JP4807920B2 - 総ホモシステイン測定方法 - Google Patents
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Description
本発明は、ホモシステインの測定方法に関する。
背景技術
メチオニン代謝の中間代謝物の1つであるホモシステインは、血管内皮細胞傷害作用を有し、他の因子とは独立した動脈硬化性疾患の危険因子であることが報告されている。ホモシステイン代謝酵素の欠損により引き起こされる強度の高ホモシステイン血症(ホモシスチン尿症)のほかに、遺伝子異常による代謝酵素活性の低下、腎不全、加齢、喫煙、運動不足などによっても、中等度の高ホモシステイン血症を呈することが明らかになっている(Jacobsen,Clin.Chem.44:8(B),1998)。また、これらの高ホモシステイン血症は、ビタミンB6・葉酸などの摂取により改善することも報告されている(JAMA 270:693,1993)。したがって、新生児マススクリーニングだけでなく、成人の動脈硬化性疾患の予防やビタミン欠乏症の発見のためにも、簡便で多数の検体を処理できる方法が要求されている。
血中のホモシステインの大部分(99%)は、酸化型のジスルフィド化合物(蛋白結合型、ホモシスチン、システイン−ホモシステイン結合型など)として存在している(Jacobsen,Clin.Chem.44,8(B),1998)。総ホモシステインは、これら酸化型および還元型ホモシステインの総量を意味し、通常その測定のためには、試料をまず還元剤により還元型ホモシステインに変換する必要がある。
ホモシステインの測定には、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)法および免疫法が主として用いられている。前者で用いられるHPLC装置は、臨床検査の現場では一般的とは言えず、加えてその操作には時間、労力、費用を必要とする。また、後者は、自動化されているものの(Shipchandler,Clin.Chem.,41,7,991−994,1995)、酵素反応によるホモシステインからS−アデノシル−L−ホモシステインへの変換工程と免疫法によるその検出工程との組み合わせにより達成されるため、専用の装置を必要とする。
免疫法による測定方法は、特表平9−512634号および特開平10−114797号にも提案されている。特表平9−512634号の方法は、ホモシステインを化学修飾して抗原性を高めることにより免疫学的に測定する方法であり、工程数が多く煩雑である。また、特開平10−114797号は、ホモシステインを測定する方法を開示しているが、この方法はアルブミンに結合したホモシステインのみを直接測定する方法であり、総ホモシステイン量を測定する方法ではない。この方法では、全体の70%程度のホモシステインしか測定できない。
一方、生化学法による測定方法は、日本特許第2870704号、米国特許第5998191号、および米国特許第5885767号に記載されている。日本特許第2870704号の方法は、還元剤で処理した検体中のホモシステインを、アデノシンおよびS−アデノシル−L−ホモシステイン加水分解酵素と接触させ、残存する混合物中のアデノシン量を評価することを特徴とする。しかし、この方法は、S−アデノシル−L−ホモシステイン加水分解酵素阻害剤を用いないので、カイネティックモードによる測定が必要である。さらに、総ホモシステイン測定のために必須の工程である還元処理に用いられる還元剤の存在下では、生成する過酸化水素を、通常用いられる酸化系発色剤に導くことはできないという問題点がある。このため、汎用の自動分析装置に応用することはできない。しかし、この特許明細書にはこれらの問題を回避する方法は何ら述べられていない。
特表2000−502262号、米国特許第5998191号、および米国特許第5885767号に記載の方法は、ホモシステインに、ホモシステインデスルフラーゼ、ホモシステナーゼ、またはメチオニン−γ−リアーゼを作用させ、生成する硫化水素、アンモニア、または2−オキソ酪酸を検出することを特徴としている。しかし、工程数が多いこと、硫化水素の検出に有害な重金属である鉛イオンを使用すること、あるいは通常の生体試料ではホモシステインより含量の多い構造類似物質であるシステインやメチオニンの影響を受けることなどの問題点を有する。
このように、従来の方法は、特殊装置を必要とし、操作が煩雑であり、そして感度・特異性が不十分であるなどの問題点があり、微量濃度のホモシステインを、迅速、簡便かつ感度よく測定する方法は未だに確立されていない。
発明の開示
したがって、本発明の目的は、生体試料などに含まれるホモシステインを迅速、簡便かつ感度よく測定することができる新規測定方法、ならびにこの測定方法に用いるためのキットを提供することである。
本発明者らは、残存するホモシステイン補助基質、生成したホモシステイン変換酵素生成物またはそれらの酵素反応生成物を、(i)SH試薬の存在下で酸化して過酸化水素を生成させ、生成した過酸化水素を酸化系発色剤により発色させることによって、または(ii)D−アミノ酸変換酵素を作用させてオキソ酸および/またはアンモニアを生成させ、生成したオキソ酸および/またはアンモニアを検出または測定することによって、検出または測定することに成功し、本発明を完成させた。本発明のホモシステインの測定方法により、生体試料、特に血液、尿などの体液中のホモシステインを迅速かつ簡便に検出および測定できる。
本発明は、試料中のホモシステインを検出または測定するための方法であって、
(a)該試料中のホモシステインをチオール化合物で還元処理する工程、
(b)還元されたホモシステインに、ホモシステイン変換酵素およびホモシステイン補助基質を作用させ、ホモシステイン変換酵素生成物を生じさせる工程、および
(c)残存するホモシステイン補助基質、生成したホモシステイン変換酵素生成物またはそれらの酵素反応生成物を、(i)SH試薬の存在下で酸化して過酸化水素を生成させ、生成した過酸化水素を酸化系発色剤により発色させることによって、または(ii)D−アミノ酸変換酵素を作用させてオキソ酸および/またはアンモニアを生成させ、生成したオキソ酸および/またはアンモニアを検出または測定することによって、検出または測定する工程、
を含む方法に関する。
好ましい実施態様においては、前記工程(b)のホモシステイン変換酵素が、S−アデノシル−L−ホモシステイン加水分解酵素であり、そして前記工程(b)および(c)のホモシステイン補助基質がアデノシンである。
好ましい実施態様においては、前記アデノシンを検出または測定する工程(c)が、アデノシンデアミナーゼ、リン酸、プリンヌクレオシドホスホリラーゼ、およびキサンチンオキシダーゼを作用させ、生成する過酸化水素を、パーオキシダーゼおよび酸化系発色剤により発色させて検出または測定する工程である。
より好ましい実施態様においては、前記工程(c)において、さらにウリカーゼを作用させる工程を含む。
他の好ましい実施態様においては、前記工程(b)のホモシステイン変換酵素は、ホモシステインをメチル受容体とするメチル転移酵素であり、そして前記工程(b)および(c)のホモシステイン補助基質は、メチル供与体である。
好ましい実施態様においては、前記メチル転移酵素は、ホモシステインメチルトランスフェラーゼであり、そして前記メチル供与体は、D−メチオニンメチルスルホニウムである。
より好ましい実施態様においては、前記工程(c)において、前記ホモシステイン変換酵素生成物が、D−メチオニンであり、そして該D−メチオニンが、D−アミノ酸変換酵素を作用させることによって測定される。
より好ましい実施態様においては、前記D−アミノ酸変換酵素がD−アミノ酸オキシダーゼである。
好ましい実施態様においては、前記工程(c)において、前記D−アミノ酸オキシダーゼを作用させて生成する過酸化水素が、パーオキシダーゼおよび酸化系発色剤により発色させて検出または測定される。
好ましい実施態様においては、前記SH試薬がマレイミド誘導体である。
別の好ましい実施態様においては、前記工程(c)において、前記生成したオキソ酸および/またはアンモニアに、NAD(P)Hを補酵素とする脱水素酵素を作用させ、減少するNAD(P)Hまたは増加するNAD(P)の変化を検出または測定する。
好ましい実施態様においては、前記工程(c)において、前記D−アミノ酸オキシダーゼを作用させて生成するオキソ酸および/またはアンモニアを検出または測定する。
好ましい実施態様においては、前記工程(c)において、前記D−アミノ酸オキシダーゼを作用させて生成するオキソ酸および/またはアンモニアに、NAD(P)Hを補酵素とする脱水素酵素を作用させ、減少するNAD(P)Hまたは増加するNAD(P)の変化を検出または測定する。
好ましい実施態様においては、前記脱水素酵素がロイシン脱水素酵素であり、そして前記生成したオキソ酸に、アンモニアおよびNAD(P)Hを添加して該ロイシン脱水素酵素を作用させ、減少するNAD(P)Hの変化を検出または測定する。
好ましい実施態様においては、前記脱水素酵素が乳酸脱水素酵素であり、そして前記生成したオキソ酸に、NAD(P)Hを添加して該乳酸脱水素酵素を作用させ、減少するNAD(P)Hの変化を検出または測定する。
好ましい実施態様においては、前記脱水素酵素がグルタミン酸脱水素酵素であり、そして前記生成したアンモニアに、2−オキソグルタル酸およびNAD(P)Hを添加して該グルタミン酸脱水素酵素を作用させ、減少するNAD(P)Hの変化を検出または測定する。
より好ましい実施態様においては、前記脱水素酵素が乳酸脱水素酵素およびグルタミン酸脱水素酵素であり、2−オキソグルタル酸およびNAD(P)Hを添加して該乳酸脱水素酵素およびグルタミン酸脱水素酵素を作用させ、減少するNAD(P)Hの変化を検出または測定する。
さらに好ましい実施態様においては、前記工程(a)および(b)が同時に行われる。
また、本発明は、チオール化合物、ホモシステイン変換酵素、ホモシステイン補助基質、SH試薬、および酸化系発色剤を含む、ホモシステイン測定用試薬キットに関する。
好ましい実施態様においては、前記SH試薬がチオール化合物、ホモシステイン変換酵素およびホモシステイン補助基質とは別の容器に含まれる。
好ましい実施態様においては、前記ホモシステイン変換酵素がホモシステイン補助基質とは別の容器に含まれる。
さらに好ましい実施態様においては、前記ホモシステイン変換酵素がS−アデノシル−L−ホモシステイン加水分解酵素であり、そして前記ホモシステイン補助基質がアデノシンである。
さらに好ましい実施態様においては、アデノシンデアミナーゼ、リン酸、プリンヌクレオシドホスホリラーゼ、キサンチンオキシダーゼおよびパーオキシダーゼを含む。
別の好ましい実施態様においては、前記アデノシンデアミナーゼが、チオール化合物、S−アデノシル−L−ホモシステイン加水分解酵素およびアデノシンとは別の容器に含まれる。
好ましい実施態様においては、さらにウリカーゼが含まれる。
本発明はまた、チオール化合物、ホモシステイン変換酵素、ホモシステイン補助基質、D−アミノ酸変換酵素を含む、ホモシステイン測定用試薬キットに関する。
好ましい実施態様においては、さらにNAD(P)H、およびNAD(P)Hを補酵素とする脱水素酵素およびその補助基質としてアンモニウム塩または2−オキソ酸を含む。
さらに好ましい実施態様においては、前記脱水素酵素がロイシン脱水素酵素であり、該酵素の補助基質がアンモニウム塩である。
別のさらに好ましい実施態様においては、前記脱水素酵素がグルタミン酸脱水素酵素であり、該酵素の補助基質が2−オキソグルタル酸である。
好ましい実施態様においては、前記脱水素酵素が乳酸脱水素酵素である。
他の好ましい実施態様においては、前記ホモシステイン変換酵素がホモシステインをメチル受容体とするメチル転移酵素であり、そして前記ホモシステイン補助基質がメチル供与体である。
好ましい実施態様においては、前記メチル転移酵素は、ホモシステインメチルトランスフェラーゼであり、そして前記メチル供与体は、D−メチオニンメチルスルホニウムである。
好ましい実施態様においては、前記D−アミノ酸変換酵素が、D−アミノ酸オキシダーゼである。
好ましい実施態様においては、前記D−アミノ酸オキシダーゼが、チオール化合物、およびホモシステインメチルトランスフェラーゼとは別の容器に含まれる。
また、好ましい実施態様においては、前記SH試薬がマレイミド誘導体である。
発明を実施するための最良の形態
本発明の方法は、チオール化合物で還元処理した試料中のホモシステインに、ホモシステイン変換酵素およびホモシステイン補助基質を作用させた後、SH試薬存在下でホモシステイン変換酵素生成物または残存するホモシステイン補助基質を測定することを特徴とする。好ましくは、ホモシステイン変換酵素およびホモシステイン補助基質として、S−アデノシル−L−ホモシステイン加水分解酵素およびアデノシンを用い、残存するアデノシンをSH試薬の存在下で酸化系発色剤を用いて測定する。より好ましい形態としては、本発明の方法は、被検試料中のホモシステインをチオール化合物処理により還元型に変換すると同時にS−アデノシル−L−ホモシステイン加水分解酵素およびアデノシンを作用させてS−アデノシル−L−ホモシステインを生成させる工程(以下第一工程と記す)、およびSH試薬の存在下で、残存するアデノシンを、酸化系発色剤を用いて測定する工程(以下第二工程と記す)を含む。
あるいは、本発明の方法は、試料中のホモシステインに、メチル供与体存在下、メチル転移酵素を作用させた後、生成するD−アミノ酸誘導体またはD−アミノ酸類似体を測定することも特徴とする。メチル供与体としては、例えば、D−メチオニンメチルスルホニウム、S−アデノシル−D−メチオニン、D−エチオニンメチルスルホニウムが挙げられる。好ましくは、D−メチオニンメチルスルホニウムを使用することができる。
本発明の測定原理を、ホモシステイン変換酵素およびホモシステイン補助基質として、(A)S−アデノシル−L−ホモシステイン加水分解酵素およびアデノシンを用いる場合の測定原理を図1に基づいて、そして(B)メチル転移酵素およびD−メチオニンメチルスルホニウムを用いる場合の測定原理を図2に基づいて説明する。
(A)S−アデノシル−L−ホモシステイン加水分解酵素およびアデノシンを用いる場合(SAHase法)の測定原理
図1の第一工程においては、還元処理したホモシステインを、S−アデノシル−L−ホモシステイン加水分解酵素およびアデノシンと反応させる。この工程では、酵素反応の平衡はS−アデノシル−L−ホモシステインを合成する方向に向いており、アデノシンはホモシステインとともに消費される。次いで、第二工程において、残存するアデノシンに、アデノシンデアミナーゼ、プリンヌクレオシドホスホリラーゼ、キサンチンオキシダーゼなどを作用させて過酸化水素を生じさせ、さらにパーオキシダーゼおよび酸化系発色剤によって発色させて測定する。図からもわかるように、第一工程におけるアデノシンの消費量が、ホモシステインの量に比例する。第二工程の際に、以下に詳述するように、第一工程で使用したS−アデノシル−L−ホモシステイン加水分解酵素の阻害剤として、およびチオール化合物のブロック剤として、SH試薬を加えることにより、感度よく測定することができる。さらに、第二工程において、ウリカーゼを加えることにより、過酸化水素の発生が増加し、さらに感度のよい測定が可能になる。
ホモシステイン測定においてSH試薬を用いる例は、特表平9−512634号および米国特許第6020206号に記載されている。前者は、既に述べたように、ホモシステインを化学的に修飾してその免疫原性を増進させ、これを免疫学的に検出する方法であり、その修飾剤としてSH化合物が挙げられている。後者は、ホモシステインをホモシステインチオラクトンに変換し、チオール基を保護した後、サンプル中に含まれるシステインなどのチオール基を有する他の化合物をSH試薬で除き、その後チオラクトンを開環させ、ホモシステインを測定する方法である。いずれの方法も、本発明の方法とは全く測定原理が異なり、また、SH試薬の使用目的も全く異なっている。また、遊離脂肪酸測定において、酸化系発色剤による測定への補助基質CoAの妨害を回避するために、SH試薬が使用されている例がある(特開昭55−64800号および特開昭57−8797号)が、測定項目が異なっており、本発明の方法においてSH試薬が有効であるかどうかは予測することはできない。
SH試薬については、生化学辞典(第3版、p.182、東京化学同人、1998年)にも記載されるとおり、エルマン試薬などの酸化剤、p−メクリル安息香酸などのメルカプト形成剤、ヨード酢酸、N−エチルマレイミドなどのアルキル化剤が挙げられる。好ましくはアルキル化剤を、さらに好ましくはマレイミド化合物を、もっとも好ましくはN−エチルマレイミドを使用することができる。
本発明の方法に供される被検試料としては、ホモシステインを含むと考えられる試料であればいずれでもよい。また、ホモシステインの存在様式としては、還元型ホモシステインのみならず、蛋白結合型、ホモシステイン2量体、ホモシステイン−システイン2量体などジスルフィド結合で他の分子に結合した酸化型ホモシステインのいずれでもよい。例えば、血清、血漿、血液、尿、およびそれらの希釈物などが挙げられる。
本発明の方法で用いられるチオール化合物は特に限定されず、例えば、ジチオスレイトール、メルカプトエタノール、N−アセチルシステイン、ジチオエリスリトール、チオグリコール酸などが挙げられる。チオール化合物の濃度は、酸化型ホモシステインを還元型ホモシステインに変換できる範囲であればいずれでもよく、好ましくはチオール基として0.1mM以上、より好ましくは1mM以上の濃度であればよい。
チオール化合物による還元工程に続いてまたは同時に、本発明の方法の第一工程として、ホモシステイン変換酵素およびホモシステイン補助基質、好ましくはS−アデノシル−L−ホモシステイン加水分解酵素およびアデノシンを作用させて、S−アデノシル−L−ホモシステインを生成させる。
残存するホモシステイン補助基質の量、好ましくはアデノシンの量は、本発明の方法の測定原理からも明らかなように、測定すべきホモシステインの量に依存する。詳細には、試料として水または緩衝液を用いる反応、すなわち、ホモシステインを含まない反応において、第一工程終了前から第二工程終了時までの吸光度変化が0.0005から4、好ましくは0.001から2、さらに好ましくは0.005から1となるようにアデノシンの量を設定する。
S−アデノシル−L−ホモシステイン加水分解酵素は、合成反応とその逆の加水分解反応の両反応を触媒する酵素であり、反応の平衡は合成方向に著しく傾いているが、生体内では生成物がすみやかに代謝されるために加水分解系として働いている(酵素ハンドブック、529頁、朝倉書店(1982年))。この酵素は、ウサギ、ルピナス種子、ウシ、ラット、酵母、細菌などの様々な起源から分離されており、起源は特に限定されない。遺伝子組換えで得られる酵素も同様に使用できる。用いる濃度は、好ましくは0.01U/mLから100U/mL、さらに好ましくは0.1U/mLから20U/mLである。
この酵素標品としては、アデノシンデアミナーゼなどのアデノシンに作用する酵素の混入ができるだけ少ないものが望ましい。しかし、商業的に入手可能な標品の中には、わずかであるがアデノシンデアミナーゼの混入が認められるものもある。この場合には、精製して使用することでその影響を回避することができる。もしくは同じ酵素(S−アデノシル−L−ホモシステイン加水分解酵素)標品を含む試薬と含まない試薬との反応性の違いを測定することにより混入酵素の影響を回避することができる。
さらに、混入アデノシンデアミナーゼ活性を抑えるために阻害剤を使用することもできる。阻害剤としては、S−アデノシル−L−ホモシステイン加水分解酵素に対して強く作用しないものであれば使用可能であるが、以下に述べる第二工程での酵素反応を考慮し、特にアデノシンデアミナーゼ反応の初速度に影響が少ないとされるコホルマイシン、デオキシコホルマイシン、1,6−ジヒドロ−6−ヒドロキシメチルプリンリボチド(Biochemistry,19:223,5303−5309,1980)などが望ましい。阻害剤を使用する場合には、第二工程において過剰量のアデノシンデアミナーゼを使用することが望ましい。
続く第二工程では、ホモシステイン変換酵素生成物または残存するホモシステイン補助基質を測定する。好ましくは、まず、残存するアデノシンをアデノシンデアミナーゼの作用によりイノシンへ変換する。これにより、上記の第一工程におけるS−アデノシル−L−ホモシステイン加水分解酵素反応の基質が減少するので、すなわちその逆反応の生成物が減少するので、反応の平衡は加水分解に向かう。この工程においてS−アデノシル−L−ホモシステイン加水分解酵素活性が残存すれば、第一工程の逆反応、すなわちS−アデノシル−L−ホモシステイン加水分解反応も同時に起こり、最終的にはホモシステイン測定感度の低下につながる。そこで、この反応を防ぐためにS−アデノシル−L−ホモシステイン加水分解酵素阻害剤を添加することが望ましい。この酵素の阻害剤としては、SH試薬(Eur.J.Biochem.80,517−523,1977)およびいくつかのアデノシン誘導体(Methods in Enzymology 143,377−383,1987)が知られている。本発明の方法では、他の反応系に大きな支障を及ぼさない限りいずれの阻害剤でも用いることができる。また、これらの阻害剤は組み合わせて使用することもできる。
生成したイノシンは、リン酸、プリンヌクレオシドホスホリラーゼ、キサンチンオキシダーゼ、および必要に応じてウリカーゼと接触させることにより過酸化水素を発生させて、パーオキシダーゼにより通常の酸化系発色剤を発色させることができる。この方法は、臨床化学の分野では一般的に用いられる既知の方法であるが、第一工程で用いるチオール化合物の還元作用によりその発色が著しく妨害されるため、第二工程では、チオール化合物のブロック剤であるSH試薬の添加が必須となる。したがって、第二工程におけるSH試薬の添加は、第一工程で用いたS−アデノシル−L−ホモシステイン加水分解酵素が第二工程において逆反応(加水分解反応)を触媒することを阻止すると共に、チオール化合物による酸化系発色剤の発色妨害を防止する効果を有する。第二工程におけるSH試薬の濃度は、検体の還元処理に用いたチオール化合物のチオール基を酸化系発色剤による定量が妨害されない程度にブロックできる範囲であればいずれでもよく、好ましくは0.1mMから100mMの範囲で使用できる。より好ましくは1mMから30mMで用いられるが、S−アデノシル−L−ホモシステイン加水分解酵素を阻害する効果も発揮させるために、用いたチオール化合物に比べて過剰量のSH試薬を使用することが望ましい。
酸化系発色剤としては、種々のトリンダー試薬をカップラー試薬と組み合わせて利用できる。この方法はトリンダー法とも呼ばれ、臨床化学分析の分野では一般に用いられており、ここでは詳細に説明しないが、好ましくはカップラー試薬として4−アミノアンチピリンを、トリンダー試薬としてADOS[N−エチル−N−(2−ヒドロキシ−3−スルホプロピル)−3−メトキシアニリン]、DAOS[N−エチル−N−(2−ヒドロキシ−3−スルホプロピル)−3,5−ジメトキシアニリン]、HDAOS[N−(2−ヒドロキシ−3−スルホプロピル)−3,5−ジメトキシアニリン]、MAOS[N−エチル−N−(2−ヒドロキシ−3−スルホプロピル)−3,5−ジメチルアニリン」、TOOS[N−エチル−N−(2−ヒドロキシ−3−スルホプロピル)−3−メチルアニリン]等が用いられる。また、カップラー試薬を必要としない、O−トリジン、O−ジアニシジン、DA−67[10−(カルボシキメチルアミノカルボニル)−3,7−ビス(ジメチルアミノ)フェノチアジンナトリウム、和光純薬工業(株)製]、TPM−PS[N,N,N’,N’,N’’,N’’−ヘキサ(3−スルホプロピル)−4,4’,4’’−トリアミノトリフェニルメタン6ナトリウム塩、同仁化学研究所]などのロイコ型発色試薬も同様に用いることができる。特に、DA−67、TPM−PSは、上記トリンダー試薬と比べてモル吸光係数が大きいため、より感度よく測定することができる。
第二工程におけるイノシン以降の反応中間物質が試料中に含まれている可能性があるので、その測定値への影響を回避することを目的として、第一工程中でプリンヌクレオシドホスホリラーゼおよびその補助基質であるリン酸、キサンチンオキシダーゼ、ならびに必要に応じてウリカーゼによって過酸化水素を発生させることができる。生じた過酸化水素は第一工程中に含まれる還元剤の作用により消失するが、さらに、カタラーゼを用いて水と酸素に分解させるか、あるいは、パーオキシダーゼを用いてトリンダー試薬またはカップラー試薬の一方と反応させて無色の複合体を生成することが好ましい。
本発明の方法は、これまでに説明したS−アデノシル−L−ホモシステイン加水分解酵素を含む試薬のみでもホモシステインの測定は可能であるが、測定の精度をさらに高めるために、この酵素を含まない試薬も同時に測定することにより、試料中に含まれるアデノシンなどの影響を回避することができる。すなわち、S−アデノシル−L−ホモシステイン加水分解酵素を含まない試薬で測定した値は、あらかじめ試薬に含まれるアデノシンの量と試料に含まれるアデノシンの量との総和(総アデノシン)量を示す。一方、S−アデノシル−L−ホモシステイン加水分解酵素を含む試薬は、上記の総アデノシン量から第一工程で消費されたアデノシンを差し引いた量を示す。こうして得られた2つの測定値の差は、消費されたアデノシンの量、すなわちホモシステインの量を示す。
(B)メチル転移酵素およびD−メチオニンメチルスルホニウムを用いる場合(メチルトランスフェラーゼ法(以下、MTase法))の測定原理
次に、ホモシステイン変換酵素およびホモシステイン補助基質として、それぞれ、ホモシステインをメチル受容体とするメチル転移酵素およびメチル供与体のD−メチオニンメチルスルホニウムを用いる場合、すなわち、試料中のホモシステインに、メチル転移酵素およびD−メチオニンメチルスルホニウムを作用させた後、生成するD−メチオニンを測定する場合の測定原理を、図2に基づいて説明する。
(1)MTase法I
メチル転移酵素としては、D−メチオニンメチルスルホニウムおよびL−ホモシステインに作用し、D−メチオニンおよびL−メチオニンの生成を触媒するものであればどのようなものでもよく、例えば、ホモシステインメチルトランスフェラーゼ[EC 2.1.1.10]、5−メチルテトラヒドロ葉酸−ホモシステインS−メチルトランスフェラーゼ[EC 2.1.1.13]、5−メチルテトラヒドロプテロイルトリグルタミン酸−ホモシステインS−メチルトランスフェラーゼ[EC 2.1.1.14]が挙げられる。好ましくは、ホモシステインメチルトランスフェラーゼ[EC 2.1.1.10]が使用される。ホモシステインメチルトランスフェラーゼの系統名は、S−アデノシル−L−メチオニン:L−ホモシステインS−メチルトランスフェラーゼであり、メチル受容体のL−ホモシステインおよびメチル供与体のS−アデノシル−L−メチオニンを基質とし、L−メチオニンおよびS−アデノシル−L−ホモシステインを産生する酵素である(酵素ハンドブック、朝倉書店、1982年)。また、S.K.Shapiroにより、この酵素は、メチル供与体として、S−メチル−L−メチオニン(L−メチオニンメチルスルホニウム)、またはS−アデノシル−D−メチオニンも利用することが報告されている(Biochim.Biophys.Acta,29,405−409,1958)。
さらに、同報告によれば、放射性同位元素でのラベル実験の結果から、メチオニンは、S−アデノシルメチオニンのメチル基がホモシステインへ転移することにより生成され、S−アデノシルメチオニンのリボースと硫黄原子との結合が開裂するためではないことも明らかにされている。したがって、S−アデノシル−L−メチオニンをメチル供与体とした場合には、L−メチオニンとS−アデノシル−L−ホモシステインが、L−メチオニンメチルスルホニウムをメチル供与体とした場合には2分子のL−メチオニンが、S−アデノシル−D−メチオニンをメチル供与体とした場合にはL−メチオニンとS−アデノシル−D−ホモシステインが生成する。いずれの場合にも、L−メチオニンが生成されるため、これを測定することによってもホモシステインの定量は可能である。
しかしながら、一般的に生体試料中のL−メチオニンは、ホモシステインに比べて多量(血漿で3〜5倍)に含まれるため、上記測定原理によりホモシステインを定量するためには、あらかじめホモシステインに影響のない方法でL−メチオニンを消去し、次いでホモシステインメチルトランスフェラーゼ反応で生成するL−メチオニンを特異的に測定する必要があるなど煩雑な操作が必要であり、好ましくない。一方、G.Grue−Sorensenらによりホモシステインメチルトランスフェラーゼは、特異性は低いもののD−メチオニンメチルスルホニウムをメチル供与体とし、D−メチオニンを生成することが報告されている(J.Chem.Soc.Perkin Trans.I 1091−7(1984))。そこで、この反応を利用し、通常の生体試料中にはほとんど存在しないD−メチオニンを生成させ、次にこれを測定することによりホモシステインを特異的に定量する方法を確立した。
使用するホモシステインメチルトランスフェラーゼは、D−メチオニンメチルスルホニウムをメチル供与体とするものであればどのような由来のものでも使用できる。例えば、細菌、酵母、ラット等に由来する酵素が使用できる。
D−メチオニンの定量法は、特に限定されないが、D−アミノ酸変換酵素を用いて酵素的に測定する方法が好ましい。より好ましくは、D−アミノ酸オキシダーゼ[EC 1.4.3.3]が利用される。本発明者らは、D−アミノ酸の1つであるD−メチオニンメチルスルホニウムが、意外なことにほとんどD−アミノ酸オキシダーゼの基質にならないことを明らかにした。このように、D−アミノ酸変換酵素がD−メチオニンメチルスルホニウムには作用しないか、または作用してもD−メチオニンに対するよりも反応性が十分に低いものであれば、ホモシステインメチルトランスフェラーゼでの反応後に残存しているD−メチオニンメチルスルホニウムを反応系外に除くことなく、生成したD−メチオニンを測定することができる。D−アミノ酸オキシダーゼ以外にも、同様の性質を有するD−アミノ酸アセチルトランスフェラーゼ[EC 2.3.1.36]、D−アミノ酸脱水素酵素[EC 1.4.99.1]なども利用できる(図2)。
図2に示すように、D−メチオニンにD−アミノ酸オキシダーゼを作用させた場合には、過酸化水素が生成するため、これを上述のようにSH試薬の存在下で通常用いられる酸化系発色剤に導き比色定量することができる。また、D−アミノ酸アセチルトランスフェラーゼを作用させた場合には、生成するコエンザイムAをアシルコエンザイムAシンセターゼ[EC 6.2.1.3]およびアシルコエンザイムA酸化酵素[EC 1.3.3.6]を用いて過酸化水素に導き、これを同様にして定量することができる。
(2)MTase法II
D−アミノ酸オキシダーゼまたはD−アミノ酸脱水素酵素を作用させた場合には、アンモニアおよび4−メチルチオ−2−オキソ酪酸が生成する。これらの生成物を測定することによっても定量は可能である。
アンモニアは、還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NADH)または還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸(NADPH)もしくはその誘導体(以下、本明細書ではNAD(P)Hという)、2−オキソグルタル酸、およびグルタミン酸脱水素酵素([EC 1.4.1.2]、[EC 1.4.1.3]、または[EC 1.4.1.4])を作用させ、NAD(P)Hの減少を340nmの吸光度変化を測定することによって定量できる。あるいは、NADまたはNADPもしくはその誘導体(以下、本明細書では、NAD(P)という)の増加を測定してもよい。NAD(P)Hの誘導体としては、チオNAD(P)H、3−アセチルピリジンアデニンジヌクレオチド(または3−アセチルピリジンジヌクレオチドリン酸)などが挙げられる。アンモニアの定量には、上記グルタミン酸脱水素酵素以外に、ロイシン脱水素酵素([EC 1.4.1.9])、アラニン脱水素酵素([EC 1.4.1.1])、セリン脱水素酵素([EC 1.4.1.7])、バリン脱水素酵素([EC 1.4.1.8])、グリシン脱水素酵素([EC 1.4.1.10])など、NAD(P)Hを補酵素とし、アンモニアを利用して還元的アミノ化反応を触媒し得る脱水素酵素であればいずれも利用できる。これらの脱水素酵素の補助基質としては、アンモニウム塩、2−オキソ酸などが用いられ得る。2−オキソ酸としては、上記2−オキソグルタル酸以外に、ピルビン酸、2−オキソ酪酸、2−オキソイソカプロン酸、2−オキソイソ吉草酸、2−オキソ吉草酸、2−オキソカプロン酸、グリオキシル酸、ヒドロキシピルビン酸などが挙げられる。
また、アンモニアは、ネスラー試薬、pH指示薬、電極法等を利用しても定量可能である。
4−メチルチオ−2−オキソ酪酸は、NADH、アンモニア、およびロイシン脱水素酵素[EC 1.4.1.9]を作用させ、上記アンモニアの場合と同様に、例えば、NADHの減少を340nmの吸光度変化を測定することによって定量できる。4−メチルチオ−2−オキソ酪酸がロイシン脱水素酵素の基質となることは知られている(G.Liveseyら,Methods in Enzymology,166,282−288,1988)。4−メチルチオ−2−オキソ酪酸の定量には、上記ロイシン脱水素酵素以外に、乳酸脱水素酵素([EC 1.1.1.27])など、4−メチルチオ−2−オキソ酪酸を還元し得る脱水素酵素であればいずれも利用できる。
4−メチルチオ−2−オキソ酪酸またはアンモニアをNAD(P)Hの340nmの吸光度変化によって定量する系に導くための方法は、還元剤の影響を受けにくいことが知られており、そのため、SH試薬を使用する必要がない(池田ら,臨床検査,41,989−993,1997)。還元剤の共存下で、NAD(P)H定量系に導いている例としては、血中クレアチンキナーゼ測定法が挙げられる(臨床化学,19,189−208,1990)。
また、D−アミノ酸オキシダーゼによってアンモニアまたは4−メチルチオ−2−オキソ酪酸を生成させる測定系においては、生成物の1つである過酸化水素をカタラーゼによって消去して、その影響を除くことも可能である。
本発明の方法は、用手法、自動分析法を問わず適用できる。例えば、2試薬系の汎用自動分析装置を利用する場合は、ホモシステインメチルトランスフェラーゼ反応を進める第一工程とD−メチオニンを検出する第二工程とに分けることによって、容易に生体試料中のホモシステインを測定することができる。
本発明の方法によるホモシステイン定量では、試料中のD−アミノ酸が正誤差を与えるが、通常の生体試料中のD−アミノ酸の量は非常に少ない。しかし、ある種の疾患によりD−アミノ酸の量が上昇することも報告されている。したがって、その影響を回避するために、ホモシステインメチルトランスフェラーゼを含まない以外は全く同様に調製した試薬で測定し、その値を同酵素添加検体の測定値から差し引くことによって、正確にホモシステインの量を測定することができる。
また、NADHの吸光度を測定する場合には、まず、試料に還元反応および第二工程のための試薬を加えて反応させ、次いで第一工程のホモシステインメチルトランスフェラーゼを含む試薬を加えて反応させて、それぞれの反応終了時の吸光度の差を求めることによって、D−アミノ酸など内因性物質の影響を回避したホモシステインの定量が可能である。
また、本発明では、(a)ホモシステインを還元するためのチオール化合物、(b)還元型ホモシステインと反応させるため(第一工程)のホモシステイン変換酵素およびホモシステイン補助基質、ならびに(c)残存するホモシステイン補助基質または生成したホモシステイン変換酵素生成物を測定するため(第二工程)の(i)SH試薬および酸化系発色剤または(ii)NAD(P)Hを補酵素とする脱水素酵素および該酵素の特性に応じた補助基質または発色剤を含む、試料中のホモシステインを測定するためのキットが提供される。還元工程と第一工程とを同時に行うために、(a)および(b)を一緒に含んでいてもよい。特に、(c)(ii)を用いる場合は、(a)、(b)、および(c)を一緒に含んでいてもよい。また、上記(A)の場合のように、試料に含まれているイノシン以降の反応中間物質の測定値への影響を回避することを目的として、第一工程用の試薬中に、あらかじめプリンヌクレオシドホスホリラーゼ、リン酸、キサンチンオキシダーゼ、カタラーゼ、ならびに必要に応じてウリカーゼを含んでいてもよい。さらにカタラーゼの代わりに、もしくはそれに加えて、パーオキシダーゼおよびトリンダー試薬またはカップラー試薬の一方を含んでいてもよい。
実施例
(実施例1)ウシ小腸由来アデノシンデアミナーゼおよびイノシン測定系酵素に及ぼすN−エチルマレイミドの影響
SH試薬としてN−エチルマレイミド(NEM)を用いる場合の、第二工程への影響を検討した。
100mMリン酸緩衝液(pH7.4)、1mMアデノシン、0.4U/mLプリンヌクレオシドホスホリラーゼ(東洋紡績(株)製)、3U/mLキサンチンオキシダーゼ(東洋紡績(株)製)、11U/mLパーオキシダーゼ(東洋紡績(株)製)、1mM 4−アミノアンチピリン、および1mM N−エチル−N−(2−ヒドロキシ−3−スルホプロピル)−3−メチルアニリン(TOOS)を混合し、37℃で5分間インキュベーションした。次いで、0.001U/mL小腸由来アデノシンデアミナーゼ(シグマ−アルドリッチ社製)を添加し、540nmの吸光度変化を分光光度計((株)島津製作所製UV−2200型)を用いて測定した。直線的に変化する部分の吸光度は、1分間あたり0.0676であった。続いて、1mM N−エチルマレイミドを添加した後に同様に測定したところ、1分間あたりの吸光度変化は0.0656であった。したがって、N−エチルマレイミド(NEM)は、ウシ小腸由来アデノシンデアミナーゼおよびイノシン測定系にほとんど影響しないことが明らかになった。
(実施例2)ウシ膵由来アデノシンデアミナーゼに及ぼすN−エチルマレイミド(NEM)の影響
ウシ小腸由来アデノシンデアミナーゼ(シグマ−アルドリッチ社製)の代わりにウシ膵由来アデノシンデアミナーゼ(シグマ−アルドリッチ社製)を用いる以外は、実施例1と同様に行った。その結果、N−エチルマレイミド添加前の1分間の吸光度変化が0.0751に対し、添加後は0.0721であり、N−エチルマレイミドは、ウシ膵由来アデノシンデアミナーゼに対してもほとんど影響しないことが明らかになった。
(実施例3)酸化系発色剤を用いたホモシステイン測定系における還元剤による発色妨害およびSH試薬によるその防止
測定は日立7170自動分析装置((株)日立製作所製)を用いて、反応温度37℃、主波長546nm、副波長700nmで実施した。100mMリン酸緩衝液(pH7.4)20μLに、100mMリン酸緩衝液(pH7.4)、0.009mMアデノシン、0.8U/mL S−アデノシル−L−ホモシステイン加水分解酵素、1.5U/mLウリカーゼ、4.3U/mLキサンチンオキシダーゼ、6.4U/mLパーオキシダーゼ、2.9mM 4−アミノアンチピリン、2.3mMジチオスレイトール、および0.2%トリトンX−100を含む試薬1を180μL添加し、約5分間反応させた。続いて、100mMリン酸緩衝液(pH7.4)、0.3U/mLアデノシンデアミナーゼ、1.3U/mLプリンヌクレオシドホスホリラーゼ、1.8mM TOOS、17mM N−エチルマレイミド、および0.1%トリトンX−100を含む試薬2を180μL添加して、さらに約5分間反応させた。これと並行して、試薬2にN−エチルマレイミドを含まない以外は全く同様の操作を実施し、両者の反応過程を比較した。結果を図3に示す。
図3からも明らかなように、N−エチルマレイミド(NEM)が存在しない状態では発色は著しく妨害され、測定は全く不可能であることがわかる(○)。一方、SH試薬であるN−エチルマレイミド(NEM)が共存する場合には、その影響を受けることなく発色した(●)。
(実施例4)ホモシスチン標品を試料とした場合の用量依存性
測定は上記日立7170自動分析装置を用いて、反応温度37℃、主波長546nm、副波長700nmで実施した。100mMリン酸緩衝液(pH7.4)および0、15.625、31.25、62.5、および125μMホモシスチン(ホモシステインとして0〜250μM)を含む試料20μLに、100mMリン酸緩衝液(pH7.4)、0.7U/mLプリンヌクレオシドホスホリラーゼ、2.7U/mLキサンチンオキシダーゼ、10U/mLパーオキシダーゼ、0.009mMアデノシン、1.8mM 4−アミノアンチピリン、1.8mMジチオスレイトール、0.4U/mL S−アデノシル−L−ホモシステイン加水分解酵素、および0.5%トリトンX−100を含む試薬1を180μL添加し、約5分間反応させた。続いて、100mMリン酸緩衝液(pH7.4)、2mM TOOS、6mM N−エチルマレイミド、および0.2U/mLアデノシンデアミナーゼを含む試薬2を180μL添加し、さらに約5分間反応させた。日立7170の測定ポイント16から34の吸光度変化を求めた。その結果を図4に示す。図4から明らかなようにホモシステイン濃度が125μMまで吸光度変化量と直線関係が認められ、ホモシステインの測定が可能であることがわかった。
(実施例5)血清試料中のホモシステイン測定(SAHase法)
測定は、日立7170自動分析装置を用いて、反応温度37℃、主波長546nm、副波長700nm、3試薬系で実施した。正常コントロール血清セラクリアHEにホモシスチンを0、2.5、5、10、20、30、40、および50μM(ホモシステイン換算値0〜100μM)添加した試料20μLに、100mMリン酸緩衝液(pH7.4)、7mMジチオスレイトール、0.028mMアデノシン、および0.3%トリトンX−100を含む試薬1を50μL添加した。続いて約80秒後に、100mMリン酸緩衝液(pH7.4)、2U/mLウリカーゼ、1.6U/mLプリンヌクレオシドホスホリラーゼ、5.9U/mLキサンチンオキシダーゼ、22U/mLパーオキシダーゼ、4mM 4−アミノアンチピリン、0.5mMジチオスレイトール、1.1U/mL S−アデノシル−L−ホモシステイン加水分解酵素、および0.1%トリトンX−100を含む試薬2を130μL添加し、約8分間反応させ、アデノシルホモシステインを生成させるとともに、試料に含まれているイノシン以降の反応中間物質の測定値へ影響を回避した。さらに、100mMリン酸緩衝液(pH7.4)、1.8mM TOOS、17mM N−エチルマレイミド、0.23U/mLアデノシンデアミナーゼ、および0.1%トリトンX−100を含む試薬3を180μL添加し、さらに約5分間反応させた。試薬3添加直前(日立7170測定ポイント33)と添加約5分後(日立7170測定ポイント50)との吸光度を測定し、その変化量を求めた。
これと同時に、検体ブランクを測定した。S−アデノシル−L−ホモシステイン加水分解酵素(以下、SAHaseということがある)が添加された試薬2(以下、SAHase添加試薬という)の代わりに、試薬2からSAHaseを除いた試薬(以下、SAH無添加試薬という)を用いること以外は、同じ操作を行った。すでに述べた通り、SAHase標品中にはアデノシンデアミナーゼがわずかに混在するために、その影響を回避する必要がある。そこで、同時に、試料として100mMリン酸緩衝液(pH7.4)を用いることにより、SAHase添加試薬のブランクおよびSAHase無添加試薬のブランクをそれぞれ測定し、その比を混在するアデノシンデアミナーゼの影響に対する補正係数とした。
図5に、SAHase無添加試薬での実測値、SAHase添加試薬での実測値に補正係数を乗じることにより補正した値(以下、SAHase添加試薬の補正値)、およびSAHase無添加試薬での実測値からSAHase添加試薬での補正値を差し引いた値をホモシステイン添加量に対してプロットした結果を示す。SAHase無添加試薬での実測値はホモシステインの添加量に関係なく一定の値を示す(A:○)のに対し、SAHase添加試薬での補正値は、ホモシステインの添加量に依存して減少する(B:●)。従って、SAHase無添加試薬での実測値からSAHase添加試薬での補正値を差し引いた値はホモシステイン添加量に依存することがわかる(A−B:▲)。一方、試料として31.25μMホモシスチン(ホモシステイン換算値62.5μM)を含むリン酸緩衝液を用い、試薬2としてSAHase添加試薬およびSAHase無添加試薬をそれぞれ用いて同様にして測定した後補正し、SAHase無添加試薬での実測値からSAHase添加試薬での補正値を差し引いた値(吸光度差)を求め、吸光度差あたりのホモシステイン量を表すファクターを算出した。上記血清ベースの試料のSAHase無添加試薬での実測値からSAHase添加試薬での補正値を差し引いた値(図5のA−B:▲)にファクターを乗じて各試料中のホモシステイン量を算出し、ホモシステイン添加量に対してプロットした結果を図6に示す(●)。
図6から明らかなように、試料中に含まれているイノシン以降の反応中間物質および内因性アデノシンなどの測定値への影響を回避して、血清ベースの試料においても約80μMまで血清総ホモシステインの測定が可能であることがわかった。
(実施例6)ホモシステイン測定系(SAHase法)に及ぼすシステインおよびメチオニンの影響
ホモシスチンを27μM(ホモシステイン換算 54μM)添加した正常コントロール血清セラクリアHE、ならびにこれにメチオニンおよびシステインを同時にそれぞれ500および1000μM添加した試料を用いること以外は、実施例5と同様に測定した。図7に示すように、ホモシステインの測定において1000μMまではシステインおよびメチオニンの影響を認めずに正確に測定できることが明らかである。
(実施例7)本発明の方法(SAHase法)による測定と従来のHPLC法による測定との相関性の検討
血清試料53サンプルについて、SAHase法によってホモシステインを測定した。スタンダードとして、52.3μMホモシステインを含むコントロール血清セラクリアHE、発色試薬としてDA−67、測定波長として主波長660nm、副波長750nmを用いて測定する以外は、実施例5の方法に準じて行った。すなわち、まず、血清試料10μLに、100mMリン酸緩衝液(pH7.4)、7mM DTT、0.015mMアデノシンおよび0.05%トリトンX−100を含む試薬1を50μL添加した。続いて、約80秒後に、100mMリン酸緩衝液(pH7.4)、2U/mLウリカーゼ、1.6U/mLプリンヌクレオシドホスホリラーゼ、6U/mLキサンチンオキシダーゼ、150U/mLカタラーゼ、0.84mM DA−67、0.5mM DTT、1.1U/mL SAHase、および0.05%トリトンX−100を含む試薬2を、130μL添加し、約8分間反応させた。さらに、100mMリン酸緩衝液(pH7.4)、11U/mLパーオキシダーゼ、17mM N−エチルマレイミド、0.23U/mLアデノシンデアミナーゼ、および0.05%トリトンX−100を含む試薬3を、180μL添加し、さらに約5分間反応させた。測定ポイントおよびキャリブレーションは、実施例5の方法と同様に行った。
一方、同試料のホモシステイン測定を、HPLC法でも実施した((株)SRL委託)。
横軸にHPLC法による測定値を、縦軸に本発明の方法(SAHase法)による測定値をプロットした結果を、図8に示す。図8から明らかなように、非常に良好な相関関係が得られ、試料中のホモシステインが本発明の方法により正確に測定できることがわかる。
(実施例8)ホモシステインメチルトランスフェラーゼの調製
S.K.Shapiroの方法(Methods Enzymol.,17 Pt.B,400−405,1971)を一部改変して、以下のようにホモシステインメチルトランスフェラーゼ酵素液を調製した。
まず、250gのパン酵母(オリエンタル酵母製)を125mlの蒸留水に懸濁し、37℃まで加温後、撹拌しながら16.3gの炭酸水素ナトリウムおよび44mlのトルエンを添加した。37℃で撹拌を続けながら90分間インキュベートした後、同容量の氷冷した蒸留水を添加して急冷した。この溶液を7000rpmで30分間遠心分離した。上清をペーパータオルで濾過し、濾液をさらに9000rpmで90分間遠心分離し、上清を回収した。
次に、氷冷下で撹拌しながら最終濃度が0.5%となるようにL−メチオニンを添加し、そのまま約60分間かけて溶解させた。液温を3℃以下に保持し、撹拌しながら、約−20℃に冷却したエタノールを20mL/分の速度で添加した。エタノールの濃度が約25%に達した時点で、食塩−氷を用いて冷却槽を−10℃以下として冷却を開始した。続いて最終濃度が53%になるまで同様にエタノールを添加後、−20℃で16時間静置した。9000rpm、−10℃で60分間遠心分離した。上清を回収し、食塩−氷で−10℃以下に冷却しながら、最終濃度70%まで同じ条件でエタノールを添加した。添加後、1時間静置し、9000rpm、−10℃で90分間遠心分離した。
得られた沈澱を約7mLの10mMリン酸カリウム緩衝液(pH6.8)に溶解した。溶解液を同じ緩衝液に対して2回透析した後、遠心濃縮器(セントリプレップ−10、アミコン製)で約1.5mLに濃縮し、酵素液とした。
次に、得られた酵素液のホモシステインメチルトランスフェラーゼ酵素活性を以下のように測定した。60mMリン酸緩衝液(pH7.4)、10%酵素液、1mMジチオスレイトール、0.2mMホモシスチン(シグマ−アルドリッチ製、H−6010)、および0.4mMヨウ化L−メチオニンメチルスルホニウム(アクロス製、27794−0250)または臭化D−メチオニンメチルスルホニウム(アクロス製、29939−0010)を混合し、37℃で2時間反応させた。薄層板(薄層クロマトグラフィー用プレート)に約8μLずつスポットし、95%エタノール−28%アンモニア水(77:23、v/v)で展開後、ニンヒドリン発色させた。その結果、L−メチオニンメチルスルホニウムまたはD−メチオニンメチルスルホニウムのいずれを基質とした場合も、反応生成物にはメチオニンが含まれることを確認した。一方、メチル受容体であるホモシステインを反応系から除いた場合には、メチオニンは生成されないことを確認した。
以上から、得られた酵素液は、ホモシステインメチルトランスフェラーゼ活性を有すること、およびこの酵素液は、L−メチオニンメチルスルホニウムのみならず、D−メチオニンメチルスルホニウムをもメチル供与体として利用し得ることを確認した。
(実施例9)D−メチオニンおよびD−メチオニンメチルスルホニウムに対するブタ腎由来D−アミノ酸オキシダーゼの反応性
D−メチオニンおよびD−メチオニンメチルスルホニウムに対するブタ腎由来D−アミノ酸オキシダーゼの反応性を、日立7170自動分析装置を用いて以下のように測定した。1.3mM D−メチオニンを含む試料10μLに、92mMリン酸緩衝液(pH7.4)、1.3mM 4−アミノアンチピリン、および3.3U/mLパーオキシダーゼを含む試薬1を200μL添加し、37℃で約5分間反応させた。続いて、69mMリン酸緩衝液(pH7.4)、5.2mM TOOS、2.6U/mLブタ腎由来D−アミノ酸オキシダーゼ(シグマ−アルドリッチ社製)、および2.6mMフラビンアデニンジヌクレオチド(FAD)を含む試薬2を50μL添加し、さらに37℃で約5分間反応させた。吸光度変化を主波長546nm、副波長700nmで測定した。また、1.3mM臭化D−メチオニンメチルスルホニウムを含む試料ならびにD−メチオニンおよび臭化D−メチオニンメチルスルホニウムをそれぞれ1.3mM含む試料を全く同様に測定した。反応のタイムコースを、図9に示す。ブタ腎由来D−アミノ酸オキシダーゼは、D−メチオニン(●)に比較してD−メチオニンメチルスルホニウム(△)とはほとんど反応しなかった。また、D−メチオニンメチルスルホニウム存在下においても、D−メチオニンとの反応性が変わらないことも分かった(▲)。
(実施例10)D−メチオニンおよびD−メチオニンメチルスルホニウムに対するカビ由来D−アミノ酸オキシダーゼの反応性
ブタ腎由来D−アミノ酸オキシダーゼの代わりにカビ由来D−アミノ酸オキシダーゼ(フサリウム属、池田糖化工業製)を用いること以外は、実施例9と全く同様に行った。反応のタイムコースを、図10に示す。カビ由来D−アミノ酸オキシダーゼについても、D−メチオニン(●)に比較してD−メチオニンメチルスルホニウム(△)とはほとんど反応しないことが明らかとなった。また、D−メチオニンメチルスルホニウム存在下においても、D−メチオニンとの反応性が変わらないことも分かった(▲)。
(実施例11)還元剤共存下で酸化系発色剤を用いるD−メチオニン測定系におけるN−エチルマレイミドの効果
次いで、D−メチオニン測定を、日立7170自動分析装置を用いて以下のように行った。すなわち、5mMジチオスレイトール(DTT)を含有する0、0.0625、0.125、0.25、0.5、および1mMのD−メチオニン20μLに、100mMリン酸緩衝液(pH7.4)、1mM TOOS、および0.05%トリトンX−100を含む試薬1を200μL添加し、37℃で約5分間反応させた。続いて、100mMリン酸緩衝液(pH7.4)、4mM 4−アミノアンチピリン、1U/mL D−アミノ酸オキシダーゼ、17.6U/mLパーオキシダーゼ、1mM FAD、および0.05%トリトンX−100を含む試薬2を50μL添加し、さらに37℃で約5分間反応させた。測定ポイント16から34における吸光度(主波長546nm、副波長700nm)変化を測定した。次に、試薬1に2.8mMのN−エチルマレイミド(NEM)を添加する以外は全く同様に試薬を調製して、NEM添加の場合について同様に測定した。
図11に示すように、NEM無添加試薬で測定した場合(○)には、試料中に含まれるジチオスレイトールのため、D−メチオニンが全く測定されなかったが、NEM添加試薬で測定した場合(●)は、直線的な用量依存性が認められ、D−メチオニンを測定することができることが分かった。
(実施例12)本発明の方法(MTase法I)におけるホモシステイン標品での用量依存性の検討
0、100、および200μMホモシスチン(ホモシステイン換算値0、200および400μM)、86mMリン酸緩衝液(pH7.4)、10%酵素液、4mMジチオスレイトール、および1.5mM臭化D−メチオニンメチルスルホニウムを、37℃で90分間反応させた。
反応液中のD−メチオニン量の測定を、日立7170自動分析装置を用いて以下のように実施した。検体(反応液)30μLに、100mMリン酸緩衝液(pH7.4)、1mM TOOS、および1.7mM N−エチルマレイミド(NEM)を含む試薬1を200μL添加し、37℃で約5分間反応させた。続いて、100mMリン酸緩衝液(pH7.4)、4mM 4−アミノアンチピリン、1U/mL D−アミノ酸オキシダーゼ、17.6U/mLパーオキシダーゼ、および0.2mM FADを含む試薬2を50μL添加し、さらに37℃で約5分間反応させた。測定ポイント16から34における吸光度(主波長546nm、副波長700nm)変化を測定した。その結果を、横軸をホモシスチン濃度、縦軸を吸光度変化(×10000)として図12に示した。
図12から明らかなように、ホモシスチンの用量依存的に吸光度変化の増大が認められた(●)。一方、D−メチオニンメチルスルホニウムを添加しない場合(△)および酵素を添加しない場合(□)には、用量依存性は観察できなかった。
(実施例13)本発明の方法(MTase法I)における血清ホモシステインの用量依存性の検討
正常コントロール血清セラクリアHE(アズウェル社)にホモシスチンを0、10、20、30、40、および50μM(ホモシステイン換算値0〜100μM)添加した試料100μLに、50mMリン酸緩衝液(pH7.4)、30%酵素液、15mMジチオスレイトール、および3mM臭化D−メチオニンメチルスルホニウムを含む処理液50μLを添加して混合し、37℃で90分間反応させた。
反応液中のD−メチオニン量の測定を、日立7170自動分析装置を用いて以下のように実施した。検体(反応液)20μLに、100mMリン酸緩衝液(pH7.4)、1mM TOOS、2.8mM NEMおよび0.05%トリトンX−100を含む試薬1を200μL添加し、37℃で約5分間反応させた。続いて、100mMリン酸緩衝液(pH7.4)、4mM 4−アミノアンチピリン、1U/mL D−アミノ酸オキシダーゼ、17.6U/mLパーオキシダーゼ、1mM FAD、および0.05%トリトンX−100を含む試薬2を50μL添加し、さらに37℃で約5分間反応させた。測定ポイント16から34における吸光度(主波長546nm、副波長700nm)変化を求めた。その結果を、横軸を添加ホモシスチン濃度、縦軸を各検体の吸光度変化(×10000)からホモシスチン無添加検体の吸光度変化(×10000)を差し引いた値として図13に示した。
図13から明らかなように、血清検体においてもホモシスチン添加量に対して用量依存性が認められた(●)。一方、D−メチオニンメチルスルホニウムを添加しない場合(○)には、このような用量依存性は観察されなかった。以上の結果から、検体中のホモシステインの定量が可能であることが明らかである。
(実施例14)高感度発色剤による測定
D−メチオニン定量のための発色剤をTOOS、4−アミノアンチピリン系から、高感度発色剤であるTPM−PSに変更する以外は、実施例13と全く同様に行った。すなわち、D−メチオニン定量試薬の試薬1からTOOSを除き、そして試薬2から4−アミノアンチピリンを除いて代わりにTMP−PSを2mM添加したものを測定に用いた。図14に示すように、TMP−PSを用いた方が、TOOS、4−アミノアンチピリン系に比べて高感度で測定することが可能であることが分かった。
(実施例15)本発明の方法(MTase法I)による測定と従来のHPLC法による測定との相関性の検討
血清試料35サンプルについて、MTase法によってホモシステインを測定した。試薬ブランクとして生理食塩水を、スタンダードとして50μMホモシステインを含む生理食塩水を用いた。試料100μLに、9.6U/Lホモシステインメチルトランスフェラーゼ、15mM DTT、1.5mM臭化D−メチオニンメチルスルホニウム、および0.5mM臭化亜鉛を含む35mMリン酸緩衝液(pH7.0)50μLを添加し、37℃で90分間反応させた。なお、ホモシステインメチルトランスフェラーゼの1Uは、D−メチオニンメチルスルホニウムをメチル供与体とし、ホモシステインをメチル受容体として用いたとき、1分間あたり1μmolのD−メチオニン合成を触媒する酵素量である。同じ試料について、ホモシステインメチルメチルトランスフェラーゼを含まない試薬で同様に反応させた。次に、18mM NEMを含む反応停止液150μLを加えた。反応液中のD−メチオニン量の測定は、日立7170自動分析装置を用いて以下のように実施した。反応液30μLに、0.48mM TOOSを含む96mMリン酸緩衝液(pH7.0)150μLを添加し、37℃で約5分間反応させた。続いて、0.7mM 4−アミノアンチピリン、1.4U/mL D−アミノ酸オキシダーゼ、4.4U/mLパーオキシダーゼ、および1mM FADを含む90mMリン酸緩衝液(pH7.0)100μLを添加し、さらに37℃で約5分間反応させた。測定ポイント16から34における吸光度(主波長546nm、副波長700nm)変化を求めた。ホモシステインメチルトランスフェラーゼ添加試薬での吸光度変化から同酵素無添加試薬での吸光度変化(サンプルブランク)を差し引いた値を用いて試料中のホモシステイン量を算出した。
一方、同試料のホモシステイン測定を、HPLC法でも実施した((株)SRL委託)。
横軸にHPLC法による測定値を、縦軸に本発明の方法(MTase法I)による測定値をプロットした結果を、図15に示す。図15から明らかなように、非常に良好な相関関係が得られ、試料中のホモシステインが本発明の方法により正確に測定できることがわかる。
(実施例16)D−アミノ酸オキシダーゼおよびロイシン脱水素酵素を用いたD−メチオニン測定系における用量依存性の確認および還元剤DTTの影響
日立7170自動分析装置を用いて、D−メチオニンを以下のように測定した。生理食塩水(0.9%NaCl)に0、25、50、100、200、および400μMのD−メチオニンを含む試料30μLに、50mM TAPS(N−トリス(ヒドロキシメチル)メチル−3−アミノプロパンスルホン酸;同仁化学研究所製)(pH8.5)、990mM塩化アンモニウム(ナカライ製)、3.4U/mLロイシン脱水素酵素(和光純薬製)、32U/mLカタラーゼ(ロシュ製)、および0.16mM NADH(オリエンタル酵母製)を含む試薬1を180μL添加し、37℃にて約5分間反応させた。続いて、50mM TAPS(pH8.5)、990mM塩化アンモニウム、5U/mL D−アミノ酸オキシダーゼ(ブタ腎臓由来、キッコーマン製)、および0.1mg/mL FADを含む試薬2を40μL添加し、さらに37℃にて約5分間反応させた。測定ポイント16から34におけるNADHの吸光度(主波長340nm、副波長405nm)の変化を測定した。次に、試薬1に、10mM DTTを添加する以外は、全く同様に試薬を調製して、DTT添加の場合について同様に測定した。
結果を図16に示す。横軸は添加D−メチオニン濃度を、縦軸は340nm(副波長405nm)における吸光度の変化量を示す。
図16に示すように、DTTを含まない場合(△)、この測定系において添加D−メチオニン量に対して直線的な用量依存的な吸光度変化が認められ、D−メチオニンが定量できることがわかった。また、DTTを含む場合(○)においても、D−メチオニンの測定には、DTTが影響しないことも確認された。
(実施例17)ホモシステインメチルトランスフェラーゼ、D−アミノ酸オキシダーゼ、およびロイシン脱水素酵素を用いたホモシステイン測定系(MTase法II)における用量依存性の確認
日立7170自動分析装置を用いて、ホモシステインを以下のように測定した。生理食塩水(0.9%NaCl)に0、12.5、25、50、および100μMのホモシスチン(ホモシステイン換算値:0、25、50、100、および200μM)を含む試料30μLに、50mM TAPS(pH8.5)、990mM塩化アンモニウム、10mM DTT、0.5U/mLホモシステインメチルトランスフェラーゼ(酵母由来、大関株式会社より入手)、0.6mM臭化D−メチオニンメチルスルホニウム、5U/mLロイシン脱水素酵素(和光純薬製)、32U/mLカタラーゼ、および0.16mM NADHを含む試薬1を180μL添加し、37℃にて約5分間反応させた。続いて、50mM TAPS(pH8.5)、990mM塩化アンモニウム、7.5U/mL D−アミノ酸オキシダーゼ(キッコーマン製)、および0.1mg/mL FADを含む試薬2を40μL添加し、さらに37℃にて約5分間反応させた。測定ポイント16から34におけるNADHの吸光度(主波長340nm、副波長405nm)の変化を測定した。次に、試料として正常コントロール血清セラクリアHEにホモシスチンを0、12.5、25、50、および100μM添加したものを使用する以外は、上記と全く同様に測定した。
結果を図17に示す。横軸は添加ホモシステイン濃度を、縦軸は340nm(副波長405nm)における吸光度の変化量を示す。
図17に示すように、ホモシステイン標品(●)および血清検体(▲)のいずれにおいても、ホモシステイン添加量に対して用量依存的な吸光度変化が認められ、この測定系においてもホモシステイン定量が可能であることが明らかとなった。
(実施例18)ホモシステインメチルトランスフェラーゼ、D−アミノ酸オキシダーゼ、およびグルタミン酸脱水素酵素を用いたホモシステイン測定系(MTase法II)における用量依存性の確認
日立7170自動分析装置を用いて、ホモシステインを以下のように測定した。生理食塩水(0.9%NaCl)に0、12.5、25、50、および100μMのホモシスチン(ホモシステイン換算値:0、25、50、100、および200μM)を含む試料30μLに、100mMトリス緩衝液(pH8.0)、10mM DTT、0.6mM臭化D−メチオニンメチルスルホニウム、2U/mL D−アミノ酸オキシダーゼ(キッコーマン製)、0.03mg/mL FAD、32U/mLカタラーゼ、8U/mLグルタミン酸脱水素酵素(東洋紡績製)、8mM 2−オキソグルタル酸(ナカライ製)、および0.16mM NADHを含む試薬1を180μL添加し、37℃にて約5分間反応させた。続いて、100mMトリス緩衝液(pH8.0)および2.1U/mLホモシステインメチルトランスフェラーゼ(酵母由来、大関株式会社より入手)を含む試薬2を40μL添加し、さらに37℃にて約5分間反応させた。測定ポイント16から34におけるNADHの吸光度(主波長340nm、副波長405nm)の変化を測定した。次に、試料として正常コントロール血清セラクリアHEにホモシスチンを0、12.5、25、50、および100μM添加したものを使用する以外は、上記と全く同様に測定した。
結果を図18に示す。横軸は添加ホモシステイン濃度を、縦軸は340nm(副波長405nm)における吸光度の変化量を示す。
図18に示すように、ホモシステイン標品(●)および血清検体(▲)のいずれにおいても、ホモシステイン添加量に対して用量依存的な吸光度変化が認められ、この測定系においてもホモシステイン定量が可能であることが明らかとなった。
(実施例19)乳酸脱水素酵素による4−メチルチオ−2−オキソ酪酸の定量性の確認
日立7170自動分析装置を用いて、4−メチルチオ−2−オキソ酪酸を以下のように測定した。生理食塩水(0.9%NaCl)に0、50、100、200、および400μMの4−メチルチオ−2−オキソ酪酸(アルドリッチ製)を含む試料30μLに、200mMリン酸緩衝液(pH7.0)および0.16mM NADHを含む試薬1を180μL添加し、37℃にて約5分間反応させた。続いて、200mMリン酸緩衝液(pH7.0)および65U/mL乳酸脱水素酵素(ブタ心臓由来、オリエンタル酵母製)を含む試薬2を40μL添加し、さらに37℃にて約5分間反応させた。測定ポイント16から34におけるNADHの吸光度(主波長340nm、副波長405nm)の変化を測定した。
結果を図19に示す。横軸は4−メチルチオ−2−オキソ酪酸濃度を、縦軸は340nm(副波長405nm)における吸光度の変化量を示す。
図19に示すように、4−メチルチオ−2−オキソ酪酸量に対して用量依存的な吸光度変化が認められ、乳酸脱水素酵素が4−メチルチオ−2−オキソ酪酸を基質とすることが明らかとなり、実施例17および18のロイシン脱水素酵素およびグルタミン酸脱水素酵素の代わりに乳酸脱水素酵素を用いる測定系においても、ホモシステイン定量が可能であることが確認された。
産業上の利用可能性
本発明によって、生体試料、特に血液、尿などの体液中のホモシステインを、迅速かつ簡便に、感度よく検出および定量することが可能になった。
【図面の簡単な説明】
図1は、ホモシステイン変換酵素およびホモシステイン補助基質として、S−アデノシル−L−ホモシステイン加水分解酵素およびアデノシンを用いる場合の反応概略図である。
図2は、ホモシステイン変換酵素およびホモシステイン補助基質として、ホモシステイントランスフェラーゼおよびD−メチオニンメチルスルホニウムを用いる場合の反応概略図である。
図3は、酸化系発色剤を用いたホモシステイン測定系における発色のSH試薬添加による効果を示すグラフである。
図4は、ホモシスチン標品を試料とした場合の用量依存性を示すグラフである。
図5は、血清試料中のホモシステイン測定において、S−アデノシル−L−ホモシステイン加水分解酵素添加試薬および無添加試薬の場合の吸光度を示すグラフである。
図6は、血清試料中のホモシステインを測定した結果を示すグラフである。
図7は、ホモシステイン測定系に及ぼすシステインおよびメチオニンの影響を示すグラフである。
図8は、本発明の方法(SAHase法)および従来のHPLC法による血清試料中のホモシステインの測定値の相関性を示すグラフである。
図9は、D−メチオニンおよびD−メチオニンメチルスルホニウムに対するブタ腎臓由来D−アミノ酸オキシダーゼの反応タイムコースを示すグラフである。
図10は、D−メチオニンおよびD−メチオニンメチルスルホニウムに対するカビ由来D−アミノ酸オキシダーゼの反応タイムコースを示すグラフである。
図11は、還元剤存在下で酸化系発色剤を用いるD−メチオニン測定系におけるSH試薬の効果を示すグラフである。
図12は、ホモシスチン標品を試料とした場合の用量依存性を示すグラフである。
図13は、血清試料中のホモシステイン測定において、D−メチオニンメチルスルホニウム添加および無添加の場合の吸光度を示すグラフである。
図14は、血清試料中のホモシステインを高感度発色剤によって測定した結果を示すグラフである。
図15は、本発明の方法(MTase法I)および従来のHPLC法による血清試料中のホモシステインの測定値の相関性を示すグラフである。
図16は、D−アミノ酸オキシダーゼおよびロイシン脱水素酵素を用いたD−メチオニン測定系における用量依存性を示すグラフである。
図17は、ホモシステインメチルトランスフェラーゼ、D−アミノ酸オキシダーゼ、およびロイシン脱水素酵素を用いたホモシステイン測定系(本発明の方法:MTase法II)における用量依存性を示すグラフである。
図18は、ホモシステインメチルトランスフェラーゼ、D−アミノ酸オキシダーゼ、およびグルタミン脱水素酵素を用いたホモシステイン測定系(本発明の方法:MTase法II)における用量依存性を示すグラフである。
図19は、乳酸脱水素酵素を用いた4−メチルチオ−2−オキソ酪酸測定系における用量依存性を示すグラフである。
Claims (13)
- 試料中のホモシステインを検出または測定するための方法であって、
(a)該試料中のホモシステインをチオール化合物で還元処理する工程、
(b)還元されたホモシステインに、ホモシステイン変換酵素およびホモシステイン補助基質を作用させ、ホモシステイン変換酵素生成物を生じさせる工程、および
(c)残存するホモシステイン補助基質、生成したホモシステイン変換酵素生成物またはそれらの酵素反応生成物を、(i)SH試薬の存在下で酸化して過酸化水素を生成させ、生成した過酸化水素を酸化系発色剤により発色させることによって、検出または測定する工程、
を含み、
該工程(b)のホモシステイン変換酵素が、S-アデノシル-L-ホモシステイン加水分解酵素であり、そして該工程(b)および(c)のホモシステイン補助基質がアデノシンである、方法。 - 前記アデノシンを検出または測定する工程(c)が、アデノシンデアミナーゼ、リン酸、プリンヌクレオシドホスホリラーゼ、およびキサンチンオキシダーゼを作用させ、生成する過酸化水素を、パーオキシダーゼおよび酸化系発色剤により発色させて検出または測定する工程である、請求項1に記載の方法。
- 試料中のホモシステインを検出または測定するための方法であって、
(a)該試料中のホモシステインをチオール化合物で還元処理する工程、
(b)還元されたホモシステインに、ホモシステイン変換酵素およびホモシステイン補助基質を作用させ、ホモシステイン変換酵素生成物を生じさせる工程、および
(c)残存するホモシステイン補助基質、生成したホモシステイン変換酵素生成物またはそれらの酵素反応生成物を、(ii)D-アミノ酸変換酵素を作用させてオキソ酸および/またはアンモニアを生成させ、生成したオキソ酸および/またはアンモニアを検出または測定することによって、検出または測定する工程、
を含み、
該工程(b)のホモシステイン変換酵素が、ホモシステインをメチル受容体とするメチル転移酵素であり、そして該工程(b)および(c)のホモシステイン補助基質がメチル供与体である、方法。 - 前記メチル転移酵素が、ホモシステインメチルトランスフェラーゼであり、そして前記メチル供与体が、D-メチオニンメチルスルホニウムである、請求項3に記載の方法。
- 前記D-アミノ酸変換酵素がD-アミノ酸オキシダーゼである、請求項3または4に記載の方法。
- 前記工程(c)において、前記生成した過酸化水素を、パーオキシダーゼおよび酸化系発色剤により発色させて検出または測定する、請求項3から5のいずれかに記載の方法。
- 前記工程(c)において、前記生成したオキソ酸および/またはアンモニアに、NAD(P)Hを補酵素とする脱水素酵素を作用させ、減少するNAD(P)Hまたは増加するNAD(P)の変化を検出または測定する、請求項3から5のいずれかに記載の方法。
- チオール化合物、ホモシステイン変換酵素、ホモシステイン補助基質、SH試薬、および酸化系発色剤を含み、該ホモシステイン変換酵素がS-アデノシル-L-ホモシステイン加水分解酵素であり、そして該ホモシステイン補助基質がアデノシンである、ホモシステイン測定用試薬キット。
- さらに、アデノシンデアミナーゼ、リン酸、プリンヌクレオシドホスホリラーゼ、キサンチンオキシダーゼおよびパーオキシダーゼを含む、請求項8に記載のキット。
- チオール化合物、ホモシステイン変換酵素、ホモシステイン補助基質、D-アミノ酸変換酵素を含み、該ホモシステイン変換酵素がホモシステインをメチル受容体とするメチル転移酵素であり、そして該ホモシステイン補助基質がメチル供与体である、ホモシステイン測定用試薬キット。
- さらに、NAD(P)H、およびNAD(P)Hを補酵素とする脱水素酵素およびその補助基質としてアンモニウム塩または2-オキソ酸を含む、請求項10に記載のキット。
- 前記メチル転移酵素が、ホモシステインメチルトランスフェラーゼであり、そして前記メチル供与体が、D-メチオニンメチルスルホニウムである、請求項10または11に記載のキット。
- 前記D-アミノ酸変換酵素がD-アミノ酸オキシダーゼである、請求項10から12のいずれかの項に記載のキット。
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