JP4808384B2 - 水素吸蔵合金 - Google Patents
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Description
水素の貯蔵手段として、高圧ガスボンベに充填した場合、体積を約150分の1にすることができ、また、液体水素にした場合は体積を800分の1にすることができるが、水素吸蔵合金の場合は、さらにそれ以上の貯蔵能力があり、合金体積の約1000倍の気体状水素を吸蔵することができる。
また、温度・圧力の調整という簡単な手段のみで水素を合金中に出し入れできるので、水素吸蔵合金は水素を安全に輸送し、且つ、高い密度で貯蔵する技術として注目されている。
さらに、水素の吸蔵・放出反応の点からみると、水素吸蔵合金が水素を吸蔵するときは発熱反応であり、逆に水素を放出するときは吸熱反応である。
このように水素を室温付近で大量に吸蔵・放出することができる水素吸蔵合金は、二次電池用の電極、自動車用或いは家庭用燃料電池の燃料貯蔵媒体、ヒートポンプ、熱エネルギー変換システム等種々の分野に用途を拡大してきている。
特に今後大きな需要と経済効果が期待される固体高分子電解質型燃料電池の運転温度は100°C程度が限界であるから、100°C以下でのスムーズな吸蔵・放出反応特性が不可欠である。
例えば、軽量で、かつ水素との親和性が高いマグネシウムおよびリチウムを水素吸蔵合金の主構成元素とし、その結晶格子が体心立方格子であるマグネシウム-リチウム系合金を含むことにより、水素の吸蔵速度が速く、単位重量当たりの水素吸蔵量が大きい水素吸蔵材料が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
この合金は、有効水素吸蔵量が1.0質量%以上で、100°C以下で水素を吸蔵放出することができる。
また、水素吸蔵合金は、化学組成、合金構造等の点から、希土類元素系、Mg系、ラーベス相系、或いは、多相系等に分けられ、合金の化学組成や組織構造については、ある程度幅広く研究がなされ、合金の性能は日々改善されてきている。
しかしながら、上記の特性に及ぼす合金中の不純物の影響については、これまで十分に検討されていなかった。特に、水素吸蔵合金中に含まれる不純物が水素吸蔵能に与える影響には特に関心がなく、不純物が大きく影響を受けることについての知見はなかった。したがって不純物の量的問題も全く解明されていなかった。
本発明は、これまでとは異なる観点から、水素吸蔵量が大きいだけでなく、吸蔵速度が速く、水素の放出を効率的、かつ容易に行うことができる水素吸蔵合金を提供することを目的とする。
本発明は上記知見に基づき、
1)合金構成元素以外の合金中の金属不純物の合計含有量が、1000wtppm以下であることを特徴とする水素吸蔵合金、2)合金構成元素以外の合金中の金属不純物の合計含有量が、500wtppm以下であることを特徴とする1記載の水素吸蔵合金、3)非金属であるS、C、Nがそれぞれ100wtppm以下であることを特徴とする1又は2記載の水素吸蔵合金、を提供する。
本発明で用いられる水素化物を作る金属としては、Ti,Ta,Hf,Zr,Li,Na,Mg,K,Ca,Sc,V,Rb,Sr,Y,Nb,Cs,Ba,La,Ta等が例示される。
合金構成元素としては、Ni,Cr,Mn,Fe,Co,Cu等が選択される。 合金中の不純物としては、S,C,N等が挙げられる。
水素吸蔵合金中の不純物量を下記のように所定値以下に規制すれば、水素吸蔵量や、反応効率をはじめ合金の種々の特性が向上した。
より好ましい態様としては、不純物総量を500wtppm以下にしたとき、水素吸蔵量と反応効率をより一層高めることができる。水素吸蔵合金の純度は99.9%以上である。
また、金属不純物の総量だけでなく、個々のS,C,Nの量をそれぞれ、100wtppm以下に規制することも、特性向上の点で重要である。好ましくはS,C,Nの量をそれぞれ、100wtppm以下とする。これらは特に水素吸蔵能に大きく影響を与え、性能を低下させる不純物である。
被覆する金属として、例えば、Pd、Pt等の貴金属をあげることができる。Pdは、水素吸蔵作用をする有効な水素化物形成金属ではないが、水素の吸蔵放出反応を助け、水素の放出を容易にする触媒作用をすると考えられる。
本発明合金の使用形態は、バルクでも粉体でも有効に使用することができる。
純度の異なる金属原料を選択し、高周波溶解炉を用い、製造条件を変えて種々の不純物量のインゴットを鋳造した。
鋳造インゴットから所定寸法の試験片を作成し、この試験片を水素加圧チャンバーに入れ、20°C、1MPaの水素加圧下で1時間暴露して水素を吸蔵・放出させ、それぞれの水素特性をジーベルツ法により測定した。
本実施例の水素吸蔵合金は、水素化物を形成する金属であるMgとLiからなり、MgとLiが原子比で1:0.5の割合で混合して製造したもので、該Mg−Li合金中の金属不純物の合計量は350wtppmであり、S:20wtppm、C:40wtppm、N:20wtppmであった。
測定の結果、水素貯蔵量は9.5wt%であることが確認された。
本実施例の水素吸蔵合金は、水素化物を形成する金属であるMgとLiからなり、MgとLiが原子比で1:1の割合で混合して製造したもので、該Mg−Li合金中の不純物の合計量は、900wtppmであり、S:80wtppm、C:60wtppm、N:70wtppmであった。測定の結果、水素貯蔵量は7.5wt%であることが確認された。
本実施例の水素吸蔵合金は、水素化物を形成する金属として、MgとLiを用い、他の合金構成元素としてNiを用いた。合金の混合組成は、Mg:Li:Niは、原子比で1:0.3:0.2の割合で混合して製造したもので、該Mg−Li−Ni合金中の金属不純物の合計量は400ppmで、S:10wtppm、C:90wtppm、N:90wtppmであった。
測定の結果、水素貯蔵量は8.5wt%であることが確認された。
実施例1と同じ条件で製造した後、さらに表面に10μmの厚さのPdをスパッタ法で被覆した試験片を用いた。
該Mg−Li合金中の不純物の合計量は、350wtppmで、S:20wtppm、C:40wtppm、N:20wtppmであった。
測定の結果、水素貯蔵量は10wt%であることが確認された。
実施例1と同じ条件で製造した後、さらに表面に5μmの厚さのPdをスパッタ法で被覆した試験片を用いた。
該Mg−Li合金中の金属不純物の合計量は300ppmで、S:10ppm、C:30ppm、N:20ppmであった。測定の結果、水素貯蔵量は11wt%であることが確認された。
本実施例の水素吸蔵合金は、水素化物を形成する金属であるMgとLiからなり、MgとLiが原子比で1:0.5の割合で混合して製造したもので、該Mg−Li合金中の金属不純物の合計量は100wtppmであり、S:20wtppm、C:20wtppm、N:20wtppmであった。
測定の結果、水素貯蔵量は12wt%であることが確認された。
本実施例の水素吸蔵合金は、水素化物を形成する金属であるMgとLiからなり、MgとLiが原子比で1:0.5の割合で混合して製造したもので、該Mg−Li合金中の金属不純物の合計量は400wtppmであり、S:40wtppm、C:30wtppm、N:20wtppmであった。
測定の結果、水素貯蔵量は9.0wt%であることが確認された。
この水素吸蔵合金は、水素化物を形成する金属である2N(99%)レベルの純度のMgと2N(99%)レベルの純度のLiからなり、これらのMgとLiを原子比で1:0.5の割合で混合し、溶解して製造したもので、該Mg−Li合金中の金属不純物の合計量は1500ppmで、S:20wtppm、C:400wtppm、N:700wtppmであった。特に、金属不純物量、C量及びN量が高い場合の例である。
不純物レベルは、本発明の条件の範囲外である。測定の結果、水素貯蔵量は2.5wt%であった。
この水素吸蔵合金は、水素化物を形成する金属であるMgとLiからなり、MgとLiの原子比で1:0.5の割合で混合し、溶解して製造したもので、この製造後、表面に10μmの厚さのPdをスパッタ法で被覆した。該Mg−Li合金中の金属不純物の合計量は4500ppmで、S:1100wtppm、C:2000wtppm、N:400wtppmであった。特に、金属不純物量が著しく多く、S量、C量及びN量も高い場合の例である。
不純物レベルは、本発明の条件の範囲外である。測定の結果、水素貯蔵量は1.5wt%であることが確認された。Mg−Li合金中の不純物が強く影響しており、表面のPd被覆には改善効果はなかった。
この水素吸蔵合金は、水素化物を形成する金属であるMgとLiからなり、MgとLiの原子比で1:0.7の割合で混合し、溶解して作製後、表面に5μmの厚さのPdをスパッタ法で被覆したもので、該Mg−Li合金中の金属不純物の合計量は2500ppmで、S:30wtppm、C:700wtppm、N:1500wtppmであった。特に、金属不純物量、C量及びN量が高い場合の例である。
不純物レベルは、本発明の条件の範囲外である。測定の結果、水素貯蔵量は2wt%であることが確認された。Mg−Li合金中の不純物が強く影響しており、表面のPd被覆には改善効果はなかった。
この水素吸蔵合金は、水素化物を形成する金属であるMgとLiからなり、MgとLiの原子比で1:0.7の割合で混合し、溶解して作製後、表面に5μmの厚さのPdをスパッタ法で被覆したもので、該Mg−Li合金中の金属不純物の合計量は2000ppmで、S:500wtppm、C:450wtppm、N:50wtppmであった。特に、金属不純物量、S量及びC量が高い場合の例である。
不純物レベルは、本発明の条件の範囲外である。測定の結果、水素貯蔵量は3.0wt%であることが確認された。Mg−Li合金中の不純物が強く影響しており、表面のPd被覆には改善効果はなかった。
この水素吸蔵合金は、水素化物を形成する金属であるMgとLiからなり、MgとLiの原子比で1:0.7の割合で混合し、溶解して作製後、表面に5μmの厚さのPdをスパッタ法で被覆したもので、該Mg−Li合金中の金属不純物の合計量は400ppmで、S:120wtppm、C:60wtppm、N:80wtppmであった。特に、S量がやや高い場合の例である。
不純物レベルは、本発明の条件の範囲外である。測定の結果、水素貯蔵量は3.5wt%であることが確認された。Mg−Li合金中の不純物が強く影響しており、表面のPd被覆には改善効果はなかった。
この水素吸蔵合金は、水素化物を形成する金属であるMgとLiからなり、MgとLiの原子比で1:0.7の割合で混合し、溶解して作製後、表面に5μmの厚さのPdをスパッタ法で被覆したもので、該Mg−Li合金中の金属不純物の合計量は200ppmで、S:30wtppm、C:120wtppm、N:180wtppmであった。特に、C量とN量が高い場合の例である。
不純物レベルは、本発明の条件の範囲外である。測定の結果、水素貯蔵量は4.0wt%であることが確認された。Mg−Li合金中の不純物が強く影響しており、表面のPd被覆には改善効果はなかった。
なお、上記実施例及び比較例において示す水素を吸蔵する金属の例は、煩雑さを避けるため、必ずしも全てに亘って述べてはいないが、合金中の不純物の問題は、全ての吸蔵合金において共通している。
すなわち、不純物の多量の含有は水素吸蔵能を著しく低下させる原因となることが上記実施例及び比較例から明らかである。したがって、水素吸蔵合金の選択と共に、不純物の低減は水素吸蔵能を高める上で極めて重要である。
本発明は、水素吸蔵合金の全てに適用できるものである。そして、本発明はそれらを全て包含する。
Claims (2)
- 水素化物を作る金属元素であるLi若しくはMgから構成される水素吸蔵合金、又は該水素吸蔵合金とNiの合金構成元素からなる水素吸蔵合金であって、上記水素吸蔵合金に含有される金属元素以外の金属不純物の合計含有量が1000wtppm以下であり、かつ非金属であるS、C、Nがそれぞれ100wtppm以下であることを特徴とする水素吸蔵合金。
- 水素吸蔵合金に含有される金属元素以外の金属不純物の合計含有量が、500wtppm以下であることを特徴とする請求項1記載の水素吸蔵合金。
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