液晶基板や有機EL基板等のTFTアレイが形成された半導体基板の製造過程では、製造過程中にTFTアレイ検査工程を含み、このTFTアレイ検査工程において、TFTアレイの欠陥検査が行われている。
TFTアレイは、例えば液晶表示装置の画素電極を選択するスイッチング素子として用いられる。TFTアレイを備える基板は、例えば、走査線として機能する複数本のゲートラインが平行に配設されると共に、信号線として記載する複数本のソースラインがゲートラインに直交して配設され、両ラインが交差する部分の近傍にTFT(Thin film transistor)が配設され、このTFTに画素電極が接続される。
液晶表示装置は、上記したTFTアレイが設けられた基板と対向基板との間に液晶層を挟むことで構成され、対向基板が備える対向電極と画素電極との間に画素容量が形成される。画素電極には、上記の画素容量以外に付加容量(Cs)が接続される。この付加容量(Cs)の一方は画素電極に接続され、他方は共通ラインあるいはゲートラインに接続される。共通ラインに接続される構成のTFTアレイはCs on Com型TFTアレイと呼ばれ、ゲートラインに接続される構成のTFTアレイはCs on Gate型TFTアレイと呼ばれる。
このTFTアレイにおいて、走査線(ゲートライン)や信号線(ソースライン)の断線、走査線(ゲートライン)と信号線(ソースライン)の短絡、画素を駆動するTFTの特性不良による画素欠陥等の欠陥検査は、例えば、対向電極を接地し、ゲートラインの全部あるいは一部に、例えば、−15V〜+15Vの直流電圧を所定間隔で印加し、ソースラインの全部あるいは一部に検査信号を印加することによって行っている。(例えば、特許文献1の従来技術。)
TFTアレイの欠陥検出では、TFTアレイに欠陥検出用の駆動信号を入力し、そのときの電圧状態を検出することで欠陥検出を行うことができる。また、液晶の表示状態を観察することによって、TFTアレイの欠陥検出を行っても良い。液晶の表示状態を観察することによってTFTアレイを検査する場合には、TFTアレイ基板と対向電極との間に液晶層を挟んだ液晶表示装置の状態で検査する他に、液晶層と対向電極を備えた検査治具をTFTアレイ基板に取り付けることによって、液晶表示装置に至らない半製品の状態で検査することもできる。
TFTアレイには、その製造プロセス中に様々な欠陥が発生する可能性がある。この欠陥の中には、隣接欠陥と呼ばれるものがある。この隣接欠陥として、横方向で隣接するピクセル間の欠陥(横PPと呼ばれる)、縦方向で隣接するピクセル間の欠陥(縦PPと呼ばれる)、隣接するソースライン間の短絡(SSshortと呼ばれる)、隣接するゲートライン間の短絡(GGshortと呼ばれる)が知られている。
図7(a)は横方向の隣接欠陥を説明するための図である。図7(a)中の破線は、横方向で隣接するピクセル12eoと12eeと間の短絡欠陥(横PP)と、横方向で隣接するソースラインSoとSeとの間の短絡欠陥(SSshort)をそれぞれ示している。
図7(b)は縦方向の隣接欠陥を説明するための図である。図7(b)中の破線は、縦方向で隣接するピクセル12ooと12eoとの間(あるいはピクセル12oeと12eeとの間)の短絡欠陥(縦ピクセル間欠陥)と、縦方向で隣接するゲートラインGoとGeとの間の短絡欠陥(ゲート間short)をそれぞれ示している。
TFT基板上のTFTアレイを一様に駆動する駆動パターンによって欠陥検査を行った場合には、上記のような隣接欠陥を検出することはできない。そこで、従来の欠陥検査では、隣接欠陥を検出するために、横方向隣接欠陥のための検査パターンと縦方向隣接欠陥のための検査パターンとをそれぞれ独立した検査パターンを用い、それぞれの検査パターンによって横方向隣接欠陥と縦方向隣接欠陥とをそれぞれ独立して検出している。
電子線を用いたTFTアレイ検査装置では、ピクセル(ITO電極)に対して電子線を照射し、この電子線照射によって放出される二次電子を検出することによって、ピクセル(ITO電極)に印加された電圧波形を二次電子波形に変えて、信号によるイメージ化し、これによってTFTアレイの電気的検査を行っている。
図8(a)〜(d)は隣接欠陥を検出するための検査パターンであり、図9(a),(b)は図8(a)〜(d)で示す検査パターンで駆動した際に発生するピクセル(ITO)の電圧状態を示している。なお、図8(a),(b)はゲート電圧を示し、図8(c),(d)はソース電圧を示している。
横方向隣接欠陥を検出するための検査パターンで駆動した場合には、TFTアレイ上において+電圧のピクセル(ITO)と−電圧のピクセル(ITO)が形成する電圧分布は、縦縞パターンとなる。図9(a)は、例えば図8(a)〜(d)中の1〜5で示す期間の電圧を印加したときの縦縞パターンを示し、図9(b)は、図8(a)〜(d)中の6〜10で示す期間の電圧を印加したときの縦縞パターンを示している。
この縦縞パターンは、TFTアレイの縦方向のピクセルを同電圧とし、隣接する縦方向のピクセル列同士は異なる電圧としている。これによって、横方向隣接欠陥を検出する。
また、図8(e)〜(h)は縦方向隣接欠陥を検出するための検査パターンであり、図9(c),(d)は図8(e)〜(h)で示す検査パターンで駆動した際に発生するピクセル(ITO)の電圧状態を示している。
縦方向隣接欠陥を検出するための検査パターンで駆動した場合には、TFTアレイ上において+電圧のピクセル(ITO)と−電圧のピクセル(ITO)が形成する電圧分布は、横縞パターンとなる。図9(c)は、例えば図8(e)〜(h)中の1〜5で示す期間の電圧を印加したときの縦縞パターンを示し、図9(d)は、図8(e)〜(h)中の6〜10で示す期間の電圧を印加したときの横縞パターンを示している。
この横縞パターンは、TFTアレイの横方向のピクセルを同電圧とし、隣接する縦方向のピクセル列同士は異なる電圧としている。これによって、縦方向隣接欠陥を検出する。
上記したように、横方向隣接欠陥および縦方向隣接欠陥を検出するには、縦縞パターンと横縞パターンの2種類の検査パターンが必要である。
本出願の発明者は、TFTアレイ検査において1種類の検査パターンによって隣接欠陥の検出する検査信号パターンを提案している。この検査信号パターンは、TFTアレイの隣接する画素電極に互いに異なる電圧を印加することで、二次元配列される画素電極の電圧を縦方向および横方向で交互に異なる電位分布を形成する。図8(i)〜(l)は縦方向および横方向の隣接欠陥を検出するための検査パターンであり、図9(e),(f)は図11(i)〜(l)で示す検査パターンで駆動した際に発生するピクセル(ITO)の電圧状態を示している。
上記したように、横方向隣接欠陥のための検査パターンや縦方向隣接欠陥のための検査パターンのそれぞれ独立した検査パターン、あるいは、横方向および縦方向の隣接欠陥を1種類の検査パターンを用いることができ、これらの検査パターンによって、TFTアレイを駆動しながら電子ビームを照射し、電子ビームの照射によってITOピクセルから発生する二次電子の信号強度を検出することで、TFTアレイを一様駆動する駆動パターンでは検出できない隣接欠陥を検出する。
従来、TFTアレイを一様駆動する駆動パターンで駆動し、このときのピクセルの電圧状態を二次電子検出器で検出し、コリレータと呼ばれる乗算器において、二次電子検出器で検出した検出波形にマスク信号を掛け合わせることにより、正常ピクセルと欠陥ピクセルとを画像表示上で区別して表示している。正常ピクセルと欠陥ピクセルは、画像表示上においてコントラストによって区別して表示することができる。ここで、このマスク信号として、正常なピクセルにより得られる理想波形を用いている。
特開平5−307192号公報
コリレータと呼ばれる乗算器において、TFTアレイの一様駆動で検出される検出波形にマスク信号を掛け合わせる検出信号処理により、正常ピクセルと欠陥ピクセルとを画像表示上で区別して表示することができるが、前記した隣接欠陥を検出する検査パターンによってTFTアレイを駆動した場合には、上記した従来の検出信号処理では、正常ピクセルと欠陥ピクセルとを区別することができないという問題がある。
これは、隣接欠陥を検出するための検査パターンによって得られる検出信号は、位相が異なる2種類の検出信号を含むため、従来の一様駆動する駆動パターンによる検出波形を検出するマスク信号を用いた場合には、位相が異なる2種類の検出波形に対応できないためである。
例えば、図10は横方向隣接欠陥のための検査パターンによる検出処理例を示している。ここで、180度位相が異なる検出波形を“A”と“B”で表したとき、図10(a)は“A”に対応するマスク信号を用いた場合を示し、図10(b)は“B”に対応するマスク信号を用いた場合を示している。この場合には、位相が異なる検出信号については、正常ピクセルであっても欠陥ピクセルとして誤検出されることになる。
また、図10(c)は欠陥ピクセルを含む場合(図中の格子模様のピクセルを欠陥ピクセルとしている)を示している。この場合には、正常ピクセルと欠陥ピクセルとを区別することができない。
図11は縦方向隣接欠陥のための検査パターンによる検出処理の例を示している。ここで、上述した例と同様に、180度位相が異なる検出波形を“A”と“B”で表したとき、図11(a)は“A”に対応するマスク信号を用いた場合を示し、図11(b)は“B”に対応するマスク信号を用いた場合を示している。この場合においても、位相が異なる検出信号については、正常ピクセルであっても欠陥ピクセルとして誤検出されることになる。
また、図11(c)は欠陥ピクセルを含む場合(図中の格子模様のピクセルを欠陥ピクセルとしている)を示している。この場合においても、正常ピクセルと欠陥ピクセルとを区別することができない。
また、図12は1種類のパターンで縦方向および横方向の隣接欠陥を検査する検査パターン例を示している。ここで、上述した例と同様に、180度位相が異なる検出波形を“A”と“B”で表したとき、図12(a)は“A”に対応するマスク信号を用いた場合を示し、図12(b)は“B”に対応するマスク信号を用いた場合を示している。この場合においても、位相が異なる検出信号については、正常ピクセルであっても欠陥ピクセルとして誤検出されることになる。
また、図12(c)は欠陥ピクセルを含む場合(図中の格子模様のピクセルを欠陥ピクセルとしている)を示している。この場合においても、正常ピクセルと欠陥ピクセルとを区別することができない。
そこで、本発明は上記課題を解決して、TFTアレイの欠陥検出において、正常ピクセルと欠陥ピクセルとを区別して検出することを目的とし、さらに詳細には、位相が異なる2種類の検出波形を含む検出信号から、正常ピクセルと欠陥ピクセルとを区別して検出することを目的とする。
本発明は、複数のコリレータを用い、これらのコリレータにそれぞれマスク信号を設定し、さらに、各コリレータの出力を加算し、得られた加算結果をイメージング化(画像化)することで、正常ピクセルと欠陥ピクセルとを区別して表示することができる。また、このイメージング化では、正常ピクセルは均一なコントラストで表すことができる。
本発明の一態様であるTFTアレイの欠陥検出方法は、TFT基板のTFTアレイに対して電圧を印加することによりTFTアレイの欠陥を検出する方法であり、TFTアレイを欠陥検出用の駆動パターンで駆動し、この欠陥検出用の駆動パターンにより駆動されるTFTアレイの複数の画素電極の電位を検出する。検出したTFTアレイの検出信号に複数のマスク信号を乗算して、各画素について複数の乗算出力を求め、各画素について求めた複数の乗算出力を加算する。この加算結果を画像化することによって、正常ピクセルと欠陥ピクセルとを区別して表示し検出する。
本発明の欠陥検出方法は、欠陥検出用の駆動パターンによって得られる位相が異なる各検出信号にそれぞれに対応するマスク信号を乗じることで得られる乗算出力によって、各位相の検出信号について正常ピクセルと欠陥ピクセルとを判別する。さらに、これらの複数の乗算出力を加算することで、欠陥検出用の駆動パターンで駆動する全TFTアレイについて、正常ピクセルと欠陥ピクセルとを区別して検出する。
ここで、マスク信号は、欠陥検出用の駆動パターンにより正常なTFTアレイを駆動した際に、画素電極から得られる位相が180度異なる検出信号の少なくとも何れか一方の検出信号とすることができる。
欠陥検出用の駆動パターンは、縦方向の隣接欠陥を検査する検査パターンや、横方向の隣接欠陥を検査する検査パターンの他に、1種類のパターンで縦方向および横方向の隣接欠陥を検査する検査パターンを用いることができる。
1種類のパターンで縦方向および横方向の隣接欠陥を検査する検査パターンは、TFTアレイの隣接する画素電極に互いに異なる電圧を印加するパターンを用いることができ、この検査パターンによれば、二次元配列される画素電極の電圧が縦方向および横方向で交互に異なる電位分布を形成し、縦方向および横方向の隣接欠陥を検査する。
本発明の他の態様であるTFTアレイの欠陥検出装置は、TFT基板のTFTアレイに対して電圧を印加し、当該電圧印加による電圧状態を検出することによりTFTアレイの欠陥を検出するTFTアレイの欠陥検出装置であり、TFT基板に電子線を照射する電子線源と、TFT基板から放出される二次電子を検出する検出器と、TFT基板のTFTアレイを欠陥検出用の駆動パターンで駆動するTFTアレイ駆動部と、検出器の検出信号に基づいてTFTアレイの欠陥を検出する欠陥検出部とを備える。
欠陥検出部は、TFTアレイの検出信号にマスク信号を乗算して各画素について乗算出力を求める複数の乗算回路を備える乗算部と、複数の乗算回路の複数の乗算出力を加算する加算部とを備える。さらに、欠陥検出装置は、加算部の加算結果を画像表示する表示部を備えることができる。乗算部は2つの乗算回路を備え、各乗算回路は位相が180度異なるマスク信号を乗算する。
本発明によれば、TFTアレイの欠陥検出において、正常ピクセルと欠陥ピクセルとを区別して検出することができる。
また、位相が異なる2種類の検出波形を含む検出信号から、正常ピクセルと欠陥ピクセルとを区別して検出することができる。
以下、本発明の実施の形態について、図を参照しながら詳細に説明する。
図1は、本発明のTFTアレイ検査装置の概略図である。
TFTアレイ欠陥検出装置1は、TFT基板10にアレイ検査用の検査信号を生成してTFTアレイを駆動するTFTアレイ駆動部4と、TFTアレイ駆動部4の検査用の駆動信号をTFT基板10のTFTアレイに印加するプローバ8と、TFTアレイ電圧印加状態を検出する機構(2,3,5)と、検出信号に基づいてTFTアレイの欠陥を検出する欠陥検出部6と、欠陥検出部6で検出した結果を表示する表示部11を備える。
プローバ8は、プローブピンが設けられたプローバフレームを備え、TFT基板10上に載置する等によってプローブピンをTFT基板10上に形成した電極に接触させ、TFTアレイに検査信号を印加する。
TFT基板の電圧印加状態を検出する機構は種々の構成とすることができる。図1に示す構成は、電子線による検出構成である。この電子線による構成では、TFT基板10上に電子線を照射する電子線源2、照射された電子線によってTFT基板10のTFTアレイの各ITO電極から放出される二次電子を検出する二次電子検出器3、二次電子検出器3の検出信号を信号処理してTFT基板10の各TFTアレイの電位状態を検出する信号処理部5等を備える。
電子線が照射されたTFTアレイのITO電極は、印加された検査信号の電圧に応じた二次電子を放出するため、この二次電子を検出することによって、TFTアレイの電位状態を検出することができる。
欠陥検出部6は、信号処理部5で取得したTFTアレイの電位状態に基づいて、正常状態における電位状態と比較することによってTFTアレイの欠陥を検出する。
TFTアレイ駆動部4は、TFT基板10上に形成されるTFTアレイを駆動する検査信号の検査パターンを生成する。
この検査パターンは、前記図11で示した横方向隣接欠陥のための検査パターンや縦方向隣接欠陥のための検査パターンのそれぞれ独立した検査パターン、あるいは、横方向および縦方向の隣接欠陥を1種類のパターンで検査する検査パターンを用いることができる。
走査制御部9は、TFT基板10上のTFTアレイの検査位置を走査するために、ステージ7や電子源2を制御する。ステージ7は、載置するTFT基板10をXY方向に移動し、また、電子源2はTFT基板10に照射する電子線をXY方向に振ることで、電子線の照射位置を走査する。走査位置が検出位置となる。
なお、上記したTFTアレイ検査装置の構成は一例であり、この構成に限られるものではない。
次に、本発明の欠陥検出部で行う信号処理について図2〜図9を用いて説明する。本発明の欠陥検出部6は、二次電子検出器3で検出した位相が異なる複数の検出信号について、複数のマスク信号を乗算して、各画素について複数の乗算出力を求め、各画素について求めた複数の乗算出力を加算することによって、検出信号の位相が異なる場合であっても、正常ピクセルと欠陥ピクセルとを区別して検出する。
はじめに、本発明の欠陥検出部の構成例について、図2を用いて説明する。
図2は本発明の欠陥検出部6の構成例を説明するための概略構成図である。欠陥検出部6は、検出信号にマスク信号Mを乗算して各画素について乗算出力を求める複数の乗算部6Aと、この複数の乗算回路6Aの複数の乗算出力を加算する加算部6Bとを備える。表示部11は、加算部6Bで加算された複数の乗算出力を画像表示する。表示部11による画像表示では、例えば、正常ピクセルを表示するコントラストと、欠陥ピクセルを表示するコントラストとを異ならせることで区別して表示することができる。
通常、TFT基板が備える複数のTFTアレイはほとんどが正常であり、正常なTFTアレイを有する正常ピクセルの表示状態はほぼ同様となり、表示コントラストも同様となる。これに対して、欠陥箇所を持つTFTアレイを有する欠陥ピクセルは、正常ピクセルとは異なる表示状態となり、正常ピクセルとは異なるコントラストで表示される。
したがって、表示部11に表示され各ピクセルのコントラストを観察することで、正常ピクセルと欠陥ピクセルとを区別し、欠陥ピクセルの位置を確認することができる。
乗算部6Aは、二次電子検出器3で検出した検出信号を信号出力部5から入力し、この検出信号にマスク信号を乗算することによって、検出信号中にマスク信号と同じ信号波形が含まれているか否かを判定する。このマスク信号として、正常ピクセルを検査パターンで駆動したときに得られる信号波形を用いることで、検査ピクセルが正常な場合には、検出信号とマスク信号の信号波形は同じとなり、乗算することで所定の信号強度が得られる。一方、検査ピクセルが欠陥を含む場合には、検出信号とマスク信号の信号波形は異なるため、乗算することで正常ピクセルとは異なる信号強度が得られる。この乗算信号の信号強度によって、正常ピクセルと欠陥ピクセルとを区別することができる。
ここで、横方向隣接欠陥および縦方向隣接欠陥を検出する検査パターンによって駆動されて得られる検出信号は、2つの位相の信号波形を有している。そのため、1種類のマスク信号では、検出信号に含まれる一つの位相の信号波形のみを検出し、他の位相の信号波形を検出することができない。
そこで、本発明の乗算部6Aは、2つの乗算回路6Aa、6Abを備え、この乗算路6Aa、6Abに対して二次電子検出器3で検出した検出信号を入力し、それぞれ異なるマスク信号Ma,Mbを乗算する構成とする。マスク信号Ma,Mbは、検査パターンによって駆動されて得られる、2つの位相の信号波形の検出信号にそれぞれ対応するマスク信号である。乗算回路6Aaは、マスク信号Maを乗算することによって検出信号に含まれる一方の位相の検出信号を抽出し、乗算回路6Abは、マスク信号Mbを乗算することによって検出信号に含まれる他方の位相の検出信号を抽出する。なお、マスク信号Maの信号波形は、正常なピクセルから得られる検出信号に含まれる一方の位相の検出信号に基づいて予め形成し、マスク信号Mbの信号波形は、正常なピクセルから得られる検出信号に含まれる他方の位相の検出信号に基づいて予め形成しておく。
乗算回路6Aaと乗算回路6Abは独立して構成され、各乗算回路の乗算結果はそれぞれ異なる位相の検出信号の有無を表し、何れか一方の乗算結果のみでは、TFTアレイ全体の欠陥を検出することはできない。
そこで、本発明の欠陥検出部6は、2つの乗算回路6Aaと乗算回路6Abの乗算結果を加算する加算部6Bを備える。この加算部6Bは、乗算回路6Aaと乗算回路6Abの乗算結果を加算することで、TFTアレイ全体の欠陥状態を表す欠陥検出結果を得ることができる。表示部11は、この欠陥検出結果に基づくことによって、TFTアレイ全体の欠陥状態を正常ピクセルと欠陥ピクセルと区別して表示することができる。
次に、本発明の欠陥検出部の構成例および動作例について、図3〜図5を用いて説明する。図3〜図5に示す構成例は、各乗算回路において位相が異なるマスク信号を用いる例を示している。
図3は横方向および縦方向の隣接欠陥を1種類のパターンで検査する場合の動作例を示し、図4は横方向隣接欠陥を検査する検査パターンによる動作例を示し、図5は縦方向隣接欠陥を検査する検査パターンによる動作例を示している。
1種類のパターンで横方向および縦方向の隣接欠陥を検査する検査パターンの場合には、図3に示すように、縦方向および横方向で互いに異なる位相の検出信号が得られる。ここでは、位相A(“+”で表示)と位相B(“−”で表示)で表す。この検出信号に対して、一方の乗算回路は位相Aのマスク信号を乗算し、他方の乗算回路は位相Bのマスク信号を乗算する。
図3(a)は図示する4つの画素のピクセルが正常である場合を示し、図3(b)は4つの画素のピクセルの内1つのピクセルが欠陥である場合(格子状の模様で表示するピクセル)を示している。
図3(a)において、一方の乗算回路6Aaは、位相Aのマスク信号を乗算することによって検出信号中の位相Aを含むピクセル(図中の無地で示す)と、位相Bを含むピクセル(図中の斜線模様で示す)とを区別して抽出する。また、他方の乗算回路6Abは、位相Bのマスク信号を乗算することによって検出信号中の位相Bを含むピクセル(図中の無地で示す)と、位相Aを含むピクセル(図中の斜線模様で示す)とを区別して抽出する。
加算部6Bは、乗算回路6Aaの乗算結果と乗算回路6Abの乗算結果を加算し、4つの画素のピクセルが正常である検出信号が得られる。
図3(b)において、一方の乗算回路6Aaは、位相Aのマスク信号を乗算することによって検出信号中の位相Aを含むピクセル(図中の無地で示す)と、位相Bを含むピクセルおよび欠陥ピクセル(図中の斜線模様で示す)を区別して抽出する。また、他方の乗算回路6Abは、位相Bのマスク信号を乗算することによって検出信号中の位相Bを含むピクセル(図中の無地で示す)と、位相Aを含むピクセルおよび欠陥ピクセル(図中の斜線模様で示す)とを区別して抽出する。
加算部6Bは、乗算回路6Aaの乗算結果と乗算回路6Abの乗算結果を加算し、欠陥ピクセルと正常ピクセルとを区別する検出信号を求めることができる。
横方向の隣接欠陥を検査する検査パターンの場合には、図4に示すように、横方向で互いに異なる位相の検出信号が得られる。この検出信号に対して、一方の乗算回路は位相A(“+”で表示)のマスク信号を乗算し、他方の乗算回路は位相B(“−”で表示)のマスク信号を乗算する。
図4(a)は図示する4つの画素のピクセルが正常である場合を示し、図4(b)は4つの画素のピクセルの内1つのピクセルが欠陥である場合(格子状の模様で表示するピクセル)を示している。
図4(a)において、一方の乗算回路6Aaは、位相Aのマスク信号を乗算することによって検出信号中の位相Aを含むピクセル(図中の無地で示す)と、位相Bを含むピクセル(図中の斜線模様で示す)とを区別して抽出する。また、他方の乗算回路6Abは、位相Bのマスク信号を乗算することによって検出信号中の位相Bを含むピクセル(図中の無地で示す)と、位相Aを含むピクセル(図中の斜線模様で示す)を区別して抽出する。
加算部6Bは、乗算回路6Aaの乗算結果と乗算回路6Abの乗算結果を加算し、4つの画素のピクセルが正常である検出信号が得られる。
図4(b)において、一方の乗算回路6Aaは、位相Aのマスク信号を乗算することによって検出信号中の位相Aを含むピクセル(図中の無地で示す)と、位相Bを含むピクセルおよび欠陥ピクセル(図中の斜線模様で示す)と区別して抽出する。また、他方の乗算回路6Abは、位相Bのマスク信号を乗算することによって検出信号中の位相Bを含むピクセル(図中の無地で示す)と、位相Aを含むピクセルおよび欠陥ピクセル(図中の斜線模様で示す)とを区別して抽出する。
加算部6Bは、乗算回路6Aaの乗算結果と乗算回路6Abの乗算結果を加算し、欠陥ピクセルと正常ピクセルとを区別する検出信号を求めることができる。
また、図5に示した縦方向隣接欠陥を検査する検査パターンによる動作例においても、前記図3,図4と同様の動作によって、欠陥ピクセルと正常ピクセルとを区別する検出信号を求めることができる。ここでは、図5の説明を省略する。
次に、本発明の欠陥検出部の第2の構成例およびその動作例について、図6を用いて説明する。図6に示す第2の構成例は、片方の乗算回路に入力する検出信号の位相を反転させ、両乗算回路に対して位相を同じにするマスク信号を用いる例を示している。
図6は横方向および縦方向の隣接欠陥を1種類のパターンで検査する場合の動作例を示している。
1種類のパターンで横方向および縦方向の隣接欠陥を検査する検査パターンの場合には、図6に示すように、縦方向および横方向で互いに異なる位相の検出信号が得られる。
一方の乗算回路には、この検出信号を入力して位相Aのマスク信号を乗算し、他方の乗算回路には、位相を反転した検出信号を入力して位相Aのマスク信号を乗算する。
図6(a)は図示する4つの画素のピクセルが正常である場合を示し、図6(b)は4つの画素のピクセルの内1つのピクセルが欠陥である場合(格子状の模様で表示するピクセル)を示している。
図6(a)において、一方の乗算回路6Aaは、位相Aのマスク信号を乗算することによって検出信号中の位相Aを含むピクセル(図中の無地で示す)と、位相Bを含むピクセル(図中の斜線模様で示す)とを区別して抽出する。また、他方の乗算回路6Abには、反転回路6Cによって位相を180度反転させた検出信号を入力し、位相Aのマスク信号を乗算することによって検出信号中の位相B(反転信号中の位相A)を含むピクセル(図中の無地で示す)と、位相A(反転信号中の位相B)を含むピクセル(図中の斜線模様で示す)とを区別して抽出する。
加算部6Bは、乗算回路6Aaの乗算結果と乗算回路6Abの乗算結果を加算し、4つの画素のピクセルが正常である検出信号が得られる。
図6(b)において、一方の乗算回路6Aaは、位相Aのマスク信号を乗算することによって検出信号中の位相Aを含むピクセル(図中の無地で示す)と、位相Bを含むピクセルおよび欠陥ピクセル(図中の斜線模様で示す)を区別して抽出する。また、他方の乗算回路6Abには、反転回路6Cによって位相を180度反転させた検出信号を入力し、位相aのマスク信号を乗算することによって検出信号中の位相B(反転信号中の位相A)を含むピクセル(図中の無地で示す)と、位相A(反転信号中の位相B)を含むピクセルおよび欠陥ピクセル(図中の斜線模様で示す)とを区別して抽出する。
加算部6Bは、乗算回路6Aaの乗算結果と乗算回路6Abの乗算結果を加算し、欠陥ピクセルと正常ピクセルとを区別する検出信号を求めることができる。
1…TFTアレイ検査装置、2…電子源、3…二次電子検出器、4…TFTアレイ駆動部、5…信号処理部、6…欠陥検出部、6A…乗算部、6Aa,6Ab…乗算回路、6B…加算部、6C…反転部、7…ステージ、8…プローブ、9…走査制御部、10…TFT基板、11…表示部。