JP4802702B2 - 熱可塑性エラストマー及びその成形体 - Google Patents

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Description

本発明は、熱可塑性エラストマー及びその成形体に関し、詳しくは、射出成形性に優れ、耐傷付き性、耐摩耗性、触感に優れた熱可塑性エラストマー及びその成形体に関する。
熱可塑性エラストマーは、ゴム的弾性、着色性、意匠性に優れ、通常の熱可塑性プラスチックと同じ様に、射出成形、押出成形、ブロー成形、シート成形、真空成形などの各種の成形が出来ることから、自動車、建材用のパッキング、自動車の内外装材、建材用部品、雑貨など多方面にわたり使用され、急速に拡大しつつある。特に、オレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO)、スチレン系熱可塑性エラストマー(TPS)は、軽量でリサイクルが容易であり、コストパフォーマンスが高いことから近年多く使用されてきている。その一方で、握った時に柔らかく感じる様な柔軟性に着目して、TPOやTPSがグリップ類に対しても応用されつつあるものの、成形表面を軽く擦ったりするだけで簡単に傷がついてしまい、また、摩耗性においても問題があり、例えば、布手袋で何度も擦ったりすると直ぐに削れ、意匠のために付いている模様が消失する。また、素肌で握った時の触感に粘着感が残り、ドライな感じが得られず、グリップ類に使用した際に違和感が残る。この様なことから、耐傷付き性、耐摩耗性に優れ、握った時の触感にドライ感のある材料が強く要望されている。
近時、成形性(射出成形性等)に優れるとともに、得られる成形品が優れた柔軟性と触感と耐摩耗性とを有する熱可塑性エラストマーとして、一般式A−B−A(ここで、Aはモノビニル置換芳香族炭化水素の重合体ブロック、Bは共役ジエンのエラストマー性重合体ブロックを示す。)で表記されるブロック共重合体(x)の水素添加誘導体(a)に対して、所定量のポリプロピレン系樹脂(b)と鉱物油系ゴム用軟化剤(c)とを含有するとともに、前記ブロック共重合体(x)の水素添加誘導体(a)と前記ポリプロピレン系樹脂(b)と前記鉱物油系ゴム用軟化剤(c)の合計量に対して、所定量のアクリル変性オルガノポリシロキサン(d)を含有する熱可塑性エラストマー組成物が提案されている(例えば特許文献1)。
特開2002−348434号公報
しかしなから、本発明者の評価によれば、上記の熱可塑性エラストマー組成物は、アクリル変性オルガノポリシロキサンを含有することにより、耐摩耗性の改善は見られるものの、未だ十分とはいえない。
本発明は、上記実情に鑑みなされたものであり、その目的は、柔軟性および耐摩耗性に優れ、ドライ感の触感に優れた熱可塑性エラストマーを提供することにある。
本発明者は、鋭意検討した結果、次の様な新規な知見を得た。すなわち、前述の提案された熱可塑性エラストマー組成物に変性オルガノポリシロキサンを配合して有機過酸化物の存在下に動的熱処理するならば、柔軟性および耐摩耗性に優れ、ドライ感の触感に優れた熱可塑性エラストマーが得られる。そして、斯かる熱可塑性エラストマーの耐摩耗性および触感と蛍光X線との強度に相関があり、テトラヒドロフラン(THF)中に25℃で10分浸漬後の表面部の蛍光X線によるケイ素元素の強度(S1)がTHF未浸漬の表面部の蛍光X線によるケイ素元素の強度(S2)に対して2(kcps)以上高い場合に耐摩耗性および触感に優れる。
本発明は、上記の知見に基づき達成されたものであり、その第1の要旨は、下記表1に示す成分(a)〜(d)から成る熱可塑性エラストマーであって、成分(a)/(b)の重量比が15/85〜85/15であり、成分(a)100重量部に対して成分(c)の割合が10〜300重量部、成分(a)〜(c)の合計100重量部に対して成分(d)の割合が0.1〜10重量部であり、少なくとも成分(a)と(d)とが有機過酸化物の存在下に動的熱処理されていることを特徴とする熱可塑性エラストマーに存する。
Figure 0004802702
また、本発明の第の要旨は、上記の熱可塑性エラストマーの射出成形によって得られることを特徴とする熱可塑性エラストマー成形体に存する。
本発明によれば、柔軟性などの熱可塑性エラストマーの特徴を維持し、粘着感がなくドライタッチ感に優れ、しかも、耐摩耗性に優れており手で握っても意匠シボが消失し難い熱可塑性エラストマーが提供される。斯かる本発明の熱可塑性エラストマーは、特に、柔軟性と触感が必要とされる手で握る部品(グリップ類)の材料として好適である。
以下、本発明を詳細に説明する。本発明の熱可塑性エラストマーは、特定のブロック共重合体(a)、オレフィン系結晶性樹脂(b)、炭化水素系ゴム用軟化剤(c)、アクリル変性オルガノポリシロキサン(d)を必須成分として含有する。そして、本発明の好ましい態様においては、特定の未変性オルガノポリシロキサン(e)、竹粉末(f)、低密度ポリエチレン樹脂および/または直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(g)、高密度ポリエチレン樹脂(h)、特定の多相構造型変性オレフィン化合物(i)、永久帯電防止剤(j)を含有する。
先ず、本発明の熱可塑性エラストマーを構成する上記の成分(a)〜(h)について説明する。
<成分(a):水添ブロック共重合体>
本発明においては、ビニル芳香族化合物ブロック(A)と共役ジエン重合体ブロック(B)とから成る(A)−(B)ブロック共重合体および/または(A)−(B)−(A)ブロック共重合体を水素添加し、共役ジエン部分の二重結合の少なくとも90%が飽和されており、重量平均分子量が8万〜100万である水添ブロック共重合体を使用する。
ビニル芳香族化合物ブロック(A)を構成するビニル芳香族炭化水素としては、例えば、スチレン、t−ブチルスチレン、α−メチルスチレン、o−、m−、p−メチルスチレン、1,3−ジメチルスチレン、ビニルナフタレン、ビニルアントラセン等が挙げられ、特に、スチレン及び/又はα−メチルスチレンが好ましい。
共役ジエン共重合体ブロック(B)を構成するジエンとしては、例えば、ブタジエン、イソプレン、1,3−ペンタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、2−メチル−1、3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエン、4,5−ジエチルー1,3−オクタジエン、3−ブチル−1,3−オクタジエン等が挙げられ、特に、ブタジエン及び/又はイソプレンが好ましい。ブタジエン及びイソプレンの混合物の場合、両者の混合割合(重量比)はブタジエン/イソプレン=2/8〜6/4である。
共役ジエン単量体がブタジエンのみの場合、ポリブタジエンブロックのミクロ構造中の1,2−付加構造が全体の20〜80%(好ましくは30〜60%)のブロック共重合体を水素添加した水添ブロック共重合体が好ましい。ブロック共重合体の分子構造は、直鎖上、分岐上、放射状またはこれらの組み合わせの何れであってもよい。
水添ブロック共重合体の重量平均分子量は、ゲルパーミッションクロマトグラフィーにより測定したポリスチレン換算の分子量として8万〜100万であるが、好ましくは10万〜60万、更に好ましくは15万〜40万である。重量平均分子量が8万未満では、ゴム弾性や機械的強度が低下し、また、後述する炭化水素系ゴム用軟化剤のブリードが発生し易くなる。一方、水添ブロック共重合体の重量平均分子量が100万を超える場合は、流動性が劣り成形性が困難になる。
水添ブロック共重合体の製造方法は、上記の構造・物性が得られる限り如何なる方法であってもよい。例えば、特公昭40−23798号に記載された方法、すなわち、リチウム触媒の存在下に不活性溶媒中でブロック重合を行う方法を採用することが出来る。また、ブロック共重合体の水素添加処理は、例えば、特公昭42−8704号公報、特公昭43−6636号公報、特開昭59−133203号公報、特開昭60−79005号公報などに記載された方法により、不活性溶媒中で水素添加触媒の存在下で行うことが出来る。
なお、水添ブロック共重合体は、カップリング剤残基を介して重合体分子鎖が延長または分岐されたブロック共重合体であってもよい。この際、使用し得るカップリング剤としては、例えば、アジピン酸ジエチル、ジビニルベンゼン、テトラクロロケイ素、ブチルトリクロロケイ素、テトラクロロスズ、ブチルトリクロロスズ、1,2−ジブロモエタン、1,4−クロロメチルベンゼン、ビス(トリクロスシリル)エタン、エポキシ化アマニ油、トリレンジイソシアネート、1,2,4−ベンゼントリイソシアネート等が挙げられる。
水添ブロック共重合体のビニル芳香族ブロック化合物の含有量は、通常10〜90重量%、好ましくは15〜80重量%である。ビニル芳香族ブロックの含有量が10重量%未満の場合は、引っ張り強さ等の機械物性や耐熱性が劣る傾向となり、90重量%を超える場合は、柔軟性やゴム弾性が劣り、後述する炭化水素系ゴム用軟化剤のブリードが生じ易い傾向となる。
上記の様な水素添加ブロック共重合体の市販品としては、「KRATON−G」(クレイトンポリマー社)、「セプトン」(株式会社クラレ)、「タフテック」(旭化成ケミカルズ株式会社)等の商品が例示できる。
<成分(b):オレフィン系結晶性樹脂>
本発明においてはオレフィン系結晶性樹脂を使用する。オレフィン系結晶性樹脂の具体例としては、エチレン単独重合体、エチレンとα−オレフィン又はビニルモノマー(酢酸ビニル、エチレンアクリルレート等)との共重合体、プロピレン単独重合体、プロピレンとα−オレフィンとのブロック共重合体、プロピレンとα−オレフィンとのランダム共重合体、1−ブテン単独重合体、1−ブテンとα−オレフィンとのランダム共重合体、4−メチル−1−ペンテン単独重合体、4−メチルー1−ペンテンとα−オレフィンとのランダム共重合体が挙げられる。コモノマーとしての他のα−オレフィンとしては、例えば、エチレン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン等が挙げられる。上記の各成分(b)は2種以上を使用することも出来る。
上記のオレフィン系結晶性樹脂の中では、プロピレン単独重合体、プロピレンとα−オレフィンとのブロック共重合体、プロピレンとα−オレフィンとのランダム共重合体の様なポリプロピレン系結晶性樹脂が好ましく、プロピレンとα−オレフィンとのランダム共重合体が更に好ましい。
オレフィン系結晶性樹脂のメルトフローレート(JIS−K7210、230℃、2.16kg荷重)は、通常0.01〜100g/10分、好ましくは0.1〜70g/分である。メルトフローレートが上記範囲未満の場合は流動性が劣るために成形が難しく、上記範囲を超える場合は引張り強さの様な機械的特性が低下する。なお、オレフィン系結晶性樹脂は、2種以上を組み合わせて使用することも出来る。
<成分(c):炭化水素系ゴム用軟化剤>
本発明においては炭化水素系ゴム用軟化剤を使用する。炭化水素系ゴム用軟化剤としては、重量平均分子量が通常300〜2,000、好ましくは500〜1,500の炭化水素が使用され、鉱物油系炭化水素または合成樹脂系炭化水素が好適である。
一般に鉱物油系ゴム用軟化剤は、芳香族炭化水素、ナフテン系炭化水素、パラフィン系炭化水素の混合物である。全炭素量に対し、芳香族炭化水素の炭素の割合が35重量%以上のものは芳香族系オイル、ナフテン系炭化水素の割合が30から45重量%のものはナフテン系オイル、パラフィン系炭化水素の炭素の割合が50重量%以上のものはパラフィン系オイルと呼ばれる。本発明ではパラフィン系オイルが好適に使用される。パラフィン系オイルの商品としては出光興産(株)製「ダイナプロセスオイルPW−380」等がある。
<成分(d):アクリル変性オルガノポリシロキサン>
本発明においてはアクリル変性オルガノポリシロキサンを使用する。アクリル変性オルガノポリシロキサンのベースポリマーであるオルガノポリシロキサン(d1)は、一般式で示される。
Figure 0004802702
上記一般式中、R、R及びRは、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭化水素基(但し炭素数1〜20)、Yはラジカル反応性基または−SH基を持つ有機基、X及びXは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜4の低級アルキル基または−SiR(R、R及びRは、それぞれ独立に、置換されていてもよい炭化水素基(但し炭素数1〜20)、ラジカル反応性基または−SH基を持つ有機基)で示される基を表し、mは10,000以下の整数、nは1以上の整数であり、シロキサン鎖には分岐があってもよい。
上記のR、R及びRにおける炭化水素基の具体例としては、メチル、エチル、イソプロピル、n−プロピル、イソブチル、n−ブチル等のアルキル基、フェニル、トリル、キシリル、ナフチル等のアリール基が挙げられる。また、置換基としては代表的にはハロゲン原子が挙げられる。
上記のYにおけるラジカル反応性基の具体例としては、ビニル基、アリル基、γ−アクリロキシプロピル基、γ−メタクリロキシプロピル基などが挙げられ、−SH基を持つ有機基の具体例としてはγ−メルカプトプロピル等が挙げられる。
上記のX及びXにおける低級アルキル基の具体例としては、メチル、エチル、イソプロピル、n−プロピル、イソブチル、n−ブチル等が挙げられ、R、R及びRにおける、置換されていてもよい炭化水素基、ラジカル反応性基または−SH基を持つ有機基としては、前述と同様の具体例がそれぞれ挙げられる。
上記のmは好ましくは500〜8000、nは好ましくは1〜500ある。また、m個の重合単位におけるR1及びR2、n個の重合単位におけるR3及びYは、それぞれ同一でも異なっていてもよい。また、上記の一般式で示されるオルガノポリシロキサン(d1)には若干の分岐があってもよい。
上記の一般式で示されるオルガノポリシロキサン(d1)は、上記の様な基を有する鎖状や環状の低分子量オルガノポリシロキサンやアルコキシシランを使用し、加水分解や重合または平衡化の手段により製造することが出来る。また、分岐を有するオルガノポリシロキサンは、原料としてトリアルコキシシランやテトラアルコキシシラン等を重合時に少量使用することにより得ることが出来る。
上記の加水分解、重合、平衡化は、公知の技術により、水中に乳化した状態で行うことが出来る。例えば上記の様な基を有するオルガノポリシロキサン又はアルコキシシランの混合溶液を、アルキルベンゼンスルホン酸、アルキルスルホン酸などのスルホン酸を存在下、ホモジナイザー等で処理し、水と緊密に混合させながら重合させる方法により、オルガノポリシロキサン(d1)を微粒子(乳化液)として得ることが出来る。
本発明におけるアクリル変性オルガノポリシロキサン(d)は、上記のオルガノポリシロキサン(d1)に、(メタ)アクリル酸エステル(d2)又は(メタ)アクリル酸エステル(d2)70重量%以上と共重合可能な他の単量体(d3)30重量%以下の混合物とを重量比5/95〜95/5の割合でグラフト共重合して成るアクリル変性オルガノポリシロキサンであることが好ましい。なお、上記の重量比は、(d1)/(d2)又は(d1)/[(d2)+(d3)]を意味する。
上記の(メタ)アクリル酸エステル(d2)としては、アクリル酸またはメタクリル酸のアルキルエステル、ヒドロキシアルキルエステル、アルコキシアルキルエステル等である。具体例としては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸−n−プロピル、アクリル酸nブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸−2−エチルヘキシル、アクリル酸イソオクチル、アクリル酸−n−オクチル、アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、アクリル酸−2−メトキシエチル等のアクリル酸エステル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸−n−プロピル、メタクリル酸−n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸−n−へキシル、メタクリル酸−2−エチルヘキシル、メタクリル酸−n−ラウリル、メタクリル酸−2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸−2−エトキシエチル等のメタクリル酸エステルが挙げられる。これらは2種以上組合せて使用することも出来る。特に、メタクリル酸メチルを少なくとも一成分として使用することが好ましい。
上記の(メタ)アクリル酸エステル(d2)と共重合可能な他の単量体(d3)としては、スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン等のスチレン系化合物、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等の不飽和ニトリル、塩化ビニル、塩化ビニリデン等のハロゲン化オレフィン、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド等の不飽和アミド、アクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸などの不飽和カルボン酸などの二重結合を1個有する単量体が挙げられる。また、そのの他には、エチレングリコールジメタクリレート、プロピレングリコールジメタクリレート、1,4−ブタンジオールジメタクリレート、アリルメタクリレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート等の多不飽和単量体が挙げられる。これらは2種以上使用することも出来る。
前記のグラフト共重合に使用するラジカル開始剤としては、過硫酸塩や有機過酸化物の様な通常の乳化重合用のものを使用することが出来る。オルガノポリシロキサン(d1)と(メタ)アクリル酸エステル(d2)又は(メタ)アクリル酸エステル(d2)と共重合可能な他の単量体(d3)との混合物の重量比は、好ましくは40/60〜80/20の範囲である。重合終了後は、塩析、凝固させることにより、成分(d)のアクリル変性オルガノポリシロキサンを分離、回収することが出来る。
上述の好ましいアクリル変性オルガノポリシロキサンの商品としては、前述の特開2002−348434号公報にも記載されている通り、例えば、日信化学工業株式会社製「シャリーヌ」等がある。
<成分(e):未変性オルガノポリシロキサン>
本発明においては、JIS K2283で規定される25℃における粘度が10000mm/s以上の未変性オルガノポリシロキサンを使用する。未変性オルガノポリシロキサンの具体例としては、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、フルオロアルキルポリシロキサン、ジメチルジフェニルポリシロキサン、メチルハイドロジエンポリシロキサン等が挙げられる。これらの中ではジメチルポリシロキサンが好ましい。上記の粘度は、好ましくは500,000〜30,000,000mm/s、更に好ましくは1,000,000〜20,000,000mm/sである。斯かる高粘度は、JIS K 2283に規定された動粘度測定法では測定が出来ないため、JIS K 7117に規定された回転粘度計を使用する方法で測定した粘度を比重で除することによって求める。
<成分(f):竹粉末>
竹粉末の種類として、孟宗竹、眞竹、唐竹、淡竹などが挙げられる。
<成分(g):低密度ポリエチレン樹脂および直鎖状低密度ポリエチレン樹脂>
低密度ポリエチレン(LDPE)とは、一般に、温度200〜300℃、圧力1,000〜2,000気圧の条件下、チューブラー法またはオートクレーブ法により、エチレンの高圧ラジカル重合によって製造される、密度0.915〜0.935g/cmのポリエチレンの単独重合体である。また、少量の酢酸ビニル、エチレンアクリレート等を共重合した共重合体であっても差しつかえない。
直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)とは、チーグラー系触媒、クロム系触媒、メタロセン触媒などの各種の触媒を使用し、中低圧下または高圧下において、気相法、溶液法、懸濁重合法などの各種の重合法により製造され、エチレンを主成分とする密度0.910〜0.945g/cmのα−オレフィンとの共重合体である。上記のα−オレフィンとしてはC3〜C13のα−オレフィン、例えば、プロピレン、ブテン−1、ペンテン−1、オクテン−1、4−メチルペンテン−1、4−メチルヘキセン−1、4,4−ジメチルペンテン−1、ノネン−1、デセン−1、ウンデセン−1、ドデセン−1等が挙げられる。
上記の低密度ポリエチレン(LDPE)及び直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)のメルトフローレート(JIS K7210 190℃ 荷重2.16kgf)は、通常0.05〜50g/10min、好ましくは0.1〜20g/minである。
因みに、上記のLLDPEの具体例を商品名で示せば、ユニポール(UCC社)、ダウレックス(ダウケミカル)、スクレアー(デュポンカナダ社)、マーレックス(フィリップス社)、ネオゼツクス及びウルトゼツクス(三井石油化学)、日石リニレツクス(日本石油化学社)、スタミレツクス(DSM社)等が挙げられる。
<成分(h):高密度ポリエチレン樹脂>
高密度ポリエチレン(HDPE)は、エチレン単独重合体またはエチレン−α−オレフィン共重合体から成り、一般的には、チーグラー触媒、フィリップス触媒、メタロセン系触媒などを使用し、スラリー法、溶液法または気相法により重合されるポリエチレン樹脂である。α−オレフィンの具体例としては、炭素数3〜20のα−オレフィン、例えば、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテン、1−デセン、1−テトラデセン、1−オクタデセン等が挙げられる。メルトフローレート(JIS K7210 190℃ 荷重2.16kgf)は、通常0.01〜50g/10min、好ましくは0.02〜20g/10minである。メルトフローレートが高すぎる場合は成形性においてヒケが生じ易くなる。密度は、通常0.930〜0.97g/cm、好ましくは0.940〜0.965g/cmである。
<成分(i):特定の多相構造型変性オレフィン化合物>
本発明においては、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸グリシジル基を有するビニル単量体から成る群より選択される少なくとも1種のビニル単量体から形成されるビニル系重合体セグメントと、オレフィン系重合体セグメントとから成り、オレフィン系重合体セグメント中にビニル系重合体セグメントが粒子径0.01〜10μmの微細粒子として分散相を形成している多相構造型変性オレフィン化合物を使用する。
ビニル系重合体セグメントを形成する(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、アクリル酸と炭素数1〜20のアルキルアルコールとから形成されるアクリル酸エステル、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル等が挙げられる。また、メタクリル酸と炭素数1〜20のアルキルアルコールとから形成されるメタクリル酸エステル、例えば、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル等が挙げられる。ヒドロキシル基を有するビニル単量体としては、3−ヒドロキシ−1−プロペン、4−ヒドロキシ−1−ブテン、シス−1,4−ジヒドロキシ−2−ブテン、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸3−ヒドロキシプロピル、クロトン酸2−ヒドロキシエチル等が挙げられる。
ビニル系重合体セグメントを形成するビニル系単量体には、前記の極性を有する単量体に非極性または弱極性のビニル単量体が含まれていることが好ましい。斯かるビニル単量体としては、例えば、スチレン、メチルスチレン、ジメチルスチレン、エチルスチレン、イソプロピルスチレン等のビニル芳香族単量体;α−メチルスチレン、α−エチルスチレン等のα−置換スチレン;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアン化ビニル等が挙げられる。
オレフィン系重合体セグメントは、オレフィン系重合体、すなわち、オレフィン系単独重合体または共重合体から形成されるセグメントである。具体的には、ポリプロピレン、ポリエチレン、エチレンと炭素数が3以上のα−オレフィンとの共重合体、α−オレフィン単量体とビニル単量体との共重合体、エチレン系共重合ゴム、ジエン系ゴム又はポリイソブチレンゴム等が挙げられる。炭素数が3以上のα−オレフィンの具体例としては、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、3−メチル−1−ブテン、1−ヘキセン、1−デセン、3−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテン及びこれらの混合物が挙げられる。また、エチレン系共重合ゴムの具体例としては、エチレン−プロピレン共重合ゴム、エチレン−プロピレン−ジエン共重合ゴム、エチレン−オクテン共重合ゴム等が挙げられる。
ビニル系重合体セグメントの割合は、通常1〜95重量%、好ましくは5〜80重量%である。従って、オレフィン系重合体セグメントの割合、通常5〜99重量%、好ましくは20〜95重量%である。本発明で好適に使用し得る多相構造型変性オレフィン化合物の市販品としては、日本油脂社の「ノフアロイ」が挙げられる。
<成分(j):帯電防止剤>
本発明においては、ポリオレフィンのブロックと親水性ポリマーのブロックが繰り返し交互に結合した構造を有し、親水性ポリマーが、二価アルコール、二価フェノール及び/または三級アミノ基含有ジオールとアルキレンオキシドとから誘導される構造を有するポリオキシアルキレンエーテル単位を含んで成る帯電防止剤を使用する。
ポリオレフィンブロックと親水性ポリマーブロックとは、所定の結合基を介して繰り返し交互に結合した構造を有する。結合基としては、エステル結合、アミド結合、エーテル結合、ウレタン結合およびイミド結合から成る群より選ばれる少なくとも1種であるが、好ましくは、エステル結合、イミド結合及および/またはエーテル結合、更に好ましくは、エステル結合および/またはイミド結合、特に好ましくはエステル結合である。
ポリオレフィンのブロックは、カルボニル基をポリマーの両末端に有するポリオレフィン、水酸基をポリマーの両末端に有するポリオレフィン、アミノ基をポリマーの両末端に有するポリオレフィン等が使用できる。ポリオレフィンとしては、炭素数2〜30(好ましくは2〜12、更に好ましくは2〜10)のオレフィンの1種または2種以上の共重合体が挙げられる。具体的には、例えば、エチレン、プロピレン、炭素数4〜12のα−オレフィン、ブタジエン及びイソプレンが挙げられるが、好ましくはエチレン、プロピレン、炭素数4〜8のα−オレフィン及びブタジエン、更に好ましくは、プロピレン、エチレン及びブタジエンである。
親水性ポリマーとしては、ポリエーテルジオール、ポリエーテルジアミン及びこれらの変性物が使用できる。
ポリエーテルジオールは、ジオールにアルキレンオキサイドを付加反応させることにより得られる構造のものが使用でき、例えば、一般式:H−(OA1)m−O−E1−O−(A1O)m −Hで示されるものが挙げられる。式中、E1は、ジオールから水酸基を除いた残基を表し、A1は、ハロゲン原子を含んでいてもよい炭素数2〜12(好ましくは2〜8、更に好ましくは2〜4)のアルキレン基を表す。また、m及びm は、1〜300(好ましくは2〜250の整数、更に好ましくは10〜100)の整数である。また、mとm とは、同一でも異なっていてもよい。m個の(OA1)とm 個の(A1O)とは、同一でも異なっていてもよく、また、これらが2種以上のオキシアルキレン基で構成される場合の結合形式はブロック若しくはランダム又はこれらの組合せの何れでもよい。
ジオールとしては、炭素数2〜12(好ましくは2〜10、更に好ましくは2〜8)の二価アルコール(例えば、脂肪族、脂環族または芳香族二価アルコール)、炭素数6〜18(好ましくは8〜18、更に好ましくは10〜15)の二価フェノール及び三級アミノ基含有ジオール等が使用できる。
脂肪族二価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1,12−ドデカンジオール等が挙げられる。
脂環式二価アルコールとしては、例えば、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロオクタンジオール、1,3−シクロペンタンジオール等が挙げられる。
芳香族二価アルコールとしては、例えば、キシリレンジオール、1−フェニル−1,2−エタンジオール、1,4−ビス(ヒドロキシエチル)ベンゼン等が挙げられる。
二価フェノールとしては、例えば、単環二価フェノール(ハイドロキノン、カテコール、レゾルシン、ウルシオール等)、ビスフェノール(ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、4,4 −ジヒドロキシジフェニル−2,2−ブタン、ジヒドロキビフェニル等)、縮合多環二価フェノール(ジヒドロキシナフタレン、ビナフトール等)等が挙げられる。
三級アミノ基含有ジオールとしては、例えば、脂肪族または脂環式一級モノアミン(炭素数1〜12、好ましくは2〜10、更に好ましくは2〜8)のビスヒドロキシアルキル(炭素数1〜12、好ましくは2〜10、更に好ましくは2〜8)化物、芳香族一級モノアミン(炭素数6〜12)のビスヒドロキシアルキル(炭素数1〜12)化物などが挙げられる。
なお、モノアミンのビスヒドロキシアルキル化物は、公知の方法で容易に得ることが出来、例えば、モノアミンと炭素数2〜4のアルキレンオキサイド(例えば、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド等)とを反応させるか、炭素数1〜12のモノアミンと炭素数1〜12のハロゲン化ヒドロキシアルキル(例えば、2−ブロモエチルアルコール、3−クロロプロピルアルコール等)とを反応させることにより容易に得ることが出来る。
脂肪族または脂環式一級モノアミンとしては、例えば、メチルアミン、エチルアミン、シクロプロピルアミン、1−プロピルアミン、2−プロピルアミン、アミルアミン、イソアミルアミン、ヘキシルアミン、1,3−ジメチルブチルアミン、3,3−ジメチルブチルアミン、2−アミノヘプタン、3−アミノヘプタン、シクロペンチルアミン、ヘキシルアミン、シクロヘキシルアミン、ヘプチルアミン、ノニルアミン、デシルアミン、ウンデシルアミン、ドデシルアミン等が挙げられる。芳香族一級モノアミンとしては、例えば、アニリン及びベンジルアミン等が挙げられる。
上記の中では、好ましくは二価アルコール及び二価フェノールであり、更に好ましくは脂肪族二価アルコール及びビスフェノール、特に好ましくはエチレングリコール及びビスフェノールAである。
ポリエーテルジオールは、例えば、ジオールにアルキレンオキサイドを付加反応させることにより製造することが出来る。アルキレンオキサイドとしては、炭素数2〜4のアルキレンオキサイド(例えば、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、1,2−、1,4−、2,3−又は1,3−ブチレンオキサイド及びこれらの2種以上の混合物)等が使用されるが、必要により、他のアルキレンオキサイド又は置換アルキレンオキサイドを併用してもよい。他のアルキレンオキサイド又は置換アルキレンオキサイドとしては、例えば、炭素数5〜12のα−オレフィンのエポキシ化物、スチレンオキサイド及びエピハロヒドリン(エピクロルヒドリン、エピブロモヒドリン等)等が挙げられる。
本発明において、好適に使用し得る帯電防止剤の市販品としては、三洋化成工業社製「ペレスタット」等が挙げられる。
<本発明の熱可塑性エラストマー>
本発明の熱可塑性エラストマーの1つの特徴は、前述の成分(a)〜(d)から成り、成分(a)/(b)の重量比が15/85〜85/15であり、成分(a)100重量部に対して成分(c)の割合が10〜300重量部、成分(a)〜(c)の合計100重量部に対して成分(d)の割合が0.1〜10重量部であるに存する。
成分(a)/(b)の重量比が15/85未満(オレフィン系結晶性樹脂が大過剰)の場合は柔軟性が低下し、成分(a)/(b)の重量比が85/15を超える(水添ブロック共重合体が大過剰)の場合は耐熱性が低下する。成分(a)/(b)の好ましい重量比は25/75〜70/30である。
成分(c)の割合が10重量部未満の場合は、成形時の流動性が不十分であり、300重量部を超える場合は粘着感が生じる。成分(c)の好ましい割合は、成分(a)及び(b)の合計100重量部に対し、40〜200重量部である。
成分(d)の割合が前記範囲を外れる場合は、熱可塑性エラストマー本来の物性を実質的に損なうことなく、耐傷付き性の改良された熱可塑性エラストマーを得ることが出来ない。成分(d)の好ましい割合は、成分(a)〜(c)の合計100重量部に対し、0.3〜10重量部である。
前述の成分(e)(未変性オルガノポリシロキサン)は、本発明の好ましい態様において、耐傷付き性を一層改良する目的で使用される。成分(e)の割合は、成分(a)〜(c)の合計100重量部に対し、通常0.1〜10重量部、好ましくは0.2〜8重量部である。成分(e)の割合が0.1重量部未満では上記の目的を達成することが出来ず、10重量部を超える場合は表面が滑るという恐れがある。追加成分(e)が含有された本発明の熱可塑性エラストマーは、特に「グリップ類」の用途に好適に使用される。
前述の成分(f)(竹粉末)は、本発明の好ましい態様において、触感を改良する目的で使用される。成分(f)の割合は、成分(a)〜(c)の合計100重量部に対し、通常0.1〜10重量部、好ましくは0.2〜5重量部である。成分(f)の割合が0.1重量部未満では上記の目的を達成することが出来ず、10重量部を超える場合は射出成形の際に成形表面にフローマークが生じて外観を損ねるという恐れがある。また、竹粉末の粒度としては、通常5〜100μm、好ましくは5〜60μmである。粒度が100μmを超える場合は成形時に成形表面にフローマークが生じ易くなる。追加成分(f)が含有された本発明の熱可塑性エラストマーは、特に「ドライ感を重視したグリップ類」の用途に好適に使用される。
前述の成分(g)(LDPE及び/又はLLDPE)は、本発明の好ましい態様において、触感を改良する目的で使用される。成分(g)の割合は、成分(a)〜(c)の合計100重量部に対し、通常1〜100重量部、好ましくは2〜80重量部である。成分(g)の割合が1重量部未満では上記の目的を達成することが出来ず、100重量部を超える場合は柔軟性に欠ける恐れがある。追加成分(g)が含有された本発明の熱可塑性エラストマーは、特に「ドライ感を重視したグリップ類」の用途に好適に使用される。
前述の成分(h)(高密度ポリエチレン樹脂)は、本発明の好ましい態様において、成形性を改良する目的で使用される。すなわち、本発明の熱可塑性エラストマーは、高密度ポリエチレン樹脂の含有により、複雑な成形形状やフラットでなくリブが立った肉厚形状においてもヒケを出難く、安定した成形が得られる。成分(h)の割合は、成分(a)〜(c)の合計100重量部に対し、通常0.3〜20重量部、好ましくは0.5〜15重量部である。成分(h)の割合が0.3重量部未満では上記の目的を達成することが出来ず、20重量部を超える場合は、柔軟性に欠け、成形時に成形表面にフローマークが生じ易くなる。追加成分(h)が含有された本発明の熱可塑性エラストマーは、特に「肉厚形状でヒケが生じ易い形状の成形品」の用途に好適に使用される。
前述の成分(i)(特定の多相構造型変性オレフィン化合物)は、本発明の好ましい態様において、しっとり感を付加する目的で使用される。すなわち、本発明で使用する多相構造型変性オレフィン化合物は、極性ポリマーがミクロに高分散しているため、成形表面の極性を高めて保湿効果を発揮し、その結果、触感としてしっとり感を与えることが出来る。成分(i)の割合は、成分(a)〜(c)の合計100重量部に対し、通常0.3〜10重量部、好ましくは0.5〜8重量部である。成分(i)の割合が0.3重量部未満では上記の目的を達成することが出来ず、10重量部を超える場合は機械物性が低下する恐れがある。追加成分(i)が含有された本発明の熱可塑性エラストマーは、特に「しっしり感の感触が要求されるグリップ類」の用途に好適に使用される。
前述の成分(j)(帯電防止剤)は、本発明の好ましい態様において、帯電防止機能だけでなく、しっとり感を付加する目的で使用される。すなわち、本発明で使用する帯電防止剤は、界面活性剤型の帯電防止剤とは異なり、表面にブルームすることなく、表面状態が変わらずに良好な触感を持続することが出来る。成分(j)の割合は、成分(a)〜(c)の合計100重量部に対し、通常0.3〜20重量部、好ましくは0.5〜15重量部である。成分(j)の割合が0.3重量部未満では上記の目的を達成することが出来ず、20重量部を超える場合は耐光性が低下する恐れがある。追加成分(j)が含有された本発明の熱可塑性エラストマーは、特に、「ほこりの付着を嫌う成形品」の用途に好適に使用される。
本発明においては、酸化防止剤、滑剤、紫外線吸収剤、発泡剤、難燃剤、着色剤、充填剤などの各種添加剤を使用することが出来る。特に酸化防止剤の使用は推奨される。酸化防止剤としては、例えばモノフェノール系、ビスフェノール系、トリ以上のポリフェノール系、チオビスフェノール系、ナフチルアミン系、ジフェニルアミン系、フェニレンジアミン系のものが挙げられる。これらの中では、モノフェノール系、ビスフェノール系、トリ以上のポリフェノール系、チオビスフェノール系の酸化防止剤が好ましい。酸化防止剤の使用割合は、使用する成分の合計量100重量部に対し、通常0.01〜5重量部、好ましくは0.05〜3重量部である。この添加量が0.01重量部未満の場合は酸化防止剤の効果が得られ難く、5重量部を超える場合は使用量の増大に見合う向上効果が得られ難い。
本発明においては、必須成分以外の熱可塑性樹脂として、例えば、ポリフェニレンエーテル系樹脂、ナイロン6、ナイロン66等のポリアミド系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂、ポリオキシメチレンホモポリマー、ポリオキシメチレンコポリマー等のポリオキシメチレン系樹脂、ポリメチルメタクリレート系樹脂、ポリスチレン系樹脂、生分解性樹脂、植物由来原料樹脂などを使用することが出来る。更に、ゴムとして、例えばエチレン・プロピレン共重合体ゴム、エチレン・プロピレン・非共役ジエン項重合体ゴム等のオレフィン系ゴム、ポリブタジエン等、また、必須以外のスチレン系共重合体ゴムを使用することが出来る。
<本発明の熱可塑性エラストマー(1)>
本発明の第1の要旨に係る熱可塑性エラストマーの特徴は、少なくとも成分(a)と(d)とが有機過酸化物の存在下に動的熱処理されている点に存する。
上記の動的熱処理は、本発明における必須成分の全てを一括で混合し動的熱処理しても、成分(a)、(c)、(d)と有機過酸化物の混合物を先に動的熱処理し、他の成分を後から更に動的に熱処理するといった種々の分割による混合手法でもよい。何れにしても、少なくとも成分(a)と(d)とは有機過酸化物の存在下に動的熱処理されることが必要である。斯かる動的熱処理により、スチレンブロック共重合体の様な成分(a)に成分(d)としてのアクリル変性オルガノシロキサンが反応した状態が達成される。
本発明において使用し得る有機過酸化物の具体例としては、ジメチルペルオキシド、ジーt−ブチルペルオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ−(t−ブチルペルオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5ージー(t−ブチルペルオキシ)ヘキシン−3、1,3−ビス(t−ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、1,1−ビス(t−ブチルペルオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、n−ブチル−4,4,−ビス(t−ブチルペルオキシ)バレレート、ベンゾイルペルオキシド、p−クロロベンゾイルペルオキシド、2,4−ジクロロベンゾイルペルオキシド、t−ブチルペルオキシベンゾエート、t−ブチルペルオキシイソプロピルカーボネート、ジアセチルペルオキシド、ラウロイルペルオキシド、t−−ブチルクミルペルオキシド等が挙げられる。これらの中では、2,5−ジメチル−2,5−ジ−(t−ブチルペルオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5ージー(t−ブチルペルオキシ)ヘキシン−3、1,3−ビス(t−ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、1,1−ビス(t−ブチルペルオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、n−ブチル−4,4,−ビス(t−ブチルペルオキシ)バレレートが好ましい。なお、これらの有機化過酸化物は2種以上を使用することも出来る。
有機過酸化物の使用割合は、特に制限されないが、使用する成分の合計100重量部に対し、通常0.05〜3重量部、好ましくは0.1〜2重量部である。有機過酸化物の使用割合が余りにも少ない場合は反応が十分に進行せず、余りにも多い場合はオレフィン系結晶性樹脂などの劣化が生じる。
本発明においては、動的処理(有機過酸化物による架橋処理)に際し、有機過酸化物と併用して、硫黄、p−キノンジオキシム、p,p’−ジベンゾイルキノンジオキシム、N−メチル−N−4−ジニトロソアニリン、ニトロソベンゼン、ジフェニルグアニジン、トリメチロールプロパン−N,N’−m−フェニレンジマレイミドの様なペルオキシ系助剤、ジビニルベンゼン、トリアリルシアヌレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、アリルメタクリレート等の様な多官能性メタクリレートモノマー、ビニルブチラート、ビニルアセテートの様な多官能性ビニルモノマーを使用することが出来る。ペルオキシ系助剤、多官能性メタクリレートモノマー又は多官能性ビニルモノマーの配合比率は、使用する成分の合計100重量部に対し、通常0.1〜5重量部、好ましくは0.2〜4重量部である。
動的熱処理の際、混合装置としては、ヘンシェルミキサー、リボンブレンダー、V型ブレンダー等が使用され、混練装置としては、ミキシングロール、ニーダー、バンバリーミキサー、ブラベンダープラストグラフ、単軸押出機または二軸押出機などが使用される。混練温度は通常100〜300℃、好ましくは110〜280℃であり、混練時間は、通常10秒から30分、好ましくは20秒から20分間である。
<本発明の熱可塑性エラストマー(2)>
本発明の第2の要旨に係る熱可塑性エラストマーの特徴は、テトラヒドロフラン(THF)中に25℃で10分浸漬後の表面部の蛍光X線によるケイ素元素の強度(S1)がTHF未浸漬の表面部の蛍光X線によるケイ素元素の強度(S2)に対して2(kcps)以上高い点に存する。
蛍光X線分析方法(X−rey Fluorescence Analysis)は、分光結晶の使用によりX線を波長の差によって分離し、シンチレータ等のX線検出器で検出し、資料に含まれる元素の種類と量を知ることが出来、その結果から固有の元素を含む物質の定量することを求めることが出来る方法である。
本発明において、蛍光X線の測定は、測定装置として蛍光X線分析装置を使用し、次の表2に示す条件で行われる。
Figure 0004802702
本発明において、検出元素としてケイ素について着目し、前述のケイ素元素の強度は、上記条件で測定し求める。
上記の強度(S1)が強度(S2)に対して2(kcps)以上高くない場合は、熱可塑性エラストマーの触感および耐摩耗性が劣る。強度(S1)は強度(S2)に対して5(kcps)以上高いことが好ましい。なお、強度(S1)と強度(S2)の差の上限は、制限されないが、通常50(kcps)である。
本発明の熱可塑性エラストマーにおいて、上記の様な強度(S1)と強度(S2)の差と触感および耐摩耗性との間に相関関係がある理由は明らかではないが、次の様に考えられる。
すなわち、本発明の熱可塑性エラストマーは、実際的には、少なくとも成分(a)と(d)とが有機過酸化物の存在下に動的熱処理して得られる。斯かる動的熱処理により、スチレンブロック共重合体の様な成分(a)に成分(d)としてのアクリル変性オルガノシロキサンが反応した状態が達成される。
アクリル変性オルガノポリシロキサンは、オルガノポリシロキサンの樹脂への相溶性を高めるためにアクリル変性したものである。しかし、アクリル変性したオルガノポリシロキサンにおいても、樹脂と相溶し難いポリオルガノシキサンの性質を維持しているため、樹脂中においては、凝集し易い傾向にあり、ミクロ的に均一分散している状態にはない。有機化酸化物存在下に動的熱処理した熱可塑性エラストマー(A)の場合、アクリル変性オルガノポリシロキサンの少なくとも一部は、スチレンブロック共重合体に反応して存在(固定されて存在)することにより安定化して凝集し難い。従って、熱可塑性エラストマー(A)は、有機過酸化物の存在下に動的熱処理しない熱可塑性エラストマー(B)に比べ、アクリル変性オルガノポリシロキサンの分散性に優れる。
そして、ハンドリングによる擦る作用が続いた場合、熱可塑性エラストマーの表面から、粘着し易い成分であるスチレンブロック共重合体を基点として当該スチレンブロック共重合体および他の成分とが剥ぎ取られ、剥ぎ取られた成分同士が再凝集化して表面の摩耗を加速する。この際、熱可塑性エラストマー(A)において、スチレンブロック共重合体はアクリル変性オルガノポリシロキサンが反応した状態にあり、しかも、アクリル変性オルガノポリシロキサンの分散性が高いため、アクリル変性オルガノポリシロキサンが摩耗性を抑える効果を発揮する。更に、スチレンブロック共重合体が剥ぎ取られた場合、アクリル変性オルガノポリシロキサンは、スチレンブロック共重合体中に固定されているために凝集し難く、スチレンブロック共重合体同士の再凝集化を妨げ、摩耗性に効果を発揮する。斯かる状態での表面部は、擦る作用により表面にアクリル変性オルガノポリシロキサンの反応したスチレンブロック共重合体が多く存在し、アクリル変性オルガノポリシロキサンの濃度が増加することになる。これに対し、熱可塑性エラストマー(B)の場合、アクリル変性オルガノポリシロキサンは、分散性が低いため、摩耗性の効果に乏しく、また、剥ぎ取られたスチレンブロック共重合体同士は、スチレンブロック共重合体中に安定して存在していないため、再凝集化し易く、摩耗し易い。斯かる状態の表面部は、スチレンブロック共重合体の存在が増加しても、アクリル変性オルガノポリシロキサンの濃度が増加することにはならない。
上記の様なハンドリング作用は、テトラヒドロフラン(THF)中に25℃で10分浸漬する加速試験により達成することが出来る。その結果、本発明の熱可塑性エラストマー(A)においては、アクリル変性オルガノシロキサンのグラフト構造に基づいて、テトラヒドロフラン(THF)中に25℃で10分浸漬後の表面部の蛍光X線によるケイ素元素の強度(S1)がTHF未浸漬の表面部の蛍光X線によるケイ素元素の強度(S2)に対して2(kcps)以上高いという特徴を有する。そして、斯かる特徴により、本発明の熱可塑性エラストマー(A)は、触感および耐摩耗性に優れる、すなわち、粘着感が少なく、ハンドリングによる擦る作用が続いた場合においても同様である。そして、本発明の好ましい態様に従った熱可塑性エラストマーは、上記に加え、ドライ感およびしっとり感にも優れる。
本発明の熱可塑性エラストマーは、射出成形機、単軸押出成形機、二軸押出成形機、圧縮成形機、カレンダー加工機などの成形機でもって、自動車など車輌用内外装材、建築用内外装材、自動車など車輛、電気機器、建築物などのガスケット(パッキング、目地剤、シール材を含む)、雑貨などの各種成形品にされる。中でも、グリップ類において本発明の効果が充分に発揮される。
本発明の熱可塑性エラストマーは、前述の通り、成分(a)〜(d)を必須成分とし、目的・用途に応じ、任意成分として成分(e)〜(j)を含有する。特に、任意成分(e)が含有されて本発明の熱可塑性エラストマー(成分(a)〜(e)から成る組成物)は、汎用性に優れる。成分(a)〜(e)から成る組成物において、成分(a)及び(b)を基準とした各成分の使用割合は前述の通りであるが、(a)〜(e)成分の合計量を100重量%とした場合の各成分の割合は次の通りである。
すなわち、成分(a)は8〜80重量%、成分(b)は3〜85重量%(但し、成分(a)/(b)の重量比は15/85〜85/15である)、成分(c)は1〜70重量%、成分(d)は0.5〜10重量%、成分(e)は0.1〜10重量%(但し、成分(a)〜(e)の合計量は100重量%である)である。
成分(a)の割合が8重量%未満の場合は柔軟性に劣り、成分(a)の割合が80重量%を超える場合は引張強さ等の機械物性や耐熱性が劣る傾向にある。成分(a)の好ましい割合は15〜65重量%である。成分(b)の割合が3量%未満の場合は耐熱性が劣り、成分(b)の割合が85重量%を超える場合は柔軟性に劣る。成分(b)の好ましい割合は8〜70重量%である成分(a)/(b)の重量比が15/85未満(オレフィン系結晶性樹脂が大過剰)の場合は柔軟性が低下し、成分(a)/(b)の重量比が85/15を超える(水添ブロック共重合体が大過剰)の場合は耐熱性が低下する。成分(a)/(b)の好ましい重量比は25/75〜70/30である。成分(c)の割合が1重量%未満の場合は成形時の流動性が不十分であり、70重量%を超える場合は粘着感が生じる。成分(c)の好ましい割合は5〜60重量%である。成分(d)の割合が前記範囲を外れる場合は、熱可塑性エラストマー本来の物性を実質的に損なうことなく、耐傷付き性の改良された熱可塑性エラストマーを得ることが出来ない。成分(d)の好ましい割合は1〜7重量%である。成分(e)の割合が前記範囲を外れる場合は、熱可塑性エラストマー本来の物性を実質的に損なうことなく、耐傷付き性の改良された熱可塑性エラストマーを得ることが出来ない。成分(e)の好ましい割合は0.2〜7重量%である。
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。以下の諸例で使用した材料および評価方法は次の通りである。
<熱可塑性エラストマーの調製>
実施例1〜14及び比較例1〜4においては、表3〜表5に示す配合量の混合物に対し、安定剤として、テトラキス[メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン(チバスペシャルティーケミカルズ(株)製「イルガノックス1010」)0.1重量部を添加し、ヘンシェルミキサーで混合し、重量式フィーダーを使用し、プラスチック工学研究所製二軸押出機「BT−30」(L/D=30、同方向回転)に供給し、210℃、スクリュー回転数200rpmの条件で押出(動的熱処理)を行い、熱可塑性エラストマー組成物を得た。得られた熱可塑性エラストマーを新潟鉄工所「CN−75」に供給し、シリンダー温度200℃、金型温度40℃の条件にて射出成形し、所定の試験片を作成した。
<使用原料>
(1)水添ブロック共重合体−1:スチレンブロック−ブタジエン/イソプレン−スチレンブロックの共重合構造から成るスチレン−ブタジエン/イソプレンブロック共重合体の水素添加物(スチレン含有量30重量%、水素添加率98%以上、重量平均分子量243,000)
(2)水添ブロック共重合体−2:スチレンブロック−ブタジエンブロック−スチレンブロックの共重合構造から成るスチレン−ブタジエンブロック共重合体の水素添加物(スチレン含有量33重量%、水素添加率98%以上、重量平均分子量245,000)
(3)水添ブロック共重合体−3:スチレンブロック−ブタジエンブロック−スチレンブロックの共重合構造から成るスチレン−ブタジエンブロック共重合体の水素添加物(スチレン含有量29重量%、水素添加率98%以上、重量平均分子量75,000)
(4)オレフィン系結晶性樹脂−1:ポリプロピレン(メルトフローレート10g/10分(230℃、21.2N荷重)
(5)オレフィン系結晶性樹脂−2:ポリプロピレン(メルトフローレート30g/10分(230℃、21.2N荷重)
(6)炭化水素系ゴム用軟化剤:
パラフィン系オイル(重量平均分子量746、40℃の動粘度382mm/s,流動点−15℃、引火点300℃)
(7)アクリル変性オルガノポリシロキサン:以下の方法で調製したものを使用した。
<オルガノポリシロキサンエマルジョンの調製>
オクタメチルシクロテトラシロキサン1,500重量部、メタクリロキシプロピルメチルシロキサン3.8重量部、イオン交換水1,500重量部を混合し、これにラウリル硫酸ナトリウム15重量部、ドデシルベンゼンスルホン酸10重量部を添加してからホモミキサーで攪拌して乳化した後、圧力3,000barのホモジナイザーに2回通して安定なエマルジョンを調製した。次いで、これをフラスコに仕込み、70℃で12時間加熱し、25℃まで冷却して24時間熟成した後、炭酸ナトリウムでエマルジョンのpHを7に調節し、4時間窒素ガスを吹き込んでから水蒸気蒸留して揮発性のシロキサンを留去し、次に、イオン交換水を加えて不揮発分を45重量%に調節した。
<共重合エマルジョン>
攪拌機、コンデンサー、温度計および窒素ガス導入口を備えた2Lの三ッ口フラスコに、上記で得たエマルジョン333重量部(シロキサン分150重量部)とイオン交換水517重量部を仕込み、窒素ガス気流下に器内を30℃に調節した後、t−ブチルヒドロパーオキサイド1.0重量部、L−アスコルビン酸0.5重量部、硫酸第一鉄7水和物0.002重量部を加え、次いで、器内温を30℃に保ちながら、ブチルアクリレート350重量部を3時間かけて滴下した。滴下終了後、更に、1時間攪拌を続けて反応を完結させた。得られた共重合エマルジョンの固形分濃度は41.3重量%であった。
<ドライアップ>
上記のエマルジョン1000重量部を攪拌機付きの容器に仕込み、80℃に加熱し、ここに硫酸ナトリウム92重量部を純水563重量部に溶解した溶液を加えてアクリル変性ポリオルガノシロキサンを析出させ、濾過、水洗、脱水を繰り返してから60℃で乾燥し、アクリル変性オルガノポリノシロキサンを得た。
(8)未変性オルガノポリシロキサン:
比重0.98、屈折率1.40のガム状のジメチルポリシロキサンであり、その25℃で測定した粘度は17,100,000mm/Sであった。この粘度は、回転粘度計(株式会社東京計器製「B8U」)の測定値(16,800Pa・s)を比重(0.98)で除して求めた。
(9)竹粉末:
粒度40μmの竹紛(孟宗竹)
(10)低密度ポリエチレン樹脂:
日本ポリエチ(株)製「ノバテックLD」,メルトフローレート:14g/10分(190℃、21.2N荷重)
(11)高密度ポリエチレン樹脂:
日本ポリエチ(株)製「ノバテックHD」,メルトフローレート:0.2g/10分(190℃、21.2N荷重)
(12)多相構造型変性オレフィン化合物:
日本油脂(株)「ノフアロイ」
(13)帯電防止剤:
三洋化成工業社製「ペレスタット」
(14)有機過酸化物:
2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)ヘキサン
<物性測定および試験方法>
(1)蛍光X線分析によるケイ素元素の強度測定:
スペクトリス社製の蛍光X線分析装置「Magix PRO」を使用し、本文に記載した条件で測定した。また、THF浸漬後の測定においては、成形品をTHF溶媒中に10分間浸漬し、同じ装置を使用して、測定を行った。
(2)引張り試験:射出成形したシートを使用し、JIS K6251に準拠して測定した。
(3)耐傷付性:射出成形にて得られたシートを、爪で引っ掻いて表面に残る跡の状態を観察して判断した。評価は次の3段階で行なった。○:傷が殆ど目立たない。△:傷がやや目立つ。×:傷が大きく目立つ。
(4)耐摩耗性:射出成形にてシボ加工を施した金型にて得たシートの意匠面にて、JIS L849に準拠した学振試形摩擦試験機により、荷重500g、3,000往復後のシボの残存シボ状態を目視にて判断した。評価は次の3段階で行なった。○:シボが試験前と変わらず殆ど削られた跡が観察されない。△:シボがやや削られているが、シボが残っていることが観察できる。×:シボ面が大きく削られシボが消失している。
(5)触感1(粘着感):射出成形にて得られた成形表面を手で握り、手の表面に粘着する様な感覚があるか否かを評価した。評価は次の3段階で行なった。○:手の表面に粘着する様な感覚が残らない。△:粘着する様な感覚が少しある。×:粘着が明らかに感じられる。
(6)触感2(ドライ感):
触感1の評価において、更にドライ感があるか否かを評価した。評価は次の3段階で行なった。○:ドライ感に優れる。△:ドライ感が少しある。×:ドライ感がない。
(7)触感2(しっとり感):
触感1の評価において、更にしっとり感があるか否かを評価した。評価は次の3段階で行なった。○:しっとり感に優れる。△:しっとり感が少しある。×:しっとり感がない。
Figure 0004802702
Figure 0004802702
Figure 0004802702

Claims (10)

  1. 下記表1に示す成分(a)〜(d)から成る熱可塑性エラストマーであって、成分(a)/(b)の重量比が15/85〜85/15であり、成分(a)100重量部に対して成分(c)の割合が10〜300重量部、成分(a)〜(c)の合計100重量部に対して成分(d)の割合が0.1〜10重量部であり、少なくとも成分(a)と(d)とが有機過酸化物の存在下に動的熱処理されていることを特徴とする熱可塑性エラストマー。
    Figure 0004802702
  2. 成分(d)が、下記一般式で示されるオルガノポリシロキサン(d1)に、(メタ)アクリル酸エステル(d2)又は(メタ)アクリル酸エステル(d2)70重量%以上と共重合可能な他の単量体(d3)30重量%以下の混合物とを重量比5/95〜95/5の割合でグラフト共重合して成るアクリル変性オルガノポリシロキサンである請求項1に記載の熱可塑性エラストマー。
    Figure 0004802702
    [上記一般式中、R、R及びRは、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭化水素基(但し炭素数1〜20)、Yはラジカル反応性基または−SH基を持つ有機基、X及びXは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜4の低級アルキル基または−SiR(R、R及びRは、それぞれ独立に、置換されていてもよい炭化水素基(但し炭素数1〜20)、ラジカル反応性基または−SH基を持つ有機基)で示される基を表し、mは10,000以下の整数、nは1以上の整数であり、シロキサン鎖には分岐があってもよい。]
  3. 成分(b)がポリプロピレン系結晶性樹脂である請求項1又は2に記載の熱可塑性エラストマー。
  4. 更に、成分(e)として、JIS K2283で規定される25℃における粘度が10000mm/s以上の未変性オルガノポリシロキサンを含有し、その割合が成分(a)〜(c)の合計100重量部に対して0.1〜10重量部である請求項1〜の何れかに記載の熱可塑性エラストマー。
  5. 更に、成分(f)として、竹粉末を含有し、その割合が成分(a)〜(c)の合計100重量部に対して0.1〜10重量部である請求項1〜4の何れかに記載の熱可塑性エラストマー。
  6. 更に、成分(g)として、低密度ポリエチレン樹脂および/または直鎖状低密度ポリエチレン樹脂を含有し、その割合が成分(a)〜(c)の合計100重量部に対して1〜100重量部である請求項1〜5の何れかに記載の熱可塑性エラストマー。
  7. 更に、成分(h)として、高密度ポリエチレン樹脂を含有し、その割合が成分(a)〜(c)の合計100重量部に対して0.3〜5重量部である請求項1〜の何れかに記載の熱可塑性エラストマー。
  8. 更に、成分(i)として、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸グリシジル基を有するビニル単量体から成る群より選択される少なくとも1種のビニル単量体から形成されるビニル系重合体セグメントと、オレフィン系重合体セグメントとから成り、オレフィン系重合体セグメント中にビニル系重合体セグメントが粒子径0.01〜10μmの微細粒子として分散相を形成している多相構造型変性オレフィン化合物を含有し、その割合が成分(a)〜(c)の合計100重量部に対して0.3〜10重量部である請求項1〜の何れかに記載の熱可塑性エラストマー。
  9. 更に、成分(j)として、ポリオレフィンのブロックと親水性ポリマーのブロックが繰り返し交互に結合した構造を有し、親水性ポリマーが、二価アルコール、二価フェノール及び/または三級アミノ基含有ジオールとアルキレンオキシドとから誘導される構造を有するポリオキシアルキレンエーテル単位を含んで成る帯電防止剤を含有し、その割合が成分(a)〜(c)の合計100重量部に対して0.3〜20重量部である請求項1〜の何れかに記載の熱可塑性エラストマー。
  10. 請求項1〜の何れかに記載の熱可塑性エラストマーの射出成形によって得られることを特徴とする熱可塑性エラストマー成形体。
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