JP4807115B2 - 鋼の連続鋳造方法 - Google Patents

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本発明は、鋼の連続鋳造方法に関し、詳しくは、連続鋳造鋳片の中心偏析を防止した連続鋳造方法に関するものである。
鋼の凝固過程における最終凝固部では、炭素、燐、硫黄などの溶質元素は未凝固相に濃縮される。この濃縮された溶鋼が流動し、集積して凝固すると、溶鋼の初期濃度に比べて格段に高濃度となって成分偏析部が生成される。鋼が凝固すると体積収縮が起こり、この凝固収縮に伴い、連続鋳造の場合には鋳片の引き抜き方向へ溶鋼が吸引されて流動する。連続鋳造鋳片の凝固末期の未凝固相には十分な量の溶鋼が存在しないので、最終凝固部であるデンドライト樹間の濃化溶鋼が流動をおこし、それが鋳片中心部に集積して凝固し、所謂中心偏析が生成される。
中心偏析は鋼製品の品質を劣化させる。例えば、石油輸送用及び天然ガス輸送用のラインパイプ材においては、サワーガスの作用により中心偏析を起点として水素誘起割れが発生し、また、飲料水用の缶製品に用いられる深絞り材においては、成分の偏析により加工性に異方性が出現する。そのため、連続鋳造工程においては、鋳片の中心偏析を低減する対策が多数提案されている。
例えば、特許文献1には、内部に未凝固部が残る鋳片に連続鋳造機内で圧下を加えて、最終凝固部の凝固収縮分を補い、溶鋼の流動を抑え、中心偏析を防止する方法が開示されている。この技術は、凝固収縮分の圧下を行なうことから「軽圧下法」と呼ばれており、関連する技術が多数提案されている。
また、このほかの技術として、鋳片の最終凝固部に磁場を印加して中心偏析を低減する技術も開発されている。その技術のうちの1つは、例えば特許文献2に開示されるような、鋳片に移動磁場を印加し、移動磁場により残溶鋼を強制的に旋回攪拌して、最終凝固部に等軸晶を形成させる技術である。この技術は、一般に、柱状晶凝固に比べて等軸晶凝固の方が、中心偏析が分散化されて軽減する傾向にあるという事象に基づいている。
磁場を印加する別の技術として、例えば特許文献3に開示されるような、最終凝固部近傍に直流静磁場を印加し、磁場印加による生じる電磁力によって残溶鋼の流動を強制的に抑制する技術も開発されている。この技術は、前述した軽圧下技術が鋳片の体積を減少させて溶鋼の流動を抑制する技術であるのに対し、電磁力によって最終凝固部近傍の溶鋼の流動を強制的に抑制するという技術である。
特開昭60−6254号公報 特開昭63−273557号公報 特開昭63−10050号公報
しかしながら、上記の従来技術にはそれぞれ以下のような問題点がある。即ち、特許文献1に開示された軽圧下技術は、中心偏析低減に有効な技術であるが、鋳片の形状や凝固状態によっては、すでに凝固してしまった部分の変形抵抗などのために、圧下を加えても最終凝固部が十分に圧下されず、効果が十分でない場合が発生する。また、凝固過程のどの段階で圧下を加えるかによって、効果が不十分になったり、却って中心偏析を助長させたりすることもある。
移動磁場による旋回攪拌流により等軸晶凝固を促進させて偏析を分散させる特許文献2に開示された技術では、攪拌流による負偏析帯(ホワイトバンド)の形成があるほか、形成された等軸晶の性状によっては、所謂ブリッジング(凝固相どうしの接着)などにより、鋳片中心部に間歇的にマクロ偏析が形成されることがある。また、分散化された所謂セミマクロ偏析粒が生成し、このセミマクロ偏析粒が製品の欠陥につながることもある。
特許文献3に開示されるような、静磁場印加により残溶鋼の流動を抑制する技術では、静磁場の印加する位置が固定されていることから、高速鋳造になると、静磁場の印加が却って移動する鋳片に対して相対的な溶鋼流動を引き起こす原因となり、偏析対策としては不十分なものになっている。
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、連続鋳造鋳片の中心偏析を効率的に抑制し、近年の厳しい品質要求にも対処可能な鋳片を製造することのできる、鋼の連続鋳造方法を提供することである。
本発明者等は、上記課題を解決すべく、鋭意検討・研究を実施した。以下に検討結果を説明する。
連続鋳造鋳片の中心偏析は、最終凝固部近傍で、凝固時の分配の原理により溶質元素が濃化した未凝固相(「濃化残溶鋼」ともいう)が、凝固収縮や鋳片のバルジングなどによって生じた負圧の影響で移動し、鋳片の中心部に集積することによって形成される。従って、負圧の形成、具体的には、その起因となる凝固収縮やバルジングを抑えることが、中心偏析低減の最も効果的な手段のひとつであり、二次冷却の強化やロールピッチ短縮によるバルジング防止及び軽圧下がその具体的な方策である。
一方、濃化残溶鋼の移動そのものを抑制する技術として、特許文献3に開示されるように、静磁場の印加が開発されている。この技術の開発に当たっては、実験室的に、固定鋳型に溶鋼を注湯し、凝固途中で静磁場を印加することによって、静磁場の印加条件の検討などが行われ、その結果に基づいて実際の製造ラインに適用されることが多かった。
しかし、実験室的に最適化された静磁場印加条件と、実際の製造ラインでの結果は必ずしも一致せず、静磁場の印加効果が十分に発揮されない事例が多々見られた。
本発明者等は、この原因について検討した。その結果、連続鋳造の最終凝固部に静磁場を印加する場合、鋳片は所定の鋳造速度で移動しており、鋳片の鋳造速度によっては、静磁場によって濃化残溶鋼の動きを止めることが、鋳片の固相部に対して相対的な残溶鋼の移動をもたらすことになるため、十分な効果が得られないことが分かった。
即ち、鋳片外部からの静磁場印加によって、鋳片内部の残溶鋼の移動を抑制することが可能であり、その効果は印加する磁場強度が高いほど大きいが、連続鋳造の場合、鋳片自体が移動しているので、溶鋼の移動を抑制することは、鋳片固相部に対して液相側が相対的に移動することになり、これにより却って中心偏析を形成する可能性があることが分かった。特に、この現象は、鋳片の移動速度が速い、つまり高速鋳造の場合に顕著であることが分かった。
また、この問題のほかに、特定の位置に静磁場発生装置(磁石)を固定して、連続鋳造鋳片に静磁場を印加する場合には、静磁場の影響が及ぶのは、わずか一瞬に限られてしまい、これも静磁場の効果を十分に発揮できない理由であることが分かった。
これらの結果から、静磁場発生装置を鋳片の移動速度つまり鋳造速度に追随させることで、上記の2つの問題点は、同時に解消されるとの知見を得た。また、磁場が鋳片の鋳造速度に追随するという条件である限り、印加する磁場は静磁場に限らず、移動磁場であっても適用できるとの知見も得た。移動磁場は多数のN極、S極が形成され、これらが移動して移動磁場を形成するが、移動磁場の移動方向を鋳片の鋳造方向に合わせ、且つ、移動磁場の移動速度を鋳片の鋳造速度に合わせた場合には、磁場は、移動する鋳片に対しては相対的に移動しないことになり、あたかも多数の静磁場発生装置を鋳片の移動方向に並べたと同等の印加条件になるからである。
本発明は、上記検討知見に基づいてなされたものであり、第1の発明に係る鋼の連続鋳造方法は、連続鋳造機で鋳造されている鋳片の凝固末期に、静磁場発生装置から鋳片厚み方向に静磁場を印加して溶鋼を連続鋳造する際に、前記静磁場発生装置を鋳片の鋳造速度に合わせて移動させながら静磁場を印加することを特徴とするものである。
第2の発明に係る鋼の連続鋳造方法は、連続鋳造機で鋳造されている鋳片の凝固末期に、移動磁場発生装置から鋳片厚み方向に移動磁場を印加して溶鋼を連続鋳造する際に、移動磁場の移動方向を鋳造方向に合わせると同時に、移動磁場の移動速度を鋳片の鋳造速度に合わせて移動磁場を印加することを特徴とするものである。
本発明によれば、連続鋳造鋳片の最終凝固部近傍で鋳片の厚み方向に磁場を印加して、残溶鋼の流動を抑止する技術において、鋳片の移動速度に合わせて磁場を移動させるようにしたので、印加する磁場が静磁場であってもまた移動磁場であっても、鋳片の固相部と鋳片の残溶鋼との相対的な移動が完全に抑えられ、つまり、残溶鋼の移動が防止されるので、鋳片の中心偏析を軽減することができる。この磁場印加効果は、固液共存状態の溶鋼(液相)に対して制動力を及ぼすため、高固相率のデンドライト樹間の液相の流動防止だけでなく、液相中を浮遊する凝固相の流動防止に対しても有効に作用するので、等軸晶凝固の場合の、固相の移動に伴うブリッジングの防止やセミマクロ偏析防止の効果も発揮される。
以下、添付図面を参照して本発明を具体的に説明する。図1は、本発明の第1の実施の形態例を示す図であって、本発明を実施する際に用いたスラブ連続鋳造機の側面概要図である。
図1に示すように、スラブ連続鋳造機1には、溶鋼11を冷却して凝固させ、鋳片12の外殻形状を形成するための鋳型5が設置され、この鋳型5の上方所定位置には、取鍋(図示せず)から供給される溶鋼11を鋳型5に中継供給するためのタンディッシュ2が設置されている。一方、鋳型5の下方には、サポートロール6、ガイドロール7及びピンチロール8からなる複数対の鋳片支持ロールが配置されている。これらの鋳片支持ロールは、鋳型5から引き抜かれる鋳片12を支持しながら下方に案内するための鋳片支持・案内装置である。このうち、サポートロール6は、鋳型5の直下に配置された比較的直径の小さい鋳片支持ロールであり、凝固シェル13の厚みの薄い鋳型直下位置の鋳片12を短いロールピッチで密に支持する役割を担っている。ピンチロール8は、鋳片12を支持すると同時に鋳片12を引き抜くための駆動ロールである。
鋳造方向に隣り合う鋳片支持ロールの間隙には、水スプレーノズル或いはエアーミストスプレーノズルなどのスプレーノズル(図示せず)が配置された二次冷却帯が構成され、二次冷却帯のスプレーノズルから噴霧される冷却水(「二次冷却水」ともいう)によって鋳片12は引き抜かれながら冷却されるようになっている。
タンディッシュ2の底部には、タンディッシュ2から鋳型5に注入される溶鋼11の流量を調整するためのスライディングノズル3が設置され、このスライディングノズル3の下面には、溶鋼11を鋳型5に注入するための耐火物製の浸漬ノズル4が設置されている。また、鋳片支持ロールの下流側には、鋳造された鋳片12を搬送するための複数の搬送ロール9が設置されており、この搬送ロール9の上方には、鋳造される鋳片12から所定の長さの鋳片12aを切断するための鋳片切断機10が配置されている。
鋳片12の凝固完了位置15の近傍には、鋳片12の厚み方向に磁場を印加するための磁場発生装置16及び磁場発生装置16Aが鋳片12を挟んで対向して設置されている。磁場発生装置16,16Aは、静磁場を発生する装置であっても、移動磁場を発生する装置であってもどちらでも適用できるが、凝固完了位置15の近傍上流側に配置する必要があり、具体的には鋳片12の厚み中心位置の固相率が0.3から0.9の範囲内のどこかに配置する必要があり、従って、目的とする鋳造速度において鋳片12の厚み中心部の固相率が0.3〜0.9の範囲内になる位置に磁場発生装置16,16Aを設置する必要がある。鋳片12の厚み中心位置の固相率が0.3未満の場合には、流動可能な残溶鋼がいまだ多量に存在するので、残溶鋼が流動しても中心偏析の原因とならず、一方、鋳片12の厚み中心位置の固相率が0.9を超えた場合には、すでに中心偏析が形成されていて、中心偏析防止対策としては遅すぎるからである。
図2に、磁場発生装置16が静磁場を発生する静磁場発生装置17の場合の概略図を示す。N極となる静磁場発生装置17とS極となる静磁場発生装置17Aとが、鋳片12を挟んで対向して配置されている。静磁場発生装置17及び静磁場発生装置17Aには同じ個数の磁極19が設置されていて、静磁場発生装置17の磁極19から発生する磁力線は、対向する静磁場発生装置17Aの磁極19に向かい、かくして鋳片12の厚み方向に静磁場が印加される。
静磁場発生装置17及び静磁場発生装置17Aは、両者が連動して鋳造方向に距離(L)だけ移動可能に構成されている。つまり、鋳片12の鋳造速度に同調して距離(L)だけ鋳造方向下流側に移動すると、距離(L)だけ鋳造方向上流側に瞬時に戻るようになっている。そして、鋳片12と同調して移動するときに静磁場が印加され、距離(L)だけ鋳造方向上流側に戻るときには静磁場が印加されないようになっている。磁極19は、印加する磁場強度を調整可能であることから、電磁石であることが好ましい。図2では、静磁場発生装置17がN極で、静磁場発生装置17AがS極であるが、逆にしても全く問題ない。
また、図3に、磁場発生装置16が移動磁場を発生する移動磁場発生装置18の場合の概略図を示す。この場合も、移動磁場発生装置18と移動磁場発生装置18Aとが鋳片12を挟んで対向して配置されている。移動磁場の移動方向は、移動磁場発生装置18及び移動磁場発生装置18Aともに、鋳造方向上流側から下流側となっていて、移動磁場発生装置18と移動磁場発生装置18Aとの対向する磁極19の特性は、180度位相を変えて設置されている。つまり、移動磁場発生装置18の磁極19がN極であった時点には、対向する移動磁場発生装置18Aの磁極19はS極となるように電気回路上で設定されている。従って、移動磁場発生装置18の磁極19がN極であった時点には、対向する移動磁場発生装置18Aの磁極19に向けて、鋳片12の厚み方向に磁力線が印加される。
移動磁場の移動速度は、移動磁場発生装置18及び移動磁場発生装置18Aに供給する交流電流の周波数によって決定されるので、つまり、周波数を高くすれば移動速度が速くなり、周波数を低くすれば移動速度が遅くなるので、移動磁場発生装置18及び移動磁場発生装置18Aに供給する交流電流の周波数を調整することにより、移動磁場の移動速度を鋳片12の鋳造速度と同一にすることができる。
移動磁場の移動方向を鋳片12の鋳造方向と同一とし、且つ、移動磁場の移動速度を鋳片12の鋳造速度と同一にすると、磁場は、移動する鋳片12に対しては移動せず、あたかも鋳片12の厚み方向に静磁場が印加されたと同等の磁場印加条件となる。但し、静磁場発生装置17,17Aの場合と異なり、磁力線の方向は場所によって変化する。移動磁場発生装置18,18Aは、一般には溶鋼を攪拌するための装置として使用されるが、本発明の移動磁場の印加条件では、未凝固相14には攪拌力が作用しない。尚、図3では、隣り合う磁極19の特性が、N極の隣はS極、S極の隣はN極となっているが、これは、移動磁場の移動速度が磁極19のピッチ(設置距離)に合致した場合を示しており、移動磁場の移動速度によってはN極の隣りがN極になったり、N極でもS極でもなく磁力ゼロとなったりする。
鋳片12に静磁場、或いは、鋳片12に対して相対速度のない移動磁場(鋳片に対しては実質的に静磁場)が印加された状態において、溶質元素が濃化した未凝固相14が凝固収縮や鋳片12のバルジングなどによって移動しようとすると、移動する未凝固相14により生ずる電流と、印加する静磁場とで未凝固相14の移動方向と逆向きの電磁力が形成され、未凝固相14の移動が抑制される。即ち、中心偏析の原因となる未凝固相14の移動が防止される。この場合、磁場の印加強度は、最終凝固部の残溶鋼に制動力を与えるために、或る程度の強磁場とすることが有効で、発明者等の経験から、静磁場であれ移動磁場であれ、鋳片12の中心位置で0.2テスラ以上の強磁場とすることが望ましい。磁場の印加方向は、鋳片12の厚み方向であるならば、何れの方向であっても構わない。
このような構成のスラブ連続鋳造機1を用いて、以下のようにして本発明を実施する。
先ず、タンディッシュ2から浸漬ノズル4を介して鋳型5に溶鋼11を注入する。鋳型5に鋳造された溶鋼11は鋳型5で冷却されて凝固シェル13を形成し、内部に未凝固相14を有する鋳片12として、サポートロール6、ガイドロール7及びピンチロール8からなる複数対の鋳片支持ロールに支持されつつ下方に連続的に引き抜かれる。鋳型5の溶鋼湯面上には、モールドパウダー(図示せず)を添加する。
鋳造速度を調整し、磁場発生装置16,16Aの設置した位置において、鋳片12の厚み中心位置の固相率が0.3から0.9の範囲内に入るように制御する。この場合に、磁場発生装置16,16Aの設置範囲が長く、鋳片12の厚み中心位置の固相率が0.3から0.9の範囲を外れても全く問題ない。要は、鋳片12の厚み中心位置の固相率が少なくとも0.3から0.9の範囲内において、磁場発生装置16,16Aから磁場を印加するということである。
鋳片12を引き抜きながら、二次冷却帯によって冷却する。冷却された鋳片12は、凝固シェル13の厚みを増大して、やがて中心部までの凝固を完了する。このようにして鋳造した鋳片12を鋳片切断機10により切断して鋳片12aを得る。鋳片12aは、次工程の熱間圧延工程に搬送される。
以上説明したように、本発明によれば、最終凝固部への磁場の印加に当たって、特許文献3のように固定した装置での静磁場印加ではなく、鋳片12の移動に合わせて、磁場も移動するようにしたので、磁場による溶鋼の流動防止と鋳片固相部の移動とで生じる相対的な移動、つまり、凝固シェル13と未凝固相14との相対的な移動が完全に抑止されるので、鋳片12の中心偏析を抑えることができる。
尚、図2及び図3からも明らかなように、磁場が移動していくので、磁場の存在する部位のみに制動力が働き、磁場の存在しない部位には制動力が働かず、鋳片12においては、磁場による制動力が作用する部分と作用しない部分とが存在することになる。このため、偏析抑制効果は鋳片全長に亘って均一には得られないことになるが、鋳片12には、周期的または間歇的に、磁場印加による流動抑制域が設けられるので、磁場が印加されていない部分の未凝固相14の移動も十分に抑制され、中心偏析を低減することができる。
また、スラブ鋳片の連続鋳造の場合、磁場印加効果を十分に発揮するためには、磁場発生装置16を、連続鋳造機内の鋳片12の長辺側に設置することが望ましく、その場合、鋳片支持・案内用の鋳片支持ロールが存在するため、設備的制約が多く、鋳片支持ロールの背面側に磁場発生装置16を設置するなどの必要が生じる。これに対して、鋳造する鋳片が、アスペクト比の小さいブルームやビレットの場合には、磁場発生装置16を、図4に示すように、連続鋳造機内の鋳片12の短辺側に設置することができる。アスペクト比が小さいので、鋳片12の短辺側に設置しても、十分な磁場印加効果が発揮できる。
図4は、本発明の第2の実施の形態例を示す図であって、本発明を実施する際に用いた連続鋳造機の側面概要図であり、図4において、連続鋳造機1Aは、磁場発生装置16を鋳片12の両方の短辺側に設置している以外の構造は図1に示すスラブ連続鋳造1と同一構造となっており、同一の部分は同一符号により示し、その説明は省略する。
連続鋳造機では、スラブ連続鋳造機1であれ、ブルーム連続鋳造機などのそれ以外の連続鋳造機1Aであれ、一般に、凝固完了位置15近傍の二次冷却帯の下流側では、鋳片12の短辺側には鋳片支持ロールを設けないため、磁場発生装置16を鋳片12の両方の短辺側に配置する場合には設備制約が少なく、容易に磁場を印加することができる。また、小断面鋳片の鋳造の場合には、鋳片全体を取り囲むタイプの中空コイル型磁石の適用も可能である。
図1に示すスラブ連続鋳造機を用いた本発明の実施例を説明する。磁場発生装置としては、図2に示す静磁場発生装置を用い、静磁場発生装置から印加する静磁場の強度は鋳片中心位置で0.3テスラとした。このスラブ連続鋳造機で中炭素鋼の鋳造を行った。鋳片厚は250mm、鋳造速度は2.0m/分であった。静磁場発生装置は鋳造方向に移動させた。
このとき、静磁場発生装置の移動速度を変えて鋳造を行い、中心偏析を評価した。その結果を図5に示す。静磁場発生装置の移動速度を、鋳造速度、つまり鋳片の移動速度と一致させたときに、中心偏析が最も低減されるのに対し、静磁場を印加しても、一定位置での印加であったり、鋳片の移動速度とは合致しない速度で移動したりする場合には、中心偏析の低減効果が少ないことが確認できた。
本発明の実施の形態例を示す図であって、本発明を実施する際に用いたスラブ連続鋳造機の側面概要図である。 図1に示す磁場発生装置が静磁場発生装置の場合の概略図である。 図1に示す磁場発生装置が移動磁場発生装置の場合の概略図である。 本発明の他の実施の形態例を示す図であって、本発明を実施する際に用いた連続鋳造機の側面概要図である。 静磁場発生装置の移動速度と鋳片の中心偏析との関係を示す図である。
符号の説明
1 スラブ連続鋳造機
2 タンディッシュ
3 スライディングノズル
4 浸漬ノズル
5 鋳型
6 サポートロール
7 ガイドロール
8 ピンチロール
9 搬送ロール
10 鋳片切断機
11 溶鋼
12 鋳片
13 凝固シェル
14 未凝固相
15 凝固完了位置
16 磁場発生装置
17 静磁場発生装置
18 移動磁場発生装置
19 磁極

Claims (2)

  1. 連続鋳造機で鋳造されている鋳片の凝固末期に、静磁場発生装置から鋳片厚み方向に静磁場を印加して溶鋼を連続鋳造する際に、前記静磁場発生装置を鋳片の鋳造速度に合わせて移動させながら静磁場を印加することを特徴とする、鋼の連続鋳造方法。
  2. 連続鋳造機で鋳造されている鋳片の凝固末期に、移動磁場発生装置から鋳片厚み方向に移動磁場を印加して溶鋼を連続鋳造する際に、移動磁場の移動方向を鋳造方向に合わせると同時に、移動磁場の移動速度を鋳片の鋳造速度に合わせて移動磁場を印加することを特徴とする、鋼の連続鋳造方法。
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