JP3758234B2 - ポリ−1,4−フェニレンエーテルの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はポリ−1,4−フェニレンエーテルの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
2,6−ジメチルフェノールの遷移金属錯体触媒を用いた酸化重合(例として、特公昭63−6091号公報、特開昭59−131627号公報等、多数を挙げることができる。)によって得られるポリ−(2,6−ジメチルフェニレンエーテル)(以下、PPEと略すことがある。)は有用な樹脂であることが知られている。しかし、PPEは、芳香環に置換されたメチル基が酸化劣化を受けやすいため、PPE単独で溶融成形することが難しいという欠点があり、一般にはポリスチレンとのポリマーアロイとして汎用エンプラに位置づけられている。
【0003】
一方、ポリ−1,4−フェニレンエーテル(以下、PAOと略すことがある。)は、Europ.Polym.J.,4,275 (1968).に記載されているように融点が298℃(ガラス転移温度は83℃)であり、一般にスーパーエンプラと呼ばれるポリフェニレンサルファイドの融点(285℃)を凌ぎ、ポリエーテルエーテルケトンの融点(334℃)に次ぐ高い融点を有しており、超高耐熱性の樹脂としてその有用性は極めて大である。
【0004】
PAOの製造方法としては、Europ.Polym.J.,4,275 (1968).にp−ブロモフェノールのナトリウム塩を銅触媒存在下で重合することが記載されているが、反応温度が200℃と高温が必要であり、また反応量と当量の塩が生成するという問題があった。
特開昭59−56426号公報には、フェノールの電解酸化重合によりPAOを製造する方法が記載されているが、単位時間あたりのポリマー生産量が電極表面積に支配されるため、大量生産が困難であった。
また、特公昭44−28918号公報には、4−フェノキシフェノールを光増感剤存在下、特定波長の光を照射する方法が提案されているが、重合の進行とともにフェノールが副生すること、及び光照射による方法のため大量生産が困難である等が問題であった。
さらに、特公昭44−28917号公報には、4−フェノキシフェノールをフェノールが蒸留される温度に加熱する方法も提案されているが、高温が必要であり、フェノールが副生するという問題点があった。
【0005】
これらの問題点を解決する方法として、反応温度が比較的低く、脱離する副生成物質が水である等の理由から、遷移金属錯体触媒による酸化重合法は優れた方法である。フェノールの遷移金属錯体触媒による酸化重合方法の例として、特公昭36−18692号公報、工業化学雑誌,72 巻,10 号,106 (1969) 、特公昭48−17395号公報等が挙げられるが、これらの方法ではオルト位分岐またはC−C結合構造が生じるという問題があった。
【0006】
ここでオルト位分岐とは、フェノール重合体中のベンゼン環が1,2,4−三置換ベンゼン構造をとることを指し、本来望まれる1,4−二置換ベンゼン構造の連鎖を乱す構造である。
またC−C結合構造とは、フェノールの重合が、酸素原子とベンゼン環との反応で起こらずに、ベンゼン環同士の反応で起こり、結果的にビフェニル構造が生じることを指す。
オルト位分岐やC−C結合構造が多くなると融点が低くなり、ついにはPAOは融点を示さない非晶性樹脂となって、高融点による超高耐熱性樹脂としての有用性を失う。
【0007】
特公昭36−18692号公報および工業化学雑誌,72 巻,10 号,106 (1969).では、3級アミンと第一銅塩の触媒による酸化重合において、フェノールのオルト位での反応を妨害するために嵩高い置換基を有する3級アミン(2,6−ジメチルピリジン等が示されている)を用いることが提案されている。しかし、この方法で得られた重合体でも、C−C結合構造を含む上に、オルト位分岐の抑制も十分ではなく、融点が観測されない非晶性樹脂であるなど、PAOと呼べるものではなかった。
【0008】
一方、Tetrahedron,23,2253 (1967). に4−フェノキシフェノールを第一銅塩とN,N,N’,N’−テトラエチルエチレンジアミン触媒により酸化重合する例が示されているが、この方法で得られる重合体も、オルト位分岐が多く、融点は観測されなかった。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
以上述べたように、現状の遷移金属錯体触媒を用いる酸化重合法ではオルト位分岐やC−C結合構造が多く生成し、有用なポリマーは得られていない。そこで現状の課題としては、融点を示すことのできるPAOを製造することにある。即ち本発明の目的は、C−C結合構造が生成せず、かつオルト位の分岐も少ないという構造の制御された、融点を示す、ポリ−1,4−フェニレンエーテルを製造する方法を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
このような状況下にあって、本研究者らは上記目的を達成すべく鋭意研究を行った結果、特定の遷移金属錯体触媒の存在下に特定の原料を用いる酸化重合法を見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
即ち本発明は、下記一般式(I)で表される遷移金属錯体触媒を用いて、下記一般式(II)で表される原料を酸化剤存在下で重合するポリ−1,4−フェニレンエーテルの製造方法にかかるものである。
(式中、Mは第4〜11族遷移金属原子を表し、R1 は水素原子、n−アルキル基、置換n−アルキル基、芳香族炭化水素基、置換芳香族炭化水素基、炭化水素オキシ基、置換炭化水素オキシ基、ニトロ基またはハロゲン原子を表す。R2 、R3 はそれぞれ独立に水素原子、炭化水素基、置換炭化水素基、炭化水素オキシ基、置換炭化水素オキシ基、二置換アミノ基、ニトロ基またはハロゲン原子を表し、R1 とR2 および/またはR2 とR3 が環を形成してもよい。R4 は二官能性の炭化水素基または置換炭化水素基であり、nは0または1である。Xは
で表される三官能性の基である。ここで、R5 は水素原子、炭化水素基または置換炭化水素基を表す。また、Yはカウンターアニオンであり、yはYの個数であって、Mの価数により決定される。)
(式中、mは数平均ユニット数を表し、1 <mである。)
次に本発明を詳細に説明する。
【0012】
【発明の実施の形態】
(1)遷移金属錯体触媒
本発明で使用する遷移金属錯体触媒は、上記一般式(I)で表される遷移金属錯体である。
本発明において配位子とは、化学大辞典(第1版、東京化学同人、1989年)に記載の通り、ある原子に配位結合で結合している分子またはイオンを指す。結合に直接かかわっている原子を配位原子という。三座配位子は配位原子数が3個の配位子である。
かかる遷移金属錯体が有する特定の多座の配位子により、C−C結合構造が無く、オルト位分岐の少ないポリマーを得るのに適した、遷移金属原子まわりの環境が得られる。
【0013】
上記一般式(I)においてMは、元素の周期律表(IUPAC無機化学命名法改訂版1989)の第4〜11族の遷移金属原子である。好ましくは、第一遷移元素系列の遷移金属原子であり、さらに好ましくはバナジウム、鉄、コバルト、ニッケル、銅である。特に好ましくは銅原子である。
該遷移金属原子の価数は、自然界に通常存するものを適宜選択して使用することができ、例えば銅の場合は1価または2価の銅を用いることができる。
【0014】
上記一般式(I)におけるR1 としてのn−アルキル基は、炭素原子数1〜20のn−アルキル基が好ましく、具体的にはメチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基、n−デシル基等が挙げられる。
【0015】
上記一般式(I)におけるR1 としての芳香族炭化水素基は、炭素原子数1〜20のアリール基が好ましく、具体的にはフェニル基、ナフチル基、4−t−ブチルフェニル基、3,5−ジメチルフェニル基、3,5−ジ−t−ブチルフェニル基等が挙げられる。
【0016】
上記一般式(I)におけるR1 としての置換n−アルキル基、置換芳香族炭化水素基は、ハロゲン原子、アルコキシ基、二置換アミノ基等で置換されたn−アルキル基、アリール基等やアリール−n−アルキル基等であり、ハロゲン化−n−アルキル基、ハロゲン化アリール基、アルコキシ−n−アルキル基、アルコキシアリール基、二置換アミノ−n−アルキル基、二置換アミノアリール基、ベンジル基等が挙げられる。
【0017】
上記一般式(I)におけるR2 、R3 としての炭化水素基は炭素原子数1〜20のアルキル基、アラルキル基及びアリール基が好ましく、具体的にはメチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、シクロペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、オクチル基、デシル基、ベンジル基、フェニル基、ナフチル基等が挙げられる。
【0018】
上記一般式(I)におけるR2 、R3 としての置換炭化水素基は、ハロゲン原子、アルコキシ基、二置換アミノ基等で置換された炭化水素基であり、具体例としては、トリフルオロメチル基、2−t−ブチルオキシエチル基、3−ジフェニルアミノプロピル基等が挙げられる。
【0019】
上記一般式(I)における炭化水素オキシ基としては炭素原子数1〜20のアルコキシ基及びアリールオキシ基が好ましく、具体的にはメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ヘキシルオキシ基、オクチルオキシ基、フェノキシ基、ナフトキシ基等が挙げられる。
【0020】
上記一般式(I)における置換炭化水素オキシ基は、ハロゲン原子、アルコキシ基、アミノ基等で置換された炭化水素オキシ基であり、具体例としては、トリフルオロメトキシ基、2−t−ブチルオキシエトキシ基、3−ジフェニルアミノプロポキシ基等が挙げられる。
【0021】
上記一般式(I)におけるハロゲン原子として好ましくは、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子であり、さらに好ましくは塩素原子、臭素原子である。
【0022】
上記一般式(I)における二置換アミノ基としては炭素原子数1〜20の二置換アミノ基が好ましく、具体的には、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジプロピルアミノ基、ジブチルアミノ基、メチルエチルアミノ基、メチルプロピルアミノ基、メチルブチルアミノ基、ジフェニルアミノ基、ジナフチルアミノ基等が挙げられる。
【0023】
上記一般式(I)において、R4 は二官能性の炭化水素基または置換炭化水素基であり、具体例としては、メチレン基、1,2−エチレン基、1,2−プロピレン基、1,3−プロピレン基、1,4−ブチレン基等のアルキレン基、1,2−シクロペンチレン基、1,2−シクロヘキシレン基等のシクロアルキレン基、フェニレン基、ナフチレン基等のアリーレン基等を挙げることができ、好ましくは、メチレン基である。
【0024】
上記一般式(I)において、nはR4 の個数を表し、0または1である。好ましくは0である。
【0025】
上記一般式(I)において、Xは、
で表される三官能性の基である。ここで、R5 は水素原子、炭化水素基または置換炭化水素基を表す。
【0026】
かかるXの具体例としては、
等が挙げられ、好ましくは
である。
【0027】
上記一般式(I)のYはカウンターアニオンであり、yはYの個数であって、Mの価数により決定される。かかるカウンターアニオンとしては特に限定はないが、通常ブレンステッド酸の共役塩基が使用され、具体例としては、フッ化物イオン、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン、硫酸イオン、硝酸イオン、炭酸イオン、過塩素酸イオン、テトラフルオロボーレートイオン、ヘキサフルオロホスフェイトイオン、メタンスルホン酸イオン、トリフルオロメタンスルホン酸イオン、トルエンスルホン酸イオン、酢酸イオン、トリフルオロ酢酸イオン、プロピオン酸イオン、安息香酸イオン、水酸化物イオン、酸化物イオン、メトキサイドイオン、エトキサイドイオン等が挙げられる。
【0028】
本発明の遷移金属錯体触媒として、さらに好ましくは下記一般式(III)で表される遷移金属錯体が挙げられる。
(式中、Mは第4〜11族遷移金属原子を表し、R6 はn−アルキル基、置換n−アルキル基、芳香族炭化水素基または置換芳香族炭化水素基を表し、R7 、R8 はそれぞれ独立に水素原子、炭化水素基、置換炭化水素基、炭化水素オキシ基、置換炭化水素オキシ基、二置換アミノ基、ニトロ基またはハロゲン原子を表す。R6 とR7 および/またはR7 とR8 が環を形成してもよい。Yはカウンターアニオンであり、yはYの個数であって、Mの価数により決定される。)
【0029】
上記一般式(III)におけるM、Y、yは、上記一般式(I)におけるM、Y、yと同様である。
上記一般式(III)におけるn−アルキル基、置換n−アルキル基、芳香族炭化水素基、置換芳香族炭化水素基、炭化水素基、置換炭化水素基、ハロゲン原子、炭化水素オキシ基、置換炭化水素オキシ基、二置換アミノ基は、前記一般式(I)についてしたと同様に例示できる。
【0030】
上記一般式(III)において、R6 として好ましくは炭素原子数1〜20のn−アルキル基またはアリール基であり、さらに好ましくは炭素原子数1〜20のアリール基である。また、R7 、R8 として好ましくは水素原子、炭素原子数1〜20のアルキル基、アリール基、アルコキシ炭化水素基であり、さらに好ましくは水素原子、炭素原子数1〜20の分岐アルキル基やアリール基である。R6 とR7 および/またはR7 とR8 が環を形成してもよい。
特に好ましくは、R6 はフェニル基、2−ナフチル基、4−t−ブチルフェニル基、3,5−ジメチルフェニル基であり、R7 は水素原子であり、R8 はt−ブチル基、iso−プロピル基、フェニル基、4−t−ブチルフェニル基である。
【0031】
本発明で使用する三座配位子は、それ自体が中性分子であってもイオンであってもよい。好ましく用いられる三座配位子は、中性分子または1価の陰イオンである。
【0032】
本発明の遷移金属錯体において、三座配位子と遷移金属原子以外の構造は、触媒能を失活させないならば特に限定されるものではない。
また本発明の遷移金属錯体触媒には、錯体の原料、合成過程および/または酸化重合過程で、溶媒などが配位していても良い。
【0033】
本発明の遷移金属錯体の合成法は、例えば J. Am. Chem. Soc., 112, 3210(1990).に記載の方法等を挙げることができる。
該遷移金属錯体は、あらかじめ合成された錯体を用いることができるが、反応系中で錯体を形成させてもよい。
【0034】
本発明においては、該触媒を単独でまたは混合して使用することができる。
本発明においては、該触媒は任意の量で用いることができるが、一般的にはフェノール性出発原料に対する遷移金属化合物の量として0.01〜50モル%が好ましく、0.02〜10モル%がより好ましい。
【0035】
(2)フェノール性出発原料
本発明においては、フェノール性出発原料として、下記一般式(II)で表される原料を用いる。
(式中、mは数平均ユニット数を表し、1<mである。)
【0036】
数平均ユニット数m=1の場合、つまりフェノールのみから重合する場合には、たとえ特公昭36−18692号公報および工業化学雑誌,72 巻,10 号,106 (1969) で提案されているようなフェノールのオルト位での反応を妨害する触媒を用いても、得られる重合体はC−C結合構造を含み、オルト位の分岐が多く、融点が観測されないものとなり、有用なポリ−1,4−フェニレンエーテルを製造することが不可能となる。
【0037】
数平均ユニット数mが1より大きい場合の具体例を挙げると、4−フェノキシフェノール、4−(4−フェノキシフェノキシ)フェノール、4−{4−(4−フェノキシフェノキシ)フェノキシ}フェノール等の1,4−フェニレンエーテル構造ユニットを2以上の整数個もつフェノール性化合物、及びこれらの化合物とフェノールから選ばれる少なくとも2種以上の混合物である。4−フェノキシフェノールは市販のものを入手することができ、他の化合物は公知の方法により得ることができる。例えばTetrahedron, 23, 2253 (1967). に記載の方法を例示することができる。
【0038】
数平均ユニット数mは、1.01≦m≦6であることが好ましく、1.05≦m≦2であることがより好ましい。フェノール性出発原料として、4−フェノキシフェノールを用いることがさらに好ましい。
【0039】
(3)酸化重合
本発明において、酸化剤は任意のものが使用されるが、好ましくは酸素またはパーオキサイドが使用できる。酸素は不活性ガスとの混合物であってもよく、空気でもよい。またパーオキサイドの例としては、過酸化水素、t−ブチルハイドロパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、過酢酸、過安息香酸等を示すことができる。酸化剤としてさらに好ましくは酸素である。
【0040】
本発明において、酸化剤の使用量に特に限定はなく、酸素を用いる場合は、フェノール性出発原料に対して通常、当量以上大過剰に使用する。パーオキサイドを用いる場合は、フェノール性出発原料に対して通常、当量以上3当量以下を使用するが、当量以上2当量以下を使用するのが好ましい。
【0041】
本発明の反応は、反応溶媒の不在下でも実施することは可能であるが、一般には溶媒を用いることが望ましい。溶媒はフェノール性出発原料に対し不活性でかつ反応温度において液体であれば、特に限定されるものではない。好ましい溶媒の例を示すならば、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;ヘプタン、シクロヘキサン等の鎖状及び環状の脂肪族炭化水素;クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、ジクロロメタン等のハロゲン化炭化水素;アセトニトリル、ベンゾニトリル等のニトリル類;メタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、iso−プロピルアルコール等のアルコール類;ジオキサン、テトラヒドロフラン、エチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル類;N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン等のアミド類;ニトロメタン、ニトロベンゼン等のニトロ化合物類;水等が挙げられる。これらは単独あるいは混合物として使用される。
【0042】
該溶媒を用いる場合は、フェノール性出発原料の濃度が好ましくは0.5〜50重量%、より好ましくは1〜30重量%になるような割合で使用される。
【0043】
該遷移金属錯体が、カウンターイオンとして、フェノールよりも強い酸の共役塩基を有する場合には、該遷移金属錯体触媒を不活性化しない塩基を、カウンターイオンと当量以上、重合時に共存させることが好ましい。かかる塩基の例としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、酸化カルシウム、ナトリウムメトキサイド、ナトリウムエトキサイド等のアルカリ金属またはアルカリ土類金属の水酸化物、酸化物、アルコキサイド類;メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ジブチルアミン、トリエチルアミン等のアミン類;ピリジン、2−メチルピリジン、2,6−ジメチルピリジン、2,6−ジフェニルピリジン等のピリジン類が挙げられる。通常よく使用されるのはアミン類、ピリジン類である。
【0044】
本発明を実施する反応温度は、反応媒体が液状を保つ範囲であれば特に制限はない。溶媒を用いない場合はフェノール性出発原料の融点以上の温度が必要である。好ましい温度範囲は0℃〜180℃であり、より好ましくは0℃〜150℃である。
【0045】
【実施例】
以下に、実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によりその範囲を限定されるものではない。
【0046】
フェノール性出発原料の転化率(Conv. ):
内部標準物質としてジフェニルエーテルを含む反応混合物15mgをサンプリングし、濃塩酸を若干量加えて酸性とし、メタノール2gを加え、測定サンプルとした。このサンプルを、高速液体クロマトグラフィー(ポンプ:ウォーターズ社製600Eシステム、検出器:ウォーターズ社製UV/VIS−486、検出波長:278nm、カラム:YMC社製ODS−AM、展開溶媒:メタノール/水=50:50よりスタートして25分後に100/0となるよう変化させ、その後45分まで保持)により分析し、ジフェニルエーテルを内部標準物質として定量した。
【0047】
重合体の赤外吸収スペクトル分析およびピーク面積定量:
パーキンエルマー社製1600赤外分光光度計(KBr法)を用いて測定した。ピーク面積の定量は解析ソフト(パーキンエルマー社製GRAMS Analyst 1600)を用いて行った。
【0048】
重合体のC−C結合構造量(C-C/C-O ):
赤外吸収スペクトルについて、C−C結合構造ピーク面積を996〜1004cm-1の面積とし、C−O結合構造ピーク面積を996〜1018cm-1の面積からC−C結合構造ピーク面積を差し引いた値とした。重合体のC−C結合量の目安として、C−C結合構造ピーク面積/C−O結合構造ピーク面積により求めた値(C-C/C-O )を用いた。なお、C−C結合構造ピークが観測されない場合は、N.D.と記した。
【0049】
重合体のオルト位分岐量(o/p ):
赤外吸収スペクトルについて、オルト位分岐ピーク面積を960〜986cm-1の面積とした。重合体のオルト位分岐量の目安として、オルト位分岐ピーク面積/パラ位連結C−O結合構造ピーク面積により求めた値(o/p )を用いた。
【0050】
重合体の数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw):
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(ポンプ:ウォーターズ社製600Eシステム、検出器:ウォーターズ社製UV/VIS−484、検出波長:254nm、カラム:ウォーターズ社製Ultrastyragel Linear=2本+1000A=1本+100A=1本、展開溶媒:クロロホルム)により分析し、標準ポリスチレン換算値として重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)を測定した。
【0051】
重合体の融点:
窒素雰囲気下の熱分析(島津社製DSC−50)で、まず10℃/minで室温から300℃まで昇温し(1st scan)、次に−10℃/minで300℃から室温まで降温し、再び10℃/minで室温から350℃まで昇温した(2nd scan)。2nd scanにおいて、100℃以上で10J/g以上の吸熱ピークについて、最高温のピーク温度を融点とした。
【0052】
以下の実施例及び比較例に用いた遷移金属錯体触媒は、下記一般式(IV)における置換基R9 及びR10がそれぞれ下記の通りのものである。
【0053】
【0054】
なおCu-tpzb[iPr,iPr]は、J. Am. Chem. Soc.,112, 3210 (1990)に記載された方法に従って合成し、その他の錯体も同様にして合成した。Cu-tpzb[iPr,iPr]について次に記す。
【0055】
アルゴン雰囲気下、ポタシウムハイドロトリス(3,5−ジ−iso−プロピル−1−ピラゾリル)ボーレートと1等量の塩化第2銅2水和物をアセトンと塩化メチレンの混合溶媒中で室温1時間反応させた。反応終了後、溶媒を真空下で溶媒を留去した後、塩化メチレンで錯体を抽出した。抽出した錯体をアセトニトリルで洗浄することにより、赤色の錯体を得た。
【0056】
実施例1
電磁撹拌機を備えた25ml二つ口丸底フラスコに、酸素を充填したゴム風船を取付け、フラスコ内を酸素に置換した。これに、Cu-tpzb[Ph,Ph]0.025mmolを入れ、4-フェノキシフェノール(4-PhOPhOH )0.6mmolと塩基として2,6−ジフェニルピリジン(Ph2Py )0.30mmolをトルエン(PhMe)1.2gに溶解したものを加えた。内容物を攪拌しながら、フラスコを40℃のウォーターバスで14時間保温した。反応終了後、濃塩酸数滴を加えて酸性にした後、メタノール20mlを加え、沈殿した重合体を濾取した。メタノール10mlで3回洗浄し、100℃で5時間減圧乾燥した後、白色の重合体を得た。この重合体の分析結果を表1に示し、赤外吸収スペクトルを図1に示す。
【0057】
実施例2
電磁撹拌機を備えた25ml二つ口丸底フラスコに、酸素を充填したゴム風船を取付け、フラスコ内を酸素に置換した。これに、Cu-tpzb[tBuPh,Ph] 0.025mmolを入れ、4-フェノキシフェノール(4-PhOPhOH )0.6mmolと塩基として2,6−ジフェニルピリジン(Ph2Py )0.030mmolをトルエン(PhMe)1.2gに溶解したものを加えた。内容物を攪拌しながら、フラスコを40℃のウォーターバスで22時間保温した。反応終了後、反応系中に沈殿した重合体を濾取した。トルエン10mlで3回洗浄し、100℃で5時間減圧乾燥した後、白色の重合体を得た。この重合体の分析結果を表1に示す。
【0058】
比較例1〜5
フェノール性出発原料、触媒、溶媒、塩基、反応温度、反応時間を表1に示すように変えた以外は、実施例1と同様にして重合体を得た。表1に結果を示す。また、比較例4の赤外吸収スペクトルを図2に示す。なお、PhOHはフェノール、CuClは塩化第一銅、Me2Py は2,6−ジメチルピリジン、teedはN,N,N’,N’−テトラエチルエチレンジアミン、PhNO2 はニトロベンゼンを表す。
【0059】
なお、実施例1で得られた重合体は融点として186℃を示したが、比較例1〜5で得られた重合体は融点が観測されなかった。
また、重合体の着色も、本実施例で得られたものはほぼ白色に近いが、本比較例で得られたものは褐色を帯びていた。
【0060】
【表1】
【0061】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の特定のフェノール性出発原料を使用し、かつ本発明の触媒を用いた酸化重合方法によって、C−C結合構造がなく、オルト位の分岐も少なく、融点を有し、着色の少ないポリ−1,4−フェニレンエーテルを経済的に製造でき、本発明の工業的価値はすこぶる大である。また、本法で得られる重合体は、C−C結合構造が生成していないことから、架橋構造がないと考えられ、機械特性等の改善も期待できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1の重合体の赤外吸収スペクトル。
【図2】比較例4の重合体の赤外吸収スペクトル。
Claims (5)
- 下記一般式(I)で表される遷移金属錯体触媒を用いて、下記一般式(II)で表される原料を酸化剤存在下で重合することを特徴とするポリ−1,4−フェニレンエーテルの製造方法。
(式中、Mは銅原子を表し、R1 は水素原子、n−アルキル基、置換n−アルキル基、芳香族炭化水素基、置換芳香族炭化水素基、炭化水素オキシ基、置換炭化水素オキシ基、ニトロ基またはハロゲン原子を表す。R2 、R3 はそれぞれ独立に水素原子、炭化水素基、置換炭化水素基、炭化水素オキシ基、置換炭化水素オキシ基、二置換アミノ基、ニトロ基またはハロゲン原子を表し、R1 とR2 および/またはR2 とR3 が環を形成してもよい。R4 はメチレン基であり、nは0または1である。Xは
で表される三官能性の基である。また、Yはカウンターアニオンであり、yはYの個数であって、Mの価数により決定される。)
(式中、mは数平均ユニット数を表し、1 <mである。) - 数平均ユニット数mが、1.01≦m≦6であることを特徴とする請求項1記載のポリ−1,4−フェニレンエーテルの製造方法。
- 酸化剤が、酸素又はパーオキサイドであることを特徴とする請求項1又は2記載のポリ−1,4−フェニレンエーテルの製造方法。
- R 6 が炭素原子数1〜20のn−アルキル基またはアリール基を表し、R 7 、R 8 はそれぞれ独立に水素原子、炭素原子数1〜20のアルキル基、アリール基またはまたはアルコキシ炭化水素基を表すことを特徴とする請求項4記載のポリ−1,4−フェニレンエーテルの製造方法。
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