以下、適宜図面が参照されつつ、好ましい実施形態に基づいて本発明が詳細に説明される。
図1は、本発明の一実施形態に係る複合機10(インクジェット記録装置)の外観斜視図である。
複合機10は、下部にプリンタ部11を、上部にスキャナ部12を一体的に備えた多機能装置(MFD:Multi Function Device)であり、プリンタ機能、スキャナ機能、コピー機能を有する。複合機10のうちプリンタ部11が本発明に係るインクジェット記録装置に相当する。プリンタ機能以外の機能が省略されていてもよい。したがって、本発明は、スキャナ部12が省略され、スキャナ機能やコピー機能を有しない単機能のプリンタにも適用され、さらに通信部を備えたファクシミリ機能等を有するものにも適用され得る。
本発明が複合機であるインクジェット記録装置として実施される場合には、本実施形態に係る複合機10のような小型装置として構成されてもよいし、複数の給紙カセットや自動原稿搬送装置(ADF:Auto Document Feeder)を備えた大型装置として構成されてもよい。また、複合機10は、主に図示されていないコンピュータと接続されて、当該コンピュータから送信された画像データや文書データに基づいて記録用紙(被記録媒体)に画像や文書を記録するように構成されていてもよい。さらに、複合機10は、デジタルカメラと接続されて、当該デジタルカメラから出力される画像データを記録用紙に記録したり、各種記録媒体が装填されることにより、当該記録媒体に記録された画像データ等を記録用紙に記録するように構成されていてもよい。
後に詳述されるが、本実施形態に係る複合機10の特徴とするところは、少ない種類のインク(基本インク)が予め貯留されるだけで、多種類の混合インクが複合機10内で生成される点である。これにより、画像形成に際して多種類のインクが使用されることとなるから、複合機10の色再現性が向上する。しかも、予め貯留される基本インクの数が少ないので、複合機10のランニングコストが大幅に上昇することはない。
図1が示すように、複合機10は概ね幅広薄型直方体の外形を呈し、複合機10の高さ寸法より横幅寸法及び奥行寸法が大きく設定されている。複合機10の下部にプリンタ部11が設けられている。プリンタ部11は、正面に開口13を有する。給紙トレイ14及び排紙トレイ15がこの開口13に露出するようにして上下2段に設けられている。給紙トレイ14は、記録用紙を貯蔵するためのものであり、A4サイズ以下の、B5サイズ、はがきサイズ等の各種サイズの記録用紙が収容可能となっている。給紙トレイ14は、スライドトレイ16を備えており、必要に応じてスライドトレイ16が引き出されることによりトレイ面が拡大されるようになっている。給紙トレイ14に収容された記録用紙は、プリンタ部11の内部へ給送されて所定の画像が記録され、排紙トレイ15へ排出されるようになっている。
複合機10の上部にスキャナ部12が設けられている。このスキャナ部12は、所謂フラットベッドスキャナとして構成されている。複合機10は、原稿カバー17を備えている。原稿カバー17は、複合機10に対して開閉自在に設けられており、複合機10の天板として構成されている。原稿カバー17の下側に、図示されていないプラテンガラス及び画像読取キャリッジが設けられている。プラテンガラスは原稿を載置するためのものである。画像読取キャリッジは、このプラテンガラスの下方に設けられており、主走査方向(複合機10の幅方向)にスライド可能である。画像読取キャリッジは、複合機10の幅方向にスライドすることによって原稿を読み取る。
複合機10の正面上部に操作パネル18が設けられている。この操作パネル18は、プリンタ部11やスキャナ部12を操作するための装置である。操作パネル18は各種操作ボタンや液晶表示部から構成されている。複合機10は、この操作パネル18からの操作指示によって、あるいはプリンタドライバを介してコンピュータから送信される指示によって動作するようになっている。また、複合機10の正面の左上部にスロット部19が設けられている。記録媒体である各種小型メモリカードがこのスロット部19に装填されるようになっている。小型メモリーカードに記録された画像データは、液晶表示部に表示される。そして、操作パネル18が操作されることにより、小型メモリーカードに記録された任意の画像がプリンタ部11によって記録用紙に記録される。
図2は、複合機10のプリンタ部11の構造を示す模式図である。同図において、紙面に垂直な方向が複合機10の幅方向であって上記主走査方向である。
複合機10の底部に給紙トレイ20が設けられている。この給紙トレイ20の奥側(図中右側)には、給紙トレイ20に積載された記録用紙を分離して上方へ案内するための分離傾斜板21が配設されている。この分離傾斜板21から上方へ向かって搬送路22が形成されている。搬送路22は、上方へ延びた後、正面側へ湾曲して複合機10の背面側から正面側へと延びている。搬送路22は、さらに画像記録部23を通過して排紙トレイ24へ通じている。したがって、給紙トレイ20に収容された記録用紙は、搬送路22により下方から上方へUターンするように案内されて画像記録部23に至る。画像記録部23が記録用紙に画像記録を行った後、この記録用紙は、排紙トレイ24に排出されることとなる。
給紙トレイ20の上側に給紙ローラ25が設けられている。給紙ローラ25は、給紙トレイ20に積載された記録用紙を1枚ずつ分離して搬送路22へ供給する。給紙ローラ25の構造は既知であって、例えば、給紙ローラ25は、給紙トレイ20に接離可能に上下動する給紙アーム26の先端に軸支されている。この給紙ローラ25は、駆動伝達機構を介してモータに連結されている。駆動伝達機構は、複数のギアが噛合されて構成され得る。モータが作動することにより、その駆動力が給紙ローラ25に伝達され、給紙ローラが回転するようになっている。
給紙アーム26は、基端軸27の周りに回転可能に設けられている。これにより、給紙アーム26は、基端軸27を揺動中心として上下方向に揺動可能である。給紙アーム26は、待機状態では、図示されていない給紙クラッチやバネ等により上側へ跳ね上げられており、記録用紙を供給する際に下側へ揺動する。給紙アーム26が下側へ揺動することにより、その先端に軸支された給紙ローラ25が給紙トレイ20上の記録用紙の表面に圧接する。その状態で、給紙ローラ25が回転する。給紙ローラ25のローラ面と記録用紙との間の摩擦力は、最上位置の記録用紙を分離傾斜板21へ送り出す。この記録用紙は、その先端が分離傾斜板21に当接して上方へ案内され、搬送路22へ送り込まれる。また、給紙ローラ25によって最上位置の記録用紙が送り出される際に、その直下の記録用紙が摩擦や静電気の作用によって共に送り出される場合がある。しかし、この記録用紙は分離傾斜板21に当接することによって制止される。
搬送路22は、画像記録部23等が配設されている箇所以外は、所定間隔で対向する外側ガイド面と内側ガイド面とにより区画形成されている。この複合機10では、外側ガイド面は、複合機10のフレームの内壁面により構成されており、内側ガイド面は、複合機10のフレーム内に設けられたガイド部材の表面によって構成されている。また、特に搬送路22が曲がっている箇所には、搬送コロが設けられていてもよい。同図では搬送コロが図示されていないが、搬送コロは、搬送路22の幅方向(同図において紙面に垂直な方向)を回転中心軸方向として回転自在に設けられていてもよい。搬送コロは、そのローラ面が外側ガイド面又は内側ガイド面に露出するように取り付けられる。この搬送コロが設けられることにより、記録用紙は、搬送路22が曲がっている箇所においてもガイド面に接触して円滑に搬送される。
搬送路22が下方から上方へUターンした後の下流側には、画像記録部23が設けられている。図3は、画像記録部23の構成を模式的に示す斜視図である。
図2及び図3が示すように、画像記録部23は、ヘッド部28と、ヘッド部28と対向配置されたプラテン41と、後述される記録ヘッド43(インクジェット記録ヘッド)にインクを供給するサブタンク29〜36と、このサブタンク29〜36にインクを供給するカートリッジタイプのインクタンク37〜40とを備えている。インクタンク37〜40は、カートリッジタイプである必要はなく、要するにインクを貯留しておけるものであればよい。画像記録部23は、プラテン41上を搬送される記録用紙47に画像記録を行うものである。すなわち、ヘッド部28が、インクタンク37〜40から供給されるシアン(C)・マゼンタ(M)・イエロー(Y)・ブラック(Bk)等の各色インクを吐出しながら主走査方向にスライドされることにより、記録用紙47に画像が記録される。
ヘッド部28は、走査キャリッジ42を備えている。上記サブタンク29〜36は、この走査キャリッジ42に保持されている。ヘッド部28は、上記記録ヘッド43を備えており、この記録ヘッド43も走査キャリッジ42に保持されている。記録ヘッド43は、走査キャリッジ42の下面に露出するように配置されており、サブタンク29〜36から記録ヘッド43へインクが供給される。走査キャリッジ42は、案内シャフト44に支持されており、この案内シャフト44に沿ってスライドすることができる。走査キャリッジ42には無端ベルト45が取り付けられている。この無端ベルト45にベルト駆動モータ46がプーリを介して連結されており、ベルト駆動モータ46が作動することによってヘッド部28が主走査方向にスライドする。
図4は、記録ヘッド43の拡大底面図であって、記録ヘッド43の下面の構造が詳細に図示されている。
同図が示すように、記録ヘッド43の下面にインク吐出口48が縦方向に並設されている。同図において縦方向とは、記録用紙47の搬送方向である。本実施形態では、8列のインク吐出口48が設けられている。同図において最も左端に位置するインク吐出口48は、ブラックインク(Bk)に対応しており、このインク吐出口48からブラックインク(Bkインク)が吐出される。このBkインク用のインク吐出口48に隣り合うように順に、7列のインク吐出口48が設けられている。各列のインク吐出口48は、それぞれ、シアンインク(C)、イエローインク(Y)、マゼンタインク(M)、ブルーインク(B)、レッドインク(R)、グリーンインク(G)及びフォトブラックインク(Fb)に対応しており、各インク吐出口48からは、シアンインク(Cインク)、イエローインク(Yインク)、マゼンタインク(Mインク)、ブルーインク(Bインク)、レッドインク(Rインク)、グリーンインク(Gインク)及びフォトブラックインク(Fbインク)が吐出される。すなわち、この記録ヘッド43は、8色のインクを吐出することができる。
図5は、ヘッド部28の断面図である。
同図が示すように、インク吐出口48を構成する複数のノズル49が、記録ヘッド43の下部にBk、C、Y、M、B、R、G、Fbの各カラーインクごとに並んでいる。各カラーインクに対応する各ノズル49ごとに、当該ノズル49の上流側にマニホールド50が形成されている。マニホールド50は、ノズル49の一端側に形成された供給管51と、ノズル49に連続して形成されたマニホールド室52(インク室)とから構成されており、供給管51から供給されたインクは、マニホールド室52を通じて各ノズル49に分配されるようになっている。
マニホールド室52のノズル49と対向する面は、インクが流れる下流側へ向かって下降するように傾斜しており、マニホールド室52の断面積は、下流側へ向かって漸次小さくなるように構成されている。インク吐出口48からインク滴を吐出するための機構は、公知の種々の機構が採用され、本実施形態では、圧電材料の変形によりインク滴を噴出させる機構が採用される。
上記マニホールド50の上側にバッファタンク53が配設されている。バッファタンク53は、ノズル49及びマニホールド50と同様に各カラーインクに対応して設けられている。このバッファタンク53が前述の各サブタンク29〜36を構成していてもよい。後に詳述されるインクタンク37〜40からインク供給口54を通じてインクが各サブタンク29〜36に供給される。このように、インクタンク37〜40から直接ノズル49へインクを供給せずに、インクがサブタンク29〜36に一旦ストックされることにより、インク内に発生した気泡が除去され、マニホールド50に気泡が進入することが防止される。また、サブタンク29〜36(バッファタンク53)内で捕捉された気泡は、気泡排出口55から除去される。
各カラーインク(Bk、C、Y、M、B、R、G、Fb)に対応する各サブタンク29〜36(バッファタンク53)は、それぞれ、嵌合部56を備えている。この嵌合部56に上記インク供給口54が設けられている。また、この嵌合部56は、プッシュロッド57(弁開放部材)を備えている。このプッシュロッド57は、後に詳述されるように、インクタンク37〜40に設けられた逆止弁58(図3参照)を開放するものである。このプッシュロッド57は、嵌合部56の側面に一体的に設けられており、インク供給口54側に延びている。嵌合部56の側面には、複数の貫通孔59が設けられており、インクタンク37〜40から送られたインクは、貫通孔59を通ってサブタンク29〜36(バッファタンク53)に進入する。
サブタンク29〜36(バッファタンク53)は、供給管51を通じてマニホールド室52と連通している。したがって、インクタンク37〜40から供給された各カラーインクがサブタンク29〜36(バッファタンク53)及びマニホールド50を通ってノズル49に流れる。記録ヘッド43は、各カラーインクをインク吐出口48からインク滴として吐出する。なお、上記各カラーインク(Bk、C、Y、M、B、R、G、Fb)がサブタンク29〜36へ供給される要領については、後に詳述される。
図2及び図3が示すように、画像記録部23の上流側に駆動ローラ60及び押さえローラ61が設けられている。これら駆動ローラ60及び押さえローラ61は、搬送路22を搬送される記録用紙47を狭持し、プラテン41上へ送る。一方、画像記録部23の下流側に排紙ローラ62及び押さえローラ63が設けられている。これら排紙ローラ62及び押さえローラ63は、記録済みの記録用紙47を狭持して搬送する。駆動ローラ60は、モータ64により回転駆動され、排紙ローラ62も同様のモータにより回転駆動されるようになっている。これにより、記録用紙47は、所定の改行幅で間欠的に送られるようになっている。
押さえローラ61は、駆動ローラ60を所定の押圧力で押圧するように駆動ローラ60に対して弾性付勢されている。したがって、駆動ローラ60と押さえローラ61との間に記録用紙47が進入した場合には、押さえローラ61は、記録用紙47の厚み分だけ弾性的に退避しつつ駆動ローラ60と協働して記録用紙47を狭持する。このため、駆動ローラ60の回転力は、確実に記録用紙47へ伝達される。押さえローラ63も排紙ローラ62に対して同様に設けられている。ただし、押さえローラ63は、記録済みの記録用紙47に圧接するので、記録用紙47に記録された画像を劣化させないようにローラ面が拍車状に形成されているのが好ましい。
駆動ローラ60及び押さえローラ61に狭持された記録用紙47は、所定の改行幅でプラテン41上を間欠搬送される。記録ヘッド43は、記録用紙47の改行ごとにスライドされ、記録用紙47の先端側から画像記録を行う。画像記録が行われた記録用紙47は、その先端側から排紙ローラ62及び拍車ローラ63に狭持される。換言すれば、記録用紙47は、先端側を排紙ローラ62及び拍車ローラ63に、後端側を駆動ローラ60及び押さえローラ61に狭持された状態で所定の改行幅で間欠して搬送され、記録ヘッド43が記録用紙47に画像の記録を行う。さらに記録用紙47が搬送されると、記録用紙47の後端が駆動ローラ60及び押さえローラ61を通過する。これにより、記録用紙47は、駆動ローラ60及び押さえローラ61から開放され、排紙ローラ62及び拍車ローラ63によって所定の改行幅で間欠して搬送される。この場合も、記録ヘッド43は、記録用紙47に画像の記録を行う。記録用紙47の所定領域に画像が記録された後は、排紙ローラ62が連続的に回転駆動され、排紙ローラ62及び拍車ローラ53により狭持された記録用紙47は、排紙トレイ24へ排出される。
図3が示すように、インクタンク37〜40は、ホルダ65に保持されている。インクタンク37〜40は、それぞれ、Bkインク、Cインク、Yインク、Mインクを貯留している。ここで、Bkインク、Cインク、Yインク、Mインクは、「基本インク」と定義される。各インクタンク37〜40の下部に、それぞれ、上記サブタンク29〜36の嵌合部56に接続される接続部66が設けられている。この接続部66は、上記逆止弁58を備えている。接続部66は、インクタンク37〜40の内部に連通しており、逆止弁58は、常時接続部66を閉鎖している。逆止弁58は、押圧されることにより、接続部66を開放する。
各インクタンク37〜40は、それぞれ、スライドシリンダ67及びポンプ68(供給手段)を備えている。同図では、簡略化のためにインクタンク40に対応するスライドシリンダ67及びポンプ68のみが図示されているが。これらスライドシリンダ67及びポンプ68は、ホルダ65に固定されている。スライドシリンダ67が伸長すると、当該スライドシリンダ67に押圧されたインクタンク37〜40がスライドし、ヘッド部28に接近する。このとき、インクタンク37〜40の接続部66の位置とサブタンク29〜36の嵌合部56の位置とが一致すれば、対応するインクタンク37〜40からサブタンク29〜36へインクが供給される。ヘッド部28は、上記ベルト駆動モータ46及び無端ベルト45によってスライドされるから、ベルト駆動モータ46が作動して走査キャリッジ42がスライドされることによって、インクタンク37〜40の接続部66の位置とサブタンク29〜36の嵌合部56の位置とが一致される。
ここで、インクタンク37〜40の配列ピッチとサブタンク29〜36の配列ピッチとが同一であるのが好ましい。その場合には、インクタンク37〜40の接続部66のピッチは、サブタンク29〜36の嵌合部56のピッチに一致する。したがって、走査キャリッジ42がスライドされ、インクタンク37〜40の接続部66のうちいずれか一つがサブタンク29〜36の嵌合部56と対向した場合には、インクタンク37〜40の接続部66のすべてが、それぞれ対応するサブタンク29〜36の嵌合部56と対向配置されるようになっている。インクタンク37〜40の接続部66のピッチとサブタンク29〜36の嵌合部56のピッチとが一致されることによる作用効果については、後述される。もっとも、インクタンク37〜40の接続部66のピッチとサブタンク29〜36の嵌合部56のピッチとが一致されていなくてもよいことは勿論である。
サブタンク30、31、33及び35のいずれか一つに複数の基本インクが供給されることにより、混合インクが生成される。本実施形態では、前述のように、サブタンク29にBkインク、サブタンク30にCインク、サブタンク31にYインク、サブタンク32にMインクが供給される。つまり、サブタンク29〜32は、基本インクを収容する。このため、これらサブタンク29〜32は、特に基本色サブタンクと称される。同図が示すように、本実施形態では、基本色サブタンク29〜32の色配列は、インクタンク37〜40の色配列と同一である。これによる作用効果については、後述される。
サブタンク33〜36は、順に、Bインク、Rインク、Gインク及びFbインクを収容する。Bインクは、CインクとMインクとが混合されることにより生成され、Rインクは、YインクとMインクとが混合されることにより生成され、Gインクは、YインクとCインクとが混合されることにより生成され、さらに、Fbインクは、YインクとMインクとCインクとが混合されることにより生成される。つまり、これらBインク、Rインク、Gインク及びFbインクは、基本インクが混合されることによって生成される混合インクである。このため、サブタンク33〜36は、特に混合色サブタンクと称される。
なお、同図では、ホルダ65及び逆止弁58の構成が図示されるためにホルダ65とヘッド部28との位置関係は、実際の装置とは異なっている。すなわち、実際には、ヘッド部28とホルダ65とは近接しており、サブタンク29〜36の位置とインクタンク37〜40の位置とが一致し、スライドシリンダ67が作動することによりサブタンク29〜36の嵌合部56とインクタンク37〜40の接続部66が結合され、さらにポンプ68が作動することによって、基本インクがインクタンク37〜40からサブタンク29〜36側へ送給される。また、ポンプ68は、インクタンク37〜40を加圧する加圧ポンプが採用され得る。ただし、ポンプ68の形式は、加圧ポンプに限定されるものではなく、例えばインクタンク37〜40とサブタンク29〜36とがチューブ等で連結される場合には、回転翼型ポンプが採用されてもよい。
図6は、複合機10の制御装置69の構成を示すブロック図である。
同図が示すように、制御装置69は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)を備えた中央処理部70を有し、この中央処理部70が、バス71及びASIC(Application Specific Integrated Circuit)72を介して、各種センサ、プリンタ部11、スキャナ部12、操作パネル18等とデータ送受信可能に接続されている。
中央処理部70のROMは、所定のコンピュータプログラムを記憶している。CPUは、このコンピュータプログラムにしたがい、各種センサの情報に基づいて種々の演算を行う。これにより、駆動ローラ60の駆動源であるモータ64(LFモータ)の回転制御やヘッド部28をスライドさせるためのベルト駆動モータ46(CRモータ)の回転制御のほか、インクタンク37〜40をヘッド部28側へ移動させるためのスライドシリンダ67の伸縮制御やインクタンク37〜40内の基本インクをサブタンク29〜36側へ送給するためのポンプ68の制御を統括して行う。
複合機10は、操作パネル18からの入力のほか、例えばパーソナルコンピュータ(PC)73と接続され、このコンピュータ73から送信された画像データや文書データに基づいて記録用紙47に画像や文書を記録することもできる。そのために、パーソナルコンピュータ73とデータを送受信するためのインタフェース(I/F)も備えている。なお、本実施形態で示した制御部装置69の構成は一例であり、したがって、後述の制御を行う制御装置であれば、他の構成が採用されてもよいことは勿論である。
図7は、インクがインクタンク37〜40からサブタンク29〜36を経て記録ヘッド43へ送られるインク供給経路及び記録ヘッド43の動作位置を模式的に示したものである。
インクタンク37〜40から供給されたインクは、前述のようにサブタンク29〜36(バッファタンク53:図5参照)に貯留されてインク中の気泡が捕捉される。このインクは、供給管51からマニホールド室52へ流れてノズル49に分配され、各ノズル49からインク滴として吐出される。このようにして記録ヘッド43が各カラーインクのインク滴を吐出しながら、画像記録範囲W1をスライドすることにより、記録ヘッド43の下方を搬送される記録用紙47に画像が記録される。
また、図7が示すように、記録ヘッド43の画像記録範囲W1外であって走査可能範囲W2の両端側には、パージ機構74及び廃インクトレイ75がそれぞれ配設されている。パージ機構74は、記録ヘッド43のノズル49等から気泡や異物を吸引除去するためのものである。記録ヘッド43が走査可能範囲W2の右端にスライドすると、パージ機構74のキャップ76が上方へ移動し、キャップ76は、記録ヘッド43の下面にインク吐出口48を覆うように密着する。キャップ76に吸引ポンプが接続されている。この吸引ポンプが作動することによって、記録ヘッド43のノズル49等からインクが吸引される。記録ヘッド43をスライドさせるためのベルト駆動モータ46の制御、キャップ76の移動制御、吸引ポンプの制御は、上記制御装置69が行う。
廃インクトレイ75は、記録ヘッド43からのインクの空吐出を受けるためのものである。このようなインクの空吐出は、一般にフラッシングと呼ばれる。フラッシングの際には、記録ヘッド43が走査可能範囲W2の左端に移動され、その位置で各カラーインクが廃インクトレイ75へ向かって空吐出される。なお、パージ機構74及び廃インクトレイ75の左右の配置は特に限定されるものではなく、走査可能範囲W2において前述と左右反対に配置しても、左右のいずれか一方に両者を配置してもよい。
インクタンク37〜40を保持したホルダ65(図3参照)は、走査可能範囲W2の右端に設置されている。もっとも、このホルダ65は、走査可能範囲W2の左端に配置されていてもよいことは勿論である。インクタンク37〜40に貯留された各基本インク(Bkインク、Cインク、Yインク、Mインク)は次のようにしてサブタンク29〜36へ送給される。
図8は、インクタンク37〜40からサブタンク29〜36への基本インクの供給要領を示したフローチャートである。
まず、インクタンク37〜40から基本インクがサブタンク29〜36のうち基本色サブタンク29〜32に送給される。具体的には、ヘッド部28の走査キャリッジ42が所定位置、すなわち上記走査可能範囲W2の端部(例えば、右端)に配置されているか否かが判断される(ステップ1:S1)。この判断は、例えば、エンコーダ等の走査キャリッジ42の位置センサが設けられることにより容易に行われる。
走査キャリッジ42が所定位置に配置されていない場合は、ベルト駆動モータ46が駆動され、走査キャリッジ42が所定位置に位置決めされる(ステップ2:S2)。続いて、スライドシリンダ67が作動され(ステップ3:S3)、各インクタンク37〜40の接続部66とサブタンク29〜32の嵌合部56とが嵌合接続される。これにより、接続部66の逆止弁58が開放される(ステップ4:S4)。さらに、ポンプ68が作動され(ステップ5:S5)、サブタンク29〜32のそれぞれに基本インクが独立して送給される(ステップ6:S6)。これらベルト駆動モータ46の駆動、スライドシリンダ67の作動、ポンプ68の作動等は、上記制御装置69によって制御される。なお、最初から走査キャリッジ42が所定位置に配置されている場合には、上記ステップ2が省略される。
次に、混合インクの生成が必要であるか否かが判断される(ステップ7:S7)。この判断は、例えば各サブタンク29〜36にインクレベルレベル(インク液面高さ)を検出するセンサが設けられることにより容易に行われる。混合インクが生成される場合(典型的には、サブタンク33〜36内の混合インクのレベルが低くなっている場合)には、ベルト駆動モータ46が駆動され、走査キャリッジ42が所定位置に位置決めされる。この場合の「所定位置」とは、インクが混合されるべきサブタンク33〜36のうちいずれかのサブタンク(例えばサブタンク33)が、送給されるべき基本インクを貯留したインクタンク(例えばインクタンク38)と対向する位置である。続いてスライドシリンダ67が作動され、所定のインクタンク37〜40(例えばインクタンク38)の接続部66と当該サブタンク(例えばサブタンク33)の嵌合部56とが嵌合接続される。これにより、接続部66の逆止弁58が開放される。さらに、ポンプ68が作動され、当該サブタンク33にインクタンク38から一の基本インクが送給される(ステップ8:S8)。
同様に、ベルト駆動モータ46が駆動され、走査キャリッジ42が所定位置に位置決めされる。この場合の「所定位置」とは、インクが混合されるべきサブタンク33〜36のうちいずれかのサブタンク(例えばサブタンク33)が、送給されるべき基本インクを貯留した他のインクタンク(例えばインクタンク39)に対応する位置である。続いてスライドシリンダ67が作動され、所定のインクタンク37〜40(例えばインクタンク39)の接続部66と当該サブタンク(例えばサブタンク33)の嵌合部56とが嵌合接続される。これにより、接続部66の逆止弁58が開放される。さらに、ポンプ68が作動され、当該サブタンク33にインクタンク39から他の基本インクが送給される(ステップ9:S9)。
上記ステップ8及びステップ9により、混合インクが生成される。次に、さらに他の混合インクの生成が必要であるか否かが判断される(ステップ10:S10)。そして、他の混合インクの生成が必要であれば、上記ステップ8及びステップ9と同様の要領で他の混合インクが生成される。混合インクの生成が必要でなければ、かかるインク混合作業は終了する。混合インクの生成においても、ベルト駆動モータ46の駆動、スライドシリンダ67の作動、ポンプ68の作動等は、上記制御装置69によって制御される。
図9は、基本インク(Bkインク、Cインク、Yインク、Mインク)がインクタンク37〜40から基本色サブタンク29〜32に送給される要領を詳細に図示した模式図である。以下、基本インクが基本色サブタンク29〜32に送給される要領が具体的に示される。
上記ステップ2〜ステップ6(図9参照)にしたがって、走査キャリッジ42が位置決めされ、各インクタンク37〜40がサブタンク29〜32と接続される。このとき、各インクタンク37〜40の接続部66は、サブタンク29〜32の嵌合部56と嵌め合わされ、ポンプ68によって基本インクがサブタンク29〜32に送給される。本実施形態では、サブタンク29〜32は、それぞれBkインク、Cインク、Yインク、Mインクに対応している。すなわち、サブタンク29〜32の配列とインクタンク37〜40の配列とが同一となっている。もっとも、サブタンク29〜32の配列とインクタンク37〜40の配列とが同一でなくてもよい。
次に、サブタンク33に混合インク(Bインク)が生成される。図10は、Bインクの生成要領を示す模式図である。
Bインクは、基本インクのうちCインクとMインクとが混合されることによって生成される。まず、同図(a)が示すように、走査キャリッジ42がスライドされ、インクタンク38がサブタンク33と接続される。このサブタンク33は、混合インク(Bインク)が生成されるために割り当てられた混合色サブタンクである。このとき、インクタンク38の接続部66は、サブタンク33の嵌合部56と嵌め合わされ、ポンプ68によってCインクがサブタンク33に送給される。次に、同図(b)が示すように、走査キャリッジ42がスライドされ、インクタンク40がサブタンク33と接続される。インクタンク40の接続部66は、サブタンク33の嵌合部56と嵌め合わされ、ポンプ68によってMインクがサブタンク33に送給される。これにより、Bインクがサブタンク33に生成される。Bインクが生成される際には、サブタンク33に先にMインクが送給された後にCインクが送給されてもよい。すなわち、混合される複数の基本インクのうち、相対的に淡い色のインクから順にサブタンク33に送給されるのが好ましい。これによる作用効果については、後述される。
図11は、サブタンク33の接続部66の断面図であって、逆止弁58の構造が図示されている。
同図が示すように、接続部66は、外筒部78と、弁本体79と、コイルバネ80とを備えている。外筒部78は、サブタンク33の壁面から外方へ突出している。外筒部78とサブタンク33とは、複数の小孔81によって連通されている。弁本体79は、外筒部78の内部からサブタンク33内部へ貫通する主軸82と、主軸82の一端に設けられたフランジ83と、主軸82の他端に設けられ、サブタンク33の内部に配置された頭部84とを備えている。主軸82は、サブタンク33の壁面にスライド可能に支持されており、サブタンク33に対して進退自在となっている。フランジ83は、主軸82と一体的に形成され、その外径寸法は、外筒部78の外径寸法以上となるように設定されている。したがって、主軸82が図中右側へスライドしたときは、フランジ83が外筒部78の端面に当接する。頭部84は、サブタンク33の壁面に当接することによって、上記小孔を液密的に閉じることができる。コイルバネ80は、外筒部78の内側に配置され、主軸82がコイルバネ80の内側に挿通されている。
したがって、常時においては、フランジ83がコイルバネ80によって図中左側に弾性的に付勢されており、この弾性力によって頭部84がサブタンク33の壁面に当接している。つまり、サブタンク33からインクが漏れ出ることはない。しかし、この接続部66がサブタンク33の嵌合部56に嵌め込まれると、嵌合部56のプッシュロッド57が上記フランジ83を押圧する。これにより、上記頭部84がサブタンク33の壁面から離反し、インクタンク33内のインクは、サブタンク33側へ送給され得る状態となる。そして、上記ポンプ68が作動すれば、インクがサブタンク33に送給されるようになっている。この接続部66の構造は、他のインクタンクについても同様である。
次に、サブタンク34に混合インク(Rインク)が生成される。図12は、Rインクの生成要領を示す模式図である。
Rインクは、基本インクのうちYインクとMインクとが混合されることによって生成される。まず、同図(a)が示すように、走査キャリッジ42がスライドされ、インクタンク39がサブタンク34と接続される。このサブタンク34は、混合インク(Rインク)が生成されるために割り当てられた混合色サブタンクである。このとき、インクタンク39の接続部66は、サブタンク34の嵌合部56と嵌め合わされ、ポンプ68によってYインクがサブタンク34に送給される。次に、同図(b)が示すように、走査キャリッジ42がスライドされ、インクタンク40がサブタンク34と接続される。インクタンク40の接続部66は、サブタンク34の嵌合部56と嵌め合わされ、ポンプ68によってMインクがサブタンク34に送給される。これにより、Rインクがサブタンク34に生成される。Rインクが生成される際には、本実施形態のように、サブタンク34に先にYインクが送給された後にMインクが送給されるのが好ましい。すなわち、混合される複数の基本インクのうち、相対的に淡い色のインクから順にサブタンク34に送給されるのが好ましい。ただし、先にMインクがサブタンク34に送給されてもよい。先にYインクがサブタンク34に送給されることによる作用効果については、後述される。
次に、サブタンク35に混合インク(Gインク)が生成される。図13は、Gインクの生成要領を示す模式図である。
Gインクは、基本インクのうちYインクとCインクとが混合されることによって生成される。まず、同図(a)が示すように、走査キャリッジ42がスライドされ、インクタンク39がサブタンク35と接続される。このサブタンク35は、混合インク(Gインク)が生成されるために割り当てられた混合色サブタンクである。このとき、インクタンク39の接続部66は、サブタンク35の嵌合部56と嵌め合わされ、ポンプ68によってYインクがサブタンク35に送給される。次に、同図(b)が示すように、走査キャリッジ42がスライドされ、インクタンク38がサブタンク35と接続される。インクタンク38の接続部66は、サブタンク35の嵌合部56と嵌め合わされ、ポンプ68によってCインクがサブタンク35に送給される。これにより、Gインクがサブタンク35に生成される。Gインクが生成される際には、本実施形態のように、サブタンク35に先にYインクが送給された後にCインクが送給されるのが好ましい。すなわち、混合される複数の基本インクのうち、相対的に淡い色のインクから順にサブタンク35に送給されるのが好ましい。ただし、先にCインクがサブタンク35に送給されてもよい。先にYインクがサブタンク35に送給されることによる作用効果については、後述される。
次に、サブタンク36に混合インク(Fbインク)が生成される。図14は、Fbインクの生成要領を示す模式図である。
Fbインクは、基本インクのうちYインクとCインクとMインクとが混合されることによって生成される。まず、同図(a)が示すように、走査キャリッジ42がスライドされ、インクタンク39がサブタンク36と接続される。このサブタンク36は、混合インク(Fbインク)が生成されるために割り当てられた混合色サブタンクである。このとき、インクタンク39の接続部66は、サブタンク36の嵌合部56と嵌め合わされ、ポンプ68によってYインクがサブタンク36に送給される。次に、同図(b)が示すように、走査キャリッジ42がスライドされ、インクタンク38がサブタンク36と接続される。インクタンク38の接続部66は、サブタンク36の嵌合部56と嵌め合わされ、ポンプ68によってCインクがサブタンク36に送給される。次に、同図(c)が示すように、走査キャリッジ42がスライドされ、インクタンク40がサブタンク36と接続される。インクタンク40の接続部66は、サブタンク36の嵌合部56と嵌め合わされ、ポンプ68によってMインクがサブタンク36に送給される。これにより、Fbインクがサブタンク36に生成される。Fbインクが生成される際には、サブタンク36にYインク、Mインク、Cインクの順に送給されてもよい。すなわち、混合される複数の基本インクのうち、相対的に淡い色のインクから順にサブタンク36に送給されるのが好ましい。これによる作用効果については、後述される。
このようにして、インクタンク37〜40から基本インクがサブタンク29〜36へ送給され、4種類の基本インクを貯留するインクタンク37〜40から、8種類のインクが生成されてサブタンク29〜36にストックされる。なお、本実施形態では、基本インクは、Bkインク、Cインク、Yインク、Mインクの4種類であるが、基本インクの種類に制限はなく、一般にn種類の基本インクがインクタンクに貯留されていてもよい。その場合、これらn類の基本インクが混合されることにより、さらに多数の混合インクが生成されるので、サブタンクにはm種類(m>n)のインクがストックされ得ることになる。
なお、サブタンク29〜36にインクが充填された状態で、複合機10は、前述のインク吸引動作及び空吐出動作によって、記録ヘッド43のヘッドクリーニングを行うように構成されていてもよい。かかるヘッドクリーニング動作は、上記制御装置69のROM(図6参照)に記録されるコンピュータプログラムによって簡単に行われる。
このように、本実施形態に係る複合機10では、4種類のインクタンク37〜40が備えられるだけでインクタンク37〜40の数よりも多い8種類のインクが生成されてサブタンク29〜36にストックされる。このサブタンク29〜36は、記録ヘッド43と共に走査キャリッジ42によって保持されており、この走査キャリッジ42がスライドされることによって、4個の各インクタンク37〜40が8個のサブタンク29〜36のうち4個の基本色サブタンク29〜32に接続される。そして、ポンプ68が作動することによって、各インクタンク37〜40から4種類の基本インクがそれぞれ独立して基本色サブタンク29〜32に送給される。同様に、走査キャリッジ42がスライドされ且つポンプ68が作動することによって、4個の混合色サブタンクのそれぞれに、前述のように選択された複数の基本インクが送給され、各基本インクが混合された混合インクが生成される。
換言すれば、走査キャリッジ42がスライドされ且つポンプ68が作動されることによって、サブタンク33にはCインクとMインクとが所定量だけ送給されてBインクが生成される。同様に、サブタンク34にはYインクとMインクとが所定量だけ送給されてRインクが生成され、サブタンク35にはYインクとCインクとが所定量だけ送給されてGインクが生成され、さらに、サブタンク36にはYインク、Cインク及びMインクがそれぞれ所定量だけ送給されてFbインクが生成される。すなわち、4種類の基本インクから4種類の混合インクが生成され、全部で8種類のインクがサブタンク29〜36に簡単にストックされる。
図3が示すように、走査キャリッジ42は主走査方向にスライドされ、記録用紙47はは副走査方向(主走査方向と直行する方向)に搬送される。走査キャリッジ42がスライドされつつ記録ヘッド43が上記8種類のインクを適宜記録用紙47に吐出することにより、記録用紙47上に画像が形成される。
このとき、4種類の基本インクに加えて、前述のようにして生成された4種類の混合インクが画像形成に寄与するから、複合機10の色再現性が向上する。しかも、上記混合インクは、別途設けられたインク混合装置等で生成されるものではなく、走査キャリッジ42がスライドされることによって基本インクがサブタンク33〜36内で混合生成される。したがって、記録される画像の色特性に対応した混合インクが簡単且つ安価に生成され得る。その結果、多種類のインクが使用される複合機10であっても、そのランニングコストが大幅に上昇することはないという利点がある。
本実施形態に係る複合機10では、上記混合インクが生成される際に、つまり基本インクが混合される際に、最も淡色の基本インクが最初に送給されてその後順に濃色の基本インクが送給され得る。この場合、インクタンク37〜40がサブタンク33〜36に接続されたときに、インクタンク37〜40にサブタンク33〜36側のインクが付着したとしても、当該インクタンク37〜40に貯留されたインクの方が濃色となることから、各インクタンク37〜40への混色による悪影響は少ないという利点もある。
特に、インクタンク37〜40の配列ピッチがサブタンク29〜36の配列ピッチと同一となるように設定された場合には、走査キャリッジ42がスライドされることにより、各インクタンク37〜40の接続部66は、それぞれ対応するサブタンク29〜36の嵌合部56と対向する。したがって、各インクタンク37〜40ごとにサブタンク29〜36へインクが送給されることもできるし、すべてのインクタンク37〜40からサブタンク29〜36へ同時に各色のインクが送給されることもできる。つまり、インクタンク37〜40からサブタンク29〜36へのインクの送給が迅速に行われるという利点がある。
しかも、本実施形態では、4種類の基本インクを貯留したインクタンク37〜40の色配列と、基本色サブタンク29〜32の色配列とが同一である。これにより、4種類の基本インクは、同時に基本色サブタンク29〜32に送給され得る。したがって、基本色サブタンク29〜32への基本インクの供給が迅速に行われ、その結果、全8種類のインクをサブタンク29〜36へ供給する時間が短縮される。なお、本実施形態では、4種類の基本インクが備えられているが、基本インクは、一般にn種類備えられていてもよいことは前述の通りであり、その場合、一般にm種類(m>n)のインクがサブタンクへ供給される時間が短縮される。
さらに、本実施形態では、各インクタンク37〜40は、逆止弁58を備えており、この逆止弁58は、インクタンク37〜40と接続されるプッシュロッド57によって開放される。したがって、常時においては、インクタンク37〜40からのインクの漏れが確実に防止されつつも、インクタンク37〜40からサブタンク29〜36へのインクの供給時には、きわめて簡単にインクの供給が行われるという利点がある。
なお、本実施形態では、インクタンク37〜40に設けられた上記ポンプ68がインクタンク37〜40からサブタンク29〜36へインクを供給する。ただし、インクの供給手段としては、ポンプ68に限定されるものではなく、他の種々の手段が採用され得る。例えば、各インクタンク37〜40がいわゆる「人工筋肉」と称される歪電素子を備えていてもよい。この場合には、かかる歪電素子に電圧が付加されることにより歪電素子に歪みが生じ、これにより、インクタンク37〜40が加圧されてインクタンク37〜40からインクが吐出される。したがって、インクタンク37〜40とサブタンク29〜36とが非接触状態において、インクタンク37〜40からサブタンク29〜36へのインクの供給が可能である。その結果、インクタンク37〜40に貯留された基本インクの混色の問題が回避される。また、歪電素子の歪みは上記電圧に比例するから、歪電素子の歪みの回数に応じてインクタンク37〜40からサブタンク29〜36へのインク供給量が正確に制御され得るという利点もある。
前述のように、本実施形態では、4種類の基本インクを貯留したインクタンク37〜40の色配列と、基本色サブタンク29〜32の色配列とが同一である(図9参照)。このとき、図9が示すように、インクタンク37〜40の配列は、同図左から順にBkインク、Cインク、Yインク及びMインクであり、基本色サブタンク29〜32の色配列もこれと同様である。しかし、インクタンク37〜40の色配列とサブタンク29〜36の色配列との関係は、図9に示されたものに限定されるものではなく、図15〜図17に示される配列であってもよい。
図15が示す色配列は、サブタンク29〜36の色配列が同図左側から順にBkインク、Bインク、Cインク、Gインク、Yインク、Rインク、Mインク及びFbインクである。また、インクタンク37〜40の色配列は、同図左側から順にBkインク、Cインク、Yインク及びMインクであり、しかも各インクタンク37〜40は、それぞれサブタンク29〜32の対応するインクと対向配置されている。つまり、各インクタンク37〜40の配列ピッチがサブタンク29〜36の配列ピッチの2倍となっている。
図16が示す色配列は、サブタンク29〜36の色配列が同図左側から順にBkインク、Cインク、Bインク、Gインク、Yインク、Mインク、Rインク及びFbインクである。また、インクタンク37〜40の色配列は、同図左側から順にBkインク、Cインク、Yインク及びMインクであり、しかも各インクタンク37〜40は、それぞれサブタンク29〜32の対応するインクと対向配置されている。つまり、インクタンク37、38間の配列ピッチ及びインクタンク39、40間の配列ピッチはサブタンク29〜36の配列ピッチと同一であるが、インクタンク38、39間の配列ピッチは、サブタンク29〜36の配列ピッチの3倍となっている。
図17が示す色配列は、サブタンク29〜32の色配列及びインクタンク37〜40の色配列は、図9が示す色配列と同様であるが、サブタンク29(Bkインク)のサイズ(容量)が他のサブタンク30〜36のサイズ(容量)よりも大きく設定されている。
サブタンク29〜32の色配列及びインクタンク37〜40の色配列が図15〜図17に示される配列である場合においても、4種類の基本インクは、同時に基本色サブタンク29〜32に送給され得る。したがって、基本色サブタンク29〜32への基本インクの供給が迅速に行われ、その結果、全8種類のインクをサブタンク29〜36へ供給する時間が短縮される。