JP4185297B2 - 両面印刷装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、印刷装置に関し、さらに詳しくは1工程で用紙の両面に印刷を行うことが可能な両面印刷装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
簡便な印刷方式として、デジタル感熱式に孔版印刷を行えるデジタル感熱式の孔版印刷装置が知られている。この孔版印刷装置では、多数の微細な発熱素子が主走査方向に配列されたサーマルヘッドを感熱孔版マスタ(以下、「マスタ」という)に接触させ、各発熱素子にパルス的に通電させながら主走査方向と直交する副走査方向(マスタ搬送方向)にマスタを搬送することで、画像情報に応じてマスタを加熱溶融穿孔し、この製版済みのマスタを多孔性円筒状の版胴を外周に備えた印刷ドラムの該版胴外周面に巻装した後に印刷用紙(以下、単に「用紙」という)を介して版胴外周面をプレスローラ等の押圧手段によって押圧することにより、版胴内周に供給されたインキを版胴の開孔部分、製版済みのマスタの穿孔部分より通過させて用紙に転移させることによって印刷画像を得るものである。以下、印刷ドラムのことを単に「ドラム」というときがある。
【0003】
この孔版印刷において、用紙の一方の面にのみ印刷を行う片面印刷に加えて、近年では用紙の消費量および書類の保管スペースを低減させるため等の目的から、用紙の両面に印刷を行う両面印刷が頻繁に行われるようになってきている。両面印刷装置の形態としては、いくつもの方式が提案されているが、それらは主として以下の4つに大別される。
【0004】
(1)2ドラム対向式1パス同時両面印刷方式…第1の版胴(第1の印刷ドラム)と、用紙搬送路を介して第1の版胴と対向配置された第2の版胴(第2の印刷ドラム)と、第1の版胴の外周面と第2の版胴の外周面とを互いに接離させる接離手段とを具備し、接離手段を作動させて各版胴同士を互いに圧接させることにより、1回の通紙すなわち1パスで、用紙の一方の面である用紙の表面に印刷を行う表面印刷およびその用紙の他方の面である用紙の裏面に印刷を行う裏面印刷を1工程で行って両面印刷物を得る両面印刷方式である(例えば、特開平6−71996号、特開平6−135111号および特開2000−198260号公報等参照)。
【0005】
(2)片面印刷後ストック再給紙式2パス両面印刷方式…従来の片面孔版印刷装置と略同様の装置構成に対して、排紙トレイを備えた排紙ユニットごと移動可能に構成すると共に、排紙トレイに給紙トレイの機能構成を付加したり新たに反転給紙路等を付加したりすること等により、給紙部に積載した用紙を印刷部に通紙して表面印刷を行った表面印刷済みの用紙を上記排紙トレイ上に一度排出積載した後、上記排紙トレイ上の表面印刷済みの用紙を上記反転給紙路に搬送させることで裏返して再度印刷部に通紙して裏面印刷を行うことによって両面印刷物を得る両面印刷方式である(例えば、特開平7−81202号公報等参照)。この両面印刷方式では、従来の片面孔版印刷装置およびその構成を少し変更するだけで使用可能になるという利点がある。
【0006】
(3)2ドラム対向式転写胴介在型1パス同時両面印刷方式…インキ供給手段を具備し外周面にマスタを巻装して回転自在な第1、第2の版胴(印刷ドラム)と、これら第1、第2の版胴との間に位置する転写胴とを用い、第2の版胴から転写胴にインキ画像を転移させた後に、同じ用紙の裏面に転写胴上のインキ画像を再転移させることによって用紙の表裏面に同時に印刷を行うという両面印刷方式である(例えば、特開平8−118774号公報等参照)。
【0007】
(4)1ドラム分割印刷同時反転式両面印刷方式…第1の製版画像および第2の製版画像を形成された製版済みのマスタを巻装する印刷ドラムと、この印刷ドラムの近傍に用紙を供給する給紙手段と、この給紙手段により供給された用紙の第1の面を印刷ドラム上の第1の製版画像に押し付けて第1の印刷画像を用紙の第1の面に形成する第1の押圧手段と、第1の印刷画像が第1の面に印刷された用紙を反転させる用紙反転手段と、この用紙反転手段によって反転された用紙の第2の面を印刷ドラム上の第2の製版画像に押し付けて第2の印刷画像を用紙の第2の面に形成する第2の押圧手段とを具備し、1回の製版工程および1回の印刷工程で用紙の表裏面に同時に印刷を行うという両面印刷方式である(例えば、特開平9−95033号公報等参照)。
【0008】
(4)の両面印刷方式は、上述した3つの両面印刷方式および後述する1ドラム分割転写胴1パス両面印刷方式と比べて、両面印刷時の画像サイズを限定すれば、コンパクトな印刷装置でありながら片面印刷および表面と裏面との印刷画像の濃度差等に支障がなく、かつ、高速で短時間に両面印刷ができて印刷所要時間の節約が可能であり、生産性が高いという利点を有する。
【0009】
また、上記(3)と(4)との中間に位置するような「1ドラム分割印刷転写胴1パス両面印刷方式」とも呼ぶべき両面印刷方式もある(例えば、特開平10−129100号公報等参照)。
1ドラム分割転写胴1パス両面印刷方式を採用した孔版印刷機の基本的な構成は、1つの版胴外周面に表面用印刷領域と裏面用印刷領域とを有する版胴(印刷ドラム)と、版胴の裏面用印刷領域を通過したインキによって転写された裏面用インキ画像がその表面に形成される転写胴と、版胴と裏面用インキ画像が形成された転写胴との間に印刷用紙を搬送する搬送手段などを具備している。この両面印刷方式では、用紙が版胴と裏面用インキ画像が形成された転写胴との間を通過することによって、1パスで用紙の表裏面に同時に印刷をすることができる。すなわち、上記両面印刷方式においては、1つの版胴、1つのインキ供給手段、1つの転写胴およびそれぞれ1つの製版ユニットおよび排版ユニットが有ればよいので、部品点数削減によるコスト低減および装置の小型化が可能になるという利点や、版胴と転写胴との直径比を2:1とすることによって、版胴と転写胴とを一定回転数(一定回転速度)で回転させた状態で連続的に印刷を行うことができるというような利点も有している。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、(1)の両面印刷方式では、印刷装置が大型になり、片面印刷が簡単に行えないとか、印刷ドラム上への排紙の巻き上がり防止が非常に困難等の問題点を有する。
【0011】
(2)の両面印刷方式では、表面印刷終了後の印刷物はインキが十分に乾燥していわゆるセットされた状態となっていないため、表面印刷終了後の印刷物をすぐに裏面に印刷しようとすると、搬送ローラやプレスローラ等の押圧手段が画像部に押し付けられて印刷画像がインキ等で汚れたり乱れたりするという不具合が生じることにより、両面印刷物を得るまでに結局時間が掛かってしまったり、一度表面印刷した表面印刷済みの用紙を再び分離・搬送するのはジャムが発生しやすくなったり、印刷装置が大型になる等の問題点を有する。
【0012】
(3)の両面印刷方式では、表面と裏面との印刷画像の濃度差や画質差がどうしても解消できないとか、転写胴を含め結果的に3ドラムを配置することになって印刷装置が大型になったり、クリーニングが必要になったりする等の問題点を有する。
【0013】
(4)の両面印刷方式における、例えば特開平9−95033号公報記載の印刷装置では、用紙搬送の確実性・信頼性および高速印刷対応性にはなはだ疑問があり、これに関する問題点を有すると共に、さらに押圧手段(第1および第2の押圧手段としての一次、二次プレスローラ17,24)を2つ使用しこれに対応して印刷ドラム内にインキ供給手段(7,8)を2箇所要するという印刷部周りの構成が複雑になるという問題点も有している。
【0014】
1ドラム分割印刷転写胴1パス両面印刷方式では、版胴の外周面からのインキの出易さが表面用印刷領域も裏面用印刷領域も同様であり、かつ、撥インキ性を有する材料が転写胴の外周表面層に使用されていて、なおかつ、例えば同一の原稿による同一の製版画像に基づいて表裏面に同時印刷する場合を基準に比較した場合には、版胴の外周面から転写胴の外周面に転写するインキ転移量は、版胴の外周面から直接用紙に転移するインキ転移量に比べて少なくなってしまう。これにより、上記両面印刷方式でも、表面用印刷画像と裏面用印刷画像との間に印刷画像濃度ムラや印刷画像濃度差が発生してしまうという問題点を有する。
【0015】
そこで、本願出願人およびその発明者は、最近、特願2002−2660号(平成14年1月9日付けの特許出願)にて、(4)の両面印刷方式を基本方式(但し、該特願2002−2660号では単一の押圧手段としてのプレスローラおよび単一のインキ供給手段を採用)として選択して、その根本的な問題点として用紙搬送の確実性・信頼性および高速印刷対応性に欠けるという問題点を解消・対策すると共に、従来両面印刷方式の上記諸問題点をも改良した新しい両面印刷装置を発明して別途特許出願している。
【0016】
本願出願人および本願の発明者は、従来両面印刷方式の上記諸問題点をも改良した新しい両面印刷装置を基礎として、特に、表面印刷を行った用紙を印刷ドラムの1回転分ストック(貯容)するために、印刷最初の1枚目と印刷最終枚目において、用紙無しの状態で印圧がかかってしまう部分が発生し、これにより押圧手段としてのプレスローラがインキ等で汚れてしまうという問題点に焦点を当てて、本願を出願するものである。この問題点の詳細は、後述する実施形態の中で説明するものとする。
【0017】
したがって、本発明は、かかる事情に鑑みて、印刷最初の1枚目と印刷最終枚目におけるプレスローラ汚れの問題を解決して、しかも使い勝手や両面印刷所要時間に影響を与えない従来両面印刷方式の上記諸問題点をも解決した新しい両面印刷装置を提供することを主な目的としている。
【0018】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上述した課題を解決すると共に上述した目的を達成するために、請求項ごとの発明においては以下の手段・発明特定事項
(構成)を採用していることを特徴とするものである。
請求項1記載の発明は、印刷ドラムの回転方向に沿って第1の製版画像と第2の製版画像とが2面並んで形成された分割製版済みマスタを巻装する上記印刷ドラムおよび該印刷ドラムに対して相対的に接離自在な押圧手段としてのプレスローラを有する印刷部と、用紙を上記印刷部に向けて給送する給紙部と、上記印刷部において印刷された印刷済み用紙を排出する排紙部と、上記印刷部においてその表面に印刷画像を形成された表面印刷済み用紙を一時的に貯容する再給紙貯容手段と、上記再給紙貯容手段に貯容された表面印刷済み用紙を上記プレスローラに向けて搬送し、上記プレスローラの回転による表面印刷済み用紙の反転搬送によって上記印刷部に向けて再給紙する再給紙手段と、上記印刷部を通過した用紙を上記再給紙貯容手段または上記排紙部に案内する切換手段とを有し、両面印刷時に、上記給紙部より1枚目の用紙を上記印刷部に給送してその表面に第1の製版画像に対応した印刷を行い、印刷された1枚目の表面印刷済み用紙を上記切換手段により下向き方向に案内して上記再給紙貯容手段に案内した後、上記給紙部より2枚目の用紙を上記印刷部に給送してその表面に第1の製版画像に対応した印刷を行うと共に上記再給紙手段により1枚目の表面印刷済み用紙を、上記プレスローラの外周面に沿わせて上記印刷部に再給紙してその裏面に第2の製版画像に対応した印刷を行い、上記切換手段により1枚目の両面印刷済み用紙を略水平方向に案内して上記排紙部に、2枚目の表面印刷済み用紙を上記再給紙貯容手段にそれぞれ案内する両面印刷装置であって、上記印刷ドラム上の分割製版済みマスタにおける第1の製版画像に対応した第1の画像領域のみに印圧を付与する第1の印圧範囲パターンと、上記印刷ドラム上の分割製版済みマスタにおける第2の製版画像に対応した第2の画像領域のみに印圧を付与する第2の印圧範囲パターンと、第1の画像領域から続けて第2の画像領域に亘って印圧を付与する第3の印圧範囲パターンとの少なくとも3つの印圧範囲パターンのうちの一つを選択的に切り換え可能な印圧範囲可変手段を具備し、所定枚数の用紙に連続的に両面印刷を行う場合に、最初の1枚目の用紙に対する上記印刷ドラムの1回転目では、第1の印圧範囲パターンで第1の製版画像による表面印刷のみを行い、次の2枚目以降の上記印刷ドラムの回転では、第3の印圧範囲パターンで第1の製版画像による表面印刷と第2の製版画像による裏面印刷とを連続的に行い、上記両面印刷動作終了直前時における最終枚目の用紙に対する上記印刷ドラムの回転では、第2の印圧範囲パターンで第2の製版画像による裏面印刷のみを行うことを特徴とする。
【0021】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の両面印刷装置において、上記印圧範囲可変手段は、上記プレスローラに連結されたカムフォロアと係合して上記各印圧範囲パターンを設定するための、上記印刷ドラムの回転と同期して回転駆動されるカム軸に並設された少なくとも3つのカムと、上記カムフォロアと係合するように上記少なくとも3つのカムのうちの何れかに一つに切り換えるべく上記カム軸をその軸線方向に移動させる印圧範囲切換駆動手段とを具備し、連続的に両面印刷を行う場合に、全印圧動作回数のほとんどは、第3の印圧範囲パターンに対応して設定された第3のカムを用いた印圧となることにより、第3のカムを上記カム軸の中央に配置し、さらに該カム軸の移動距離を最小にするために、第1の印圧範囲パターンに対応して設定された第1のカムと第2の印圧範囲パターンに対応して設定された第2のカムとを第3のカムの両側の上記カム軸上にそれぞれ配置したことを特徴とする。
【0022】
請求項3記載の発明は、請求項記載の両面印刷装置において、版付け印刷工程または試し刷り印刷工程においては、1枚だけの用紙に対して上記印刷ドラムの1回転目では、第1の印圧範囲パターンの第1のカムで第1の製版画像による表面印刷を行い、次にこの同じ表面印刷済み用紙に対して上記印刷ドラムの次の1回転では、第2の印圧範囲パターンの第2のカムで第2の製版画像による裏面印刷を行って、その印刷物をそのまま上記排紙部に排出する工程となることにより、上記版付け印刷工程または上記試し刷り印刷工程においては、第1の印圧範囲パターンと第2の印圧範囲パターンとの二つの印圧範囲パターンのみを用いるように上記印圧範囲可変手段を制御する制御手段を具備し、上記版付け印刷または上記試し刷り印刷により両面印刷された1枚だけの印刷物を上記排紙部に排出することを特徴とする。
【0029】
印圧範囲可変手段の具体例としては、後述する実施形態で説明する構成の他、例えば実公平5−45500号公報に開示されている技術を応用することにより、例えば特開昭64−18683号公報の第7図および第8図等に開示されているようなねじ軸によって移動可能な複数のカムからなるカム板セットおよび前記ねじ軸を回転駆動する印圧カム切換用モータ等を応用することにより、また例えば特開平10−193767号公報の図7および図8等に開示されているような押圧部材の揺動機構および多段カムを選択できる押圧範囲可変機構を応用すること等でも構わない。
【0030】
制御手段」の具体例としては、後述する実施形態のようなマイクロコンピュータを用いる他、制御回路を用いたりすることもできる。
【0031】
【発明の実施の形態】
以下、図を参照して実施例を含む本発明の実施の形態(以下、「実施形態」という)を説明する。各実施形態等に亘り、同一の機能および形状等を有する部材や構成部品等の構成要素については、同一符号を付すことにより一度説明した後ではその説明を省略する。図において一対で構成されていて特別に区別して説明する必要がない構成要素は、説明の簡明化を図る上から、その片方を適宜記載することでその説明に代えるものとする。また、図および説明の簡明化を図るため、図に表されるべき構成要素であっても、その図において特別に説明する必要がない構成要素は適宜断わりなく省略することがある。
【0032】
図1は、本発明の一実施形態を適用した両面印刷装置1を示している。同図において、両面印刷装置1は、印刷部2、製版部3、給紙部4、排版部5、排紙部6、画像読取部7、再給紙貯容手段としての再給紙トレイ8、再給紙手段9、切換手段としての切換部材10等を有している。印刷部2、製版部3、給紙部4、排版部5、排紙部6、画像読取部7、再給紙手段9は、それぞれ後述するように装置としての構成を具備している。
【0033】
図1において、符号11は、両面印刷装置1の骨組みをなす印刷装置本体を示す。印刷部2は、印刷装置本体11の略中央に配設され外周部に版胴を備えた印刷ドラム12と押圧手段としてのプレスローラ13とを有している。版胴自体を印刷ドラムと呼ぶこともあるが、この明細書では外周部に版胴を備えた「印刷ドラム」という用語を統一して用いることとする。本実施形態では、押圧手段としてのプレスローラ13は、単一である。
【0034】
印刷ドラム12は、支軸14に回転自在に支持された図示しない一対のフランジと、各フランジの外周面に巻着された円筒状の多孔性支持板からなる版胴(図示せず)と、該版胴の外周面に巻着された図示しないメッシュスクリーンとから主に構成されている。印刷ドラム12における上記版胴には、インキ通過性の多数の開孔が開けられた印刷可能な画像形成領域(以下、「開口部」という)と、クランパ19配置部の非画像形成領域(以下、「非開口部」という)とが、印刷ドラム12の回転方向に沿って形成されている。上記画像形成領域は、図1中の印刷ドラム12における第1の画像領域12A(以下、「表面領域12A」という)と、中間領域12Sと、第2の画像領域12B(以下、「裏面領域12B」という)とを少なくとも含む領域である。
【0035】
印刷ドラム12は、例えばDCモータからなるメインモータを含む印刷ドラム駆動手段121(図10参照)によって図1中矢印方向(時計回り)に回転駆動される。印刷ドラム12は、後述するインキ供給手段15、図示しないインキポンプおよび図示しないインキ容器支持部材等を含めて実質的に一体である、印刷装置本体11に対して着脱自在なドラムユニット(図示せず)の構成部品として構成されている。本実施形態において印刷ドラム12は、片面印刷時において最大でA3サイズの印刷物を得ることが可能な大きさの上記版胴を有している。
【0036】
印刷ドラム12の内部には、単一のインキ供給手段15が配設されている。インキ供給手段15は、インキ供給パイプを兼ねた支軸14、インキローラ16、ドクターローラ17等を有している。
インキローラ16は、印刷ドラム12内に設けられた図示しない側板間に回転自在に支持されており、その周面を印刷ドラム12の上記版胴内周面(以下、単に「印刷ドラム12の内周面」という)に近接して配置され、図示しない駆動手段によって印刷ドラム12と同方向に回転駆動される。ドクターローラ17も上記側板間に回転自在に支持されており、その周面をインキローラ16の周面に近接して配置され、図示しない駆動手段によって印刷ドラム12とは逆方向に回転駆動される。支軸14には複数の小さな孔が開けられており、支軸14から供給されたインキが、インキローラ16とドクターローラ17との近接部に形成される断面楔形状の空間に溜まることにより、インキ溜まり18が形成される。
【0037】
印刷ドラム12の上記版胴外周面(以下、単に「印刷ドラム12の外周面」という)上には、上記版胴外周面の一母線に沿って平面をなして形成された図示しないステージ部と、該ステージ部に対して開閉可能に設けられ印刷ドラム12の外周面上に製版部3で穿孔製版されたマスタの先端を保持するクランパ19とが配設されている。クランパ19は、印刷ドラム12が所定の位置まで回転されたときに図示しない開閉手段によって開閉される。
【0038】
印刷ドラム12の下方には、該印刷ドラム12の外周面に対して接離自在なプレスローラ13が配設されている。プレスローラ13は、金属製の軸13aにゴム等の弾性体を一体的に固着して構成されており、印刷ドラム12の軸方向に延在して設けられている。プレスローラ13は、図2に示すように、軸13aの両端部を介して、紙面の手前側および奥側に配設された押圧手段支持部材としての一対の印圧アーム20(紙面の手前側は省略されている)によって回転自在に支持されている。各印圧アーム20は、略L字形状をなし、その曲折部近傍の部位に取り付けられた揺動軸21および図示しない連結補強部材によってそれぞれ一体化されている。揺動軸21は、図6に示すように、印刷装置本体11側に固設された筐体側板11a,11b(図6の右側の筐体側板11aは省略されている)間に軸受48bを介して回動自在に支持されている。プレスローラ13は、耐油性を有する弾性体である例えばニトリルゴム(NBR)またはシリコーンゴム(Q)で形成されていて、少なくとも該ゴムの外周表面には、ポリテトラフルオロエチレン樹脂等の撥インキ性かつ耐油性を有する被膜が平滑にコーティングされている。
【0039】
各印圧アーム20間には、プレスローラ13の他、再給紙案内部材22、再給紙レジスト手段としての再給紙レジストローラ23、再給紙位置決め部材24、再給紙搬送手段25、クリーニング手段としてのクリーニングローラ26、ガイド板27等が設けられている。
【0040】
再給紙案内部材22は、プレスローラ13の右方近傍に配設された各支軸28a,29a,30a上にそれぞれ一体的に設けられそれぞれの周面をプレスローラ13の外周周面に圧接させた複数のローラ28,29,30と、用紙Pをプレスローラ13の外周周面に沿わせるための曲面状に形成された用紙ガイド板31とを有している。各支軸28a,29a,30aは、それぞれの両端部を各印圧アーム20に回転自在に支持されており、図示しない付勢手段によってそれぞれ軸13aに向けて付勢されている。各ローラ28,29,30は、対応する支軸28a,29a,30aに、プレスローラ13の略全幅にわたってそれぞれ所定の間隔をもって一体的に取り付けられている。用紙ガイド板31は、プレスローラ13の周面から各ローラ28,29,30の半径よりも小さな距離である所定距離だけ離れた位置に配設されており、その両端部を各印圧アーム20に固着されている。用紙ガイド板31は、軸13aを中心とした円周曲面となるように形成されており、用紙ガイド板31には、各ローラ28,29,30の周面をプレスローラ13の周面に当接させるための複数の開口部が形成されている。
【0041】
プレスローラ13の下方には、再給紙レジスト部材である串刺しローラ状(以下、「コロ状」という)の再給紙レジストローラ23が配設されている。再給紙レジストローラ23は、支軸23aに回転自在に支持されており、その支軸23aは再給紙レジスト支持部材としての揺動アーム32の一端部に取り付けられている。揺動アーム32は、略へ字形状をなし、各印圧アーム20間に固設された支軸32aにその曲折部を揺動自在に支持されている。揺動アーム32の配設位置は、再給紙レジストローラ23がプレスローラ13の幅方向の略中央部に位置し、かつ、自身が各ローラ30の配設位置の中間に位置するように定められている。揺動アーム32の他端部には、図示しないブラケットを介して一方の印圧アーム20に取り付けられたソレノイド33のプランジャ33aと、一端を一方の印圧アーム20に固着され揺動アーム32に対して支軸32aを中心に図2において反時計回り方向への回動付勢力を付与する引張ばね34の他端とが取り付けられている。この構成により、ソレノイド33へ通電されてこれが作動すると、再給紙レジストローラ23はその周面を所定の圧接力でプレスローラ13の周面に圧接する図2に実線で示す圧接位置を占め、ソレノイド33への通電が遮断されこの作動が解除されると、引張ばね34の付勢力によって再給紙レジストローラ23はその周面がプレスローラ13の周面から離間する図2に二点鎖線で示す非印刷位置を占める。上記構成のとおり、揺動アーム32、支軸32a、ソレノイド33および引張ばね34によって再給紙レジスト接離手段としての再給紙レジスト接離機構40が構成されている。
【0042】
再給紙レジストローラ23の上方近傍には、再給紙位置決め部材24が配設されている。再給紙位置決め部材24は、断面L字形状をなす板材からなり、その幅はプレスローラ13の幅と略同じとなるように形成されている。再給紙位置決め部材24は、そのストッパ部24aが上方を向く態様で両端部を各印圧アーム20に固着されている。再給紙位置決め部材24には、再給紙レジストローラ23の揺動時に衝突しないための図示しない切欠部(逃げ)が形成されている。
【0043】
プレスローラ13の下方であって再給紙位置決め部材24の左方には、ベルト式の吸引搬送装置とも呼ばれる再給紙搬送手段25が配設されている。再給紙搬送手段25は、搬送部材本体35、再給紙トレイ8、駆動ローラ36、従動ローラ37、無端ベルト38、吸引ファン39等を有している。
【0044】
搬送部材本体35は、その上面が開放され、その幅が各印圧アーム20間の間隔よりも若干小さくなるように形成された筐体をなしている。搬送部材本体35は、用紙搬送方向Xa上流側および下流側の両側面に図示しない軸受を有しており、これらの図示しない軸受は、駆動軸36aおよび従動軸37aをそれぞれ回転自在に支持している。駆動軸36aは、その両端部が搬送部材本体35の両側面を貫通しており、貫通した両端部は印刷装置本体11に設けられた図示しない軸受部材によって回転自在に支持されている。また、駆動軸36aの一端には、図示しない駆動ギヤが取り付けられている。駆動軸36aは、印刷装置本体11に設けられた搬送部材駆動モータ122(図10参照)によって回転駆動される。従動軸37aは、その両端部が搬送部材本体35の両側面を貫通しないように構成されている。搬送部材本体35における用紙搬送方向Xa上流側端部の両側面外側には、ボス35aがそれぞれ一体的に設けられており、各ボス35aは各印圧アーム20に形成された図示しない長孔にそれぞれ嵌合されている。この構成により、搬送部材本体35は、後述する印圧範囲可変手段55によってプレスローラ13が印刷ドラム12に対して接離される際に、各印圧アーム20の揺動に伴って駆動軸36aを中心とした揺動が可能となっている。
【0045】
複数の駆動ローラ36は、コロ状をなし、それぞれ駆動軸36aに一体的に取り付けられており、各駆動ローラ36間にはそれぞれ所定の間隔が設けられている。複数の従動ローラ37は、駆動ローラ36と同形状であり、各駆動ローラ36と同間隔でそれぞれ従動軸37aに一体的に取り付けられている。各駆動ローラ36とこれに対応した各従動ローラ37との間には、図示しない複数の穴部を有する無端ベルト38が所定の張力で掛け渡されている。無端ベルト38は、ゴム等の摩擦抵抗部材からなり、搬送部材駆動モータ122によって駆動軸36aが回転駆動されることにより図2に矢印で示す方向に移動される。
【0046】
搬送部材本体35の下面には、電動モータを内蔵した吸引ファン39が一体的に取り付けられており、搬送部材本体35の上面には、再給紙トレイ8が一体的に取り付けられている。再給紙トレイ8は、印刷部2においてその表面に印刷画像を形成された表面印刷済み用紙を一時的に貯容する再給紙貯容手段としての機能を有する。再給紙トレイ8には、各無端ベルト38を用紙搬送面に臨ませるための図示しない複数の開口部が形成されており、その用紙搬送方向Xa下流側端部には搬送される表面印刷済み用紙(図示せず)を受け止めるためのエンドフェンス8aが一体的に形成されている。搬送部材本体35の下面は、吸引ファン39の取付面となっており、この取付面には図示しない穴部が設けられている。これにより、吸引ファン39が作動することで筐体である搬送部材本体35の内部に負圧を発生させ、移動する各無端ベルト38の上面に上記表面印刷済み用紙を吸引させる。吸引ファン39の吸引力および無端ベルト38の摩擦抵抗力は、上記表面印刷済み用紙の先端が再給紙位置決め部材24のストッパ部24aに当接した際に、上記表面印刷済み用紙と各無端ベルト38との間で滑りが発生する程度の強さにそれぞれ設定されている。換言すれば、上記吸引力および上記摩擦抵抗力により過大な搬送力が生じると、上記表面印刷済み用紙の先端がストッパ部24aに当接した際に、上記表面印刷済み用紙の腰の強さに打ち勝って、その表面印刷済み用紙を座屈させたり撓みを発生させたりするので、これらの問題を生じない程度に上記吸引力および上記摩擦抵抗力がそれぞれ設定されている。
【0047】
上述した構成のとおり、再給紙案内部材22、再給紙レジストローラ23、再給紙位置決め部材24、および再給紙搬送手段25によって、再給紙トレイ8に貯容された上記表面印刷済み用紙を反転させて印刷部2に向けて再給紙する再給紙手段9が構成されている。
【0048】
プレスローラ13の近傍であって再給紙搬送手段25の上方に位置する部位には、プレスローラ13の周面をクリーニングするクリーニングローラ26が配設されている。クリーニングローラ26は、プレスローラ13の幅と略同じ幅を有し、少なくともその表面が和紙やスポンジ等の吸湿性の高い材質によって構成されており、その中心に軸26aを一体的に有している。クリーニングローラ26は、軸26aを各印圧アーム20に形成された図示しない長孔に嵌合されることで回転自在に支持されており、上記長孔内に設けられた図示しない付勢手段によって常にプレスローラ13に向けて付勢され、その周面をプレスローラ13の周面に所定の圧接力で常時圧接されている。クリーニングローラ26は、一方の印圧アーム20に設けられた図示しないクリーニングローラ駆動手段によって、プレスローラ13の回転時においてプレスローラ13と同方向に、プレスローラ13の周速度の10分の1程度の周速度で回転駆動される。
【0049】
クリーニングローラ26の左上方には、板材からなるガイド板27が配設されている。ガイド板27は、その両端部を各印圧アーム20に固設されており、プレスローラ13によって印刷ドラム12に圧接された用紙Pがクリーニングローラ26に触れないように、かつ、再給紙トレイ8に向かうように案内する機能を有する。ガイド板27は、プレスローラ13およびクリーニングローラ26の周面に近接する位置に配設されている。
【0050】
図2および図3に示すように、各印圧アーム20においてプレスローラ13が支持された一端側と対向する他端側には、それぞれ回転自在なカムフォロア41が互いに外側を向く態様で配設されている。また、揺動軸21とカムフォロア41との略中央部の各印圧アーム20には、その一端を印刷装置本体11に固着された印圧ばね42の他端がそれぞれ取り付けられている。これにより、各印圧アーム20は、揺動軸21を中心に図2および図3において時計回り方向への回動付勢力をそれぞれ付与されている。
【0051】
各カムフォロア41の左方近傍には、図6を参照して後述するように、多段カムとも呼ばれる圧解除カム組体43が配設されている。圧解除カム組体43は、カム軸44の一端部寄りの部分に一体的に取り付けられている。カム軸44の両端部は、筐体側板11a,11b間に軸受48aを介して回転可能かつ図6の左右方向に移動(摺動)可能に支持されている。カム軸44の一端には、駆動ギヤ45が一体的に取り付けられている。カム軸44の一端近傍には、図示しない軸受を介して筐体側板11bに回転自在に支持された支軸46が設けられている。支軸46の端部には、印刷ドラム12を回転駆動する印刷ドラム駆動手段121からの回転力を伝達され、常に駆動ギヤ45と噛み合う歯幅の長い伝達ギヤ47が一体的に取り付けられている。したがって、圧解除カム組体43は、伝達ギヤ47およびこれと噛み合っている駆動ギヤ45を介して、印刷ドラム駆動手段121からの回転力を伝達され、図2において時計回り方向に回転駆動される。 ここで、圧解除カム組体43を始めとしてプレスローラ13の印圧範囲を決定している機構周りの詳細構成については、説明の都合上から両面印刷装置1による両面印刷動作を概略的に述べた後で行うものとする。
【0052】
図1において、印刷ドラム12とプレスローラ13との接触位置の左方近傍であって用紙搬送経路上には、片面印刷済み用紙、表面印刷済み用紙または両面印刷済み用紙(以下、これらの何れか一つを単に「用紙P」というときがある)の搬送経路を切り換える切換部材10が配設されている。切換部材10は、印刷ドラム12およびプレスローラ13と略同じ幅を有する板材からなり、その用紙搬送方向Xa下流側端部を印刷装置本体11に回動自在に支持された支軸に固着されている。切換部材10は、図示しない引張ばねおよびソレノイド123(図10参照)に連結されており、ソレノイド123が作動することによって断面鋭角状に形成された用紙搬送方向Xa上流側端部を図1に実線で示す第1の位置と二点鎖線で示す第2の位置とに選択的に位置決めされる。
切換部材10は、第1の位置を占めたときにその先端がプレスローラ13の外周周面に近接して印刷ドラム12上のクランパ19と干渉しない位置に置かれ、第2の位置を占めたときにその先端が印刷ドラム12の周面に近接する位置に置かれる。印刷ドラム12とプレスローラ13との間を通過した用紙Pは、切換部材10が第1の位置を占めたときに排紙部6へと案内され、切換部材10が第2の位置を占めたときにガイド板27と印刷装置本体11に固着されたガイド板56との間を通って再給紙トレイ8へと案内される。
【0053】
印刷装置本体11の右上部には、製版部3が配設されている。製版部3は、マスタ保持部材57、プラテンローラ58、サーマルヘッド59、切断手段60、マスタストック部61、テンションローラ対62、反転ローラ対63等を有している。
【0054】
製版部3は、マスタ64に製版を行い、図7に示すように、印刷ドラム12の回転方向に沿って表面印刷用の第1の製版画像65A(以下、「表面製版画像65A」と言い替える)と裏面印刷用の第2の製版画像65B(以下、「裏面製版画像65B」と言い替える)とを有する分割製版済みマスタ65、あるいは図8に示すように、印刷ドラム12の回転方向に沿って表面製版画像65Aと裏面製版画像65Bとの2面分の画像量域を有する第3の製版画像66A(以下、「片面製版画像66A」と言い替える)を有する製版済みマスタ66を作製する機能・構成を有する。表面製版画像65Aは、分割製版済みマスタ65が印刷ドラム12の外周面上に巻装されたときに図1に示す表面領域12Aと対応する位置に形成され、裏面製版画像65Bは同裏面領域12Bと対応する位置に形成される。
【0055】
マスタ保持部材57は、印刷装置本体11の図示しない製版側板対にそれぞれ設けられており、熱可塑性樹脂フィルムと多孔性支持体とを貼り合わせたマスタ64を芯管64bの周りにロール状に巻かれて形成されたマスタロール64aの芯管64bの両端部を回転自在かつ着脱自在に支持する。
【0056】
プラテンローラ58は、マスタ保持部材57に隣るマスタ搬送方向の下流側に配置されていて、上記製版側板対に回転自在に支持されている。プラテンローラ58は、ギヤやベルト等の駆動力伝達手段を介してステッピングモータに連結され、上記ステッピングモータを含む製版駆動手段124(図10参照)によって回転駆動される。
サーマルヘッド59は、図示しない製版制御部およびサーマルヘッド駆動回路等を介して選択的に発熱駆動される多数の発熱素子を有している。サーマルヘッド59は、プラテンローラ58の下方に配置されていて、図示しないカム、このカムを回転駆動するカム駆動モータおよび付勢手段としてのばね(共に図示せず)等を具備した周知のサーマルヘッド接離手段(図示せず)によってプラテンローラ58に接離自在に構成されている。サーマルヘッド59は、上記サーマルヘッド接離手段上記付勢手段の付勢力によってその発熱素子面をプラテンローラ58に圧接されている。サーマルヘッド59は、マスタ64の熱可塑性樹脂フィルム面に接触しつつ発熱素子を選択的に発熱させ、マスタ64を穿孔製版する製版手段としての機能を有する。
【0057】
プラテンローラ58およびサーマルヘッド59の左方には、切断手段60が配設されている。切断手段60は、印刷装置本体11の図示しないフレームに固設された固定刃60aと、この固定刃60aに移動自在に支持された可動刃60bとを有する。切断手段60は、固定刃60aに対して可動刃60bが回転移動することによりマスタ64を切断する周知の構成である。
【0058】
切断手段60のマスタ搬送方向下流側下方には、マスタストック部61が配設されている。マスタストック部61は、分割製版済みマスタ65または製版済みマスタ66を一時的に貯容する空間を有し、複数の板部材によってその内部を仕切られており、その最奥部には図示しない吸引ファンが配設されている。この吸引ファンが作動することにより、略密閉された空間であるマスタストック部61の内部に負圧が発生し、製版して搬送されてきた分割製版済みマスタ65あるいは製版済みマスタ66はマスタストック部61の最奥部に向けて貯容される。
【0059】
切断手段60とマスタストック部61との間の部位には、テンションローラ対62が配設されている。テンションローラ対62は、それぞれ上記製版側板対に回転自在に支持された駆動ローラ62aと従動ローラ62bとからなり、従動ローラ62bが図示しない付勢手段によってその周面を駆動ローラ62aの周面に圧接されている。テンションローラ対62は、上記した製版駆動手段124により駆動ローラ62aが回転駆動されることによってマスタ64を挟持して搬送する。駆動ローラ62aは、その周速度がプラテンローラ58の周速度よりも若干速く設定されていると共に、その内部には図示しないトルクリミッタが設けられている。これにより、プラテンローラ58とテンションローラ対62との間において、マスタ64には所定の張力が付与される。
【0060】
マスタストック部61のマスタ搬送方向下流側には、反転ローラ対63が配設されている。反転ローラ対63は、それぞれ上記製版側板対に回転自在に支持された駆動ローラ63aと従動ローラ63bとからなる。反転ローラ対63は、製版駆動手段124によって回転駆動される駆動ローラ63aと図示しない付勢手段によってこれに圧接配置された従動ローラ63bとによってマスタ64を挟持して搬送する。駆動ローラ63aの内部には、図示しないワンウェイクラッチが設けられている。
【0061】
また、テンションローラ対62と反転ローラ対63との間の部位には、図示しない可動マスタガイド板が配設されている。この可動マスタガイド板は、図示しない支持部材に揺動自在に支持されており、図示しないソレノイドによってその上面がマスタ64の搬送路を構成する搬送位置と、マスタ64のマスタストック部61への進入を妨げない退避位置とに選択的に位置決めされる。
【0062】
製版部3の下方には、給紙部4が配設されている。給紙部4は、給紙台としての給紙トレイ67、給紙ローラ68、分離ローラ69、分離パッド70、レジストローラ対71等を有している。
給紙トレイ67は、多数の用紙Pを積載可能に構成されていて、印刷装置本体11に上下動自在に支持されており、昇降手段としての昇降モータを含む給紙駆動手段125(図10参照)によって上下動される。給紙トレイ67は、A3サイズの用紙Pを縦置き可能に構成されており、その上面には、図示しないレール部材によって用紙搬送方向Xaと直行する用紙幅方向に移動自在に支持された一対のサイドフェンス72が設けられている。また、給紙トレイ67の右端部側には、積載された用紙Pのサイズを検知する複数の用紙サイズ検知センサ73が設けられている。
【0063】
給紙トレイ67の上方には、表面に高摩擦抵抗部材を有する給紙ローラ68が配設されている。給紙ローラ68は印刷装置本体11に揺動自在に支持された図示しないブラケットに回転自在に支持されており、給紙トレイ67が図示しない昇降手段によって上昇されたときに所定の圧接力で給紙トレイ67上の最上位の用紙Pに圧接する。給紙ローラ68は、印刷ドラム駆動手段121からの回転駆動力をギヤやカム等の図示しない駆動力伝達手段によって伝達されることで、後述する分離ローラ69と共に印刷ドラム12と同期した所定のタイミングで回転駆動される。
【0064】
給紙ローラ68の左方には、表面にそれぞれ高摩擦抵抗部材を有する分離ローラ69と分離パッド70とが配設されている。分離ローラ69はタイミングベルト69aを介して給紙ローラ68に駆動連結されており、給紙ローラ68の回転駆動時にこれと同期して同方向に回転駆動される。分離パッド70は、付勢手段としての図示しない圧縮ばねの付勢力によって分離ローラ69に圧接されていて、分離ローラ69との協働作用により用紙Pを1枚ずつ分離搬送する機能を有する。給紙ローラ68の軸と給紙ローラ68側のタイミングベルト69aを掛け渡している図示しない給紙ローラプーリとの間、および分離ローラ69の軸と分離ローラ69側のタイミングベルト69aを掛け渡している図示しない分離ローラプーリとの間には、それぞれ図示しないワンウェイクラッチが介装されている。これにより、給紙ローラ68および分離ローラ69は、用紙Pを用紙搬送方向Xaに送り出す方向である図1において時計回り方向のみに回転自在になされている。
【0065】
分離ローラ69および分離パッド70の左方には、レジストローラ対71が配設されている。レジストローラ対71は、駆動ローラ71aと従動ローラ71bとからなり、印刷ドラム駆動手段121からの回転駆動力をギヤやカム等の図示しない駆動力伝達手段によって伝達されることで駆動ローラ71aが印刷ドラム12と同期した所定のタイミングで回転し、駆動ローラ71aに圧接された従動ローラ71bとによって、印刷部2における印刷ドラム12の外周面とプレスローラ13の外周面とが圧接して形成されるニップ部に向けて用紙Pを所定のタイミングで給送する。
【0066】
なお、給紙ローラ68および分離ローラ69の回転駆動は、印刷ドラム駆動手段121に限らず、これと独立して配設された例えばパルス入力で駆動するモータとしてのステッピングモータからなる給紙モータで行ってもよい。同様に、レジストローラ対71の回転駆動も、印刷ドラム駆動手段121に限らず、これと独立して配設された例えばパルス入力で駆動するモータとしてのステッピングモータからなるレジストモータで行ってもよい。この場合、特に、レジストローラ対71での用紙種類や環境条件等による用紙Pの滑りを考慮してレジストタイミングを調整したり、印刷ドラム12上の製版済みマスタや分割製版済みマスタの各製版画像に対する天地位置調整を行ったりすることが容易にできるという利点がある。
【0067】
印刷部2の左上方には、排版部5が配設されている。排版部5は、上排版部材74、下排版部材75、排版ボックス76、圧縮板77等を有している。
上排版部材74は、駆動ローラ78、従動ローラ79、無端ベルト80等を有している。駆動ローラ78は、排版モータを含む排版駆動手段126(図10参照)によって図1の時計回り方向に回転駆動されることにより無端ベルト80が図1中矢印方向に移動する。下排版部材75は、駆動ローラ81、従動ローラ82、無端ベルト83等を有している。駆動ローラ81は、駆動ローラ78を回転駆動する上記した排版駆動手段126の駆動力をギヤやベルト等の図示しない駆動力伝達手段によって伝達されることにより、図1の反時計回り方向に回転駆動されることにより、無端ベルト83が図1の矢印方向に移動する。また、下排版部材75は、排版駆動手段126に含まれる図示しない移動手段によって移動自在に設けられており、図に示す位置と従動ローラ82の外周面上に位置する無端ベルト83が印刷ドラム12の外周面に当接する位置とを選択的に占める。
【0068】
排版ボックス76は、その内部に使用済みマスタを貯容するものであり、印刷装置本体11に対して着脱自在に設けられている。圧縮板77は、上排版部材74と下排版部材75とによって運ばれた使用済みマスタを排版ボックス76の内部に押し込むように印刷装置本体11に上下動自在に支持されており、排版駆動手段126に含まれる昇降モータを含む図示しない昇降手段によって上下動される。
【0069】
排版部5の下方には、排紙部6が配設されている。排紙部6は、剥離爪84、排紙搬送手段85、排紙台としての排紙トレイ86等を有している。
剥離爪84は、印刷ドラム12の幅方向に複数配置され、印刷装置本体11に揺動自在に支持された支軸にそれぞれ一体的に取り付けられている。これら複数の剥離爪84は、図示しない爪揺動手段によって揺動され、その先端が印刷ドラム12の周面に近接する図1に示す位置と、クランパ19等の障害物を回避するためにその先端が印刷ドラム12の外周面から離間する位置とを選択的に占める。図示しない爪揺動手段は、印刷ドラム駆動手段121からの駆動力を図示しない駆動力伝達手段により伝達され、印刷ドラム12の回転と同期して剥離爪84を揺動させる。
【0070】
排紙搬送手段85は、剥離爪84の下方であって切換部材10の左方に配設されており、ベルト式の吸引搬送装置とも呼ばれている。排紙搬送手段85は、駆動ローラ87、従動ローラ88、無端ベルト89、吸引ファン90等を有している。
駆動ローラ87は、コロ状をなし、図示しないユニット側板に回転自在に支持された図示しない支軸に所定の間隔で複数取り付けられており、排紙モータを含む排紙駆動手段127(図10参照)によってそれぞれ一体的に回転駆動される。従動ローラ88も、同側板に回転自在に支持された図示しない支軸に各駆動ローラ87と等間隔で複数設けられており、各駆動ローラ87およびこれと対応する各従動ローラ88には、複数の孔を有する無端ベルト89がそれぞれ掛け渡されている。駆動ローラ87、従動ローラ88、無端ベルト89の下方には、ファンモータを内蔵した吸引ファン90が配設されている。排紙搬送手段85は、吸引ファン90の吸引力によって各無端ベルト89上に用紙Pを吸引し、各駆動ローラ87の回転によって用紙Pを図1の矢印方向に搬送する。
排紙トレイ86は、排紙搬送手段85によって搬送された用紙Pをその上面に積載するものであり、用紙搬送方向Xaに移動自在な1個のエンドフェンス91と、用紙幅方向に移動自在な一対のサイドフェンス92とを有している。
【0071】
印刷装置本体11の上部には、画像読取部7が配設されている。画像読取部7は、原稿を載置するコンタクトガラス93、コンタクトガラス93に対して接離自在に設けられた圧板94、原稿画像を走査して読み取る反射ミラー95,96,97,98および蛍光灯99、走査された原稿画像に係る反射光を集束するレンズ100、集束された原稿画像に係る反射光を光電変換処理するCCD(電荷結合素子)等の画像センサ101、原稿のサイズを検知する複数の原稿サイズ検知センサ102、読み取られた画像データを記憶する画像メモリ135等を有しており、原稿画像の読取動作はスキャナモータ等を含む読取駆動手段128(図10参照)の作動によって行われる。
【0072】
また、図1に示すように、印刷ドラム12を構成する図示しないフランジの外面には、ドグ133が取り付けられている。印刷ドラム12の周囲近傍には印刷装置本体11に取り付けられたホームポジションセンサ134が配設されている。ホームポジションセンサ134は、クランパ19がプレスローラ13と対向する位置を印刷ドラム12が占めたときにドグ133を検知して後述する制御手段200にその検知信号を送信する。
【0073】
図9は、両面印刷装置1の操作パネルを示している。操作パネル103は、図1における印刷装置本体11の上部前面に配置されている。操作パネル103は、その上面に製版スタートキー104、印刷スタートキー105、試し刷りキー106、連続キー107、クリア/ストップキー108、テンキー109、エンターキー110、プログラムキー111、モードクリアキー112、印刷速度設定キー113、4方向キー114、用紙サイズ設定キー115、両面印刷キー117、片面印刷キー118、7セグメントLEDからなる表示装置119、LCD(液晶表示装置)からなる表示装置120等を有している。
【0074】
製版スタートキー104は、両面印刷装置1に製版動作を行わせる際に押下され、製版スタートキー104が押下されると排版動作および原稿読取動作が行われた後に製版動作が行われ、その後、版付け動作が行われて両面印刷装置1は印刷待機状態となる。印刷スタートキー105は、両面印刷装置1に印刷動作を行わせる際に押下され、両面印刷装置1が印刷待機状態となり各種印刷条件が設定された後に印刷スタートキー105が押下されることにより印刷動作が行われる。試し刷りキー106は、両面印刷装置1に試し刷りを行わせる際に押下され、各種条件が設定された後に試し刷りキー106が押下されることにより1枚だけ印刷が行われる。連続キー107は、製版動作と印刷動作とを連続して行う際に製版スタートキー104の押下前に押下され、連続キー107の押下後、印刷条件が入力された後に製版スタートキー104が押下されると、排版動作、原稿読取動作、製版動作に引き続いて印刷動作が行われる。
【0075】
クリア/ストップキー108は、両面印刷装置1の動作を停止させる際あるいは置数のクリア時に押下される。テンキー109は、数値入力等に用いられる。エンターキー110は、各種設定時に数値等を設定する際に、プログラムキー111はよく行う操作を登録したりそれを呼び出したりする際にそれぞれ押下され、モードクリアキー112は、各種のモードをクリアして初期状態に戻す際に押下される。
印刷速度設定キー113は、印刷動作に先立って印刷速度を設定する際に押下され、濃いめの画像を得たい場合あるいは雰囲気温度が低い場合等には印刷速度を遅く、薄めの画像を得たい場合あるいは雰囲気温度が高い場合等には印刷速度を速く設定する。4方向キー114は、上キー114a、下キー114b、左キー114c、右キー114dを有しており、画像編集時に画像位置を調整する場合あるいは各種設定時に数値や項目等を選択する場合等に押下される。
用紙サイズ設定キー115は用紙サイズを任意で入力する際に押下され、用紙サイズ設定キー115で入力された用紙サイズは用紙サイズ検知センサ73によって検知された用紙サイズに優先される。
【0076】
両面印刷キー117は、両面印刷装置1に両面印刷動作を行わせる際に製版スタートキー104の押下前に押下され、両面印刷キー117が押下されるとその近傍に配置されたLED117aが点灯して両面印刷モード設定状態であることが表示される。片面印刷キー118も、両面印刷キー117と同様に両面印刷装置1に片面印刷動作を行わせる際にスタートキー104の押下前に押下され、片面印刷キー118が押下されるとその近傍に配置されたLED118aが点灯して片面印刷モード設定状態であることが表示される。両面印刷装置1では、図示しない電源スイッチオン後の初期状態時においてLED118aが点灯しており、片面印刷モード設定状態となっている。
【0077】
7セグメントLEDからなる表示装置119は、主に印刷枚数等の数字を表示する。表示装置120は、階層表示構造となっており、その下方に設けられた選択設定キー120a,120b,120c,120dを選択して押下することにより、変倍や位置調整等の様々なモードへの変更および各モードでの設定が可能に構成されている。また、表示装置120には、図示したように「製版・プリントできます」のような両面印刷装置1の状態が表示される他、製版あるいは排版ジャム、給紙あるいは排紙ジャム等の警告、印刷用紙、マスタ、インキ等のサプライの供給指示等も表示される。
【0078】
図10は、両面印刷装置1の制御構成をブロック図的に示している。同図において、制御手段200は、内部にCPU(中央演算処理装置)201、ROM(読み出し専用記憶装置)202、RAM(読み書き可能な記憶装置)203および図示しないタイマ等を備え、それらが図示しない信号バスによって接続された構成を有するマイクロコンピュータを具備している。制御装置200は、図1に示すように、印刷装置本体11内の制御基板配置部に設けられている。
【0079】
CPU201は、操作パネル103からの各種信号および印刷装置本体11に設けられた各種センサからの検知信号およびROM202から呼び出された動作プログラムに基づいて、印刷部2、製版部3、給紙部4、排版部5、排紙部6、画像読取部7に設けられた各駆動手段、再給紙手段9に設けられた再給紙レジスト接離機構40および搬送部材駆動モータ122、切換部材10を作動させるソレノイド123の作動等を制御し、両面印刷装置1全体の動作を制御する。ROM202には、両面印刷装置1全体の動作プログラムが記憶されており、この動作プログラムはCPU201によって適宜呼び出される。RAM203は、CPU201の計算結果を一時的に記憶する機能、操作パネル103上の各種キーおよび各種センサから設定および入力されたデータ信号およびオン・オフ信号を随時記憶する機能等を有している。また制御手段200は、ホームポジションセンサ134からのホームポジション信号と、印刷ドラム駆動手段121に設けられた図示しないエンコーダーからの信号とに基づいて、印刷ドラム12の回転位置の割り出し等の把握も行っている。
【0080】
まず、上述した従来の両面印刷装置の問題点をさらに具体的かつ明確にする上から、両面印刷装置1を使用するに当たっての、版付け印刷を除く通常の両面印刷動作の概要を述べておく。
後述するように、操作パネル103上の両面印刷キー117等を押下して両面印刷モードを設定し、2枚の原稿の画像読取動作を行い、これと並行して排版動作および製版動作が行われことにより、図7に示したように印刷ドラム12の回転方向に沿ってマスタ64には表面製版画像65Aと裏面製版画像65Bとが形成され、その分割製版済みマスタ65の印刷ドラム12への巻装が行われた後、版付け動作が行われる。後述するように分割製版済みマスタ65に形成された表面製版画像65Aに対応した版付け印刷動作および同裏面製版画像65Bに対応した版付け印刷動作後や試し刷り印刷動作後において、またはこれらの動作を行うことなく、以下のような通常の両面印刷をするための動作が行われる。
なお、図1において、符号P1,P2,P3は、両面印刷時において給送ないしは排出される過程の用紙Pの状態を表していると共に、用紙Pの給紙・排紙順番に対応した1枚目、2枚目、3枚目を表している。本実施形態では、給紙トレイ67に積載されている用紙Pのサイズは、1版のマスタ64に形成された表面製版画像65Aと裏面製版画像65Bとの各画像領域に適用した用紙サイズとなっている。つまり、片面印刷時における印刷ドラム12で印刷可能な最大用紙サイズがA3サイズである場合、両面印刷時の場合にはその最大用紙サイズはおおよそA4サイズとなり、最大通紙用紙もA4サイズとなる。通紙方向は、短手方向すなわちA4横置きで通紙することになる。
【0081】
後述するように、給紙ローラ68、分離ローラ69、各駆動ローラ36,87、各吸引ファン39,90がそれぞれ駆動されると共に、印刷ドラム12が設定された印刷速度で図1の時計回り方向に回転駆動されると、給紙ローラ68により所定のタイミングで給紙トレイ67上から用紙Pが送り出され、さらに分離ローラ69と分離パッド70との協働作用により用紙Pが1枚ずつに分離されてレジストローラ対71に向けて給送され、その1枚目の用紙P1の先端がレジストローラ対71のニップ部に突き当て停止される。この状態にあるのが図1中の用紙P3で示されている。
【0082】
印刷ドラム12のクランパ19が切換部材10と対応する位置を通過すると、ソレノイド123が作動して切換部材10が二点鎖線で示す第2の位置に位置決めされる。この後、印刷ドラム12上に巻装された分割製版済みマスタ65における表面製版画像65Aに対応した表面領域12A先端部がプレスローラ13と対応する位置に到達する所定のタイミングで駆動ローラ71aが回転駆動されることで、用紙P3の先端が印刷ドラム12とプレスローラ13との間に向けて給送され、所定のタイミングで、プレスローラ13が揺動・上昇して印圧ばね42の付勢力によってその周面を印刷ドラム12の外周面に圧接させる。
これにより、印刷ドラム12の外周面とプレスローラ13の外周面との間に印刷ニップ部が形成されることとなり、プレスローラ13と1枚目の用紙P1と印刷ドラム12上の分割製版済みマスタ65の表面製版画像65Aに対応した表面領域12A部分と印刷ドラム12とが圧接し、インキローラ16により印刷ドラム12の内周面に供給されたインキが、印刷ドラム12の開口部より滲出し、分割製版済みマスタ65の多孔性支持体および表面製版画像65Aの穿孔部を通過して1枚目の用紙P1に転移され、分割製版済みマスタ65のうちの表面製版画像65Aに対応した印刷が行われる。
【0083】
表面製版画像65Aに対応した表面印刷画像(以下、単に「表面画像」という)をその表面に印刷された1枚目の表面印刷済み用紙P1は、切換部材10の先端によってその先端部から印刷ドラム12外周面上の分割製版済みマスタ65から剥離されつつ、第2の位置を占めた切換部材10によって再給紙トレイ8へと案内・排出される。
【0084】
切換部材10により下方へと導かれた1枚目の表面印刷済み用紙P1は、各ガイド板27,56間を通って案内されつつその先端をエンドフェンス8aに当接させ、再給紙トレイ8上に着地・載置される。再給紙トレイ8上に搬送された1枚目の表面印刷済み用紙P1は、吸引ファン39の吸引力によって無端ベルト38に保持されつつ図1中矢印(右)方向に搬送され、その先端(表面製版画像65Aの印刷時における後端)をストッパ部24aに突き当たり停止させ位置決めされた状態で待機させる。このとき、吸引ファン39の吸引力は上記したように比較的弱いので過大な搬送力による用紙座屈や撓みを発生させることなく、1枚目の表面印刷済み用紙P1と無端ベルト38との間で滑りが発生して、1枚目の表面印刷済み用紙P1はその先端をストッパ部24aに当接させた状態で停留される。図1中の用紙P2は、その先端がストッパ部24aに突き当たっている1枚目の表面印刷済み用紙P1の停留状態を表している。
【0085】
1枚目の表面印刷済み用紙P1は、図1中の用紙P2で表されている状態で待機しており、引き続いて設定された印刷速度で回転している印刷ドラム12の回転位置に対して所定のタイミング、すなわち1枚目の表面印刷済み用紙P1は印刷ニップ部に給送された2枚目の用紙P2(図3における印刷ニップ部に挟持された用紙P2参照)の後端に続けて同印刷ニップ部に送り込まれるタイミングで再給紙される。もちろん、給紙部4から給紙された2枚目の用紙Pの後端と1枚目の表面印刷済み用紙P1の先端との間には、適正な隙間間隔が設けられるように各搬送距離や各部材の寸法等に応じて給送タイミング(レジストタイミング)がそれぞれ設定される。
【0086】
2枚目の用紙P2がレジストローラ対71によって給送された後、1枚目の用紙Pのときと同様にしてその表面に分割製版済みマスタ65のうちの表面製版画像65Aに対応した印刷が行われる。分割製版済みマスタ65の印刷ドラム12回転方向における裏面製版画像65Bの画像領域先端部がプレスローラ13と対応する位置に到達するよりもやや早いタイミングである所定のタイミングでソレノイド33が作動され、図3に示す揺動アーム32が支軸32aを中心に同図3における時計回り方向に揺動される。これにより再給紙レジストローラ23が離間位置から圧接位置に揺動されることで、その先端をストッパ部24aに当接させた状態で停留されていた1枚目の表面印刷済み用紙P1が、印刷ドラム12と圧接して従動回転しているプレスローラ13の周面に押し上げられて当接する。
【0087】
これにより、プレスローラ13の外周周面に当接された1枚目の表面印刷済み用紙P1は、ストッパ部24aから外れ、印刷ドラム12の周速度と同じ周速度で従動回転駆動されているプレスローラ13の回転力によってその回転方向下流側へと搬送力を付与されて搬送され、用紙ガイド板31および各ローラ28,29,30によってプレスローラ13の外周周面に密着した状態で印刷ドラム12との当接部に向けて搬送される。このとき、1枚目の表面印刷済み用紙P1の表面には表面製版画像65Aに応じた画像が印刷されているが、再給紙案内部材22の働きによって用紙P1がプレスローラ13の外周周面に密着されているので、一度プレスローラ13の外周周面に接触した用紙P1がずれることがなく、擦れ汚れあるいは画線の太りといった不具合の発生が防止される。そして、2枚目の表面印刷済み用紙P2の後端および中間領域がプレスローラ13と対応する位置を通過した後、印刷ドラム12の裏面領域12Bの先端部がプレスローラ13と対応する位置に到達するタイミングで、1枚目の表面印刷済み用紙P1は、再給紙手段9、プレスローラ13、再給紙レジストローラ23、各ローラ28,29,30、用紙ガイド板31で形成される再給紙反転路を搬送されることによって反転されている。こうして1枚目の表面印刷済み用紙P1は、反転された状態で、すなわち1枚目の表面印刷済み用紙P1の印刷画像形成面が裏面(下面)に、その表面(上面)が未印刷面となった状態で、印刷ドラム12とプレスローラ13との印刷ニップ部に送り込まれる。
【0088】
これにより、プレスローラ13と1枚目の表面印刷済み用紙P1の表面と分割製版済みマスタ65の裏面製版画像65B形成部と印刷ドラム12とが圧接し、インキローラ16によって印刷ドラム12の内周面に供給されたインキが、印刷ドラム12の開口部、裏面製版画像65Bの穿孔部を介して1枚目の表面印刷済み用紙P1の表面に転移され、分割製版済みマスタ65のうちの裏面製版画像65Bに対応した印刷、すなわち裏面印刷画像(以下、単に「裏面画像」という)が形成されて両面印刷が行われる。
【0089】
表面製版画像65Aに対応した表面画像を裏面に、裏面製版画像65Bに対応した裏面画像を表面にそれぞれ印刷された1枚目の両面印刷済み用紙P1は、図1に実線で示す第1の位置を占めた切換部材10によって排紙搬送手段85へと案内され、剥離爪84によってその先端部から印刷ドラム12外周面上の分割製版済みマスタ65より剥離される。剥離された1枚目の両面印刷済み用紙P1は排紙搬送手段85において図1中矢印方向に移動回転中の無端ベルト89上に吸着・保持されて搬送されて、排紙トレイ86上に排出される。図1中、符号P1で示す1枚目の両面印刷済み用紙P1は無端ベルト89上に吸着・保持されて搬送されている状態を、符号P1′で示す1枚目の両面印刷済み用紙P1′は排紙トレイ86上に排出・積載されている状態をそれぞれ表している。
【0090】
さて、印刷最初の1枚目の印刷について考えてみる。以下、印刷の最終枚目を含めて、ここにいう「印刷」とは、例えばテンキー109等で設定された所定枚数としての印刷枚数について実行される一つのジョブ(例えば所定枚数としての印刷枚数N枚とする)としての印刷を意味する。
【0091】
最初の1枚目(N=1枚目)の用紙P1が上述したように給紙部4から給紙搬送されて、印刷ドラム12上の図7に示す分割製版済みマスタ65における表面製版画像65Aの巻装部分である表面領域12Aの部分に合わせてプレスローラ13によって印圧が加えられて、最初の1枚目の用紙P1が印刷ドラム12の表面領域12Aの部分に押し付けられる。そして、この表面印刷済み用紙P1は再給紙トレイ8に向けて搬送される。
しかし、最初の1枚目の印刷時点では、再給紙トレイ8上に表面印刷済み用紙P1は存在していないので、続けて印刷ドラム12の裏面領域12Bの部分に押し付けられるべく再給紙される用紙Pがないことになる。そのままプレスローラ13の圧接による印圧が加わると、印刷ドラム12の表面領域12Aの部分とプレスローラ13との間に用紙Pが存在しないので、印刷ドラム12の表面領域12A上の表面製版画像65Aに対応してプレスローラ13の外周表面に印刷されることになって、そのプレスローラ13の外周表面がインキで汚れて、次の印刷においてプレスローラ13の外周表面に転移(転写)・付着したインキがその印刷で使用される用紙Pに再転移(再転写)してその用紙Pをインキで汚してしまうという問題点が発生してしまう。
【0092】
次に、印刷の最終枚目の印刷について考えてみる。
最終枚目(N枚目)の用紙PNが、上述したと同様に、給紙部4から給紙搬送されて、印刷ドラム12上の表面領域12Aに合わせてプレスローラ13によって印圧が加えられて、最終枚目の用紙PNが印刷ドラム12の表面領域12Aの部分に押し付けられる。そして、この表面印刷済み用紙PNは再給紙トレイ8に向けて搬送される。さらに、再給紙トレイ8上にある表面印刷済み用紙PNが再給紙されて、続けて印刷ドラム12の裏面領域12Bの部分に押し付けられるべく搬送されて両面印刷されて排出される。
しかし、この後、給紙部4から給紙される用紙Pはないが、N枚目の表面印刷済み用紙PNは再給紙トレイ8上に残っているので、これを再給紙してその裏面側に裏面製版画像65Bに対応した印刷をする必要がある。そのまま印圧が加わると、印刷ドラム12の表面領域12A上の表面製版画像65Aとプレスローラ13との間に用紙Pが存在しないので、印刷ドラム12の表面領域12A上の表面製版画像65Aに対応してプレスローラ13の外周表面に印刷されることになって、プレスローラ13の外周表面がインキで汚れて、次の印刷においてプレスローラ13の外周表面に転移(転写)・付着したインキが次の所定枚数の印刷(異なるジョブの印刷を意味する)で使用される用紙Pに再転移(再転写)してその次の印刷で用いられる用紙Pをインキで汚してしまうという問題点が発生してしまう。
【0093】
上述した問題点の対策として、プレスローラ13の外周表面を常時クリーニングするという方法もあるが、装置が大げさになると共に、クリーニング性能の維持やこれに関連する部材の寿命等の問題点が新たに生じてしまう。したがって、プレスローラ13による印圧を選択的に付与しないほうが望ましい。そのためには、印圧範囲を決定している手段・機構において、印刷最初の1枚目およびその最終枚目で、印圧範囲を通常の両面印刷時と切り換える工程および構成が必要になる。そこで、本発明の実施形態では、印圧範囲を決定する圧解除カムを選択的に切り換える方式を採用する。
【0094】
次に、図2ないし図6を参照して、プレスローラ13の印圧範囲を決定している手段・機構周りの詳細構成について説明する。
図2および図3において、各印圧アーム20の他端部近傍には、プレスローラ13が非印刷位置を占めた状態で各印圧アーム20の揺動を禁止してプレスローラ13を非印刷位置に保持する、プレスローラ係止用の係止手段180が配設されている。
係止手段180は、その一端部が上記筐体側板に所定角度回動自在に支持された支軸182に固着されたフック部材183と、フック部材183の他端部側にピンを介して連結されたプランジャ181aを備えたプル型のソレノイド181と、その一端が支軸182と上記ピンとの間のフック部材183に係止され、他端が上記筐体側板側に係止された付勢手段としての引張ばね184とを有している。フック部材183の他端部には、印圧アーム20の他端部に形成された切欠部20aと選択的に係合するフック部183aが形成されている。引張ばね184は、フック部材183のフック部183aを支軸182を中心として常に時計回り方向、すなわち常に印圧アーム20の切欠部20aに係合する向きに揺動・付勢している。
【0095】
ソレノイド181のオン・オフの切り換え制御によって各印圧アーム20を保持する状態と保持を解除する状態とが選択的に切り換えられる。図3に示すように、ソレノイド181に通電されてこれがオンされると、フック部183aが反時計回り・下向きに揺動して印圧アーム20の切欠部20aとの係合状態が外れて、各印圧アーム20は揺動軸21を中心として時計回り・上向きに揺動してプレスローラ13による印圧を付与される。ソレノイド181は、カムフォロア41が圧解除カム組体43を構成する各圧解除カム43a,43b,43cの何れかの大径部と当接した状態で作動される(図2参照)。
【0096】
圧解除カム組体43は、上記したようにカム軸44の一端部寄りの部分に一体的に取り付けられていて、印刷ドラム12の回転と同期して回転駆動される伝達ギヤ47と常に噛み合っている駆動ギヤ45を介して、印刷ドラム駆動手段121からの回転力を伝達され、図2ないし図4において時計回り方向に回転駆動される。
この実施形態の例では、各圧解除カム43a,43b,43cの山の部分、すなわち各々のカム43a,43b,43cの何れか一つの大径部が各印圧ばね42の付勢力に抗してカムフォロア41と圧接することにより、プレスローラ13による印圧をオフ・解除するようになっていて、プレスローラ13は図2に示す非印刷位置を占める。各圧解除カム43a,43b,43cの何れか一つの大径部がカムフォロア41との圧接を解除され、かつ、各印圧ばね42の付勢力によってプレスローラ13の外周面が印刷ドラム12の外周面に圧接すると、プレスローラ13は図3に示す印刷位置を占める。
【0097】
圧解除カム組体43は、図4および図6に示すように、3つのカム、すなわち第1のカムとしての圧解除カム43b、第2のカムとしての圧解除カム43cおよび第3のカムとしての圧解除カム43aを有しており、多段カムとも呼ばれる。各圧解除カム43a,43b,43cは、大径部および小径部を備えた板状のカムからなり、図6中の左右方向に移動自在かつ回転自在なカム軸44にそれぞれ後述するような特有の位相関係をもって取り付け固定されている。図2および図3には、図6に示されている中央の圧解除カム43aのみが図示されており、他の2つの圧解除カム43a,43cの図示は省略されている。図2および図3では、図面の簡明化を図るため圧解除カム43a部の断面ハッチング表示を省略しており、また同趣旨から図4におけるカム軸44および各圧解除カム43a,43c部の断面ハッチング表示を省略している。
【0098】
圧解除カム43aは、基準となる通常印刷時用(片面印刷時用でもある)として使用される。圧解除カム43aは、図4に示すように、回転方向に見て、▲1▼の部分と▲2▼の部分と▲3▼の部分とからなる。▲1▼の部分は、表面印刷時の印圧オンの部分であり、▲2▼の部分は、裏面印刷時の印圧オンの部分であり、▲3▼の部分は、印刷ドラム12外周部のクランパ19突出部分を逃げるための印圧オフの部分である。
【0099】
図4において、圧解除カム43aの隣に描かれている圧解除カム43bは、印刷最初の1枚目印刷時用として使用される。圧解除カム43bは、回転方向に見て、▲1▼の部分と▲2▼の部分と▲3▼の部分とからなる。▲1▼の部分は、表面印刷時の印圧オンの部分であり、▲2▼の部分は、裏面印刷がないので印圧オフの部分であり、▲3▼の部分は、印刷ドラム12外周部のクランパ19突出部分を逃げるための印圧オフの部分である。
【0100】
図4において、圧解除カム43bの左隣に描かれている圧解除カム43cは、印刷最後の最終枚目(印刷最後の1枚目)印刷時用として使用される。圧解除カム43cは、回転方向に見て、▲1▼の部分と▲2▼の部分と▲3▼の部分とからなる。▲1▼の部分は、表面印刷がないので印圧オフの部分であり、▲2▼の部分は、裏面印刷時の印圧オンの部分であり、▲3▼の部分は、印刷ドラム12外周部のクランパ19突出部分を逃げるための印圧オフの部分である。
【0101】
図5は、プレスローラ13の印圧範囲を分かりやすくこれを展開して図示したものである。図5において、分割製版済みマスタ65には、表面製版画像65Aの領域部分と裏面製版画像65Bの領域部分とが形成されていて、それらの間には未製版空白の中間未製版領域65Sを設けてある。ここで、印刷ドラム12のクランパ19に挟持・固定される先端余白部65aとも呼ばれる分割製版済みマスタ65の先頭側は左端側である。
【0102】
片面印刷を含む通常印刷時用の印圧範囲パターンは、IIIのようになっていて、▲1▼も▲2▼も印圧オンになるように、すなわち表面製版画像65Aの領域部分と裏面製版画像65Bの領域部分とが連続して印刷されるように、圧解除カム43aが選択される。
【0103】
印刷開始最初の1枚目のときには、印圧範囲パターンIのようになって、▲1▼は印圧オンになるが▲2▼は印圧オフになるように、すなわち表面製版画像65Aの領域部分のみが印刷されるように、圧解除カム43bが選択される。
【0104】
印刷最後の最終枚目(印刷最後の1枚目)のときには、印圧範囲パターンIIのようになって、▲1▼はオフになるが▲2▼は印圧オンになるように、すなわち裏面製版画像65Bの領域部分のみが印刷されるように、圧解除カム43cが選択される。
【0105】
上述したことを図1および図5を参照してまとめると、次のようになる。すなわち、印刷ドラム12上の分割製版済みマスタ65における表面製版画像65Aに対応した表面領域12Aのみに印圧を付与する第1の印圧範囲パターンとしての印圧範囲パターンIと、印刷ドラム12上の分割製版済みマスタ65における裏面製版画像65Bに対応した裏面領域12Bのみに印圧を付与する第2の印圧範囲パターンとしての印圧範囲パターンIIと、表面領域12Aから続けて裏面領域12Bに亘って印圧を付与する第3の印圧範囲パターンとしての印圧範囲パターンIIIとの少なくとも3つの印圧範囲パターンのうちの一つを選択的に切り換え可能になっている。これら3つの印圧範囲パターンのうちの一つを選択的に切り換える印圧範囲可変手段に係る機構が、図6に示されている。
【0106】
上述したことから、各圧解除カム43a,43b,43cの小径部の形成範囲は、次のようになっている。プレスローラ13と印刷ドラム12との接触範囲が、圧解除カム43aでは図1に示す表面領域12Aと中間領域12Sと裏面領域12Bとを全て合わせた範囲となるように、圧解除カム43bでは表面領域12Aと同じ範囲となるように、圧解除カム43cでは表面領域12Aの下流側端より中間領域12Sと裏面領域12Bとを合わせた範囲となるようにそれぞれ形成されている。また、各圧解除カム43a,43b,43cのカム幅は、印圧アーム20の板厚よりも十分に大きくなるように設定されている。
【0107】
印圧範囲可変手段55は、図6に示すように、各圧解除カム43a,43b,43cを重なる態様で一体的に結合された圧解除カム組体43と、この圧解除カム組体43を固着し図6の左右方向に移動(摺動)可能かつ時計回り方向に回転可能に支持されたカム軸44と、カム軸44の略中央部に取り付け固定された樹脂製の回転円板49と、この回転円板49の両側面を挟み付け転動自在なコロ50a,50bと、これらのコロ50a,50bを転動自在に支持する軸を固着して図6の左右方向に移動可能であり、その下部にラック歯51aを形成され、かつ、他端に下向きの突起51bを形成されたスライド部材51と、スライド部材51のラック歯51aと常に噛み合うピニオンギヤ52を出力軸に取り付け固定された圧解除カム切換用モータ53(以下、単に「モータ53」という)と、圧解除カム組体43のホームポジションを検知するための、突起51bと選択的に係合するカムホームポジションセンサ54とから主に構成されている。
なお、印圧範囲可変手段55は、プレスローラ接離機構(押圧手段接離手段)とも呼ばれることがある。
【0108】
図6は、通常印刷時の状態を示しており、各印圧アームの20のカムフォロア41が圧解除カム組体43の圧解除カム43aと係合・当接している状態を示している。モータ53は、例えば正逆転可能なステッピングモータからなり、3つの圧解除カム43a,43b,43cのうちの何れか一つに切り換えるための印圧範囲切換駆動手段としての機能を有する。モータ53は、印刷装置本体11側に固設されている。
なお、モータ53に対して閉ループ制御を行うような場合には、上記したカムホームポジションセンサ54や突起51bは無くてもよいが、脱調時を考慮した場合有る方が好ましい。モータ53は、正逆転可能なDCモータ等の電動モータであってもよい。
【0109】
図3に示すように、各圧解除カム43a,43b,43cは、プレスローラ13が印刷位置を占めたときに各印圧ばね42の付勢力が精度良く作用して適正な印圧を付与するように、各圧解除カム43a,43b,43cの小径部とカムフォロア41とが接触しないように構成されている。図6における紙面の手前側および奥側には、スライド部材51を図において略平行に摺動すべくコロを介して案内する図示しない案内部材が配設されている。カムホームポジションセンサ54は、例えば発光素子および受光素子を具備した透過型フォトセンサであり、印刷装置本体11側に固設されている。回転円板49は、耐摩耗性が良好で摩擦係数の小さい潤滑性の樹脂として、例えばポリアセタール樹脂(POM)やポリアミド樹脂(ナイロン:商品名)等が好ましく用いられる。
【0110】
カム軸44上には、図6に示すように、印圧範囲パターンIIIに対応して設定された圧解除カム43a(第3のカム)を中心として、印圧範囲パターンIに対応して設定された圧解除カム43b(第1のカム)および印圧範囲パターンIIに対応して設定された圧解除カム43c(第2のカム)が、圧解除カム43a(第3のカム)の両側のカム軸44上にそれぞれ配置されている。
【0111】
上記したように、圧解除カム組体43、カムフォロア41および印圧ばね42を各印圧アーム20側にそれぞれ配設した方がプレスローラ13の均一な押圧力を得られることから好ましいが、それ程の均一な押圧力を望まなくてもよいのであればこれに限らず、例えば圧解除カム組体43、カムフォロア41および印圧ばね42を図2および図3に示されている紙面の奥側の印圧アーム20側にのみ配設してもよい。
【0112】
ここで、上述した印圧範囲可変手段55に関連して制御手段200が有する制御機能について、まとめておく。
第1に、制御手段200は、所定枚数N枚の用紙Pに連続的に両面印刷を行う場合に、印刷動作開始時に給紙部4から給送される最初の1枚目の用紙P1の表面には、印圧範囲パターンIで印刷を行うように、印刷動作終了直前時に再給紙トレイ8に排出される最後の1枚目の表面印刷済み用紙PNの裏面には、印圧範囲パターンIIで印刷を行うように、以外の用紙P2〜P(N−1)枚目には、印圧範囲パターンIIIで印刷を行うように、カムホームポジションセンサ54からの信号を参照しつつ、印圧範囲可変手段55のモータ53を制御する第1の制御手段としての機能を有する。
【0113】
第2に、制御手段200は、版付け印刷工程または試し刷り印刷工程においては、印圧範囲パターンIと印圧範囲パターンIIとの二つの印圧範囲パターンのみを用いて印刷を行うように、カムホームポジションセンサ54からの信号を参照しつつ、印圧範囲可変手段55のモータ53を制御する第2の制御手段としての機能を有する。
【0114】
上述の構成に基づき、本実施形態における両面印刷装置1の操作手順を含む動作について図11のフローチャートを参照しながら詳細に説明する。該フローチャートは、実施できる程度にその要部を記載したものであって、片面印刷モード設定時の片面印刷工程や細部のフローは省略されている。
【0115】
まず、片面印刷を行う場合を説明する。オペレータは給紙トレイ67上に印刷に使用される用紙Pを積載し、圧板94を開放してコンタクトガラス93上に印刷すべき原稿を載置した後、再び圧板94を閉じる。その後、操作パネル103上の各種キーによって製版条件を設定した後、片面印刷キー118を押下して片面印刷モードを設定して製版スタートキー104を押下する。
【0116】
オペレータは片面印刷モードであることをLED118aの点灯によって確認した後、製版スタートキー104を押下する(ステップS1参照)。製版スタートキー104が押下されると、用紙サイズ検知センサ73から用紙サイズ検知信号が、また原稿サイズ検知センサ102から原稿サイズ検知信号がそれぞれ制御手段200に送られ、信号を受けた制御手段200は各信号を比較する。このとき、用紙サイズと原稿サイズとが同じ場合は直ちに画像読取動作が行われ、用紙サイズと原稿サイズとが異なる場合には、制御手段200はその旨を表示装置120に表示してオペレータに注意を促す。用紙サイズと原稿サイズとが異なる場合に、制御手段200からの指令で自動的に拡大または縮小の変倍を行い、原稿サイズと画像サイズとを整合させるように構成してもよい。
【0117】
製版スタートキー104が押下されてスタート信号が生成され、これが制御手段200に入力されると、先ず、排版部5において、印刷ドラム12の外周面から使用済みマスタを剥離する排版動作が行われる。製版スタートキー104が押下されると印刷ドラム12が回転を開始し、印刷ドラム12が図1に示すホームポジションに達すると、ドグ133がホームポジションセンサ134に係合して検知され、ホームポジションセンサ134から制御手段200にホームポジション信号が送られる。ホームポジション信号を受けた制御手段200は、このホームポジションを基点として図示しないエンコーダが発するパルス数を計測し、印刷ドラム12の外周面上に巻装された使用済みマスタの先端が従動ローラ82の外周面上に位置する無端ベルト83と対応する所定の排版位置に達したと判断すると、印刷ドラム駆動手段121の作動を停止させる。
【0118】
印刷ドラム駆動手段121が停止されて印刷ドラム12が所定の排版位置で停止すると、印刷ドラム駆動手段121および排版駆動手段126が作動して各駆動ローラ78,81が回転駆動されると共に、下排版部材75が印刷ドラム12側に移動し、従動ローラ82の外周面上に位置する無端ベルト83が使用済みマスタと当接する。すると、印刷ドラム12の回転および無端ベルト83の移動によって印刷ドラム12の外周面上よりすくい上げられた使用済みマスタは、下排版部材75と上排版部材74とで挟持搬送されて印刷ドラム12の外周面より剥離される。剥離された使用済みマスタは排版ボックス76内に廃棄された後、圧縮板77によって圧縮される。
外周面上より使用済みマスタが全て剥離された後も印刷ドラム12は回転を継続し、クランパ19が右上方に位置する所定の給版待機位置まで回転して停止する。印刷ドラム12が給版待機位置で停止すると図示しない開閉手段が作動してクランパ19が開放され、両面印刷装置1は給版待機状態となる。
【0119】
上記排版動作と並行して、画像読取部7での原稿画像の読取動作が行われる。原稿画像の読み取りは、蛍光灯99によって照明された反射光を各反射ミラー95,96,97,98によって反射することにより行われ、読み取られた原稿画像に係る反射光はレンズ100で集束された後に画像センサ101に入射されて光電変換される。光電変換された電気信号は印刷装置本体11内の図示しないA/D(アナログ/デジタル)変換器に入力された後、画像メモリ135内に画像データ信号として格納される。
【0120】
排版動作および画像読取動作と一部並行して、製版部3では製版動作が行われる。プラテンローラ58、テンションローラ対62、反転ローラ対63がそれぞれ回転駆動されてマスタロール64aよりマスタ64が引き出される。このとき図示しない可動マスタガイド板は搬送位置に位置決めされている。マスタ64が引き出されてその画像形成領域がサーマルヘッド59の発熱素子と対応する位置に達すると、画像メモリ135内に格納されている画像データ信号が画像処理を施された後に呼び出され、上記サーマルヘッド駆動回路がサーマルヘッド59の各発熱素子を選択的に発熱させることにより、図8に示すようにマスタ64の熱可塑性樹脂フィルム面に片面製版画像66Aが形成される。マスタ64は製版されつつ搬送されその先端部が反転ローラ対63に挟持されると、図示しない可動マスタガイド板が退避位置に移動されると共に反転ローラ対63の回転が停止される。
【0121】
反転ローラ対63の回転停止後もプラテンローラ58およびテンションローラ対62は回転を継続しており、サーマルヘッド59によって製版された製版済みマスタ66はマスタストック部61内に貯容される。反転ローラ対63の停止時において、マスタストック部61に設けられた図示しない吸引ファンが作動されており、製版済みマスタ66は図示しない吸引ファンに吸引されることによってマスタストック部61内に整然と貯容されていく。
【0122】
上述の製版動作中、排版動作が完了して両面印刷装置1が給版待機状態となると、反転ローラ対63が回転を開始してマスタストック部61内に貯容されている製版済みマスタ66が開放されているクランパ19に向けて搬送される。そして、製版済みマスタ66の先端部がクランパ19により挟持可能な所定位置まで搬送されたと、製版駆動手段124における上記ステッピングモータのステップ数から制御手段200によって判断されると、図示しない開閉手段が作動してクランパ19が閉じられ、製版済みマスタ66はその先端部を印刷ドラム12の外周面上に保持される。
【0123】
その後、印刷ドラム12が図1において時計回り方向に間欠的に回転駆動され、製版済みマスタ66の印刷ドラム12への巻装動作が行われる。このとき反転ローラ対63は回転を停止しており、駆動ローラ63aは内部に設けられた図示しないワンウェイクラッチによって製版済みマスタ66の引き出しに伴い連れ回りする。そして、画像メモリ135からの画像データ信号が途絶えるとサーマルヘッド59の作動が停止し、1版分の製版済みマスタ66が製版搬送されるとプラテンローラ58、テンションローラ対62、反転ローラ対63の回転がそれぞれ停止されると共に切断手段60が作動して製版済みマスタ66が切断される。切断された製版済みマスタ66は印刷ドラム12の回転によって製版部3より引き出され、印刷ドラム12がホームポジションまで回転して停止することで製版動作および給版動作が完了する。
【0124】
説明が前後するが、製版スタートキー104が押下された後に実行される排版動作ないしは給版動作中には、係止手段180のソレノイド181はオフされたままであり、プレスローラ13は印刷ドラム12の外周面から離間していて非印刷位置を占めて保持されたままである。制御手段200は、製版スタートキー104が押下された後から給版動作中までには、カムホームポジション54からの信号を参照しつつ印圧範囲可変手段55のモータ53を駆動制御して各印圧アーム20のカムフォロア41に当接する圧解除カムを通常印刷時用の圧解除カム43aになるようにスライド部材51を移動させる。制御手段200は、圧解除カム43aがカムフォロア41に当接したことを、カムホームポジションセンサ54からの信号とモータ53へ供給したパルス数(もしくはステップ数)とから判断する。
【0125】
給版動作に引き続き版付け動作が行われる。印刷ドラム12がホームポジションで停止するとソレノイド123が作動して切換部材10が第1の位置に位置決めされる。
次いで、給紙ローラ68、分離ローラ69、駆動ローラ87、吸引ファン90がそれぞれ駆動されると共に、印刷ドラム12が低速で図1の時計回り方向に回転駆動され、給紙トレイ67上に積載された用紙Pの最上位の1枚が引き出されてその先端をレジストローラ対71のニップ部に突き当て停止される。そして、印刷ドラム12上に巻装された製版済みマスタ66の印刷ドラム回転方向における片面製版画像66Aの画像領域先端部がプレスローラ13と対応する位置に到達する所定のタイミングで駆動ローラ71aが回転駆動され、引き出された用紙Pは印刷ドラム12とプレスローラ13との間に向けて給送される。
【0126】
こうして用紙Pの先端および後端が印刷ドラム12とプレスローラ13との間に向けて給送されたことが、レジストローラ対71と印刷ドラム12およびプレスローラ13の間との用紙搬送路上に配設された図示しない用紙検知手段としての用紙センサにより、制御手段200の上記タイマで計時される所定の時間内に検知されると、制御手段200からの指令により係止手段180が作動する。これにより、図2に示したプレスローラ13の非印刷位置での保持状態が解除される。
【0127】
一方、印刷ドラム12の回転に同期して、印圧範囲可変手段55におけるカム軸44および圧解除カム組体43が回転駆動されており、上述したようにカムフォロア41と当接可能となる位置に移動された圧解除カム43aは、図2ないしは図3に示されているように、上記所定のタイミングにおいてその大径部をカムフォロア41から離脱させる。
【0128】
所定のタイミングで、プレスローラ13が印圧ばね42の付勢力によってその外周面を印刷ドラム12の外周面に圧接させる。これにより、印刷ドラム12の外周面とプレスローラ13の外周面との間に印刷ニップ部が形成されることとなり、レジストローラ対71によって給送された用紙Pが印刷ドラム12に巻装された製版済みマスタ66に押圧される。この押圧動作によりプレスローラ13と用紙Pと製版済みマスタ66と印刷ドラム12とが圧接し、インキローラ16によって印刷ドラム12の内周面に供給されたインキが印刷ドラム12の開口部より滲出し、印刷ドラム12を構成する版胴の開孔部分および図示しないメッシュスクリーン、および印刷ドラム12に巻装された製版済みマスタ66の多孔性支持体に充填された後に製版済みマスタ66の穿孔部を介して用紙Pに転写され、いわゆる版付けが行われる。その後、所定のタイミングで係止手段180が作動され、プレスローラ13が再び非印刷位置で保持される。
【0129】
版付けにより片面製版画像66Aに対応した印刷画像を形成された用紙Pは、第1の位置を占めた切換部材10によって排紙搬送手段85へと案内されると共に、剥離爪84によってその先端部から版胴外周面上の製版済みマスタ66より剥離される。剥離された用紙Pは下方へと落下して排紙搬送手段85へと送られ、吸引ファン90の吸引力によって無端ベルト89の上面に引きつけられつつ左方へと搬送されて排紙トレイ86上に排出される。その後、印刷ドラム12が再びホームポジションまで回転して停止し、版付け動作を終えて両面印刷装置1は印刷待機状態となる。
【0130】
両面印刷装置1が印刷待機状態となった後、印刷速度設定キー113および操作パネル103上の各種キーによって印刷条件を入力した後に試し刷りキー106が押下されると試し刷りが行われる。試し刷りキー106が押下されると、設定された印刷速度で印刷ドラム12が回転駆動されると共に、給紙部4から用紙Pが1枚給送される。給送された用紙Pはレジストローラ対71で一時停留された後に版付け時と同じタイミングで給送され、プレスローラ13によって版胴外周面上の製版済みマスタ66に圧接される。印刷画像を形成された用紙Pは切換部材10によって排紙部6へと案内された後、剥離爪84によって版胴外周面上の製版済みマスタ66より剥離され、排紙搬送手段85により搬送されて排紙トレイ86上に排出される。
【0131】
試し刷りにより画像の位置あるいは濃度等が確認され、テンキー109によって印刷枚数が入力された後に印刷スタートキー105が押下されると、給紙部4から用紙Pが連続的に給送され、試し刷りと同条件で印刷動作が行われる。そして、設定された印刷枚数(所定枚数)が消化されると印刷ドラム12がホームポジションで停止し、両面印刷装置1は再び印刷待機状態となる。
【0132】
なお、用紙Pの先端が上記用紙センサにより、制御手段200の上記タイマで計時される所定の時間内に検知されないとき、制御手段200はレジストローラ対71またはこれよりも用紙搬送方向Xaの上流側で用紙Pがジャム等によって滞留状態にあると判断して、係止手段180のソレノイド181をオフ状態として図2に示したようにプレスローラ13を非印刷位置で保持したままとする。これにより、用紙Pがないのにも拘わらず、プレスローラ13が印刷位置を占めてしまうことにより、印刷ドラム12上の製版済みマスタ66における片面印刷用製版画像66Aに接触して、プレスローラ13の外周表面をインキで汚してしまうことが防止される。このような制御動作は、両面印刷時の連続的な給紙動作等でも同様であり、以下一々の説明を省略する。
なお、このような用紙センサに相当する用紙検知手段を、プレスローラ13の外周面に保持されて上記印刷ニップ部に搬送されていく表面印刷済み用紙の先端および後端を検知すべく搬送路上に配設してもよい。
【0133】
次に、両面印刷を行う場合の動作について説明する。始めに、例えば両面印刷装置1が版付け動作を不要とする構成を具備していて、版付け動作無しの場合を説明する。
オペレータは両面印刷キー117を押下して両面印刷モードを設定した後、両面印刷モードであることをLED117aの点灯によって確認する。次いで、オペレータはテンキー109によって印刷枚数を入力した後に印刷スタートキー105を押下する。本実施形態の動作例では、印刷枚数としてN枚が入力された場合を説明する。この動作に前後して、オペレータは給紙トレイ67上に用紙Pをセットした後に、製版スタートキー104を押下する。すると、片面印刷モード時と同様にスタート信号が生成されて、これが制御手段200に入力される。
【0134】
片面印刷モード時と同様に、各センサ73,102から用紙サイズ検知信号および原稿サイズ検知信号がそれぞれ制御手段200に送られ、制御手段200は入力された各信号を比較する。本実施形態では、片面印刷時において印刷ドラム12で印刷可能な最大用紙サイズがA3サイズであるため、両面印刷時において使用可能な用紙サイズはA4横置きまでである。
【0135】
原稿サイズと用紙サイズとを比較した結果、両サイズが同じ場合には直ちに画像読取動作が行われ、両サイズが異なる場合には、制御手段200はその旨を表示装置120に警告として表示してオペレータに注意を促す。用紙サイズと原稿サイズとが異なる場合に、制御手段200からの指令で自動的に拡大または縮小の変倍を行って原稿サイズと画像サイズとを整合させる構成、表示装置120に縮小や画像データの回転等の手順を表示してオペレータの操作の手助けを行う構成としてもよい。また、用紙サイズがA4横置きを超える大きさの場合には、制御手段200は両面印刷を禁止して片面印刷を促す旨を表示装置120に表示させる。
【0136】
一方、製版スタートキー104が押下されると、印圧範囲可変手段55において印刷最初の1枚目用の圧解除カム43bが選択されているか否かが判断される。圧解除カム43bが選択されていれば、すなわち圧解除カム43bがカムフォロア41に対向した位置を占めていれば、次工程(ステップS3の排版工程)へ進む。圧解除カム43bが選択されていないとき、制御手段200は、カムホームポジション54からの信号を参照しつつ印圧範囲可変手段55のモータ53を駆動制御して各印圧アーム20のカムフォロア41に当接する圧解除カムを圧解除カム43bになるようにスライド部材51を移動させる。制御手段200は、圧解除カム43bがカムフォロア41に対向した位置を占めたことを、カムホームポジションセンサ54からの信号とモータ53へ供給したパルス数(もしくはステップ数)とから判断する(ステップS1、ステップS2およびステップS7参照)。
【0137】
上記した印圧範囲可変手段55での圧解除カム43bへの切換動作と並行して、先ず、排版部5での排版動作が片面印刷モード時のときと同様に行われて、外周面上より使用済みマスタを剥離された印刷ドラム12は給版待機位置で停止し、図示しない開閉手段によってクランパ19が開放される。この排版動作と一部並行して画像読取部7では原稿画像の読取動作が行われる。原稿画像の読み取り動作は、片面印刷モード時と同様に表面印刷用の1枚目の原稿画像が読み取られる。読み取られた原稿画像に係る情報は画像メモリ135内に1枚目の画像データ信号として格納される。1枚目の原稿画像の読取動作が完了して画像データ信号が画像メモリ135内に格納されると、制御手段200は表示装置120に「裏面印刷用の2枚目の原稿をセットして下さい」という旨の表示を行わせる。オペレータはこの表示に従って圧板94を開放してコンタクトガラス93上より1枚目の原稿を取り除き、2枚目の原稿を載置して再び圧板94を閉じる。圧板94が閉じられたことを図示しないセンサが検知し、コンタクトガラス93上に原稿があることを他の図示しないセンサが検知すると、表面印刷用の1枚目と同様に裏面印刷用の2枚目の原稿の読取動作が行われる。読み取られた原稿画像に係る情報は画像メモリ135内に2枚目の画像データ信号として格納される。
【0138】
なお、本実施形態において、片面印刷モード時および両面印刷モード時における原稿画像の読取動作はオペレータが圧板94を開閉してコンタクトガラス93上に読み取られる原稿をセットする構成としたが、ADF(自動原稿給送装置)を用いて自動的に原稿をコンタクトガラス93上に搬送する構成、あるいは図示しない外部装置から画像データを取り込む構成としてもよい。また、両面印刷モード時において1枚の原稿を反転させて搬送し、その表面および裏面から2枚分の画像データを取得する構成としてもよい。
外部装置から画像データを取り込む構成としては、例えば両面印刷装置1とパーソナルコンピュータ(以下、「パソコン」という)等とを信号線およびパソコンコントローラ等を介して接続して、パソコン等上で作成・出力されたデジタル画像データを取り込む例が挙げられる。
【0139】
画像読取部7での原稿画像の読取動作と一部並行して、製版部3では製版動作が行われる。製版動作は片面印刷モード時と同様の手順で行われるが、マスタ64にはその熱可塑性樹脂フィルム面に例えば図7に示すような表面製版画像65Aと裏面製版画像65Bとが形成される。このとき表面製版画像65Aと裏面製版画像65Bとの間には、図7に示すように所定の中間未製版領域65Sが設けられるように各画像65A,65Bが形成される。この所定の中間未製版領域65Sは、分割製版済みマスタ65が印刷ドラム12の外周面上に巻装されたときに、図1に示す中間領域12Sと対応する位置に設けられる。
【0140】
各画像65A,65Bが形成された分割製版済みマスタ65はマスタストック部61内に貯容され、排版動作が完了して両面印刷装置1が給版待機状態となると、反転ローラ対63の作動によって開放されているクランパ19に向けて搬送される。その後、印刷ドラム12が片面印刷モード時と同様に間欠的に回転され、分割製版済みマスタ65の印刷ドラム12への巻装が行われる。そして、画像メモリ135から2枚分の画像データが全て送られると、切断手段60が作動して分割製版済みマスタ65が切断される。切断された分割製版済みマスタ65は印刷ドラム12の回転によって製版部3より引き出され、印刷ドラム12がホームポジションで停止して製版動作および給版動作が完了する。
説明が前後するが、上記した片面印刷モード時と同様に給版動作中においては、係止手段180のソレノイド181はオフされたままであり、印刷ドラム12の外周面からプレスローラ13が非印刷位置を占めて保持されている(ステップS3ないしステップS6参照)。
【0141】
次いで、ステップS8において、版付け動作を行うか否かが判断され、この動作例では版付け動作を行わないので、ステップS9へ進む。
印刷ドラム12がホームポジションで停止した後、図1中矢印方向(時計回り方向)へ回転を始める。この印刷ドラム12の回転と同期して、給紙ローラ68、分離ローラ69、各駆動ローラ36,87、各吸引ファン39,90がそれぞれ駆動される。すなわち、給紙トレイ67上から1枚目の用紙P1が引き出されてその先端をレジストローラ対71のニップ部に突き当て停止される。そして、クランパ19が切換部材10と対応する位置を通過するとソレノイド123が作動して切換部材10が第2の位置に位置決めされ、その後、印刷ドラム12上に巻装された分割製版済みマスタ65の印刷ドラム12回転方向における表面製版画像65Aの画像領域先端部がプレスローラ13と対応する位置に到達する所定のタイミングで駆動ローラ71aが回転駆動されることで、引き出された1枚目の用紙P1は印刷ドラム12とプレスローラ13との間に向けて給送される。
【0142】
こうして1枚目の用紙Pの先端が印刷ドラム12とプレスローラ13との間に向けて給送されたことが、上記用紙センサによって制御手段200の上記タイマで計時される所定の時間内に検知されると、制御手段200からの指令により係止手段180が作動する。これにより、図2に示したプレスローラ13の非印刷位置での保持状態が解除される。
【0143】
上記所定のタイミングにおいて、カムフォロア41と当接可能である位置に移動されている圧解除カム43bはその大径部をカムフォロア41から離脱させ、プレスローラ13が印圧ばね42の付勢力によってその周面を印刷ドラム12の外周面に圧接させる。これにより、印刷ドラム12の外周面とプレスローラ13の外周面との間に印刷ニップ部が形成されることとなり、プレスローラ13と1枚目の用紙P1と分割製版済みマスタ65の表面製版画像65A形成部と印刷ドラム12とが圧接し、インキローラ16によって印刷ドラム12の内周面に供給されたインキが、印刷ドラム12の開口部より滲出し、印刷ドラム12に巻着された図示しない版胴および図示しないメッシュスクリーン、および分割製版済みマスタ65の多孔性支持体に充填された後に、表面製版画像65Aの穿孔部を介して用紙P1に転写され、分割製版済みマスタ65のうちの表面製版画像65Aに対応した画像形成・印刷が行われて、表面画像が用紙P1に形成される。
【0144】
このとき、印圧範囲可変手段55では「印刷最初の1枚目用の圧解除カム43b」に切り換えられており、印圧範囲は図5に示した印圧範囲パターンIが選択されているので、裏面製版画像65Bに対応した部分は画像形成されないし、プレスローラ13の外周表面がインキで汚れることもない。
【0145】
表面製版画像65Aに対応した表面画像をその表面に印刷された表面印刷済み用紙P1は、切換部材10の先端によってその先端部から印刷ドラム12外周面上の分割製版済みマスタ65から剥離されつつ、第2の位置を占めた切換部材10によって再給紙手段9へと案内される。切換部材10によって下方へと導かれた表面印刷済み用紙P1は、各ガイド板27,56間を通って案内されつつその先端をエンドフェンス8aに当接させ、再給紙トレイ8上に着地・載置される。再給紙トレイ8上に搬送された表面印刷済み用紙P1は、吸引ファン39の吸引力によって無端ベルト38に保持されつつ図1中矢印(右)方向に搬送され、その先端(表面製版画像65Aに対応した印刷時における後端)をストッパ部24aに突き当たり停止させ位置決めされた状態で待機させる。このとき、吸引ファン39の吸引力は上記したように比較的弱いので過大な搬送力による用紙座屈や撓みを発生させることなく、表面印刷済み用紙P1と無端ベルト38との間で滑りが発生して、表面印刷済み用紙P1はその先端をストッパ部24aに当接させた状態で停留・待機される(ステップS9ないしステップS11参照)。
【0146】
なお、表面印刷済み用紙P1の先端がストッパ部24aに当接したときにこれを検知する図示しないセンサを設け、この図示しないセンサが表面印刷済み用紙P1の先端を検知したときに駆動ローラ36および吸引ファン39の作動を停止させる構成としてもよい。図1中の表面印刷済み用紙P2は、その先端がストッパ部24aに突き当たっている状態を示している。
【0147】
表面印刷済み用紙P1が再給紙トレイ8上に案内されている間も印刷ドラム12は回転を継続しており、プレスローラ13は印刷ドラム12の表面領域12Aとの接触を終えると圧解除カム43bの大径部がカムフォロア41に当接することで非印刷位置を占める。この圧解除カム43bの働きにより、用紙Pが存在しない状態で印刷ドラム12の裏面領域12Bとプレスローラ13とが圧接することがなく、上述したようにプレスローラ13の外周表面へのインキの転移を防止できる。
【0148】
ここで、係止手段180が作動してプレスローラ13を非印刷位置で保持した後、印刷ドラム12は給紙・印刷動作を休んで低速で回転し、その間にタイミングを合わせて印圧範囲可変手段55が作動して、「印刷最初の1枚目用の圧解除カム43b」から「連続的両面印刷時用の圧解除カム43a」に切り換える動作が行われる。具体的には、圧解除カム43bの▲1▼の部分を利用してモータ53の回転駆動によってスライド部材51を高速で圧解除カム43aがカムフォロア41と対向するように移動させてしまう(ステップS12およびステップS13参照)。
【0149】
一方、再給紙トレイ8上で停留・待機している1枚目の表面印刷済み用紙P1が、後述するように給紙部4から給紙される2枚目の用紙P2の後端に続けて上記印刷ニップ部に送り込まれる所定のタイミングで、ソレノイド33が作動されることにより、再給紙トレイ8上の1枚目の表面印刷済み用紙P1がプレスローラ13の回転力によって上記印刷ニップ部へと搬送される。換言すれば、1枚目の表面印刷済み用紙P1は2枚目の用紙P2の後端が上記印刷ニップ部を抜けきった後、印刷ドラム12の中間領域12Sがプレスローラ13と対向する位置を通過して裏面領域12Bがプレスローラ13と対向するタイミングで印刷ドラム12とプレスローラ13との上記印刷ニップ部に送られる。
この時、印圧範囲は「連続的両面印刷時用の圧解除カム43a」によってプレスローラ13による印圧範囲パターンIIIが選択設定されているので、所定のタイミングにおいて、カムフォロア41と当接可能である位置に移動されている圧解除カム43aはその大径部をカムフォロア41から離脱させ、プレスローラ13が印圧ばね42の付勢力によってその周面を印刷ドラム12の外周面に圧接させることにより、印刷ドラム12の外周面とプレスローラ13の外周面との間に印刷ニップ部が形成されることとなる。
【0150】
そして、プレスローラ13が図5に示すように2枚目の用紙P2およびこの用紙P2の後端に連続して搬送されている1枚目の表面印刷済み用紙P1を、印刷ドラム12上の分割製版済みマスタ65における表面製版画像65Aと裏面製版画像65Bとに亘り連続して押し付けることにより、2枚目の用紙P2には表面製版画像65Aに対応した画像形成・印刷が行われ、1枚目の表面印刷済み用紙P1の表面(未印刷面である上面であり、反転される前の裏面に相当)には裏面製版画像65Bに対応した画像形成・印刷が行われる。
【0151】
説明が前後するが、2枚目の用紙P2の給紙動作は以下のように行われる。すなわち、給紙ローラ68および分離ローラ69が駆動され、給紙トレイ67上から通常両面印刷用の2枚目の用紙P2が引き出されてその先端をレジストローラ対71のニップ部に突き当て停止される。そして、1枚目の用紙P1と同様のタイミングで駆動ローラ71aが回転駆動され、引き出された用紙P2は印刷ドラム12とプレスローラ13との間に向けて給送される。切換部材10はクランパ19との衝突を回避すべく第1の位置に位置決めされた後、クランパ19の通過後に再び第2の位置に位置決めされる。
【0152】
こうして2枚目の用紙Pの先端が印刷ドラム12とプレスローラ13との間に向けて給送されたことが、上記用紙センサによって制御手段200の上記タイマで計時される所定の時間内に検知されると、制御手段200からの指令により係止手段180が作動する。これにより、図2に示したプレスローラ13の非印刷位置での保持状態が解除される。
【0153】
2枚目の用紙P2は上述した詳細動作を経て表面製版画像65Aに対応した画像形成・印刷が行われた後、第2の位置を占めた切換部材10によって印刷ドラム12上の分割製版済みマスタ65から剥離案内されて再給紙トレイ8上に搬送される。
上述の動作中、印刷ドラム12の中間領域12Sがプレスローラ13と対向する位置を占める直前にソレノイド123が作動されることにより、切換部材10が第2の位置から第1の位置に変位される。これにより、切換部材10によって案内されていた2枚目の表面印刷済み用紙P2の後端は、切換部材10の下面10aとプレスローラ13の外周周面との間の僅かな隙間を通って再給紙トレイ8上に案内され、この用紙P2の後端に続いて搬送された1枚目の両面印刷済み用紙P1の先端は、切換部材10の上面10bに沿って排紙搬送手段85へと案内される。1枚目の両面印刷済み用紙P1は、剥離爪84によって分割製版済みマスタ65より剥離された後に排紙搬送手段85によって搬送され、排紙トレイ86上に排出される。
【0154】
以下、給紙部4から給紙される3枚目の用紙P3も4枚目の用紙P4ないしは(N―1)枚目の用紙P(N−1)についても、上述したと同様の両面印刷動作が継続して行われる(ステップS14ないしステップS19参照)。
【0155】
テンキー109で設定された印刷枚数である所定枚数N枚の最後のN枚目の用紙PNが給紙部4から給送され、その表面に表面製版画像65Aに対応した表面画像を印刷されて再給紙トレイ8上に案内搬送される。一方、再給紙トレイ8上で待機している(N−1)枚目の表面印刷済み用紙P(N−1)が、上述したと同様に上記印刷ニップ部に向けて反転・再給紙されて、その表面に裏面製版画像65Bに対応した裏面画像を印刷されて両面印刷された後、排紙トレイ86上に排出される。この直後、係止手段180が作動されてプレスローラ13が非印刷位置で保持される。これと同時的に、印刷ドラム12は給紙・印刷動作を休止すると共に、再給紙トレイ8からの再給紙・搬送も休んで低速で回転し、その間にタイミングを合わせて印圧範囲可変手段55が作動して、「連続的両面印刷時用の圧解除カム43a」から「印刷最後の1枚目用の圧解除カム43c」に切り換える動作が行われる。具体的には、圧解除カム43aの▲2▼の部分を利用してモータ53の回転駆動によってスライド部材51を高速で圧解除カム43cがカムフォロア41と対向するように移動させてしまう(ステップS20ないしステップS22参照)。このとき、切換部材10は第1の位置を占めている。
【0156】
そして、分割製版済みマスタ65における裏面製版画像65Bの画像領域先端部がプレスローラ13と対応する位置に到達するよりも早いタイミングでカムフォロア41と当接可能である位置に移動された圧解除カム43cはその大径部をカムフォロア41から離脱させ、プレスローラ13が印圧ばね42の付勢力によってその周面を印刷ドラム12の外周面に圧接させる。その後、分割製版済みマスタ65における裏面製版画像65Bの画像領域先端部がプレスローラ13と対応する位置に到達するよりもやや早いタイミングでソレノイド33が作動され、揺動アーム32が支軸32aを中心に図2における時計回り方向に揺動される。これにより再給紙レジストローラ23が離間位置から圧接位置に揺動され、先端をストッパ部24aに当接させた状態で停留されていた印刷最後の表面印刷済み用紙PNが印刷ドラム12と当接して従動回転しているプレスローラ13の外周周面に当接される。
【0157】
印刷最後の表面印刷済み用紙PNは用紙P1と同様のタイミングで印刷ドラム12とプレスローラ13との上記印刷ニップ部に送られ、その表面(未印刷面)に裏面製版画像65Bに対応した裏面画像を印刷される。表面画像および裏面画像を形成された両面印刷済み用紙PNは切換部材10の上面10bに沿って排紙搬送手段85へと案内され、剥離爪84によって分割製版済みマスタ65より剥離された後に排紙搬送手段85によって搬送され、排紙トレイ86上に排出される。その後、プレスローラ13は印刷ドラム12の裏面領域12Bとの接触を終えると圧解除カム43cの大径部がカムフォロア41に当接することで非印刷位置を占める。
印圧範囲は、上記したように印刷最後の1枚目用の圧解除カム43cに切り換えられていて、印圧範囲パターンIIが選択されているので、用紙Pが存在しない状態で印刷ドラム12の表面領域12Aとプレスローラ13とが圧接することがなく、表面製版画像65Aに対応した表面画像は形成されないし、プレスローラ13の外周表面がインキで汚れてしまうこともない。このとき、係止手段180が作動してプレスローラ13が非印刷位置で保持され、その後に印刷ドラム12がホームポジションで停止して、両面印刷装置1は所定枚数の1つのジョブ印刷動作を終えて再び印刷待機状態となる(ステップS23ないしステップS25参照)。
【0158】
次に、製版給版後に先ず版付け印刷が行われて、そこで一旦動作を停止して画像確認を行う場合や、1枚だけの試し刷り印刷を行う場合には、上述した通常両面印刷動作と若干異なる以下のような動作・制御が行われる(ステップS8のイエスないしステップS33参照)。
【0159】
給紙部4から印刷最初の1枚目の版付け用の用紙P1(以下、単に「用紙P1」というときがある)が、上記通常両面印刷時の最初の1枚目の給紙動作と同様の詳細動作で送り出され、クランパ19が切換部材10と対応する位置を通過したときの切換部材10の第2の位置への位置決め動作および係止手段180の作動によりプレスローラ13の非印刷位置での保持状態が解除される動作を経て、印刷ドラム12上の分割製版済みマスタ65における表面製版画像65Aの画像領域先端部がプレスローラ13と対応する位置に到達する所定のタイミングで駆動ローラ71aが回転駆動されることで、1枚目の用紙P1は印刷ドラム12とプレスローラ13との間に向けて給送される。
【0160】
この時には、印圧範囲可変手段55では既に印刷最初の1枚目用の圧解除カム43bに切り換えられており、印圧範囲は図5に示した印圧範囲パターンIが選択されている。所定のタイミングにおいて、カムフォロア41と当接可能である位置に移動されている圧解除カム43bはその大径部をカムフォロア41から離脱させ、プレスローラ13が印圧ばね42の付勢力によってその周面を印刷ドラム12の外周面に圧接させる。これにより、印刷ドラム12の外周面とプレスローラ13の外周面との間に上記印刷ニップ部が形成されることとなり、プレスローラ13と1枚目の用紙P1と分割製版済みマスタ65の表面製版画像65A形成部と印刷ドラム12とが圧接することで、インキローラ16によって印刷ドラム12の内周面に供給されたインキが、印刷ドラム12の開口部より滲出し、印刷ドラム12に巻着された図示しない版胴および図示しないメッシュスクリーン、および分割製版済みマスタ65の多孔性支持体に充填された後に、表面製版画像65Aの穿孔部を介して用紙P1に転写され、表面製版画像65Aに対応した部分の画像形成・印刷が行われる。
【0161】
この時、上記したように印圧範囲は図5に示した印圧範囲パターンIが選択されているので、裏面製版画像65Bに対応した部分は画像形成されないし、プレスローラ13の外周表面がインキで汚れることもない。
【0162】
表面製版画像65Aに対応した表面画像をその表面に印刷された表面印刷済み用紙P1は、切換部材10による上述したと同様の詳細動作によって再給紙手段9へと案内される。切換部材10によって下方へと導かれた表面印刷済み用紙P1は、上述したと同様の詳細動作によって再給紙トレイ8上に着地・載置され、さらに再給紙搬送手段25による上述したと同様の詳細動作によってその先端(表面製版画像65Aに対応した印刷時における後端)をストッパ部24aに突き当たり停止させ位置決めされた状態で待機している(ステップS26ないしステップS28参照)。
【0163】
ここで、係止手段180が作動してプレスローラ13を非印刷位置で保持した後、印刷ドラム12は給紙・印刷動作を休んで低速で回転し、その間にタイミングを合わせて印圧範囲可変手段55が作動して、「印刷最初の1枚目用の圧解除カム43b」から「印刷最後の1枚目用圧解除カム43c」に切り換える動作が行われる(ステップS29およびステップS30参照)。
【0164】
次いで、給紙部4から2枚目の用紙P2の給紙動作を行わずに、上記印刷ニップ部に送り込まれる所定のタイミングでソレノイド33が作動されることにより、再給紙トレイ8上で一時待機している表面印刷済み用紙P1が、上述したと同様の詳細動作を経てタイミングを合わせてプレスローラ13の回転力によってその表裏を反転されながら印刷ドラム12の外周面とプレスローラ13の外周面との間へと搬送される。このとき、印圧範囲は「印刷最後の1枚目用圧解除カム43c」によってプレスローラ13による印圧範囲パターンIIが選択されているので、所定のタイミングにおいて、カムフォロア41と当接可能である位置に移動されている圧解除カム43cはその大径部をカムフォロア41から離脱させ、プレスローラ13が印圧ばね42の付勢力によってその周面を印刷ドラム12の外周面に圧接させる。
これにより、印刷ドラム12の外周面とプレスローラ13の外周面との間に上記印刷ニップ部が形成されることとなり、プレスローラ13と表面印刷済み用紙P1の非表面画像形成面である表面(再給紙トレイ8上での裏面)と分割製版済みマスタ65の裏面製版画像65B形成部と印刷ドラム12とが圧接することで、インキローラ16によって印刷ドラム12の内周面に供給されたインキが上述したと同様の詳細動作を経て、表面印刷済み用紙P1に転写され、裏面製版画像65Bに対応した部分の画像形成・印刷が行われる。このとき切換部材10は上述したように第1の位置を占めた状態にある。こうして、その表面(上面)に裏面製版画像65Bに対応した裏面画像を印刷された両面印刷済み用紙P1は切換部材10の上面10bに沿って排紙搬送手段85へと案内され、剥離爪84によって分割製版済みマスタ65より剥離された後に排紙搬送手段85によって搬送され、排紙トレイ86上に排出される。この両面印刷済み用紙P1が版付け印刷物になる。
【0165】
印圧範囲は、上記したように印刷最後の1枚目用の圧解除カム43cが選択されているので、用紙Pが存在しない状態で印刷ドラム12の表面領域12Aとプレスローラ13とが圧接することがなく表面製版画像65Aに対応した表刷画像は形成されないし、プレスローラ13の外周表面がインキ等で汚れてしまうこともない(ステップS31ないしステップS33参照)。
【0166】
その後、さらに印刷ドラム12は低速で回転し、その間にタイミングを合わせて印圧範囲可変手段55が作動して、印圧範囲を「印刷最後の1枚目用圧解除カム43c」から「連続的両面印刷時用の圧解除カム43a」に切り換え、印圧範囲パターンIIIが選択設定されて、上述したと同様の連続的両面印刷を行う場合にはステップS9へ進み、試し刷り印刷等を行う場合等にはステップS35で指示待ちとなる(ステップS34参照)。
【0167】
上述した実施形態例では、給紙部4による給紙動作が停止して印刷ドラム12が低速で回転している間にタイミングを合わせて印圧範囲可変手段55を作動させるようにしたが、別言すれば印圧範囲切換駆動手段としてのモータ53によって、カムフォロア41と3つの圧解除カム43a,43b,43cのうちの何れか一つとの係合を変える動作は、印刷ドラム12の回転速度を低下させた状態で行われることはあってもその回転を停止させることなく、かつ、用紙Pの給送動作が停止した状態で行われるものであったが、その場合は上述したように印圧範囲可変手段55による圧解除カムの切り換え動作においてかなりの高速切換・移動が求められるものであった。
【0168】
そこで、別の実施形態として、次のような例が挙げられる。すなわち、印刷ドラム12の回転を一時停止させて、どの印圧範囲パターンにおいても印圧がオフになる位置、つまり図5で示されている▲3▼の領域(エリア)に相当する位置で印刷ドラム12を位置決め停止させて印圧範囲可変手段55を動作させるという方法がある。通常、印刷ドラム12の回転方向のホームポジションが丁度▲3▼の位置に入るので、ここで印圧範囲可変手段55を作動させる。
別言すれば、印圧範囲切換駆動手段としてのモータ53によって、カムフォロア41と3つの圧解除カム43a,43b,43cのうちの何れか一つとの係合を変える動作は、印刷ドラム12の回転を一時停止させた状態で、かつ、各印圧範囲パターンの何れの印圧範囲パターンにおいても印圧がオフになる位置で行われるものである。
【0169】
上述したとおり、本実施形態によれば、以下の諸利点を得ることができると共に、ひいては後述する効果を奏する。
上述の印刷時において、分割製版済みマスタ65の表面製版画像65Aと裏面製版画像65Bとの間に所定の中間未製版領域65Sが設けられ、分割製版済みマスタ65が印刷ドラム12の外周面上に巻装された際に中間領域12Sが形成されるので、給紙部4から送られた用紙Pの後端と再給紙手段9から送られた用紙Pの先端とが重合することが防止され、切換部材10の切換によって給紙部4からの用紙Pを再給紙トレイ8に、再給紙手段9からの用紙Pを排紙トレイ86にそれぞれ確実に搬送することができる。また、再給紙手段9からの表面印刷済み用紙Pの再給紙時において、プレスローラ13の外周表面が表面印刷済み用紙Pの印刷面と接触することでプレスローラ13の外周表面に表面印刷済み用紙Pからのインキが再転移するが、プレスローラ13の外周周面が撥インキ性を有すると共にクリーニングローラ26がプレスローラ13の外周周面をクリーニングするので、表面印刷済み用紙Pからプレスローラ13の外周周面への再転移インキが減少すると共に、プレスローラ13の外周周面からの再転移インキの除去が促進され、以降の印刷時においてプレスローラ13から表面印刷済み用紙Pの裏面へのインキの再転移を防止できる。この利点は、版付け時や試し刷り時でも同様に得られる。
【0170】
この両面印刷装置1によれば、片面印刷モード時には製版部3が製版済みマスタ66を作製してこれを印刷ドラム12に巻装し、給紙部4より用紙Pを給送してこれをプレスローラ13によって印刷ドラム12に圧接させるので、マスタ64を無駄に使用することなく通常の孔版印刷装置と同様に片面印刷を行うことができる。また、両面印刷時には製版部3が分割製版済みマスタ65を作製してこれを印刷ドラム12に巻装し、給紙部4より印刷最初の1枚目の用紙P1を給送してこの表面をプレスローラ13によって印刷ドラム12に圧接させた後に再給紙トレイ8上に排出し、給紙部4より2枚目の用紙P2を給送してこの表面をプレスローラ13によって印刷ドラム12に圧接させた後に再給紙トレイ8上に排出すると共に、再給紙手段9によって1枚目の用紙P1を反転再給紙してこの裏面をプレスローラ13によって印刷ドラム12に圧接させた後に排紙トレイ86上に排出するので、用紙Pに印刷される表刷画像および裏面画像が共にプレスローラ13により印刷ドラム12から転移されるインキによって形成され、良好な両面印刷物を得ることができる。
【0171】
また、印刷部2の構成が印刷ドラム12と印刷ドラム12よりも小径のプレスローラ13とからなり、再給紙トレイ8が排紙部6を構成する排紙搬送手段85の下方に配設されているので、通常の片面印刷用の孔版印刷装置に比べて大幅に大型化することなくコンパクトな装置を構成でき、設置スペースの増大を抑制することができる。
【0172】
上記実施形態では、両面印刷時において2枚の原稿を用意し、マスタ64上に各原稿に応じた表面製版画像65Aと裏面製版画像65Bとを形成して分割製版済みマスタ65を作製して1種類の両面印刷物を得る構成を示したが、画像読取部7にADFを設けて複数枚(3枚以上)の原稿をセットし、両面印刷装置1にソータを接続して複数種類の両面印刷物を順次得ることも勿論可能である。この場合、原稿の枚数が奇数の場合には最後の1枚の原稿が製版に供されずに余ってしまうが、これを片面印刷モードで処理すると印刷面が上向きでソータに排出されてしまうため、最終ページとその直前のページとの間に空白のページが挿入されてしまう。そこで、原稿が奇数枚の場合でも全てを両面印刷モードで処理し、最後の1枚の原稿を表面製版画像65Aとすると共に裏面製版画像65Bを空白(未製版)として分割製版済みマスタ65を作製して上述と同様の印刷動作を行うことにより、原稿を余らせることなくかつページ順を狂わせることなく複数種類の両面印刷物を得ることができる。
【0173】
上記実施形態では、両面印刷時に画像読取部7で2枚の原稿を順次読み取り、読み取られた原稿をその読み取られた順に製版部3において製版し、1枚目の原稿に応じた表面製版画像65Aと2枚目の原稿に応じた裏面製版画像65Bとが製版された分割製版済みマスタ65を作製する構成としたが、画像メモリ135に格納されている2枚分の原稿画像に応じた各画像データ信号の製版量(サーマルヘッド59の各発熱素子の稼働率、すなわちべた部の有無およびその数量)を比較する比較手段を設け、製版量の少ない画像を表面製版画像65Aとして、製版量の多い画像を裏面製版画像65Bとして製版させる構成を採用してもよい。この構成とすることにより、印刷ドラム12から用紙Pの表面に転移されるインキ量が裏面に転移されるインキ量よりも少なくなり、再給紙手段9によって再給紙トレイ8上から表面印刷済みの用紙Pが給送される際に、用紙Pからプレスローラ13の外周周面に再転移されるインキ量を減少させることができ、良好な両面印刷物を得ることができると共にクリーニング部材の負担を軽減させてその寿命を延ばすことができる。
【0174】
上記実施形態では、プレスローラ13の外周周面をクリーニングするクリーニング部材として、図示しない付勢手段によってプレスローラ13の外周周面に常時圧接されたクリーニングローラ26を用いたが、クリーニング部材として再給紙レジストローラ23と同様に、図示しない接離手段によってプレスローラ13の外周周面に対して接離自在に構成されたものを用いてもよい。この場合、プレスローラ13の外周周面に用紙Pからのインキが再転移しない片面印刷モード時にはクリーニング部材をプレスローラ13の外周周面から離間させることで、クリーニング部材の劣化を抑制することができる。
【0175】
上記実施形態における両面印刷モードの版付け動作または試し刷り動作によれば、両面印刷された1枚だけの印刷物を排紙部6の排紙トレイ86に排出することができ、再給紙トレイ8上に印刷途中の印刷物が残ることもなく、版付けや試し刷りにおいて片面画像のみが印刷された無駄な印刷物を作る必要がなくなり、プレスローラ13の外周表面がインキで汚れることもないという利点がある。
【0176】
このような本実施形態における版付け印刷の利点をそれ程望まなくてもよいのであれば、上記実施形態例に限らず、版付けの基本的な機能に着目したとき、すなわちインキの滲み出し性確保のために分割製版済みマスタ65にインキを充填して印刷ドラム12の外周面に密着させ印刷可能レベルにするという版付けの基本的な機能に着目したとき、例えば通常の片面印刷動作時の版付けと同様に、図5に示した印圧範囲パターンIIIを選択設定して版付け印刷動作を行っても勿論構わない。
この場合、片面印刷モード時の最大通紙サイズがA3サイズであれば、A3サイズの用紙Pを給紙して通常の片面印刷動作を行えるから、上述したように上記印刷ニップ部に2度通紙する必要がなくなり、その分時間を節約できる。また、給紙トレイ67上にA3サイズの用紙P(両面印刷済みの損紙等のいわゆるヤレ紙でもよい)をその都度載置した上で給紙して版付けの目的を果たしてもよい。この場合、複数の給紙部を有する両面印刷装置にあっては、その何れか一つに版付け専用のA3サイズの用紙Pを積載して自動的に給紙・版付けすることが好ましい。また、本実施形態における両面印刷モード時の版付け印刷動作(工程)と上記通常の片面印刷動作時の版付け印刷動作(工程)とを、オペレータの所望するところにより適宜選択設定できるキー等を操作パネル103等に付加して、印圧範囲可変手段55を利用して適宜切り換えるようなことも勿論できる。
【0177】
プレスローラ13の回転による表面印刷済み用紙の再給紙搬送動作は、上記実施形態例のように印刷ドラム12に圧接したときの従動回転を利用することに限らず、印刷ドラム駆動手段121からの回転駆動力を図示しない駆動力伝達手段を介して伝達・駆動したり、あるいは印刷ドラム駆動手段121とは別の電動モータ等により駆動力伝達手段を介して伝達・駆動したりしてもよい。
このようにすれば、印刷ドラム12の回転周速度と同じ回転周速度でプレスローラ13を回転駆動制御することができるようになり、再給紙レジストローラ23および各ローラ28,29,30との接触によるプレスローラ13の回転周速度の変動を防止できると共に、プレスローラ13の自転による位相の変化も防止することができることになって、印刷ドラム12とプレスローラ13との間での周速度差をなくしたり、印刷画像の擦れや印刷画像位置のずれ等をなくしたりすることで良好な印刷物を得ることができる。
【0178】
上記実施形態ではプレスローラ13としてその周面の円周方向長さが単に印刷ドラム12の外周面上における表面領域12Aまたは裏面領域12Bの円周方向長さよりも長いものを用いたが、この条件を満たすと共にその円周方向長さと印刷ドラム12の円周方向長さとが整数比となるもの、すなわちその直径と印刷ドラム12の直径とが整数比となるものを用いてもよい。
このような構成とすることにより、プレスローラの周速度を印刷ドラム12の周速度と同速度とすることが簡単になる。この場合、プレスローラとしてその円周方向長さが印刷ドラムの外周面上における表面領域12Aまたは裏面領域12Bの円周方向長さよりも長いものである必要があるため、プレスローラの直径と印刷ドラムの直径との比は1:2または1:3が望ましい。この比がこれよりも大きいと印刷ドラムの直径が大きくなりすぎ、装置の小型化の妨げとなる。このことからプレスローラの直径は版胴の直径の2分の1ないし3分の1の範囲内にあることが望ましい。
【0179】
上記実施形態では、印刷ドラム12の回転方向に沿って第1の製版画像としての表面製版画像65Aと第2の製版画像としての裏面製版画像65Bとが2面並んで形成された分割製版済みマスタ65を印刷ドラム12に巻装した場合についての上記両面印刷動作等を説明したが、これに限らず、以下のように反対に行ってもよい。すなわち、所定枚数Nの用紙Pに連続的に両面印刷を行う場合に、印刷動作開始時に給紙部4から給送される所定枚数Nのうちの最初の1枚目の用紙P1の表面には、印圧範囲パターンII(第2の印圧範囲パターン)で印刷を行うように、印刷動作終了直前時に再給紙トレイ8に排出される所定枚数Nのうちの最後の1枚目の表面印刷済み用紙PNの裏面には、印圧範囲パターンI(第1の印圧範囲パターン)で印刷を行うように、上記以外の用紙P2〜P(N−1)には、印圧範囲パターンIII(第3の印圧範囲パターン)で印刷を行うように、印圧範囲可変手段55を制御する制御手段200であってもよい。
また、自明のことであるが、用紙Pには表面および裏面の両面を有するから、印刷ドラム12の回転方向に沿って第2の製版画像としての裏面製版画像65Bと第1の製版画像としての表面製版画像65Aとがこの順に2面並んで形成された分割製版済みマスタを用いて上述したように両面印刷を行うようなことも勿論できる。
【0180】
本実施形態における操作パネル103のように、特別に片面印刷キー118を設ける必要はなく、次のようにしてもよい。すなわち例えば、両面印刷装置1に配設されている図示しない電源スイッチのオン後、図6に示されている状態のように、制御手段200によって印圧範囲可変手段55のモータ53が圧解除カム43aの小径部がカムフォロア41と対向する初期位置(圧解除カム組体43のホームポジション)を占めるように自動的にスライド部材44を移動させるように制御されるように初期設定することで、このときLED118を点灯させると共に、両面印刷キー118の1回ごとの押下によって両面印刷モードと片面印刷モードとを順次切り換え設定できるようにしてもよい。
【0181】
上記実施形態では両面印刷装置の一例としてマスタを用いた孔版印刷方式の場合を例示したが、本発明はこれに限らず、孔版印刷方式以外の原理の印刷装置にも準用することができる。例えば、オフセット印刷機等で用いられる印刷用版としての平版(湿し水の有無を問わず)を使用して、直刷り式に構成するようなことは比較的容易に実施できる。
【0182】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、上述したような従来の両面印刷装置の有する諸問題点を解決して新規な両面印刷装置を提供することができる。請求項ごとの効果を挙げれば以下のとおりである。
請求項1記載の発明によれば、上記前段の印圧範囲可変手段までの構成により、印圧オンの範囲を適切に選択できるために、両面印刷を実施する場合にも用紙が存在しないのに印圧がオンされて押圧手段としてのプレスローラの表面に画像が転写されてインキで汚れてしまうという不具合を防止することができる。さらに、上記後段の構成により、両面印刷時に特にインキによる汚れが心配される最初の1枚目と最後の1枚目との印圧オン範囲が最適に設定されることになり、用紙が存在しないのに印圧がオンされてプレスローラの表面に画像が転写されてインキで汚れてしまうという不具合を確実に防止することができる。
加えて、上記以外の特有の構成を有する両面印刷装置による基本的な効果も奏する。すなわち、片面印刷時には製版済みマスタを印刷ドラムに巻装し、給紙部より用紙を給送してこれをプレスローラによって印刷ドラムに圧接させるので、マスタを無駄に使用することなく通常の孔版印刷装置と同様に片面印刷を行うことができる。また、両面印刷時には分割製版済みマスタを印刷ドラムに巻装し、給紙部より1枚目の用紙を給送してこの表面をプレスローラによって印刷ドラムに圧接させた後に再給紙貯容手段上に排出し、給紙部より2枚目の用紙を給送してこの表面をプレスローラによって印刷ドラムに圧接させた後に再給紙貯容手段上に排出すると共に、再給紙手段によって1枚目の用紙をプレスローラの外周面に沿わせて反転・再給紙してこの裏面をプレスローラによって印刷ドラムに圧接させた後に排紙部に排出するので、用紙に印刷される表刷画像および裏面画像が共にプレスローラにより印刷ドラムから転移されるインキによって形成され、良好な両面印刷物を得ることができる。
また、印刷部を印刷ドラムとこれよりも小径のプレスローラとから構成したので、通常の片面印刷用の孔版印刷装置に比べて大幅に大型化することなく両面印刷装置をコンパクトに構成でき、設置スペースの増大も抑制することができる。
【0185】
請求項記載の発明によれば、上記構成により、第1の印圧範囲パターンから第3の印圧範囲パターンへの切換動作時の移動距離と、第3の印圧範囲パターンから第2の印圧範囲パターンへの切換動作時の移動距離とを小さくすることができ、これにより印圧範囲パターンの切換所要時間を短縮することができる。
【0186】
請求項記載の発明によれば、上記構成により、版付け印刷または試し刷り印刷により両面印刷された1枚だけの印刷物を排紙部に排出することができ、再給紙貯容手段に印刷途中の印刷物が残ることもなく、版付けや試し刷りにおいて片面画像のみが印刷された無駄な印刷物を作る必要がなくなり、プレスローラの表面がインキで汚れることもない。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態を適用した両面印刷装置の概略的な正面図である。
【図2】図1の両面印刷装置における印刷ドラム外周面から離間したプレスローラを示す一部断面正面図である。
【図3】図1の両面印刷装置における印刷ドラム外周面に接触したプレスローラを示す一部断面正面図である。
【図4】図1の両面印刷装置に用いられる圧解除カムの形状およびそれらの位相関係を説明するための概略的な正面図である。
【図5】図1の両面印刷装置に用いられる印刷ドラム上の分割製版済みマスタに対応して適用される3つの印圧範囲パターンを展開して説明するための図である。
【図6】図1の両面印刷装置に用いられる印圧範囲可変手段の要部の図であって、図4の各圧解除カムを右横側から見たときの一部断面側面図である。
【図7】図1の両面印刷装置に用いられる分割製版済みマスタの平面図である。
【図8】図1の両面印刷装置に用いられる製版済みマスタの平面図である。
【図9】図1の両面印刷装置に用いられる操作パネルの平面図である。
【図10】図1の両面印刷装置の制御構成を示すブロック図である。
【図11】図1の両面印刷装置の要部の動作順序を示すフローチャートである。
【符号の説明】
1 両面印刷装置
2 印刷部
3 製版部
4 給紙部
6 排紙部
8 再給紙貯容手段としての再給紙トレイ
9 再給紙手段
10 切換手段としての切換部材
12 印刷ドラム
12A 第1の画像領域としての表面領域
12B 第2の画像領域としての裏面領域
12S 中間領域
13 押圧手段としてのプレスローラ
20 押圧手段支持部材としての印圧アーム
23 再給紙レジスト手段としての再給紙レジストローラ
25 再給紙搬送手段
40 再給紙レジスト接離手段としての再給紙レジスト接離機構
53 印圧範囲切換駆動手段としての圧解除カム切換用モータ
55 印圧範囲可変手段
65 分割製版済みマスタ
65A 第1の製版画像としての表面製版画像
65B 第2の製版画像としての裏面製版画像
65S 中間未製版領域
66 製版済みマスタ
66A 第3の製版画像としての片面印刷用製版画像
103 操作パネル
200 御手段
P 用紙

Claims (3)

  1. 印刷ドラムの回転方向に沿って第1の製版画像と第2の製版画像とが2面並んで形成された分割製版済みマスタを巻装する上記印刷ドラムおよび該印刷ドラムに対して相対的に接離自在な押圧手段としてのプレスローラを有する印刷部と、
    用紙を上記印刷部に向けて給送する給紙部と、
    上記印刷部において印刷された印刷済み用紙を排出する排紙部と、
    上記印刷部においてその表面に印刷画像を形成された表面印刷済み用紙を一時的に貯容する再給紙貯容手段と、
    上記再給紙貯容手段に貯容された表面印刷済み用紙を上記プレスローラに向けて搬送し、上記プレスローラの回転による表面印刷済み用紙の反転搬送によって上記印刷部に向けて再給紙する再給紙手段と、
    上記印刷部を通過した用紙を上記再給紙貯容手段または上記排紙部に案内する切換手段とを有し、
    両面印刷時に、上記給紙部より1枚目の用紙を上記印刷部に給送してその表面に第1の製版画像に対応した印刷を行い、印刷された1枚目の表面印刷済み用紙を上記切換手段により下向き方向に案内して上記再給紙貯容手段に案内した後、上記給紙部より2枚目の用紙を上記印刷部に給送してその表面に第1の製版画像に対応した印刷を行うと共に上記再給紙手段により1枚目の表面印刷済み用紙を、上記プレスローラの外周面に沿わせて上記印刷部に再給紙してその裏面に第2の製版画像に対応した印刷を行い、上記切換手段により1枚目の両面印刷済み用紙を略水平方向に案内して上記排紙部に、2枚目の表面印刷済み用紙を上記再給紙貯容手段にそれぞれ案内する両面印刷装置であって、
    上記印刷ドラム上の分割製版済みマスタにおける第1の製版画像に対応した第1の画像領域のみに印圧を付与する第1の印圧範囲パターンと、上記印刷ドラム上の分割製版済みマスタにおける第2の製版画像に対応した第2の画像領域のみに印圧を付与する第2の印圧範囲パターンと、第1の画像領域から続けて第2の画像領域に亘って印圧を付与する第3の印圧範囲パターンとの少なくとも3つの印圧範囲パターンのうちの一つを選択的に切り換え可能な印圧範囲可変手段を具備し、
    所定枚数の用紙に連続的に両面印刷を行う場合に、最初の1枚目の用紙に対する上記印刷ドラムの1回転目では、第1の印圧範囲パターンで第1の製版画像による表面印刷のみを行い、次の2枚目以降の上記印刷ドラムの回転では、第3の印圧範囲パターンで第1の製版画像による表面印刷と第2の製版画像による裏面印刷とを連続的に行い、上記両面印刷動作終了直前時における最終枚目の用紙に対する上記印刷ドラムの回転では、第2の印圧範囲パターンで第2の製版画像による裏面印刷のみを行うことを特徴とする両面印刷装置。
  2. 請求項1記載の両面印刷装置において、
    上記印圧範囲可変手段は、上記プレスローラに連結されたカムフォロアと係合して上記各印圧範囲パターンを設定するための、上記印刷ドラムの回転と同期して回転駆動されるカム軸に並設された少なくとも3つのカムと、上記カムフォロアと係合するように上記少なくとも3つのカムのうちの何れかに一つに切り換えるべく上記カム軸をその軸線方向に移動させる印圧範囲切換駆動手段とを具備し、
    連続的に両面印刷を行う場合に、全印圧動作回数のほとんどは、第3の印圧範囲パターンに対応して設定された第3のカムを用いた印圧となることにより、第3のカムを上記カム軸の中央に配置し、さらに該カム軸の移動距離を最小にするために、第1の印圧範囲パターンに対応して設定された第1のカムと第2の印圧範囲パターンに対応して設定された第2のカムとを第3のカムの両側の上記カム軸上にそれぞれ配置したことを特徴とする両面印刷装置。
  3. 請求項記載の両面印刷装置において、
    版付け印刷工程または試し刷り印刷工程においては、1枚だけの用紙に対して上記印刷ドラムの1回転目では、第1の印圧範囲パターンの第1のカムで第1の製版画像による表面印刷を行い、次にこの同じ表面印刷済み用紙に対して上記印刷ドラムの次の1回転では、第2の印圧範囲パターンの第2のカムで第2の製版画像による裏面印刷を行って、その印刷物をそのまま上記排紙部に排出する工程となることにより、
    上記版付け印刷工程または上記試し刷り印刷工程においては、第1の印圧範囲パターンと第2の印圧範囲パターンとの二つの印圧範囲パターンのみを用いるように上記印圧範囲可変手段を制御する制御手段を具備し、
    上記版付け印刷または上記試し刷り印刷により両面印刷された1枚だけの印刷物を上記排紙部に排出することを特徴とする両面印刷装置。
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