以下、本発明の媒体搬送方向変換装置及び媒体処理装置について図面を参照しつつ説明する。本発明は、その技術的特徴を有する範囲において、以下の説明及び図面に限定されるものではない。
以下においては、本発明の媒体搬送方向変換装置が好ましく装着される媒体処理装置の全体構成について説明する中で、媒体搬送方向変換装置の詳細について詳しく説明する。なお、媒体搬送方向変換装置の装着対象が以下に説明する媒体処理装置に限定されないことは言うまでもない。
(媒体処理装置)
本発明の媒体処理装置は、角度をなして屈折又は分岐してカード状媒体を搬送する搬送路と、その搬送路上に配置されて、カード状記録媒体(単に「媒体」ということがある)に対して情報の書き込み又は読み取る情報書き込み部と、前記搬送路に設けられ、前記角度に応じて、媒体の搬送方向を変換する媒体搬送方向変換装置とを備える装置である。
図1は、本発明の媒体搬送方向変換装置が好ましく装着される媒体処理装置の実施の形態を示す透視側面図であり、図8は、その駆動方式の実施の形態を示す透視側面図である。本発明の媒体処理装置1の具体例としては、図1に示すように、装置奥側に配置され、媒体2を上方向に積層して収納するとともに、積層された媒体2のうち最低位の媒体2aを1枚毎に繰り出し可能な媒体繰り出し部21を有するホッパー20と、媒体2の積層方向に対して鋭角をなす方向へ向けて、媒体繰り出し部21から繰り出された媒体2を搬送する傾斜搬送路30と、傾斜搬送路30の媒体繰り出し部21とは反対側の一端である手前側上方の対角位置に配置された、媒体2を排出する媒体排出口10とを備え、そして、媒体排出口10と傾斜搬送路30との間に設けられ、媒体2を回動させてその搬送方向を切り替える第1の媒体搬送方向変換装置80と、媒体繰り出し部21と傾斜搬送路30との間に設けられ、媒体2を回動させてその搬送方向を切り替える第2の媒体搬送方向変換装置60とを備えている。
さらに、図1に示す媒体処理装置1は、傾斜搬送路30上に設けられ、媒体2に対して所定情報の書き込みを行なう情報書き込み機構(例えば印字装置70等)と、媒体排出口3の内側下方に設けられた、廃棄媒体保管部50及び廃棄媒体搬送部90を有する媒体廃棄装置とを備えている。また、媒体排出口10の内側には、所定情報の読み取り、書き込み又は書換えのために媒体2に対して非接触の通信処理を行なう非接触通信部100を備えている。また、図1に示すように、第1の媒体搬送方向変換装置80から媒体2を受け取って磁気データの読み取り又は書き込み行なう磁気媒体リーダライタ120が第1の媒体搬送方向変換装置80の下に設けられていてもよいし、第2の媒体搬送方向変換装置60の上方にクリーニング媒体保持部110を備えていてもよい。
媒体処理装置1の全体的な配置構成として、ホッパー20が備える媒体繰り出し部21と、媒体2を発行するための媒体排出口10とが、傾斜搬送路30を間に挟んで装置側面視で対角位置に配置される。こうした配置構成は、装置1全体の長さ(図1を平面視した場合の左右の長さ)を短縮して装置全体の大きさを小さくすることができ、さらには、装置外形を作製し易い矩形状とすることができる。
以下、媒体処理装置1の構成等について簡単に説明する。図中、「S」はセンサを表している。
ホッパー20は、ホッパーカセット25と媒体送り出し機構22とより構成され、ホッパーカセット25と媒体送り出し機構22との間には媒体繰り出し部21が形成されている。ホッパーカセット25は、媒体2を積層収納する媒体収納容器で、媒体処理装置1の一部としてホッパー20から着脱可能にカセット式媒体収納容器として設けられている。このホッパーカセット25内には、接触式又は非接触式のICカードや磁気カード等の媒体2が収納される。その媒体2は、後述する媒体排出口10と略等しい高さの最上位部27よりも下側に積層して収納されている。なお、そうした媒体2は、利用期限や貨幣価値等の各種情報が完全に記録されていない発行前ものである。また、エンボスの有無は問わない。ホッパーカセット25の下側には、図1に示すように、ゲート部23が設けられており、このゲート部23から、後述する媒体送り出し機構22によって最低位の媒体2aが一枚毎送り出される。このゲート部23は、最低位の媒体2aを一枚のみ送り出すことができる所定の隙間を設けるように、ホッパーカセット25の底板とホッパーカセット25の側板をなす基準板との間に設けられている。
また、ホッパーカセット25には、ホッパーカセット25をホッパー20から脱着したときにゲート部23を塞ぐシャッタ24を有するシャッタ構造(図示しない)が設けられていてもよいし、ホッパーカセット25内に収容される媒体2を上方から押し下げるように作用するおもり26が設けられていてもよい。
媒体送り出し機構22は、ホッパー20の底部にホッパーカセット25と対向して配置され、ホッパーカセット25内に収容される複数の媒体2のうち最低位に載置された媒体2aをホッパーカセット25(即ちホッパー20)の外に送り出す装置である。この媒体送り出し機構22は、ホッパーカセット25の最低位に載置されたカード状媒体2aをゲート部23を経由してホッパーカセット25(即ちホッパー20)の外に押し出す押出部材221を備えている。この押出部材221には、カード状媒体2aの後端縁に係合してその媒体2aを押し出す爪部が形成されていることが好ましい。
押出部材221は、例えば2つのスプロケット223,223間に掛け渡されたチェーン222に取り付けられている。このスプロケットは、例えば図1に示すように、ステッピングモータ等の駆動手段224により伝動ベルト225等を介して駆動制御することができ、これにより押出部材221は、カード状媒体2aを押し出すように駆動される。
媒体排出口10は、媒体処理装置1から最終的に媒体2を排出するゲートであり、装置前面であり且つ装置上部に設けられている。上記のホッパー20の媒体繰り出し部21から繰り出された媒体2は、ホッパー20と媒体排出口10との間に設けられた傾斜搬送路30を経由して、媒体排出口10に搬送される。なお、傾斜搬送路30は、媒体繰り出し部21から繰り出された媒体2を媒体排出口10へ向けて搬送する搬送路である。この媒体排出口10は、図1においては媒体処理装置1の上部に設けられているので、その媒体排出口10の装置内側下方には広いスペースを確保することができる。そのスペースには、廃棄すべき使用済み媒体を保管する廃棄媒体保管部50が配置されている。
この媒体排出口10は、媒体2を新規に発行する場合は文字通り媒体排出口となるが、更新発行や書き換え発行する場合は、所定情報を書き換えるべき使用中の媒体がこの媒体排出口10から挿入される媒体挿入口としても機能するとともに、所定情報の書き込み又は書き換えを完了した前記媒体を排出する媒体排出口としても機能する。従って、この媒体排出口10が媒体挿入口及び媒体排出口の両方の機能を有する場合、媒体排出口が媒体の取り込み口としても用いられるので、磁気カードやICカード等の新規発行のみならず、更新発行や書き換え発行用の媒体処理装置として用いられる。
なお、媒体排出口10には、一般的な媒体排出口ないし挿入口に設けられている各種の機能を付加させてもよく、例えば、図1に示すように、シャッタ11とシャッタ用ソレノイド12とを有するシャッタ機構13を備えていてもよい。また、図示しないが、媒体排出口10には、挿入される媒体種の情報を予め読み取るプリヘッドを備えていてもよいし、また、挿入される媒体の幅寸法の適否を検査する幅センサ等が設けられていてもよい。
傾斜搬送路30は、媒体排出口10とホッパー20との間に設けられ、ホッパー20の媒体繰り出し部21から繰り出された媒体2を媒体排出口10へ向けて搬送する搬送路である。傾斜搬送路30には、媒体2を上下から挟んで所定の方向に搬送する対向した搬送用のローラ(以下、対向ローラともいう)31,32,33が設けられている。上述したように、媒体排出口10は装置上部に設けられ、ホッパー20の媒体繰り出し部21は装置下方に設けられているので、その間に配置されて媒体2の搬送路となる傾斜搬送路30は、装置1の枠体の対角線状に設けられている。対角線状に設けられた傾斜搬送路30は、同じ長さの搬送路が必要な場合、搬送路を水平配置した場合に比してその長さを短くすることができるので、装置全体の大きさ(特に図1における左右方向の長さL)を小さくして省スペース化を図ることができる。
情報書き込み機構は、傾斜搬送路30上に設けられて、媒体2に対して所定情報の書き込みを行なうものであり、図1に示すような印字装置70を例示できる。この情報書き込み機構は、所定の情報の書き込み及び書き換えが可能であることが好ましく、具体的には、図1中の印字装置70に示すように、印字ヘッド71や消去ヘッド72を有することが好ましい。
情報書き込み機構である印字装置70は、ホッパー20側から媒体排出口10に向かって、媒体搬送用の対向ローラ31、消去ヘッド72、媒体搬送用の対向ローラ32、印字ヘッド71、媒体搬送用の対向ローラ33の順で配設されている。消去ヘッド72と印字ヘッド71は、それぞれがプラテンローラ34を対向配置し、そのプラテンローラ34との間に媒体2を挟むようにして、媒体2に印字された情報を消去し又は新たな情報を印字する。
印字装置70には、媒体表面に対して消去ヘッド72を昇降させる消去ヘッド駆動モータ73が設けられ、また、媒体表面に対して印字ヘッド71を昇降させる印字ヘッド駆動モータ74が設けられていることが望ましい。こうした各ヘッドの駆動モータ73,74は、媒体2に情報を印字することが必要な際又は媒体2に印字された情報を消去することが必要な際にそれぞれ独立に動作し、プラテンローラ34上の媒体2に接触するまで、消去ヘッド72又は印字ヘッド71を降下させる。一方、上記の消去や印字が終了した場合は、プラテンローラ34上の媒体2から離れる方向に消去ヘッド72又は印字ヘッド71を上昇させる。消去や印字が必要でない場合は、各ヘッドの駆動モータ73,74は動作せず、消去ヘッド72及び印字ヘッド71は傾斜搬送路30から退避した位置に保持される。なお、駆動モータ73,74は、図示しないギアやカム等の昇降機構によって、消去ヘッド72及び印字ヘッド71を駆動する。
次に、本発明に係る媒体搬送方向変換装置80,60について詳しく説明する。
図2は、本発明に係る媒体搬送方向変換装置の実施の形態(第2の媒体搬送方向変換装置60)を示す正面図である。また、図3は、図2に示す媒体搬送方向変換装置の媒体搬送路を説明するための正面図であり、図4は、図2に示す媒体搬送方向変換装置を下方から見たときの図であり、図5は、図2に示す媒体搬送方向変換装置を上方から見たときの図であり、図6は、図2に示す媒体搬送方向変換装置の回動角制御用のスリットとセンサとの位置関係を示す説明図である。また、図7は、第1の媒体搬送方向変換装置80における、搬送方向を変化させたときのスリットの位置関係の説明図である。なお、図1及び図8に示した媒体処理装置1は、本発明に係る媒体搬送方向変換装置60,80を2つ配置しているが、両者は基本要素が同じであるので、以下の図2〜図6においては第2の媒体搬送方向変換装置60について説明する。一方、媒体搬送方向変換装置の回動角制御機構については、より多くの方向に変換することが必要な第1の媒体搬送方向変換装置80を用いて詳しく説明する。
第2の媒体搬送方向変換装置60は、図1に示すように、媒体繰り出し部21と傾斜搬送路30との間に設けられ、媒体繰り出し部21又は傾斜搬送路30から接受した媒体2を一時保持した状態で回動させて媒体2の搬送方向を切替るように動作する。この第2の媒体搬送方向変換装置60は、図4に示すように、一体に回動する一対の側板643,644と、一対の側板643,644を外側から回動可能に支持する支持軸69,69aと、一対の側板643,644の間に設けられ、媒体搬送路(媒体繰り出し部21又は傾斜搬送路30)から媒体2を接受して送り出すとともに媒体2を一時保持することができる媒体搬送部671と、側板643,644とは独立に設けられ、側板643,644及び媒体搬送部671を一体に回動させる第1の駆動源である回動用モータ65と、支持軸69,69aと回動中心が一致する位置に設けられているとともに、媒体搬送部671に駆動力を伝達する伝動部材(図2においては搬送駆動プーリ68)と、側板643,644とは独立に設けられるとともに、伝動部材(搬送駆動プーリ68)を駆動する第2の駆動源であるB駆動モータ150とを有している。
なお、本発明を構成する媒体搬送方向変換装置(60,80)は、図4中の符号を用いて示せば、媒体搬送路(30)から媒体(2)を受け取って送り出す媒体搬送部(671)を内部に備える回動体と、その回動体を外側から回動可能に支持する支持軸(69,69a)と、その回動体を回動させる第1の駆動源(65)と、その第1の駆動源(65)からの駆動力を受けて回動体を回動させる回動部材(64)と、支持軸(69,69a)の軸心と回動体の回動中心とが一致する位置に設けられているとともに、媒体搬送部(671)に媒体(2)を搬送するための駆動力を伝達する伝動部材(68)と、回動体とは独立に設けられるとともに、伝動部材(68)を駆動する第2の駆動源(150)とを有しているものとして表すことができる。そして、図4に示す例でいえば、回動体は、一体に回動する一対の側板643,644と、その一対の側板643,644の間に設けられた媒体搬送部671とを有するものとして表すことができる。
第2の媒体搬送方向変換装置60は、支持板641,642及びその間に回転自在に支持される側板643,644よりなるユニットとして構成されている。より詳しくは、第2の媒体搬送方向変換装置60の側板643,644は、支持板641,642の間に支持軸69、69aを介して回転自在に支持されている。このようにユニットとして構成された第2の媒体搬送方向変換装置60は、ワンタッチで着脱可能なように支持板641を介して媒体処理装置1に取り付けられていることが好ましく、各部品や駆動機構に不具合が生じた場合には、ユニットとして交換することができるという利点がある。なお、第2の媒体搬送方向変換装置60をユニットとして構成せず、支持板641,642に代えて媒体処理装置1の本体フレームによって側板643,644を直接支持する構成としてもよい。
具体的には、図2に示すように、搬送路61を有する媒体搬送部671が、回動用モータ65からのベルト伝動により、支持軸69,69aを中心にして回動する。この媒体搬送部671は、上記のように、一対の側板643,644の間に設けられ、図2において奥側に見える支持板641は、媒体処理装置1の本体シャーシ(図示しない)に取り付けられている。なお、その支持板641の上部に設けられた円弧状の開口67は、搬送路671の回動の角度範囲を規制するために設けられるものである。側板643に設けられた規制ピン(図示しない)が、開口67に係合してその範囲で搬送路671及び側板643の回動を許容している。なお、このような回動範囲の規制は必ずしも必須のものではなく、回動規制しない場合は、媒体搬送部671を360°以上回動自由にさせることができる。
媒体搬送部671は、媒体繰り出し部21又は傾斜搬送路30に対して媒体2を接受して送り出すとともに媒体2を一時保持することができるものであり、具体的には、図2〜図5に示すように、媒体2を保持及び搬送する搬送路61と、搬送路61の一方の側の端部近傍に設けられた対向する一対のローラ62,62aと、搬送路61の他方の側の端部近傍に設けられた対向する一対のローラ63,63aとを有している。さらに、この媒体搬送部671は、伝動部材(搬送駆動プーリ68)を介したB駆動モータ150(第2駆動源)からの駆動力により、前記の各対向ローラが駆動して媒体2を接受し又は一時保持するように動作する。
また、媒体搬送部671には、図2に示すように、搬送中の媒体2の位置又は有無を検知することができる媒体検知センサS1,S2が設けられている。媒体検知センサS1,S2は、媒体が存在する場合の遮光によって、媒体位置を検知する遮光式センサであり、搬送路61の略両端部に配置されているので両方のセンサが媒体を検知しているとき媒体の保持を検知することができる。即ち、確実な一時保持状態を認識可能なようにしている。従って、媒体搬送方向変換の動作途中にジャム障害が発生しないように媒体搬送部の一時保持状態を維持制御し確認することができる。
なお、符号616は、センサの端子部を示している。センサS1,S2の端子部616からの信号線(配線)は、支持軸69,69a近傍から引き出すことが好ましい。これにより、媒体搬送部671の回動角をより大きくとることができ、信号線の断線を防止し保護することができる。また、搬送路671の回動範囲の規制は、これらセンサの信号線を保護するために有効である。なお、媒体検知センサは、遮光式に限らずメカニカルセンサでもよく、搬送路61の両端に配置する構成に限らず中央部または、一端に設けてもよい。
搬送路61は、ホッパー20の媒体繰り出し部21及び傾斜搬送路30に対して媒体2を受け取り又は送るように接受する一方、クリーニング媒体保持部110からクリーニング媒体114を受け取って傾斜搬送路30へ送り又はその反対に戻すように接受する搬送路である。この搬送路61は、媒体2の幅よりも若干大きい幅からなり、幅方向に対向して設けられた側板643,644により搬送される媒体2の幅方向が規制されている。また、搬送される媒体2の厚さ方向は、搬送路61の厚さ方向に媒体2の厚さよりも若干大きい寸法の隙間を有して対向して設けられた複数のガイド部材(例えば図4に示す符号604,605及び図5に示す符号606,607を参照)によって、ガイドされている。この厚さ方向に対向するガイド部材604〜607は、図4及び図5に示すように所定の短い幅からなるものが、前記幅方向の側板643,644に接合して設けられている。なお、幅方向の側板643,644及び厚さ方向のガイド部材604〜607のいずれにおいても、媒体2がスムーズに入り込むことができるように、端部(例えば図2における符号601,602及び図5における符号608,609を参照)が若干開口していることが好ましい。
搬送路61での媒体2の搬送や保持を行なう媒体搬送部671は、媒体2を上下から挟んで所定の方向に搬送する対向した搬送用のローラ(以下、対向ローラともいう)を有する。具体的には、媒体搬送部671は、図3に示すように、搬送路61の一方側の端部近傍に設けられた対向する一対のローラ62,62aと、搬送路61の他方側の端部近傍に設けられた対向する一対のローラ63,63aとで構成される。この媒体搬送部671は、第2の駆動源であるB駆動モータ150からの駆動力が伝達されることにより駆動する。対向ローラのうち、図3を正面視した場合の下側に位置するローラは駆動ローラ62,63であり、上側に位置するローラはパッドローラ62a,63aである。
駆動ローラ62,63は、図4に示すように、それぞれ駆動軸621,631固定されている。その駆動軸621,631はそれぞれプーリとタイミングベルトを介し、同期回転するように連動する。なお、図2〜図5に示すように、本実施の形態の駆動ローラ62,63はプーリを兼ねており、駆動ローラ62,63である各プーリに掛け渡されたベルト610の背面で媒体2の搬送が行われる。具体的には、第2の駆動源であるB駆動モータ150からの駆動力がベルト156によって伝動部材68(搬送駆動プーリとしての歯付きプーリ)に伝わり、その伝動部材68からベルト681を介してプーリ682に伝わって、駆動ローラ63に駆動力が伝わる。また、駆動ローラ62には、駆動ローラ63との間に掛け渡されたベルト610を介して駆動力が伝わる。なお、図3及び図4に示す符号611,612,613は、アイドラーであり、符号31,154は図8に示したプーリを表し、また、図4及び図5に示す符号683は、駆動ローラ63の駆動軸631の延長部としてのプーリ682の軸である。
駆動ローラ62,63の回転軸621,632は、側板643と中間地板645によって軸受けされている。なお、駆動ローラ62の回転軸621には、スペーサ622が設けられている。ここで、中間地板645は、図4に示すように、支柱633,614により、側板643に対して固定支持されている。さらに、中間地板645の外側の側板644は、支柱632,615により、側板643に対して固定支持されている。このように、側板643,644及び中間地板645は、支柱614,615,632,633により一体に支持された構造体となっており、その上に媒体搬送部671が構成されている。なお、ベルト610に対するアイドラー611は、側板643,644間に渡された別の支柱に回転可能に配置されている。これらの支柱は、搬送路61と干渉しない位置に配置されている。
図5は、図2に示す第2の媒体搬送方向変換装置60の搬送路61を上方から見たときの図であるが、駆動ローラ621,632等は省略している。図5に示すように、搬送路を上方から見ると、駆動ローラ621,632に対向する位置に、パッドローラ62a,63aが設けられている。このパッドローラ62a,63aは、それぞれ側板643に設立された支柱624,634にローラレバー625,635を介して支持されている。そして、支柱624,634に巻き回されたコイルバネ626,636によって、各パッドローラ62a,63aは、駆動ローラ62,63に対して付勢されている。
パッドローラ62a,63aは、レバー(図示しない)によって対向ローラ62,63上から離間させて固定できることが好ましい。そうすることにより、例えばメインテンス作業時には、媒体搬送部671を回動させた際に対向ローラ62,63間を渡る搬送用ベルト610により媒体2が移動してしまう「媒体連れ回り現象」を防止できるので、ジャム障害時等のメンテナンス作業が容易になるという利点がある。なお、本実施の形態では、伝動部材68からベルト681及びプーリ682を介して駆動ローラ63,62を駆動しているが、この駆動伝達をギア輪列によって行なうこともできる。その場合は、ギア輪列内のギアの噛合わせを一時的に外すように構成して、媒体連れ回りを防止するようにしてもよい。
なお、ギア輪列内のギアの噛合わせを一時的に外すように構成して、媒体連れ回りを防止した態様については、後に詳述する。
以上のような媒体搬送部671は、一対の側板643,644によって一体化され、支持軸69,69aを中心にして一体に回動する。支持軸69,69aは、それぞれ側板643,644の外側(媒体搬送部671とは反対側)に突出するように且つ搬送路61と干渉しないように固定設立されている。その固定位置としては、支持軸69,69aの延長線が搬送路61上であって、搬送路61の搬送方向のちょうど中間となる位置であることが好ましい。こうした位置に中心がくるように支持軸69,69aを設けることにより、媒体搬送部671を最も省スペースとなるように回動させることができる。なお、そうした固定位置は、通常、媒体搬送部671の略重心位置となるので、支持軸69,69aに偏心に基づく負荷応力が加わらないという利点もある。
媒体搬送部671及びこれを一体に支持する側板643,644の回動動作は、ベルト66を介して伝達される回動用モータ65からの駆動力が、支持軸69,69a及び側板643に固定された回動部材64(歯付きプーリ)に伝達されて行われる。なお、支持軸69,69a及び回動部材64により、第2の媒体搬送方向変換装置60の回動軸が構成されている。また、本実施の形態では、回動部材64を支持軸69の側板643側の基端部に設けているが、これを支持軸69の先端側に設けて、媒体搬送部671を駆動する伝動部材68を基端側に設けてもよい。このようにすれば、プーリ682の軸683等との干渉がなく、側板643,644を360°以上回動させることができる。このとき、回動部材64である歯付きプーリの径が、回動用モータ65内の伝達プーリ径の例えば2倍以上であれば、回動時の回動角度をより精度よく行なうことができる。なお、支持軸69、69aは、それぞれ支持板641,642に回転自在に支承されており、媒体搬送部671及び側板643,644の一体回動が可能とされている。
また、回動部材64の回動中心である支持軸69,69aと、上記伝動部材68である搬送駆動プーリの回動中心とを一致するように配すれば、媒体搬送部671を省スペースで回動させることができる。また、例えば上述のように回動部材64を部材間の干渉を避ける配置とすることにより、反転(180°)又は一回転(360°)の広い角度での回動が可能である。さらには、支持軸69,69aと伝動部材68それぞれの駆動源を独立して設けたので、媒体連れ回り現象をキャンセルする動作制御を簡易且つ容易にすることができる。その結果、媒体回動時におけるジャム障害を防止することができる。なお、媒体連れ回り現象とは、搬送方向を変換させるために支持軸69,69aと媒体搬送路61を一体に回動させる際に、伝動部材68に対する媒体搬送部671の相対回転によって、搬送ローラ63,62が駆動されて搬送路61内に一時保持した媒体2が、動いてしまうという現象をいう。
ここで、媒体連れ回り現象をキャンセルする第2の媒体搬送方向変換装置60の回動動作及びその制御について説明する。支持軸69に回転自在に取り付けられた搬送駆動プーリ68は、ベルト156の駆動が停止状態のとき回転が規制されて略固定状態となる。この状態で第2の媒体搬送方向変換装置60(側板643,644)を回動させると、搬送駆動プーリ68に対してベルト681及びプーリ682が相対的に回転することになり、対向ローラ62及び63が回転して搬送路61内で保持された媒体2(又はクリーニング媒体114)に対して搬送力が作用する。例えば図3において、側板643,644を反時計方向(左)に回動させると、ベルト681及びプーリ682は時計方向(右)に回動し、対向ローラ62,63も時計方向に回転して、媒体2を対向ローラ63の側に移動させる。反対に、側板643,644を時計方向(右)に回動させると、対向ローラ62,63は反時計方向(左)に回転して、媒体を対向ローラ62の側に移動させる。
このような媒体連れ回り現象は、第1の駆動源である回動用モータ65による回動部材64(歯付きプーリ)の回動に対応して、第2の駆動源であるB駆動モータ150が伝動部材(搬送駆動プーリ68)を回動部材64と同じ方向へ同期回動させるような動作制御によってキャンセルすることが好ましい。
即ち、回動用モータ65による第2の媒体搬送方向変換装置60(側板643,644)の回動に合わせて、上記の搬送力の作用をキャンセルする方向に媒体を搬送するようにB駆動モータ150を駆動して、搬送駆動プーリ68を駆動させる。言い換えれば、搬送駆動プーリ68を側板643,644の回動と同期させて同じ方向へ回動させる。
この場合、B駆動モータ150と回動用モータ65とをステップ角の等しいステッピングモータとし、回動部材64と伝動部材68のステップあたりの回動角を等しく設定することが好ましい。このような設定により、B駆動モータ150による回動部材64のステップ(回転)の進みに対応させて、回動用モータ65のステップ(回転)を等しいステップ数だけ戻すという単純な制御により、媒体連れ回り現象をキャンセルすることができる。ストッパーやクラッチ等の複雑な機械構成とする必要もない。
なお、上記形態において、回動部材64の伝動部材68との位置関係、及び伝動部材68の駆動経路等は特に図示の例に限定されず、本発明の趣旨の範囲内で種々の形態を採用することができる。また、伝動部材68からの駆動力の伝達や回動部材64への駆動力の伝達は、図示のようにプーリとベルトで行っているが、ギアを用いても構わない。
以上説明した本発明の媒体搬送方向変換装置60において、搬送路61の方向を、傾斜搬送路30と一致接続させるように回動させたり、媒体繰り出し部21と同じ水平方向に回動させたりすることができる。また、後述するように、クリーニング媒体保持部110がこの第2の媒体搬送方向変換装置60の上側に設けられる場合には、そのクリーニング媒体保持部110の搬送路111と一致させるように回動させクリーニング媒体114を受け取り、傾斜搬送路30の印字装置へ送り出す向きへ再び回動することができる。
第2の媒体搬送方向変換装置60を所定の角度回動させるための回動制御は各種の方法で行なうことができる。例えばステッピングモータとロータリーエンコーダとで回動制御してもよいし、光電センサ(遮光式センサ)と所定形状に作製した位置検知スリット(遮光板)とで回動制御してもよい。いずれの場合であっても、傾斜搬送路30と一致させる角度と、媒体繰り出し部21と同じ水平方向の、少なくとも2つの角度に精度良く回動させる。また、さらに他の角度に制御する場合には、その角度に精度良く回動させる。第2の媒体搬送方向変換装置60は、右回りに回転させることもできるし左回りに回転させることもできるので、現在の位置から次に回転移動する位置への回転角度が最も小さくなる方向に回転させることが好ましい。そうした回転動作により、媒体2の搬送時間を短縮することができる。さらに、この第2の媒体搬送方向変換装置60は、支持軸69,69aを中心にして回動するので、回動範囲を規制したり、回動の干渉を回避する駆動系の配置と組み合わせたりすることにより、360の回動角度をとることができる。
この第2の媒体搬送方向変換装置60は、(A)媒体繰り出し部21から搬送された媒体2を傾斜搬送路30に搬送する場合には、第2の媒体搬送方向変換装置60の搬送路61を媒体繰り出し部21と同じ水平にし、媒体繰り出し部21から搬送された媒体2を対向ローラ62,63により一旦保持し、次いで所定角度回転して傾斜搬送路30と同じ角度にし、次いで第2の媒体搬送方向変換装置60から対向ローラ62,63により媒体2を傾斜搬送路30に送り出す。また、(B)傾斜搬送路30から搬送された媒体2を再び傾斜搬送路30に搬送して媒体2に印字したり印字消去したりする場合には、第2の媒体搬送方向変換装置60の搬送路61を傾斜搬送路30の角度と一致させておき、傾斜搬送路30から搬送された媒体2を対向ローラ62,63により一旦保持し、第2の媒体搬送方向変換装置60を回動させることなく再び傾斜搬送路30に送り出す。さらに、(C)クリーニング媒体114で傾斜搬送路30(印字装置の搬送路)をクリーニングする場合は、クリーニング媒体保持部110の搬送路111に一致する角度に回動し、クリーニング媒体114を受け取り一旦保持し、傾斜搬送路30と同じ角度に回動し、そこへクリーニング媒体114を送り出す。
上記したように、対向ローラ62,63の駆動源は、第2の媒体搬送方向変換装置60を駆動する駆動源の回動用モータ65とは独立に設けられたB駆動モータ150である。回動用モータ65とB駆動モータ150とは独立に駆動されるので、第2の媒体搬送方向変換装置60の回動動作と対向ローラ62,63による媒体2の送り動作は、相互に干渉することがなく独立制御が可能である。このような構成によれば、上述のように連れ回り現象をキャンセルする簡易な制御により、ジャム障害を防止し、第2の媒体搬送方向変換装置60による媒体搬送方向の切替制御を簡易且つ確実に行なうことができる。
本実施の形態における第2の媒体搬送方向変換装置60の配置によれば、媒体繰り出し部21から繰り出された媒体2を傾斜搬送路30に搬送する場合に第2の媒体搬送方向変換装置60を回動させる角度が鋭角となっているので、迅速な搬送方向の切替ができる。
次に、第1の媒体搬送方向変換装置80についても説明するが、基本要素は上記第2の媒体搬送方向変換装置60と同じであるので、ここでは簡単に説明する。
第1の媒体搬送方向変換装置80は、図1に示すように、媒体排出口10と傾斜搬送路30との間に設けられ、媒体2を回動させてその搬送される方向を切替るように動作する。この第1の媒体搬送方向変換装置80は、媒体2を保持及び搬送する搬送路81と、搬送路81の両端近傍に設けられた対向ローラ82,83と、搬送路81の長手方向の中央位置を軸中心とする回動軸84とを少なくとも有している。なお、この第1の媒体搬送方向変換装置80は、第2の媒体搬送方向変換装置60と同様のユニット構成である。回動軸84は、第2の媒体搬送方向変換装置60における支持軸69,69a及び回動部材64(歯付きプーリ)と同様の部材により構成されている。
また、第1の媒体搬送方向変換装置80は、ワンタッチで着脱可能なように媒体処理装置1に取り付けられていることが好ましく、各部品や駆動機構に不具合が生じた場合には、ユニットとして交換することができるという利点がある。なお、搬送路81の回動軸84は、第1の媒体搬送方向変換装置80のユニット支持体の外側に突出するように側板に固定設立されて、搬送路81と干渉しないように設けられている。
回動軸84は、ベルト86を介して回動用モータ85で回動させることができ、搬送路81の方向を、傾斜搬送路30と一致接続させるように回動させたり、媒体排出口10に向かうように回動させたりすることができる。また、後述するように、廃棄媒体保管部50が媒体排出口10の下側に設けられる場合には、その廃棄媒体搬送部90の搬送路91と一致させるように回動させることができる。また、後述のように、磁気媒体リーダライタ120が第1の媒体搬送方向変換装置80の下方に設けられる場合には、その磁気媒体リーダライタ120の搬送路121と一致させるように回動させることができる。
第1の媒体搬送方向変換装置80を所定の角度回動させるための回動制御は、各種の方法で行なうことができる。例えばステッピングモータとロータリーエンコーダとで回動制御してもよいし、光電センサ(遮光式センサ)と所定形状に作製した位置検知スリット(遮光板)とで回動制御してもよい。いずれの場合であっても、傾斜搬送路30と一致させる角度と、媒体排出口10に向かう搬送路に一致させる角度の、少なくとも2つの角度に精度良く回動させる。また、さらに複数の角度に制御する場合には、それぞれの角度に精度良く回動させる。第1の媒体搬送方向変換装置80は、右回りに回転させることもできるし左回りに回転させることもできるので、現在の位置から次に回転移動する位置への回転角度が最も小さくなる方向に回転させることが好ましい。そうした回転動作により、媒体2の搬送時間を短縮することができる。さらに、この第1の媒体搬送方向変換装置80は、回動軸84を中心にして回動するので、回動角度を少なくとも180°以上(360°も可能である)に大きくとることができる。
この第1の媒体搬送方向変換装置80は、(A)傾斜搬送路30から搬送された媒体2を媒体排出口10に搬送する場合には、第1の媒体搬送方向変換装置80の搬送路81を傾斜搬送路30と同じ角度に傾斜させておき、傾斜搬送路30から搬送された媒体2を対向ローラ82,83により一旦保持し、次いで所定角度回転して媒体排出口10側の搬送路101と一致させ、次いで第1の媒体搬送方向変換装置80から対向ローラ82,83により媒体2を送り出す。また、(B)媒体排出口10から搬送された媒体2を傾斜搬送路30に搬送する場合には、第1の媒体搬送方向変換装置80の搬送路81を媒体排出口10側の搬送路101と一致させておき、媒体排出口10から搬送された媒体2を対向ローラ82,83により一旦保持し、次いで所定角度回転して傾斜搬送路30の角度と一致させ、次いで第1の媒体搬送方向変換装置80から媒体2を送り出す。さらに、(C)廃棄媒体搬送部90や磁気媒体リーダライタ120が設けられている場合は、これらの搬送路91,121に対して一致する角度に回動され、媒体2の受け渡しを行なう。
ここで、対向ローラ82,83の駆動源は、第1の媒体搬送方向変換装置80を駆動する駆動源の回動用モータ85とは独立に設けられたA駆動モータ140(詳細は後述する)である。回動用モータ85とA駆動モータ140とは独立に駆動されるので、第1の媒体搬送方向変換装置80の回動動作と対向ローラ82,83による媒体2の送り動作は相互に干渉することなく独立に制御可能である。このような構成によれば、第2の媒体搬送方向変換装置60と同様に、連れ回り現象をキャンセルする簡易な制御により、ジャム障害を防止し、第1の媒体搬送方向変換装置80による媒体搬送方向の切替制御が簡易且つ確実に行なうことができる。
本実施の形態における第1の媒体搬送方向変換装置80の配置によれば、媒体排出口10から搬送された媒体2を傾斜搬送路30に搬送する場合に第1の媒体搬送方向変換装置80を回動させる角度が、媒体排出口10から搬送された媒体2を廃棄媒体保管部50や磁気媒体リーダライタ120に搬送する場合に第1の媒体搬送方向変換装置80を回動する角度に比べて小さいので、媒体2の処理の迅速化に寄与できる。
次に、媒体搬送方向変換装置を所定の角度回動させるための回動制御について説明する。図6及び図7は、光電センサ(遮光式センサ)と所定形状に作製した位置検知スリット(遮光板)とで回動制御する場合の例である。図6は第2の媒体搬送方向変換装置60の場合の例である。この実施の形態では、位置検知スリットとして、複数の回転位置決め用スリットとホームスリットとを用いる。
具体的には、搬送方向に対応した複数(図6では2箇所)の位置に設けられた回転位置決め用スリット661、662と、その回転位置決め用スリット661,662による遮光状態を検知する位置検知センサ(PS)652と、第2の媒体搬送方向変換装置60の初期位置において遮光状態を検知するホームスリット663と、そのホームスリット663に対応したホームポジションセンサ(HS)651とを有することが好ましい。こうしたスリット661,662,663と、スリットに対応して回転位置と初期位置と初期位置を検知するセンサ652,663とにより、一対の側板643,644間に設けられた媒体搬送部671を、初期位置を含めた所定の方向に精度よく回動させることができる。
図6において、回転位置決め用スリット661,662は、媒体搬送部671と一体に回動するように設けられていればよく、例えば媒体搬送の邪魔にならないように側板643に設けてもよいし、図6に示すような取り付け盤664を介して支持軸69に一体固定してもよい。一方、回転位置決め用スリット661,662に対応した位置検知センサ(PS)652は、媒体処理装置1の本体フレーム又は支持板641の所定の位置に必要に応じて取付部材を介して固定される。
また、初期位置検知用のホームスリット663も、媒体搬送部671と一体に回動するように設けられ、上記のスリット661,662と同様、取り付け盤664に設けることもできる。なお、回転位置決め用スリット661,662とホームスリット663との位置関係は固定されており、その位置は回動中心(支軸69)の軸線方向において位置(位相)を異ならせている。一方、このホームスリット663に対応したホームポジションセンサ(HS)651も媒体処理装置1の本体フレーム又は支持板641の所定の位置(位置検知センサ(PS)652とは異なる軸線方向の位置)に必要に応じて取付部材を介して固定される(図4を参照)。
次に、このような第2の媒体搬送方向変換装置60の動作の概略を説明する。図6及び図3において、ホームポジションセンサ(HS)651がホームスリット663を検知している位置は、搬送路61が水平位置にあるものとして説明する。上位からの制御指示により、第2の媒体搬送方向変換装置60の搬送路61を水平位置から傾斜搬送路30と同じ角度にする場合には、上位からの指示により図6で左回りに回動するとともに、センサ652が1つ目のスリット661を検知した場合に停止する。これにより、媒体搬送部671は角度αだけ左回りに回動して傾斜搬送路30と同じ角度になり、その傾斜搬送路30との間で媒体2の接受を行なうことができる。一方、上位からの制御指示により、第2の媒体搬送方向変換装置60の搬送路61を水平位置からクリーニング媒体保持部110と同じ角度にする場合には、上位からの指示により左回りに回動するとともに、センサ652が2つ目のスリット662を検知した場合に停止する。これにより、媒体搬送部671は角度βだけ左回りに回動してクリーニング媒体保持部110と同じ角度になり、そのクリーニング媒体保持部110との間で媒体の接受を行なうことができる。このように所望の搬送方向に応じた変換角度に回転位置決め用スリット661,662を配置することにより第2の媒体搬送方向変換装置60の正確な回転位置の設定と同時に回動位置の保証(位置確認とステッピングモータ等の駆動源の動作確認)が可能となる。
図7は、第1の媒体搬送方向変換装置80における、搬送方向を変化させたときのスリットの位置関係の説明図である。第1の媒体搬送方向変換装置80の駆動システムは後述するが、この場合においても、搬送方向に対応した複数(図7では3箇所)の位置に設けられた回転位置決め用スリットa,b,cと、その回転位置決め用スリットa,b,cに対応した位置検知センサPSと、初期状態の位置検知用に設けられたホームスリット(ハッチングした部材)と、そのホームスリットに対応したホームポジションセンサHSとを有している。なお、これら位置決め用スリットとホームスリットの配置は、第2の媒体搬送方向変換装置60と同様に、回動中心(支軸89)の軸線方向において位置(位相)を異ならせている。
この図7においても、上位からの制御指示により、第1の媒体搬送方向変換装置80の搬送路を水平位置(ホーム位置)から傾斜搬送路30と同じ角度にする場合には、上位からの指示により左回りに回動するとともに、センサPSが1つ目のスリットaを検知した場合に停止する。これにより、媒体搬送部は(B)の位置まで左回りに回動して傾斜搬送路30と同じ角度になり、その傾斜搬送路30との間で媒体2の接受を行なうことができる。一方、上位からの制御指示により、第1の媒体搬送方向変換装置80の搬送路を水平位置(ホーム位置)から廃棄媒体搬送部90と同じ角度にする場合には、上位からの指示により右回りに回動するとともに、センサPSが1つ目のスリットbを検知した場合に停止する。これにより、媒体搬送部は(C)の位置まで右回りに回動して廃棄媒体搬送部90と同じ角度になり、その廃棄媒体搬送部90との間で媒体2の接受を行なうことができる。なお、ホーム位置においては、非接触通信部100との間で媒体の搬送が可能である。
さらに、この第1の媒体搬送方向変換装置80は、例えば使用者が媒体を表裏逆にして媒体処理装置内に挿入した場合も対応でき、上位からの制御指示により、第1の媒体搬送方向変換装置80の搬送路を右回りに回動するとともに、センサPSが2つ目のスリットcを検知した場合に停止する。これにより、媒体搬送部は(D)の位置まで右回りに回動して傾斜搬送路30と同じ角度になり、表裏逆で挿入された媒体を正常な位置に戻して印字装置等を有する傾斜搬送路30内に送ることができる。なお、例えば磁気媒体リーダライタ120が第1の媒体搬送方向変換装置80の下に設けられている場合には、さらに位置決め用スリットを加えることにより搬送路の角度を正確にコントロールすることができる。
以上説明したように、本発明の媒体搬送方向変換装置によれば、反転又は一回転という広い角度での回動が可能であるとともに、省スペースで回動させることができ、さらには、回動角度の自由な設定を容易に行なうことができる。ひいては、媒体処理装置内において、角度をなして屈折又は分岐して各種媒体を搬送する搬送路上に配置されて各種媒体に応じた情報の書き込み又は読み取りをする情報書き込み処理装置に対して媒体を振り分けるため、媒体の搬送方向を自在に変換することができる媒体搬送方向変換装置を提供することができる。
次に、媒体処理装置1を構成する他の構成部材について説明する。
媒体処理装置1には、廃棄媒体保管部50や廃棄媒体搬送部90を設けることができる。廃棄媒体保管部50は、図1においては媒体排出口10の内側下方に設けられ、廃棄すべき使用済み媒体を保管するカセット部材であり、「廃棄媒体保管カセット」ということもできる。
廃棄媒体保管部50は、上記のホッパーカセット25と同様、アルミニウム合金製又はステンレス鋼製の枠体であり、媒体処理装置1の一部をなすユニットとして着脱可能に設けられている。この廃棄媒体保管部50内には、一定期間使用後の媒体で、設定された廃棄時期に至った媒体が投入され廃棄のために収容される。廃棄される媒体2は、図1に示すように、廃棄媒体搬送部90から廃棄媒体保管部50に対して斜めの状態で投入されるので、廃棄媒体保管部50の底面51もほぼ同じ角度の傾斜形状であることが好ましい。なお、廃棄媒体保管部50内には、廃棄媒体が投入されたことを確認するセンサ52が設けられていることが好ましい。センサ52は、図1に示すような機械式のセンサであってもよいし、光学式のセンサであってもよい。
廃棄媒体搬送部90は、第1の媒体搬送方向変換装置80と廃棄媒体保管部50との間に設けられ、第1の媒体搬送方向変換装置80から使用済みの媒体を受け取って、廃棄媒体保管部50に搬送するための部材である。廃棄媒体搬送部90が有する搬送手段は、情報書き込み装置70内に設けられているような駆動モータにより駆動する対向ローラ92である。対向ローラ92は、後述するA駆動モータ140により駆動される。その駆動力の伝達は、対向ローラ92の一方のローラに設けた電磁クラッチ94により駆動切断及び接続がなされる。
電磁クラッチ94の動作即ち対向ローラ92の駆動タイミングの制御は、搬送路91の両端に設けられた媒体2の位置を検知するセンサ95、96が検知した媒体2の位置に基づき行われるようになっている。即ち、センサ96が媒体2を検知した場合に第1の媒体搬送方向変換装置80から搬送路91への取り込みが開始され、センサ95及び96の両方が検知した場合に搬送路91内の媒体2の存在(一時保留)が検知され、センサ96のみによる検知から完全に検知されなくなった場合に廃棄媒体保管部50への媒体2の投入が判断される。なお、センサ95は媒体2のレバーへの接触を検知するレバー式検知センサであり、センサ96は媒体2による遮光を検知するフォトセンサであることが好ましいが、その他の方法で検知するセンサであってもよい。
また、その廃棄媒体搬送部90の対向ローラ92から廃棄媒体保管部50側には、除電ブラシ93が設けられていることが好ましい。その除電ブラシ93は、廃棄媒体の静電気を除去して、廃棄媒体が廃棄媒体保管部50内の壁面に張り付いたり縦になってしまうのを防ぐことができるので、廃棄媒体を整然と積み重ねることができる。さらにレバー式検知センサ95のレバーは廃棄媒体の後端を上方から下方に押すように機能するので、除電された廃棄媒体を廃棄媒体保管部50内の壁面に張り付いたり縦方向に立たせること無く整然と重ねることができるように作用する。
非接触通信部100は、媒体排出口10の内側に設けられ、所定情報の読み取り、書き込み又は書換えのために媒体2に対して非接触の通信処理を行なう部材である。非接触通信部100が設けられていることにより、非接触ICカードに対しても適用することができる。この非接触通信部100は、媒体排出口10から挿入された媒体2を搬送する搬送路101を有し、さらに、その搬送路101の長手方向の両端近傍には媒体を挟んで搬送する対向ローラ102,103が設けられている。搬送路101の中央の一面側(図1において上側)には、非接触での通信を行なうアンテナ部104が設けられている。このアンテナ部104は、非接触ICカードとの間で情報通信を行なうことができ、非接触ICカードに情報の送受を行なう。なお、図1に示すように、必要に応じて、媒体2の裏表を検知し印字面を確認したり、媒体2の有無、方向を検知しアンテナ部104との通信の信頼性を確保したりするためにセンサ105が設けられていてもよい。
磁気媒体リーダライタ120は、第1の媒体搬送方向変換装置80の下に設けられていてもよい。この磁気媒体リーダライタ120は、媒体2が有する所定情報が磁気データである場合に、第1の媒体搬送方向変換装置80から媒体2を受け取って磁気データの読み取り又は書き込み行なう。また、この磁気媒体リーダライタ120を第1の媒体搬送方向変換装置80の下に設ける代わりに、第2の媒体搬送方向変換装置60の上に設けてもよい。磁気媒体リーダライタ120は、第1の媒体搬送方向変換装置80又は第2の媒体搬送方向変換装置60から媒体2を受け取る搬送路121と、磁気データを媒体2から読み取る磁気ヘッド122を有している。さらに、その磁気媒体リーダライタ120には、媒体2を搬送する対向ローラ123が設けられている。対向ローラ123は、後述するA駆動モータ140により駆動される。その駆動力の伝達は、対向ローラ123の一方のローラに設けた電磁クラッチ124により駆動切断及び接続がなされる。
クリーニング媒体保持部110は、図1に示すように、第2の媒体搬送方向変換装置60の上方に設けられていてもよい。クリーニング媒体保持部110は、情報書き込み装置が有する印字ヘッド71や消去ヘッド72をクリーニングするためのクリーニング媒体114を収容し、そのクリーニング媒体114を第2の媒体搬送方向変換装置60との間で授受可能に保持する。そして、クリーニング媒体114は、第2の媒体搬送方向変換装置60から情報書き込み装置70へ搬送され、印字ヘッド71や消去ヘッド72のクリーニングを行なう。
クリーニング媒体保持部110は、第2の媒体搬送方向変換装置60との間でクリーニング媒体114を接受する搬送路111と、クリーニング媒体114を搬送する対向ローラ112が設けられている。対向ローラ112は、後述するB駆動モータ150により駆動される。その駆動力の伝達は、対向ローラ112の一方のローラに設けた電磁クラッチ113により駆動切断及び接続がなされる。搬送路111の両端にはセンサ115,116が設けられており、クリーニング媒体114の保持及び送り出しの状況が検知及び制御される。こうしたクリーニング媒体保持部110が収容するクリーニング媒体114により、情報書き込み装置70の印字ヘッド71や消去ヘッド72を定期的又は任意のタイミングでクリーニングすることができる。
電源部130は、図1に示すように、第1の媒体搬送方向変換装置80の下方及び情報書き込み装置70の下方のスペースに設けることができる。この電源部130は、ユニットとしてワンタッチで着脱可能なように媒体処理装置1に取り付けられていることが好ましい。
(駆動システム)
図8は、本発明の媒体搬送方向変換装置を有した媒体処理装置における駆動方式の実施の形態を示す透視側面図である。媒体処理装置1は、図8に示すように、主に2つの駆動モータ(A駆動モータ140とB駆動モータ150)により駆動される。
A駆動モータ140は、複数のベルトやプーリが組み合わされて、例えば図8に示すように、一時保留部である廃棄媒体搬送部90、第1の媒体搬送方向変換装置80、及び非接触通信部100の各搬送用の対向ローラを駆動して、媒体の搬送を行なう。
廃棄媒体搬送部90における媒体2の搬送を行なうA駆動モータ140の駆動力は、ベルト143を介してプーリ141に伝わる。さらに、プーリ141の回転駆動は、それに連接されたギア142により廃棄媒体搬送部90の対向ローラ92に伝達されこれを駆動させる。そして、対向ローラ92への駆動力伝達が電磁クラッチ94によって接続(電磁クラッチ94がON状態)又は切断(電磁クラッチ94がOFF状態)されることにより、廃棄すべき媒体を一時的に保持する一時保留部である廃棄媒体搬送部90における媒体の保持、第1の媒体搬送方向変換装置80への媒体の戻し、又は、廃棄媒体保管部50への媒体の送り等が行われる。
また、プーリ141にかけられた他のベルト144は、第1の媒体搬送方向変換装置80の回動軸84と同軸に回転自在に取り付けられた搬送駆動プーリ145と非接触通信部100の搬送用の対向ローラ103と同軸配置したプーリに掛け渡されている。
そして、非接触通信部100を駆動するA駆動モータ140の駆動力は、対向ローラ103と同軸配置したプーリにより対向ローラ103、及び対向ローラ103とベルトにより連結されて同期回転する対向ローラ102に伝達される。非接触通信部100は、対向ローラ102及び103によって媒体2を第1の媒体搬送方向変換装置80側に搬送したり、媒体排出口10側に搬送したりする。
次に、プーリ141にかけられたベルト144により第1の媒体搬送方向変換装置80の搬送駆動プーリ145に伝達されたA駆動モータ140の駆動力は、第1の媒体搬送方向変換装置80における媒体2の搬送を行なう。即ち、搬送駆動プーリ145の回転は、ギア146を介して対向ローラ82を回転させ、さらにその対向ローラ83は、ベルトとプーリを介して他の対向ローラ83を回転させる。このように第1の媒体搬送方向変換装置80は、A駆動モータ140の駆動力によって、第1の媒体搬送方向変換装置80の対向ローラ82,83を駆動して、媒体2を第1の媒体搬送方向変換装置80内に保持したり、印字装置70、非接触通信部100及び廃棄媒体保管部50との間で媒体の搬送等を行なう。なお、搬送駆動プーリ145の回転は、ギア146に代えてベルトとプーリによって、対向ローラ83へ伝達するようにしてもよい。
さらに、第1の媒体搬送方向変換装置80の回動は、その回動軸84にベルト86を介して駆動力を送る回動用モータ85により行われる。このとき、回動軸84と同軸に回転自在に取り付けられた搬送駆動プーリ145は、図8に示すように、対向ローラ82にギア146で連結しているとともにベルト144により回転が規制されているので、第1の媒体搬送方向変換装置80を回動させると、搬送駆動プーリ145に対してギア146が相対的に回転して対向ローラ82及び83が回転して搬送路81内で保持された媒体2に対して搬送力が作用する媒体連れ回り現象が発生する。そこで、回動用モータ85による第1の媒体搬送方向変換装置80の回動に合わせて、上記の搬送力の作用をキャンセルする方向に媒体2を搬送するようにA駆動モータ140が搬送駆動プーリ145を駆動する。この場合、A駆動モータ140と回動用モータ85とをステップ角の等しいステッピングモータとし、搬送駆動プーリ145と回動軸84のステップあたりの回転角を一致させることが好ましい。この構成より、簡易な制御により媒体連れ回り現象をキャンセルすることができる。
B駆動モータ150もA駆動モータ140と同様、複数のベルトやプーリが組み合わされて、例えば図8に示すように、印字装置70、第2の媒体搬送方向変換装置60、及びクリーニング媒体保持部110の各搬送用の対向ローラを駆動して、媒体の搬送を行なう。
具体的には、B駆動モータ150の駆動力は、ベルト153を介してプーリ151,152に伝わり、そのプーリ151,152が備えるプーリに同軸状に連接したプラテンローラ34,34を回転させるとともに、そのプラテンローラ34,34からベルトを介して媒体搬送用の対向ローラ31,32,33を回転させる。こうした回転により、印字装置70内での媒体の搬送等が行われる。
次に、B駆動モータ150の駆動力は、媒体搬送用の対向ローラ31と同軸状に連接したプーリにかけられた他のベルト156を介してクリーニング媒体保持部110のプーリ154に伝わり、そのプーリ154に連接されたギア157によりクリーニング媒体保持部110の対向ローラ112を駆動させる。そして、電磁クラッチ113が切断(OFF状態)されている場合は、クリーニング媒体保持部110におけるクリーニング媒体の保持がなされ、電磁クラッチ113が接続(ON状態)されている場合には、B駆動モータ150の回転に応じて、第2の媒体搬送方向変換装置60との間でのクリーニング媒体114の授受が行われる。
さらに、B駆動モータ150の駆動力は、媒体搬送用の対向ローラ31と同軸状に連接したプーリにかけられた他のベルト156を介して、第2の媒体搬送方向変換装置60の搬送駆動プーリ68を回転させる。この搬送駆動プーリ68は、図示しないギアやベルトとプーリを介して対向ローラ63を回転させ、さらにその対向ローラ63は、図示しないベルトとプーリを介して他の対向ローラ62を回転させる。このように、B駆動モータ150の駆動力は、第2の媒体搬送方向変換装置60の対向ローラ62,63を駆動して、媒体2及びクリーニング媒体114を第2の媒体搬送方向変換装置60内に保持したり、印字装置70との間でやり取りしたり、新規発行される媒体2を媒体繰り出し部21から受け取ったりする。また、クリーニング媒体保持部110との間でのクリーニング媒体114の授受も行われる。
なお、第2の媒体搬送方向変換装置60の支持軸69,69a(側板643,644)の回動は、その支持軸69,69aに固定された回動部材64にベルトを介して駆動力を送る回動用モータ65により行われる。このとき、支持軸69,69aと同軸に回転自在に取り付けられた搬送駆動プーリ68はベルト156により回転が規制されているので、第2の媒体搬送方向変換装置60を回動させると、搬送駆動プーリ68に対する相対回転により対向ローラ62及び63が回転して搬送路61内で保持された媒体2(又はクリーニング媒体114)に対して搬送力が作用する媒体連れ回り現象が発生する。そこで、回動用モータ65による第2の媒体搬送方向変換装置60の回動に合わせて、上記の搬送力の作用をキャンセルする方向に媒体2(又はクリーニング媒体114)を搬送するようにB駆動モータ150が搬送駆動プーリ68を駆動することが好ましい。この場合、B駆動モータ150と回動用モータ65とをステップ角の等しいステッピングモータとし、搬送駆動プーリ68と回動部材64(側板643,644)のステップあたりの回転角を一致させることが好ましい。この構成より、簡易な制御により媒体連れ回り現象をキャンセルすることができる。
以上のように、媒体2の搬送用の駆動モータを用いることにより、媒体の更新発行のように、古い媒体と新しい媒体とを装置内で独立に搬送することができるので、処理時間を短縮することができるとともに、ベルトやプーリ等の削減も可能になるので、小型化と低コストかを実現できる。なお、図1及び図8においては、A駆動モータ140とB駆動モータ150の2つを主に用いているが、一つの駆動モータで構成してもよい。なお、一つの駆動モータで構成する場合は、機械的なクラッチ等で設けることが好ましい。
次に、新規発行の動作について説明する。媒体2の新規発行は、ホッパー20内に積層された媒体2のうち最低位の媒体2aを押出部材221の爪部にて繰り出して、第2の媒体搬送方向変換装置60内に搬送した後、第2の媒体搬送方向変換装置60を傾斜搬送路30と同じ角度に回動させて媒体の搬送方向を切替る。次に、第2の媒体搬送方向変換装置60から傾斜搬送路30上に配置された印字装置70内に搬送し、印字装置70が備える印字ヘッド71により媒体表面に所定の情報が印字される。このときの印字ヘッド71は、印字ヘッド駆動モータ74により媒体表面に接触するまで下降し、媒体表面に接触した状態で印字する。印字が終了した後は、印字ヘッド駆動モータ74により印字ヘッド71を元の位置に上昇する。その後、媒体2は、傾斜搬送路30と同じ角度に回動した状態で待機している第1の媒体搬送方向変換装置80に搬送される。媒体2を受け取った第1の媒体搬送方向変換装置80は、媒体2を非接触通信部100に搬送するために水平方向になるまで回動し、その後、非接触通信部100に搬送する。この非接触通信部100においては、アンテナ部104と媒体2との間の非接触通信によって媒体2に内蔵されているICに所定の情報が格納記憶され、最後に、媒体排出口10に媒体2が送られて利用者の手に渡る。なお、必要により、非接触通信部100による処理の前に、第1の媒体搬送方向変換装置80から一端分岐して、磁気媒体リーダライタ120による磁気データの記録処理が行なわれてもよい。
次に、書き換え発行の動作について説明する。書き換え発行は、媒体排出口10に使用中の媒体2が挿入されると、媒体排出口10が備える幅センサ(図示しない)がカード状媒体2を検知し、シャッタ11を開けて非接触通信部100に搬送される。非接触通信部100では、媒体2に内蔵されているICとの間で所定の情報の読み取り及び書き込みが非接触通信により実行され、その後非接触通信部100と同じ水平に保持された第1の媒体搬送方向変換装置80に搬送される。媒体2を受け取った第1の媒体搬送方向変換装置80は、傾斜搬送路30と同じ角度まで回動した後、印字装置70内に媒体2を搬送し、その後、傾斜搬送路30と同じ角度まで回動させておいた第2の媒体搬送方向変換装置60まで媒体2を搬送する。その第2の媒体搬送方向変換装置60から、装置上位からの指示で再度印字装置70内に搬送し、先ず、消去ヘッド72で今までの印字データを消去し、引き続いて、印字ヘッド71で新しい情報を印字する。印字した後は、第1の媒体搬送方向変換装置80、非接触通信部100を経由して、媒体排出口10から利用者の手に返却される。なお、この場合も、必要により、非接触通信部100による処理の後に、磁気媒体リーダライタ120による磁気データの記録処理が行なわれてもよい。
次に、更新発行の動作について説明する。更新発行(使用可能期限となった媒体を廃棄し、新たに媒体を発行することをいう)は、媒体排出口10に使用中の媒体2が挿入されると、媒体排出口10が備える幅センサがカード状媒体2を検知し、シャッタ11を開けて非接触通信部100に搬送される。非接触通信部100では、媒体2に対する非接触通信による所定の情報の読み取りみが実行され、この通信結果に基づき更新発行とすることが決定されると、更新のため読み取られた所定の情報は上位装置等に一時保存される。そして、更新される媒体2は非接触通信部100と同じ水平に保持された第1の媒体搬送方向変換装置80に搬送される。第1の媒体搬送方向変換装置80に取り込まれた媒体2は、傾斜搬送路30には搬送されず、第1の媒体搬送方向変換装置80を逆回転により、斜め下方に配置された一時保留部としての廃棄媒体搬送部90に搬送され、廃棄処理待ちの媒体として保持される。次に、上記の新規発行と同じ手順で新しい媒体2が発行される。この新しい媒体2が第1の媒体搬送方向変換装置80を経由して、非接触通信部100に搬送されそこで、上位装置等に一時保存された情報が新しい媒体2に対して書き込まれる。そして、この書き込みが確認され、又は媒体排出口10から利用者の手に新たな媒体2が渡ったことが確認された時点で、一時保留部である廃棄媒体搬送部90に保持された廃棄処理待ちの使用済み媒体2は、更にその斜め下方の廃棄媒体保管部50に除電ブラシ93で除電されて投入される。
次に、媒体廃棄の動作について説明する。廃棄媒体保管部50への媒体2の投入(廃棄)は、廃棄媒体搬送部90を経由して行われる。媒体排出口10から投入された媒体2は、すぐ後ろ(装置1の内部側)に配置された非接触通信部100により、又は、第1の媒体搬送方向変換装置80を経由して送られた磁気媒体リーダライタ120により、情報が読み取られて廃棄媒体であるかが判断される。非接触通信部100により廃棄媒体であることが読み取られた場合、その廃棄媒体は、第1の媒体搬送方向変換装置80に搬送され、そこで保持されつつ廃棄媒体搬送部90の角度と同じになるまで第1の媒体搬送方向変換装置80が回転する。次いで、第1の媒体搬送方向変換装置80から廃棄媒体搬送部90に廃棄媒体が搬送される。一方、磁気媒体リーダライタ100により廃棄媒体であることが読み取られた場合、その廃棄媒体は、第1の媒体搬送方向変換装置80に戻され、そこで保持されつつ廃棄媒体搬送部90の角度と同じになるまで第1の媒体搬送方向変換装置80が回転する。次いで、第1の媒体搬送方向変換装置80から廃棄媒体搬送部90に廃棄媒体が搬送される。
このとき、廃棄媒体搬送部90に搬送された廃棄媒体は、そこで保持されずに廃棄媒体保管部50に投入されてもよいが、好ましくは新規の媒体を発行するまで、すなわち新規媒体がホッパー20から発行され、印字装置70で印字され、非接触通信部100で情報通信が完了したのを確認するまで保持(一時保留)されることが好ましい。そして、新規媒体への情報通信が完了したのを確認し、新規媒体2が発行されてから、廃棄媒体を、一時保留部としての廃棄媒体搬送部90から廃棄媒体保管部50に投入することが好ましい。こうした方式をとることにより、新規媒体2を更新発行する場合に、情報書き込み等を確実に行ったのを確認した後に今までの非接触ICカードを廃棄することができ、その結果、非接触ICカードの更新発行においても、迅速且つ確実な処理を行なうことができる。
以上説明したように、媒体搬送方向変換装置を備えた媒体処理装置によれば、媒体の搬送方向を容易かつ精度よく変換させることができる。また、装置全体として省スペース化を実現できるとともに、余裕のある空間に他の処理装置を配置することができるので、そうした処理装置の方向に容易且つ精度よく搬送方向を回動位置決め変換させることができ、結果として、磁気カードやICカード等の新規発行や更新発行、さらには書き換え発行を行なうことができる、省スペース対応の媒体処理装置とすることができる。
なお、上述の実施の形態の媒体搬送方向変換装置においては、支持軸に設けた回動部材にベルトにより駆動して側板及び媒体搬送部を回動させたが、これに代え、側板を円板形又はギア形状に形成して、その外周から直接に側板に回転駆動力を伝達する構成としてもよい。
(他の実施の形態)
次に、本発明の媒体搬送方向変換装置及びその媒体搬送方向変換装置を備える媒体処理装置の他の実施の形態について説明する。
図9は、本発明に係る媒体搬送方向変換装置の他の実施の形態を示す正面図である。図10は、図9に示す媒体搬送方向変換装置の媒体搬送路を説明するための透視正面図であり、図11は、図9に示す媒体搬送方向変換装置を下方から見たときの図であり、図12は、図9に示す媒体搬送方向変換装置を上方から見たときの図である。また、図13は、図9に示す媒体搬送方向変換装置が備えるクラッチ手段とスリット板の駆動時の位置関係を示す説明図であり、図14は、図9に示す媒体搬送方向変換装置が備えるクラッチ手段とスリット板の保守時の位置関係を示す説明図である。また、図15は、図9に示す媒体搬送方向変換装置が備えるクラッチ手段とスリット板を揺動させる、揺動ツマミ及び切替レバー等の説明図であり、図16及び図17は、図9に示す媒体搬送方向変換装置が備える規制手段とロック手段の構成部材の説明図であり、図18は、図9に示す媒体搬送方向変換装置の回動範囲を規制するストッパー構造の説明図である。なお、以下で説明する図9〜図18に示す媒体搬送方向変換装置800は、上述した第1,第2の媒体搬送方向変換装置のうち、第1の媒体搬送方向変換装置80を用いて説明する。
第1の媒体搬送方向変換装置800は、図9等に示すように、媒体搬送部810を内部に備えた2つの成形体からなる回動体802を備えている。この回動体802は、図1に示す非接触通信部100の媒体搬送路101又は印字装置70の傾斜搬送路30から媒体2を受け取って送り出す媒体搬送部810を内部に備えている。さらに、この媒体搬送方向変換装置800は、回動体802を外側から回動可能に支持する支持軸803と、回動体802を回動させる第1の駆動源である回動用モータ85と、その回動用モータ85からの駆動力を受けて回動体802を回動させる回動部材804と、支持軸803の軸心と回動体802の回動中心とが一致する位置に設けられているとともに、媒体搬送部810に媒体2を搬送するための駆動力を伝達する伝動部材808と、回動体802とは独立に設けられるとともに、伝動部材808を駆動する第2の駆動源であるA駆動モータ140と、を有している。なお、図9中、符号809は媒体2の有無を検知する光学センサである。
回動体802は、図11及び図12に示すように、媒体搬送部810を有し、支持軸803を回動中心軸として回動自在に支持されている。回動体802の構成材料は特に制限はないが、樹脂材料で成形されていることが好ましく、例えば図11に示しように、第1成形体802Aと第2成形体802Bとで構成できる。この第1成形体802Aと第2成形体802Bとは、雄雌形状の端面を嵌合等することにより一体化させることができる。樹脂材料で形成した回動体802は、著しい軽量化を実現できるので、迅速な回動動作を実現できる。また、その樹脂材料に導電性材料を混ぜた導電性の樹脂材料で回動体を成形すれば、静電気の発生を防ぐことができ、駆動モータ等の電気手段から発生するノイズを遮蔽できるという効果がある。
回動体802が成形体で構成されている場合、その内部は空洞になっており、その空洞内には、図11及び図12に示すように、媒体搬送部810を構成する搬送ローラ等(図4及び図5に示したものと同様の構成部材)が設けられている。具体的には、図10〜図12に示すように、回動体802内には、媒体2を保持及び搬送する媒体搬送部810と、媒体搬送部810の一方の側の端部近傍に設けられた対向する一対のローラ857,861と、媒体搬送部810の他方の側の端部近傍に設けられた対向する一対のローラ858,862とが設けられている。対向ローラのうち、図10を正面視した場合の下側に位置するローラ857,858は駆動源に直結した搬送用ローラであり、上側に位置するローラ861,862は駆動源に直結しないパッドローラである。また、回動体802には、図9に示すように、媒体2を媒体搬送部810に沿って移動させるようにガイドするスリットガイド843が設けられている。また、回動体802を上方又は下方から見たとき、図11及び図12に示すように、媒体搬送部810の出入口には、媒体2を媒体搬送部810に導きやすくするための導入ガイド846が設けられている。
回動体802の回動動作は、回動用モータ85によって行われる。具体的には、図10及び図12に示すように、プーリ851、ベルト86、回動部材(プーリ)804を経由して、回動用モータ85の動力が回動体802に伝動し、回動体802が回動する。なお、図12中の符号852は、回動体802の位置を手動で調整するツマミであり、そのツマミ852は、例えば回動体802を任意の位置に動かそうとする場合に利用する。
媒体搬送部810は、媒体2を上下から挟んで所定の方向に搬送するが、その搬送は、図10に示すように、媒体搬送部810の一方側の端部近傍に設けられた対向する一対のローラ857,861と、媒体搬送部810の他方側の端部近傍に設けられた対向する一対のローラ858,862とで行われる。この媒体搬送部810は、図1に示すA駆動モータ140からの駆動力が伝達されることにより駆動する。媒体搬送部810に設けられた搬送用ローラ857,858は、プーリとベルトを介し、同期回転するように連動する。なお、本実施形態の搬送用ローラ857,858はプーリを兼ねており、搬送用ローラ857,858である各プーリに掛け渡されたベルト859の背面で媒体2の搬送が行われる。具体的には、A駆動モータ140からの駆動力は、ベルト144、伝動部材808であるギア、クラッチ手段(ギア)856、ギア882、当該ギア882と同軸上に連設された搬送用ローラ858、ベルト859、搬送用ローラ857、の経路で駆動力が伝わる。なお、符号860はアイドラーであり、各ローラ857,858,861,862の軸は、回動体802に軸受けされている。
なお、上記の媒体搬送路810による媒体2の駆動機構は図示の例に限定されず、本発明の趣旨の範囲内で種々の形態を採用することができる。また、A駆動モータ140からの駆動力の伝達は、図示のようにプーリとベルトで行っているが、ギアを用いても構わない。
さらに、媒体搬送方向変換装置800の回動は、その回動部材(プーリ)804にベルト86を介して駆動力を送る回動用モータ85により行われるが、このとき、回動部材804と同軸に取り付けられた伝動部材(ギア)808は、図10〜図12に示すように、搬送用ローラ858と同軸上に連設されているギア882にクラッチ手段(ギア)856を介して連結しているとともにベルト144により回転が規制されているので、媒体搬送方向変換装置800を回動させると、伝動部材808に対してクラッチ手段856が相対的に回転し、搬送用ローラ858及び857が回転して媒体搬送路810内で保持された媒体2に対して搬送力が作用する「媒体連れ回り現象」が発生する。既述の実施形態では、回動用モータ85による媒体搬送方向変換装置の回動に合わせて、上記の搬送力の作用をキャンセルする方向に媒体2を搬送するようにA駆動モータ140が搬送駆動プーリを駆動するようにすることにより、媒体連れ回り現象をキャンセルしているが、この実施形態では、特に駆動源が遮断された保守時における「媒体連れ回り現象」の発生を防ぐ手段を説明する。
(媒体連れ回り現象の防止機構)
この実施の形態に係る媒体搬送方向変換装置800は、図10、図13及び図14に示すように、伝動部材(ギア)808から媒体搬送部810への駆動の伝達を接続する接続位置(図13に示す位置)と、伝動部材(ギア)808から媒体搬送部810への駆動の伝達を切断する切断位置(図14に示す位置)との間を移動可能なクラッチ手段(ギア)856を備えることに特徴がある。
「媒体連れ回り現象」については、上記のように、第1の駆動源である回動用モータ85による回動部材(プーリ)804の回動に対応して、第2の駆動源であるA駆動モータ140が伝動部材(ギア)808を回動部材804と同じ方向へ同期回動させることにより、クラッチやストッパー等の機構部品を用いずに媒体連れ回り現象のキャンセル制御を簡易且つ容易にすることができるが、例えば保守時のように駆動源が遮断されて手動で作業する場合に、回動体802内の媒体搬送部810に媒体2が残っていると、手動で回動体802を回転させることによって媒体2が搬送ローラ858,857の駆動によって動いてしまうという「媒体連れ回り現象」までは解消できない。その理由は、保守時には駆動系の動力源が遮断されるのが一般的であり、前記のような媒体連れ回り現象のキャンセル制御を実行できないためである。しかしながら、図10、図13及び図14等で説明するこの実施形態に係る媒体搬送方向変換装置800によれば、クラッチ手段856を図13に示すような接続位置に配置したり図14に示すような切断位置に配置したりする移動動作により、伝動部材808から媒体搬送部810への駆動の伝達を接続したり切断したりすることができる。その結果、動力源が遮断された保守時のように媒体連れ回り現象のキャンセル制御を実行できない場合であっても、媒体搬送部810内に媒体2を留め置きながら媒体2の搬送方向を切り替えることができ、媒体連れ回り現象の発生を防ぎ、ジャム障害を防止することができる。
なお、図10、図13及図14の例では、クラッチ手段856としてギア(アイドルギアということができる。)を採用し、そのギアを移動可能となるように構成したギア連結構造によって伝動部材808から搬送用プーリ858に駆動力を伝達しているが、本発明においては、クラッチ手段としてベルトを採用し、ベルトの張り緩みを調整するベルト連結構造であってもよい。ベルトの張り緩みを調整するベルト連結構造を採用する場合、伝動部材808としてプーリを用いるとともに、搬送用ローラ858と同じ軸上にプーリを連設し、それら2つのプーリ間にベルトを掛け渡し、そのベルトの張り緩みを調整できるようにアイドラーを設けることにより、上記のギアからなるクラッチ手段と同様の機能を持たせることができる。
クラッチ手段856は、図10、図13及び図14に示すように、スリット板821に設けられている。このスリット板821は、支持軸803に対して自由に回転するように設けられているが、その回転範囲は、規制手段によって規制され、クラッチ手段856の接続位置と切断位置との間の移動に対応する範囲に限定される。スリット板821には、上記図7の説明段落において詳述したように、搬送方向に対応した複数の位置に設けられた回転位置決め用スリットa,b,cを併せて設けることができる。これらの回転位置決め用スリットa,b,cは、上記図7の説明段落において詳述した作用と同じ作用を奏するので、ここではその説明を省略するが、クラッチ手段856とスリット板821とを併設することにより、クラッチ手段856が接続された状態下で、回動体802の回動動作時の位置検出と制御を行なうことができる。
さらに、この実施形態において、クラッチ手段856を接続位置から移動させて伝動部材808とギア882との間の駆動力を切断した場合、スリット板821に併設された回転位置決め用スリットa,b,cと、回動体802に設けられたホームスリット825,826との位置関係が、図13に示す駆動時の位置関係から外れる。そのため、こうした各スリットの位置関係を上位の装置で制御することにより、各スリットの位置関係が駆動時の位置関係から外れた場合には、装置全体の駆動スイッチがONしないように制御することができる。
例えば、図14においては、クラッチ手段856が切断された状態を示すものであるが、この位置関係は、回転位置決め用スリットaがホームスリット825,826の間に配置された状態であるので、その位置関係を位置検知センサPSとホームポジションセンサHSとで検知することにより、スリット板821に設立されたクラッチ手段856が「駆動時における所定位置にない」という制御信号を出力するように構成することができる。こうすることにより、スリット板821に設けられた回転位置決め用スリットa,b,cによって、駆動が可能な状態であるのか、保守メンテナンス状態であるのかといった位置関係を認識して、それぞれの状態に対応した制御信号を出力することができる。
以上のように、回動体802の回動位置の検出は、各スリット(回転位置決め用スリットa,b,cとホームスリット825,826)及び各センサ(位置検知センサPS及びホームポジションセンサHS)で行われるが、この実施形態に係る媒体搬送方向変換装置800によれば、クラッチ手段856を備えたスリット板821が支持軸803に対して回転可能であり且つ位置検知センサPS又はホームポジションセンサHSに検知可能となるように設けられているので、例えば動力源が遮断された保守時において、スリット板821の回転によってクラッチ手段856が接続位置と切断位置との間を移動した際に、スリット板821を元の位置に戻し忘れるのを防ぐことができる。具体的には、スリット板821が元の位置に戻るまで検知異常のシグナルを発生させること等により対応することができる。
規制手段は、クラッチ手段856が設けられたスリット板821の回動範囲を規制するものであり、スリット板821に連結された切替レバー830の移動範囲を制限する構造により実現できる。具体的な一例としては、図10の透視正面図及び図13〜図15の構成図に示すように、クラッチ手段856が設けられたスリット板821は、切替レバー830に連結した切替レバー軸833を揺動させることにより回動するが、その切替レバー軸833の移動範囲を湾曲長穴840で制限する構造により実現できる。すなわち、規制手段としては、切替レバー軸833を有し、その切替レバー軸833を揺動してスリット板821を回転させる切替レバー830と、その切替レバー軸833の揺動範囲をクラッチ手段856の接続位置と切断位置との間の移動に対応する範囲に規制する湾曲長穴840とからなるものを好ましく挙げることができる。この湾曲長穴840は、揺動軸838を中心とした円弧状に湾曲した長穴であり、切替レバー軸833は、図13及び図14に示すように、その湾曲長穴840内をQ方向及びその逆方向に、揺動軸838を中心として移動する。
また、上述した例のほか、クラッチ手段856の接続位置と切断位置とのそれぞれに位置するときの切替レバー830に当接可能な突起(図示せず)を回動体802に設立し、切替レバー830の揺動範囲を、クラッチ手段856の接続位置と切断位置との間の移動に対応する範囲に規制するものであってもよい。なお、この場合、湾曲長穴840は切替レバー軸833の側板654側への突出を許容する逃げ部となる。
切替レバー830は、図10、図12〜図15に示すように、揺動軸838と切替レバー軸833とを偏心位置に備えた板状部材である。さらにその揺動軸838は、支持軸803に対する偏心位置で回動体802に回転自在に支持されている。そして、その揺動軸838の一端側には、前記の切替レバー830を備え、揺動軸838の他端側には、前記の切替レバー830を揺動させる揺動ツマミ831を備えている。なお、この揺動ツマミ831は、揺動軸838を回動体802に向けて付勢する付勢手段(ばね)839を有している。
切替レバー軸833は、図10、図12〜図15に示すように、揺動軸838の偏心位置となるようにその一端が切替レバー830に設けられており、他端がスリット板821に形成された長穴835に係合している。その結果、揺動ツマミ831を回して切替レバー830を揺動させることにより、長穴835に係合した切替レバー軸833がスリット板821を回転させ、クラッチ手段856を、接続位置と切断位置との間で回転移動させることができる。そして、その切替レバー軸833の移動範囲は、湾曲長穴840によって規制される。又は、切り替えレバー830の移動範囲が、図示しない突起によって規制される。なお、図12及び図15に示す符号836は、切替レバー軸833がスリット板821に連結する連結部を指している。
また、この実施形態の媒体搬送方向変換装置800は、スリット板856を接続位置及び切断位置にそれぞれ対応する位置で固定するロック手段を備えている。ロック手段としては、例えば図15及び図16に示すように、切替レバー830に設けたロックピン832と、回動体802に設けたロックピン係合部811,812とからなる構造を例示できる。ロックピン832としては、切替レバー830の中間付近に設けられた突起状のピンを好ましく挙げることができるが、必ずしもその形状に限定されず、同様の作用効果を奏するものであればよい。また、ロックピン係合部811,812としては、例えば図16に示すように、ロックピン832の移動軌跡に沿う円弧形状で形成された台状部材に形成された凹形状の溝を好ましく例示できる。なお、図16中の符号813,814,815は、溝以外の台状部を指している。
また、揺動ツマミ831は、揺動軸838を回動体802に向けて付勢する付勢手段(ばね)839を有しているので、その揺動ツマミ831を付勢手段(ばね)839に抗して引くことにより、ロックピン832とロックピン係合部811,812との係合を解除することができる。これにより、揺動ツマミ831を操作して切替レバー830を回動動作させる際に、片手で操作することができる。
図16に示す成形体802Aは回動体802を構成する2つの成形体のうちの1つを示しているが、その壁面には、切替レバー軸833を通過させてその回動移動を可能にさせる湾曲状の長穴819が設けられている。この長穴819は、前記の湾曲長穴840に対応する位置にあけられている。また、図17に示す部材は、規制手段として用いられる湾曲長穴840を有するフランジ部材841であり、前記の成形体802Aの内壁面に設置されている。
以上のような規制手段とロック手段とを有する媒体搬送方向変換装置800によれば、クラッチ手段856の移動動作により、伝動部材808から媒体搬送部810への駆動の伝達を接続したり切断したりすることを確実に実行できるので、動力源が遮断された保守時のように媒体連れ回り現象のキャンセル制御を実行できない場合であっても、媒体搬送部810内にカード状媒体2を留め置きながら媒体2の搬送方向を切り替えることができ、媒体連れ回り現象の発生を防ぎ、ジャム障害を防止することができる。
以上説明した本発明の媒体搬送方向変換装置の他の実施の形態において、主に図1〜図8を用いて説明した既述の実施形態と共通するものについては、この他の実施形態に係る媒体搬送方向変換装置800においても同様に適用することができるので、ここではその説明を省略する。また、図18は、図9に示す媒体搬送方向変換装置の回動範囲を規制するストッパー構造の説明図であるが、その図18に示すように、媒体搬送方向変換装置800には、支持軸を回動中心として回動する回動体802の回動に対して、スライドガイド及びストップガイドとして作用する円弧状のスリット807が形成されていてもよい。このスリット807の形状は、図18に示すように、略半円形であってもよいが、それに限定されない。