JP3557962B2 - 高分子電解質及びこれを用いてなる電気化学デバイス - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ホウ素原子を構造中に有する化合物を添加剤として用いることによって電荷キャリアイオンの輸率向上を可能にした高分子電解質及びこれを用いた電気化学デバイスに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
高電圧・高容量の電池の開発に伴い、様々な系の高分子電解質が数多く提案されている。しかし、高分子電解質は、水系電解質と比較して、イオン伝導度が一桁以上低く、また、例えばポリエチレングリコールを用いた高分子電解質は、電荷キャリアイオンの移動及び輸率が低いといった欠点があり、種々の手法を用いて改善の試みが為されている。
【0003】
一方、非水電解質を電池系に適用した場合、充放電効率やサイクル特性の低さが問題となっており、これらの改良を目的として、電解液の溶媒組成や支持塩の種類の検討や、また、非水電解質に添加剤を加えた系の検討がなされている。例えば、特開平11−3728号では、リチウムを可逆的に吸蔵放出可能な材料を含む正極と負極、リチウム塩を含む非水電解液、及びセパレーターから成る非水電解液二次電池において、電池内に少なくとも1種の有機ホウ素化合物を所定量含有させることが開示されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、これら従来の技術においては、添加剤の有効濃度領域が狭い上、重量あたりの添加効果が小さいことが問題として挙げられる。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたもので、電解質塩の解離度を高め、電荷キャリアイオンの輸率向上を可能にした高分子電解質であって、用いられる添加剤の有効濃度領域が広く、重量あたりの添加効果が大きい添加剤を含む高分子電解質、及びこれを用いた電気化学デバイスを提供することを課題とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、電解質塩の解離を促進し、かつ電荷キャリアイオンの対イオンを補足し動きにくくすることで電荷キャリアイオンの輸率をコントロールすることに想到し、ルイス酸である三価のホウ素原子を複数個構造中に有する化合物を添加剤として用いることが、上記課題を解決するための有効な手段であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明の高分子電解質は、電解質塩及び該電解質塩と複合体を形成する高分子化合物からなる高分子電解質であって、次の一般式(1)〜(4)で表される化合物からなる群より選ばれた1種又は2種以上であるホウ素原子を構造中に有する化合物が添加されてなるものとする(請求項1)。
【0008】
【化2】
式(1)中、R11、R12、R13、R14、R15、R16、式(2)中、R21、R22、R23、R24、R25、R26、R27、R28、式(3)中、R31、R32、R33、R34、R35、R36、R37、R38、R39、R310、式(4)中、R41、R42、R43、R44、R45、R46、R47、R48、R49、R410、R411、R412は、それぞれ互いに同一であっても異なっていてもよく、各々水素原子、ハロゲン原子、又は1価の基を表し、あるいは、互いに結合して環を形成しているものとする。
【0009】
式(1)中、Raは少なくとも3つの同種あるいは異種のホウ素原子と結合可能な部位を含む基を示し、式(2)中、Rbは少なくとも4つの同種あるいは異種のホウ素原子と結合可能な部位を含む基を示し、式(3)中、Rcは少なくとも5つの同種あるいは異種のホウ素原子と結合可能な部位を含む基を示し、式(4)中、Rdは少なくとも6つの同種あるいは異種のホウ素原子と結合可能な部位を含む基を示す。
【0010】
上記高分子電解質には、非水溶媒をさらに含有させることができる(請求項2)。
【0011】
上記一般式(1)〜(4)中のR11、R12、R13、R14、R15、R16、R21、R22、R23、R24、R25、R26、R27、R28、R31、R32、R33、R34、R35、R36、R37、R38、R39、R310、R41、R42、R43、R44、R45、R46、R47、R48、R49、R410、R411、及びR412は、好ましくは、アルキル基、アリール基、及びこれらのフッ素置換誘導体からなる群より選ばれた1種又は2種以上とする(請求項3)。
【0012】
また、高分子化合物は、ポリアルキレン、ポリエーテル、ポリエステル、ポリアミン、ポリイミド、ポリウレタン、ポリスルフィド、ポリフォスファゼン、ポリシロキサン、これらの誘導体、これらの共重合体、またはこれらの架橋体からなるものとする(請求項4)。あるいは、ポリアルキレンオキシド、ポリフッ化ビニリデン、ポリヘキサフルオロプロピレン、ポリアクリロニトリル、ポリメタクリル酸メチル、これらの誘導体、これらの共重合体、またはこれらの架橋体からなるものとする(請求項5)。
【0013】
電解質塩は、好ましくは金属塩とし(請求項6)、より好ましくはリチウム塩とし(請求項7)、具体的にはLiBF4、LiPF6、LiClO4、LiAsF6、LiCF3SO3、LiN(CF3SO2)2、LiN(C2F5SO2)2、LiC(CF3SO2)3、LiCl、LiF、LiBr、LiI、およびこれらの誘導体等からなる群より選ばれた1種または2種以上を用いることができる(請求項8)。
【0014】
非水溶媒は、好ましくは非プロトン性(請求項9)とし、具体的には、カーボネート類、ラクトン類、エーテル類、スルホラン類、およびジオキソラン類からなる群から選ばれた1種又は2種以上を用いることができる(請求項10)。
【0015】
上記ホウ素原子を構造中に有する化合物と電解質塩のモル比は、好ましくは0.1:100〜300:100とする(請求項11)。
【0016】
次に、本発明の電気化学デバイスは、上記のうちいずれかの高分子電解質を用いてなるものとする(請求項12)。
【0017】
電気化学デバイスが電池であれば、正極と負極が、上記のうちいずれかの高分子電解質を介して接合されてなるものとする(請求項13)。その場合、正極はリチウムイオンを吸蔵及び放出することが可能な複合金属酸化物からなり、負極はリチウム金属、リチウム合金、もしくはリチウムイオンを可逆的に吸蔵及び放出することが可能な化合物からなるものとすることができる(請求項14)。
【0018】
【発明の実施の形態】
本発明の好ましい形態を以下に挙げるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0019】
本発明の高分子電解質は、上記したように、少なくとも一種のホウ素原子を構造中に有する化合物が添加されてなり、ホウ素原子を構造中に有する化合物は、次の一般式(1)〜(4)で表すことができる。
【0020】
【化3】
【0021】
式(1)中、R11、R12、R13、R14、R15、R16、式(2)中、R21、R22、R23、R24、R25、R26、R27、R28、式(3)中、R31、R32、R33、R34、R35、R36、R37、R38、R39、R310、式(4)中、R41、R42、R43、R44、R45、R46、R47、R48、R49、R410、R411、R412は、それぞれ互いに同一であっても異なっていても良く、各々水素原子、ハロゲン原子、又は1価の基を示す。1価の基の例としては、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アルケニル基、アルキニル基、アラルキル基、シクロアルキル基、シアノ基、ヒドロキシル基、ホルミル基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アシルオキシ基、スルホニルオキシ基、アミノ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、カルボンアミノ基、オキシスルホニルアミノ基、スルホンアミド基、オキシカルボニルアミノ基、ウレイド基、アシル基、オキシカルボニル基、カルバモイル基、スルホニル基、スルフィニル基、オキシスルホニル基、スルファモイル基、カルボン酸基、スルホン酸基、ホスホン酸基、複素環基、−B(R1)(R2)、−OB(R1)(R2)または−OSi(R1)(R2)(R3)が挙げられるが、中でも、アルキル基、アリール基、及びこれらのフッ素置換誘導体が好ましい。ここで、R1、R2及びR3は、各々水素原子、ハロゲン原子、又は1価の基を示し、1価の基の例としては、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アルケニル基、アルキニル基、アラルキル基、シクロアルキル基、シアノ基、ヒドロキシル基、ホルミル基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アシルオキシ基、スルホニルオキシ基、アミノ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、カルボンアミノ基、オキシスルホニルアミノ基、スルホンアミド基、オキシカルボニルアミノ基、ウレイド基、アシル基、オキシカルボニル基、カルバモイル基、スルホニル基、スルフィニル基、オキシスルホニル基、スルファモイル基、カルボン酸基、スルホン酸基、ホスホン酸基、複素環基、及びこれらの誘導体が挙げられる。
【0022】
また、上記式(1)中、R11、R12、R13、R14、R15、R16、式(2)中、R21、R22、R23、R24、R25、R26、R27、R28、式(3)中、R31、R32、R33、R34、R35、R36、R37、R38、R39、R310、及び式(4)中、R41、R42、R43、R44、R45、R46、R47、R48、R49、R410、R411、R412は、互いに結合して環を形成していてもよく、この環は置換基を有していても良い。また、各基は置換可能な基によって置換されても良い。
【0023】
式(1)中、Raで示される少なくとも3つの同種あるいは異種のホウ素原子と結合可能な部位を含む基の例としては、グリセリン、トリメチロールエタン、トリヒドロキシベンゼン、ジヒドロキシ安息香酸、ジアミノ安息香酸、トリブロモベンゼン残基等が挙げられる。
【0024】
式(2)中、Rbで示される少なくとも4つの同種あるいは異種のホウ素原子と結合可能な部位を含む基の例としては、ジグリセリン、ペンタエリトリトール、テトラブロモベンゼン残基等が挙げられる。
【0025】
式(3)中、Rcで示される少なくとも5つの同種あるいは異種のホウ素原子と結合可能な部位を含む基の例としては、グルコース、モリン残基等が挙げられる。
【0026】
式(4)中、Rdで示される少なくとも6つの同種あるいは異種のホウ素原子と結合可能な部位を含む基の例としては、ガラクタリック酸、ミリセチン残基等が挙げられる。
【0027】
上記一般式(1)〜(4)で示される化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0028】
また、高分子化合物の例としては、ポリアルキレン、ポリエーテル、ポリエステル、ポリアミン、ポリイミド、ポリウレタン、ポリスルフィド、ポリフォスファゼン、ポリシロキサン、ポリアルキレンオキシド、ポリフッ化ビニリデン、ポリヘキサフルオロプロピレン、ポリアクリロニトリル、ポリメタクリル酸メチル、それらの誘導体、それらの共重合体、またはそれらの架橋体からなる高分子化合物が挙げられる。
【0029】
中でもアルキレンオキシド重合体、及び/またはその誘導体、及び/またはその架橋体からなる高分子化合物であることが好ましく、例えば次式で表される化合物(A)及び/または化合物(B)の重合体又は共重合体を用いることができる。
【0030】
【化4】
【0031】
高分子化合物の好ましい例としては、以下の化合物を前駆体として重合させて得られるものが挙げられる。次式において、p3、p4は0〜150の整数、q3、q4は0〜600の整数(但し、p3とq3、p4とq4の双方が同時に0になる場合を除く)、s1 は0〜3の整数、r1は0〜10の整数、t1は0〜3の整数である。
【化5】
【0032】
【化6】
【0033】
【化7】
【0034】
電解質塩としては、金属塩が好ましく、リチウム塩であることがより好ましい。その例としては、LiBF4、LiPF6、LiClO4、LiAsF6、LiCF3SO3、LiN(CF3SO2)2、LiN(C2F5SO2)2、LiC(CF3SO2)3、LiCl、LiF、LiBr、LiIおよびこれらの誘導体等が挙げられ、これらリチウム塩は1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0035】
これら電解質塩の濃度は、0.01mol/kg〜10mol/kgであり、好ましくは0.2mol/kg〜6mol/kgである。
【0036】
非水溶媒は非プロトン性溶媒であることが好ましく、その例としては、カーボネート類、ラクトン類、エーテル類、スルホラン類、およびジオキソラン類が挙げられる。これら非プロトン性溶媒は1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0037】
上記高分子化合物と非水溶媒の混合比は、重量比で1/99〜99/1であり、好ましくは5/95〜95/5であり、より好ましくは10/90〜90/10である。
【0038】
また、ホウ素原子を構造中に有する化合物と電解質塩のモル比は、好ましくは0.1:100〜300:100であり、より好ましくは1:100〜200:100であり、さらに好ましくは50:100〜100:100である。
【0039】
本発明の電池は、正極と負極が上記のいずれかの高分子電解質を介して接合されてなるものである。
【0040】
ここで正極には、リチウムイオンを吸蔵及び放出することが可能な複合金属酸化物が用いられ、その例としてはコバルト酸リチウム、ニッケル酸リチウム、マンガン酸リチウム、五酸化バナジウム等が挙げられる。
【0041】
また、負極には、リチウム金属、リチウム合金、もしくはリチウムイオンを可逆的に吸蔵及び放出することが可能な物質が用いられ、そのような物質の例としてはカーボン等が挙げられる。
【0042】
以下に一般式(1)〜(4)で表される化合物の具体例を示すが、本発明の範囲はこれらに限定されるものではない。
【0043】
【化8】
【0044】
【化9】
【0045】
【化10】
【0046】
【化11】
【0047】
【化12】
【0048】
【化13】
【0049】
【化14】
【0050】
【実施例】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0051】
[モノマーの製造]
モノマーA
出発物質エチレングリコールモノブチルエーテル1molに水酸化カリウム0.01molを加え攪拌しながら窒素置換を行った後、真空ポンプを用いて系内を減圧にした。次いで120℃に昇温し、モノマーとしてエチレンオキサイド1molを用いて反応させた。反応終了後、系内の温度が室温になるまで冷却し、ナトリウムメチラート1.1molのメタノール溶液を添加し、減圧しながら50℃までゆっくり昇温した。メタノールを完全に除去した後、エピクロロヒドリン1.2molを加え、4時間反応させた。反応終了後、吸着処理を行い、減圧脱水後濾過することにより目的物を得た。
【0052】
モノマーB
出発物質としてエチレングリコールモノメチルエーテルを用い、モノマーとしてエチレンオキサイド9molを用いた以外はモノマーAと同様にして目的物を得た。
【0053】
モノマーC
出発物質としてエチレングリコールモノプロピルエーテルを用い、モノマーとしてエチレンオキサイド2molを用いた以外はモノマーAと同様にして目的物を得た。
【0054】
モノマーD
出発物質としてエチレングリコールモノメチルエーテルを用い、モノマーとしてエチレンオキサイド1molを用いた以外はモノマーAと同様にして目的物を得た。
【0055】
[高分子化合物前駆体B−1〜B−7の製造]
高分子化合物前駆体B−1
出発物質ジグリセリン0.25molに水酸化カリウム0.01molを加え、攪拌しながら窒素置換し、真空ポンプを用いて系内を減圧にした。次いで、120℃に昇温し、モノマーとしてエチレンオキサイド150molと1,2−エポキシヘキサン600molを用いて反応させた。反応終了後、系内の温度が室温になるまで冷却し、ナトリウムメチラート1.1molのメタノール溶液を添加し、減圧しながら50℃までゆっくり昇温した。メタノールを完全に除去し、放冷後、トルエン1kgを添加し、塩化アリル1molを加えて4時間反応させた。酸・アルカリ吸着処理を行った後濾過し、減圧下トルエンを除去することで目的物を得た。
【0056】
高分子化合物前駆体B−2
出発物質としてエチレングリコール0.5molを用い、エチレンオキサイド2molとブチレンオキサイド1molをモノマーとして用い、塩化アリルの代わりに塩化ビニルを用いた以外は高分子化合物前駆体B−1と同様にして目的物を得た。
【0057】
高分子化合物前駆体B−3
出発物質としてグリセリン0.33molを用い、エチレンオキサイド150molと1,2−エポキシペンタン29molをモノマーとして用い、塩化アリルの代わりにアクリル酸クロライドを用いた以外は高分子化合物前駆体B−1と同様にして目的物を得た。
【0058】
高分子化合物前駆体B−4
出発物質としてエチレングリコール0.5mol、モノマーとしてモノマーA 600molを用い、塩化アリルの代わりにアクリル酸クロライドを用いた以外は高分子化合物前駆体B−1と同様にして目的物を得た。
【0059】
高分子化合物前駆体B−5
出発物質としてグリセリン0.33mol、モノマーとしてエチレンオキサイド50molとモノマーB 15molを用い、塩化アリルの代わりにメタクリル酸クロライドを用いた以外は高分子化合物前駆体B−1と同様にして目的物を得た。
【0060】
高分子化合物前駆体B−6
エチレンオキサイド1molとモノマーC 1molをモノマーとして用いた以外は高分子化合物前駆体B−1と同様にして目的物を得た。
【0061】
高分子化合物前駆体B−7
出発物質としてグリセリン0.33mol、モノマーとしてエチレンオキサイド126molとモノマーD 24molを用い、塩化アリルの代わりにアクリル酸クロライドを用いた以外は高分子化合物前駆体B−1と同様にして目的物を得た。
【0062】
上記製造例により得られた高分子化合物前駆体B−1〜B−7の構造は、次の表に示す通りである。
【0063】
【化15】
【0064】
【化16】
【0065】
[高分子電解質の製造]
実施例1
高分子化合物前駆体B−1 1gに、上記式4Z−3で示される添加物0.05mol/kg、LiClO 4 0.1mol/kg、光重合開始剤を加え、40℃で溶解させ、ガラス板間に流し込んだ後、アルゴン雰囲気下紫外線照射することにより、厚さ500μmの高分子電解質を得た。
【0066】
実施例2〜9
高分子化合物前駆体、添加物、塩、非プロトン性溶媒の種類及び量として下表1にそれぞれ示したものを用いた以外は実施例1と同様にして高分子電解質を得た。
【0067】
比較例1〜3
高分子化合物前駆体、添加物、塩の種類及び量として下表1にそれぞれ示したものを用いた以外は実施例1と同様にして高分子電解質を得た。
【0068】
[リチウムイオン輸率の測定]
上記実施例及び比較例により得られた高分子電解質を直径13mmの円形に打ち抜き、同径のリチウム金属電極で挟み、直流分極法によりリチウムイオン輸率を測定した。結果を下表1に併せ示す。
【0069】
【表1】
【0070】
【発明の効果】
本発明の高分子電解質によれば、ルイス酸である三価のホウ素原子を複数個構造中に有する化合物を添加剤として用いることで、電解質塩の解離が促進され、その結果電荷キャリアイオンの輸率向上が可能となる。しかも単位重量あたりの添加効果が大きいので大幅な輸率向上が可能で、添加剤の有効濃度領域も広い。
【0071】
従って、これを用いることにより、従来のものよりさらに高電圧・高容量の電池を得ることが可能になる。
【発明の属する技術分野】
本発明は、ホウ素原子を構造中に有する化合物を添加剤として用いることによって電荷キャリアイオンの輸率向上を可能にした高分子電解質及びこれを用いた電気化学デバイスに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
高電圧・高容量の電池の開発に伴い、様々な系の高分子電解質が数多く提案されている。しかし、高分子電解質は、水系電解質と比較して、イオン伝導度が一桁以上低く、また、例えばポリエチレングリコールを用いた高分子電解質は、電荷キャリアイオンの移動及び輸率が低いといった欠点があり、種々の手法を用いて改善の試みが為されている。
【0003】
一方、非水電解質を電池系に適用した場合、充放電効率やサイクル特性の低さが問題となっており、これらの改良を目的として、電解液の溶媒組成や支持塩の種類の検討や、また、非水電解質に添加剤を加えた系の検討がなされている。例えば、特開平11−3728号では、リチウムを可逆的に吸蔵放出可能な材料を含む正極と負極、リチウム塩を含む非水電解液、及びセパレーターから成る非水電解液二次電池において、電池内に少なくとも1種の有機ホウ素化合物を所定量含有させることが開示されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、これら従来の技術においては、添加剤の有効濃度領域が狭い上、重量あたりの添加効果が小さいことが問題として挙げられる。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたもので、電解質塩の解離度を高め、電荷キャリアイオンの輸率向上を可能にした高分子電解質であって、用いられる添加剤の有効濃度領域が広く、重量あたりの添加効果が大きい添加剤を含む高分子電解質、及びこれを用いた電気化学デバイスを提供することを課題とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、電解質塩の解離を促進し、かつ電荷キャリアイオンの対イオンを補足し動きにくくすることで電荷キャリアイオンの輸率をコントロールすることに想到し、ルイス酸である三価のホウ素原子を複数個構造中に有する化合物を添加剤として用いることが、上記課題を解決するための有効な手段であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明の高分子電解質は、電解質塩及び該電解質塩と複合体を形成する高分子化合物からなる高分子電解質であって、次の一般式(1)〜(4)で表される化合物からなる群より選ばれた1種又は2種以上であるホウ素原子を構造中に有する化合物が添加されてなるものとする(請求項1)。
【0008】
【化2】
式(1)中、R11、R12、R13、R14、R15、R16、式(2)中、R21、R22、R23、R24、R25、R26、R27、R28、式(3)中、R31、R32、R33、R34、R35、R36、R37、R38、R39、R310、式(4)中、R41、R42、R43、R44、R45、R46、R47、R48、R49、R410、R411、R412は、それぞれ互いに同一であっても異なっていてもよく、各々水素原子、ハロゲン原子、又は1価の基を表し、あるいは、互いに結合して環を形成しているものとする。
【0009】
式(1)中、Raは少なくとも3つの同種あるいは異種のホウ素原子と結合可能な部位を含む基を示し、式(2)中、Rbは少なくとも4つの同種あるいは異種のホウ素原子と結合可能な部位を含む基を示し、式(3)中、Rcは少なくとも5つの同種あるいは異種のホウ素原子と結合可能な部位を含む基を示し、式(4)中、Rdは少なくとも6つの同種あるいは異種のホウ素原子と結合可能な部位を含む基を示す。
【0010】
上記高分子電解質には、非水溶媒をさらに含有させることができる(請求項2)。
【0011】
上記一般式(1)〜(4)中のR11、R12、R13、R14、R15、R16、R21、R22、R23、R24、R25、R26、R27、R28、R31、R32、R33、R34、R35、R36、R37、R38、R39、R310、R41、R42、R43、R44、R45、R46、R47、R48、R49、R410、R411、及びR412は、好ましくは、アルキル基、アリール基、及びこれらのフッ素置換誘導体からなる群より選ばれた1種又は2種以上とする(請求項3)。
【0012】
また、高分子化合物は、ポリアルキレン、ポリエーテル、ポリエステル、ポリアミン、ポリイミド、ポリウレタン、ポリスルフィド、ポリフォスファゼン、ポリシロキサン、これらの誘導体、これらの共重合体、またはこれらの架橋体からなるものとする(請求項4)。あるいは、ポリアルキレンオキシド、ポリフッ化ビニリデン、ポリヘキサフルオロプロピレン、ポリアクリロニトリル、ポリメタクリル酸メチル、これらの誘導体、これらの共重合体、またはこれらの架橋体からなるものとする(請求項5)。
【0013】
電解質塩は、好ましくは金属塩とし(請求項6)、より好ましくはリチウム塩とし(請求項7)、具体的にはLiBF4、LiPF6、LiClO4、LiAsF6、LiCF3SO3、LiN(CF3SO2)2、LiN(C2F5SO2)2、LiC(CF3SO2)3、LiCl、LiF、LiBr、LiI、およびこれらの誘導体等からなる群より選ばれた1種または2種以上を用いることができる(請求項8)。
【0014】
非水溶媒は、好ましくは非プロトン性(請求項9)とし、具体的には、カーボネート類、ラクトン類、エーテル類、スルホラン類、およびジオキソラン類からなる群から選ばれた1種又は2種以上を用いることができる(請求項10)。
【0015】
上記ホウ素原子を構造中に有する化合物と電解質塩のモル比は、好ましくは0.1:100〜300:100とする(請求項11)。
【0016】
次に、本発明の電気化学デバイスは、上記のうちいずれかの高分子電解質を用いてなるものとする(請求項12)。
【0017】
電気化学デバイスが電池であれば、正極と負極が、上記のうちいずれかの高分子電解質を介して接合されてなるものとする(請求項13)。その場合、正極はリチウムイオンを吸蔵及び放出することが可能な複合金属酸化物からなり、負極はリチウム金属、リチウム合金、もしくはリチウムイオンを可逆的に吸蔵及び放出することが可能な化合物からなるものとすることができる(請求項14)。
【0018】
【発明の実施の形態】
本発明の好ましい形態を以下に挙げるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0019】
本発明の高分子電解質は、上記したように、少なくとも一種のホウ素原子を構造中に有する化合物が添加されてなり、ホウ素原子を構造中に有する化合物は、次の一般式(1)〜(4)で表すことができる。
【0020】
【化3】
【0021】
式(1)中、R11、R12、R13、R14、R15、R16、式(2)中、R21、R22、R23、R24、R25、R26、R27、R28、式(3)中、R31、R32、R33、R34、R35、R36、R37、R38、R39、R310、式(4)中、R41、R42、R43、R44、R45、R46、R47、R48、R49、R410、R411、R412は、それぞれ互いに同一であっても異なっていても良く、各々水素原子、ハロゲン原子、又は1価の基を示す。1価の基の例としては、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アルケニル基、アルキニル基、アラルキル基、シクロアルキル基、シアノ基、ヒドロキシル基、ホルミル基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アシルオキシ基、スルホニルオキシ基、アミノ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、カルボンアミノ基、オキシスルホニルアミノ基、スルホンアミド基、オキシカルボニルアミノ基、ウレイド基、アシル基、オキシカルボニル基、カルバモイル基、スルホニル基、スルフィニル基、オキシスルホニル基、スルファモイル基、カルボン酸基、スルホン酸基、ホスホン酸基、複素環基、−B(R1)(R2)、−OB(R1)(R2)または−OSi(R1)(R2)(R3)が挙げられるが、中でも、アルキル基、アリール基、及びこれらのフッ素置換誘導体が好ましい。ここで、R1、R2及びR3は、各々水素原子、ハロゲン原子、又は1価の基を示し、1価の基の例としては、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アルケニル基、アルキニル基、アラルキル基、シクロアルキル基、シアノ基、ヒドロキシル基、ホルミル基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アシルオキシ基、スルホニルオキシ基、アミノ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、カルボンアミノ基、オキシスルホニルアミノ基、スルホンアミド基、オキシカルボニルアミノ基、ウレイド基、アシル基、オキシカルボニル基、カルバモイル基、スルホニル基、スルフィニル基、オキシスルホニル基、スルファモイル基、カルボン酸基、スルホン酸基、ホスホン酸基、複素環基、及びこれらの誘導体が挙げられる。
【0022】
また、上記式(1)中、R11、R12、R13、R14、R15、R16、式(2)中、R21、R22、R23、R24、R25、R26、R27、R28、式(3)中、R31、R32、R33、R34、R35、R36、R37、R38、R39、R310、及び式(4)中、R41、R42、R43、R44、R45、R46、R47、R48、R49、R410、R411、R412は、互いに結合して環を形成していてもよく、この環は置換基を有していても良い。また、各基は置換可能な基によって置換されても良い。
【0023】
式(1)中、Raで示される少なくとも3つの同種あるいは異種のホウ素原子と結合可能な部位を含む基の例としては、グリセリン、トリメチロールエタン、トリヒドロキシベンゼン、ジヒドロキシ安息香酸、ジアミノ安息香酸、トリブロモベンゼン残基等が挙げられる。
【0024】
式(2)中、Rbで示される少なくとも4つの同種あるいは異種のホウ素原子と結合可能な部位を含む基の例としては、ジグリセリン、ペンタエリトリトール、テトラブロモベンゼン残基等が挙げられる。
【0025】
式(3)中、Rcで示される少なくとも5つの同種あるいは異種のホウ素原子と結合可能な部位を含む基の例としては、グルコース、モリン残基等が挙げられる。
【0026】
式(4)中、Rdで示される少なくとも6つの同種あるいは異種のホウ素原子と結合可能な部位を含む基の例としては、ガラクタリック酸、ミリセチン残基等が挙げられる。
【0027】
上記一般式(1)〜(4)で示される化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0028】
また、高分子化合物の例としては、ポリアルキレン、ポリエーテル、ポリエステル、ポリアミン、ポリイミド、ポリウレタン、ポリスルフィド、ポリフォスファゼン、ポリシロキサン、ポリアルキレンオキシド、ポリフッ化ビニリデン、ポリヘキサフルオロプロピレン、ポリアクリロニトリル、ポリメタクリル酸メチル、それらの誘導体、それらの共重合体、またはそれらの架橋体からなる高分子化合物が挙げられる。
【0029】
中でもアルキレンオキシド重合体、及び/またはその誘導体、及び/またはその架橋体からなる高分子化合物であることが好ましく、例えば次式で表される化合物(A)及び/または化合物(B)の重合体又は共重合体を用いることができる。
【0030】
【化4】
【0031】
高分子化合物の好ましい例としては、以下の化合物を前駆体として重合させて得られるものが挙げられる。次式において、p3、p4は0〜150の整数、q3、q4は0〜600の整数(但し、p3とq3、p4とq4の双方が同時に0になる場合を除く)、s1 は0〜3の整数、r1は0〜10の整数、t1は0〜3の整数である。
【化5】
【0032】
【化6】
【0033】
【化7】
【0034】
電解質塩としては、金属塩が好ましく、リチウム塩であることがより好ましい。その例としては、LiBF4、LiPF6、LiClO4、LiAsF6、LiCF3SO3、LiN(CF3SO2)2、LiN(C2F5SO2)2、LiC(CF3SO2)3、LiCl、LiF、LiBr、LiIおよびこれらの誘導体等が挙げられ、これらリチウム塩は1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0035】
これら電解質塩の濃度は、0.01mol/kg〜10mol/kgであり、好ましくは0.2mol/kg〜6mol/kgである。
【0036】
非水溶媒は非プロトン性溶媒であることが好ましく、その例としては、カーボネート類、ラクトン類、エーテル類、スルホラン類、およびジオキソラン類が挙げられる。これら非プロトン性溶媒は1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0037】
上記高分子化合物と非水溶媒の混合比は、重量比で1/99〜99/1であり、好ましくは5/95〜95/5であり、より好ましくは10/90〜90/10である。
【0038】
また、ホウ素原子を構造中に有する化合物と電解質塩のモル比は、好ましくは0.1:100〜300:100であり、より好ましくは1:100〜200:100であり、さらに好ましくは50:100〜100:100である。
【0039】
本発明の電池は、正極と負極が上記のいずれかの高分子電解質を介して接合されてなるものである。
【0040】
ここで正極には、リチウムイオンを吸蔵及び放出することが可能な複合金属酸化物が用いられ、その例としてはコバルト酸リチウム、ニッケル酸リチウム、マンガン酸リチウム、五酸化バナジウム等が挙げられる。
【0041】
また、負極には、リチウム金属、リチウム合金、もしくはリチウムイオンを可逆的に吸蔵及び放出することが可能な物質が用いられ、そのような物質の例としてはカーボン等が挙げられる。
【0042】
以下に一般式(1)〜(4)で表される化合物の具体例を示すが、本発明の範囲はこれらに限定されるものではない。
【0043】
【化8】
【0044】
【化9】
【0045】
【化10】
【0046】
【化11】
【0047】
【化12】
【0048】
【化13】
【0049】
【化14】
【0050】
【実施例】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0051】
[モノマーの製造]
モノマーA
出発物質エチレングリコールモノブチルエーテル1molに水酸化カリウム0.01molを加え攪拌しながら窒素置換を行った後、真空ポンプを用いて系内を減圧にした。次いで120℃に昇温し、モノマーとしてエチレンオキサイド1molを用いて反応させた。反応終了後、系内の温度が室温になるまで冷却し、ナトリウムメチラート1.1molのメタノール溶液を添加し、減圧しながら50℃までゆっくり昇温した。メタノールを完全に除去した後、エピクロロヒドリン1.2molを加え、4時間反応させた。反応終了後、吸着処理を行い、減圧脱水後濾過することにより目的物を得た。
【0052】
モノマーB
出発物質としてエチレングリコールモノメチルエーテルを用い、モノマーとしてエチレンオキサイド9molを用いた以外はモノマーAと同様にして目的物を得た。
【0053】
モノマーC
出発物質としてエチレングリコールモノプロピルエーテルを用い、モノマーとしてエチレンオキサイド2molを用いた以外はモノマーAと同様にして目的物を得た。
【0054】
モノマーD
出発物質としてエチレングリコールモノメチルエーテルを用い、モノマーとしてエチレンオキサイド1molを用いた以外はモノマーAと同様にして目的物を得た。
【0055】
[高分子化合物前駆体B−1〜B−7の製造]
高分子化合物前駆体B−1
出発物質ジグリセリン0.25molに水酸化カリウム0.01molを加え、攪拌しながら窒素置換し、真空ポンプを用いて系内を減圧にした。次いで、120℃に昇温し、モノマーとしてエチレンオキサイド150molと1,2−エポキシヘキサン600molを用いて反応させた。反応終了後、系内の温度が室温になるまで冷却し、ナトリウムメチラート1.1molのメタノール溶液を添加し、減圧しながら50℃までゆっくり昇温した。メタノールを完全に除去し、放冷後、トルエン1kgを添加し、塩化アリル1molを加えて4時間反応させた。酸・アルカリ吸着処理を行った後濾過し、減圧下トルエンを除去することで目的物を得た。
【0056】
高分子化合物前駆体B−2
出発物質としてエチレングリコール0.5molを用い、エチレンオキサイド2molとブチレンオキサイド1molをモノマーとして用い、塩化アリルの代わりに塩化ビニルを用いた以外は高分子化合物前駆体B−1と同様にして目的物を得た。
【0057】
高分子化合物前駆体B−3
出発物質としてグリセリン0.33molを用い、エチレンオキサイド150molと1,2−エポキシペンタン29molをモノマーとして用い、塩化アリルの代わりにアクリル酸クロライドを用いた以外は高分子化合物前駆体B−1と同様にして目的物を得た。
【0058】
高分子化合物前駆体B−4
出発物質としてエチレングリコール0.5mol、モノマーとしてモノマーA 600molを用い、塩化アリルの代わりにアクリル酸クロライドを用いた以外は高分子化合物前駆体B−1と同様にして目的物を得た。
【0059】
高分子化合物前駆体B−5
出発物質としてグリセリン0.33mol、モノマーとしてエチレンオキサイド50molとモノマーB 15molを用い、塩化アリルの代わりにメタクリル酸クロライドを用いた以外は高分子化合物前駆体B−1と同様にして目的物を得た。
【0060】
高分子化合物前駆体B−6
エチレンオキサイド1molとモノマーC 1molをモノマーとして用いた以外は高分子化合物前駆体B−1と同様にして目的物を得た。
【0061】
高分子化合物前駆体B−7
出発物質としてグリセリン0.33mol、モノマーとしてエチレンオキサイド126molとモノマーD 24molを用い、塩化アリルの代わりにアクリル酸クロライドを用いた以外は高分子化合物前駆体B−1と同様にして目的物を得た。
【0062】
上記製造例により得られた高分子化合物前駆体B−1〜B−7の構造は、次の表に示す通りである。
【0063】
【化15】
【0064】
【化16】
【0065】
[高分子電解質の製造]
実施例1
高分子化合物前駆体B−1 1gに、上記式4Z−3で示される添加物0.05mol/kg、LiClO 4 0.1mol/kg、光重合開始剤を加え、40℃で溶解させ、ガラス板間に流し込んだ後、アルゴン雰囲気下紫外線照射することにより、厚さ500μmの高分子電解質を得た。
【0066】
実施例2〜9
高分子化合物前駆体、添加物、塩、非プロトン性溶媒の種類及び量として下表1にそれぞれ示したものを用いた以外は実施例1と同様にして高分子電解質を得た。
【0067】
比較例1〜3
高分子化合物前駆体、添加物、塩の種類及び量として下表1にそれぞれ示したものを用いた以外は実施例1と同様にして高分子電解質を得た。
【0068】
[リチウムイオン輸率の測定]
上記実施例及び比較例により得られた高分子電解質を直径13mmの円形に打ち抜き、同径のリチウム金属電極で挟み、直流分極法によりリチウムイオン輸率を測定した。結果を下表1に併せ示す。
【0069】
【表1】
【0070】
【発明の効果】
本発明の高分子電解質によれば、ルイス酸である三価のホウ素原子を複数個構造中に有する化合物を添加剤として用いることで、電解質塩の解離が促進され、その結果電荷キャリアイオンの輸率向上が可能となる。しかも単位重量あたりの添加効果が大きいので大幅な輸率向上が可能で、添加剤の有効濃度領域も広い。
【0071】
従って、これを用いることにより、従来のものよりさらに高電圧・高容量の電池を得ることが可能になる。
Claims (14)
- 電解質塩及び該電解質塩と複合体を形成する高分子化合物からなる高分子電解質であって、次の一般式(1)〜(4)で表される化合物からなる群より選ばれた1種又は2種以上である、ホウ素原子を構造中に有する化合物が添加されてなることを特徴とする高分子電解質。
- 非水溶媒をさらに含有してなることを特徴とする、請求項1に記載の高分子電解質。
- 前記R11、R12、R13、R14、R15、R16、R21、R22、R23、R24、R25、R26、R27、R28、R31、R32、R33、R34、R35、R36、R37、R38、R39、R310、R41、R42、R43、R44、R45、R46、R47、R48、R49、R410、R411、R412で示される基が、アルキル基、アリール基、及びこれらのフッ素置換誘導体からなる群より選ばれた1種又は2種以上であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の高分子電解質。
- 前記高分子化合物が、ポリアルキレン、ポリエーテル、ポリエステル、ポリアミン、ポリイミド、ポリウレタン、ポリスルフィド、ポリフォスファゼン、ポリシロキサン、これらの誘導体、これらの共重合体、またはこれらの架橋体からなることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の高分子電解質。
- 前記高分子化合物が、ポリアルキレンオキシド、ポリフッ化ビニリデン、ポリヘキサフルオロプロピレン、ポリアクリロニトリル、ポリメタクリル酸メチル、これらの誘導体、これらの共重合体、またはこれらの架橋体からなることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の高分子電解質。
- 前記電解質塩が金属塩であることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載の高分子電解質。
- 前記金属塩がリチウム塩であることを特徴とする、請求項6に記載の高分子電解質。
- 前記リチウム塩が、LiBF4、LiPF6、LiClO4、LiAsF6、LiCF3SO3、LiN(CF3SO2)2、LiN(C2F5SO2)2、LiC(CF3SO2)3、LiCl、LiF、LiBr、LiI、およびこれらの誘導体等からなる群より選ばれた1種または2種以上であることを特徴とする、請求項7に記載の高分子電解質。
- 前記非水溶媒が非プロトン性溶媒であることを特徴とする、請求項2〜8のいずれか1項に記載の高分子電解質。
- 前記非プロトン性溶媒が、カーボネート類、ラクトン類、エーテル類、スルホラン類、およびジオキソラン類からなる群から選ばれた1種又は2種以上であることを特徴とする、請求項9に記載の高分子電解質。
- 前記ホウ素原子を構造中に有する化合物と電解質塩のモル比が、0.1:100〜300:100であることを特徴とする、請求項1〜10のいずれか1項に記載の高分子電解質。
- 請求項1〜11のいずれか1項に記載の高分子電解質を用いてなる電気化学デバイス。
- 正極と負極が、請求項1〜11のいずれか1項に記載の高分子電解質を介して接合されてなる電池。
- 前記正極がリチウムイオンを吸蔵及び放出することが可能な複合金属酸化物からなり、負極がリチウム金属、リチウム合金、もしくはリチウムイオンを可逆的に吸蔵及び放出することが可能な化合物からなることを特徴とする、請求項13に記載の電池。
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