以下、図を参照して本発明を実施するための最良の形態および実施例を含む本発明の実施の形態(以下、「実施形態」という)を説明する。実施形態や変形例等に亘り、同一の機能および形状等を有する部材や構成部品等の構成要素については、同一符号を付すことにより一度説明した後ではその説明を省略する。図および説明の簡明化を図るため、図に表されるべき構成要素であっても、その図において特別に説明する必要がないものは適宜断わりなく省略することがある。公開特許公報等の構成要素をそのまま引用して説明する場合は、その符号に括弧を付して示し、各実施形態等のそれと区別するものとする。
(第1の実施形態)
まず、図1等を参照して、本発明の第1の実施形態を適用した両面印刷装置の一例としての両面孔版印刷装置300の全体構成について説明する。
両面孔版印刷装置300は、同図の左側上方に示すように、ロール状に巻かれたマスタ8(製版前の状態を孔版原紙と呼ぶこともあるが、本発明では製版前後を通じてマスタと呼ぶ)を製版する製版部15と、同図のほぼ中央部に示すように、製版済みマスタを外周面に巻装する版胴1、版胴1上の製版済みマスタにインキを供給する後述するインキ供給手段、および版胴1の外周面に対して接離自在であり該版胴1上の製版済みマスタに用紙36を押し付ける押圧手段としてのプレスローラ21、等を有する印刷部16と、版胴1を挟んで製版部15に対向して配置され版胴1上の使用済みマスタを剥離・排版する排版部17と、この排版部17の下方に配置され給紙台としての給紙トレイ35上の用紙36を印刷部16に向けて給送する給紙部30と、この給紙部30に対向して製版部15の下方に配置され印刷された用紙36を版胴1から剥離して排紙台としての排紙トレイ172に排出する排紙部19と、版胴1、製版部15および排版部17が配設された図12に示すような装置本体としての本体フレーム130と、その上部に配置され原稿受け台134上から移送される原稿133の画像または読取部としてのコンタクトガラス135上に載置された図示しない原稿等の画像を読み取る画像読取部18とを具備している。
さらに、両面孔版印刷装置300は、印刷部16で後述するようにその表面に印刷画像を形成された表面印刷済み用紙を一時的に保持した後、該表面印刷済み用紙をプレスローラ21に向けて送り出しプレスローラ21で反転させて印刷部16に向けて再給紙する再給紙部48と、印刷部16を通過した用紙(表面印刷済み用紙または両面印刷済み用紙)を再給紙部48または排紙部19に案内する切換手段としての切換ガイド46等とを具備している。
再給紙部48は、図1〜図8に示すように印刷部16から送り出された表面印刷済み用紙36aの先端を含む先端部(以下、「先端」というときがある)を印刷部16近傍の第1の位置としての移動位置P1付近で挟持・保持し、移動位置P1よりも低い再給紙手段45の上流側近傍の第2の位置としての初期位置P2(もしくは待機位置P2)で表面印刷済み用紙の先端を開放する用紙挟持手段(用紙保持手段)としての移動ガイド81と、図7に示すように移動位置P1と初期位置P2との間で移動ガイド81を往復動させる移動手段87と、図8に示すように移動ガイド81が移動位置P1を占めた時、移動ガイド81をして一旦開放させた後、表面印刷済み用紙の先端を挟持するように作動させ、移動ガイド81が初期位置P2を占めた時、移動ガイド81をして表面印刷済み用紙の先端を開放するように作動させる作動時機制御手段を構成する解除カム98および解除ピン99と、図1〜図6に示すように移動ガイド81から受け渡される表面印刷済み用紙を一時的に保持し、その後に該表面印刷済み用紙をプレスローラ21に向けて送り出しプレスローラ21で反転させて印刷部16に向けて再給紙する再給紙手段45等とを具備している。
両面孔版印刷装置300は、上述したように、単一のインキ供給手段、単一の版胴1および単一のプレスローラ21を有して構成されており、後述するとおり版胴1の1回転で用紙の両面に印刷が可能な1版胴1押圧手段両面印刷方式を採用している。上述した製版部15、印刷部16、排版部17、給紙部30、排紙部19、画像読取部18、再給紙部48における再給紙手段45、移動ガイド81、移動手段87、前記作動時機制御手段および切換ガイド46は、それぞれ後述するように装置としての構成を具備している。
製版部15は、マスタ8に製版を行い、図9に示すように、版胴1の回転方向(用紙搬送方向X、マスタ搬送方向X1でもある)に沿って表面印刷用の第1の製版画像8A(以下、「表面製版画像8A」と言い替える)と裏面印刷用の第2の製版画像8B(以下、「裏面製版画像8B」と言い替える)とを有する両面印刷用の製版済みマスタ8X(以下、「分割製版済みマスタ8X」と言い替える)、あるいは同図に示すように、版胴1の回転方向に沿って表面製版画像8Aと裏面製版画像8Bとの2面分の画像領域を有する第3の製版画像8YA(以下、「片面製版画像8YA」と言い替える)を有する製版済みマスタ8Yを作製する機能・構成を有する。表面製版画像8Aは、分割製版済みマスタ8Xが版胴1の外周面上に巻装されたときに図1に示す表面領域1Aと対応する位置に形成され、裏面製版画像8Bは同裏面領域1Bと対応する位置に形成される。
図1および図9等において、製版済みマスタ8Yには括弧を付して示すことにより、分割製版済みマスタ8Xと区別する。図9において、製版済みマスタ8Yに形成された片面製版画像8YAの領域範囲を二点鎖線で示し、マスタ搬送方向X1の同領域範囲の境界線が表面製版画像8Aおよび裏面製版画像8Bの実線と重なるため、その領域範囲を少し大きめに図示しているが、片面製版画像8YAの領域範囲は、表面製版画像8A、裏面製版画像8Bおよびこれらの中間に位置する未製版の空白領域である中間未製版領域8Cを合わせた全範囲である。
製版部15は、マスタ8をマスタ搬送方向X1に繰り出し可能に支持するマスタ支持部材8cと、繰り出されたマスタ8を画像情報に応じて加熱製版するサーマルヘッド11と、サーマルヘッド11にマスタ8を押圧しながらマスタ搬送方向X1下流側にマスタ8を回転しながら搬送するプラテンローラ9と、プラテンローラ9により搬送されてきたマスタ8を適度の張力を付与しながらさらにマスタ搬送方向X1の下流側に搬送する搬送ローラ対13と、プラテンローラ9と搬送ローラ対13との間に配設され製版済みのマスタ8または未製版のマスタ8を所定の長さに切断するカッタ12と、プラテンローラ9および搬送ローラ対13により搬送されてきたマスタ8の先端を版胴1上の拡開したクランパ7に案内するマスタガイド板14等とを具備する。
マスタ8は、ロール芯8bに巻き付けられてマスタロール8aが形成される。マスタロール8aは、両端側のロール芯8bがマスタ支持部材8cにより反時計回りに回転自在に支持されていて、マスタ支持部材8cに対して着脱自在となっている。両端側のマスタ支持部材8cは、製版部15におけるマスタ搬送方向X1に沿ってその左右両側に配設されている図示しない製版側板対に取り付け固定されている。したがって、マスタ8は、マスタ支持部材8cによって、マスタロール8aからマスタ搬送方向X1に繰り出し可能に支持されている。
マスタ8は、例えば厚みが1〜5μmの熱可塑性樹脂フィルムと、合成繊維等からなる多孔質支持体とを貼り合わせたラミネート構造をなす。マスタは、これに限らず、例えば和紙繊維、あるいは和紙繊維および合成繊維を混抄したもの等からなる多孔質支持体と熱可塑性樹脂フィルムとを貼り合わせたものや、いわゆる実質的に熱可塑性樹脂フィルムのみからなるマスタ等も用いられる。
サーマルヘッド11は、プラテンローラ9のプラテンローラ軸に対して図1の紙面の手前側および奥側に平行(この方向を主走査方向と呼ぶ)に延在して設けられていて、図示しないカムおよびばね部材等を備えた接離機構により、マスタ8を介してプラテンローラ9に接離自在となっている。サーマルヘッド11は、前記ばね部材によりプラテンローラ9に接触する向きに付勢されている。サーマルヘッド11の主走査方向には、プラテンローラ9にマスタ8を介して当接する部位に多数の発熱素子(図示せず)が配設されている。サーマルヘッド11は、共に図示しないA/D変換部および画像信号処理部等を経て、製版制御装置およびサーマルヘッド駆動回路(共に図示せず)で処理されて送出されるデジタル画像信号に基づき前記発熱素子を選択的に加熱することにより、マスタ8を選択的に加熱溶融穿孔・製版する製版手段としての周知の機能を有する。
プラテンローラ9は、プラテンローラ軸と一体的に形成されている。プラテンローラ9は、プラテンローラ軸の両端部が前記製版側板対に回転可能に支持されていることにより、時計回りに回転自在となっている。プラテンローラ9は、タイミングベルトやギヤ等の回転伝達部材(図示せず)を介してマスタ搬送モータ10に連結され、これにより時計回りに回転駆動される。マスタ搬送モータ10は、例えばステッピングモータからなる。前記構成のとおり、プラテンローラ9がマスタ搬送モータ10により時計回りに回転駆動されることにより、マスタ8はマスタロール8aから引き出されることとなる。
搬送ローラ対13は、ばね等の付勢手段により適度な押圧力を与えられて互いに圧接して設けられていて、各ローラ軸の両端部が前記製版側板対に回転自在に支持されていることにより互いに反対方向に回転自在となっている。搬送ローラ対13は、マスタ搬送モータ10を含む前記回転伝達部材によって、プラテンローラ9の周速度(搬送速度)よりもわずかに速い周速度(搬送速度)で回転するように設定されていて、マスタ8との間で滑りながら適度のフロントテンションをマスタ8に付与するようになっている。
カッタ12は、固定刃12bおよび可動刃12aを備えたギロチンタイプの公知のものである。カッタ12は、前記ギロチンタイプに限らず、可動刃がマスタ搬送方向X1と直交するマスタ幅方向に回転しながら移動する回転刃移動タイプのものを用いてもよい。
製版部15は、製版済みのマスタ8を版胴1に搬送して巻装することが可能な給版手段を構成する構成要素を含んでいる。給版手段としては、製版部15のプラテンローラ9、搬送ローラ対13、マスタガイド板14、後述する版胴1のクランパ7、このクランパ7を開閉駆動する図示しない開閉手段としての開閉装置および版胴1を回転駆動するメインモータ20等が含まれる。
図14に示す製版部15において、サーマルヘッド駆動回路(図示せず)によって駆動されるサーマルヘッド11、マスタ搬送モータ10を含む製版部15の制御対象駆動手段を総括的に製版駆動手段124とする。
版胴1は、多孔性で円筒状の支持円筒体と、その支持円筒体の外周を覆うように複数層巻き付けられた樹脂あるいは金属網体製のメッシュスクリーン(図示せず)との2層構造からなる。版胴1は、インキ通過性の多数の開孔が開けられた印刷可能な開孔部1a(以下、「画像形成領域」というときがある)と、クランパ7等が設けられていて印刷不能な非開孔部(以下、「非画像形成領域」というときがある)とが、図1中矢印で示す版胴1の回転方向に沿って形成されている。前記画像形成領域は、図1中の版胴1における第1の画像領域1A(以下、「表面領域1A」という)と、中間領域1Cと、第2の画像領域1B(以下、「裏面領域1B」という)とを少なくとも含む領域である。
版胴1は、図示しない端板フランジの外周部に巻着・固設されていて、後述するインキパイプ5を兼ねる支軸5の周りに回転自在に支持されている。版胴1の大きさは、実施例的に言えば、例えば片面印刷時において最大でA3サイズの用紙36に印刷を行ってA3サイズの印刷物を得ることが可能な大きさ、すなわちA3サイズの1版のマスタ8を巻装可能な大きさを有しており、その外周直径が180mm(版胴1の外周長としては約565mm)に、その幅方向(回転中心軸線方向)の寸法が350mmに設定されている。
版胴1は、図示しないギヤやベルト等の駆動伝達手段を介して版胴駆動手段としてのメインモータ20に連結されていて、例えば制御用のDCモータからなるメインモータ20により図1中矢印方向(時計回り)に回転駆動される。メインモータ20の出力軸には、光学式のロータリエンコーダ(図示せず)とこれを挟み付けて該ロータリエンコーダとの協働作用によりパルスを発生する版胴センサ(図示せず)が設けられている。この版胴センサは、発光部および受光部を具備する透過型の光学センサ(以下、単に「透過型の光学センサ」という)からなり、版胴1の回転速度(印刷速度)の制御や回転位置の割り出し等のために用いられる。
版胴1の内部には、図示しない側板に回転自在に支持されていて、図示しないギヤ等の駆動伝達手段によりメインモータ20の回転駆動力が伝達されて版胴1の回転と同期して図中矢印方向(時計回り)に回転駆動され、版胴1の内周面に接触してインキを供給するインキローラ2と、インキローラ2とわずかな間隙を置いて平行に配置されインキローラ2との間に断面楔状のインキ溜まり4を形成するドクターローラ3と、インキ溜まり4へインキを供給するインキパイプ5とが配置されている。インキローラ2、ドクターローラ3およびインキパイプ5が版胴1上の分割製版済みマスタ8Xや製版済みマスタ8Yにインキを供給する単一のインキ供給手段を構成している。
インキ溜まり4のインキは、版胴1の外部に設けられた図示しないインキパック等より図示しないインキポンプで吸引され、インキパイプ5の供給孔より供給されて混練される。インキ溜まり4のインキは、ドクターローラ3により計量されながらインキローラ2の外周面上に薄膜状に供給され、さらにインキローラ2の外周面が版胴1の前記支持円筒体内周面に接触することにより版胴1の開孔部1a部分に供給される。
版胴1の前記非開孔部外周面上の一部分には、版胴1の一つの母線に沿って設けられた強磁性体製のステージ6と、このステージ6の両側端に設けられたクランパ軸に回動自在に取り付けられ、ステージ6の平面部に対して開閉自在なゴム磁石を有するクランパ7とがそれぞれ設けられている。クランパ7は、本体フレーム側に設けられた開閉装置(図示せず)により所定位置において開閉される。版胴1は、クランパ7が図1に示すほぼ真上に位置する状態、すなわち給版待機位置において停止されるようになっている。版胴1は、前記インキパックを着脱自在に載置するインキパック載置台(図示せず)および前記インキポンプ等と一体的になされた版胴ユニットとして構成されており、両面孔版印刷装置300の本体フレームに対してインキパイプ5の軸線方向に着脱自在になっている。
図1において紙面奥側の版胴1の端板フランジおよびこの端板フランジ近傍の本体フレーム側には、図10に示すように、版胴1の回転位置を検出することにより給紙部30の図1および図11に示す給紙モータ37およびレジストモータ41への起動・トリガ情報を与える構成要素が配設されている。すなわち、版胴1における奥側の前記端板フランジの外側壁には、給紙開始用遮光板121とレジスト開始用遮光板122とが版胴1の同円周上に所定の間隔をおいてそれぞれ所定の位置に取り付けられている。
一方、各遮光板121,122近傍の本体フレーム側には、給紙開始用遮光板121とレジスト開始用遮光板122とが取り付けられている版胴1の同円周上に対向してこれらを挟む態様で、給紙レジストセンサ120が取り付けられている。給紙レジストセンサ120は、透過型の光学センサである。
本実施形態では、版胴1のホームポジション(初期位置)は、そのクランパ7がほぼ真上に位置して製版部15から搬送されてくる分割製版済みマスタ8Xや製版済みマスタ8Yの先端部を受け取り保持する位置である給版待機位置と同様の位置に設定されている。版胴1における奥側の前記端板フランジ外側壁の所定位置には、版胴1のホームポジションを検出するための図示しないホームポジション用遮光板が取り付けられている。該ホームポジション用遮光板近傍の本体フレーム側には、版胴1の前記ホームポジション用遮光板に対向してこれを挟む態様で、ホームポジションセンサ(図示せず)が取り付けられている。該ホームポジションセンサは、透過型の光学センサである。
図14において、前記版胴センサ、給紙レジストセンサ120および前記ホームポジションセンサを、版胴1の回転位置を検出する版胴位置検知手段としての版胴位置検知センサ29と総称する。
インキローラ2に対向する版胴1の外周面の下方近傍には、単一のプレスローラ21が配設されている。プレスローラ21は、プレスローラ軸21aに弾性体を一体的に固着して構成されており、版胴1の軸方向に延在して設けられている。プレスローラ21は、その横幅が版胴1の横幅とほぼ同じ長さとなるように形成されている。プレスローラ21は、図2〜図4に示すように、プレスローラ軸21aの両端部を介して、紙面の手前側および奥側に配設された押圧手段支持部材としての一対の印圧アーム22(紙面の手前側は省略されている)によって回転自在に支持されている。
なお、版胴1の大きさ・サイズは、プレスローラ21のそれと比べて大きく誇張して図示しており、実施例的には例えば特許文献7等で開示したように、プレスローラの周速度を版胴のそれと同速度にすることを簡単にするためには、プレスローラの直径と版胴の直径との比は1:2または1:3が望ましいことは言うまでもない。当然、前記利点を望まなくてもよいのであれば、プレスローラ21としてその周面の円周方向長さが単に版胴1の外周面上における表面領域1Aまたは裏面領域1Bの円周方向長さよりも長いものを用いてもよい。
各印圧アーム22は、紙面の手前側および奥側においてほぼ同様の形状および同一の位相をもって配設されている。各印圧アーム22は、その曲折部近傍の部位に取り付け固定されたアーム軸22aおよび図示しない連結補強部材によってそれぞれ一体化されている。図に表されている印圧アーム22の下端部には、後述する係止部材60の係止爪60aと選択的に係合する切欠22bが形成されている。アーム軸22aは、本体フレーム側に固設された図示しない一対の筐体側板(図7の筐体側板対130a、130b参照)の間に軸受(図示せず)を介して所定角度回動自在に支持されている。
プレスローラ21は、耐油性を有する弾性体である例えばニトリルゴム(NBR)で形成されていて、少なくとも該ゴムの外周表面には、微細な凹凸状の表面処理を施されたフィルムとしての、例えばオフセット印刷機などで印刷物の汚れ防止等に用いられていると同様の例えばガラス質微粒子としてのガラスビーズが均一に被覆または接着されている。ガラス質微粒子に限らず、セラミック質微粒子であってもよい。これにより、版胴1の外周表面または該版胴1上の分割製版済みマスタ8Xや製版済みマスタ8Yと接触したときや、図4を参照して後述するように表面印刷済み用紙36aの印刷画像面側のインキと接触することによる膨潤およびインキ汚れが最小となるように構成されている。
プレスローラ21は、図2〜図4に示す印圧範囲可変手段28、係止手段64および各印圧アーム22を介して、版胴1上の分割製版済みマスタ8Xまたは製版済みマスタ8Yに未印刷の用紙36や表面印刷済み用紙36aを押し付ける図3および図4に示す印刷位置とこの印刷位置から離れた図1および図2に示す初期位置を含む非印刷位置との間で変位自在に構成されている。前記のとおり、押圧手段支持部材としての一対の印圧アーム22は、押圧手段としてのプレスローラ21を回転自在に支持し、かつ、プレスローラ21を版胴1に対して接離自在とすべく変位可能に構成されている。印圧範囲可変手段28は、押圧手段接離手段としてのプレスローラ接離機構とも呼ばれることがある。
図2において、符号54は、プレスローラ21を回転駆動する押圧手段駆動手段としてのプレスローラ回転駆動手段を示す。プレスローラ回転駆動手段54は、プレスローラ21を、版胴1の周速度とほぼ同じ周速度で版胴1の回転方向と反対方向(反時計回り)に回転駆動する駆動手段としてのプレスローラ駆動モータ55と、プレスローラ駆動モータ55の回転駆動力をプレスローラ21に伝達する駆動力伝達手段とから主に構成される。プレスローラ駆動モータ55は、図2における紙面奥側の印圧アーム22の外側壁に取り付け固定されている。
前記駆動力伝達手段は、図2に示すように、プレスローラ駆動モータ55の出力軸55aに固着された歯付きの駆動プーリ56と、印圧アーム22のさらに紙面の奥側に突き出たプレスローラ軸21aに固着された歯付きの従動プーリ57と、駆動プーリ56と従動プーリ57との間に掛け渡された歯付きの無端ベルト58とを具備している。
プレスローラ21は、版胴1上の分割製版済みマスタ8Xまたは製版済みマスタ8Yに未印刷の用紙36または表面印刷済み用紙36aあるいは片面印刷済み用紙36cを圧接するタイミングに合わせて、プレスローラ駆動モータ55により回転駆動されるようになっている。プレスローラ駆動モータ55の作動は、図14に示す制御装置100によって制御される。前記駆動力伝達手段を介してのプレスローラ駆動モータ55の回転速度の制御は、上述したようにプレスローラ21の周速度が版胴1の周速度とほぼ同じになるようになされる。本実施形態の例によれば、プレスローラ21がプレスローラ駆動モータ55によって版胴1の周速度とほぼ同じ周速度で回転駆動されるので、印刷画像位置ずれのない良好な印刷物を得ることができる。
各印圧アーム22間には、図1〜図6に示すように、再給紙手段45を構成するプレスローラ21の他、再給紙搬送装置104、図5のみに示す再給紙レジスト接離手段70、ストッパ部材53、ローラガイド板50等が配設されている。
再給紙手段45は、印刷部16でその表面に印刷画像を形成された表面印刷済み用紙36aを一時的に保持してストッパ部材53を介してプレスローラ21に向けて搬送する、所定の時機に停止・起動可能な再給紙搬送手段としての再給紙搬送装置104と、再給紙搬送装置104により搬送されてきた表面印刷済み用紙36aの先端(用紙搬送方向Xに対しては「後端」であるが、表面印刷済み用紙36aの搬送方向に対しては「先端」または「前端」であため、このように名付ける)をプレスローラ21に受け渡す前で一時的に停止させ位置決めをするための再給紙停止手段としてのストッパ部材53と、このストッパ部材53により一時的に停止された表面印刷済み用紙36aの先端の停止状態を所定のタイミングで解除して該表面印刷済み用紙36aの先端をプレスローラ21に当接(接触)させる当接位置と、この当接位置から離間した非当接位置との間で変位自在な再給紙レジスト手段としての再給紙レジストローラ51と、再給紙レジストローラ51を当接位置と非当接位置との間に変位させる再給紙レジスト接離手段70と、プレスローラ21の右側においてプレスローラ21外周面に近接して設けられ、再給紙レジストローラ51によりプレスローラ21外周面に当接された表面印刷済み用紙36aを印刷部16に形成されるニップ部16aへ案内する再給紙案内手段としてのローラガイド板50とから主に構成されている。
再給紙搬送装置104は、図1〜図6に示すように、移動ガイド81の往復動する軌跡下方であって再給紙レジストローラ51の左側近傍に延在して配置されている。再給紙搬送装置104は、図2〜図6に詳しく示すように、駆動軸107aおよび従動軸106aを回転自在に支持する再給紙筐体110と、駆動軸107aに一体的に設けられた駆動ローラとしての搬送ローラ後107と、駆動軸107aよりも用紙搬送方向Xの上流側であって再給紙レジストローラ51の近傍に配置された従動軸106aに一体的に設けられた従動ローラとしての搬送ローラ前106と、搬送ローラ後107と搬送ローラ前106との間に巻き掛け・張設され、移動ガイド81より受け渡される表面印刷済み用紙36aを保持して搬送する無端ベルトとしての空気吸引用の多数の孔108aが形成された複数本の搬送ベルト108と、駆動軸107aにギヤやベルト等の駆動力伝達手段を介して連結され搬送ローラ後107の回転駆動を介して搬送ベルト108を回転駆動するベルト駆動手段としてのベルト駆動モータ105と、移動ガイド81より受け渡される表面印刷済み用紙36aを多数の孔108aから空気を吸引することにより搬送ベルト108の上面側に吸着・保持させるための吸引ファン109とから主に構成されている。なお、再給紙レジストローラ51と搬送ローラ前106との間隔は、図の簡明化のために相当空けて図示しているが、近接して配置されることを付記しておく。
再給紙筐体110は、その上面が開放され、その幅が各印圧アーム22間の間隔よりも若干小さくなるように形成されていて、側断面で概略コ字形状をなす。再給紙筐体110の下面壁は、吸引ファン109による空気流を下方に逃がすための図示しない多数の孔あるいはスリットが形成されている。再給紙筐体110は、その用紙搬送方向上流側および下流側の両側面に図示しない軸受を有しており、これらの軸受は、駆動軸107aおよび従動軸106aをそれぞれ回転自在に支持している。駆動軸107aは、その両端部が再給紙筐体110の両側面を貫通しており、この貫通した駆動軸107aの両端部は、前記本体フレームに設けられた図示しない軸受部材によって回転自在に支持されている。
駆動軸107aの一端(図2〜図5の紙面の奥側)には、図示しない駆動ギヤが取り付けられており、駆動軸107aは、その駆動ギヤを介して連結されたベルト駆動モータ105によって回転駆動される。搬送ベルト108は、図14に示す制御装置100からの指令信号に基づくベルト駆動モータ105の作動によって、後述するように用紙の種類に応じた特有のタイミングで断続的に時計回りに回転駆動される。ベルト駆動モータ105は、例えばステッピングモータからなり、前記本体フレーム側に固定して設けられている。従動軸106aは、その両端部が再給紙筐体110の両側面を貫通しないようになされている。
再給紙筐体110における用紙搬送方向Xの上流側端部の両側面外壁には、ピン111がそれぞれ外側に突出して固着されており、各ピン111は各印圧アーム22に形成された図示しない逃げ孔にそれぞれ緩く嵌合されている。これにより、再給紙筐体110は、後述する印圧範囲可変手段28によりプレスローラ21が版胴1に対して接離される際に、各印圧アーム22の揺動に伴って駆動軸107aを中心としたピン111配置側の再給紙搬送装置104の揺動が可能となっている。
搬送ローラ後107および搬送ローラ前106は、串刺し状に分割されていて例えば歯付きのローラからなり、高摩擦材料で形成されている。ちなみに、搬送ローラ後107および搬送ローラ前106は、例えばニトリルゴム(NBR)や適宜の樹脂等の耐油性(耐インキ腐食性)を有する高摩擦材料で形成することが望ましい。搬送ベルト108は、例えば歯付きベルトからなり、複数本のものが串刺し状に分割された搬送ローラ後107と搬送ローラ前106との間にそれぞれ巻き掛けられ張設されている。ちなみに、搬送ベルト108は、耐油性(耐インキ腐食性)を有する弾性体である例えばニトリルゴム(NBR)で形成することが望ましい。
吸引ファン109には、移動ガイド81より受け渡される表面印刷済み用紙36aを搬送ベルト108の多数の孔108aから空気を吸引することにより搬送ベルト108の上面側に吸着させるように吸引ファン109を回転駆動するファン駆動手段としてのファン駆動モータが内蔵されている。以下、前記ファン駆動モータのことを単に「吸引ファン109」という。
ストッパ部材53は、表面印刷済み用紙36aの先端をプレスローラ21に受け渡し可能となる位置で一時的に停止させると共に、表面印刷済み用紙36aの先端を位置決めおよびスキューなどを矯正する機能も有する。ストッパ部材53は、例えば板金や適宜の樹脂でできていて、断面ほぼL字状をなし、表面印刷済み用紙36aの先端を突き当て位置決めするストッパ面53aを備えている。ストッパ部材53には、複数のコロ状部材からなる再給紙レジストローラ51のプレスローラ21への当接変位時に接触しないように複数箇所に切欠き開口部が形成されている。ストッパ部材53の図2における左端側は、再給紙筐体110に固定されていて、これによりストッパ部材53は再給紙搬送装置104およびプレスローラ21と共に揺動変位される。ストッパ部材53は、再給紙搬送装置104と別体的に設けることも勿論できる。
なお、再給紙搬送手段および再給紙停止手段は、本実施形態の再給紙搬送装置104およびストッパ部材53に限らず、例えば特許文献8および特許文献9の図1〜図4等に開示されているように、再給紙搬送ユニット(25)および補助トレイ(8)に一体的に取り付けられた再給紙位置決め部材(24)であってもよい。
ストッパ部材53における用紙搬送方向Xの上流端部には、図2〜図4および図6に示すように、表面印刷済み用紙36aの先端がストッパ部材53に近接したことを検知する表面印刷済み用紙検知手段としての再給紙センサ52が配設されている。再給紙センサ52は、反射型の光学センサからなり、表面印刷済み用紙36aの先端(図4に示す表面印刷済み用紙36aの右端)および後端(図4に示す表面印刷済み用紙36aの左端)を検知する機能も有する。
再給紙レジスト接離手段70は、図5に示すように、支軸72、一対の揺動アーム71、ソレノイド73および引張ばね75から主に構成されており、ストッパ解除手段としての機能を有する。再給紙レジストローラ51は、コロ状をなし、高摩擦材料で、かつ、耐油性(耐インキ腐食性)を有する弾性体である例えばニトリルゴム(NBR)で、串刺し状に分割されて軸51aと一体的に形成されている。再給紙レジストローラ51は、通常、プレスローラ21およびストッパ部材53の下側において非当接位置を占めた状態で保持されており、軸51aの両端部が略へ字形状をなす各揺動アーム71の一端に回転自在に取り付けられている。各揺動アーム71は、各印圧アーム22間に回動自在に支持された支軸72にその曲折部を固着されている。これにより、再給紙レジストローラ51が当接位置を占めたとき、用紙36aとストッパ53との当接を解除し、プレスローラ21の回転力を受けてプレスローラ21の回転方向(反時計回り)と反対方向(時計回り)に従動回転する。
図において紙面奥側の揺動アーム71の他端には、ピンを介してソレノイド73のプランジャ74が取り付けられている。ソレノイド73は、プル型であり、図示しない不動部材であるブラケットを介して一方の印圧アーム22に取り付け・固定されている。また、揺動アーム71の他端には、その一端を一方の印圧アーム22に固着され支軸72を中心に再給紙レジストローラ51を常に非当接位置を占める向きに付勢する引張ばね75の他端が取り付けられている。ソレノイド73は、再給紙レジストローラ51を所定のタイミングで当接位置を占めるように変位させる再給紙レジスト駆動手段としての機能を有する。
上述した構成のとおり、再給紙レジストローラ51は、ソレノイド73が引張ばね75の付勢力に抗して作動される(オン作動)と、その外周面を所定の圧接力でプレスローラ21の外周面に当接して当接位置を占めることにより、表面印刷済み用紙36aをプレスローラ21の外周面に所定時間当接させ、プレスローラ21の回転力を受けてプレスローラ21と反対の時計回りに従動回転しながら表面印刷済み用紙36aの搬送を助勢し、ソレノイド73の作動が解除される(オフ作動)と、引張ばね75の付勢力によってその外周面がプレスローラ21の外周面から離間して非当接位置を占める。
ローラガイド板50は、プレスローラ21の回転力によって搬送される表面印刷済み用紙36aをプレスローラ21の外周面に当接させて版胴1に向けて案内する機能を有する。ローラガイド板50は、表面印刷済み用紙36aをプレスローラ21の外周面に沿わせて案内するためにプレスローラ軸21aを中心とした湾曲した部分円筒形状をなし、プレスローラ21の外周面と所定の隙間を開けて各印圧アーム22間に固着されている。ローラガイド板50における表面印刷済み用紙36aの案内面側は、表面印刷済み用紙36aに対して摩擦係数が低く、かつ、ポリテトラフルオロエチレン樹脂等の撥インキ性かつ耐油性を有する被膜が平滑にコーティングされている。
図14において、再給紙手段45の制御対象駆動手段としては、プレスローラ駆動モータ55、ソレノイド73、ベルト駆動モータ105、吸引ファン109、等が含まれる。再給紙手段45の諸検知手段としては、再給紙センサ52等が含まれる。
次に、プレスローラ21の印圧範囲を決定している印圧範囲可変手段28周りの構成について簡単に述べる。本実施形態では、図1および図9に示すように、版胴1上の分割製版済みマスタ8Xにおける表面製版画像8Aに対応した表面領域1Aのみに印圧を付与する第1の印圧範囲パターンとしての印圧範囲パターンIと、版胴1上の分割製版済みマスタ8Xにおける裏面製版画像8Bに対応した裏面領域1Bのみに印圧を付与する第2の印圧範囲パターンとしての印圧範囲パターンIIと、版胴1上の製版済みマスタ8Yにおける片面製版画像8YAに対応して表面領域1Aから続けて裏面領域1Bに亘って印圧を付与する第3の印圧範囲パターンとしての印圧範囲パターンIIIとの少なくとも3つの印圧範囲パターンのうちの一つを選択的に切り換え可能になっている。これら3つの印圧範囲パターンのうちの一つを選択的に切り換える印圧範囲可変手段28に係る機構の一部が、図2および図3に示されている。印圧範囲可変手段28は、プレスローラ21を印刷位置と非印刷位置との間に変位させるための構成・機能も有する。
印圧範囲可変手段28は、特許文献7の図2〜図4に示されている多段カム(43)、段差カム(49)、この段差カム(49)を回転駆動するステッピングモータ(52)等を具備したプレスローラー接離機構(55)と同様の構成である。ちなみに、図2および図3において、印圧範囲可変手段28は、プレスローラー接離機構(55)を構成する多段カム(43)、段差カム(49)、ステッピングモータ(52)等の各構成要素の符号に数値「200」を加えた符号でその一部を表しており、前記したアーム軸22a、前記した印圧アーム対22、一対のカムフォロア241、一対の印圧ばね242、印圧カム軸244、一対の多段カム243等を具備している。ステッピングモータ252は、図14および後述する図15に示した印圧範囲可変手段28にのみ図示している。
印圧範囲可変手段28を構成している前記各構成要素は、図2および図3に示すように、プレスローラ21の均一な押圧力を版胴1の外周面に付与すべく、基本的にプレスローラ21における図1より見て紙面の手前側および奥側にそれぞれ配設されている(紙面の手前側は省略している)ので、紙面の奥側の構成要素を代表して説明することにより紙面の手前側の説明を省略する。なお、印圧範囲可変手段28は、上述したような利点をそれ程望まなくてもよいのであれば、印圧範囲可変手段28を構成する前記構成要素は、例えば図1〜図4の紙面の奥側のみに配設しても勿論構わない。
図2および図3に示すように、プレスローラ21が支持されている印圧アーム22の内側と対向する印圧アーム22のほぼ中央の奥側外壁には、カムフォロア241が回動自在に軸を持って保持されている。カムフォロア241は、多段カム243と摩擦抵抗を少なくして当接することができるように転がり軸受で構成されている。
印圧アーム22の他端部側には、プレスローラ21を常に版胴1の外周面に圧接する向きに付勢する印圧ばね242(引張ばね)の一端が係止され、印圧ばね242の他端は前記筐体側板側に係止されている。この印圧ばね242により、印圧アーム22の他端側はアーム軸22aを中心として時計回りに揺動・付勢され、プレスローラ21を版胴1の外周面に圧接する向きに付勢している。印圧アーム22の他端部には、係止部材60の係止爪60aと係合可能な切欠22bが一体的に形成されていて、係止部材60と係脱可能となっている。
一方、各カムフォロア241近傍の前記各筐体側板側には、版胴1の回転と同期して回転する一対の多段カム243を固着した印圧カム軸244が回転自在に支持されている。多段カム243は、小径部(凹部部分)と大径部(凸部部分)とが形成された例えば板カムからなる。
印圧カム軸244には、図示しないベルトプーリまたはギヤ等が固設されていて、図示しないベルトやギヤ等の駆動伝達手段を介してメインモータ20に連結されており、これにより多段カム243が版胴1の回転と同期して回転するようになっている。前記した印圧ばね242により、カムフォロア241は多段カム243に常に当接する向きに付勢されている。したがって、多段カム243を回転駆動するカム駆動手段は、主としてメインモータ20で構成されている。
各多段カム243は、3枚のカム板243A、243B、243Cを有し、これらが軸方向に所定量移動可能な印圧カム軸244に適当な間隔をもって固着されており、必要に応じて指定された何れか1枚のカムが選択され、カムフォロア243に対向する位置に移動する。各カム板243A,243B,243Cは、図2および図3の紙面手前側からカム板243B、カム板243A、カム板243Cの順に配設されている。各カム板243A、243B、243Cは、カム軸244と同心の円板である小径部(凹部ないしは基部)とそれぞれ同一突出量の大径部(凸部)とを有している。多段カム243は、カム軸244、すなわち特許文献7の図4に示されているカム軸(44)に取り付けられた駆動ギヤ(45)および本体フレームに回転自在に支持された支軸(46)に取り付けられた伝達ギヤ(47)を介して版胴駆動手段(121)、すなわちメインモータ20からの回転力を伝達され、図2において時計回りに回転駆動される。
プレスローラ21は、各カム板243A,243B,243Cの何れかの大径部がカムフォロア241と当接したときにその周面が版胴1の外周面より離間する図2および図4に示す非印刷位置を占め、その大径部とカムフォロア241との当接が解除されたときに印圧ばね242の付勢力によってその周面が版胴1の外周面に圧接する図3および図4に示す印刷位置を占める。各カム板243A,243B,243Cは、プレスローラ21が印刷位置を占めたときにその小径部(基部)とカムフォロア241とが接触しないように構成されている。
各カム板243A、243B、243Cの大径部の形状は、プレスローラ21と版胴1との接触範囲が、カム板243Aでは図1に示す表面領域1Aと中間領域1Cと裏面領域1Bとを全て合わせた範囲(図9に示した印圧範囲パターンIII参照)となるように、カム板243Bでは表面領域1Aと同じ範囲(図9に示した印圧範囲パターンI参照)となるように、カム板243Cでは裏面領域1Bと同じ範囲(図9に示した印圧範囲パターンII参照)となるようにそれぞれ形成されている。
図2および図3に示すように、係止手段64は、通紙時以外はプレスローラ21を図1および図2に示す非印刷位置で保持するためのものである。係止手段64は、係止部材60、支軸61、ソレノイド62および引張ばね63から主に構成される。係止手段64は、紙面奥側に配設されている。
係止部材60は、紙面奥側の前記筐体側板に植設された支軸61の周りに揺動自在に支持されていて、その一端部には前記した印圧アーム22の切欠22bと選択的に係合する係合爪60aが形成されている。係止部材60の他端部には、係合爪60aを印圧アーム22の切欠22bに常に係合する向きに付勢する引張ばね63の一端が係止されている。引張ばね63の他端は、紙面奥側の前記筐体側板側に係止されている。また、係止部材60の他端部における引張ばね63の配置部と対向する側には、紙面奥側の前記筐体側板に図示しない不動部材としてのブラケットを介して固着されたソレノイド62のプランジャ62aがピンを介して連結されている。ソレノイド62は、プル型を用いている。
上述した構成のとおり、ソレノイド62に通電されてソレノイド62がオンされることにより、印圧範囲可変手段28を作動させることとなり、後述する動作を介してプレスローラ21が印刷位置を占める。これによって、プレスローラ21は用紙36を版胴1上の分割製版済みマスタ8Xや製版済みマスタ8Yに回転させながら連続的に押し付ける。ソレノイド62への通電が遮断されソレノイド62がオフされることにより、印圧範囲可変手段28を非作動にさせることとなり、後述する動作を介してプレスローラ21が印刷位置から離れた図1および図2に示す非印刷位置(初期位置)を占める。
ソレノイド62は、後述する制御装置100によりオン/オフ制御される。制御装置100によるソレノイド62のオン/オフの切り換え制御によって、印圧アーム22を保持する状態とこの保持を解除する状態とに選択的に切り換えられる。ソレノイド62は、後述するように、カムフォロア241が多段カム243の大径部と当接した状態でオン作動される(図2参照)。
図9は、プレスローラ21の印圧範囲を分かりやすくこれを展開して図示したものである。図9において、同図に図示しない版胴1上の開孔部1aに巻装された分割製版済みマスタ8Xには、表面製版画像8Aの領域部分と裏面製版画像8Bの領域部分とが形成されていて、それらの間には未製版空白の中間未製版領域8Cを設けてある。ここで、同図に図示しない版胴1のクランパ7に挟持・固定される先端余白部とも呼ばれる分割製版済みマスタ8Xの先頭側は左端側である。
片面印刷を含む通常印刷時用の印圧範囲パターンは、パターンIIIのようになっている。すなわち、印圧範囲パターンIIIは、表面製版画像8Aの領域部分から中間未製版領域8Cを経て続けて裏面製版画像8Bの領域部分に亘って印圧を付与することにより、製版済みマスタ8Yの片面製版画像8YAに用紙36を連続して押し付けて印刷されるように、図14に示す制御装置100からの指令により印圧範囲可変手段28が作動することによってカム板243Aが選択され、カム板243Aの小径部がカムフォロア241に対向するように回転駆動される。
表面印刷時には、印圧範囲パターンIのようになっていて、表面製版画像8Aの領域部分に対応して印刷されるように、制御装置100からの指令により印圧範囲可変手段28が作動することによってカム板243Bが選択され、カム板243Bの小径部がカムフォロア241に対向するように、次いで、中間未製版領域8C部分では印圧が解除されるように回転駆動される。
裏面印刷時には、印圧範囲パターンIIのようになっていて、制御装置100からの指令により印圧範囲可変手段28が作動することによってカム板243Cが選択され、始めの表面製版画像8Aの領域部分では印圧が解除されるように、カム板243Cの大径部がカムフォロア241に対向するように、次いで、カム板243Cの小径部がカムフォロア241に対向するように回転駆動される。
本実施形態によれば、印圧範囲可変手段28を具備しているので、印圧オン範囲が最適に設定されることになり、用紙が存在しないのに印圧がオンされてプレスローラ21の外周表面に印刷画像が転写されてインキで汚れてしまうという不具合を未然に防止することができる。
印圧範囲可変手段28は、上述したような特許文献7の図2および図4等に示された多段カム(43)、段差カム(49)およびプレスローラー接離機構(55)と同様の構成に限らず、例えば特開2003−237030号公報の図1ないし図4に示されている緊急押圧解除手段(79)を応用したもの等でも構わない。
排紙部19は、図1に示すように、版胴1の外周面に近接自在に設けられ、片面印刷済み用紙36cを版胴1上の製版済みマスタ8Yから剥離する剥離爪170と、剥離爪170で剥離された片面印刷済み用紙36cの先端部と版胴1との間に送風して剥離爪170による剥離作用を助勢するための剥離ファン171と、剥離爪170および剥離ファン171で剥離された片面印刷済み用紙36cもしくは両面印刷済み用紙36bを吸引しつつ搬送する排紙搬送装置152と、前記した排紙トレイ172とから主に構成されている。
剥離爪170は、版胴1の外周面にプレスローラ21が圧接することにより形成されるニップ部16aにおける下流近傍に設けられている。剥離爪170は、版胴1の回転と同期して回転駆動されるカムおよびばね等を具備した剥離爪変位手段(図示せず)により、版胴1の外周面に近接して版胴1上の製版済みマスタ8Yから片面印刷済み用紙36cを強制的に剥離する剥離位置と、この剥離位置から離間して版胴1の外周面から突出したクランパ7配置部との接触を避ける非剥離位置との間で変位自在に構成されている。剥離ファン171は、該剥離ファンを回転駆動するファン駆動モータを内蔵している。
排紙搬送装置152は、図1〜図5に示すように、剥離爪170の下方であって切換ガイド46の左方に配設されており、駆動ローラとしての排紙ローラ後154、従動ローラとしての排紙ローラ前156、無端ベルトである排紙ベルト158、吸引ファン159等を具備している。排紙ローラ後154は、ころ状をなし、前記筐体側板対に回転自在に支持された駆動軸154aに所定の間隔で複数取り付けられている。排紙ローラ前156も、前記筐体側板対に回転自在に支持された従動軸156aに各排紙ローラ後154と等間隔で複数設けられている。各排紙ローラ後154およびこれと対応する各排紙ローラ前156には、排紙ベルト158がそれぞれ掛け渡され張設されている。駆動軸154a(例えば図1〜図5の紙面の奥側)には、図示しない駆動ギヤまたは駆動プーリが取り付けられており、該駆動ギヤに噛み合う図示しないモータギヤまたは前記駆動プーリと図示しないプーリ間に張設されたベルト等の駆動力伝達手段を介して排紙ベルト駆動モータ153に連結されている。これにより、排紙ベルト158は、排紙ベルト駆動モータ153によって図1に示す矢印方向(反時計回り)に回転駆動される。
排紙ベルト158の下方には、吸引ファン159が配設されている。吸引ファン159は、該吸引ファンを回転駆動するファン駆動モータを内蔵している。排紙搬送装置152は、吸引ファン159の吸引力によって各排紙ベルト158上に片面印刷済み用紙36cもしくは両面印刷済み用紙36bを吸引し、各排紙ローラ後154の回転によって図1の矢印方向に搬送する。
図14において、排紙部19における剥離ファン171の前記ファン駆動モータ、排紙ベルト駆動モータ153、吸引ファン159の前記ファン駆動モータを含む排紙部19の制御対象駆動手段を総括的に排紙駆動手段127とする。
切換ガイド46は、図1〜図5に示すように、版胴1に対してプレスローラ21が押圧されることにより形成される印刷部16における印刷画像形成部としてのニップ部16aと排紙搬送装置152との間の用紙搬送経路上に配設されている。切換ガイド46は、版胴1およびプレスローラ21とほぼ同じ幅を有する板材からなり、その基端部(用紙搬送方向Xの下流側端部)を前記筐体側板に所定角度回動自在に支持された軸46aに固着されていて、その自由端部(用紙搬送方向Xの上流側端部)が軸46aを中心として揺動自在になっている。切換ガイド46の外周表面は、例えばポリテトラフルオロエチレン樹脂等の撥インキ性かつ耐油性を有する被膜で平滑にコーティングしてもよい。
切換ガイド46は、図2および図14に示す切換駆動手段としてのソレノイド47が図示しない付勢手段としての引張ばねの付勢力に抗して作動することによって断面鋭角状に形成された自由端部を図1に実線で示す第1の変位位置と二点鎖線で示す第2の変位位置とに選択的に位置決めされる。切換ガイド46は、通常、図1に示す初期位置でもある第1の変位位置に前記引張ばねの付勢力によって揺動する向きの習性を付与されている。切換ガイド46は、第1の変位位置を占めたときにその先端がプレスローラ21の外周面に近接すると共に版胴1上のクランパ7と干渉しない位置に置かれ、第2の変位位置を占めたときにその先端が版胴1の周面に近接する位置に置かれる。版胴1とプレスローラ21との間を通過した両面印刷済み用紙36bまたは片面印刷済み用紙36cは、切換ガイド46が第1の変位位置を占めたときに排紙部6へと案内され、表面印刷済み用紙36aは切換ガイド46が第2の変位位置を占めたときに切換ガイド46に案内されつつ移動ガイド81へ受け渡される。なお、切換ガイド46を第1の変位位置と第2の変位位置とに変位させる切換駆動手段は、前記ソレノイド47と引張ばねとの組み合わせに限らず、例えばステッピングモータやロータリソレノイド等で駆動するようにしてもよい。
移動ガイド81は、図1〜図5に示すように、排紙搬送装置152および切換ガイド46の下方と再給紙搬送装置104の上方との間に配設されている。移動ガイド81は、図3、図7および図8に示すようにニップ部16aから送り出された表面印刷済み用紙36aの先端を含む先端部を印刷部16近傍の第1の位置としての移動位置P1で挟持し、図7および図8に示すように移動位置P1よりも低い再給紙手段45の上流側近傍の第2の位置としての初期位置P2で表面印刷済み用紙36aの先端を開放する用紙挟持手段としての機能・構成を有する。
移動ガイド81は、表面印刷済み用紙36aの先端部を挟持・載置する挟持台81fと、ニップ部16aから送り出された表面印刷済み用紙36aの用紙進行方向Xa下流側の挟持台81fに一体的に形成され表面印刷済み用紙36aの先端を当接させる用紙当接面81eを備えたエンドフェンス81dと、挟持台81fにおける紙面の手前側および奥側の両側端に一対ならびに往復移動方向に一体的に形成された被案内部としての4箇所の突起81cと、表面印刷済み用紙36aの先端部を把持・挟持する挟持台81fに対して開閉自在な挟持部材としてのクランプ爪81bと、クランプ爪81bの基端部を取付け・固定する揺動自在(所定角度回動自在)なクランプ軸81aと、クランプ軸81aを所定角度回動自在に支持するための、挟持台81fの両側端に一体的に取り付けられた図7にのみ示す一対の軸受ブラケット81gと、クランプ爪81bの自由端を挟持台81fの上面に押し付ける図4に矢印で示す向きに付勢する付勢手段としての図示しないねじりコイルばねと、クランプ軸81aの紙面の奥側に取付け・固定された図8のみに示す上下一対の解除レバー上82、解除レバー下83とから主に構成されている。
移動ガイド81は、挟持台81fおよびエンドフェンス81dにより、断面ほぼL字形状に形成されている。4箇所の突起81cは、図7に示す筐体側板対130a,130bにそれぞれ形成された案内溝88に緩く嵌合されている。クランプ爪81bは、ニップ部16aから送り出された表面印刷済み用紙36aの用紙進行方向Xa(搬送方向)に対して鋭角の立ち上がり角度をもって傾斜してその基端部がクランプ軸81aに取付け・固定されており、その自由端部が鋭角状に形成されている。加えて、クランプ爪81bは、ニップ部16aから送り出された表面印刷済み用紙36aの先端を挟持・把持すべくクランプ軸81aにおける用紙幅方向Yに延在して固定されている金属製または樹脂製の薄板状部材からなる。挟持台81fの紙面奥側の下部には、図7に示す取付部84が一体的に設けられており、この取付部84は移動手段87を構成するタイミングベルト89に固定されている。
解除レバー上82、解除レバー下83は、板状部材で形成されている。なお、突起81cは、挟持台81fと一体的に形成したものに限らず、案内溝88の内壁上を摩擦抵抗少なく転動可能なコロで構成してもよい。
本実施形態の移動ガイド81によれば、ニップ部16aから送り出された表面印刷済み用紙36aの用紙進行方向Xaに対して鋭角の立ち上がり角度をもって傾斜したクランプ爪81bを備えていることにより、表面印刷済み用紙36aの搬送時などにおいて表面印刷済み用紙36aが抜ける方向に負荷等が作用した場合に、その挟持力(押圧力)を増加させる方向、すなわちクランプ爪81bを反時計回りに回転させるモーメントが働くので、挟持力(押圧力)が増加してその用紙36aの抜けが防止できると共に、図示しないねじりコイルばねの付勢力としての挟持力を小さく設定でき、かつ、強固に作る必要もなく安価に構成できるという利点を有する。
なお、移動ガイド81の前記各構成要素における表面印刷済み用紙36aと接触する部位は、帯電防止作用のある金属材料で形成したり、帯電防止作用のある蒸着処理あるいはメッキ処理等を施したりすることがより好ましい。
移動手段87は、図7に示すように、紙面奥側の筐体側板130bの外側に配設されており、移動位置P1と初期位置P2との間で移動ガイド81を往復動させる機能・構成を有する。移動手段87は、表面印刷済み用紙36aの用紙進行方向Xaにおける搬送落下経路とほぼ同じとなるように左下がりに傾斜して筐体側板対130a,130bに貫通して形成された円弧状の案内溝88と、案内溝88における表面印刷済み用紙36aの用紙進行方向Xaの下流端近傍の筐体側板130bに軸90aを持って回動自在に支持された歯付きの駆動プーリ90と、案内溝88における表面印刷済み用紙36aの用紙進行方向Xaの上流端近傍の筐体側板130bに軸91aを持って回動自在に支持された歯付きの従動プーリ91と、駆動プーリ90と従動プーリ91との間に掛け渡され張設されたタイミングベルト89と、タイミングベルト89に当接してこれに張力を付与するように筐体側板130bに図示しない軸を持って回動自在に支持された複数のテンションローラ95と、駆動プーリ90の軸90aに取付け・固定された駆動ギヤ92と、駆動プーリ90の軸90a近傍の筐体側板130bに取付け・固定された正逆転可能な駆動手段としての駆動モータ94と、駆動モータ94の出力軸94aに取付け・固定され駆動ギヤ92と噛み合うモータギヤ93とから主に構成されている。
タイミングベルト89は、移動ガイド81の挟持台81f下部に一体的に形成された取付部84を介して移動ガイド81に連結・固定されている。駆動モータ94は、例えばステッピングモータからなる。上述したとおり、駆動モータ94は移動手段87の駆動手段を、案内溝88は移動手段87の案内手段を、タイミングベルト89、駆動プーリ90、従動プーリ91、駆動ギヤ92およびモータギヤ93は駆動モータ94の駆動力を移動ガイド81に伝達する駆動力伝達手段を、それぞれ構成している。
上述の構成のとおり、駆動モータ94の正逆転駆動により駆動力伝達手段を介して、移動ガイド81が、表面印刷済み用紙36aの先端を挟持する図3、図7および図8に実線で示す、印刷部16の近傍である移動位置P1(第1の位置)と、移動位置P1よりも低い再給紙手段45の上流側近傍(再給紙搬送装置104の搬送ローラ107の後部上方近傍)であって表面印刷済み用紙36aの先端を開放する図1および図2に実線で、図7および図8に二点鎖線で示す初期位置または待機位置(第2の位置)とを選択的に占めるべく往復動する。駆動プーリ90の近傍には、移動ガイド81がホームポジションP2(初期位置P2)である第2の位置を占めたときにこれを検知するホームポジションセンサ85が配設されている。
解除カム98および前記ねじりコイルばねは、図8に示すように、移動ガイド81が実線で示す移動位置P1を占めた時、移動ガイド81の解除レバー下83と当接することにより、前記ねじりコイルばねの付勢力に抗して解除レバー下83およびクランプ軸81aを介してクランプ爪81bを時計回りに揺動(所定角度回動)させて一旦開放させた後、移動ガイド81が移動位置P1から二点鎖線で示す初期位置P2に向けて移動開始する時、解除レバー下83との当接状態が解除されることにより前記ねじりコイルばねの付勢力によってクランプ爪81bを反時計回りに揺動されることで、表面印刷済み用紙36aの先端部を挟持するように作動させる作動時機制御手段としての機能を有する。解除ピン99は、図8に示すように、移動ガイド81が初期位置P2を占めた時、移動ガイド81の解除レバー上82と当接することにより、図示しないねじりコイルばねの付勢力に抗して解除レバー上82およびクランプ軸81aを介してクランプ爪81bを時計回りに揺動させて表面印刷済み用紙36aの先端を開放するように作動させる作動時機制御手段としての機能を有する。
本実施形態によれば、解除カム98を備えていることにより、解除カム98を備えていない場合と比較して次の利点を有する。すなわち、例えば移動ガイド81が移動位置P1を占める時に、表面印刷済み用紙36aの先端がニップ部16aで付与される搬送力により図示しないねじりコイルばねの付勢力に打ち勝ってクランプ爪81bを時計回りに揺動させてその開放部分(クランプ爪81bの先端と挟持台81fの上面との間の開放部分)に挿入されるように解除カム98を除去して構成されている場合には、たとえ前記ねじりコイルばねの付勢力を腰の弱い用紙に合わせて設定したとしても、その用紙の先端部を変形させたり、その用紙挟持力が不安定になったりすることが想定される。これに対して、本実施形態によれば、移動ガイド81が移動位置P1を占めた時に、前記した解除カム98の作用によって、表面印刷済み用紙36aの先端がニップ部16aで付与される搬送力によりその開放部分(クランプ爪81bの先端と挟持台81fの上面との間の開放部分)にスムーズに挿入されるから、その用紙の腰の強さに左右されることなく、表面印刷済み用紙36aの先端をクランプ爪81bの先端と挟持台81fの上面との間で確実に挟持・クランプすることができ、これによって表面印刷済み用紙36aが蛇行したり、スキューしたりすること無く安定した状態で良好に搬送できると共に、その裏面への印刷時に印刷画像が傾いたり、傾きなどが元でレジストが悪化してしまうことを未然に防止できるという利点が得られる。また、表面印刷済み用紙36aの先端を挟持する際の開放時間等も、解除カムの形状を工夫・調整することによってある程度長く設定することができるため、腰の弱い用紙等でも用紙先端の挿入が抵抗無く行えて表面印刷済み用紙36aの先端の挟持が良好に行えるものである。
解除ピン99の働き・作用により、移動ガイド81が初期位置P2を占めた時に、クランプ爪81bの先端と挟持台81fの上面との間で挟持された表面印刷済み用紙36aの先端部が開放され、表面印刷済み用紙36aはその先端より再給紙搬送装置104の搬送ベルト108上に落下し、この時に作動している吸引ファン109による吸引力によって搬送ベルト108上に一時的に吸着・保持された後、搬送ベルト108の回転駆動によって搬送される。なお、搬送ベルト108の長さおよび移動ガイド81の初期位置P2等は、両面印刷に使用される用紙36の用紙搬送方向Xの長さによって最適な長さをもって設定されることは言うまでもない。
排版部17は、上排版部材160、下排版部材161、排版ボックス162、圧縮板163等を具備している。上排版部材160は、駆動ローラ164、従動ローラ165、無端ベルト166等を有している。駆動ローラ164は、図示しない排版モータを含む排版駆動手段126(図14参照)によって図1の時計回りに回転駆動されることにより無端ベルト166が図1中矢印方向に移動する。下排版部材161は、駆動ローラ167、従動ローラ168、無端ベルト169等を有している。駆動ローラ167は、駆動ローラ164を回転駆動する前記排版モータの駆動力をギヤやベルト等の図示しない駆動力伝達手段によって伝達されることにより、図1の時計回りに回転駆動されることにより、無端ベルト169が図1の矢印方向に移動する。また、下排版部材161は、排版駆動手段126に含まれる図示しない移動手段によって移動自在に設けられており、図に示す位置と従動ローラ168の外周面上に位置する無端ベルト169が版胴1の外周面に当接する位置とを選択的に占める。
排版ボックス162は、その内部に使用済みマスタを貯容するものであり、本体フレーム130に対して着脱自在に設けられている。圧縮板163は、上排版部材160と下排版部材161とによって運ばれた使用済みマスタを排版ボックス162の内部に押し込むように本体フレーム130に上下動自在に支持されており、排版駆動手段126に含まれる昇降モータを含む図示しない昇降手段によって上下動される。
図14において、排版部17の前記排版モータ、前記移動手段、前記昇降モータを含む排版部17の制御対象駆動手段を総括的に排版駆動手段126とする。
給紙部30は、図1、図10および図11に示すように、用紙36を繰り出し可能に積載して昇降自在な前記した給紙トレイ35と、給紙トレイ35上の用紙36に接触してレジストローラ対31a,31b(以下、「レジストローラ対31」と記述する)のニップ部に向けて用紙36を1枚ずつ分離して搬送する給紙手段としての給紙ローラ33および分離部材34と、用紙36の用紙サイズを検出する用紙サイズ検知手段としての用紙サイズ検知センサ117と、版胴1の外周面とプレスローラ21との間に後述するタイミングを取って用紙36を給送するレジスト手段としてのレジストローラ対31等とを具備している。
レジストローラ対31と給紙ローラ33および分離部材34との間の給紙路上には、用紙36の厚みを検知する用紙種類検知手段としての紙厚センサ79が配設される。紙厚センサ79は、便宜的に本実施形態で説明したが、後述する変形例等で使用されるものであり、以下、本実施形態では配設されていないものとして説明する。
給紙トレイ35は、給紙トレイ35を上下動させる図示しない昇降手段としての給紙トレイ昇降モータおよびワイヤ式昇降機構等を備えた駆動装置(図示せず)により、積載された用紙36の最上位が給紙ローラ33に所定の押圧力(用紙36が搬送可能な押圧力)をもって接触するように、すなわち用紙36の増減に連動して用紙36が搬送可能な範囲の押圧力で接触する状態を保持しつつ昇降される。給紙トレイ35は、多くの用紙種類および用紙サイズを使用できる構造を有すると共に、その用紙積載容量を例えば用紙サイズA3(横置き:ユーザが図1の紙面手前側に立って対向した状態で見た場合を指す)や用紙サイズA4の用紙36で500枚以上を積載可能とする孔版印刷装置に適した構造を有する。
給紙トレイ35には、用紙サイズに応じて用紙36の両側端を位置決め揃えるための図示しない一対のサイドフェンスが用紙搬送方向Xと直交する用紙幅方向に移動自在に配設されている。
給紙トレイ35の下部近傍には、給送される用紙36の長さを検知する用紙長さサイズ検知センサ117a,117b,117c(共に反射型の光学センサからなる)および給送される用紙36の図において紙面の手前側および奥側の用紙幅を検知する図示しない用紙幅サイズ検知センサ(例えば一対のサイドフェンスの用紙幅方向への移動と連動して用紙幅を検知する透過型の光学センサからなる)が配設されている。用紙長さサイズ検知センサ117a,117b,117cおよび前記用紙幅サイズ検知センサによって、給送される用紙36のサイズが検知され、以下、これらを用紙サイズ検知センサ117と総称する。
給紙ローラ33は、図1および図11に示すように、給紙ローラ軸33aと一体的に形成されていて、給紙ローラ軸33aの一端部が前記筐体側板に回転自在に支持されている。給紙ローラ33の表面は、少なくともゴム等の高摩擦抵抗部材で形成されている。給紙ローラ軸33aの一端部には、歯付きの給紙ローラプーリ39が取り付けられている。給紙ローラ軸33aと給紙ローラプーリ39との間には、用紙搬送方向Xにのみ用紙36を搬送するように給紙ローラ33を回転させるためのワンウェイクラッチ(図示せず)が配設されている。分離部材34は、用紙36に対する摩擦係数の高いゴムや樹脂で形成され給紙ローラ33に当接可能となっている分離パッドと呼ばれる部材を有している。この分離パッドは、付勢手段としての図示しない圧縮ばねにより給紙ローラ33に押し付けられる向きに付勢されている。
給紙ローラプーリ39の下方には、給紙ローラ33を回転駆動する給紙駆動手段としての給紙モータ37が前記筐体側板に固定して設けられている。給紙モータ37は、例えばステッピングモータからなり、その出力軸には歯付きの給紙モータプーリ38が固設されている。給紙ローラプーリ39と給紙モータプーリ38との間には、歯付きの給紙モータベルト40が掛け渡されている。これにより、給紙ローラ33と給紙モータ37とは給紙モータベルト40およびを前記ワンウェイクラッチを介して回転駆動力伝達関係にある。
図1および図11に示すように、レジストローラ上31aはレジストローラ軸と、レジストローラ下31bはレジストローラ軸31cとそれぞれ一体的に形成されていて、各レジストローラ軸31cの両端部が前記筐体側板に回転自在に支持されている。下側のレジストローラ軸31cの一端部には、歯付きのレジストローラプーリ43が取り付けられている。レジストローラ下31bは、レジストローラ軸31cを介して、前記筐体側板に移動不能にかつ回転自在に支持されている。レジストローラ上31aは、レジストローラ下31bに対して所定のタイミングで当接するように図示しないレジストローラ接離手段を介して接離自在に設けられている。
レジストローラ下31bの下方には、レジストローラ対31を回転駆動するレジスト駆動手段としてのレジストモータ41が前記筐体側板に固定して設けられている。レジストモータ41は、例えばステッピングモータからなり、その出力軸には歯付きのレジストモータプーリ42が固設されている。レジストローラプーリ43とレジストモータプーリ42との間には、歯付きのレジストモータベルト44が掛け渡されている。これにより、レジストローラ下31bとレジストモータ41とはレジストモータベルト44を介して回転駆動力伝達関係にある。
図1において、版胴1とプレスローラ21との間からレジストローラ対31のニップ部までの用紙搬送経路XAには、レジストローラ対31から送り出された用紙36の先端および後端を検知する用紙検知手段としての用紙検知センサ32が配設されている。用紙検知センサ32は、該用紙検知センサ32の配置位置(用紙36の先端を検知できる位置)よりも上流側の用紙搬送経路XAに用紙36が留まっていること(ジャム等を生じていること)を検知する機能も有する。用紙検知センサ32は、反射型の光学センサである。
図14において、給紙部30の前記給紙トレイ昇降モータ、給紙モータ37、レジストモータ41を含む給紙部30の制御対象駆動手段を総括的に給紙駆動手段125とする。
画像読取部18は、図12に示すように、複数枚の原稿133を積載する前記した原稿受け台134と、原稿133を載置する読取部としてのコンタクトガラス135と、原稿133を搬送する原稿搬送ローラ対136および原稿搬送ローラ137と、搬送される原稿133をガイドするガイド板138,139と、原稿133をコンタクトガラス135に沿って搬送する複数の原稿搬送ベルト140と、読み取られた原稿133を積載する原稿トレイ141と、コンタクトガラス135を除く前記各部材を支持しコンタクトガラス135に対して接離・開閉自在に設けられた圧板142と、原稿133の画像を照明しつつ走査して読み取るための反射ミラー143,144および蛍光灯145と、走査して読み取られた画像の反射光を集束するレンズ146と、集束された画像の反射光を光電変換処理するCCD(電荷結合素子)等を備えた画像センサ147等とを具備している。
前記構成中、原稿受け台134、原稿搬送ローラ対136、原稿搬送ローラ137、各ガイド板138,139、原稿搬送ベルト140および原稿トレイ141によって、コンタクトガラス135(読取部)上に原稿133を1枚ずつ給送する自動原稿給送手段としての自動原稿搬送装置(以下、「ADF」という)148が構成されている。また、コンタクトガラス135、各反射ミラー143,144、蛍光灯145、レンズ146および画像センサ147によって、原稿133の画像をコンタクトガラス135(読取部)上で読み取る原稿読取手段としてのスキャナ装置132が、各反射ミラー143,144、蛍光灯145およびレンズ146によって原稿走査光学系が、それぞれ構成されている。
原稿搬送ローラ対136、原稿搬送ローラ137および原稿搬送ベルト140は、図示しない原稿搬送モータによって駆動される。スキャナ装置132には、スキャナ装置132を駆動するスキャナモータ(図示せず)が配設されている。画像センサ147は受光した反射光に対応して光電変換をし、これにより得られた画像信号を前記A/D変換部に入力する。
コンタクトガラス135の下方近傍には、搬送される原稿133またはコンタクトガラス135上に載置された図示しない原稿の図において搬送方向(左右方向)の原稿の長さを検知する原稿縦サイズ検知センサ149a,149bおよび搬送される原稿133またはコンタクトガラス135上に載置された図示しない原稿の図において紙面の手前側および奥側の長さを検知する図示しない原稿横サイズ検知センサ(共に反射型の光学センサからなる)が配設されている。原稿縦サイズ検知センサ149a,149bおよび前記原稿横サイズ検知センサによって、搬送される原稿133またはコンタクトガラス135上に載置された図示しない原稿のサイズが検知され、以下、これらを原稿サイズ検知センサ149と総称する。
原稿サイズ検知センサ149の原稿縦サイズ検知センサ149a,149bおよび前記原稿横サイズ検知センサは、共に反射型の光学センサであり、コンタクトガラス135上における反射量の違いにより原稿133の輪郭・サイズおよび原稿133の有無を検知する。原稿サイズ検知センサ149からの信号は、後述する制御装置100に入力される。原稿サイズ検知センサ149からの信号に基づいて、制御装置100は原稿サイズ(等倍のときには、マスタ8に製版・形成されるべき製版画像のサイズでもある)を判定し認識する。原稿受け台134の下方には、原稿受け台134上に残存している原稿133を検知する原稿検知センサ131が配設されている。原稿検知センサ131は、原稿受け台134上の原稿133が無くなったときに制御装置100に信号を出力する。
図14において、画像読取部18の前記スキャナモータ、前記原稿搬送モータを含む画像読取部18の制御対象駆動手段を総括的に読取駆動手段128とする。
図13を参照して、両面孔版印刷装置300に所定の動作等をさせるべく指示等をする操作パネル173の細部構成を説明する。操作パネル173は、図12に示した画像読取部18の近傍に配設されている。操作パネル173は、その上面に製版スタートキー174、印刷スタートキー175、試し刷りキー176、連続キー177、クリア/ストップキー178、テンキー179、エンターキー180、プログラムキー181、モードクリアキー182、印刷速度設定キー183、LED(発光ダイオード)からなる印刷速度表示装置183A、4方向キー184、用紙サイズ設定キー185、用紙種類設定キー186、両面印刷キー187、片面印刷キー188、7セグメントLEDからなる表示装置189、LCD(液晶表示装置)からなる表示装置190等を有している。
製版スタートキー174は、両面孔版印刷装置300に製版動作を行わせる際に押下され、製版スタートキー174が押下されると排版動作および原稿読取動作が行われた後に製版動作が行われ、その後、版付け動作が行われて両面孔版印刷装置300は印刷待機状態となる。印刷スタートキー175は、両面孔版印刷装置300に印刷動作を行わせる際に押下され、両面孔版印刷装置300が印刷待機状態となり各種印刷条件が設定された後に印刷スタートキー175が押下されることにより設定枚数分の印刷動作が行われる。試し刷りキー176は、両面孔版印刷装置300に試し刷りを行わせる際に押下され、各種条件が設定された後に試し刷りキー176が押下されることにより1枚だけ印刷が行われる。
クリア/ストップキー178は、両面孔版印刷装置300の動作を停止させる際あるいは置数のクリア時に押下される。テンキー179は、数値入力等に用いられる。エンターキー180は、各種設定時に数値等を設定する際に、プログラムキー181はよく行う操作を登録したりそれを呼び出したりする際にそれぞれ押下され、モードクリアキー182は、各種のモードをクリアして初期状態に戻す際に押下される。
印刷速度設定キー183は、印刷動作に先立って印刷速度を設定する際に押下され、濃いめの画像を得たい場合あるいは雰囲気温度が低い場合等には印刷速度を遅く、薄めの画像を得たい場合あるいは雰囲気温度が高い場合等には印刷速度を速く設定する。
印刷速度表示装置183Aのプリントスピードと表示されている中央部の黒色塗色を施した「印刷速度:3速」は、通常使用される印刷速度に対応した標準印刷速度であって、印刷速度設定キー183を押下しなかった場合に自動的に設定されるようになっている。例えば「おそく」と表示されている一番左側の「印刷速度:1速」は印刷速度が最低速の16枚/min:16rpmに、その右隣の「印刷速度:2速」は印刷速度が60枚/min:60rpmに、「標準印刷速度:3速」は印刷速度が90枚/min:90rpmに、その右隣の「印刷速度:4速」は印刷速度が105枚/min:105rpmに、「はやく」と表示されている一番右側の「印刷速度:5速」は印刷速度が最高速の120枚/min:120rpmにそれぞれ対応して設定されている。印刷速度表示装置183Aは、印刷速度設定キー183(左右にある速度アップキーおよび速度ダウンキー)の1回毎の押下により、印刷速度を1から5までの5段階に切り換えられ設定された印刷速度を点灯表示する。
4方向キー184は、上キー184a、下キー184b、左キー184c、右キー184dを有しており、画像編集時に画像位置を調整する場合あるいは各種設定時に数値や項目等を選択する場合等に押下される。用紙サイズ設定キー185は、用紙サイズを任意で入力する際に押下され、用紙サイズ設定キー185で入力された用紙サイズは用紙サイズ検知センサ117によって検知された用紙サイズに優先される。
用紙種類設定キー186は、両面印刷に先立って用紙種類を入力する際に押下され、本実施形態例では標準紙とも呼ばれる「普通紙」、「薄紙」、「厚紙」の3種類に分類され、さらにそれらに対応して詳細に分類された用紙種類うちの何れか一つを選択する構成となっている。すなわち、本実施形態例では用紙種類設定キー186の入力・操作により、例えば用紙種類のうち用紙の厚みおよびその強度のうちの用紙の厚みの特性に関して選択し設定することができる。これは、一般的に、用紙の厚みが増す毎にその強度(いわゆる腰の強さ)も高くなる傾向にあることに基づくものである。
薄紙としては更紙や上質45kg紙等があり、普通紙(標準紙)としては複写用紙、中質紙、上質55kg紙、再生紙、孔版上質紙等がある。厚紙としては画用紙、葉書(ハガキ)、封筒、上質135kg紙、上質180kg紙等がある。
両面印刷キー187は、両面孔版印刷装置300に両面印刷動作を行わせる際に製版スタートキー174の押下前に押下され、両面印刷キー187が押下されるとその近傍に配置されたLED187aが点灯して両面印刷モード設定状態であることが表示される。片面印刷キー188も、両面印刷キー187と同様に両面孔版印刷装置300に片面印刷動作を行わせる際に製版スタートキー184の押下前に押下され、片面印刷キー188が押下されるとその近傍に配置されたLED188aが点灯して片面印刷モード設定状態であることが表示される。両面孔版印刷装置300では、図示しない電源スイッチオン後の初期状態時においてLED188aが点灯しており、片面印刷モード設定状態となっている。
表示装置189は、主に印刷枚数等の数字を表示する。表示装置190は、階層表示構造となっており、その下方に設けられた選択設定キー190a,190b,190c,190dを選択して押下することにより、変倍や画像位置調整等の様々なモードへの変更および各モードでの設定が可能に構成されている。また、表示装置190には、用紙種類設定キー186が押下されることにより、選択設定すべき用紙種類の表示や、図示したように「製版・プリントできます」のような両面孔版印刷装置300の状態が表示される他、製版あるいは排版ジャム、給紙あるいは排紙ジャム等の警告、用紙、マスタ、インキ等のサプライの供給指示等も表示される。
用紙種類設定キー186が始めに1回押されると、選択設定すべき用紙種類として、薄紙:更紙、上質45kg紙等、普通紙:複写用紙、中質紙、上質55kg紙、再生紙、孔版上質紙等、厚紙:画用紙、葉書(ハガキ)、封筒、上質135kg紙、上質180kg紙等が表示装置190に表示されるので、4方向キー184で使用する用紙を選択・指定すると、表示装置190上でその選択・指定された用紙の部位が白黒反転表示されるので、最終的にエンターキー180を押すことで確定・設定すればよい。それ故に、用紙種類を設定する用紙種類設定手段は、前記例では用紙種類設定キー186、エンターキー180および4方向キー184で構成される。
用紙種類設定手段は、上記各キーの組み合わせに限らず、例えば選択設定すべき用紙種類に対応した数のキーを配設したり、あるいは前記した選択設定キー190a〜190dにその機能を分担させて設定可能にしたりしてもよい。
次に、図14を参照して、両面孔版印刷装置300の主たる制御構成を説明する。図14において、制御装置100は、両面孔版印刷装置300の主として原稿読取動作、製版・給版動作、給紙動作および印刷動作を制御する手段としての機能・構成を有する。制御装置100は、CPU101(中央演算処理装置)、図示しないI/O(入出力)ポート、ROM102(読み出し専用記憶装置)、RAM103(読み書き可能な記憶装置)および図示しない電池等でバックアップされたタイマ等を備え、それらが図示しない信号バスによって接続された構成を有するマイクロコンピュータを具備している。
制御装置100は、図1に示すように、本体フレーム130内の制御基板配置部に設けられている。制御装置100のCPU101(以下、説明の簡明化を図るため、単に「制御装置100」という)は、操作パネル173からの各種信号および本体フレーム130に設けられた前記した各種センサからの検知信号およびROM102から呼び出された動作プログラムや関係データに基づいて、印刷部16のメインモータ20、印圧範囲可変手段28のステッピングモータ252、係止手段64のソレノイド62、製版部15、給紙部30、排版部17、排紙部19、画像読取部18に設けられた各制御対象駆動手段、再給紙手段45に設けられたプレスローラ駆動モータ55、再給紙搬送装置104の吸引ファン109、ベルト駆動モータ105、ソレノイド73、切換ガイド46のソレノイド47、移動手段87に設けられた駆動モータ94の各作動等を制御し、両面孔版印刷装置300全体の動作を制御する。また制御装置100は、図14に総括的に示した版胴位置検知センサ29からの各種の版胴位置信号に基づいて、版胴1の回転位置の割り出しおよび印刷速度等の把握も行っている。
ROM102には、両面孔版印刷装置300全体の動作プログラム、および必要な関係データ等が予め記憶されており、この動作プログラムはCPU101によって適宜呼び出される。前記関係データには、用紙36の厚みを含む用紙種類と再給紙搬送装置104のベルト駆動モータ105の回転速度(換言すれば、搬送ベルト108の線速度でもある搬送速度)との印刷速度毎に設定された関係データ、および用紙種類と表面印刷済み用紙36aの先端のストッパ面53aへの当接後のベルト駆動モータ105の停止タイミングとの印刷速度毎に設定された関係データが含まれる。これらの関係データは、例えば予め実験等により求められ印刷速度毎に用紙種類に応じて設定された搬送ベルト108の搬送速度を変えるためのデータテーブル、同じく予め実験等により求められ印刷速度毎に用紙種類に応じて設定されたベルト駆動モータ105の停止タイミングを変えるためのデータテーブルとして、予めROM102に記憶されている。
例えば更紙などのようにその厚みが薄く腰が無い用紙36の場合は、用紙重量が有る厚紙等と比較して、用紙重量も軽く搬送ベルト108に対する滑りも少ないので、移動ガイド81から表面印刷済み用紙36aが開放されて、搬送ベルト108により該用紙36aの先端がストッパ部材53のストッパ面53aに突き当たり当接して停止し、その後に再給紙レジストローラ51により所定のタイミングで搬送されるまでの待ち時間が最小で、後述する搬送ベルト108の搬送停止タイミングを考慮した搬送速度に設定される。
用紙36が軽量で薄手の場合は、搬送ベルト108の搬送停止タイミングも早くなるように設定され、逆に重量が有る厚紙等の用紙36の場合は、搬送ベルト108に対する滑りを見越して搬送速度を早めると共に、搬送停止タイミングも遅れる方向に設定される。
なお、ROM102の他に、プログラム可能なPROMなどの記憶手段を配設することにより、例えば設計変更等に対応可能なように必要に応じて前記関係データを書き込めるようにすることなども勿論可能である。
RAM103は、CPU101の計算結果を一時的に記憶する機能、操作パネル173上の各種キーおよび各種センサから設定および入力されたデータ信号およびオン/オフ信号を随時記憶する機能等を有している。
制御装置100は、版胴位置検知センサ29からの各種の版胴位置信号に基づいて、版胴1の回転速度を随時認識・把握すると共に、版胴1の回転位置(回転位相位置)をリアルタイムで認識・把握している。
制御装置100は、用紙種類に応じて、再給紙搬送装置104の搬送ベルト108の搬送速度を変えると共に、表面印刷済み用紙36aの先端のストッパ部材53への当接(接触)後における搬送ベルト108の搬送停止タイミングを変える制御手段としての機能を有する。再給紙搬送装置104の搬送ベルト108の搬送動作には、用紙36aがストッパ部材53に当接するまでの搬送と、用紙がストッパ部材からはずされて再給紙を開始するときの搬送があり、それぞれの搬送速度に対して、用紙種類に応じた速度設定をしてもよい。
換言すれば、制御装置100は、用紙種類設定キー186、エンターキー180および4方向キー184で選択設定された用紙種類に応じて、再給紙搬送装置104の搬送ベルト108の搬送速度が変わるようにベルト駆動モータ105を制御すると共に、表面印刷済み用紙36aの先端のストッパ面53aへの当接後における搬送ベルト108の搬送停止タイミングが変わるようにベルト駆動モータ105を制御する制御手段としての機能を有する。
より具体的には、制御装置100は、用紙種類設定キー186、エンターキー180および4方向キー184で選択設定された用紙種類に係る用紙種類データ信号に基づき、印刷速度毎に用紙種類に応じて設定された搬送ベルト108の搬送速度を変えるためのデータテーブルとベルト駆動モータ105の停止タイミングを変えるためのデータテーブル、および、再給紙するときの搬送ベルト108の駆動開始タイミングを変えるためのデータテーブルをROM102から呼び出して、用紙種類データに対応したベルト駆動モータ105の回転速度および表面印刷済み用紙36aの先端のストッパ面53aへの当接後の停止タイミングを抽出することにより、選択設定された用紙種類に対応した搬送ベルト108の搬送速度となるように、かつ、選択設定された用紙種類に対応した搬送ベルト108の搬送停止タイミングとなるようにベルト駆動モータ105を制御する制御手段としての機能を有する。
上述の構成に基づき、本実施形態における両面孔版印刷装置300の操作手順を含む動作について、図1〜図14を参照しながら説明する。この動作は、制御装置100による制御の下になされるため、各種モータや各種ソレノイド等のアクチュエータ(制御対象駆動手段)の起動、作動、停止等の詳細動作を説明する際において、制御装置100からの指令あるいは指令信号に基づきというような表現をできるだけ省略する。
(動作例1)
まず、片面印刷モードを設定して片面印刷を行う動作例1について説明する。動作例1は、従来の孔版印刷装置により片面印刷を行う動作とほぼ同様であり、また特許文献7等で開示した片面印刷を行う動作と実質的に同様であるため、簡単に説明する。片面印刷動作では、印圧範囲パターンIIIが使用され、印圧範囲可変手段28の構成要素のうち通常印刷用のカム板243Aが選択されて使用される。動作例1では各動作を理解しやすくするために、マスタサイズとしてA3のものが、原稿サイズおよび用紙サイズとしてそれぞれA3サイズのものが用いられるものとする。
ユーザは給紙トレイ35上に印刷に使用される用紙サイズとしてA3サイズの用紙36を積載し、圧板142を開放してコンタクトガラス135上に印刷すべきA3サイズの原稿を載置した後、再び圧板142を閉じる。その後、操作パネル173上の各種キーによって製版条件を設定した後、片面印刷キー188を押下して片面印刷モードを設定する。
ユーザは片面印刷モードであることをLED188aの点灯によって確認した後、製版スタートキー174を押下する。製版スタートキー174が押下されると、用紙サイズ検知センサ117から用紙サイズ検知信号が、また原稿サイズ検知センサ149から原稿サイズ検知信号がそれぞれ制御装置100に送られ、信号を受けた制御装置100は各信号を比較する。この際、用紙サイズと原稿サイズとが同じ場合は直ちに画像読取動作が行われ、用紙サイズと原稿サイズとが異なる場合には、制御装置100はその旨を表示装置190に表示してユーザに注意を促す。
片面印刷モード設定状態においては、切換ガイド46はホームポジションである図1等に示す第1の変位位置(初期位置)に停止保持されている。製版スタートキー174が押下されてスタート信号が生成され、これが制御装置100に入力されると、排版から排紙に亘る一連の動作が自動的に行われる。これに先後して、前記給紙トレイ昇降モータがオンすることにより給紙トレイ35が上昇して、最上の用紙36が給紙ローラ33に当接することにより、図示しない給紙位置検知センサのオン検知によって最上の用紙36が給紙可能な状態になったことが制御装置100により判断されると、給紙装置30では給紙待機状態となる。
先ず、排版部17において、版胴1の外周面から使用済みマスタを剥離する排版動作が行われる。スタート信号が制御装置100に入力されると、版胴1が回転を開始し、版胴1はクランパ7がほぼ真上となるホームポジションに達すると、メインモータ20の作動を停止され、版胴1が排版位置で停止する。次いで、排版駆動手段126が作動して各駆動ローラ164,167が回転駆動されると共に、下排版部材161が版胴1側に移動し、従動ローラ168の外周面上に位置する無端ベルト169が使用済みマスタと当接する。排版駆動手段126の作動に続いてメインモータ20が起動されることにより、版胴1の回転および無端ベルト169の移動によって版胴1の外周面上よりすくい上げられた使用済みマスタは、下排版部材161と上排版部材160とで挟持搬送されて版胴1の外周面より剥離される。剥離された使用済みマスタは排版ボックス162内に廃棄された後、圧縮板163によって圧縮される。
外周面上より使用済みマスタが全て剥離された後も版胴1は、回転を継続し、クランパ7がほぼ真上に位置する給版待機位置まで回転して停止する。これと同時的に図示しない開閉装置が作動してクランパ7が開放され、両面孔版印刷装置300は給版待機状態となる。
前記排版動作と並行して、画像読取部18での原稿画像の読取動作が行われる。原稿画像の読み取りは、蛍光灯145によって照明された反射光を各反射ミラー143,144によって反射することにより行われ、読み取られた原稿画像に係る反射光はレンズ146で集束された後に画像センサ147に入射されて光電変換される。光電変換された電気信号は本体フレーム130内の図示しない前記A/D変換部に入力された後、図示しない製版制御装置(制御装置100の中に配設されていてもよい)を経由して図示しないサーマルヘッド駆動回路に送信される。
排版動作および画像読取動作と一部並行して、製版部15では製版動作が行われる。すなわち、サーマルヘッド11の前記発熱素子を発熱駆動制御するためのデジタル画像信号が、前記製版制御装置等および前記サーマルヘッド駆動回路を介してサーマルヘッド11へ送信される。これにより、サーマルヘッド11の多数の発熱素子が主走査方向にパルス状に通電されて選択的に発熱されると共に、マスタ搬送モータ10が回転駆動されることにより、プラテンローラ9、搬送ローラ対13が回転を開始して、マスタロール8aからマスタ8が引き出されつつマスタ搬送方向X1に搬送されながら、マスタ8の前記熱可塑性樹脂フィルム部分が画像情報に応じて選択的に加熱穿孔される。
そして、製版済みマスタ8Yの先端部がマスタガイド板14に案内されてステージ6に対して拡開しているクランパ7の間に挿入され、マスタ搬送モータ10のステップ数がある設定値に達し、製版済みマスタ8Yの先端部がステージ6とクランパ7との間に届いたと判断されると、前記開閉装置によりクランパ7が閉じられ、製版済みマスタ8Yの先端部がステージ6とクランパ7との間に吸着・挟持される。
製版済みマスタ8Yの先端部のクランプ後、メインモータ20の回転駆動により版胴1がマスタ搬送速度とほぼ同じ周速度で回転を再開して、製版済みマスタ8Yがプラテンローラ9および搬送ローラ対13により搬送されて版胴1の外周面へ巻装されるべく給版される。マスタ搬送モータ10の所定ステップ数の回転駆動により、マスタ8への製版および設定量の製版済みマスタ8Yの搬送が終了したと判断されると、カッタ12が作動して製版済みマスタ8Yが切断されると共に、マスタ搬送モータ10の回転駆動が停止されることによりプラテンローラ9および搬送ローラ対13の回転が停止する。切断された製版済みマスタ8Yの後端が、版胴1の回転によって製版部15内から引き出され、版胴1の外周面に完全に巻き取られた段階で版胴1への製版済みマスタ8Yの巻装が終了することにより、給版動作が終了する。
版胴1への製版済みマスタ8Yの巻装が完了すると、引き続き版胴1が所定の周速度で図1に示す矢印方向に回転し始めることにより、版付けのための給紙・印刷工程が開始される。なお、用紙36の先端が用紙検知センサ32を横切り・通過するまでは、つまり用紙検知センサ32により用紙36の先端がオン検知されるまでは、制御装置100によって係止手段64のソレノイド62がオフされたままに制御されているため印圧範囲可変手段28は非作動状態にあり、これによりプレスローラ21は非印刷位置、すなわち版胴1の外周面から離間した初期位置で保持されている。
版胴1が矢印方向に低速で回転して、先ず、図10に示した給紙開始用遮光板121が給紙レジストセンサ120と係合することにより、給紙レジストセンサ120がオンして給紙スタート信号が生成され、この信号がトリガとなって給紙モータ37が起動(回転駆動開始)する。給紙モータ37が図11において時計回りに回転駆動されることにより、同図に示す機構の動作を介して給紙ローラ軸33aおよび給紙ローラ33が時計回りに回転することで、給紙ローラ33と接触している給紙トレイ35上の最上の用紙36が、搬送されながら分離部材34との協働作用によって1枚に分離されて用紙搬送方向Xの下流側であるレジストローラ対31のニップ部に向けて給送される。
次いで、版胴1が図1における矢印方向にさらに回転して、レジスト開始用遮光板122が給紙レジストセンサ120と係合することにより、給紙レジストセンサ120がオンしてレジストスタート信号が生成され、この信号がトリガとなってレジストモータ41が起動する。このレジストモータ41が起動するタイミング、換言すればレジストローラ下31bが回転駆動されるタイミングは、版胴1上に巻装された製版済みマスタ8Yの版胴回転方向における片面製版画像8YAの画像領域先端部がプレスローラ21と対応する位置に到達する所定のタイミングになるように設定されている。
レジストモータ41が図11において反時計回りに回転駆動され、同図に示す機構の動作を介してレジスト下軸32aおよびレジストローラ下31bが反時計回りに回転することで、レジストローラ対31のニップ部で当接して待機している用紙36の先端が、レジストローラ上31aとで押圧されながら給送され、版胴1とプレスローラ21との間に向けて送り出される。
次いで、レジストローラ対31により給送された用紙36先端の進入が正常に行われ、すなわち用紙36の先端が、前記タイマで計時される所定の時間内(あるいはレジストモータ41に供給される所定のパルス数内)に用紙検知センサ32によってオン検知されることによって、この信号が制御装置100に入力される。この用紙検知センサ32からの用紙36先端の検知信号および版胴位置検知センサ29からの版胴1の回転位置情報に基づいて、制御装置100は係止手段64のソレノイド62に通電をさせる指令信号を出力することにより、ソレノイド62がオンすることで印圧範囲可変手段28のカム板243Aを作動させる。
ソレノイド62のオンにより、プランジャ62aが吸引され、これにより係止部材60が引張ばね63の付勢力に抗して支軸61を中心に反時計回りに揺動し、係止爪60aに切欠22bを係止させている印圧アーム22の他端部側は、その係止を解除されて印圧ばね242の付勢力によってアーム軸22aを中心に時計回りに揺動する。印圧アーム22の他端部側の揺動により、カムフォロア241の外周面が版胴1の回転と同期して回転しているカム板243Aの小径部周面と対向し非当接状態となるカム板243Aの回転位置(例えば図3を借りて示す回転位置)で、印圧アーム対22はアーム軸22aを中心に印圧ばね242の付勢力によって時計回りに揺動し上昇することとなる。
これにより、プレスローラ21は、図9に示すように、その外周面が図1に示す版胴1の表面領域1Aないしは裏面領域1B上に巻装されている製版済みマスタ8Yの片面製版画像8YAよりも少し左寄りの先端余白部分に用紙36を押し付けて印圧を付与する印刷位置に変位することとなって、ニップ部16a(例えば図3参照)が形成される。これと同時に、プレスローラ駆動モータ55がプレスローラ21を版胴1の周速度とほぼ同じ周速度で回転させることにより、プレスローラ21は版胴1の回転方向と反対方向に回転しながら版胴1上の製版済みマスタ8Yに用紙36を連続的に押し付けることで、製版済みマスタ8Yを版胴1の外周面に密着させそれにインキを充填させるためのいわゆる版付けが行われる。この版付けでは、版胴1の開孔部1aの開孔部分から製版済みマスタ8Yの穿孔部分へとインキが滲み出てきて用紙36の表面に転移されることで孔版印刷が行われる。
この時、インキローラ2も版胴1の回転方向と同一方向に回転する。インキ溜まり4のインキは、インキローラ2の回転によりインキローラ2の表面に付着され、インキローラ2とドクターローラ3との間隙を通過する際にその量を規制され、版胴1の内周面に供給される。一方、プレスローラ21の昇降動作に連動して、再給紙搬送装置104は再給紙筐体110を介して駆動軸107aを中心として揺動する。片面印刷モードでは、再給紙搬送装置104のベルト駆動モータ105および吸引ファン109は非作動状態のままであると共に、移動手段87の駆動モータ94も非作動状態のままであり、移動ガイド81は初期位置P2を占めたままの状態にある。
こうして版胴1上の製版済みマスタ8Yにおける片面製版画像8YAに対応した版付け印刷が行われ、版胴1がさらに回転して片面製版画像8YAの後端より少し右寄りの後端余白部分において、版胴1と同期して回転しているカム板243Aの大径部周面がカムフォロア241の外周面と当接することとなる。これにより、印圧アーム対22はアーム軸22aを中心に印圧ばね242の付勢力に抗して反時計回りに揺動変位すると共に、プレスローラ21は非印刷位置を占めるべく下降変位することとなって、プレスローラ21による印圧付与状態が解除される。
なお、版胴1が図1中矢印方向に回転して、クランパ7が版胴1に圧接しているプレスローラ21の近傍に至ると、版胴1の回転と同期して回転駆動されていたカム板243Aが、その大径部周面をカムフォロア241の外周面に当接する位置に回転させているので、プレスローラ21は版胴1の外周面から外側へ突出しているクランパ7から離間することとなり、プレスローラ21とクランパ7部位との干渉が避けられる。
版付け印刷された片面印刷済み用紙36cはプレスローラ21で押圧された状態で版胴1の図1中矢印方向の回転によってさらに搬送され、片面印刷済み用紙36cの先端部は、版胴1の外周面に接近する剥離爪170および剥離ファン171からの送風により版胴1上の製版済みマスタ8Yから確実に剥離され、剥離された片面印刷済み用紙36cは下方へと落下して排紙搬送装置152の排紙ベルト158へ送られ、図1中矢印(反時計回り)方向に回転している排紙ベルト158の上面に吸引ファン159による吸引力によって引きつけられ吸着保持されながら用紙搬送方向Xの下流側に搬送されて、一対の排紙サイドフェンス172a,172bによってその両側端を揃えられつつ排紙トレイ172に排出される。
一方、プレスローラ21が版胴1の外周面に当接した時点より版胴1がほぼ4分の3周し、カム板243Aの大径部周面とカムフォロア241とが接する時点、つまり、係止爪60aと印圧アーム22の切欠22bとが係止可能な時点において、制御装置100からの指令によりソレノイド62への通電が遮断(オフ)される。すると、係止部材60は、引張ばね63の付勢力により支軸61を中心として時計回りに揺動され、その係止爪60aに印圧アーム22の切欠22bが係止される。これにより、プレスローラ21は、版胴1の外周面から離れた非印刷位置に復帰して保持されると共に、版胴1は再びホームポジションまで回転して停止し、版付け動作を終えて両面孔版印刷装置300は印刷待機状態となる。
また、給紙ないしは版付け中において、プラテンローラ9および搬送ローラ対13が回転を再開して、切断されたマスタ8の先端が搬送ローラ対13のニップ部に向けて送り込まれる。マスタ搬送モータ10のパルス数から、切断されたマスタ8の先端が搬送ローラ対13のニップ部に届き挟持されたと判断されると、プラテンローラ9および搬送ローラ対13の回転が停止し、次の製版に備えた製版待機状態になる。
両面孔版印刷装置300が印刷待機状態となった後、印刷速度設定キー183および操作パネル173上の各種キーによって印刷条件を入力した後に試し刷りキー176が押下されると試し刷りが行われる。試し刷りキー176が押下されると、設定された印刷速度で版胴1が回転駆動されると共に、給紙部30から用紙36が1枚給送される。給送された用紙36はレジストローラ対31で一時停留された後に版付け時と同じタイミングで給送され、プレスローラ21によって版胴1外周面上の製版済みマスタ8Yに圧接される。印刷画像を形成された片面印刷済み用紙36cは剥離爪170および剥離ファン171により前記したと同様に版胴1上の製版済みマスタ8Yから確実に剥離され、剥離された片面印刷済み用紙36cは排紙搬送装置152によって上述したと同様の動作で搬送されて排紙トレイ172上に排出される。
設定された印刷速度に伴い、印圧範囲可変手段28、給紙部30、排紙搬送装置152等の各種モータや各種ソレノイド等の制御対象駆動手段が印刷速度に適合した速度やタイミングでそれぞれ駆動制御される。試し刷りにより画像の位置あるいは濃度等が確認され、テンキー179によって印刷枚数が入力された後に印刷スタートキー175が押下されると、給紙部30から用紙36が連続的に給送され、試し刷りと同条件で印刷動作が行われる。そして、設定された印刷枚数が消化されると版胴1がホームポジションで停止し、両面孔版印刷装置300は再び印刷待機状態となる。通常の印刷動作は、版付け時の印刷動作と比較して、前記したように版付け印刷に用いられた用紙36の枚数が正規の通常の印刷枚数としてカウントされない点、およびユーザが所望する設定印刷速度に応じた速度での給紙、印刷および排紙の各動作が行われる点が主に相違するだけである。
前記したような用紙検知センサ32に相当する用紙検知手段を、プレスローラ21の外周面に保持されてニップ部16aに搬送されていく表面印刷済み用紙36aの先端および後端を検知すべく搬送路上に配設してもよい。画像読取部18での読取り動作は、上述した以外に、ADF148を使用する場合もある。この場合の動作例1との相違点は、次のようである。すなわち、ユーザによってADF148の原稿受け台134にA3サイズの原稿133がセットされると、前記排版動作と並行して、画像読取部18のADF148が作動することにより1枚の原稿133が読取部であるコンタクトガラス135上に送出されることのみ相違するだけである。その後、上述したと同様に、スキャナ装置132の作動によってその原稿133の画像が光学情報として読み取られる。
(動作例2)
次に、両面印刷モードを設定して両面印刷を行う動作例2について説明する。動作例2は、図9に示した全ての印圧範囲パターンI、II、IIIが使用される。そのため、印圧範囲可変手段28の構成要素をなす多段カム243の3つのカム板243A、243B、243Cの全てが使用される。動作例2では、各動作を理解しやすくするために、マスタサイズとしてA3のものが、原稿サイズおよび用紙サイズとしてそれぞれA4サイズのものが用いられるものとする。以下、動作例1と相違する点を中心に説明する。
ユーザは給紙トレイ35上に印刷に使用される用紙サイズとしてA4サイズの用紙36を積載し、圧板142を開放してコンタクトガラス135上に表面印刷用の1枚目のA4サイズの原稿を載置した後、再び圧板142を閉じる。その後、ユーザが操作パネル173の用紙種類設定キー186を押すことにより、両面孔版印刷装置300で使用される用紙種類の全てを表示装置190に表示させた後、4方向キー184で両面印刷に用いる用紙種類として例えば薄紙に分類されている「更紙」を白黒反転表示して最終的にエンターキー180で確定することで選択・設定する。さらに、操作パネル173上の各種キーによって製版・印刷条件を設定した後、両面印刷キー187を押下して両面印刷モードを設定し、その後、両面印刷モードであることをLED187aの点灯によって確認する。次いで、製版スタートキー174を押下すると、片面印刷モード時と同様にスタート信号が生成されて、これが制御装置100に入力される。
動作例1と同様に、用紙サイズ検知センサ117から用紙サイズ検知信号が、また原稿サイズ検知センサ149から原稿サイズ検知信号がそれぞれ制御装置100に送られ、これらの信号を受けた制御装置100は各信号を比較する。本実施形態では、片面印刷時において版胴1で印刷可能な最大用紙サイズがA3サイズ横置きであるため、両面印刷時において使用可能な用紙サイズはA4縦置きまでである。
原稿サイズと用紙サイズとを比較した結果、両サイズが同じ場合には直ちに画像読取動作が行われ、両サイズが異なる場合には、制御装置100はその旨を表示装置190に警告として表示してユーザに注意を促す。用紙サイズがA4縦置きを超える大きさの場合には、制御装置100は両面印刷動作を禁止して片面印刷を促す旨の表示を表示装置190にさせる。
製版スタートキー174が押下されると、動作例1と同様に排版から排紙に亘る一連の動作が自動的に行われる。動作例1と同様にして、給紙トレイ35の最上の用紙36が給紙可能な状態になったことが制御装置100により判断されると、給紙部30では給紙待機状態となる。動作例1と同様の排版動作が行われた後、外周面上より使用済みマスタを全て剥離された版胴1は、動作例1のときと同様に給版待機位置で停止し、図示しない開閉装置によってクランパ7が開放される。
この排版動作と一部並行して画像読取部18では表面印刷用の1枚目の原稿画像の読取動作が動作例1と同様に行われ、その画像データ信号が前記製版制御装置等を経由して前記サーマルヘッド駆動回路に送信される。画像読取動作と一部並行して、製版部15では動作例1と同様にサーマルヘッド11による製版が行われ、プラテンローラ9、搬送ローラ対13の回転によって、マスタロール8aからマスタ8が引き出されつつマスタ搬送方向X1に搬送されながら、マスタ8の前記熱可塑性樹脂フィルム部分が画像情報に応じて選択的に加熱穿孔されて、マスタ8の前半部分に表面印刷用の表面製版画像8Aが形成される(図9に示す分割製版済みマスタ8X参照)。
そして、分割製版済みマスタ8Xの先端部がマスタガイド板14に案内されてステージ6に対して拡開しているクランパ7の間に挿入され、マスタ搬送モータ10のステップ数が或る設定値に達し、分割製版済みマスタ8Xの先端部がステージ6とクランパ7との間に届いたと判断されると、前記開閉装置によりクランパ7が閉じられ、分割製版済みマスタ8Xの先端部がステージ6とクランパ7との間に吸着・挟持される。
分割製版済みマスタ8Xの先端部のクランプ後、メインモータ20の起動により版胴1がマスタ搬送速度とほぼ同じ周速度で回転を再開して、分割製版済みマスタ8Xがプラテンローラ9および搬送ローラ対13により搬送されて版胴1の外周面へ巻装されるべく給版される。マスタ搬送モータ10のステップ数により、図9に示す分割製版済みマスタ8Xのうちの表面製版画像8Aの製版が完了したと制御装置100によって判断されると、プラテンローラ9および搬送ローラ対13ならびに版胴1の回転が停止し、次の分割製版済みマスタ8Xにおける裏面印刷用の裏面製版画像8Bの製版のための製版待機状態となる。
次いで、ユーザは再び圧板142を開放してコンタクトガラス135上に裏面印刷用のA4サイズの2枚目の原稿を載置した後、再び圧板142を閉じる。その後、再度、製版スタートキー174を押下すると、スタート信号が生成されてこれが制御装置100に入力される。この時、1枚目の原稿の場合と同様に、制御装置100による原稿サイズと用紙サイズとの比較および前記したと同様の処理動作が行われる。画像読取部18では裏面印刷用の2枚目の原稿画像の読取動作が前記1枚目の原稿のときと同様に行われ、その画像データ信号が前記した図示しない製版制御装置等を経由して前記サーマルヘッド駆動回路に送信される。製版部15では1枚目の原稿のときと同様にサーマルヘッド11による製版が行われ、マスタ搬送モータ10が再び回転駆動されることにより、プラテンローラ9、搬送ローラ対13が回転されることで、マスタロール8aからマスタ8が引き出されつつマスタ搬送方向X1に搬送されながら、マスタ8の前記熱可塑性樹脂フィルム部分が画像情報に応じて選択的に加熱穿孔されて、マスタ8の後半部分に裏面印刷用の裏面製版画像8Bが形成される(図9参照)。
この時、版胴1がマスタ搬送速度とほぼ同じ周速度で回転を再開することにより、分割製版済みマスタ8Xの後半部分が製版部15内から引き出されつつ版胴1の外周面へ巻装されていく。そして、マスタ搬送モータ10のステップ数により、分割製版済みマスタ8Xのうちの最後の裏面製版画像8Bの製版が完了したと制御装置100によって判断されると、カッタ12が作動して分割製版済みマスタ8Xの後端部分が切断されると共に、プラテンローラ9および搬送ローラ対13の回転が停止し、版胴1の回転によって切断された1版分の分割製版済みマスタ8Xの後端が製版部15内から完全に引き出され、版胴1への分割製版済みマスタ8Xの巻装・給版動作が完了する。
なお、原稿画像の読取動作および画像データの入力動作は、上述した例に限らず、例えばADF148を使用して原稿133をコンタクトガラス135上に自動的に搬送する例、あるいは図示しない外部装置から画像データを取り込むようにしてもよい。
本実施形態では、分割製版済みマスタ8Xのうちの表面製版画像8Aの製版が完了した時、次の分割製版済みマスタ8Xにおける裏面印刷用の裏面製版画像8Bの製版のための製版待機状態とすべく製版部15におけるプラテンローラ9および搬送ローラ対13ならびに版胴1の回転を一時的に停止しているが、次のようにすることが望ましい。すなわち、ADF148による原稿133の自動搬送動作に加えて、2枚目の原稿を予めスキャンして、読み取られた原稿画像に係る画像データを記憶・格納する例えばビットマップメモリ等からなる図示しない画像メモリを設け、この画像メモリ内に1枚目および2枚目の画像データを格納・記憶しておき、その画像データを順次呼び出しながら連続的に製版を行うように構成する方が、製版時間の短縮やファーストプリントタイム(FPT)を短縮する上からは望ましい。
給版動作に引き続き版付け動作が行われる。版胴1がホームポジションで停止すると、制御装置100は印圧範囲可変手段28を作動させる。以下、版胴1上の分割製版済みマスタ8Xにおける表面製版画像8Aに対応した版付けや正規の両面印刷動作における表面印刷を最初に行うときには、制御装置100からの指令により図9に示した印圧範囲パターンIにおけるプレスローラ21による印圧オンタイミングが選択されるように印圧範囲可変手段28が制御される。すなわち、図14にのみ示すステッピングモータ252が回転駆動され前記段差カム(49)の回転を介しての周知の詳細動作を経て、カム板243Bが選択されてカム板243Bの輪郭周面がカムフォロア241と当接する。
前記した版胴1への分割製版済みマスタ8Xの巻装が完了すると、版胴1が所定の周速度(通常、版付け用の低速度)で図3に示す矢印方向に回転し始めることにより、版付けのための給紙・印刷工程が開始される。動作例1と同様に、用紙検知センサ32により用紙36の先端がオン検知されるまでは、係止手段64のソレノイド62がオフされたままに制御されているため印圧範囲可変手段28は非作動状態にあり、これによりプレスローラ21は非印刷位置で保持されている。
版胴1が矢印方向に回転して、動作例1と同様に、先ず、図10に示した給紙開始用遮光板121が給紙レジストセンサ120と係合することにより、給紙モータ37が起動し、給紙ローラ33と接触している給紙トレイ35上の最上の1枚目の用紙36が搬送されながら分離部材34との協働作用によって1枚に分離されてレジストローラ対31のニップ部に向けて送り出される。
こうして送り出された用紙36の先端がレジストローラ対31のニップ部で当接した後、用紙36の先端部に所定の湾曲した撓みが形成された状態で保持される。次いで、版胴1が図1における矢印方向にさらに回転して、レジスト開始用遮光板122が給紙レジストセンサ120と係合することにより、動作例1と同様にして、レジストモータ41が起動し、レジストローラ対31のニップ部で当接して待機していた用紙36の先端が所定のタイミングを取られたレジストローラ対31の回転によって、版胴1とプレスローラ21との間に向けて送り出される。この時、動作例1と同様に、レジストローラ対31により給送された用紙36先端の進入が用紙検知センサ32によって正常に検知される。
次いで、用紙検知センサ32からの用紙36先端の検知信号および版胴位置検知センサ29からの版胴1の回転位置情報に基づいて、制御装置100は動作例1と同様にソレノイド62をオンさせることにより、印圧範囲可変手段28のカム板243Bを作動させる。ソレノイド62がオンすることで、動作例1と同様の係止手段64の詳細動作が行われると共に、カム板243Bの輪郭周面がカムフォロア241の外周面と当接し、カムフォロア241の外周面がカム板243Bの小径部周面と対向し非当接状態となるカム板243Bの回転位置で、印圧アーム対22はアーム軸22aを中心に印圧ばね242の付勢力によって時計回りに揺動し上昇することとなる。
これにより、プレスローラ21は、図9に示すように、その外周面が図1に示す版胴1の表面領域1A上に巻装されている分割製版済みマスタ8Xの表面製版画像8Aよりも少し左寄りの先端余白部分に用紙36を押し付けて印圧を付与する印刷位置に変位することとなって、ニップ部16aが形成される(図9に示す印圧範囲パターンIにおけるプレスローラ21による印圧オンタイミング参照)。これと同時に、プレスローラ駆動モータ55がプレスローラ21を版胴1の周速度とほぼ同じ周速度で回転させることにより、プレスローラ21は版胴1の回転方向と反対方向に回転しながら版胴1上の分割製版済みマスタ8Xの表面製版画像8A部分に用紙36を連続的に押し付けることで、分割製版済みマスタ8Xの表面製版画像8Aを版胴1の外周面に密着させそれにインキを充填させるためのいわゆる版付けが行われる。この版付けでは、版胴1の開孔部1aの開孔部分から分割製版済みマスタ8Xにおける表面製版画像8Aの穿孔部分へとインキが滲み出てきて用紙36の表面に転移されることで孔版印刷が行われる。
この時、インキローラ2も動作例1と同様に版胴1の回転方向と同一方向に回転することにより、インキ溜まり4のインキが版胴1の内周面に供給される。こうして版胴1上の分割製版済みマスタ8Xにおける表面製版画像8Aに対応した版付け印刷が行われ、版胴1がさらに回転してその表面製版画像8Aの後端近傍部分がニップ部16aに対応した回転位置に至ると、カム板243Bの大径部周面とカムフォロア241とが当接することで、印圧アーム22がアーム軸22aを中心として反時計回りに回転してプレスローラ21が非印刷位置を占めた状態で保持される。この時には既に、制御装置100からの指令により係止手段64のソレノイド62がオフされていることにより、プレスローラ21が非印刷位置を占めた初期位置状態に復帰・保持される。
前記版付け動作と並行して、版胴1のクランパ7が非印刷位置を占めているプレスローラ21上を通り過ぎた頃に、ソレノイド47がオンされることで、切換ガイド46が図3に示すように軸47aを中心として反時計回りに揺動されて第2の変位位置を占めて停止する。これと同時に、移動手段87の駆動モータ94が起動(例えば正転駆動開始)されることにより、図3に示すように移動ガイド81も初期位置(待機位置)P2から版付けによって印刷された表面印刷済み用紙36aの先端部を挟持すべく、4箇所の突起81cが案内溝88に沿って案内・移動されつつ移動位置P1を占めるように図において右斜め上方に移動する。駆動モータ94のステップ数がある設定値に達することにより、移動ガイド81が移動位置P1を占める際には、図8に実線で示したように解除レバー下83が解除カム98の輪郭周面に摺接し乗り上げることによって、クランプ爪81bは時計回りに揺動して挟持台81f上面との当接状態から開放された状態で待機して停止する。
移動ガイド81が移動位置P1を占めて停止する頃に、図3に示すように、表面印刷済み用紙36aの先端部は第2の変位位置を占めて停止している切換ガイド46と剥離ファン171(図1参照)の作動によって、版胴1上の分割製版済みマスタ8X(図9参照)から確実に剥離される。剥離された表面印刷済み用紙36aの先端部は、移動ガイド81に設けられたクランプ爪81bの傾斜面により案内されつつ挟持台81fの上面と開放されているクランプ爪81bの自由端との隙間部分に挿入され、次いでエンドフェンス81dの用紙当接面81eに当接することでその先端が突き当て揃えられる。表面印刷済み用紙36aの先端が挟持台81fの上面とクランプ爪81bの自由端との前記隙間部分に挿入された頃に、駆動モータ94が表面印刷済み用紙36aの搬送速度(版胴1とプレスローラ21との回転による周速度とほぼ同じ)とほぼ同じ速度となるように起動(例えば逆転駆動開始)されることにより、移動ガイド81は初期位置P2に向けて図において左斜め下方に移動開始する。
この際、図8において、解除レバー下83が解除カム98の輪郭周面から外れることによって、前記ねじりコイルばねの付勢力によりクランプ爪81bが反時計回りに揺動してクランプ爪81bの自由端と挟持台81fの上面との間に表面印刷済み用紙36aの先端部が挟持・クランプされる。移動ガイド81は、前記したように表面印刷済み用紙36aの先端部を固定した状態で、かつ、表面印刷済み用紙36aの先端を用紙当接面81eに突き当てた状態で、表面印刷済み用紙36aの搬送速度とほぼ同じ移動速度で初期位置P2に向けて図において左斜め下方に移動する。
上述したように版胴1上の分割製版済みマスタ8Xにおける表面製版画像8Aに対応した版付け印刷が終了した後、プレスローラ21は非印刷位置を占めた初期位置状態に復帰・保持されており、次の給紙に備えた給紙待機状態にある。
一方、図4を借りて説明すると、表面印刷済み用紙36aは移動手段87の作動によって移動ガイド81のクランプ爪81bの自由端と挟持台81fの上面との間に挟持・固定された状態で初期位置P2に向けて搬送され、移動ガイド81が初期位置P2を占めて停止する際に、今度は図8に二点鎖線で示したように解除レバー上82が解除ピン99と当接することによって、クランプ爪81bが時計回りに揺動されることで、表面印刷済み用紙36aの先端部は挟持・固定状態から開放されることとなる。
この際、再給紙搬送装置104の作動によって表面印刷済み用紙36aの後部が吸着保持された後に、クランプ爪81bの自由端と挟持台81fの上面との間から表面印刷済み用紙36aの先端部を開放するようにした方が当該用紙36aの暴れが少なく同用紙36aの位置精度が向上し、その後の印刷位置ずれを最小に保つ上では望ましい。
表面印刷済み用紙36aの後端が切換ガイド46を通り過ぎた頃にソレノイド47がオフされることで、前記引張ばねの付勢力によって切換ガイド46が図1に実線で示すように軸47aを中心として時計回りに揺動されて第1の変位位置(初期位置)に復帰して停止するように制御される。
その先端が開放された表面印刷済み用紙36aは、制御装置100からの指令によって再給紙搬送装置104の先ず吸引ファン109が駆動されることによりその裏面の非印刷画像面が搬送ベルト108上面に吸引されて一時的に吸着保持・固定され、次いで図4に示すように、ベルト駆動モータ105が用紙種類に応じた特有の回転速度でそれまでとは逆方向に回転駆動された直後に用紙種類に応じた特有のタイミングで一時的に停止されることにより、すなわち搬送ローラ後107の時計回りの回転を介して搬送ベルト108が用紙種類(本動作例では例えば更紙)に応じた搬送速度によって、表面印刷済み用紙36aの新しい進行方向の先端がストッパ面53aに当接するように搬送され、該用紙36a先端がストッパ面53aに当接した直後には用紙種類に応じたタイミングで搬送停止されることによって、表面印刷済み用紙36aのストッパ面53aへの当接時のエネルギーで表面印刷済み用紙36aの先端部の撓みの発生が極小になるように、ベルト駆動モータ105が制御される。
次いで、版胴位置検知センサ29からの版胴1の回転位置情報に基づいて、版胴1が所定位置、すなわち版胴1上の分割製版済みマスタ8Xにおける裏面製版画像8Bに対応して表面印刷済み用紙36aの裏面への印刷が可能となる版胴1の回転位置に達したと制御装置100により判断されると、ソレノイド73がオン作動され、これにより再給紙レジストローラ51がプレスローラ21の外周面に向けて上昇することで、表面印刷済み用紙36aの先端部をストッパ面53aとの当接状態から解除してプレスローラ21の外周面に押し付け・当接させることとなり、またこれと同時に図2に示すプレスローラ駆動モータ55が回転駆動されることにより、プレスローラ21が反時計回りに回転されることで、表面印刷済み用紙36aが反時計回りに回転するプレスローラ21とこれに従動して時計回りに回転する再給紙レジストローラ51との間に押圧挟持されながら、プレスローラ21の回転力によって版胴1の周速度とほぼ同じ周速度で、かつ、ローラガイド板50によりプレスローラ21の外周面に沿って搬送されるように案内されて、版胴1とプレスローラ21とが圧接されることにより形成されるニップ部16aに向けて表裏反転されながら搬送される。
表面印刷済み用紙36aは吸引ファン109の作用で搬送ベルト108に比較的弱い力で吸着されているので、搬送ベルト108が停止していると、再給紙レジストローラ51とプレスローラ21の間に挟持された用紙36aが移動を開始したとき、用紙36aの後端部と搬送ベルト108との間に摩擦抵抗が発生し、用紙36aとプレスローラ21の間に滑りが生ずることがある。したがって、搬送ベルト108はしかるべき適切なタイミングを見計らって駆動を開始しなければならない。
基本的には用紙36a先端部とストッパ面53aとの当接が解除された時点以後で、用紙36aが移動を開始したときが望ましい。このタイミングは、再給紙レジストローラ51の動作指令信号から装置固有の所定時間経過後であることが実験によって知ることができる。あるいは、再給紙レジストローラ51が用紙36aを介してプレスローラ21に当接したことを検知する検知手段を配置して、該検知手段の出力を用いて搬送ベルト108の駆動を開始してもよい。当接したことの検知手段としては、再給紙レジストローラ51の位置を検知するセンサを設ける。例えば、図5に符号71aで示す光学センサによって、揺動アーム71の一部を検知させ、再給紙レジストローラ51がプレスローラ21に当接する位置まで来るとセンサ出力が出るように調整しておく。
搬送ベルト108の駆動速度は原則として版胴1の周速と同じにするが、それより若干早めにする分には特に問題は無い。あまり早すぎると、搬送ベルト108と再給紙レジストローラ51との間に撓みができすぎてしわの発生につながるので、+20%程度が限界になる。逆に、搬送ベルト108の駆動速度を版胴1の周速より遅くした場合、程度が小さければ摩擦抵抗もわずかで済むので、―20%程度までは許容できる。
ベルト駆動モータ105がステッピングモータからなる場合、印刷速度が小さい場合は比較的短時間で目標速度に達するが、印刷速度が大きい場合は目標速度に達するまでに若干時間がかかる。
図16および図17は搬送ベルト108の駆動立ち上がり速度を示す線図で、図16は理想の状態を示す模式図、図17は実際に生ずる速度を示す模式図である。両図において太い実線がベルト速度を概念的に示している。
印刷速度が小さい16rpmや60rpmという低速の場合、グラフに表示するほどの遅れもなく目標速度に達する。
印刷速度が大きい90rpmや120rpmという高速の場合、この例では、60rpmまではほぼ瞬時に立ち上がるものの、そこから先は目標速度に達するまでほぼ一定の加速度で速度が上昇する。そのため、印刷速度が高速の場合、再給紙レジストローラ51とプレスローラ21の当接の瞬間に搬送ベルトの駆動をかけたのでは、用紙36aの移動速度に追いつかないことになる。そこで、再給紙レジストローラ51とプレスローラ21の当接の瞬間に搬送ベルトの速度が丁度目標速度になるように、それぞれの印刷速度に固有の所定の時間だけ早めにモータの起動を行うようにする。
印刷速度が小さい場合は、再給紙レジストローラ51がプレスローラ21に当接したことを検知する検知手段の出力を用いて搬送ベルト108を駆動させても間に合うが、印刷速度が高速の場合はそれでは間に合わなくなる。
本実施形態では、再給紙レジストローラ51をプレスローラ21に当接させるためのソレノイド73に対する動作指令信号から、実際に上記当接が行われるまでの遅れ時間は、多少のばらつきはあるものの、およそ50msであることが分かっている。したがって、印刷速度が高速の場合は、ソレノイド73への動作指令信号を基準として利用するとよい。印刷速度が120rpmの場合なら、ソレノイド73への動作指令信号が出たとき、上記基準から25ms遅らせて、すなわち、25msのタイムラグを持たせて搬送ベルト108を駆動させ、印刷速度が90rpmの場合は、ソレノイド73への動作指令信号が出たあと、約38msのタイムラグを持たせてから搬送ベルト108を駆動させる。それによって、用紙36aが移動開始する瞬間には搬送ベルト108が版胴1の周速度と同じ速度で移動する状態になっている。なお、早めに搬送ベルトを駆動させても、用紙36aはまだストッパ53により止められているので移動を開始することはない。
印刷速度が低速の場合も同じ手法を用いることができる。すなわち、印刷速度が16rpmや60rpmの場合は、ソレノイド73への動作指令信号を基準として、50msのタイムラグを持たせてから搬送ベルト108を駆動させればよい。
ソレノイド73の動作遅れ時間50msのばらつき分は、±20%よりは十分小さいので、このような方法を採用しても問題は生じない。
以上の説明では、搬送ベルト108の立ち上がり遅れ時間が無視できる範囲として60rpm以下の例を挙げて説明したが、実際に用いられるステッピングモータの種類、ベルト駆動機構の構成等によって、その範囲は変化する。したがって、再給紙レジストローラ51がプレスローラ21に当接したことを検知したときに駆動開始することができるのは、搬送ベルト108の駆動立ち上がり遅れ時間が無視できる印刷速度の場合である。
また、ソレノイド73への動作指令信号が出たあとの、搬送ベルト108を駆動させるまでのタイムラグも構成により異なるので、実際の構成によって実測した値を用いることになる。
版胴1上の分割製版済みマスタ8Xにおける裏面製版画像8Bに対応した版付けや後述する正規の両面印刷動作における裏面印刷を行うときには、制御装置100からの指令により図9に示した印圧範囲パターンIIにおけるプレスローラ21による印圧オンタイミングが選択されるように印圧範囲可変手段28が制御される。すなわち、図14および図15に示すステッピングモータ252が回転駆動され前記段差カム(49)の回転を介しての周知の詳細動作を経て、カム板243Cが選択されてカム板243Cの輪郭周面がカムフォロア241と当接する。
この搬送と並行して版胴1の所定の回転位置、すなわち版胴1上の分割製版済みマスタ8Xにおける裏面製版画像8Bの先端近傍部分がニップ部16aに対応した回転位置に至ると、換言すれば版胴1の回転と同期して回転しているカム板243Cの小径部がカムフォロア241に対向した非接触状態になった時、図9に示すように、プレスローラ21はその外周面が図4に示す版胴1の裏面領域1B上に巻装されている分割製版済みマスタ8Xの裏面製版画像8Bよりも少し左寄りの先端部分に表面印刷済み用紙36aの裏面(図4では上面となっている)を押し付けて印圧を付与する印刷位置に変位することとなって、印圧ばね242の付勢力によってニップ部16aが形成されて版付け用の両面印刷が行われる(図9に示す印圧範囲パターンIIにおけるプレスローラ21による印圧オンタイミング参照)。
こうして、版胴1上の分割製版済みマスタ8Xにおける裏面製版画像8Bに対応してインキが充填されると共に、表面印刷済み用紙36aの裏面に裏面印刷画像が形成される両面印刷が行われた版付け用の両面印刷済み用紙36bは、片面印刷済み用紙36cの排紙動作と同様に、その先端部が版胴1の外周面に接近する剥離爪170および剥離ファン171からの送風により版胴1上の分割製版済みマスタ8Xから確実に剥離され、剥離された両面印刷済み用紙36bは下方へと落下して排紙搬送装置152へ送られ、図4を借りて示すように反時計回りに回転している排紙ベルト158の上面に吸引ファン159による吸引力によって引きつけられ吸着保持されながら用紙搬送方向Xの下流側に搬送されて、排紙トレイ172に排出される。
一方、プレスローラ21が版胴1の外周面に当接した時点より版胴1がほぼ4分の3周し、カム板243Cの大径部周面とカムフォロア241とが接する時点では、動作例1と同様の詳細動作を介して、プレスローラ21が版胴1の外周面から離れた非印刷位置に復帰して保持されると共に、版胴1は再びホームポジションまで回転して停止し、版付け動作を終えて両面孔版印刷装置300は次の正規の両面印刷のための印刷待機状態となる。
両面孔版印刷装置300が印刷待機状態となった後、印刷速度設定キー183および操作パネル173上の各種キーによって印刷条件を入力した後に、適宜試し刷りにより画像の位置あるいは濃度等が確認され、テンキー179によって印刷枚数が入力された後に印刷スタートキー175が押下されると、給紙部30から用紙36が連続的に給送され、テンキー179によって設定された設定枚数の両面印刷動作が行われる。
設定枚数の正規の両面印刷動作が、上述した版付け動作と基本的に相違する点は下記にまとめたとおりであり、その他の細部に亘る動作は上述した版付け動作および上述の特許文献7ないし9に開示されている両面印刷動作等から当業者であれば容易に理解して実施できるためその説明を省略する。
第1に、両面孔版印刷装置300を構成していて直接的に給紙、再給紙、表面印刷、裏面印刷および排紙等の各動作に係る前記各部・装置の駆動が、印刷速度設定キー183で設定された印刷速度または自動的に設定された標準印刷速度に対応して駆動される点が挙げられる。
第2に、制御装置100からの指令によって、ベルト駆動モータ105が印刷速度毎に設定され用紙種類に応じた特有の回転速度で回転駆動された直後に、印刷速度毎に設定され用紙種類に応じた特有のタイミングで一時的に停止されることにより、すなわち搬送ローラ後107の時計回りの回転を介して搬送ベルト108が印刷速度毎に設定され用紙種類に応じた搬送速度によって、表面印刷済み用紙36aの先端がストッパ面53aに当接するように搬送され、該用紙36a先端がストッパ面53aに当接した直後には印刷速度毎に設定され用紙種類に応じたタイミングで搬送停止されることによって、表面印刷済み用紙36aのストッパ面53aへの当接時のエネルギーで表面印刷済み用紙36aの先端部の撓みの発生が極小になるように、ベルト駆動モータ105が制御される点が挙げられる。
第3に、図4および図9において、版胴1上の分割製版済みマスタ8Xにおける表面製版画像8Aに対応して2枚目の用紙に印刷をするとき、およびこれに引き続いて、再給紙手段45で反転搬送された1枚目の表面印刷済み用紙36aの裏面に版胴1上の分割製版済みマスタ8Xにおける裏面製版画像8Bに対応した印刷をするときには、通常の片面印刷モード(動作例1参照)時と同様に、図9に示した印圧範囲パターンIIIにおけるプレスローラ21による印圧オンタイミングが選択されるように印圧範囲可変手段28が制御される点を挙げることができる。 この際の印圧範囲可変手段28の詳細動作は、上述したように動作例1と同様に行われており、図4に示すように、版胴1上の分割製版済みマスタ8Xにおける表面製版画像8Aに対して2枚目の用紙がプレスローラ21で押し付けられ、これに連続してプレスローラ21が印刷位置を占めたままの状態で、版胴1上の分割製版済みマスタ8Xにおける裏面製版画像8Bに対して再給紙手段45で反転搬送された1枚目の表面印刷済み用紙36aの裏面がプレスローラ21で押し付けられる。
以下、テンキー179で設定された設定枚数N枚に対して、(N−1)枚目までは上述したと同様の印刷動作が繰り返して行われる。そして、印刷動作終了直前時に再給紙搬送装置104に一時的に保持されるN枚目(最後の1枚目)の表面印刷済み用紙36aの裏面への両面印刷時には、図9に示した印圧範囲パターンIIにおけるプレスローラ21による印圧オンタイミングが選択されるように印圧範囲可変手段28が制御される。すなわち、版胴1上の分割製版済みマスタ8Xにおける裏面製版画像8Bにのみ、N枚目の表面印刷済み用紙36aの裏面がプレスローラ21によって押し付けられ、以下、上述したと同様の排紙動作を経て設定枚数N枚目の両面印刷動作が終了して、両面孔版印刷装置300は印刷待機状態となる。
このように、通常の正規の両面印刷動作では、設定された印刷枚数の両面印刷が版胴1の1回転毎に行われ、版胴1のほぼ半回転では分割製版済みマスタ8Xの表面製版画像8Aに対応した表面印刷が、版胴1の残りのほぼ半回転では分割製版済みマスタ8Xの裏面製版画像8Bに対応した裏面印刷がこの順に行われる。
第4に、通常の正規の両面印刷動作は、版付け時の両面印刷動作と比較して、前記したように版付け印刷に用いられた用紙36の枚数が正規の通常の印刷枚数としてカウントされない点が挙げられる。
本実施形態によれば、用紙種類に関してその厚みが薄く比較的軽い用紙が再給紙手段45におけるストッパ面53aに当接した時に撓み、その撓みによる用紙先端部の変形でレジストが悪化することを防止するために、用紙36が薄く軽量の場合は厚く重量の有る場合と比較して、搬送ベルト108の搬送速度(線速度)を遅めにすると共に、表面印刷済み用紙36aのストッパ面53a当接後の搬送ベルト108の停止タイミングも早めにすることにより、ストッパ面53a当接後の表面印刷済み用紙36aの撓みを極力小さくするように、かつ、ストッパ面53a当接後の表面印刷済み用紙36aの過分送りで該用紙36aが送られることによる撓みを極力小さくするようにベルト駆動モータ105を制御することで、該用紙36aの先端部の変形が抑えられるので画像位置ズレのないレジスト悪化が抑えられた両面印刷物を得ることができる。
また、本実施形態によれば、上述した利点・効果を奏することは元より、上記特許文献7ないし9における両面印刷装置(1)と同様に、無駄なマスタを用いることなく片面印刷を行うことができると共に両面印刷時には印刷画像濃度ムラや印刷画像濃度差の無い画質良好な印刷物を安価かつ容易に得ることができ、さらに設置スペースの増大を抑制することができる新しい1版胴1押圧手段両面印刷方式の1工程両面印刷装置を提供するものである。
(第1の実施形態の変形例1)
図15に、図1〜図14に示した第1の実施形態の変形例1を示す。
変形例1は、操作パネル173に配設された用紙種類設定手段を構成する用紙種類設定キー186を除去した操作パネル173Aを有する点、用紙種類設定手段(用紙種類設定キー186、エンターキー180および4方向キー184)に代えて、図15に示すように用紙種類検知手段としての紙厚センサ79を図1に示す所定の部位に配設した点が主に相違する。
すなわち、変形例1の制御装置100は、表面印刷済み用紙36aの先端がストッパ面53aへの当接までの搬送ベルト108の搬送速度が、紙厚センサ79等で検知された用紙36の厚み等に関する用紙種類に応じて、変わるようにベルト駆動モータ105を制御すると共に、表面印刷済み用紙36aの先端のストッパ面53aへの当接後における搬送ベルト108の搬送停止タイミングが変わるようにベルト駆動モータ105を制御する制御手段としての機能を有する。さらに、制御装置100は、再給紙に際しても、搬送ベルト108の搬送速度を、検出された用紙種類に対応した搬送速度となるようにベルト駆動モータ105を制御する制御手段としての機能を有する。
紙厚センサ79は、例えば用紙36を透過する光の透過率によって用紙36の厚みを測定するタイプや、超音波を用いて用紙36からの反射波を測定して用紙36の厚みを測定するタイプや、レーザ光によって用紙36表面までの距離を測定して用紙36の厚みを測定するタイプなどが挙げられ、これらのうち、光の透過率を用いた方式は実用化されて実際に使用されている。
変形例1の動作は、変形例1の上記構成および上述した第1の実施形態の動作等から当業者であれば容易に実施可能に構成できるためその説明を省略する。
変形例1によれば、用紙36の種類を一々手動で設定する手間を省くことができるという利点・効果を奏する他、第1の実施形態と同様の基本的な利点・効果を奏する。
(第1の実施形態の変形例2)
図15に、図1〜図14に示した第1の実施形態の変形例2を示す。
変形例2は、操作パネル173に配設された用紙種類設定手段(用紙種類設定キー186、エンターキー180および4方向キー184)の他に、これに加えて図15に示す用紙種類検知手段としての紙厚センサ79を有する点が主に相違する。
すなわち、変形例1の制御装置100は、紙厚センサ79で検知された用紙36の厚みに関する用紙種類に応じて、再給紙搬送装置104の搬送ベルト108の搬送速度が変わるようにベルト駆動モータ105を制御すると共に、表面印刷済み用紙36aの先端のストッパ面53aへの当接後における搬送ベルト108の搬送停止タイミングが変わるようにベルト駆動モータ105を制御する制御手段としての機能を有する。
変形例2では、例えば紙厚センサ79から制御装置100に送信・入力される用紙36の厚みに関するデータ信号よりも用紙種類設定手段(用紙種類設定キー186、エンターキー180および4方向キー184)で選択・設定された用紙36の厚みに関するデータ信号を優先するという制御機能を予め制御装置100に付与しておくことで構成することができる。
変形例2の動作は、変形例2の上記構成および上述した第1の実施形態の動作等から当業者であれば容易に実施可能に構成できるためその説明を省略する。変形例2によっても、第1の実施形態と同様の基本的な利点・効果を奏する。
(第2の実施形態)
第2の実施形態は、図1〜図14に示した第1の実施形態と比較して、第1の実施形態ほどの顕著な上記利点・効果を望まなくてもよいのであれば、第1の実施形態の制御装置100の機能から、用紙種類に応じて、表面印刷済み用紙36aの先端のストッパ部材53への当接後における搬送ベルト108の搬送停止タイミングを変える機能を削除して、用紙種類に応じて、用紙36aの先端がストッパ部材53へ当接するまでの搬送ベルト108の搬送速度を変える機能と、再給紙における搬送ベルト108の搬送速度を変える機能だけを有する制御手段としての図示しない制御装置の構成であってもよい。
この場合、図示しない制御装置のROMには、用紙種類とベルト駆動モータ105の回転速度との印刷速度毎に設定された2種類のデータテーブルが予め記憶されることとなる。
第2の実施形態の動作は、上述した第1の実施形態の動作等から当業者であれば容易に実施可能に構成できるためその説明を省略する。また、変形例1または2を第2の実施形態に適用して実施することも、当業者であれば容易に実施できるためその説明を省略する。
(第3の実施形態)
第3の実施形態は、図1〜図14に示した第1の実施形態と比較して、第1の実施形態ほどの顕著な上記利点・効果を望まなくてもよいのであれば、第1の実施形態の制御装置100の機能から、用紙種類に応じて、用紙36aの先端がストッパ部材53へ当接するまでの搬送ベルト108の搬送速度を変える機能を削除して、用紙種類に応じて、表面印刷済み用紙36aの先端のストッパ部材53への当接後における搬送ベルト108の搬送停止タイミングを変える機能と、再給紙における搬送ベルト108の搬送速度を変える機能だけを有する制御手段としての図示しない制御装置の構成であってもよい。
この場合、図示しない制御装置のROMには、用紙種類と表面印刷済み用紙36aの先端のストッパ部材53への当接後におけるベルト駆動モータ105の停止タイミングとの印刷速度毎に設定されたデータテーブルと、用紙種類とベルト駆動モータ105の回転速度との印刷速度毎に設定された1種類のデータテーブルが予め記憶されることとなる。
第3の実施形態の動作は、上述した第1の実施形態の動作等から当業者であれば容易に実施可能に構成できるためその説明を省略する。また、変形例1または2を第3の実施形態に適用して実施することも、当業者であれば容易に実施できるためその説明を省略する。
図2に示したプレスローラ回転駆動手段54は、前記した利点を望まなくてもよいのであれば必須の構成ではなく、例えば特許文献7および特許文献8に開示されているように、プレスローラ21を版胴1に圧接させて従動回転させる構成でも構わない。
以上述べたとおり、本発明を特定の実施形態および変形例等について説明したが、本発明が開示する技術的範囲は、上述した実施形態および変形例等に例示されているものに限定されるものではなく、それらを適宜組み合わせて構成してもよく、本発明の範囲内において、その必要性および用途等に応じて種々の実施形態や変形例あるいは実施例を構成し得ることは当業者ならば明らかである。