JP4783494B2 - 新規な置換フェノール酸化重合体 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は新規な置換フェノール酸化重合体に関する。
【0002】
【従来の技術】
フェノール類の酸化重合法(特公昭36−18692号公報)は、ホルマリンフリー・常温反応・副生成物は水だけという、環境に優しい重合方法である。これまでは、主に2,6-ジ置換フェノール類の酸化重合体に関心が集まっていたが、最近では、2-位及び/又は6-位に置換基を持たないフェノール類の酸化重合体も注目されるようになってきた(化学と工業、53巻、4号、501-505 (2000))。
一方、炭素原子数の大きな飽和炭化水素基をもつ芳香族ポリマーが開発され、ポリマーの結晶性、液晶性、粘弾性、溶解性等に関して様々な特徴が見い出されている。Macromolecules, 29, 1337, (1996)には該芳香族ポリエステルが、Macromolecules, 27, 7754 (1994)には該ポリアニリンが記載されている。しかし、炭素原子数の大きな飽和炭化水素基をもつ2-位及び/又は6-位が無置換のフェノール酸化重合体については、ノニルフェノール酸化重合体(J. Electroamal. Chem., 290, 79 (1990))が報告されているだけであり、この重合体の結晶性の記載もない。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、炭素原子数10以上の飽和炭化水素基をもつ、2-位及び/又は6-位が無置換のフェノール類の酸化重合体であって結晶性を示す重合体を提供することである。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記課題に鑑み鋭意研究した結果、以下の手段により上記課題を解決しうることを見出した。
(1)一般式(I)で表わされる置換フェノール化合物を酸化重合させて得られる重合体で、かつ数平均重合度が3以上である置換フェノール酸化重合体。
【0005】
【化2】
【0006】
(式中、R1〜R4は互いに独立に、水素原子、炭化水素基、置換炭化水素基、炭化水素オキシ基、アミノ基、置換アミノ基、メルカプト基、置換メルカプト基またはハロゲン原子を表わし、R1とR2、R2とR3及び/又はR3とR4が環を形成していてもよいが、R1及び/又はR4は水素原子であり、R1〜R4の少なくとも一つは炭素原子数10以上の飽和炭化水素基または炭素原子数10以上の置換飽和炭化水素基を表わす。)
(2)−100℃以上に5J/g以上の結晶融点をもつことを特徴とする(1)記載の置換フェノール酸化重合体。
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明の置換フェノール酸化重合体は、一般式(I)で表わされる置換フェノール化合物を酸化重合させて得られる重合体で、かつ数平均重合度が3以上である重合体である。
上記一般式(I)のR1〜R4における炭化水素基として、好ましくは、炭素原子数1〜100のアルキル基、炭素原子数3〜100のシクロアルキル基、炭素原子数7〜30(さらに好ましくは炭素原子数7〜20)のアラルキル基または炭素原子数6〜30(さらに好ましくは炭素原子数6〜20)のアリール基であり、具体的にはメチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、シクロペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、オクチル基、ノニル基、ベンジル基、2−フェニルエチル基、1−フェニルエチル基、フェニル基、4−メチルフェニル基、4−エチルフェニル基等が挙げられる。
上記一般式(I)のR1〜R4における置換炭化水素基は、好ましくは、ハロゲン原子、水酸基、アルコキシ基、アミノ基、置換アミノ基等で置換された炭素原子数1〜100のアルキル基、炭素原子数3〜100のシクロアルキル基、炭素原子数7〜30(さらに好ましくは炭素原子数7〜20)のアラルキル基または炭素原子数6〜30(さらに好ましくは炭素原子数6〜20)のアリール基であり、具体例としては、トリフルオロメチル基、2−t−ブチルオキシエチル基、3−ジメチルアミノプロピル基等が挙げられる。
【0008】
上記一般式(I)のR1〜R4における炭化水素オキシ基として、好ましくは、炭素原子数1〜30(さらに好ましくは炭素原子数1〜20)のアルコシ基、炭素原子数3〜30(さらに好ましくは炭素原子数3〜20)のシクロアルコキシ基、炭素原子数7〜30(さらに好ましくは炭素原子数7〜20)のアラルキルオキシ基または炭素原子数6〜30(さらに好ましくは炭素原子数6〜20)のアリールオキシ基であり、具体的にはメトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、iso−プロポキシ基、n−ブトキシ基、iso−ブトキシ基、t−ブトキシ基、ペンチルオキシ基、シクロペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、オクチルオキシ基、ノニルオキシ基、ベンジルオキシ基、2−フェニルエトキシ基、1−フェニルエトキシ基、フェニルオキシ基、4−メチルフェニルオキシ基、4−エチルフェニルオキシ基等が挙げられる。
【0009】
上記一般式(I)のR1〜R4における置換炭化水素オキシ基は、好ましくは、ハロゲン原子、アルコキシ基、アミノ基、置換アミノ基等で置換された炭素原子数1〜10のアルコキシ基、炭素原子数3〜30(さらに好ましくは炭素原子数3〜20)のシクロアルコキシ基、炭素原子数7〜30(さらに好ましくは炭素原子数7〜20)のアラルキルオキシ基または炭素原子数6〜30(さらに好ましくは炭素原子数6〜20)のアリールオキシ基であり、具体例としては、トリフルオロメトキシ基、2−t−ブチルオキシエトキシ基、3−ジメチルアミノプロポキシ基等が挙げられる。
【0010】
上記一般式(I)のR1〜R4における置換アミノ基は、好ましくは、炭素原子数1〜30(さらに好ましくは炭素原子数1〜20)のアルキル基、炭素原子数3〜30(さらに好ましくは炭素原子数3〜20)のシクロアルキル基、炭素原子数7〜30(さらに好ましくは炭素原子数7〜20)のアラルキル基または炭素原子数6〜30(さらに好ましくは炭素原子数6〜20)のアリール基で置換されたアミノ基であり、具体的にはメチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジ-n−プロピルアミノ基、ジ-iso−プロピルアミノ基、ジ-n−ブチルアミノ基、ジ-iso−ブチルアミノ基、ジ-t−ブチルアミノ基、ジペンチルアミノ基、ジシクロペンチルアミノ基、ジヘキシルアミノ基、ジシクロヘキシルアミノ基、ジオクチルアミノ基、ジノニルアミノ基、ジベンジルアミノ基、ジ-2−フェニルエチルアミノ基、ジ-1−フェニルエチルアミノ基、ジフェニルアミノ基、ジ-4−メチルフェニルアミノ基、ジ-4−エチルフェニルアミノ基等が挙げられる。
【0011】
上記一般式(I)のR1〜R4における置換メルカプト基は、好ましくは、炭素原子数1〜30(さらに好ましくは炭素原子数1〜20)のアルキルメルカプト基、炭素原子数3〜30(さらに好ましくは炭素原子数3〜20)のシクロアルキルメルカプト基、炭素原子数7〜30(さらに好ましくは炭素原子数7〜20)のアラルキルメルカプト基または炭素原子数6〜30(さらに好ましくは炭素原子数6〜20)のアリールメルカプト基であり、具体的にはメチルメルカプト基、エチルメルカプト基、n−プロピルメルカプト基、iso−プロピルメルカプト基、n−ブチルメルカプト基、iso−ブチルメルカプト基、t−ブチルメルカプト基、ペンチルメルカプト基、シクロペンチルメルカプト基、ヘキシルメルカプト基、シクロヘキシルメルカプト基、オクチルメルカプト基、ノニルメルカプト基、ベンジルメルカプト基、2−フェニルエチルメルカプト基、1−フェニルエチルメルカプト基、フェニルメルカプト基、4−メチルフェニルメルカプト基、4−エチルフェニルメルカプト基等が挙げられる。
上記一般式(I)のR1〜R4におけるハロゲン原子とは、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられるが、フッ素原子、塩素原子、臭素原子がより好ましく、フッ素原子、塩素原子がさらに好ましい。
【0012】
上記一般式(I)のR1〜R4のうち、R1とR2、R2とR3及び/又はR3とR4が環を形成する場合は、5〜7員環が好ましく、R1とR2、R2とR3及び/又はR3とR4が−(CH2)3−基、−(CH2)4−基または−CH=CH−CH=CH−基として環を形成するものであることがさらに好ましい。
上記一般式(I)のR1〜R4の少なくとも一つの基は、炭素原子数10以上の飽和炭化水素基または炭素原子数10以上の置換飽和炭化水素基である。この基の置換数は1〜3であるが、好ましくは1または2であり、さらに好ましくは1である。
上記一般式(I)のR1〜R4の少なくとも一つの基における飽和炭化水素基の炭素原子数として、好ましくは10〜100であり、より好ましくは10〜50であり、さらに好ましくは10〜30であり、特に好ましくは12〜22である。該飽和炭化水素基として、好ましくはアルキル基またはシクロアルキル基であり、より好ましくはアルキル基であり、さらに好ましくは−(CH2)n-1CH3または-CH(CH3)(CH2)n-3CH3(ただし、nは炭素原子数を表わす。)である。
上記一般式(I)のR1〜R4の少なくとも一つの基における置換飽和炭化水素基として、好ましくは、ハロゲン原子、水酸基、アルコキシ基、アミノ基、置換アミノ基等で置換された上記の飽和炭化水素基である。
上記一般式(I)のR1〜R4の少なくとも一つの基としては、飽和炭化水素基が好ましい。
【0013】
上記一般式(I)のR1、R2及びR4における炭素原子数10以上の置換基以外の基として、好ましくは、水素原子、炭素原子数1〜9の炭化水素基、炭素原子数1〜9の炭化水素オキシ基またはハロゲン原子である。より好ましくは、水素原子、炭素原子数1〜6の炭化水素基であり、さらに好ましくは、水素原子または炭素原子数1〜4の炭化水素基であり、特に好ましくは水素原子またはメチル基である。上記一般式(I)のR3における炭素原子数10以上の置換基以外の基として、好ましくは、水素原子、炭素原子数1〜9の炭化水素基、炭素原子数1〜9の炭化水素オキシ基またはハロゲン原子である。より好ましくは、水素原子、炭素原子数1〜6の炭化水素基または炭素原子数1〜6の炭化水素オキシ基であり、さらに好ましくは、水素原子またはフェノキシ基であり、特に好ましくは水素原子である。
【0014】
本発明のポリマーにおいては、上記一般式(I)で表される置換フェノール化合物を単独または混合して酸化重合することにより得てもよく、下記一般式(II)で表されるフェノール化合物、(III)で表されるフェノール化合物及び/又は下記一般式(IV)で表わされるビスフェノール化合物と混合して酸化重合することにより得てもよい。
【0015】
【化3】
【0016】
(式中、R5は互いに独立に、水素原子、炭素原子数1〜9の炭化水素基、炭素原子数1〜9の置換炭化水素基、炭素原子数1〜9の炭化水素オキシ基、アミノ基、炭素原子数1〜9の置換アミノ基、メルカプト基、炭素原子数1〜9の置換メルカプト基またはハロゲン原子であり、隣り合う二つのR5が環を形成していてもよい。R6は酸素原子、硫黄原子、二価の炭化水素基または二価の置換炭化水素基を表わし、mは1又は0である。)
【0017】
上記一般式(II)〜(IV)のR5における炭化水素基として、好ましくは、炭素原子数1〜9のアルキル基、炭素原子数3〜9のシクロアルキル基、炭素原子数7〜9のアラルキル基または炭素原子数6〜9のアリール基であり、具体的にはメチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、シクロペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、オクチル基、ノニル基、ベンジル基、2−フェニルエチル基、1−フェニルエチル基、フェニル基、4−メチルフェニル基、4−エチルフェニル基等が挙げられる。
上記一般式(II)〜(IV)のR5における置換炭化水素基は、好ましくは、ハロゲン原子、アルコキシ基、アミノ基、置換アミノ基等で置換された炭素原子数1〜9のアルキル基、炭素原子数3〜9のシクロアルキル基、炭素原子数7〜9のアラルキル基または炭素原子数6〜9のアリール基であり、具体例としては、トリフルオロメチル基、2−t−ブチルオキシエチル基、3−ジメチルアミノプロピル基等が挙げられる。
【0018】
上記一般式(II)〜(IV)のR5における炭化水素オキシ基として、好ましくは、炭素原子数1〜9のアルコキシ基、炭素原子数3〜9のシクロアルコキシ基、炭素原子数7〜9のアラルキルオキシ基または炭素原子数6〜9のアリールオキシ基であり、具体的にはメトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、iso−プロポキシ基、n−ブトキシ基、iso−ブトキシ基、t−ブトキシ基、ペンチルオキシ基、シクロペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、オクチルオキシ基、ノニルオキシ基、ベンジルオキシ基、2−フェニルエトキシ基、1−フェニルエトキシ基、フェニルオキシ基、4−メチルフェニルオキシ基、4−エチルフェニルオキシ基等が挙げられる。
【0019】
上記一般式(II)〜(IV)のR5における置換炭化水素基は、好ましくは、ハロゲン原子、アルコキシ基、アミノ基、置換アミノ基等で置換された炭素原子数1〜9のアルコキシ基、炭素原子数3〜9のシクロアルコキシ基、炭素原子数7〜9のアラルキルオキシ基または炭素原子数6〜9のアリールオキシ基であり、具体例としては、トリフルオロメトキシ基、2−t−ブチルオキシエトキシ基、3−ジメチルアミノプロポキシ基等が挙げられる。
上記一般式(II)〜(IV)のR5における置換アミノ基は、好ましくは、炭素原子数1〜9のアルキル基、炭素原子数3〜9のシクロアルキル基、炭素原子数7〜9のアラルキル基または炭素原子数6〜9のアリール基で置換されたアミノ基であり、具体的にはメチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジ-n−プロピルアミノ基、ジ-iso−プロピルアミノ基、ジ-n−ブチルアミノ基、ジ-iso−ブチルアミノ基、ジ-t−ブチルアミノ基、ペンチルアミノ基、シクロペンチルアミノ基、ヘキシルアミノ基、シクロヘキシルアミノ基、オクチルアミノ基、ノニルアミノ基、ベンジルアミノ基、2−フェニルエチルアミノ基、1−フェニルエチルアミノ基、フェニルアミノ基、4−メチルフェニルアミノ基、4−エチルフェニルアミノ基等が挙げられる。
【0020】
上記一般式(II)〜(IV)のR5における置換メルカプト基は、好ましくは、炭素原子数1〜9のアルキルメルカプト基、炭素原子数3〜9のシクロアルキルメルカプト基、炭素原子数7〜9のアラルキルメルカプト基または炭素原子数6〜9のアリールメルカプト基であり、具体的にはメチルメルカプト基、エチルメルカプト基、n−プロピルメルカプト基、iso−プロピルメルカプト基、n−ブチルメルカプト基、iso−ブチルメルカプト基、t−ブチルメルカプト基、ペンチルメルカプト基、シクロペンチルメルカプト基、ヘキシルメルカプト基、シクロヘキシルメルカプト基、オクチルメルカプト基、ノニルメルカプト基、ベンジルメルカプト基、2−フェニルエチルメルカプト基、1−フェニルエチルメルカプト基、フェニルメルカプト基、4−メチルフェニルメルカプト基、4−エチルフェニルメルカプト基等が挙げられる。
上記一般式(II)〜(IV)のR5におけるハロゲン原子とは、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられるが、フッ素原子、塩素原子、臭素原子がより好ましく、フッ素原子、塩素原子がさらに好ましい。
【0021】
上記一般式(II)〜(IV)のR5のうち、隣り合う二つのR5が環を形成する場合は、5〜7員環が好ましく、隣り合う二つのR5が−(CH2)3−基、−(CH2)4−基または−CH=CH−CH=CH−基として環を形成するものであることがさらに好ましい。
上記一般式(II)〜(IV)のR5として、好ましくは、水素原子、炭素原子数1〜9の炭化水素基、炭素原子数1〜9の炭化水素オキシ基またはハロゲン原子である。より好ましくは、水素原子、炭素原子数1〜9の炭化水素基または炭素原子数1〜9の炭化水素オキシ基であり、さらに好ましくは、水素原子または炭素原子数1〜9の炭化水素基であり、特に好ましくは水素原子または炭素原子数1〜6の炭化水素基である。
【0022】
上記一般式(IV)のR6における二価の炭化水素基としては、炭素原子数1〜9のアルキレン基、炭素原子数7〜9のアラルキレン基、または炭素原子数6〜9のアリーレン基が好ましく、具体例としては、メチレン基、1,1−エチレン基、1,2−エチレン基、1,1−プロピレン基、1,3−プロピレン基、2,2−プロピレン基、1,1−ブチレン基、2,2−ブチレン基、3−メチル−2,2−ブチレン基、3,3−ジメチル−2,2−ブチレン基、1,1−ペンチレン基、3,3−ペンチレン基、1,1−へキシレン基、1,1−ヘプチレン基、1,1−オクチレン基、1,1−ノニレン基、1,1−シクロペンチレン基、1,1−シクロヘキシレン基、フェニルメチレン基、1−フェニル−1,1−エチレン基、1,2−フェニレン基、1,3−フェニレン基、1,4−フェニレン基が挙げられる。
【0023】
上記一般式(IV)のR6における二価の置換炭化水素基としては、ハロゲン原子、アルコキシ基、二置換アミノ基等で置換された、炭素原子数1〜9のアルキレン基、炭素原子数7〜9のアラルキレン基、または炭素原子数6〜9のアリーレン基が好ましく、具体例としては、ヘキサフルオロ−2,2−プロピレン基、ペンタフルオロフェニルメチレン基、4−メトキシフェニルメチレン基、4−ジメチルアミノフェニルメチレン基等を挙げることができる。
上記一般式(IV)のR6としては、酸素原子または二価の炭化水素基が好ましく、炭素原子数1〜9のアルキレン基または炭素原子数7〜9のアラルキレン基がより好ましく、炭素原子数1〜6のアルキレン基がさらに好ましい。
上記一般式(I)で表される置換フェノール化合物と、上記一般式(II)で表されるフェノール化合物、上記一般式(III)で表されるフェノール化合物及び/又は上記一般式(IV)で表わされるビスフェノール化合物を混合して用いる場合、その混合比は目的のポリマーの物性を損なわない範囲で適宜定められるが、該置換フェノール化合物が全フェノールモノマーに対して、好ましくは30モル%以上であり、より好ましくは50モル%以上であり、さらに好ましくは80モル%以上である(これらのフェノール類を以下にフェノール性出発原料と呼ぶことがある)。
本発明の重合体は、下記の基本構造式(V)及び/又は下記の基本構造式(VI)で表わされる繰り返し単位を有する構造をもつものである。
【0024】
【化4】
【0025】
本発明の重合体の数平均重合度は3以上である。なお、数平均分子量の値をA、フェノール性出発原料の分子量(混合物の場合は、平均分子量)の値をBとしたとき、数平均重合度はA / (B-2) から求められる値である。該数平均重合度として、3〜10,000が好ましく、4〜1,000がより好ましく、5〜500がさらに好ましい。
本発明の重合体は、好ましくは−100℃以上に5J/g以上の結晶融点を示す結晶性の重合体である。該重合体において、結晶融点は以下のようにして測定する。すなわち、示差走査熱量分析をアルゴン雰囲気下で実施し、まず10℃/minで−100℃まで冷却した後、10℃/minで−100℃から完全に溶融する温度まで昇温する。次に、再び−100℃まで冷却した後、10℃/minで−100℃から完全に溶融する温度まで再昇温する際に、−100℃以上に5J/g以上の吸熱ピークがあれば、そのピークトップ温度を結晶融点とし、そのピーク面積を結晶融解熱量とした。
【0026】
該ポリマーの結晶融点は−100℃以上300℃未満が好ましく、−50℃以上150℃未満がより好ましく、−40℃以上100℃未満がさらに好ましく、−20℃以上80℃未満が特に好ましい。また結晶融解熱量は7J/g以上が好ましく、9J/g以上がより好ましく、15J/g以上がさらに好ましく、30J/g以上が特に好ましい。結晶化の発熱ピーク熱量の上限は通常200J/gである。
本発明の重合体は、好ましくは実質的にゲル分を含まないものである。ゲル分のないことは、例えば重合体1mgが1,2−ジクロロベンゼン1mlに150℃で溶解することで確認できる。「実質的にゲル分を含まない」とは、重合体中に含有されるゲル分が好ましくは5重量%以下、さらに好ましくは2重量%以下であることをいい、最も好ましくはゲル分が含有されないことをいう。
【0027】
以下に本発明の重合体の好ましい製造方法を詳細に説明する。
前記のフェノール性出発原料の酸化重合は、電解酸化重合でもよいが、省エネルギーの観点からは、触媒と酸化剤を用いる酸化重合が好ましい。
触媒の例としては、特公昭36−18692号公報、特開平10−53649号公報、特願2000−119826号記載の単座配位子/遷移金属錯体;特開平10−168179号公報、特願2000−121512号記載の二座配位子/遷移金属錯体;特開平9−144449号公報、特開平10−45904号公報、特開平9−324040号公報、特許第3035559号公報、特願2000−25621号記載の三座配位子/遷移金属錯体;特開平8−53545号公報、特開平9−324042号公報記載の四座または五座配位子/遷移金属錯体;特開平9−324043号公報記載の六座以上の配位子/遷移金属錯体;特開平9−324045号公報記載のメタロセン錯体;特開平8-208813号公報記載の金属微粒子;特開平9-107984号公報記載の酸化酵素等が好ましい。さらに好ましくは、単座配位子/遷移金属錯体、二座配位子/遷移金属錯体、三座配位子/遷移金属錯体、四座配位子/遷移金属錯体であり、特に好ましくは三座配位子/遷移金属錯体である。これらの触媒の使用量は、それぞれに記載されるフェノール化合物に対する使用量を、前記のフェノール性出発原料に対する使用量として、そのまま適用できる。また、反応溶媒、反応溶媒使用量、反応温度等の反応条件についても、それぞれに記載された反応条件を適用できる。
【0028】
酸化剤としては、酸素またはパーオキサイドが好ましい。酸素は不活性ガスとの混合物であってもよく、空気でもよい。またパーオキサイドの例としては、過酸化水素、t−ブチルハイドロパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、過酢酸、過安息香酸等を示すことができる。さらに好ましい酸化剤としては、酸素または過酸化水素である。該酸化剤の使用量に限定はないが、酸素を用いる場合はフェノールに対して通常、0.5当量以上大過剰に使用し、パーオキサイドを用いる場合はフェノールに対して通常、0.5〜3当量を使用する。
【0029】
本発明の置換フェノール酸化重合体は、単独でも、また、他のポリマー及び/又は改質剤との組成物として用いることができる。組成物のポリマー成分として、具体的にはポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリメタクリル酸メチル、ポリ酢酸ビニル、ポリアクリロニトリル及びそれらの共重合体等のポリオレフィン類;ポリオキシメチレン、ポリフェニレンオキサイド、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンオキサイド)、ポリ(2,5−ジメチル−1,4−フェニレンオキサイド)及びそれらの共重合体等のポリエーテル類;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリ(エチレン−2,6−ジナフタレート)、ポリ(4−オキシベンゾエート)、ポリ(2−オキシ−6−ナフタレート)及びそれらの共重合体等のポリエステル類;ナイロン6、ナイロン66等のポリアミド類;ポリカーボネート;ポリフェニレンサルファイド;ポリサルフォン;ポリエーテルサルフォン;ポリエーテルエーテルケトン;ポリイミド;ポリエーテルイミド;フェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂等の熱硬化性ポリマーを挙げることができる。組成物の改質剤成分として、具体的には2,6−ジ−t−ブチルフェノール誘導体、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン類等の安定剤;ポリハロゲン化物、リン酸エステル等の難燃剤;界面活性剤;流動改質剤を挙げることができる。
【0030】
【実施例】
以下に、実施例に基づき本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によりその範囲を限定されるものではない。
【0031】
(i)モノマー合成及び分析
モノマー合成:使用したモノマーは、J. Am. Chem. Soc., 114, 1790 (1992)、J. Chem. Soc. Perkin Trans. 1, 257 (1997)またはJ. Am. Chem. Soc. 94, 4374 (1972)を参考にして合成した。
【0032】
モノマーの転化率(Conv.):内部標準物質としてジフェニルエーテルを含む反応混合物15mgをサンプリングし、濃塩酸を若干量加えて酸性とし、メタノール2gを加え、測定サンプルとした。このサンプルを、高速液体クロマトグラフィー(東ソー社製SC8020システム、検出器:東ソー社製PD−8020、検出波長:278nm、カラム:YMC社製ODS−AM、展開溶媒:メタノール/水またはテトラヒドロフラン/メタノール/水)により分析し、ジフェニルエーテルを内部標準物質として定量した。
【0033】
ポリマーの溶解性(Solubility):ポリマー1mgを1,2-ジクロロベンゼン(oDCBと略す。)1mlに加え、150℃に加熱したときの不溶部(ゲル分とする)の有無を観察した。
【0034】
ポリマーの数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw):ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより分析し、標準ポリスチレン換算値として重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)を測定した。oDCB/140℃条件:Polymer Laboratories社製PL-GPC210システム(RI検出)により、Polymer Laboratories社製PLgel 10um MIXED-B 3本をカラムとして、oDCB(2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール0.01%w/v含有)を展開溶媒として、140℃で行った。THF/40℃条件:TOSOH社製SC8020システム(280nm検出)により、TOSOH社製G4000HRL、G3000HRL、G2500HRL、G2000HRL(計4本)をカラムとして、テトラヒドロフラン(THFと略す。)を展開溶媒として、40℃で行った。
ポリマーの結晶融点(Tm)および結晶融解熱量(Hm):示差走査熱量分析(MAC SCIENCE社 DSC3200S)をアルゴン雰囲気下で実施した。まず10℃/min で−100℃まで冷却した後、10℃/min で−100℃から完全に溶融する温度まで昇温する。次に、再び−100℃まで冷却した後、10℃/minで−100℃から再昇温する際に、−100℃以上で5J/g以上の吸熱ピークを示す場合、そのピークトップ温度を結晶融点(Tm)とし、そのピーク面積を結晶融解熱量(Hm)とした。このピークが見られない場合はN.D.とした。
【0035】
(ii)酸化重合
実施例1
電磁撹拌機を備えた25ml二つ口丸底フラスコに、酸素を充填した2Lゴム風船を取付け、フラスコ内を酸素に置換した。これに、Cu(Cl)2(1,4,7−トリイソプロピル−1,4,7−トリアザシクロノナン)(J. Am. Chem. Soc., 120, 8529, (1998).参照、Cu(tacn)と略す。)0.03mmolを入れ、2-n-オクタデシルフェノール0.6mmolと、塩基として2,6-ジフェニルピリジン0.3mmolをトルエン1.2gに溶解したものを加えた。これを40℃に保温し、激しく撹拌した。48時間後、濃塩酸を加えて酸性にした後、メタノール25mlを加え、沈殿した重合体を濾取した。メタノール10mlで3回洗浄し、減圧乾燥した後、重合体を得た。この重合体の分析結果を表1に示す。
本重合体をoDCB-d4中、60℃でNMR分析(JEOL社製LA600)した。1H-NMR(600MHz)より、0.87ppm(3H)、1.27〜1.64ppm(32H)、2.67ppm(2H)のピークが見られた。13C-NMR(150MHz)より、14.1ppm、22.9ppm、29.6〜30.0ppm(15本)、32.1ppm、115.8ppm、119.5ppm、120.6ppm、136.0ppm、150.1ppm、154.6ppmがメインピークとして観測されたが、115〜155ppmに幾つかの微小な不明ピークも検出された。これらから、本実施例で得られた重合体は、主として2-n-オクタデシル-1,4-フェニレンオキサイド構造を有していることが判明した。
また、本重合体の粉末X線分析(理学電機社製RINT2500V、X線:Cu-Kα、50kV-300mA、測角範囲:2〜140°、スリット:DS-0.5°、RS-0.15mm、SS-0.5°)したところ、2θ=21.5°(面間隔4.1Å)に最も大きなピークが観測された。ルーランド法により結晶化度を求めたところ、32%を示した。
【0036】
実施例2および3
反応時間を表1のように変えた以外は実施例1と同様にして、重合体を得た。この重合体の分析結果を表1に示す。
実施例2の重合体を偏光顕微鏡(ニコン社製、XTP-11型、加熱ステージ付)で測定したところ、室温から50℃くらいまで昇温すると、透過光量が増加した(光学異方性)が、52℃で暗視野となった(光学等方性)。
【0037】
実施例4
電磁撹拌機を備えた25ml二つ口丸底フラスコに、酸素を充填した2Lゴム風船を取付け、フラスコ内を酸素に置換した。これに、[Cu(Cl)(OH)(N,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミン)]2(Cu(tmed)と略す。)0.015mmolを入れ、2-n-オクタデシルフェノール0.6mmolと、塩基として2,6-ジフェニルピリジン0.3mmolをトルエン1.2gに溶解したものを加えた。これを40℃に保温し、激しく撹拌した。24時間後、実施例1と同様に後処理して、重合体を得た。この重合体の分析結果を表1に示す。
【0038】
実施例5
電磁撹拌機を備えた25ml二つ口丸底フラスコに、酸素を充填した2Lゴム風船を取付け、フラスコ内を酸素に置換した。これに、CuCl0.03mmolを入れ、2-n-オクタデシルフェノール0.6mmolと、ピリジン1.5mmolをトルエン1.2gに溶解したものを加えた(触媒をCuCl/Pyと略す。)。これを40℃に保温し、激しく撹拌した。29時間後、実施例1と同様に後処理して、重合体を得た。この重合体の分析結果を表1に示す。
【0039】
実施例6
電磁撹拌機を備えた100mlナスフラスコに、(ビス(サリシリデンイミノ)エタン)鉄(Fe(salen)と略す。)0.025mmolを入れ、2-n-オクタデシルフェノール0.5mmolをジオキサン15mlに溶解したものを加えた。40℃保温、激しく撹拌しながら、これに6%過酸化水素1mmolを5時間かけて滴下した。析出した重合体を濾取し、ジオキサン5mlで3回、メタノール10mlで3回洗浄し、減圧乾燥した後、重合体を得た。この重合体の分析結果を表1に示す。
【0040】
実施例7〜12
モノマー、触媒量、反応時間を表1のように変えた以外は実施例1と同様にして、重合体を得た。これらの重合体の分析結果を表1に示す。
【0041】
【表1】
【0042】
実施例13〜19
2種類のモノマーを表2のように共重合させた以外は実施例1と同様にして、重合体を得た。これらの重合体の分析結果を表2に示す。
【0043】
【表2】
【0044】
【発明の効果】
本発明の新規な置換フェノール酸化重合体は、炭素原子数10以上の飽和炭化水素基をもつものであり、結晶性を発現しうる。光学特性を利用すれば表示材料、温度センサー等への用途が期待され、その工業的意義は大きい。
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