JP4042172B2 - 1−ナフトール重合体の製造方法 - Google Patents

1−ナフトール重合体の製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は1−ナフトール重合体の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
2,6−ジメチルフェノールの遷移金属錯体触媒を用いた酸化重合(例として、特公昭63−6091号公報、特開昭59−131627号公報等、多数を挙げることができる。)によって得られるポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)(以下、PPEと略すことがある。)は有用な樹脂であることが知られている。しかし、PPEは、芳香環に置換されたメチル基が酸化劣化を受けやすいため、PPE単独で溶融成形することが難しいという欠点があり、一般にはポリスチレンとのポリマーアロイとして汎用エンプラに位置づけられている。
【0003】
一方、ソビエト特許219202号に提案されている1−ナフトールの酸化重合体は、酸化劣化を受けやすいメチル基が置換しておらず、高耐熱性ポリマーとして期待できる。1−ナフトールの有機溶媒中での酸化重合法に用いられる触媒としては、ソビエト特許219202号、Polymer,Vol.15,392 (1974)およびPolymer,Vol.18,1081 (1977)に、銅塩とピリジン等の窒素含有化合物からなる触媒が記載されている。しかし、これらの触媒はピリジン等の窒素含有化合物を使用するため、その臭気が問題であった。
【0004】
さらに、特開平5−178982号公報には、無置換の1−ナフトールや2位に置換基を有する1−ナフトールを、有機溶媒中で銅塩とピリジンやトリエチルアミンからなる触媒を用いて酸素酸化重合する方法が記載されているが、具体的に開示されているのは2位に置換基を有する1−ナフトールの重合に関するもののみである。
本発明者らが得た知見によれば、1−ナフトールの酸化重合の際にはゲル分の生成が多くなり易い。この原因の詳細は不明ではあるが、1−ナフトールの酸素原子と4位の炭素原子のみがカップリングすれば直鎖状のポリマーが得られ、1−ナフトールの2位の炭素原子もカップリング反応に関与するとゲル化すると推定される。
【0005】
特開昭53−65834号公報には、銅、マンガン、コバルトまたは鉄とアルカノールアミン等を含むアミン類からなる触媒により1−ナフトールの水溶媒中での酸化カップリングが記載されているが、水溶液中での酸化カップリングでは、ジナフトキノンが主生成物となり、重合体は微量しか得られなかった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、臭気の少ない触媒を用いて、ゲル分の少ない、耐熱性に優れた1−ナフトール酸化重合体を経済的に製造する方法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
このような状況下にあって、本研究者らは上記目的を達成すべく鋭意研究を行った結果、本発明を完成するに至った。即ち本発明は、配位原子が窒素原子、リン原子、酸素原子又は硫黄原子である三座以上の配位子1個あたりの第4〜11族遷移金属原子の個数が該配位子の配座数の1/6個より多い遷移金属錯体触媒を用いて、有機溶媒中において、1−ナフトールを酸化剤存在下で重合する1−ナフトール重合体の製造方法にかかるものである。
【0008】
【発明の実施の形態】
次に本発明を詳細に説明する。
(1)遷移金属錯体触媒
本発明で使用する遷移金属錯体触媒は、配位原子が窒素原子、リン原子、酸素原子又は硫黄原子である三座以上の配位子1個あたりの第4〜11族遷移金属原子の個数が該配位子の配座数の1/6個より多い遷移金属錯体触媒である。
【0009】
本発明の遷移金属錯体触媒における遷移金属は、元素の周期律表(IUPAC無機化学命名法改訂版1989)の第4〜11族の遷移金属である。好ましくは第一遷移元素系列の遷移金属であり、さらに好ましくはマンガン、鉄、コバルト、銅であり、特に好ましくはマンガンである。
該遷移金属の価数は、自然界に通常存するものを適宜選択して使用することができ、例えばマンガンの場合は2または3価を用いることができる。
【0010】
本発明の遷移金属錯体触媒における三座以上の配位子は、配位原子が窒素原子、リン原子、酸素原子又は硫黄原子である三座以上の配位子である。
本発明において配位子とは、化学大辞典(第1版、東京化学同人、1989年)に記載の通り、ある原子に配位結合で結合している分子またはイオンを指す。結合に直接かかわっている原子を配位原子という。三座以上の配位子は配位原子数が3個以上の配位子である。
【0011】
詳細は不明ではあるが、本発明の遷移金属錯体触媒においては、このような三座以上の配位子を用いることにより、1−ナフトールの2位のカップリング反応を抑制するのに適した遷移金属原子まわりの環境が得られると考えられ、ゲル分の少ないポリマーの合成が可能になる。
【0012】
本発明で使用する三座以上の配位子は、それ自体が中性分子であってもイオンであってもよい。好ましく用いられる三座以上の配位子は、中性分子または1以上、配座数以下の価数の陰イオンである。
【0013】
三座配位子の具体例としては、1,2,3−トリヒドロキシプロパン、2−アミノ−1,3−プロパンジオール、1,3−ジアミノ−2−プロパノール、1,3,5−トリヒドロキシペンタン、3−アミノ−1,5−ペンタンジオール、2,4,6−ヘプタントリオン、1−フェニル−1,3,5−ヘキサントリオン、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジ−(2−メルカプトエチル)チオエーテル、ビス(1−ジフェニルホスフィノエチル)エーテル、3,3−ジホルミル−4−メチルフェノール、3−ホルミル−サリチル酸、ジエチレントリアミン、1,7−ジメチルジエチレントリアミン、1,7−ジエチルジエチレントリアミン、1,7−ジプロピルジエチレントリアミン、1,7−ジフェニルジエチレントリアミン、1,1,4,7,7−ペンタメチルジエチレントリアミン、N−(2−ヒドロキシエチル)エチレンジアミン、N−(2−ヒドロキシエチル)フェニレンジアミン、N−(2−ヒドロキシエチル)−1,3−プロパンジアミン、N−(3−ヒドロキシプロピル)エチレンジアミン、N−(3−ヒドロキシプロピル)−N’,N’−ジエチルエチレンジアミン、ジエタノールアミン、ジ−2−プロパノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、N−プロピルジエタノールアミン、、N−フェニルジエタノールアミン、ジ−2−ヒドロキシエチルチオエーテル、3−グリシルアミノ−1−プロパノール、メチルイミノジ酢酸、ジ−(2−ピリジルメチル)アミン、ジ−(2−ピリジルエチル)アミン、ジ−(2−イミダゾリルメチル)アミン、ジ−(2−オキサゾリルメチル)アミン、ジ−(2−チアゾリルメチル)アミン、N−(2−ピリジルメチリデン)−N−(2−ピリジルメチル)アミン、N−(2−フリルメチリデン)−N−(2−ピリジルメチル)アミン、N−(2−チオフェニルメチリデン)−N−(2−ピリジルメチル)アミン、2,2’:6’,2’’−ターピリジン、3−(2−ピリジルメチルイミノ)−2−ブタノン、3−(2−ピリジルメチルイミノ)−2−ブタノンオキシム、3−(2−ピリジルエチルイミノ)−2−ブタノンオキシム、3−(2−アミノエチルイミノ)−2−ブタノンオキシム、3−(2−ヒドロキシエチルイミノ)−2−ブタノン、4−(2−ピリジルメチルイミノ)−2−ペンタノン、N−サリシリデン−(2−ピリジルメチル)アミン、N−サリシリデン−(2−ピリジルエチル)アミン、N−サリシリデン−N’,N’−ジメチルエチレンジアミン、N−サリシリデン−N’,N’−ジエチルエチレンジアミン、N−サリシリデン−N’,N’−ジプロピルエチレンジアミン、N−サリシリデン−N’,N’−ジフェニルエチレンジアミン、4−(2−ヒドロキシエチルイミノ)−2−ペンタノン、4−(2−ヒドロキシプロピルイミノ)−2−ペンタノン、4−(3−ヒドロキシプロピルイミノ)−2−ペンタノン、4−(2−ヒドロキシシクロヘキシルイミノ)−2−ペンタノン、4−(2−ヒドロキシフェニルイミノ)−2−ペンタノン、5−(2−ヒドロキシエチルイミノ)−3−ヘプタノン、1,1,1,5,5,5−ヘキサフルオロ−4−(2−ヒドロキシエチルイミノ)−2−ペンタノン、1,1,1−トリフルオロ−4−(2−ヒドロキシエチルイミノ)−2−ペンタノン、4−(2−ドロキシエチルイミノ)−3−メチル−2−ペンタノン、4−(2−ヒドロキシエチルイミノ)−3−エチル−2−ペンタノン、4−(2−ヒドロキシエチルイミノ)−3−プロピル−2−ペンタノン、4−(2−ヒドロキシエチルイミノ)−3−フェニル−2−ペンタノン、4−(2−ドロキシエチルイミノ)−3−メトキシ−2−ペンタノン、4−(2−ヒドロキシエチルイミノ)−3−メトキシカルボニル−2−ペンタノン、4−(2−ヒドロキシエチルイミノ)−3−シアノ−2−ペンタノン、4−(2−ヒドロキシエチルイミノ)−3−ニトロ−2−ペンタノン、4−(2−ヒドロキシエチルイミノ)−3−クロロ−2−ペンタノン、3−(2−ヒドロキシエチルイミノ)−1,3−ジフェニル−1−プロパノン、4−(2−ヒドロキシエチルイミノ)−2−ブタノン、5−(2−ヒドロキシエチルイミノ)−3−ペンタノン、6−(2−ヒドロキシエチルイミノ)−4−ヘキサノン、5−(2−ヒドロキシエチルイミノ)−−2−メチル−3−ペンタノン、5−(2−ヒドロキシエチルイミノ)−2,2−ジメチル−3−ペンタノン、3−(2−ヒドロキシエチルイミノ)−1−フェニル−1−プロパノン、N−サリシリデン−2−ヒドロキシエチルアミン、N−サリシリデン−3−ヒドロキシプロピルアミン、N−サリシリデン−2−ヒドロキシアニリン、N−(5−メチルサリシリデン)−2−ヒドロキシアニリン、N−(5−メトキシサリシリデン)−2−ヒドロキシアニリン、N−(5−ニトロサリシリデン)−2−ヒドロキシアニリン、N−(3,5−ジメチルサリシリデン)−2−ヒドロキシアニリン、N−(3,5−ジ−t−ブチルサリシリデン)−2−ヒドロキシアニリン、N−サリシリデン−2−ヒドロキシ−5−メチルアニリン、N−サリシリデン−2−ヒドロキシ−5−ニトロアニリン、3−(2−ヒドロキシエチルイミノ)プロピオン酸、3−(2−ヒドロキシエチルイミノ)酪酸、3−(2−ヒドロキシエチルイミノ)プロピオン酸メチル、3−(2−ヒドロキシエチルイミノ)プロピオン酸エチル、3−(2−ヒドロキシエチルイミノ)プロピオン酸アミド、N−(2−ヒドロキシエチル)マロン酸モノエチルエステルモノアミド、N−サリシリデングリシン、N−サリシリデンアラニン、N−サリシリデンバリン、N−サリシリデンロイシン、トリス(2−ピリジル)メタン、トリスピラゾリルボーレート、1,4,7−トリアザシクロノナン等、あるいは、それらからプロトンを一つ又はそれ以上取り去って得られる陰イオン等を挙げることができる。
【0014】
四座配位子の具体例としては、トリス(2−ピリジルメチル)アミン、トリス(2−イミダゾリルメチル)アミン、トリス(1−メチル2−イミダゾリルメチル)アミン、トリス(2−ベンズイミダゾリルメチル)アミン、トリス(2−ベンズオキサゾリルメチル)アミン、トリス(2−ベンズチアゾリルメチル)アミン、トリス(1−ピラゾリルメチル)アミン、トリス(3、5−ジメチル−1−ピラゾリルメチル)アミン、トリス(3、5−ジプロピル−1−ピラゾリルメチル)アミン、トリス(3、5−ジフェニル−1−ピラゾリルメチル)アミン、ニトリロ三酢酸、ニトリロトリエタノール、ニトリロトリ−1−プロパノール、トリス(2−ピリジル−2−エチル)アミン、トリス(1−ピラゾリル−2−エチル)アミン、N−(2−メルカプトエチル)−N,N−ジエタノールアミン、N−(ジフェニルホスフィノエチル)−N,N−ジエタノールアミン、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコール、トリエチレンテトラミン、N,N’’’−ジメチルトリエチレンテトラミン、N,N,N’’’,N’’’−テトラメチルトリエチレンテトラミン、N,N’−ビス(2−ヒドロキシエチル)エチレンジアミン、N,N’−ビス(3−ヒドロキシプロピル)エチレンジアミン、N,N’−エチレンジアミン二酢酸、N,N’−ビス(2−ピリジルメチル)エチレンジアミン、N,N’−ビス(2−イミダゾリルメチル)エチレンジアミン、N,N’−ビス(2−ベンズイミダゾリルメチル)エチレンジアミン、N,N’−ビス(2−メルカプトエチル)エチレンジアミン、N,N’−ビス(ジフェニルホスフィノエチル)エチレンジアミン、N,N’−ジサリシリデンエチレンジアミン、N,N’−ビス(1−メチル−3−オキソブチリデン)エチレンジアミン、N−2−ヒドロキシエチル−N’−サリシリデンエチレンジアミン、N−2−ヒドロキシエチル−N’−サリシリデン−1,3−プロピレンジアミン、N−3−ヒドロキシプロピル−N’−サリシリデン−1,3−プロピレンジアミン、N−3−ヒドロキシプロピル−N’−サリシリデンエチレンジアミン、N−2−ジメチルアミノエチル−N’−サリシリデンエチレンジアミン、N−2−ピリジルメチル−N’−サリシリデンエチレンジアミン、N,N’−ビス(2−アミノ−3−ベンジリデン)エチレンジアミン、1−(ジアセチルモノオキシムイミノ)−3−(ジアセチルモノオキシマトイミノ)プロパン、12−クラウン−4、1,4,8,11−テトラアザシクロテトラデカン、1,4,8,11−テトラアザシクロテトラデカン−5,7−ジオン、1,4,8,11−テトラメチル−1,4,8,11−テトラアザシクロテトラデカン、1,4,7,10−テトラチアシクロドデカン、2,3,9,10−テトラメチル−1,4,8,11−テトラアザシクロテトラデカ−1,3,8,10−テトラエン、5,7,12,14−テトラメチル−1,4,8,11−テトラアザシクロテトラデカ−4,6,11,13−テトラエン、ポルフィリン、タロシアニン等、あるいは、それらからプロトンを一つ又はそれ以上取り去って得られる陰イオン等を挙げることができる。
【0015】
五座配位子の具体例としては、テトラエチレングリコール、テトラプロピレングリコール、テトラエチレンペンタミン、N,N'''-ジメチルテトラエチレンペンタミン、N,N,N’’’,N’’’−テトラメチルテトラエチレンペンタミン、N,N’’−ビス(2−ヒドロキシエチル)ジエチレントリアミン、N,N’’−ビス(3−ヒドロキシプロピル)ジエチレントリアミン、N,N’’−ジエチレントリアミン、二酢酸、N,N’’−ビス(2−ピリジルメチル)ジエチレントリアミン、N,N’’−ビス(2−イミダゾリルメチル)ジエチレントリアミン、N,N’’−ビス(2−ベンズイミダゾリルメチル)ジエチレントリアミン、N,N’’−ビス(2−メルカプトエチル)ジエチレントリアミン、N,N’’−ビス(ジフェニルホスフィノエチル)ジエチレントリアミン、N,N’’−ジサリシリデンジエチレントリアミン、N−(3−オキソペンチリデン)−N’’−サリシリデンジエチレントリアミン、N,N’’−ビス(3−オキソブチリデン)ジエチレントリアミン、N,N’’−ビス(3−オキソブチリデン)−ジプロピレントリアミン、N,N’’−ビス(3−オキソブチリデン)−N’−メチルジプロピレントリアミン、N,N’’−ビス(1−メチル−3−オキソブチリデン)−N’−メチルジプロピレントリアミン、N,N’’−ビス(3−オキソペンチリデン)−N’−メチルジプロピレントリアミン、N,N’’−ビス(3−オキソヘキシリデン)−N’−メチルジプロピレントリアミン、N,N’’−ビス(4−メチル−3−オキソペンチリデン)−N’−メチルジプロピレントリアミン、N,N’’−ビス(4,4−ジメチル−3−オキソペンチリデン)−N’−メチルジプロピレントリアミン、N,N’’−ビス(4−フェニル−3−オキソブチリデン)−N’−メチルジプロピレントリアミン、N,N’’−ビス(4−トリフルオロメチル−3−オキソブチリデン)−N’−メチルジプロピレントリアミン、N,N’’−ビス(2−シアノ3−オキソブチリデン)−N’−メチルジプロピレントリアミン、N,N’’−ビス(2−シアノ−3−オキソブチリデン)−N’−メチルジプロピレントリアミン、N,N’’−ビス(2−ニトロ−3−オキソブチリデン)−N’−メチルジプロピレントリアミン、N,N’’−ビス(2−カルボキシルエチリデン)−N’−メチルジプロピレントリアミン、N,N’’−ビス[2−(メトキシカルボニル)エチリデン]−N’−メチルジプロピレントリアミン、N,N’’−ビス[2−(ジメチルアミノカルボニル)エチリデン]−N’−メチルジプロピレントリアミン、N,N’−(3−アザ−5,5−ペンチレンレン)−ビス(サリチル酸アミド)、N,N’−(3−アザ−1,5−ペンチレンレン)−ビス(マロン酸モノメチルモノアミド)、N,N’’−ビス(1−メチル−3−オキソブチリデン)ジエチレントリアミン、N−2−ヒドロキシエチル−N’’−サリシリデンジエチレントリアミン、N−3−ヒドロキシプロピル−N’’−サリシリデンジエチレントリアミン、N−3−ヒドロキシプロピル−N’−サリシリデンエチレンジアミン、N−2−ジメチルアミノエチル−N’’−サリシリデンジエチレントリアミン、N−2−ピリジルメチル−N’’−サリシリデンジエチレントリアミン、N,N’’−ビス(2−アミノ−3−ベンジリデン)ジエチレントリアミン、1,5−ビス(サリシリデンアミノ)−3−ペンタノール、2、6−ビス[N−(2−ヒドロキシエチル)イミノメチル]−4−メチルフェノール、2、6−ビス[N−(3−ヒドロキシプロピル)イミノメチル]−4−メチルフェノール、2、6−ビス[N−(2−ヒドロキシフェニル)イミノメチル]−4−メチルフェノール、2、6−ビス[N−(2−ピリジルメチル)イミノメチル]−4−メチルフェノール、2、6−ビス[N−(2−ピリジルエチル)イミノメチル]−4−メチルフェノール、2、6−ビス[N−(2−ジメチルアミノエチル)イミノメチル]−4−メチルフェノール、2、6−ビス[N−(2−ピリジルメチル)アミノメチル]−4−メチルフェノール、2、6−ビス[N−(2−ピリジルエチル)アミノメチル]フェノール、15−クラウン−5、1,4,7,10,13−ペンタチアシクロペンタデカン等、あるいは、それらからプロトンを一つ又はそれ以上取り去って得られる陰イオン等を挙げることができる。
【0016】
六座配位子の具体例としては、N,N,N’,N’−エチレンジアミン四酢酸、N,N,N’,N’−1,3−プロピレンジアミン四酢酸、N,N,N’,N’−1,2−フェニレンジアミン四酢酸、N,N,N’,N’−テトラキス(2−アミノエチル)エチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラキス(2−ヒドロキシエチル)エチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラキス(3−アミノプロピル)エチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラキス(3-ヒドロキシプロピル)エチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラキス(2−ジメチルアミノエチル)エチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラキス(2-メルカプトエチル)エチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラキス(2−ピリジルメチル)エチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラキス(2−ピリジルエチル)エチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラキス(2−イミダゾリルメチル)エチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラキス(2−ベンズイミダゾリルメチル)エチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラキス(2−オキサゾリルメチル)エチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラキス(2−チアゾリルメチル)エチレンジアミン、1,2−ビス[ビス(2−ヒドロキシエチル)ホスフィノ]エタン、1,2−ビス[6’−ジ(ピリジ−2’’−イル)メチルピリジ−2’−イル]エタン、ペンタエチレングリコール、ペンタエチレンヘキサアミン、18−クラウン−6、1,4,7,10,13,16−ヘキサメチル−1,4,7,10,13,16−ヘキサアザシクロオクタデカン、1,4,7,10,13,16−ヘキサチアシクロオクタデカン、N,N''' −(ジフェニルホスフィノ)−テトラエチレントリアミン、N,N’−ビス[2−(2−ヒドロキシエチルアミノ)エチル]マロン酸アミド、N,N’−ビス[2−(2−ヒドロキシエチルアミノ)エチル]シュウ酸アミド、2,3−ビス[2−(2−ヒドロキシエチルアミノ)エチルイミノ]ブタン、2,4−ビス[2−(2−ヒドロキシエチルアミノ)エチルイミノ]ペンタン、N,N’−ビス[2−(2−アミノエチルアミノ)エチル]マロン酸アミド、N,N’−ビス(5−アミノ−3−ヒドロキシペンチル)マロン酸アミド、1,3−ビス(3−ホルミル−5−メチルサリチリデンアミノ)プロパン、11,13−ジメチル−3,7,15,19−テトラアザトリシクロ[19.3.1.19,13]ヘキサコサ−2,7,9,11,13(26),14,19,21(25),22,24−デカエン−25,26−ジオール、N,N’−エチレンビス(3−カルボキシサリシリデンアミン)、5、5’−(1,2−エタンジイルジニトリロ)ビス(1−フェニル−1,3−ヘキサンジオン)等、あるいは、それらからプロトンを一つ又はそれ以上取り去って得られる陰イオン等を挙げることができる。
【0017】
七座配位子の具体例としては、2,6−ビス[ビス(2−ピリジルメチル)アミノメチル]−4−メチルフェノール、2,6−ビス[ビス(2−ピリジルエチル)アミノメチル]−4−メチルフェノール、2,6−ビス[ビス(2−ジメチルアミノエチル)アミノメチル]−4−メチルフェノール、2,6−ビス[ビス(2−イミダゾリルメチル)アミノメチル]−4−メチルフェノール、2,6−ビス[ビス(2−ベンズイミダゾリルメチル)アミノメチル]−4−メチルフェノール、2,6−ビス[ビス(2−オキサゾリルメチル)アミノメチル]−4−メチルフェノール、2,6−ビス[ビス(2−チアゾリルメチル)アミノメチル]−4−メチルフェノール、1,3−ビス[ビス(2−ピリジルメチル)アミノ]−2−プロパノール、ヘキサエチレングリコール、N,N’’’’−ビス(2−ヒドロキシエチル)−テトラエチレンペンタアミン、N,N’’’’−ビス(3-ヒドロキシプロピル)−テトラエチレンペンタアミン、N,N’’’’−ビス(サリシリデン)−テトラエチレンペンタアミン、2,6−ビス[2−(2−ヒドロキシエチルアミノ)エチルイミノメチル]−4−メチルフェノール、2,6−ビス[2−(2−ヒドロキシエチルアミノ)エチルアミノメチル]−4−メチルフェノール、2,6−ビス[2−(2−アミノエチルアミノ)エチルイミノメチル]−4−メチルフェノール、2,6−ビス[2−(2−ピリジルメチルアミノ)エチルイミノメチル]−4−メチルフェノール等、あるいは、それらからプロトンを一つ又はそれ以上取り去って得られる陰イオン等を挙げることができる。
【0018】
八座配位子の具体例としては、ヘプタエチレングリコール、N,N’’’’’−ビス(2−ヒドロキシエチル)−テトラエチレンヘキサアミン、N,N’’’’’−ビス(3−ヒドロキシプロピル)−テトラエチレンヘキサアミン、N,N’’’’’−ビス(サリシリデン)−テトラエチレンヘキサアミン、N,N’−ビス[2−{2−(2−ヒドロキシエチルアミノ)エチルアミノ}エチルアミノ]マロンアミド、N,N’−ビス[2−{2−(3−ヒドロキシプロピルアミノ)エチルアミノ}エチルアミノ]マロンアミド、N,N’−ビス[2−{2−(2−アミノエチルアミノ)エチルアミノ}エチルアミノ]マロンアミド、N,N’−ビス[2−{2−(2−ピリジルメチルアミノ)エチルアミノ}エチルアミノ]マロンアミド等、あるいは、それらからプロトンを一つ又はそれ以上取り去って得られる陰イオン等を挙げることができる。
【0019】
九座以上の配位子(mは8以上の整数)の具体例として、
HO−(CH2 CH2 O)m −H
等の中性分子、あるいは、それらからプロトンを一つ又はそれ以上取り去って得られる陰イオン等を挙げることができる。
【0020】
本発明の該配位子においては、配座数が3〜8であることが好ましく、3〜6であることがより好ましく、4であることがさらに好ましい。
【0021】
本発明の該配位子において、配位原子が窒素原子又は酸素原子であることが好ましい。
【0022】
本発明の遷移金属錯体触媒においては、該配位子1個あたりの該遷移金属原子数が該配位子の配座数の1/6個より多くなければならず、例えば六座配位子の場合の遷移金属原子数は2個以上であり、12座配位子の場合は3個以上である。好ましくは該配位子1個あたりの該遷移金属原子数は、該配位子の配座数の1/6個より多く、該配位子の配座数個以下であり、さらに好ましくは該配位子の配座数の1/6個より多く、該配位子の配座数の1/3個以下である。該配位子1個あたりの該遷移金属原子数が該配位子の配座数の1/6個以下の場合は、該遷移金属原子上に想定される反応活性点が該配位子により塞がれ、触媒活性を失う場合があり好ましくない。
【0023】
本発明の遷移金属錯体触媒において、配位子と遷移金属原子以外の構造は、触媒能を失活させないならば特に限定されるものではない。
本発明の遷移金属錯体触媒には、電気的中性を保たせるようなカウンターイオンが必要な場合がある。カウンターアニオンとしては、通常ブレンステッド酸の共役塩基が使用され、具体例としては、フッ化物イオン、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン、硫酸イオン、硝酸イオン、炭酸イオン、過塩素酸イオン、テトラフルオロボーレートイオン、ヘキサフルオロホスフェイトイオン、メタンスルホン酸イオン、トリフルオロメタンスルホン酸イオン、トルエンスルホン酸イオン、酢酸イオン、トリフルオロ酢酸イオン、プロピオン酸イオン、安息香酸イオン、水酸化物イオン、酸化物イオン、メトキサイドイオン、エトキサイドイオン等が挙げられる。またカウンターカチオンとしては、アルカリ金属やアルカリ土類金属等のカチオンを適宜用いることができる。
また本発明の遷移金属錯体には、錯体の原料、合成過程および/又は酸化重合過程で、溶媒などが配位していても良い。
【0024】
本発明の遷移金属錯体触媒として、好ましくは下記一般式(I)で表される錯体である。
Figure 0004042172
(式中、Mは第4〜11族遷移金属原子を含む残基を表す。R1 、R6 はそれぞれ独立に水素原子、炭化水素基、置換炭化水素基、O- 、炭化水素オキシ基、置換炭化水素オキシ基、アミノ基または置換アミノ基を表し、R2 、R5 はそれぞれ独立に水素原子、炭化水素基、置換炭化水素基、炭化水素オキシ基、置換炭化水素オキシ基、炭化水素オキシカルボニル基、置換炭化水素オキシカルボニル基、シアノ基、ニトロ基またはハロゲン原子を表し、R3 、R4 はそれぞれ独立に水素原子、炭化水素基、置換炭化水素基または O- を表す。R7 は二官能性の炭化水素基または置換炭化水素基を表す。R1 とR2 および/またはR5 とR6 が環を形成してもよい。)
【0025】
上記一般式(I)において、Mは第4〜11族遷移金属原子を含む残基であり、第4〜11族遷移金属原子、または=Oの結合した遷移金属原子等である。
【0026】
上記一般式(I)における炭化水素基としては、炭素原子数1〜20のアルキル基、アラルキル基及びアリール基が好ましく、具体的にはメチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、シクロペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、オクチル基、デシル基、ベンジル基、フェニル基、ナフチル基等が挙げられる。
【0027】
上記一般式(I)における置換炭化水素基は、ハロゲン原子、アルコキシ基、アミノ基、置換アミノ基、ニトロ基等で置換された炭化水素基である。
【0028】
上記一般式(I)における O- は、ヒドロキシ基からプロトンを一つ取り去ったものを示す。
【0029】
上記一般式(I)における炭化水素オキシ基としては炭素原子数1〜20のアルコキシ基及びアリールオキシ基が好ましく、具体的にはメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ヘキシルオキシ基、オクチルオキシ基、フェノキシ基、ナフトキシ基等が挙げられる。
【0030】
上記一般式(I)における置換炭化水素オキシ基は、ハロゲン原子、アルコキシ基、アミノ基等で置換された炭化水素オキシ基であり、具体例としては、トリフルオロメトキシ基、2−t−ブチルオキシエトキシ基、3−ジフェニルアミノプロポキシ基等が挙げられる。
【0031】
上記一般式(I)における置換アミノ基としては炭素原子数1〜20の置換アミノ基が好ましく、具体的には、メチルアミノ基、エチルアミノ基、プロピルアミノ基、ブチルアミノ基、フェニルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジプロピルアミノ基、ジブチルアミノ基、メチルエチルアミノ基、メチルプロピルアミノ基、メチルブチルアミノ基、ジフェニルアミノ基、ジナフチルアミノ基等が挙げられる。
【0032】
上記一般式(I)における炭化水素オキシカルボニル基としては、炭素原子数1〜20の炭化水素オキシカルボニル基が好ましく、具体的には、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基、t−ブチルオキシカルボニル基、フェノキシカルボニル基等が挙げられる。
【0033】
上記一般式(I)における置換炭化水素オキシカルボニル基は、ハロゲン原子、アルコキシ基、アミノ基等で置換された炭化水素オキシカルボニル基であり、具体例としては、トリフルオロメトキシカルボニル基、2−t−ブチルオキシエトキシカルボニル基、3−ジフェニルアミノプロポキシカルボニル基等が挙げられる。
【0034】
上記一般式(I)におけるハロゲン原子として好ましくは、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子であり、さらに好ましくは塩素原子、臭素原子である。
【0035】
上記一般式(I)において、R7 は二官能性の炭化水素基または置換炭化水素基であり、具体例としては、1,2−エチレン基、1,2−プロピレン基、1,3−プロピレン基、1,4−ブチレン基等のアルキレン基;1,2−ジフェニル−1,2−エチレン基等のアリールアルキレン基;1,2−シクロペンチレン基、1,2−シクロヘキシレン基等のシクロアルキレン基;1,2−フェニレン基、1,2−ナフチレン基、2,3−ナフチレン基等のアリーレン基;1,2−テトラフルオロエチレン基等の置換アルキレン基等を挙げることができ、好ましくは、1,2−エチレン基、1,3−プロピレン基、1,2−ジフェニル−1,2−エチレン基、1,2−シクロヘキシレン基、1,2−フェニレン基である。
【0036】
上記一般式(I)で表される遷移金属錯体における四座配位子の具体例としては、N,N’−ジサリシリデンエチレンジアミン、N−(3−オキソペンチリデン)−N’−サリシリデンエチレンジアミン、N,N’−ビス(3−オキソブチリデン)エチレンジアミン、N,N’−ビス(3−オキソブチリデン)−1,3−プロパンジアミン、N,N’−ビス(3−オキソブチリデン)−1,2−フェニレンジアミン、N,N’−ビス(1−メチル−3−オキソブチリデン)エチレンジアミン、N,N’−ビス(3−オキソペンチリデン)エチレンジアミン、N,N’−ビス(3−オキソヘキシリデン)エチレンジアミン、N,N’−ビス(4−メチル−3−オキソペンチリデン)エチレンジアミン、N,N’−ビス(4,4−ジメチル−3−オキソペンチリデン)エチレンジアミン、N,N’−ビス(4−フェニル−3−オキソブチリデン)エチレンジアミン、N,N’−ビス(4−トリフルオロメチル−3−オキソブチリデン)エチレンジアミン、N,N’−ビス(2−シアノ3−オキソブチリデン)エチレンジアミン、N,N’−ビス(2−シアノ−3−オキソブチリデン)エチレンジアミン、N,N’−ビス(2−ニトロ−3−オキソブチリデン)エチレンジアミン、N,N’−ビス(2−カルボキシルエチリデン)エチレンジアミン、N,N’−ビス[2−(メトキシカルボニル)エチリデン]エチレンジアミン、N,N’−ビス[2−(ジメチルアミノカルボニル)エチリデン]エチレンジアミン、N,N’−(1,2−エチレン)−ビス(サリチル酸アミド)、N,N’−(1,2−エチレン)−ビス(マロン酸モノメチルモノアミド)等、あるいは、それらからプロトンを一つ又はそれ以上取り去って得られる陰イオン等を挙げることができる。
【0037】
本発明の遷移金属錯体触媒は、さらに好ましくは下記一般式(II)で表される錯体である。
Figure 0004042172
(式中、Mは第4〜11族遷移金属原子を含む残基を表す。R3 、R4 はそれぞれ独立に水素原子、炭化水素基または置換炭化水素基を表し、R7 は二官能性の炭化水素基または置換炭化水素基を表す。R8 〜R15はそれぞれ独立に水素原子、炭化水素基、置換炭化水素基、炭化水素オキシ基、置換炭化水素オキシ基、置換アミノ基、ニトロ基またはハロゲン原子を表す。)
【0038】
上記一般式(II)におけるM、炭化水素基、置換炭化水素基、二官能性の炭化水素基または置換炭化水素基、炭化水素オキシ基、置換炭化水素オキシ基、置換アミノ基、ハロゲン原子は、上記一般式(I)についてしたと同様のものが挙げられる。
【0039】
上記一般式(II)においてR3 、R4 、R7 、R8 〜R15としてさらに好ましくは、R3 、R4 がそれぞれ独立に水素原子または炭化水素基であり、R7 がアルキレン基、アリールアルキレン基、シクロアルキレン基、アリーレン基であり、R8 〜R15がそれぞれ独立に水素原子、炭化水素基、ハロゲン化炭化水素基、炭化水素オキシ基、置換アミノ基、ニトロ基、塩素原子、臭素原子である。特に好ましくは、R3 、R4 がそれぞれ独立に水素原子、メチル基、フェニル基であり、R7 が1,2−エチレン基、1,3−プロピレン基、1,2−ジフェニルー1,2−エチレン基、1,2−シクロヘキシレン基、1,2−フェニレン基であり、R8 〜R15がそれぞれ独立に水素原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基、ベンジル基、トリフルオロメチル基、メトキシ基、ジメチルアミノ基、ニトロ基、塩素原子、臭素原子である。
【0040】
本発明の遷移金属錯体の合成法は、例えば J.Inorg.Nucl.Chem.,1974,Vol.36,pp.531等に記載されているような一般的な方法により得ることができる。
該遷移金属錯体は、あらかじめ合成された錯体を用いることができるが、反応系中で錯体を形成させてもよい。
【0041】
本発明においては、該触媒を単独でまたは混合して使用することができる。
本発明においては、該触媒は任意の量で用いることができるが、一般的には1−ナフトールに対する遷移金属原子相当のモル量として0.01〜50モル%が好ましく、0.02〜10モル%がより好ましい。
【0042】
(2)反応溶媒
本発明の反応溶媒としては、有機溶媒を用いる。水を溶媒として用いた場合は、C−Cカップリングしたジナフトキノンが主生成物となるので、好ましくない。好ましい有機溶媒としては、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;ヘプタン、シクロヘキサン等の鎖状及び環状の脂肪族炭化水素;クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、ジクロロメタン等のハロゲン化炭化水素;アセトニトリル、ベンゾニトリル等のニトリル類;メタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、iso−プロピルアルコール等のアルコール類;ジオキサン、テトラヒドロフラン、エチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル類;N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン等のアミド類;ニトロメタン、ニトロベンゼン等のニトロ化合物類が挙げられる。これらは単独あるいは混合物として使用される。さらに好ましい有機溶媒としては、芳香族炭化水素とアルコール類の混合溶媒である。
【0043】
該反応溶媒は、1−ナフトールの濃度が好ましくは0.5〜50重量%、より好ましくは1〜30重量%になるような割合で使用される。
【0044】
(3)酸化重合
本発明において、酸化剤は任意のものが使用されるが、好ましくは酸素またはパーオキサイドが使用できる。酸素は不活性ガスとの混合物であってもよく、空気でもよい。またパーオキサイドの例としては、過酸化水素、t−ブチルハイドロパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、過酢酸、過安息香酸等を示すことができる。酸化剤としてさらに好ましくは酸素である。
【0045】
本発明において、酸化剤の使用量に特に限定はなく、酸素を用いる場合は、1−ナフトールに対して通常、当量以上大過剰に使用する。パーオキサイドを用いる場合は、1−ナフトールに対して通常、当量以上3当量以下を使用するが、当量以上2当量以下を使用するのが好ましい。
【0046】
該遷移金属錯体触媒が、カウンターイオンとして、ナフトールよりも強い酸の共役塩基を有する場合には、該遷移金属錯体触媒を不活性化しない塩基を、カウンターイオンと当量以上、重合時に共存させることが好ましい。かかる塩基の例としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、酸化カルシウム、ナトリウムメトキサイド、ナトリウムエトキサイド等のアルカリ金属またはアルカリ土類金属の水酸化物、酸化物、アルコキサイド類が挙げられる。通常よく使用されるのはアルカリ金属の水酸化物、アルコキサイド類であり、特に好ましくはアルカリ金属の水酸化物である。これらの塩基はそのままあるいはアルコールのような極性溶媒に溶解した状態で反応系に供給されることが好ましい。
【0047】
本発明を実施する反応温度は、反応媒体が液状を保つ範囲であれば特に制限はない。常圧で沸点以上であっても、加圧により液状を保つことも可能である。好ましい温度範囲は−20℃〜100℃であり、より好ましくは0℃〜60℃である。
【0048】
【実施例】
以下に、実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によりその範囲を限定されるものではない。
【0049】
重合体の赤外吸収スペクトル分析:
パーキンエルマー社製1600赤外分光光度計(KBr法)を用いて測定した。
【0050】
重合体のゲル分[%]:
重合体を室温でクロロホルムに溶解し、不溶部を濾取した後、100℃で5時間減圧乾燥した。重合体仕込み重量に対する得られたクロロホルム不溶部重量の百分率をゲル分[%]とした。
【0051】
重合体の重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn):
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(ポンプ:ウォーターズ社製600Eシステム、検出器:ウォーターズ社製UV/VIS−484、検出波長:254nm、カラム:ウォーターズ社製Ultrastyragel Linear=1本+1000A=1本+100A=1本、展開溶媒:クロロホルム)により分析し、標準ポリスチレン換算値として重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)を測定した。
【0052】
本実施例で用いた錯体は、下記の錯体(Mn(tBu,Me-salchen)と略す。)、
Figure 0004042172
【0053】
下記の錯体(Mn(tBu,Me-saldpen)と略す。)および
Figure 0004042172
【0054】
下記の錯体(Mn(salen)と略す。)である。
Figure 0004042172
これら錯体の合成は、J.Inorg.Nucl.Chem.,1974,Vol.36,pp.531を参照した。
【0055】
実施例1
電磁撹拌機を備えた100ml二つ口丸底フラスコに、酸素ガス導入管を取付けた。これに、Mn(tBu,Me-salchen)0.32mmol、水酸化ナトリウム1.28mmolをメタノール18.5gに溶解したものを入れ、1−ナフトール50mmolをキシレン31.5gに溶解したものを加えた。フラスコをウォーターバスにて40℃に保ち、内容物を攪拌下、酸素ガスを吹き込みながら、5時間反応した。反応終了後、濃塩酸で酸性にし、メタノール500mlに攪拌しながら添加した。沈殿した重合体を濾取し、メタノール50mlで3回洗浄し、100℃で5時間減圧乾燥した。結果を表1に示し、赤外吸収スペクトルを図1に示す。
【0056】
実施例2〜3
触媒を表1に示すように変えた以外は、実施例1と同様にして重合体を得た。表1に結果を示す。
【0057】
【表1】
Figure 0004042172
【0058】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の三座以上の配位子と第4〜11族遷移金属原子からなるなる遷移金属錯体触媒を用いて、有機溶媒中で1−ナフトールを酸化重合する方法により、ゲル分の極めて少ない、耐熱性に優れた1−ナフトール重合体を高収率で合成することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1の重合体の赤外吸収スペクトル。

Claims (2)

  1. 下記一般式(II):
    Figure 0004042172
    (式中、Mはマンガン原子、又は=Oの結合したマンガン原子を表す。R3、R4はそれぞれ独立に水素原子、炭化水素基または置換炭化水素基を表し、R7は二官能性の炭化水素基または置換炭化水素基を表す。R 11 〜R 18 はそれぞれ独立に水素原子、炭化水素基、置換炭化水素基、炭化水素オキシ基、置換炭化水素オキシ基、置換アミノ基、ニトロ基またはハロゲン原子を表す。)
    で表される遷移金属錯体触媒を用いて、有機溶媒中において、1−ナフトールを酸化剤存在下で重合する1−ナフトール重合体の製造方法。
  2. 酸化剤が、酸素又はパーオキサイドであることを特徴とする請求項1に記載の1−ナフトール重合体の製造方法。
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