JP4805442B2 - 色素増感型太陽電池 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、高分子固体電解質を用いた色素増感型太陽電池に関する。さら詳しくは、本発明は、特定の構造を有するモノマーから形成された構成単位を含む、三次元的に架橋された高分子化合物を使用した色素増感型太陽電池に関する。
【0002】
【従来の技術】
色素増感型太陽電池(以下、「太陽電池」と称する)は、有機系太陽電池の中で高変換効率を示すため、広く注目されている。太陽電池は、半導体電極と対極との間に狭持された電解液層から構成され、半導体電極に光が照射されると、この電極側で電子が励起され、励起された電子が電気回路を通って対極に移動し、対極に移動した電子が電解質中をイオンとして移動して半導体電極に戻り、このようなサイクルが繰り返されることにより電気エネルギーが取り出されるものである。
【0003】
太陽電池の光電変換材料として用いられる半導体電極としては、半導体表面に可視光領域に吸収をもつ分光増感色素を吸着させたものが用いられている。そのような太陽電池としては、例えば、遷移金属錯体からなる分光増感色素を半導体表面に吸着させた金属酸化物半導体を用いた太陽電池(特許第2664194号)、金属イオンでドープした酸化チタン半導体の表面に遷移金属錯体などの分光増感色素層を有する太陽電池(特公平8−15097号)および半導体表面に分光増感剤のエタノール溶液を加熱還流することにより得られた光電変換材料用半導体を用いた太陽電池(特開平7−249790号)などが挙げられる。
【0004】
図2は、酸化還元性電解液を用いた従来の太陽電池の層構成を示す要部の断面概略図である。この太陽電池は次のような手順により作製される。
まず、透明支持体21の表面に形成した透明導電体22上に、酸化チタンなどの半導体電極23を形成し、その半導体電極23に色素を吸着させる。対極25に白金26などの触媒をコーティングし、半導体電極23と白金26を対面するように透明支持体21と対極25を重ね合わせ、その間に電解液24を注入し、透明支持体21と対極25の側面をエポキシ樹脂27などで封止する。
【0005】
また、特開平8−236165号および特開平9−27352号には、電解液の液漏れを防止するために、一般式(III):
【0006】
【化3】
【0007】
(式中、R4およびR5は同一または異なって、水素原子またはメチル基であり、R6は水素原子または低級アルキル基であり、mは1以上の整数、lは0以上の整数であり、l/mは0〜5の範囲である)
で表されるモノマーから形成された構成単位を含む高分子化合物で、電解液の層を固体化した太陽電池が開示されている。
【0008】
しかしながら、上記の公報に記載の太陽電池では、高分子化合物に対する電解質や電解液の保持能力、および高分子化合物の機械的強度が充分ではなかった。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、優れた液保持力と機械的強度を有する高分子固体電解質を備えた太陽電池を提供することを課題とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を行った結果、特定のモノマーを重合して得られる三次元的に架橋された高分子化合物が、電解質に対する優れた保持力と機械的強度を発揮することを見出し、本発明を完成するに到った。
【0011】
かくして、本発明によれば、透明基板の表面に形成された透明導電膜と導電性基板との間に、色素を吸着した多孔性半導体層と電解質とを有する太陽電池において、電解質が一般式(I):
【0012】
【化4】
【0013】
[式中、R1およびR2は同一または異なって、水素原子またはメチル基であり、Aは式(II):
【化6】
(式中、aおよびbは同一または異なって、0または正の整数(但し、aおよびbは同時に0ではない)であり、R3は水素原子またはメチル基である)で表される2価の基であり、nは0〜2の整数である]
で表されるモノマーから形成された構成単位を含む高分子化合物により保持されていることを特徴とする太陽電池が提供される。
【0014】
【発明の実施の形態】
本発明の高分子化合物は、三次元的な架橋構造を有し、太陽電池の電解質に対する優れた液保持力と機械的強度を有するものであり、一般式(I)で表されるモノマーを単独で、もしくは一般式(I)で表されるモノマーと他のメタクリル酸系モノマーおよび/またはアクリル酸系モノマー(以下、「(メタ)アクリル酸系モノマー」と称する)とを、(共)重合することにより得られる。
一般式(I)のnが0のときは、結合手を表わす。
【0015】
一般式(I)のAが結合手であるモノマーとしては、例えば、メタクリル酸グリシル、アクリル酸テトラヒドロフルフリル(テトラヒドロフルフリルアクリレート)、メタクリル酸テトラヒドロフルフリルなどが挙げられる。
【0016】
また、一般式(I)のAが(ポリ)アルキレンオキシ基から誘導された2価の基であるモノマー、特にAが(ポリ)エチレンオキシ基および(ポリ)プロピレンオキシ基から誘導された、式(II):
【0017】
【化5】
【0018】
(式中、aおよびbは同一または異なって、0または正の整数であり、R3は水素原子またはメチル基である)
で表される2価の基であるモノマーとしては、例えば、一般式(I)のR1がメチル基、R2が水素原子、Aが8個のエチレンオキシ基と2個のプロピレンオキシ基から誘導された2価の基(式(II)のaが8、bが2)、nが1であるものが挙げられる。
【0019】
一般式(I)で表されるモノマーは、電解液に使用される代表的な溶媒であるプロピレンカーボネートあるいはエチレンカーボネートとの親和性がよいので好ましい。また、このようなモノマーを重合した高分子化合物は、電解質に対して優れた保持能力を有するので好ましい。
【0020】
一般式(I)のモノマーと共重合させる(メタ)アクリル酸系モノマーとしては、一般に市販されているものをいずれも用いることができる。具体的には、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n-ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸2−エチルヘキルシル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸トリデシル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸シクロヘキシルなどのメタクリル酸系モノマー、ならびにアクリル酸イソボルニル、アクリル酸ジメチルアミノエチルエステル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸セチル(アクリル酸ヘキサデシル)、アクリル酸4−ヒドロキシブチル、アクリル酸t-ブチル、アクリル酸2-メトキシエチル、アクリル酸3-メトキシブチル、アクリル酸ラウリルなどのアクリル酸系モノマーが挙げられる。
【0021】
これらの中でも、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸ステアリル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸セチル、アクリル酸3-メトキシブチル、アクリル酸ラウリルが特に好ましい。
【0022】
一般式(I)のモノマーと(メタ)アクリル酸系モノマーの割合は、各モノマーの種類やその組み合わせにより異なり、また高分子化合物の架橋性および太陽電池に求められる性能などにより適宜決定すればよい。通常、(メタ)アクリル酸系モノマー(Y)は、一般式(I)のモノマー(X)に対して50〜98mol%程度、すなわちX:Yのモル比が1:1〜49程度である。
【0023】
高分子固体電解質は、主として高分子化合物と、それに注入される電解質とから構成される。
電解質は、一般に電池や太陽電池などにおいて使用することができる電解液であれば特に限定されない。さらに、電解液中の電解質は酸化還元性のものがよく、これも一般に電池や太陽電池などにおいて使用することができる電解液であれば特に限定されないが、LiI、NaI、KI、CaI2などの金属ヨウ化物とヨウ素の組み合わせ、およびLiBr、NaBr、KBr、CaBr2などの金属臭化物と臭素の組み合わせが好ましく、これらの中でも、金属ヨウ化物とヨウ素の組み合わせが好ましい。
【0024】
電解質濃度としては、0.1〜1.5モル/リットルの範囲が挙げられるが、この中で、0.1〜0.7モル/リットルが好ましい。また、電解質の溶媒としては、プロピレンカーボネートなどのカーボネート化合物、アセトニトリルなどのニトリル化合物、エタノールなどのアルコール類、その他、水や非プロトン極性物質などが挙げられるが、これらの中でも、カーボネート化合物やニトリル化合物が好ましい。
【0025】
高分子化合物中に電解質を注入するには、電解質をポリカーボネートなどの溶媒に溶解した電解液に、高分子化合物を浸して、高分子化合物中に電解液を浸透させればよい。
浸透時間は2時間程度必要であるが、浸透温度を高く設定すれば、電解液が活性化されて浸透速度が速くなり、高分子固体電解質の作製時間が短縮できるので好ましい。浸透温度は、ラジカル反応が起こらない程度に抑える必要があり、具体的には35〜65℃程度である。
【0026】
太陽電池では、多孔性半導体中に十分に高分子固体電解質が注入されていなければ変換効率が悪くなる。このため、通常、液状のモノマー、場合によってはケトン系溶剤、カーボネート系溶剤などに溶解したモノマーを、多孔性半導体中に含浸させ、その後にラジカル重合させる。
【0027】
重合方法としては、光重合や熱重合などが適用される。太陽電池においては、多孔性半導体に酸化チタンを使用する場合が多い。酸化チタンは紫外線領域で光触媒反応を起こす物質であるため、光重合を行う際に紫外線光が照射されると光触媒反応が起こり、多孔性半導体に吸着させた色素が分解するなどの問題が考えられるため、熱重合により重合を行うことが好ましい。
【0028】
通常、熱重合は、重合開始剤を使用して加熱することにより行うが、重合開始剤の濃度および加熱温度は使用するモノマーにより適宜決定される。
一般にラジカル重合における重合速度は、重合開始剤の濃度の0.5乗に比例するため、重合開始剤の濃度が低いと重合時間が非常に長くなる。したがって、重合開始剤の濃度はモノマーに対して0.5〜10wt%程度が好ましい。
【0029】
多孔性半導体層を構成する多孔性半導体としては、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化タングステン、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、硫化カドミウムなどの公知の半導体が挙げられる。これらの多孔性半導体は2種以上を混合して用いることもできる。これらの中でも、変換効率、安定性、安全性の点から酸化チタンが特に好ましい。このような酸化チタンとしては、アナターゼ型酸化チタン、ルチル型酸化チタン、無定形酸化チタン、メタチタン酸、オルソチタン酸などの種々の酸化チタン、含酸化チタン複合体などが挙げられるが、これらはいずれであってもよい。
【0030】
多孔性半導体は、粒子状、膜状など種々の形態のものを用いることができるが、基板上に形成された膜状の多孔性半導体が好ましい。
膜状の多孔性半導体を形成する場合の基板としては、例えば、ガラス基板、プラスチック基板などが挙げられ、中でも透明性の高い基板(透明基板)が特に好ましい。
【0031】
基板上に膜状の多孔性半導体を形成する方法としては、公知の種々の方法を使用することができる。具体的には、▲1▼基板上に半導体粒子を含有する懸濁液を塗布し、乾燥・焼成する方法、▲2▼基板上に所望の原料ガスを用いたCVD法またはMOCVD法などにより半導体膜を成膜する方法、および▲3▼原料固体を用いたPVD法、蒸着法、スパッタリング法またはゾルーゲル法などにより半導体膜を形成する方法などが挙げられる。
【0032】
多孔性半導体の膜厚は、特に限定されるものではないが、透過性、変換効率などの観点より、0.5〜20μm程度が好ましい。また、変換効率を向上させるためには、膜状の多孔性半導体に、後述する色素をより多く吸着させることが必要である。このために、膜状の多孔性半導体は比表面積が大きなものが好ましく、具体的には10〜200m2/g程度が好ましい。
【0033】
半導体粒子としては、市販されているもののうち適当な平均粒径、例えば1nm〜500nm程度の単一または化合物半導体の粒子などが挙げられる。
また、この半導体粒子を懸濁するために使用される溶媒は、エチレングリコールモノメチルエテールなどのグライム系溶媒、イソプロピルアルコールなどのアルコール系溶媒、イソプロピルアルコール/トルエンなどの混合溶媒、水などが挙げられる。
【0034】
膜状の多孔性半導体の形成方法▲1▼における多孔性半導体の乾燥・焼成は、使用する基板や半導体粒子の種類により、温度、時間、雰囲気などの条件を適宜調整して行われる。例えば、大気下または不活性ガス雰囲気下、50〜800℃程度の範囲内で、10秒から12時間程度行うことができる。この乾燥・焼成は、単一の温度で1回または温度を変化させて2回以上行うことができる。
【0035】
電極として使用することができる透明導電膜は、特に限定されるものではないが、例えばITO、SnO2などの透明導電膜が好ましい。これらの電極の作製方法および膜厚などは、適宜選択することができる。
【0036】
多孔性半導体上に光増感剤として機能する色素(以下、「色素」と称する)を吸着させる。その方法としては、例えば基板上に形成された多孔性半導体膜を、色素を溶解した溶液に浸漬する方法が挙げられる。
【0037】
用いられる色素は、種々の可視光領域および赤外光領域に吸収を持つものであって、半導体層に強固に吸着させるために、色素分子中にカルボキシル基、アルコキシ基、ヒドロキシル基、ヒドロキシアルキル基、スルホン酸基、エステル基、メルカプト基、ホスホニル基などのインターロック基を有するものが好ましい。
【0038】
インターロック基は、励起状態の色素と半導体の導電帯との間の電子移動を容易にする電気的結合を提供するものである。これらインターロック基を含有する色素としては、例えばルテニウムビピリジン系色素、アゾ系色素、キノン系色素、キノンイミン系色素、キナクリドン系色素、スクアリリウム系色素、シアニン系色素、メロシアニン系色素、トリフェニルメタン系色素、キサンテン系色素、ポリフィリン系色素、フタロシアニン系色素、ベリレン系色素、インジゴ系色素、ナフタロシアニン系色素などが挙げられる。
【0039】
色素を溶解する溶媒は、色素を溶解するものであれば特に限定されず、例えば、エタノールなどのアルコール類、アセトンなどのケトン類、ジエチルエーテル、テトラヒドロフランなどのエーテル類、アセトニトリルなどの窒素化合物類、クロロホルムなどのハロゲン化脂肪族炭化水素、ヘキサンなどの脂肪族炭化水素、ベンゼン、トルエンなどの芳香族炭化水素、酢酸エチルなどのエステル類、水などが挙げられる。これらの溶媒は2種以上を混合して用いることもできる。
【0040】
溶液中の色素濃度は、使用する色素および溶媒の種類により適宜調整することができるが、吸着機能を向上さすためにはできるだけ高濃度である方が好ましい。色素濃度は、例えば5×10-5モル/リットル以上の濃度であればよい。
【0041】
色素を溶解した溶液を半導体に浸漬するときの条件、例えば、溶液温度、雰囲気温度および圧力は特に限定されるものではなく、例えば室温程度で、かつ大気圧下が挙げられる。浸漬時間は、使用する色素と溶媒の種類、溶液の濃度などにより適宜調整することができる。なお、効果的に行うには使用溶媒の沸点以下の加熱下にて浸漬を行えばよい。これにより、多孔性半導体上に色素が吸着され易くなるので好ましい。
【0042】
【実施例】
本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、これらの実施例により本発明が限定されるものではない。
なお、実施例2〜4および実施例5〜11は参考例である。
【0043】
(実施例1)
図1の(a)〜(e)に示される作製手順で、高分子固体電解質を用いた太陽電池の作製した。図1において、1は透明基板、2は透明電導膜、3は酸化チタン膜、4はセパレーター、5はPETフィルム、6は押さえ版、7は高分子モノマー、8は高分子化合物、9は電解液、10は容器、11は封止剤、12は白金膜、13は導電性基板を示す。
【0044】
まず、多孔性半導体層としての酸化チタン膜3を作製する塗液を調製した。すなわち、市販の酸化チタン粒子(テイカ株式会社社製、商品名:AMT-600、アナターゼ型結晶、平均粒径30nm、比表面積50m2/g)4.0gとジエチレングリコールモノメチルエーテル20mlとを、ガラスビーズを使用し、ペイントシェイカーで6時間分散処理して、酸化チタン懸濁液を調製した。
【0045】
透明基板1としてのガラス基板上に、透明導電膜2としてSnO2膜を形成した(図1(a))。次いで、透明基板1の透明導電膜2側に、調製した酸化チタン懸濁液をドクターブレードで塗布し、膜厚10μm程度、面積10mm×10mm程度の塗膜を得た。塗膜を100℃で30分間予備乾燥し、さらに酸素雰囲気下、460℃で40分間焼成し、膜厚8μm程度の酸化チタン膜3を得た。
【0046】
次に、ルテニウム色素(Solaronix社製、商品名:Ruthenium535)を無水エタノールに溶解して、色素濃度4×10-4モル/リットルの吸着用色素溶液を調製した。透明導電膜2と酸化チタン膜3とを具備した透明基板1を、調製した吸着用色素溶液に約4時間浸漬させて、酸化チタン膜3に色素を吸着させた。その後、透明基板1を無水エタノールで数回洗浄し、約60℃で約20分間乾燥させた(図1(b))。
【0047】
次に、一般式(I)のR1がメチル基、R2が水素原子、Aが8個のエチレンオキシ基と2個のプロピレンオキシ基から誘導された2価の基(式(II)のaが8、bが2)、nが1であるモノマーを、モノマー濃度が20wt%になるようにプロピレンカーボネート(以下、「PC」と称する)に溶解し、さらに熱重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)をモノマーに対して1wt%の濃度になるように添加・溶解して、モノマー溶液を調製した。
【0048】
次のような手順で、得られたモノマー溶液を酸化チタン膜3に含浸させた。
▲1▼真空容器内にビーカーを設置し、その中に透明導電膜2と酸化チタン膜3とを具備した透明基板1を入れ、ロータリーポンプで約10分間真空引きした。
▲2▼真空容器内を真空状態に保ちながらモノマー溶液をビーカーに注入し、約15分間保持して、酸化チタン膜3中にモノマー溶液を十分に含浸させた。
▲3▼ポリエチレン製のセパレーター4、PET(ポリエチレンテレフタレート)フィルム5と押さえ板6を透明基板1に設置し、冶具で固定した。次いで、透明基板1を約85℃で30分間加熱することにより、モノマーを熱重合させて、有機溶媒不溶性の高分子化合物8を得た(図1(c))。
【0049】
次に、高分子化合物8に含浸させる電解液9を調製した。すなわち、ヨウ化リチウムが濃度0.5モル/リットルになるように、かつヨウ素が濃度0.05モル/リットルになるように、ヨウ化リチウムとヨウ素をPCに溶解した。
【0050】
得られた電解液9に、高分子化合物8を形成した透明基板1を、浸透温度50℃で1時間浸漬し、高分子化合物8中に電解液9を十分に染み込ませて、高分子固体電解質を作製した(図1(d))。
【0051】
次いで、高分子固体電解質を作製した透明基板1の酸化チタン膜3側と、白金膜12を具備した導電性基板13の白金膜12側を合わせ、エポキシ系の封止剤11で周囲を封止した(図1(e))。
【0052】
以上のようにして本発明の高分子固体電解質を用いた太陽電池を得た。
得られた太陽電池の性能を測定条件:AM−1.5で測定したところ、短絡電流が17.6[mA/cm2]、開放電圧が0.6[V]、フィルファクターが0.68、変換効率が7.3[%]であった。これらの性能は、電解液を固体化しない太陽電池と同等であった。
【0053】
このことから、本発明の太陽電池は、従来品と比べて性能面で遜色がなく、かつ用いるモノマーの構造から、高分子固体電解質を用いた従来品よりも優れた液保持力と機械的強度が期待できる。
【0054】
(実施例2〜4)
一般式(I)のモノマーを表1に示すものに代えた以外は実施例1と同様にして、太陽電池を作製し、その変換効率を測定した。
得られた結果を用いた一般式(I)のモノマーと共に表1に示す。
【0055】
【表1】
【0056】
表1の結果から、モノマーを代えることにより、太陽電池の変換効率が変化すること、ならびにモノマーが3員環を有するメタクリル酸グリシル(一般式(I)のnが0の場合)よりも、モノマーが5員環を有する(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリル(一般式(I)のnが2の場合)の方がより高い変換効率が得られることがわかる。これは、環を有するモノマーが重合のときに開環するため、環の大きさが太陽電池の変換効率に影響を与えているものと考えられる。
【0057】
(実施例5〜12)
高分子化合物として、表2に示す一般式(I)のモノマーと(メタ)アクリル酸系モノマーとの共重合体を用いる以外は実施例1と同様にして、太陽電池を作製し、その変換効率を測定した。
得られた結果を用いた一般式(I)のモノマーおよび(メタ)アクリル酸系モノマーと共に表2に示す。
【0058】
【表2】
【0059】
表2の結果から、一般式(I)のモノマーと共重合させる(メタ)アクリル酸系モノマーの側鎖が長いほど、高い変換効率が得られることがわかる。これはモノマーの側鎖が長いほど、高分子固体電解質の膨潤性が大きくなることと関係しているものと考えられる。
【0060】
【発明の効果】
本発明の太陽電池は、三次元的に架橋した高分子化合物に多量の電解液が安定に保持された、電解液と同等レベルのイオン伝導率を有する高分子固体電解質を有する。したがって、本発明は、電解液を使用した太陽電池と同等の性能を有し、かつ優れた機械的強度を有する太陽電池を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の太陽電池の作製手順を追った太陽電池の断面概要図である。
【図2】従来の太陽電池の層構成を示す要部の断面概略図である。
【符号の説明】
1 透明基板
2 透明導電膜
3 酸化チタン膜
4 セパレーター
5 PETフィルム
6 押さえ板
7 高分子モノマー
8 高分子化合物
9、24 電解液
10 容器
11 封止剤
12 白金膜
13 導電性基板
21 透明支持体
22 透明導電体
23 半導体電極
25 対極
26 白金
27 エポキシ樹脂
Claims (4)
- 前記高分子化合物が、一般式(I)で表されるモノマーと、メタクリル酸系モノマーおよび/またはアクリル酸系モノマーとの共重合体である請求項1に記載の色素増感型太陽電池。
- 前記多孔性半導体層が、酸化チタンにより構成されている請求項1または2に記載の色素増感型太陽電池。
- 前記電解質が、ヨウ素とヨウ素化合物からなる請求項1〜3のいずれか1つに記載の色素増感型太陽電池。
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