JP3557960B2 - 新規イオン伝導性高分子、これを用いてなる高分子電解質及び電気化学デバイス - Google Patents

新規イオン伝導性高分子、これを用いてなる高分子電解質及び電気化学デバイス Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、電荷キャリアイオンの輸率向上を可能にしたイオン伝導性高分子、これを用いた高分子電解質及び電気化学デバイスに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
高電圧・高容量の電池の開発に伴い、様々な系の高分子電解質が数多く提案されている。しかし、高分子電解質は、水系電解質と比較して、イオン伝導度が一桁以上低く、また、例えばポリエチレングリコールを用いた高分子電解質は、電荷キャリアイオンの移動及び輸率が低いといった欠点があり、種々の手法を用いて改善の試みが為されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記に鑑みてなされたもので、電解質塩の解離度を高め、かつ電荷キャリアイオンの輸率向上を可能にしたイオン伝導性高分子、これを用いた高分子電解質及び電気化学デバイスを提供することを課題とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、電解質塩の解離を促進し、かつ電荷キャリアイオンの対イオンを高分子鎖中に補足することで電荷キャリアイオンの輸率をコントロールすることに想到し、ルイス酸である三価のホウ素原子を高分子骨格中に有するイオン伝導性高分子を用いることが、上記課題を解決するための有効な手段であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0005】
すなわち、本発明のイオン伝導性高分子は、次の一般式(1)で表される化合物を重合性官能基Yどうしの結合により架橋させることにより得られるものとする(請求項1)。
【0006】
【化2】
Figure 0003557960
【0007】
次に、本発明の高分子電解質は、上記のイオン伝導性高分子を1種又は2種以上用いてなるものとする(請求項)。
【0008】
具体的には、上記イオン伝導性高分子1種又は2種以上と電解質塩とを含有し(請求項)、必要に応じて非水溶媒をさらに含有してなるものとする(請求項)。
【0009】
上記電解質塩としては、好ましくはリチウム塩を用い(請求項)、具体的には、LiBF、LiPF、LiClO、LiAsF、LiCFSO、LiN(CFSO、LiN(CSO、LiC(CFSO、LiCl、LiF、LiBr、LiI、およびこれらの誘導体からなる群より選ばれた1種または2種以上を用いることができる(請求項)。
【0010】
上記非水溶媒としては、好ましくは非プロトン性溶媒を用い(請求項)、具体的には、カーボネート類、ラクトン類、エーテル類、スルホラン類、およびジオキソラン類からなる群から選ばれた1種又は2種以上を用いることができる(請求項)。
【0011】
次に、本発明の電気化学デバイスは、上記のうちいずれかの高分子電解質を用いてなるものとする(請求項)。
【0012】
電気化学デバイスが電池であれば、正極と負極が、上記のうちいずれかの高分子電解質を介して接合されたものとする(請求項10)。その場合、正極はリチウムイオンを吸蔵及び放出することが可能な複合金属酸化物からなり、負極はリチウム金属、リチウム合金、もしくはリチウムイオンを可逆的に吸蔵及び放出することが可能な化合物からなるものとするのが好ましい(請求項11)。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明の好ましい形態を以下に挙げるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0014】
1.イオン導電性高分子
本発明の高分子骨格中に少なくとも1つ以上のホウ素原子が存在するイオン導電性高分子は、次の一般式(1)で表される化合物を重合性官能基Yどうしの結合により架橋させることにより得られる。
【0015】
【化3】
Figure 0003557960
【0016】
2.高分子電解質
本発明の高分子電解質は、上記のうちいずれかのイオン伝導性高分子1種又は2種以上に、電解質塩及び必要に応じて非水溶媒を含有させることにより得られる。
【0017】
電解質塩は特に限定されないが、リチウム塩が好適に用いられ、その例としては、LiBF、LiPF、LiClO、LiAsF、LiCFSO、LiN(CFSO、LiN(CSO、LiC(CFSO、LiCl、LiF、LiBr、LiI、およびこれらの誘導体が挙げられる。これらリチウム塩は1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0018】
電解質塩の濃度は、0.01mol/kg〜10mol/kgであり、好ましくは0.2mol/kg〜6.0mol/kgである。
【0019】
非水溶媒は非プロトン性溶媒であることが好ましく、その例としては、カーボネート類、ラクトン類、エーテル類、スルホラン類、およびジオキソラン類が挙げられる。これら非水溶媒は1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0020】
イオン伝導性高分子と非水溶媒の混合比は、重量比で1/99〜99/1であり、好ましくは1/99〜50/50であり、より好ましくは1/99〜30/70である。
【0021】
3.電池
本発明の電池は、正極と負極が上記のいずれかの高分子電解質を介して接合されてなるものである。
【0022】
ここで正極には、リチウムイオンを吸蔵及び放出することが可能な複合金属酸化物が用いられ、その例としてはニッケル酸リチウム、マンガン酸リチウム、五酸化バナジウム等が挙げられる。
【0023】
また負極には、リチウム金属、リチウム合金、もしくはリチウムイオンを可逆的に吸蔵及び放出することが可能な物質が用いられ、そのような化合物の例としてはカーボン等が挙げられる。
【0024】
【実施例】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0025】
[モノマーの製造]
モノマーA
出発物質エチレングリコールモノブチルエーテル1molに水酸化カリウム0.01molを加え、攪拌しながら窒素置換を行った後、真空ポンプを用いて系内を減圧にした。次いで120℃に昇温し、モノマーとしてエチレンオキサイド1molを用いて反応させた。反応終了後、系内の温度が室温になるまで冷却し、ナトリウムメチラート1.1molのメタノール溶液を添加し、減圧しながら50℃までゆっくり昇温した。メタノールを完全に除去した後、エピクロロヒドリン1.2molを加え、4時間反応させた。反応終了後、吸着処理を行い、減圧脱水後濾過することにより目的物を得た。
【0026】
モノマーB
出発物質としてエチレングリコールモノメチルエーテルを用い、モノマーとしてエチレンオキサイド9molを用いた以外はモノマーAと同様にして目的物を得た。
【0027】
モノマーC
出発物質としてエチレングリコールモノプロピルエーテルを用い、モノマーとしてエチレンオキサイド2molを用いた以外はモノマーAと同様にして目的物を得た。
【0028】
モノマー
出発物質としてエチレングリコールモノメチルエーテルを用い、モノマーとしてエチレンオキサイド9molを用いた以外はモノマーAと同様にして目的物を得た。
【0029】
[一般式()で表わされる化合物の製造]
化合物A−1
トルエン500gに水酸化カリウム1molを加え、攪拌しながら窒素置換し、真空ポンプを用いて系内を減圧にした。120℃に昇温し、モノマーとしてエチレンオキサイド2molとブチレンオキサイド1molを用いて反応させた。反応終了後、系内の温度が室温になるまで冷却し、ナトリウムメチラート1.1molのメタノール溶液を添加し、減圧しながら50℃までゆっくり昇温した。メタノールを完全に除去して放冷した後、トルエン1kgを添加し、塩化ビニル1molを加えて4時間反応させた。酸・アルカリ吸着処理を行った後濾過し、減圧下トルエンを除去することで重合性官能基を持つモノオールを得た。得られたモノオール3molとボラン1molをジクロロメタン中室温で反応させることにより目的物を得た。
【0030】
化合物A−
エチレンオキサイド300molと1,2−エポキシペンタン20molをモノマーとして用い、塩化ビニルの代わりにアクリル酸クロライドを用いた以外は化合物A−1と同様にして目的物を得た。
【0031】
化合物B−1
モノマーA 600molをモノマーとして用い、塩化ビニルの代わりにアクリル酸クロライドを用いた以外は化合物A−1と同様にして目的物を得た。
【0032】
化合物B−2
エチレンオキサイド50molとモノマーB 15molをモノマーとして用い、塩化ビニルの代わりにメタクリル酸クロライドを用いた以外は化合物A−と同様にして目的物を得た。
【0033】
化合物B−3
エチレンオキサイド1molとモノマーC 1molをモノマーとして用い、塩化ビニルの代わりに塩化アリルを用いた以外は化合物A−と同様にして目的物を得た。
【0034】
化合物B−
エチレンオキサイド10molとモノマー 10molをモノマーとして用い、塩化ビニルの代わりにアクリル酸クロライドを用いた以外は化合物A−と同様にして目的物を得た。
【0035】
上記により得られた化合物A−1〜A−、B−1〜B−の構造は次の化学式及び表に示す通りである。
【0036】
【化4】
Figure 0003557960
【0037】
【化5】
Figure 0003557960
【0038】
[高分子電解質の製造]
実施例1
化合物A−1 1g、LiAsF 10mol/kg、及びアゾイソブチロニトリル(AIBN)0.01gをアセトニトリル0.2gに40℃で溶解させ、ガラス板間に流し込んだ後、80℃で2時間放置後、アセトニトリルを減圧留去することにより、厚さ500μmの高分子電解質を得た。
【0039】
実施例
一般式()で表される化合物、塩の種類及び量として下表1に示したものをそれぞれ用いた以外は、実施例と同様にして高分子電解質を得た。
【0040】
実施例
化合物B−4 1g、LiF3mol/kg、及びAIBN0.01gをエチレンカーボネート0.5g、1,3−ジオキソラン0.5gに40℃で溶解させ、ガラス板間に流し込んだ後、80℃で2時間放置して、厚さ500μmの高分子電解質を得た。
【0041】
実施例
一般式()で表される化合物、塩、非プロトン性溶媒の種類及び量として下表1に示したものをそれぞれ用いた以外は、実施例と同様にして高分子電解質を得た。
【0042】
比較例
一般式(1)で表される化合物、塩の種類及び量として下表1に示したものをそれぞれ用いた以外は、実施例と同様にして高分子電解質を得た。
【0043】
比較例
分子量が100万のポリエチレンオキシド(PEO)1g、LiBF1mol/kgをアセトニトリル0.2gに40℃で溶解させ、ガラス板間に流し込んだ後、アセトニトリルを減圧留去することで、厚さ500μmの高分子電解質を得た。
【0044】
[リチウムイオン輸率の測定]
上記実施例及び比較例により得られた高分子電解質を直径13mmの円形に打ち抜き、同径のリチウム金属電極で挟み、直流分極法によりリチウムイオン輸率を測定した。結果を表1に併せ示す。
【0045】
【表1】
Figure 0003557960
【0046】
【発明の効果】
本発明のイオン導電性高分子を用いた高分子電解質によれば、ルイス酸である三価のホウ素原子を高分子骨格中に有することで電解質塩の解離が促進され、その結果電荷キャリアイオン輸率が大幅に向上する。
【0047】
従って、これを用いることにより、例えば、従来のものよりさらに高電圧・高容量の電池を得ることが可能になる。

Claims (11)

  1. 次の一般式(1)で表される化合物を、重合性官能基Yどうしの結合により架橋させてなるイオン伝導性高分子。
    Figure 0003557960
  2. 請求項に記載のイオン伝導性高分子を1種又は2種以上用いてなる高分子電解質。
  3. 請求項に記載のイオン伝導性高分子1種又は2種以上と電解質塩とを含有してなる高分子電解質。
  4. 非水溶媒をさらに含有してなる、請求項に記載の高分子電解質。
  5. 前記電解質塩がリチウム塩であることを特徴とする、請求項又はに記載の高分子電解質。
  6. 前記リチウム塩が、LiBF、LiPF、LiClO、LiAsF、LiCFSO、LiN(CFSO、LiN(CSO、LiC(CFSO、LiCl、LiF、LiBr、LiI、およびこれらの誘導体からなる群より選ばれた1種または2種以上であることを特徴とする、請求項に記載の高分子電解質。
  7. 前記非水溶媒が非プロトン性溶媒であることを特徴とする、請求項4〜6のいずれか1項に記載の高分子電解質。
  8. 前記非プロトン性溶媒が、カーボネート類、ラクトン類、エーテル類、スルホラン類、およびジオキソラン類からなる群から選ばれた1種又は2種以上であることを特徴とする、請求項に記載の高分子電解質。
  9. 請求項2〜8のいずれか1項に記載の高分子電解質を用いてなる電気化学デバイス。
  10. 正極と負極が、請求項2〜8のいずれか1項に記載の高分子電解質を介して接合されてなる電池。
  11. 前記正極がリチウムイオンを吸蔵及び放出することが可能な複合金属酸化物からなり、負極がリチウム金属、リチウム合金、もしくはリチウムイオンを可逆的に吸蔵及び放出することが可能な化合物からなることを特徴とする、請求項10に記載の電池。
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