JP4868220B2 - 電動パワーステアリング装置 - Google Patents
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Description
しかしながら、ギヤハウジング内を完全に密閉すると、不具合が発生してしまう場合がある。例えば、ギヤハウジング内を完全に密閉すると、ギヤハウジング内部の圧力が変化し、シール軸受のシールが軸受の可動輪等に張り付いてしまう場合がある。この場合、軸受に支持されたシャフトの回転抵抗が上昇してしまう。
この発明は、かかる背景のもとになされたものであり、ギヤハウジング内の圧力の変化およびギヤハウジングからの潤滑剤の漏れを防ぐことができる電動パワーステアリング装置を提供することを目的とする。
また、通路は、潤滑剤の進行を食い止める通路区画部材によって区画されているので、ギヤハウジングからの潤滑剤の流出を阻止することができる。
また、シール軸受の外輪の外周面および軸受保持穴の内周面の少なくとも一方に形成された溝によって、軸受保持穴内の圧力を上昇させずに、シール軸受を軸受保持穴に嵌合させることができる。さらに、シール軸受を軸受保持穴の底側のシールを廃止した片シール軸受とすることができる。溝は、軸方向に延びる溝であってもよいし、ねじ溝等の螺旋状の溝であってもよい。
また、本発明において、ウォーム軸は、第1および第2の端部に開口を有する通気孔(42)を形成している場合がある。この場合、ウォーム軸の第1および第2の端部に開口を有する通気孔が設けられているので、軸受保持穴内の圧力を上昇させずに、シール軸受を軸受保持穴に嵌合させることができる。したがって、組立性がよい。
また、上記通路(62)は、第2の操舵軸の外周面または減速ギヤの内周面(67)に形成された周溝(64)と、減速ギヤに設けられ上記第1の開口を上記周溝の一部に連通する第1の通路(65)と、第2の操舵軸に設けられ上記第2の開口を上記周溝の一部に連通する第2の通路(66)とを含む場合がある。この場合、周溝を介して第1および第2の通路を連通することにより、潤滑剤収容空間の内部と外部とを連通することができる。また、周溝を形成することにより、第1および第2の通路の周方向に関する位相を一致させることなく容易に互いの通路を連通することができる。
図1は、本発明の一実施の形態の電動パワーステアリング装置1の概略構成を示す模式図である。図1を参照して、電動パワーステアリング装置1は、ステアリングホイール等の操舵部材2に連結されるステアリングシャフト3と、中間軸4を介してステアリングシャフト3と連結されるピニオン軸5と、ピニオン軸5に形成されたピニオン歯6に噛み合うラック歯7を有し、自動車の左右方向に延びる転舵軸としてのラックバー8とを備えている。ピニオン軸5およびラックバー8により操舵機構としてのラックアンドピニオン機構Pが構成されている。
ラックバー8は、図示しない複数の軸受を介して直線往復自在にハウジング12に支持されている。ラックバー8の両端部はハウジング12の両側へ突出し、各端部にはそれぞれタイロッド13およびナックルアーム(図示せず)を介して操向輪14が連結されている。
また、操舵部材2に与えられる操舵トルクは、入力軸9および出力軸10間の相対回転変位量に基づいて、ステアリングシャフト3の近傍に設けられたトルクセンサ15が検出する。トルクセンサ15が検出したトルク値は、ECU16(Electronic Control Unit:電子制御ユニット)に与えられる。ECU16は、トルク値や図示しない車速センサから与えられる車速等に基づいて、駆動回路17を介して操舵補助用の電動モータ18を駆動制御する。
図2は、図1の電動パワーステアリング装置1に備えられた減速機19およびその近傍の構成を示す断面図である。図2を参照して、減速機19は、電動モータ18により回転駆動される駆動ギヤとしてのウォーム軸20と、このウォーム軸20に噛み合う従動ギヤとしてのウォームホイール21と、ウォーム軸20およびウォームホイール21を収容するギヤハウジング22とを備えている。
ウォームホイール21は、出力軸10に一体回転可能に結合された環状の芯金21aと、芯金21aの周囲を取り囲み外周に歯29が形成された合成樹脂部材21bとを備える。芯金21aは、例えば合成樹脂部材21bの樹脂成形時に金型内にインサートされる。芯金21aの内周面は、ステアリングシャフト3の出力軸10に、例えば圧入によって連結されている。これにより、ウォームホイール21は、出力軸10に対して一体回転可能に且つ軸方向移動不能にされている。
潤滑剤として、グリースを用いる場合は、緩衝材粒子を添加した状態でのちょう度を、NLGI番号で表してNo.2〜No.000とするのが好ましい。また、潤滑剤として、潤滑油を用いる場合は、その動粘度を20〜100mm2/s(40℃)とするのが好ましい。
また、第2の軸受32の内輪32bは、ウォーム軸20の第2の端部24に嵌合されており、第2の軸受32の外輪32aは、ギヤハウジング22の軸受保持穴34に圧入され、保持されている。これにより、第2の軸受32の内輪32bとウォーム軸20との間および第2の軸受32の外輪32aとギヤハウジング22との間が封止されている。
また、ギヤハウジング22には、上記潤滑剤収容空間S1と、ギヤハウジング22およびモータハウジング30によって区画された空間S2との通気を許容する第1および第2の通路35,36が形成されている。上記空間S2とは、ギヤハウジング22内の空間において、第1の軸受31よりもモータハウジング30側にある空間S21と、これに連通するモータハウジング30内の空間S22とを含む空間である。
この第1および第2の通路35,36によって、上述のように、潤滑剤収容空間S1と空間S2との通気を許容することができる。したがって、例えばウォーム軸20とウォームホイール21との摩擦により潤滑剤収容空間S1内の空気が加熱されたとしても、加熱によって膨張した空気は、第1および第2の通路35,36を通じて、空間S2に移動することができる。
また、空間S21内において、空間S21の第1および第2の通路35,36側の空間S211と、空間S21のモータハウジング30側の空間S212とに仕切る通路区画部材として連続気泡の多孔質体39が設けられている。多孔質体39は、例えば環状に形成されている。多孔質体39の外周面は、ギヤハウジング22の筒状部22bの内周面に嵌め合わされ、多孔質体39の内周面は、筒状の継手28の外周面に嵌め合わされている。多孔質体39としては、例えば発泡樹脂やポリウレタンフォームが挙げられる。
以上のように、この実施形態によれば、第1および第2の軸受31,32として、片シール軸受が用いられており、シール31d,32dはウォーム軸20の中間部26側、すなわち、潤滑剤が充填された潤滑剤収容空間S1側に配置されている。したがって、緩衝材粒子を含む潤滑剤が、各軸受31,32内に侵入することを防ぐことができる。その結果、緩衝材粒子による各軸受31,32の摩耗を防ぎ、各軸受31,32の耐久性を向上することができる。なお、第1および第2の軸受31,32として両シール軸受を用いてもよい。
なお、この実施形態においては、第1および第2の通路35,36の両方を有する場合について説明したが、第1または第2の通路35,36のどちらか一方のみを有する場合でも上述と同様の効果を奏することができる。
また、図4に示すような通気孔43を設けてもよい。通気孔43の一端の開口431がウォーム軸20の中間部26の外周面26aに開口し、他端の開口432が第2の先端面41に開口している。この通気孔43によって、潤滑剤収容空間S1と空間S3とが連通されている。
図5を参照して、通気溝44aは、一端が潤滑剤収容空間S1と連通し、軸受保持穴34の内周面34bに沿って形成された軸方向溝44cと、一端が軸方向溝44cと連通し、他端が空間S3と連通する溝44dとを有する。溝44dは、軸受保持穴34の底部34aであり、第2の軸受32の端面32eを受ける環状の受け部34cに形成されている。
図6を参照して、通気溝44bは、軸受保持穴34の内周面34bに形成された螺旋状のねじ溝44eと、ねじ溝44eと連通し、受け部34cに形成された溝44dとを含む。この通気溝44bによって、軸受保持穴34内の空気が潤滑剤収容空間S1側へ流出できるので、ウォーム軸20および第2の軸受32を軸受保持穴34に容易に挿入することができる。また、通気溝44bの断面の最大径を緩衝材粒子の最小径(例えば30μm)以下におさえることにより、緩衝材粒子を含む潤滑剤が通気溝44bを通って、潤滑剤収容空間S1から空間S3に流出することを防止できる。したがって、第2の軸受32の空間S3側のシールを廃止できる。すなわち、第2の軸受32を両シール軸受よりも安価である片シール軸受にすることができる。通気溝44bの断面の最大径が緩衝材粒子の最小径を超える場合には、第2の軸受32として両シール軸受を用いることが必要である。
図7は、本発明の別の実施形態にかかる減速機19およびその近傍の構成を示す断面図である。この図7において、前述の図2〜図6に示された各部と同等の構成部分については、図2〜図6と同一の参照符号を付してその説明を省略する。
多孔質体保持穴45は、軸受保持穴34の底部34aに形成されており、例えば図4に示した通気孔43や図5および図6に示した通気溝44a,44bによって、潤滑剤収容空間S1と連通されている。また、多孔質体保持穴45を区画する周壁には、ギヤハウジング22を貫通する通気孔46が形成されている。
図8を参照して、本実施の形態が図2の実施の形態と主に相違するのは、電動モータ18およびウォーム軸20がウォームホイール21の下方に配置され、トルクセンサ15を収容するセンサハウジング47に多孔質体39を収容する多孔質体保持穴48が形成されていることにある。
その一方で、第1および第2の通気溝54a,54bは、環状溝52a,52bの周方向X1に関して互いに位相をずらして配置されていて、通路がラビリンス構造になっているので、潤滑剤収容空間S1内の潤滑剤は容易に潤滑剤収容空間S1の外部に流出することができない。
図11および図12を参照して、本実施の形態が図2の実施の形態と主に相違するのは、ウォームホイール210に形成された第1の開口57と第2の操舵軸としての出力軸10aに形成された第2の開口59とをその両端に含んでウォームホイール210および出力軸10aを貫通する通路60によって、潤滑剤収容空間S1が大気と連通されていることにある。
また、上記第2の開口59は、出力軸10aの内周面58に形成されている。通路60は、出力軸10aおよび芯金210aを貫通し、第1および第2の開口57,59を連通している。また、出力軸10a内に開口する第2の開口59は、軸方向Y2に関して第1の開口57よりも上位に配置されている。潤滑剤収容空間S1内に開口する第1の開口57は、出力軸10aの径方向Z2に関して第2の開口59よりも外方に配置されている。
図13は、本発明のさらに別の実施形態にかかる減速機19およびその近傍の一部を模式的に示す拡大断面図である。この図13において、前述の図11および図12に示された各部と同等の構成部分については、図11および図12と同一の参照符号を付してその説明を省略する。
この発明は、以上の実施形態の内容に限定されるものではなく、請求項記載の範囲内において種々の変更が可能である。
Claims (2)
- 出力軸を有する操舵補助用の電動モータと、
この電動モータの出力軸の回転を操舵機構に伝達するための伝達機構と、
この伝達機構を収容したギヤハウジングと、
緩衝材粒子を含む潤滑剤であって、ギヤハウジングの潤滑剤収容空間の内部に収容され、伝達機構を潤滑するための潤滑剤と、
上記潤滑剤収容空間の内部と外部との間の通気を許容し且つ潤滑剤の流出を阻止する通路と、
上記通路を区画するための通路区画部材とを備え、
上記伝達機構は、ウォーム軸を含み、
このウォーム軸は、電動モータの出力軸と継手を介して連結された第1の端部と、この第1の端部と反対側の第2の端部とを含み、
ギヤハウジングは、ウォーム軸の第2の端部を回転自在に支持するシール軸受の外輪を嵌合して保持する軸受保持穴を含み、
上記シール軸受の外輪の外周面および軸受保持穴の内周面の少なくとも一方に、通気を許容し且つ潤滑剤の流出を阻止する、上記緩衝材粒子よりも断面積が小さい溝が形成されている電動パワーステアリング装置。 - 請求項1において、ウォーム軸は、第1および第2の端部に開口を有する通気孔を形成していることを特徴とする電動パワーステアリング装置。
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