体搬送部90に廃棄媒体が搬送される。
このとき、廃棄媒体搬送部90に搬送された廃棄媒体は、そこで保持されずに廃棄媒体保管部50に投入されてもよいが、好ましくは新規の媒体を発行するまで、すなわち新規媒体がホッパー20から発行され、印字装置70で印字され、非接触通信部100で情報通信が完了したのを確認するまで保持される一時保留部として動作させることが好ましい。そして、新規媒体への情報通信が完了したのを確認し、新規媒体2が発行されてから、廃棄媒体を、一時保留部としての廃棄媒体搬送部90から廃棄媒体保管部50に投入することが好ましい。こうした方式をとることにより、新規媒体2を更新発行する場合に、情報書き込み等を確実に行ったのを確認した後に今までの非接触ICカードを廃棄することができ、その結果、非接触ICカードの更新発行においても、迅速且つ確実な処理を行なうことができる。
以上説明したように、本発明のカセット式媒体収納容器によれば、新しいカードを補充した状態で媒体収納容器を搬送した場合であっても、底面と基準板との隙間に最低位以外のカードが入り込むのを防ぐことができる。その結果、媒体収納容器をホッパーに装着してシャッタを開けた場合に、何ら不具合なく最低位のカードをゲート部から送り出すことができる。また、本発明のカセット式媒体収納容器を、磁気カードやICカード等の新規発行や更新発行、さらには書き換え発行を行なうことができる、省スペース対応の媒体発行装置に適用すれば、媒体収納容器に基づく媒体発行トラブルが生じない媒体発行装置を提供することができる。