JP4812955B2 - 防錆剤 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ビニルアルコール系重合体組成物からなる防錆剤に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、防錆被覆鋼板には優れた耐食性が要求され、従来の冷延鋼板に代わり亜鉛系めっき鋼板を基板とする表面処理鋼板が多く使用されている。これら亜鉛系めっき鋼板の表面処理としては、従来よりクロム酸塩処理およびリン酸亜鉛処理が一般に行われている。しかし、クロム酸塩処理には処理工程でのクロム酸塩ヒュームの揮散、化成処理被膜からのクロム酸の溶出、および排水処理設備に多大の費用を要するなどの問題がある上に、扱われている6価クロム化合物は、IARC(International Agency for Researchon Cancer Review)を初めとした多くの公的機関が人体に対する発癌性物質に指定している極めて有害な物質である。また、リン酸亜鉛処理ではリン酸亜鉛処理後に通常、クロム酸によるリンス処理を行うため上記同様クロム化合物の処理の問題があるだけでなく、リン酸亜鉛処理剤中の反応促進剤や金属イオンなどの排水処理、被処理金属からの金属イオンの溶出によるスラッジ処理などの問題がある。
【0003】
その他に表面処理鋼板としては、特開昭58−224174号公報、特開昭60−50179号公報、特開昭60−50180号公報などに示される、亜鉛系めっき鋼板を基材としてこれにクロメート被膜を形成し、さらにこの上に最上層として有機複合シリケート被膜を形成した防錆鋼板が知られている。この防錆鋼板は、加工性および耐食性に優れているがクロメート被膜を有するため、上記と同様にクロメートイオンによる安全性の問題がある。
【0004】
鋼板の表面処理においてクロメートイオンによる安全性の問題がないものとしては、特開2000−204310号公報にてエチレン−ビニルアルコール系共重合体を樹脂成分とする金属表面被膜形成性組成物が提案されている。これは、エチレン−ビニルアルコール系共重合体の有する優れた耐水性、耐溶剤性、ガスバリヤ性などの性能を利用したものであり、金属表面や塗料との密着性、接着性に優れるとともに防錆性能も良好である。しかしながら、該金属表面被膜形成性組成物においては、溶液の安定性を向上させるために1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン(以下においてDMIと略記することがある)を溶媒中に多量に添加しており、このDMIは高沸点の溶媒であるため被膜形成時にDMIを気化させるのに多量のエネルギーを必要とし、省エネルギー化など地球環境保護の観点から好ましくないだけでなく、有機溶剤が気化するため作業者の安全面での問題もあり、さらにはDMIはコスト高である。また、水系溶媒のものとしてはエチレン−ビニルアルコール系共重合体と同様に優れた耐水性やガスバリヤ性を有するポリ塩化ビニリデンの水性エマルジョンが挙げられるが、ポリ塩化ビニリデンはそれ自体が塩素原子を含んでいるため、焼却など廃棄時における環境汚染の問題がある。
【0005】
以上のように、これまでに知られている鋼板の表面処理方法は、いずれも環境への負荷や人体への安全性の点で問題を抱えており、より環境への負荷が少なく安全性の高いものが求められている。
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、溶液安定性に優れた水系溶液として使用可能で安全性が高く、かつ被膜形成性が良好で、クロメート被膜を有しない亜鉛系めっき鋼板に対しても十分高い耐食性を付与できるような、耐食性、加工性および塗料密着性に優れた被膜を形成できる金属表面の防錆剤を提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者は鋭意研究の結果、ビニルアルコール系重合体100重量部に対してキレート型の配位子を有する有機チタン化合物(A)0.1〜40重量部および/または無水マレイン酸系重合体(C)0.1〜50重量部(ただし、ビニルアルコール系重合体100重量部に対して(A)、ジルコニウム化合物(B)および(C)の合計量が0.1〜50重量部)を配合してなり、該ビニルアルコール系重合体が、エチレン変性量1〜25モル%のエチレン変性ビニルアルコール系重合体および/または上記化1に示されるシリル基を0.01〜2モル%有するビニルアルコール系重合体である金属表面の防錆剤が、上記の各種性能を満足することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の防錆剤について詳細に説明する。
【0009】
本発明の防錆剤に用いられるビニルアルコール系重合体(以下においてPVAと略記することがある)の重合度について特に制限はないが、通常100〜8000であり、好ましくは150〜6000であり、より好ましくは200〜5000である。ここで重合度は、JIS K6726に準じて測定されたものであり、PVAを再けん化し、精製したものを用いて30℃の水中で測定した極限粘度測定から求められるものである。重合度が100より小さいPVAを用いた場合、本発明の防錆剤を金属表面に塗布して被膜を形成した際に被膜強度が低下することがある。重合度が8000より大きいPVAを用いた場合、本発明の防錆剤を水系溶液として使用する際に溶液粘度が高くなり、溶液の安定性が悪くなることがある。
【0010】
本発明の防錆剤に用いられるPVAのけん化度については特に制限はないが、通常80〜99.99モル%であり、好ましくは85〜99.95モル%であり、より好ましくは90〜99.9モル%である。ここでけん化度は、JIS K6726に準じて測定されたものである。けん化度が80モル%より小さいPVAを用いた場合、本発明の防錆剤を金属表面に塗布して被膜を形成した際に被膜の耐水性が低下することがある。けん化度が99.99モル%より大きいPVAは工業的な生産が難しい。
【0011】
PVAの合成法としては、ビニルエステル系単量体を重合して得られるビニルエステル系重合体をけん化するのが一般的である。ビニルエステル系単量体としてはギ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バレリン酸ビニル、カプロン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、安息香酸ビニル、ピバリン酸ビニル、バーサティック酸ビニルなどが挙げられるが、通常、酢酸ビニルが好んで用いられる。ビニルエステル系単量体の重合方法としては、溶液重合法、塊状重合法、懸濁重合法、乳化重合法など公知の重合方法のいずれもが使用可能であるが、通常はメタノールなどのアルコールを溶媒とした溶液重合法が用いられる。重合温度については特に制限はないが、通常0℃〜150℃の間で任意に選択される。ビニルエステル系重合体のけん化方法としては、酸または塩基触媒を用いる公知の方法のいずれもが使用可能であるが、通常はアルコール溶媒(少量の水分を含んでいても良い)中においてナトリウムアルコキシドや水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどの塩基触媒を用いてけん化する方法が用いられる。
【0012】
本発明の防錆剤におけるPVAとしてエチレン変性PVAを用いた場合、防錆剤の耐食性、耐湿性および塗料密着性が大きく向上する。該エチレン変性PVAのエチレン変性量は、重合体中の全単量体単位のモル数を基準として1〜25モル%であり、好ましくは1.5〜22モル%であり、より好ましくは2〜20モル%である。エチレン変性量が1モル%より少ない場合は、エチレン変性による効果が不十分である。エチレン変性量が25モル%を超える場合は、本発明の防錆剤を水系溶液として用いる際に溶液安定性が低下することがある。
【0013】
エチレン変性PVAは、エチレンの存在下においてビニルエステル系単量体を重合して得られるエチレン−ビニルエステル共重合体樹脂をけん化することによって得られる。ビニルエステル系単量体、ビニルエステル系単量体の重合方法およびビニルエステル系重合体のけん化方法としては、上記と同様の単量体および方法が使用可能である。
【0014】
また、本発明の防錆剤におけるPVAとして、化に示されるシリル基を有するPVAを用いた場合にも、防錆剤の耐食性、耐湿性および塗料密着性が大きく向上する。該シリル変性PVAのシリル基の含有量は、重合体中の全単量体単位のモル数を基準として0.01〜2モル%であり、好ましくは0.03〜1.8モル%であり、より好ましくは0.05〜1.5モル%である。シリル基の含有量が0.01モル%より小さい場合は性能の向上が低いかまたはほとんど向上が見られず、2モル%より大きい場合は本発明の防錆剤を水系溶液として用いる際に溶液粘度が高過ぎるか、または溶液安定性が低下することがある。
【0015】
【化2】
Figure 0004812955
(ここで、R1は水素原子または炭素数8以下の置換基を有していてもよい炭化水素基を表し、R2は炭素数1〜40のアルコキシ基またはアシロキシ基(ここでアルコキシ基、アシロキシ基は酸素を含有する置換基を有していてもよい)を表し、n+mは3以下でnは0〜2の整数、mは0〜3の整数を表し、Xはナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属に代表される1価の金属原子を表す)
【0016】
上記のシリル変性PVAにおいて、シリル基はPVAの側鎖または末端に存在する。該シリル基はPVAの側鎖または末端に直接結合していても良く、炭化水素基やオキシアルキレン基などビニルエステル系重合体のけん化時に切断されない連結基を介して結合していても良い。
【0017】
上記のシリル変性PVAは公知の種々の方法によって得ることが出来るが、通常は、化1に示されるシリル基を有するオレフィン系不飽和単量体、または重合、けん化反応後に化1に示されるシリル基を生成し得る置換基を有するオレフィン性不飽和単量体の共存下でビニルエステル系単量体を重合して得られるビニルエステル系共重合体を、上記と同様の方法でけん化することにより得られる。化1に示されるシリル基において、ナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属に代表される金属原子Xは、該ビニルエステル系共重合体をナトリウムアルコキシドや水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどの塩基触媒を用いてけん化する際に、主に導入される。
【0018】
化1に示されるシリル基を有するオレフィン性不飽和単量体、または重合、けん化反応後に化1に示されるシリル基を生成し得る置換基を有するオレフィン性不飽和単量体の具体例としては、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリ(β−メトキシエトキシ)シラン、アリルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、アリルトリアセトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、ビニルジメチルメトキシシラン、ビニルメチルジエトキシシラン、ビニルジメチルエトキシシラン、ビニルメチルジアセトキシシラン、ビニルジメチルアセトキシシラン、ビニルイソブチルジメトキシシラン、ビニルトリイソプロポキシシラン、ビニルトリブトキシシラン、ビニルトリヘキシロキシシラン、ビニルメトキシジヘキシロキシシラン、ビニルジメトキシオクチロキシシラン、ビニルメトキシジオクチロキシシラン、ビニルトリオクチロキシシラン、ビニルメトキシジラウリロキシシラン、ビニルジメトキシラウリロキシシラン、ビニルメトキシジオレイロキシシラン、ビニルジメトキシオレイロキシシラン、3−(メタ)アクリルアミド−プロピルトリメトキシシラン、3−(メタ)アクリルアミド−プロピルトリエトキシシラン、3−(メタ)アクリルアミド−プロピルトリ(β−メトキシエトキシ)シラン、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロピルトリメトキシシラン、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルエチルトリメトキシシラン、N−(2−(メタ)アクリルアミド−エチル)−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−(メタ)アクリルアミド−プロピルトリアセトキシシラン、2−(メタ)アクリルアミド−エチルトリメトキシシラン、1−(メタ)アクリルアミド−メチルトリメトキシシラン、3−(メタ)アクリルアミド−プロピルメチルジメトキシシラン、3−(メタ)アクリルアミド−プロピルジメチルメトキシシラン、3−(N−メチル−(メタ)アクリルアミド)−プロピルトリメトキシシラン、3−((メタ)アクリルアミド−メトキシ)−3−ヒドロキシプロピルトリメトキシシラン、3−((メタ)アクリルアミド−メトキシ)−プロピルトリメトキシシラン、ジメチル−3−(メタ)アクリルアミド−プロピル−3−(トリメトキシシリル)−プロピルアンモニウムクロライド、ジメチル−2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロピル−3−(トリメトキシシリル)−プロピルアンモニウムクロライドなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0019】
化1に示されるシリル基を有するPVAを得るためのその他の方法としては、例えば、アリルグリシジルエーテルやブタジエンモノオキシドなどのエポキシ基を有する単量体の存在下でビニルエステル系単量体を重合して得られるエポキシ基を有するビニルエステル系共重合体に、トリメトキシシリルメチルメルカプタンなどの同一分子内にメルカプト基とシリル基を有する化合物を反応させた後、けん化を行う方法が挙げられる。また、トリメトキシシリルメチルメルカプタンなどの同一分子内にメルカプト基とシリル基を有する化合物を連鎖移動剤として用いてビニルエステル系単量体の重合を行い、得られたビニルエステル系重合体をけん化することによってシリル基を有するPVA(この場合は末端変性物)を得る方法も挙げられるが、これらの方法に限定されるものではない。
【0020】
本発明の防錆剤に用いられるPVAとして、エチレン単位および化1に示されるシリル基の両方を有するPVAを用いた場合もまた、防錆剤の耐食性、耐湿性および塗料密着性が大きく向上する。該変性PVAのエチレン変性量は1〜25モル%であり、好ましくは1.5〜22モル%であり、より好ましくは2〜20モル%であり、シリル基の含有量は0.01〜2モル%であり、好ましくは0.03〜1.8モル%であり、より好ましくは0.05〜1.5モル%である。また、本発明の趣旨を損なわない範囲であれば、本発明の防錆剤に用いられるPVAは、ビニルエステル単位およびそのけん化物、エチレン単位、ならびに化1に示されるシリル基ないし重合、けん化反応後に化1に示されるシリル基を生成し得る置換基を有する単量体単位以外に、1種または2種以上のその他の単量体単位を有していても差し支えない。そのような単量体単位としては、プロピレン、1−ブテン、イソブテンなどのエチレン以外のα−オレフィン類;アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸などの不飽和酸類およびこれらの塩あるいは炭素数1〜18のモノまたはジアルキルエステル類;アクリルアミド、炭素数1〜18のN−アルキルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、2−アクリルアミドプロパンスルホン酸およびその塩、アクリルアミドプロピルジメチルアミンおよびその酸塩またはその4級塩などのアクリルアミド類;メタクリルアミド、炭素数1〜18のN−アルキルメタクリルアミド、N,N−ジメチルメタクリルアミド、2−メタクリルアミドプロパンスルホン酸およびその塩、メタクリルアミドプロピルジメチルアミンおよびその酸塩またはその4級塩などのメタクリルアミド類;N−ビニルピロリドン、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミドなどのN−ビニルアミド類;アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのシアン化ビニル類;炭素数1〜18のアルキルビニルエーテル、ヒドロキシアルキルビニルエーテル、アルコキシアルキルビニルエーテルなどのビニルエーテル類;ポリエチレングリコールアリルエーテル、メトキシポリエチレングリコールアリルエーテル、ポリプロピレングリコールアリルエーテル、ポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコールアリルエーテル、などのポリ(オキシアルキレン)基を有するアリルエーテル;塩化ビニル、フッ化ビニル、臭化ビニルなどのハロゲン化ビニル類;塩化ビニリデン、フッ化ビニリデンなどのハロゲン化ビニリデン類;酢酸アリル、塩化アリル、アリルアルコール、ジメチルアリルアルコールなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらの単量体単位の含有量については、得られる重合体が水溶性である限りにおいては特に制限はないが、通常これらの成分の含有量は重合体中の全単量体単位を基準として10モル%以下であるのが好ましい。
【0021】
また、本発明の防錆剤に用いられるPVAは、チオール酢酸、メルカプトプロピオン酸、炭素数18以下のアルキルメルカプタンなどのチオール化合物の存在下でビニルエステル系単量体の重合を行い、得られた重合体をけん化して得られる末端変性物でもよい。
【0022】
さらには、PVAにホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ブチルアルデヒドなどのカルボニル基含有化合物を酸触媒下で反応させてアセタール化したものや、PVAとジケテンとの反応で得られるアセトアセチル基を含有するPVAなど、後反応により変性したPVAを用いても差し支えない。
【0023】
本発明の防錆剤は、上記のPVAに対して、キレート型の配位子を有する有機チタン化合物(A)および無水マレイン酸系重合体(C)のうち少なくともいずれか1種を必須成分として配合することを特徴とする。これらの化合物や重合体は水系溶媒に混合して使用することが可能であり、かつそれ自体の安全性も高いことが知られているものである。
【0024】
以下にキレート型の配位子を有する有機チタン化合物(A)、ジルコニウム化合物(B)および無水マレイン酸系重合体(C)のそれぞれについて、具体例を含めて詳細に記す。
【0025】
キレート型の配位子を有する有機チタン化合物(A)
本発明の防錆剤に用いられるキレート型の配位子を有する有機チタン化合物(A)としては、チタンラクテート、チタンラクテートアンモニウム塩、ジイソプロポキシチタンビス(トリエタノールアミナート)、ジ−n−ブトキシチタンビス(トリエタノールアミナート)、ジイソプロポキシチタンビス(アセチルアセトナート)、チタンテトラキス(アセチルアセトナート)、ポリチタンビス(アセチルアセトナート)などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらの有機チタン化合物の中でも水溶性のものが好ましく、具体的にはチタンラクテート、チタンラクテートアンモニウム塩、ジイソプロポキシチタンビス(トリエタノールアミナート)、ジ−n−ブトキシチタンビス(トリエタノールアミナート)が挙げられる。これらの有機チタン化合物は必ずしも単独で使用する必要はなく、必要に応じて2種以上を混合して用いることもできる。
【0026】
なお、ここでキレート型の配位子とは、1つのチタン原子に対して共有結合や水素結合などにより2座あるいはそれ以上の多座で配位することが可能な配位子を意味し、具体的にはヒドロキシカルボン酸またはその塩(乳酸、リンゴ酸、酒石酸、サリチル酸またはこれらの塩など)、β−ジケトン(アセチルアセトンなど)、アミノアルコール(トリエタノールアミンなど)が代表的なものとして挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0027】
有機チタン化合物はPVAの架橋剤として働くが、有機チタン化合物がキレート型の配位子を有することで、有機チタン化合物によるPVAの架橋反応速度が適度に調節される結果、PVAと有機チタン化合物からなるPVA組成物の溶液安定性と、該組成物溶液を金属表面に塗布して得られる被膜の耐水性を両立させることができるものと考えられる。
【0028】
キレート型の配位子を有する有機チタン化合物(A)の添加量は、PVA100重量部に対して0.1〜40重量部であり、好ましくは0.5〜35重量部であり、より好ましくは1〜30重量部である。有機チタン化合物の添加量が0.1重量部より少ない場合は、本発明の防錆剤を金属表面に塗布して得られる被膜の耐水性や強度が低下するため好ましくない。有機チタン化合物の添加量が40重量部より多い場合は、防錆剤の溶液粘度が高くなりすぎるだけでなく、溶液安定性も悪くなり好ましくない。
【0029】
ジルコニウム化合物(B)
本発明の防錆剤に用いられるジルコニウム化合物(B)としては、炭酸ジルコニウムアンモニウム、硫酸ジルコニウム、硝酸ジルコニウム、酢酸ジルコニウム、炭酸ジルコニウム、ステアリン酸ジルコニウム、オクチル酸ジルコニウム、珪酸ジルコニウムなどが挙げられるがこれらに限定されるものではない。これらのジルコニウム化合物の中でも水溶性のものが好ましく、具体的には炭酸ジルコニウムアンモニウム、硫酸ジルコニウム、硝酸ジルコニウム、酢酸ジルコニウムが挙げられ、最も好適には炭酸ジルコニウムアンモニウムが用いられる。これらのジルコニウム化合物は必ずしも単独で使用する必要はなく、必要に応じて2種以上を混合して用いることもできる。
【0030】
ジルコニウム化合物(B)の添加量は、PVA100重量部に対して0.1〜20重量部であり、好ましくは0.15〜15重量部であり、より好ましくは0.2〜10重量部である。ジルコニウム化合物の添加量が0.1重量部より少ない場合は、本発明の防錆剤を金属表面に塗布して得られる被膜の耐水性や強度が低下するため好ましくない。ジルコニウム化合物の添加量が20重量部より多い場合は、防錆剤の溶液粘度が高くなりすぎたり、溶液安定性が悪くなり好ましくない。
【0031】
無水マレイン酸系重合体(C)
本発明の防錆剤に用いられる無水マレイン酸系重合体(C)としては、炭素数8以下のα−オレフィンと無水マレイン酸の共重合体、炭素数8以下のアルキルビニルエーテルと無水マレイン酸の共重合体、スチレン/無水マレイン酸共重合体などが挙げられるが、これらの中でも水溶性のものが好ましく、とりわけメチルビニルエーテル/無水マレイン酸共重合体、エチレン−無水マレイン酸共重合体、イソブテン−無水マレイン酸共重合体が安全性の点からは好ましい。これら無水マレイン酸系重合体は、無水マレイン酸単位の一部または全部が塩基により中和開環されているものであっても差し支えない。また、これらの無水マレイン酸系重合体は必ずしも単独で使用する必要はなく、必要に応じて2種以上を混合して用いることもできる。
【0032】
無水マレイン酸系重合体(C)の添加量は、PVA100重量部に対して0.1〜50重量部であり、好ましくは0.5〜45重量部であり、より好ましくは1〜40重量部である。無水マレイン酸系重合体の添加量が0.1重量部より少ない場合は、本発明の防錆剤を金属表面に塗布して得られる被膜の耐水性や強度が低下するため好ましくない。無水マレイン酸系重合体の添加量が50重量部より多い場合は、本発明の防錆剤を金属表面に塗布して得られる被膜のガスバリア性が低下するためと考えられるが、耐食性が低下するため好ましくない。
【0033】
上記のように、本発明の防錆剤において、キレート型の配位子を有する有機チタン化合物(A)、ジルコニウム化合物(B)、無水マレイン酸系重合体(C)の添加量は、それぞれPVA100重量部に対して(A)の添加量は0.1〜40重量部、(B)の添加量は0.1〜20重量部、(C)の添加量は0.1〜50重量部であるが、(A)、(B)および(C)の合計量はPVA100重量部に対して0.1〜50重量部である必要がある。(A)、(B)および(C)の合計量が0.1重量部より少ない場合は、これらの添加による効果が見られないか極めて小さく、合計量が50重量部より多い場合は、防錆剤の水系溶液の粘度が高くなりすぎたり溶液安定性が悪化することがあり、何よりも本発明の目的とする耐食性が低下するため好ましくない。
【0034】
本発明の防錆剤は、キレート型の配位子を有する有機チタン化合物(A)および無水マレイン酸系重合体(C)のうち少なくとも1種ならびに上記のPVAを必須成分とするが、さらに耐水性などの性能を向上させる目的でシリカ微粒子や、キレート化剤、潤滑性付与剤、顔料類などを含有させることができる。
【0035】
シリカ微粒子としてはヒュームドシリカ、コロイダルシリカが挙げられ、その粒径は通常1nm〜5μm、好ましくは5nm〜500nmである。これらヒュームドシリカ、コロイダルシリカは、親水性シリカ、疎水性シリカのいずれであっても良い。また、コロイダルシリカとしては、水分散コロイダルシリカ、有機溶剤分散コロイダルシリカが一般に良く用いられるが、その他のものとしてカルシウムイオン交換シリカなどのイオン交換シリカも好適に使用することができる。シリカ微粒子の添加量としては、PVA100重量部に対して通常1〜40重量部であり、10〜30重量部であるのが好ましい。
【0036】
キレート化剤としては一般に知られているものを用いることができ、ヒドラジン誘導体、没食子酸、フィチン酸などが挙げられる。これらの中でもヒドラジン誘導体が好適に用いられる。ヒドラジン誘導体としてはカルボヒドラジド、プロピオン酸ヒドラジド、サリチル酸ヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド、ドデカン二酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド、チオカルボヒドラジド、4,4’−オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジド、ベンゾフェノンヒドラゾン、アミノポリアクリルアミドなどのヒドラジド化合物;ピラゾール、3,5−ジメチルピラゾール、3−メチル−5−ピラゾロン、3−アミノ−5−メチルピラゾールなどのピラゾール化合物;1,2,4−トリアゾール、3−アミノ−1,2,4−トリアゾール、4−アミノ−1,2,4−トリアゾール、3−メルカプト−1,2,4−トリアゾール、5−アミノ−3−メルカプト−1,2,4−トリアゾール、2,3−ジヒドロ−3−オキソ−1,2,4−トリアゾール、1H−ベンゾトリアゾール、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール(1水和物)、6−メチル−8−ヒドロキシトリアゾロピリダジン、6−フェニル−8−ヒドロキシトリアゾロピリダジン、5−ヒドロキシ−7−メチル−1,3,8−トリアザインドリジンなどのトリアゾール化合物;5−フェニル−1,2,3,4−テトラゾール、5−メルカプト−1−フェニル−1,2,3,4−テトラゾールなどのテトラゾール化合物;5−アミノ−2−メルカプト−1,3,4−チアジアゾール、2,5−ジメルカプト−1,3,4−チアジアゾールなどのチアジアゾール化合物;マレイン酸ヒドラジド、3,6−ジクロロピリダジン、6−メチル−3−ピリダゾン、4,5−ジクロロ−3−ピリダゾン、4,5−ジブロモ−3−ピリダゾン、6−メチル−4,5−ジヒドロ−3−ピリダゾンなどのピリダジン化合物などを挙げることができるが、5員環または6員環の環状構造を有し環状構造中に窒素原子を有するピラゾール化合物、トリアゾール化合物が好適である。これらのヒドラジン誘導体は、単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いても差し支えない。これらキレート化剤の配合量は、PVA100重量部に対して通常10重量部以下であり、0.2〜5重量部の範囲内であるのがより好ましい。
【0037】
潤滑性付与剤としてはポリエチレンワックスなどのポリオレフィンワックス;ラノリン、蜜ろうなどの動物系ワックス;カルナウバワックス、水ろうなどの植物系ワックス;脂肪酸エステルワックス;マイクロクリスタリンワックス、シリコン系ワックス、フッ素系ワックスなどが挙げられる。これらの中でも平均粒子径が0.1〜10μmのポリエチレンワックスが好適であり、ポリエチレンワックスはカルボキシル基を導入することなどによって変性したものであってもよい。これらの潤滑性付与剤の配合量としては通常、PVA100重量部に対して30重量部以下であり、1〜20重量部であるのがより好ましい。潤滑性付与剤を配合することによって、本発明の防錆剤を潤滑防錆鋼板用途に使用することもできる。
【0038】
顔料類としてはタルク、クレー、硫酸バリウムなどの体質顔料;トリポリリン酸アルミニウム、リン酸亜鉛、塩基性珪酸塩、縮合リン酸塩、モリブデン酸塩、ジシアナミド亜鉛、ジシアナミド鉛、クロム酸ストロンチウム、クロム酸カルシウム、クロム酸亜鉛、クロム酸バリウムなどの防錆顔料;チタン白、チタン黄、ベンガラ、シアニンブルー、シアニングリーン、有機赤色顔料、有機黄色顔料などの着色顔料など公知のものが挙げられ、この中でもタルク、クレー、硫酸バリウム、トリポリリン酸アルミニウム、リン酸亜鉛、塩基性珪酸塩、縮合リン酸塩、モリブデン酸塩、ジシアナミド亜鉛などが安全性の面からは好ましい。
【0039】
本発明の防錆剤は、水系溶媒に溶解した水系溶液の形で用いることができる。水系溶媒としては水単独が好ましいが、炭素数4以下のアルコールなど比較的低沸点の溶媒を混合して用いてもよい。溶液中の防錆剤の濃度としては、金属表面に塗布する際の作業性を考慮して適宜選ぶことができるが、通常は溶液粘度が5〜5000mPa・sとなるような溶液濃度が選択される。この水系溶液の必要量(通常は乾燥被膜重量で0.5〜15g/m2、好ましくは0.7〜10g/m2)を金属表面を有する被塗物に塗布した後、焼付けなどの方法により乾燥することによって、金属表面に耐食性を有する被膜を形成することができる。
【0040】
水系溶液を塗布する方法としてはロールコータ塗装、スプレー塗装、ハケ塗り塗装、溶液を塗布した後に余剰の液を絞りによって除去する絞り塗装など公知の方法を用いることが出来る。塗布した後の乾燥条件は、被膜が乾燥できる条件であれば特に限定されないが、シート状の被塗物表面に塗布された被膜を連続的に乾燥させる場合、通常は雰囲気温度100〜330℃で10〜100秒間程度(鋼板の最高到達温度は80〜240℃程度)の加熱を行う。
【0041】
本発明の防錆剤は、亜鉛系めっき鋼板に塗布した場合に特に防錆剤としての性能が効果的に発揮されるが、その他の金属(コンクリートの補強用鉄筋など)の表面に用いても差し支えない。亜鉛系めっき鋼板としては、溶融亜鉛めっき鋼板、電気亜鉛めっき鋼板、鉄−亜鉛合金めっき鋼板、ニッケル−亜鉛合金めっき鋼板、アルミニウム−亜鉛合金めっき鋼板など一般的に良く知られているものを用いることができる。また、亜鉛系めっき鋼板として、表面に化成処理を施した亜鉛系めっき鋼板などを用いても差し支えない。
【0042】
本発明の防錆剤を塗布して得られる被膜は耐食性、耐指紋性などに優れるため、表面に本発明の防錆剤被膜を形成した亜鉛系めっき鋼板をそのまま防錆鋼板、潤滑防錆鋼板として使用することもできるが、この上にさらに上層被膜を形成することもできる。この上層被膜は目的に応じて適宜選定すればよく、種々の塗料組成物を使用することができる。これら塗料組成物としては、例えばプライマー塗料、着色上塗塗料などを挙げることができる。また、プライマー塗料を塗装し、さらにその上に着色上塗塗料を塗装してもよい。
【0043】
【実施例】
以下、実施例および比較例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらによって何ら限定されるものではない。なお、本発明の実施例は実施例6〜10および12であり、実施例1〜5、11および13〜16は参考のために記すものである。以下において、「部」および「%」は特に断りのない限りそれぞれ「重量部」および「重量%」を意味する。
【0044】
エチレン変性PVA(PVA−4)の合成例
合成例1
撹拌機、窒素導入口、エチレン導入口および開始剤添加口を備えた50L加圧反応槽に酢酸ビニル単量体17.2kg、メタノール12.8kgを仕込み、60℃に昇温した後30分間窒素バブリングにより系中を窒素置換した。次いで反応槽圧力が0.48MPaとなるようにエチレンを導入仕込みした。上記の反応槽内温を60℃に調整した後、開始剤として2、2’−アゾビス(ジメチルバレロニトリル)1.5gを添加して重合を開始した。重合中はエチレンを導入して反応槽圧力を0.48MPaに、重合温度を60℃に維持し、4時間後に重合率が50%に達したところで冷却して重合を停止した。反応槽を開放して脱エチレンを行った後、窒素ガスをバブリングして脱エチレンを完全に行った。続いて30℃、減圧下でメタノールを時々添加しながら未反応の酢酸ビニル単量体の除去を行い、エチレン−酢酸ビニル共重合体のメタノール溶液を得た。次に、濃度40%に調整したエチレン−酢酸ビニル共重合体のメタノール溶液に、アルカリモル比(NaOHのモル数/重合体中の酢酸ビニル単位のモル数)0.08となるようにNaOHメタノール溶液(濃度10%)を添加してけん化を行い、エチレン変性PVA(PVA−4)を得た。PVA−4のけん化度をJIS K6726に従って測定した結果、けん化度は98.5モル%であった。重合後、未反応酢酸ビニル単量体を除去して得られたエチレン−酢酸ビニル共重合体のメタノール溶液をn−ヘキサンに沈殿、アセトンで溶解する再沈精製を3回行った後、60℃で減圧乾燥して精製されたエチレン−酢酸ビニル共重合体を得た。このエチレン−酢酸ビニル共重合体精製物について、1H NMR測定から求めたエチレン変性量は8モル%であった。上記のエチレン−酢酸ビニル共重合体のメタノール溶液をアルカリモル比0.2でけん化した後、メタノールソックスレー抽出を3日間実施し、次いで乾燥して精製PVAを得た。該PVAの平均重合度をJIS K6726に準じて測定したところ550であった。
【0045】
合成例2および合成例3
酢酸ビニル単量体、メタノール量および重合時のエチレン圧力などの各条件を表1に示すように変更した以外は合成例1と同様にしてエチレン−酢酸ビニル共重合体を得た。次いで、けん化時の重合体濃度やアルカリ使用量(アルカリモル比)を表2に示すように変更した以外は合成例1と同様にして、エチレン変性PVA(PVA−5およびPVA−6)を得た。
【0046】
シリル基を有するPVA(PVA−7)の合成例
合成例4
撹拌機、還流冷却管、窒素導入管および温度計を取り付けた50Lの反応器に、酢酸ビニル単量体19.5kg、ビニルトリメトキシシラン50gおよびメタノール10.5kgを仕込み、窒素ガスを30分バブリングして脱気した。反応器の昇温を開始し、内温が60℃となったところで、2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)9.7gを添加して重合を開始し、4時間後に重合率が50%に達したところで冷却して重合を停止した。続いて30℃、減圧下でメタノールを時々添加しながら未反応の酢酸ビニル単量体の除去を行い、酢酸ビニル共重合体のメタノール溶液を得た。次に、濃度30%に調整した酢酸ビニル共重合体のメタノール溶液に、アルカリモル比0.03のNaOHメタノール溶液(濃度10%)を添加してけん化を行い、シリル基を有するPVA(PVA−7)を得た。PVA−7のけん化度をJIS K6726に従って測定した結果、けん化度は98.5モル%であった。重合後、未反応酢酸ビニル単量体を除去して得られた酢酸ビニル共重合体のメタノール溶液をn−ヘキサンに沈殿、アセトンで溶解する再沈精製を3回行った後、60℃で減圧乾燥して精製された酢酸ビニル共重合体を得た。この酢酸ビニル共重合体精製物について、1H NMR測定から求めたビニルトリメトキシシラン変性量は0.3モル%であった。上記の酢酸ビニル共重合体のメタノール溶液をアルカリモル比0.2でけん化した後、メタノールソックスレー抽出を3日間実施し、次いで乾燥して変性PVA精製物を得た。該変性PVAの平均重合度をJIS K6726に準じて測定したところ1500であった。
【0047】
合成例5および合成例6
酢酸ビニル単量体、メタノール、ビニルトリメトキシシランおよび開始剤の量を表1に示すように変更した以外は合成例4と同様にして酢酸ビニル共重合体を得た。次いで、けん化時の重合体濃度やアルカリ使用量(アルカリモル比)を表2に示すように変更した以外は合成例4と同様にして、シリル基を有するPVA(PVA−8およびPVA−9)を得た。
【0048】
エチレン単位およびシリル基を有するPVA(PVA−10)の合成例
合成例7
撹拌機、窒素導入口、エチレン導入口および開始剤添加口を備えた50L加圧反応槽に酢酸ビニル単量体17.2kg、ビニルトリメトキシシラン70gおよびメタノール12.8kgを仕込み、60℃に昇温した後30分間窒素バブリングにより系中を窒素置換した。次いで反応槽圧力が0.48MPaとなるようにエチレンを導入仕込みした。上記の反応槽内温を60℃に調整した後、開始剤として2、2’−アゾビス(ジメチルバレロニトリル)1.6gを添加して重合を開始した。重合中はエチレンを導入して反応槽圧力を0.48MPaに、重合温度を60℃に維持し、4時間後に重合率が50%に達したところで冷却して重合を停止した。反応槽を開放して脱エチレンを行った後、窒素ガスをバブリングして脱エチレンを完全に行った。続いて30℃、減圧下でメタノールを時々添加しながら未反応の酢酸ビニル単量体の除去を行い、エチレン−酢酸ビニル共重合体のメタノール溶液を得た。次に、濃度40%に調整したエチレン−酢酸ビニル共重合体のメタノール溶液に、アルカリモル比0.08のNaOHメタノール溶液(濃度10%)を添加してけん化を行い、エチレン単位およびシリル基を有するPVA(PVA−10)を得た。PVA−10のけん化度をJIS K6726に従って測定した結果、けん化度は98.5モル%であった。重合後、未反応酢酸ビニル単量体を除去して得られたエチレン−酢酸ビニル共重合体のメタノール溶液をn−ヘキサンに沈殿、アセトンで溶解する再沈精製を3回行った後、60℃で減圧乾燥して精製されたエチレン−酢酸ビニル共重合体を得た。このエチレン−酢酸ビニル共重合体精製物について、1H NMR測定から求めたエチレン変性量は8モル%、ビニルトリメトキシシラン変性量は0.5モル%であった。上記のエチレン−酢酸ビニル共重合体のメタノール溶液をアルカリモル比0.2でけん化した後、メタノールソックスレー抽出を3日間実施し、次いで乾燥して変性PVA精製物を得た。該変性PVAの平均重合度をJIS K6726に準じて測定したところ550であった。
【0049】
合成例8
酢酸ビニル単量体、メタノール量および重合時のエチレン圧力などの各条件を表1に示すように変更した以外は合成例7と同様にしてシリル基を有するエチレン−酢酸ビニル共重合体を得た。次いで、けん化時の重合体濃度やアルカリ使用量(アルカリモル比)を表2に示すように変更した以外は合成例7と同様にして、エチレン単位およびシリル基を有するPVA(PVA−11)を得た。
【0050】
【表1】
Figure 0004812955
【0051】
【表2】
Figure 0004812955
【0052】
溶液安定性の評価
実施例1
表3に示したPVA−1の30部と乳酸チタンモノアンモニウム塩の50%水溶液(日本曹達(株)製TLA−A−50:乳酸チタンモノアンモニウム塩の50%水溶液)3部を蒸留水177部に溶解して、固形分濃度が15%(PVA−1/乳酸チタンモノアンモニウム塩の重量比100/5)の防錆剤の水系溶液を調製した。得られた溶液について、20℃で3日間および2週間放置後の溶液の様子を目視にて観察したところ、いずれも溶液にゲル化や白濁などの外観の変化はなく、溶液安定性は良好であった。
【0053】
実施例2〜16、比較例1〜10
実施例1において用いた樹脂成分(PVA−1)、添加剤(TLA−A−50)、水系溶媒の種類および組成、ならびにその他の添加剤(シリカ微粒子)を表3および表4に示すように変更した以外は実施例1と同様にして、濃度15%の防錆剤の水系溶液を調製した。これらについて実施例1と同様にして溶液安定性の評価を行い、その結果を表4に併せて示した。
【0054】
【表3】
Figure 0004812955
【0055】
【表4】
Figure 0004812955
【0056】
防錆性能評価試験
上記実施例1〜16および比較例1〜10で調製した各防錆剤の水系溶液を用い、以下に示したようにして亜鉛めっき鋼板に防錆塗膜を作成し、耐食性、耐湿性および塗料密着性の評価を行った。
【0057】
試験方法1
脱脂、洗浄を行った電気亜鉛めっき鋼板(めっき付着量20g/m2、板厚0.6mm)の上に、上記実施例1〜16および比較例1〜10で得た各防錆剤の水系溶液を4g/m2の塗布量で塗布し、熱風乾燥機中で鋼板の最高到達温度(以下においてPMTと略記することがある)が200℃となる条件で45秒間焼付けを行い、各試験塗板を作成した。得られた各試験塗板について、以下に示す試験方法に従って耐食性および上層塗膜の密着性の試験を行った。試験結果を表5に示した。
【0058】
耐食性試験
端面部および裏面部をシールした試験塗板に、JIS Z2371に準拠して塩水噴霧試験(35℃の5%NaCl溶液噴霧)を168時間まで行い、塩水噴霧開始から72時間経過時および168時間経過時における塗膜面の錆の発生度合を以下の基準により評価した。
1:白錆の発生が認められない
2:白錆の発生程度が塗膜面積の5%未満
3:白錆の発生程度が塗膜面積の5%以上10%未満
4:白錆の発生程度が塗膜面積の10%以上25%未満
5:白錆の発生程度が塗膜面積の25%以上
【0059】
上層塗膜の密着性試験
試験塗板にメラミンアルキド樹脂塗料のアミラック#1000ホワイト(関西ペイント(株)製)を乾燥時の厚みが30μmとなるように塗布し、150℃の熱風乾燥機中で15分間焼き付けを行って上塗塗装板を得た。この上塗塗装板について、塗膜面にJIS K5400記載の碁盤目試験法に準じて碁盤目を作成した。この碁盤目部分に市販のセロハン粘着テープを貼り付けた後、速やかに45゜の方向に引張って剥がした際の上層塗膜の剥離程度を以下の基準により評価した。
1:上層塗膜の剥離が全く認められない
2:上層塗膜の剥離が1〜2個認められる
3:上層塗膜の剥離が3〜10個認められる
4:上層塗膜の剥離が11個以上認められる
【0060】
試験方法2
脱脂、洗浄を行った溶融亜鉛めっき鋼板(めっき付着量120g/m2、板厚0.4mm)の上に、上記実施例1〜16および比較例1〜10で作成した各防錆剤の水系溶液を6g/m2の塗布量で塗布し、熱風乾燥機中PMTが200℃となる条件にて30秒間焼付けを行い、次いでこの被膜上にポリエステル樹脂塗料のKPカラー1580ホワイト(関西ペイント(株)製)を乾燥時の厚みが15μmとなるように塗布し、熱風乾燥機中PMTが210℃となる条件で45秒間焼付けを行って上層塗膜を有する各試験塗板を作成した。これらの試験塗板について上記と同様の上層塗膜の密着性試験、および以下に示す試験方法に従って耐食性および耐湿性の試験を行った。試験結果を表5に示した。
【0061】
耐食性試験
上層塗膜を有する試験塗板を70×150mmの大きさに切断し、端面部および裏面部をシールした後、クロスカット部を設けた塗装板についてJIS Z2371に規定する塩水噴霧試験(35℃の5%NaCl溶液噴霧)を240時間行った。試験後の塗装板におけるクロスカット部および一般部(カットのない中央部)のふくれの程度を以下の基準にて評価した。一般部のふくれの程度については、括弧内にASTM714−87の規定によるふくれの状態を付記した。
[クロスカット部のふくれ幅]
1:クロスカットからのふくれ幅が1mm未満
2:クロスカットからのふくれ幅が1mm以上2mm未満
3:クロスカットからのふくれ幅が2mm以上5mm未満
4:クロスカットからのふくれ幅が5mm以上10mm未満
5:クロスカットからのふくれ幅が10mm以上
[一般部のふくれ発生程度]
1:ふくれの発生が認められない
2:わずかにふくれの発生が認められる(8F)
3:かなりのふくれの発生が認められる(6F)
4:多くのふくれの発生が認められる(4F〜2F)
5:著しいふくれの発生が認められる(Fを超える密度のふくれ)
【0062】
耐湿性試験
上層塗膜を有する試験塗板の端面部および裏面部をシールしたものについて、JIS K5400 9.2.2に準じた耐湿試験を行った。耐湿試験機ボックス内の温度が49℃、相対湿度が95〜100%の条件で試験時間は240時間とした。試験後の試験塗板の塗膜のふくれの程度を以下の基準により評価した。
1:ふくれの発生が認められない
2:わずかにふくれの発生が認められる(8F)
3:かなりのふくれの発生が認められる(6F)
4:多くのふくれの発生が認められる(4F〜2F)
5:著しいふくれの発生が認められる(Fを超える密度のふくれ)
【0063】
【表5】
Figure 0004812955
【0064】
以上の実施例および比較例から明らかなように、いずれの評価においても良好な結果を与えるのは本発明の要件を満たす防錆剤のみである。
【0065】
【発明の効果】
本発明の防錆剤は、亜鉛系めっき鋼板に用いたとき特に耐食性に優れた被膜を形成することができ、従来のリン酸亜鉛処理やクロメート処理などの表面処理のかわりに、環境への負荷が少なくかつ安全性の高い高耐食性の防錆剤として使用でき、また表面処理兼用プライマーとしても使用できる。また、本発明の防錆剤を表面に塗布して被膜を形成した亜鉛めっき鋼板は、その上に塗料などの上層塗膜を形成した場合に防錆剤被膜と上層塗膜との密着性も優れるため、着色塗膜形成亜鉛めっき鋼板用途、例えば建材、家電、自動車部品などの用途にも使用できる。

Claims (1)

  1. ビニルアルコール系重合体100重量部に対してキレート型の配位子を有する有機チタン化合物(A)0.1〜40重量部および/または無水マレイン酸系重合体(C)0.1〜50重量部(ただし、ビニルアルコール系重合体100重量部に対して(A)、ジルコニウム化合物(B)および(C)の合計量が0.1〜50重量部)を配合してなる防錆剤であって、
    該ビニルアルコール系重合体が、エチレン変性量1〜25モル%のエチレン変性ビニルアルコール系重合体および/または化1に示されるシリル基を0.01〜2モル%有するビニルアルコール系重合体である防錆剤
    Figure 0004812955
    (ここで、R 1 は水素原子または炭素数8以下の置換基を有していてもよい炭化水素基を表し、R 2 は炭素数1〜40のアルコキシ基またはアシロキシ基(ここでアルコキシ基、アシロキシ基は酸素を含有する置換基を有していてもよい)を表し、n+mは3以下でnは0〜2の整数、mは0〜3の整数を表し、Xはナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属に代表される1価の金属原子を表す)
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