JP4811559B2 - プレス成形型 - Google Patents
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ところで、図11に示すように、プレス成形型のポンチ1とダイス2の形状を、成形しようとするプレス成形品P’の形状通りに設定すると、そのブランクの弾性変形分が回復するスプリングバックSBにより、成形後にプレス成形品がポンチまたはダイスの表面からから離れるようにして戻り、ポンチ1およびダイス2の成形表面の形状と一致しないこととなる。この現象は、図12の(a)に示すように、ブランクの曲げ部の板厚方向に関して、中立面から内側(板内)に圧縮応力が発生する一方で、中立面から外側(板外)に引張応力が発生して、板厚方向に異なる応力が生じることに起因している。そのため、このスプリングバックによってプレス成形品を所望の形状精度に絞り成形することができず、プレス成形品の形状が精度不良となる。そこで、従来の技術では、一般に、スプリングバック量を見込み、かかる見込み量を考慮してポンチとダイスの形状を設定していた。
また、上記特許文献1に開示されたものにあっては、絞り成形するに際してブランクの周縁部をしわ押さえ(クッション)とダイの対向する表面によって単に押圧するものであり、ブランクの周縁部に対して押圧する力を適切に変化させるものではなかったため、絞り成形に応じてブランクの素材の流入を適切に制御することができず、したがって、絞り成形に応じてブランクに加える張力を正確に制御することが困難であるという問題があっ
た。そして、特許文献1に開示されたプレス成形型にあっては、パットとは別にビード形成具を設ける必要があるため、構造が複雑であり、製造コストがかかるという問題があった。
また、請求項2のプレス成形型に係る発明は、上記目的を達成するため、絞り成形を行うプレス成形型であって、相対向して配置されたポンチおよびダイスと、ブランクの周縁を所定の拘束力で拘束するクッションと、前記ブランクの絞り成形時にブランクの素材流入抵抗を増大させる素材流入抵抗増大手段と、を有しており、前記素材流入抵抗増大手段は、前記クッションのクッション力を受ける部分よりも外側に配置されて、前記クッションが所定のクッション力を受けながら下降するときに所定の位置から下死点まで、クッション力に圧力を加えて該クッションを内側に倒れるように撓み変形させるよう構成されるとともに、該クッションが内側に倒れるように撓み変形することによりブランクの周縁に対する拘束力を増大させる拘束力増大手段を備えており、前記クッションの上面は、前記ブランクの周縁にビードを成形するよう構成されるとともに、該ビードを成形する部分から外側がその外周縁に向かって漸次低くなるように傾斜しており、前記拘束力増大手段は、前記クッションの上面のビードを成形する部分と傾斜した面との境界角部が突出するように形成され、前記クッションが内側に倒れ込むように撓み変形することによって前記ブランクのビードに食い込む食い込み部によって構成されていることを特徴とするものである。
請求項2の発明では、素材流入抵抗増大手段は、クッションのクッション力を受ける部分よりも外側に配置されている。クッションの上面は、ブランクの周縁にビードを成形するよう構成されるとともに、このビードを成形する部分から外側がその外周縁に向かって漸次低くなるように傾斜している。また、拘束力増大手段は、クッションの上面のビードを成形する部分と傾斜した面との境界角部が突出するように形成された食い込み部によって構成されている。クッションによりブランクの周縁を所定の拘束力で拘束した状態でポンチとダイスとの間でブランクを絞り成形する。ブランクは、絞り成形されることによってその素材がプレス成形型内に流入するが、その周縁がクッションにより拘束されているため、素材の流入に所定の抵抗が生じている。そして、この絞り成形の途中において、前記クッションが所定のクッション力を受けながら下降するときに所定の位置から下死点まで、クッションの拘束力による素材抵抗に加えて、素材流入抵抗増大手段によりクッションに圧力を加える。素材流入抵抗増大手段は、クッションのクッション力を受ける部分よりも外側に配置されているため、クッションに圧力を加えることにより、クッションを内側に倒れるように撓み変形させる。また、拘束力増大手段は、クッションの上面の外側に設けられており、これによってクッションが内側に倒れるように撓み変形したときに、拘束力増大手段を構成する食い込み部がブランクのビードに食い込み、ブランクの周縁に対する拘束力を増大させる。そのため、素材流入抵抗が、ブランクの板厚方向の圧力差を解消し得るように増大させるよう変化し、ブランクに適切な引張力がさらに加えられることから、スプリングバックが抑制されて精度よく絞り成形されることとなる。
請求項2の発明によれば、素材流入抵抗増大手段は、クッションのクッション力を受ける部分よりも外側に配置されて、クッションが所定のクッション力を受けながら下降するときに所定の位置から下死点まで、クッション力に圧力を加えて該クッションを内側に倒れるように撓み変形させるよう構成されるとともに、該クッションが内側に倒れるように撓み変形することによりブランクの周縁に対する拘束力を増大させる拘束力増大手段を備えており、クッションの上面は、ブランクの周縁にビードを成形するよう構成されるとともに、該ビードを成形する部分から外側がその外周縁に向かって漸次低くなるように傾斜しており、拘束力増大手段は、クッションの上面のビードを成形する部分と傾斜した面との境界角部が突出するように形成され、クッションが内側に倒れ込むように撓み変形することによってブランクのビードに食い込む食い込み部によって構成されているという簡単な構成で、ブランクを精度良く絞り成形することができるプレス成形型を提供することができる。
本発明のプレス成形型は、概略、絞り成形を行うものであって、相対向して配置されたポンチ1およびダイス2と、ダイス2と協働してブランクPの周縁を所定の拘束力で拘束するクッション3と、ブランクPの絞り成形時にブランクPの素材流入抵抗を増大させるよう変化させる素材流入抵抗増大手段4と、を有する。そして、この実施の形態では、ダイス2とクッション3との衝合面には、ブランクPの周縁にビードBを形成する突条2aと凹溝3aが形成されている。
下型11は、ボルスタ10に取付けられたポンチホルダ12と、このポンチホルダ12に着脱可能に取付けられたポンチ1と、ポンチ1の周囲を取り囲むように設けられたクッション(以下、クッションリングという)3と、このクッションリング3を所定のクッション力で支持するクッションピン13と、成形時にクッションリング3がクッションピン13により所定のクッション力を受けながら下降するときに所定の位置から下死点まで、クッション力に加えてクッションリング3に圧力を加えて素材流入抵抗を増大させる素材流入抵抗増大手段4としてのシリンダ40と、を備えている。ポンチホルダ12の上面には突起12aが設けられており、突起12aと対応してポンチ1の下面に凹部1aが形成されている。ポンチ1はポンチホルダ12に対してその突起12aに凹部1aを嵌合することにより位置決めされ、ボルト14によって締結される。クッションリング3は、複数のクッションピン13によって支持されており、各クッションピン13はクッションリング3を昇降可能に支持するとともに、合計で所定のクッション圧(例えば120ton)をクッションリング3に付与する。クッションリング3の上面には、ダイス2の突条2aと対応して、ブランクPの周縁にビードBを形成するための凹溝3aが形成されている。図2に示すように、シリンダ40はポンチ1の周囲に複数配列される。シリンダ40は、そのピストンロッド41が伸長した状態で、クッションリング3がポンチ1に対して相対的に下降したときに、下死点から所定の位置(例えば、4〜6mm)で、クッションリング3の下面に当接されるように設定されている。シリンダ40は、例えば、作動流体としてその内部に窒素ガスを封入または供給・排出されるよう構成されたもので、合計で270tonの圧力をクッションリング3に付与することができるように設定されている。すなわち、クッションリング3は、例えば、下死点から4〜6mmの高さ以降で、クッションピン13によるクッション圧(例えば120ton)にシリンダ40による圧力(例えば270ton)が加えられるよう構成されている。
また、素材流入抵抗増大手段4は、図8に示すように、シリンダ40のピストンロッド41或いは弾性体42の上端、または、クッションリング3の下面の対応する位置に所定の厚さを有するシムあるいはブロック43を設けて、クッションリング3の下面に当接してクッション圧に素材流入抵抗を増大させるための所定の圧力を加え始める下死点からの位置(高さ)を調整することができるように構成することもできる。
さらに、図9に示すように、素材流入抵抗増大手段4として、ポンチホルダ12にシリンダ室44を形成し、このシリンダ室44にクッションリング3をピストンとして嵌合して構成することもできる。この場合においては、例えば窒素ガスや油などの流体をシリンダ室44に封入し、または、外部からシリンダ室44内に必要な圧力で供給・排出するよ
う構成することもできる。このように構成した場合には、クッションピン13を設けることなく、シリンダ室44内の圧力によってクッション圧も生じさせるよう制御してもよい。
いずれの場合にも、クッションピン13などによるクッション圧および素材流入抵抗増大手段4による圧力は、上述した実施の形態に限定されることはなく、成形条件など必要に応じて任意に設定することができる。素材流入抵抗増大手段4による圧力は、ブランクPを正常に絞り成形することができる範囲で設定することができ、例えば130〜270ton程度とすることができる。また、素材流入抵抗増大手段4による圧力は、一定ではなく、必要に応じて変化させることもできる。
本発明のプレス成形方法は、概略、ブランクPの周縁を所定の拘束力で拘束してブランクPを所定形状に絞り成形するもので、ブランクPの絞り成形時にブランクPの素材流入抵抗を増大させるよう変化させるものである。
流入抵抗が増大するよう変化することとなる。そのため、ブランクPは、クッション圧による引張応力よりも強い引張応力を受けた状態で絞り成形されることとなる。なお、素材流入抵抗増大手段4としてシリンダ40を採用する場合には、シリンダ40に供給する窒素ガスなどの作動流体の圧力を制御することにより、素材の流入抵抗を増大させるよう変化させるパターンを任意に制御することができる。
この実施の形態におけるプレス成形型の素材流入抵抗増大手段4は、クッションリング3aがシリンダ40による圧力を受けることによりブランクPの周縁に対する拘束力を増大させる拘束力増大手段43を備えている。
シリンダ40は、水平方向の位置関係に関して、クッションリング3の凹溝3aの外側に配置されている。クッションリング3の上面の凹溝3aから外側はその外周縁に向かって漸次低くなるように傾斜しており、この傾斜した面に突条43aが凹溝3aと外周縁との間に複数形成されている。図13および図14に示した実施の形態では、各突条43aは、断面三角形に形成されている。
その後、図14に示すように、さらに上型21が下死点手前の所定の位置まで下降してクッションリング3の下面外側にシリンダ40のピストンロッド41が接して、シリンダ40による圧力が加えられると、クッションリング3は、内側に倒れるように撓み変形し、その断面三角形の突条43aの頂点がブランクPのビードBの外側に食い込み拘束力が増大する。この拘束力は、従来の一般的なプレス成形型において平滑なクッションリングに対するブランクの摩擦係数μが0.1〜0.15であるのに対し、この実施の形態におけるプレス成形型ではクッションリング3に対するブランクPの摩擦係数μが例えば0.4まで増大する。その結果、ブランクPの素材流入抵抗が上述した実施の形態よりもさらに増大する。そのため、ブランクPは、上述した実施の形態よりもさらに強い引張応力を受けた状態で絞り成形され、その板内と板外に生じる応力の方向の差が少なくなってスプリングバックSBを抑制することができ、精度よく絞り成形されたプレス成形品P’を得ることができる。
シリンダ40は、水平方向の位置関係に関して、クッションリング3の凹溝3aの外側に配置されている。クッションリング3の上面の凹溝3aから外側は外周縁に向かって漸次低くなるように傾斜しており、この傾斜した面と凹溝3aとの境界角部に食い込み部43bが凹溝3aの内方に突出するように形成されている。
その後、図16に示すように、さらに上型21を下死点手前の所定の位置まで下降させてクッションリング3の下面外側にシリンダ40のピストンロッド41が接して、シリンダ40による圧力が加えられると、クッションリング3は、内側に倒れるように撓み変形することにより、図17に拡大して示すように、その食い込み部43bがブランクPのビードBに食い込んで拘束力が増大して、ブランクPの素材流入抵抗が上述した実施の形態よりもさらに増大する。そのため、ブランクPは、上述した実施の形態よりもさらに強い引張応力を受けた状態で絞り成形され、その板内と板外に生じる応力の方向の差が少なくなってスプリングバックSBを抑制することができ、精度よく絞り成形されたプレス成形品P’を得ることができる。
Claims (2)
- 絞り成形を行うプレス成形型であって、
相対向して配置されたポンチおよびダイスと、
ブランクの周縁を所定の拘束力で拘束するクッションと、
前記ブランクの絞り成形時にブランクの素材流入抵抗を増大させる素材流入抵抗増大手段と、を有しており、
前記素材流入抵抗増大手段は、前記クッションのクッション力を受ける部分よりも外側に配置されて、前記クッションが所定のクッション力を受けながら下降するときに所定の位置から下死点まで、クッション力に圧力を加えて該クッションを内側に倒れるように撓み変形させるよう構成されるとともに、該クッションが内側に倒れるように撓み変形することによりブランクの周縁に対する拘束力を増大させる拘束力増大手段を備えており、
前記クッションの上面は、前記ブランクの周縁にビードを成形するよう構成されるとともに、該ビードを成形する部分から外側がその外周縁に向かって漸次低くなるように傾斜しており、
前記拘束力増大手段は、前記クッションの上面のビードを成形する部分の外側の傾斜した面に断面三角形状に形成され、前記クッションが内側に倒れ込むように撓み変形することによって頂点が前記ブランクに成形されるビードの外側に食い込む突条によって構成されていることを特徴とするプレス成形型。 - 絞り成形を行うプレス成形型であって、
相対向して配置されたポンチおよびダイスと、
ブランクの周縁を所定の拘束力で拘束するクッションと、
前記ブランクの絞り成形時にブランクの素材流入抵抗を増大させる素材流入抵抗増大手段と、を有しており、
前記素材流入抵抗増大手段は、前記クッションのクッション力を受ける部分よりも外側に配置されて、前記クッションが所定のクッション力を受けながら下降するときに所定の位置から下死点まで、クッション力に圧力を加えて該クッションを内側に倒れるように撓み変形させるよう構成されるとともに、該クッションが内側に倒れるように撓み変形することによりブランクの周縁に対する拘束力を増大させる拘束力増大手段を備えており、
前記クッションの上面は、前記ブランクの周縁にビードを成形するよう構成されるとともに、該ビードを成形する部分から外側がその外周縁に向かって漸次低くなるように傾斜しており、
前記拘束力増大手段は、前記クッションの上面のビードを成形する部分と傾斜した面との境界角部が突出するように形成され、前記クッションが内側に倒れ込むように撓み変形することによって前記ブランクのビードに食い込む食い込み部によって構成されていることを特徴とするプレス成形型。
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