JP4796495B2 - ジペプチドの製造法 - Google Patents

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    • C12P21/02Preparation of peptides or proteins having a known sequence of two or more amino acids, e.g. glutathione

Description

本発明は、1種以上のアミノ酸からジペプチドを生成する活性を有する蛋白質を生産する能力を有し、かつ該1種以上のアミノ酸のうちの少なくとも1種のアミノ酸を生産する能力を有する微生物を培地に培養し、培地中にジペプチドを生成、蓄積させ、該培地からジペプチドを採取ることを特徴とするジペプチドの製造法に関する。
今日、アミノ酸の多くがいわゆる発酵法によって製造されている(非特許文献1および2参照)。ここでいう発酵法とは、グルコース、酢酸、メタノール、アンモニア、硫酸アンモニア、コーンスティープリカー等の安価な物質からなる培地に微生物を培養し、該微生物の代謝活性を利用して目的のアミノ酸を得る方法を意味する。安価な原料から環境負荷の少ない方法でアミノ酸を製造する方法として発酵法は優れた製法である。
ペプチドの大量合成法については、化学合成法(液相法、固相法)、酵素的合成法およびDNA組換え法を用いた生物学的合成法が知られている。現在、50残基以上の長鎖のペプチドに関しては酵素的合成法あるいは生物学的合成法が用いられ、ジペプチドに関しては化学合成法と酵素的合成法が主に用いられている。
化学合成法によるジペプチドの合成では、官能基の保護・脱保護などの操作が必要であり、またラセミ体も合成されることから、化学合成法は経済的、効率的な方法とはいえない。また、化学合成法は大量の有機溶媒等を使うため環境衛生上も好ましい方法ではない。
酵素法によるジペプチドの合成に関しては、タンパク質分解酵素(プロテアーゼ)の逆反応を利用した方法(非特許文献3参照)、耐熱性アミノアシルt−RNA合成酵素を利用する方法(特許文献1〜4参照)、プロリンイミノペプチダーゼの逆反応を利用する方法(特許文献5参照)、非リボゾームペプチドシンセターゼ(以下、NRPSと称す)を利用する方法(非特許文献4、5および特許文献6、7参照)が知られている。
しかし、タンパク分解酵素の逆反応を利用した方法では、基質となるアミノ酸の官能基の保護・脱保護が必要であり、ペプチド形成反応の効率化およびペプチド分解反応の阻止が困難といった問題点がある。耐熱性アミノアシルt−RNA合成酵素を利用する方法には、酵素の発現、目的産物以外の副生反応の阻止が困難という問題点がある。プロリンイミノペプチダーゼを利用する方法では、基質となる片方のアミノ酸のアミド化が必要であるという欠点がある。NRPSを利用する方法に関しては、補酵素である4’−ホスフォパンテテイン(4’−phosphopantetheine)の供給が必要であり、効率的な製造法とはいえない。
こうした欠点に加え、これらの方法はいずれもアミノ酸もしくはその誘導体を基質として用いるため、製造コストがかさむという欠点を持っている。
一方、酵素分子量がNRPSより小さく、補酵素である4’−phosphopantetheineを必要としないγ−グルタミルシステインシンセターゼ(γ−glutamylcysteine synthetase)、グルタチオンシンセターゼ(glutathione synthetase)、D−アラニル−D−アラニン(D−Ala−D−Ala)リガーゼ(D−Ala−D−Ala ligase)、ポリ−γ−グルタミン酸シンセターゼ(poly−γ−glutamate synthetase)等の一群のペプチドシンセターゼも知られている。これらの酵素の殆どはD−アミノ酸を基質に用いる、またはγ位のカルボキシル基でのペプチド結合の形成を触媒する等の特徴を有するため、L−アミノ酸のα位カルボキシル基でペプチド結合するジペプチドの合成に用いることはできない。
また、抗生物質であるアルボノルシン(albonoursin)の生産株として知られているストレプトマイセス・ノウルセイ(Streptomyces noursei)ATCC11455株ではNRPS酵素とは全く類似性のない蛋白質(albC遺伝子産物)がシクロ(L−フェニルアラニル−L−ロイシン)[cyclo(L−phenylalanyl−L−leucine)]構造の合成を担っていること、albC遺伝子を導入したエシェリヒア・コリ(Escherichia coli)およびストレプトマイセス・リビダンス(Streptomyces lividans)の培養液にシクロジペプチドオキシダーゼを作用させるとアルボノルシンが検出されたとの報告はある(非特許文献6参照)が、albC遺伝子産物が直鎖状のジペプチドを生成するとの報告はない。
L−アミノ酸のα位カルボキシル基でのペプチド結合形成活性によるジペプチド生成が知られているのはバチルス属に属する微生物由来のジペプチド抗生物質であるバシリシン合成酵素のみである。バシリシン合成酵素は、バシリシン(L−アラニル−L−アンチカプシン、L−Ala−L−anticapsin)およびL−アラニル−L−アラニン(L−Ala−L−Ala)を合成する活性を有することは知られているが、その他のジペプチドの合成活性については知られていない(非特許文献7および8参照)。
一方、全ゲノム情報の解明されたバチルス・サチリス(Bacillus subtilis)168株(非特許文献9参照)におけるバシリシン生合成酵素遺伝子群に関しては、ywfAのORFを含むバシリシンオペロンを増幅するとバシリシンの生産性が増加することが知られている(特許文献8参照)。しかしこれらのORFの中に2種以上のアミノ酸をペプチド結合で連結する活性を有する蛋白質をコードするORFが含まれているか、含まれているとすれば、どのORFが該蛋白質をコードするかについては知られていない。
すなわち、1種以上のアミノ酸からなるジペプチドを発酵生産によって製造する方法はこれまで知られていない。
アミノ酸発酵、学会出版センター、相田 浩ら(1986) Biotechnology 2nd ed.,Vol.6,Products of Primary Metabolism,VCH Verlagsgesellschaft mbH,Weinheim(1996) J.Biol.Chem.,119,707−720(1937) Chem.Biol.,7,373−384(2000) FEBS Lett.,498,42−45(2001) Chemistry & Biol.,9,1355−1364(2002) J.Ind.Microbiol.,2,201−208(1987) Enzyme.Microbial.Technol.,29,400−406(2001) Nature,390,249−256(1997) 特開昭58−146539号公報 特開昭58−209991号公報 特開昭58−209992号公報 特開昭59−106298号公報 国際公開特許第03−010307号パンフレット 米国特許第5795738号 米国特許第5652116号 国際公開特許第00−03009号パンフレット
本発明の目的は、1種以上のアミノ酸からジペプチドを生成する活性を有する蛋白質を生産する能力を有し、かつ該1種以上のアミノ酸のうちの少なくとも1種のアミノ酸を生成、蓄積する能力を有する微生物を培地に培養し、該培地中にジペプチドを生成、蓄積させ、該培地からジペプチドを採取することを特徴とするジペプチドの製造法を提供することにある。
本発明は、以下の(1)〜(15)に関する。
(1)1種以上のアミノ酸からジペプチドを生成する活性を有する蛋白質を生産する能力を有し、かつ該1種以上のアミノ酸のうちの少なくとも1種のアミノ酸を生産する能力を有する微生物を培地に培養し、該培地中にジペプチドを生成、蓄積させ、該培地からジペプチドを採取することを特徴とするジペプチドの製造法。
(2)1種以上のアミノ酸からジペプチドを生成する活性を有する蛋白質が以下の[1]〜[11]から選ばれる蛋白質である、上記(1)の製造法。
[1]配列番号1〜8のいずれかで表されるアミノ酸配列を有する蛋白質
[2]配列番号1〜8のいずれかで表されるアミノ酸配列において、1以上のアミノ酸が欠失、置換または付加したアミノ酸配列からなり、かつ1種以上のアミノ酸からジペプチドを生成する活性を有する蛋白質
[3]配列番号1〜8のいずれかで表されるアミノ酸配列と65%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなり、かつ1種以上のアミノ酸からジペプチドを生成する活性を有する蛋白質
[4]配列番号17で表されるアミノ酸配列と80%以上の相同性を有するアミノ酸配列を有し、かつ1種以上のアミノ酸からジペプチドを生成する活性を有する蛋白質
[5]配列番号37または38で表されるアミノ酸配列を有する蛋白質
[6]配列番号37または38で表されるアミノ酸配列において、1以上のアミノ酸が欠失、置換または付加したアミノ酸配列からなり、かつ1種以上のアミノ酸からジペプチドを生成する活性を有する蛋白質
[7]配列番号37または38で表されるアミノ酸配列と65%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなり、かつ1種以上のアミノ酸からジペプチドを生成する活性を有する蛋白質
[8]非リボゾームペプチドシンセターゼ(以下、NRPSと称す)活性を有する蛋白質
[9]配列番号43で表されるアミノ酸配列を有する蛋白質
[10]配列番号43で表されるアミノ酸配列において、1以上のアミノ酸が欠失、置換または付加したアミノ酸配列からなり、かつ1種以上のアミノ酸からジペプチドを生成する活性を有する蛋白質
[11]配列番号43で表されるアミノ酸配列と65%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなり、かつ1種以上のアミノ酸からジペプチドを生成する活性を有する蛋白質
(3)1種以上のアミノ酸からジペプチドを生成する活性を有する蛋白質が以下の[1]〜[8]から選ばれるDNAにコードされる蛋白質である、上記(1)または(2)の製造法。
[1]配列番号9〜16および36のいずれかで表される塩基配列を有するDNA
[2]配列番号9〜16および36のいずれかで表される塩基配列と相補的な塩基配列を有するDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ1種以上のアミノ酸からジペプチドを生成する活性を有する蛋白質をコードするDNA
[3]配列番号18で表される塩基配列と相補的な塩基配列を有するDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ1種以上のアミノ酸からジペプチドを生成する活性を有する蛋白質をコードするDNA
[4]配列番号39または40で表される塩基配列を有するDNA
[5]配列番号39または40で表される塩基配列と相補的な塩基配列を有するDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ1種以上のアミノ酸からジペプチドを生成する活性を有する蛋白質をコードするDNA
[6]NRPS活性を有する蛋白質をコードするDNA
[7]配列番号44で表される塩基配列を有するDNA
[8]配列番号44で表される塩基配列と相補的な塩基配列を有するDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ1種以上のアミノ酸からジペプチドを生成する活性を有する蛋白質をコードするDNA
(4) 1種以上のアミノ酸からジペプチドを生成する活性を有する蛋白質を生産する能力を有する微生物が上記(3)の[1]〜[8]から選ばれるDNAを含有する組換え体DNAを保有する微生物である、上記(1)の製造法。
(5) アミノ酸を生産する能力が以下の[1]〜[5]から選ばれる方法で得られる、上記(1)〜(4)のいずれか1つの製造法。
[1]該アミノ酸の生合成を制御する機構の少なくとも1つを緩和または解除する方法
[2]該アミノ酸の生合成に関与する酵素の少なくとも1つを発現強化する方法
[3]該アミノ酸の生合成に関与する酵素遺伝子の少なくとも1つのコピー数を増加させる方法
[4]該アミノ酸の生合成経路から該アミノ酸以外の代謝産物へ分岐する代謝経路の少なくとも1つを弱化または遮断する方法
[5]野生型株に比べ、該アミノ酸のアナログに対する耐性度が高い細胞株を選択する方法
(6)微生物がエシェリヒア属、コリネバクテリウム属、バチルス属、セラチア属、シュードモナス属またはストレプトマイセス属に属する微生物である、上記(1)〜(5)のいずれか1つの製造法。
(7)エシェリヒア属、コリネバクテリウム属、バチルス属、セラチア属、シュードモナス属またはストレプトマイセス属に属する微生物がエシェリヒア・コリ、コリネバクテリウム・グルタミクム、コリネバクテリウム・アンモニアゲネス、コリネバクテリウム・ラクトファーメンタム、コリネバクテイルム・フラバム、コリネバクテリウム・エフィシェンス、バチルス・サチルス、バチルス・メガテリウム、セラチア・マルセッセンス、シュードモナス・プチダ、シュードモナス・エルギノーサ、ストレプトマイセス・セリカラーまたはストレプトミセス・リビダンスである、上記(6)の製造法。
(8) 微生物が1種以上のペプチダーゼおよび1種以上のペプチド取り込み活性を有する蛋白質(以下、ペプチド取込み蛋白質ともいう)の活性が低下または喪失した微生物である、上記(1)〜(5)のいずれか1つの製造法。
(9) 微生物が、3種以上のペプチダーゼの活性が低下または喪失した微生物である上記(1)〜(5)のいずれか1つの製造法。
(10) ペプチダーゼが配列番号45〜48のいずれかで表されるアミノ酸配列を有する蛋白質、または配列番号45〜48のいずれかで表されるアミノ酸配列と80%以上の相同性を有するアミノ酸配列を有し、かつペプチダーゼ活性を有する蛋白質である、上記(8)または(9)の製造法。
(11) ペプチド取込み蛋白質が配列番号49〜53のいずれかで表されるアミノ酸配列を有する蛋白質、または配列番号49〜53のいずれかで表されるアミノ酸配列と80%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなる蛋白質であり、かつペプチド取り込み活性を有する蛋白質である、上記(8)または(10)の製造法。
(12) 微生物がエシェリヒア属、バチルス属またはコリネバクテリウム属に属する微生物である、上記(8)〜(11)のいずれか1つの製造法。
(13) エシェリヒア属、バチルス属またはコリネバクテリウム属に属する微生物がエシェリヒア・コリ、コリネバクテリウム・グルタミクム、コリネバクテリウム・アンモニアゲネス、コリネバクテリウム・ラクトファーメンタム、コリネバクテイルム・フラバム、コリネバクテリウム・エフィシェンス、バチルス・サチルスまたはバチルス・メガテリウムである、上記(12)の製造法。
(14) アミノ酸がL−アラニン、L−グルタミン、L−グルタミン酸、グリシン、L−バリン、L−ロイシン、L−イソロイシン、L−プロリン、L−フェニルアラニン、L−トリプトファン、L−メチオニン、L−セリン、L−スレオニン、L−システイン、L−アスパラギン、L−チロシン、L−リジン、L−アルギニン、L−ヒスチジン、L−アスパラギン酸、L−α−アミノ酪酸、L−4−ヒドロキシプロリン、L−3−ヒドロキシプロリン、L−オルニチンおよびL−シトルリンから選ばれるアミノ酸である、上記(1)〜(13)のいずれか1つの製造法。
(15) ジペプチドが、式(I)
−R (I)
(式中、RおよびRは同一または異なって、L−アラニン、L−グルタミン、L−グルタミン酸、グリシン、L−バリン、L−ロイシン、L−イソロイシン、L−プロリン、L−フェニルアラニン、L−トリプトファン、L−メチオニン、L−セリン、L−スレオニン、L−システイン、L−アスパラギン、L−チロシン、L−リジン、L−アルギニン、L−ヒスチジン、L−アスパラギン酸、L−α−アミノ酪酸、L−4−ヒドロキシプロリン、L−3−ヒドロキシプロリン、L−オルニチンおよびL−シトルリンから選ばれるアミノ酸を表す)で表されるジペプチドである上記(1)〜(14)のいずれか1つの製造法。
本発明によれば、1種以上のアミノ酸からジペプチドを生成する活性を有する蛋白質を生産する能力を有し、かつ該1種以上のアミノ酸のうちの少なくとも1種のアミノ酸を生産する能力を有する微生物を培地に培養し、該培地中にジペプチドを生成、蓄積させ、該培地からジペプチドを採取することを特徴とするジペプチドの製造法を提供することができる。
図1はプラスミドpPE43の構築過程を示す図である。 図2はプラスミドpQE60ywfEの構築過程を示す図である。 図3は、直鎖ジペプチドの合成活性を有する蛋白質の発現プラスミドベクターであるpAL−nouおよびpAL−albの構築過程を示す図である。 図4は、ywfE遺伝子発現強化型ベクターであるpPE56の構築過程を示す図である。 図5は、ywfE遺伝子およびald遺伝子発現ベクターであるpPE86の構築過程を示す図である。 図6は、脱感作型pheA遺伝子発現ベクターであるpPHEA2、および脱感作型pheA遺伝子と脱感作型aroF遺伝子発現プラスミドベクターであるpPHEAF2の構築過程を示す図である。
符号の説明
ywfE:バチルス・サチリス168株由来のywfE遺伝子
trp:トリプトファンプロモーター遺伝子
T5:T5プロモーター
Amp:アンピシリン耐性遺伝子
lacI :ラクトースリプレッサー遺伝子
albCalbC遺伝子またはalbC類似遺伝子
aldald遺伝子
pheA fbr :脱感作型pheA遺伝子
aroF fbr :脱感作型aroF遺伝子
本発明の製造法で用いられる1種以上のアミノ酸からジペプチドを生成する活性を有する蛋白質は、1種以上のアミノ酸から、同一または異なるアミノ酸がペプチド結合したジペプチドを生成する活性を有する蛋白質であればいずれの蛋白質であってもよく、該蛋白質としては例えば、
[1]配列番号1〜8のいずれかで表されるアミノ酸配列を有する蛋白質、
[2]配列番号1〜8のいずれかで表されるアミノ酸配列において、1以上のアミノ酸が欠失、置換または付加したアミノ酸配列からなり、かつ1種以上のアミノ酸からジペプチドを生成する活性を有する蛋白質、
[3]配列番号1〜8のいずれかで表されるアミノ酸配列と65%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなり、かつ1種以上のアミノ酸からジペプチドを生成する活性を有する蛋白質、
[4]配列番号17で表されるアミノ酸配列と80%以上の相同性を有するアミノ酸配列を有し、かつ1種以上のアミノ酸からジペプチドを生成する活性を有する蛋白質、
[5]配列番号37または38で表されるアミノ酸配列を有する蛋白質、
[6]配列番号37または38で表されるアミノ酸配列において、1以上のアミノ酸が欠失、置換または付加したアミノ酸配列からなり、かつ1種以上のアミノ酸からジペプチドを生成する活性を有する蛋白質、
[7]配列番号37または38で表されるアミノ酸配列と65%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなり、かつ1種以上のアミノ酸からジペプチドを生成する活性を有する蛋白質、
[8]NRPS活性を有する蛋白質、
[9]配列番号43で表されるアミノ酸配列を有する蛋白質、
[10]配列番号43で表されるアミノ酸配列において、1以上のアミノ酸が欠失、置換または付加したアミノ酸配列からなり、かつ1種以上のアミノ酸からジペプチドを生成する活性を有する蛋白質、および
[11]配列番号43で表されるアミノ酸配列と65%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなり、かつ1種以上のアミノ酸からジペプチドを生成する活性を有する蛋白質、
などをあげることができる。
本発明においてアミノ酸とは、後述する本発明の製造法で用いられる微生物が生産するアミノ酸であり、好ましくはL−アミノ酸およびグリシン、より好ましくはL−アラニン、L−グルタミン、L−グルタミン酸、L−バリン、L−ロイシン、L−イソロイシン、L−プロリン、L−フェニルアラニン、L−トリプトファン、L−メチオニン、L−セリン、L−スレオニン、L−システイン、L−アスパラギン、L−チロシン、L−リジン、L−アルギニン、L−ヒスチジン、L−アスパラギン酸、L−α−アミノ酪酸、L−4−ヒドロキシプロリン、L−3−ヒドロキシプロリン、L−オルニチン、L−シトルリンおよびグリシン、さらに好ましくはL−アラニン、L−グルタミン、L−グルタミン酸、L−バリン、L−ロイシン、L−イソロイシン、L−プロリン、L−フェニルアラニン、L−トリプトファン、L−メチオニン、L−セリン、L−スレオニン、L−システイン、L−アスパラギン、L−チロシン、L−リジン、L−アルギニン、L−ヒスチジン、L−アスパラギン酸、L−α−アミノ酪酸およびグリシンをあげることができる。
上記において、1以上のアミノ酸が欠失、置換または付加されたアミノ酸配列からなり、かつ1種以上のアミノ酸からジペプチドを生成する活性を有する蛋白質は、Molecular Cloning,A Laboratory Manual,Third Edition,Cold Spring Harbor Laboratory Press(2001)(以下、モレキュラー・クローニング第3版と略す)、Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley & Sons(1987−1997)(以下、カレント・プロトコールズ・イン・モレキュラー・バイオロジーと略す)、Nucleic Acids Research,10,6487(1982)、Proc.Natl.Acad.Sci.USA,79,6409(1982)、Gene,34,315(1985)、Nucleic Acids Research,13,4431(1985)、Proc.Natl.Acad.Sci.USA,82,488(1985)等に記載の部位特異的変異導入法を用いて、例えば配列番号1〜8、37、38または43のいずれかで表されるアミノ酸配列からなる蛋白質をコードするDNAに部位特異的変異を導入することにより、取得することができる。
欠失、置換または付加されるアミノ酸の数は特に限定されないが、上記の部位特異的変異法等の周知の方法により欠失、置換または付加できる程度の数であり、1個から数十個、好ましくは1〜20個、より好ましくは1〜10個、さらに好ましくは1〜5個である。
配列番号1〜8、37、38または43のいずれかで表されるアミノ酸配列において1以上のアミノ酸が欠失、置換または付加されたとは、同一配列中の任意の位置において、1または複数のアミノ酸が欠失、置換または付加されていてもよい。
アミノ酸の置換が可能なアミノ酸としては、例えば配列番号1〜8、配列番号37および38、または公知のNRPSと配列番号43で表されるアミノ酸配列を、それぞれ公知のアライメントソフトウェアを用いて比較したときに、比較したすべてのアミノ酸配列において保存されていないアミノ酸をあげることができる。公知のアライメントソフトウェアとしては、例えば遺伝子解析ソフトウェアGenetyx(ソフトウェア開発株式会社)に含まれるアライメント解析ソフトをあげることができる。該解析ソフトの解析パラメータとしては、デフォルトイ値を用いることができる。
また、アミノ酸の欠失または付加が可能なアミノ酸の位置としては、例えば配列番号1〜8、37、38おおび43のいずれかで表されるアミノ酸配列のN末端側およびC末端側をあげることができる。
欠失、置換または付加は同時に生じてもよく、置換または付加されるアミノ酸は天然型と非天然型とを問わない。天然型アミノ酸としては、L−アラニン、L−アスパラギン、L−アスパラギン酸、L−グルタミン、L−グルタミン酸、グリシン、L−アルギニン、L−ヒスチジン、L−イソロイシン、L−ロイシン、L−リジン、L−メチオニン、L−フェニルアラニン、L−プロリン、L−セリン、L−スレオニン、L−トリプトファン、L−チロシン、L−バリン、L−システインなどがあげられる。
以下に、相互に置換可能なアミノ酸の例を示す。同一群に含まれるアミノ酸は相互に置換可能である。
A群:ロイシン、イソロイシン、ノルロイシン、バリン、ノルバリン、アラニン、2−アミノブタン酸、メチオニン、O−メチルセリン、t−ブチルグリシン、t−ブチルアラニン、シクロヘキシルアラニン
B群:アスパラギン酸、グルタミン酸、イソアスパラギン酸、イソグルタミン酸、2−アミノアジピン酸、2−アミノスベリン酸
C群:アスパラギン、グルタミン
D群:リジン、アルギニン、オルニチン、2,4−ジアミノブタン酸、2,3−ジアミノプロピオン酸
E群:プロリン、3−ヒドロキシプロリン、4−ヒドロキシプロリン
F群:セリン、スレオニン、ホモセリン
G群:フェニルアラニン、チロシン
また、本発明の蛋白質が1種以上のアミノ酸からジペプチドを生成する活性を有するためには、配列番号1〜8、37、38および43のいずれかで表されるアミノ酸配列、好ましくは配列番号1で表されるアミノ酸配列との相同性が65%以上、好ましくは75%以上、より好ましくは85%以上、さらに好ましくは90%以上、特に好ましくは95%以上、最も好ましくは98%以上の相同性を有していることが望ましい。
アミノ酸配列や塩基配列の相同性は、Karlin and AltschulによるアルゴリズムBLAST[Pro.Natl.Acad.Sci.USA,90,5873(1993)]やFASTA[Methods Enzymol.,183,63(1990)]を用いて決定することができる。このアルゴリズムBLASTに基づいて、BLASTNやBLASTXとよばれるプログラムが開発されている[J.Mol.Biol.,215,403(1990)]。BLASTに基づいてBLASTNによって塩基配列を解析する場合には、パラメータは例えばScore=100、wordlength=12とする。また、BLASTに基づいてBLASTXによってアミノ酸配列を解析する場合には、パラメータは例えばscore=50、wordlength=3とする。BLASTとGapped BLASTプログラムを用いる場合には、各プログラムのデフォルトパラメーターを用いる。これらの解析方法の具体的な手法は公知である(http://www.ncbi.nlm.nih.gov.)。
配列番号17で表されるアミノ酸配列は、配列番号1〜7で表されるアミノ酸配列を有する蛋白質の間で保存されている領域であり、かつ各種微生物のAla−Alaリガーゼ活性を有する蛋白質のコンセンサス配列に対応する領域である。
配列番号17で表されるアミノ酸配列と80%以上、好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上の相同性を有するアミノ酸配列を有する蛋白質であり、かつ1種以上のアミノ酸からジペプチドを生成する活性を有する蛋白質もまた本発明の製造法で用いられる微生物が生産する蛋白質である。
配列番号17で表されるアミノ酸配列と80%以上、好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上の相同性を有するアミノ酸配列を有する蛋白質が、1種以上のアミノ酸からジペプチドを生成する活性を有する蛋白質であるためには、該蛋白質のアミノ酸配列と配列番号1〜8のいずれかで表されるアミノ酸配列との相同性が、少なくとも80%以上、通常は90%以上、特に95%以上の相同性を有していることが好ましい。
アミノ酸配列の相同性は、上記したようにBLASTやFASTAを用いて決定することができる。
上記[1]〜[11]の蛋白質が、1種以上のアミノ酸からジペプチドを生成する活性を有する蛋白質であることを確認する手段としては、例えばDNA組換え法を用いて該蛋白質を発現する形質転換体を作製し、該形質転換体を用いて本発明の蛋白質を製造した後、本発明の蛋白質、1種以上のアミノ酸、およびATPを水性媒体中に存在せしめ、該水性媒体中にジペプチドが生成、蓄積するか否かをHPLC等により分析する方法をあげることができる。
本発明の製造法で用いられるDNAは、1種以上のアミノ酸から、同一または異なるアミノ酸がペプチド結合したジペプチドを生成する活性を有する蛋白質をコードするDNAであればいずれでもよく、例えば
[12]配列番号9〜16および36のいずれかで表される塩基配列を有するDNA、
[13]配列番号9〜16および36のいずれかで表される塩基配列と相補的な塩基配列を有するDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ1種以上のアミノ酸からジペプチドを生成する活性を有する蛋白質をコードするDNA、
[14]配列番号18で表される塩基配列と相補的な塩基配列を有するDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ1種以上のアミノ酸からジペプチドを生成する活性を有する蛋白質をコードするDNA、
[15]配列番号39または40で表される塩基配列を有するDNA、
[16]配列番号39または40で表される塩基配列と相補的な塩基配列を有するDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ1種以上のアミノ酸からジペプチドを生成する活性を有する蛋白質をコードするDNA、
[17]NRPS活性を有する蛋白質をコードするDNA、
[18]配列番号44で表される塩基配列を有するDNA、および
[19]配列番号44で表される塩基配列と相補的な塩基配列を有するDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ1種以上のアミノ酸からジペプチドを生成する活性を有する蛋白質をコードするDNA、
をあげることができる。
上記のストリンジェントな条件下でハイブリダイズ可能なDNAとは、配列番号9〜16、18、36、39、40または44のいずれかで表される塩基配列と相補的な塩基配列を有するDNAの一部、または全部をプローブとして、コロニー・ハイブリダイゼーション法、プラーク・ハイブリダイゼーション法あるいはサザンブロットハイブリダイゼーション法等を用いることにより得られるDNAを意味し、具体的には、コロニーあるいはプラーク由来のDNAを固定化したフィルターを用いて、0.7〜1.0mol/L、好ましくは0.9mol/Lの塩化ナトリウム存在下、65℃でハイブリダイゼーションを行った後、0.1〜2倍、好ましくは0.1倍濃度のSSC溶液(1倍濃度のSSC溶液の組成は、150mmol/l塩化ナトリウム、15mmol/lクエン酸ナトリウムよりなる)を用い、65℃条件下でフィルターを洗浄することにより同定できるDNAをあげることができる。ハイブリダイゼーションは、モレキュラー・クローニング第3版、カレント・プロトコールズ・イン・モレキュラー・バイオロジー、DNA Cloning 1:Core Techniques,A Practical Approach,Second Edition,Oxford University(1995)等に記載されている方法に準じて行うことができる。ハイブリダイズ可能なDNAとしては、例えば上記したBLASTおよびFASTA等を用いて、上記パラメータに基づいて計算したときに、配列番号9〜16、18、36、39、40または44のいずれかで表される塩基配列と少なくとも75%以上、好ましくは85%以上、さらに好ましくは90%以上、特に好ましくは95%以上の相同性を有するDNAをあげることができる。
また、ハイブリダイゼーションに供するDNA試料としては、例えば配列番号9〜16、18、36、39、40または44のいずれかで表される塩基配列をその染色体DNA上に有する微生物と同属、好ましくは同種に属する微生物の染色体DNAをあげることができる。
配列番号9〜16、18、36、39、40または44のいずれかで表される塩基配列を有するDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAが、1種以上のアミノ酸からジペプチドを生成する活性を有する蛋白質をコードするDNAであることは、例えば上記したように、組換えDNA法を用いて該DNAにコードされる蛋白質を製造し、該蛋白質の活性を測定することにより確認することができる。
(i)本発明の製造法に用いられるDNAの調製
本発明の製造法に用いられるDNAは、
(a)配列番号9〜16および36で表される塩基配列に基づき設計することができるプローブを用いた、微生物、好ましくはバチルス属に属する微生物の染色体DNAライブラリーに対するサザンハイブリダイゼーション、または配列番号9〜16および36で表される塩基配列に基づき設計することができるプライマーDNAを用いた、微生物、好ましくはバチルス属に属する微生物の染色体DNAを鋳型としたPCR[PCR Protocols,Academic Press(1990)]、
(b)配列番号39または40で表される塩基配列に基づき設計することができるプローブを用いた、微生物、好ましくはストレプトマイセス属に属する微生物の染色体DNAライブラリーに対するサザンハイブリダイゼーション、または配列番号3または4で表される塩基配列に基づき設計することができるプライマーDNAを用いた、微生物、好ましくはストレプトマイセス属に属する微生物の染色体DNAを鋳型としたPCR、および
(c)公知のNRPSをコードするDNA、例えばEur.J.Biochem.,270,4555(2003)、特表2003−512835、米国特許5795738もしくは米国特許5652116に記載されているNRPSをコードするDNA、または配列番号44で表される塩基配列に基づき設計することができるプローブを用いた、微生物、好ましくはバチルス属、ストレプトマイセス属、シュードモナス属またはキサントモナス属等に属する微生物の染色体DNAライブラリーに対するサザンハイブリダイゼーション、または上記したNPRSをコードするDNAの塩基配列に基づき設計することができるプライマーDNAを用いた、微生物、好ましくはバチルス属、ストレプトマイセス属、シュードモナス属またはキサントモナス属等に属する微生物の染色体DNAを鋳型としたPCRにより取得することができる。
また、各種の遺伝子配列データベースに対して配列番号1〜8、17、37、38および43のいずれかで表されるアミノ酸配列をコードするDNAの塩基配列と75%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上、特に好ましくは98%以上の相同性を有する配列を検索し、該検索によって得られた塩基配列に基づき、該塩基配列を有する生物の染色体DNA、cDNAライブラリー等から上記した方法により本発明の製造法に用いられるDNAを取得することもできる。
取得したDNAをそのまま、あるいは適当な制限酵素などで切断し、常法によりベクターに組み込み、得られた組換え体DNAを宿主細胞に導入した後、通常用いられる塩基配列解析方法、例えばジデオキシ法[Proc.Natl.Acad.Sci.,USA,74,5463(1977)]あるいは373A・DNAシークエンサー(パーキン・エルマー社製)等の塩基配列分析装置を用いて分析することにより、該DNAの塩基配列を決定することができる。
塩基配列を決定した結果、取得されたDNAが部分長であった場合は、該部分長DNAをプローブに用いた、染色体DNAライブラリーに対するサザンハイブリダイゼーション法等により、全長DNAを取得することができる。
更に、決定されたDNAの塩基配列に基づいて、パーセプティブ・バイオシステムズ社製8905型DNA合成装置等を用いて化学合成することにより目的とするDNAを調製することもできる。
上記のようにして取得されるDNAとして、例えば、配列番号9〜16、36、39、40および44で表される塩基配列を有するDNAをあげることができる。
上記したDNAを組み込むベクターとしては、pBluescriptII KS(+)(ストラタジーン社製)、pDIRECT[Nucleic Acids Res.,18,6069(1990)]、pCR−Script Amp SK(+)(ストラタジーン社製)、pT7Blue(ノバジェン社製)、pCR II(インビトロジェン社製)およびpCR−TRAP(ジーンハンター社製)などをあげることができる。
上記宿主細胞としては、エシェリヒア属に属する微生物などをあげることができる。エシェリヒア属に属する微生物としては、例えば、エシェリヒア・コリXL1−Blue、エシェリヒア・コリXL2−Blue、エシェリヒア・コリDH1、エシェリヒア・コリMC1000、エシェリヒア・コリATCC 12435、エシェリヒア・コリW1485、エシェリヒア・コリJM109、エシェリヒア・コリHB101、エシェリヒア・コリNo.49、エシェリヒア・コリW3110、エシェリヒア・コリNY49、エシェリヒア・コリMP347、エシェリヒア・コリNM522、エシェリヒア・コリME8415等をあげることができる。
組換え体DNAの導入方法としては、上記宿主細胞へDNAを導入する方法であればいずれも用いることができ、例えば、カルシウムイオンを用いる方法[Proc.Natl.Acad.Sci.,USA,69,2110(1972)]、プロトプラスト法(特開昭63−248394)、エレクトロポレーション法[Nucleic Acids Res.,16,6127(1988)]等をあげることができる。
上記方法によって得られる本発明の製造法に用いられるDNAを保有する微生物としては、例えば配列番号1で表される配列を有するDNAを含有する組換え体DNAを保有する微生物であるエシェリヒア・コリNM522/pPE43をあげることができる。
(ii)アミノ酸を生産する能力を有する微生物の調製
本発明のジペプチドの製造法で用いられるアミノ酸を生産する能力を有する微生物は、1種以上のアミノ酸を生産する能力を有する微生物であればいずれの微生物であってもよく、該微生物としては自然界から分離された株自身が該能力を有する場合は該株そのもの、公知の方法により所望のジペプチドを構成するアミノ酸のうちの少なくとも1種のアミノ酸を生産する能力を人為的に付与した微生物などをあげることができる。
当該公知の方法としては、
(a)アミノ酸の生合成を制御する機構の少なくとも1つを緩和または解除する方法、
(b)アミノ酸の生合成に関与する酵素の少なくとも1つを発現強化する方法、
(c)アミノ酸の生合成に関与する酵素遺伝子の少なくとも1つのコピー数を増加させる方法、
(d)アミノ酸の生合成経路から該アミノ酸以外の代謝産物へ分岐する代謝経路の少なくとも1つを弱化または遮断する方法、および
(e)野生型株に比べ、アミノ酸のアナログに対する耐性度が高い細胞株を選択する方法、
などをあげることができ、上記公知の方法は単独または組み合わせて用いることができる。
上記(a)については、例えばAgric.Biol.Chem.,43,105−111(1979)、J.Bacteriol.,110,761−763(1972)およびAppl.Microbiol.Biotechnol.,39,318−323(1993)などに、上記(b)については、例えばAgric.Biol.Chem.,43,105−111(1979)およびJ.Bacteriol.,110,761−763(1972)などに、上記(c)については、例えばAppl.Microbiol.Biotechnol.,39,318−323(1993)およびAgric.Biol.Chem.,39,371−377(1987)などに、上記(d)については、例えばAppl.Environ.Micribiol.,38,181−190(1979)およびAgric.Biol.Chem.,42,1773−1778(1978)などに、上記(e)については、例えばAgric.Biol.Chem.,36,1675−1684(1972)、Agric.Biol.Chem.,41,109−116(1977)、Agric.Biol.Chem.,37,2013−2023(1973)およびAgric.Biol.Chem.,51,2089−2094(1987)などに記載されている。上記文献等を参考に各種アミノ酸を生産する能力を有する微生物を調製することができる。
さらに上記(a)〜(e)のいずれか、または組み合わせた方法によるアミノ酸を生産する能力を有する微生物の調製方法については、Biotechnology 2nd ed.,Vol.6,Products of Primary Metabolism(VCH Verlagsgesellschaft mbH,Weinheim,1996)section 14a,14bやAdvances in Biochemical Engineering/Biotechnology 79,1−35(2003)、アミノ酸発酵、学会出版センター、相田 浩ら(1986)に多くの例が記載されており、また上記以外にも具体的なアミノ酸を生産する能力を有する微生物の調製方法は、特開2003−164297、Agric.Biol.Chem.,39,153−160(1975)、Agric.Biol.Chem.,39,1149−1153(1975)、特開昭58−13599、J.Gen.Appl.Microbiol.,,272−283(1958)、特開昭63−94985、Agric.Biol.Chem.,37,2013−2023(1973)、WO97/15673、特開昭56−18596、特開昭56−144092および特表2003−511086など数多くの報告があり、上記文献等を参照することにより1種以上のアミノ酸を生産する能力を有する微生物を調製することができる。
上記方法によって調製することができるアミノ酸を生産する能力を有する微生物としては、例えばL−グルタミン生産菌として、glnE遺伝子および/またはglnB遺伝子が欠損した微生物、L−アラニン生産菌として、アラニン脱水素酵素遺伝子(ald遺伝子)の発現が強化された微生物、L−プロリン生産微生物として、フェニルアラニンの脱感作型pheA遺伝子および/またはチロシンの脱感作型aroF遺伝子を発現する微生物などをあげることができる。
上記したアミノ酸を生成、蓄積する微生物としては、上記(a)〜(e)の方法が適用することができる微生物または上記遺伝的形質を有する微生物であればいずれの微生物であってもよく、好ましくは原核生物、より好ましくは細菌をあげることができる。
原核生物としては、エシェリヒア(Escherichia)属、セラチア(Serratia)属、バチルス属、ブレビバクテリウム(Brevibacterium)属、コリネバクテリウム(Corynebacterium)属、ミクロバクテリウム属(Microbacterium)、シュードモナス(Pseudomonas)属、アグロバクテリウム(Agrobacterium)属、アリシクロバチルス属(Alicyclobacillus)、アナベナ(Anabaena)属、アナシスティス(Anacystis)属、アスロバクター(Arthrobacter)属、アゾトバクター(Azotobacter)属、クロマチウム(Chromatium)属、エルビニア(Erwinia)属、メチロバクテリウム(Methylobacterium)属、フォルミディウム(Phormidium)属、ロドバクター(Rhodobacter)属、ロドシュードモナス(Rhodopseudomonas)属、ロドスピリウム(Rhodospirillum)属、セネデスムス(Scenedesmus)属、ストレプトマイセス(Streptomyces)属、シネコッカス(Synechoccus)属、ザイモモナス(Zymomonas)属等に属する微生物、例えば、エシェリヒア・コリ、バチルス・サチリス(Bacillus subtilis)、バチルス・メガテリウム(Bacillus megaterium)、バチルス・アミロリケファシエンス(Bacillus amyloliquefaciens)、バチルス・コアギュランス(Bacilluscoagulans)、バチルス・リケニフォルミス(Bacillus licheniformis)、バチルス・プミルス(Bacillus pumilus)、ブレビバクテリウム・アンモニアゲネス(Brevibacterium ammoniagenes)、ブレビバクテリウム・イマリオフィルム(Brevibacterium immariophilum)、ブレビバクテリウム・サッカロリティカム(Brevibacterium saccharolyticum)、ブレビバクテリウム・フラバム(Brevibacterium flavum)、ブレビバクテリウム・ラクトファーメンタム(Brevibacterium lactofermentum)、コリネバクテリウム・グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)、コリネバクテリウム・アセトアシドフィルム(Corynebacterium acetoacidophilum)、ミクロバクテリウム・アンモニアフィルム(Microbacterium ammoniaphilum)、セラチア・フィカリア(Serratia ficaria)、セラチア・フォンチコラ(Serratiafonticola)、セラチア・リケファシエンス(Serratia liquefaciens)、セラチア・マルセッセンス(Serratia marcescens)、シュードモナス・エルギノーサ(Pseudomonas aeruginosa)、シュードモナス・プチダ(Pseudomonas putida)、アグロバクテリウム・ラジオバクター(Agrobacterium radiobacter)、アグロバクテリウム・リゾジーンズ(Agrobacterium rhizogenes)、アグロバクテリウム・ルビ(Agrobacterium rubi)、アナベナ・シリンドリカ(Anabaena cylindrica)、アナベナ・ドリオルム(Anabaena doliolum)、アナベナ・フロスアクア(Anabaenaflos−aquae)、アースロバクター・オーレッセンス(Arthrobacter aurescens)、アースロバクター・シトレウス(Arthrobacter citreus)、アースロバクター・グロブフォルミス(Arthrobacter globformis)、アースロバクター・ヒドロカーボグルタミカス(Arthrobacter hydrocarboglutamicus)、アースロバクター・ミソレンス(Arthrobacter mysorens)、アースロバクター・ニコチアナ(Arthrobacter nicotianae)、アースロバクター・パラフィネウス(Arthrobacter paraffineus)、アースロバクター・プロトフォルミエ(Arthrobacter protophormiae)、アースロバクター・ロセオパラフィナス(Arthrobacter roseoparaffinus)、アースロバクター・スルフレウス(Arthrobacter sulfureus)、アースロバクター・ウレアファシエンス(Arthrobacter ureafaciens)、クロマチウム・ブデリ(Chromatium buderi)、クロマチウム・テピダム(Chromatium tepidum)、クロマチウム・ビノサム(Chromatium vinosum)、クロマチウム・ワーミンギ(Chromatium warmingii)、クロマチウム・フルビアタティレ(Chromatium fluviatile)、エルビニア・ウレドバラ(Erwinia uredovora)、エルビニア・カロトバラ(Erwinia carotovora)、エルビニア・アナス(Erwinia ananas)、エルビニア・ヘリコラ(Erwinia herbicola)、エルビニア・パンクタタ(Erwinia punctata)、エルビニア・テレウス(Erwinia terreus)、メチロバクテリウム・ロデシアナム(Methylobacterium rhodesianum)、メチロバクテリウム・エクソトルクエンス(Methylobacterium extorquens)、フォルミディウム・エスピー(Phormidium sp.)ATCC29409、ロドバクター・カプスラタス(Rhodobacter capsulatus)、ロドバクター・スフェロイデス(Rhodobacter sphaeroides)、ロドシュードモナス・ブラスチカ(Rhodopseudomonas blastica)、ロドシュードモナス・マリナ(Rhodopseudomonas marina)、ロドシュードモナス・パルストリス(Rhodopseudomonas palustris)、ロドスピリウム・リブラム(Rhodospirillum rubrum)、ロドスピリウム・サレキシゲンス(Rhodospirillum salexigens)、ロドスピリウム・サリナラム(Rhodospirillm salinarum)、ストレプトマイセス・アンボファシエンス(Streptomyces ambofaciens)、ストレプトマイセス・オーレオファシエンス(Streptomyces aureofaciens)、ストレプトマイセス・アウレウス(Streptomyces aureus)、ストレプトマイセス・フンジシディカス(Streptomyces fungicidicus)、ストレプトマイセス・グリセオクロモゲナス(Streptomyces griseochromogenes)、ストレプトマイセス・グリセウス(Streptomyces griseus)、ストレプトマイセス・リビダンス(Streptomyces lividans)、ストレプトマイセス・オリボグリセウス(Streptomyces olivogriseus)、ストレプトマイセス・ラメウス(Streptomyces rameus)、ストレプトマイセス・タナシエンシス(Streptomyces tanashiensis)、ストレプトマイセス・ビナセウス(Streptomyces vinaceus)、ザイモモナス・モビリス(Zymomonas mobilis)等をあげることができ、好ましい原核生物としては、エシェリヒア属、セラチア属、バチルス属、ブレビバクテリウム属、コリネバクテリウム属、シュードモナス属またはストレプトマイセス属等に属する細菌、例えば上記したエシェリヒア属、セラチア属、バチルス属、ブレビバクテリウム属、コリネバクテリウム属、シュードモナス属またはストレプトマイセス属等に属する種をあげることができ、より好ましい細菌としてはエシェリヒア・コリ、コリネバクテリウム・グルタミクム、コリネバクテリウム・アンモニアゲネス、コリネバクテリウム・ラクトファーメンタム、コリネバクテリウム・フラバム、コリネバクテリウム・エフィシェンス、バチルス・サチルス、バチルス・メガテリウム、セラチア・マルセッセンス、シュードモナス・プチダ、シュードモナス・エルギノーサ、ストレプトマイセス・セリカラーまたはストレプトミセス・リビダンスをあげることができ、特に好ましくはエシェリヒア・コリをあげることができる。
アミノ酸を生産する微生物の具体例としては、L−グルタミン生産株としてエシェリヒア・コリJGLE1およびエシェリヒア・コリJGLBE1など、L−アラニン生産株としてald遺伝子発現プラスミドを保持するエシェリヒア・コリJM101株など、L−フェニルアラニン生産株としてpPHEA2および/またはaroF遺伝子発現プラスミドを保有するエシェリヒア・コリJM101株など、L−グルタミンおよびL−アラニン生産株としてald遺伝子発現プラスミドを保持するエシェリヒア・コリJGLE1およびエシェリヒア・コリJGLBE1など、L−アラニンおよびL−フェニルアラニン生産株としてald遺伝子発現プラスミドおよび脱感作型pheA遺伝子および/または脱感作型aroF遺伝子発現プラスミドを保持するエシェリヒア・コリJM101など、L−スレオニンおよびL−フェニルアラニン生産株として脱感作型pheA遺伝子および/または脱感作型aroF遺伝子発現プラスミドを保持するATCC21277株などをあげることができる。
さらに、アミノ酸を生産する能力を有する微生物の具体的例としては、L−グルタミン酸生産株としてFERM BP−5807およびATCC13032など、L−グルタミン生産株としてFERM P−4806およびATCC14751など、L−スレオニン生産株としてATCC21148、ATCC21277およびATCC21650など、L−リジン生産株としてFERM P−5084およびATCC13286など、L−メチオニン生産株としてFERM P−5479、VKPM B−2175およびATCC21608など、L−イソロイシン生産株としてFERM BP−3757およびATCC14310など、L−バリン生産株としてATCC13005およびATCC19561など、L−ロイシン生産株としてFERM BP−4704およびATCC21302など、L−アラニン生産株としてFERM BP−4121およびATCC15108など、L−セリン生産株としてATCC21523およびFERM BP−6576など、L−プロリン生産株としてFERM BP−2807およびATCC19224など、L−アルギニン生産株としてFERM P−5616およびATCC21831など、L−オルニチン生産株としてATCC13232など、L−ヒスチジン生産株としてFERM BP−6674およびATCC21607など、L−トリプトファン生産株としてDSM10118、DSM10121、DSM10123およびFERM BP−1777など、L−フェニルアラニン生産株としてATCC13281およびATCC21669など、L−チロシン生産株としてATCC21652など、L−システイン生産株としてW3110/pHC34(特表2003−511086記載)など、L−4−ヒドロキシプロリン生産株としてWO96/27669記載のエシェリヒア・コリSOLR/pRH71など、L−3−ヒドロキシプロリン生産株としてFERM BP−5026およびFERM BP−5409など、L−シトルリン生産株としてFERM P−5643およびFERM P−1645などをあげることができる。
なお、上記のFERM番号で表される菌株は、独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センタ(日本)、ATCC番号で表される菌株は、American Type Culture Collection(米国)、VKPM番号で表される菌株は、Russian National Collection of Industrial Microorganisms(ロシア)、DSM番号で表される菌株はDeutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen(ドイツ)からそれぞれ入手することができる。
(iii)1種以上のアミノ酸からジペプチドを生成する活性を有する蛋白質を生産する能力を有し、かつ該1種以上のアミノ酸のうちの少なくとも1種のアミノ酸を生産する能力を有する微生物の調製
1種以上のアミノ酸からジペプチドを生成する活性を有する蛋白質を生産する能力を有し、かつ該1種以上のアミノ酸のうちの少なくとも1種のアミノ酸を生産する能力を有する微生物は、
(a)上記(ii)の方法で調製することができる1種以上のアミノ酸を生産する能力を有する微生物に、上記(i)の方法で調製することができる1種以上のアミノ酸からジペプチドを生成する活性を有する蛋白質をコードするDNAを導入する方法、
(b)上記(i)の方法で調製することができる1種以上のアミノ酸からジペプチドを生成する活性を有する蛋白質をコードするDNAを導入した微生物に、上記(ii)の方法により1種以上のアミノ酸を生産する能力を付与する方法、
(c)元来1種以上のアミノ酸を生産する能力を有する微生物に、上記(i)の方法により1種以上のアミノ酸からジペプチドを生成する活性を有する蛋白質をコードするDNAを導入する方法、または
(d)元来1種以上のアミノ酸からジペプチドを生成する活性を有する蛋白質を生産する能力を有する微生物に、上記(ii)の方法により1種以上のアミノ酸を生産する能力を付与する方法、
などにより調製することができる。
上記(i)の方法で調製することができる1種以上のアミノ酸からジペプチドを生成する活性を有する蛋白質をコードするDNAを微生物に導入することにより、該微生物に1種以上のアミノ酸からジペプチドを生成する活性を有する蛋白質を生産する能力を付与することができる。微生物に1種以上のアミノ酸からジペプチドを生成する活性を有する蛋白質を生産する能力を付与する方法としては、モレキュラー・クローニング第3版、カレント・プロトコールズ・イン・モレキュラー・バイオロジー等に記載された方法等を用い、例えば以下の方法により、上記(i)の方法で調製したDNAを宿主細胞中で発現させる方法をあげることができる。
上記(i)の方法で調製したDNAをもとにして、必要に応じて、蛋白質をコードする部分を含む適当な長さのDNA断片を調製する。また、該蛋白質をコードする部分の塩基配列を、宿主の発現に最適なコドンとなるように、塩基を置換することにより、該蛋白質の生産率を向上させることができる。
該DNA断片を適当な発現ベクターのプロモーターの下流に挿入することにより、組換え体DNAを作製する。
該組換え体DNAを、該発現ベクターに適合した宿主細胞に導入することにより、該蛋白質を生産する形質転換体を得ることができる。
宿主細胞としては、目的とする遺伝子を発現できる微生物であればいずれも用いることができ、好ましくは原核生物、より好ましくは細菌をあげることができる。好ましい原核生物としては上記(ii)の原核生物をあげることができる。
該微生物は、1種以上のアミノ酸を生産する能力を有していてもよいし、該能力を有していなくてもよい。該能力を有していない微生物を宿主細胞として用いた場合は、上記方法で得られる組換え体DNAを下記の方法により該微生物に導入して形質転換体を調製した後、上記(ii)の方法により該形質転換体に1以上のアミノ酸を生産する能力を付与することにより、本発明の製造法で用いられる微生物を取得することができる。
発現ベクターとしては、微生物の細胞において自立複製可能ないしは染色体中への組込が可能で、本発明の製造法に用いられるDNAを転写できる位置にプロモーターを含有しているものが用いられる。
原核生物を宿主細胞として用いる場合は、本発明の製造法に用いられるDNAを有する組換え体DNAは、原核生物中で自立複製可能であると同時に、プロモーター、リボソーム結合配列、本発明の製造法に用いられるDNA、転写終結配列より構成された組換え体DNAであることが好ましい。プロモーターを制御する遺伝子が含まれていてもよい。
発現ベクターとしては、pBTrp2、pBTac1、pBTac2(いずれもベーリンガーマンハイム社製)、pHelix1(ロシュ・ダイアグノスティクス社製)、pKK233−2(アマシャム・ファルマシア・バイオテク社製)、pSE280(インビトロジェン社製)、pGEMEX−1(プロメガ社製)、pQE−8(キアゲン社製)、pET−3(ノバジェン社製)、pKYP10(特開昭58−110600)、pKYP200[Agric.Biol.Chem.,48,669(1984)]、pLSA1[Agric.Biol.Chem.,53,277(1989)]、pGEL1[Proc.Natl.Acad.Sci.,USA,82,4306(1985)]、pBluescriptII SK(+)、pBluescript II KS(−)(ストラタジーン社製)、pTrS30[エシェリヒア・コリJM109/pTrS30(FERM BP−5407)より調製]、pTrS32[エシェリヒア・コリJM109/pTrS32(FERM BP−5408)より調製]、pPAC31(WO98/12343)、pUC19[Gene,33,103(1985)]、pSTV28(タカラバイオ社製)、pUC118(タカラバイオ社製)、pPA1(特開昭63−233798)、pWH1520(MoBiTec社製)、pCS299P(WO 00/63388)、pVLT31[Gene,123,17(1993)]およびpIJ702(Genetic Manipulation of Streptomyces:a Laboratory Manual:John Innes Foundation)等を例示することができる。
エシェリヒア属に属する微生物を宿主細胞として用いる場合、プロモーターとしては、エシェリヒア・コリ内で機能するものであればいかなるものでもよい。例えば、trpプロモーター(P trp )、lacプロモーター(P lac )、Pプロモーター、Pプロモーター、PSEプロモーター等の、大腸菌やファージ等に由来するプロモーター、SPO1プロモーター、SPO2プロモーター、penPプロモーター等をあげることができる。またPtrpを2つ直列させたプロモーター、tacプロモーター、lacT7プロモーター、let Iプロモーターのように人為的に設計改変されたプロモーター等も用いることができる。
さらにバチルス属に属する微生物中で発現させるためのxylAプロモーター[Appl.Microbiol.Biotechnol.,35,594−599(1991)]、コリネバクテリウム属に属する微生物中で発現させるためのP54−6プロモーター[Appl.Microbiol.Biotechnol.,53,674−679(2000)]、シュードモナス属に属する微生物中で発現させるためのtacプロモーター[Gene,121,17−24(1993)]、ストレプトマイセス属に属する微生物中で発現させるためのxylAプロモーター(Genetic Manipulation of Streptomyces:a Laboratory Manual:John Innes Foundation)なども用いることができる。
リボソーム結合配列であるシャイン−ダルガノ(Shine−Dalgarno)配列と開始コドンとの間を適当な距離(例えば6〜18塩基)に調節したプラスミドを用いることが好ましい。
本発明の製造法に用いられるDNAを発現ベクターに結合させた組換え体DNAにおいては、転写終結配列は必ずしも必要ではないが、構造遺伝子の直下に転写終結配列を配置することが好ましい。
このような組換え体DNAとしては、例えばpPE43をあげることができる。
組換え体DNAの微生物細胞への導入方法としては、該細胞へDNAを導入する方法であればいずれも用いることができ、例えば、カルシウムイオンを用いる方法[Proc.Natl.Acad.Sci.,USA,69,2110(1972)]、プロトプラスト法(特開昭63−248394)、エレクトロポレーション法[Nucleic Acids Res.,16,6127(1988)]等をあげることができる。
また、上記(c)の方法で用いられる、元来1種以上のアミノ酸を生産する能力を有する微生物としては、上記(ii)のアミノ酸を生産する能力を有する公知の菌株などをあげることができる。
また、上記(d)の方法で用いられる、元来1種以上のアミノ酸からジペプチドを生成する活性を有する蛋白質を生産する能力を有する微生物としては、(A)バチルス属に属する微生物、より好ましくはバシリシン合成活性を有するバチルス属に属する微生物、さらに好ましくはバチルス・サチリス、バチルス・アミロリケファシエンス、バチルス・コアギュランス、バチルス・リケニフォルミス、バチルス・メガテリウムおよびバチルス・プミルスからなる群より選ばれる種に属する微生物、最も好ましくは、バチルス・サチリスATCC15245、バチルス・サチリスATCC6633、バチルス・サチリスIAM1213、バチルス・サチリスIAM1107、バチルス・サチリスIAM1214、バチルス・サチリスATCC9466、バチルス・サチリスIAM1033、バチルス・サチリスATCC21555、バチルス・アミロリケファシエンス IFO3022およびバチルス・プミルスNRRL B−12025からなる群より選ばれる株である微生物、および(B)ストレプトマイセス属に属する微生物、好ましくはアルボノルシンを生産する能力を有するストレプトマイセス属に属する微生物、より好ましくはストレプトマイセス・アルボラス(Streptomyces albulus)またはストレプトマイセス・ノウルセイ(Streptomyces noursei)に属する微生物をあげることができる。
(iv)ペプチダーゼおよびペプチド取り込み活性を有する蛋白質の活性が低下または喪失した微生物
本発明の製造法に用いられる微生物としては、上記(iii)の方法により調製される微生物において、1種以上のペプチダーゼおよび1種以上のペプチド取り込み蛋白質の活性が低下または喪失した微生物、または3種以上のペプチダーゼの活性が低下または喪失した微生物をあげることができる。
該微生物は、例えば(a)1種以上のペプチダーゼおよび1種以上のペプチド取り込み蛋白質の機能が低下または喪失した微生物、または3種以上のペプチダーゼの機能が低下または喪失した微生物に、上記(iii)の方法により1種以上のアミノ酸からジペプチドを生成する活性を有する蛋白質を生産する能力、および該1種以上のアミノ酸のうちの少なくとも1種のアミノ酸を生産する能力を付与する方法、(b)上記(iii)の方法により調製することができる1種以上のアミノ酸からジペプチドを生成する活性を有する蛋白質を生産する能力、および該1種以上のアミノ酸のうちの少なくとも1種のアミノ酸を生産する能力を有する微生物の、a)1種以上のペプチダーゼおよび1種以上のペプチド取り込み蛋白質、またはb)3種以上のペプチダーゼ、の機能を低下または喪失させる方法等により取得することができる。
1種以上のペプチダーゼおよび1種以上のペプチド取り込み蛋白質の活性が低下または喪失した微生物としては、該微生物が正常に生育できる限りにおいて、任意の1種以上のペプチダーゼおよび任意の1種以上のペプチド取込み蛋白質の活性が低下または喪失している微生物をあげることができ、好ましくは1種以上9種以下、より好ましくは1種以上7種以下、さらに好ましくは1種以上4種以下のペプチダーゼの活性が低下または喪失しており、かつ好ましくは1種以上5種以下、より好ましくは1種以上3種以下、さらに好ましくは1種以上2種以下、特に好ましくは1種のペプチド取込み蛋白質の活性が低下または喪失している微生物をあげることができる。
該微生物としては、より具体的には、該微生物のゲノムDNA上に存在するペプチダーゼをコードする遺伝子(以下、ペプチダーゼ遺伝子と略す)およびペプチド取り込み蛋白質をコードする遺伝子(以下、ペプチド取り込み蛋白質遺伝子)のうち、1種以上のペプチダーゼ遺伝子の塩基配列および1種以上のペプチド取り込み蛋白質遺伝子の塩基配列において、該塩基配列の全部または一部が欠失しているため、または該塩基配列中に塩基の置換または付加があるために該ペプチダーゼおよび該ペプチド取り込み蛋白質の活性が低下または喪失した微生物をあげることができる。
ペプチダーゼの活性が低下しているとは、上記した塩基の欠失、置換または付加がない遺伝子がコードするペプチダーゼに比べ、ペプチド分解活性が低くなっていることいい、通常は80%以下、好ましくは50%以下、より好ましくは30%以下、さらに好ましくは20%以下、特に好ましくは10%以下、最も好ましくは5%以下に低下していることをいう。
微生物のペプチド分解活性は、基質となるペプチドと微生物菌体とを水性媒体中に共存せしめ、ペプチド分解反応を行った後、残存しているペプチド量を公知の方法、例えばHPLCなどを用いた分析法によって定量することにより測定することができる。
上記ペプチダーゼとしては、ペプチド分解活性を有する蛋白質であればいずれでもよく、好ましくはジペプチド分解活性が高い蛋白質、より好ましくはジペプチダーゼをあげることができる。
より具体的なペプチダーゼとしては、例えばエシェリヒア・コリに存在する、配列番号45で表されるアミノ酸配列を有するPepA、配列番号46で表されるアミノ酸配列を有するPepB、配列番号47で表されるアミノ酸配列を有するPepD、配列番号48で表されるアミノ酸配列を有するPepN、PepP[GenBank accession no.(以下、GenBankと略す)AAC75946]、PepQ(GenBank AAC76850)、PepE(GenBank AAC76991)、PepT(GenBank AAC74211)、Dcp(GenBank AAC74611)およびIadA(GenBank AAC77284)など、バチルス・サチリスに存在するAmpS(GenBank AF012285)、PepT(GenBank X99339)、YbaC(GenBank Z99104)、YcdD(GenBank Z99105)、YjbG(GenBank Z99110)、YkvY(GenBank Z99111)、YqjE(GenBank Z99116)、YwaD(GenBank Z99123)など、コリネバクテリウム・グルタミカムに存在するBAB97732、BAB97858、BAB98080、BAB98880、BAB98892、BAB99013、BAB99598およびBAB99819(いずれも日本DNAデータバンクの登録番号)で表されるアミノ酸配列を有する蛋白質などをあげることができ、ジペプチダーゼとしては、配列番号45〜48で表されるアミノ酸配列を有するPepA、PepB、PepDおよびPepN、並びにPepQ、PepE、IadAをあげることができる。また、配列番号45〜48のいずれかのアミノ酸配列と80%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上の相同性を有し、かつペプチダーゼ活性を有する蛋白質もジペプチド分解活性が高い蛋白質としてあげることができる。アミノ酸配列や塩基配列の相同性は、上記したBLASTおよびFASTA等を用いて決定することができる。
また、ペプチド取り込み蛋白質の活性が低下しているとは、上記した塩基の欠失、置換または付加がない遺伝子がコードするペプチド取り込み蛋白質に比べ、ペプチド取り込み活性が低くなっていることいい、通常は80%以下、好ましくは50%以下、より好ましくは30%以下、さらに好ましくは20%以下、特に好ましくは10%以下、最も好ましくは5%以下に低下していることをいう。
微生物のペプチド取り込み活性は、基質となるペプチドと微生物菌体とを水性媒体中に共存せしめ、ペプチド取り込み反応を行った後、水性媒体中に残存しているペプチド量を公知の方法、例えばHPLCなどを用いた分析法によって定量することにより測定することができる。
上記ペプチド取り込み蛋白質としては、染色体DNA上でオペロンを形成する遺伝子にコードされている蛋白質であり、細胞膜上で複合体を形成してペプチド取り込み活性を発現する蛋白質、および単独の蛋白質としてペプチド取り込み活性を有する蛋白質など、微生物のペプチド取り込みに関与している蛋白質であればいずれでもよく、好ましくはジペプチド取り込み活性が高い蛋白質をあげることができる。
より具体的なペプチド取り込み蛋白質としては、例えばエシェリヒア・コリに存在する配列番号49で表されるアミノ酸配列を有するDppA、配列番号50で表されるアミノ酸配列を有するDppB、配列番号51で表されるアミノ酸配列を有するDppC、配列番号52で表されるアミノ酸配列を有するDppD、配列番号53で表されるアミノ酸配列を有するDppF、OppA(GenBank AAC76569)、OppB(GenBank AAC76568)、OppC(GenBank AAC76567)、OppD(GenBank AAC76566)、OppF(GenBank AAC76565)、YddO(GenBank AAC74556)、YddP(GenBank AAC74557)、YddQ(GenBank AAC74558)、YddR(GenBank AAC74559)、YddS(GenBank AAC74560)、YbiK(GenBank AAC73915)、MppA(GenBank AAC74411)、SapA(GenBank AAC74376)、SapB(GenBank AAC74375)、SapC(GenBank AAC74374)、SapD(GenBank AAC74373)、およびSapF(GenBank AAC74372)など、バチルス・サチリスに存在するDppA(GenBank CAA40002)、DppB(GenBank CAA40003)、DppC(GenBank CAA40004)、DppD(GenBank CAA40005)、DppE(GenBank CAA40006)、OppA(GenBank CAA39787)、OppB(GenBank CAA39788)、OppC(GenBank CAA39789)、OppD(GenBank CAA39790)、OppF(GenBank CAA39791)、AppA(GenBank CAA62358)、AppB(GenBank CAA62359)、AppC(GenBank CAA62360)、AppD(GenBank CAA62356)、AppF(GenBank CAA62357)、YclF(GenBank CAB12175)およびYkfD(GenBank CAB13157)など、コリネバクテリウム・グルタミカムに存在するBAB99048、BAB99383、BAB99384、BAB99385、BAB99713、BAB99714、BAB99715、BAB99830、BAB99831、BAB99832(いずれも日本DNAデータバンクの登録番号)で表されるアミノ酸配列を有する蛋白質などをあげることができ、また、ジペプチド取り込み活性が高い蛋白質としては、配列番号49〜53で表されるアミノ酸配列を有するDppA、DppB、DppC、DppD、DppFおよびそれらいずれかのアミノ酸配列と80%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上の相同性を有する蛋白質もペプチド取り込み活性が高いペプチド取り込み蛋白質としてあげることができる。
上記アミノ酸配列の相同性は、上記したBLASTやFASTA等のプログラムを用いて決定することができる。
3種以上のペプチダーゼの活性が低下または喪失している微生物としては、該微生物が正常に生育できる限りにおいて、任意の3種以上のペプチダーゼの活性が低下または喪失している微生物をあげることができ、好ましくは3種以上9種以下、より好ましくは3種以上6種以下、さらに好ましくは3種または4種のペプチダーゼの活性が低下または喪失している微生物をあげることができる。
具体的なペプチダーゼとしては、上記したエシェリヒア・コリ、バチルス・サチリスおよびコリネバクテリウム・グルタミカムに存在するペプチダーゼおよびジペプチダーゼをあげることができる。また、配列番号45〜48のいずれかのアミノ酸配列と80%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなり、かつペプチダーゼ活性を有する蛋白質もジペプチド分解活性が高い蛋白質としてあげることができる。
上記アミノ酸配列の相同性は、上記したBLASTやFASTA等のプログラムを用いて決定することができる。
(v)ペプチダーゼおよびペプチド取り込み蛋白質の活性が低下または喪失した微生物の調製
ペプチダーゼおよびペプチド取り込み蛋白質の活性が低下または喪失した微生物は、該微生物を取得できる方法であれば、その取得方法に制限はないが、例えば以下に示す微生物の染色体DNAのペプチダーゼ遺伝子やペプチド取り込み蛋白質遺伝子に塩基の欠失、置換または付加を導入する方法により取得することができる。
微生物の染色体DNAの遺伝子に塩基の欠失、置換または付加を導入する方法としては、相同組換えを利用した方法をあげることができる。一般的な相同組換えを利用した方法としては、塩基の欠失、置換または付加が導入された変異遺伝子を、塩基の欠失等を導入したい宿主細胞内では自立複製できない薬剤耐性遺伝子を有するプラスミドDNAと連結して作製できる相同組換え用プラスミドを用いる方法をあげることができる。
該相同組換え用プラスミドを常法により宿主細胞に導入した後、薬剤耐性を指標にして相同組換えによって染色体DNA上に該相同組換え用プラスミドが組込まれた形質転換株を選択する。得られた形質転換株を該薬剤を含有しない培地で数時間〜1日間培養した後、該薬剤含有寒天培地、および該薬剤非含有寒天培地に塗布し、前者の培地で生育せず、後者の培地で生育できる株を選択することで、染色体DNA上において2回目の相同組換えが生じた株を取得することができる。染色体DNA上の欠失等を導入した遺伝子が存在する領域の塩基配列を決定することで、染色体DNA上の目的遺伝子に塩基の欠失、置換または付加が導入されたことを確認することができる。
上記方法により、染色体DNA上の目的遺伝子に塩基の欠失、置換または付加を導入することができる微生物としては、例えばエシェリヒア属、バチルス属またはコリネバクテリウム属に属する微生物をあげることができる。
また、複数の遺伝子に効率よく塩基の欠失、置換または付加を導入する相同組換えを利用した方法としては、直鎖DNAを用いた方法をあげることができる。
具体的には、塩基の欠失、置換または付加を導入したい遺伝子を含有する直鎖DNAを細胞内に取り込ませ、染色体DNAと導入した直鎖DNAとの間で相同組換えが起こさせる方法である。本方法は、直鎖DNAを効率よく取り込む微生物であれば、いずれの微生物にも適用でき、好ましい微生物としてはエシェリヒア属またはバチルス属に属する微生物、より好ましくはエシェリヒア・コリ、さらに好ましくはλファージ由来の組換えタンパク質群(Red組換え系)を発現しているシェリヒア・コリをあげることができる。
λRed組換え系を発現しているエシェリヒア・コリとしては、λRed組換え系遺伝子を有するプラスミドDNAであるpKD46[エシェリヒア・コリ ジェネティック ストックセンター(米国エール大学)より入手可能]を保有するエシェリヒア・コリJM101株等をあげることができる。
相同組換えに用いられるDNAとしては、
(a)塩基の欠失、置換または付加の導入対象である染色体DNA上の領域の両外側に存在するDNAに位置するDNAと相同性を有するDNAを、薬剤耐性遺伝子の両端に有する直鎖DNA、
(b)塩基の欠失、置換または付加の導入対象である染色体DNA上の領域の両外側に存在するDNAと相同性を有するDNAを直接連結した直鎖DNA、
(c)薬剤耐性遺伝子およびネガティブセレクションに用いることができる遺伝子を有するDNAの両端に、塩基の欠失、置換または付加の導入対象である染色体DNA上の領域の両外側に存在するDNAと相同性を有するDNAを有する直鎖DNA、
(d)上記(a)の直鎖DNAにおいて、薬剤耐性遺伝子と染色体DNA上の領域の両外側に存在するDNAと相同性を有するDNAの間に、さらに酵母由来のFlp recombinase〔Proc.Natl.Acad.Sci.USA.,82,5875(1985)〕が認識する塩基配列を有するDNA、
をあげることができる。
薬剤耐性遺伝子としては、宿主微生物が感受性を示す薬剤に対し、薬剤耐性を付与する薬剤耐性遺伝子であれば、いずれの薬剤耐性遺伝子も使用することができる。宿主微生物にエシェリヒア・コリを用いた場合は、薬剤耐性遺伝子としては、例えば、カナマイシン耐性遺伝子、クロラムフェニコール耐性遺伝子、ゲンタマイシン耐性遺伝子、スペクチノマイシン耐性遺伝子、テトラサイクリン耐性遺伝子およびアンピシリン耐性遺伝子等をあげることができる。
ネガティブセレクションに用いることができる遺伝子とは、宿主微生物で該遺伝子を発現させたとき、一定培養条件下においては、該微生物に致死的である遺伝子のことをいい、該遺伝子としては例えば、バチルス属に属する微生物由来のsacB遺伝子〔Appl.Environ.Microbiol.,59,1361−1366(1993)〕、およびエシェリヒア属に属する微生物由来のrpsL遺伝子〔Genomics,72,99−104(2001)〕等をあげることができる。
上記の直鎖DNAの両末端に存在する、染色体DNA上の置換または欠失の導入対象となる領域の両端の外側に存在するDNAと相同性を有するDNAは、直鎖DNAにおいて、染色体DNA上の方向と同じ方向に配置され、その長さは10bp〜100bp程度が好ましく、20bp〜50bp程度がより好ましく、30〜40bp程度がさらに好ましい。
酵母由来のFlp recombinaseが認識する塩基配列とは、該蛋白質が認識し、相同組換えを触媒する塩基配列であれば、特に限定されないが、好ましくは配列番号54で表される塩基配列を有するDNA、および該DNAにおいて1個〜数個の塩基が欠失、置換または付加された塩基配列を有し、かつ酵母由来のFlp recombinaseが認識し、相同組換えを触媒する塩基配列を有するDNAをあげることができる。
相同性を有するとは、上記直鎖DNAが、染色体DNA上の目的とする領域において、相同組換えが起こる程度の相同性を有することであり、具体的な相同性としては、80%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、さらに好ましくは100%の相同性をあげることができる。
上記塩基配列の相同性は、上記したBLASTやFASTA等のプログラムを用いて決定することができる。
上記直鎖DNAは、PCRにより作製することができる。また上記直鎖DNAを含むDNAをプラスミド上にて構築した後、制限酵素処理にて目的の直鎖DNAを得ることもできる。
微生物の染色体DNAに塩基の欠失、置換または付加を導入する方法としては、以下の方法1〜4があげられる。
方法1:上記(a)または(d)の直鎖DNAを宿主微生物に導入し、薬剤耐性を指標に該直鎖DNAが染色体DNA上に相同組換えにより挿入された形質転換株を選択する方法。
方法2:上記方法1により取得された形質転換株に、上記(b)の直鎖DNAを導入し、該方法により染色体DNA上に挿入された薬剤遺伝子を削除することにより、微生物の染色体DNA上の領域を置換または欠失させる方法。
方法3:
[1]上記(c)の直鎖DNAを宿主微生物に導入し、薬剤耐性を指標に該直鎖DNAが染色体DNA上に相同組換えにより挿入された形質転換株を選択する、
[2]染色体DNA上の置換または欠失の対象領域の両端の外側に位置するDNAと相同性を有するDNAを、染色体DNA上における方向と同一の方向で連結したDNAを合成し、上記[1]で得られた形質転換株に導入する、
[3]ネガティブセレクションに用いることができる遺伝子が発現する条件下において、上記[2]の操作を行った形質転換株を培養し、該培養において生育可能な株を、薬剤耐性遺伝子およびネガティブセレクションに用いることができる遺伝子が染色体DNA上から削除された株として選択する方法。
方法4:
[1]上記(d)の直鎖DNAを宿主微生物に導入し、薬剤耐性を指標に該直鎖DNAが染色体DNA上に相同組換えにより挿入された形質転換株を選択する、
[2]上記[1]で得られた形質転換株にFlp recombinase遺伝子発現プラスミドを導入し、該遺伝子を発現させた後、上記[1]で用いた薬剤に感受性である株を取得する方法。
上記方法で用いられる、直鎖DNAを宿主微生物に導入する方法としては、該微生物へDNAを導入する方法であればいずれも用いることができ、例えば、カルシウムイオンを用いる方法〔Proc.Natl.Acad.Sci.,USA,69,2110(1972)〕、プロトプラスト法(特開昭63−248394)、エレクトロポレーション法〔Nucleic Acids Res.,16,6127(1988)〕等をあげることができる。
方法2または方法3[2]で用いられる直鎖DNAにおいて、該DNAの中央部付近に、染色体DNA上に挿入したい任意の遺伝子を組み込こんだ直鎖DNAを用いることにより、薬剤耐性遺伝子等を削除するのと同時に、任意の遺伝子を染色体DNA上に挿入することができる。
上記方法2〜4では、最終的に得られる形質転換株の染色体DNA上には薬剤耐性遺伝子およびネガティブセレクションに用いることができる遺伝子等の外来遺伝子を残さない方法であるため、同一の薬剤耐性遺伝子およびネガティブセレクションに用いることができる遺伝子を用いて、該方法の操作を繰り返すことにより、容易に染色体DNA上の位置の異なる2以上の領域に塩基の欠失、置換または付加を有する微生物を製造することができる。
(vi)本発明のジペプチドの製造法
上記(iii)および(v)の方法により得られる微生物を培地に培養し、培養物中にジペプチドを生成、蓄積させ、該培養物からジペプチドを採取することにより、ジペプチドを製造することができる。
該微生物を培地に培養する方法は、微生物の培養に用いられる通常の方法に従って行うことができる。
すなわち、該微生物が資化し得る炭素源、窒素源、無機塩類等を含有し、該微生物の培養を効率的に行える培地であれば天然培地、合成培地のいずれも用いることができる。
該培地には、目的とするジペプチドを構成するアミノ酸が含まれる必要はないが、天然培地、またはアミノ酸要求性株を培養するための培地には該アミノ酸が含まれている場合もある。本発明の製造法に用いられる培地には、本発明で用いられる微生物が、その成育に必要とする量のアミノ酸が含まれていてもよい。すなわち、通常の培地に含まれるアミノ酸の量は、本発明の製造法で用いられる微生物によって生産される該アミノ酸の量に比べ非常に少ないので、通常の培地に含まれる該アミノ酸の量は、該アミノ酸の有無により、本願発明により製造されるジペプチドの生産量が変わるほどの量ではなく、よって本発明の製造法に用いられる培地にはその程度の該アミノ酸が含まれていてもよい。
本発明に用いられる培地に含まれるアミノ酸量としては、例えば天然培地あれば通常は2.5g/L未満、好ましくは0.5g/L以下、より好ましくは0.1g/L以下、さらに好ましくは20mg/L以下の該アミノ酸、合成培地であれば通常は1g/L以下、好ましくは50mg/L以下、より好ましくは1mg/L以下、さらに好ましくは0.5mg/L以下の該アミノ酸は含まれていてもよい。ただし、本願発明の製造法により、2種の異なるアミノ酸からなるジペプチドを製造する場合であって、用いられる微生物が該ジペプチドを構成するアミノ酸うちの1種のアミノ酸を生産する能力しか有していない場合、本発明で用いられる培地に、該微生物が生産することができない残りの1種のアミノ酸を添加してもよい。このとき添加するアミノ酸の量は、通常0.5g/L〜100g/L、好ましくは2g/L〜50g/Lである。
炭素源としては、該微生物が資化し得るものであればよく、グルコース、フラクトース、スクロース、これらを有する糖蜜、デンプンあるいはデンプン加水分解物等の炭水化物、酢酸、プロピオン酸等の有機酸、エタノール、プロパノール等のアルコール類等を用いることができる。
窒素源としては、アンモニア、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、酢酸アンモニウム、リン酸アンモニウム等の無機酸もしくは有機酸のアンモニウム塩、その他の含窒素化合物、並びに、ペプトン、肉エキス、酵母エキス、コーンスティープリカー、カゼイン加水分解物、大豆粕および大豆粕加水分解物、各種発酵菌体、およびその消化物等を用いることができる。
無機塩としては、リン酸第一カリウム、リン酸第二カリウム、リン酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、塩化ナトリウム、硫酸第一鉄、硫酸マンガン、硫酸銅、炭酸カルシウム等を用いることができる。
培養は、通常振盪培養または深部通気攪拌培養等の好気的条件下で行う。培養温度は15〜40℃がよく、培養時間は、通常5時間〜7日間である。培養中pHは3.0〜9.0に保持する。pHの調整は、無機または有機の酸、アルカリ溶液、尿素、炭酸カルシウム、アンモニア等を用いて行う。
また、培養中必要に応じて、アンピシリンやテトラサイクリン等の抗生物質を培地に添加してもよい。
プロモーターとして誘導性のプロモーターを用いた発現ベクターで形質転換した微生物を培養するときには、必要に応じてインデューサーを培地に添加してもよい。例えば、lacプロモーターを用いた発現ベクターで形質転換した微生物を培養するときにはイソプロピル−β−D−チオガラクトピラノシド等を、trpプロモーターを用いた発現ベクターで形質転換した微生物を培養するときにはインドールアクリル酸等を培地に添加してもよい。
上記方法で製造されるジペプチドとしては、1種または2種のアミノ酸がα結合したジペプチドをあげることができ、好ましくは該アミノ酸がL−アミノ酸またはグリシンであるジペプチド、より好ましくは、式(I)
−R (I)
で表されるジペプチドにおいてRおよびRが同一または異なって、L−アラニン(L−Ala)、L−グルタミン(L−Gln)、L−グルタミン酸(L−Glu)、グリシン(Gly)、L−バリン(L−Val)、L−ロイシン(L−Leu)、L−イソロイシン(L−Ile)、L−プロリン(L−Pro)、L−フェニルアラニン(L−Phe)、L−トリプトファン(L−Trp)、L−メチオニン(L−Met)、L−セリン(L−Ser)、L−スレオニン(L−Thr)、L−システイン(L−Cys)、L−アスパラギン(L−Asn)、L−チロシン(L−Tyr)、L−リジン(L−Lys)、L−アルギニン(L−Arg)、L−ヒスチジン(L−His)、L−アスパラギン酸(L−Asp)、L−α−アミノ酪酸(L−α−AB)、L−4−ヒドロキシプロリン(L−4−HYP)、L−3−ヒドロキシプロリン(L−3−HYP)、L−オルニチン(L−Orn)およびL−シトルリン(L−Cit)から選ばれるアミノ酸であるジペプチド、さらに好ましくはRがL−Ala、Gly、L−Met、L−SerまたはL−Thrの場合は、RがL−Gln、L−Glu、Gly、L−Val、L−Leu、L−Ile、L−Pro、L−Phe、L−Trp、L−Met、L−Ser、L−Thr、L−Cys、L−Asn、L−Tyr、L−Lys、L−Arg、L−His、L−Asp、L−α−AB、L−4−HYP、L−3−HYP、L−OrnまたはL−Citであるジペプチド、特に好ましくは、RがL−Alaの場合は、RはL−Gln、Gly、L−Val、L−Leu、L−Ile、L−Phe、L−Trp、L−Met、L−Ser、L−Thr、L−Cys、L−Asn、L−Tyr、L−Lys、L−Arg、L−His、L−α−ABまたはL−Citであるジペプチド、RがGlyの場合は、RはL−Gln、Gly、L−Phe、L−Trp、L−Met、L−Ser、L−Thr、L−Cys、L−Tyr、L−Lys、L−Arg、L−α−ABまたはL−Citであるジペプチド、RがL−Metの場合は、RはL−Phe、L−Met、L−Cys、L−Tyr、L−LysまたはL−Hisであるジペプチド、RがL−Serの場合は、RはL−Gln、Gly、L−Phe、L−Met、L−Ser、L−Thr、L−Tyr、L−HisまたはL−α−ABであるジペプチド、RがL−Thrの場合は、RはL−Gln、L−Leu、L−Phe、L−Met、L−Ser、L−ThrまたはL−α−ABであるジペプチド、RがL−Glnの場合は、RはL−PheまたはL−α−ABであるジペプチド、RがL−Pheの場合は、RはL−Glnであるジペプチド、RがL−Trpの場合は、RはGlyであるジペプチド、RがL−Cysの場合は、RはL−Ala、L−Gln、Gly、またはL−Metであるジペプチド、RがL−Lysの場合は、RはL−Ala、GlyまたはL−Metであるジペプチド、RがL−Argの場合は、RはL−α−ABであるジペプチド、RがL−Hisである場合は、RはL−Metであるジペプチド、およびRがL−α−ABの場合は、RはL−Ala、L−Gln、Gly、L−Ser、L−Thr、L−ArgまたはL−α−ABであるジペプチドをあげることができ、最も好ましくはL−アラニル−L−アラニン(L−Ala−L−Ala)、L−アラニル−L−グルタミン(L−Ala−L−Gln)、L−アラニル−L−フェニルアラニン(L−Ala−L−Phe)、L−スレオニル−L−フェニルアラニン(L−Thr−L−Phe)、L−アラニル−L−チロシン(L−Ala−L−Tyr)、L−アラニル−L−メチオニン(L−Ala−L−Met)、L−アラニル−L−バリン(L−Ala−L−Val)、L−アラニル−イソロイシン(L−Ala−L−Ile)、L−アラニル−L−ロイシン(L−Ala−L−Leu)およびL−セリニル−L−フェニルアラニン(L−Ser−L−Phe)をあげることができる。
培養物中に生成、蓄積したジペプチドの採取は、活性炭やイオン交換樹脂などを用いる通常の方法あるいは、有機溶媒による抽出、結晶化、薄層クロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィー等により行うことができる。
以下に、1種以上のアミノ酸からジペプチドを生成する活性を有する蛋白質をコードするDNA取得法等の実験例を示すが、該DNAの取得法等は該実験例に限定されるものではない。
実験例1 データベースを利用したジペプチド合成活性を有する蛋白質の検索
バチルス・サチリス168株由来のD−Ala−D−Alaリガーゼ遺伝子のアミノ酸配列[Nature,390,249−256(1997)]をクエリーとして、バチルス・サチリス168株のゲノムDNAのデータベースであるSubtilist(http://genolist.pasteur.fr/SubtiList/)のホモロジー検索機能を用いて、バチルス・サチリス168株のゲノムDNA配列中に存在する相同性を有する蛋白質をコードする遺伝子を検索した。
その結果抽出された配列のうち、D−Ala−D−Alaリガーゼモチーフ[Biochemistry,30,1673(1991)]である配列番号33、34または35で表されるアミノ酸配列をコードし、かつ既にその機能が同定されている蛋白質をコードする遺伝子を排除したもののうち、D−Ala−D−Alaリガーゼモチーフと最も高い相同性(29.1%)を示すものとして機能未知遺伝子ywfEを選択した。
ywfEの塩基配列を配列番号9、該塩基配列にコードされる蛋白質のアミノ酸配列を配列番号1に示した。
実験例2 ywfE遺伝子発現株の造成
実験例1で得られた塩基配列情報に従い、バチルス・サチリスのywfE遺伝子断片を以下のようにして取得した。
まず、バチルス・サチリス168株(ATCC 23857)をLB培地[10g/lバクトトリプトン(ディフコ社製)、5g/lイーストエキス(ディフコ社製)、5g/l塩化ナトリウム]に植菌し30℃で一晩静置培養した。培養後、カレント・プロトコールズ・イン・モレキュラー・バイオロジーに記載の飽和フェノールを用いる方法により、該微生物の染色体DNAを単離精製した。
パーセプティブ・バイオシステムズ(Perseptive Biosystems)社製8905型DNA合成機を用いて、配列番号19〜22で表される塩基配列を有するDNA(以下、それぞれプライマーA、プライマーB、プライマーCおよびプライマーDと呼ぶ)を合成した。プライマーAは、バチルス・サチリスの染色体DNAのywfEの開始コドンを含む領域の5’末端にXhoI認識配列を含む塩基配列を付加したものである。プライマーBは、ywfEの終止コドンを含む配列と相補的な塩基配列の5’末端にBamHI認識配列を含む塩基配列を付加したものである。またプライマーCは、trpプロモーターを含む発現ベクターpTrS30[エシェリヒア・コリJM109/pTrS30(FERM BP−5407)より調製]のtrpプロモーター領域の塩基配列の5’末端にEcoRI認識配列を含む塩基配列を付加したものである。プライマーDは、trpプロモーターを含む発現ベクターpTrS30のtrpプロモーター領域の配列と相補的な配列の5’末端にXhoI認識配列を含む塩基配列を付加したものである。
ywfE遺伝子断片の増幅には上記のプライマーAおよびプライマーB、鋳型としてバチルス・サチリスの染色体DNAを用い、trpプロモーター領域の断片の増幅にはプライマーCおよびプライマーD、鋳型としてpTrS30を用いてPCRを行った。PCRは、鋳型として0.1μgの染色体DNAまたは10ngのpTrS30、0.5μmol/Lの各プライマー、2.5unitsのPfu DNAポリメラーゼ(ストラタジーン社製)、4μLのPfu DNAポリメラーゼ用×10緩衝液(ストラタジーン社製)、各200μmol/LのdNTP(dATP、dGTP、dCTPおよびdTTP)を含む反応液40μLを調製し、94℃で1分間、55℃で2分間、72℃で3分間の工程を30回繰り返すことにより行った。
該反応液の1/10量をアガロースゲル電気泳動し、プライマーAおよびプライマーBを用いたPCRではywfE遺伝子断片に相当する約1.4kb、プライマーCおよびプライマーDを用いた反応ではtrpプロモーター領域のDNA断片に相当する約0.3kbのDNA断片がそれぞれ増幅していることを確認した後、残りの反応液と等量のTE[10mmol/L Tris−HCl(pH8.0)、1mmol/L EDTA]飽和フェノール/クロロホルム(1vol/1vol)溶液を添加し、混合した。該溶液を遠心分離して得られた上層に、2倍容量の冷エタノールを加えて混合し、−80℃に30分間放置した。該溶液を遠心分離してDNAを沈殿させた後、該DNAを20μLのTEに溶解した
該溶解液それぞれ5μLを用い、プライマーAおよびプライマーBで増幅したDNAを制限酵素XhoIおよびBamHIで、またプライマーCおよびプライマーDで増幅したDNAを制限酵素EcoRIおよびXhoIで切断し、アガロースゲル電気泳動によりDNA断片を分離した後、ジーンクリーンIIキット(GENECLEAN II kit、BIO 101社製)を用いて、ywfEを含む1.4kbおよびtrpプロモーター領域を含む0.3kbのDNA断片をそれぞれ回収した。
trpプロモーターを含む発現ベクターpTrS30[エシェリヒア・コリJM109/pTrS30(FERM BP−5407)より調製]0.2μgを制限酵素EcoRIおよびBamHIで切断後、アガロースゲル電気泳動によりDNA断片を分離し、上記と同様の方法により4.5kbのDNA断片を回収した。
上記で得られたywfEを含む1.4kb断片、trpプロモーター領域を含む0.3kb断片および4.5kbの断片をライゲーションキット(タカラバイオ社製)を用いて、16℃で16時間反応させ連結した。
該反応液を用いてエシェリヒア・コリNM522株(ストラタジーン社製)を、カルシウムイオンを用いる方法[Proc.Natl.Acad.Sci.,USA,69,2110(1972)]によって形質転換した後、50μg/mlのアンピシリンを含むLB寒天培地に塗布して、30℃で一晩培養した。
生育してきた形質転換体のコロニーより公知の方法に従ってプラスミドを抽出し、制限酵素を用いてその構造を解析することにより、trpプロモーター下流にywfEが連結された発現ベクターであるpPE43が取得されていることを確認した(図1)。
実験例3 ジペプチドの生産
実験例2で得られたpPE43を保有するエシェリヒア・コリNM522(エシェリヒア・コリNM522/pPE43株)を50μg/mlのアンピシリンを含む8mlのLB培地が入った太型試験管に接種し、28℃で17時間培養した。該培養液を遠心分離し、湿菌体を取得した。
終濃度60mg/mlの該湿菌体、120mmol/Lのリン酸カリウムバッファー(pH7.4)、60mmol/Lの塩化マグネシウム、60mmol/LのATP、30mmol/LのL−Ala、30mmol/LのL−Gln、0.4%のナイミーンS−215からなる0.1mlの反応液を調製し、37℃で3分間反応を行った。
反応終了後、反応生成物をジニトロフェノール化法で誘導体化した後にHPLC法により分析した。HPLC法による分析は、分離カラムに関東化学社製のLichrosorb−RP−18カラムを用い、溶離液として1%(v/v)リン酸、25%(v/v)アセトニトリルを用い、0.7ml/分の流動速度で行った。その結果反応液中に120mg/LのL−アラニル−L−グルタミン(L−Ala−L−Gln)が生成蓄積していることを確認した。
対照菌株であるベクターのみを含むエシェリヒア・コリNM522/pTrS30株の菌体ではL−Ala−L−Glnの生成は認められなかった。
実験例4 C末端Hisタグ付加型組換え型ジペプチド合成酵素の精製
上記DNA合成機を用いて、配列番号23および24で表される塩基配列を有するDNA(以下、それぞれプライマーE、プライマーFと呼ぶ)を合成した。プライマーEは、ywfEの開始コドン(atg)をNcoI認識配列(ccatgg)に置換した領域を含む塩基配列である。プライマーFは、ywfEの終止コドンをBamHI認識配列(ggatcc)に置換した領域を含む塩基配列である。
バチルス・サチリス168株(ATCC 23857)の染色体DNAを鋳型とし、上記プライマーEおよびプライマーFをプライマーセットとして用いてPCRを行った。PCRは、0.1μgの染色体DNA、0.5μmol/Lの各プライマー、2.5unitsのPfu DNAポリメラーゼ、4μLのPfu DNAポリメラーゼ用×10緩衝液、200μmol/Lの各dNTPを含む反応液40μLを調製し、94℃で1分間、55℃で2分間、72℃で3分間の工程を30回繰り返すことにより行った。
該反応液の1/10量をアガロースゲル電気泳動し、ywfE断片に相当する約1.4kbの断片が増幅していることを確認後、残りの反応液と等量のTE飽和フェノール/クロロホルム溶液を添加し、混合した。該溶液を遠心分離して得られた上層に、2倍容量の冷エタノールを加えて混合し、−80℃に30分間放置した。該溶液を遠心分離して得られたDNAの沈殿を20μLのTEに溶解した。
該溶解液5μLを用い、増幅したDNAを制限酵素NcoIおよびBamHIで切断し、アガロースゲル電気泳動によりDNA断片を分離した後、ジーンクリーンIIキットを用いて、ywfEを含む1.4kbのDNA断片を回収した。
C末端Hisタグ付加型組換え体発現ベクターpQE60(キアゲン社製)0.2gを制限酵素NcoIおよびBamHIで切断後、アガロースゲル電気泳動によりDNA断片を分離し、上記と同様の方法により3.4kbのDNA断片を回収した。
上記で得られたywfEを含む1.4kbのDNA断片と3.4kbのDNA断片をライゲーションキットを用いて、16℃で16時間反応させ連結した。
該連結反応液を用いてエシェリヒア・コリNM522株をカルシウムイオンを用いる方法によって形質転換した後、50μg/mlのアンピシリンを含むLB寒天培地に塗布して、30℃で一晩培養した。
生育してきた形質転換体のコロニーから公知の方法に従ってプラスミドを抽出し、制限酵素を用いてその構造を解析することにより、C末Hisタグ付加型ywfE発現ベクターであるpQE60ywfEが取得されていることを確認した(図2)。
pQE60ywfEを保有するエシェリヒア・コリNM522(エシェリヒア・コリNM522/pQE60ywfE株)を、50μg/mlのアンピシリンを含む8mlのLB培地の入った太型試験管に接種し28℃で17時間培養した。該培養液を50μg/mlのアンピシリンを含む50mlのLB培地の入った250ml容三角フラスコに接種し30℃で3時間培養した後、終濃度が1mmol/Lになるようにイソプロピル−β−D−チオガラクトピラノシド(IPTG)を添加し、さらに30℃で4時間培養した。該培養液を遠心分離して湿菌体を取得し、該湿菌体から、His Trap(Hisタグ付加タンパク精製キット、Amersham Pharmasia Biotech社製)を用いて、説明書に従いHisタグ付加組換え型酵素を精製した。
実験例5 Hisタグ付加組換え型酵素を用いたジペプチドの生産(1)
(i)実験例4で取得した精製したHisタグ付加組換え型酵素0.04mg、100mmol/LのTris−HCl(pH8.0)、60mmol/Lの塩化マグネシウム、60mmol/LのATP、30mmol/LのL−Ala、30mmol/LのL−Glnからなる0.1mlの反応液を調製し、37℃で16時間反応を行った。
反応終了後、上記実験例3と同様の方法により反応生成物を分析し、反応液中に3.7g/LのL−Ala−L−Glnと0.3g/LのL−アラニル−L−アラニン(L−Ala−L−Ala)が生成蓄積していることを確認した。
(ii)酵素を0.01mg、L−Glnの代わりにL−Phe、L−Met、L−LeuまたはL−Valを含有する以外は、上記(i)の反応液の組成と同じ反応液を調製し、上記(i)の反応条件で反応させた。
反応終了後、上記実験例3と同様の方法により反応生成物を分析し、反応液中にそれぞれ、7.0g/LのL−アラニル−L−フェニルアラニン(L−Ala−L−Phe)のみ、7.0g/LのL−アラニル−L−メチオニン(L−Ala−L−Met)および0.03g/LのL−Ala−L−Ala、5.0g/LのL−アラニル−L−ロイシン(L−Ala−L−Leu)および0.2g/LのL−Ala−L−Ala、または1.6g/LのL−アラニル−L−バリン(L−Ala−L−Val)および0.3g/LのL−Ala−L−Alaが生成蓄積していることを確認した。
(iii)酵素を0.01mg、L−Alaの代わりにGly、L−Glnの代わりにL−PheまたはL−Metを含有する以外は、上記(i)の反応液の組成と同じ反応液を調製し、上記(i)の反応条件で反応させた。
反応終了後、上記実験例3と同様の方法により反応生成物を分析し、反応液中にそれぞれ5.2g/Lのグリシル−L−フェニルアラニン(Gly−L−Phe)または1.1g/Lのグリシル−L−メチオニン(Gly−L−Met)が生成蓄積していることを確認した。
上記反応液組成からATPを除くとジペプチドは全く生成されなかった。
以上の結果から、ywfE遺伝子産物は、ATP存在下において、L−AlaとL−Gln、L−PheL−Met、L−LeuまたはL−Valとから、L−Ala−L−GlnおよびL−Ala−L−Ala、L−Ala−L−Phe、L−Ala−L−MetおよびL−Ala−L−Ala、L−Ala−L−LeuおよびL−Ala−L−Ala、またはL−Ala−L−ValおよびL−Ala−L−Alaを生成する活性、GlyとL−PheまたはL−MetとからGly−L−PheまたはGly−L−Metを生成する活性を有することが明らかになった。
実験例6 Hisタグ付加組換え型酵素を用いたジペプチドの生産(2)
実験例4で得られた精製したHisタグ付加組換え型酵素0.04mg、100mmol/LのTris−HCl(pH8.0)、60mmol/Lの塩化マグネシウム、60mmol/LのATPからなる0.1mlの反応液を調製し、表1の第1行目と最左列のアミノ酸の組み合わせからなる各種L−アミノ酸、Glyまたはβ−Alaをそれぞれ30mmol/Lずつになるように反応液に添加し、37℃で16時間反応を行った。反応終了後、反応生成物をHPLC分析したところ、表1に示すジペプチドが生成していることが確認された。
Figure 0004796495
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表1の第1行目と最左列に記載の2種類(もしくは1種類)のL−アミノ酸、Glyまたはβ−Alaを基質として反応した場合に生成したジペプチドを枠内に記載した。○は配列は未確定だがジペプチドが生成したこと、×はジペプチドの生成が確認されなかったこと、および空欄は未実施を示す。
実験例7 Hisタグ付加組換え型酵素発現株を用いたジペプチドの生産
実験例4で得られたエシェリヒア・コリNM522/pQE60ywfE株を50μg/mlのアンピシリンを含む8mlのLB培地の入った太型試験管に接種し、28℃で17時間培養した。該培養液を50μg/mlのアンピシリンを含む50mlのLB培地の入った250ml容三角フラスコに接種し30℃で3時間培養した後、終濃度が1mmol/LになるようにIPTGを添加し、さらに30℃で4時間培養した。該培養液を遠心分離し湿菌体を取得した。
200g/Lの湿菌体、50g/Lのグルコース、5g/Lのフィチン酸(33%の濃水酸化ナトリウム溶液を用いて中性になるよう希釈)、15g/Lのリン酸二水素カリウム、5g/Lの硫酸マグネシウム・7水和物、4g/LのナイミーンS−215、10ml/Lのキシレン、200mmol/LのL−Ala、200mmol/LのL−Glnからなる20mlの反応液(pH7.2)を50ml容量のビーカーに入れ、32℃、900rpmの条件下で2時間反応を行った。反応中は2mol/Lの水酸化カリウムを用いて反応液のpHを7.2に保った。
反応生成物を実験例3記載の方法と同様の方法で分析したところ、25mg/LのL−Ala−L−Glnの蓄積が確認された。
実験例8 バチルス属に属する各種微生物からのywfE遺伝子に相当する遺伝子のクローニングとその解析
配列番号9で表される塩基配列に基づき、バチルス・サチリスATCC15245、ATCC6633、IAM1213、IAM1107、IAM1214、ATCC9466、IAM1033、ATCC21555、バチルス・アミロリケファシエンスIFO3022、およびバチルス・プミルスNRRL B−12025に存在するywfE遺伝子に相当する遺伝子を以下のようにして取得した。
まず、バチルス・サチルスATCC15245、ATCC6633、IAM1213、IAM1107、IAM1214、ATCC9466、IAM1033、ATCC21555、バチルス・アミロリケファシエンスIFO3022、およびバチルス・プミルスNRRL B−12025をそれぞれLB培地に植菌し30℃で一晩静置培養した。培養後、カレント・プロトコールズ・イン・モレキュラー・バイオロジーに記載の飽和フェノールを用いる方法により、該微生物の染色体DNAをそれぞれ単離精製した。
パーセプティブ・バイオシステムズ社製8905型DNA合成機を用いて、配列番号25および26で表される塩基配列を有するDNA(以下、それぞれプライマーG、プライマーHと呼ぶ)を合成した。プライマーGは、バチルス・サチリス168株の染色体DNAのywfEの開始コドンより上流を含む領域の配列である。プライマーHは、ywfEの終止コドンより下流を含む配列と相補的な配列である。
バチルス・サチルスATCC15245、ATCC6633、IAM1213、IAM1107、IAM1214、ATCC9466、IAM1033、ATCC21555、またはバチルス・アミロリケファシエンスIFO3022の染色体DNAを鋳型とし、上記プライマーGおよびプライマーHをプライマーセットとして用いてPCRを行った。PCRは、0.1μgの染色体DNA、0.5μmol/Lの各プライマー、2.5unitsのPfu DNAポリメラーゼ、4μLのPfu DNAポリメラーゼ用×10緩衝液、200μmol/Lの各dNTPを含む反応液40μLを調製し、94℃で1分間、55℃で2分間、72℃で3分間の工程を30回繰り返すことにより行った。
該反応液の1/10量をアガロースゲル電気泳動し、ywfE断片に相当する約1.4kbの断片が増幅していることを確認後、残りの反応液と等量のTE飽和フェノール/クロロホルム溶液を添加し、混合した。該溶液を遠心分離して得られた上層に、2倍容量の冷エタノールを加えて混合し、−80℃に30分間放置した。該溶液を遠心分離して得られたDNAの沈殿を20μLのTEに溶解した。
上記で得られた各菌株染色体DNA由来の1.4kb断片とpCR−blunt(インビトロジェン社製)を、ライゲーションキットを用いて、16℃で16時間反応を行い連結した。
該反応液を用いてエシェリヒア・コリNM522株をカルシウムイオンを用いる方法によって形質転換した後、50μg/mlのアンピシリンを含むLB寒天培地に塗布して、30℃で一晩培養した。
生育してきた形質転換体のコロニーより公知の方法に従ってプラスミドを抽出し、制限酵素を用いてそれぞれの構造を解析することにより、ywfE遺伝子に相当する遺伝子を含むプラスミドであるpYWFE1(ATCC15245株由来、配列番号36で表される塩基配列を有するDNA)、pYWFE2(ATCC6633株由来、配列番号10で表される塩基配列を有するDNA)、pYWFE3(IAM1213株由来、配列番号11で表される塩基配列を有するDNA)、pYWFE4(IAM1107株由来、配列番号12で表される塩基配列を有するDNA)、pYWFE5(IAM1214株由来、配列番号13で表される塩基配列を有するDNA)、pYWFE6(ATCC9466株由来、配列番号9で表される塩基配列を有するDNA)、pYWFE7(IAM1033株由来、配列番号36で表される塩基配列を有するDNA)、pYWFE8(ATCC21555株由来、配列番号14で表される塩基配列を有するDNA)、pYWFE9(IFO3022株由来、配列番号15で表される塩基配列を有するDNA)が取得されていることを確認した。
一方、バチルス・プミルスNRRL B−12025由来のywfEに相当する遺伝子(配列番号16で表される塩基配列を有するDNA)は以下のように取得した。
上記で調製したNRRL B−12025株の染色体DNAを鋳型にし、配列番号27および28で表される塩基配列からなるDNAをプライマーセットとして用いて、PCRを行った。PCRは、0.1μgの染色体DNA、0.5μmol/Lの各プライマー、2.5unitsのZ−taqポリメラーゼ(タカラバイオ社製)、5μLのZ−taqポリメラーゼ用×10緩衝液(タカラバイオ社製)、200μmol/Lの各dNTPを含む反応液50μLを調製し、98℃で5秒間、55℃で30秒間、72℃で1分間の工程を30回繰り返すことにより行った。
該反応液の1/10量をアガロースゲル電気泳動し、約0.8kbの断片が増幅していることを確認後、残りの反応液と等量のTE飽和フェノール/クロロホルム溶液を添加し、混合した。該混合液を遠心分離して得られた上層に、2倍容量の冷エタノールを加えて混合し、−80℃に30分間放置した。該溶液を遠心分離して得られたDNAの沈殿を20μLのTEに溶解した。
上記で得られた0.8kb断片とpGEM T−easy(プロメガ社製)を、ライゲーションキットを用いて、16℃で16時間反応を行い連結した。
該反応液を用いてエシェリヒア・コリDH5α株をカルシウムイオンを用いる方法によって形質転換した後、50μg/mlのアンピシリンを含むLB寒天培地に塗布して、30℃で一晩培養した。
上記で得られた形質転換体からプラスミドを抽出して、約0.8kbの挿入DNA断片の塩基配列を決定したところ、配列番号16で表される塩基配列中の塩基番号358〜1160番からなる塩基配列が確認された。
次に該プラスミドをEcoRIで切断した後、アガロースゲル電気泳動によりDNA断片を分離した。該DNA断片をジーンクリーンIIキットを用いて精製した。約0.5μgの該精製DNA断片を、DIG−ハイプライムDNAラベリング&デテクション スターターキットI(ロシュ・ダイアグノスティクス社製)を用いて、DIGラベル化した。DIGラベル化は、該キット添付の説明書に従って行った。
上記で得られたDIGラベル化DNAを用いて、NRRL B−12025株の染色体DNAのサザン解析を行った。
NRRL B−12025株の染色体DNAをBamHI、EcoRI、HindIII、KpnI、PstI、SacI、SalIおよびSphIを用いてそれぞれ完全消化し、アガロース電気泳動によりDNA断片を分離した後、常法に従いナイロンメンブレンプラスチャージ(ロシュ・ダイアグノスティクス社製)に転移させた。
UVを照射することにより、該ナイロン膜にDNA断片を固定した後、上記プローブDNAおよび該ナイロン膜を用いてサザンハイブリダイゼーションを行った。
ハイブリダイゼーションは、該プローブDNAと該ナイロン膜を65℃で16時間接触させ、その後該ナイロン膜を、0.1%SDSおよび2×SSCからなる溶液を用い、室温で5分間、2回洗浄し、さらに0.1%SDSおよび0.5×SSCからなる溶液を用い、65℃で15分間、2回洗浄することで行い、その他の操作、条件およびハイブリダイズしたDNAの検出は、上記したDIG−ハイプライムDNAラベリング&デテクション スターターキットIに添付されている説明書に準じて行った。
その結果、HindIIIおよびPstIの完全消化断片の3.5kbp付近に発色が見られた。
次に、NRRL B−12025株の染色体DNAをHindIIIおよびPstIを用いてそれぞれ完全消化し、アガロースゲル電気泳動によりDNA断片を分離した。それぞれの制限酵素消化DNAから3−4kbpの断片をジーンクリーンIIキットを用いて精製し、ライゲーションキットを用いて自己環化させた。
上記で決定した0.8kbのDNA断片の塩基配列に基づき、配列番号29および30で表される塩基配列を設計、合成し、上記で取得した環化DNAを鋳型としてPCRを行った。PCRは、10ngの環化DNA、0.5μmol/Lの各プライマー、2.5unitsのpyrobestポリメラーゼ(タカラバイオ社製)、5μLのpyrobestポリメラーゼ用×10緩衝液(タカラバイオ社製)、200μmol/Lの各dNTPを含む反応液50μLを調製し、98℃で5秒間、55℃で30秒間、72℃で3分30秒間の工程を30回繰り返すことにより行った。
該反応液の1/10量をアガロースゲル電気泳動し、約3.0kbの断片が増幅していることを確認後、残りの反応液と等量のTE飽和フェノール/クロロホルム溶液を添加し、混合した。該混合液を遠心分離して得られた上層に、2倍容量の冷エタノールを加えて混合し、−80℃に30分間放置した。該溶液を遠心分離して得られたDNAの沈殿を20μLのTEに溶解した。
上記で得られたDNA断片とZero Blunt PCR Cloning Kit(インビトロジェン社製)とをライゲーションキットを用いて連結した。
該反応液を用いてエシェリヒア・コリNM522株をカルシウムイオンを用いる方法によって形質転換した後、50μg/mlのアンピシリンを含むLB寒天培地に塗布して、30℃で一晩培養した。
生育してきた形質転換体のコロニーより公知の方法に従ってプラスミドを抽出し、制限酵素を用いてその構造を解析することにより、ywfE遺伝子に相当する遺伝子を含むプラスミドであるpYWFE10(NRRL B−12025株由来、配列番号16で表される塩基配列を有するDNA)が得られていることを確認した。
上記で得られたpYWFE1〜pYWFE10に含まれるywfE遺伝子に相当する各遺伝子の塩基配列を塩基配列分析装置373A・DNAシークエンサーを用いて決定した。
pYWFE1、pYWFE6およびpYWFE7に含まれる遺伝子にコードされる蛋白質のアミノ酸配列は、ywfE遺伝子にコードされる蛋白質のアミノ酸配列と同一であったが、pYWFE2、pYWFE3、pYWFE4、pYWFE5、pYWFE8、pYWFE9およびpYWFE10に含まれる遺伝子にコードされる蛋白質のアミノ酸配列は、ywfE遺伝子にコードされる蛋白質のアミノ酸配列と異なっていた。
pYWFE2、pYWFE3、pYWFE4、pYWFE5、pYWFE8、pYWFE9、pYWFE10およびpYWFE1とpYWFE7に含まれるywfE遺伝子に相当する遺伝子にコードされる蛋白質のアミノ酸配列を配列番号2〜8および1に、該遺伝子の塩基配列を配列番号10〜16および36にそれぞれ示した。
実験例9 C末端Hisタグ付加型組換え型ジペプチド合成酵素の精製
バチルス・サチルスATCC15245、ATCC6633、IAM1213、IAM1107、IAM1214、ATCC9466、IAM1033、ATCC21555、またはバチルス・アミロリケファシエンスIFO3022の染色体DNAを鋳型とし、実験例2記載のプライマーAおよびプライマーBをプライマーセットとして用いてPCRを行った。PCRは、0.1μgの染色体DNA、0.5μmol/Lの各プライマー、2.5unitsのPfu DNAポリメラーゼ、4μLのPfu DNAポリメラーゼ用×10緩衝液、200μmol/Lの各dNTPを含む反応液40μLを調製し、94℃で1分間、55℃で2分間、72℃で3分間の工程を30回繰り返すことにより行った。
バチルス・プミルスNRRL B−12025の染色体DNAを鋳型とした場合は、配列番号31および32で表される塩基配列を有するDNAをプライマーセットとして用い、上記と同様の条件でPCRを行った。
該反応液の1/10量をアガロースゲル電気泳動し、ywfE断片に相当する約1.4kbのDNA断片がそれぞれ増幅していることを確認後、残りの反応液と等量のTE飽和フェノール/クロロホルム溶液を添加し、混合した。該混合液を遠心分離して得られた上層に、2倍容量の冷エタノールを加えて混合し、−80℃に30分間放置した。該溶液を遠心分離して得られたDNAの沈殿を20μLのTEに溶解した。
該溶解液のそれぞれ5μLを用い、増幅したDNAを制限酵素NcoIおよびBamHIで切断し、アガロースゲル電気泳動によりDNA断片を分離した後、ジーンクリーンIIキットを用いて、ywfE遺伝子に相当する遺伝子を含む1.4kbのDNA断片を回収した。
次にC末端Hisタグ付加型組換え体発現ベクターpQE60 0.2μgを制限酵素NcoIおよびBamHIで切断後、アガロースゲル電気泳動によりDNA断片を分離し、上記と同様の方法により3.4kbのDNA断片を回収した。
上記で得られたバチルス・サチルス168株のywfE遺伝子に相当する遺伝子を含む1.4kbのDNA断片、および3.4kbのDNA断片をライゲーションキットを用いて、16℃で16時間反応を行いそれぞれ連結した。
該反応液を用いて大腸菌NM522株をカルシウムイオンを用いる方法により形質転換した後、50μg/mlのアンピシリンを含むLB寒天培地に塗布して、30℃で一晩培養した。
生育してきた形質転換体のコロニーより公知の方法に従ってプラスミドを抽出し、制限酵素を用いてそれらの構造を解析することにより、C末Hisタグ付加型遺伝子発現ベクターであるpQE60ywfE1(ATCC15245由来の遺伝子を含有するベクター)、pQE60ywfE2(ATCC6633由来の遺伝子を含有するベクター)、pQE60ywfE3(IAM1213由来の遺伝子を含有するベクター)、pQE60ywfE4(IAM1107由来の遺伝子を含有するベクター)、pQE60ywfE5(IAM1214由来の遺伝子を含有するベクター)、pQE60ywfE6(ATCC9466由来の遺伝子を含有するベクター)、pQE60ywfE7(IAM1033由来の遺伝子を含有するベクター)、pQE60ywfE8(ATCC21555由来の遺伝子を含有するベクター)、pQE60ywfE9(IFO3022由来の遺伝子を含有するベクター)、およびpQE60ywfE10(NRRL B−12025由来の遺伝子を含有するベクター)が取得されていることを確認した。
上記で得られたエシェリヒア・コリNM522/pQE60ywfE1〜NM522/pQE60ywfE10株を、それぞれ50μg/mlのアンピシリンを含む8mlのLB培地の入った太型試験管に接種し、28℃で17時間培養した。該培養液を50μg/mlのアンピシリンを含む50mlのLB培地の入った250ml容の三角フラスコに接種し30℃で3時間培養した後、終濃度が1mmol/LになるようにIPTGを添加し、さらに30℃で4時間培養した。該培養液を遠心分離して得られた湿菌体から、HisTrapをその使用説明書に従って用いて、Hisタグ付加組換え型酵素を精製した。
実験例10 精製酵素を用いたジペプチドの生産
実験例9で得られた組換え型酵素0.04mg、100mmol/LのTris−HCl(pH8.0)、60mmol/Lの塩化マグネシウム、60mmol/LのATP、30mmol/LのL−Alaおよび30mmol/LのL−Glnからなる0.1mlの反応液を調製し、37℃で16時間反応を行った。
反応終了後、実験例3記載の方法により反応液を分析した結果、それぞれ、3.0〜3.5g/LのL−Ala−L−Glnおよび0.25〜0.3g/LのL−Ala−L−Alaが生成蓄積していることが確認された。
また、上記反応液組成からATPを除くとL−Ala−L−GlnおよびL−Ala−L−Alaは全く生成されなかった。
以上の結果から、実験例8で得られた遺伝子の産物は、いずれもATP存在下でL−AlaとL−GlnとからL−Ala−L−GlnおよびL−Ala−L−Alaを生成する活性を有することが明らかになった。
実験例11 albC遺伝子およびその類縁遺伝子の取得
ストレプトマイセス・ノウルセイのalbC遺伝子の塩基配列[Chemistry & Biol.,,1355(2002)]に基づき、ストレプトマイセス・ノウルセイおよびストレプトマイセス・アルボラスよりalbC遺伝子およびその類縁遺伝子を、以下の方法で取得した。
まず、ストレプトマイセス・ノウルセイIFO15452株とストレプトマイセス・アルボラスIFO14147株を、それぞれ、1%グリシン添加したKM73培地[2g/lイーストエキス(ディフコ社製)、10g/l可溶性デンプン(和光純薬工業社製)]、KP培地[15g/lグルコース、10g/lグリセロール、10g/lポリペプトン(日本製薬株式会社製)、10g/l肉エキス(極東製薬工業株式会社製)、4g/l炭酸カルシウム]に植菌し28℃で一晩振とう培養した。なお、ストレプトマイセス・ノウルセイIFO15452株およびストレプトマイセス・アルボラスIFO14147株は、独立行攻法人 製品評価技術基盤機構 生物資源部門[National Institute of Technology and Evaluation(NITE)Biological Resource Center(BRC)](〒292−0818 千葉県木更津市かずさ鎌足2−5−8)より分譲を受けた。
培養後、Genetic Manipulation of Streptomyces:a Laboratory Manual:John Innes Foundationに記載の方法に従って該微生物の染色体DNAを単離精製した。
albC遺伝子の塩基配列に基づき、パーセプティブ・バイオシステムズ社製8905型DNA合成機を用いて、配列番号41および42で表される塩基配列を有するDNA(以下、それぞれプライマーJ、プライマーKと呼ぶ)を合成した。プライマーJは、ストレプトマイセス・ノウルセイの染色体DNAのalbC遺伝子の開始コドンを含む領域の5’末端にNcoI認識配列を含む塩基配列を付加したものである。プライマーKは、albC遺伝子の終止コドンを含む配列と相補的な塩基配列の5’末端にBglII認識配列を含む塩基配列を付加したものである。
上記のプライマーJおよびプライマーKをプライマーセットに、鋳型としてストトレプトマイセス・ノウルセイまたはストレプトマイセス・アルボラスの染色体DNAを用いてPCRを行った。PCRは、鋳型として0.1μgの染色体DNA、0.5μmol/Lの各プライマー、2.5unitsのEx Taq DNAポリメラーゼ(タカラバイオ社製)、5μLのExTaq DNAポリメラーゼ用×10緩衝液(タカラバイオ社製)、各200μmol/LのdNTP、5μLのジメチルスルホキシドを含む反応液50μLを調製し、94℃で1分間、55℃で30秒間、72℃で1分間からなる工程を30回繰り返すことにより行った。
該反応液の1/10量をアガロースゲル電気泳動し、約0.7kbのDNA断片が増幅していることを確認した後、残りの反応液と等量のTE飽和フェノール/クロロホルム溶液を添加し、混合した。該溶液を遠心分離して得られた上層に、2倍容量の冷エタノールを加えて混合し、−80℃に30分間放置した。該溶液を遠心分離してDNAを沈殿させた後、該DNAをそれぞれ20μLのTEに溶解した。
該溶解液それぞれ5μLを用い、増幅したDNAを制限酵素NcoIおよびBglIIで切断し、アガロースゲル電気泳動によりDNA断片を分離した後、ジーンクリーンIIキットを用いて、700bpのDNA断片をそれぞれ回収した。
ファージT5プロモーターを含む発現ベクターpQE60 0.2μgを制限酵素NcoIおよびBglIIで切断後、アガロースゲル電気泳動によりDNA断片を分離し、上記と同様の方法により3.4kbのDNA断片を回収した。
上記で得られた各放線菌由来の0.7kb断片およびpQE60由来の3.4kbの断片をライゲーションキットを用いて、16℃で16時間反応させ連結した。
該反応液を用いてエシェリヒア・コリNM522株を、カルシウムイオンを用いる方法によって形質転換した後、50μg/mlのアンピシリンを含むLB寒天培地に塗布して、30℃で一晩培養した。
生育してきた形質転換体のコロニーより公知の方法に従ってプラスミドを抽出し、制限酵素を用いてその構造を解析することにより、ファージT5プロモーター下流にストレプトマイセス・ノウルセイ由来のDNAが連結された発現ベクターであるpAL−nou、およびストレプトマイセス・アルブラス由来のDNAが連結された発現ベクターであるpAL−albが取得されていることを確認した(図3)。
それぞれのプラスミドに挿入された放線菌由来のDNA部分の塩基配列を塩基配列決定装置373A・DNAシークエンサーを使って決定したところ、pAL−albには配列番号37で表されるアミノ酸配列を有する蛋白質をコードするDNA、すなわち配列番号39で表される塩基配列を有するDNAが含有され、pAL−nouには配列番号38で表されるアミノ酸配列を有する蛋白質をコードするDNA、すなわち配列番号40で表される塩基配列を有するDNAが含有されていることを確認した。
実験例12 菌体を酵素源に用いたジペプチドの製造
実験例11で得られたpAL−nouまたはpAL−albを保有するエシェリヒア・コリNM522(エシェリヒア・コリNM522/pAL−nou株またはNM522/pAL−alb株)およびプラスミドを保有しないNM522株を50μg/mlのアンピシリンを含む10mlのLB培地が入った試験管(プラスミドを持たない株の場合にはアンピシリンは無添加、以下同様)に接種し、30℃で17時間培養した。この培養液0.5mlを50mlのLB培地が入った250ml容の三角フラスコにそれぞれ植菌し、30℃で1時間振とう培養した後、IPTGを終濃度1mmol/Lになるように添加し、さらに4時間培養を継続した。該培養液を遠心分離し、湿菌体を取得した。
終濃度100mg/mlの該湿菌体、60mmol/Lのリン酸カリウムバッファー(pH7.2)、10mmol/Lの塩化マグネシウム、10mmol/LのATP、1g/LのL−Leu、1g/LのL−Pheからなる3.0mlの反応液を調製し、30℃で反応を行った。反応1時間後にサンプリングし、アセトニトリルを20%(v/v)になるように加えた後、反応生成物をHPLCを用いて分析した。HPLCによる分析は、分離カラムにODS−HAカラム(YMC社製)、溶離液として30%(v/v)アセトニトリルを用い、流速0.6ml/min、215nmの紫外吸収を測定する条件で行った。
その結果、エシェリヒア・コリNM522/pAL−nou株の反応液中には36.7mg/lのシクロ(L−ロイシル−L−フェニルアラニン)[cyclo(L−Leu−L−Phe)]の蓄積が確認されたが、エシェリヒア・コリNM522株の反応液中にはcyclo(L−Leu−L−Phe)はまったく検出されなかった。同じ反応液を以下の条件でHPLCによって分析し、直鎖ジペプチド(以下、「直鎖ジペプチド」は単に「ジペプチド」と称す)であるL−ロイシル−L−フェニルアラニン(L−Leu−L−Phe)およびL−フェニルアラニル−L−ロイシン(L−Phe−L−Leu)を測定した。
両ジペプチドはF−moc化法で誘導体化した後にHPLCを用いて分析した。HPLCによる分析は、分離カラムにODS−HG5(野村化学社製)、溶離液としてA液(酢酸6ml/l、20%(v/v)アセト二トリル、トリエチルアミンにてpH4.8に調整)およびB液(酢酸 6ml/l、70%(v/v)アセト二トリル、トリエチルアミンにてpH4.8調整)を用い、分析開始後5分まではA液:B液=8:2、5分〜20分までは、20分経過したときにA液:B液=1:1になるようにリニアーグラジエントをかけ、流動速度0.6ml/分、励起波長254nm、蛍光波長630nmでジペプチドを検出する条件で行った。
その結果、エシェリヒア・コリNM522/pAL−nou株の反応液中には21.9mg/LのL−Leu−L−Pheと12.0mg/LのL−Phe−L−Leuが蓄積していることが確認された。また対照株として用いたエシェリヒア・コリNM522株の反応液中にはいずれのジペプチドも検出されなかった。
このことから、実験例11で取得されたシクロジペプチド合成酵素はジペプチドを合成する能力をもつことが明らかになった。
実験例13 精製酵素を用いたジペプチドの製造(1)
実験例12と同様にエシェリヒア・コリNM522/pAL−nou株を培養した。培養終了後、遠心分離によって湿菌体を取得し、60mmol/Lのリン酸カリウムバッファー(pH7.2)で洗浄後、10mmol/Lイミダゾール含有20mmol/Lリン酸カリウムバッファーに懸濁した。この懸濁を4℃で超音波処理して菌体破砕液を取得した。この菌体破砕液(10ml、蛋白質0.863mgを含む)をアマシャム社製Hisタグ精製カラムに通塔し、10mmol/Lのイミダゾールを含有する20mmol/Lのリン酸カリウムバッファー15mlを通塔することによる洗浄を行い、HisタグつきalbC蛋白質をカラム内にて精製した。次にこのHisタグ付きのalbC蛋白質を保持するカラムに、実験例12と同組成の反応液(反応液組成:60mmol/Lのリン酸カリウムバッファー(pH7.2)、10mmol/Lの塩化マグネシウム、10mmol/LのATP、1g/LのL−Leu、1g/LのL−Pheからなる反応液)2mlを通塔し、カラム内に基質を保持した状態で、30℃にて、インキュベートした。24時間後、同組成の反応液3mlでカラム内の反応液を溶出し、実験例12と同様の方法により反応液中のシクロジペプチドおよびジペプチドを定量した。
その結果、cyclo(L−Leu−L−Phe)6.8mg/L、L−Leu−L−Phe 28.7mg/LおよびL−Phe−L−Leu 18.5mg/Lが生成していることが分かった。ATPを含まない反応液で同様にインキュベートした場合は、シクロジペプチド、ジペプチドともに検出されなかった。
実験例14 精製酵素を用いたジペプチドの製造(2)
基質のアミノ酸を他のアミノ酸に換える以外は実験例13と同様の方法で酵素反応を行い、生成物を分析した。反応液は、基質のアミノ酸を、1g/LのL−Ala、L−LeuまたはL−Pheに置き換えた以外は実験例13と同じ組成の溶液を用いた。
その結果、反応開始後24時間で、それぞれ9.41mg/LのL−Ala−L−Ala、7.85mg/LのL−Leu−L−Leu、または5.20mg/LのL−Phe−L−Pheが生成していることが分かった。
実験例15 ywfE遺伝子の発現を強化した大腸菌の造成
パーセプティブ・バイオシステムズ社製8905型DNA合成機を用いて、配列番号84〜87に記載の配列をそれぞれ有するDNA(以下、それぞれプライマーL、プライマーM、プライマーN、プライマーO)を合成した。配列番号84の配列は、プラスミドpQE60ywfEのywfE遺伝子のリボソーム結合配列であるシャイン−ダルガノ配列を含む領域について5’側にXhoI認識配列を含む配列を付加したものである。配列番号85の配列は、ywfE遺伝子の終止コドンを含む配列と相補的な配列の5’側にBamHI認識配列を含む配列を付加したものである。また配列番号86の配列は、trpプロモーターを含む発現ベクターpTrS30のtrpプロモーター領域の配列について5’側にEcoRI認識配列を含む配列を付加したものである。配列番号87の配列は、trpプロモーターを含む発現ベクターpTrS30のtrpプロモーター領域の配列と相補的な配列の5’側にXhoI認識配列を含む配列を付加したものである。
プラスミドpQE60ywfEを鋳型とし、ywfE遺伝子断片の増幅には上記のプライマーLおよびプライマーMを、trpプロモーター領域の断片の増幅にはプライマーNおよびプライマーOをそれぞれプライマーセットとして用いたPCRを行った。PCRは、10ngのpQE60ywfE、0.5μmol/Lの各プライマー、2.5unitsのPfu DNAポリメラーゼ、4μLのPfu DNAポリメラーゼ用×10緩衝液、200μmol/Lの各dNTPを含む40μLの反応液を調製し、94℃で1分間、55℃で2分間、72℃で3分間からなる工程を30回繰り返すことにより行った。
該反応液の1/10量をアガロースゲル電気泳動し、プライマーLおよびプライマーMを用いたPCRではywfE遺伝子断片に相当する約1.4kb、プライマーNおよびプライマーOを用いた反応ではtrpプロモーター領域の断片に相当する約0.3kbの断片がそれぞれ増幅していることを確認後、残りの反応液と等量のTE飽和フェノール/クロロホルム溶液を添加し、混合した。該溶液を遠心分離後、得られた上層に2倍容量の冷エタノールを加えて混合し、−80℃に30分間放置した。該溶液を遠心分離して得られたDNAを20μlのTEに溶解した。
上記で得られたそれぞれのDNA溶液5μlを用い、プライマーLおよびプライマーMで増幅したDNAを制限酵素XhoIおよびBamHIで、またプライマーNおよびプライマーOで増幅したDNAを制限酵素EcoRIおよびXhoIで切断し、アガロースゲル電気泳動によりDNA断片を分離した後、ジーンクリーンIIキットにより、それぞれywfE遺伝子を含む1.4kbおよびtrpプロモーター領域を含む0.3kbのDNA断片を回収した。
0.2μgのtrpプロモーターを含む発現ベクターpTrS30を制限酵素EcoRIおよびBamHIで切断後、アガロースゲル電気泳動によりDNA断片を分離し、同様に4.5kbのDNA断片を回収した。
上記で得られたywfE遺伝子を含む1.4kb断片、trpプロモーター領域を含む0.3kb断片および4.5kbの断片をライゲーションキットを用いて、16℃で16時間、連結反応を行った。
該反応液を用いて大腸菌NM522株をカルシウムイオンを用いる方法によって形質転換した後、アンピシリン50μg/mlを含むLB寒天培地に塗布して、30℃で一晩培養した。
生育してきた形質転換体のコロニーより公知の方法に従ってプラスミドを抽出し、trpプロモーター下流にywfE遺伝子を含む発現ベクターであるpPE56を得た該ベクターの構造を制限酵素消化により確認した(図4)。
実験例16 pepD遺伝子、pepN遺伝子、pepB遺伝子、pepA遺伝子およびdppオペロン欠損株の作製
エシェリヒア・コリ染色体DNA上の特定遺伝子が欠損した菌株は、ラムダファージの相同組換え系を利用した方法[Proc.Natl.Acad.Sci.USA,97,6641−6645(2000)]に従って作製した。
以下に記載のプラスミドpKD46、pKD3およびpCP20は、エシェリヒア・コリ ジェネティック ストック センター(米国エール大学)から該プラスミドを保持するエシェリヒア・コリ株を入手し、当該株から公知の方法により抽出して用いた。
(1)遺伝子欠損用DNA断片のクローニング
エシェリヒア・コリK12株の染色体DNA上に存在する配列番号55で表される塩基配列を有するpepD遺伝子、配列番号56で表される塩基配列を有するpepN遺伝子、配列番号57で表される塩基配列を有するpepB遺伝子、配列番号58で表される塩基配列を有するpepA遺伝子および配列番号59で表される塩基配列を有するdppA遺伝子、配列番号60で表される塩基配列を有するdppB、配列番号61で表される塩基配列を有するdppC遺伝子、配列番号62で表される塩基配列を有するdppD遺伝子および配列番号63で表される塩基配列を有するdppF遺伝子を欠損させることを目的に、パーセプティブ・バイオシステムズ社製8905型DNA合成機を用い、エシェリヒア・コリK12株の染色体DNA上における各々の欠損標的遺伝子の上流および下流に位置する36bpからなる塩基配列と相同な塩基配列、および配列番号54で表される酵母由来Flp recombinaseが認識する塩基配列を有するDNAを合成した。ただし、dppA遺伝子、dppB遺伝子、dppC遺伝子、dppD遺伝子およびdppF遺伝子は、オペロンを形成しているので、該オペロンの上流および下流に位置する塩基配列と相同な塩基配列を有するDNAを合成した。
すなわち、pepD遺伝子欠損用DNA断片増幅用プライマーセットとして配列番号64および65、pepN遺伝子欠損用DNA断片増幅用プライマーセットとして配列番号66および67、pepA遺伝子欠損用DNA断片増幅用プライマーセットとして配列番号68および69、pepB遺伝子欠損用DNA断片増幅用プライマーセットとして配列番号70および71、dppオペロン欠損用DNA断片増幅用プライマーセットとして配列番号72および73で表される塩基配列からなるDNAをそれぞれ合成した。
次に、上記合成DNAをプライマーセットとして用い、pKD3DNAを鋳型としてPCRを行った。PCRは10ngのプラスミドDNA、0.5μmol/Lの各プライマー、2.5unitsのPfu DNAポリメラーゼ、4μLのPfu DNAポリメラーゼ用×10緩衝液、200μmol/Lの各deoxyNTPを含む40μLの反応液を用い、94℃で1分間、55℃で2分間、72℃で3分間からなる工程を30回繰り返すことにより行った。
それぞれの反応液の1/10量をアガロースゲル電気泳動し、目的の断片が増幅していることを確認後、残りの反応液と等量のTE飽和フェノール/クロロホルムを添加し、混合した。
該混合液を遠心分離後、得られた上層に2倍容量の冷エタノールを加えて混合し、−80℃で30分間放置した。該溶液を遠心分離し、pepD遺伝子、pepN遺伝子、pepB遺伝子、pepA遺伝子およびdppオペロン欠損用クロラムフェニコール耐性遺伝子含有DNA断片を取得した。
(2)pepD遺伝子欠損エシェリヒア・コリJM101の作製
エシェリヒア・コリJM101株をpKD46で形質転換した後、100mg/Lのアンピシリンを含むLB寒天培地に塗布して、30℃で培養することでpKD46を保持するエシェリヒア・コリJM101株(以下、エシェリヒア・コリJM101/pKD46と称す)を選択した。
プラスミドpKD46は、λRed recombinase遺伝子を有し、該遺伝子の発現はL−アラビノースにより誘導することができる。よって、L−アラビノース存在下で生育させたpKD46を保有する大腸菌を、直鎖状DNAを用いて形質転換すると、高頻度で相同組換えが起こる。またpKD46は温度感受性の複製起点を有するために、42℃で生育させることにより、プラスミドを容易に脱落させることができる。
10mmol/LのL−アラビノースと50μg/mlのアンピシリンの存在下で培養して得られたエシェリヒア・コリJM101/pKD46に、電気パルス法により上記で取得したpepD遺伝子欠損用クロラムフェニコール耐性遺伝子含有DNA断片を導入し、大腸菌JM101の染色体DNA上にpepD遺伝子欠損用クロラムフェニコール耐性遺伝子含有DNA断片が相同組換えにより組込まれた形質転換株を25mg/Lのクロラムフェニコールを含むLB寒天培地(バクトトリプトン10g/L、バクトイーストエキストラクト5g/L、塩化ナトリウム5g/L、寒天15g/L)に塗布し、30℃で培養することで選択した。
選択したクロラムフェニコール耐性株を、25mg/Lのクロラムフェニコールを含むLB寒天培地に植菌し、42℃で14時間培養した後、単コロニー分離した。得られた各コロニーを25mg/Lのクロラムフェニコールを含むLB寒天培地、及び100mg/lのアンピシリンを含むLB寒天培地にレプリカし、37℃で培養し、クロラムフェニコール耐性かつアンピシリン感受性を示すコロニーを選択することにより、pKD46脱落株を取得した。
次に上記で得られたpKD46脱落株をpCP20を用いて形質転換し、100mg/lのアンピシリンを含むLB寒天培地上で選択することにより、pCP20を保持するpKD46脱落株を取得した。
プラスミドpCP20は、酵母由来Flp recombinase遺伝子を有し、該遺伝子の発現は42℃で誘導することができる。
また、上記で作製したpepD遺伝子、pepN遺伝子、pepB遺伝子、pepA遺伝子及び ppオペロン欠損用クロラムフェニコール耐性遺伝子含有DNA断片の、クロラムフェニコール耐性遺伝子の両端にはFlp recombinaseが認識する塩基配列が存在するため、Flp recombinaseが触媒する相同組換えにより容易に該耐性遺伝子を脱落させることができる。
さらに、pCP20は温度感受性の複製起点を有しているため、pCP20保持株を42℃で生育させることにより、Flp recombinaseの発現とpCP20の脱落を同時に誘導することができる。
上記で取得したpCP20保有pKD46脱落株を薬剤無添加のLB寒天培地に植菌し、42℃で14時間培養した後、単コロニー分離した。得られた各コロニーを薬剤無添加LB寒天培地、25mg/Lのクロラムフェニコールを含むLB寒天培地および100mg/Lのアンピシリンを含むLB寒天培地にレプリカして、30℃で培養し、クロラムフェニコール感受性かつアンピシリン感受性を示すコロニーを選択した。
上記で選択した各株からそれぞれ染色体DNAを常法(生物工学実験書、日本生物工学会編97〜98ページ、培風館、1992年)に従って調製した。欠損の標的遺伝子であるpepD遺伝子の内部塩基配列に基づいて設計した配列番号74および75で表される塩基配列を有するDNAをプライマーセットとして用い、染色体DNAを鋳型にしたPCRを行った。PCRは、0.1gの染色体DNA、0.5μmol/Lの各プライマー、2.5unitsのPfu DNAポリメラーゼ、4μLのPfu DNAポリメラーゼ用×10緩衝液、200μmol/Lの各deoxyNTPを含む40μLの反応液を用い、94℃で1分間、55℃で2分間、72℃で3分間からなる工程を30回繰り返すことにより行った。
上記PCRにおいて、増幅DNA断片が検出されなかった株をpepD遺伝子欠損株とし、エシェリヒア・コリJPD1株と命名した。
(3)エシェリヒア・コリJM101の染色体DNA上のpepD遺伝子およびpepN遺伝子が欠損した株の作製
上記(2)で得られたエシェリヒア・コリJPD1株をpKD46で形質転換した後、100mg/lのアンピシリンを含むLB寒天培地に塗布して、30℃で培養することによりpKD46を保持するエシェリヒア・コリJPD1(以下、エシェリヒア・コリJPD1/pKD46と称す)を選択した。エシェリヒア・コリJPD1/pKD46に、電気パルス法によりpepN遺伝子欠損用クロラムフェニコール耐性遺伝子含有DNA断片を導入し、エシェリヒア・コリJPD1/pKD46の染色体DNA上にpepN遺伝子欠損用クロラムフェニコール耐性遺伝子含有DNA断片が相同組換え
により組込まれた形質転換株を取得した。
次に、上記(2)と同様の操作を行うことにより、染色体DNA上からクロラムフェニコール耐性遺伝子が欠落した株を取得し、該株をエシェリヒア・コリJPDN2と命名した。
(4)エシェリヒア・コリJM101の染色体DNA上のpepN遺伝子、pepA遺伝子、pepB遺伝子またはdppオペロンが欠損した株、および多重遺伝子欠損株の作製
pepN遺伝子、pepA遺伝子、pepB遺伝子またはdppオペロンの欠損株は、上記(1)で作製した各遺伝子またはオペロン欠損用クロラムフェニコール耐性遺伝子含有DNA断片を用い、上記(2)と同様の方法により作製した。
上記方法により各々の遺伝子欠損株が取得されたことは、各々の欠損遺伝子の内部塩基配列に基づき設計、合成した配列番号76〜83で表される塩基配列を有するDNAをプライマーセットとして用い、上記(2)と同様のPCRにより確認した。ここで、配列番号76および77で表される塩基配列からなるDNAはpepN欠損確認用、配列番号78および79で表される塩基配列からなるDNAはpepA欠損確認用、配列番号80および81で表される塩基配列からなるDNAはpepB欠損確認用、配列番号82および83で表される塩基配列からなるDNAはdppオペロン欠損確認用プライマーセットである。
上記方法で取得されたdppオペロン欠損株をエシェリヒア・コリJDPP1株、pepN遺伝子欠損株をエシェリヒア・コリJPN1株、pepA遺伝子欠損株をエシェリヒア・コリJPA1株、pepB遺伝子欠損株をエシェリヒア・コリJPB7株と名付けた。
また、上記(3)の方法に準じて、pepD遺伝子、pepN遺伝子、pepA遺伝子、pepB遺伝子およびdppオペロンからなる群より選ばれる2以上の遺伝子またはオペロンの多重欠損株を作製した。多重欠損株が取得できたことの確認は、上記(2)と同様のPCRにより確認した。前記方法で取得されたpepD遺伝子およびdppオペロンが欠損した二重遺伝子欠損株をエシェリヒア・コリJPDP49株、pepB遺伝子、pepD遺伝子およびpepN遺伝子が欠損した三重遺伝子欠損株をエシェリヒア・コリJPDNB43株、pepD遺伝子、pepN遺伝子およびdpp
オペロンが欠損した三重遺伝子欠損株をエシェリヒア・コリJPNDDP36株、pepA遺伝子、pepD遺伝子、pepN遺伝子およびdppオペロンが欠損した四重遺伝子欠損株をエシェリヒア・コリJPNDAP5株、pepB遺伝子、pepD遺伝子、pepN遺伝子およびdppオペロンが欠損した四重遺伝子欠損株をエシェリヒア・コリJPNDBP7株と名づけた。表2は、各遺伝子欠損株における欠損遺伝子名を示す。
Figure 0004796495
実験例17 ペプチダーゼおよびジペプチド取り込み活性が喪失したエシェリヒア・コリを用いたL−Ala−L−GlnおよびL−Ala−L−Alaの生産性の評価
実験例16で得られた各種ペプチダーゼおよびジペプチド取り込み蛋白質をコードする遺伝子の欠損株を、実験例15で造成したプラスミドpPE56を用いて形質転換し、アンピシリン耐性を示す形質転換株を取得した。
得られた形質転換株を50μg/mlのアンピシリンを含む8mlのLB培地の入った試験管に接種し、28℃で17時間培養した。該培養液を100μg/mlのアンピシリンおよびアミノ酸を含む8mlの水性媒体(リン酸水素二カリウム 16g/L、リン酸二水素カリウム 14g/L、硫酸アンモニウム 5g/L、クエン酸(無水) 1g/L、カザミノ酸(Difco社製)0.5g/L、L−Pro 1g/L、L−Ala 2.5g/L、L−Gln 2.5g/L、グルコース 10g/l、ビタミンB 10mg/L、硫酸マグネシウム・7水和物 25mg/l、硫酸鉄7水和物 50mg/l、10mol/lの水酸化ナトリウム溶液を用いてpH7.2に調整。L−Glnは10倍濃縮液をフィルターろ過滅菌後、グルコース、ビタミンB、硫酸マグネシウム・7水和物、硫酸鉄・7水和物は別個に蒸煮後添加)を試験管に1%添加し、30℃で24時間反応させた。該水性媒体を遠心分離し上清を取得した。
該上清中の生産物をF−moc化法で誘導体化した後にHPLC法により分析した。HPLC法による分析は、分離カラムにODS−HG5(野村化学社製)を用い、溶離液としてA液(酢酸6ml/l、20%(v/v)アセト二トリル、トリエチルアミンにてpH4.8に調整)およびB液(酢酸6ml/l、70%(v/v)アセト二トリル、トリエチルアミンにてpH4.8調整)を用い、分析開始後5分まではA液:B液=8:2、5分〜20分までは、20分に達したときにA液:B液=1:1になるようにリニアーグラジエントをかける条件で分析を行った。分析結果を表3に示す。
Figure 0004796495
表3から、2種以下のペプチダーゼをコードする遺伝子が欠損した微生物、1種のペプチド取り込み蛋白質をコードするオペロンのみが欠損した微生物では、ジペプチドの生成、蓄積量は低いが、1種以上のペプチダーゼをコードする遺伝子および1種のペプチド取り込み蛋白質をコードするオペロンが欠損した微生物、または3種以上のペプチダーゼをコードする遺伝子の活性が喪失した微生物では、ジペプチドの生成、蓄積量が大幅に増加していることがわかった。
実験例18 ペプチダーゼおよびペプチド取り込み蛋白質の活性が喪失した大腸菌株を用いたL−アラニル−L−バリン(以下、L−Ala−L−Valと称す)の生産性の評価
実験例17と同様に、各種ペプチダーゼをコードする遺伝子およびペプチド取り込み蛋白質をコードするオペロンの欠損大腸菌株を、pPE56を用いて形質転換した。得られた形質転換株を50μg/mlのアンピシリンを含む8mlのLB培地の入った試験管に接種し、28℃で17時間培養した。該培養液を100μg/mlのアンピシリンおよびアミノ酸を含む8mlの水性媒体(リン酸水素二カリウム 16g/l、リン酸二水素カリウム 14g/l、硫酸アンモニウム 5g/l、クエン酸(無水)1g/l、カザミノ酸(Difco社製)0.5g/l、L−Pro 1g/l、L−Ala 2.5g/l、L−Val 2.5g/l、グルコース 10g/l、ビタミンB 10mg/l、硫酸マグネシウム・7水和物 25mg/l、硫酸鉄・7水和物 50mg/l、10mol/lの水酸化ナトリウム溶液でpH7.2に調整。グルコース、ビタミンB、硫酸マグネシウム・7水和物、硫酸鉄・7水和物は別個に蒸煮後に添加)が入った試験管に1%添加し、30℃で24時間反応させた。該水性媒体を遠心分離し上清を取得した。
該上清中の生成物を、実験例17記載の方法により分析した。結果を表4に示す。
Figure 0004796495
表4から、2種以下のペプチダーゼをコードする遺伝子が欠損した微生物、および1種のペプチド取り込み蛋白質をコードするオペロンのみが欠損した微生物はジペプチドを生産しないが、3種以上のペプチダーゼ遺伝子が欠損した微生物、または1種以上のペプチダーゼをコードする遺伝子および1種のペプチド取り込み蛋白質をコードするオペロンが欠損した微生物は、ジペプチドを生産することがわかった。
実験例19 ペプチダーゼおよびジペプチド取り込み系蛋白質の活性が喪失した大腸菌株を用いたグリシル−L−グルタミン(以下、Gly−L−Glnと称す)の生産性の評価
実験例17と同様に各種ペプチダーゼをコードする遺伝子およびジペプチド取り込み蛋白質をコードするオペロンの欠損株を、pPE56を用いて形質転換した。得られた形質転換株を、50μg/mlのアンピシリンを含む8mlのLB培地の入った試験管に接種し、28℃で17時間培養した。
該培養液を100μg/mlのアンピシリンおよびアミノ酸を含む8mlの水性媒体(リン酸水素二カリウム 16g/l、リン酸二水素カリウム 14g/l、硫酸アンモニウム 5g/L、クエン酸(無水) 1g/L、カザミノ酸(ディフコ社製) 0.5g/L、L−Pro 1g/L、Gly 2.5g/L、L−Gln 2.5g/L、グルコース 10g/L、ビタミンB 10mg/L、硫酸マグネシウム・7水和物 25mg/L、硫酸鉄7水和物 50mg/L、10mol/Lの水酸化ナトリウム溶液を用いてpH7.2に調整。L−Glnは10倍濃縮液をフィルターろ過滅菌後、グルコース、ビタミンB、硫酸マグネシウム・7水和物、硫酸鉄・7水和物は別個に蒸煮後添加)が入った試験管に1%添加し、30℃で24時間反応させた。該水性媒体を遠心分離し上清を取得した。
該上清中の生成物を、実験例17記載の方法より分析した。結果を表5に示す。
Figure 0004796495
表5から、2種以下のペプチダーゼをコードする遺伝子が欠損した微生物、および1種のペプチド取り込み蛋白質をコードするオペロンのみが欠損した微生物はジペプチドを生産しなかったが、3種以上のペプチダーゼをコードする遺伝子が欠損した微生物、および2種以上のペプチダーゼをコードする遺伝子および1種のペプチド取り込み蛋白質をコードするオペロンが欠損した微生物は、ジペプチドを生産することがわかった。
以下に、実施例を示すが、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
L−グルタミンの生合成調節に関与するglnE遺伝子、glnB遺伝子が欠損した微生物の作製
エシェリヒア・コリの染色体DNA上の特定遺伝子の欠損は、ラムダファージの相同組換え系を利用した方法[Proc.Natl.Acad.Sci.USA.,97,6641−6645(2000)]に従って行った。
(1)遺伝子欠損用薬剤耐性遺伝子断片のクローニング
エシェリヒア・コリK12株のglnEglnBの各遺伝子の塩基配列は既に明らかにされている[Science,5331,1453−1474(1997)]。報告されている塩基配列に基づいてパーセプティブ・バイオシステムズ社製8905型DNA合成機を用いて、glnE遺伝子欠損用のプライマーDNAとして配列番号88および89で表される塩基配列からなるDNA、glnB遺伝子欠損用のプライマーDNAとして配列番号90および91で表される塩基配列からなるDNAを合成した。合成したプライマーDNAは、各々の欠損の標的遺伝子の上流と下流に位置する36bpからなる塩基配列に基づき設計した。
上記合成DNAをそれぞれプライマーセットとして用い、pKD3DNAを鋳型としてPCRを行った。PCRはプラスミドDNA 10ng、プライマー各0.5μmol/L、PfuDNAポリメラーゼ2.5units、Pfu DNAポリメラーゼ用×10緩衝液4μL、deoxyNTP各200μmol/Lを含む反応液40μLを用い、94℃で1分間、55℃で2分間、72℃で3分間からなる工程を30回繰り返すことにより行った。
該反応液の1/10量をアガロースゲル電気泳動し、目的の断片が増幅していることを確認後、残りの反応液と等量のTE飽和フェノール/クロロホルムを添加し、混合した。
該混合液を遠心分離後、得られた上層に2倍容量の冷エタノールを加えて混合し、−80℃に30分間放置した。該溶液を遠心分離してDNAを沈殿させた後、該DNAを20μLのTEに溶解した。上記操作により、glnE遺伝子、glnB遺伝子欠損用クロラムフェニコール耐性遺伝子断片を取得した。
(2)染色体DNA上のglnE遺伝子が欠損したエシェリヒア・コリJM101株の作製
エシェリヒア・コリJM101株をpKD46で形質転換した後、100mg/lのアンピシリンを含むLB寒天培地上でpKD46を保持するエシェリヒア・コリJM101株(以下、エシェリヒア・コリJM101/pKD46と称す)を選択した。10mmol/LのL−アラビノースと50μg/mlのアンピシリン存在下で培養したエシェリヒア・コリJM101/pKD46を、電気パルス法によりglnE遺伝子欠損用クロラムフェニコール耐性遺伝子断片を用いて形質転換し、JM101株の染色体DNA上のglnE遺伝子にクロラムフェニコール耐性遺伝子が挿入され、glnE構造遺伝子が欠損するように組換えられた株を25mg/Lのクロラムフェニコールを含むLB寒天培地上で選択した。
取得したクロラムフェニコール耐性株を、25mg/Lのクロラムフェニコールを含むLB寒天培地にレプリカし、42℃で保温した状態で単コロニー分離を実施した。得られた各コロニーを25mg/Lのクロラムフェニコールを含むLB寒天培地および100mg/Lのアンピシリンを含むLB寒天培地にレプリカし、クロラムフェニコール耐性かつアンピシリン感受性を示すコロニーを選択した。次にこのpKD46脱落株をpCP20で形質転換し、100mg/Lのアンピシリンを含むLB寒天培地に塗布して、30℃で一晩培養した。
生育してきたアンピシリン耐性株を薬剤無添加のLB寒天培地にレプリカし、42℃で保温した状態で単コロニー分離を実施した。得られた各コロニーを薬剤無添加、25mg/Lのクロラムフェニコールを含むLB寒天培地、および100mg/Lのアンピシリンを含むLB寒天培地にそれぞれレプリカし、クロラムフェニコール感受性かつアンピシリン感受性を示すコロニーを選択した。ここで得られた各株からそれぞれ染色体DNAを常法(生物工学実験書、日本生物工学会編97〜98ページ、培風館、1992年)により調製した。欠損の標的となるglnE遺伝子の内部配列を元に設計した、配列番号92および93で表される塩基配列からなるプライマーDNAを用いて、コロニーPCRを行った。コロニーPCRは、200μlのピペットチップをコロニーに触れさせることで取得した量の菌体、プライマー各0.5μmol/L、PfuDNAポリメラーゼ2.5units、Pfu DNAポリメラーゼ用×10緩衝液4μL、deoxyNTP各200μmol/Lを含む反応液40μlを用い、94℃で1分間、55℃で2分間、72℃で3分間からなる工程を30回繰り返すことにより行った。PCRに供した株のうちで遺伝子増幅の見られなかった株は、glnE遺伝子欠損株であることを確認し、エシェリヒア・コリJGLE1と名づけた。
(3)染色体DNA上のglnE遺伝子およびglnB遺伝子が欠損したエシェリヒア・コリJM101株の作製
上記(2)で得られたエシェリヒア・コリJGLE1株をpKD46で形質転換した後、100mg/Lのアンピシリンを含むLB寒天培地に塗布し、30℃で一晩培養することによりpKD46を保持するエシェリヒア・コリJGLE1株(以下、エシェリヒア・コリJGLE1/pKD46と称す)を取得した。エシェリヒア・コリJGLE1/pKD46をglnB遺伝子欠損用クロラムフェニコール耐性遺伝子断片を用いて電気パルス法により形質転換し、染色体DNA上のglnB遺伝子にクロラムフェニコール耐性遺伝子が挿入されglnB構造遺伝子が欠損するように組換えられた株を取得した。glnB遺伝子の内部配列を元に設計した、配列番号94および95で表される塩基配列からなるプライマーDNAを用いて、上記(2)の条件下でコロニーPCRを行った。該PCRにより遺伝子増幅が見られなかった株は、gln 遺伝子欠損株であることを確認し、エシェリヒア・コリJGLBE1と命名した。
ywfE遺伝子およびバチルス・サチルス由来のアラニン脱水素酵素遺伝子(ald遺伝子)発現プラスミドの構築
実験例15で造成したywfE遺伝子発現プラスミドpPE56を基に、バチルス・サチルス由来のアラニン脱水素酵素遺伝子(ald遺伝子)を同時に構成的に発現する発現プラスミドを図5に示す方法により構築した。
パーセプティブ・バイオシステムズ社製8905型DNA合成機を用いて、配列番号96および配列番号97で表される塩基配列を有するDNA(以下、それぞれプライマーP、プライマーQと称す)を合成した。配列番号96で表される塩基配列は、ald遺伝子のリボソーム結合配列であるシャイン−ダルガノ配列を含む領域の5’側にBamHI認識配列を含む塩基配列を付加した配列である。配列番号97で表される塩基配列は、ald遺伝子の終止コドンを含む配列と相補的な配列の5’側にBamHI認識配列を含む配列を付加した配列である。
実験例2で取得したバチルス・サチルスの染色体DNAを鋳型とし、上記プライマーPおよびプライマーQをプライマーセットとして用いてPCRを行った。PCRは、0.1μgの染色体DNA、0.5μmol/Lの各プライマー、2.5unitsのPfu DNAポリメラーゼ、4μLのPfuDNAポリメラーゼ用×10緩衝液、200μmol/Lの各dNTPを含む反応液40μLを調製し、94℃で1分間、55℃で2分間、72℃で3分間からなる工程を30回繰り返すことにより行った。
該反応液の1/10量をアガロースゲル電気泳動し、ald遺伝子断片に相当する約1.2kbの断片が増幅していることを確認後、残りの反応液と等量のTE飽和フェノール/クロロホルムを添加し、混合した。該混合液を遠心分離後、得られた上層に2倍容量の冷エタノールを加えて混合し、−80℃に30分間放置した。該溶液を遠心分離してDNAの沈殿を取得し、20μLのTEに溶解した。
該溶解液5μLを用い、増幅したDNAを制限酵素BamHIで切断し、アガロースゲル電気泳動によりDNA断片を分離した後、ジーンクリーンIIキットにより、ald遺伝子を含む1.2kbのDNA断片を回収した。
pPE56 0.2μgを制限酵素BamHIで切断後、アガロースゲル電気泳動によりDNA断片を分離し、上記と同様の方法により6.3kbのDNA断片を回収した。該6.3kbのDNA断片の末端脱リン酸化を、60℃で30分間、アルカリホスファターゼ(coli C75、タカラバイオ社製)処理することにより行った。反応液と等量のTE飽和フェノール/クロロホルムを添加、混合して遠心分離した後、得られた上層に2倍容量の冷エタノールを加えて混合し、−80℃に30分間放置した。該溶液を遠心分離して得られたDNAの沈殿を20μLのTEに溶解した。
上記で得られたald遺伝子を含む1.2kbのDNA断片とアルカリホスファターゼ処理した6.3kbのDNA断片とをライゲーションキットを用いて、16℃で16時間反応させ連結した。
該反応液を用いてエシェリヒア・コリNM522株をカルシウムイオンを用いる方法によって形質転換した後、50μg/mLのアンピシリンを含むLB寒天培地に塗布して、30℃で一晩培養した。
生育してきた形質転換体のコロニーから公知の方法に従ってプラスミドを抽出し、ald遺伝子がywfE遺伝子と順向きに挿入されたプラスミドが取得されていることを制限酵素消化により確認し、該プラスミドをpPE86と命名した(図5)。
エシェリヒア・コリ由来の脱感作型pheA遺伝子および脱感作型aroF遺伝子発現プラスミドの構築
(1)脱感作型pheA遺伝子発現プラスミドの造成
フェニルアラニンアナログ耐性変異導入により得られたフェニルアラニンの脱感作型pheA遺伝子を発現するプラスミドpE pheA 22(特開昭61−260892)から脱感作型pheA遺伝子を、チロシン耐性変異導入により得られたチロシンの脱感作型aroF遺伝子を発現するプラスミドpE aroF 18(特開昭62−65691)から脱感作型aroF遺伝子を取得し、以下の方法により発現プラスミドを構築した。
パーセプティブ・バイオシステムズ社製8905型DNA合成機を用いて、配列番号98および配列番号99で表される塩基配列を有するDNA(以下、それぞれプライマーR、プライマーSと呼ぶ)を合成した。配列番号98で表される塩基配列は、pheA遺伝子のリボソーム結合配列であるシャイン−ダルガノ配列を含む領域の5’側にClaI認識配列を含む配列を付加したものである。配列番号99で表される塩基配列は、pheA遺伝子の終止コドンを含む配列と相補的な配列の5’側にBamHI認識配列を含む配列を付加したものである。プラスミドpE pheA 22を鋳型とし、上記プライマーRおよびプライマーSをプライマーセットとして用いてPCRを行った。PCRは、10ngのプラスミドDNA、0.5μmol/Lの各プライマー、2.5unitsのPfu DNAポリメラーゼ、4μLのPfu DNAポリメラーゼ用×10緩衝液、200μmol/Lの各dNTPを含む反応液40μLを調製し、94℃で1分間、55℃で2分間、72℃で3分間からなる工程を30回繰り返すことにより行った。
該反応液の1/10量をアガロースゲル電気泳動し、pheA遺伝子断片に相当する約1.1kbの断片が増幅していることを確認後、残りの反応液と等量のTE飽和フェノール/クロロホルムを添加し、混合した。該混合液を遠心分離後、得られた上層に2倍容量の冷エタノールを加えて混合し、−80℃に30分間放置した。該溶液を遠心分離し、得られたDNAの沈殿を20μLのTEに溶解した。
該溶解液5μLを用い、増幅したDNAを制限酵素ClaIおよびBamHIで切断し、アガロースゲル電気泳動によりDNA断片を分離した後、ジーンクリーンIIキットにより、pheA遺伝子を含む1.1kbのDNA断片を回収した。
trpプロモーターを含む発現ベクターpTrS30〔大腸菌JM109/pTrS30(FERM BP−5407)より調製可能〕0.2μgを制限酵素ClaIおよびBamHIで切断後、アガロースゲル電気泳動によりDNA断片を分離し、上記と同様の方法により4.6kbのDNA断片を回収した。
上記で得られたpheA遺伝子を含む1.1kbのDNA断片と4.6kbのDNA断片とをライゲーションキットを用いて、16℃で16時間反応させ連結した。
該反応液を用いてエシェリヒア・コリNM522株をカルシウムイオンを用いる方法によって形質転換した後、該形質転換体を50μg/mlのアンピシリンを含むLB寒天培地に塗布して、30℃で一晩培養した。
生育してきた形質転換体のコロニーから公知の方法に従ってプラスミドを抽出して、脱感作型pheA遺伝子発現プラスミドが取得されていることを制限酵素消化により確認し、該プラスミドをpPHEA1と命名した。
上記で得られたpPHEA1 0.2μgを制限酵素EcoRIおよびBamHIで切断後、アガロースゲル電気泳動によりDNA断片を分離した後、ジーンクリーンIIキットにより、trpプロモーターと脱感作型pheA遺伝子を含む1.5kbのDNA断片を回収した。
次にpACYC184の複製起点をもちクロラムフェニコール耐性遺伝子を含むプラスミドベクターpSTV28(タカラバイオ社製)0.2μgを制限酵素EcoRIおよびBamHIで切断後、アガロースゲル電気泳動によりDNA断片を分離し、上記と同様の方法により3.0kbのDNA断片を回収した。
上記で得られたtrpプロモーターと脱感作型pheA遺伝子を含む1.5kbのDNA断片と3.0kbのDNA断片とをライゲーションキットを用いて、16℃で16時間反応させ連結した。
該反応液を用いてエシェリヒア・コリNM522株をカルシウムイオンを用いる方法によって形質転換した後、30μg/mlのクロラムフェニコールを含むLB寒天培地に塗布して、30℃で一晩培養した。
生育してきた形質転換体のコロニーから公知の方法に従ってプラスミドを抽出し、脱感作型pheA遺伝子発現ベクターが取得されていることを制限酵素消化により確認し、該プラスミドをpPHEA2と命名した(図6)。
(2)脱感作型pheA遺伝子および脱感作型aroF遺伝子発現プラスミドの構築
パーセプティブ・バイオシステムズ社製8905型DNA合成機を用いて、配列番号100および配列番号101で表される塩基配列を有するDNA(以下、それぞれプライマーT、プライマーUと呼ぶ)を合成した。配列番号100で表される塩基配列は、aroF遺伝子のリボソーム結合配列であるシャイン−ダルガノ配列を含む領域の5’側にBalII認識配列を含む配列を付加したものである。配列番号101で表される塩基配列は、aroFの終止コドンを含む配列と相補的な配列の5’側にBamHI認識配列を含む配列を付加したものである。プラスミドpE aroF 18を鋳型とし、上記プライマーTおよびプライマーUをプライマーセットとして用いてPCRを行った。PCRは、10ngのプラスミドpE aroF 18、0.5μmol/Lの各プライマー、2.5unitsのPfu DNAポリメラーゼ、4μLのPfu DNAポリメラーゼ用×10緩衝液、200μmol/Lの各dNTPを含む反応液40μLを調製し、94℃で1分間、55℃で2分間、72℃で3分間からなる工程を30回繰り返すことにより行った。
該反応液の1/10量をアガロースゲル電気泳動し、aroF遺伝子断片に相当する約1.1kbの断片が増幅していることを確認後、残りの反応液と等量のTE飽和フェノール/クロロホルムを添加し、混合した。該混合液を遠心分離後、得られた上層に2倍容量の冷エタノールを加えて混合し、−80℃に30分間放置した。該溶液を遠心分離して得られたDNAの沈殿を20μLのTEに溶解した。
該溶解液5μLを用い、増幅したDNAを制限酵素BglIIおよびBamHIで切断し、アガロースゲル電気泳動によりDNA断片を分離した後、ジーンクリーンIIキットにより、脱感作型aroF遺伝子を含む1.1kbのDNA断片を回収した。
次に上記(1)で取得した脱感作型pheA遺伝子発現プラスミドpPHEA2 0.2μgを制限酵素BamHIで切断後、アガロースゲル電気泳動によりDNA断片を分離し、上記と同様の方法により4.5kbのDNA断片を回収した。該4.5kbのDNA断片の末端脱リン酸化を、60℃で30分間、アルカリホスファターゼ処理することにより行った。反応液と等量のTE飽和フェノール/クロロホルムを添加、混合して遠心分離した後、得られた上層に2倍容量の冷エタノールを加えて混合し、−80℃に30分間放置した。該溶液を遠心分離して得られたDNAの沈殿を20μLのTEに溶解した。
上記で得られた脱感作型aroF遺伝子を含む1.1kbのDNA断片とアルカリホスファターゼ処理した4.5kbのDNA断片とをライゲーションキットを用いて、16℃で16時間反応させ連結した。
該反応液を用いてエシェリヒア・コリNM522株をカルシウムイオンを用いる方法によって形質転換した後、30μg/mLのクロラムフェニコールを含むLB寒天培地に塗布して、30℃で一晩培養した。
生育してきた形質転換体のコロニーから公知の方法に従ってプラスミドを抽出し、脱感作型aroF遺伝子が脱感作型pheA遺伝子と順向きに挿入された脱感作型aroF遺伝子および脱感作型pheA遺伝子発現プラスミドが取得されていることを制限酵素消化により確認し、該プラスミドをpPHEAF2と命名した(図6)。
エシェリヒア・コリ由来のチロシン耐性を示すaroF−tyrAオペロン発現プラスミドの構築
(1)チロシン耐性を示すaroFtyrAオペロン発現プラスミドの造成
チロシン耐性変異導入により得られたaroFtyrAオペロンを発現するプラスミドpKm1aroFm−18(特開昭60−034197)からチロシン耐性を示すaroFtyrAオペロンを取得し、以下の方法により発現プラスミドを造成した。
パーセプティブ・バイオシステムズ社製8905型DNA合成機を用いて、配列番号102および103で表される塩基配列からなるDNAを合成した。配列番号102で表される塩基配列は、aroF遺伝子のリボソーム結合配列であるシャイン−ダルガノ配列を含む領域の5’側にClaI認識配列を含む配列を付加したものである。配列番号103で表される塩基配列は、tyrA遺伝子の終止コドンを含む配列と相補的な配列の5’側にSphI認識配列を含む配列を付加したものである。
プラスミドpKm1aroFm−18を鋳型とし、配列番号102および103で表される塩基配列からなるDNAをプライマーセットとして用いてPCRを行った。
PCRは、10ngのプラスミドDNA、0.5μmol/Lの各プライマー、2.5unitsのPfu DNAポリメラーゼ、4μLのPfu DNAポリメラーゼ用×10緩衝液、200μmol/Lの各dNTPを含む反応液40μLを調製し、94℃で1分間、55℃で2分間、72℃で3分間からなる工程を30回繰り返すことにより行った。
該反応液の1/10量をアガロースゲル電気泳動し、aroFtyrA遺伝子断片に相当する約2.2kbの断片が増幅していることを確認した後、残りの反応液と等量のTE飽和フェノール/クロロホルムを添加し、混合した。該混合液を遠心分離後、得られた上層に2倍容量の冷エタノールを加えて混合し、−80℃に30分間放置した。該溶液を遠心分離し、得られたDNAの沈殿を20μLのTEに溶解した。
該溶液5μLを用い、増幅DNA断片を制限酵素ClaIおよびSphIで切断し、アガロースゲル電気泳動によりDNA断片を分離した後、ジーンクリーンIIキットにより、aroFtyrAオペロンを含む2.2kbのDNA断片を回収した。
trpプロモーターを含む発現ベクターpTrS30[大腸菌JM109/pTrS30(FERM BP−5407)より調製可能]0.2μgを制限酵素ClaIおよびSphIで切断後、アガロースゲル電気泳動によりDNA断片を分離し、上記と同様の方法により4.6kbのDNA断片を回収した。
上記で得られたaroFtyrAオペロンを含む2.2kbのDNA断片と4.6kbのDNA断片とをライゲーションキットを用いて、16℃で16時間反応させ連結した。
該反応液を用いてエシェリヒア・コリNM522株をカルシウムイオンを用いる方法によって形質転換した後、該形質転換体を50μg/mlのアンピシリンを含むLB寒天培地に塗布して、30℃で一晩培養した。
生育してきた形質転換体のコロニーから公知の方法に従ってプラスミドを抽出して、チロシン耐性を示すaroFtyrAオペロン発現プラスミドが取得されていることを制限酵素消化により確認し、該プラスミドをpTY1と命名した。
上記で得られたpTY1 0.2μgを制限酵素EcoRIおよびSphIで切断後、アガロースゲル電気泳動によりDNA断片を分離した後、ジーンクリーンIIキットにより、trpプロモーターとチロシン耐性を示すaroFtyrAオペロンを含む2.6kbのDNA断片を回収した。
次にpACYC184の複製起点をもちクロラムフェニコール耐性遺伝子を含むプラスミドベクターpSTV28(タカラバイオ社製)0.2μgを制限酵素EcoRIおよびSphIで切断後、アガロースゲル電気泳動によりDNA断片を分離し、上記と同様の方法により3.0kbのDNA断片を回収した。
上記で得られたtrpプロモーターとチロシン耐性を示すaroFtyrAオペロンを含む2.6kbのDNA断片と3.0kbのDNA断片とをライゲーションキットを用いて、16℃で16時間反応させ連結した。
該反応液を用いてエシェリヒア・コリNM522株をカルシウムイオンを用いる方法によって形質転換した後、30μg/mlのクロラムフェニコールを含むLB寒天培地に塗布して、30℃で一晩培養した。
生育してきた形質転換体のコロニーから公知の方法に従ってプラスミドを抽出し、チロシン耐性を示すaroFtyrAオペロン発現ベクターが取得されていることを制限酵素消化により確認し、該プラスミドをpTY2と命名した。
metJ遺伝子欠損株の作製
(1)metJ遺伝子欠損用薬剤耐性遺伝子断片のクローニング
エシェリヒア・コリK12株のmetJ遺伝子の塩基配列は既に明らかにされている[Science,5331,1453−1474(1997)]。
metJ遺伝子は、エシェリヒア・コリのL−メチオニン生合成系のリプレッサーをコードしており、このリプレッサーが産生できなくなる変異を導入することでL−メチオニン生産能が向上することが知られている(特開2000−139471)。
報告されている塩基配列に基づいてパーセプティブ・バイオシステムズ社製8905型DNA合成機を用いて、metJ遺伝子欠損株作製用のプライマーセットとして、配列番号104および105で表される塩基配列からなるDNAを合成した。
該DNAは、各々欠損の標的遺伝子の上流と下流に位置する36bpからなる塩基配列に基づき設計した。
該DNAをプライマーセットとして用い、pKD3DNAを鋳型にしてmetJ遺伝子欠損株作製用クロラムフェニコール耐性遺伝子断片をPCRで増幅した。
PCRは、プラスミドDNA10ng、プライマー各0.5μmol/L、Pfu DNAポリメラーゼ2.5units、Pfu DNAポリメラーゼ用×10緩衝液4μL、deoxyNTP各200μmol/Lを含む反応液40μLを用い、94℃で1分間、55℃で2分間、72℃で3分間からなる工程を30回繰り返すことにより行った。
該反応液の1/10量をアガロースゲル電気泳動し、目的の断片が増幅していることを確認後、残りの反応液と等量のTE飽和フェノール/クロロホルムを添加し、混合した。該混合液を遠心分離後、得られた上層に2倍容量の冷エタノールを加えて混合し、−80℃に30分間放置した。該溶液を遠心分離し、得られたDNAの沈殿を20μLのTEに溶解した。
(2)染色体DNA上のmetJ遺伝子に薬剤耐性遺伝子が挿入されたエシェリヒア・コリJM101株の作製
エシェリヒア・コリJM101および上記(1)で得られたmetJ遺伝子欠損株作製用クロラムフェニコール耐性遺伝子断片を用いて、実施例1(2)と同様の操作により、エシェリヒア・コリJM101の染色体DNA上のmetJ遺伝子にクロラムフェニコール耐性遺伝子が挿入された組換え体を作製した。
染色体上へのクロラムフェニコール耐性遺伝子の挿入の確認は、クロラムフェニコール耐性遺伝子挿入部位の上流および下流のおよそ400bpに位置する塩基配列を有する配列番号106および107で表される塩基配列からなるDNAをプライマーセットに用いたコロニーPCRにより行った。コロニーPCRは、実施例1(2)と同じ条件で行った。
コロニーPCRに供した株のうちでクロラムフェニコール耐性遺伝子を含むおよそ2kbの大きさの増幅断片が得られた株は、metJ遺伝子欠損株であることを確認した後、実施例7(3)と同様の操作によりFlp recombinaseを発現するpCP20を用いて染色体DNAからクロラムフェニコール耐性遺伝子が脱落した株を作製し、エシェリヒア・コリJMJ1と命名した。
ywfE遺伝子およびエシェリヒア・コリ由来阻害解除型3−ホスホグリセリン酸デヒドロゲナーゼ遺伝子(serA遺伝子)発現プラスミドの構築
エシェリヒア・コリ由来の3−ホスホグリセリン酸デヒドロゲナーゼ遺伝子(serA遺伝子)において、構造遺伝子の1096〜1098番目のコドンを終止コドン(TAA)に置換する変異は、3−ホスホグリセリン酸デヒドロゲナーゼのC末端の45アミノ酸残基が欠失した、セリンによる実質的な阻害が解除された変異型の3−ホスホグリセリン酸デヒドロゲナーゼをコードする遺伝子(以下、阻害解除型serA遺伝子という)を与えることが知られている(特許第2584409号)。
阻害解除型serA遺伝子増幅用プライマーには配列番号108で表される塩基配列からなるDNA、およびコドン置換変異配列を含む配列番号109で表される塩基配列からなるDNAを用いた。
配列番号108で表される塩基配列は、serA遺伝子のリボソーム結合配列であるシャイン−ダルガルノ配列を含む領域の5’側にClaI認識配列を含む配列を付加した配列であり、配列番号109で表される塩基配列は、serA遺伝子のC末端45アミノ酸残基を欠失させるための終止コドンを含む配列と相補的な配列の5’側にSphI認識配列を含む配列を付加した配列である。
上記合成DNAをそれぞれプライマーセットとして用い、エシェリヒア・コリW3110株の染色体DNAを鋳型に阻害解除型serA遺伝子を増幅するPCRを行った。PCRは、染色体DNA0.1μg、プライマー各0.5μmol/L、Pfu DNAポリメラーゼ2.5units、Pfu DNAポリメラーゼ用×10緩衝液4μL、deoxyNTP各200μmol/Lを含む反応液40μLを用い、94℃で1分間、55℃で2分間、72℃で3分間からなる工程を30回繰り返すことにより行った。
該反応液の1/10量をアガロースゲル電気泳動し、阻害解除型serA遺伝子断片に相当する約1.1kbの断片が増幅していることを確認後、残りの反応液と等量のTE飽和フェノール/クロロホルムを添加し、混合した。該混合液を遠心分離後、得られた上層に2倍容量の冷エタノールを加えて混合し、−80℃に30分間放置した。該溶液を遠心分離して得られたDNAの沈殿を20μLのTEに溶解した。
該溶解液5μLを用い、増幅したDNAを制限酵素ClaIとSphIで切断し、アガロースゲル電気泳動によりDNA断片を分離した後、ジーンクリーンIIキットにより、serAを含む1.1kbのDNA断片を回収した。
次に、trpプロモーターを含む発現ベクターpTrS30〔大腸菌JM109/pTrS30(FERM BP−5407)より調製可能〕0.2μgを制限酵素ClaIおよびSphIで切断後、アガロースゲル電気泳動によりDNA断片を分離し、上記と同様の方法により4.3kbのDNA断片を回収した。
上記で得られたserA遺伝子を含む1.1kbのDNA断片と4.3kbのDNA断片とをライゲーションキットを用いて、16℃で16時間反応させ連結した。
該反応液を用いてエシェリヒア・コリNM522株をカルシウムイオンを用いる方法によって形質転換した後、該形質転換体を50μg/mlのアンピシリンを含むLB寒天培地に塗布して、30℃で一晩培養した。
生育してきた形質転換体のコロニーから公知の方法に従ってプラスミドを抽出し、プラスミドpSE15と名付けた。該ベクターの構造を制限酵素消化により確認した。
上記で得られたエシェリヒア・コリ由来阻害解除型serA遺伝子発現プラスミドpSE15を鋳型に、配列番号110および109で表される塩基配列からなるDNAをプライマーセットとして用いて阻害解除型serA遺伝子断片の増幅を行った。
また実験例15で造成したywfE遺伝子発現プラスミドpPE56を鋳型に、配列番号111および112で表される塩基配列からなるDNAプライマーセットを用いてtrpプロモーターを含むywfE遺伝子断片の増幅を行った。PCRは、いずれもプラスミドDNA10ng、プライマー各0.5μmol/L、Pfu DNAポリメラーゼ2.5units、Pfu DNAポリメラーゼ用×10緩衝液4μL、deoxyNTP各200μmol/Lを含む反応液40μLを用い、94℃で1分間、55℃で2分間、72℃で3分間からなる工程を30回繰り返すことにより行った。
各該反応液の1/10量をアガロースゲル電気泳動し、目的の断片が増幅していることを確認後、残りの反応液と等量のTE飽和フェノール/クロロホルムを添加し、混合した。
該混合液を遠心分離後、得られた上層に2倍容量の冷エタノールを加えて混合し、−80℃に30分間放置した。該溶液を遠心分離してDNAを沈殿させた後、20μLのTEに溶解した。
上記操作により、阻害解除型serA遺伝子断片およびtrpプロモーターを含むywfE遺伝子断片を取得した。阻害解除型serA遺伝子断片は、制限酵素BglIIとSphIを用いて切断し、trpプロモーターを含むywfE遺伝子断片は、制限酵素EcoRIとBamHIで切断し、それぞれアガロースゲル電気泳動によりDNA断片を分離した後、ジーンクリーンIIキットにより、serA遺伝子を含む1.1kbおよびtrpプロモーターとywfE遺伝子とを含む1.8kbのDNA断片を回収した。
trpプロモーターを含む発現ベクターpTrS30 0.2μgを制限酵素EcoRIおよびSphIで切断後、アガロースゲル電気泳動によりDNA断片を分離し、上記と同様の方法により3.9kbのDNA断片を回収した。
上記で得られたserA遺伝子を含む1.1kbのDNA断片とtrpプロモーター、ywfE遺伝子を含む1.8kbのDNA断片、および3.9kbのDNA断片とをライゲーションキットを用いて、16℃で16時間反応させ連結した。
該反応液を用いてエシェリヒア・コリNM522株をカルシウムイオンを用いる方法によって形質転換した後、該形質転換体を50μg/mlのアンピシリンを含むLB寒天培地に塗布して、30℃で一晩培養した。
生育してきた形質転換体のコロニーから公知の方法に従ってプラスミドを抽出し、阻害解除型serA遺伝子がywfE遺伝子と順向きに挿入されたプラスミドが取得されていることを制限酵素消化により確認し、該プラスミドをpPE212と命名した。
ilvL遺伝子欠損株、および復帰型ilvG遺伝子置換株の作製
(1)ilvL遺伝子欠損株作製用薬剤耐性遺伝子断片および復帰型ilvG遺伝子置換株作製用DNA断片のクローニング
エシェリヒア・コリK12株のilvLilvGの各遺伝子の塩基配列は既に明らかにされている[Science,5331,1453−1474(1997)]。
エシェリヒア・コリK12株のilvGMEDAオペロンの発現を調節するアテニュエーター領域は該オペロンの5’側上流域に位置し、その塩基配列はNucleic.Acids Res.15,2137(1987)に記載されている。またこのアテニュエーター領域を除去することにより、アテニュエーションが機能しなくなりilvGMEDAオペロンが構成的に発現することが知られている(特開平8−473979)ことから、以下の方法により、ilvGMEDAオペロン構成発現型のエシェリヒア・コリK12株を作製した。
また、エシェリヒア・コリK12株の野生株は、ilvG遺伝子がフレームシフト変異を持っているために活性のあるアセトヒドロキシ酸シンターゼのアイソザイムII(AHASII)が発現していない[Proc.Natl.Acad.Sci.USA,78,922,(1981)]。そこでAHASIIが正常に機能しているエシェリヒア・コリO157:H7株の染色体DNA(http://www.genome.wisc.edu/sequencing/o157.htm)上に存在するilvG遺伝子配列を参考に、エシェリヒア・コリK12株のilvG遺伝子の981番目と982番目の間にAAという2塩基の挿入によりフレームが戻った変異を導入し、アセトヒドロキシ酸シンターゼの活性が回復したエシェリヒア・コリK12株を以下の方法で作成した。
報告されている塩基配列に基づいてパーセプティブ・バイオシステムズ社製8905型DNA合成機を用いて、ilvL遺伝子欠損株作製用薬剤耐性遺伝子を増幅するためのプライマーセットとして、配列番号113および114で表される塩基配列からなるDNAを合成した。
該DNAは各々欠損の標的遺伝子の上流と下流に位置する36bpの相同配列を有している。
また、復帰型ilvG遺伝子上流領域増幅用プライマーセットとして、配列番号115で表される塩基配列からなるDNA、および二塩基挿入変異配列を含む配列番号116で表される塩基配列からなるDNA、復帰型ilvG遺伝子下流領域増幅用プライマーセットとして、二塩基変異配列を含む配列番号117で表される塩基配列からなるDNA、および配列番号118で表される塩基配列からなるDNAを合成した。
上記DNAをそれぞれプライマーセットとして用い、pKD3DNAを鋳型にilvL遺伝子欠損用クロラムフェニコール耐性遺伝子断片を、エシェリヒア・コリW3110株の染色体DNAを鋳型に、復帰型ilvG上流領域、および復帰型ilvG下流領域をPCRにより増幅した。PCRは染色体DNA0.1μg、またはプラスミドDNA10ng、プライマー各0.5μmol/L、Pfu DNAポリメラーゼ2.5units、Pfu DNAポリメラーゼ用×10緩衝液4μL、deoxyNTP各200μmol/Lを含む反応液40μLを用い、94℃で1分間、55℃で2分間、72℃で3分間からなる工程を30回繰り返すことにより行った。
各該反応液の1/10量をアガロースゲル電気泳動し、目的の断片が増幅していることを確認後、残りの反応液と等量のTE飽和フェノール/クロロホルムを添加し、混合した。
該混合液を遠心分離後、得られた上層に2倍容量の冷エタノールを加えて混合し、−80℃に30分間放置した。該溶液を遠心分離してDNAを沈殿させた後、該DNAを20μLのTEに溶解した。上記操作により、ilvL遺伝子欠損株作製用クロラムフェニコール耐性遺伝子断片、および復帰型ilvG遺伝子上流領域、復帰型ilvG遺伝子下流領域を取得した。
次に、復帰型ilvG遺伝子上流領域、および復帰型ilvG遺伝子下流領域を鋳型に、配列番号115および118で表される塩基配列を有するDNAをプライマーセットとして用いてクロスオーバーPCR[A.J.Link,D.Phillips,G.M.Church,J.Bacteriol.,179,6228−6237(1997)]を行った。PCRは、上記と同様の条件下で行った。
上記PCRにより、復帰型ilvG遺伝子上流領域と復帰型ilvG遺伝子下流領域が連結した復帰型ilvG置換株作製用DNA断片を取得した。
(2)染色体DNA上のilvG遺伝子が復帰型ilvG遺伝子に置換したエシェリヒア・コリJM101株の作製
エシェリヒア・コリJM101株を常法によりpKD46で形質転換した後、100mg/lのアンピシリンを含むLB寒天培地に塗布し、30℃で一晩培養することによりpKD46を保持するエシェリヒア・コリJM101株(以下、エシェリヒア・コリJM101/pKD46と称す)を選択した。
10mmol/LのL−アラビノースと50μg/mlのアンピシリン存在下で培養したエシェリヒア・コリJM101/pKD46を、上記(1)で取得した復帰型ilvG遺伝子置換株作製用DNA断片を用いて電気パルス法により形質転換し、染色体DNA上のilvG遺伝子が復帰型ilvGに置換した株を、200mg/LのL−バリンを含むM9培地にグルコースを添加した寒天培地上で選択した。
取得したL−バリン耐性株を、再度200mg/LのL−バリンを含むM9培地にグルコースを添加した寒天培地にレプリカし、42℃で保温した状態で単コロニー分離を実施した。得られた各コロニーを200mg/LのL−バリンを含むM9培地にグルコースを添加した寒天培地および100mg/Lのアンピシリンを含むLB寒天培地にレプリカし、L−バリン耐性かつアンピシリン感受性を示すコロニーを選択し、取得された復帰型ilvG遺伝子置換株を、エシェリヒア・コリJM101G+1と命名した。
(3)染色体DNA上のilvG遺伝子が復帰型ilvG遺伝子に置換し、ilvL遺伝子が欠損したエシェリヒア・コリJM101株の作製
上記(2)で得られたエシェリヒア・コリJM101G+1株をpKD46で形質転換した後、100mg/Lのアンピシリンを含むLB寒天培地に塗布し、30℃で一晩培養することによりpKD46を保持するエシェリヒア・コリJM101G+1株(以下、エシェリヒア・コリJM101G+1/pKD46と称す)を取得した。
次に、上記(1)で取得したilvL遺伝子欠損株作製用クロラムフェニコール耐性遺伝子断片を用いてエシェリヒア・コリJM101G+1/pKD46を、電気パルス法により形質転換し、JM101株の染色体DNA上のilvL遺伝子にクロラムフェニコール耐性遺伝子が挿入された組換え株を25mg/Lのクロラムフェニコールを含むLB寒天培地上で選択した。
取得したクロラムフェニコール耐性株を、25mg/Lのクロラムフェニコールを含むLB寒天培地にレプリカし、42℃で保温した状態で単コロニー分離を実施した。得られた各コロニーを25mg/Lのクロラムフェニコールを含むLB寒天培地、および100mg/Lのアンピシリンを含むLB寒天培地にレプリカし、クロラムフェニコール耐性かつアンピシリン感受性を示すpKD46脱落株を選択した。
エシェリヒア・コリの染色体DNA上において、クロラムフェニコール耐性遺伝子挿入部位の上流および下流のおよそ400bpに位置する塩基配列を有する配列番号119および120で表される塩基配列を合成し、該合成DNAをプライマーセットに用いたコロニーPCRにより、上記で取得した形質転換株の染色体DNAの構造を確認した。コロニーPCRは、200μlのピペットチップをコロニーに触れさせることで取得した量の菌体、プライマー各0.5μmol/L、Pfu DNAポリメラーゼ2.5units、Pfu DNAポリメラーゼ用×10緩衝液4μL、deoxyNTP各200μmol/Lを含む反応液40μlを用い、94℃で1分間、55℃で2分間、72℃で3分間からなる工程を30回繰り返すことにより行った。
コロニーPCRに供した株のうちでクロラムフェニコール耐性遺伝子を含むおよそ2kbの大きさの増幅断片が得られた株は、ilvL遺伝子欠損株であることを確認し、エシェリヒア・コリJILG+Cm1と命名した。
次に上記で得られたエシェリヒア・コリJILG+Cm1をpCP20を用いて形質転換し、100mg/lのアンピシリンを含むLB寒天培地上で選択することにより、pCP20を保持するエシェリヒア・コリJILG+Cm1を取得した。
プラスミドpCP20は、酵母由来Flp recombinase遺伝子を有し、該遺伝子の発現は42℃で誘導することができる。
また、上記(1)で作製したilvL遺伝子欠損株作製用クロラムフェニコール耐性遺伝子断片中のクロラムフェニコール耐性遺伝子の両端には、Flp recombinaseが認識する塩基配列が存在するため、Flp recombinaseが触媒する相同組換えにより容易に該耐性遺伝子を脱落させることができる。
さらに、pCP20は温度感受性の複製起点を有しているため、pCP20保持株を42℃で生育させることにより、Flp recombinaseの発現とpCP20の脱落を同時に誘導することができる。
上記で取得したエシェリヒア・コリJILG+Cm1を薬剤無添加のLB寒天培地に植菌し、42℃で14時間培養した後、単コロニー分離した。得られた各コロニーを薬剤無添加LB寒天培地、25mg/Lのクロラムフェニコールを含むLB寒天培地および100mg/Lのアンピシリンを含むLB寒天培地にレプリカして、30℃で培養し、クロラムフェニコール感受性かつアンピシリン感受性を示すコロニーを選択した。
上記で選択した各株について、配列番号119および120で表される塩基配列からなるDNAをプライマーセットとして用いて、コロニーPCRを行った。コロニーPCRは、200μlのピペットチップをコロニーに触れさせることで取得した量の菌体、プライマー各0.5μmol/L、Pfu DNAポリメラーゼ2.5units、Pfu DNAポリメラーゼ用×10緩衝液4μL、deoxyNTP各200μmol/Lを含む反応液40μlを用い、94℃で1分間、55℃で2分間、72℃で3分間からなる工程を30回繰り返すことにより行った。
PCRに供した株のうちでクロラムフェニコール耐性遺伝子が脱落したおよそ0.7kbの大きさの増幅断片が得られた株は、ilvL遺伝子欠損株であることを確認し、エシェリヒア・コリJILG+1と命名した。
阻害解除型ilvA置換株の作製
(1)ilvA遺伝子欠損株作製用薬剤耐性遺伝子断片および阻害解除型ilvA遺伝子置換株作製用DNA断片のクローニング
エシェリヒア・コリK12株のilvA遺伝子の塩基配列は既に明らかにされている[Science,5331,1453−1474(1997)]。
L−イソロイシンによる阻害が実質的に解除したスレオニンデアミナーゼをコードするilvA219遺伝子(以下、阻害解除型ilvA遺伝子と称す)は447番目のロイシンがフェニルアラニンへ置換した変異を有することが知られている。[Biochemistry,34,9403(1995)]。
報告されている塩基配列に基づいてパーセプティブ・バイオシステムズ社製8905型DNA合成機を用いて、ilvA遺伝子欠損株作製用薬剤耐性遺伝子断片を増幅するためのプライマーDNAとして配列番号121および122で表される塩基配列からなるDNAを合成した。
該DNAは各々欠損の標的遺伝子の上流と下流に位置する36bpと同一の塩基配列を有している。
また、阻害解除型ilvA遺伝子上流領域増幅用のプライマーセットとして、配列番号123で表される塩基配列からなるDNA、コドン置換変異配列を含む配列番号124で表される塩基配列を有するDNAを、阻害解除型ilvA遺伝子下流領域増幅用プライマーセットとして、コドン置換変異配列を含む配列番号125で表される塩基配列からなるDNA、配列番号126で表される塩基配列からなるDNAを合成した。
上記DNAをそれぞれプライマーセットとして用い、pKD3DNAを鋳型にilvA遺伝子欠損株作製用クロラムフェニコール耐性遺伝子断片を、エシェリヒア・コリW3110株の染色体DNAを鋳型に阻害解除型ilvA遺伝子上流領域、および阻害解除型ilvA遺伝子下流領域を増幅するPCRを行った。PCRは染色体DNA0.1μg、またはプラスミドDNA10ng、プライマー各0.5μmol/L、Pfu DNAポリメラーゼ2.5units、Pfu DNAポリメラーゼ用×10緩衝液4μL、deoxyNTP各200μmol/Lを含む反応液40μLを用い、94℃で1分間、55℃で2分間、72℃で3分間からなる工程を30回繰り返すことにより行った。
各該反応液の1/10量をアガロースゲル電気泳動し、目的の断片が増幅していることを確認後、残りの反応液と等量のTE飽和フェノール/クロロホルムを添加し、混合した。
該混合液を遠心分離後、得られた上層に2倍容量の冷エタノールを加えて混合し、−80℃に30分間放置した。該溶液を遠心分離してDNAを沈殿させた後、該DNAを20μLのTEに溶解した。上記操作により、ilvA遺伝子欠損用クロラムフェニコール耐性遺伝子断片、阻害解除型ilvA遺伝子上流領域、および阻害解除型ilvA遺伝子下流領域を取得した。
次に上記PCR増幅断片のうち、阻害解除型ilvA遺伝子上流領域、および阻害解除型ilvA遺伝子下流領域を鋳型に、配列番号123および126で表される塩基配列からなるDNAをプライマーセットとして用いて、クロスオーバーPCRを行った。PCRは、上記と同様の条件下で行った。
上記PCRにより、阻害解除型ilvA遺伝子上流領域と阻害解除型ilvA遺伝子下流領域が連結した阻害解除型ilvA遺伝子置換株作製用DNA断片を取得した。
(2)エシェリヒア・コリの染色体DNA上のilvA遺伝子に薬剤耐性遺伝子が挿入されたエシェリヒア・コリJM101株の作製
10mmol/LのL−アラビノースと50μg/mlのアンピシリン存在下で培養したエシェリヒア・コリJM101/pKD46を、上記(1)で取得したilvA遺伝子欠損用クロラムフェニコール耐性遺伝子断片を用いて電気パルス法により形質転換し、JM101株の染色体DNA上のilvA遺伝子にクロラムフェニコール耐性遺伝子が挿入され、ilvA構造遺伝子が欠損した組換え株を25mg/Lのクロラムフェニコールを含むLB寒天培地上で選択した。
取得したクロラムフェニコール耐性株を、25mg/Lのクロラムフェニコールを含むLB寒天培地にレプリカし、30℃で保温した状態で単コロニー分離を実施した。得られた各コロニーを25mg/Lのクロラムフェニコールと100mg/Lのアンピシリンを含むLB寒天培地にレプリカし、クロラムフェニコール耐性かつアンピシリン耐性性を示すコロニーを選択した。
得られた各株について、染色体DNA上のクロラムフェニコール耐性遺伝子挿入部位の上流および下流のおよそ400bpに位置する塩基配列を有する配列番号123および126で表される塩基配列を有するDNAをプライマーセットとして、コロニーPCRを行った。
コロニーPCRは、200μlのピペットチップをコロニーに触れさせることで取得した量の菌体、プライマー各0.5μmol/L、Pfu DNAポリメラーゼ2.5units、Pfu DNAポリメラーゼ用×10緩衝液4μL、deoxyNTP各200μmol/Lを含む反応液40μlを用い、94℃で1分間、55℃で2分間、72℃で3分間からなる工程を30回繰り返すことにより行った。
PCRに供した株のうちでクロラムフェニコール耐性遺伝子を含むおよそ2kbの大きさの増幅断片が得られた株は、ilvA遺伝子欠損株であることを確認し、エシェリヒア・コリJIACm1/pKD46と命名した。
(3)染色体DNA上のilvA遺伝子が阻害解除型ilvA遺伝子に置換したエシェリヒア・コリJM101株の作製
上記(2)で作製したエシェリヒア・コリJIACm1/pKD46株を、10mmol/LのL−アラビノースと50μg/mlのアンピシリン存在下で培養後、上記(1)で取得した阻害解除型ilvA遺伝子置換株作製用DNA断片を用いて電気パルス法により形質転換し、JIACm1株の染色体DNA上のilvA遺伝子が阻害解除型ilvA遺伝子に置換した株を、イソロイシン要求性の復帰指標にしてM9培地にグルコースを添加した寒天培地上で選択した。
生育してきたアンピシリン耐性株を薬剤無添加のM9培地にグルコースを添加した寒天培地にレプリカし、42℃で保温した状態で単コロニー分離を実施した。得られた各コロニーを薬剤無添加、25mg/Lのクロラムフェニコールを含むLB寒天培地、および100mg/Lのアンピシリンを含むLB寒天培地にそれぞれレプリカし、クロラムフェニコール感受性かつアンピシリン感受性を示すコロニーを選択した。得られた株が阻害解除型ilvA遺伝子置換株であることを確認し、エシェリヒア・コリJIA1と命名した。
(4)染色体DNA上のilvA遺伝子が、阻害解除型ilvA遺伝子に置換したエシェリヒア・コリJILG+1の作製
エシェリヒア・コリJM101の代わりに親株として実施例7で作製したエシェリヒア・コリJILG+1を用いて、上記(1)〜(3)の操作を行うことにより、ilvL遺伝子が欠損し、ilvG遺伝子が復帰型ilvG遺伝子に置換しており、かつilvA遺伝子が、阻害解除型ilvA遺伝子に置換した株を取得し、エシェリヒア・コリJILG+IA1と命名した。
変異型leuA遺伝子置換株の作製
(1)leuA遺伝子欠損株作製用薬剤耐性遺伝子断片および変異型leuA遺伝子置換株作製用DNA断片のクローニング
エシェリヒア・コリK12株のleuA遺伝子の塩基配列は既に明らかにされている[Science,5331,1453−1474(1997)]。
エシェリヒア・コリFERM BP−4704は、ロイシンアナログ(4−アザロイシン)耐性により選抜されてきたロイシン生産菌であり(特開平8−70879)、L−ロイシンによる阻害が実質的に解除したイソプロピルリンゴ酸シンターゼをコードする変異型leuA遺伝子を有していると考えられる。
報告されている塩基配列に基づいてパーセプティブ・バイオシステムズ社製8905型DNA合成機を用いて、leuA遺伝子欠損株作製用薬剤耐性遺伝子断片のを増幅するためのプライマーセットとして、配列番号127および128で表される塩基配列からなるDNAを合成した。
該DNAは、各々欠損の標的遺伝子の上流と下流に位置する36bpと同一の塩基配列を有している。
また、変異型leuA遺伝子置換株作製用DNA断片を増幅するためのプライマーセットとして、leuA遺伝子の開始コドンから上流およそ200bpに位置する塩基配列を有する配列番号129で表されるDNA、および終止コドンから下流およそ200bpに位置する塩基配列と逆向きの配列を有する配列番号130で表されるDNAを合成した。
上記のDNAをそれぞれプライマーセットとして用い、pKD3DNAを鋳型にしてleuA遺伝子欠損株作製用クロラムフェニコール耐性遺伝子断片を、また常法により調製したFERM BP−4704の染色体DNAを鋳型にして変異型leuA遺伝子置換株作製用DNA断片をPCRにより増幅した。
PCRは、染色体DNA0.1μg、またはプラスミドDNA10ng、プライマー各0.5μmol/L、Pfu DNAポリメラーゼ2.5units、Pfu DNAポリメラーゼ用×10緩衝液4μL、deoxyNTP各200μmol/Lを含む反応液40μLを用い、94℃で1分間、55℃で2分間、72℃で3分間からなる工程を30回繰り返すことにより行った。
各該反応液の1/10量をアガロースゲル電気泳動し、目的の断片が増幅していることを確認後、残りの反応液と等量のTE飽和フェノール/クロロホルムを添加し、混合した。
該混合液を遠心分離後、得られた上層に2倍容量の冷エタノールを加えて混合し、−80℃に30分間放置した。該溶液を遠心分離してDNAを沈殿させた後、該DNAを20μLのTEに溶解した。上記操作により、leuA遺伝子欠損株作製用クロラムフェニコール耐性遺伝子断片、および変異型leuA遺伝子置換株作製用DNA断片を取得した。
(2)染色体DNA上のleuA遺伝子に薬剤耐性遺伝子が挿入したエシェリヒア・コリJM101株の作製
実施例8(2)と同様の操作により、エシェリヒア・コリJM101株の染色体DNA上のleuA遺伝子にクロラムフェニコール耐性遺伝子が挿入されたエシェリヒア・コリの変異株を作製した。
染色体DNA上へのクロラムフェニコール耐性遺伝子の挿入の確認は、クロラムフェニコール耐性遺伝子挿入部位の上流および下流のおよそ200bpに位置する塩基配列を有する配列番号131および132で表される塩基配列からなるDNAをプライマーセットに用いた、コロニーPCRにより行った。
PCRは、実施例8(2)と同様の条件で行った。コロニーPCRに供した株のうちでクロラムフェニコール耐性遺伝子を含むおよそ2kbの大きさの増幅断片が得られた株は、クロラムフェニコール耐性遺伝子がleuA遺伝子中に挿入されたleuA遺伝子欠損株であることを確認し、JLACm1/pKD46と命名した。
(3)染色体DNA上のleuA遺伝子がエシェリヒア・コリH−9070株由来の変異型遺伝子に置換したエシェリヒア・コリJM101株の作製
上記(1)で作製した変異型leuA遺伝子置換株作製用DNA断片、および上記(2)で作製したエシェリヒア・コリJLACm1/pKD46株を用いて、実施例8(3)と同様の操作により、エシェリヒア・コリJLACm1/pKD46の染色体DNA上のクロラムフェニコール耐性遺伝子が挿入されたleuA遺伝子が、変異型leuA遺伝子に置換した組換え株を作製し、エシェリヒア・コリJLA1と命名した。
(4)染色体DNA上のleuA遺伝子が、変異型leuA遺伝子に置換したエシェリヒア・コリJILG+1の作製
エシェリヒア・コリJM101の代わりに親株として実施例7で作製したエシェリヒア・コリJILG+1を用いて、上記(1)〜(3)の操作を行うことにより、ilvL遺伝子が欠損し、ilvG遺伝子が復帰型ilvG遺伝子に置換しており、かつleuA遺伝子が、変異型leuA遺伝子に置換した株を取得し、エシェリヒア・コリJILG+LA1と命名した。
L−アラニンを生産する能力を有する微生物を用いたL−Ala−L−Alaの発酵生産
実施例2で得られたバチルス・サチルス由来のywfE遺伝子およびバチルス・サチルス由来のald遺伝子発現プラスミドpPE86を用いてエシェリヒア・コリJM101株を形質転換した後、50μg/mlのアンピシリンを含有するLB寒天培地に塗布し、30℃で一晩培養した。生育してきた株から公知の手法によりプラスミドを抽出して、該プラスミドを制限酵素処理し、プラスミドpPE86を保持するエシェリヒア・コリJM101株(以下、エシェリヒア・コリJM101/pPE86と称す)が取得できたことを確認した。同様の方法で、プラスミドpTrS30を保持するエシェリヒア・コリJM101株(以下、エシェリヒア・コリJM101/pTrS30と称す)、プラスミドpPE56を保持するエシェリヒア・コリJM101株(以下、エシェリヒア・コリJM101/pPE56と称す)も取得した。
上記の形質転換株を、それぞれ50μg/mlのアンピシリンを含む8mlのLB培地が入った試験管に接種し、28℃で17時間培養した。該培養液を100μg/mlのアンピシリンを含む生産培地[16g/Lリン酸水素二カリウム、14g/Lリン酸二水素カリウム、5g/L硫酸アンモニウム、1g/Lクエン酸(無水)、5g/Lカザミノ酸(ディフコ社製)、10g/Lグルコース、10mg/LビタミンB、25mg/L硫酸マグネシウム・7水和物、50mg/L硫酸鉄・7水和物、pH7.2に10mol/Lの水酸化ナトリウムで調整、グルコース、ビタミンB、硫酸マグネシウム・7水和物、硫酸鉄・7水和物は別個に蒸煮後添加した]が8ml入っている試験管に1%接種し、30℃で24時間培養した後、該培養液を遠心分離して培養上清を取得した。
該培養上清中の培養生成物を、F−moc化法で誘導体化した後、HPLCを用いて該生成物を分析した。HPLC法による分析は、実験例17と同様の方法で行った。結果を表6に示す。
Figure 0004796495
L−AlaおよびL−Glnを生産する能力を有する微生物を用いたL−Ala−L−Glnの発酵生産
実施例1で得られたglnE遺伝子およびglnB遺伝子の二重欠損株であるエシェリヒア・コリJGLBE1を、実施例2で得られたpPE86で形質転換した後、50μg/mlのアンピシリンを含有するLB寒天培地に塗布して、30℃で一晩培養した。生育してきたコロニーから公知の方法によってプラスミドを抽出し、pPE86を保持するエシェリヒア・コリJGLBE1株が取得できていることを制限酵素処理で確認し、該株をエシェリヒア・コリJGLBE1/pPE86と命名した。同様の方法で、pTrS30を保持するエシェリヒア・コリJGLBE1株(以下、エシェリヒア・コリJGLBE1/pTrS30と称す)、pPE56を保持するエシェリヒア・コリJGLBE1株(エシェリヒア・コリJGLBE1/pPE56と称す)も取得した。
上記の形質転換株を、それぞれ50μg/mlのアンピシリンを含む8mlのLB培地が入っている試験管に接種し、28℃で17時間培養した。該培養液をアンピシリン100μg/mlを含む実施例10記載の生産培地が8ml入っている試験管に1%接種し、30℃で24時間培養した後、該培養液を遠心分離して培養上清を取得した。
培養上清中の培養生成物をF−moc化法で誘導体化した後、HPLCを用いて該生成物を分析した。HPLC法による分析は、実験例17と同様の方法で行った。結果を表7に示す。
Figure 0004796495
L−AlaおよびL−Pheを生産する能力を有する微生物を用いたL−Ala−L−Pheの発酵生産
実施例10で取得したエシェリヒア・コリJM101/pPE86を、実施例3で造成したエシェリヒア・コリ由来の脱感作型pheA遺伝子発現プラスミドであるpPHEA2、またはエシェリヒア・コリ由来の脱感作型pheA遺伝子と脱感作型aroF遺伝子発現プラスミドであるpPHEAF2を用いて形質転換した後、50μg/mlのアンピシリンおよび30μg/mlのクロラムフェニコールを含有するLB寒天培地に塗布して、30℃で一晩培養した。生育してきたコロニーから公知の方法にてプラスミドを抽出し、pPHEA2またはpPHEAF2を保持するエシェリヒア・コリJM101/pPE86(それぞれ、エシェリヒア・コリJM101/pPE86/pPHEA2、エシェリヒア・コリJM101/pPE86/pPHEAF2と称す)が取得できていることを確認した。同様の方法で、実施例10で取得したエシェリヒア・コリJM101/pTrS30およびエシェリヒア・コリJM101/pPE56を、pPHEA2またはpPHEAF2で形質転換することにより、pPHEA2を保持するエシェリヒア・コリJM101/pTrS30(以下、エシェリヒア・コリJM101/pTrS30/pPHEA2)、pPHEAF2を保持するエシェリヒア・コリJM101/pTrS30(以下、エシェリヒア・コリJM101/pTrS30/pPHEAF2と称す)、pPHEA2を保持するエシェリヒア・コリJM101/pPE56(以下、エシェリヒア・コリJM101/pPE56/pPHEA2と称す)、pPHEAF2を保持するエシェリヒア・コリJM101/pPE56(以下、エシェリヒア・コリJM101/pPE56/pPHEAF2と称す)を取得した。
上記の形質転換株を、それぞれ50μg/mlのアンピシリンおよび30μg/mlのクロラムフェニコールを含む8mlのLB培地が入っている試験管に接種し、28℃で17時間培養した。該培養液を100μg/mlのアンピシリンおよび50μg/mlのクロラムフェニコールを含む実施例10記載の生産培地が8ml入っている試験管に1%接種し、30℃で24時間培養した後、該培養液を遠心分離して培養上清を取得した。
培養上清中の培養生成物をF−moc化法で誘導体化した後、HPLCを用いて該生成物を分析した。HPLCによる分析は、実験例17と同様の方法で行った。結果を表8に示す。
Figure 0004796495
L−ThrおよびL−Pheを生産する能力を有する微生物を用いたL−スレオニル−L−フェニルアラニン(L−Thr−L−Phe)の発酵生産
プロリン、メチオニン、イソロイシンおよびチアミン要求性を示し、α−アミノ−β−ヒドロキシ吉草酸耐性が付与されたL−Thrを生産する能力を有するエシェリヒア・コリβIM−4株(ATCC21277)を、実験例15で得られたバチルス・サチルス由来のywfE遺伝子の発現を強化したプラスミドであるpPE56で形質転換した後、50μg/mlのアンピシリンを含有するLB寒天培地に塗布して、30℃で一晩培養した。生育してきたコロニーから公知の方法によりプラスミドを抽出し、pPE56を保持するエシェリヒア・コリATCC21277(以下、エシェリヒア・コリATCC21277/pPE56と称す)が取得されていることを制限酵素処理により確認した。
次にエシェリヒア・コリATCC21277/pPE56を、pSTV28(タカラバイオ社製)、実施例3で得られたpPHEA2またはpPHEAF2を用いて形質転換し、50μg/mlのアンピシリンおよび30μg/mlのクロラムフェニコールを含有するLB寒天培地に塗布して、30℃で一晩培養した。生育してきたコロニーから公知の方法によりプラスミドを抽出し、pSTV28、pPHEA2またはpPHEAF2を保持するエシェリヒア・コリATCC21277/pPE56(以下、それぞれエシェリヒア・コリATCC21277/pPE56/pSTV28、エシェリヒア・コリATCC21277/pPE56/pPHEA2およびエシェリヒア・コリATCC21277/pPE56/pPHEAF2と称す)が取得されていることを制限酵素処理により確認した。同様の方法により、pTrS30およびpSTV28を保持するエシェリヒア・コリATCC21277(以下、エシェリヒア・コリATCC21277/pTrS30/pSTV28と称す)、pTrS30およびpPHEA2を保持するエシェリヒア・コリATCC21277(以下、エシェリヒア・コリATCC21277/pTrS30/pPHEA2と称す)、pTrS30およびpPHEAF2を保持するエシェリヒア・コリATCC21277(以下、エシェリヒア・コリATCC21277/pTrS30/pPHEAF2と称す)を取得した。
上記の形質転換株を、それぞれ50μg/mlのアンピシリンおよび30μg/mLのクロラムフェニコールを含む8mLのLB培地が入っている試験管に接種し、28℃で17時間培養した。該培養液を100μg/mlのアンピシリンおよび50μg/mlのクロラムフェニコールを含む上記実施例4記載の生産培地が8ml入っている試験管に1%接種し、30℃で24時間培養した後、該培養液を遠心分離して培養上清を取得した。
培養上清中の培養生成物をF−moc化法で誘導体化した後、HPLCを用いて該生成物を分析した。HPLCによる分析は、実験例17と同様の方法で行った。結果を表9に示す。
Figure 0004796495
L−AlaおよびL−Tyrを生産する能力を有する微生物を用いたL−Ala−L−Tyrの発酵生産
実施例10で取得したエシェリヒア・コリJM101/pPE86を、実施例4で造成したエシェリヒア・コリ由来のチロシン耐性変異型aroF−tyrAオペロン発現プラスミドであるpTY2を用いて形質転換した後、50μg/mlのアンピシリンおよび30μg/mlのクロラムフェニコールを含有するLB寒天培地に塗布して、30℃で一晩培養した。生育してきたコロニーから公知の方法にてプラスミドを抽出し、pTY2を保持するエシェリヒア・コリJM101/pPE86(以下、エシェリヒア・コリJM101/pPE86/pTY2と称す)が取得できていることを確認した。同様の方法で、実施例10で取得したエシェリヒア・コリJM101/pTrS30およびエシェリヒア・コリJM101/pPE56を、pTY2で形質転換することにより、pTY2を保持するエシェリヒア・コリJM101/pTrS30(以下、エシェリヒア・コリJM101/pTrS30/pTY2と称す)、pTY2を保持するエシェリヒア・コリJM101/pPE56(以下、エシェリヒア・コリJM101/pPE56/pTY2と称す)を取得した。
上記の各形質転換株を、それぞれ50μg/mlのアンピシリンおよび30μg/mlのクロラムフェニコールを含む8mlのLB培地が入っている試験管に接種し、28℃で17時間培養した。該培養液を100μg/mlのアンピシリンおよび50μg/mlのクロラムフェニコールを含む実施例10記載の生産培地が8ml入っている試験管に1%接種し、30℃で24時間培養した後、該培養液を遠心分離して培養上清を取得した。
培養上清中の培養生成物をF−moc化法で誘導体化した後、HPLCを用いて該生成物を分析した。HPLCによる分析は、実験例17と同様の方法で行った。結果を表10に示す。
Figure 0004796495
L−AlaおよびL−Metを生産する能力を有する微生物を用いたL−アラニル−L−メチオニン(L−Ala−L−Met)の発酵生産
実施例5で取得したエシェリヒア・コリJMJ1を、実施例2で取得したpPE86で形質転換した後、50μg/mlのアンピシリンを含有するLB寒天培地に塗布して、30℃で一晩培養した。生育してきたコロニーから公知の方法によってプラスミドを抽出し、pPE86を保持するエシェリヒア・コリJMJ1株が取得できていることを制限酵素処理で確認し、該株をエシェリヒア・コリJMJ1/pPE86と命名した。同様の方法で、pTrS30を保持するエシェリヒア・コリJMJ1株(以下、エシェリヒア・コリJMJ1/pTrS30と称す)、pPE56を保持するエシェリヒア・コリJMJ1株(エシェリヒア・コリJMJ1/pPE56と称す)も取得した。
上記の形質転換株を、それぞれ50μg/mlのアンピシリンを含む8mlのLB培地が入っている試験管に接種し、28℃で17時間培養した。該培養液をアンピシリン100μg/mlを含む実施例10記載の生産培地が8ml入っている試験管に1%接種し、30℃で24時間培養した後、該培養液を遠心分離して培養上清を取得した。
培養上清中の培養生成物をF−moc化法で誘導体化した後、HPLCを用いて該生成物を分析した。HPLC法による分析は、実験例17と同様の方法で行った。結果を表11に示す。
Figure 0004796495
実施例10〜15に示す結果から、1種以上のアミノ酸からジペプチドを生成する活性を有する蛋白質を生産する能力を有し、かつ該1種以上のアミノ酸のうちの少なくとも1種のアミノ酸を生産する能力を有する微生物を培地に培養することにより、該培地中にジペプチドを生成、蓄積させることができること、および1種のアミノ酸を生産する能力を有する上記微生物に比べ、2種のアミノ酸を生産する能力を有する上記微生物の方が、ジペプチドの生産能力が高いことが明らかとなった。
L−Alaを生産する能力を有し、かつペプチダーゼ遺伝子およびジペプチド取り込み蛋白質遺伝子が欠損している微生物を用いたL−Ala−L−Alaの発酵生産
実験例16(4)で得られたpepD遺伝子、pepN遺伝子およびdppオペロン遺伝子が欠損しているエシェリヒア・コリJPNDDP36株を、pTrS30、実施例2で得られたpPE56またはpPE86で形質転換した後、50μg/mlのアンピシリンを含有するLB寒天培地に塗布して、30℃で一晩培養した。生育してきたコロニーから公知の方法によりプラスミドを抽出し、pTrS30、pPE56またはpPE86を保持するエシェリヒア・コリJPNDDP36株(以下、それぞれエシェリヒア・コリJPNDDP36/pTrS30、エシェリヒア・コリJPNDDP36/pPE56およびエシェリヒア・コリJPNDDP36/pPE86と称す)が取得できていることを、制限酵素処理により確認した。
上記の形質転換株を、それぞれ実施例10と同様の方法で培養し、培養上清中の生成物を実験例17と同様の方法により分析した結果を表12に示す。
Figure 0004796495
L−AlaおよびL−Glnを生産する能力を有し、かつペプチダーゼ遺伝子およびジペプチド取り込み蛋白質遺伝子が欠損している微生物を用いたL−Ala−L−Glnの発酵生産
(1)L−AlaおよびL−Glnを生産する能力を有し、かつペプチダーゼ遺伝子およびジペプチド取り込み蛋白質遺伝子が欠損している微生物の造成
実験例16(4)で得られたエシェリヒア・コリJPNDDP36株を用いて実施例1と同じ操作を行うことにより、エシェリヒア・コリJPNDDP36株にglnE遺伝子欠損およびglnB遺伝子欠損を導入し、L−AlaおよびL−Glnを生産する能力を有し、かつペプチダーゼ遺伝子およびジペプチド取り込み蛋白質遺伝子が欠損している微生物であるエシェリヒア・コリJPNDDPGBE1株を取得した。
(2)L−Ala−L−Glnの発酵生産
上記(1)で得られたエシェリヒア・コリJPNDDPGBE1株を実施例16と同様の方法によりpTrS30、pPE56またはpPE86で形質転換して、該プラスミドを保持するエシェリヒア・コリJPNDDPGBE1株(以下、それぞれエシェリヒア・コリJPNDDPGBE1/pTrS30、エシェリヒア・コリJPNDDPGBE1/pPE56およびエシェリヒア・コリJPNDDPGBE1/pPE86と称す)を取得した。
エシェリヒア・コリJPNDDPGBE1/pTrS30、エシェリヒア・コリJPNDDPGBE1/pPE56およびエシェリヒア・コリJPNDDPGBE1/pPE86を、実施例10と同様の方法で培養し、培養上清中の生成物を実験例17と同様の方法により分析した結果を表13に示す。
Figure 0004796495
L−AlaおよびL−Tyrを生産する能力を有し、かつペプチダーゼ遺伝子およびジペプチド取り込み蛋白質遺伝子が欠損している微生物を用いたL−Ala−L−Tyrの発酵生産
実験例16で取得したJPNDDP36株を、実施例2で取得したpPE86で形質転換した後、50μg/mlのアンピシリンを含有するLB寒天培地に塗布して、30℃で一晩培養した。生育してきたコロニーから公知の方法によってプラスミドを抽出し、pPE86を保持するエシェリヒア・コリJPNDDP36株が取得できていることを制限酵素処理で確認し、該株をエシェリヒア・コリJPNDDP36/pPE86と命名した。同様の方法で、pTrS30を保持するエシェリヒア・コリJPNDDP36株(以下、エシェリヒア・コリJPNDDP36/pTrS30と称す)、pPE56を保持するエシェリヒア・コリJPNDDP36株(エシェリヒア・コリJPNDDP36/pPE56と称す)も取得した。
さらに、上記で得られた形質転換株を、それぞれ実施例4で取得したpTY2で形質転換することにより、pTY2を保持する形質転換株であるエシェリヒア・コリJPNDDP36/pTrS30/pTY2、エシェリヒア・コリJPNDDP36/pPE56/pTY2、およびエシェリヒア・コリJPNDDP36/pPE86/pTY2を取得した。
上記の形質転換株を、それぞれ50μg/mlのアンピシリンを含む8mlのLB培地が入っている試験管に接種し、28℃で17時間培養した。該培養液をアンピシリン100μg/mlを含む実施例10記載の生産培地が8ml入っている試験管に1%接種し、30℃で24時間培養した後、該培養液を遠心分離して培養上清を取得した。
培養上清中の培養生成物をF−moc化法で誘導体化した後、HPLCを用いて該生成物を分析した。HPLC法による分析は、実験例17と同様の方法で行った。結果を表14に示す。
Figure 0004796495
L−AlaおよびL−Valを生産する能力を有し、かつペプチダーゼ遺伝子およびジペプチド取り込み蛋白質遺伝子が欠損している微生物を用いたL−Ala−L−Valの発酵生産
実験例16で取得したペプチダーゼ遺伝子およびペプチド取り込み蛋白質をコードするオペロンの欠損変異株を親株に用いて、実施例7記載の方法に従い、ilvL遺伝子を欠損し、かつilvG遺伝子のフレームシフト変異が復帰したエシェリヒア・コリJPNDDPILG+1株を作製した。
実施例2で取得したpPE86を用いて、エシェリヒア・コリJPNDDPILG+1株を形質転換した後、50μg/mlのアンピシリンを含有するLB寒天培地に塗布し、30℃で一晩培養した。生育してきた株から公知の手法によりプラスミドを抽出して、該プラスミドを制限酵素処理し、プラスミドpPE86を保持するエシェリヒア・コリJPNDDPILG+1株(以下、エシェリヒア・コリJPNDDPILG+1/pPE86と称す)が取得できていることを確認した。同様にしてプラスミドpTrS30を保持するエシェリヒア・コリJPNDDPILG+1株(以下、エシェリヒア・コリJPNDDPILG+1/pTrS30と称す)、プラスミドpPE56を保持するエシェリヒア・コリJPNDDPILG+1株(以下、エシェリヒア・コリJPNDDPILG+1/pPE56と称す)を取得した。
上記の形質転換株を、それぞれ50μg/mlのアンピシリンを含む8mlのLB培地が入った試験管に接種し、28℃で17時間培養した。該培養液を100μg/mlのアンピシリンを含む培地[16g/Lリン酸水素二カリウム、14g/Lリン酸二水素カリウム、5g/L硫酸アンモニウム、1g/Lクエン酸(無水)、5g/Lカザミノ酸(ディフコ社製)、10g/Lグルコース、10mg/LビタミンB、25mg/L硫酸マグネシウム・7水和物、50mg/L硫酸鉄・7水和物、pH7.2に10mol/Lの水酸化ナトリウムで調整、グルコース、ビタミンB、硫酸マグネシウム・7水和物、硫酸鉄・7水和物は別個に蒸煮後添加した]が8ml入っている試験管に1%接種し、30℃で24時間培養した後、該培養液を遠心分離して培養上清を取得した。
該培養上清中の培養生成物を、F−moc化法で誘導体化した後、HPLCを用いて該生成物を分析した。HPLC法による分析は、実験例17と同様の方法で行った。結果を表15に示す。
Figure 0004796495
L−AlaおよびL−Ileを生産する能力を有し、かつペプチダーゼ遺伝子およびジペプチド取り込み蛋白質遺伝子が欠損している微生物を用いたL−Ala−L−Ileの発酵生産
実験例16で取得したペプチダーゼ遺伝子およびペプチド取り込み蛋白質をコードするオペロンの欠損変異株であるエシェリヒア・コリJPNDDP36株を親株として、ilvL遺伝子が欠損し、ilvG遺伝子のフレームシフト変異が復帰し、さらにilvA遺伝子が阻害解除型ilvA遺伝子に置換したエシェリヒア・コリJPNDDPILG+IA1株を実施例7および8記載の方法に準じて作製した。
エシェリヒア・コリJPNDDPILG+IA1株を実施例2で取得したpPE86で形質転換した後、50μg/mlのアンピシリンを含有するLB寒天培地に塗布して、30℃で一晩培養した。生育してきたコロニーから公知の方法によってプラスミドを抽出し、pPE86を保持するエシェリヒア・コリJPNDDPILG+IA1株が取得できていることを制限酵素処理で確認し、該株をエシェリヒア・コリJPNDDPILG+IA1/pPE86と命名した。同様の方法で、pTrS30を保持するエシェリヒア・コリJPNDDPILG+IA1株(以下、エシェリヒア・コリJPNDDPILG+IA1/pTrS30と称す)、pPE56を保持するエシェリヒア・コリJPNDDPILG+IA1株(エシェリヒア・コリJPNDDPILG+IA1/pPE56と称す)を取得した。
上記で取得した形質転換株を、それぞれ50μg/mlのアンピシリンを含む8mlのLB培地が入っている試験管に接種し、28℃で17時間培養した。該培養液をアンピシリン100μg/mlを含む実施例10記載の生産培地が8ml入っている試験管に1%接種し、30℃で24時間培養した後、該培養液を遠心分離して培養上清を取得した。
培養上清中の培養生成物をF−moc化法で誘導体化した後、HPLCを用いて該生成物を分析した。HPLC法による分析は、実験例17と同様の方法で行った。結果を表16に示す。
Figure 0004796495
L−AlaおよびL−Leuを生産する能力を有し、かつペプチダーゼ遺伝子およびジペプチド取り込み蛋白質遺伝子が欠損している微生物を用いたL−Ala−L−Leuの発酵生産
実験例16で取得したペプチダーゼ遺伝子およびペプチド取り込み蛋白質をコードするオペロンの欠損変異株であるエシェリヒア・コリJPNDDP36株を親株として、ilvL遺伝子が欠損し、ilvG遺伝子のフレームシフト変異が復帰し、さらにleuA遺伝子が変異型leuA遺伝子に置換したエシェリヒア・コリJPNDDPILG+LA1を、実施例7および9記載の方法に準じて作製し、実施例2で取得したpPE86で形質転換した後、50μg/mlのアンピシリンを含有するLB寒天培地に塗布して、30℃で一晩培養した。生育してきたコロニーから公知の方法によってプラスミドを抽出し、pPE86を保持するエシェリヒア・コリJPNDDPILG+LA1株が取得できていることを制限酵素処理で確認し、該株をエシェリヒア・コリJPNDDPILG+LA1/pPE86と命名した。同様の方法で、pTrS30を保持するエシェリヒア・コリJPNDDPILG+LA1株(以下、エシェリヒア・コリJPNDDPILG+LA1/pTrS30と称す)、pPE56を保持するエシェリヒア・コリJPNDDPILG+LA1株(エシェリヒア・コリJPNDDPILG+LA1/pPE56と称す)も取得した。
上記で得られた形質転換株を、それぞれ50μg/mlのアンピシリンを含む8mlのLB培地が入っている試験管に接種し、28℃で17時間培養した。該培養液をアンピシリン100μg/mlを含む実施例10記載の生産培地が8ml入っている試験管に1%接種し、30℃で24時間培養した後、該培養液を遠心分離して培養上清を取得した。
培養上清中の培養生成物をF−moc化法で誘導体化した後、HPLCを用いて該生成物を分析した。HPLC法による分析は、実験例17と同様の方法で行った。結果を表17に示す。
Figure 0004796495
L‐SerおよびL‐Pheを生産する能力を有し、かつペプチダーゼ遺伝子およびジペプチド取り込み蛋白質遺伝子が欠損している微生物を用いたL‐Ser−L‐Pheの発酵生産
実験例16で取得したペプチダーゼ遺伝子およびペプチド取り込み蛋白質をコードするオペロンの欠損変異株であるエシェリヒア・コリJPNDDP36株を、実施例6で取得したpSE15またはpPE212で形質転換した後、50μg/mlのアンピシリンを含有するLB寒天培地に塗布して、30℃で一晩培養した。生育してきたそれぞれのコロニーから公知の方法にてプラスミドを抽出し、pSE15を保持するエシェリヒア・コリ JPNDDP36株、およびpPE212を保持するエシェリヒア・コリ JPNDDP36株が取得できていることを制限酵素処理で確認し、それぞれエシェリヒア・コリ JPNDDP36/pSE15、およびエシェリヒア・コリ JPNDDP36/pPE212と命名した。
さらに、上記で得られた形質転換株を、それぞれ実施例3で取得したエシェリヒア・コリ由来の脱感作型pheA 遺伝子および脱感作型aroF遺伝子発現プラスミドであるpPHEAF2で形質転換することにより、pPHEAF2を保持するエシェリヒア・コリ JPNDDP36/pSE15、およびエシェリヒア・コリ JPNDDP36/ pPE212を取得し、それぞれエシェリヒア・コリJPNDDP36/pSE15/pPHEAF2、およびエシェリヒア・コリ JPNDDP36/pPE212/pPHEAF2と命名した。
エシェリヒア・コリ JPNDDP36/pSE15/pPHEAF2、およびエシェリヒア・コリJPNDDP36/pPE212/pPHEAF2を、それぞれ50μg/mlのアンピシリンおよび30μg/mlのクロラムフェニコールを含む8mlの LB培地が入っている試験管に接種し、28℃で17時間培養した。該培養液を100μg/mlのアンピシリンおよび50μg/mlのクロラムフェニコールを含む実施例4記載の生産培地が8ml入っている試験管に1%接種し、30℃で24 時間培養した後、該培養液を遠心分離して培養上清を取得した。
培養上清中の培養生成物をF−moc化法で誘導体化した後、HPLCを用いて該生成物を分析した。HPLCによる分析は、実験例17と同様の方法で行った。結果を表18に示す。
Figure 0004796495


実施例16〜22に示す結果から、1種以上のアミノ酸からジペプチドを生成する活性を有する蛋白質を生産する能力、該1種以上のアミノ酸のうちの少なくとも1種のアミノ酸を生産する能力を有し、かつ1種以上のペプチダーゼおよび1種以上のペプチド取り込み蛋白質の活性を喪失するか、または3種以上のペプチダーゼ活性が喪失した微生物を培地に培養することにより、該培地中にジペプチドを生成、蓄積させることができること、並びに該微生物は、1種以上のアミノ酸からジペプチドを生成する活性を有する蛋白質を生産する能力、および該1種以上のアミノ酸のうちの少なくとも1種のアミノ酸を生産する能力を有しているが、ペプチダーゼおよびペプチド取り込み蛋白質の活性を喪失していない微生物に比べ、ジペプチドの生産能力が高いことが明らかになった。
本発明により、効率よく各種ジペプチドを製造することができる。
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Claims (19)

  1. 以下の[1]〜[6]から選ばれる、1種以上のアミノ酸からジペプチドを生成する活性を有する蛋白質を生産する能力を有し、かつ該1種以上のアミノ酸のうちの少なくとも1種のアミノ酸を生産する能力を有するバチルス属またはストレプトマイセス属に属する微生物を培地に培養し、該培地中にジペプチドを生成、蓄積させ、該培地からジペプチドを採取することを特徴とするジペプチドの製造法。
    [1]配列番号1〜8のいずれかで表されるアミノ酸配列を有する蛋白質
    [2]配列番号1〜8のいずれかで表されるアミノ酸配列において、1〜20個のアミノ酸が欠失、置換または付加したアミノ酸配列からなり、かつ1種以上のアミノ酸からジペプチドを生成する活性を有する蛋白質
    [3]配列番号1〜8のいずれかで表されるアミノ酸配列と95%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつ1種以上のアミノ酸からジペプチドを生成する活性を有する蛋白質
    [4]配列番号37または38で表されるアミノ酸配列を有する蛋白質
    [5]配列番号37または38で表されるアミノ酸配列において、1〜20個のアミノ酸が欠失、置換または付加したアミノ酸配列からなり、かつ1種以上のアミノ酸からジペプチドを生成する活性を有する蛋白質
    [6]配列番号37または38で表されるアミノ酸配列と95%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつ1種以上のアミノ酸からジペプチドを生成する活性を有する蛋白質
  2. 1種以上のアミノ酸からジペプチドを生成する活性を有する蛋白質が以下の[1]〜[4]から選ばれるDNAにコードされる蛋白質である、請求項1記載の製造法。
    [1]配列番号9〜16および36のいずれかで表される塩基配列を有するDNA
    [2]配列番号9〜16および36のいずれかで表される塩基配列と95%以上の同一性を有し、かつ1種以上のアミノ酸からジペプチドを生成する活性を有する蛋白質をコードするDNA
    [3]配列番号39または40で表される塩基配列を有するDNA
    [4]配列番号39または40で表される塩基配列と95%以上の同一性を有し、かつ1種以上のアミノ酸からジペプチドを生成する活性を有する蛋白質をコードするDNA
  3. 以下の[1]〜[4]から選ばれる、1種以上のアミノ酸からジペプチドを生成する活性を有する蛋白質をコードするDNAを含有する組換え体DNAを保有し、かつ該1種以上のアミノ酸のうちの少なくとも1種のアミノ酸を生産する能力を有する微生物を培地に培養し、該培地中にジペプチドを生成、蓄積させ、該培地からジペプチドを採取することを特徴とするジペプチドの製造法。
    [1]配列番号9〜16および36のいずれかで表される塩基配列を有するDNA
    [2]配列番号9〜16および36のいずれかで表される塩基配列と95%以上の同一性を有し、かつ1種以上のアミノ酸からジペプチドを生成する活性を有する蛋白質をコードするDNA
    [3]配列番号39または40で表される塩基配列を有するDNA
    [4]配列番号39または40で表される塩基配列と95%以上の同一性を有し、かつ1種以上のアミノ酸からジペプチドを生成する活性を有する蛋白質をコードするDNA
  4. アミノ酸を生産する能力が以下の[1]〜[5]から選ばれる方法で得られる、請求項1または2記載の製造法。
    [1]該アミノ酸の生合成を制御する機構の少なくとも1つを緩和または解除する方法
    [2]該アミノ酸の生合成に関与する酵素の少なくとも1つを発現強化する方法
    [3]該アミノ酸の生合成に関与する酵素遺伝子の少なくとも1つのコピー数を増加させる方法
    [4]該アミノ酸の生合成経路から該アミノ酸以外の代謝産物へ分岐する代謝経路の少なくとも1つを弱化または遮断する方法
    [5]野生型株に比べ、該アミノ酸のアナログに対する耐性度が高い細胞株を選択する方法
  5. アミノ酸を生産する能力が以下の[1]〜[5]から選ばれる方法で得られる、請求項3記載の製造法。
    [1]該アミノ酸の生合成を制御する機構の少なくとも1つを緩和または解除する方法
    [2]該アミノ酸の生合成に関与する酵素の少なくとも1つを発現強化する方法
    [3]該アミノ酸の生合成に関与する酵素遺伝子の少なくとも1つのコピー数を増加させる方法
    [4]該アミノ酸の生合成経路から該アミノ酸以外の代謝産物へ分岐する代謝経路の少なくとも1つを弱化または遮断する方法
    [5]野生型株に比べ、該アミノ酸のアナログに対する耐性度が高い細胞株を選択する方法
  6. 微生物がエシェリヒア属、コリネバクテリウム属、バチルス属、セラチア属、シュードモナス属またはストレプトマイセス属に属する微生物である、請求項3または5記載の製造法。
  7. エシェリヒア属、コリネバクテリウム属、バチルス属、セラチア属、シュードモナス属またはストレプトマイセス属に属する微生物が、エシェリヒア・コリ、コリネバクテリウム・グルタミクム、コリネバクテリウム・アンモニアゲネス、コリネバクテリウム・ラクトファーメンタム、コリネバクテリウム・フラバム、コリネバクテリウム・エフィシェンス、バチルス・サチルス、バチルス・メガテリウム、セラチア・マルセッセンス、シュードモナス・プチダ、シュードモナス・エルギノーサ、ストレプトマイセス・セリカラーまたはストレプトミセス・リビダンスである、請求項記載の製造法。
  8. 微生物が1種以上のペプチダーゼおよび1種以上のペプチド取り込み活性を有する蛋白質(以下、ペプチド取込み蛋白質ともいう)の活性が低下または喪失した微生物である、請求項1、2または4のいずれか1項に記載の製造法。
  9. 微生物が1種以上のペプチダーゼおよび1種以上のペプチド取り込み活性を有する蛋白質(以下、ペプチド取込み蛋白質ともいう)の活性が低下または喪失した微生物である、請求項3または5記載の製造法。
  10. 微生物が3種以上のペプチダーゼの活性が低下または喪失した微生物である、請求項1、2または4のいずれか1項に記載の製造法。
  11. 微生物が3種以上のペプチダーゼの活性が低下または喪失した微生物である、請求項3または5記載の製造法。
  12. ペプチダーゼが配列番号45〜48のいずれかで表されるアミノ酸配列を有する蛋白質、または配列番号45〜48のいずれかで表されるアミノ酸配列と95%以上の同一性を有するアミノ酸配列を有し、かつペプチダーゼ活性を有する蛋白質である、請求項または10記載の製造法。
  13. ペプチダーゼが配列番号45〜48のいずれかで表されるアミノ酸配列を有する蛋白質、または配列番号45〜48のいずれかで表されるアミノ酸配列と95%以上の同一性を有するアミノ酸配列を有し、かつペプチダーゼ活性を有する蛋白質である、請求項9または11記載の製造法。
  14. ペプチド取込み蛋白質が配列番号49〜53のいずれかで表されるアミノ酸配列を有する蛋白質、または配列番号49〜53のいずれかで表されるアミノ酸配列と95%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなる蛋白質であり、かつペプチド取り込み活性を有する蛋白質である、請求項または12記載の製造法。
  15. ペプチド取込み蛋白質が配列番号49〜53のいずれかで表されるアミノ酸配列を有する蛋白質、または配列番号49〜53のいずれかで表されるアミノ酸配列と95%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなる蛋白質であり、かつペプチド取り込み活性を有する蛋白質である、請求項9または13記載の製造法。
  16. 微生物がエシェリヒア属、バチルス属またはコリネバクテリウム属に属する微生物である、請求項9、11、13または15のいずれか1項に記載の製造法。
  17. エシェリヒア属、バチルス属またはコリネバクテリウム属に属する微生物が、エシェリヒア・コリ、コリネバクテリウム・グルタミクム、コリネバクテリウム・アンモニアゲネス、コリネバクテリウム・ラクトファーメンタム、コリネバクテリウム・フラバム、コリネバクテリウム・エフィシェンス、バチルス・サチルスまたはバチルス・メガテリウムである、請求項16記載の製造法。
  18. アミノ酸がL−アラニン、L−グルタミン、L−グルタミン酸、グリシン、L−バリン、L−ロイシン、L−イソロイシン、L−プロリン、L−フェニルアラニン、L−トリプトファン、L−メチオニン、L−セリン、L−スレオニン、L−システイン、L−アスパラギン、L−チロシン、L−リジン、L−アルギニン、L−ヒスチジン、L−アスパラギン酸、L−α−アミノ酪酸、L−4−ヒドロキシプロリン、L−3−ヒドロキシプロリン、L−オルニチンおよびL−シトルリンから選ばれるアミノ酸である、請求項1〜17のいずれか1項に記載の製造法。
  19. ジペプチドが、式(I)
    −R (I)
    (式中、RおよびRは同一または異なって、L−アラニン、L−グルタミン、L−グルタミン酸、グリシン、L−バリン、L−ロイシン、L−イソロイシン、L−プロリン、L−フェニルアラニン、L−トリプトファン、L−メチオニン、L−セリン、L−スレオニン、L−システイン、L−アスパラギン、L−チロシン、L−リジン、L−アルギニン、L−ヒスチジン、L−アスパラギン酸、L−α−アミノ酪酸、L−4−ヒドロキシプロリン、L−3−ヒドロキシプロリン、L−オルニチンおよびL−シトルリンから選ばれるアミノ酸を表す)で表されるジペプチドである請求項1〜18のいずれか1項に記載の製造法。
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