JP4798438B2 - 電動パワーステアリング装置 - Google Patents
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Description
この場合、シール軸受を用いることが好ましいが、ギヤハウジング内が完全に密閉されると、ギヤハウジング内部圧力の変化の影響で、シール軸受のシールと可動輪との接触抵抗が大きくなる場合がある。この場合、軸受に支持されたシャフトの回転抵抗が上昇し、操舵トルクが上昇してしまう。
しかしながら、ギヤハウジングの外側にキャップ等を配置するため、ギヤハウジングが部分的に突出し、装置全体として大型化してしまう。
また、第2室から第2開口を通じて分岐路内に流入した潤滑剤は、小径ギヤの回転に伴う遠心力を受けて、第2開口を通じて第2室へ戻される。したがって、第2室内の潤滑剤が連通路を通じて第1室に流出することを防止できる。これにより、潤滑剤の第1室への流出を阻止しつつ第1室と第2室と間の通気を許容することができる。
すなわち、第2開口が小径ギヤの回転中に潤滑剤の上位面よりも上方を通過する際、第2開口から分岐路に流入した潤滑剤に遠心力が作用し、潤滑剤は第2開口から排出されて第2室内に戻される。これにより、潤滑剤が連通路を通じて第1室に流出することを防止しつつ、第1室および第2室間の通気が許可される。
上記小径ギヤはウォーム軸を含むことが好ましい(請求項3)。
ラック軸8は、図示しない複数の軸受を介して直線往復自在にハウジング12に支持されている。ラック軸8の両端部はハウジング12の両側へ突出し、各端部にはそれぞれタイロッド13およびナックルアーム(図示せず)を介して操向輪14が連結されている。
また、操舵部材2に与えられる操舵トルクは、入力軸9および出力軸10間の相対回転変位量に基づいて、ステアリングシャフト3の近傍に設けられたトルクセンサ15が検出する。トルクセンサ15が検出したトルク値は、ECU16(Electronic Control Unit:電子制御ユニット)に与えられる。ECU16は、トルク値や図示しない車速センサから与えられる車速等に基づいて、駆動回路17を介して操舵補助用の電動モータ18を駆動制御する。
図2は、図1の電動パワーステアリング装置に含まれる減速機およびその周辺の構成を示す断面図である。図2を参照して、減速機19は、電動モータ18により回転駆動される小径ギヤとしてのウォーム軸20と、このウォーム軸20に噛み合う大径ギヤとしてのウォームホイール21と、ウォーム軸20およびウォームホイール21を収容するギヤハウジング22とを備えている。ギヤハウジング22は筒状に形成され、電動モータ18のモータハウジング30がギヤハウジング22の上方に連結されている。
第1の軸受31の内輪31bは、ウォーム軸20の第1の端部23に圧入されている。また、ギヤハウジング22のうち、第1の端部23に対向する部分には、軸受保持部としての環状の軸受保持穴33が形成されている。この軸受保持穴33には、第1の軸受31の外輪31aが嵌合され、保持されている。
ウォーム軸20およびウォームホイール21の噛み合い領域Aを含む領域には、緩衝材粒子を分散した潤滑剤が充填されている。この潤滑剤の働きにより、ウォーム軸20およびウォームホイール21の歯面間の衝突を緩衝することによって、バックラッシュに起因する歯打ち音が低減される。
したがって、緩衝材粒子を含む潤滑剤が、各軸受31,32内に侵入することを防ぐことができる。これにより、緩衝材粒子による軸受31,32の摩耗を防ぎ、各軸受31,32の耐久性を向上することができる。なお、第1および第2の軸受31として両シール軸受を用いてもよい。
緩衝材粒子の平均粒径D1が50μm以下では、ウォーム軸とウォームホイールとの噛み合いの衝撃を緩衝して歯打ち音を低減する効果に限界があり、減速機の騒音を大幅に低減することができない。また平均粒径D1が300μmを超える場合には電動パワーステアリング装置の操舵トルクが上昇したり、摺動音を発生して却って滅速機の騒音が大きくなったりするという問題がある。
緩衝材粒子の形状は球状、粒状、薄片状、棒状等の種々の形状が選択できるが、潤滑剤組成物の流動性などを考慮すると球状または粒状が好ましく、とくに球状が好ましい。
ヤング率が0.1MPa未満のものは軟らかすぎるため、ウォーム軸とウォームホイールとの噛み合い領域に介在して衝撃を吸収し、それによって歯打ち音を減少させることで減速機の騒音を低減する効果が十分に得られないおそれがある。またヤング率が104MPaを超える場合には電動パワーステアリング装置の操舵トルクが上昇したり、摺動音を発生して却って減速機の騒音が大きくなったりするおそれがある。
また操舵トルクの上昇や摺動音の発生をより確実に防止すること考慮すると、上記の範囲内でもとくに102MPa以下であるのが好ましい。
緩衝材粒子のその他の特性についてはとくに限定されないが、当該緩衝材粒子を形成する緩衝材の引張り強さは1〜50MPaであるのが好ましい。
かかる緩衝材粒子としては、ゴム弾性を有する種々の、ゴムまたは軟質樹脂からなるものがいずれも使用可能である。
このうち軟質樹脂としては、例えばポリオレフィン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリフェニレンオキサイド樹脂、ポリイミド系樹脂、フッ素樹脂、熱可塑性または硬化性(架橋性)のウレタン樹脂等を挙げることができる。また例えばオレフィン系、ウレタン系、ポリエステル系、ポリアミド系、フッ素系などの耐封性の熱可塑性エラストマーを用いることもできる。
ただし耐熱性、耐久性などを考慮すると、硬化性のウレタン樹脂の硬化物にて形成した球状の緩衝材粒子を使用するのが好ましい。またかかる緩衝材粒子は、硬化性のウレタン樹脂の硬化度(架橋度)を調整することによってヤング率、引張り強さ、および硬さを任意に設定できるという利点もある。
緩衝材粒子の配合割合が20重量部未満では、ウォーム軸とウォームホイールとの噛み合い領域に介在して衝撃を吸収し、それによって歯打ち音を減少させることで減速機の騒音を低減する効果が不十分になるおそれがある。また300重量部を超える場合には、電動パワーステアリング装置の操舵トルクが上昇したり、摺動音を発生して却って減速機の騒音が大きくなったりするおそれがある。
上記緩衝材粒子を分散させる潤滑剤としては、液状の潤滑油と半固体状のグリースのいずれを用いても良い。
一方のグリースとしては、緩衝材粒子を添加した潤滑剤組成物としてのちょう度が、NLGI(National Lubricating Grease Institute)番号で表してNo.2〜No.000、とくにNo.2〜No.00となるものを用いるのが好ましい。
潤滑基油としては合成炭化水素油(例えばポリαオレフイン油)が好ましいが、シリコーン油、フッ素油、エステル油、エーテル油等の合成油や鉱油などを用いることもできる。潤滑基油の動粘度は5〜200mm2/s(40℃)、とくに20〜100mm2/s(40℃)であるのが好ましい。
さらにグリースには、やはり必要に応じて固体潤滑剤(二硫化モリブデン、グラファイト、PTFE等)、リン系や硫黄系の極圧添加剤、トリブチルフェノール、メチルフェノール等の酸化防止剤、防錆剤、金属不活性剤、粘度指数向上剤、油性剤などを添加してもよい。
なお、第1および第2の径方向路52,53は、中心軸線Cに沿って見たときに、互いに重なる位置に配置されていてもよいし、互いに異なる位置に配置されていてもよい。
また、第2開口55から第2の径方向路53に流入した潤滑剤には、ウォーム軸20の回転に伴う遠心力が作用するので、当該潤滑剤が軸方向路51に到達することが妨げられる。これにより、第2室S2内の潤滑剤が連通路50を通じて第1室S1に流出することを防止できる。
さらにまた、上述の説明では、ウォーム軸20の連通路50およびギヤハウジング22の連通溝36の双方で第1室S1と第2室S2との間の通気を許容するとして説明したが、ウォーム軸20の連通路50のみで第1室S1と第2室S2との間の通気を図った場合でも、上述と同様の効果を奏することができる。
図4を参照して、本実施の形態が図2の実施の形態と主に相違するのは、ウォーム軸20の連通路50とギヤハウジング22に形成された連通路61との双方で、第1室S1と第2室S2との間の通気を許容した点である。連通路61は、軸受保持穴33の内周面33bに沿って形成され、一端が第2室S2と連通する連通溝としての第3溝62と、ギヤハウジング22を貫通し、第3溝62の他端と第1室S1とを連通させる貫通孔63とによって形成されている。連通路61および連通路50の双方により、第1室S1および第2室S2間の通気が許容され、第2室S2内の圧力変化を防止することができる。
本発明は、以上の各実施の形態の内容に限定されるものではなく、請求項記載の範囲内において種々の変更が可能である。
Claims (4)
- 回転軸を有する操舵補助用の電動モータと、この電動モータの回転軸と同軸に連結された小径ギヤおよびこれに噛み合う大径ギヤと、小径ギヤの電動モータ側端部を支持するシール軸受と、このシール軸受によって互いに仕切られた、電動モータ側の第1室およびこれと反対側の第2室とを備え、この第2室には潤滑剤が充填されており、
上記小径ギヤは、第1室に開口する第1開口および第2室に開口する第2開口を有し、第1室および第2室を互いに連通する連通路を含み、
この連通路は、小径ギヤの中心軸線に沿って延びる軸方向路と、軸方向路から軸方向と交差する方向に分岐する一対の分岐路とを含み、一対の分岐路の一方が軸方向路および第1開口を互いに連通し、他方が軸方向路および第2開口を互いに連通しており、
小径ギヤの軸方向は、水平方向に対して傾斜しており、
小径ギヤの回転中に、第2開口が、第2室内に充填された潤滑剤の上位面よりも上方を通過するようにしてあることを特徴とする電動パワーステアリング装置。 - 請求項1において、各上記分岐路は、小径ギヤの径方向に延びるものであることを特徴とする電動パワーステアリング装置。
- 請求項1または2において、上記小径ギヤはウォーム軸を含むことを特徴とする電動パワーステアリング装置。
- 請求項1ないし3のいずれかにおいて、上記第2室を区画するハウジングを備え、ハウジングは、シール軸受の外輪を保持する環状の軸受保持部を有し、軸受保持部の内周に第1室および第2室を互いに連通するための連通溝が形成されていることを特徴とする電動パワーステアリング装置。
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