JP2002348323A - 重合性ホウ酸エステル化合物、電気化学デバイス用電解質および重合性ホウ酸エステル化合物の製造方法 - Google Patents

重合性ホウ酸エステル化合物、電気化学デバイス用電解質および重合性ホウ酸エステル化合物の製造方法

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JP2002348323A
JP2002348323A JP2001153804A JP2001153804A JP2002348323A JP 2002348323 A JP2002348323 A JP 2002348323A JP 2001153804 A JP2001153804 A JP 2001153804A JP 2001153804 A JP2001153804 A JP 2001153804A JP 2002348323 A JP2002348323 A JP 2002348323A
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polymerizable
compound
electrolyte
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borate compound
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Shoichi Yokoyama
晶一 横山
Takeshi Yabe
健 矢部
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 高いイオン伝導度を示しかつ安全性に優れた
二次電池やコンデンサ等の電気化学デバイス用の材料と
して有用な重合性化合物、その重合物、その重合物を含
有する高分子電解質およびその製造方法を提供する。 【解決手段】 式(1)で示される重合性化合物をホウ
酸または無水ホウ酸によりエステル化することによって
得られる重合性ホウ酸エステル化合物であって、塩素含
有量が100ppm以下である重合性ホウ酸エステル化
合物、その重合物を含有する電気化学デバイス用電解質
およびその重合性ホウ酸エステル化合物の製造方法。 XO(AO)nH (1) (Xはアクリロイル基またはメタクリロイル基であり、
AOは炭素数2〜4のオキシアルキレン基、n=1〜1
00である。)

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、塩素含有量の少な
いオキシアルキレン基を有する重合性ホウ酸エステル化
合物、該重合性ホウ酸エステル化合物の重合物を用いた
電気化学デバイス用電解質ならびに二次電池用電解質、
二次電池、および該重合性ホウ酸エステル化合物の製造
方法に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、電子製品の高性能化、小型化に対
する要求が強く、そのエネルギー源である電池材料に対
しても、小型化、軽量化でかつ高容量、高エネルギー密
度が求められ、種々の研究開発が行われている。近年そ
のような要求に応える目的から、従来の電解質溶液に代
わる新しいイオン伝導体として、固体電解質が全固体一
次電池、二次電池、コンデンサ等の電気化学デバイスへ
の応用が試みられている。従来の電解液を使用した電気
化学デバイスでは、液漏れや溶質の染みだしの問題から
安全性や信頼性に問題がある。このような電解液を用い
た場合の欠点を克服するために、高分子化合物を電解質
に使用したいわゆる高分子電解質が種々検討されてい
る。高分子電解質は可堯性を有し、機械的衝撃にも追従
し、さらに電極−電解質間でのイオン電子交換反応に際
して生じる電極の体積変化にも追従し得る特徴を有して
いる。このような高分子電解質としては、米国特許第4
303748号明細書ではポリアルキレンオキシドにア
ルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩を溶解した固体
電解質が提案されているが、イオン伝導度が不十分で、
さらに極材との接触抵抗が高いといった課題が残されて
いる。このようにイオン伝導度が不十分であった場合に
は、充電および放電時の電流密度が充分に得られず、大
電流を必要とする用途には適用できず、用途が限定され
てる。上記の固体電解質の欠点を克服するため、ポリ
(メタ)アクリレートを主鎖として側鎖または/かつ架
橋鎖としてポリアルキレングリコール鎖を導入した高分
子にアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩を溶解し
た固体電解質が数多く提案されている。このような高分
子の基質となるポリアルキレングリコール(メタ)アク
リレートとしては、活性水素を有する(メタ)アクリレ
ート誘導体を基質として、特公昭43−9071号公報
に示されているルイス酸触媒を用いたカチオン重合の製
法にてアルキレンオキシドを開環重合させて得ることが
できるが、反応触媒に含まれる塩素分の除去が難しく、
得られるポリアルキレングリコール誘導体中に残存する
ことから、電解質として用いる際に、溶解している金属
塩との反応や極材または集電体の腐食、または内部での
火花発生や短絡が発生し、容量の保持や安全性および安
定性その他特性の低下を引き起こす。また通常知られて
いるアルカリ金属水酸化物やアルカリ金属アルコラート
等のアニオン重合触媒では、反応温度を通常は100℃
以上と高くする必要があることやアルカリ金属が重合性
基である(メタ)アクリロイル基の重合を引き起こす可
能性があることから、適用することができない。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、高いイオン
伝導度を示し、かつ安全性に優れた二次電池やコンデン
サ等の電気化学デバイス用の材料として有用な重合性ホ
ウ酸エステル化合物、その重合物、その重合物を含有す
る高分子電解質およびその製造方法を提供することを目
的とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】すなわち本発明は、 (A) 式(1)で示される重合性化合物をホウ酸また
は無水ホウ酸によりエステル化することによって得られ
る重合性ホウ酸エステル化合物であって、塩素含有量が
100ppm以下である重合性ホウ酸エステル化合物。 XO(AO)nH (1) (Xはアクリロイル基またはメタクリロイル基であり、
AOは炭素数2〜4のオキシアルキレン基、n=1〜1
00である。) (B) (A)の重合性ホウ酸エステル化合物の重合物
を含有する電気化学デバイス用電解質。 (C) (A)の重合性ホウ酸エステル化合物の重合物
を含有する二次電池用電解質。 (D) (C)の二次電池用電解質を用いる二次電池。 (E) 式(1)で示される重合性化合物をホウ酸また
は無水ホウ酸により、50〜90℃にて乾燥空気通気下
で脱水反応によってエステル化する塩素含有量が100
ppm以下である重合性ホウ酸エステル化合物の製造方
法である。 XO(AO)nH (1) (Xはアクリロイル基またはメタクリロイル基であり、
AOは炭素数2〜4のオキシアルキレン基、n=1〜1
00である。)
【0005】
【発明の実施の形態】本発明の重合性ホウ酸エステル化
合物は、塩素含有量100ppm以下であり、好ましく
は25ppm以下であり、より好ましくは10ppm以
下である。塩素含有量が100ppmより多いと、電気
特性が劣る。塩素含有量は以下の方法で測定することが
できる。例えば、日本工業規格JIS K2241
5.3.3に準拠した塩素分析方法や、ISO1030
4−1に準拠したイオンクロマトグラムによる陰イオン
分析法等が挙げられる。これらの分析方法を用いるにあ
たっては、予め有機物質を白金るつぼなどで燃焼させ、
そのガスを捕集し、かつ燃焼残分を収集し、これを上記
分析方法に充当する形でも分析することが可能である。
また、式(1)で示される重合性ホウ酸エステル化合物
のCPR値が30以下のものが好ましく、15以下のも
のがより好ましく、5以下のものがさらに好ましい。C
PR値が30以下であると電気特性に優れる。CPR値
はJIS K1557 6.8に準じて測定することが
できる。
【0006】重合性ホウ酸エステル化合物は塩素含有量
が少ないため電気特性に優れることから、特に電気化学
デバイスに好適に用いることができる。重合性ホウ酸エ
ステル化合物の重合物は塩素含有量が少ないため電気特
性に優れることから、特に電気化学デバイス用電解質と
して好適に使用することができる。電気化学デバイス用
電解質としては、二次電池、電解コンデンサ等の電解質
として使用することができ、イオン性化合物および有機
高分子化合物からなる二次電池用電解質の有機高分子化
合物として有用であり、特にリチウムイオン二次電池用
電解質として有用である。さらに、その二次電池用電解
質を用いた二次電池として使用することができる。
【0007】本発明で用いる式(1)で示される重合性
化合物において、Xはアクリロイル基またはメタクリロ
イル基である。式(1)においてAOで示される炭素数
2〜4のオキシアルキレン基は、オキシエチレン基、オ
キシプロピレン基、オキシブチレン基、オキシテトラメ
チレン基などが挙げられ、好ましくはオキシエチレン基
またはオキシプロピレン基である。またこれらの1種ま
たは2種以上の混合物でもよく、2種以上のときの重合
形式はブロック状、ランダム状のいずれでもよい。nは
炭素数2〜4のオキシアルキレン基の平均付加モル数で
あり、1〜100であり、イオン伝導度を得る目的から
好ましくは5〜100である。100を超えると重合性
基の導入量が少なく、マトリクスとしての機械的強度が
得難くなる。
【0008】本発明に用いられる式(1)で示される重
合性化合物は、従来知られているルイス酸化合物を触媒
として使用し、原料である活性水素含有重合性化合物1
モルにアルキレンオキシド1〜100モルを開環重合さ
せた後に、活性水素含有重合性化合物とアルキレンオキ
シドの合計量100重量部に対して0.1〜10重量部
の複合金属酸化物で処理することにより得ることができ
る。また、式(1)で示される重合性化合物は、活性水
素を2つ含有する化合物であるジオール化合物に、アク
リル酸クロリドやメタクリル酸クロリドを脱塩酸反応す
ることで、もしくはジオール化合物にアクリル酸やメタ
クリル酸をエステル化反応させることでも得ることがで
きる。しかし、式(1)で示される片末端が重合性基
で、かつもう一方が水酸基である構造の化合物の収率が
低いため成形性が劣ることなどがあり、塩素やその他不
純物の残存も多いことから好ましくない。活性水素含有
重合性化合物としては、式(2)で示される化合物であ
る。 XO(A1O)mH (2) (Xはアクリロイル基またはメタクリロイル基であり、
1Oは炭素数2〜4のオキシアルキレン基、m=0〜
99である。) 式(2)で示される活性水素含有重合性化合物におい
て、Xはアクリロイル基またはメタクリロイル基であ
る。式(2)においてA1Oで示される炭素数2〜4の
オキシアルキレン基は、オキシエチレン基、オキシプロ
ピレン基、オキシブチレン基、オキシテトラメチレン基
などが挙げられ、好ましくはオキシエチレン基またはオ
キシプロピレン基である。またこれらの1種または2種
以上の混合物でもよく、2種以上のときの重合形式はブ
ロック状、ランダム状のいずれでもよい。mは炭素数2
〜4のオキシアルキレン基の平均付加モル数であり、0
〜99である。
【0009】具体的には、アクリル酸、メタクリル酸、
アクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−ヒ
ドロキシエチル、アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、
メタクリル酸2−ヒドロキシプロピル、アクリル酸2−
ヒドロキシブチル、メタクリル酸2−ヒドロキシブチ
ル、アクリル酸4−ヒドロキシブチル、メタクリル酸4
−ヒドロキシブチル、ポリエチレングリコールモノアク
リレート、ポリエチレングリコールモノメタクリレー
ト、ポリプロピレングリコールモノアクリレート、ポリ
プロピレングリコールモノメタクリレート、ポリブチレ
ングリコールモノアクリレート、ポリブチレングリコー
ルモノメタクリレート、ポリテトラメチレングリコール
モノアクリレート、ポリテトラメチレングリコールモノ
メタクリレート、ポリエチレングリコール−ポリプロピ
レングリコールモノアクリレート、ポリエチレングリコ
ール−ポリプロピレングリコールモノメタクリレート等
が挙げられる。好ましくはアクリル酸2−ヒドロキシエ
チル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸
2−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸2−ヒドロキシ
プロピルである。
【0010】開環重合触媒であるルイス酸化合物として
は、三フッ化ホウ素、三フッ化ホウ素ジエチルエーテル
錯体、三フッ化ホウ素ジn−ブチルエーテル錯体、三フ
ッ化ホウ素テトラヒドロフラン錯体、三フッ化ホウ素フ
ェノール錯体、三フッ化ホウ素酢酸錯体、四塩化錫、三
塩化アルミニウム等が挙げられる。好ましくは、得られ
る重合性化合物の電気化学特性の点から三フッ化ホウ素
ジエチルエーテル錯体、三フッ化ホウ素ジn−ブチルエ
ーテル錯体、三フッ化ホウ素テトラヒドロフラン錯体で
ある。
【0011】複合金属酸化物としては、酸化マグネシウ
ム20〜80重量%および酸化アルミニウム5〜50重
量%を含有するものである。好ましくは酸化マグネシウ
ム30〜70重量%および酸化アルミニウム10〜40
重量%含有するものであり、より好ましくは酸化マグネ
シウム50〜70重量%および酸化アルミニウム25〜
40重量%含有するものである。この範囲にある複合金
属酸化物を使用すると塩素分の低減に有効である。ま
た、複合金属酸化物を焼成活性化したものも使用するこ
とができ、さらに塩素分の低減に効果的である。焼成活
性化する場合、焼成活性化温度は200〜1000℃で
2〜6時間処理することが一般的である。
【0012】複合金属酸化物の形状としては、特に制限
はないが粉体状であるものが好ましい。さらに、複合金
属酸化物は、乾燥減量が10重量%未満が好ましく、5
重量%未満がより好ましい。乾燥減量が10重量%以上
であると、酸化マグネシウムおよび酸化アルミニウムの
相対的な含有量が低下する場合があり好ましくない。こ
こで言う乾燥減量とは、複合金属酸化物を105±2℃
の恒温乾燥機にて3時間乾燥した後の減少重量を、乾燥
前の複合金属酸化物に対する重量百分率で表したもので
ある。
【0013】さらに、この複合金属酸化物には二酸化ケ
イ素が含まれていても良いが、その含有量は10重量%
未満が好ましく、5重量%未満がより好ましい。二酸化
ケイ素の含有量が10重量%以上であると、酸化マグネ
シウムおよび酸化アルミニウムの相対的な含有量が低下
し、さらに、効率的な反応触媒等の除去が困難となり好
ましくない。酸化マグネシウム20〜80重量%および
酸化アルミニウム5〜50重量%を含有する複合金属酸
化物は、市販品としては、例えば協和化学工業(株)製
のキョーワード300、キョーワード500、キョーワ
ード1000、キョーワード2000、富田製薬(株)
製のトミックスAD500などが挙げられる。
【0014】複合金属酸化物の市販品としての代表組成
は以下の通りである。キョーワード300(酸化マグネ
シウム26.4重量%、酸化アルミニウム26.3重量
%、二酸化ケイ素含有しない)、キョーワード500
(酸化マグネシウム38.2重量%、酸化アルミニウム
16.1重量%、二酸化ケイ素含有しない)、キョーワ
ード1000(酸化マグネシウム35.2重量%、酸化
アルミニウム19.1重量%、二酸化ケイ素含有しな
い)、キョーワード2000(酸化マグネシウム59.
2重量%、酸化アルミニウム33.0重量%、二酸化ケ
イ素含有しない)、トミックスAD500(酸化マグネ
シウム37.4重量%、酸化アルミニウム17.2重量
%、二酸化ケイ素含有しない)である。本発明では、複
合金属酸化物を1種または2種以上組み合わせて用いる
ことができる。酸化マグネシウムおよび酸化アルミニウ
ムを含有する複合金属酸化物の使用量は、活性水素含有
重合性化合物とアルキレンオキシドの合計量100重量
部に対して0.1〜10重量部、好ましくは0.3〜5
重量部である。0.1重量部より少ない場合には塩素分
の低減が十分ではなく、10重量部より多い場合には除
去することが困難で、かつポリアルキレングリコール誘
導体の収量が低下するため好ましくない。
【0015】複合金属酸化物を用いた処理方法は、開環
重合を行って得られた重合性化合物、複合金属酸化物を
任意の方法で混合または接触させることができるが、攪
拌しながら接触させるのが好ましい。また、添加順序は
特に限定されないが、通常は開環重合を行って得られた
重合性化合物に複合金属酸化物を添加する。処理温度は
通常50〜90℃であり、好ましくは60〜80℃であ
る。50℃を下回ると塩素分の低減が十分でなく、90
℃より高いとポリアルキレングリコール誘導体の劣化も
しくは重合性基の安定性に問題を生じる原因となること
もある。処理時間は通常30分〜6時間である。30分
より短いと塩素分の低減が十分ではない可能性があり、
6時間より長くてもそれ以上の効果は見られないことも
ある。また、同時に減圧処理をすることもでき、さらに
効果的である。処理後、濾過、遠心分離などによって複
合金属酸化物を除去することが好ましい。また複合金属
酸化物による処理では、遷移金属、アルカリ土類金属、
アルカリ金属、これらの塩およびイオンの低減効果も併
せて得ることができる。これらのうちアルカリ土類金
属、アルカリ金属に由来する成分の存在は、電気デバイ
ス用の材料として用いる場合に障害となり得るため、よ
り低減することが望ましい。これらの存在量について
は、JIS K1557 6.8に従って算出される含
有する塩基性物質の量を示すCPR値から計り知ること
が可能である。
【0016】本発明に用いられる式(1)で示される重
合性化合物は、好ましくは塩素含有量100ppm以下
であり、より好ましくは25ppm以下であり、さらに
好ましくは10ppm以下である。塩素含有量が100
ppm以下であると電気特性に優れる。また、式(1)
で示される重合性化合物のCPR値が30以下のものが
好ましく、15以下のものがより好ましく、5以下のも
のがさらに好ましい。CPR値が30以下であると電気
特性に優れる。
【0017】本発明に用いられる重合性ホウ酸エステル
化合物は、式(1)で示される重合性化合物にオルトホ
ウ酸、メタホウ酸、ピロホウ酸などのホウ酸または無水
ホウ酸を加え、50〜90℃にて空気通気下で真空によ
る脱水反応することで得られる。例えば反応温度50〜
90℃、0.133〜6.67kPa(1〜50mmH
g)の真空下において、空気を適当量通気しつつ、撹拌
しながら2〜30時間脱水反応することで重合性ホウ酸
エステル化合物が生成する。反応温度は50〜90℃で
あり、好ましくは60〜90℃である。50℃より低い
と脱水によるエステル化反応の進行が困難であり、90
℃より高いと重合性基の保持が困難である。エステル化
反応は、0.133〜6.67kPaの減圧下で行うの
が好ましく、0.133〜4.00kPaで行うのがよ
り好ましい。0.133kPaより低いとエステル化反
応に付帯して発生する水によって突沸する可能性があ
り、6.67kPaより高いと脱水によるエステル化反
応の進行が困難である。反応中に系内に通じる空気は、
特に制限はないものの、好ましくは凝縮型エアードライ
ヤー等によって乾燥させたものである。反応時間は2〜
30時間であり、好ましくは2〜20時間である。2時
間より短いと発生する水の除去が困難であり、30時間
を超えると重合性基の保持が困難である。
【0018】式(1)で示される重合性化合物の水酸基
1モルに対して、ホウ素原子1/3モルの比率におい
て、ホウ酸トリエステルが生成する。ホウ酸エステル化
の割合は、水酸基とホウ素原子のモル比率によって任意
に調整可能であるが、式(1)で示される重合性化合物
の水酸基とホウ素原子のモル比率は、好ましくは6/1
〜3/1の範囲である。エステル化反応に際しては、エ
ステル化反応に関わらない溶剤を適宜用いることができ
る。また重合性基の保護のために、従来知られているヒ
ドロキノン、ヒドロキノンモノメチルエーテル、ジ−t
−ブチル−ヒドロキシトルエン、フェノチアジン等の重
合禁止剤を、従来から知られているように20〜100
0ppmの添加量で用いることができる。
【0019】重合性ホウ酸エステル化合物は、これに含
まれる重合性基を重合させた形で使用する。重合は、加
熱、紫外線、可視光、電子線などのエネルギーによって
なされるが、適宜、公知の重合開始剤を使用しても良
い。重合後の数平均分子量は50,000〜10,00
0,000であるのが好ましく、50,000を下回る
と得られるフィルムの自立性や可堯性の発現が得難くな
ることもあり得る。
【0020】重合性ホウ酸エステル化合物は、1種また
は2種以上を混合して使用することができる。配合によ
っては、混合して使用することにより機械的特性の向上
や二次電池用電解質として使用した際のイオン伝導度の
向上が望まれる。重合性ホウ酸エステル化合物の重合物
は、良好な機械的特性の付与の目的から、5〜100重
量部の比率において用いるのが好ましく、10〜90重
量部の比率において用いるのがより好ましい。
【0021】重合性ホウ酸エステル化合物の重合物を使
用した電解質では、ホウ素によるカチオン輸率の向上に
よってイオン伝導度の向上と、それに伴う電気化学デバ
イス用電解質としての性能改善が達成できる。そして、
ホウ酸エステル基がポリマーマトリクスと同一分子中に
固定されているために、高いイオン伝導度と両立して、
フィルム安定性が優れる。また、ホウ酸エステルが同一
分子中にあるため、イオン性化合物以外の第三成分を添
加することなく使用することもでき、電解質フィルムを
得る際の工程の単純化が可能であり、非常に有用であ
る。さらに基質となる式(1)で示される重合性化合物
を2種以上使用することで、重合性基の導入量、ホウ酸
エステル基の導入量を任意に制御することができ、材料
設計の点からも非常に有用である。
【0022】本発明の電気化学デバイス用電解質に用い
られるイオン性化合物は、本発明に用いられる有機高分
子化合物(重合性ホウ酸エステル化合物の重合物)に対
して任意の比率で混合することができる。具体的にはイ
オン性化合物に含まれるアルカリ金属1モルに対して、
本発明に用いられる有機高分子化合物に含まれるオキシ
アルキレン単位の総数2〜30モルの比率となるように
混合するのが好ましく、総数2〜20モルの比率となる
ように混合するのが、有機高分子化合物のガラス転移温
度低下によるイオン伝導度への寄与の点からより好まし
く、さらに総数2〜15モルの比率となるように混合す
るのが、有機高分子化合物のガラス転移温度低下による
イオン伝導度への寄与およびキャリア数の増大によるイ
オン伝導度向上の点からさらに好ましい。
【0023】本発明の電気化学デバイス用電解質に用い
られるイオン性化合物の種類は特に限定されるものでは
なく、コンデンサ用途においては、例えば(CH34
BF 4、(CH3CH24NBF4等の4級アンモニウム
塩、AgClO4等の遷移金属塩、(CH34PBF4
の4級ホスホニウム塩、LiClO4、LiAsF6、L
iPF6、LiBF4、LiCF3SO3、Li(CF3
22N、Li(C2 5SO22N、Li(CF3
23C、LiI、LiSCN、NaBr、NaI、N
aSCN、KI、KSCNなどのアルカリ金属塩、p−
トルエンスルホン酸等の有機酸およびその塩などが挙げ
られ、好ましくは出力電圧が高く得られ、解離定数が大
きい点から、4級アンモニウム塩、4級ホスホニウム
塩、アルカリ金属塩である。
【0024】本発明の二次電池用電解質に用いられるイ
オン性化合物としては、例えばLiClO4、LiAs
6、LiPF6、LiBF4、LiCF3SO3、Li
(CF3SO22N、Li(C25SO22N、Li
(CF3SO23C、LiI、LiSCN、NaBr、
NaI、NaSCN、KI、KSCNなどのアルカリ金
属塩が挙げられ、好ましくはLiClO4、LiAs
6、LiPF6、LiBF4、LiCF3SO3、Li
(CF3SO22N、Li(C25SO22N、Li
(CF3SO23C、LiI、LiSCNなどのリチウ
ム塩である。さらに本発明の二次電池用電解質には、イ
オン伝導性または強誘電性の塩、ガラスの粉末などを添
加することができる。このような塩またはガラスの粉末
としては、例えばSnO2、BaTiO3、Al23、L
2O・3B23、LaTiO3などが挙げられる。
【0025】本発明の電気化学デバイス用電解質は、種
々の方法で調製可能である。その調製方法は特に限定さ
れないが、例えば、重合性ホウ酸エステル化合物は、多
くの低沸点有機溶剤に溶解するため、これとイオン性化
合物を低沸点溶剤に溶解して溶液を調製し、これを加熱
によりキャスティングして低沸点溶剤を除去しつつ重合
性有機化合物を熱重合させることで、力学的強度を有す
る高分子電解質薄膜を得ることができる。なお必要に応
じて、紫外線、可視光、電子線等の電磁波を照射するこ
とで重合性ホウ酸エステル化合物の重合による薄膜を得
ることもできる。また、例えば、重合性ホウ酸エステル
化合物の重合物とイオン性化合物を良く混練し成形する
ことで、電気化学デバイス用電解質薄膜を得ることがで
きる。
【0026】有機高分子化合物は本発明の効果を妨げな
ければ、他の有機高分子化合物を混合して使用しても問
題ない。他の有機高分子化合物としては、例えばポリア
クリロニトリル、アクリロニトリル−メタクリル酸共重
合体、アクリロニトリル−メタクリル酸メチル共重合
体、メタクリル酸−スチレン共重合体、アクリロニトリ
ル−スチレン共重合体、アクリロニトリル−スチレン−
メタクリル酸共重合体、アクリロニトリル−スチレン−
メタクリル酸メチル共重合体、スチレン−マレイン酸共
重合体、ポリアルキレングリコール(メタ)アクリレー
ト共重合体等が挙げられるが、特にこれらに限定される
ものではない。本発明に用いられる式(1)で示される
重合性化合物および重合性ホウ酸エステル化合物を予め
混合し、イオン性化合物を溶解させて、かかる後に重合
しても良い。重合性ホウ酸エステル化合物に他の重合性
化合物を混合し、イオン性化合物を溶解させて、かかる
後に重合させて使用しても良い。または本発明に用いら
れる式(1)で示される重合性化合物、重合性ホウ酸エ
ステル化合物および他の重合性化合物を予め混合し、イ
オン性化合物を溶解させて、かかる後に重合しても良
い。
【0027】他の重合性化合物としては、例えばアクリ
ル酸メチル、アクリル酸ブチル等のアルキルアクリレー
ト、メタクリル酸メチル、メタクリル酸ブチル等のアル
キルメタクリレート、下記式(3)で示されるポリアル
キレングリコールアクリレート、下記式(3)で示され
るポリアルキレングリコールメタクリレート、アクリロ
ニトリル、スチレン、ジビニルベンゼンなどが挙げられ
るが、特にこれらに限定されるものではない。 Y[(A2O)k−R]a (3) (Yは1〜4個の水酸基を持つ化合物の残基または水酸
基であり、A2Oは炭素数2〜4のオキシアルキレン基
の1種または2種以上の混合物であり、k=0〜15
0、a=1〜4であり、かつk×a=0〜300であ
り、Rは水素原子、炭素数1〜8の炭化水素基、シアノ
エチル基、アクリロイル基またはメタクリロイル基であ
り、分子中に少なくとも一つはアクリロイル基またはメ
タクリロイル基を含む。) 式(3)で示される化合物において、Yは1〜4個の水
酸基を持つ化合物の残基または水酸基である。式(3)
においてA2Oで示される炭素数2〜4のオキシアルキ
レン基は、オキシエチレン基、オキシプロピレン基、オ
キシブチレン基、オキシテトラメチレン基などが挙げら
れ、好ましくはオキシエチレン基またはオキシプロピレ
ン基である。またこれらの1種または2種以上の混合物
でもよく、2種以上の時の重合形式はブロック状、ラン
ダム状のいずれでもよい。Rは水素原子、炭素数1〜8
の炭化水素基、シアノエチル基、アクリロイル基または
メタクリロイル基である。式(3)で示される化合物は
分子中に少なくとも一つはアクリロイル基またはメタク
リロイル基をもつ。
【0028】また上記以外にも、環状カーボネート、鎖
状カーボネート、環状エーテル、鎖状エーテル等の有機
溶剤、ポリアルキレングリコール誘導体、ポリアルキレ
ングリコール誘導体のホウ酸エステル化物を混合使用し
ても良い。ポリアルキレングリコール誘導体としては、
下記式(4)で示される化合物であり、式(4)で示さ
れるポリアルキレングリコール誘導体のホウ酸エステル
としては、下記式(4)で示される化合物をホウ酸また
は無水ホウ酸によりエステル化することによって得られ
る化合物である。 Z[(A3O)l−H]b (4) (Zは1〜6個の水酸基を持つ化合物の残基、A3Oは
炭素数2〜4のオキシアルキレン基の1種または2種以
上の混合物であり、l=0〜600,b=1〜6であ
り、かつl×b=0〜600である。)
【0029】本発明の高分子電解質と、従来から知られ
ている正極材料、負極材料を組み合わせることで、イオ
ン伝導度、充放電サイクル特性、安全性に優れた二次電
池を得ることが可能である。
【0030】
【実施例】以下、実施例により本発明を詳細に説明す
る。なお、以下文中においてLiTFSIはリチウムビ
ス(トリフルオロメタンスルホネート)イミドを示す。
電解質組成物のイオン性化合物としてのLiTFSIの
添加量は、各実施例および比較例とも電解質組成物中に
含まれるアルキレンオキシドのエーテル酸素8モルに対
して、Liイオン濃度が1モルの比率となっている。
【0031】製造例1 攪拌装置、温度計および圧力ゲージを備えた5リットル
容のオートクレーブに2−ヒドロキシエチルメタクリレ
ート260g(2.0モル)、ヒドロキノンモノメチル
エーテル0.028gおよび三フッ化ホウ素ジエチルエ
ーテル錯体0.621gを入れ、系内を窒素ガスにて置
換した後エチレンオキシド308g(7.0モル)を圧
力1MPa(10.0kg/cm2)以下、温度55℃
以下の条件で3時間かけて圧入し、さらに1時間反応を
継続した。次に空気を通じて未反応のエチレンオキシド
を除去した。その後、協和化学工業(株)製キョーワー
ド500(酸化マグネシウム38.2重量%、酸化アル
ミニウム16.1重量%、二酸化ケイ素含有しない)を
22.7g(活性水素含有重合性化合物とアルキレンオ
キシドの合計量100重量部に対して4重量部)を加
え、空気バブリングしながら、5kPa、70℃の条件
にて4時間処理した。次にキョーワード500を濾別
し、製造例1の重合性化合物(ポリエチレングリコール
(EO4.5)モノメタクリレート)511gを得た。 製造例2 攪拌装置、温度計および圧力ゲージを備えた5リットル
容のオートクレーブに2−ヒドロキシエチルアクリレー
ト116g(1.0モル)、ヒドロキノンモノメチルエ
ーテル0.023gおよび三フッ化ホウ素ジエチルエー
テル錯体0.468gを入れ、系内を窒素ガスにて置換
した後エチレンオキシド352g(8.0モル)を圧力
1MPa(10.0kg/cm2)以下、温度55℃以
下の条件で4時間かけて圧入し、さらに1時間反応を継
続した。次に空気を通じて未反応のエチレンオキシドを
除去した。その後、協和化学工業(株)製キョーワード
500(酸化マグネシウム38.2重量%、酸化アルミ
ニウム16.1重量%、二酸化ケイ素含有しない)を2
3.4g(活性水素含有重合性化合物とアルキレンオキ
シドの合計量100重量部に対して5重量部)加え、空
気バブリングしながら、5kPa、70℃の条件にて4
時間処理した。次にキョーワード500を濾別し、製造
例2の重合性化合物(ポリエチレングリコール(EO
9)モノアクリレート)421gを得た。
【0032】製造例3 攪拌装置、温度計および圧力ゲージを備えた5リットル
容のオートクレーブに2−ヒドロキシプロピルメタクリ
レート144g(1.0モル)、ヒドロキノンモノメチ
ルエーテル0.043g、三フッ化ホウ素ジエチルエー
テル錯体0.87gを入れ、系内を窒素ガスにて置換し
た後プロピレンオキシド725g(12.5モル)を圧
力1MPa(10.0kg/cm2)以下、温度55℃
以下の条件で6時間かけて圧入し、さらに2時間反応を
継続した。次に空気を通じて未反応のプロピレンオキシ
ドを除去した。その後、協和化学工業(株)製キョーワ
ード2000(酸化マグネシウム59.2重量%、酸化
アルミニウム33.0重量%、二酸化ケイ素含有しな
い)を43.5g(活性水素含有重合性化合物とアルキ
レンオキシドの合計量100重量部に対して5重量部)
加え、空気バブリングしながら、5kPa、70℃の条
件にて4時間処理した。次にキョーワード2000を濾
別し、製造例3の重合性化合物(ポリプロピレングリコ
ール(PO13.5)モノメタクリレート)782gを
得た。 比較製造例1 攪拌装置、温度計および圧力ゲージを備えた5リットル
容のオートクレーブに2−ヒドロキシエチルメタクリレ
ート260g(2.0モル)、ヒドロキノンモノメチル
エーテル0.028gおよび四塩化錫3.41gを入
れ、系内を窒素ガスにて置換した後エチレンオキシド3
08g(7.0モル)を圧力1MPa(10.0kg/
cm2)以下、温度55℃以下の条件で4時間かけて圧
入し、さらに1時間反応を継続した。次に空気を通じて
未反応のエチレンオキシドを除去した。次に5重量%水
酸化ナトリウム水溶液34.1gを投入して、空気バブ
リングしながら、5kPa、70℃の条件にて4時間脱
水処理した。その後に生成した中和塩を濾別し、比較製
造例1の重合性化合物(ポリエチレングリコール(EO
4.5)モノメタクリレート)511gを得た。
【0033】比較製造例2 攪拌装置、温度計および圧力ゲージを備えた5リットル
容のオートクレーブに2−ヒドロキシエチルアクリレー
ト116g(1.0モル)、ヒドロキノンモノメチルエ
ーテル0.023g、四塩化錫2.81gを入れ、系内
を窒素ガスにて置換した後エチレンオキシド352g
(8.0モル)を圧力1MPa(10.0kg/c
2)以下、温度55℃以下の条件で5時間かけて圧入
し、さらに1時間反応を継続した。次に空気を通じて未
反応のエチレンオキシドを除去した。次に5重量%水酸
化ナトリウム水溶液28.1gを投入して、空気バブリ
ングしながら、5kPa、70℃の条件にて4時間脱水
処理した。その後に生成した中和塩を濾別し、比較製造
例2の重合性化合物(ポリエチレングリコール(EO
9)モノアクリレート)421gを得た。
【0034】比較製造例3 比較製造例2の重合性化合物10.0gと製造例2の重
合性化合物90.0gを混合して、混合物である比較製
造例3の重合性化合物100gを得た。 製造例4 比較製造例2の重合性化合物1.00gと製造例2の重
合性化合物99.0gを混合して、混合物である製造例
4の重合性化合物100gを得た。
【0035】実施例1 製造例1の重合性化合物284g(1.0モル)に無水
ホウ酸11.6g(0.167モル)を加え、乾燥空気
雰囲気下80℃まで昇温した。80℃となったのちに系
内を徐々に減圧し、乾燥空気(乾燥空気は凝縮型エアー
ドライヤーを通じて脱水した空気を示す。以下同様であ
る。)通気下にて圧力2.67kPa(20mmHg)
以下の状態を12時間保持し、反応の進行に伴って発生
する水を除去した。その後濾過することで実施例1の重
合性ホウ酸エステル化合物を275g得た。 実施例2 製造例2の重合性化合物468g(1.0モル)に無水
ホウ酸11.6g(0.167モル)を加え、乾燥空気
雰囲気下80℃まで昇温した。80℃となったのちに系
内を徐々に減圧し、乾燥空気通気下にて圧力2.67k
Pa(20mmHg)以下の状態を12時間保持し、反
応の進行に伴って発生する水を除去した。その後濾過す
ることで実施例2の重合性ホウ酸エステル化合物を46
0g得た。
【0036】実施例3 製造例3の重合性化合物869g(1.0モル)に無水
ホウ酸11.6g(0.167モル)を加え、乾燥空気
雰囲気下80℃まで昇温した。80℃となったのちに系
内を徐々に減圧し、乾燥空気通気下にて圧力2.67k
Pa(20mmHg)以下の状態を12時間保持し、反
応の進行に伴って発生する水を除去した。その後濾過す
ることで実施例3の重合性ホウ酸エステル化合物を86
0g得た。 実施例4 製造例4の重合性化合物468g(1.0モル)に無水
ホウ酸11.6g(0.167モル)を加え、乾燥空気
雰囲気下80℃まで昇温した。80℃となったのちに系
内を徐々に減圧し、乾燥空気通気下にて圧力2.67k
Pa(20mmHg)以下の状態を12時間保持し、反
応の進行に伴って発生する水を除去した。その後濾過す
ることで実施例4の重合性ホウ酸エステル化合物を46
0g得た。
【0037】実施例5 製造例1の重合性化合物189g(0.67モル)、製
造例3の重合性化合物290g(0.33モル)に無水
ホウ酸11.6g(0.167モル)を加え、乾燥空気
雰囲気下80℃まで昇温した。80℃となったのちに系
内を徐々に減圧し、乾燥空気通気下にて圧力2.67k
Pa(20mmHg)以下の状態を12時間保持し、反
応の進行に伴って発生する水を除去した。その後濾過す
ることで実施例5の重合性ホウ酸エステル化合物を47
0g得た。 比較例1 比較製造例1の重合性化合物284g(1.0モル)に
無水ホウ酸11.6g(0.167モル)を加え、乾燥
空気雰囲気下80℃まで昇温した。80℃となったのち
に系内を徐々に減圧し、乾燥空気通気下にて圧力2.6
7kPa(20mmHg)以下の状態を12時間保持
し、反応の進行に伴って発生する水を除去した。その後
濾過することで比較例1の重合性ホウ酸エステル化合物
を275g得た。
【0038】比較例2 比較製造例2の重合性化合物468g(1.0モル)に
無水ホウ酸11.6g(0.167モル)を加え、乾燥
空気雰囲気下80℃まで昇温した。80℃となったのち
に系内を徐々に減圧し、乾燥空気通気下にて圧力2.6
7kPa(20mmHg)以下の状態を12時間保持
し、反応の進行に伴って発生する水を除去した。その後
濾過することで比較例2の重合性ホウ酸エステル化合物
を460g得た。 比較例3 比較製造例3の重合性化合物468g(1.0モル)に
無水ホウ酸11.6g(0.167モル)を加え、乾燥
空気雰囲気下80℃まで昇温した。80℃となったのち
に系内を徐々に減圧し、乾燥空気通気下にて圧力2.6
7kPa(20mmHg)以下の状態を12時間保持
し、反応の進行に伴って発生する水を除去した。その後
濾過することで比較例3の重合性ホウ酸エステル化合物
を460g得た。
【0039】各製造例、比較製造例の重合性化合物、各
実施例、比較例の重合性ホウ酸エステル化合物の塩素含
有量を、イオンクロマトグラムを用いて算出した。イオ
ンクロマトグラムによる塩素分の測定に際しては、重合
性化合物または重合性ホウ酸エステル化合物をJIS
K0102等に記載の方法に準拠して、N/2水酸化カ
リウムエタノール溶液の存在下にて灰化した上で測定
し、JIS K0029に規定された塩化物イオン標準
液によって作成した塩化物イオン濃度の検量線により塩
素の含有量を算出した。CPR値はJIS K1557
6.8に準拠して、重合性化合物または重合性ホウ酸
エステル化合物をメタノールに溶解させ、N/100塩
酸を滴定液として電位差滴定を行い、滴定に要したN/
100塩酸の量から求めた。
【0040】実施例6 実施例1で得られた重合性ホウ酸エステル化合物4.0
0gに、支持塩としてLiTFSIを2.29g添加
し、均一に溶解させた後、ポリテトラフルオロエチレン
製ボート中に流し込み、アルゴン雰囲気下、ホットプレ
ート熱重合させ、真空により乾燥することで厚さ0.5
0mmのイオン伝導性高分子組成物(高分子電解質)を
得た。 実施例7 実施例3で得られた重合性ホウ酸エステル化合物4.0
0gに、支持塩としてLiTFSIを2.24g添加
し、均一に溶解させた後、ポリテトラフルオロエチレン
製ボート中に流し込み、アルゴン雰囲気下、ホットプレ
ート熱重合させ、真空により乾燥することで厚さ0.5
0mmのイオン伝導性高分子組成物(高分子電解質)を
得た。
【0041】実施例8 実施例4で得られた重合性ホウ酸エステル化合物4.0
0gに、支持塩としてLiTFSIを2.78g添加
し、均一に溶解させた後、ポリテトラフルオロエチレン
製ボート中に流し込み、アルゴン雰囲気下、ホットプレ
ート熱重合させ、真空により乾燥することで厚さ0.5
0mmのイオン伝導性高分子組成物(高分子電解質)を
得た。 実施例9 実施例5で得られた重合性ホウ酸エステル化合物4.0
0gに、支持塩としてLiTFSIを2.28g添加
し、均一に溶解させた後、ポリテトラフルオロエチレン
製ボート中に流し込み、アルゴン雰囲気下、ホットプレ
ート熱重合させ、真空により乾燥することで厚さ0.5
0mmのイオン伝導性高分子組成物(高分子電解質)を
得た。
【0042】実施例10 製造例2の重合性化合物2.00g、実施例2で得られ
た重合性ホウ酸エステル化合物(2)2.00gに、支
持塩としてLiTFSIを2.77g添加し、均一に溶
解させた後、ポリテトラフルオロエチレン製ボート中に
流し込み、アルゴン雰囲気下、ホットプレート熱重合さ
せ、真空により乾燥することで厚さ0.50mmのイオ
ン伝導性高分子組成物(高分子電解質)を得た。
【0043】比較例4 比較製造例1の重合性化合物4.00gに、支持塩とし
てLiTFSIを2.27g添加し、均一に溶解させた
後、ポリテトラフルオロエチレン製ボート中に流し込
み、アルゴン雰囲気下、ホットプレート熱重合させ、真
空により乾燥することで厚さ0.50mmのイオン伝導
性高分子組成物(高分子電解質)を得た。 比較例5 比較製造例2の重合性化合物4.00gに、支持塩とし
てLiTFSIを2.76g添加し、均一に溶解させた
後、ポリテトラフルオロエチレン製ボート中に流し込
み、アルゴン雰囲気下、ホットプレート熱重合させ、真
空により乾燥することで厚さ0.50mmのイオン伝導
性高分子組成物(高分子電解質)を得た。
【0044】比較例6 比較製造例3の重合性化合物4.00gに、支持塩とし
てLiTFSIを2.76g添加し、均一に溶解させた
後、ポリテトラフルオロエチレン製ボート中に流し込
み、アルゴン雰囲気下、ホットプレート熱重合させ、真
空により乾燥することで厚さ0.50mmのイオン伝導
性高分子組成物(高分子電解質)を得た。 比較例7 比較例2で得られた重合性ホウ酸エステル化合物4.0
0gに、支持塩としてLiTFSIを2.78g添加
し、均一に溶解させた後、ポリテトラフルオロエチレン
製ボート中に流し込み、アルゴン雰囲気下、ホットプレ
ート熱重合させ、真空により乾燥することで厚さ0.5
0mmのイオン伝導性高分子組成物(高分子電解質)を
得た。
【0045】比較例8 比較例3で得られた重合性ホウ酸エステル化合物4.0
0gに、支持塩としてLiTFSIを2.78g添加
し、均一に溶解させた後、ポリテトラフルオロエチレン
製ボート中に流し込み、アルゴン雰囲気下、ホットプレ
ート熱重合させ、真空により乾燥することで厚さ0.5
0mmのイオン伝導性高分子組成物(高分子電解質)を
得た。
【0046】各実施例、比較例で得られた高分子電解質
のフィルム成形性および安定性は、自立するフィルムが
得られ、−5〜120℃の温度範囲にて柔軟性および形
状を保ち、電気化学デバイス用電解質として使用するに
あたって良好なものが得られた。実施例6、比較例4お
よび7で得られた高分子電解質のイオン伝導度の評価は
次のようにおこなった。各高分子電解質フィルムをステ
ンレス電極に挟み込み、アルゴン雰囲気下、温度を変化
させ、各温度における交流複素インピーダンス測定を行
い、得られた複素平面上のプロット(Cole−Col
eプロット)のバルク抵抗成分の半円の直径からイオン
伝導度として求めた。
【0047】実施例11 正極活物質としてマンガン酸リチウム粉末75重量部
と、バインダーポリマーとしてポリフッ化ビニリデン粉
末5重量部、導電材として炭素粉末20重量部を良く混
練し、銅箔上にホットプレス法にて厚さ0.10mm、
直径10mmの正極材料を得た。アルカリ金属イオン吸
蔵材として厚さ約0.08mm、直径10mmの金属リ
チウム箔を負極材料とした。実施例6の高分子電解質を
直径10mmに打ち抜き、前述の正極材料および負極材
料にて挟み込み、さらにステンレス電極にて挟み込んで
二次電池を得た。得られた二次電池について、50℃も
しくは80℃にて電流密度200mA/m2にて4.1
5Vまで充電した後、電流密度220mA/m2にて
3.50Vまで放電する充放電を300サイクル繰り返
し、各電池の初期容量(1サイクル目)、100サイク
ル目および300サイクル目の正極1kg当たりの放電
容量を、初期容量に対する百分率にて評価した。 ◎:初期容量の70%以上の放電容量を有する ○:初期容量の40%以上70%未満の放電容量を有す
る △:初期容量の40%未満の放電容量を有する ×:内部短絡発生あるいは極材の劣化、または伝導度が
十分に得られない等の理由により評価不可
【0048】実施例12 高分子電解質として実施例9の高分子電解質を使用した
他は、実施例11と同じ組成にて二次電池を組み、実施
例11と同様の条件にて充放電サイクル試験を行った。 実施例13 高分子電解質として実施例10の高分子電解質を使用し
た他は、実施例11と同じ組成にて二次電池を組み、実
施例11と同様の条件にて充放電サイクル試験を行っ
た。
【0049】比較例9 高分子電解質として比較例4の高分子電解質を使用した
他は、実施例11と同じ組成にて二次電池を組み、実施
例11と同様の条件にて充放電サイクル試験を行った。 比較例10 高分子電解質として比較例6の高分子電解質を使用した
他は、実施例11と同じ組成にて二次電池を組み、実施
例11と同様の条件にて充放電サイクル試験を行った。
【0050】比較例11 高分子電解質として比較例7の高分子電解質を使用した
他は、実施例11と同じ組成にて二次電池を組み、実施
例11と同様の条件にて充放電サイクル試験を行った。
【0051】実施例14 厚さ0.50mmのアルミニウム板を極板とし、実施例
7の高分子電解質を直径10mmの円形に打ち抜き、極
板2枚の間に挟み込んだものを測定セルとした。この測
定セルを温度80℃のアルゴンガス雰囲気下にて、両極
板より周波数0.1Hz、振幅100mVの交流を継続
して与え、10日後、30日後の極板の高分子電解質と
の接触面を観察した。 ○:接触面の表面状態が試験開始時と全く変化していな
い。 △:接触面の一部分に白化した部分が見られるものの、
殆ど変化していない。 ×:接触面のほぼ全面が明らかに腐食している。 実施例15 高分子電解質として実施例8の高分子電解質を使用した
他は、実施例14と同様に交流電圧印加状態でのアルミ
ニウム腐食試験を行った。
【0052】比較例12 高分子電解質として比較例5の高分子電解質を使用した
他は、実施例14と同様に交流電圧印加状態でのアルミ
ニウム腐食試験を行った。 比較例13 高分子電解質として比較例8の高分子電解質を使用した
他は、実施例14と同様に交流電圧印加状態でのアルミ
ニウム腐食試験を行った。
【0053】各製造例、比較製造例で得られた重合性化
合物、および各実施例、比較例で得られた重合性ホウ酸
エステル化合物の塩素分のイオンクロマトグラムによる
分析値およびCPR値を表1に、実施例および比較例の
電解質組成およびイオン性化合物の種類を表2、25℃
および80℃におけるイオン伝導度の評価結果を表3、
50℃および80℃における充放電試験の評価結果を表
4、交流電圧印加状態でのアルミニウム腐食試験結果を
表5に示す。
【0054】
【表1】
【0055】表中の構造欄、Mはメタクリロイル基を、
Aはアクリロイル基を示す。
【0056】
【表2】
【0057】
【表3】
【0058】
【表4】
【0059】
【表5】
【0060】比較例の重合性化合物では塩素含有量、C
PR値とも高いのに対し、本発明の重合性ホウ酸エステ
ル化合物では塩素含有量が極めて少なく、CPR値も低
いことが確かめられた。また本発明の重合性化合物を重
合して用いた電気化学デバイス用電解質では、イオン伝
導度が高く、二次電池用電解質としても優れたサイクル
特性を示し、金属製極板を腐食せず安定性の高いことが
確かめられた。
【0061】
【発明の効果】本発明の重合性ホウ酸エステル化合物は
塩素含有量が極めて少なく、CPRも低い。本発明の重
合性ホウ酸エステル化合物を重合して高分子電解質とし
て用いた場合には高いイオン伝導度が得られ、高温条件
での負荷においても金属製極板を腐食しないため電気化
学デバイス用の材料として有用であり、この電解質を用
いた場合に、広い温度範囲に亘って高いイオン伝導度を
有し、サイクル特性および安全性および安定性に優れた
電気化学デバイスを得ることができる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) // H01M 2/16 H01G 9/02 331G Fターム(参考) 4H048 AA01 AA02 AB78 AB91 AC90 BC10 BD20 BE90 VA20 VA75 4J027 AC02 AC03 AC04 AC06 AC09 AJ02 BA07 CA14 CA15 CA17 CC02 CC04 CC05 CC06 4J100 AL08P BA02P BA08P BA87P CA01 DA56 JA45 5H021 BB01 BB09 EE06 EE20 HH01 HH06 HH07 5H029 AJ05 AJ06 AJ12 AK03 AL12 AM16 CJ28 DJ09 EJ04 EJ12 HJ01 HJ02 HJ14

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 式(1)で示される重合性化合物をホウ
    酸または無水ホウ酸によりエステル化することによって
    得られる重合性ホウ酸エステル化合物であって、塩素含
    有量が100ppm以下である重合性ホウ酸エステル化
    合物。 XO(AO)nH (1) (Xはアクリロイル基またはメタクリロイル基であり、
    AOは炭素数2〜4のオキシアルキレン基、n=1〜1
    00である。)
  2. 【請求項2】 請求項1記載の重合性ホウ酸エステル化
    合物の重合物を含有する電気化学デバイス用電解質。
  3. 【請求項3】 請求項1記載の重合性ホウ酸エステル化
    合物の重合物を含有する二次電池用電解質。
  4. 【請求項4】 請求項3記載の二次電池用電解質を用い
    る二次電池。
  5. 【請求項5】 式(1)で示される重合性化合物をホウ
    酸または無水ホウ酸により、50〜90℃にて乾燥空気
    通気下で脱水反応によってエステル化する塩素含有量が
    100ppm以下である重合性ホウ酸エステル化合物の
    製造方法。 XO(AO)nH (1) (Xはアクリロイル基またはメタクリロイル基であり、
    AOは炭素数2〜4のオキシアルキレン基、n=1〜1
    00である。)
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