JP4519283B2 - 新規なフェノール二量体縮合物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は新規なフェノール二量体縮合物に関する。
【0002】
【従来の技術】
フェノール類の酸化縮合法(特公昭36−18692号公報)は、ホルマリンフリー・常温反応・副生成物は水だけという環境に優しい方法であり、最近注目されている(化学と工業、53巻、4号、501-505 (2000))。
酸化縮合法により製造されるフェノール類の二量体縮合物は、ポリエステル、エポキシ樹脂、酸化防止剤、農薬・医薬等の原料として、広く用いられている。代表的なものとして、4,4’-ジフェノール、4-フェノキシフェノール、2,2’,6,6’-ジメチル-4,4’-ジフェノールが挙げられる。
しかし、直鎖状アルキル基の置換したフェノール二量体縮合物で、直鎖状アルキル基の炭素原子数の大きなものとしては、4,4’-ジ-n-プロピル-2,2’-ジフェノール(Reg.No. 20601-85-8)しか知られていなかった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、炭素原子数4以上の、直鎖状のアルキル基又はハロゲン置換アルキル基をもち、結晶融点が低く、溶解性に優れるという性質を有する、フェノール二量体縮合物を提供することである。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記課題に鑑み鋭意研究した結果、以下の発明により上記課題を解決しうることを見出した。
(1)一般式(I)で表わされるフェノール化合物の酸化縮合を経て得られることを特徴とするフェノール二量体縮合物。
【0005】
【化3】
【0006】
(式中、R1〜R5は互いに独立に、水素原子、炭化水素基、置換炭化水素基、炭化水素オキシ基、アミノ基、置換アミノ基、メルカプト基、置換メルカプト基またはハロゲン原子であり、R1とR2、R2とR3、R3とR4及び/又はR4とR5が環を形成していてもよいが、R1、R3およびR5のうち少なくとも1つは水素原子であり、R1〜R5の少なくとも一つは炭素原子数4以上の、直鎖状アルキル基またはハロゲン原子の置換した直鎖状アルキル基である。)
(2)一般式(II)〜(IV)のいずれかで表わされることを特徴とする(1)項記載のフェノール二量体縮合物。
【0007】
【化4】
【0008】
(式中、R1およびR5は一般式(I)のそれらと同じ意味をもち、R1及びR5の少なくとも一つは炭素原子数4以上の、直鎖状アルキル基またはハロゲン原子の置換した直鎖状アルキル基である。)
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明のフェノール二量体縮合物は、一般式(I)で表わされるフェノール化合物を酸化縮合させて得られる縮合物である。
【0010】
上記一般式(I)のR1〜R5における炭化水素基として、好ましくは、炭素原子数1〜100のアルキル基、炭素原子数3〜30(さらに好ましくは炭素原子数3〜20)のシクロアルキル基、炭素原子数7〜30(さらに好ましくは炭素原子数7〜20)のアラルキル基または炭素原子数6〜30(さらに好ましくは炭素原子数6〜20)のアリール基であり、具体的にはメチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、シクロペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、オクチル基、ノニル基、ベンジル基、2−フェニルエチル基、1−フェニルエチル基、フェニル基、4−メチルフェニル基、4−エチルフェニル基等が挙げられる。
【0011】
上記一般式(I)のR1〜R5における置換炭化水素基は、好ましくは、ハロゲン原子、アルコキシ基、アミノ基、置換アミノ基等で置換された炭素原子数1〜100のアルキル基、炭素原子数3〜30(さらに好ましくは炭素原子数3〜20)のシクロアルキル基、炭素原子数7〜30(さらに好ましくは炭素原子数7〜20)のアラルキル基または炭素原子数6〜30(さらに好ましくは炭素原子数6〜20)のアリール基であり、具体例としては、トリフルオロメチル基、2−t−ブチルオキシエチル基、3−ジメチルアミノプロピル基等が挙げられる。
【0012】
上記一般式(I)のR1〜R5における炭化水素オキシ基として、好ましくは、炭素原子数1〜30(さらに好ましくは炭素原子数1〜20)のアルコキシ基、炭素原子数3〜30(さらに好ましくは炭素原子数3〜20)のシクロアルコキシ基、炭素原子数7〜30(さらに好ましくは炭素原子数7〜20)のアラルキルオキシ基または炭素原子数6〜30(さらに好ましくは炭素原子数6〜20)のアリールオキシ基であり、具体的にはメトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、iso−プロポキシ基、n−ブトキシ基、iso−ブトキシ基、t−ブトキシ基、ペンチルオキシ基、シクロペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、オクチルオキシ基、ノニルオキシ基、ベンジルオキシ基、2−フェニルエトキシ基、1−フェニルエトキシ基、フェニルオキシ基、4−メチルフェニルオキシ基、4−エチルフェニルオキシ基等が挙げられる。
【0013】
上記一般式(I)のR1〜R5における置換炭化水素基は、好ましくは、ハロゲン原子、アルコキシ基、アミノ基、置換アミノ基等で置換された炭素原子数1〜10のアルコキシ基、炭素原子数3〜30(さらに好ましくは炭素原子数3〜20)のシクロアルコキシ基、炭素原子数7〜30(さらに好ましくは炭素原子数7〜20)のアラルキルオキシ基または炭素原子数6〜30(さらに好ましくは炭素原子数6〜20)のアリールオキシ基であり、具体例としては、トリフルオロメトキシ基、2−t−ブチルオキシエトキシ基、3−ジメチルアミノプロポキシ基等が挙げられる。
【0014】
上記一般式(I)のR1〜R5における置換アミノ基は、好ましくは、炭素原子数1〜30(さらに好ましくは炭素原子数1〜20)のアルキル基、炭素原子数3〜30(さらに好ましくは炭素原子数3〜20)のシクロアルキル基、炭素原子数7〜30(さらに好ましくは炭素原子数7〜20)のアラルキル基または炭素原子数6〜30(さらに好ましくは炭素原子数6〜20)のアリール基で置換されたアミノ基であり、具体的にはメチルアミノ基、ジメチルアミノ基ジエチルアミノ基、ジ-n−プロピルアミノ基、ジ-iso−プロピルアミノ基、ジ-n−ブチルアミノ基、ジ-iso−ブチルアミノ基、ジ-t−ブチルアミノ基、ジペンチルアミノ基、ジシクロペンチルアミノ基、ジヘキシルアミノ基、ジシクロヘキシルアミノ基、ジオクチルアミノ基、ジノニルアミノ基、ジベンジルアミノ基、ジ-2−フェニルエチルアミノ基、ジ-1−フェニルエチルアミノ基、ジフェニルアミノ基、ジ-4−メチルフェニルアミノ基、ジ-4−エチルフェニルアミノ基等が挙げられる。
【0015】
上記一般式(I)のR1〜R5における置換メルカプト基は、好ましくは、炭素原子数1〜30(さらに好ましくは炭素原子数1〜20)のアルキルメルカプト基、炭素原子数3〜30(さらに好ましくは炭素原子数3〜20)のシクロアルキルメルカプト基、炭素原子数7〜30(さらに好ましくは炭素原子数7〜20)のアラルキルメルカプト基または炭素原子数6〜30(さらに好ましくは炭素原子数6〜20)のアリールメルカプト基であり、具体的にはメチルメルカプト基、エチルメルカプト基、n−プロピルメルカプト基、iso−プロピルメルカプト基、n−ブチルメルカプト基、iso−ブチルメルカプト基、t−ブチルメルカプト基、ペンチルメルカプト基、シクロペンチルメルカプト基、ヘキシルメルカプト基、シクロヘキシルメルカプト基、オクチルメルカプト基、ノニルメルカプト基、ベンジルメルカプト基、2−フェニルエチルメルカプト基、1−フェニルエチルメルカプト基、フェニルメルカプト基、4−メチルフェニルメルカプト基、4−エチルフェニルメルカプト基等が挙げられる。
【0016】
上記一般式(I)のR1〜R5におけるハロゲン原子とは、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられるが、フッ素原子、塩素原子、臭素原子がより好ましく、フッ素原子、塩素原子がさらに好ましい。
【0017】
上記一般式(I)のR1〜R5のうち、R1とR2、R2とR3、R3とR4及び/又はR4とR5が環を形成する場合は、5〜7員環が好ましく、R1とR2、R2とR3、R3とR4及び/又はR4とR5が−(CH2)3−基、−(CH2)4−基または−CH=CH−CH=CH−基として環を形成するものであることがさらに好ましい。
【0018】
上記一般式(I)のR1〜R5の少なくとも一つの基は、炭素原子数4以上の直鎖状アルキル基またはハロゲン原子の置換した炭素原子数4以上の直鎖状アルキル基である。直鎖状アルキル基に置換しうるハロゲン原子の具体例および好ましい例は、上記一般式(I)におけるR1〜R5のそれらと同じである。
該直鎖状基の炭素原子数の下限として、好ましくは5であり、より好ましくは6であり、さらに好ましくは8であり、特に好ましくは10である。該直鎖状基の炭素原子数の上限として、好ましくは100であり、より好ましくは50であり、さらに好ましくは30であり、特に好ましくは22である。該直鎖状基の構造としては、−(CH2)n-1CH3(ただし、nは炭素原子数を表わす。)で表わされる直鎖状アルキル基が好ましい。該直鎖状基の置換数は1〜4であるが、好ましくは1〜3であり、さらに好ましくは1または2である。
【0019】
上記一般式(I)のR1およびR5における炭素原子数4以上の直鎖状基以外として、好ましくは、水素原子、炭素原子数1〜9の炭化水素基、炭素原子数1〜9の炭化水素オキシ基またはハロゲン原子である。より好ましくは、水素原子、炭素原子数1〜6の炭化水素基であり、さらに好ましくは、水素原子または炭素原子数1〜4の炭化水素基であり、特に好ましくは、メチル基である。
上記一般式(I)のR2〜R4における炭素原子数4以上の直鎖状基以外として、好ましくは、水素原子、炭素原子数1〜9の炭化水素基、炭素原子数1〜9の炭化水素オキシ基またはハロゲン原子である。より好ましくは、水素原子、炭素原子数1〜6の炭化水素基であり、さらに好ましくは、水素原子または炭素原子数1〜4の炭化水素基であり、特に好ましくは、水素原子である。
【0020】
上記一般式(I)で表わされるフェノール化合物を酸化縮合させて得られるフェノール二量体縮合物の構造は、下記の一般式(V)〜(XII)で表わされるものである。好ましくは、一般式(V)、(VI)、(IX)、(X)、(XI)または(XII)で表わされるものであり、より好ましくは、一般式(V)、(VI)、(IX)または(XI)で表わされるものであり、さらに好ましくは、一般式(V)または(VI)で表わされるものである。
【0021】
【化5】
【0022】
(式中、Ra〜Rdは、Ra=R1、Rb=R2、Rc=R4、Rd=R5であるか、またはRa=R5、Rb=R4、Rc=R2、Rd=R1である。Re〜Rhは、Re=R1、Rf=R2、Rg=R4、Rh=R5であるか、またはRe=R5、Rf=R4、Rg=R2、Rh=R1である。R1〜R5は一般式(I)と同じ意味をもつ。)
【0023】
上記一般式(V)〜(XII)におけるR1〜R5における具体例および好ましい例は、上記一般式(I)のそれらと同じである。
【0024】
上記一般式(I)で表わされるフェノール化合物を酸化縮合させて得られる縮合物の構造として、特に好ましくは、上記一般式(II)〜(IV)のいずれかで表わされるものである。
上記一般式(II)〜(IV)におけるR1およびR5における具体例および好ましい例は、上記一般式(I)のそれらと同じである。
【0025】
本発明のフェノール二量体縮合物は、好ましくは、−100℃以上に5J/g以上の結晶融点を示す結晶性縮合物である。該縮合物において、結晶融点は以下のようにして測定する。すなわち、示差走査熱量分析をアルゴン雰囲気下で実施し、まず10℃/min で−100℃まで冷却した後、10℃/min で−100℃から完全に溶融する温度まで昇温する。次に、再び−100℃まで冷却した後、10℃/min で−100℃から完全に溶融する温度まで再昇温する際に、−100℃以上に5J/g以上の吸熱ピークがあれば、そのピークトップ温度を結晶融点とし、そのピーク面積を結晶融解熱量とした。
【0026】
該縮合物の結晶融点は、低融点を利用する場合、−100℃以上200℃未満が好ましく、−50℃以上150℃未満がより好ましく、0℃以上100℃未満がさらに好ましい。また結晶融解熱量は20J/g以上が好ましく、40J/g以上がより好ましく、80J/g以上がさらに好ましい。結晶化の発熱ピーク熱量の上限は通常200J/gである。
【0027】
以下に本発明のフェノール二量体縮合物の好ましい製造方法を詳細に説明する。
上記一般式(I)で表わされるフェノール化合物の酸化縮合は、電解酸化縮合でもよいが、省エネルギーの観点からは、触媒と酸化剤を用いる酸化縮合が好ましい。
触媒の例としては、特公昭36−18692号公報、特開平10−53649号公報、特願2000−119826号記載の単座配位子/遷移金属錯体;特開平10−168179号公報、特願2000−121512号記載の二座配位子/遷移金属錯体;特開平9−144449号公報、特開平10−45904号公報、特開平9−324040号公報、特許第3035559号公報、特願2000−25621号記載の三座配位子/遷移金属錯体;特開平8−53545号公報、特開平9−324042号公報記載の四座または五座配位子/遷移金属錯体;特開平9−324043号公報記載の六座以上の配位子/遷移金属錯体;特開平9−324045号公報記載のメタロセン錯体;特開昭60-152433号公報記載の遷移金属錯体/塩基性無機化合物;特開平8-208813号公報記載の金属微粒子;特開平9-107984号公報記載の酸化酵素等が好ましい。さらに好ましくは、単座配位子/遷移金属錯体、二座配位子/遷移金属錯体、三座配位子/遷移金属錯体、四座配位子/遷移金属錯体、遷移金属錯体/塩基性無機化合物である。これらの触媒の使用量は、それぞれに記載されるフェノール化合物に対する使用量を、上記一般式(I)で表わされるフェノール化合物に対する使用量として、そのまま適用できる。また、反応溶媒、反応溶媒使用量、反応温度等の反応条件についても、それぞれに記載された反応条件を適用できる。
【0028】
上記一般式(V)〜(X)に示されるような炭素−炭素が結合したフェノール二量体縮合物を主に与える場合には、特公昭36−18692号公報や特開昭60-152433号公報等に記載されるように、該フェノール二量体でカップリング反応を停止させることができる。この際、特公昭36−18692号公報等に記載されるように、一般にはジフェノールがさらに酸化され、上記一般式(V)、(VII)および(IX)で表わされるジフェノキノンが得られる。しかし、特開昭60-152433号公報に記載される方法等を用いれば、上記一般式(VI)、(VIII)および(X)で表わされるジフェノールで酸化反応を停止することも可能である。
一方、上記一般式(XI)および(XII)に示されるような炭素−酸素が結合したフェノール二量体縮合物を与える場合には、特願平11−40551号および特開2000−41691号公報に記載されるような有機層/水層による二層反応系を用いることにより、該フェノール二量体を高収率で得ることができる。
【0029】
酸化剤としては、酸素またはパーオキサイドが好ましい。酸素は不活性ガスとの混合物であってもよく、空気でもよい。またパーオキサイドの例としては、過酸化水素、t−ブチルハイドロパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、過酢酸、過安息香酸等を示すことができる。さらに好ましい酸化剤としては、酸素または過酸化水素である。該酸化剤の使用量に限定はないが、酸素を用いる場合は上記一般式(I)で表わされるフェノール化合物に対して通常、0.5当量以上大過剰に使用し、パーオキサイドを用いる場合は上記一般式(I)で表わされるフェノール化合物に対して通常、0.5〜3当量を使用する。
【0030】
上記の酸化縮合により得られた上記基本構造式(VI)、(VIII)または(X)のジフェノキノン化合物を、上記基本構造式(V)、(VII)または(IX)のジフェノール化合物へ誘導することが可能である。ジフェノキノン化合物は、日本化学会編、第4版実験化学講座26巻160頁に記載されるケトン類の還元反応を適用することにより、ジフェノール化合物へ変換できる。また、J. Org. Chem., 34, 1160 (1969)に記載されるように、該ジフェノキノン化合物と上記一般式(I)のフェノール化合物を反応させることによっても、該ジフェノール化合物へ変換できる。
【0031】
本発明のフェノール二量体縮合物は、そのままでも用いることもできるが、水酸基が付加反応又は置換反応しうる求電子性反応試剤と反応させた誘導体や、ジフェノキノンとマイケル付加反応しうる求核性反応試財と反応させた誘導体として用いることもできる。水酸基と反応させた誘導体としては、ジカルボン酸ハライド化合物やジカルボン酸無水物化合物等のジカルボン酸誘導体と反応させて得られるポリエステル;ジハロゲン化合物やジエポキシ化合物等と反応させて得られるポリエーテル;ジイソシアネート化合物と反応させて得られるポリウレタン;ホスゲン、炭酸ジメチル等の炭酸エステル化剤と反応させて得られるポリカーボネート;エピクロロヒドリンと反応させて得られるエポキシ樹脂;モノカルボン酸誘導体、モノハロゲン化合物、モノエポキシ化合物、モノイソシアネート化合物等と反応させて得られる低分子量誘導体等が例示される。ジフェノキノンと反応させた誘導体としては、一官能性または二官能性のヒドロキシ基、アミノ基、メルカプト基等をもつ化合物と反応させて得られるジフェノール誘導体および酸化されたジフェノキノン誘導体が例示される。
【0032】
【実施例】
以下に、実施例に基づき本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によりその範囲を限定されるものではない。
【0033】
(i)原料及び分析
原料フェノール化合物:使用したフェノール化合物は、J. Am. Chem. Soc., 114, 1790 (1992)を参考にして合成した。
【0034】
原料フェノール化合物の転化率(Conv.):内部標準物質としてジフェニルエーテルを含む反応混合物15mgをサンプリングし、濃塩酸を若干量加えて酸性とし、メタノール2gを加え、測定サンプルとした。このサンプルを、高速液体クロマトグラフィー(東ソー社製SC8020システム、検出器:東ソー社製PD−8020、検出波長:278nm、カラム:YMC社製ODS−AM、展開溶媒:メタノール/水またはテトラヒドロフラン/メタノール/水)により分析し、ジフェニルエーテルを内部標準物質として定量した。
【0035】
縮合物の結晶融点(Tm)および結晶融解熱量(Hm):示差走査熱量分析(MAC SCIENCE社 DSC3200S)をアルゴン雰囲気下で実施した。まず10℃/min で−100℃まで冷却した後、10℃/min で−100℃から完全に溶融する温度まで昇温する。次に、再び−100℃まで冷却した後、10℃/min で−100℃から再昇温する際に、−100℃以上で5J/g以上の吸熱ピークを示す場合、そのピークトップ温度を結晶融点(Tm)とし、そのピーク面積を結晶融解熱量(Hm)とした。このピークが見られない場合はN.D.とした。
【0036】
(ii)酸化縮合
実施例1
電磁撹拌機を備えた25ml二つ口丸底フラスコに、酸素を充填した2Lゴム風船を取付け、フラスコ内を酸素に置換した。これに、Cu(Cl)2(1,4,7−トリイソプロピル−1,4,7−トリアザシクロノナン)(J. Am. Chem. Soc., 120, 8529, (1998).参照、Cu(tacn)と略す。)0.03mmolを入れ、2-n-オクタデシル-6-メチルフェノール0.6mmolと、塩基として2,6-ジフェニルピリジン0.3mmolをトルエン2.4gに溶解したものを加えた。これを40℃に保温し、激しく撹拌した。72時間後(原料転化率:96%)、濃塩酸を加えて酸性にした後、メタノール25mlを加え、沈殿した縮合物を濾取した。メタノール10mlで3回洗浄し、減圧乾燥した後、縮合物を得た(収率:79%)。この縮合物は、Tm=87℃、Hm=126J/gを示した。
本縮合物をクロロホルム-d1中、室温でNMR分析(JEOL社製LA600)した。1H-NMR(600MHz)より、0.88ppm(6H,t)、1.10〜1.70ppm(64H,m)、1.59ppm(6H,s)、2.16ppm(4H,m)、7.66ppm(2H,s)、7.71ppm(2H,s)のピークが見られた。13C-NMR(150MHz)より、14.1ppm、17.2ppm、22.7ppm、29.4〜30.8ppm、31.9ppm、12.9.4ppm(2本)、128.8ppm(2本)、135.8ppm、139.1ppm、143.1ppm、186.9ppmが観測された。これらから、本実施例で得られた縮合物は、2,2’-ジ-n-オクタデシル-6,6’-ジメチル-4,4’-ジフェノキノン及び/又は2,6’-ジ-n-オクタデシル-6,2’-ジメチル-4,4’-ジフェノキノンであることが判明した。
【0037】
実施例2
原料フェノールを2,6-ジ-n-オクタデシルフェノールに、トルエンの量を12gに、反応時間を168時間(原料転化率97%)に変えた以外は実施例1と同様にして、縮合物を得た(収率:88%)。この縮合物は、Tm=91℃、Hm=147J/gを示した。
本縮合物をo-ジクロロベンゼン-d4中、90℃でNMR分析(JEOL社製LA600)した。1H-NMR(600MHz)より、0.85ppm(12H,t)、1.19〜1.38ppm(120H,m)、1.60〜1.65ppm(8H,m)、2.58ppm(8H,t)、7.70ppm(4H,s)のピークが見られた。13C-NMR(150MHz)より、14.1ppm、22.7ppm、29.4〜30.5ppm、31.9ppm、12.9.4ppm、126.1ppm、128.2ppm、133.6ppm、150.4ppmが観測された。これらから、本実施例で得られた縮合物は、2,2’,6,6’-テトラ-n-オクタデシル-4,4’-ジフェノキノンであることが判明した。
【0038】
(iii)還元
実施例3
電磁撹拌機を備えた200ml丸底フラスコ中で、実施例1で得られたジフェノキノン化合物0.6mmolをテトラヒドロフラン24mlに溶解し、ナトリウム・テトラヒドロボーレート1.2mmolのエタノール6ml溶液を添加し、室温下で3時間撹拌させた。反応終了後、氷冷下で5mmolのHClを含むメタノール溶液120mlを加えた。この不溶物を濾過で取り除き、水230mlを加えた後、沈殿物を濾取した。これをメタノール/水(1/1)10mlで5回洗浄し、減圧乾燥し、生成物を得た(収率:65%)。この生成物は、Tm=81℃、Hm=118J/gを示した。
本生成物をクロロホルム-d1中、室温でNMR分析(JEOL社製LA600)した。1H-NMR(600MHz)より、0.88ppm(6H,t)、1.25〜1.41ppm(60H,m)、1.56〜1.66ppm(4H,m)、2.30ppm(6H,s)、2.63ppm(4H,t)、4.59ppm(2H,s)、7.13ppm(2H,s)、7.14ppm(2H,s)のピークが見られた。13C-NMR(150MHz)より、14.1ppm、16.1ppm、22.7ppm、29.4〜30.4ppm、31.9ppm、123.2ppm、126.2ppm、127.0ppm、128.1ppm、133.5ppm、150.8ppmが観測された。これらから、本実施例で得られた縮合物は、2,2’-ジ-n-オクタデシル-6,6’-ジメチル-4,4’-ジフェノールであることが判明した。
【0039】
実施例4
電磁撹拌機を備えた300ml丸底フラスコ中で、実施例2で得られたジフェノキノン化合物0.22mmolをテトラヒドロフラン44mlに溶解し、ナトリウム・テトラヒドロボーレート0.88mmolのエタノール11ml溶液を添加し、55℃で3時間撹拌させた。反応終了後、氷冷下で3.5mmolのHClを含むメタノール溶液220mlを加えた。この沈殿物を濾取し、テトラヒドロフラン11mlに溶解し、メタノール11mlを加え、不溶分を取り除いた後、メタノール200mlを加えた。生じた沈殿物を濾取し、メタノール10mlで5回洗浄し、減圧乾燥し、生成物を得た(収率:86%)。この生成物は、Tm=87℃、Hm=126J/gを示した。
本生成物をクロロホルム-d1中、室温でNMR分析(JEOL社製LA600)した。1H-NMR(600MHz)より、0.88ppm(12H,t)、1.25ppm(112H,m)、1.40ppm(8H,m)、1.64ppm(8H,m)、2.62ppm(8H,t)、4.60(2H,s)、7.70ppm(4H,s)のピークが見られた。13C-NMR(150MHz)より、14.1ppm、22.7ppm、29.4〜30.5ppm、31.9ppm、126.1ppm、128.2ppm、133.6ppm、150.4ppmが観測された。これらから、本実施例で得られた縮合物は、2,2’,6,6’-テトラ-n-オクタデシル-4,4’-ジフェノールであることが判明した。
【0040】
(iv)溶解性試験
実施例3で得られたジフェノール化合物(Tm=81℃)および実施例4で得られたジフェノール化合物(Tm=87℃)は、これら1mgがトルエン400mgに室温で完全に溶解した。一方、2,2’,6,6’-テトラメチル-4,4’-ジフェノール(アルドリッチ社製、融点(カタログ値):223〜227℃)は、この1mgがトルエン400mgに室温でほとんど溶解しなかった。一般に、フェノール二量体縮合物は共役環状構造を2つもつため、分子間相互作用が大きく、一般に結晶融点が高く、溶解性が低い。しかしながら、本実施例のフェノール二量体縮合物は、炭素原子数4以上の、直鎖状のアルキル基又は置換アルキル基をもつため、分子間相互作用を弱め、結晶融点を低下し、溶解性を向上させたと考えられる。
【0041】
【発明の効果】
本発明のフェノール二量体縮合物は、炭素原子数4以上の、直鎖状のアルキル基又はハロゲン置換アルキル基をもつものであり、結晶融点が低く、溶解性に優れる特徴をもつ。該二量体縮合物はそのまま、あるいは低分子量又は高分子量の誘導体として用いることができ、長鎖アルキル基を利用したポリマーアロイ相溶化剤等の用途、側鎖結晶性を利用した熱可塑性エラストマー等の用途、さらに光学特性を利用すれば表示材料、温度センサー等への用途が期待され、その工業的意義は大きい。
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