JP4797235B2 - 含フッ素エラストマー - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、−40℃レベルの耐寒性を有する加硫成形体を与え得る含フッ素エラストマーおよび加硫用組成物、さらにはこの加硫用組成物を加硫成形して得られる自動車エンジンの燃料系シール材や化学プラント用の各種シール材として好適な加硫成形体に関する。
【0002】
【従来の技術】
自動車エンジンの燃料系統や化学プラントでは−30℃を下回る低温環境下での動作や稼働が要求される場合がある。たとえば自動車エンジンの燃料系統では、近年のエンジンの直噴射化に伴いガソリン噴射圧力が10MPaにもなるものが開発されている。この場合、燃料系統の配管などに使用されているシール材にかかる圧力が大きくなり、こうした高圧にも耐え得るシール材が開発されている。
【0003】
この種のシール材には、耐薬品性や耐熱性などの点から通常フッ素ゴム(エラストマー)が用いられているが、やはりゴムであるが故に低温でのシール性に劣る。そこで低温シール性(耐寒性)が改良されたフッ素ゴムとしてフッ化ビニリデン(VdF)とパーフルオロ(メチルビニルエーテル)(PMVE)との共重合体、またはさらにテトラフルオロエチレン(TFE)やヘキサフルオロプロピレン(HFP)、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)、エチレンなどを共重合した含フッ素エラストマーが使用されている(特開平8−157539号公報、特開昭50−109280号公報、特開平3−52907号公報、特開平3−221510号公報、特開平7−18027号公報、特開平11−35637号公報、特開平11−80271号公報など)。これらの含フッ素エラストマーはPMVEの存在によりガラス転移温度(Tg)が下がり、耐寒性が改善されているものである。
【0004】
しかし、VdF−PMVE系含フッ素エラストマーではせいぜい−30℃程度の耐寒性(Tgが−15〜−33℃程度)しか奏されず、上記のより厳しい低温環境では必ずしも充分なシール性能は得られていない。
【0005】
そこで−40℃レベル以下の低温環境下での耐寒性を得るため、たとえば特開昭64−52733号公報では、特殊なパーフルオロポリエーテルを側鎖に有するトリフルオロビニルエーテルモノマーを共重合し、−60℃という耐寒性(Tg=−38.5〜−88℃)を達成している。しかし、その特殊なモノマーは乳化重合性が低いうえ、モノマーの製造コストが極めて高く、得られるエラストマーおよび加硫物も高価となる。
【0006】
また、特開平11−349647号公報では、パーフルオロポリエーテル鎖の両末端にヨウ素含有基をもつ化合物の存在下にVdFとTFEとPMVEを共重合した含フッ素エラストマーが耐寒性に優れたもの(TR試験におけるTR10=−35〜−40℃)であることが開示されている。しかし含ヨウ素パーフルオロポリエーテル化合物は高価であり、しかも量的にも多く必要とされているため、得られるエラストマーおよび加硫物が高価となる。
【0007】
さらにWO00/12574号パンフレットには、(OCF2)や(OCF2CF2)単位を含む耐寒性含フッ素エラストマー(Tg=−70〜−119℃)が開示されているが、(OCF2)や(OCF2CF2)単位を与えるモノマーの製造工程が複雑であり、得られるエラストマーや加硫物を高価なものとしている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、耐薬品性を低下させずに−40℃レベルの耐寒性を達成し得る含フッ素エラストマーを従来よりも低コストで提供するべく、研究を重ねた結果、パーフルオロ(2−メトキシプロピルビニルエーテル)(PMPVE)がPMVEと同様の3工程の合成法で製造でき、しかもTg低下作用が大きいことを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
【課題を解決するための手段】
すなわち本発明は、VdF50〜85モル%およびPMPVE15〜50モル%の共重合組成からなり、数平均分子量が8000〜500000で重量平均分子量が20000〜1000000である含フッ素エラストマーに関する。
【0010】
また、VdF20〜85モル%、PMPVE15〜50モル%、およびTFE、PMVEおよびエチレンよりなる群から選ばれる少なくとも1種を50モル%以下含む共重合組成からなり、数平均分子量が8000〜500000で重量平均分子量が20000〜1000000である含フッ素エラストマーにも関する。
【0011】
かかる含フッ素エラストマーは、たとえば架橋点としてヨウ素原子を0.005〜1.0重量%含むものが加硫性含フッ素エラストマーとして好ましい。
【0012】
これらの含フッ素エラストマーは、VdFおよびPMPVE、多元共重合体の場合はさらにTFE、PMVEおよびエチレンよりなる群から選ばれる少なくとも1種を好ましくは40℃以下の重合温度でラジカル共重合することにより製造できる。ジヨウ素化合物の存在下にラジカル共重合を行なえば、加硫性のヨウ素含有含フッ素エラストマーが製造できる。
【0013】
本発明はまた、前記ヨウ素含有含フッ素エラストマーと、有機過酸化物0.1〜10PHR(エラストマー100重量部に対する重量部。以下同様)と多官能不飽和化合物0.1〜10PHRとからなる加硫用含フッ素エラストマー組成物にも関する。
【0014】
さらに本発明は、この加硫用含フッ素エラストマー組成物を加硫成形して得られる加硫成形体、特に自動車エンジンの燃料系シール材にも関する。
【0015】
【発明の実施の形態】
本発明の含フッ素エラストマーは、VdFとPMPVEを必須の構成単位とする。PMPVEは式:
CF2=CFOCF2CF(CF3)OCF3
で示されるモノマーであり、PMVEと同様に原料COF2から3工程で製造できる。したがって低コストでの製造が可能である。
【0016】
VdF単位の含有量は二元共重合体の場合50〜85モル%、好ましくは55〜80モル%、さらに好ましくは60〜75モル%である。VdF単位が少なくなると共重合性が極端にわるくなる傾向にあり、多くなるとエラストマー性が得られにくくなる。PMPVE単位の含有量は15〜50モル%、好ましくは20〜45モル%、さらに好ましくは25〜40モル%である。PMPVE単位が少なくなると得られるエラストマーのTg低下効果が小さくなって目的とする耐寒性が不充分となる傾向にあり、多くなるとコスト高になる。
【0017】
本発明のVdF−PMPVE二元共重合体からなるエラストマーはGPCで測定した数平均分子量が8000〜500000、好ましくは20000〜300000のものであり、重量平均分子量では20000〜1000000、好ましくは40000〜600000のものである。
【0018】
GPCによる平均分子量の測定はつぎの条件で行なう。
【0019】
本発明では、VdFとPMPVEに他のコモノマーを共重合してもよい。他のコモノマーとしては、たとえばTFE、PMVE、エチレンがあげられ、50モル%まで、好ましくは20モル%まで、特に1〜15モル%共重合してもよい。その場合、VdFは20〜85モル%、好ましくは60〜80モル%であり、PMPVEは15〜50モル%、好ましくは15〜30モル%である。コモノマーとしては耐寒性や耐溶剤性に優れる点から特にTFEが好ましい。本発明のVdF−PMPVE−他のコモノマーの多元共重合体からなる含フッ素エラストマーはGPCで測定した数平均分子量が8000〜500000、好ましくは20000〜300000のものであり、重量平均分子量では20000〜1000000、好ましくは40000〜600000のものである。
【0020】
さらに要すれば、架橋点を付与する単位を与える官能基含有モノマーを共重合してもよい。官能基含有コモノマーとしては、たとえばヨウ素含有モノマー、臭素含有モノマー、ニトリル基含有モノマー、2−ヒドロペンタフルオロプロペンなどがあげられる。これらのうちヨウ素含有モノマー、特にヨウ素含有含フッ素モノマーが適当である。具体例としては、特開平8−157539号公報に記載されている式:
【0021】
【化1】
【0022】
(式中、mは1〜5の整数、nは0〜3の整数である)で示されるモノマー、またはCH2=CH(CF2)6CH2CH2Iに代表されるヨウ素含有モノマー(特開平7−316234号公報参照)が好ましい。共重合割合は3モル%以下、好ましくは0.005〜1.5モル%である。
【0023】
本発明の含フッ素エラストマーはまた、上記のモノマーをジヨウ素化合物の存在下にラジカル共重合することにより、架橋点を導入することができ、加硫が付与できる。ジヨウ素化合物により共重合体中に導入されるヨウ素量は、エラストマー全重量に対して、0.05〜1.0重量%(重合中に添加したジヨウ素化合物の重量より計算するものとする)とするのが好ましい。エラストマー中に存在するジヨウ素化合物量は、特開昭53−125491号に記載されているように、ジヨウ素化合物が連鎖移動剤として働くために、その分子量の決定に重要な意味をもち、さらに導入されたヨウ素は架橋点としても機能する。したがってヨウ素量がエラストマー重量に対して0.05重量%未満の場合、得られるエラストマーの分子量が大きくなりすぎ、加硫時の流動性が損なわれる結果、架橋密度が低くなり、得られる成形体が充分な破断強度を発現できない。また、1.0重量%を超える場合は分子量が低くなりすぎ、ゴム練り作業に支障をきたす。
【0024】
かかるジヨウ素化合物の代表例としては、たとえば1,3−ジヨードパーフルオロプロパン、1,4−ジヨードパーフルオロブタン、1,3−ジヨード−2−クロロ−パーフルオロプロパン、1,5−ジヨード−2,4−ジクロロパーフルオロペンタン、1,6−ジヨードパーフルオロヘキサン、1,8−ジヨードパーフルオロオクタン、1,12−ジヨードパーフルオロドデカン及び1,16−ジヨードパーフルオロヘキサデカン、ジヨードメタン、1,2−ジヨードエタンがあげられ、これらは単独で使用してもよく、相互に組み合わせて使用することもできる。好ましいジヨウ素化合物としては、1,4−ジヨードパーフルオロブタンがあげられる。
【0025】
本発明のエラストマーは、たとえば実質的に無酸素下で、水媒体中にて、要すればジヨウ素化合物の存在下に、VdF、PMPVE、さらに要すればTFE、PMVE、エチレン、あるいはさらにヨウ素含有フッ素化ビニルエーテルを加圧下で撹拌をしながらラジカル乳化重合を行うことにより製造できる。
【0026】
ラジカル重合に使用するラジカル重合用開始剤は、従来から含フッ素エラストマーの重合に使用されているものが使用できる。これら開始剤には有機・無機の過酸化物ならびにアゾ化合物がある。典型的な開始剤として過硫酸塩類、過酸化カーボネート類、過酸化エステル類などがあり、好ましい開始剤として過硫酸アンモニウム(APS)があげられる。APSはそれ単独でも使用してもよく、またサルファイト類、亜硫酸塩類のような還元剤と組み合わせて使用することもできる。重合時に添加される開始剤量は、できるだけ少量のほうが生成するエラストマーの物性面(たとえば圧縮永久歪み、引張強度など)から好ましい。ただし著しく少量の場合、重合速度の低下により生産性を悪化させる要因となるため調整が必要である。通常はジヨウ素化合物1モルに対して0.05〜0.5モル用いればよい。
【0027】
本発明におけるラジカル重合は懸濁重合法、乳化重合法、溶液重合法などで実施できるが、特に懸濁重合法または乳化重合法により行なうのが好ましい。乳化重合の場合、使用される乳化剤としては広範囲のものが使用可能である。特に重合中に生ずる乳化剤分子への連鎖移動反応を抑制する観点から、フルオロカーボン鎖またはフルオロポリエーテル鎖を有するカルボン酸の塩類が望ましい。乳化剤の具体例としては
【0028】
【化2】
【0029】
をあげることができる。乳化剤の使用量は、添加された水の約0.05〜10重量%が好ましく、特に0.1〜1.0重量%が好ましい。
【0030】
また、PMPVEの乳化を助けるために、補助剤として5フッ化プロパノール、2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロパノール、2,2,3,3−テトラフルオロプロパノールなどの含フッ素アルコールを加えてもよいし、マイクロフルイダイズ・インターナショナル社製のマイクロフルイダイズM−210E/Hモデル、(株)日本精機製作所製のゴーリンホモジナイザーなどの高圧式のホモジナイザーを使用して強制的に乳化してもよい。
【0031】
重合温度は40℃以下が好ましい。40℃よりも高いと得られる生成物が低分子量となり、液状を呈することがあるなどエラストマー性が得られない。なお、使用する開始剤の種類と還元剤の使用の有無により、具体的に決定される。一般的には、0〜40℃の温度が採用されるが、重合開始剤としてAPSと亜硫酸ナトリウムを採用する場合、5〜30℃の温度が好ましい。
【0032】
重合圧力としては、広い範囲が採用可能であるが、一般的には、10MPa以下、好ましくは2MPa以下が採用される。重合圧力は高い程重合速度は大きくなるため、生産性の向上の観点から1.0MPa以上であることが望ましい。ただ、液状モノマーであるPMPVEの共重合量を大きくするためには、低圧領域(0.2〜1・0MPa)にすることが好ましい。
【0033】
重合時間は共重合モノマーの種類などによって異なるが、生産性の観点から3〜50時間が適当である。
【0034】
重合終了後は定法により凝析・乾燥工程を経てエラストマーを回収する。その際、他のモノマーに比べて高価な未反応PMPVEを回収するために、減圧乾燥処理を行なってもよい。
【0035】
かくして得られる本発明の加硫性の含フッ素エラストマーは、種々の架橋源により架橋し、硬化(加硫)させて加硫物とすることができる。架橋源としては、放射線(α線、β線、γ線、電子線、X線など)、紫外線などの高エネルギー電磁波も用いることができるが、好ましくは有機過酸化物が用いられる。
【0036】
したがって、本発明は前記の新規加硫性含フッ素エラストマーと有機過酸化物と多官能不飽和化合物からなる加硫用組成物にも関する。
【0037】
有機過酸化物としては、一般には熱や酸化還元系の存在で容易にパーオキシラジカルを発生するものがよく、たとえば1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,5,5−トリメチルシクロヘキサン、2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジヒドロパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイドα,α−ビス(t−ブチルパーオキシ)−p−ジイソプロピルベンゼン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)−ヘキシン−3、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシベンゼン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルパーオキシマレイン酸、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネートなどを例示することができる。特に好ましいものはジアルキルタイプのものである。その中でも、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ターシャリーブチルパーオキシ)ヘキサンが特に好ましい。一般に活性−O−O−の量、分解温度などを考慮して有機過酸化物の種類および使用量が選定される。使用量は、0.05〜10PHR、好ましくは0.1〜10PHR、より好ましくは1.0〜5PHRである。
【0038】
また、有機過酸化物を用いるときは、架橋促進剤として多官能不飽和化合物を併用することにより適切な加硫が実施できる。この多官能不飽和化合物は、パーオキシラジカルとポリマーラジカルとに対して反応活性を有するものであれば原則的に有効であって、特に種類は制限されない。好ましいものとしては、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、トリアクリルホルマール、トリアリルトリメリテート、N,N'−m−フェニレンビスマレイミド、ジプロパギルテレフタレート、ジアリルフタレート、テトラアリルテレフタレートアミド、トリアリルホスフェート、CH2=CH(CF2)6CH=CH2に代表されるビスオレフィン(特開平9−124870号公報参照)などがあげられる。その中でも特に好ましいのはトリアリルイソシアヌレートである。使用量は、0.1〜10PHRが好ましく、より好ましくは0.5〜5PHRである。
【0039】
本発明の加硫用組成物には一般に使用される添加剤を適宜添加してもよい。そうした添加剤としては、充填剤、補強剤、顔料、加工助剤などがあげられる。通常よく用いられる充填剤または補強剤として、無機物ではカーボンブラック、TiO2、SiO2、クレー、タルクなどが、有機物ではポリテトラフルオロエチレン、ポリビニリデンフルオライド、ポリビニルフルオライド、ポリクロロトリフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン/エチレン共重合体、テトラフルオロエチレン/ビニリデンフルオライド共重合体などの含フッ素重合体があげられる。
【0040】
また、他のゴムなどを配合し共加硫してもよい。このようなゴムとしては、シリコーンオイル、シリコーンゴム、エチレン/酢酸ビニル共重合体、1,2−ポリブタジエン、フルオロシリコンオイル、フルオロシリコンゴム、フルオロホスファゼンゴム、ヘキサフルオロプロピレン/エチレン共重合体、テトラフルオロエチレン/プロピレン共重合体、さらにはラジカル反応性のある他の重合体が用いられる。これらの使用量については、特に制限はないが、耐寒性を目的とする場合は耐寒性を損なう程度まで多くすべきではないのは当然である。
【0041】
加硫方法としては、通常のパーオキサイド加硫法でよい。たとえばオーブンロール、粉体ミキサーで混練するか、溶剤に溶解ないし分散させて分散混合した未加硫物を通常、120〜200℃の温度でプレス加硫を5〜30分行ない、ついで150〜250℃温度で1〜24時間オーブン加硫を行なう方法が例示できる。
【0042】
本発明はさらに、加硫物にも関する。本発明の加硫物は−45℃〜−30℃という低いTgを有しており、耐寒性に特に優れるエラストマー加硫物である。したがって、本発明の加硫物は、耐熱性、耐油性、耐薬品性、耐溶剤性などが要求される一般成形材料、シーラント、接着剤、塗料などとしても当然使用できるが、特に−40℃レベルの耐寒性が要求される自動車エンジン燃料系のシール材を比較的安価に提供できる。シール材としての特に好ましい形態は、O−リング、リップタイプパッキン、オイルシール、ガスケット、V−リングなどがあげられる。また、低温で稼働される化学プラント、各種製造装置、分析装置などのシール材としても有用である。
【0043】
【実施例】
つぎに実施例をあげて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はかかる実施例のみに限定されるものではない。
【0044】
実施例1
内容積123ml(実容積)のステンレススチール316製オートクレーブに、PMPVE5.0g、1,1−ジクロロ−1−フルオロエタン(HCFC−141b)25g、ビス(2,4,5−トリクロロパーフルオロヘキサノイル)パーオキサイド(DLP)のパーフルオロヘキサン溶液(濃度20重量%)2.8gを仕込み、ドライアイス/アセトン液で冷却した後、系内をチッ素で置換した。真空に減圧した後VdF3.9gを仕込み、20℃にて振とうしながら反応を行なった。反応の進行とともに系内の圧力(ゲージ圧)が0.50MPaから55分後に0.40MPaに低下した。この時点で未反応モノマーを放出し、反応生成物を80℃にて恒量になるまで真空乾燥して、本発明の含フッ素エラストマー2.8gを得た。
【0045】
このエラストマーを19F−NMRで分析したところ、モノマー単位組成はVdF80.5モル%/PMPVE19.5モル%であった。GPCで測定した数平均分子量は9700、重量平均分子量は36300であった。また示差熱量計(DSC)で測定したTgは−37℃であった。
【0046】
実施例2
表1に示した重合条件および仕込みモノマー組成を採用したほかは実施例1と同様にして本発明の含フッ素エラストマーを製造した。得られた含フッ素エラストマーの物性を表1に示す。
【0047】
【表1】
【0048】
実施例3
内容積123ml(実容積)のステンレススチール316製オートクレーブに、PMPVE3.0g、HCFC−141b25g、DLPのパーフルオロヘキサン溶液(濃度20重量%)1.9gを仕込み、ドライアイス/アセトン液で冷却した後、系内をチッ素で置換した。真空に減圧した後VdF2.5gおよびTFE0.2gを仕込み、20℃にて振とうしながら反応を行なった。反応の進行とともに系内の圧力(ゲージ圧)が0.38MPaから22分後に0.36MPaに低下した。この時点で未反応モノマーを放出し、反応生成物を80℃にて恒量になるまで真空乾燥して、本発明の含フッ素エラストマー0.6gを得た。
【0049】
このエラストマーを1H−NMRおよび19F−NMRで分析したところ、モノマー単位組成はVdF67.6モル%/TFE11.8モル%/PMPVE20.6モル%であった。GPCで測定した数平均分子量は9200、重量平均分子量は28800であった。また示差熱量計(DSC)で測定したTgは−40℃であった。
【0050】
実施例4〜6
表2に示した重合条件および仕込みモノマー組成を採用したほかは実施例3と同様にして本発明の含フッ素エラストマーを製造した。得られた含フッ素エラストマーの物性を表2に示す。
【0051】
同じ共重合モノマーの組み合せの共重合体であっても、VdFの共重合比によってガラス転移点が変化する。そのため、−45〜−30℃程度の範囲のガラス転移点を示す。実施例4の共重合体は−30℃と比較的高いガラス転移点を示すが、VdFの共重合比が相対的に少なくTFEの共重合比が多いことから、耐溶剤性に優れるという特徴を有するポリマーである。この共重合比の範囲では、従来技術であるPMVEを用いる場合と比較して、それぞれガラス転移点が10℃程度低くなるものである。
【0052】
【表2】
【0053】
【発明の効果】
本発明の含フッ素エラストマーはTgが低く−40℃レベルの耐寒性に特に優れた加硫物を与えることができる。この加硫物は自動車エンジンの燃料系用のシール材として有用である。
Claims (6)
- フッ化ビニリデン、パーフルオロ(2−メトキシプロピルビニルエーテル)、およびテトラフルオロエチレンのみからなる共重合組成からなり、前記テトラフルオロエチレンを1〜20モル%含み、前記フッ化ビニリデンの含有量が60〜80モル%であり、前記パーフルオロ(2−メトキシプロピルビニルエーテル)の含有量が20.1〜30モル%であり、数平均分子量が8000〜500000で重量平均分子量が20000〜1000000である含フッ素エラストマー(ただし、フッ化ビニリデン3〜80モル%、テトラフルオロエチレン10〜50モル%、ビニルエーテル系モノマー3〜30モル%およびそれらと共重合し得る単量体0〜10モル%から構成され、25℃における動的粘弾性測定による貯蔵弾性率(E')が3.0×10 9 dyn・cm -2 以下である含フッ素共重合体は除く)。
- フッ化ビニリデン、パーフルオロ(2−メトキシプロピルビニルエーテル)およびテトラフルオロエチレンをラジカル共重合することを特徴とする請求項1記載の含フッ素エラストマーの製造法。
- 重合温度40℃以下でラジカル共重合を行なう請求項2記載の含フッ素エラストマーの製造法。
- 請求項1記載の含フッ素エラストマー100重量部に対して、有機過酸化物0.05〜10重量部および多官能不飽和化合物0.1〜10重量部が配合されてなる加硫用含フッ素エラストマー組成物。
- 請求項4記載の加硫用含フッ素エラストマー組成物を加硫成形して得られる加硫成形体。
- 自動車エンジンの燃料系シール材である請求項5記載の加硫成形体。
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