JP4411511B2 - 減速機ならびにそれを用いた電動パワーステアリング装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ウォームなどの小歯車と、ウォームホイールなどの大歯車とを有し、潤滑剤組成物を充てんした減速機と、かかる減速機を備えた電動パワーステアリング装置とに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
自動車用の電動パワーステアリング装置には減速機が用いられる。例えばコラム型EPSでは、電動モータの回転を、減速機において、ウォーム等の小歯車からウォームホイール等の大歯車に伝えることで減速するとともに出力を増幅したのち、コラムに付与することで、ステアリング操作をトルクアシストしている。減速機構としての小歯車と大歯車との噛み合いには適度なバックラッシが必要である。しかし、例えば歯車の正逆回転時や、石畳み等の悪路を走行してタイヤからの反力が入力された際などに、バックラッシに起因して歯打ち音が発生する場合があり、これらの音が車室内に騒音として伝わると運転者に不快感を与えることになる。
【0003】
このため従来は、適正なバックラッシとなるように小歯車と大歯車との組み合わせを選別して減速機を組み立てる、いわゆる層別組み立てをしているが、かかる方法では生産性が著しく低いという問題がある。また層別組み立てをしたとしても、ウォームホイールの軸の偏芯による操舵トルクのむらが発生するという別の問題がある。
そこで、例えばウォーム軸をウォームホイールヘ向けて偏倚可能とするとともに、ウォーム軸をその偏倚方向へ付勢するばね体などの付勢手段を設けることでバックラッシをなくするようにした、電動パワーステアリング装置における減速機などが提案されている(例えば特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】
特開2000−43739号公報(第0007欄〜第0009欄、図1)
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記特許文献1などの減速機は構造が極めて複雑になり、製造コストがかさむという問題がある。
そこで本発明の目的は、騒音を、小歯車と大歯車とを組み合わせた際のバックラッシの大きさに関係なく、また構造を複雑化することなく、これまでよりも小さくすることができ、騒音の小さい減速機と、それを用いた電動パワーステアリング装置とを提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明の減速機は、一方を樹脂、他方を金属にて形成した小歯車および大歯車を含み、かつ前記両歯車の噛み合い部分を含む領域に、動粘度が20〜100mm 2 /s(40℃)である潤滑基油と、増ちょう剤と、微小粒子とを含み、
前記微小粒子として、ヤング率が1〜10 5 MPaの合成樹脂、または合成ゴムからなり、平均粒径が0.1〜400μmであるものを用い、かつ
前記増ちょう剤として
(1) 二次粒子径が1〜50μmで、かつ二次粒子の状態での吸油量が50〜600ml/100gであるシリカと、
(2) 石けん系増ちょう剤、およびシリカを除く他の非石けん系増ちょう剤のうちの少なくとも1種と
を併用してなり、前記シリカを潤滑基油100重量部に対して1〜5重量部の割合で含み、ちょう度が、NLGI番号で表してNo.2〜No.00である潤滑剤組成物を充てんしたことを特徴とするものである。
【0007】
さらに本発明の電動パワーステアリング装置は、操舵補助用のモータの出力を、上記の減速機を介して減速して、舵取機構に伝えることを特徴とするものである。
【0008】
【発明の効果】
本発明によれば、潤滑剤組成物中に分散した微小粒子が、小歯車と大歯車との噛み合い部分に介在することによって、その騒音を大幅に低減することができる。
また本発明によれば、増ちょう剤としてのシリカが、使用初期には二次粒子の状態で潤滑剤組成物中に存在し、当該二次粒子を形成する一次粒子間の微小な隙間と、各々の一次粒子とが潤滑基油を吸油することによって、また使用開始後は、せん断力を受けて二次粒子が徐々に分解されて潤滑剤組成物中に分散した各々の一次粒子が潤滑基油を吸油することによって、潤滑剤組成物における潤滑基油の保持力を向上して、時間の経過とともに増大する傾向にある離油を、長期にわたって良好に防止することができる。
【0009】
このため、潤滑剤組成物の流動を阻害して粘度を上昇させる働きをする微小粒子を含有するため、その粘度を適度な範囲に下げるべく通常よりも潤滑基油を多めに配合している、かかる潤滑剤組成物において、離油が発生するのをより確実に防止して、長期にわたって良好な潤滑を維持することができる。
しかも、潤滑剤組成物に単に微小粒子を添加するとともに、増ちょう剤としてシリカを含む2種以上を併用するだけで、減速機の構造を複雑化することなく、コスト安価に騒音を低減することもできる。
【0010】
なおシリカとともに潤滑剤組成物に使用するその他の増ちょう剤としては、前記のように石けん系増ちょう剤、およびシリカを除く他の非石けん系増ちょう剤がいずれも使用可能である。
またシリカは、せん断力を受けた際に、二次粒子が適度な速さで徐々に分解されて、前記のように長期間にわたって良好な吸油性を発揮することを考慮して、その二次粒子径が前記のように1〜50μmに限定される。
【0011】
またシリカは、二次粒子の状態、および一次粒子に分散後の状態のいずれにおいても良好な吸油性を維持するため、二次粒子の状態での吸油量が50〜600ml/100gに限定される。
また潤滑剤組成物が良好な潤滑性能を発揮することを考慮して、潤滑基油の動粘度は20〜100mm2/s(40℃)に限定、また潤滑剤組成物のちょう度は、NLGI番号で表してNo.2〜No.00に限定される。
【0012】
そして本発明の減速機は、一方を樹脂、他方を金属にて形成した小歯車と大歯車の噛み合い部分を含む領域に上記の潤滑剤組成物を充てんしたものゆえ、バックラッシに起因する騒音を小さくできる点で好ましい。
さらに本発明の電動パワーステアリング装置は、操舵補助用のモータの出力を、上記の減速機を介して減速して舵取機構に伝えるものゆえ、車室内での騒音をコスト安価に低減できる点で好ましい。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明を説明する。
〈潤滑剤組成物〉
本発明の減速機に充てんする潤滑剤組成物は、前記のように潤滑剤と、増ちょう剤と、微小粒子とを含み、かつ増ちょう剤としてシリカと、それ以外の他の増ちょう剤とを併用したことを特徴とするものである。
【0014】
このうちシリカとしては、乾式法や湿式法で合成した従来公知の、種々の微粉状のシリカがいずれも使用可能であるが、とくに前述した、二次粒子が適度な速さで徐々に分解されて、長期間にわたって良好な吸油性を発揮する効果に優れる上、適度な吸油量を有することから、湿式法のうち沈降法で製造したシリカが、特に好適に使用される。
シリカの二次粒子径は、前記のように1〜50μmである必要がある。二次粒子径が1μm未満では、使用開始後、短時間で、全ての二次粒子が一次粒子に分解されてしまうため、時間の経過とともに増大する傾向にある離油を、長期にわたって良好に防止できない。また50μmを超える場合には、使用開始直後に、かかる巨大な二次粒子がせん断力によって急激に分解されて吸油量が急激に上昇し、それに伴って潤滑剤組成物が急激に硬くなるなど、潤滑剤組成物の初期の特性が不安定化する。
【0015】
またシリカの、二次粒子の状態での吸油量は、これも前記のように50〜600ml/100gである必要がある。二次粒子の状態での吸油量が50ml/100g未満では、初期の吸油性が不足する上、一次粒子に分解後の吸油量の上昇もあまり期待できないため、離油を確実に防止できない。また、吸油量が600ml/100gを超える場合には潤滑剤組成物が硬くなりすぎて、流動性が低下するため、小歯車と大歯車との噛み合い部分に適度な量の微小粒子を介在させて、バックラッシに起因する騒音を低減する効果が得られない。
【0016】
またシリカは、潤滑基油100重量部に対して1〜5重量部の割合で含有させる必要がある。1重量部未満では、シリカによる、上述した潤滑基油の離油を防止する効果が不十分になる。また5重量部を超える場合には潤滑剤組成物が硬くなりすぎて、流動性が低下するため、小歯車と大歯車との噛み合い部分に適度な量の微小粒子を介在させて、バックラッシに起因する騒音を低減する効果が得られない。
【0017】
シリカは、潤滑基油の総量の5〜30重量%程度を吸油して、前記のように離油が発生するのを防止する働きをする。
なおシリカは、潤滑基油に配合後、ロールミルなどを用いて十分に混練することで、あらかじめ二次粒子を分解して一次粒子の状態で分散させておいてもよい。
シリカとともに併用する他の増ちょう剤としては、前記のように石けん系増ちょう剤、およびシリカを除く他の非石けん系増ちょう剤がいずれも使用可能である。
【0018】
このうち石けん系増ちょう剤としては、アルカリ金属(Li、Na、K)、アルカリ土類金属(Ca、Sr、Ba)、Al、Zn、Cuなどの石けんを挙げることができる。また石けんのタイプとしては高級脂肪酸の金属塩(金属石けん型、混合石けん型)や、あるいは高級脂肪酸と、低級脂肪酸または二塩基酸などとのコンプレックス塩(コンプレックス型)などを挙げることができる。
セッケン系増ちょう剤の具体例としては、これに限定されないが、例えば、
(I) 炭素数12〜24の脂肪族モノカルボン酸、および/または少なくとも1個のヒドロキシル基を含む炭素数12〜24の脂肪族モノカルボン酸の、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、もしくはAl塩、
(II) 炭素数12〜24の脂肪族モノカルボン酸、および/または少なくとも1個のヒドロキシル基を含む炭素数12〜24の脂肪族モノカルボン酸と、炭素数2〜11の脂肪族モノカルボン酸とのCaコンプレックス塩、
(III) 炭素数12〜24の脂肪族モノカルボン酸と、炭素数7〜24の芳香族モノカルボン酸とのAlコンプレックス塩、
(IV) 炭素数12〜24の脂肪族モノカルボン酸、および/または少なくとも1個のヒドロキシル基を含む炭素数12〜24の脂肪族モノカルボン酸と、炭素数2〜12の脂肪族ジカルボン酸またはそのジエステル、炭素数7〜24の芳香族モノカルボン酸またはそのエステル、リン酸エステル類、およびホウ酸エステル類のうちの少なくとも1種とのLiコンプレックス塩
などを挙げることができる。
【0019】
またシリカ以外の非セッケン系増ちょう剤は無機系と有機系に大別され、このうち無機系の非セッケン系増ちょう剤としては、例えばベントナイト、亜硝酸ホウ素などを挙げることができる。
また有機系の非セッケン系増ちょう剤としては、例えば式(i):
R1NHCONHR2NHCONHR1 (i)
〔式中R1は、炭素数6〜24でかつ直鎖状もしくは分岐状の、飽和または不飽和の、1価の脂肪族炭化水素基を示し、R2は、炭素数6〜15の、2価の芳香族炭化水素基を示す。〕
で表されるジウレア化合物、上記式(i)中のR1が炭素数6〜15の1価の芳香族炭化水素基であるアリルウレア化合物、ポリウレア化合物、フタロシアニン化合物、テレフタラメート化合物、インダンスレン、アメリンなどを挙げることができる。
【0020】
これらの増ちょう剤は、それぞれ1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて、シリカと併用することができる。
シリカ以外の他の増ちょう剤は、例えば前記含有割合の範囲でシリカを含有させた潤滑剤組成物のちょう度を前記の範囲に調製し得る量、含有させればよい。
具体的には、シリカ以外の他の増ちょう剤は、潤滑基油100重量部に対して1〜30重量部の割合で含有させるのが好ましい。またシリカを含む増ちょう剤の総量は、潤滑基油100重量部に対して2〜35重量部であるのが好ましい。
【0021】
微小粒子としては、減速機の、一方を樹脂、他方を金属にて形成した小歯車と大歯車との噛み合い部分に介在することで、緩衝材として減速機の騒音を低減する機能を有する微小粒子を用いる。
【0022】
前記緩衝材の微小粒子は、小歯車と大歯車との噛み合い部分に介在して、両者の歯面間の衝突を緩衝することによって減速機の騒音を低減する働きをする。また少量(潤滑基油の総量の1〜10重量%程度)ではあるが、シリカとともに潤滑基油を吸油して、離油が発生するのを防止する働きもする。
緩衝材の微小粒子としては、例えばヤング率が1〜105MPa程度の合成樹脂からなる粒子、または合成ゴムの粒子を用いる。合成樹脂のヤング率が1MPa未満では微小粒子が軟らかくなりすぎ、逆に105MPaを超える場合には硬くなりすぎるため、このいずれの場合にも緩衝作用が低下する。
【0023】
合成樹脂としては、例えばポリオレフィン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリフェニレンオキサイド樹脂、ポリイミド系樹脂、フッ素樹脂、熱可塑性または硬化性のウレタン樹脂等を挙げることができる。また、例えばオレフィン系、ウレタン系、ポリエステル系、ポリアミド系、フッ素系などの耐油性の熱可塑性エラストマーを用いることもできる。
一方、合成ゴムとしては、例えばエチレン−プロピレン共重合ゴム(EPM)、エチレン−プロピレン−ジエン共重合ゴム(EPDM)、シリコーンゴム、ウレタンゴム(U)等をあげることができる。
【0024】
また緩衝材は自己潤滑性を有しているのが好ましく、かかる緩衝材としては、上記のうちポリオレフィン樹脂、ポリアミド樹脂、フッ素樹脂、フッ素系熱可塑性エラストマーにて形成したものや、滑剤としてフッ素樹脂を添加した合成樹脂製、合成ゴム製の緩衝材を挙げることができる。
微小粒子の平均粒径は、0.1〜400μmの範囲内である必要がある。平均粒径が0.1μm未満では十分な緩衝作用が得られず、逆に400μmを超える場合には潤滑剤から分離しやすくなって、均一な潤滑剤組成物が得られない。
【0025】
なお緩衝作用をより一層、向上することを考慮すると、緩衝材粉末の平均粒径は、上記の範囲内でも10μm以上、とくに50μm以上、さらには100μm以上であるのが好ましい。
また、平均粒径が10μm以上である緩衝材粉末と、10μm未満である緩衝材粉末とを併用すると、平均粒径の大きい緩衝材粉末の隙間を平均粒径の小さい緩衝材粉末が埋めるため、緩衝作用をさらに向上することができる。
【0026】
微小粒子の形状は球状、粒状、薄片状、棒状等の種々の形状が選択できるが、潤滑剤組成物の流動性などを考慮すると、とくに球状または粒状が好ましい。
緩衝材の微小粒子は、潤滑剤100重量部に対して40〜200重量部の割合で配合するのが好ましい。
微小粒子の割合が40重量部未満では、当該微小粒子による緩衝作用が不十分になるおそれがあり、逆に200重量部を超える場合には潤滑剤組成物の流動性が低下して、潤滑剤として機能しえなくなるおそれがある。
【0027】
潤滑基油としては、合成炭化水素油(例えばポリαオレフィン油)が好ましいが、シリコーン油、フッ油、エステル油、エーテル油等の合成油や鉱油などを用いることもできる。潤滑基油の動粘度は5〜200mm2/s(40℃)であるのが好ましく、20〜100mm2/s(40℃)であるのがさらに好ましい。また潤滑剤組成物には、必要に応じて固体潤滑剤(二硫化モリブデン、グラファイト、PTFE等)、リン系や硫黄系の極圧添加剤、トリブチルフェノール、メチルフェノール等の酸化防止剤、防錆剤、金属不活性剤、粘度指数向上剤、油性剤などを添加してもよい。
【0028】
〈減速機および電動パワーステアリング装置〉
図1は、本発明の一実施形態にかかる電動パワーステアリング装置の概略断面図である。また図2は、図1のII−II線に沿う断面図である。
図1を参照して、この例の電動パワーステアリング装置では、ステアリングホイール1を取り付けている入力軸としての第1の操舵軸2と、ラックアンドピニオン機構等の舵取機構(図示せず)に連結される出力軸としての第2の操舵軸3とがトーションバー4を介して同軸的に連結されている。
【0029】
第1および第2の操舵軸2、3を支持するハウジング5は、例えばアルミニウム合金からなり、車体(図示せず)に取り付けられている。ハウジング5は、互いに嵌め合わされるセンサハウジング6とギヤハウジング7により構成されている。具体的には、ギヤハウジング7は筒状をなし、その上端の環状縁部7aがセンサハウジング6の下端外周の環状段部6aに嵌め合わされている。ギヤハウジング7は減速機構としてのウォームギヤ機構8を収容し、センサハウジング6はトルクセンサ9および制御基板10等を収容している。ギヤハウジング7にウォームギヤ機構8を収容することで減速機50が構成されている。
【0030】
ウォームギヤ機構8は、第2の操舵軸3の軸方向中間部に一体回転可能でかつ軸方向移動を規制されたウォームホイール12と、このウォームホイール12と噛み合い、かつ電動モータMの回転軸32に、スプライン継手33を介して連結されるウォーム軸11(図2参照)とを備える。
このうちウォームホイール12は、第2の操舵軸3に一体回転可能に結合される環状の芯金12aと、芯金12aの周囲を取り囲んで外周面部に歯を形成する合成樹脂部材12bとを備えている。芯金12aは、例えば合成樹脂部材12bの樹脂成形時に金型内にインサートされるものである。合成樹脂部材12bは、例えば樹脂歯車の材料として一般的なポリアミド系の樹脂(未強化品)等によって形成される。
【0031】
第2の操舵軸3は、ウォームホイール12を軸方向の上下に挟んで配置される第1および第2の転がり軸受13、14により回転自在に支持されている。
第1の転がり軸受13の外輪15は、センサハウジング6の下端の筒状突起6b内に設けられた軸受保持孔16に嵌め入れられて保持されている。また外輪15の上端面は環状の段部17に当接しており、センサハウジング6に対する軸方向上方への移動が規制されている。
【0032】
一方、第1の転がり軸受13の内輪18は、第2の操舵軸3に締まりばめにより嵌め合わされている。また内輪18の下端面は、ウォームホイール12の芯金12aの上端面に当接している。
第2の転がり軸受14の外輪19は、ギヤハウジング7の軸受保持孔20に嵌め入れられて保持されている。また外輪19の下端面は、環状の段部21に当接し、ギヤハウジング7に対する軸方向下方への移動が規制されている。
【0033】
一方、第2の転がり軸受14の内輪22は、第2の操舵軸3に一体回転可能で、かつ軸方向の相対移動を規制されて取り付けられている。また内輪22は、第2の操舵軸3の段部23と、第2の操舵軸3のねじ部に締め込まれるナット24との間に挟持されている。トーションバー4は、第1および第2の操舵軸2、3を貫通している。トーションバー4の上端4aは、連結ピン25により第1の操舵軸2と一体回転可能に連結され、下端4bは、連結ピン26により第2の操舵軸3と一体回転可能に連結されている。第2の操舵軸3の下端は、図示しない中間軸を介して、前記のようにラックアンドピニオン機構等の舵取機構に連結されている。
【0034】
連結ピン25は、第1の操舵軸2と同軸に配置される第3の操舵軸27を、第1の操舵軸2と一体回転可能に連結している。第3の操舵軸27はステアリングコラムを構成するチューブ28内を貫通している。
第1の操舵軸2の上部は、例えば針状ころ軸受からなる第3の転がり軸受29を介してセンサハウジング6に回転自在に支持されている。第1の操舵軸2の下部の縮径部30と第2の操舵軸3の上部の孔31とは、第1および第2の操舵軸2、3の相対回転を所定の範囲に規制するように、回転方向に所定の遊びを設けて嵌め合わされている。
【0035】
次いで図2を参照して、ウォーム軸11は、ギヤハウジング7により保持される第4および第5の転がり軸受34、35によりそれぞれ回転自在に支持されている。
第4および第5の転がり軸受34、35の内輪36、37は、ウォーム軸11の対応するくびれ部に嵌合されている。また外輪38、39は、ギヤハウジング7の軸受保持孔40、41にそれぞれ保持されている。
【0036】
ギヤハウジング7は、ウォーム軸11の周面の一部に対して径方向に対向する部分7bを含んでいる。
また、ウォーム軸11の一端部11aを支持する第4の転がり軸受34の外輪38は、ギヤハウジング7の段部42に当接して位置決めされている。一方、内輪36は、ウォーム軸11の位置決め段部43に当接することによって他端部11b側への移動が規制されている。
【0037】
またウォーム軸11の他端部11b(継手側端部)の近傍を支持する第5の転がり軸受35の内輪37は、ウォーム軸11の位置決め段部44に当接することによって一端部11a側への移動が規制されている。また外輪39は、予圧調整用のねじ部材45により、第4の転がり軸受34側へ付勢されている。ねじ部材45は、ギヤハウジング7に形成されるねじ孔46にねじ込まれることにより、一対の転がり軸受34、35に予圧を付与すると共に、ウォーム軸11を軸方向に位置決めしている。47は、予圧調整後のねじ部材45を止定するため、当該ねじ部材45に係合されるロックナットである。
【0038】
ギヤハウジング7内において、ウォーム軸11とウォームホイール12の噛み合い部分Aを少なくとも含む領域には、先に述べた潤滑剤組成物が充填される。すなわち潤滑剤組成物は、噛み合い部分Aのみに充填しても良いし、噛み合い部分Aとウォーム軸11の周縁全体に充填しても良いし、ギヤハウジング7内全体に充填しても良い。
なお、本発明は上記実施の形態に限定されるものではない。例えば本発明の減速機の構成を、電動パワーステアリング装置以外の装置用の減速機に適用することができる等、本発明の特許請求の範囲に記載された事項の範囲内で、種々の変更を施すことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の、一実施形態にかかる電動パワーステアリング装置の概略断面図である。
【図2】図1のII−II線に沿う断面図である。
【符号の説明】
A 噛み合い部分
M 電動モータ
11 ウォーム軸(小歯車)
12 ウォームホイール(大歯車)
50 減速機
Claims (2)
- 一方を樹脂、他方を金属にて形成した小歯車および大歯車を含み、かつ前記両歯車の噛み合い部分を含む領域に、動粘度が20〜100mm 2 /s(40℃)である潤滑基油と、増ちょう剤と、微小粒子とを含み、
前記微小粒子として、ヤング率が1〜10 5 MPaの合成樹脂、または合成ゴムからなり、平均粒径が0.1〜400μmであるものを用い、かつ
前記増ちょう剤として
(1) 二次粒子径が1〜50μmで、かつ二次粒子の状態での吸油量が50〜600ml/100gであるシリカと、
(2) 石けん系増ちょう剤、およびシリカを除く他の非石けん系増ちょう剤のうちの少なくとも1種と
を併用してなり、前記シリカを潤滑基油100重量部に対して1〜5重量部の割合で含み、ちょう度が、NLGI番号で表してNo.2〜No.00である潤滑剤組成物を充てんしたことを特徴とする減速機。 - 操舵補助用のモータの出力を、請求項1記載の減速機を介して減速して、舵取機構に伝えることを特徴とする電動パワーステアリング装置。
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