JP4783962B2 - 二次電池用電解質および二次電池 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、高分子電解質である二次電池用電解質およびその二次電池用電解質を用いた二次電池に関し、詳しくは高いイオン伝導度を示す電池等の電気化学デバイス用の材料として有用な高分子電解質である二次電池用電解質およびこの電解質を用いた二次電池に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、電子製品の高性能化、小型化に対する要求が強く、そのエネルギー源である電池材料に対しても、小型化、軽量化でかつ高容量、高エネルギー密度が求められ、種々の研究開発が行われている。
【0003】
近年そのような電子製品のエネルギー源としてリチウムイオン二次電池が用いられている。リチウムイオン二次電池は一般的に金属酸化物を正極、炭素材料等を負極に、そして極間にセパレータと電解液を挟んだ構造をしている。これは高エネルギー密度を有する二次電池であるが、電解液を使用するために、液漏れの問題から安全性に課題があり、さらに液漏れを防ぐために金属缶を外装として用いる必要があるため、軽量化が困難となっている。
電解液を用いた場合の欠点を克服するために、高分子化合物を電解質に使用したいわゆる高分子電解質が種々検討されている。高分子電解質は可堯性を有し、機械的衝撃にも追従し、さらに電極−電解質間でのイオン電子交換反応に際して生じる電極の体積変化にも追従し得る特徴を有している。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
このような高分子電解質としては、米国特許第4303748号明細書ではポリアルキレンオキシドにアルカリ金属塩またはアルカリ金属塩を溶解した固体電解質が提案されているが、イオン伝導度が不十分で、さらに極材との接触抵抗が高いといった課題が残されている。このようにイオン伝導度が不十分であった場合には、充電および放電時の電流密度が充分に得られず、大電流を必要とする用途には適用できず、用途が限定されてしまう。
これに対して、有機高分子化合物に非水系有機溶媒を含浸させた、いわゆるゲル電解質と呼ばれる系が、特公昭61−23945号公報、特公昭61−23947号公報、米国特許第4830939号明細書および米国特許第5429891号明細書において提案されている。このようなゲル電解質においては、電解液がマトリクスとなる高分子化合物に包含された形となって、イオン伝導性を担っている。しかしながら電解液の保持性が温度変化によって失われあるいは低下する問題がある。さらに、高いイオン伝導度を得るためには、より多くの電解液を高分子化合物に含浸させる必要があるが、そのような場合には前記の電解液保持性の低下やひいては液漏れ発生の可能性が懸念される。
また、J.Polymer Science:Polymer Physics,21巻939頁(1983年)ではポリアクリロニトリルを基材とした高分子電解質が提案されているが、上記のように非水系有機溶媒を含浸させた場合にはある程度の伝導度が得られるものの、非水系有機溶媒を用いなかった場合にはイオン伝導度が得られず、上記高分子電解質と同様に、充電および放電時の電流密度が充分に得られず、大電流を必要とする用途には適用できず、用途が限定されてしまう。
本発明は、高いイオン伝導度を示し、安全性に優れた二次電池等の電気化学デバイス用の材料として有用な高分子電解質である二次電池用電解質およびこの電解質を用いたサイクル特性に優れた二次電池を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
すなわち本発明は、
(ア)イオン性化合物および有機高分子化合物からなる二次電池用電解質において、有機高分子化合物が式(1)で示されるニトリル基含有化合物を20〜100重量%含有し、イオン性化合物がアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩であることを特徴とする二次電池用電解質、
1−[(A1O)l−R1a(1)
(Z1は1〜6個の水酸基を持つ化合物の残基、A1Oは炭素数2〜4のオキシアルキレン基の1種または2種以上の混合物であり、R1はシアノエチル基、炭素数1〜12の炭化水素基、水素原子から選ばれる基であり、少なくとも一つはシアノエチル基であり、l=0〜600、a=1〜6であり、かつla=0〜600である。)
(イ)有機高分子化合物が、式(2)で示される化合物をホウ酸または無水ホウ酸によりエステル化することによって得られるホウ酸エステル化合物を含有することを特徴とする(ア)記載の二次電池用電解質、
2−[(A2O)m−H]b(2)
(Z2は1〜6個の水酸基を持つ化合物の残基、A2Oは炭素数2〜4のオキシアルキレン基の1種または2種以上の混合物であり、m=0〜600、b=1〜6であり、かつmb=0〜600である。)
(ウ)有機高分子化合物が、式(3)で示される化合物の重合物を含有することを特徴とする(ア)または(イ)記載の二次電池用電解質、
3−[(A3O)n−R2c(3)
(Z3は1〜4個の水酸基を持つ化合物の残基または水酸基であり、A3Oは炭素数2〜4のオキシアルキレン基の1種または2種以上の混合物であり、n=0〜150、c=1〜4であり、かつnc=0〜300であり、R2は水素原子または式(4)で示される基である。)
【0006】
【化2】
Figure 0004783962
【0007】
(R3およびR4は水素原子またはメチル基である。)
(エ)(ア)、(イ)または(ウ)記載の二次電池用電解質を用いる二次電池である。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明に用いる式(1)で示されるニトリル基含有化合物において、Z1は1〜6個の水酸基を持つ化合物の残基である。
1〜6個の水酸基を持つ化合物としては、例えばメチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、2−ブチルアルコール、t−ブチルアルコール、n−ヘキシルアルコール、n−オクチルアルコール、イソオクチルアルコール、デシルアルコール、ドデシルアルコール、トリデシルアルコール、テトラデシルアルコール、ヘキサデシルアルコール、オクタデシルアルコール、オクタデセニルアルコール、イコシルアルコール、テトライコシルアルコール等のモノオール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール等のジオール、グリセリン、トリメチロールプロパン等のトリオール、ペンタエリスリトール、ジグリセリン等のテトラオールなどが挙げられ、好ましくは炭素数1〜24の化合物であり、より好ましくは炭素数1〜5の1〜4個の水酸基を有する化合物である。
【0009】
1Oで示される炭素数2〜4のオキシアルキレン基は、オキシエチレン基、オキシプロピレン基、オキシブチレン基、オキシテトラメチレン基などが挙げられ、好ましくはオキシエチレン基またはオキシプロピレン基である。またこれらの1種または2種以上の混合物でもよく、2種以上の場合の重合形式はブロック状、ランダム状のいずれでもよい。
lは炭素数2〜4のオキシアルキレン基の平均付加モル数であり、0〜600、好ましくは0〜100、より好ましくは1〜40である。600を超えるとニトリル基の導入量が少なくなり、高いイオン伝導度が得られにくくなる。
aは1〜6であり、好ましくは2〜4である。
laは0〜600、好ましくは0〜300、より好ましくは1〜120である。600を超えるとニトリル基の導入量が少なくなり、高いイオン伝導度が得られにくくなる。
1はシアノエチル基、炭素数1〜12の炭化水素基、水素原子から選ばれる基であり、少なくとも一つはシアノエチル基である。R1の半数以上はシアノエチル基であることが好ましく、R1の全てがシアノエチル基であることがより好ましい。
【0010】
本発明に用いられる式(1)で示されるニトリル基含有化合物の基質となる水酸基含有化合物は、従来から知られている開環重合により得ることができる。例えば、1〜6個の水酸基を持つ化合物に、従来から知られている水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、ナトリウムメチラート等のアルカリ金属塩、三フッ化ホウ素エーテラート、四塩化錫、三塩化アルミニウム等のルイス酸等の開環重合触媒を用いて、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、テトラヒドロフランなどの炭素数2〜4のアルキレンオキシドを所定のモル比で重合させることで合成することができる。
また上記開環重合の後に、アルキルエーテル化反応を行っても良い。例えば上記反応生成物に、従来から知られている水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム等のアルカリ金属塩を触媒として、塩化メチル、塩化ブチル、塩化オクチル、臭化メチル、臭化ブチル等のハロゲン化アルキルを所定のモル比で反応させることで合成することができる。
【0011】
本発明に用いられるニトリル基含有化合物は、式(1)で示されるニトリル基含有化合物の基質となる水酸基含有化合物に、30〜80℃にて不活性ガス通気下でアクリロニトリルを滴下反応することで得られる。例えば反応温度35〜60℃において、触媒量の水酸化アルカリの存在下、窒素ガスを適当量通気しつつ、撹拌しながらアクリロニトリルを徐々に滴下し、2〜12時間保持することでシアノエチル化反応が起こり、ニトリル基含有化合物が生成する。
なお、前記アルキルエーテル化反応と、シアノエチル化反応の順序はどちらを先に行っても良い。
【0012】
有機高分子化合物中のニトリル基含有化合物の含有量は5〜100重量%用いることが好ましく、20〜100重量%用いることがより好ましい。
【0013】
本発明に用いられるニトリル基含有化合物は、マトリクスの柔軟性付与によるイオン伝導度の向上の目的から、式(2)で示される化合物をホウ酸エステル化した化合物との混合系で用いることが好ましい。
本発明に用いるホウ酸エステル化合物の基質となる式(2)で示される化合物において、Z2は1〜6個の水酸基を持つ化合物の残基であり、前記Z1として例示したものと同じである。また、好ましい化合物、より好ましい化合物についても前記Z1と同じである。
【0014】
2Oで示される炭素数2〜4のオキシアルキレン基についても、前記A1Oで例示したものと同じであり、混合物についても、重合形態についても同じである。
mは炭素数2〜4のオキシアルキレン基の平均付加モル数であり、0〜600、好ましくは0〜100、より好ましくは1〜30である。600を超えるとホウ酸エステル結合の導入量が少なくなり、高いイオン伝導度が得難くなる。
bは1〜6であり、好ましくは1〜4である。
mbは0〜600、好ましくは0〜100、より好ましくは1〜50である。600を超えるとホウ酸エステル結合の導入量が少なくなり、高いイオン伝導度が得難くなる。
【0015】
本発明に用いられるホウ酸エステルの基質となる式(2)で示される化合物は、従来から知られている開環重合により得ることができる。例えば、1〜6個の水酸基を持つ化合物に、従来から知られている水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、ソジウムメチラート等のアルカリ金属塩、三フッ化ホウ素エーテラート、四塩化錫、三塩化アルミニウム等のルイス酸等の開環重合触媒を用いて、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、テトラヒドロフランなどの炭素数2〜4のアルキレンオキシドを所定のモル比で重合させることで合成することができる。
【0016】
本発明に用いられるホウ酸エステル化合物は、式(2)で示される化合物にオルトホウ酸、メタホウ酸、ピロホウ酸などのホウ酸または無水ホウ酸を加え、50〜200℃にて不活性ガス通気下で真空による脱水反応することで得られる。例えば反応温度60〜120℃、10〜50mmHgの真空下において、窒素ガスを適当量通気しつつ、撹拌しながら2〜12時間脱水反応することでホウ酸エステル化合物が生成する。
式(2)で示される化合物の水酸基1モルに対して、ホウ素原子1/3モルの比率において、ポリアルキレンオキシドホウ酸トリエステルが生成する。
ホウ酸エステル化の割合は、水酸基とホウ素原子のモル比率によって任意に調整可能であるが、式(2)で示される化合物の水酸基とホウ素原子のモル比率は、好ましくは6/1〜3/1の範囲である。また、式(2)で示される化合物が2つ以上の水酸基を含む場合には、ホウ酸エステル化の進行に伴って網目状ポリマーの形成が起こり得るため、反応系の流動性を保持するためにエステル化反応に関わらない溶剤を適宜用いることができる。
有機高分子化合物中のホウ酸エステル化合物の含有量は0〜80重量%用いることが好ましく、0〜60重量%用いることがより好ましい。
【0017】
本発明に用いられるニトリル基含有化合物は、高分子電解質としての特徴である可堯性の付与の目的から式(3)で示される化合物の重合物をマトリクスとして用いることが好ましく、さらにマトリクスの柔軟性付与による機械的特性およびイオン伝導度の向上の目的から、式(3)で示される化合物の重合物をマトリクスとして式(2)で示される化合物をホウ酸エステル化した化合物との混合系で用いることが好ましい。
【0018】
本発明に用いられる、式(3)で示される化合物において、Z3は1〜4個の水酸基を持つ化合物の残基または水酸基である。
1〜4個の水酸基を持つ化合物としては、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、2−ブチルアルコール、t−ブチルアルコール、n−ヘキシルアルコール、n−オクチルアルコール、イソオクチルアルコール、デシルアルコール、ドデシルアルコール、トリデシルアルコール、テトラデシルアルコール、ヘキサデシルアルコール、オクタデシルアルコール、オクタデセニルアルコール、イコシルアルコール、テトライコシルアルコール等のモノオール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール等のジオール、グリセリン、トリメチロールプロパン等のトリオール、ペンタエリスリトール、ジグリセリン等のテトラオール、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸等の重合性基含有化合物などが挙げられる。Z3としては好ましくは水酸基、メチルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジグリセリン、アクリル酸およびメタクリル酸の残基であり、より好ましくは水酸基、もしくはメチルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、アクリル酸およびメタクリル酸の残基である。
【0019】
3Oで示される炭素数2〜4のオキシアルキレン基は、オキシエチレン基、オキシプロピレン基、オキシブチレン基、オキシテトラメチレン基などが挙げられ、好ましくはオキシエチレン基またはオキシプロピレン基である。またこれらの1種または2種以上の混合物でもよく、2種以上の時の重合形式はブロック状、ランダム状のいずれでもよい。
nは炭素数2〜4のオキシアルキレン基の平均付加モル数であり、0〜150であり、イオン伝導度を得る目的から好ましくは5〜100である。150を超えると重合性基の導入量が少なく、マトリクスとしての機械的強度が得られにくくなる。
cは1〜4であり、好ましくは1〜3である。
ncは0〜300、好ましくは0〜150、より好ましくは1〜100である。300を超えると式(4)で示される重合性基の導入量が少なく、マトリクスとしての機械的強度が得られにくくなる。
【0020】
2は水素原子または式(4)で示される基である。R2が2個以上ある場合、それぞれ同じであっても異なっていてもよい。
式(4)で示される基においてR3およびR4は水素原子またはメチル基である。R3およびR4が水素原子であるアクリロイル基またはR3が水素原子、R4がメチル基であるメタクリロイル基が好ましい。
式(3)で示される化合物の重合物とは、式(4)で示される重合性基により重合される重合物である。式(3)は少なくとも1つの重合性基をもつ。具体的にはZ2がアクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸等の重合性基含有化合物の残基でない場合、R2の少なくとも1つは式(4)で示される重合性基をもつ。
【0021】
本発明に用いられる式(3)で示される化合物は、アルキレンオキシド誘導体への重合性基を有する有機酸によるエステル化、もしくは重合性基を有する有機酸へのアルキレンオキシドの開環重合で得ることができる。例えば、アルキレンオキシド誘導体に、従来から知られているエステル化触媒を用いて、重合性基を有する有機酸を所定のモル比で反応させることで得ることができ、あるいは重合性基を有する有機酸に、従来から知られている開環重合触媒を用いて、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、テトラヒドロフランなどのアルキレンオキシドを所定のモル比で重合させることで得られる。
式(3)で示される化合物は、1種または2種以上を混合して使用することができる。
有機高分子化合物中の式(3)で示される化合物の混合割合は0〜75重量%であるのが高分子電解質としての可尭性の付与と高いイオン伝導度を得る目的から好ましく、5〜50重量%であるのがより好ましい。
【0022】
本発明に用いられる式(3)で示される化合物は、これに含まれる重合性基を重合させた形で使用する。重合は、加熱、紫外線、可視光、電子線などのエネルギーによってなされるが、適宜、既に知られている重合開始剤を使用しても良い。重合後の数平均分子量は50,000〜10,000,000であるのが好ましく、50,000を下回ると高分子電解質としての特徴である可堯性の発現が得られにくく、10,000,000を上回るとイオン伝導の障害となる可能性もある。
【0023】
本発明に用いられるイオン性化合物は、本発明に用いられる有機高分子化合物に対して任意の比率で混合することができる。本発明に用いられる有機高分子化合物に含まれるオキシアルキレン単位の総数2〜30モルに対して、本発明に用いられるイオン性化合物に含まれる金属1モルの比率となるように混合するのが好ましく、オキシアルキレン単位の総数2〜15モルに対して金属1モルの比率となるように混合するのが、有機高分子化合物のガラス転移温度低下によるイオン伝導度への寄与の点から、より好ましい。
イオン性化合物としては、例えばLi、Na、K、Mg、Ca、Sr、Baなどのアルカリ金属塩やアルカリ土類金属塩が挙げられ、LiClO4、LiAsF6、LiPF6、LiBF4、LiCF3SO3、Li(CF3SO22N、Li(C25SO22N、Li(CF3SO23C、LiI、LiSCN、NaBr、NaI、NaSCN、KI、KSCNなどのアルカリ金属塩が好ましく、LiClO4、LiAsF6、LiPF6、LiBF4、LiCF3SO3、Li(CF3SO22N、Li(C25SO22N、Li(CF3SO23C、LiI、LiSCNなどのリチウム塩がより好ましい。
【0024】
さらに本発明の高分子電解質には、イオン伝導性または強誘電性の塩、ガラスの粉末などを添加することができる。このような塩またはガラスの粉末としては、例えばSnO2、BaTiO3、Al23、Li2O・3B23、LaTiO3などが挙げられる。
【0025】
本発明の高分子電解質は、種々の方法で調製可能である。その調製方法は特に限定されないが、例えば、本発明に用いられるニトリル基含有化合物は、多くの低沸点有機溶剤に溶解するため、ニトリル基含有化合物、イオン性化合物および式(3)で示される化合物またはその他の有機高分子化合物を低沸点溶剤に溶解して溶液を調製し、これをキャスティングして低沸点溶剤を除去しつつ、式(3)で示される化合物を併用した場合にはこれを同時に熱重合させることで、力学的強度を有する高分子電解質薄膜を得ることができる。なお必要に応じて、紫外線、可視光、電子線等の電磁波を照射することで式(3)で示される化合物の重合による薄膜を得ることもできる。また、例えば、本発明のニトリル基含有化合物、イオン性化合物および高分子化合物を低沸点溶剤に溶解して溶液に調整し、これをキャスティングして低沸点溶剤を除去することで、高分子電解質薄膜を得ることができる。
有機高分子化合物は本発明の効果を妨げなければ、他の有機高分子化合物を混合して使用しても良い。また、マトリクスとして他の有機高分子化合物を単独で用いても良い。
他の有機高分子化合物としては、例えばポリアクリロニトリル、アクリロニトリル−メタクリル酸共重合体、アクリロニトリル−メタクリル酸メチル共重合体、メタクリル酸−スチレン共重合体、アクリロニトリル−スチレン共重合体、アクリロニトリル−スチレン−メタクリル酸共重合体、アクリロニトリル−スチレン−メタクリル酸メチル共重合体、ポリエチレンオキシド等が挙げられる。
【0026】
例えば、前記の溶液に可塑剤となり得る有機溶剤を添加して溶液を調製し、これをキャスティングすることによって低沸点溶剤の除去および式(3)で示される化合物の熱重合によって、高分子ゲル電解質薄膜を得ることができる。さらに本発明のホウ酸エステル化合物と式(3)で示される化合物を低沸点溶剤に溶解して溶液を調製し、これをキャスティングして低沸点溶剤を除去しつつ式(3)で示される化合物を熱重合させることで得た高分子固体薄膜に、イオン性化合物を溶解した有機溶剤を含浸させることで高分子ゲル電解質薄膜を得ることもできる。なお必要に応じて、紫外線、可視光、電子線等の電磁波を照射することで式(3)で示される化合物の重合による薄膜を得ることもできる。
【0027】
本発明の高分子電解質と、従来から知られている正極材料および負極材料を組み合わせることで、イオン伝導度、充放電サイクル特性および安全性に優れた二次電池を得ることが可能である。
【0028】
【実施例】
以下、実施例により本発明を詳細に説明する。
なお、以下文中においてLiTFSIはリチウムビス(トリフルオロメタンスルホネート)イミドを示す。
また、比較例3を除く各実施例および各比較例において、ニトリル基含有化合物、式(2)または式(3)で示される化合物に含まれるオキシアルキレン単位8モルに対して、イオン性化合物に含まれるアルカリ金属が1モルの比率となるように調整した。
【0029】
製造例1−1
出発物質として分子量1,000のポリエチレングリコール1,000g(1.0モル)に水酸化カリウム0.20gを加え、窒素ガス雰囲気下50℃まで昇温した後にアクリロニトリル111.3g(2.10モル)を2時間かけて滴下した。滴下が終わった後も50℃にて2時間保持して反応を継続した。その後110℃まで昇温したのちに系内を徐々に減圧し、圧力2.67kPa(20mmHg)以下の状態を1時間保持し、未反応のアクリロニトリルを除去した。その後濾過することでニトリル基含有化合物(1)が得られた。反応前後における水酸基価の変化から算出したニトリル基含有化合物(1)のシアノエチル基導入率は92%であった。
【0030】
製造例1−2
出発物質として分子量750のグリセロール トリス(ポリエチレングリコール)750g(1.0モル)に水酸化カリウム0.23gを加え、窒素ガス雰囲気下50℃まで昇温した後にアクリロニトリル167.0g(3.15モル)を2時間かけて滴下した。滴下が終わった後も50℃にて2時間保持して反応を継続した。その後110℃まで昇温したのちに系内を徐々に減圧し、圧力2.67kPa(20mmHg)以下の状態を1時間保持し、未反応のアクリロニトリルを除去した。その後濾過することでニトリル基含有化合物(2)が得られた。反応前後における水酸基価の変化から算出したニトリル基含有化合物(2)のシアノエチル基導入率は93%であった。
【0031】
製造例1−3
出発物質として分子量1,000のペンタエリスリトール テトラキス(ポリエチレングリコール)1,000g(1.0モル)に水酸化カリウム0.40gを加え、窒素ガス雰囲気下50℃まで昇温した後にアクリロニトリル222.6g(4.20モル)を2時間かけて滴下した。滴下が終わった後も50℃にて2時間保持して反応を継続した。その後110℃まで昇温したのちに系内を徐々に減圧し、圧力2.67kPa(20mmHg)以下の状態を1時間保持し、未反応のアクリロニトリルを除去した。その後濾過することでニトリル基含有化合物(3)が得られた。反応前後における水酸基価の変化から算出したニトリル基含有化合物(3)のシアノエチル基導入率は92%であった。
【0032】
製造例2−1
出発物質として分子量550のメトキシポリエチレングリコール550g(1.0モル)に無水ホウ酸11.6g(0.167モル)を加え、窒素ガス雰囲気下110℃まで昇温した。110℃となったのちに系内を徐々に減圧し、圧力2.67kPa(20mmHg)以下の状態を3時間保持し、反応の進行に伴って発生する水を除去した。その後濾過することでホウ酸エステル化合物(4)が得られた。反応前の基質に対するホウ酸量および水分量の変化から算出したホウ酸エステル化合物(4)のホウ酸エステル化率は93%であった。
【0033】
実施例1
製造例1−1で得られたニトリル基含有化合物(1)3.75gに対して、日本油脂(株)製ブレンマーPDE−600(ポリエチレングリコール(600)ジメタクリレート)を1.25g混合し、支持塩としてLiTFSIを3.48g添加し、均一に溶解させた後、テフロンボート中に流し込み、アルゴン雰囲気下、ホットプレートにて110℃で熱重合させ、真空により乾燥することで厚さ0.50mmの二次電池用電解質を得た。
【0034】
実施例2
製造例1−2で得られたニトリル基含有化合物(2)3.75gに対して、日本油脂(株)製ブレンマーPDE−600(ポリエチレングリコール(600)ジメタクリレート)を1.25g混合し、支持塩としてLiTFSIを3.01g添加し、均一に溶解させた後、テフロンボート中に流し込み、アルゴン雰囲気下、ホットプレートにて110℃で熱重合させ、真空により乾燥することで厚さ0.50mmの二次電池用電解質を得た。
【0035】
実施例3
製造例1−3で得られたニトリル基含有化合物(3)3.75gに対して、日本油脂(株)製ブレンマーPDE−600(ポリエチレングリコール(600)ジメタクリレート)を1.25g混合し、支持塩としてLiTFSIを2.97g添加し、均一に溶解させた後、テフロンボート中に流し込み、アルゴン雰囲気下、ホットプレートにて110℃で熱重合させ、真空により乾燥することで厚さ0.50mmの二次電池用電解質を得た。
【0036】
実施例4
製造例1−2で得られたニトリル基含有化合物(2)1.25gに対して、製造例2−1で得られたホウ酸エステル化合物(4)2.50g、さらに日本油脂(株)製ブレンマーPDE−600(ポリエチレングリコール(600)ジメタクリレート)を1.25g混合し、支持塩としてLiTFSIを3.45g添加し、均一に溶解させた後、テフロンボート中に流し込み、アルゴン雰囲気下、ホットプレートにて110℃で熱重合させ、真空により乾燥することで厚さ0.50mmの二次電池用電解質を得た。
【0037】
実施例5
製造例1−2で得られたニトリル基含有化合物(2)3.75gに対して、日本油脂(株)製ブレンマーPDE−600(ポリエチレングリコール(600)ジメタクリレート)を1.25g混合し、支持塩として過塩素酸リチウムを1.11g添加し、均一に溶解させた後、テフロンボート中に流し込み、アルゴン雰囲気下、ホットプレートにて110℃で熱重合させ、真空により乾燥することで厚さ0.50mmの二次電池用電解質を得た。
【0038】
実施例6
製造例1−2で得られたニトリル基含有化合物(2)1.25gに対して、製造例2−1で得られたホウ酸エステル化合物(4)2.50g、さらに日本油脂(株)製ブレンマーPDE−600(ポリエチレングリコール(600)ジメタクリレート)を1.25g混合し、支持塩として過塩素酸リチウムを1.27g添加し、均一に溶解させた後、テフロンボート中に流し込み、アルゴン雰囲気下、ホットプレートにて110℃で熱重合させ、真空により乾燥することで厚さ0.50mmの二次電池用電解質を得た。
【0039】
比較例1
日本油脂(株)製ブレンマーPDE−400(ポリエチレングリコール(400)ジメタクリレート)4.00gに、支持塩としてLiTFSIを2.19g添加し、均一に溶解させた後、テフロンボート中に流し込み、アルゴン雰囲気下、ホットプレートにて110℃で熱重合させ、真空により乾燥することで厚さ0.50mmの二次電池用電解質を得た。
【0040】
比較例2
日本油脂(株)製ポリエチレングリコール#4000(分子量4000)4.00gに、支持塩としてLiTFSIを3.26g添加し、均一に溶解させた後、テフロンボート中に流し込み、アルゴン雰囲気下、ホットプレートにより110℃で加熱し、真空により溶剤を揮発させることで厚さ0.50mmの二次電池用電解質を得た。
【0041】
比較例3
ポリ(アクリロニトリル/メタクリル酸)(分子量200,000、93/7重量部ランダム状共重合体)4.00gをジメチルホルムアミド10.0gに溶解させ、支持塩として過塩素酸リチウムを3.73g添加し、均一に溶解させた後、テフロンボート中に流し込み、アルゴン雰囲気下、ホットプレートにて110℃で加熱し、真空により溶剤を揮発させることで厚さ0.50mmの二次電池用電解質を得た。
【0042】
比較例4
日本油脂(株)製ブレンマーPME−400(メトキシポリエチレングリコール(400)メタクリレート)4.00gに、支持塩として過塩素酸リチウムを0.98g添加し、均一に溶解させた後、テフロンボート中に流し込み、アルゴン雰囲気下、ホットプレートにて110℃で熱重合させ、真空により乾燥することで厚さ0.50mmの二次電池用電解質を得た。
【0043】
比較例5
日本油脂(株)製ブレンマーPDE−400(ポリエチレングリコール(400)ジメタクリレート)4.00gに、支持塩として過塩素酸リチウムを0.81g添加し、均一に溶解させた後、テフロンボート中に流し込み、アルゴン雰囲気下、ホットプレートにて110℃で熱重合させ、真空により乾燥することで厚さ0.50mmの二次電池用電解質を得た。
【0044】
比較例6
LIPASTE EDEC(エチレンカーボネート/ジエチルカーボネート(1/1)混合溶液、指示塩:過塩素酸リチウム、指示塩濃度:1モル/リットル)を電解液とした。
【0045】
実施例および比較例で得られた高分子電解質のフィルム成形性およびイオン伝導度の評価を下記の方法で行った。
(1)フィルム成形性
○:何ら問題無くフィルムが得られる
×:硬化不良、もしくはフィルム形成不可能
(2)イオン伝導度
高分子電解質をステンレス電極に挟み込み、アルゴン雰囲気下、温度を変化させ、各温度における交流複素インピーダンス測定を行い、得られた複素平面上のプロット(Cole−Coleプロット)のバルク抵抗成分の半円の直径をイオン伝導度として求めた。
【0046】
電解質を用いた二次電池の充放電試験の評価を次の方法で行った。
実施例7
正極活物質としてマンガン酸リチウム粉末75重量部と、バインダーポリマーとしてポリフッ化ビニリデン粉末5重量部、導電材として炭素粉末20重量部を良く混練し、銅箔上にホットプレス法にて厚さ0.10mm、直径10mmの正極材料を得た。アルカリ金属イオン吸蔵材として厚さ約0.08mm、直径10mmの金属リチウム箔を負極材料とした。実施例4の高分子電解質を直径10mmに打ち抜き、前述の正極材料および負極材料にて挟み込み、さらにステンレス電極にて挟み込んで二次電池系を得た。
得られた二次電池について、50℃にて電流密度200mA/m2にて4.35Vまで充電した後、電流密度220mA/m2にて3.50Vまで放電する充放電を30サイクル繰り返し、各電池の1サイクル目、15サイクル目、30サイクル目、50サイクル目の正極1kg当たりの放電容量を求めた。
比較例7
比較例6の電解液を、厚さ0.50mmの多孔質ポリテトラフルオロエチレン製セパレータを挟み込んだ密閉型セル内に充填し、前述の正極材料および負極材料にて挟み込み、さらにステンレス電極にて挟み込んで二次電池系を得た。実施例7と同様にして評価を行った。
【0047】
製造例で得られたニトリル基含有化合物の組成を表1、ホウ酸エステル化合物の組成を表2、実施例、比較例の電解質組成およびイオン性化合物の種類を表3、フィルム成形性、25℃、50℃、80℃におけるイオン伝導度の評価結果を表4、充放電試験の評価結果を表5に示す。
【0048】
【表1】
Figure 0004783962
【0049】
【表2】
Figure 0004783962
【0050】
【表3】
Figure 0004783962
【0051】
*MAAはメタクリル酸もしくはメタクリル酸残基、EOはオキシエチレン基をそれぞれ示す。
*1:分子量200,000、93/7重量部ランダム状共重合物
【0052】
【表4】
Figure 0004783962
【0053】
【表5】
Figure 0004783962
【0054】
比較例においてはフィルム成形性とイオン伝導性の両方を満足するものは得られていないのに対し、本発明の高分子電解質では、良好なフィルム成形性が得られ、かつ高いイオン伝導度が得られることが確かめられた。また本発明の高分子電解質を用いた二次電池では、従来の電解液に比較して優れたサイクル特性を有することが確認された。
【0055】
【発明の効果】
本発明の高分子電解質である二次電池用電解質は、高いイオン伝導度が得られ、安全性に優れているため電池等の電気化学デバイス用の材料として有用であり、この電解質を用いた場合に、広い温度範囲に亘って高いイオン伝導度を有し、サイクル特性および安全性に優れた二次電池デバイスを得ることができる。

Claims (4)

  1. イオン性化合物および有機高分子化合物からなる二次電池用電解質において、有機高分子化合物が式(1)で示されるニトリル基含有化合物を含有し、イオン性化合物がアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩であることを特徴とする二次電池用電解質。
    −[(AO)−R]a (1)
    (Zは1〜個の水酸基を持つ化合物の残基、AOは炭素数2〜4のオキシアルキレン基の1種または2種以上の混合物であり、Rはシアノエチル基、炭素数1〜12の炭化水素基、水素原子から選ばれる基であり、少なくともつはシアノエチル基であり、l=100、a=1〜であり、かつla=300である。)
  2. 有機高分子化合物が、式(2)で示される化合物をホウ酸または無水ホウ酸によりエステル化することによって得られるホウ酸エステル化合物をさらに含有することを特徴とする請求項1記載の二次電池用電解質。
    −[(AO)−H] (2)
    (Zは1〜個の水酸基を持つ化合物の残基、AOは炭素数2〜4のオキシアルキレン基の1種または2種以上の混合物であり、m=100、b=1〜であり、かつmb=100である。)
  3. 有機高分子化合物が、式(3)で示される化合物の重合物をさらに含有することを特徴とする請求項1または請求項2記載の二次電池用電解質。
    −[(AO)−R]c (3)
    (Zは1〜4個の水酸基を持つ化合物の残基または水酸基であり、AOは炭素数2〜4のオキシアルキレン基の1種または2種以上の混合物であり、n=100、c=1〜4であり、かつnc=150であり、Rは水素原子または式(4)で示される基であり、R の少なくとも1つは式(4)で示される基である。)
    Figure 0004783962
    (RおよびRは水素原子またはメチル基である。)
  4. 請求項1、請求項2、または請求項3記載の二次電池用電解質を用いる二次電池。
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