従来の歩行者検知器は、設置作業性が悪いという問題がある。
上述した画像式センサやカメラを具える検知器は、画像処理などを行う処理部を具えるため、比較的大型である。これらの検知器は、通常、歩道や道路に立てた支柱の上方に取り付けることから、小型である方が取り扱い易く、設置し易い。レーザセンサや超音波センサを具える検知器は、レーザ光や超音波を発する発生部と、発生部から発した光や超音波が道路面などで反射した反射光や反射波を受ける感知部とが必要であり、両部を設置しなければならない。かつ両部は、所定の位置に精度よく配置する必要があり、位置調整に時間がかかる。また、発生部は、比較的消費電力が大きいことから、電力供給を行うために電源線の布設、或いは大型な電源装置が必要であり、このような電源設備の構築のために設置時間が長くなる。
更に、従来の歩行者検知器では、歩行者を適切に検知できないことがある。例えば、画像式センサでは、所望の画像を得るにあたり、ある程度の光量が必要であることから、受光量が少なくなる夜間に歩行者を検知しにくくなる。夜間の受光量が大きくなるように絞りを調整すると、昼間の受光量が多くなり過ぎて、昼間に精度よく検知できない。超音波センサは、車両のような大きな対象や停止している対象の検知に適しており、比較的小さく、かつ動いている歩行者や自転車を精度よく検知することが難しい。赤外線カメラは、外乱光の影響を受け易く、夜間走行している車両のヘッドライトによって干渉を受け、歩行者を感知できないことがある。
そこで、本発明の主目的は、歩行者といった歩行対象を精度よく検知することができ、設置作業性に優れる歩行対象検知装置を提供することにある。また、本発明の他の目的は、上記歩行対象検知装置を具えた衝突事故防止支援システムを提供することにある。
本発明検知装置は、監視範囲に存在する検知対象自体が発する赤外線を感知する赤外線素子を複数具え、各素子から得られた入力レベル値を利用して、歩行対象の検出する構成とする。そして、本発明検知装置は、複数の入力レベル値を用いて移動方向を判定し、この移動方向から歩行対象が車両と衝突する可能性があるか否かを判定する構成とすることで上記主目的を達成する。具体的には、本発明歩行対象検知装置は、複数の道路が交差する交差点近傍に設けられた監視範囲に存在する歩行対象を検知するものである。この検知装置は、複数の赤外線素子と、各赤外線素子から得られた入力レベル値を用いて、走行する車両と衝突する可能性がある衝突回避対象の有無を判定する歩行対象判定部と、歩行対象判定部が衝突回避対象有りと判定したとき、この判定情報を出力する出力部とを具える。各赤外線素子は、監視範囲に存在する検知対象からの赤外線を感知するものであり、各素子に基づく感知エリアが監視範囲に並んで形成されるように、検知装置に配置する。歩行対象判定部は、上記赤外線素子からの入力レベル値を用いて、まず、歩行対象を検知する。具体的には、歩行対象判定部は、感知エリアごとに、赤外線素子から得られた入力レベル値に基づく存在比較値と存在閾値とを比較し、存在比較値が存在閾値以上である感知エリアをONエリアとし、ONエリアが存在するとき、歩行対象有りとする。そして、歩行対象判定部は、検知した歩行対象のうち、車両が走行する道路を横断することで、走行する車両と衝突する可能性がある衝突回避対象の有無を判定する。具体的には、歩行対象判定部は、方向判定手段と対象判定手段とを具え、方向判定手段は、ONエリアが複数存在するとき、これらONエリアに基づく入力レベル値を用いて、歩行対象の移動方向を判定し、対象判定手段は、判定した移動方向に基づいて、歩行対象が衝突回避対象か否かを判定する。
交差点では、横断方向が二方向以上考えられる。例えば、交差点近傍の歩道に監視範囲を設けると、走行中の車両、つまり通行権が与えられている車両と同一方向に移動予定或いは移動中の歩行対象と、この車両と異なる方向に移動予定の歩行対象とが監視範囲に混在することが考えられる。走行中の車両と異なる方向に移動予定の歩行対象は、通常、この車両が走行する道路を横断する通行権が与えられていない(信号灯器の灯色が赤ステップ)と考えられるため、車両と衝突する危険が少ないと考えられる。これに対し、走行中の車両と同一方向に移動しようとする歩行対象は、この車両が走行する道路以外の道路(ここでは道路Aと呼ぶ、例えば、この車両が走行する道路に交差する道路)を横断する通行権が与えられている(信号灯器の灯色が青)と考えられる。そして、この道路Aに車両が進入してきた場合、道路Aを横断中の歩行対象と車両とが衝突する恐れがある。そのため、歩行対象の有無を単に検知して車両のドライバにその情報を提供すると、この歩行対象が車両と衝突する可能性があるものか否かがこの情報だけから判別できないことから、過剰な情報提供により、円滑な交通を妨げる恐れがある。そこで、本発明検知装置では、歩行対象の移動方向を判定し、車両と衝突する危険が高いと考えられる歩行対象を抽出して、その情報を車両のドライバに提供できるように出力することで、歩行対象の交通安全の確保と、車両の円滑な交通との両立に寄与することができると推測される。特に、本発明検知装置は、画像処理を行わないことから小型にすることができ、かつ、発生部が不要であることから、設置作業性に優れる。また、本発明検知装置は、アクティブセンサと比較して消費電力が小さいパッシブセンサを利用することで、センサ用の電源線の布設や大きな電源装置の設置が不要であり、電源設備の構築に伴う設置時間の延長を防止できる。加えて、本発明検知装置は、道路の側方に配置された状態、いわゆるサイドファイア式に配置された状態であっても、歩行対象を精度よく検知することができる。そのため、本発明検知装置は、比較的容易に位置合わせを行うことができ、設置時間が短くて済む。
以下、本発明をより詳細に説明する。
本発明において歩行対象は、自らの足で歩行する通常の歩行者、車椅子や電動車椅子などの歩行補助具の使用者、白杖使用者などといったいわゆる交通弱者、及び自転車の使用者を含む。また、本発明において車両とは、自動四輪車や自動二輪車、原動機付き自転車といった自動駆動車とする。
本発明検知装置は、歩道を含む道路に設けられた監視範囲に存在する歩行対象や歩行対象以外の物体(主として道路)といった検知対象からの赤外線を感知して、歩行対象を検知する。この監視範囲は、車両が走行する複数の道路が交差する交差点近傍の道路(歩道を含む)において、歩行対象が存在する可能性が高い箇所、代表的には、道路に設けられた横断歩道近傍に設ける。例えば、横断歩道の一部或いは全部を含むように監視範囲を設ける。或いは、横断歩道が設けられた車両用の道路の両側縁に設けられた歩道において、横断歩道に接する箇所近傍に監視範囲を設ける。監視範囲には、後述する赤外線素子に基づく感知エリアを形成する。
赤外線素子は、サーモパイル素子や焦電素子といった熱型赤外線素子が利用できる。特に、熱起電力の出力が大きいサーモパイル素子を用いると、歩行対象を精度よく検知できる。本発明検知装置は、このような赤外線素子を二つ以上具える。これら赤外線素子は、各素子に基づく感知エリアが監視範囲に並んで形成されるように検知装置に配置する。感知エリアは、歩行対象の検出に利用すると共に、歩行対象の移動方向の検出にも利用する。従って、感知エリアは、少なくても車両と衝突する可能性があると考えられる移動方向が検出できるように配置する。例えば、直線状に並べた場合、相対する二方向を検出できる。縦列及び横列からなる格子状に並べた場合、種々の方向が検出可能であり、検知精度を高められる。隣り合う感知エリアは、所定の間隔をあけて配置してもよいが、接するように配置することで、歩行対象の移動方向をより速く検出することができる。各感知エリアの大きさは、比較的小さくする、例えば、10〜40cm四方(10〜40cm×10〜40cm)とすると、S/N比の低下を低減して、検知精度を高められる。
歩行対象判定部は、赤外線素子から得られた入力レベル値を用いて、歩行対象を検知し、歩行対象が存在するとき、この歩行対象の移動方向を調べ、移動方向を利用してこの歩行対象が走行する車両と衝突する可能性がある衝突回避対象であるか否かを判定する。そこで、歩行対象判定部は、歩行対象の移動方向を判定する方向判定手段と、歩行対象が衝突回避対象か否かを判定する対象判定手段とを具える。その他、歩行対象判定部は、入力レベル値を取得する入力手段、存在比較値といった演算値を演算する演算手段、予め設定した設定値などを記憶する記憶手段、存在比較値と存在閾値とを比較して、歩行対象の有無を判定する存在判定手段(後述)、移動方向の検知の際に利用する時間計測手段(後述)などを具える。
存在判定手段は、感知エリアごとに、赤外線素子から得られた入力レベル値に基づく演算値を存在比較値とし、この存在比較値と存在閾値とを比較し、存在比較値が存在閾値以上のとき(以下、この状態を感知ONと呼び、存在比較値が存在閾値未満の状態を感知OFFと呼ぶ)、この感知エリアに歩行対象が存在すると判定するように構成する。
存在比較値は、入力レベル値のうち、歩行対象以外の物体が発する赤外線の量に基づく値を演算し、得られた演算値を背景レベルとし、この背景レベルと入力レベル値とを用いた演算値が挙げられる。特に、入力レベル値と背景レベルとの差に基づく演算値が好ましい。このような演算値として、入力レベル値と背景レベルとの差を一定時間積算した値や、この積算値に入力レベル値の単位時間当たりの変化量を加味した値が挙げられる。背景レベルは、指数平滑法に基づく演算値が挙げられる。存在閾値は、設定値に補正値を加味した演算値が挙げられる。設定値は、予め設定して、歩行対象判定部の記憶手段に入力しておく。補正値は、取得した入力レベル値に基づいて変化させることが好ましい。背景レベルや存在閾値は、過去の存在判定結果(存在比較値と存在閾値との比較結果)に応じて変化させると、実際の環境により即した値となる。
歩行対象が存在するときに、存在比較値が存在閾値以上である感知エリア(以下、この感知エリアをONエリアと呼ぶ)が複数存在する場合、方向判定手段は、これらONエリアを用いて歩行対象の移動方向を検出する。歩行対象の移動方向は、例えば、近接して存在するONエリアを用いて判定することができる。例えば、複数の感知エリアを格子状に並べている場合、感知エリアの大きさにもよるが隣接する感知エリアが同時に感知OFFの状態から感知ONにならず、感知ONとなる時刻に差が生じることが多いと考えられる。そして、歩行対象は、先に感知ONとなった感知エリアから後に感知ONとなった感知エリアに移動していると考えられる。また、歩行対象が監視範囲を移動する場合、通常、外周側に配置される感知エリアを通過すると考えられる。そこで、移動方向の検出は、以下のようにすることが挙げられる。
例えば、歩行対象判定部は、感知ONとなった時刻、又は、この存在判定に用いた入力レベル値を取得した時刻(以下、これらの時刻を判定時刻と呼ぶ)を計測する時間計測手段を具えておき、方向判定手段は、計測した時刻を取得できるようにしておく。そして、存在判定手段は、全ての感知エリアについて並行して歩行対象の検知を行い、更に、外周側に配置される感知エリアについてONエリアの有無を判定する。ONエリアがあるとき(以下、このONエリアを外ONエリアと呼ぶ)、存在判定手段は、この外ONエリアよりも内周側に配置されるONエリアの有無を判定し、方向判定手段は、ONエリアがあるとき(以下、このONエリアを内ONエリアと呼ぶ)、時間測定手段を利用して判定時刻を取得し、取得した時刻の大小関係から移動方向を判定するように構成すると、現実に即した移動方向を判定することができる。或いは、存在判定手段は、全ての感知エリアにおいてONエリアの有無を判定するのではなく、外周側に配置されている感知エリアについてのみONエリアの有無を判定する、つまり、外ONエリアの有無を判定する構成としてもよい。そして、存在判定手段は、外ONエリアがある場合、内ONエリアの有無を判定し、外ONエリア及び内ONエリアの双方がある場合、方向判定手段は、上述のように判定時刻から移動方向を判定するように構成してもよい。
移動方向は、例えば、外ONエリアの中心と内ONエリアの中心とを結ぶ直線の方向とすることができる。
複数の外ONエリアが接して存在する場合、方向判定手段は、例えば、これらを一纏まりのグループとし、グループに対して、内ONエリアの有無を判定するように構成する。内ONエリアが存在する場合、方向判定手段は、例えば、上述のように外ONエリアの中心と内ONエリアの中心とを結ぶ直線から移動方向を判定するように構成する。一方、内ONエリアが存在しない場合、歩行対象は、監視範囲の外周縁に沿って移動していると考えられる。そこで、この場合、外ONエリアのうち、最も早く感知ONとなった感知エリアと最も遅く感知ONとなった感知エリアとを検出して、歩行対象の移動方向を検出するように方向判定手段を構成すると、移動方向が検出できない場合を低減できる。このような判定を行う場合、歩行対象判定部は、上述した時間計測手段を具えておき、方向判定手段は、計測した時刻を取得できるようにしておく。
複数の外ONエリアが離れて存在する場合、例えば、それぞれの外ONエリアに対して、内ONエリアの有無を判定するように方向判定手段を構成する。
歩行対象の移動方向が判定されたら、対象判定手段は、この移動方向を利用して歩行対象と車両とが衝突する恐れがある(衝突回避対象である)か否かを判定する。具体的には、例えば、車両と衝突する可能性が高いと思われる一方向を設定し、この設定方向と判定した移動方向とを照合させて、移動方向が一致する場合、対象判定手段は、衝突回避対象であると判定するように構成する。上記設定方向は、例えば、交差点に進入する前の車両の走行方向と交差する方向が挙げられる。上記一方向だけでなく、この一方向を含む所定の範囲を設定し、移動方向がこの範囲に含まれる場合、対象判定手段は、衝突回避対象であると判定するように構成してもよい。或いは、車両と衝突する可能性が低いと思われる一方向或いは範囲を設定し、移動方向がこの方向に一致しない、或いは範囲に含まれない場合、対象判定手段は、衝突回避対象であると判定するように構成してもよい。予め設定した方向や範囲は、記憶手段に入力し、対象判定手段が呼び出せるようにしておく。設定方向は、所定の方角や所定の直線に対して所定の角度で交差する直線の向きとすることが挙げられる。設定範囲は、上記所定の角度に幅を持たせることが挙げられる。
歩行対象の移動方向に加えて歩行対象の大きさを求め、移動方向と大きさとの双方を加味して衝突回避対象か否かを判定する構成とすると、誤認を低減して検知精度を高められる。歩行対象の大きさは、ONエリアにおいて、感知ONとなっている状態が連続している時間、つまり、感知OFFと感知OFFとに挟まれて存在する感知ONの時間(以下、この時間を感知ON時間と呼ぶ)と、歩行対象の移動距離とを用いて算出できる。そこで、歩行対象の大きさを演算する演算手段を歩行対象判定部に具えておき、得られた大きさが所定の範囲に含まれる場合、この大きさと移動方向とに基づいて、歩行対象が衝突回避対象か否かを判定するように歩行対象判定部を構成する。移動距離は、感知エリアの位置に基づいて演算される距離、例えば、感知エリアの中心間の距離とすることができる。
感知ON時間の計測は、例えば、以下のように行う。一定周期で一定の間隔(例えば、10msec)でカウントアップを行うタイマ手段を本発明検知装置に具えておき、本発明検知装置は、一定の間隔で上述した存在判定処理を行う構成とする。また、タイマ手段がカウントした時刻を用いて感知ON時間を計測する時間計測手段を本発明検知装置に具えておく。上述した判定時刻をタイマ手段から取得して記憶手段に記憶させておき、感知ONから感知OFFとなった時刻と、感知OFFから感知ONとなった時刻との差を求めるように時間計測手段を構成することで、感知ON時間が計測できる。或いは、時間計測手段は、感知ONの回数を計測する構成としてもよい。上述のように一定の間隔で存在判定処理を行う構成とすることで、感知ONの回数と一定の間隔との積は、感知ON時間となる。
歩行対象の大きさの範囲は、予め設定しておき、歩行対象判定部の記憶手段に入力しておく。具体的な範囲としては、10cm〜200cm程度、特に、10cm〜100cm程度が挙げられる。歩行対象の大きさの演算は、例えば、移動方向が設定方向である(設定範囲に含まれる)と判定されてから行う。
得られた判定結果(判定情報)は、出力部により出力し、衝突する恐れがある歩行対象が交差点近傍に存在することを車両のドライバが認識できるようにする。具体的には、出力部は、車両側装置(後述)に対して出力する。出力部の構成は、車両側装置の配置位置に応じて適宜選択する。例えば、車両側装置が車両内に配置される車載装置の場合、無線方式(アンテナ)が好ましい。車両側装置が車両外の道路などに配置される外部装置である場合、無線式でも有線方式(接続端子)でもよい。
出力部は、判定情報以外の情報をも出力可能な構成とすることができる。判定情報以外の情報としては、例えば、どの交差点のどの横断歩道に衝突回避対象が存在するかの位置情報が挙げられる。位置情報をも合わせて出力することで、車両のドライバは、どの位置において注意を払えばよいかを認識することができると考えられる。また、一つの交差点に本発明検知装置を複数配置する場合、各装置の識別情報を出力するようにして、車両側装置は、どの検知装置からの情報を受け取ったのかを判別できるようにすることが好ましい。その他、判定情報以外の情報としては、本発明検知装置が配置される交差点に設置される車両用の交通信号灯器の制御情報が挙げられる。制御情報は、本発明検知装置に具える記憶手段に予め入力しておいたり、この信号灯器を制御する信号制御装置から取得するようにしてもよい。後者の場合、本発明検出装置は、信号制御装置からの制御情報を入力する情報入力部を具えておき、信号制御装置には、本発明検出装置に制御情報を出力する情報出力部を具えておく。情報入力部及び情報出力部は、無線式でも有線方式でもよい。
ここで、交通信号灯器は、通常、制御内容に基づいて信号制御装置により制御される。信号制御装置は、予め設定した複数の制御内容が記憶部に入力されており、制御部は、これら複数の中から適宜選択し、選択された制御内容に基づいて、信号制御を行う。また、信号制御装置は、管制センターなどからの情報を入力する入力部を具えて、管制センターなどからの情報に基づいて制御内容を変更して制御することがある。従って、制御情報が任意に変更されるような場合、信号制御装置から制御情報を入力するように本発明検知装置を構成することで、本発明検知装置は、最新の制御情報、つまり現実に即した情報を取得し、出力することができる。
制御内容は、信号灯器の各灯色(青、黄、赤、全赤)の表示時間(ステップ時間)とその配列順序とが決められた灯色配列である。本発明検知装置が、判定情報と合わせて、このような制御内容(制御情報)を出力することで、車両のドライバは、衝突回避対象の存在に加えて、信号灯器の灯色状態を把握することができる。従って、車両のドライバは、灯色をも考慮することで、より早めに減速するなどの動作を行い易いと推測され、このような本発明検知装置及びこの検知装置と上記信号制御装置とを具える本発明衝突事故防止支援システムは、衝突事故の防止に大いに寄与できると考えられる。
判定情報以外の情報として、その他、車両が衝突回避対象と接触する予想時間情報が挙げられる。予想時間も出力する構成とすることで、車両のドライバは、より具体的な状態が把握でき、適切に対処し易いと考えられる。予想時間は、車両の速度を用いて求める。そこで、本発明検知装置が配置される交差点をつくる道路上に、本発明検知対象装置の配置箇所よりも上流側に車両検知装置を具えておく。車両検知装置は、車両の速度を演算可能な構成のもの、或いは、車両の速度を演算するのに必要なパラメータを取得可能な構成のものを利用する。例えば、特許文献4に記載される車両検知装置を利用することができる。この車両検知装置は、二つの感知エリアが車線方向に並んで形成されるように二つのサーモパイル素子を具え、これらの素子からの入力レベル値の取得時間と、感知エリア間の距離とから車両の速度が求められる。そして、この車両検知装置には、車両の速度を求める演算手段と、得られた速度情報を出力する情報出力部とを具えておく。車両検知装置が上記パラメータを取得する場合、パラメータを速度情報として出力する情報出力部を具えておき、本発明検知装置は、得られたパラメータから車両の速度を演算する速度演算手段を具えておく。更に、本発明検知装置は、得られた車両の速度と、車両検知装置から歩行対象までの距離とを用いて、車両が検出された箇所から歩行対象が存在する箇所に当該車両が到達するまでにかかる予想時間を演算する予想時間演算部を具えておく。
上記距離は、例えば、車両検知装置と本発明検知装置との間の距離や車両検知装置から感知エリア近傍の横断歩道までの距離としたり、これらの距離に補正値を加味した値が挙げられる。この距離は、設定値として本発明検知装置の記憶手段に予め入力しておき、この距離と速度とから時間を演算し、この時間を予想時間とするように予想時間演算部を構成してもよい。上記距離と速度とから求められる時間に、本発明検知装置が処理を行う時間を考慮した時間を予想時間とすることが好ましい。本発明検知装置が速度情報を受け取り、判定情報と共に予想時間情報を出力部にて出力するまでの間に、車両は、衝突回避対象に近付く方向に移動すると考えられる。そこで、予想時間は、車両側装置に情報を出力するまでの処理にかかる処理時間を差し引いた時間とすると、より現実的な値となる。速度情報を随時入力可能な構成とする場合、予想時間の演算は、衝突回避対象が存在するときのみ行う構成とすることができる。このとき、予想時間は、(上記距離と車両の速度とから求められる衝突予想時間)-(予想時間情報を出力するまでの処理時間)とするとよい。一方、本発明検知装置が速度情報を受け取った際、衝突回避対象が存在していないことが考えられる。このとき、速度情報を入力後、衝突回避対象有りとの判定が得られるまでの時間をも考慮した時間、即ち、(上記距離と車両の速度とから求められる衝突時間)-(予想時間情報を出力するまでの処理時間)-(速度情報を受け取ってから衝突回避対象ありとの判定結果を得るまでの時間)を予想時間とすることが好ましい。
その他、本発明検知装置は、装置の駆動に必要な電力供給源として、ソーラー電源を具えてもよい。赤外線素子や歩行対象判定部などは、消費電力が少ないため、ソーラー電源でも十分に駆動電力を供給できる。ソーラー電源を具える本発明検知装置は、大型な電源装置や電源線の布設が不要であり、設置作業性に優れる。
赤外線素子、歩行対象判定部などは、筐体に収納して、道路際に立てた支柱に取り付ける。筐体は、アルミニウムなどの軽量で強度、耐食性に優れる金属材料から形成することが好ましい。筐体には、赤外線素子の検知方向前方に赤外線透過レンズを配置したり、レンズの指向角を所望の方向に調整する照準部を具えてもよい。
上記筐体は、例えば、監視範囲に存在する歩行対象に対して斜め上方に赤外線素子が位置するように配置する、いわゆるサイドファイア式に配置することができる。本発明検知装置は、歩行対象の真上でなく側方からでも、歩行対象を精度よく検知できる。筐体は、道路際に立てた支柱に直接取り付けてもよいし、この支柱から突出するように支持腕材を固定し、この支持腕材に取り付けてもよい。支持腕材は、比較的短くてよい。本発明検知装置は、位置合わせが比較的容易な配置形態とすることができ、設置作業性に優れることに加えて、美観の劣化も低減できる。
出力部から出力された判定情報などの情報を受け取る車両側装置は、車両内に配置される車載装置でも車両外に配置される外部装置でもよい。入力した判定情報などは、車両のドライバが視覚的又は聴覚的に認識できるようにする。車両側装置が車載装置であるとき、車両内の表示装置に情報を表示したり、発音装置により情報を発音することが挙げられる。このような情報の提示により、車両のドライバは、危険認識を高めたり、運転状態を変化させるなどして、衝突事故の防止を図ると推測される。また、入力した情報に基づき、ドライバの体に刺激を与えるなどの直接注意を促すような機能を具える車両の場合、車両のドライバは、注意を喚起され易い。更に、入力した情報に基づき、運転制動機能を作動させて自動的に減速するなどの処理を車両自体が行う車両の場合、ドライバによる適切な対処が遅れた場合でも、衝突事故を防止できる可能性が高いと考えられる。特に、車両が特定の速度以上で走行している場合、車両自体が上述のような対処を行うことで、衝突事故の回避に大いに貢献すると予想される。車載装置の場合、車外の環境などの影響が少ないことから、ドライバが情報をより確実に認識することができて好ましい。一方、後者の外部装置としては、例えば、VICSの電波ビーコンや光ビーコンといった公知の通信システムが、本発明検知装置が配置される交差点を含む道路に構築されている場合、この通信システムの入力装置が利用できる。このとき、例えば、上記交差点を含む道路に電光掲示板といった表示装置やスピーカといった発音装置を配置させておき、入力装置が取得した情報をこれらの装置に配信し、車両のドライバに情報を認識できるようにすると、上述した車載装置を具える特定の車両だけでなく、任意の車両に対して、広く情報提供を行うことができる。或いは、外部装置として、判定情報を受信可能な入力部を具える表示装置や発音装置を利用としてもよい。
なお、本発明検知装置が検出した衝突回避対象は、特定の方向を走行する車両と接触する危険があると想定するものである。従って、他の方向を走行する車両は、上記衝突回避対象と接触する危険がほとんどないと考えられるため、このような車両に対して衝突回避対象に関する情報を提供すると、円滑な交通を妨げる恐れがある。そこで、本発明検知装置は、当該検知装置が検出した衝突回避対象と接触する恐れがある車両のドライバに対してのみ、判定情報などが認識されるように特定の車両側装置に判定情報などを出力する構成とすることができる。或いは、本発明検知装置は、任意の車両側装置に対して情報を出力し、車両側装置が、受け取った情報のうち、必要なものを選択する構成とすることができる。このとき、上述したように位置情報や識別情報をも合わせて出力することで、車両側装置は、必要な情報の選択が行い易い。
本発明歩行対象検知装置は、アクティブセンサを用いず、パッシブセンサを用いる構成であることから、いわゆるサイドファイア式に配置されても、歩行対象を精度よく検知することができる。そのため、本発明検知装置は、従来の検知装置と比較して設置が容易であり、設置作業性に優れる。また、本発明検知装置は、消費電力が大きいアクティブセンサを具えていないことから、電源線の布設や大型な電源装置が不要であり、電源設備の構築のために設置時間が長くなることがない。
以下、図を参照して、本発明の実施の形態を説明する。図面において同一符号は、同一物を示す。
(実施例1 移動方向の判定を行う構成)
図1は、十字交差点に本発明検知装置を配置した状態を示す概略図である。歩行対象検知装置1は、車両が走行する道路200,201が交差する交差点Crの近傍に配置されて、歩行対象の有無を検知するものである。特に、この検知装置1は、歩行対象のうち、特定の方向を走行する車両Cと衝突する恐れがある歩行対象(衝突回避対象)を検出し、衝突回避対象に関する情報を出力する。出力された情報を受け取った車両側装置50は、車両Cを運転するドライバに情報を提供する。このように検知装置1を利用して、ドライバが衝突回避対象への注意を高めて、車両と歩行対象との衝突事故防止を支援する。
まず、検知装置1が配される交差点Crを説明する。この交差点Crは、図1において左右方向に延びる道路200と同上下方向に延びる道路201とが交差した十字交差点である。両道路200,201には、道路に沿って歩道210〜213が設けられ、歩道間を渡すように横断歩道220〜223が設けられている。各歩道210〜213において横断歩道220〜223の近傍に支柱100〜103が立てられ、各支柱100〜103には、車両用の交通信号灯器110〜113、及び歩行者用の交通信号灯器120〜123が取り付けられている。信号灯器110〜113,120〜123は、支柱101に取り付けられた信号制御装置20によって制御される。検知装置1は、支柱100に取り付けられている。
検知装置1の構成を説明する。図2は、本発明検知装置の機能ブロック図である。検知装置1は、歩道210に設けられた監視範囲M(図1)に存在する検知対象からの赤外線を受光する複数の赤外線素子11と、各素子11から得られた入力レベル値を用いて歩行対象を検知し、この歩行対象が衝突回避対象か否かを判定する歩行対象判定部12と、判定結果を車両側装置50に対して出力する出力部13とを具える。各素子11の検知方向が路面側となるように支柱100の上方に検知装置1を取り付け、各素子11は、歩道210上に存在する検知対象、具体的には歩行者や交通弱者といった歩行対象、及び歩行対象以外の物体(主として歩道自体)が発する赤外線を受光する。各素子11は、監視範囲Mにおいて各素子11に基づく感知エリアS1〜S25が格子状に並ぶように検知装置1に配置している。各感知エリアS1〜S25は、路面に投影した際の大きさが約20cm四方であり、道路200に沿って5列、道路201に沿って5列の合計25個が接するように配置されている。道路200に最も近接する1列は、横断歩道221の近傍に配され、道路201に最も近接する1列は、横断歩道220の近傍に配されている。
各素子11はいずれも、サーモパイル素子であり、同一の基板に搭載されたユニット11uを利用している。このユニット11uは、各素子11の起電力を増幅するアンプ(図示せず)、増幅された値をA/D変換するA/D変換器(図示せず)、歩行対象判定部12が搭載される回路基板(図示せず)に接続される。
歩行対象判定部12は、A/D変換された入力レベル値を入力する入力手段12eと、得られた入力レベル値を用いて存在比較値といった演算値を演算する演算手段12oと、演算に用いる設定値などを記憶する記憶手段12mと、存在比較値と存在閾値とを比較して、歩行対象の存在を判定する存在判定手段12pと、歩行対象が存在したとき、歩行対象の移動方向を判定する方向判定手段12dと、移動方向から歩行対象が衝突回避対象か否かを判定する対象判定手段12jとを具える。また、歩行対象判定部12は、時間計測手段12tを具える。時間計測手段12tは、存在判定手段12pが存在判定結果を得た時刻(判定時刻)txを後述するタイマ手段(図示せず)から計測する。検知装置1は、一定周期(例えば0〜99)で一定の間隔(例えば、10msec)でカウントアップを行うタイマ手段を具え、一定間隔ごとに衝突回避対象の有無の判定処理を行う構成である。その他、歩行対象判定部12は、RAM(図示せず)などを具える。
歩行対象判定部12は、感知エリアごとに、存在比較値と存在閾値とを演算して比較し、存在比較値が存在閾値以上であるとき(以下、この状態を感知ONと呼び、存在比較値が存在閾値未満である状態を感知OFFと呼ぶ)、歩行対象が存在すると判定し、次に、歩行対象の移動方向を判定する。この歩行対象判定部12は、まず、25個の感知エリアのうち、外周側に配置される外側感知エリアS1〜S6,S10,S11,S15,S16,S20〜S25について、感知ONである感知エリア(以下、この感知エリアを外ONエリアと呼ぶ)が有るとき、歩行対象が存在すると判定する。そして、これら外側感知エリアよりも内周側に配置される内側感知エリアS7〜S9,S12,S14,S17〜S19について感知ONである感知エリア(以下、この感知エリアを内ONエリアと呼ぶ)が存在するとき、判定部12は、これら外ONエリアと内ONエリアとを用いて歩行対象の移動方向を判定する。
存在比較値は、後述する背景レベルを用いた演算値、具体的には、入力レベル値と背景レベルとの差を一定時間積算した積算値に、入力レベル値の単位時間当たりの変化量を加味した演算値とする。背景レベルは、入力レベル値のうち、歩行対象以外の物体(ここでは歩道)からの入力レベル値を用いた指数平滑法による演算値とする。背景レベルも感知エリアごとに演算する。指数平滑法で用いる平滑係数は、前回の存在判定結果(存在比較値と存在閾値との比較結果)に応じて変化させてもよい。存在閾値は、設定値+補正値とする。設定値は、予め設定して記憶手段12mに記憶させておき、演算手段12oが呼び出せるようにする。補正値は、入力レベル値に基づく演算値であり、前回の存在判定結果に応じて変化させてもよい。存在判定に用いるこれらの演算値は、演算手段12oで演算する。
方向判定手段12dは、存在判定手段12pから外ONエリア及び内ONエリア有りとの判定が得られたら、これらを利用して歩行対象の移動方向を判定する。まず、方向判定手段12dは、時間計測手段12tを利用して各エリアについて感知ONとなった時間(判定時刻)txを取得して、外ONエリアから内ONエリアに移動したのか、内ONエリアから外ONエリアに移動したのかを判別する。そして、方向判定手段12dは、外ONエリアと内ONエリアとを結ぶ直線をつくり、この直線の方向を移動方向とする。
図3(A)は、感知エリアの配置状態を示す模式説明図、(B)〜(M)は、感知エリアが感知ONとなった状態を模式的に示す説明図、(N),(O)は、移動方向の判定に用いる範囲を説明する説明図である。図3(A)は、全ての感知エリアが存在比較値<存在閾値である場合を示し、図3(B)〜(M)は、感知ONである感知エリアのみ、符号(Sn)を付して示し、白抜き四角は、存在比較値<存在閾値である感知エリア(以下、この感知エリアをOFFエリアと呼ぶ)を示す。例えば、図3(C)に示す場合、感知エリアS11,S12はそれぞれ外ONエリア、内ONエリアである。このとき、移動方向は、各感知エリアの中心を結ぶ直線l11-12の方向とする。図3(D)に示す場合、感知エリアS11,S7はそれぞれ外ONエリア、内ONエリアであり、同様に各感知エリアの中心を結ぶ直線l11-7の方向を移動方向とする。図3(E)に示すように外ONエリアの近傍に複数の内ONエリアが存在する場合(ここでは、感知エリアS12,S17)、これら内ONエリアは一纏まりのグループ(一つの歩行対象)として扱い、各感知エリアの中心を結ぶ直線l12-17の中点と、外ONエリアの中心とを結ぶ直線l11-12-17の方向を移動方向とする。図3(F)に示すように複数の外ONエリアが接して存在する場合(ここでは、感知エリアS11,S16)、上記と同様にこれら外ONエリアは一纏まりのグループとして扱い、各感知エリアの中心を結ぶ直線l11-16の中点と、内ONエリアの中心とを結ぶ直線l11-16-12の方向を移動方向とする。図3(G)に示すように複数の外ONエリアが接して存在し、これら外ONエリアの近傍に複数の内ONエリアが存在する場合、上記と同様に外ONエリアの中心を結ぶ直線l11-16の中点と、内ONエリアの中心を結ぶ直線l7-12の中点とを結ぶ直線l11-16-7-12の方向を移動方向とする。
また、図3(H),(I)に示すように内ONエリアが存在せず、複数の外ONエリアが接して存在する場合、歩行対象は、監視範囲の外周縁に沿って移動していると考えられる。そこで、検知装置1は、この場合も移動方向を検出する。具体的には、時間計測手段12tにより、各外ONエリアの感知ONとなった時刻を調べ、最も早く感知ONとなった感知エリアと最も遅く感知ONとなった感知エリアとを検出すると共に、各感知エリアの中心を結ぶ直線l11-16,l22-23をつくる。そして、検出した時刻と、直線の向きとから移動方向を検出する。
対象判定手段12jは、移動方向が判定されたら、予め記憶手段12eに入力させておいた設定範囲と照合し、移動方向が設定範囲に含まれる場合、歩行対象が衝突回避対象であるとの判定を行う。
移動方向の設定範囲は、上述した直線の方向において、検出したい所望の方向を含むように設定する。検出したい方向としては、例えば、水平方向(図3(N)において左右方向、ここでは、道路200に沿った方向とする)、垂直方向(図3(O)において上下方向、ここでは道路201に沿った方向とする)のほか、水平方向の直線lh,又は垂直方向の直線lpに交差する複数の方向が考えられる。検知装置1は、図1に示す横断歩道220を横断すると考えられる歩行対象を衝突回避対象として判定し、横断歩道221を横断すると考えられる歩行対象を衝突回避対象としないものとする。このとき、衝突回避対象と考えられる移動方向は、道路200に沿って左側から右側に向かう方向である。このような方向として、図3(N)の矢印Iに示す水平方向の他、直線lhと90°未満の所定の角度で交差する直線の方向が妥当である。そこで、この実施形態では、直線lhに対して±60°(プラスは、直線lhから上方、マイナスは、直線lhから下方の角度とする)の範囲の傾きを有する直線の方向(但し、左側から右側に向かう方向)を設定範囲とする。つまり、図3(N)の矢印IIから矢印IIIまでの範囲に存在する方向を設定範囲とする。この実施形態では、右側から左側に移動する歩行対象は、横断歩道220を横断し終えたと考えられるため、衝突回避対象としない。また、垂直方向に移動する歩行対象は、横断歩道221を横断しようとするものと考えられるため、衝突回避対象としない。
歩行対象判定部12(図2)が衝突回避対象有りとの判定を得たら、出力部13により、この判定結果(判定情報)を車両側装置50に出力する。出力部13は、無線により送信可能なアンテナを具える。また、判定情報と共に、衝突回避対象がどこに存在するか(ここでは、横断歩道220近傍に存在して、横断歩道220を横断しようとしている)を示す位置情報も合わせて出力部13から出力する。
更に、検知装置1は、素子11、アンプやA/D変換器、歩行対象判定部12、出力部13といった電力需要部材に電力供給を行うソーラー電源14を具える。ソーラー電源14は、太陽光を受光するパネル部14pと、受光した光エネルギーを電気エネルギーに変換する変換部14cと、余剰の電気エネルギーを充電するバッテリ部14bとを具える。変換部14c及びバッテリ部14bと、需要部材との間を接続する配線には、切り換えスイッチを具え、このスイッチの切り換え操作により、需要部材は、変換部14c、又はバッテリ部14bから電力が供給される。バッテリ部14bの代わりに電気二重層コンデンサとしてもよい。
素子11、歩行対象判定部12、バッテリ部14b、変換部14cは、アルミニウム製の筐体1p(図1)に収納している。筐体1pにおいて素子11の検知方向前方には、ZnS製の赤外線透過レンズを配している。筐体1pは、いわゆるサイドファイア式に配置し、素子11は、検知対象の側方から赤外線を感知する。筐体1pを取り付けた支柱100には、出力部13,パネル部14pも取り付けている。
一方、車両側装置50は、車両C内に配置される車載装置であり、検知装置1の出力部13が出力した判定情報や、管制センターなどを介して発信される情報を入力する入力部50eと、取得した情報をドライバに提示するか否かを判定する情報処理部50pと、処理部50pの判定結果に基づき、情報を表示する表示部50mや情報に基づいて運転状態を制御する運転制動部50bに情報の提供を行う情報制御部50cとを具える。図1に示す道路200に沿って右側から左側に向かって走行する車両Cが交差点Crで左折する場合、横断歩道220を横断する衝突回避対象と接触する恐れがある。従って、車両側装置50は、検知装置1から衝突回避対象有りとの判定情報を取得した場合、ドライバ或いは車両に情報の提供を行う。具体的には、表示部50mにより視覚的又は聴覚的に情報を提示して、ドライバに注意を喚起させたり、ドライバが運転状態を変更したり(例えば、速度を低減したり)、或いは運転制動部50bにより車両自体が運転状態を変更するようにする。このように横断歩道220の近傍において検知装置1が衝突回避対象の存在を検出して出力し、出力された情報に基づき、ドライバや車両が種々の対処を行うことで、車両と歩行対象との衝突事故を低減できると推測される。車両Cが交差点Crを直進する場合、或いは右折する場合、横断歩道220を横断する衝突回避対象と接触する可能性が低いと考えられる。従って、車両側装置50は、検知装置1から衝突回避対象有りとの判定情報を取得してもドライバや車両に情報の提供を行わない構成とすることができる。このとき、車両Cは、円滑な交通が継続できると推測される。車両側装置50が判定情報を取得する前に車両Cの右左折、直進の決定がなされていない場合は、車両側装置50は、判定情報及び位置情報の提供を行う構成とすると、ドライバが注意し易いと考えられる。
検知装置1を用いて、衝突回避対象を検知する手順を具体的に説明する。図4は、本発明検知装置が衝突回避対象を検知する手順を示すフローチャートである。この検知装置は、一定の間隔ごとに赤外線素子が感知した赤外線に基づき、衝突回避対象の有無を判定する感知処理を行う。また、この検知装置は、全ての赤外線素子について並行して感知処理を行う。感知処理は、赤外線素子の作動により始まる。この検知装置は、処理開始直後、感知エリアごとに、背景レベル及び存在閾値の初期学習を行い(ステップS1)、背景レベル及び存在閾値がより実際の環境に即した値となるようにしている。歩行対象判定部の入力手段は、各赤外線素子から得られた起電力をアンプで増幅した後、A/D変換した入力レベル値を取得する(ステップS2)。次に、歩行対象判定部の比較値演算手段は、感知エリアごとに、背景レベルと入力レベル値とを用いた存在比較値を演算し、閾値演算手段は、存在閾値を演算する(ステップS3)。次に、歩行対象判定部の存在判定手段は、感知エリアごとに、演算された存在比較値と存在閾値とを比較し(ステップS4)、存在比較値が存在閾値以上か否かを判定し、存在比較値≧存在閾値である感知エリア、つまり感知ONである感知エリアをONエリア、存在比較値<存在閾値である感知エリア、つまり感知OFFである感知エリアをOFFエリアとする。この存在判定に用いた入力レベル値は、次の存在判定に用いる背景レベルの演算に利用する。そこで、歩行対象判定部の背景レベル演算手段は、存在判定が終わったら、判定に用いた入力レベル値を用いて、背景レベルを演算する(ステップS5)。
この実施形態では、ONエリアである感知エリアには、歩行対象が存在すると考える。そして、歩行対象判定部では、歩行対象のうち、監視範囲において外周側に配置される感知エリア(ここでは、外側感知エリアS1〜S6,S10,S11,S15,S16,S20〜S25)から、その内周側に配置される感知エリア(ここでは、内側感知エリアS7〜S9,S12,S14,S17〜S19)に移動する歩行対象を検出する。そこで、方向判定手段は、まず、外側感知エリアにおいてONエリア(外ONエリア)の有無を判定する(ステップS6)。外ONエリアが存在しない場合、例えば、図3(A)に示すように全ての感知エリアがOFFエリアであるときや、図3(L)に示すように内側感知エリアがONエリアであるときは、例えば、歩行対象が存在しなかったり、存在しても既に方向の判定が行われていると考えられる。従って、外ONエリアが存在しない場合、ステップS2以降を繰り返す。
外ONエリアが存在する場合、例えば、図3(B)〜(E)に示すように外ONエリアが一つの場合と、図3(F)〜(K)に示すように外ONエリアが複数ある場合とが考えられる。そこで、外ONエリアが存在する場合、方向判定手段は、複数か否かを判定し(ステップS7)、外ONエリアが一つの場合、内側感知エリアにおいてONエリア(内ONエリア)の有無を判定する(ステップS8)。図3(B)に示すように内ONエリアが存在しない場合、歩行対象が監視範囲に進入し始めたところ、或いは監視範囲から退出するところと考えられる。従って、内ONエリアが存在しない場合、ステップS2以降の手順を繰り返す。一方、内ONエリアが存在する場合、歩行対象は移動していると考えられる。そこで、方向判定手段は、外ONエリアと内ONエリアとを用いて移動方向を検出する(ステップS9)。方向判定手段は、時間計測手段を利用して、外ONエリアが感知ONとなった時刻toと、内ONエリアが感知ONとなった時刻tiとを取得し、いずれが先に感知ONとなったかを判定する。そして、方向判定手段は、上述したように内ONエリアと外ONエリアとを結ぶ直線と、取得した時刻の大小関係とから、方向を判定する。
なお、図3(E)に示すように内ONエリアが複数ある場合、内ONエリアの時刻には、全ての内ONエリアについて感知ONとなった時刻を取得し、その平均時間を用いたり、内ONエリアのうち、最も速く感知ONとなった時刻、或いは、最も遅く感知ONとなった時刻を利用することが挙げられる。また、内ONエリアが複数ある場合、各内ONエリアの中点を結ぶ直線と外ONエリアの中心とを結ぶ直線を移動方向の判定に利用する。更に、この実施形態は、内ONエリアの候補を内側感知エリアS7〜S9,S12,S14,S17〜S19としたが、外ONエリアの近傍のONエリアのみを内ONエリアの候補としてもよい。例えば、感知エリアS11が外ONエリアである場合、内ONエリアの候補を感知エリアS7,S12,S17とする。
また、上記説明では、計測した時刻txの数値が小さい方が先に感知ONになった時刻と想定しているが、タイマ手段が一定周期でカウントアップする場合、大小関係が逆転する、いわゆるオーバーフローすることが考えられる。例えば、先に感知ONになった時刻が98で、後に感知ONになった時刻が5という場合が考えられる。このような場合、オーバーフローを補正する処理を適宜行うように時間計測手段を構成しておく。例えば、計測した時刻差を求めて、所定値以上の差が生じている場合、オーバーフローであると判定し、計測した時刻に周期数:100を足し合わせるといった処理を行う。
移動方向が判定されたら、対象判定手段は、記憶手段から設定範囲を呼び出し、検出された移動方向が設定範囲に含まれる方向か否かを判定する(ステップS10)。設定範囲は、上述したように図3(N)に示す水平方向右向きの矢印Iに対して、±60°の範囲(矢印IIから矢印IIIまでの範囲)に含まれる方向とする。移動方向が設定範囲に含まれる場合、対象判定手段は、衝突回避対象有りと判定し(ステップS11)、出力部に判定情報を送る。出力部は、受け取った判定情報を出力する(ステップS12)。以下、歩行対象判定部は、ステップS2以降の手順を繰り返す。移動方向が設定範囲外である場合、歩行対象は衝突回避対象ではないと考えらるため、車両側装置に情報を送る必要がなく、歩行対象判定部は、ステップS2以降の手順を繰り返す。
外ONエリアが複数あるとき、図3(F),(G)に示すように内ONエリアが存在する場合、図3(J)に示すように内ONエリアが存在しない場合の他、図3(H),(I)のように外ONエリアが隣接して存在し、かつ内ONエリアが存在しない場合が考えられる。図3(H),(I)のような場合、歩行対象は、監視範囲の外周縁に沿って移動していると考えられる。そこで、方向判定手段は、外ONエリアが複数ある場合、隣接する外ONエリアの有無を判定し(ステップS13)、図3(J)のように外ONエリアが隣接せず、離散して存在する場合、各外ONエリアについて内ONエリアの有無を判定する(ステップS8)。このとき、内ONエリアの候補は、各外ONエリアの近傍に存在する感知エリアとする。以下、ステップS8以降の手順に従い、各外ONエリアについて、内ONエリアが存在する場合、移動方向の検出、衝突回避対象の有無判定を行う。
一方、隣接する外ONエリアがある場合、これら接する外ONエリアを一纏まりのグループとして考え、方向判定手段は、グループの近傍において、内ONエリアの有無を判定する(ステップS14)。このとき、内ONエリアの候補は、グループの近傍に配置される感知エリアとする。図3(K)に示すようにグループに属する感知エリア(ここでは、感知エリアS11,S16)と、グループに属さない外ONエリア(同感知エリアS3,S24)とが存在する場合、それぞれグループの近傍、グループ外の外ONエリアの近傍について、内ONエリアの有無を判定する。図3(K)に示す感知エリアS11,S16がつくるグループに対して、内ONエリアの候補は、感知エリアS7,S12,S17である。
内ONエリアがある場合、方向判定手段は、ステップS9以降の手順と同様にして外ONエリアと内ONエリアとを用いて移動方向を判定する(ステップS15)。図3(M)に示すようにグループに属する外ONエリア(ここでは、感知エリアS11,S16)と、グループに属さない外ONエリア(同感知エリアS24)とのそれぞれについて内ONエリアがある場合、それぞれについて移動方向の判定を行う。一方、内ONエリアがない場合、方向判定手段は、グループに属する外ONエリアを用いて、ステップS9以降の手順と同様にして移動方向を判定する(ステップS16)。つまり、各外ONエリアについて感知ONとなった時刻を取得し、その大小関係と、これら外ONエリアを結ぶ直線とから方向を判定する。
移動方向が判定されたら、対象判定手段は、ステップS10と同様に検出された移動方向が設定範囲に含まれるか否かを判定し(ステップS17)、移動方向が設定範囲に含まれる場合、対象判定手段は、衝突回避対象有りと判定する(ステップS18)。そして、出力部は、ステップS12と同様に判定情報を出力し(ステップS19)、歩行対象判定部は、ステップS2以降の手順を繰り返す。移動方向が設定範囲に含まれない場合、判定情報を出力せず、歩行対象判定部は、ステップS2以降の手順を繰り返す。
上述した手順により、衝突回避対象の判定情報が出力され、この情報を受け取った車両側装置は、情報の提供が必要であると判断した場合、車両内の表示部や運転制動部に命令して、車両のドライバが情報を認識できるようにしたり、運転状態の自動制御が行われるようにする。判定情報の提示方法としては、フロントガラスにスクリーニングしたり、カーナビゲーションシステムのディスプレイやオーディオ用ディスプレイに表示したり、アラームやスピーカで発音したり、シートベルトやシートを介してドライバに刺激を与えることが挙げられる。運転状態の制御としては、例えば、アンチロックブレーキングシステムを作動させて、減速させるなどが挙げられる。
以上説明したように本発明歩行対象検知装置は、設置作業性に優れると共に、衝突回避対象を精度よく検知することができる。特に、図1に示す検知装置1は、アクティブセンサを用いず、かつソーラー電源を具えることで、電源設備の設置による設置時間の延長を低減できる。また、検知装置1は、赤外線素子を用いることで、低コストにできることに加えて、設置に伴うコストも削減できる。更に、この実施例では、車両側装置50として、車載装置を利用していることで、ドライバに判定情報をより確実に認識させることができると考えられる。従って、本発明検知装置は、衝突事故の防止に寄与することができると予想される。
<変形例1-2 監視範囲に横断歩道を含む構成>
実施例1では、横断歩道近傍の歩道内に監視範囲を設ける例を説明した。監視範囲は、横断歩道を含むように設けてもよい。図5は、監視範囲の設置例を示す説明図であり、(A)は、監視範囲の一部に横断歩道を含む例、(B)は、監視範囲を横断歩道上に設ける例、(C)は、対向する歩道と、これらの歩道に挟まれる横断歩道と含むように監視範囲を設ける例を示す。図5(A)に示すように、監視範囲M及び感知エリアSが歩道210に接する横断歩道220の一部を含むように検知装置を配置することで、横断歩道220を横断しようとする歩行対象をより確実に検知できる。
また、図5(B)に示すように横断歩道220上に監視範囲Mを設ける場合、検知装置は、歩道210から歩道213に移動する歩行対象だけでなく、歩道213から歩道210に移動する歩行対象をも検知することができる。つまり、この検知装置は、横断歩道210を移動する双方向の歩行対象を検知することができる。また、この検知装置は、横断歩道220を横断中の歩行対象(横断歩行対象)を確実に検知できる。この監視範囲に存在する歩行対象は、衝突回避対象である可能性が極めて高いことから、検知装置は、このような歩行対象を検知して車両側装置に出力することで、衝突事故の防止に大いに貢献すると考えられる。図5(B)では、横断歩道220の一部を覆うように監視範囲Mを設けているが、横断歩道220の全部を覆うように監視範囲を設けてもよい。このように横断歩道220上に監視範囲Mを設ける場合、移動方向の設定範囲は、図3(N)に示した水平方向右側だけでなく、左側も含むようにする。
更に、図5(C)に示すように横断歩道220全域と、この横断歩道220を挟むように対向して配置される歩道210,213の一部を含むように監視範囲Mを設ける場合、検知装置は、横断歩道220を横断しようとしている歩行対象(横断予定歩行対象)、及び横断歩道220を横断中の歩行対象(横断歩行対象)の双方を検知することができる。この監視範囲に存在する歩行対象も、衝突回避対象である可能性が極めて高いことから、検知装置は、このような歩行対象を検知して車両側装置に出力することで、衝突事故の防止に大いに寄与できると考えられる。また、この検知装置は、横断歩道220を横断中の歩行対象だけでなく、横断歩道220を渡り始めようとする歩行対象をも検知できるため、車両のドライバにより早い時期から歩行対象の存在を認識させることができると推測される。更に、この検知装置は、横断歩道220を渡り終えようとしている歩行対象を衝突回避対象として検知できることから、このような歩行対象の存在を車両のドライバに認識させることで、衝突事故の可能性を低減できると考えられる。
<変形例1-3 車両側装置が車両外に配置されている構成>
実施例1では、車両側装置として車両内に配置される車載装置を説明したが、車両側装置は、車両外に配置される外部装置でもよい。例えば、図1の道路200において検知装置1よりも上流側(図1において右側)に、検知装置1から出力された判定情報を入力可能な入力部を具える装置、例えば、入力部内蔵の電光掲示板やスピーカを配置させ、これらの装置を利用して、車両のドライバが判定情報を認識できるようにすることができる。これら電光掲示板などは、道路200を右側から左側に走行する車両のドライバに対して表示内容や音声が認識できるように配置する。このような車両側装置を利用することで、車載装置を具えていない車両のドライバにも、衝突回避対象が存在することを認識させることができ、衝突事故の防止に寄与すると推測される。
<変形例1-4 移動方向の設定範囲の変更>
実施例1では、横断歩道220を横断しようとする歩行対象を検出する場合を説明したが、横断歩道221を横断しようとする歩行対象を検出する構成とすることができる。この場合、移動方向の設定範囲を変更する。具体的には、図3(O)に示すように垂直方向上側の方向(矢印IVで示す方向)に対して±60°の範囲の傾きを有する直線の方向、つまり、矢印Vから矢印Vまでの範囲に含まれる方向とすることが挙げられる。
<変形例1-5 検知装置を複数具える構成>
実施例1では、交差点Crに対して検知装置1を一つ配置し、歩道210のみに監視範囲Mを設ける構成を説明したが、同様の構成の検知装置を複数用意し、歩道211〜213にも監視範囲を設けて、衝突回避対象を検知できるようにしてもよい。移動方向の設定範囲は、所望の方向に適宜設定する。また、一つの交差点Crに複数の検知装置を配置する場合、各検知装置は、どの横断歩道に衝突回避対象が存在するかがわかるような位置情報を出力する構成とする。或いは、各検知装置の識別情報を出力し、車両側装置は、識別情報によりどの横断歩道に衝突回避対象が存在するかが判別できる構成とする。このような構成により、車両のドライバがどの横断歩道に注意すればよいか認識し易いと考えられる。
<変形例1-6 感知エリアの数の変更>
実施例1では、感知エリアを5×5の25個設ける構成について説明したが、これよりも少なくしてもよいし、多くしてもよい。多くする場合、内側感知エリアよりも更に内周側に配置される感知エリアが多数存在することが考えられる。このような場合、内ONエリアが存在するとき、更に、より内周側に配置される感知エリアについても、同様にONエリアか否かを判定し、ONエリアが存在するときにこのより内側のONエリアと外ONエリアとを用いて移動方向を判定するように構成すると、歩行対象の移動方向がより精度よく検知することができる。
(実施例2 歩行対象の大きさを求める構成)
実施例1では、移動方向を検出することで、衝突回避対象であるか否かを判定する構成を説明した。この実施形態では、更に、歩行対象の大きさを求める構成について説明する。図6(A)は、歩行対象の大きさと感知エリアの大きさを表わす説明図、(B)は、感知エリアのON/OFFグラフ、(C),(D)は、本発明検知装置が歩行対象の大きさを検出して出力するまでの手順を示すフローチャートである。この検知装置の基本的構成は、実施例1に示す検知装置1と同様であり、異なる点は、歩行対象の大きさを演算する大きさ演算部を具える点にある。ここでは、歩行対象の大きさを求める手順について説明し、その他の構成については実施例1と同様であるため、詳細な説明を省略する。また、ここでは、歩行対象Pが感知エリアS11から感知エリアS12に移動する場合を例に説明する。
歩行対象Pの移動方向における大きさをx、各感知エリアの移動方向における大きさをlとする。また、図6(B)に示すように感知エリアS11は、時刻t0のとき、感知ONとなり、時刻tnで感知OFFとなり、感知エリアS12は、時刻tmで感知ONとなるとする。つまり、感知エリアS11は、時刻t0〜tnの間において外ONエリアと判定され、感知エリアS12は、時刻tm以降で内ONエリアと判定される。従って、時刻tm〜tnの間、移動方向が判定される。
一方、感知エリアS11が連続して感知ONとなっている感知ON時間T(時刻t0〜tn)の間に歩行対象が移動する距離は、感知エリアS11に進入した後、感知エリアS11から完全に退出するまでの距離に相当することから、(x+l)で表わされる。他方、感知エリアS11から感知エリアS12に移動し始めた移行時間t(時刻t0〜tm)の間に歩行対象が移動する移動距離は、直線l11-12の長さ(ここではl)で表わされる。また、歩行対象の速度は、(x+l)/T=l/tで表わされることから、xを求められる。そこで、この検知装置では、歩行対象の移動方向と大きさとの双方を検出する構成とする。
具体的な手順としては、まず、方向判定手段は、図4に示す手順と同様にして移動方向の検出を行い、対象判定手段は、移動方向が設定範囲に含まれるか否かを判定する(ステップS20)。移動方向が設定範囲外の場合、ステップS2以降の手順を繰り返し、設定範囲内の場合、移動方向を一時的に記憶手段に保存する(ステップS21)。以下、ステップS2以降の手順を繰り返す。
一方、存在判定手段は、感知エリアごとに存在比較値と存在閾値とを比較し(ステップS30)、存在比較値≧存在閾値のとき(感知ONのとき)、方向判定手段は、ステップS6以降の手順を繰り返し、移動方向の判定を行う。感知ON時間Tは、前回の処理の際、存在比較値≧存在閾値であり、今回の処理で存在比較値<存在閾値のとき、求めることができる。つまり、時刻tn+1以降において感知ON時間Tが求められる。また、前回の処理で移動方向が設定範囲内の方向と判定されている際に歩行対象の大きさを求めることが望まれる。従って、歩行対象判定部は、存在比較値<存在閾値のとき、各OFFエリアについて、前回の処理で設定範囲内の方向であるとの判定に用いられたか否かを判定する(ステップS31)。前回の処理の際、歩行対象がいないときや歩行対象がいても移動していないなどのとき、OFFエリアは、前回の処理で移動方向の判定に用いられない。従って、この場合、歩行対象の大きさを求める必要がないので、ステップS2以降の手順を繰り返す。OFFエリアが前回の処理で設定範囲内の方向との判定がなされている場合、この感知エリアに存在する歩行対象は、衝突回避対象である可能性が高いと考えられる。そこで、大きさ演算部の演算手段は、時間計測手段を利用して感知ON時間Tと、移行時間tとを取得すると共に、移動距離lを演算し、これらを用いて大きさxを演算する(ステップS32)。次に、大きさ演算部の比較手段は、大きさ演算部の記憶手段に予め入力されている設定値α,βを呼び出し、演算された大きさxがα>x>βを満たすか否かを判定する(ステップS33)。ここでは、β=10cm、α=200cmとする。α>x>βを満たさない場合、歩行対象と思われていたものは、ノイズと判断し、ステップS2以降の手順を繰り返す。α>x>βを満たす場合、対象判定手段は、設定範囲に含まれる移動方向が記憶されていることを確認し、この移動方向と大きさとの双方により、歩行対象は衝突回避対象であると判定し(ステップS34)、出力部により判定情報を出力する(ステップS35)。以下、ステップS2以降の手順を繰り返す。
このように大きさをも考慮する検知装置では、特に、衝突回避対象の誤認を低減し、検知精度を高められる。この構成は、後述する実施例3についても適用することができる。
なお、ここでは、移動方向が設定範囲に含まれるか否かを判定してから歩行対象の大きさを判定する場合を説明したが、移動方向を判定してから歩行対象の大きさを判定し、歩行対象の大きさが所定の範囲内であるとき、移動方向が設定範囲に含まれるか否かを判定する構成してもよい。また、歩行対象の大きさが所定の範囲内であるとき、移動方向を判定し、移動方向が設定範囲に含まれるか否かを判定するように構成してもよい。
(実施例3 判定情報以外の情報を合わせて出力する構成)
実施例1では、車両側装置に主として判定情報を出力する構成を説明した。ここでは、判定情報以外の情報も出力可能な検知装置について説明する。
[交通信号灯器の制御内容を出力する構成]
図7は、信号制御装置から制御内容を入力可能な構成を具える本発明検知装置と、信号制御装置とを具える本発明衝突事故防止支援システムの機能ブロック図である。この検知装置2の基本的構成は、実施例1の検知装置1と同様であり、この検知装置2の特徴とするところは、検知装置2が配置されている交差点Cr(図1)に設置される交通信号灯器110〜113,120〜123を制御する信号制御装置21から、制御内容に関する情報(制御情報)を入力可能であり、入力した制御情報と判定情報とを車両側装置50に出力する点にある。以下、この点を中心に説明し、その他の構成については実施例1と同様であるため、詳細な説明を省略する。
検知装置2は、検知装置1と同様に、複数の赤外線素子11と、これら素子11からの入力レベル値を用いて衝突回避対象の有無を判定する歩行対象判定部12と、得られた判定情報を出力する出力部13と、電力供給源としてソーラー電源14とを具える。この検知装置2は、図1に示す検知装置1と同様に交差点Cr近傍の歩道210に設けられた監視範囲Mに感知エリアSが形成されるように支柱100に取り付けられ、監視範囲Mに存在する衝突回避対象の有無を判定し、判定情報を出力する。更に、検知装置2は、交差点Crに設置される信号灯器110〜113,120〜123の制御を行う信号制御装置21からの制御情報を入力可能な情報入力部15を具え、入力された制御情報を出力部13により車両側装置50に出力可能な構成である。
一方、信号制御装置21は、管制センターの中央処理装置などから配信された情報などを入力する入力部21eと、入力された情報に基づいて信号灯器110〜113,120〜123を制御する制御部21cと、設定された制御内容(灯色の順序と各灯色の表示時間とを組み合わせた灯色配列)や管制センターなどからの情報を記憶する記憶部21mと、制御部21cからの命令に基づき信号灯器110〜113,120〜123の灯色を切り換える開閉部21sと、灯色の表示時間を計測する時計部21tと、信号灯器の電源(図示せず)とを具える。その他、RAM(図示せず)などを具える。更に、この信号制御装置21は、制御内容に関する情報(制御情報)を上記検知装置2に出力する情報出力部21oを具える。制御部21cなどは、筐体に収納して支柱101(図1)に取り付けている。入力部21e及び情報出力部21oは、無線により送信可能なアンテナ(図示せず)を具えており、このアンテナも支柱101に取り付けている。信号制御装置21の情報出力部21oは、制御情報を随時出力し、検知装置2の情報入力部15も随時入力可能としている。出力する制御情報としては、車両用の信号灯器の情報、例えば、現在の灯色や、現在の灯色の残存時間(より具体的には、青ステップから赤ステップ(或いは黄ステップ)に変わるまでの時間)が挙げられる。なお、車両の速度などによってドライバが情報を認識するタイミングが異なるため、残存時間が異なることが考えられる。従って、ある程度余裕分を考慮した時間を出力するように信号制御装置21を構成することができる。
このように判定情報に加えて、信号灯器の制御情報をも出力する構成とすることで、車両のドライバは、早めに灯色を認識できる。例えば、衝突回避対象が存在するときに、これから進入しようとする交差点の信号灯器の灯色がもうすぐ赤ステップになることがわかれば、車両のドライバは、より早めに減速するといった対処をとると考えられる。従って、判定情報と共に信号灯器の制御情報をも出力する構成は、衝突事故の防止に非常に有用であると推測される。
[車両が衝突回避対象に接触する予想時間を出力する構成]
図8(A)は、予想時間情報を出力可能な構成を具える本発明検知装置と、車両の速度情報を取得可能な車両検知装置とを交差点に配置した状態を示す概略構成図、(B)は、これら検知装置の機能ブロック図である。歩行対象検知装置3の基本的構成は、実施例1の検知装置1と同様であり、検知装置3の特徴とするところは、検知装置3が配置される交差点Crをつくる道路200に設置される車両検知装置30から、車両検知装置30が検知した車両の速度に関する情報(速度情報)を入手可能であり、入手した速度情報を利用して、当該車両が衝突回避対象と接触するまでの予想時間を演算し、この予想時間情報と判定情報とを出力する点にある。以下、この点を中心に説明し、その他の構成については実施例1と同様であるため、詳細な説明を省略する。
検知装置3は、検知装置1と同様に、複数の赤外線素子11と、これら素子11からの入力レベル値を用いて衝突回避対象の有無を判定する歩行対象判定部12と、得られた判定情報を出力する出力部13と、電力供給源としてソーラー電源14とを具える。この検知装置3は、図8(A)に示すように、検知装置1と同様に交差点Cr近傍の歩道210に設けられた監視範囲Mに感知エリアSが形成されるように支柱100に取り付けられ、監視範囲Mに存在する衝突回避対象の有無を判定し、判定情報を出力する。更に、検知装置3は、交差点Crをつくる道路200際に設置されて、道路200を走行する車両Cを検知する車両検知装置30からの速度情報を入力可能な情報入力部15と、速度情報に基づき、車両が衝突回避対象と接触するまでの予想時間を演算する予想時間演算部16とを具える。そして、検知装置3は、演算された予想時間情報を出力部13により車両側装置50に出力可能な構成である。
一方、車両検知装置30は、公知のものであり、ここでは、二つのサーモパイル素子(図示せず)と、両素子から得られた入力レベル値を用いて車両の有無を判定する車両有無判定部(図示せず)と、得られた入力レベル値を用いて車両の速度を演算する速度演算部30sと、得られた速度に関する情報(速度情報)を出力する情報出力部30oとを具える。車両検知装置30は、歩行対象検知装置3の上流側(図8(A)において右側)から下流側(同左側)に向かって走行する車両Cを検知するものであり、各素子に基づく感知エリアが道路200上において車線方向に並んで形成されるように、歩道213に立てられた支柱104に取り付けられている。車両検知装置30は、歩行対象検知装置3からみて上流側に配置される。この車両検知装置30は、車両の有無を検知すると共に、車両が存在した際、入力レベル値の取得時刻(或いは車両有りとの判定が得られた時刻)と、二つの感知エリア間の距離とを用いて車両の速度を速度演算部30sにより演算する。そして、車両検知装置30は、演算された車両の速度を情報出力部30oにより歩行対象検知装置3に出力する。車両検知装置30が検出する車両Cが交差点Crにおいて左折する場合、歩行対象検知装置3が検出した衝突回避対象(道路201上の横断歩道220を横断する歩行対象)と接触する恐れがある。そこで、歩行対象検知装置3よりも上流側に設置した車両検知装置3が車両Cを検出した場合、衝突回避対象の存在と共に、この車両Cがあとどのぐらいの時間で衝突回避対象と接触する可能性があるのかをドライバが確認できるように、検知装置3は、判定情報と共に予想時間情報を出力する。
予想時間の演算は、以下のように行う。予想時間演算部は、予め記憶手段(図示せず)に入力した車両から衝突回避対象までの距離L(ここでは、車両検知装置3から横断歩道220の中心までの距離としている)を呼び出し、この距離Lと取得した車両の速度vとから、車両検知装置30が検知した車両Cが衝突回避対象に接触すると考えられる時間、つまり、車両が横断歩道220に進入するまでの時間ta=L/vを演算する。ここで、歩行対象検知装置3が車両検知装置30から速度情報を受け取ってから時間taを演算し、出力するまでに時間tpだけかかるとすると、この時間tpの間、車両Cは、衝突回避対象に近付く方向に移動する、具体的には、距離L1だけ移動すると考えられる。そこで、演算した時間taから車両側装置50に出力するまでの処理時間tpを引いた時間(ta-tp)を予想時間とする。
次に、歩行対象検知装置3が予想時間情報を出力するまでの手順を説明する。図9は、本発明検知装置が予想時間を検出して出力するまでの手順を示すフローチャートである。まず、方向判定手段は、図4に示す手順と同様にして移動方向の検出を行い、対象判定手段は、移動方向が設定範囲に含まれるか否かを判定する(ステップS40)。移動方向が設定範囲に含まれない場合、ステップS2以降の手順を繰り返し、含まれる場合、対象判定手段は、衝突回避対象有りと判定し、この判定結果を一時的に記憶手段に保存する(ステップS41)。一方、情報入力部は、車両検知装置30からの速度情報の有無を判定し(ステップS42)、速度情報があれば入力する。速度情報が入力されたら、予想時間演算部は、上述したように予想時間(ta-tp)の演算を行う(ステップS43)。そして、出力部は、記憶手段から判定結果を呼び出し、呼び出した判定結果と、予想時間とを車両側装置に出力する(ステップS44)。以下、歩行対象判定部は、ステップS2以降の手順を繰り返し、情報入力部、予想時間演算部は、上述のステップS42以降の手順を繰り返す。一方、速度情報が入力されていない場合、出力部は、記憶手段から判定結果を呼び出し、判定情報のみを出力し(ステップS45)、以下、ステップS2以降の手順を繰り返す。速度情報が入力されていない場合、判定情報を受け取る車両が存在しないと考えられるが、判定情報を出力する間に車両が走行してくることが考えられるため、判定情報を出力する構成とする。速度情報が入力されていない場合、判定情報を出力しない構成としてもよい。
ここでは、衝突回避対象が存在するときに速度情報の有無を判定し、速度情報が入力されている場合、判定情報と予想時間情報とを出力する構成を説明した。衝突回避対象が存在しないときに速度情報が入力されたら、時間taを演算しておき、この演算後に衝突回避対象有りとの判定が得られたら、予想時間を演算して、判定情報と予想時間情報とを出力する構成としてもよい。具体的には、対象判定手段が衝突回避対象無しと判定したとき、情報入力部は、車両検知装置30からの速度情報の有無を判定し、速度情報があれば入力する。速度情報が入力されたら、予想時間演算部は、時間ta=L/vを演算する。時間taを演算後、ta時間経過するまでの間に衝突回避対象有りとの判定が得られたら、予想時間演算部は、時間taを演算後この判定が得られるまでの時間tjを用いて、予想時間(ta-tp-tj)を演算する。時間tjは、例えば、時刻計測手段により計測する。
このように判定情報に加えて、車両が衝突回避対象と接触する予想時間情報をも出力する構成とすることで、車両のドライバは、具体的な時間が認識できることから、より早めに減速するなどの対処を行い易いと考えられる。従って、判定情報と共に予想時間情報をも出力する構成は、衝突事故の防止に非常に有用であると推測される。
なお、歩行対象検知装置3の情報入力部15は、先に説明した信号制御装置からの制御情報も入力可能とし、検知装置3は、判定情報、予想時間情報、制御情報を出力する構成としてもよい。