JP4808066B2 - 車両用アンダーカバー - Google Patents

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Description

本発明は、車両用アンダーカバーに係り、特に、車体下部での空気抵抗を低減せしめることを主な目的として、車体の床下を覆って配置される車両用アンダーカバーの改良された構造に関する。
よく知られているように、自動車等の車両では、車体表面に凹凸部が存在すると、走行時における車体表面での空気の円滑な流れが阻害されるようになり、それによって、空気抵抗が増大して、走行安定性が損なわれたり、或いは燃費が悪化する等の問題が惹起される。そこで、近年では、空気力学的性能等を考慮して、車体の側面や上面を、可及的に空気抵抗の小さな形状となるように設計するだけでなく、車体の床下を、全体として平板形状を呈するアンダーカバーにて覆って、フラット化することで、空気抵抗低減化の一層の促進が、図られている。
ところで、そのように、車両用アンダーカバーが車体の床下に設置される場合には、アンダーカバーの上面と車体の床下との間に不可避的に形成された隙間から、アンダーカバーの内側に、タイヤの回転の巻き上げや洗車等によって、水や泥、砂利、小石等が侵入せしめられるようになる。このため、従来の車両用アンダーカバーにおいては、それら水や小石等の侵入物を外部に排出するための排出孔が、一般に設けられている(例えば、下記特許文献1参照)。
ところが、そのような排出孔を有する従来の車両用アンダーカバーでは、殆どのものが、平坦な下面を有するアンダーカバー本体に形成された、単なる円形の貫通孔にて、排出孔が構成されているため、車体の床下を、アンダーカバー本体の平坦な下面に沿って車体前方から後方に向かって水平に流れる気流が、排出孔の内周面のうちの車体後部側部位に対して直接に当たるようになり、それによって、空気抵抗が増大するといった問題が惹起されていた。
かかる状況下、本発明者等は、そのような排出孔の形成部位での空気抵抗の増大に対する対策について、種々検討を重ねた結果、例えば、図6に示される如き構造を有する車両用アンダーカバーを用いることを着想した。即ち、図6に示されるように、このアンダーカバー100は、アンダーカバー本体102の下面104に対して、車体前方(図6中、左方)と後方(図6中、右方)とに向かってそれぞれ下傾する二つの辺部を含む三角形状の車体前後方向断面形状を有する突出部106が、一体的に設けられている。そして、かかる突出部106のうち、車体前方に向かって下傾する辺部を含む部分が、かかる辺部に沿って、アンダーカバー本体102の下面104から下傾して延びる排出孔形成部108とされて、この排出孔形成部108に対して、排出孔110が設けられている。また、突出部106のうち、車体後方に向かって下傾する辺部を含む部分が、アンダーカバー本体102の下面104に沿って流れる気流を、車体の床下を後方に向かう水平な流れ(図6において矢印アにて示される流れ)から下傾する流れ(図6において矢印イにて示される流れ)となるように案内する気流案内部112とされている。かくして、かかるアンダーカバー100では、車体の床下を後方に向かって流れる気流が、気流案内部112に案内されることで、排出孔110の内周面に直接に当たらないようにされ、以て、空気抵抗の増大の解消乃至は抑制が図られるようになっているのである。
しかしながら、本発明者等が、そのような空気抵抗の増大防止のための突出部が設けられたアンダーカバー100を用いて、空気抵抗に関する解析を行ったところ、かかるアンダーカバー100においては、確かに、排出孔110の形成部位での空気抵抗の増大は抑制されるものの、アンダーカバー本体102の平坦な下面104に対する突出部106の形成によって、かかる突出部106の周囲での空気抵抗が大きくなってしまい、結局、単に、排出孔のみがアンダーカバー本体に設けられたに過ぎない従来のアンダーカバーと比較しても、空気抵抗の低減効果において、然程大きな差異が認められず、更なる改良が必要であることが、明らかとなったのである。
特開2001−18852号公報
ここにおいて、本発明は、上述せる如き事情を背景にして為されたものであって、その解決課題とするところは、内側に侵入した侵入物の排出孔を有する車両用アンダーカバーにおいて、車体下部での空気抵抗の低減化を、より十分に且つ更に効果的に図り得るように改良された構造を提供することにある。
そして、本発明にあっては、かかる課題の解決のために、先ず、上記せる如き突出部を有するアンダーカバーと、突出部を有しない従来のアンダーカバーとの間で、空気抵抗の低減効果において、明確な差異が認められない理由について、換言すれば、図6に示される如き構造を有する突出部106を備えたアンダーカバー100が、単なる貫通孔にて構成された排出孔のみを有して、突出部を何等有しない従来のアンダーカバーと同程度の空気抵抗が生ずる理由について、探求を行った。その結果、以下の如き結論を得た。
すなわち、図6に示されるように、このアンダーカバー100においては、アンダーカバー本体102に一体形成された突出部106のうち、気流案内部112における車体前後方向断面と水平面とのなす角の大きさ(図6中、θ1 にて示される角度)が比較的に大きなものであるため、車体下部を流れる気流が、アンダーカバー本体102の下面104に沿った略水平な流れ(図6において矢印アにて示される流れ)の状態において、気流案内部112に当たったときに、空気抵抗:D1 が生ずるようになる。また、この気流は、気流案内部112に案内されて、下傾する流れ(図6において矢印イにて示される流れ)となるが、排出孔形成部108における車体前後方向断面の水平面に対する傾斜角度(図6中、θ2 にて示される角度)が比較的に大きくされているところから、かかる気流の流速が大きくなればなる程、排出孔形成部108の後方側近傍の空間内への空気の流入が困難となる。そして、それにより、排出孔形成部108の後方側近傍の空間内が負圧となって、そこで、排出孔形成部108に対して、それを後方に引張する引張力を作用せしめる空気の渦流(図6中、矢印ウにて示す)が不可避的に発生し、その結果、排出孔形成部108の後方側近傍に空気抵抗:D2 が生ずるようになる。
従って、かくの如き構造を有するアンダーカバー100を車体の床下に設置した場合にあっても、気流が気流案内部112に当たったときに生ずる空気抵抗:D1 と、排出孔形成部108の後方側近傍において発生する渦流によって生ずる空気抵抗:D2 とによって、結局、車体下部で生ずる空気抵抗全体の大きさが、従来のアンダーカバーを使用した場合と同程度の大きさとなってしまうとの結論に達したのである。
而して、本発明者等は、そのような結論から、気流案内部112における車体前後方向断面と水平面とのなす角:θ1 と、排出孔形成部108における車体前後方向断面の水平面に対する傾斜角度:θ2 の最適範囲内の値とすることで、空気抵抗の低減化を図ることを着想した。そこで、それらθ1 とθ2 の最適範囲を決定するために、先ず、排出孔110の直径を10mmとし且つ前記θ1 を6°とした上で、前記θ2 を種々変更したときの空気抵抗を、流体解析によって求めた。その結果を、図7に示した。また、その一方で、排出孔110の直径を10mmとし且つ前記θ2 を6°とした上で、前記θ1 を種々変更したときの空気抵抗を、流体解析によって求めた。その結果を、図8に示した。更に、それらとは別に、前記せる従来のアンダーカバーにおける直径10mmの排出孔110の周辺部位の空気抵抗も、流体解析によって求めた。その結果を、図7及び図8に、□で、それぞれ示した。
なお、ここで、θ1 とθ2 の基準値を6°としたのは、(a)かかるθ1 の大きさが3°未満であると、例えば、アンダーカバー100が樹脂成形品等である場合に、気流案内部112や排出形成部108を、射出成形等の公知の成形手法により、高精度に形成することは容易ではなく、それら気流案内部112や排出形成部108、ひいてはアンダーカバー全体の製作性を大きく損なうといった問題が惹起されるようになること、また、(b)θ1 やθ2 の大きさが余りに大きいと、気流案内部112への気流の衝突による空気抵抗:D1 や、排出孔形成部108の後方側近傍において発生する渦流によって生ずる空気抵抗:D2 が大きくなることが、当然に予想されること等からである。
そして、それら図7及び図8から、θ1 の大きさが6°であり、且つθ2 が3〜9°の範囲内の値とされたアンダーカバーと、θ2 の大きさが6°であり、且つθ1 が3〜8°の範囲内の値とされたアンダーカバーとが、それぞれ、従来のアンダーカバーよりも空気抵抗が小さくなることを見出したのである。
すなわち、本発明は、かくの如き知見に基づいて完成されたものであって、その要旨とするところは、車体の床下を覆って設置されるアンダーカバーであって、該床下への設置状態下で該床下との間に侵入した侵入物を外部に排出するための排出孔を有するものにおいて、前記車体の床下側とは反対側の下面に対して、車体後方に向かって下傾する第一の辺部と車体前方に向かって下傾する第二の辺部とを含む三角形状の車体前後方向断面形状を有する突出部を一体的に設けると共に、該突出部のうちの該第一の辺部を含む部分を、前記車体の床下を車体前方から後方に向かって流れる気流を下傾する流れとなるように案内する気流案内部とする一方、該突出部のうちの前記第二の辺部を含む部分を、前記下面から該第二の辺部に沿って下傾して延びる排出孔形成部とし、且つ該排出孔形成部に前記排出孔を設け、更に、前記第一の辺部の水平面に対する傾斜角度を3〜8°の範囲内の値とすると共に、前記第二の辺部の水平面に対する傾斜角度を3〜9°の範囲内の値としたことを特徴とする車両用アンダーカバーにある。
すなわち、この本発明に従う車両用アンダーカバーにあっては、気流案内部における車体前後方向断面の水平面との傾斜角度(θ1 )の大きさが3〜8°とされる一方、排出孔形成部における車体前後方向断面の水平面との傾斜角度(θ2 )の大きさが3〜9°とされている。
それ故に、単なる貫通孔にて構成された排出孔のみを有し、気流案内部と排出孔形成部とからなる突出部を何等有しない従来のアンダーカバーや、そのような突出部を有するものの、実際には、従来のアンダーカバーと空気抵抗低減効果において然程差異のない、アンダーカバーよりも、空気抵抗が、効果的に小さくされ得る。
従って、本発明に従う車両用アンダーカバーにあっては、車体の床下への設置状態下で、床下との間に侵入した侵入物を排出する排出孔を有しているにも拘わらず、車体下部での空気抵抗の低減化を、より十分に且つ更に効果的に図ることが出来る。そして、その結果として、車両の走行安定性と燃費とを、何れも有利に向上せしめることが可能となるのである。
発明の態様
ところで、本発明は、少なくとも、以下に列挙する如き各種の態様において、好適に実施され得るものである。
(1) 車体の床下を覆って設置されるアンダーカバーであって、該床下への設置状態下で該床下との間に侵入した侵入物を外部に排出するための排出孔を有するものにおいて、前記車体の床下側とは反対側の下面に対して、車体後方に向かって下傾する第一の辺部と車体前方に向かって下傾する第二の辺部とを含む三角形状の車体前後方向断面形状を有する突出部を一体的に設けると共に、該突出部のうちの該第一の辺部を含む部分を、前記車体の床下を車体前方から後方に向かって流れる気流を下傾する流れとなるように案内する気流案内部とする一方、該突出部のうちの前記第二の辺部を含む部分を、前記下面から該第二の辺部に沿って下傾して延びる排出孔形成部とし、且つ該排出孔形成部に前記排出孔を設け、更に、前記第一の辺部の水平面に対する傾斜角度を3〜8°の範囲内の値とすると共に、前記第二の辺部の水平面に対する傾斜角度を3〜9°の範囲内の値としたことを特徴とする車両用アンダーカバー。
(2) 上記の態様(1)において、前記排出孔が、5〜25mmの範囲内の直径を有する円形孔にて構成されていること。この本態様によれば、排出孔が、アンダーカバーの内側に侵入した水や小石、砂利等を排出するための排出孔として、有効に且つ確実に機能せしめられ得ると共に、この排出孔からの小石や砂利の侵入が、効果的に防止され得ることとなる。
(3) 上記せる態様(1)又は態様(2)において、前記気流案内部が、車体後方から前方に向かって漸減する幅を有して構成されていること。このような本態様によれば、十分な大きさの排出孔を形成可能な排出孔形成部の面積を確保しつつ、気流案内部の気流との接触面積を有利に小さく為すことが出来る。それによって、そのような気流と気流案内部との接触により生ずる空気抵抗を可及的に減少せしめることが可能となり、その結果、空気抵抗の低減化が、より一層促進され得る。
以下、本発明を更に具体的に明らかにするために、本発明に係る車両用アンダーカバーの構成について、図面を参照しつつ、詳細に説明することとする。
先ず図1及び図2には、本発明に従う構造を有する車両用アンダーカバーの一例として、自動車の車体の前部の下面を覆って設置される自動車用アンダーカバーが、その下面形態と縦断面形態とにおいて、それぞれ概略的に示されている。それらの図から明らかなように、本実施形態のアンダーカバー10は、基板部12と脚部14とを一体的に有し、例えば、ポリアミド樹脂等を用いて形成された樹脂成形品にて、構成されている。
より具体的には、アンダーカバー10の基板部12は、全体として、下面16と上面18とが、それぞれ平坦面とされた平板形態を呈している。また、この基板部12においては、アンダーカバー10の車体下面への設置状態下で、図1における上下方向(図2中、紙面に垂直な方向)に対応する長さ方向が、車体の前後方向となる一方、図1における左右方向(図2中、左右方向)に対応する幅方向が、車体の幅方向となるように構成されている。そして、かかる基板部12の上面18の外周縁部に、脚部14が、所定高さ突出し、且つ全周に亘って周方向に連続して延びる枠状形態をもって、一体的に立設されているのである。なお、以下からは、原則として、図1の上下方向を車体前後方向、また、図1の左右方向を車幅方向、更に、基板部12の上面18側と下面16側とをそれぞれ上方と下方と言うこととする。
また、基板部12には、横ビード20と縦ビード22とが、それぞれ形成されている。これら横ビード20と縦ビード22は、何れも、基板部12の下面において開口する、細長い矩形凹溝形態を有している。そして、横ビード20は、基板部12の前部において、車幅方向に真っ直ぐに連続して延びるように、例えば1個形成されている。また、縦ビード22は、基板部12における横ビード20の形成部位よりも後側部分において、車幅方向に互いに等間隔を隔てて、車体前後方向に真っ直ぐに連続して延びるように、例えば6個形成されている。
一方、脚部14には、その外周面のうち、車体前方側と後方側とにそれぞれ位置する部分に、車幅方向に所定長さで延びる長手矩形の外フランジ部24a,24bとが、それぞれ一体形成されている。また、かかる外周面における車体の左方方向両側にそれぞれ位置する部分には、略正矩形形状を呈する外フランジ部24c,24dが、各々一体形成されている。更に、それら各外フランジ部24a〜dには、所定の取付ボルトが挿通可能な挿通孔26が、それぞれ、複数個又は1個設けられている。
そして、本実施形態のアンダーカバー10にあっては、図には明示されてはいないものの、脚部14の先端面が、自動車の車体の前部の床下に当接せしめられることにより、かかる車体の床下に、上面18を脚部14の高さ分だけの距離を隔てて対向させ、且つ下面16が水平となるように配置され、また、そのような配置状態下で、各外フランジ部24a〜dの挿通孔26に挿通された取付ボルトが、車体の床下にボルト固定されることで、車体の前部の床下に、その略全体を覆った状態で取り付けられるようになっている。
かくして、かかるアンダーカバー10においては、全体として平坦面とされた基板部12の下面16が、水平に位置せしめられていることで、車体の床下に設置された状態での自動車の走行時に、車体の下方を流れる気流(空気)が、かかる基板部12の下面16に沿って、水平方向にスムーズに流動せしめられ得るようになっている。また、そのような基板部12に1個の横ビード20と複数個の縦ビード22とが設けられていることにより、基板部12、ひいてはアンダーカバー16全体が、十分に補強されている。
ところで、かくの如き構造とされたアンダーカバー10にあっては、基板部12の下面16の複数個所に、下方に突出する突出部28が、それぞれ設けられている。また、それら各突出部28には、アンダーカバー10の車体床下への設置状態下で、基板部12の内側空間(基板部12の上面18側において、車体床下と基板部12との間に形成される空間)内に侵入した水や、泥、砂利、小石等の侵入物を外部に排出するための排出孔30が、それぞれ、円形形状をもって、形成されている。そして、本実施形態においては、特に、この排出孔30が形成された突出部28が、従来品には見られない特別な構造をもって構成されているのである。
より詳細には、図2乃至図4から明らかなように、突出部28は、車体前後方向の断面形状が、突出部28の車体床下への設置状態下で水平面とされた、基板部12の下面16上において前後方向に延びる直線の一部からなる底辺部:L1 と、かかる底辺部:L1 の一端から後方に向かって下傾して延びる第一の傾斜辺部(第一の辺部):L2 と、底辺部:L1 の他端から前方に向かって下傾して延びる第二の傾斜辺部(第二の辺部):L3 の三つの辺部を有する、高さの低い、比較的に扁平な三角形状を呈している。
そして、かかる突出部28にあっては、第一の傾斜辺部:L2 を含む前側部分が、かかる第一の傾斜辺部:L2 に沿って延びる気流案内部32とされていると共に、第二の傾斜辺部:L3 を含む後側部分が、この第二の傾斜辺部:L3 に沿って延びる排出孔形成部34とされている。
すなわち、突出部28の排出孔形成部34は、外周の上側1/2周部分が、前記排出孔30の径よりも所定寸法大きな弦を有する円弧乃至は湾曲形状とされる一方、外周の残りの下側略1/2周部分が略コ字形状とされた鞍型乃至はドーム状の外周形状を有し、且つ第二の傾斜辺部:L3 を含む外面が、平坦な傾斜平面36とされた平板形態を呈している。また、この排出孔形成部34の傾斜平面36の中心部分に、前記排出孔30が、板厚方向に貫通して、形成されているのである。そして、このような排出孔形成部34が、傾斜平面36を、基板部12の下面16との連続面とし、且つかかる下面16から、第二の傾斜辺部:L3 に沿って、後方に向かって下傾して延びるようにして、基板部12に一体形成されている。
なお、この排出孔形成部34に形成される排出孔30の大きさは、特に限定されるものではないものの、好適には、その直径が5〜25mm程度とされる。何故なら、排出孔30の直径が5mmを下回る場合には、排出孔30が余りにも小さ過ぎるために、基板部12と車体床下との間に入り込んだ水を、排出孔30を通じて外部に排出することが困難となる恐れがあるからである。また、排出孔30の直径が25mmを越えるようになると、今度は排出孔30が余りにも大きくなり過ぎて、砂利や小石等が、そのような大径の排出孔30を通じて、基板部12と車体床下との間に侵入し易くなってしまうからである。すなわち、ここでは、排出孔30の径が5〜25mm程度とされていることによって、排出孔30が、水抜き孔として有効に機能し得ると共に、排出孔30を通じての砂利や小石等の侵入が有利に防止され得るようになっている。
一方、突出部28の気流案内部32においては、第一の傾斜辺部:L2 を含む外面(下面)が、車幅方向において湾曲する湾曲面からなる案内面38として、構成されている。この案内面38は、第一の傾斜辺部:L2 に沿って、後方に向かうに従って徐々に高くなる高さを有しており、また、その幅が、前方に向かうに従って徐々に小さくされて、前方側端部の平面視が略U字形状とされている。そして、このような案内面38を備えた気流案内部32が、案内面38を、基板部12の下面16との連続面とし、且つかかる下面16から、後方に向かって下傾するように延出せしめると共に、排出孔形成部34の傾斜平面とも連続面と為した状態で、基板部12に一体形成されているのである。
かくして、かかるアンダーカバー10にあっては、車体への装着状態下での自動車の走行時に、車体下部を流れる気流を、図4において矢印アにて示される如き、基板部12の下面16に沿った水平な流れから、気流案内部32の案内面38による案内により、図4において矢印イにて示されるような、案内面38に沿って下傾する流れと為し得るようになっている。そして、それによって、気流が、排出孔形成部34に形成された排出孔30の内周面に直接に当たらないようにされ、以て、そのような排出孔30の内周面に対する気流の衝突による空気抵抗の増大が、有利に解消乃至は抑制され得るようになっている。
そして、本実施形態においては、特に、気流案内部32の案内面38上において前後方向に延びる前記第一の傾斜辺部:L2 と、水平方向に延びる前記底辺部:L1 とのなす角:θ1 、換言すれば、基板部12の水平な下面16に対する、後方に向かって下傾する気流案内部32の傾斜角度(俯角):θ1 が、3〜8°とされており、また、排出孔形成部34の傾斜平面36上において前後方向に延びる前記第二の傾斜辺部:L3 と、水平方向に延びる底辺部:L1 とのなす角:θ2 、換言すれば、基板部12の水平な下面16に対する、前方に向かって下傾する排出孔形成部34の傾斜角度(俯角):θ2 が、3〜9°とされている。
すなわち、ここでは、基板部12の下面16に対する気流案内部32と排出孔形成部34のそれぞれの傾斜角度:θ1 、θ2 とが、何れも3°以上とされていることで、気流案内部32と排出孔形成部34とが、公知の射出成形手法等の従来手法により、基板部12に対して、高精度に且つ容易に一体形成され得るようになっている。
そして、その上で、基板部12の下面16に対する気流案内部32の傾斜角度:θ1 が、8°以下の十分に小さな大きさとされているところから、アンダーカバー10の車体への装着下において、車体下部を、基板部12の下面16に沿って水平に流れる気流が、気流案内部32の案内面38に当たって、かかる案内面38に沿った流れ(図4において矢印イにて示される流れ)に変更せしめられるときに不可避的に生ずる空気抵抗:d1 が、十分に小さくされ得るようになっている。
また、基板部12の下面16に対する排出孔形成部34の傾斜角度:θ2 が、9°以下の十分に小さな大きさとされているところから、気流案内部32の案内面38に沿って流れる気流が、排出孔形成部34における傾斜平面36の後方側近傍の空間内に、極めて容易に且つスムーズに流入せしめられ、それにより、そのような空間内の負圧化が有利に抑制されるようになる。その結果、排出孔形成部34の傾斜平面36に対して、それを後方に引張する引張力を作用せしめる空気の渦流(図4中、矢印ウにて示す)が、傾斜平面36の後方側近傍の空間内で生ずることが効果的に解消されるか、若しくはそのような渦流が可及的に小さく為され、以て、かかる渦流により生ずる空気抵抗:d2 が、十分に小さくされ得るようになっている。
このように、本実施形態のアンダーカバー10にあっては、基板部12の下面16に対する気流案内部32の傾斜角度:θ1 が3〜8°の範囲内の値とされ、且つ基板部12の下面16に対する排出孔形成部34の傾斜角度:θ2 が3〜9°の範囲内の値とされていることによって、気流が気流案内部32に当たったときに生ずる空気抵抗:d1 と、排出孔形成部34の後方側近傍において発生する渦流によって生ずる空気抵抗:d2 とを合計しても、それらの空気抵抗:d1 、d2 の合計量が、突出部28を何等設けることなく、排出孔30を、単なる貫通孔として基板部12に設けてなる従来品において生ずる空気抵抗や、突出部28が設けられるものの、気流案内部32や排出孔形成部32の水平面に対する傾斜角度が極めて大きくされたものにおいて生ずる空気抵抗よりも、十分に小さく為され得るようになっている。
従って、かくの如き本実施形態のアンダーカバー10を用いれば、車体の床下への設置状態における車体下部での空気抵抗の低減化を、極めて十分に且つより効果的に図ることが出来る。そして、その結果として、自動車の走行安定性と燃費とを、何れも有利に向上せしめることが可能となるのである。
また、かかるアンダーカバー10においては、気流案内部32の案内面38が、前方に向かうに従って徐々に小さくなる幅を有し、且つかかる案内面38における前方側端部の平面視が略U字形状とされているところから、そのような案内面38と連続面となる排出孔形成部34の傾斜平面36の面積を小さく為すことなく、従って、そこに形成される排出孔30の大きさを十分に確保しつつ、案内面38の気流との接触面積が有利に小さくされ得る。そして、その結果、気流と案内面38との接触により生ずる空気抵抗を可及的に減少せしめることが可能となり、これによっても、空気抵抗の低減化が、より一層促進され得る。
なお、ここにおいて、本実施形態に係るアンダーカバー10が、上述せる如き特徴を確実に発揮され得るものであることを確かめるために、本発明者等によって実施された流体解析(CFD)について、詳述する。
すなわち、先ず、図1乃至図4に示される如き構造を有すると共に、水平面とされた基板部(12)の下面(16)に対する気流案内部(32)の傾斜角度:θ1 と、かかる基板部(12)の下面(16)に対する排出孔形成部(34)の傾斜角度:θ2 とが、それぞれ、本発明において特定される範囲内の値である(θ1 ,θ2 )=(3°,3°)、(θ1 ,θ2 )=(3°,6°)、(θ1 ,θ2 )=(6°,3°)、(θ1 ,θ2 )=(6°,6°)とされた4種類のアンダーカバーをそれぞれ想定し、これら4種類のアンダーカバーにおいて、気流の流速を100km/hとした条件下での排出孔(30)の径の変化に伴う抗力の変化を、流体解析によって、各々求めた。それらの結果を、図5に併せて示した。
また、それとは別に、図1乃至図4に示される如き構造を有するものの、θ1 ,θ2 のそれぞれの大きさが、本発明において特定される範囲外の値である(θ1 ,θ2 )=(3°,11°)、(θ1 ,θ2 )=(6°,11°)、(θ1 ,θ2 )=(11°,3°)、(θ1 ,θ2 )=(11°,6°)、(θ1 ,θ2 )=(11°,11°)とされた5種類のアンダーカバーを、それぞれ想定し、これら5種類のアンダーカバーにおいて、気流の流速を100km/hとした条件下での排出孔(30)の径の変化に伴う抗力の変化を、流体解析によって、各々求めた。それらの結果を、図5に併せて示した。
さらに、それらとは別に、図1乃至図4に示される構造において設けられる突出部(28)が、基板部に何等設けられることなく、平板形状を呈する基板部に対して、排出孔が、単なる円形の貫通孔として形成された、突出部を有しない従来のアンダーカバーを想定し、このアンダーカバーにおいて、気流の流速を100km/hとした条件下での排出孔の径の変化に伴う抗力の変化を、流体解析によって求めた。その結果を、図5に併せて示した。
かかる図5から明らかなように、上記せる如き突出部を有しない従来のアンダーカバーを用いた場合の抗力を比較基準値とすると、図1乃至図4に示される如き構造を有し、且つθ1 ,θ2 のそれぞれの大きさが、本発明において特定される範囲内の値とされたアンダーカバーを用いた場合の抗力は、排出孔の径の大きさに拘わらず、常に、比較基準値よりも小さい値となっていることが、認められる。これに対して、図1乃至図4に示される如き構造を有するものの、θ1 ,θ2 のそれぞれの大きさが、本発明において特定される範囲内の値とは異なる値されたアンダーカバーを用いた場合の抗力は、排出孔の径の大きさに拘わらず、常に、比較基準値よりも大きな値となっていることが、認められる。
これらのことから、基板部に対して、気流案内部と排出孔形成部とからなる突出部を一体形成すると共に、それら気流案内部と排出孔形成部の水平面に対するそれぞれの傾斜角度:θ1 、θ2 を、本発明において特定される範囲内の値とすることにより、空気抵抗の低減化が確実に図られ得ることが、明確に認識され得る。
以上、本発明の具体的な構成について詳述してきたが、これはあくまでも例示に過ぎないのであって、本発明は、上記の記載によって、何等の制約をも受けるものではない。
例えば、排出孔30の基板部12に対する形成位置や形成個数は、例示のものに、何等限定されるものではなく、基板部12の形状や大きさ等に応じて、適宜に決定されるところである。
また、気流案内部32(案内面38)の形状も、案内面38上において車体前後方向に延びる第一の傾斜辺部:L2 の水平面に対する傾斜角度(俯角):θ1 が、3〜8°とされておれば、かかる気流案内部32の全体形状は、特に限定されるものではない。従って、例えば、気流案内部32の案内面38が、湾曲面に代えて、傾斜面とされていても、或いは縦断面多角形形状とされていても、何等差し支えないのである。また、かかる案内面38の平面視形状も、多角形形状とされていても良い。
さらに、排出孔形成部34の形状も、外面上において車体前後方向に延びる第二の傾斜辺部:L3 の水平面に対する傾斜角度(俯角):θ2 が、3〜9°とされておれば、かかる排出孔形成部34の全体形状は、特に限定されるものではない。従って、例えば、排出孔形成部34の外面が、傾斜面に代えて、湾曲面とされていても、或いは横断面(水平方向断面)多角形形状とされていても、何等差し支えないのである。また、この排出孔形成部34の一つのものに、複数の排出孔30を形成することも出来る。
更にまた、アンダーカバー10の全体形状や車体の床下への取付構造も、例示のものに、決して限定されるものでないことは、言うまでもないところである。
加えて、本発明は、自動車の車体の床下を覆って設置されるアンダーカバーの他、自動車以外の車両における車体の床下を覆って設置される車両用アンダーカバーの何れに対しても、有利に適用可能であることは、勿論である。
その他、一々列挙はしないが、本発明は、当業者の知識に基づいて種々なる変更、修正、改良等を加えた態様において実施され得るものであり、また、そのような実施態様が、本発明の趣旨を逸脱しない限り、何れも、本発明の範囲内に含まれるものであることは、言うまでもないところである。
本発明に従う車両用アンダーカバーの一実施形態を示す下面説明図である。 図1におけるII−II断面の拡大説明図である。 図1における部分拡大説明図である。 図3におけるIV−IV断面の拡大説明図である。 本発明に従う構造を有する車両用アンダーカバーと、本発明とは異なる構造や従来構造を有する車両用アンダーカバーとを、それぞれ想定した流体解析により求めた、排出孔の径と抗力との関係を示すグラフである。 本発明に従う構造とは異なる構造を有する車両用アンダーカバーを示す図3に対応する図である。 気流案内部の水平面に対する傾斜角度:θ1 を6°とする一方、排出孔形成部の水平面に対する傾斜角度:θ2 を種々変化させたときの、かかる傾斜角度:θ2 と抗力との関係を流体解析によって求めたグラフである。 排出孔形成部の水平面に対する傾斜角度:θ2 を6°とする一方、気流案内部の水平面に対する傾斜角度:θ1 を種々変化させたときの、かかる傾斜角度:θ1 と抗力との関係を流体解析によって求めたグラフである。
符号の説明
10 アンダーカバー 12 基板部
14 脚部 16 下面
28 突出部 30 排出孔
32 気流案内部 34 排出孔形成部
36 傾斜平面 38 案内面

Claims (3)

  1. 車体の床下を覆って設置されるアンダーカバーであって、該床下への設置状態下で該床下との間に侵入した侵入物を外部に排出するための排出孔を有するものにおいて、
    前記車体の床下側とは反対側の下面に対して、車体後方に向かって下傾する第一の辺部と車体前方に向かって下傾する第二の辺部とを含む三角形状の車体前後方向断面形状を有する突出部を一体的に設けると共に、該突出部のうちの該第一の辺部を含む部分を、前記車体の床下を車体前方から後方に向かって流れる気流を下傾する流れとなるように案内する気流案内部とする一方、該突出部のうちの前記第二の辺部を含む部分を、前記下面から該第二の辺部に沿って下傾して延びる排出孔形成部とし、且つ該排出孔形成部に前記排出孔を設け、更に、前記第一の辺部の水平面に対する傾斜角度を3〜8°の範囲内の値とすると共に、前記第二の辺部の水平面に対する傾斜角度を3〜9°の範囲内の値としたことを特徴とする車両用アンダーカバー。
  2. 前記排出孔が、5〜25mmの範囲内の直径を有する円形孔にて構成されている請求項1に記載の車両用アンダーカバー。
  3. 前記気流案内部が、車体後方から前方に向かって漸減する幅を有して構成されている請求項1又は請求項2に記載の車両用アンダーカバー。
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