JP3744064B2 - ポリ−1,4−フェニレンエーテルの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はポリ−1,4−フェニレンエーテルの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
2,6−ジメチルフェノールの遷移金属錯体触媒を用いた酸化重合(例として、特公昭63−6091号公報、特開昭59−131627号公報等、多数を挙げることができる。)によって得られるポリ−(2,6−ジメチルフェニレンエーテル)(以下、PPEと略すことがある。)は有用な樹脂であることが知られている。しかし、PPEは、芳香環に置換されたメチル基が酸化劣化を受けやすいため、PPE単独で溶融成形することが難しいという欠点があり、一般にはポリスチレンとのポリマーアロイとして汎用エンプラに位置づけられている。
【0003】
一方、ポリ−1,4−フェニレンエーテル(以下、PAOと略すことがある。)は、Europ.Polym.J.,4,275 (1968).に記載されているように融点が298℃(ガラス転移温度は83℃)であり、一般にスーパーエンプラと呼ばれるポリフェニレンサルファイドの融点(285℃)を凌ぎ、ポリエーテルエーテルケトンの融点(334℃)に次ぐ高い融点を有しており、超高耐熱性の樹脂としてその有用性は極めて大である。
【0004】
PAOの製造方法としては、Europ.Polym.J.,4,275 (1968).にp−ブロモフェノールのナトリウム塩を銅触媒存在下で重合することが記載されているが、反応温度が200℃と高温が必要であり、また反応量と当量の塩が生成するという問題があった。
特開昭59−56426号公報には、フェノールの電解酸化重合によりPAOを製造する方法が記載されているが、単位時間あたりのポリマー生産量が電極表面積に支配されるため、大量生産が困難であった。
また、特公昭44−28918号公報には、4−フェノキシフェノールを光増感剤存在下、特定波長の光を照射する方法が提案されているが、重合の進行とともにフェノールが副生すること、及び光照射による方法のため大量生産が困難である等が問題であった。
さらに、特公昭44−28917号公報には、4−フェノキシフェノールをフェノールが蒸留される温度に加熱する方法も提案されているが、高温が必要であり、フェノールが副生するという問題点があった。
【0005】
これらの問題点を解決する方法として、反応温度が比較的低く、脱離する副生成物質が水である等の理由から、遷移金属錯体触媒による酸化重合法は優れた方法である。フェノールの遷移金属錯体触媒による酸化重合方法の例として、特公昭36−18692号公報、工業化学雑誌,72 巻,10 号,106 (1969) 、特公昭48−17395号公報等が挙げられるが、これらの方法ではオルト位分岐またはC−C結合構造が生じるという問題があった。
【0006】
ここでオルト位分岐とは、フェノール重合体中のベンゼン環が1,2,4−三置換ベンゼン構造をとることを指し、本来望まれる1,4−二置換ベンゼン構造の連鎖を乱す構造である。
またC−C結合構造とは、フェノールの重合が、酸素原子とベンゼン環との反応で起こらずに、ベンゼン環同士の反応で起こり、結果的にビフェニル構造が生じることを指す。
オルト位分岐やC−C結合構造が多くなると融点が低くなり、ついにはPAOは融点を示さない非晶性樹脂となって、高融点による超高耐熱性樹脂としての有用性を失う。
【0007】
特公昭36−18692号公報および工業化学雑誌,72 巻,10 号,106 (1969).では、3級アミンと第一銅塩の触媒による酸化重合において、フェノールのオルト位での反応を妨害するために嵩高い置換基を有する3級アミン(2,6−ジメチルピリジン等が示されている。)を用いることが提案されている。しかし、この方法で得られた重合体でも、C−C結合構造を含む上に、オルト位分岐の抑制も十分ではなく、融点が観測されない非晶性樹脂であるなど、PAOと呼べるものではなかった。
【0008】
一方、Tetrahedron,23,2253 (1967). に4−フェノキシフェノールを第一銅塩とN,N,N’,N’−テトラエチルエチレンジアミン触媒により酸化重合する例が示されているが、この方法で得られる重合体も、オルト位分岐が多く、融点は観測されなかった。
【0009】
そこで先に本出願人は、特定の遷移金属錯体触媒を用いて、特定のフェノール性出発原料を、酸化剤存在下で重合する方法によって、CーC結合構造が生成せず、かつオルト位の分岐も少なく、さらには融点を有する、ポリ−1,4−フェニレンエーテルを製造する方法を特許出願した(特願平8−144447号、特願平8−144448号、特願平8−144449号、特願平8−144452号、特願平8−144453号および特願平8−144455号等)。しかしながら、これらの方法においても未だ改良の必要があり、特にポリマー収率が高くなるとオルト位分岐が増加するという問題があった。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、C−C結合が生成せず、かつオルト位の分岐も少ない、融点を示すポリ−1,4−フェニレンエーテルを、遷移金属錯体触媒を用いて酸化重合により得る際に、ポリマー収率が高くなってもオルト位の分岐が少ないポリ−1,4−フェニレンエーテルを製造する方法を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
このような状況下にあって、本研究者らは上記目的を達成すべく鋭意研究を行った結果、特定の遷移金属錯体触媒を用いて、特定のフェノール性出発原料を重合する際に、酸化剤としてパーオキサイドを使用し、フリーラジカルトラップ剤共存下で重合を行う方法を見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
即ち本発明は、触媒として、下記(A)〜(F)のいずれかを用いて、下記構造式(I)で表される原料を酸化剤存在下で重合する際に、酸化剤としてパーオキサイドを使用し、フリーラジカルトラップ剤としてフェノールの水酸基よりも酸性度が低く、かつ水素ラジカルを放出しやすい化合物の共存下で重合を行う、ポリ−1,4−フェニレンエーテルの製造方法にかかるものである。
(式中、mは数平均ユニット数を表し、1<mである。)
(A)第4〜11族遷移金属化合物と、配位原子が窒素原子、リン原子、酸素原子または硫黄原子であり、該配位原子の少なくとも1つのα位の炭素原子が水素原子以外の原子又は原子団で全置換されている単座配位子化合物とからなり、遷移金属化合物と配位子化合物のモル比が(配位子化合物)/(遷移金属化合物)=0.01〜4である触媒
(B)一方の配位原子が酸素原子又は硫黄原子であり、他方の配位原子が窒素原子、リン原子、酸素原子、硫黄原子である二座配位子が実質的に2個配位した、第4〜11族遷移金属錯体触媒
(C)配位原子が窒素原子、リン原子、酸素原子又は硫黄原子である三座配位子1個あたりの第4〜11族遷移金属原子が1個以上である遷移金属錯体触媒
(D)配位原子がそれぞれ窒素原子、リン原子、酸素原子または硫黄原子である四座または五座の配位子1個あたりの第4〜11族遷移金属原子が1個以上である遷移金属錯体触媒
(E)配位原子が窒素原子、リン原子、酸素原子又は硫黄原子である六座以上の配位子1個あたりの第4〜11族遷移金属原子が該配位子の配座数の1/6個より多い遷移金属錯体触媒
(F)第4〜11族遷移金属のメタロセン錯体触媒
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明についてさらに詳細に説明する。
(1)触媒
本発明に用いられる遷移金属錯体触媒は、下記の(A)〜(F)のいずれかである。
【0014】
(A)第4〜11族遷移金属化合物と、配位原子が窒素原子、リン原子、酸素原子または硫黄原子であり、該配位原子の少なくとも1つのα位の炭素原子が水素原子以外の原子又は原子団で全置換されている単座配位子化合物とからなり、遷移金属化合物と配位子化合物のモル比が(配位子化合物)/(遷移金属化合物)=0.01〜4である触媒。
【0015】
(B)一方の配位原子が酸素原子又は硫黄原子であり、他方の配位原子が窒素原子、リン原子、酸素原子、硫黄原子である二座配位子が実質的に2個配位した、第4〜11族遷移金属錯体触媒。
【0016】
(C)配位原子が窒素原子、リン原子、酸素原子又は硫黄原子である三座配位子1個あたりの第4〜11族遷移金属原子が1個以上である遷移金属錯体触媒。
【0017】
(D)配位原子がそれぞれ窒素原子、リン原子、酸素原子または硫黄原子である四座または五座の配位子1個あたりの第4〜11族遷移金属原子が1個以上である遷移金属錯体触媒。
【0018】
(E)配位原子が窒素原子、リン原子、酸素原子又は硫黄原子である六座以上の配位子1個あたりの第4〜11族遷移金属原子が該配位子の配座数の1/6個より多い遷移金属錯体触媒。
【0019】
(F)第4〜11族遷移金属のメタロセン錯体触媒。
【0020】
本発明の遷移金属錯体触媒に含まれる遷移金属原子は、元素の周期律表(IUPAC無機化学命名法改訂版1989)の第4〜11族の遷移金属原子である。好ましくは、第一遷移元素系列の遷移金属原子であり、さらに好ましくはバナジウム、鉄、コバルト、ニッケル、銅である。特に好ましくはバナジウム、コバルトまたはニッケルであり、最も好ましくはバナジウムまたはニッケルである。
【0021】
該遷移金属原子の価数は、自然界に通常存するものを適宜選択して使用することができ、例えばバナジウムの場合は3〜5価、またコバルトの場合は2価または3価、ニッケルの場合は2価等を用いることができる。
【0022】
本発明において配位子とは、化学大辞典(第1版、東京化学同人、1989年)に記載の通り、ある原子に配位結合で結合している分子またはイオンを指す。結合に直接かかわっている原子を配位原子という。例えば二座、四座、五座配位子は配位原子数が2、4、5個の配位子である。
【0023】
本発明において配位子は、それ自体が中性分子であってもイオンであってもよい。好ましく用いられる二座配位子は、中性分子または1〜2価の陰イオンである。
【0024】
(A)の遷移金属錯体触媒に用いる遷移金属の化合物として好ましくは、遷移金属の塩である。具体的には、遷移金属のハロゲン化物、硫酸塩、酢酸塩、安息香酸塩等が代表例であり、遷移金属のハロゲン化物が好ましい。かかるハロゲンとしては塩素、臭素、ヨウ素等が例示できるが、塩素、臭素が好ましい。
【0025】
(A)の遷移金属錯体触媒に用いる単座配位子化合物は、配位原子の近隣に嵩高い置換基を有する化合物であり、配位原子が窒素原子、リン原子、酸素原子または硫黄原子であって、該配位原子の少なくとも1つのα位の炭素原子が水素原子以外の原子又は原子団で全置換されている化合物である。配位原子の近隣に嵩高い置換基を有しない単座配位子化合物を用いた場合、得られる重合体のオルト位分岐が多くなり好ましくない。
【0026】
特に好ましい単座配位子化合物の具体例としては、2−メチルピリジン、2−エチルピリジン、2−n−プロピルピリジン、2−iso−プロピルピリジン、2−フェニルピリジン、2,6−ジメチルピリジン、2,6−ジエチルピリジン、2,6−ジ−n−プロピルピリジン、2−メチル−6−iso−プロピルピリジン、2−メチル−6−フェニルピリジン、2−メチルキノリン、2−エチルキノリン、2−n- プロピルキノリン等が挙げられる。
【0027】
これらのなかでは、2位及び/又は6位が炭化水素基又は置換炭化水素基で置換されたピリジンが好ましく、さらに好ましくは2,6−ジ−n−アルキルピリジン、2,6−ジ−iso−アルキルピリジンであり、特に好ましくは2,6−ジメチルピリジンである。
【0028】
(B)の遷移金属錯体触媒は、遷移金属原子1個に対して二座配位子が実質的に2個配位したものである。これにより遷移金属原子の近隣が適度にブロックされ、オルト位分岐を抑制することができると考えられる。本発明の二座配位子以外の二座配位子、例えばN,N,N’,N’−テトラエチルエチレンジアミン等を用いた場合には配位子が2個配位することができないことがあり、その際オルト位分岐が多く生成する等、好ましくない。
【0029】
(B)の遷移金属錯体触媒における二座配位子は、一方の配位原子が酸素原子又は硫黄原子であり、他方の配位原子が窒素原子、リン原子、酸素原子、硫黄原子である二座配位子である。
【0030】
(B)における二座配位子は、一方の配位原子が酸素原子又は硫黄原子であり、他方の配位原子が窒素原子、リン原子、酸素原子、硫黄原子である二座配位子であること以外には特に限定はなく、一般に二座配位子として知られている多くのものを使用できる。例えば、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、2,3−ジメチル−2,3−ブタンジオール、1,2−シクロヘキサンジオール、1,2−エタンジチオール、1,3−プロパンジチオール、カテコール、ヒドロキシ酢酸、2−ヒドロキシプロピオン酸、2−ヒドロキシ酪酸、ヒドロキシ酢酸エチル、ヒドロキシアセトン、2−ケトプロピオン酸、2−ケト酪酸、2−ケトプロピオン酸エチル、アセチルアセトン、サリチルアルデヒド、サリチル酸、アセト酢酸エチル、マロン酸、マロン酸ジエチル、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、フェニルアラニン、モノエタノールアミン、3−アミノ−1−プロパノール、2−アミノ−1−プロパノール、1−アミノ−2−プロパノール、3−アミノ−2−ブタノール、3−アミノ−2,3−ジメチル−2−ブタノール、2−アミノ−1−シクロヘキサノール、N−メチルエタノールアミン、N−エチルエタノールアミン、N−プロピルエタノールアミン、N−ブチルエタノールアミン、N−フェニルエタノールアミン、N−メチルプロパノールアミン、N−フェニルプロパノールアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、N,N−ジエチルエタノールアミン、N−サリシリデンメチルアミン、N−サリシリデンエチルアミン、N−サリシリデンプロピルアミン、N−サリシリデンブチルアミン、N−サリシリデンアニリン、4−(N−メチルイミノ)−2−ペンタノン、4−(N−エチルイミノ)−2−ペンタノン、4−(N−プロピルイミノ)−2−ペンタノン、4−(N−フェニルイミノ)−2−ペンタノン、2−(N−メチルイミノ)プロピオン酸、3−(N−メチルイミノ)プロピオン酸、3−(N−メチルイミノ)プロピオン酸エチル、2−(N−メチルイミノ)酪酸、2−(N−メチルイミノ)プロパノール等からプロトンを一つまたはそれ以上取り去って得られる陰イオン;2,3−ブタンジオン、3,4−ヘキサンジオン、2,5−ジメチル−3,4−ヘキサンジオン、2,2−ジメチル−3,4−ヘキサンジオン、2,2,5,5−テトラメチル−3,4−ヘキサンジオン、1,2−シクロヘキサンジオン、2−(N−メチルイミノ)−3−ブタノン、2−(N−エチルイミノ)−3−ブタノン、2−(N−プロピルイミノ)−3−ブタノン、2−(N−ブチルイミノ)−3−ブタノン、2−(N−フェニルイミノ)−3−ブタノン、3−(N−メチルイミノ)−3−ヘキサノン、2−(N−メチルイミノ)−シクロヘキサノン、2−(N−メチルイミノ)−プロピオン酸メチル、2−(N−メチルイミノ)−酪酸エチル等の中性分子等を挙げることができる。
【0031】
(B)における二座配位子として、好ましくは、一方の配位原子が酸素原子であり、他方の配位原子が窒素原子又は酸素原子である配位子である。
【0032】
(B)の遷移金属錯体触媒は、より好ましくは下記一般式(II)で表される遷移金属錯体である。
(式中、Mは第4〜11族遷移金属原子を含む残基を表す。R1 、R3 はそれぞれ独立に水素原子、炭化水素基、置換炭化水素基、O- 、炭化水素オキシ基、置換炭化水素オキシ基、アミノ基または置換アミノ基を表し、R2 は水素原子、炭化水素基、置換炭化水素基、炭化水素オキシ基、置換炭化水素オキシ基、炭化水素オキシカルボニル基、置換炭化水素オキシカルボニル基、シアノ基、ニトロ基またはハロゲン原子を表し、R1 とR2 および/またはR2 とR3 が環を形成してもよい。)
【0033】
上記一般式(II)において、Mは第4〜11族遷移金属原子を含む残基であり、第4〜11族遷移金属原子、または =O のごとき基の結合した遷移金属原子等である。
【0034】
上記一般式(II)における炭化水素基としては、炭素原子数1〜20のアルキル基、アラルキル基及びアリール基が好ましく、具体的にはメチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、シクロペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、オクチル基、デシル基、ベンジル基、フェニル基、ナフチル基等が挙げられる。
【0035】
上記一般式(II)における置換炭化水素基は、ハロゲン原子、アルコキシ基、アミノ基、二置換アミノ基等で置換された炭化水素基であり、具体例としては、トリフルオロメチル基、2−t−ブチルオキシエチル基、3−ジフェニルアミノプロピル基等が挙げられる。
【0036】
上記一般式(II)における O- は、ヒドロキシ基からプロトンを一つ取り去ったものを示す。
【0037】
上記一般式(II)における炭化水素オキシ基としては、炭素原子数1〜20のアルコキシ基及びアリールオキシ基が好ましく、具体的にはメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ヘキシルオキシ基、オクチルオキシ基、フェノキシ基、ナフトキシ基等が挙げられる。
【0038】
上記一般式(II)における置換炭化水素オキシ基は、ハロゲン原子、アルコキシ基、アミノ基等で置換された炭化水素オキシ基であり、具体例としては、トリフルオロメトキシ基、2−t−ブチルオキシエトキシ基、3−ジフェニルアミノプロポキシ基等が挙げられる。
【0039】
上記一般式(II)のR1 、R3 における置換アミノ基としては、炭素原子数1〜20の置換アミノ基が好ましく、具体的には、メチルアミノ基、エチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジプロピルアミノ基、ジブチルアミノ基、メチルエチルアミノ基、メチルプロピルアミノ基、メチルブチルアミノ基、ジフェニルアミノ基、ジナフチルアミノ基等が挙げられる。
【0040】
上記一般式(II)のR2 におけるハロゲン原子として好ましくは、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子であり、さらに好ましくは塩素原子、臭素原子である。
【0041】
上記一般式(II)のR2 における炭化水素オキシカルボニル基としては、炭素原子数1〜20の炭化水素オキシカルボニル基が好ましく、具体的には、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基、ブチルオキシカルボニル基、フェノキシカルボニル基等が挙げられる。
【0042】
上記一般式(II)のR2 における置換炭化水素オキシカルボニル基は、ハロゲン原子、アルコキシ基、アミノ基等で置換された炭化水素オキシカルボニル基であり、具体例としては、トリフルオロメトキシカルボニル基、2−t−ブチルオキシエトキシカルボニル基、3−ジフェニルアミノプロポキシカルボニル基等が挙げられる。
【0043】
上記一般式(II)においてR1 、R3 として好ましくは、それぞれ独立に、水素原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、t−ブチル基、フェニル基、トリフルオロメチル基、メトキシ基、O- 、ジメチルアミノ基等であり、R2 として好ましくは、水素原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、t−ブチル基、フェニル基、トリフルオロメチル基、メトキシ基、メトキシカルボニル基、シアノ基、ニトロ基、塩素原子、臭素原子等である。
【0044】
上記一般式(II)で表される遷移金属錯体を構成する二座配位子の具体例としては、アセチルアセトン、3−メチル−2,4−ペンタンジオン、アセチルアセトアルデヒド、2,4−ヘキサンジオン、2,4−ヘプタンジオン、5−メチル−2,4−ヘキサンジオン、5,5−ジメチル−2,4−ヘキサンジオン、ベンゾイルアセトン、ベンゾイルアセトフェノン、サリチルアルデヒド、1,1,1−トリフルオロアセチルアセトン、1,1,1,5,5,5−ヘキサフルオロアセチルアセトン、3−メトキシ−2,4−ペンタンジオン、3−シアノ−2,4−ペンタンジオン、3−ニトロ−2,4−ペンタンジオン、3−クロロ−2,4−ペンタンジオン、アセト酢酸、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、アセト酢酸アミド、マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、サリチル酸、サリチル酸メチル、サリチル酸アミド等からプロトンを一つまたはそれ以上取り去ったものが挙げられる。好ましくは、アセチルアセトン、3−メチル−2,4−ペンタンジオン、アセチルアセトアルデヒド、2,4−ヘキサンジオン、2,4−ヘプタンジオン、5−メチル−2,4−ヘキサンジオン、5,5−ジメチル−2,4−ヘキサンジオン、ベンゾイルアセトン、ベンゾイルアセトフェノン、サリチルアルデヒド、1,1,1−トリフルオロアセチルアセトン、1,1,1,5,5,5−ヘキサフルオロアセチルアセトンから得られるものであり、さらに好ましくは、アセチルアセトン、サリチルアルデヒドから得られるものである。
【0045】
(C)の遷移金属錯体触媒における三座配位子は、配位原子が窒素原子、リン原子、酸素原子又は硫黄原子である三座配位子である。
このような多座の配位子により、C−C結合構造が無く、オルト位分岐の少ないポリマーを得るのに適した、遷移金属原子まわりの環境が得られる。
【0046】
かかる三座配位子として具体例をあげると、1,2,3−トリヒドロキシプロパン、3−ホルミル−サリチル酸、ジエチレントリアミン、4−(2−ヒドロキシエチルイミノ)−2−ペンタノン、N−サリシリデン−2−ヒドロキシアニリン等からプロトンを一つまたはそれ以上取り去ったものがが挙げられる。
【0047】
(D)の遷移金属錯体触媒における配位子は、配位原子がそれぞれ窒素原子、リン原子、酸素原子または硫黄原子である四座または五座の配位子である。
このような多座の配位子により、C−C結合構造が無く、オルト位分岐の少ないポリマーを得るのに適した、遷移金属原子まわりの環境が得られる。
【0048】
(D)の遷移金属錯体触媒においては、該配位子1個あたりの遷移金属原子数は1個以上であればよいが、1個以上、配位子の配座数個以下であることが好ましく、1個であることがより好ましい。
【0049】
(D)における配位子は、配位原子がそれぞれ窒素原子、リン原子、酸素原子または硫黄原子である四座または五座の配位子である以外には特に限定はない。かかる四座配位子の具体例を挙げれば、トリス(2−ピリジルメチル)アミン、トリス(2−イミダゾリルメチル)アミン、トリス(1−メチル−2−イミダゾリルメチル)アミン、トリス(2−ベンズイミダゾリルメチル)アミン、トリス(2−ベンズオキサゾリルメチル)アミン、トリス(2−ベンズチアゾリルメチル)アミン、トリス(1−ピラゾリルメチル)アミン、トリス(3 ,5−ジメチル−1−ピラゾリルメチル)アミン、トリス(3 ,5−ジプロピル−1−ピラゾリルメチル)アミン、トリス(3 ,5−ジフェニル−1−ピラゾリルメチル)アミン、ニトリロ三酢酸、ニトリロトリエタノール、ニトリロトリ−1−プロパノール、トリス(2−ピリジル−2−エチル)アミン、トリス(1−ピラゾリル−2−エチル)アミン、N−(2−メルカプトエチル)−N,N−ジエタノールアミン、N−(ジフェニルホスフィノエチル)−N,N−ジエタノールアミン、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコール、トリエチレンテトラミン、N,N''' −ジメチルトリエチレンテトラミン、N,N,N''' ,N''' −テトラメチルトリエチレンテトラミン、N,N’−ビス(2−ヒドロキシエチル)エチレンジアミン、N,N’−ビス(3 −ヒドロキシプロピル)エチレンジアミン、N,N’−エチレンジアミン二酢酸、N,N’−ビス(2−ピリジルメチル)エチレンジアミン、N,N’−ビス(2−イミダゾリルメチル)エチレンジアミン、N,N’−ビス(2−ベンズイミダゾリルメチル)エチレンジアミン、N,N’−ビス(2−メルカプトエチル)エチレンジアミン、N,N’−ビス(ジフェニルホスフィノエチル)エチレンジアミン、N,N’−ジサリシリデンエチレンジアミン、N,N’−ビス(1−メチル−3−オキソブチリデン)エチレンジアミン、N−2−ヒドロキシエチル−N’−サリシリデンエチレンジアミン、N−2−ヒドロキシエチル−N’−サリシリデン−1,3−プロピレンジアミン、N−3−ヒドロキシプロピル−N’−サリシリデン−1,3−プロピレンジアミン、N−3−ヒドロキシプロピル−N’−サリシリデンエチレンジアミン、N−2−ジメチルアミノエチル−N’−サリシリデンエチレンジアミン、N−2−ピリジルメチル−N’−サリシリデンエチレンジアミン、N,N’−ビス(2−アミノ−3−ベンジリデン)エチレンジアミン、1−(ジアセチルモノオキシムイミノ)−3−(ジアセチルモノオキシマトイミノ)プロパン、12−クラウン−4、1,4,8,11−テトラアザシクロテトラデカン、1,4,8,11−テトラアザシクロテトラデカン−5,7−ジオン、1,4,8,11−テトラメチル−1,4,8,11−テトラアザシクロテトラデカン、1,4,7,10−テトラチアシクロドデカン、2,3,9,10−テトラメチル−1,4,8,11−テトラアザシクロテトラデカ−1,3,8,10−テトラエン、5,7,12,14−テトラメチル−1,4,8,11−テトラアザシクロテトラデカ−4,6,11,13−テトラエン、ポルフィリン、フタロシアニン等、あるいは、それらからプロトンを一つ又はそれ以上取り去って得られる陰イオン等を挙げることができる。
【0050】
また、かかる五座配位子の具体例としては、テトラエチレングリコール、テトラプロピレングリコール、テトラエチレンペンタミン、N,N''' −ジメチルテトラエチレンペンタミン、N,N,N''' ,N''' −テトラメチルテトラエチレンペンタミン、N,N”−ビス(2−ヒドロキシエチル)ジエチレントリアミン、N,N”−ビス(3−ヒドロキシプロピル)ジエチレントリアミン、N,N”−ジエチレントリアミン二酢酸、N,N”−ビス(2−ピリジルメチル)ジエチレントリアミン、N,N”−ビス(2−イミダゾリルメチル)ジエチレントリアミン、N,N”−ビス(2−ベンズイミダゾリルメチル)ジエチレントリアミン、N,N”−ビス(2−メルカプトエチル)ジエチレントリアミン、N,N”−ビス(ジフェニルホスフィノエチル)ジエチレントリアミン、N,N”−ジサリシリデンジエチレントリアミン、N−(3−オキソペンチリデン)−N”−サリシリデンジエチレントリアミン、N,N”−ビス(3−オキソブチリデン)ジエチレントリアミン、N,N”−ビス(3−オキソブチリデン)−ジプロピレントリアミン、N,N”−ビス(3−オキソブチリデン)−N’−メチルジプロピレントリアミン、N,N”−ビス(1−メチル−3−オキソブチリデン)−N’−メチルジプロピレントリアミン、N,N”−ビス(3-オキソペンチリデン)−N’- メチルジプロピレントリアミン、N,N”- ビス(3−オキソヘキシリデン)−N’−メチルジプロピレントリアミン、N,N”−ビス(4−メチル−3−オキソペンチリデン)−N’−メチルジプロピレントリアミン、N,N”−ビス(4 ,4−ジメチル−3−オキソペンチリデン)−N’−メチルジプロピレントリアミン、N,N”−ビス(4−フェニル−3−オキソブチリデン)−N’−メチルジプロピレントリアミン、N,N”−ビス(4-トリフルオロメチル−3−オキソブチリデン)−N’−メチルジプロピレントリアミン、N,N”−ビス(2−シアノ3-オキソブチリデン)−N’−メチルジプロピレントリアミン、N,N”−ビス(2−シアノ−3−オキソブチリデン)−N’−メチルジプロピレントリアミン、N,N”−ビス(2−ニトロ-3- オキソブチリデン)−N’−メチルジプロピレントリアミン、N,N”−ビス(2−カルボキシルエチリデン)−N’−メチルジプロピレントリアミン、N,N”−ビス[2−(メトキシカルボニル)エチリデン]−N’−メチルジプロピレントリアミン、N,N”−ビス[2−(ジメチルアミノカルボニル)エチリデン]−N’−メチルジプロピレントリアミン、N,N’−(3−アザ−1,5−ペンチレンレン)−ビス(サリチル酸アミド)、N,N’−(3−アザ−1,5−ペンチレンレン)−ビス(マロン酸モノメチル モノアミド)、N,N”−ビス(1−メチル−3−オキソブチリデン)ジエチレントリアミン、N−2−ヒドロキシエチル−N”−サリシリデンジエチレントリアミン、N−3−ヒドロキシプロピル−N”−サリシリデンジエチレントリアミン、N−3−ヒドロキシプロピル−N’−サリシリデンエチレンジアミン、N−2−ジメチルアミノエチル−N”−サリシリデンジエチレントリアミン、N−2−ピリジルメチル−N”−サリシリデンジエチレントリアミン、N,N”−ビス(2−アミノ−3−ベンジリデン)ジエチレントリアミン、1 ,5−ビス(サリシリデンアミノ)−3−ペンタノール、2 ,6-ビス[N−(2−ヒドロキシエチル)イミノメチル]−4−メチルフェノール、2 ,6−ビス[N−(3−ヒドロキシプロピル)イミノメチル]−4−メチルフェノール、2 ,6−ビス[N−(2−ヒドロキシフェニル)イミノメチル]−4−メチルフェノール、2 ,6−ビス[N−(2−ピリジルメチル)イミノメチル]−4−メチルフェノール、2 ,6−ビス[N−(2−ピリジルエチル)イミノメチル]−4−メチルフェノール、2 ,6−ビス[N−(2−ジメチルアミノエチル)イミノメチル]−4−メチルフェノール、2 ,6−ビス[N−(2−ピリジルメチル)アミノメチル]−4−メチルフェノール、2 .6−ビス[N−(2−ピリジルエチル)アミノメチル]フェノール、15−クラウン−5、1,4,7,10,13−ペンタチアシクロペンタデカン等、あるいは、それらからプロトンを一つ又はそれ以上取り去って得られる陰イオン等を挙げることができる。
【0051】
(D)における配位子の配座数は、好ましくは、四座である。
(D)における配位子の配位原子は、好ましくは、窒素原子および/または酸素原子である。
【0052】
(D)の遷移金属錯体触媒として、好ましくは下記一般式(III)で表される錯体である。
(式中、Mは第4〜11族遷移金属原子を含む残基を表す。R4 、R9 はそれぞれ独立に水素原子、炭化水素基、置換炭化水素基、O- 、炭化水素オキシ基、置換炭化水素オキシ基、アミノ基または置換アミノ基を表し、R5 、R8 はそれぞれ独立に水素原子、炭化水素基、置換炭化水素基、炭化水素オキシ基、置換炭化水素オキシ基、炭化水素オキシカルボニル基、置換炭化水素オキシカルボニル基、シアノ基、ニトロ基またはハロゲン原子を表し、R6 、R7 はそれぞれ独立に水素原子、炭化水素基、置換炭化水素基または O- を表す。R10 は二官能性の炭化水素基または置換炭化水素基を表す。R4 とR5 および/またはR8 とR9 が環を形成してもよい。)
【0053】
上記一般式(III)におけるM、炭化水素基、置換炭化水素基、O- 、炭化水素オキシ基、置換炭化水素オキシ基、置換アミノ基、炭化水素オキシカルボニル基、置換炭化水素オキシカルボニル基、ハロゲン原子は、上記一般式(II)についてしたと同様のものが挙げられる。
【0054】
上記一般式(III)において、R10は二官能性の炭化水素基または置換炭化水素基であり、具体例としては、1,2−エチレン基、1,2−プロピレン基、1,3−プロピレン基、1,4−ブチレン基等のアルキレン基;1,2ージフェニルー1,2−エチレン基等のアリールアルキレン基;1,2−シクロペンチレン基、1,2−シクロヘキシレン基等のシクロアルキレン基;1,2−フェニレン基、1,2−ナフチレン基、2,3−ナフチレン基等のアリーレン基;1,2−テトラフルオロエチレン基等の置換アルキレン基等を挙げることができ、好ましくは、1,2−エチレン基、1,3−プロピレン基、1,2−ジフェニルー1,2−エチレン基、1,2−シクロヘキシレン基、1,2−フェニレン基である。
【0055】
上記一般式(III)で表される遷移金属錯体における四座配位子の具体例としては、N,N’−ジサリシリデンエチレンジアミン、N−(3−オキソペンチリデン)−N’−サリシリデンエチレンジアミン、N,N’−ビス(3−オキソブチリデン)エチレンジアミン、N,N’−ビス(3−オキソブチリデン)−1,3−プロパンジアミン、N,N’−ビス(3−オキソブチリデン)−1,2−フェニレンジアミン、N,N’−ビス(1−メチル−3−オキソブチリデン)エチレンジアミン、N,N’−ビス(3−オキソペンチリデン)エチレンジアミン、N,N’−ビス(3−オキソヘキシリデン)エチレンジアミン、N,N’−ビス(4−メチル−3−オキソペンチリデン)エチレンジアミン、N,N’−ビス(4,4−ジメチル−3−オキソペンチリデン)エチレンジアミン、N,N’−ビス(4−フェニル−3−オキソブチリデン)エチレンジアミン、N,N’−ビス(4−トリフルオロメチル−3−オキソブチリデン)エチレンジアミン、N,N’−ビス(2−シアノ3−オキソブチリデン)エチレンジアミン、N,N’−ビス(2−シアノ−3−オキソブチリデン)エチレンジアミン、N,N’−ビス(2−ニトロ−3−オキソブチリデン)エチレンジアミン、N,N’−ビス(2−カルボキシルエチリデン)エチレンジアミン、N,N’−ビス[2−(メトキシカルボニル)エチリデン]エチレンジアミン、N,N’−ビス[2−(ジメチルアミノカルボニル)エチリデン]エチレンジアミン、N,N’−(1,2−エチレン)−ビス(サリチル酸アミド)、N,N’−(1,2−エチレン)−ビス(マロン酸モノメチルモノアミド)等、あるいは、それらからプロトンを一つ又はそれ以上取り去って得られる陰イオン等を挙げることができる。
【0056】
(D)の遷移金属錯体触媒は、さらに好ましくは下記一般式(IV)で表される錯体である。
(式中、Mは第4〜11族遷移金属原子を含む残基を表す。R6 、R7 はそれぞれ独立に水素原子、炭化水素基または置換炭化水素基を表し、R10は二官能性の炭化水素基または置換炭化水素基を表す。R11〜R18はそれぞれ独立に水素原子、炭化水素基、置換炭化水素基、炭化水素オキシ基、置換炭化水素オキシ基、置換アミノ基、ニトロ基またはハロゲン原子を表す。)
【0057】
上記一般式(IV)におけるM、炭化水素基、置換炭化水素基、二官能性の炭化水素基または置換炭化水素基、炭化水素オキシ基、置換炭化水素オキシ基、置換アミノ基、ハロゲン原子は、上記一般式(III)についてしたと同様のものが挙げられる。
【0058】
上記一般式(IV)においてR6 、R7 、R10、R11〜R18としてさらに好ましくは、R6 、R7 がそれぞれ独立に水素原子または炭化水素基であり、R10がアルキレン基、アリールアルキレン基、シクロアルキレン基、アリーレン基であり、R11〜R18がそれぞれ独立に水素原子、炭化水素基、ハロゲン化炭化水素基、炭化水素オキシ基、置換アミノ基、ニトロ基、塩素原子、臭素原子である。特に好ましくは、R6 、R7 がそれぞれ独立に水素原子、メチル基、フェニル基であり、R10 が1,2−エチレン基、1,3−プロピレン基、1,2−ジフェニル−1,2−エチレン基、1,2−シクロヘキシレン基、1,2−フェニレン基であり、R11〜R18がそれぞれ独立に水素原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基、ベンジル基、トリフルオロメチル基、メトキシ基、ジメチルアミノ基、ニトロ基、塩素原子、臭素原子である。
【0059】
(E)の遷移金属錯体触媒における六座以上の配位子は、配位原子が窒素原子、リン原子、酸素原子又は硫黄原子である六座以上の配位子である。
このような多座の配位子により、C−C結合構造が無く、オルト位分岐の少ないポリマーを得るのに適した遷移金属原子まわりの環境が得られる。
【0060】
(E)の遷移金属錯体触媒における配位子において、配座数は6〜10であることが好ましく、より好ましくは6〜8であり、さらに好ましくは6である。
【0061】
(E)の遷移金属錯体触媒においては、該配位子1個あたりの該遷移金属原子数が該配位子の配座数の1/6個より多くなければならず、例えば六座配位子の場合の遷移金属原子数は2個以上であり、12座配位子の場合は3個以上である。好ましくは該配位子1個あたりの該遷移金属原子数は、該配位子の配座数の1/6個より多く、該配位子の配座数個以下であり、さらに好ましくは該配位子の配座数の1/6個より多く、該配位子の配座数の1/3個以下である。該配位子1個あたりの該遷移金属原子数が該配位子の配座数の1/6個以下の場合は、該遷移金属原子上に想定される反応活性点が該配位子により塞がれ、触媒活性を失う場合があり好ましくない。
【0062】
(E)の遷移金属錯体触媒の配位子部分の具体例としては、N,N,N’,N’−エチレンジアミン四酢酸、1,3−ビス(3 −ホルミル−5−メチルサリチリデンアミノ)プロパン、11,13−ジメチル−3,7,15,19−テトラアザトリシクロ[19,3,1,19,13]ヘキサコサ−2,7,9,11,13(26),14,19,21(25),22,24−デカエン−25,26−ジオール、N,N’−エチレンビス(3−カルボキシサリシリデンアミン)(ただし、2,6−ジホルミル−4−メチルフェノール2当量と1,3−ジアミノプロパン2当量を反応して得られる環状二シッフ塩基化合物を表す。)、5,5’−(1,2−エタンジイルジニトリロ)ビス(1−フェニル−1,3−ヘキサンジオン)等からプロトンを一つまたはそれ以上取り去ったものが挙げられる。
【0063】
(F)のメタロセン錯体触媒としては、η5 配位結合により遷移金属原子と結合するシクロペンタジエニル骨格を有する配位子を有する第4〜11族遷移金属錯体を挙げることができる。
【0064】
かかるメタロセン錯体の内、遷移金属が鉄の場合の具体例を挙げると、ビスシクロペンタジエニル鉄、ジメチルメチレンビスシクロペンタジエニル鉄、エチレンビスシクロペンタジエニル鉄、ジメチルシリルビスシクロペンタジエニル鉄などが例示できる。
【0065】
触媒として、好ましくは(B)〜(F)であり、さらに好ましくは(B)および(D)の触媒である。
【0066】
本発明の遷移金属錯体において、該配位子と該遷移金属原子以外の構造は、触媒能を失活させないならば特に限定されるものではない。
本発明の遷移金属錯体には、電気的中性を保たせるようなカウンターイオンが必要な場合がある。カウンターアニオンとしては、通常ブレンステッド酸の共役塩基が使用され、具体例としては、フッ化物イオン、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン、硫酸イオン、硝酸イオン、炭酸イオン、過塩素酸イオン、テトラフルオロボーレートイオン、ヘキサフルオロホスフェイトイオン、メタンスルホン酸イオン、トリフルオロメタンスルホン酸イオン、トルエンスルホン酸イオン、酢酸イオン、トリフルオロ酢酸イオン、プロピオン酸イオン、安息香酸イオン、水酸化物イオン、酸化物イオン、メトキサイドイオン、エトキサイドイオン等が挙げられる。カウンターカチオンとしては、アルカリ金属やアルカリ土類金属のカチオン等を適宜用いることができる。
また本発明の遷移金属錯体触媒には、錯体の原料、合成過程および/または酸化重合過程で、溶媒などが配位していても良い。
【0067】
本発明の遷移金属錯体触媒の合成法は、例えば「第4版 実験化学講座17−無機錯体・キレート錯体」丸善(株)、1991年、274頁および302頁に記載の方法等を挙げることができる。ただし、(F)のメタロセン錯体触媒の場合は、「The Merk Index(11th edition)」No.3985,Merk&Co.,Inc.に記載の方法等により得ることができる。
該遷移金属錯体は、あらかじめ合成された錯体を用いることができるが、反応系中で錯体を形成させてもよい。
【0068】
本発明においては、該触媒を単独でまたは混合して使用することができる。
本発明においては、該触媒は任意の量で用いることができるが、一般的にはフェノール性出発原料に対する遷移金属化合物の量として0.01〜50モル%が好ましく、0.02〜10モル%がより好ましい。
【0069】
(2)フェノール性出発原料
本発明においては、フェノール性出発原料として、下記構造式で表される原料を用いる。
(式中、mは数平均ユニット数を表し、1<mである。)
【0070】
数平均ユニット数m=1の場合、つまりフェノールのみから重合する場合には、たとえ特公昭36−18692号公報および工業化学雑誌,72 巻,10 号,106 (1969) で提案されているようなフェノールのオルト位での反応を妨害する触媒を用いても、得られる重合体はC−C結合構造を含み、オルト位の分岐が多く、融点が観測されないものとなり、有用なポリ−1,4−フェニレンエーテルを製造することが不可能となる。
【0071】
数平均ユニット数mが1より大きい場合の具体例を挙げると、4−フェノキシフェノール、4−(4−フェノキシフェノキシ)フェノール、4−{4−(4−フェノキシフェノキシ)フェノキシ}フェノール等の1,4−フェニレンエーテル構造ユニットを2以上の整数個もつフェノール性化合物、及びこれらの化合物とフェノールから選ばれる少なくとも2種以上の混合物である。4−フェノキシフェノールは市販のものを入手することができ、他の化合物は公知の方法により得ることができる。例えばTetrahedron, 23, 2253 (1967). に記載の方法を例示することができる。
【0072】
数平均ユニット数mは、1.01≦m≦6であることが好ましく、1.05≦m≦2であることがより好ましい。フェノール性出発原料として、4−フェノキシフェノールを用いることがさらに好ましい。
【0073】
(3)酸化剤
本発明の酸化剤は、パーオキサイドを用いる。酸化剤として酸素を用いた場合、フリーラジカルトラップ剤を共存させても添加効果が発現せず、オルト位分岐が多くなり好ましくない。
【0074】
パーオキサイドの例としては、過酸化水素、t−ブチルハイドロパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、過酢酸、過安息香酸等を示すことができる。好ましくはハイドロパーオキサイドであり、さらに好ましくは過酸化水素、アルキルパーオキサイドである。特に好ましいパーオキサイドとしてはアルキルパーオキサイドである。
【0075】
本発明において、酸化剤の使用量に特に限定はないが、フェノール性出発原料に対して通常、当量以上3当量以下を使用するが、当量以上2当量以下を使用するのが好ましい。
【0076】
(4)フリーラジカルトラップ剤
本発明においては、酸化重合において、フリーラジカルトラップ剤を共存させる。フェノールの酸化カップリング反応は、形式的にはフェノールの酸化で生じるフェノキシラジカルのカップリング反応である。この際、フェノキシラジカルが触媒と相互作用のない、フリーなラジカルとしてカップリングすると、オルト位分岐が多くなると推定する。本発明は、フリーラジカルトラップ剤を共存させることによって、フリーなフェノキシラジカルを捕捉し、オルト位分岐を抑制しようという考えに基づくものである。
【0077】
該フリーラジカルトラップ剤とは、フェノールの水酸基よりも酸性度が低く、かつ水素ラジカルを放出しやすい化合物である。フリーラジカルトラップ剤がフェノールの水酸基よりも酸性度が高い場合は、フェノール性出発原料の酸化重合を阻害するので好ましくない。また、フリーラジカルトラップ剤がフェノールの水酸基よりも水素ラジカルを放出しにくい場合は、フリーなフェノキシラジカルを捕捉できず、オルト位分岐が増加するので好ましくない。
【0078】
該フリーラジカルトラップ剤は、好ましくは、pKa(ただし、Kaはプロトン解離定数を表し、pKa=−log(Ka)を表す。)が10よりも大きく、水素ラジカル解離エネルギーが79.1kcal/mol よりも小さい化合物であり、さらに好ましくは、pKaが16よりも大きく、水素ラジカル解離エネルギーが78kcal/molよりも小さい化合物である。特に好ましい例として、トルエン、o−、m−、又はp−キシレン、エチルベンゼン、クメンまたはジフェニルメタン等が挙げられる。
【0079】
該フリーラジカルトラップ剤の使用量に特に限定はない。フリーラジカルを触媒的にトラップできるものであれば、フェノール性出発原料に対して触媒量で用いることもできる。フリーラジカルをトラップするのに当量必要な場合は、フェノール性出発原料に対して当量以上加えることが好ましく、該フリーラジカルトラップ剤を反応溶媒として大過剰に使用することがさらに好ましい。
【0080】
(4)重合反応
本発明の反応は、反応溶媒の不在下でも実施することは可能であるが、一般には溶媒を用いることが望ましい。溶媒はフェノール性出発原料に対し不活性でかつ反応温度において液体であれば、特に限定されるものではない。好ましい溶媒の例を示すならば、ベンゼン、トルエン、o−、m−又はp−キシレン、エチルベンゼン、クメンまたはジフェニルメタン等の芳香族炭化水素;ヘプタン、シクロヘキサン等の鎖状及び環状の脂肪族炭化水素;クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、ジクロロメタン等のハロゲン化炭化水素;アセトニトリル、ベンゾニトリル等のニトリル類;メタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、iso−プロピルアルコール等のアルコール類;ジオキサン、テトラヒドロフラン、エチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル類;N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン等のアミド類;ニトロメタン、ニトロベンゼン等のニトロ化合物類;水等が挙げられる。これらは単独あるいは混合物として使用される。反応溶媒として、好ましくは芳香族炭化水素であり、より好ましくはトルエン、o−、m−又はp−キシレン、エチルベンゼン、クメンまたはジフェニルメタン等である。
【0081】
該溶媒を用いる場合は、フェノール性出発原料の濃度が好ましくは0.5〜50重量%、より好ましくは1〜30重量%になるような割合で使用される。
【0082】
該遷移金属錯体が、カウンターイオンとして、フェノールよりも強い酸の共役塩基を有する場合には、該遷移金属錯体触媒を不活性化しない塩基を、カウンターイオンと当量以上、重合時に共存させることが好ましい。かかる塩基の例としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、酸化カルシウム、ナトリウムメトキサイド、ナトリウムエトキサイド等のアルカリ金属またはアルカリ土類金属の水酸化物、酸化物、アルコキサイド類;メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ジブチルアミン、トリエチルアミン等のアミン類;ピリジン、2−メチルピリジン、2,6−ジメチルピリジン、2,6−ジフェニルピリジン等のピリジン類が挙げられる。通常よく使用されるのはアミン類、ピリジン類である。
【0083】
本発明を実施する反応温度は、反応媒体が液状を保つ範囲であれば特に制限はない。溶媒を用いない場合はフェノール性出発原料の融点以上の温度が必要である。好ましい温度範囲は0℃〜180℃であり、より好ましくは0℃〜150℃である。
【0084】
【実施例】
以下に、実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によりその範囲を限定されるものではない。
【0085】
フェノール性出発原料の転化率(Conv. ):
内部標準物質としてジフェニルエーテルを含む反応混合物15mgをサンプリングし、濃塩酸を若干量加えて酸性とし、メタノール2gを加え、測定サンプルとした。このサンプルを、高速液体クロマトグラフィー(ポンプ:ウォーターズ社製600Eシステム、検出器:ウォーターズ社製UV/VIS−486、検出波長:278nm、カラム:YMC社製ODS−AM、展開溶媒:メタノール/水=50:50よりスタートして25分後に100/0となるよう変化させ、その後45分まで保持)により分析し、ジフェニルエーテルを内部標準物質として定量した。
【0086】
重合体の赤外吸収スペクトル分析およびピーク面積定量:
パーキンエルマー社製1600赤外分光光度計(KBr法)を用いて測定した。ピーク面積の定量は解析ソフト(パーキンエルマー社製GRAMS Analyst 1600)を用いて行った。
【0087】
重合体のC−C結合構造量(C-C/C-O ):
赤外吸収スペクトルについて、C−C結合構造ピーク面積を996〜1004cm-1の面積とし、C−O結合構造ピーク面積を996〜1018cm-1の面積からC−C結合構造ピーク面積を差し引いた値とした。重合体のC−C結合量の目安として、C−C結合構造ピーク面積/C−O結合構造ピーク面積により求めた値(C-C/C-O )を用いた。なお、C−C結合構造ピークが観測されない場合は、N.D.と記した。
【0088】
重合体のオルト位分岐量(o/p ):
赤外吸収スペクトルについて、オルト位分岐ピーク面積を960〜986cm-1の面積とした。重合体のオルト位分岐量の目安として、オルト位分岐ピーク面積/パラ位連結C−O結合構造ピーク面積により求めた値(o/p )を用いた。
【0089】
重合体の収率に対するオルト位分岐量( (o/p)/(Y.) ):
重合体のオルト位分岐量 o/p値を、重合体の収率で除した値を目安とした。
【0090】
重合体の数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw):
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(ポンプ:ウォーターズ社製600Eシステム、検出器:ウォーターズ社製UV/VIS−484、検出波長:254nm、カラム:ウォーターズ社製Ultrastyragel Linear=2本+1000A=1本+100A=1本、展開溶媒:クロロホルム)により分析し、標準ポリスチレン換算値として重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)を測定した。
【0091】
フリーラジカルトラップ剤の酸解離定数(pKa ):
フリーラジカルトラップ剤の酸性度は、Stanley H.Pine , James B.Hendrickson , Donald J.Cram , George S.Hammond 著、ORGANIC CHEMISTRY 4th edition (Mcgrawhill) P200 に示される酸解離定数KaのpKa=−log(Ka)を用いた。なお、pKaが不明なものは()内に推定値を示した。
【0092】
フリーラジカルトラップ剤の水素ラジカル解離エネルギー:
半経験的分子軌道法プログラムMOPAC93(J.J.D.Stewart,富士通社著)を用い、パラメータとしてAM1(M.J.S.Dewer et al,J.Am.Chem.Soc., 107,3902)を採用し、ワークステーション(IBM社製RS6000)上で量子化学計算を行なった。フリーラジカルトラップ剤、水素ラジカルおよび水素ラジカルの解離したフリーラジカルトラップ剤のラジカルの構造をそれぞれ最適化し生成熱を求め、水素ラジカルと水素ラジカルの解離したフリーラジカルトラップ剤のラジカルの生成熱の和からフリーラジカルトラップ剤の生成熱を差し引いた値を水素ラジカル解離エネルギーとした。
【0093】
本実施例に用いた触媒の配位子は、N,N’−ジサリシリデンエチレンジアミン(salen と記す。)、およびアセチルアセトナート(acacと記す。)である。
【0094】
実施例1
電磁撹拌機を備えた25ml二つ口丸底フラスコに、窒素を充填したゴム風船を取付け、フラスコ内を窒素に置換した。これに、VO(salen) 0.030mmolを入れ、4−フェノキシフェノール(4-PhOPhOH )1.2mmolをトルエン(PhMe)1.2gに溶解したものを加え、さらにt−ブチルハイドロパーオキサイド(tBuOOH)1.8mmolを加えた。内容物を攪拌しながら、フラスコを50℃のウォーターバスで5時間保温した。反応終了後、2mmolのNa2SO3の水溶液を加えた後、メタノール60mlを加え、沈殿した重合体を濾取した。メタノール10mlで3回、イオン交換水10mlで3回、さらにメタノール10mlで3回洗浄し、100℃で5時間減圧乾燥した後、重合体を得た。この重合体の分析結果を表1に示し、赤外吸収スペクトルを図1に示す。
【0095】
実施例2〜4および比較例1〜4
触媒、溶媒、反応時間を表1に示すように変えた以外は、実施例1と同様にして重合体を得た。表1に結果を示す。また、比較例1の赤外吸収スペクトルを図2に示す。なお、o-DCBはo−ジクロロベンゼン、PhNO2 はニトロベンゼン、MeCNはアセトニトリルを表す。
【0096】
実施例1および比較例1〜4に使用したフリーラジカルトラップ剤の酸解離定数(pKa)および水素ラジカル解離エネルギーを表2に示す。フリーラジカルトラップ剤として、フェノールの水酸基よりも酸性度が低く、かつ水素ラジカルを放出しやすいことが必要である。
【0097】
比較例5
電磁撹拌機を備えた25ml二つ口丸底フラスコに、酸素を充填したゴム風船を取付け、フラスコ内を酸素に置換した。これに、VO(salen) 0.030mmolを入れ、4−フェノキシフェノール(4-PhOPhOH )1.2mmolをトルエン(PhMe)1.2gに溶解したものを加えた。内容物を攪拌しながら、フラスコを50℃のウォーターバスで32時間保温した。反応終了後、濃塩酸数滴を加えて酸性にした後、メタノール20mlを加え、沈殿した重合体を濾取した。メタノール10mlで3回洗浄し、100℃で5時間減圧乾燥した後、重合体を得た。この重合体の分析結果を表1に示す。
【0098】
【表1】
【0099】
【表2】
【0100】
【発明の効果】
以上説明したように、特定の遷移金属錯体触媒を用いて、特定のフェノール性出発原料を酸化重合する際に、酸化剤としてパーオキサイドを使用し、フェノールの水酸基よりも酸性度が低く、かつ水素ラジカルを放出しやすいフリーラジカルトラップ剤共存下で重合を行うことにより、ポリマー収率が高くなってもオルト位の分岐が少ないポリ−1,4−フェニレンエーテルを製造できる点で、本発明の工業的価値はすこぶる大である。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1の重合体の赤外吸収スペクトル。
【図2】比較例1の重合体の赤外吸収スペクトル。
Claims (6)
- 触媒として、下記(B)又は(D)を用いて、下記構造式(I)で表される原料を酸化剤存在下で重合する際に、酸化剤としてパーオキサイドを使用し、フリーラジカルトラップ剤としてpKaが10よりも大きく、水素ラジカル解離エネルギーが79.1kcal/molよりも小さい化合物の共存下で重合を行うことを特徴とするポリ−1,4−フェニレンエーテルの製造方法。
(式中、mは数平均ユニット数を表し、1<mである。)
(B)一方の配位原子が酸素原子又は硫黄原子であり、他方の配位原子が窒素原子、リン原子、酸素原子、硫黄原子である二座配位子が実質的に2個配位した、遷移金属錯体触媒であって該遷移金属錯体触媒に含まれる遷移金属原子がバナジウム、鉄、コバルト、ニッケル又は銅から選ばれる遷移金属錯体触媒。
(D)配位原子がそれぞれ窒素原子、リン原子、酸素原子または硫黄原子である四座または五座の配位子1個あたりの遷移金属原子が一個以上である遷移金属錯体触媒であって該遷移金属原子がバナジウム、鉄、コバルト、ニッケル又は銅から選ばれる遷移金属錯体触媒。 - 酸化剤が、ハイドロパーオキサイドであることを特徴とする請求項1記載のポリ−1,4−フェニレンエーテルの製造方法。
- 酸化剤が、過酸化水素またはアルキルハイドロパーオキサイドであることを特徴とする請求項1記載のポリ−1,4−フェニレンエーテルの製造方法。
- フリーラジカルトラップ剤の、pKaが16よりも大きく、水素ラジカル解離エネルギーが78kcal/molよりも小さいことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のポリ−1,4−フェニレンエーテルの製造方法。
- (B)の遷移金属錯体触媒が下記一般式( II )で表される錯体であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のポリ−1,4−フェニレンエーテルの製造方法。
(式中、Mはバナジウム、鉄、コバルト、ニッケル又は銅から選ばれる金属原子を含む残基を表す。R 1 、R 3 はそれぞれ独立に水素原子、炭化水素基、置換炭化水素基、O - 、炭化水素オキシ基、置換炭化水素オキシ基、アミノ基または置換アミノ基を表し、R 2 は水素原子、炭化水素基、置換炭化水素基、炭化水素オキシ基、置換炭化水素オキシ基、炭化水素オキシカルボニル基、置換炭化水素オキシカルボニル基、シアノ基、ニトロ基またはハロゲン原子を表し、R 1 とR 2 および/またはR 2 とR 3 が環を形成してもよい。) - (D)の遷移金属錯体触媒が下記一般式 (III) で表される錯体であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のポリ−1,4−フェニレンエーテルの製造方法。
(式中、Mはバナジウム、鉄、コバルト、ニッケル又は銅原子を含む残基を表す。R 4 、R 9 はそれぞれ独立に水素原子、炭化水素基、置換炭化水素基、O - 、炭化水素オキシ基、置換炭化水素オキシ基、アミノ基または置換アミノ基を表し、R 5 、R 8 はそれぞれ独立に水素原子、炭化水素基、置換炭化水素基、炭化水素オキシ基、置換炭化水素オキシ基、炭化水素オキシカルボニル基、置換炭化水素オキシカルボニル基、シアノ基、ニトロ基またはハロゲン原子を表し、R 6 、R 7 はそれぞれ独立に水素原子、炭化水素基、置換炭化水素基または O - を表す。R 10 は二官能性の炭化水素基または置換炭化水素基を表す。R 4 とR 5 および/またはR 8 とR 9 が環を形成してもよい。)
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